説明

止水機能付減圧弁及び減圧エレメント

【課題】構造が簡単であり、部品点数が少なく、また、小型化が可能な止水機能付減圧弁及び減圧エレメントを提供すること。
【解決手段】止水機能付減圧弁1を、止水部2と減圧部3で構成する。止水部2は、一般的な止水弁の構造を有する。減圧部3は、略筒状の減圧部ケーシング30内に、ピストン36を摺動自在に内嵌した有底シリンダ33と、ピストン36の内側面に固定されて有底シリンダ33の底部34から突出したロッド37と、ロッド37の先端に固定された第2弁体38とを備える。減圧ケーシング30の流入口31側の水圧が高い場合、ピストン36の外側面363に作用する水圧により、有底シリンダ33内の空気室39の空気圧に抗してピストン36が底部34側に駆動され、流入口31からの流入量が低減し、流出口32側の水圧が設定減圧値に近づく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば消火栓装置に用いられる止水機能付減圧弁及び減圧エレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
消火栓装置においては、給水管に止水弁を介して消火ホースを接続し、消火時に消火ホースを延ばし、その先端の放水ノズルを消火地点に向け、止水弁を開いて放水するように構成されている。しかしながら、高層建築物におけるように給水管の水圧が高い場合、水圧をそのままホースにかけると、ホースが硬直化して取り回しが困難になったり、放水ノズルの操作者に大きな反動力を与えたりする不都合がある。
【0003】
このような不都合を防止するため、消火栓装置では、止水弁の上流側や下流側に減圧弁を設け、この減圧弁で給水管からの水を低圧にしてホースに送るようにしている。消火栓装置に用いられる減圧弁としては、止水機能を有して止水弁を兼ねた止水機能付減圧弁がある。
【0004】
従来、止水機能付減圧弁としては、図3に示すようなものがある(例えば、特許文献1参照)。この止水機能付減圧弁は、流入口530と流出口531とを結ぶ弁口513を開閉する弁体533と、弁口513の下方に位置して流出口531と連通路540を介して連なるシリンダ室534と、このシリンダ室534内に収容されたピストン535と、このピストン535と弁体533とを連結するステム536と、このステム536の上端に接離可能に当節し、ハンドル537の回転操作により上下方向に移動してステム536の上端位置を位置決めする締め切り軸538とを備えたものがある。ピストン535は、シリンダ室534の下部に収容されたコイルバネ539によって上方に付勢されている。
【0005】
この止水機能付減圧弁は、ハンドル537の回転操作により締め切り軸538が最下位置にあると、弁体533が弁口513を閉じて止水弁として機能する。一方、ハンドル537の回転操作により締め切り軸538が上下方向の所定位置にあると、この位置を上限として、ステム536と弁体533とピストン535が上下方向に移動可能になる。ここで、流入口530側の水圧が低い場合、ピストン535がコイルバネ539によって上方に駆動され、弁体533が弁口513から離れて流入口530から流出口531への水の流量が増大し、下流側の水圧が上流側と略同じになる。一方、流入口530側の水圧が高い場合、連通路540を介してピストン535の上面に加わる水圧は高くなるので、ピストン535がコイルバネ539の付勢力に抗して下方に駆動され、弁体533が弁口513に近づいて流入口530から流出口531への水の流量が減少し、これにより、下流側の水圧を上流側の水圧よりも低くして、減圧作用を奏するようになっている。
【特許文献1】特開2006−95150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の止水機能付減圧弁は、構造が複雑であり、部品点数が多く、また、弁口513の下方に流路を隔ててピストン535及びコイルバネ539の収容部分が突出するので大型化を招き易いという不都合がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、構造が簡単であり、部品点数が少なく、また、小型化が可能な止水機能付減圧弁及び減圧エレメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の止水機能付減圧弁は、止水部と減圧部とを含んで形成された止水機能付減圧弁であって、上記止水部は、第1流入口と、第1流出口と、この第1流入口と第1流出口との間で開口した第1弁口とを有する止水部ケーシングと、上記止水部ケーシングに螺合し、ハンドルの