説明

歩行型作業機

【課題】移動作業及び移動作業以外の各種作業の、両方において、作業性が高い歩行型作業機を提供する。
【解決手段】歩行型作業機10は、動力源12L,12Rと、走行部13L,13Rと、操作ハンドル14L,14Rと、作業者が操作ハンドルと共に握っているときだけオン位置に変位して走行部を走行可能なオン状態に切替操作する走行準備レバー41と、オン位置にある走行準備レバーをそのままオン位置に保持するように操作するレバー保持操作機構50と、レバー保持操作機構によって走行準備レバーをオン位置に保持していることを検知するオン位置検知部61と、オン位置検知部の検知を受けて走行部の走行速度が制限速度を超えないように制限する速度制限部とを備える。速度制限部は制御部75に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が歩行しつつ操作ハンドルを操縦する形式の歩行型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行型作業機には、動力によって走行するものがある。この動力走行式の歩行型作業機には、目的地まで移動するとともに(第1作業)、目的地で種々の作業をするとき(第2作業)にも、用いられるものがある。例えば、農地で防虫作業や収穫作業を行うときには、歩行型作業機を移動させながら作業を行えることが好ましい。近年、歩行型作業機の開発が進められている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に示す歩行型作業機(除雪機)は、操作ハンドルと同時に握ることにより走行を可能にする走行準備レバーを備えている。走行準備レバーから手を放すことにより、作業機を停止させることができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す歩行型作業機では、作業者が運転しているときに、運転以外の作業を行いたくなった場合には、その都度、走行準備レバーから手を放さなければならない。つまり、運転以外の作業を行う度に歩行型作業機を停止させなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−336238公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、移動作業及び移動作業以外の各種作業の、両方において、作業性が高い歩行型作業機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明では、機体に動力源と、この動力源から伝達された動力によって走行する走行部と、操作ハンドルと、作業者が前記操作ハンドルと共に握っているときだけオン位置に変位して前記走行部を走行可能なオン状態に切替操作する走行準備レバーとを備え、前記操作ハンドルを作業者が歩行しつつ操縦する歩行型作業機において、前記オン位置にある前記走行準備レバーを、そのままオン位置に保持するように操作するレバー保持操作機構と、このレバー保持操作機構によって前記走行準備レバーを前記オン位置に保持していることを検知するオン位置検知部と、このオン位置検知部の検知を受けて、前記走行部の走行速度を、予め設定されている制限速度を超えないように制限する速度制限部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、走行準備レバーとレバー保持操作機構とを組み合わせることにより、作業者の作業内容に応じて使い勝手の良い歩行型作業機とすることができる。つまり、作業者が走行準備レバーを操作ハンドルと共に握っているときだけオン位置に変位させる通常モードと、レバー保持操作機構によって走行準備レバーをオン位置に保持する保持モードとに、ワンタッチ操作によって、簡単に切り替えることができる。しかも、走行準備レバーがオン位置に保持されているか否かを、目視によって明確に且つ的確に確認することができる。
【0009】
詳しくは、通常モードでは、歩行型作業機を移動するとき、例えば作業現場と移動目的地との間を移動するときに、作業者が走行準備レバーを操作ハンドルと共に握っているときだけオン位置に変位させることによって、走行部を走行させることができる。この場合には、歩行型作業機を単に移動するだけであるから、走行速度は高速でもよい。このため、移動作業の効率を高めることができる。
