説明

歯牙貼付用製品及び口腔ケア物質の供給方法

【解決手段】 1歯又は複数の歯牙表面に貼ることで、歯牙又は歯茎に口腔ケア物質を供給するための歯牙貼付用製品であって、(a)水不溶性の支持体として、厚さ0.01〜3mmのコラーゲンフィルム又はコラーゲンシートと、(b)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤、口臭予防・除去・隠蔽剤、歯肉炎予防・改善剤、歯周病予防・改善剤から選ばれる1種又は2種以上の有効成分、薬用成分又は機能性素材を含む口腔ケア組成物とを備えたことを特徴とする歯牙貼付用製品。
【効果】 本発明の歯牙貼付用製品によれば、歯牙へのフィット性、固定性に優れ、着用中に違和感がなく、柔軟性に富み、着用中のズレ、剥離を防いで長時間の貼付を可能にして、しかも有効成分、薬用成分又は機能性素材の漏出・唾液の浸入が防止されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯面への密着性を向上させ、更に薬物の漏出・唾液の浸入を顕著に防止することにより、歯牙の審美性を向上させる効果、あるいは歯牙又は歯周疾患の予防及び治療、口臭の予防・除去・隠蔽効果を向上させた歯牙貼付用製品、及び口腔ケア物質の供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯牙に対して有効成分、薬用成分又は機能性素材を作用させる手段として、歯磨剤、含漱剤、クリーム、錠剤、ガムを適用するといった手段がとられてきた。しかしながら、歯磨剤や含漱剤の場合には、吐き出した後では口腔内の有効成分、薬用成分又は機能性素材の量が不十分であり、クリームは使用性が悪く、固形インサートの場合には苦痛を伴ったりするといった問題点があった。また、いずれの場合にも、唾液の混入によって有効成分、薬用成分又は機能性素材の濃度低下や成分の漏出・溶出がおこり、効果が低下するだけでなく、不快な味がする場合があるという問題点があった。
【0003】
一方、唾液の影響を受けずに薬剤を長時間歯牙に適用させて、有効成分、薬用成分又は機能性素材の効果を十分に引き出し、高い機能を発揮させる方法として、有効成分、薬用成分又は機能性素材を含む組成物を、水不溶性の薄膜の上に保持させた歯牙用貼付剤に関する技術が提案されている。例えば、水溶性粘着高分子及びフッ素を含む組成物と、水不溶不透過性で可撓性を有する支持体からなるフッ素適用歯牙貼付材(特許文献1:特開昭55−83709号公報)、ドライフィルム、ポリカルボン酸と酢酸ビニルからなる粘着層、支持体としてポリエチレンからなる歯牙用貼付剤(特許文献2:特開昭63−54318号公報)、アクリル系共重合体と水不溶性セルロースからなる粘着層、支持体として高分子フィルムや不織布、アルミ箔等からなる歯牙用貼付剤(特許文献3:特開昭63−160649号公報)、可撓性のある密閉性の支持体に、隙間のある薬剤投与層を組み合わせた歯牙貼付剤(特許文献4:国際公開第95/16488号パンフレット)などがあり、特定の有効成分、薬用成分又は機能性素材との組み合わせにより歯牙の審美性を著しく向上する方法として、フィチン酸と水溶性高分子を配合し、凍結乾燥させた歯牙タバコヤニ除去用のドライフィルム(特許文献5:特開昭56−18192号公報)、ポリリン酸とアニオン性界面活性剤又は低級アルコールを含む組成物を、水不溶性の歯牙保持用具と併用する歯の美白用セット(特許文献6:特開2000−281548号公報)、ポリリン酸と特定の香料成分を含む組成物を、水不溶性の歯牙保持用具と併用する歯の美白用セット(特許文献7:特開2001−247438号公報)、過酸化物と触媒を含む組成物と支持体からなる歯牙美白用貼付剤(特許文献8:国際公開第01/26577号パンフレット)、ハイドロキシアパタイトを含む組成物を水不溶性の歯牙保持用具と併用する歯の美白用セット(特許文献9:特開2002−193775号公報)、漂白等の化学反応を伴わず、エナメル質部分の光学特性変化を応用した歯の白色化方法、歯牙白色化用組成物及び歯牙美白用セット(特許文献10:国際公開第03/030851号パンフレット)などがある。
【0004】