操作に伴って軸方向に移動可能な第1弁軸と、上記第1弁軸に連結され、上記第1弁口に対して進退駆動される第1弁体とを備え、上記減圧部は、上記止水部の第1流入口又は第1流出口に連なり、第2流入口と、第2流出口と、この第2流入口と第2流出口との間で開口した第2弁口とを有する略筒状の減圧部ケーシングと、上記減圧部ケーシング内に収容され、底部が上記第2弁口側を向くと共に、開口が上記第2流出口に連通し、かつ、外周面と上記減圧部ケーシングの内周面との間に、上記第2弁口から第2流出口に連なる流路を形成する有底シリンダと、上記有底シリンダ内に摺動自在に嵌合すると共に、この有底シリンダ内の底部側に空気室を形成するピストンと、上記ピストンの空気室に臨む内側面に固定され、上記有底シリンダの底部を貫通して弁口側に突出する第2弁軸と、上記第2弁軸の先端に固定され、上記第2弁口に対して進退駆動される第2弁体とを備えることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、上記止水部では、ハンドルの操作に伴って第1弁体が第1弁口に対して進退駆動され、第1弁口に対する第1弁体の進退位置に応じて、第1流入口から第1流出口に流れる水の流量が調整される。第1弁体が第1弁口を塞ぐ位置まで駆動されると、止水状態となる。
【0010】
上記減圧部では、第2流入口から第2弁口を経て減圧部ケーシング内に水が流入する。第2流入口側の水圧が上昇すると、有底シリンダ内のピストンの第2流出口側の面(以下、外側面という)に作用する水圧が増大し、空気室内の空気圧に抗してピストンが有底シリンダの底側に移動する。これにより、一端がピストンの第2流入口側に固定された第2弁軸の他端側が有底シリンダの底部から突出し、第2弁体が第2弁口に向かって駆動される。その結果、第2弁口から減圧部ケーシング内への水の流量が減少し、第2流出口側の水圧が低下して、所定の設定減圧値に近づく。一方、第2流出口側の水圧が設定減圧値を下回ると、ピストンの外側面に作用する水圧が低下し、空気室内の空気圧によってピストンが第2流出口側に駆動される。これにより、第2弁軸が有底シリンダ内に没入し、第2弁体が第2弁口から退去し、減圧部ケーシング内への水の流量が増大して、第2流出口側の水圧が設定減圧値に近づく。
【0011】
この減圧部は、止水弁部の第1流入口及び第1流出口のいずれに連通接続してもよい。減圧部を第1流入口に連通する場合は、減圧部の第2流出口が止水弁部の第1流入口に連通する。一方、減圧部を第1流出口に連通する場合は、減圧部の第2流入口が止水弁部の第1流出口に連通する。
【0012】
このように、止水部ケーシングと、第1弁軸と、第1弁体とを備えて一般的な止水弁で形成できる止水部に、減圧部ケーシングと、有底シリンダと、ピストンと、第2弁軸と、第2弁体とを備える減圧部を組み合わせることにより、従来のようにコイルバネを用いるよりも簡単な構造で、少ない部品により、止水機能付減圧弁を構成することができる。また、一般的な止水弁で形成できる止水部と、略筒状の減圧部とを組み合わせることにより、従来の止水機能付減圧弁のように流路を隔ててピストン及びコイルバネの収容部分が突出して大型化することが無くて、小型の止水機能付減圧弁を構成することができる。
【0013】
一実施形態の止水機能付減圧弁は、上記減圧部の減圧部ケーシングは、上記第2流入口と第2弁口とを含む流入側部材と、上記第2流出口を含む流出側部材とが互いに螺合して形成され、上記有底シリンダは、径方向外側に突出すると共に軸方向に延在する突起を外周面に有し、上記有底シリンダの突起の外側面を減圧部ケーシングの内周面に嵌合させた状態で、上記有底シリンダの突起の両端を上記流入側部材と流出側部材とで挟持している。
【0014】
上記実施形態によれば、有底シリンダの突起を介して、有底シリンダを減圧部ケーシング内に安定して支持することができる。したがって、動作時の有底シリンダの振動を低減できる。
【0015】
一実施形態の止水機能付減圧弁は、上記減圧部ケーシングの流出側部材は、内周面が、流入側から流出側に向かって縮径するテーパ形状又は面取り形状を有する。
【0016】
上記実施形態によれば、減圧部ケーシングの内周面と有底シリンダの外周面との間の流路へ導かれた水を、少ない損失で第2流出口に送ることができる。
【0017】