【0010】
一方、保持モードでは、作業者が走行準備レバーから手を放したまま、歩行型作業機を低速走行させながら、防虫作業等の防除作業、収穫作業、収穫物等の品物を積み込みや積み降ろし作業等、移動作業以外の各種作業をすることができる。このため、作業性が向上し、作業効率を高めることができる。しかも、この場合には、走行準備レバーがオン位置に保持されていることを、オン位置検知部によって検知することにより、歩行型作業機の走行速度を、予め設定されている制限速度を超えないように制限することができる。このため、走行速度が作業者の意図を超えた高速になることはない。作業者は安心して作業に専念することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る歩行型作業機の斜視図である。
【図2】図1に示された操作部の斜視図である。
【図3】図2に示された方向速度レバーの概念図である。
【図4】図2に示された方向速度レバーとレバー保持操作機構の側面図である。
【図5】図4に示された方向速度レバーとレバー保持操作機構の作用図である。
【図6】図4に示された方向速度レバーとレバー保持操作機構の斜視図である。
【図7】図1に示された歩行型作業機の模式図兼制御系統図である。
【図8】図8に示された制御部の制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0013】
実施例に係る歩行型作業機について説明する。なお、図中、Frは前側、Rrは後側、Leは左側、Riは右側を示している。
【0014】
図1に示されるように、歩行型作業機10は、機体11に左右の電動モータ12L,12Rと左右の走行部13L,13Rと左右の操作ハンドル14L,14Rと操作部15とを備えている。
【0015】
機体11は、例えば上部に幅広の平坦な荷台11aを有しており、収穫物等の各種の物を載せることができる。左右の電動モータ12L,12Rは、左右の前輪21L,21Rを個別に駆動するための動力源である。左の走行部13Lは、左の電動モータ12Lから伝達された動力によって走行するものであり、例えば、左の前輪21Lと左の後輪22Lとからなる。右の走行部13Rは、右の電動モータ12Rから伝達された動力によって走行するものであり、例えば、右の前輪21Rと右の後輪22Rとからなる。より具体的に説明すると、左右の前輪21L,21Rは、電動モータ12L,12Rによってチェーン23L,23Rを介して駆動される駆動車輪である。一方、左右の後輪22L,22Rは従動車輪である。
【0016】
左右の操作ハンドル14L,14Rは、機体11の後部から後上部へ延びており、それぞれの後端にグリップ14La,14Raを有している。なお、左右の操作ハンドル14L,14Rは、機体11の左右一方に寄って位置している。
【0017】
このような歩行型作業機10(以下、単に「作業機10」という。)は、自走可能であるとともに、作業者が歩行しつつ操作ハンドル14L,14Rを操縦する形式の自走式歩行型作業機であり、例えば農地で収穫した収穫物を荷台11aに載せて運搬することができる。
【0018】
図1及び図2に示されるように、操作部15は左右のグリップ14La,14Raの近傍において、左右の操作ハンドル14L,14Rの間に位置している。この操作部15は、左右の操作ハンドル14L,14Rの間に取り付けられた操作ボックス31と、左のグリップ14Laの近傍で左の操作ハンドル14Lに取り付けられた左の旋回操作レバー35Lと、右のグリップ14Raの近傍で右の操作ハンドル14Raに取り付けられた右の旋回操作レバー35Rと、走行準備レバー41と、レバー保持操作機構50とからなる。
【0019】
操作ボックス31は、メインスイッチ32及び方向速度レバー33を備えている。メインスイッチ32は、作業機10全体の主電源スイッチである。
【0020】
方向速度レバー33は、左右の電動モータ12L,12R(図1参照)の回転を制御するための操作部材である。図3に示されるように、方向速度レバー33(「前後進速度調節レバー33」とも言う)は、作業者の手で、矢印Ad,Baの如く前後に往復させることができ、「中立範囲」より「前進」側へ倒せば作業機10(図1参照)を前進させることができ、且つ「前進」領域においては、Lfが低速前進、Hfが高速前進となるように、速度制御も行える。同様に、「中立範囲」より「後進」側へ倒せば作業機10を後進させることができ、且つ「後進」領域においては、Lrが低速後進、Hrが高速後進となるように、速度制御も行える。