また、このような歯牙貼付剤は、口中で違和感なく歯にフィットして長時間固定できることが重要であり、そのために貼付剤や支持体の素材や軟らかさ、大きさ、厚さ、形状などを規定する提案も行われている。例えば、シートの辺縁部に歯頸部ラインと同様の凹凸形状を設けた歯牙貼付剤(特許文献11:特開2001−322928号公報)、シートに切り込みを入れた歯牙貼付剤(特許文献12:特開2001−335470号公報)、永久変形せずに歯牙にフィットする可撓性支持体に歯牙粘着性美白組成物を施した技術(特許文献13:特表2002−503990号公報)、一定未満の力で永久変形して歯牙にフィットする支持体に歯牙美白組成物を施した技術(特許文献14:特表2002−537003号公報)、オルガノシロキサン樹脂を含む口腔表面残留性製剤と柔軟性支持体を組み合わせた歯牙貼付剤(特許文献15:特表2003−531814号公報)がある。中でも唾液の浸入から組成物を守り、効果を長時間発揮させるために、口中で違和感のない柔軟性、薄さに優れた支持体を選定することは歯牙貼付剤の重要なポイントであり、これまでにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン、パルプ、綿、絹、紙、アルミニウム等を使った織布又は不織布やシート、フィルム、あるいはワックス類やガムベースなどの永久変形して歯にフィットする素材などが提案されてきた(特許文献6、7、9、10、13、14、15)。しかしながら、これらの素材からなる支持体を使った歯牙貼付剤は、薄さ、柔軟性は良好であるが、支持体の素材が元来口腔内に存在する組織とは異なる素材のため、装着中の違和感があり、唾液の分泌を誘発してしまい、長時間の適用が困難な場合があった。
【0005】
これらの問題点を解決し、組成物中の有効成分、薬用成分又は機能性素材が漏出もしくは希釈されることなく高濃度を維持したまま歯面、または歯と近接する歯肉組織に作用させるために、(1)歯牙形状にフィットして、(2)着用中に違和感がなく、(3)柔軟性に富み、着用中のズレ、剥離が起きずに、(4)一定時間以上適用できる支持体が求められる。
【0006】
【特許文献1】特開昭55−83709号公報
【特許文献2】特開昭63−54318号公報
【特許文献3】特開昭63−160649号公報
【特許文献4】国際公開第95/16488号パンフレット
【特許文献5】特開昭56−18192号公報
【特許文献6】特開2000−281548号公報
【特許文献7】特開2001−247438号公報
【特許文献8】国際公開第01/26577号パンフレット
【特許文献9】特開2002−193775号公報
【特許文献10】国際公開第03/030851号パンフレット
【特許文献11】特開2001−322928号公報
【特許文献12】特開2001−335470号公報
【特許文献13】特表2002−503990号公報
【特許文献14】特表2002−537003号公報
【特許文献15】特表2003−531814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記要望に応えたもので、歯牙へのフィット性、固定性に優れ、着用中に違和感がなく、柔軟性に富み、着用中のズレ、剥離を防いで長時間の貼付を可能にして、しかも有効成分、薬用成分又は機能性素材の漏出・唾液の浸入が防止された歯牙貼付用製品、及びこれを用いた歯牙又は歯茎への口腔ケア物質の供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、歯牙貼付剤の支持体として、主としてコラーゲンからなるフィルム又はシートを使用することにより、貼付時の口腔内違和感を著しく低減して長時間快適に組成物を歯牙表面に適用できること、更には前記フィルム又はシートが従来の支持体素材と異なり、可食性を有するために誤飲時の安全性にも優れることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、
[I]1歯又は複数の歯牙表面に貼ることで、歯牙又は歯茎に口腔ケア物質を供給するための歯牙貼付用製品であって、(a)水不溶性の支持体として、厚さ0.01〜3mmのコラーゲンフィルム又はコラーゲンシートと、(b)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤、口臭予防・除去・隠蔽剤、歯肉炎予防・改善剤、歯周病予防・改善剤から選ばれる1種又は2種以上の有効成分、薬用成分又は機能性素材を含む口腔ケア組成物とを備えたことを特徴とする歯牙貼付用製品、
[II](b)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、知覚過敏予防・抑制剤、う蝕予防・修復剤、口臭予防・除去・隠蔽剤、歯肉炎予防・改善剤、歯周病予防・改善剤から選ばれる1種又は2種以上の有効成分、薬用成分又は機能性素材を含む口腔ケア組成物を貼付側に有する(a)水不溶性の支持体としての厚さ0.01〜3mmのコラーゲンフィルム又はコラーゲンシートを、1歯又は複数の歯牙表面に貼ることにより、歯牙又は歯茎に口腔ケア物質を供給する方法