本発明の減圧エレメントは、流入口と、流出口と、この流入口と流出口との間で開口した弁口とを有する略筒状のケーシングと、上記ケーシング内に収容され、底部が上記弁口を向くと共に開口が上記流出口に連通し、かつ、外周面と上記ケーシングの内周面との間に、上記弁口から流出口に連なる流路を形成する有底シリンダと、上記有底シリンダ内に摺動自在に嵌合すると共に、この有底シリンダ内の底部側に空気室を形成するピストンと、上記ピストンの空気室に臨む面に固定され、上記有底シリンダの底部を貫通して弁口側に突出する弁軸と、上記弁軸の先端に固定され、上記弁口に対して進退駆動される弁体とを備えることを特徴としている。
【0018】
上記構成によれば、流入口から弁口を経てケーシング内に水が流入し、流入口側の水圧が上昇すると、有底シリンダ内のピストンの流出口側の面(以下、外側面という)に作用する水圧が増大し、空気室内の空気圧に抗してピストンが有底シリンダの底側に移動する。これにより、弁軸が有底シリンダの底部から突出し、弁体が弁口に向かって駆動される。その結果、弁口からケーシング内への水の流量が減少し、流出口側の水圧が低下して、所定の設定減圧値に近づく。一方、流出口側の水圧が設定減圧値を下回ると、ピストンの外側面に作用する水圧が低下し、空気室内の空気圧によってピストンが流出口側に移動する。これにより、弁軸が有底シリンダ内に没入し、弁体が弁口から退去し、ケーシング内への水の流量が増大して、流出口側の水圧が設定減圧値に近づく。
【0019】
この減圧エレメントを、既存の止水弁の流出口や流入口に連なるように後付けすることにより、止水機能付減圧弁が得られる。この減圧エレメントは、ピストンを付勢するコイルバネを用いないので、構成が簡単であり、また、少ない部品点数で形成できる。さらに、ケーシングは、有底シリンダ及びピストンを収容する程度の大きさでよく、既存の流出管や流入管よりも径が多少大きい程度の寸法にできる。したがって、従来の止水機能付減圧弁のように、流路を隔ててピストン及びコイルバネの収容部分が突出して大型化することが無くて、小型の止水機能付減圧弁を形成できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、止水機能付減圧弁が止水部と減圧部とを含み、止水部では一般的な止水機能を奏する一方、減圧部では、第2流出口側の水圧に応じて有底シリンダ内の空気室の空気圧を利用してピストン及び第2弁体を駆動して調圧するように構成したので、従来よりも簡単な構造で、少ない部品により、止水機能付減圧弁を構成することができ、また、一般的な止水弁で形成できる止水部と、減圧部とを組み合わせることにより、従来よりも小型の止水機能付減圧弁を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の実施形態としての止水機能付減圧弁を示す断面図である。この止水機能付減圧弁1は、止水部2と減圧部3で形成されている。
【0022】
止水部2は、一般的な止水弁の構造を有し、流入口21(第1流入口)と流出口22(第1流出口)を有する止水部ケーシング20と、この止水部ケーシング20に螺合する第1弁軸としてのステム24と、このステム24の下端に固定された第1弁体25と、上記ステム24の上端に固定されたハンドル26とで大略構成されている。
【0023】
上記止水部ケーシング20は、球状側面を有する弁箱201の上部に、概ね円錐台状の側面を有するキャップ202が螺合して形成されている。弁箱201の下部に流入口21が形成されていると共に、側部に流出口22が形成されている。キャップ202には、中心軸に沿って貫通孔が設けられており、この貫通孔にステム24が螺合している。
【0024】
第1弁体25は、円盤状の板部251と、板部251の下側面から流入口21に向かって突出した軸部252と、板部251の上側面からステム24の下端を取り囲むように突出した周壁部253とを有する。第1弁体25の板部251の下側面にゴム製の弁パッキン254が装着され、この弁パッキン254を軸部252に螺合されたナット255で固定している。
【0025】
ステム24の下端には、径方向外側に突出する拡径部241が設けられており、この拡径部241の上側面に弁体止め242が係合している。この弁体止め242を第1弁体25の周壁部253の内周面に螺着して、第1弁体25をステム24に固定している。
【0026】
弁箱201内の流入口21と隣接する位置には、第1弁口203が開口した弁座204が設けられている。ハンドル26が操作者によって回転操作されるに伴い、ステム24が軸方向に駆動され、第1弁体25が弁座204の第1弁口203に対して進退駆動されるようになっている。
【0027】
図2は、減圧部3を示す分解斜視図である。この減圧部3は、流入口31と流出口32とを有する略筒状の減圧部ケーシング30と、この減圧部ケーシング30内に収容された有底シリンダ33と、この有底シリンダ33内に摺動自在に嵌合したピストン36と、このピストン36に一端が固定されて有底シリンダ33の底部34からその他端が突出する第2弁軸としてのロッド37と、このロッド37の先端に固定された第2弁体38とで概略構成されている。