【0021】
この例では、図3の左端に付記した通りに、後進の最高速が0V(ボルト)、前進の最高速が5V、中立範囲が2.3V〜2.7Vになるようにポテンショメータ34でポジションに応じた電圧を発生させる。1つのレバーで前後の方向と高低速の速度制御とを設定できるので、方向速度レバー33と名付けた。ここで、方向速度レバー33が「中立範囲」に位置するときに、中立位置にあるといい、方向速度レバー33が「前進」領域に位置するときに、前進位置にあるといい、方向速度レバー33が「後進」領域に位置するときに、後進位置にあるということにする。
【0022】
図2に示されるように、左右の旋回操作レバー35L,35Rは、左右のグリップ14La,14Raを握った手でそれぞれ操作する旋回操作部材であり、それぞれ対応する旋回スイッチ36L,36R(図7参照)に作用する機構である。これら左右の旋回操作レバー35L,35Rは、リターンスプリングの引き作用により、図に示すフリー状態になれば旋回スイッチ36L,36Rはオフになる。作業者の左手で左の旋回操作レバー35Lを握ってグリップ14L側に上げれば、左の旋回スイッチ36Lはオンとなる。この結果、作業機10は左旋回走行をする。右の旋回スイッチ36Rについても同様である。このように、左右の旋回操作レバー35L,35Rが握られているか否かは旋回スイッチ36L,36Rで検出することができる。
【0023】
図2に示されるように、走行準備レバー41(クラッチレバー41)及びレバー保持操作機構50は、左右の操作ハンドル14L,14Rの一方に、まとめて取り付けられている(図2では、左のグリップ14Laの近傍で左の操作ハンドル14Lに取り付けられている)。走行準備レバー41は、作業者が一方の操作ハンドル(図2では左の操作ハンドル14L)と共に握っているときだけオン位置に変位して、左右の走行部13L,13Rを走行可能なオン状態に切替操作するものである。
【0024】
より詳しく述べると、図4に示されるように、左の操作ハンドル14Lは、グリップ14Laの近傍にブラケット42を固定している。走行準備レバー41は、ブラケット42に支持ピン43によって上下スイング可能に支持されるとともに、リターンスプリング(図示せず)によってグリップ14Laから離れる方向に付勢されている。この走行準備レバー41は、左の操作ハンドル14Lに取り付けられている走行準備スイッチ44(リミットスイッチ44)に作用する走行準備部材であり、リターンスプリングの引き作用により、図4に示されるフリー状態(オフ位置)になれば走行準備スイッチ44はオフになる。作業者が左手で走行準備レバー41を握って、図5に示されるようにグリップ14La側に下げれば、走行準備スイッチ44はオンとなる。
【0025】
図5に示されるように、レバー保持操作機構50は、オン位置にある走行準備レバー41を、そのままオン位置に保持するように操作するものである。より詳しく述べると、図4及び図6に示されるように、レバー保持操作機構50は、上記支持ピン43と、保持操作レバー51と、保持アーム52と、ばね掛け部53と、引っ張りばね54(リターンスプリング54)とからなる。
【0026】
保持操作レバー51は基端部51aを、左の操作ハンドル14Lのブラケット42に、支持ピン43によって前後スイング可能に支持されている。保持操作レバー51は、支持ピン43によって支持される基端部51aと、この基端部51aから上方へ延びた第1垂直部51bと、この第1垂直部51bの上端から操作ボックス31の幅方向の中央へ向かって延びた水平部51cと、この水平部51cの先端から再び上方へ延びた第2垂直部51dと、この第2垂直部51dの上端に有したグリップ51eとからなる。第1垂直部51bに対して、第2垂直部51dは平行であり且つ同方向に延びている。
【0027】
保持アーム52は、走行準備レバー41の真上に位置するように、保持操作レバー51の水平部51cから後方へ延び、その先端に押し部52aを有している。つまり、保持アーム52は走行準備レバー41に沿いながら左のグリップ14Laへ向かって延びており、作業機10を上から見たときに、走行準備レバー41に重なるように位置する。押し部52aは、走行準備レバー41の長手中央の部位を上から押すことが可能である。