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の歯牙貼付用製品によれば、歯牙へのフィット性、固定性に優れ、着用中に違和感がなく、柔軟性に富み、着用中のズレ、剥離を防いで長時間の貼付を可能にして、しかも有効成分、薬用成分又は機能性素材の漏出・唾液の浸入が防止されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の歯牙貼付用製品は、上述したように、1歯又は複数の歯牙表面に貼ることで、歯牙又は歯茎に口腔ケア物質を供給するための歯牙貼付用製品であって、(a)水不溶性の支持体として、厚さ0.01〜3mmのコラーゲンフィルム又はコラーゲンシートと、(b)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤、口臭予防・除去・隠蔽剤、歯肉炎予防・改善剤、歯周病予防・改善剤から選ばれる1種又は2種以上の有効成分、薬用成分又は機能性素材を含む口腔ケア組成物とを備えたものである。
【0012】
即ち、本発明の歯牙貼付剤は、歯牙に適用することで、むし歯、知覚過敏、歯肉炎、歯周病などの歯牙や歯茎の疾患予防や治療、歯質の強化、歯面の汚れ除去、歯の審美性向上、口臭予防などの口腔ケア機能を発揮する組成物を、厚さ0.01〜3mmのコラーゲンフィルム又はコラーゲンシートに塗布、塗膏、接着、吸着、積層、含浸、噴霧などの方法で保持させたことを特徴とする。
【0013】
本発明で使用するコラーゲンからなるフィルム又はシートは、本発明の支持体となるものである。このフィルムを構成するコラーゲンは、哺乳類などの脊椎動物だけでなく、軟体動物や環形動物といった下等動物にいたるまで、あらゆる動物体の皮膚や骨、目の角膜、血管の内皮など、ほとんどの組織や気管に存在する結合組織中の主要な繊維性蛋白質であり、その構造は動物種を問わずほぼ同じ構造を持つ。この主としてコラーゲンからなるフィルム又はシートは、コラーゲンを少なくとも50質量%以上含有している。このようなフィルム又はシートとしては、例えば、牛皮を石灰処理後、酸で膨潤させた酸膨潤性コラーゲン繊維と精製牛皮を酸性蛋白分解酵素処理したコラーゲン及びグリセリン等からなるケーシング用フィルム又は精製牛皮を蛋白分解酵素で処理したアテロコラーゲンフィルムがある。
【0014】
例えばアテロコラーゲンフィルムの製法としては、仔牛の皮膚から真皮を常法により分離し、液体窒素法にて粉砕し、0.02mol/LNa2HPO4、次いで4.0mol/LNaClで十分洗浄して得られた微粒真皮を20℃でペプシン限定消化法によって可溶化し、ペプシン可溶化コラーゲンを0.02mol/LNa2HPO4溶液に透析してコラーゲンを沈殿として分離する。分離したコラーゲン、あるいはそれを更に0.5mol/L酢酸に溶解し、これを0.7mol/LNaClを含む0.5mol/L酢酸に透析して生成した高純度のコラーゲンを0.05〜0.1質量%の濃度になるよう0.5mol/L酢酸に溶解し、4℃にて0.15mol/LNaClを含むpH7.4の0.01mol/Lリン酸緩衝液に透析する。完全に透析が終了したところで、この溶液を4℃で0.02mol/LNa2HPO4に透析して、天然型の太いコラーゲン繊維を得、更にこの繊維を0.02mol/LNa2HPO4でよく洗浄する。このコラーゲン繊維をヘキサメチレンイソチオシアネート又はグルタルアルデヒドのような架橋剤で常法により処理して架橋強化した繊維状コラーゲンを得る。こうして得られた繊維状コラーゲンを70質量%エタノール中に懸濁させ、テフロン布を敷いたブフナー濾過器で濾過すると同時に、平坦な圧縮子で圧縮して必要な厚さに成形し、その後100質量%エタノールで洗浄する。この処理により、繊維状コラーゲンを膜に形成し、凍結乾燥後、規定の厚みにスライスすることにより、抗原性の低いコラーゲンフィルムを得ることができる。
【0015】
なお、こうして作られたコラーゲンフィルムは、他にもコラーゲンシート、コラーゲン膜、コラーゲンスポンジ、コラーゲンスポンジシート、コラーゲンマスク、コラーゲンファイバーマスクなどの名称で呼ばれているが、これらの呼称は供給先が独自に定めるものであり、品質上の違いはなく、同一のものである。
【0016】
このフィルム又はシートの厚さは、0.01〜3mm、好ましくは0.05〜2mm、より好ましくは0.1〜2mmである。フィルム又はシートの厚さが0.01mm未満の場合は、貼付剤の組成物がフィルム又はシートを通って流出してしまうと共に、組成物中に唾液が浸入し易くなるために、歯牙貼付剤を歯面に長時間付着させることが困難になる。またフィルム又はシートの厚さが3mmを超えると、貼付剤が厚すぎて剥がれ易くなったり、装着時の違和感が大きく、唾液の分泌を誘発するため好ましくない。