【0028】
減圧部ケーシング30は、一端に流入口31(第2流入口)が形成され、かつ、他端が開口した筒状の流入側部材301と、この流入側部材301の開口部に螺合して流出口32(第2流出口)を有する流出側部材305とで形成されている。
【0029】
減圧部ケーシング30の流入側部材301は、流入口31を内側に有する小径部302と、この小径部302に連なり、有底シリンダ33を収容する大径部303とで形成されている。流入側部材301の小径部302と大径部303との間の段部の内側に、第2弁口304が開口している。この減圧部3の流入側部材301の小径部302が、止水部2の弁箱201の側部に螺合して、減圧部3の流入口31が止水部2の流出口22に連通している。
【0030】
減圧部ケーシング30の流出側部材305は、中央に開口306を有する蓋形状を有し、一端の外周部に、流入側部材301の大径部302に螺合する雄ネジが設けられている。開口306に連なる内周部に、ホースとの接続を行うホース接続管4が螺合する雌ネジが設けられている。この雌ネジの形成領域に隣接して流出口32が形成されている。この流出側部材305の内周面は、一端から流出口32にわたって球面形状に面取りが施されている。
【0031】
有底シリンダ33は、底部34が減圧部ケーシング30の第2弁口304に向くと共に、開口35が減圧部ケーシング30の流出口32に連通するように、減圧部ケーシング30内に取り付けられている。有底シリンダ33の外周面には、径方向外側に突出すると共に軸方向に延びる突起331が、周方向に等角度をおいた4つの角度位置に設けられている。この突起331の一端面332が、減圧部ケーシング30の流入側部材301の内周面に形成された段部に係止していると共に、突起331の他端面333が、減圧部ケーシング30の流出側部材305の一端面に押圧されている。また、有底シリンダ33の突起331の外側面334が、減圧部ケーシング30の流入側部材301の内周面に接している。これにより、有底シリンダ33が減圧部ケーシング30内に安定して支持されている。この有底シリンダ33の外周面と、減圧部ケーシング30の内周面との間に、流入口31から流出口32に連なる流路が形成されている。
【0032】
有底シリンダ33内に嵌合されたピストン36は、外周面の周方向溝内にOリング361を有し、このOリング361によって、有底シリンダ33の内周面とピストン36の外周面との間をシールしている。このピストン36により、有底シリンダ33内の底部34側に空気室39を形成している。ピストン36の空気室39に臨む内側面362に固定されたロッド37は、有底シリンダ33の底部34に形成された貫通孔に挿通され、減圧部ケーシング30の流入口31側に突出している。有底シリンダ33の貫通孔は、内周面の周方向溝内にOリング335を有し、このOリング335によって、有底シリンダ33の貫通孔の内周面とロッド37の外周面との間をシールしている。
【0033】
第2弁体38は、端面に凹部が形成された弁本体381と、この弁本体381の凹部内に収容されたゴム製の弁パッキン382とで形成されている。第2弁体38は、軸方向に貫通孔を有し、この貫通孔に挿通されたロッド37の先端部にナット383で固定されている。
【0034】
有底シリンダ33内にピストン36で区画されて形成される空気室39は、減圧部3の動作時に空気バネとして機能する。この空気バネのバネ定数を定める空気量は、以下のようにして設定している。すなわち、組み立て時において、有底シリンダ83の内周面の軸方向長さよりも短い長さに形成したロッド37をピストン36の内側面362に固定し、このロッド37及びピストン36を有底シリンダ83内に挿入する。続いて、ロッド37の先端が有底シリンダ33の底部34の貫通孔に達するまで、この貫通孔から有底シリンダ83内の空気を排出しつつロッド37及びピストン36を底部34側に送る。ロッド37が有底シリンダ33の貫通孔に達すると、ロッド37の外周面に有底シリンダ33の貫通孔のOリング335が密着し、このOリング335とピストン36のOリング361によって有底シリンダ33とピストン36との間が密閉されて、空気室39が形成される。このときの空気室39の容量が、大気圧での空気バネの空気量となり、この空気量に対応したバネ定数が設定される。すなわち、空気室39で形成される空気バネのバネ定数を、ロッド37の長さで設定する。有底シリンダ33内に空気室39を形成した後、ピストン36を更に底部34側に送ると、ロッド37の先端部が底部34から有底シリンダ33の外部に突出する。この突出したロッド37の先端部に第2弁体38を固定して組み立てが完了する。