【0028】
ばね掛け部53(第1ばね掛け部53)は、第1垂直部51bに固定された平面視略L字状の部材であり、一端に引掛け孔53aを有している。また、左の操作ハンドル14Lにもばね掛け部55(第2ばね掛け部55)を有している。第1・第2ばね掛け部53,55の各引掛け孔53a,55a間に、引っ張りばね54の両端を掛けることにより、保持操作レバー51を図4に示す中立位置Ne方向へ付勢することができる。
【0029】
ここで、図4に示されるように、支持ピン43と第2ばね掛け部55の引掛け孔55aとを通る直線Nsのことを、支点中心線Nsということにする。保持操作レバー51が前方の中立位置Neに位置しているときには、第1ばね掛け部53の引掛け孔53aは支点中心線Nsよりも前方に位置しており、第1ばね掛け部53はブラケット42に接した状態にある。このため、保持操作レバー51は引っ張りばね54によって中立位置Neに安定した状態で維持されている。
【0030】
その後、図5に示されるように、保持操作レバー51を後方へオン保持位置Hoまでスイング操作すると、スイング途中で第1ばね掛け部53の引掛け孔53aが支持ピン43の位置を超える、いわゆる支点越えする。この結果、保持操作レバー51が後方のオン保持位置Hoに位置しているときには、第1ばね掛け部53の引掛け孔53aは支点中心線Nsよりも後方に位置しており、保持アーム52の押し部52aは走行準備レバー41を上からグリップ14Laに押し付けた状態になる。このため、保持操作レバー51は引っ張りばね54によってオン保持位置Hoに安定した状態で維持される。
【0031】
さらに、図4及び図6に示されるように、左の操作ハンドル14Lは、オン位置検知部61を取り付けたものである。このオン位置検知部61は、レバー保持操作機構50によって走行準備レバー41をオン位置に保持していることを検知するものであり、例えばリミットスイッチからなる。第1ばね掛け部53は、オン位置検知部61に作用する作用部53bを有している。
【0032】
保持操作レバー51は、引っ張りばね54の引き作用により、図4に示される前方の中立位置Neに位置しているときには、作用部53bがオン位置検知部61に作用しているので、オン位置検知部61はオン(on)状態にある。
【0033】
その後、作業者が左手で保持操作レバー51を握って、図5に示されるように走行準備レバー41側、つまり後方にスイングさせれば、オン位置にある走行準備レバー41を、そのままオン位置に保持する。この場合には、作用部53bがオン位置検知部61から離れるので、オン位置検知部61はオフ(off)状態になる。
【0034】
図7に示されるように、機体11(図1参照)はエンジン71と発電機72とバッテリ73と左右の速度検出部74L,74Rと制御部75と左右のモータ駆動部76L,76Rとを備えている。発電機72はエンジン71に駆動されて発電し、バッテリ73に充電するものである。左右の速度検出部74L,74Rは、左右の走行部13L,13Rの走行速度Ls,Rsを個別に検出するものである。この走行速度Ls,Rsは、例えば左右の電動モータ12L,12Rの回転速度を個別に検出することによって得られる。
【0035】
制御部75は、エンジン71及び発電機72を制御するとともに、左右のモータ駆動部76L,76Rを介して左右の電動モータ12L,12Rを個別に回転制御する構成であり、例えばマイクロコンピュータによって構成される。つまり、制御部75は、メインスイッチ32のオンによって制御を開始し、走行準備レバー41のポテンショメータ34、旋回スイッチ36L,36R、走行準備スイッチ44、オン位置検知部61及び左右の速度検出部74L,74Rの各信号を受けて、左右のモータ駆動部76L,76Rを介して左右の電動モータ12L,12Rを個別に回転制御する。この制御部75は、操作ボックス31は内部に配置されることによって、機体11(図1参照)に備えている。
【0036】
次に、制御部75(図7参照)をマイクロコンピュータとした場合の制御フローについて、図1〜図7を参照しつつ、図8に基づき説明する。
【0037】