【0017】
上記コラーゲンフィルム又はコラーゲンシートからなる支持体は、コラーゲンフィルム又はコラーゲンシート単体の他に、装着時に違和感を生じない素材、厚みの他のフィルムと重ね合わせて使用してもよい。例えばアテロコラーゲンフィルムにエチルセルロース、メチルセルロースやシリコーンのフィルムを重ね合わせたものも支持体として用いられる。この場合、主としてコラーゲンからなるフィルム又はシートとしては、支持体中のコラーゲン含有率(支持体全質量におけるコラーゲンの質量)が少なくとも50質量%以上であることが望ましい。コラーゲンの含有率が50質量%未満の場合、口腔内で違和感を有することがある。このような多層からなる支持体では、口腔ケア組成物はコラーゲンフィルム又はシート側に適用してもよいし、他の素材からなるフィルム側に適用してもよいが、好ましくは歯面に貼る側と反対の最外層が、コラーゲンフィルム又はシートで構成されることが、より口腔内での違和感が少なく望ましい。
【0018】
上記コラーゲンフィルム又はコラーゲンシートに塗布、塗膏、接着、吸着、積層、含浸、噴霧などの方法で保持させる口腔ケア組成物としては、歯に適用することで、安全に口腔ケア機能を有すると一般的に考えられる全ての物質が挙げられる。
【0019】
本発明の口腔ケア組成物の歯牙貼付剤全体に占める質量比は、組成物の固定力だけで歯牙に付着、固定して十分な量の有効成分、薬用成分又は機能性素材を歯牙や近接する歯茎に供給する必要があるため、5〜98質量%が好ましく、より好ましくは20〜95質量%である。口腔ケア組成物の質量比が5質量%未満の場合、歯牙への固定力が不足すると共に有効成分、薬用成分又は機能性素材の量が不足することがあり、98質量%より多いと口中での溶け出しが生じて違和感となり、長時間の貼付が困難になることがある。
【0020】
本発明の歯牙貼付用組成物は、ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤、口臭予防・除去・隠蔽剤、歯肉炎予防・改善剤、歯周病予防・改善剤から選ばれる1種又は2種以上の有効成分、薬用成分又は機能性素材を含む。
【0021】
ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤は、効果を持つ既知の薬剤が使用でき、ステイン又は歯石予防・除去剤としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、ピロリン酸ナトリウム、無水ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどの縮合リン酸又はその塩、リン酸一水素ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどのリン酸又はその塩、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸などのヒドロキシカルボン酸又はその塩、EDTA、EHDP、コウジ酸又はその塩類、フィチン酸又はその塩類、アスコルビン酸又はその塩類などのキレート剤、ポリビニルピロリドン、総炭素数4以下の低級アルコール、フェニル基又はフェノキシ基をもつ総炭素数7〜15のアルコール、炭素数10以下のグリコール、ポリエチレングリコール(#200〜20,000)、シトラール、2−オクタノール、シンナミックアルデヒド、ベンズアルデヒド、メチルサリシレート、カルボン、シトラールジメチルアセタール、シトラールジエチルアセタール、シトラールプロピレングリコールアセタール、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、アニスアルデヒド、エチルヘキシルアルデヒド、ノニルアルデヒド、ジオスフェノール、フェランドラール、カルボメントン、チモキノン、クリサンテノン、クリプトン、ツヨン、フェンコン、ピクロクロシン、サンテノン、α−イオノン、β−イオノン、α−イロン、ヒノキチオール、α−ツヤプリン、γ−ツヤプリン、アルテミシアケトンなど特定のタバコヤニ溶解性香料、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、炭酸アパタイト、第三リン酸カルシウム、第四リン酸カルシウム及び第八リン酸カルシウム、ゼオライト、オリゴ糖、bis−O−カルボキシフェニルコハク酸、アミノグアニジン、塩基性ペプチド、ポリオキシエチレン(2モル)アルキル(C=12〜14)スルホコハク酸二ナトリウム、ラウリルスルホコハク酸ナトリウムが好ましく用いられるが、タバコヤニや茶渋汚れに対する除去力や安定性の面から、特にピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、エタノール、シトラールが好適である。これらのステイン又は歯石予防・除去剤の組成物全体に占める配合量は、好ましくは0.005〜20質量%の範囲であり、特に好ましくは0.01〜10質量%の範囲である。0.005質量%未満の場合は効果が発現されず、また20質量%より多い場合には味に支障が生じたり、口中での溶け出しによる違和感が生じて長時間の貼付が困難になることがある。