【0035】
上記構成の止水機能付減圧弁1は、以下のように動作する。
【0036】
まず、止水部2のハンドル26が操作者によって回転操作され、弁座204の第1弁口203を閉じていた第1弁体25が上方に駆動され、第1弁口203が開いて弁箱201内に水が流入する。この水の流量は、第1弁口203からの第1弁体25の駆動距離に応じて定まる。弁箱201内に流入した水は、流出口22から流出し、減圧部3の流入口31を介して減圧部ケーシング30内に流入する。減圧部3では、流入口31から流入した水が、減圧部ケーシング30の内周面と有底シリンダ33との間の流路を通り、流出口32から流出する。流入口31側の水圧は、流路と有底シリンダ33の開口35を通してピストン36の外側面363に作用する。この水圧が所定の設定減圧値よりも高い場合、ピストン36が空気室39内の空気圧に抗して有底シリンダ33の底部34側に駆動され、ロッド37が有底シリンダ33の底部34から突出する側に駆動されて、第2弁体38が第2弁口304に向かって駆動される。これにより、第2弁口304から減圧部ケーシング30内への水の流量が減少し、流出口32側の水圧が低下して設定減圧値に近づく。一方、流出口32側の水圧が設定減圧値を下回ると、ピストン36の外側面363に作用する水圧が低下し、空気室39内の空気圧によってピストン36が流出口32側に駆動される。これにより、ロッド37が有底シリンダ内に没入し、第2弁体が第2弁口から退去し、減圧部ケーシング30内への水の流量が増大して、流出口32側の水圧が設定減圧値に近づく。流出口32側の水圧が設定減圧値に達した状態では、第2弁口304から流入した水が第2弁体38に作用する動圧と、ピストン36の外側面363に作用する水圧(流出口32側の水圧)と、空気室39の気圧とが釣り合っている。
【0037】
このように、本実施形態の止水機能付減圧弁1は、一般的な止水弁の構造を有する止水部2と、空気バネの機能を利用した減圧部3とで形成するので、従来のように止水を行う弁体533の開度を、流出口530側の水圧とコイルバネ539とを用いて調整するよりも、構造を簡単にでき、また、部品点数を少なくできる。また、一般的な止水機能を有する止水部2と、減圧機能を有する減圧部3とを分けるうえに、減圧部3を空気バネの機能を利用して動作させるので、従来の止水機能付減圧弁のように流路を隔ててピストン535及びコイルバネ539の収容部分が突出して大型化することが無い。したがって、小型の止水機能付減圧弁が得られる。
【0038】
また、減圧部3は、略筒状の減圧部ケーシング30内に有底シリンダ33を収容し、この減圧部ケーシング30と有底シリンダ33との間に流路を形成するので、有底シリンダ33に連結されて減圧機能を発揮する部品を、流路に沿ってコンパクトに配置することができる。したがって、この減圧部3は、一般的な止水弁の流出側に接続される流出管よりも径が多少大きい程度の大きさで構成でき、従来の止水機能付減圧弁よりも効果的に小型化を行うことができる。
【0039】
また、本実施形態の止水機能付減圧弁は、空気室39の空気バネの機能により減圧を行う減圧部3を、止水部2と別体に形成したので、止水機能付減圧弁の不使用時に空気室39に過剰な圧力が作用することを防止できる。すなわち、従来の止水機能付減圧弁のコイルバネ539を空気バネに置き換えた場合を想定すると、不使用時においてもコイルバネ539は圧縮されているから、空気バネも常に圧縮状態に置かれることになる。そうすると、空気室内が常に大気圧以上の圧力になり、空気室内の空気が漏れて、空気バネのバネ定数が変化して、減圧機能を損なう可能性がある。一方、本実施形態の止水機能付減圧弁は、減圧部3を止水部2よりも下流側に配置したので、減圧部3の空気室39を不使用時には大気圧にすることができ、空気室39からの空気の漏れを少なくして、減圧機能を長期にわたって安定して発揮することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では止水部2の流出口22に減圧部3の流入口31を連通させて、止水部2で流量を調節した後に減圧部3で水圧を調節したが、止水部2の流入口21に減圧部3の流出口32を連通させ、減圧部3で水圧を調節した後に、止水部2で流量を調節してもよい。
【0041】