メインスイッチ32がオンになると、制御部75は先ず初期設定をする(ステップS01)。具体的には新フラグFF及び旧フラグRFの値を共に初期値「0」に設定する。新フラグFFは、現在の走行速度が速度制限中であるか否かを示すフラグである。旧フラグRFは、直前の走行速度が速度制限中であったか否かを示すフラグである。
【0038】
次に、制御部32は各スイッチ信号及び検出信号を読み込む(ステップS02)。次に、走行準備スイッチ44の信号に基づいて、走行準備レバー41がオン位置にあるか否かを判断する(ステップS03)。作業者によって走行準備レバー41が握られている場合には(図5参照)、走行準備スイッチ44がオンである。この場合には、走行準備レバー41がオン位置にあると判断して、ステップS04に進む。一方、走行準備レバー41がオフ位置にある場合には(図4参照)、ステップS06に進む。
【0039】
次のステップS04では、方向速度レバー33の操作方向及び操作量Opの信号を読み込む。この操作方向及び操作量Opについては、ポテンショメータ34の信号によって得られる。
【0040】
次のステップS05では、方向速度レバー33の操作方向が「前進位置」又は「後進位置」にあるか否かを判断する。ここで「中立位置」にあると判断した場合には、ステップS06に進む。一方、「前進位置」又は「後進位置」にあると判断した場合には、ステップS11に進む。
【0041】
次のステップS06では電動モータ12L,12Rを停止させる。このように、走行準備レバー41がオフ位置にあるという条件と、方向速度レバー33中立位置にあるという条件の、少なくとも1つの条件を満足しているときには、電動モータ12L,12Rを停止状態にする。
【0042】
次に、メインスイッチ32のスイッチ信号を読み込む(ステップS07)。次に、メインスイッチ32がオン状態を維持しているか否かを判断する(ステップS08)。ここでメインスイッチ32がオン状態にあると判断した場合には、ステップS02に戻って制御を繰り返す。一方、メインスイッチ32がオフになったと判断した場合には、電動モータ12L,12Rを停止させ、または停止状態を維持させ(ステップS09)、次にエンジン71を停止させた後に(ステップS10)、この図8に示された制御フローによる制御を終了する。
【0043】
上記ステップS05において、方向速度レバー33の操作方向が「前進位置」又は「後進位置」にあると判断した場合には、次に、方向速度レバー33の操作量Opから、電動モータ12L,12Rの目標走行速度Tsを求める(ステップS11)。操作量Opと目標走行速度Tsとの対応関係に関する情報(マップや演算式)は、予めメモリに記憶されており、目標走行速度Tsは、この情報に基づいて決定される。
【0044】
次に、旧フラグRFの値を新フラグFFの値に置換する(ステップS12)。つまり、このステップS12までの制御状態を直前の制御状態として、次のステップ以降の制御状態を現在の制御状態として処理する。但し、初回時は、ST10で設定された初期値「0」に基づいて処理されるため、旧フラグRFの値に変更はない。
【0045】
次に、走行部13L,13Rの走行速度に速度制限が無い状態であるか否かを(ステップS13)。図4に示されるように、保持操作レバー51が中立位置Neにある場合には、オン位置検知部61はオン(on)信号を発している。このオン(on)信号を受けている場合には、速度制限が無い状態であると判断してステップS14に進む。ステップS14では、新フラグFFの値を「0」にリセットした後に、直接にステップS18に進む。
【0046】
一方、図5に示されるように、保持操作レバー51がオン保持位置Hoにある場合には、オン位置検知部61はオフ(off)信号を発している。ステップS13においてオフ(off)信号を受けている場合には、速度制限が有る状態であると判断してステップS15に進む。ステップS15では、新フラグFFの値を「0」から「1」へ反転させた後に、ステップS16に進む。
【0047】
ステップS16では、電動モータ12L,12Rの目標走行速度Tsが、予め設定されている制限速度TLを超えていないか(制限速度TL以下であるか)否かを判断する。この制限速度TLの値は、作業者が操作ハンドル14L,14Rから手を放した状態で、作業機10を走行させながら、他の作業を行うことが可能な速度、例えば0.5〜1km/h程度の低速に設定される。ここで、目標走行速度Tsが制限速度TL以下であると判断した場合には、直接にステップS18に進む。一方、目標走行速度Tsが制限速度TLを超えていると判断した場合には、ステップS17に進み、目標走行速度Tsの値を制限速度TLに制限した(Ts=TL)後に、ステップS18に進む。