【0022】
歯牙白色化剤としては、ポリエチレングリコール(#200〜800)、エタノール、グリセリン、イソプロパノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコールで代表されるアルコール類、シトラール、2−オクタノール、シンナミックアルデヒド、ベンズアルデヒド、メチルサリシレート、カルボン、シトラールジメチルアセタール、シトラールジエチルアセタール、シトラールプロピレングリコールアセタール、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、アニスアルデヒド、エチルヘキシルアルデヒド、ノニルアルデヒド、ジオスフェノール、フェランドラール、カルボメントン、チモキノン、クリサンテノン、クリプトン、ツヨン、フェンコン、ピクロクロシン、サンテノン、α−イオノン、β−イオノン、α−イロン、ヒノキチオール、α−ツヤプリン、γ−ツヤプリン、アルテミシアケトンなどの香料成分、過酸化尿素、過酸化水素等の過酸化物、酸化チタン、タルク、酸化アルミニウム等の白色微粉末無機化合物、シェラック、エチルセルロース、メチルセルロース、オイドラギット等の水不溶性被膜剤が挙げられるが、使用感、安定性の点から、ポリエチレングリコール(#200〜800)、1,3−ブチレングリコール、グリセリンが好ましい。
【0023】
この場合、組成物全体に占める歯牙白色化剤の配合量は、組成物から歯牙白色化成分が溶出すれば特に制限されないが、上記ポリオール又はアルコール系白色化剤の場合は溶媒と兼ねる場合があるため、その場合には白色化剤と溶媒合計で組成物全体の50〜95質量%、特に80〜95質量%が好適である。香料成分や過酸化物の場合は0.1〜30質量%が好ましい。白色微粉末無機化合物と水不溶性被膜剤は単独もしくは組み合わせて使用されるが、いずれの場合も組成物全体の0.1〜80質量%が好ましい。いずれの歯牙白色化成分においても、好適な量より少なすぎる場合には効果が発現されない場合があり、多すぎる場合には、味に支障が生じたり、異物感や口中での溶け出しによる違和感が生じて長時間の貼付が困難になることがある。
【0024】
また、ステイン予防剤・除去効果あるいは歯石予防・除去効果と、歯牙白色化効果の両効果を有する成分を配合する場合には、それぞれの目的に応じた量を配合することが望ましいが、両方の効果を発揮させる場合には、各成分ごとに上述した歯牙白色化に好適な配合量を配合するのが好ましい。
【0025】
う蝕予防・修復剤としては、効果を持つ既知の薬剤が使用でき、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化錫、フッ化銀などのフッ化物イオン供給化合物、更には塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、水酸化カルシウムなどの無機性カルシウム化合物や、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、マロン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセリン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、フィチン酸カルシウムなどの有機性カルシウム化合物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチームなどの酵素剤、クロルヘキシジン、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウムなどの既知の殺菌・抗菌剤を1種又は2種以上組み合わせて使用することができるが、安定性の点からフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、デキストラナーゼが好ましい。これらの薬剤のうち、フッ素イオン供給物やカルシウム化合物は、健全な歯牙に用いる場合には脱灰抑制によるう蝕予防効果、脱灰を受け既に初期う蝕を有する歯牙に用いる場合には再石灰化によるう蝕修復効果を発揮する。また、酵素や殺菌・抗菌剤は、う蝕の原因となる歯垢を分解除去する効果を発揮する。配合量は、好ましくは組成物全体の0.005〜20質量%の範囲であり、特に好ましくは0.05〜10質量%の範囲である。0.005質量%未満の場合は効果が発現されず、また20質量%より多い場合には口中での溶け出しによる違和感が生じて長時間の貼付が困難になることがある。