また、止水部2と減圧部3とを組み合わせて止水機能付減圧弁1を構成したが、止水部3とは別個に、減圧部3と同一構成の減圧エレメントを作製して使用してもよい。この減圧エレメントを既存の止水弁に後付けすることにより、既存の止水弁に減圧機能を付与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、例えば消火栓装置に用いられる止水機能付減圧弁及び減圧エレメントに関し、従来よりも簡単な構造で、少ない部品により、止水機能付減圧弁を構成することができるので、消火栓設備等に用いる場合はもちろんのこと、減圧エレメントのみを単独で用いて、減圧または、流量制限の必要となる配水管等に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態の止水機能付減圧弁を示す断面図である。
【図2】減圧部を示す分解斜視図である。
【図3】従来の止水機能付減圧弁を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 止水機能付減圧弁
2 止水部
3 減圧部
20 止水部ケーシング
21 止水部の流入口
21 止水部の流出口
24 ステム
25 第1弁体
26 ハンドル
30 減圧部ケーシング
31 減圧部の流入口
32 減圧部の流出口
33 有底シリンダ
34 有底シリンダの底部
36 ピストン
37 ロッド
38 第2弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
止水部と減圧部とを含んで形成された止水機能付減圧弁であって、
上記止水部は、
第1流入口と、第1流出口と、この第1流入口と第1流出口との間で開口した第1弁口とを有する止水部ケーシングと、
上記止水部ケーシングに螺合し、ハンドルの操作に伴って軸方向に移動可能な第1弁軸と、
上記第1弁軸に連結され、上記第1弁口に対して進退駆動される第1弁体とを備え、
上記減圧部は、
上記止水部の第1流入口又は第1流出口に連なり、第2流入口と、第2流出口と、この第2流入口と第2流出口との間で開口した第2弁口とを有する略筒状の減圧部ケーシングと、
上記減圧部ケーシング内に収容され、底部が上記第2弁口側を向くと共に、開口が上記第2流出口に連通し、かつ、外周面と上記減圧部ケーシングの内周面との間に、上記第2弁口から第2流出口に連なる流路を形成する有底シリンダと、
上記有底シリンダ内に摺動自在に嵌合すると共に、この有底シリンダ内の底部側に空気室を形成するピストンと、
上記ピストンの空気室に臨む内側面に一端が固定され、他端が上記有底シリンダの底部を貫通して弁口側に突出する第2弁軸と、
上記第2弁軸の前記他端に固定され、上記第2弁口に対して進退駆動される第2弁体とを備えることを特徴とする止水機能付減圧弁。
【請求項2】
請求項1に記載の止水機能付減圧弁において、
上記減圧部の減圧部ケーシングは、上記第2流入口と第2弁口とを含む流入側部材と、上記第2流出口を含む流出側部材とが互いに螺合して形成され、
上記有底シリンダは、径方向外側に突出すると共に軸方向に延在する突起を外周面に有し、
上記有底シリンダの突起の外側面を減圧部ケーシングの内周面に嵌合させた状態で、上記有底シリンダの突起の両端を上記流入側部材と流出側部材とで挟持していることを特徴とする止水機能付減圧弁。
【請求項3】
請求項2に記載の止水機能付減圧弁において、
上記減圧部ケーシングの流出側部材は、内周面が、流入側から流出側に向かって縮径するテーパ形状又は面取り形状を有することを特徴とする止水機能付減圧弁。
【請求項4】
流入口と、流出口と、この流入口と流出口との間で開口した弁口とを有する略筒状のケーシングと、
上記ケーシング内に収容され、底部が上記弁口側を向くと共に開口が上記流出口に連通し、かつ、外周面と上記ケーシングの内周面との間に、上記弁口から流出口に連なる流路を形成する有底シリンダと、
上記有底シリンダ内に摺動自在に嵌合すると共に、この有底シリンダ内の底部側に空気室を形成するピストンと、
上記ピストンの空気室に臨む面に一端が固定され、他端が上記有底シリンダの底部を貫通して弁口側に突出する弁軸と、
上記弁軸の前記他端に固定され、上記弁口に対して進退駆動される弁体と
を備えることを特徴とする減圧エレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−256104(P2008−256104A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99220(P2007−99220)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(396012067)株式会社北浦製作所 (8)
【Fターム(参考)】