【0048】
このように、制御部75は、図5に示されるように、レバー保持操作機構50によって走行準備レバー41をオン位置に保持していることを、オン位置検知部61によって検知した(オン位置検知部61がオフ)ことを受け、つまりステップS13で「NO」の判断したことを受けて、目標走行速度Tsを制限速度TLを超えないように制限する(ステップS17)。
【0049】
ステップS18では、新フラグFFが「0」で且つ旧フラグRFが「1」であるか、つまり「FF=0 且つ RF=1」であるか否かを判断する。速度制限が有る制御状態(ステップS13で「NO」)から、速度制限が無い制御状態(ステップS13で「YES」)に変わった場合に、「FF=0 且つ RF=1」であると判断する。なぜなら、制御を繰り返したときに、上記ステップS12においてフラグRFの値が「1」から「0」に変わるからである。
【0050】
ステップS18で「FF=0 且つ RF=1」では無いと判断した場合には、ステップS19に進んで、電動モータ12L,12Rの回転制御を実行した後に、上記ステップS07に戻って制御を繰り返す。つまり、左右の走行部13L,13Rの走行速度(実際の走行速度、実走行速度)Ls,Rsが目標走行速度Tsとなるように、電動モータ12L,12Rの回転速度を制御する。目標走行速度Tsが制限速度TLを超えないように制限されるので、この結果、走行速度Ls,Rsは制限速度TLを超えないように制限される。
【0051】
一方、ステップS18で「FF=0 且つ RF=1」であると判断した場合には、ステップS20に進んで、電動モータ12L,12Rを停止させる。図5に示すレバー保持操作機構50によって走行準備レバー41をオン位置に保持している状態から、図4に示すように保持している状態を解除したときには、「FF=0 且つ RF=1」であるという条件(保持解除条件)を満足する。この保持解除条件を満足した直後には、ステップS13において、直前の「速度制限が有る制御状態」から、現在の「速度制限が無い制御状態」に反転する。このときに、作業者の意図しない走行状態(例えば走行速度が急増)とならないようにするために、電動モータ12L,12Rを自動的に停止させることにした。作業者が走行準備レバーを握っているか否かにかかわらず、作業機10は自動的に停止する。従って、作業者はレバー保持操作機構50と走行準備レバー41の両方を操作する必要がない。操作性が高いので、作業者の操作負担を軽減することができる。
【0052】
次に、メインスイッチ32のスイッチ信号を読み込む(ステップS21)。次に、メインスイッチ32がオン状態を維持しているか否かを判断する(ステップS22)。ここでメインスイッチ32がオン状態にあると判断した場合には、ステップS20に戻って電動モータ12L,12Rの停止制御を続ける。一方、メインスイッチ32がオフになったと判断した場合には、電動モータ12L,12Rを停止させ、または停止状態を維持させ(ステップS09)、次にエンジン71を停止させた後に(ステップS10)、この図8に示された制御フローによる制御を終了する。
【0053】
以上の説明から明らかなように、上記ステップS18で「FF=0 且つ RF=1」であるという条件(保持解除条件)を満足した場合には、メインスイッチ32を一旦オフにするまで、この保持解除条件が維持される。この保持解除条件を解除するには、メインスイッチ32を一旦オフにした後に、再びオンにする。この結果、ステップS01で、新フラグFF及び旧フラグRFが初期設定(リセット)される。
【0054】
ここで、ステップS13、S16及びS17の集合は、速度制限部75aを構成する。この速度制限部75aは、図5に示されるように、レバー保持操作機構50によって走行準備レバー41をオン位置に保持していることを、オン位置検知部61によって検知した(オン位置検知部61がオフ)ことを受けて、目標走行速度Ts、つまり走行部13L,13Rの走行速度Ls,Rsを予め設定されている制限速度TLを超えないように制限する。
【0055】