【0026】
知覚過敏予防・抑制剤としては、効果を持つ既知の成分が使用でき、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、塩化亜鉛、塩化ストロンチウム、フッ化ジアミン銀、ホルムアルデヒド、ピロクトンオラミンなどの薬剤を1種又は2種以上組み合わせて配合できるが、安定性の点で乳酸アルミニウム、硝酸カリウムが好ましい。他の薬剤と同様に健全な歯牙に用いる場合には知覚過敏予防効果、象牙細管が露出・開口した歯牙に用いる場合には知覚過敏抑制効果を発揮する。配合量は、好ましくは組成物全体の0.1〜20質量%の範囲であり、特に好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。0.1質量%未満の場合は効果が発現されず、また20質量%より多い場合には味に支障が生じたり、口中での溶け出しによる違和感が生じて長時間の貼付が困難になることがある。
【0027】
口臭予防・除去・隠蔽剤としては、効果を持つ既知の成分が使用でき、クロルヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノールなどの殺菌剤・抗菌剤、ローズマリー、チョウジ、セージ、タイム、オウゴンなどの生薬抽出物、グルコン酸銅、クエン酸銅、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛などの銅、亜鉛化合物、メントール、アネトール、ペパーミント油、スペアミント油などの香料成分を1種又は2種以上組み合わせて使用できるが、効果と安定性の点でトリクロサン、ローズマリー、グルコン酸銅、メントールが好ましい。殺菌剤・抗菌剤は口臭の原因菌を取り除いて口臭を予防する効果があり、生薬抽出物や銅、亜鉛化合物は予防効果に加えて臭い物質を分解、消臭する効果を発揮する。また香料成分には殺菌・抗菌効果に加えて不快な臭いをマスキングする効果を発揮する。配合量は、好ましくは組成物全体の0.001〜10質量%の範囲であり、特に好ましくは0.005〜5質量%の範囲である。0.001質量%未満の場合は効果が発現されず、また10質量%より多い場合には強い臭いや味、口中での溶け出しによる違和感が生じて長時間の貼付が困難になることがある。
【0028】
歯牙に貼付して歯肉炎や歯周炎などの歯周疾患を予防・改善する薬用成分としては、歯面から流出し歯周ポケットに浸入して効果を持つ既知の成分が使用でき、クロルヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノールなどの殺菌剤・抗菌剤、トラネキサム酸、ε−アミノカプロン酸、オオバク抽出物、アラントイン、ジヒドロコレスタノール、グリチルリチン酸類、グリチルレチン酸、ビサボロール、塩化ナトリウムなどの抗炎症、止血剤を1種又は2種以上組み合わせて使用することができるが、歯頸部近辺の歯肉組織への有効性の点から塩化セチルピリジニウム、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサンが好ましい。配合量は、組成物全体の好ましくは0.001〜5質量%の範囲であり、特に好ましくは0.005〜3質量%の範囲である。0.001質量%未満の場合は効果が発現されず、また5質量%より多い場合には口中での溶け出しによる違和感が生じて長時間の貼付が困難になることがある。
【0029】
本発明の歯牙貼付剤は、上述の有効成分、薬用成分又は機能性素材を含む口腔ケア組成物をペースト状、クリーム状、ゲル状、ジェル状、ゾル状、液状、泡状、粉末状の剤型として調製し、これを主としてコラーゲンからなる水不溶性の支持体に固定するものであり、本発明の口腔ケア組成物には、上述した成分に加えて、更にその形態等に応じた適宜な成分を配合することができる。
【0030】