以上の説明をまとめると、次の通りである。
本実施例では、走行準備レバー41とレバー保持操作機構50とを組み合わせることにより、作業者の作業内容に応じて使い勝手の良い作業機10とすることができる。つまり、作業者が走行準備レバー41を操作ハンドル14L,14Rと共に握っているときだけオン位置に変位させる通常モードと、レバー保持操作機構50によって走行準備レバー41をオン位置に保持する保持モードとに、ワンタッチ操作によって簡単に切り替えることができる。しかも、走行準備レバー41がオン位置に保持されているか否かを、目視によって明確に且つ的確に確認することができる。
【0056】
詳しくは、通常モードでは、作業機10を移動するとき、例えば作業現場と移動目的地との間を移動するときに、作業者が走行準備レバー41を操作ハンドル14L,14Rと共に握っているときだけオン位置に変位させることによって、走行部13L,13Rを走行させることができる。この場合には、作業機10を単に移動するだけであるから、走行速度Ls,Rsは高速でもよい。このため、移動作業の効率を高めることができる。
【0057】
一方、保持モードでは、作業者が走行準備レバー41から手を放したまま、作業機10を低速走行させながら、防除作業、収穫作業、収穫物等の品物を積み込みや積み降ろし作業等、移動作業以外の各種作業をすることができる。このため、作業性が高め、作業効率を高めることができる。しかも、この場合には、走行準備レバー41がオン位置に保持されていることを、オン位置検知部61によって検知することにより、作業機10の走行速度Ls,Rsを、予め設定されている制限速度TLを超えないように制限することができる。このため、走行速度Ls,Rsが作業者の意図を超えた高速になることはない。作業者は安心して作業に専念することができる。
【0058】
なお、本発明では、歩行型作業機10は作業者の作業内容に応じて走行速度を制限することが可能な構成であればよく、四輪車に限定されるものではない。
また、動力源は電動モータ12L,12Rに限定されるものではなく、例えばエンジン71であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の歩行型作業機10は、作業者が走行準備レバー41から手を放して低速走行をさせながら、防除作業、収穫作業、収穫物等の品物を積み込みや積み降ろし作業等の各種作業をするとともに、移動目的地まで高速で移動する作業機に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0060】
10…歩行型作業機、11…機体、12L,12R…動力源(電動モータ)、13L,13R…走行部、14L,14R…操作ハンドル、41…走行準備レバー、43…支持ピン、50…レバー保持操作機構、51…保持操作レバー、52…保持アーム、54…引っ張りばね(リターンスプリング)、61…オン位置検知部、75…制御部、75a…速度制限部、Ls,Rs…走行部の走行速度、TL…制限速度、Ts…目標走行速度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に動力源と、この動力源から伝達された動力によって走行する走行部と、操作ハンドルと、作業者が前記操作ハンドルと共に握っているときだけオン位置に変位して前記走行部を走行可能なオン状態に切替操作する走行準備レバーとを備え、前記操作ハンドルを作業者が歩行しつつ操縦する歩行型作業機において、
前記オン位置にある前記走行準備レバーを、そのままオン位置に保持するように操作するレバー保持操作機構と、
このレバー保持操作機構によって前記走行準備レバーを前記オン位置に保持していることを検知するオン位置検知部と、
このオン位置検知部の検知を受けて、前記走行部の走行速度を、予め設定されている制限速度を超えないように制限する速度制限部とを備えていることを特徴とする歩行型作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−223914(P2011−223914A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96150(P2010−96150)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】