例えば、口腔ケア組成物をゲル化、ペースト化して歯牙への塗布性を高めたり、あるいは歯牙との粘着性を高める目的で各種のゲル化剤が使用される。この場合、ゲル化剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ジェランガム、ネイティブジェランガムなどのガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ボリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイドなどの合成粘結剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガム、ラポナイトなどの無機粘結剤等の1種又は2種以上を配合し得る。
【0031】
この場合、口中での粘りや溶け出しが少なく使用感に優れたゲル化剤として、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンが好適に使用される。特に、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンが望ましい。
【0032】
上記ゲル化剤の配合量は、口腔ケア組成物の固定力だけで歯牙貼付剤が歯牙に付着、固定することが望ましいため、組成物全体の0.1〜15質量%が好適であり、中でも0.5〜10質量%が望ましい。0.1質量%未満の場合には粘着力が発揮されず、支持体に固定しにくく、15質量%より多いとゲル化剤が十分に溶けきらず、組成物が不均一になるだけでなく、有効成分、薬用成分又は機能性素材の効果発現を阻害する場合がある。
【0033】
更に、口腔ケア組成物の乾燥を防ぐと共に、使用感を高める目的で、保湿剤として、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール等の1種又は2種以上を配合し得る。
【0034】
また、歯牙の洗浄効果を高めたり、香料などの乳化、分散などの目的で、界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤の1種又は2種以上を併用することもできる。
【0035】
この場合、アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウムなどのN−アシルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウムなどのN−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルPOE硫酸ナトリウム、ラウリルPOE酢酸ナトリウム、ラウリルPOEリン酸ナトリウム、ステアリルPOEリン酸ナトリウム等が用いられる。
【0036】
ノニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸モノグリセリル、ラウリン酸デカグリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ミリスチン酸モノ又はジエタノールアミドなどの脂肪酸エタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、C12〜C20のアルキルグルコシド等が用いられる。
【0037】
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシンなどのN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が用いられる。
【0038】
本発明の口腔ケア組成物には、更に、メントール、アネトール、カルボン、ペパーミント油、スペアミント油などの香料、安息香酸及びそのナトリウム塩、パラベン類などの防腐剤、赤色3号、赤色104号、黄色4号、青色1号、緑色3号、雲母チタン、弁柄などの色素又は着色剤、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、グリチルリチン、アスパルテームなどの甘味剤等を配合し得る。
【0039】
また、本発明の口腔ケア組成物は、使用後にそのままブラッシングすることで歯磨剤として使用することもできる。このような歯磨剤として使用する場合には、研磨剤を配合することが好ましい。かかる研磨剤としては、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、ベントナイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化チタン、結晶セルロース、ポリメタクリル酸メチル、その他の合成樹脂等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上が使用される。
【0040】
このように貼付後に歯磨剤としての機能を備えた歯牙貼付剤に好適な特性としては、貼付剤を歯牙に貼付して剥離した時に、ブラッシングのために適量な口腔ケア組成物が歯面に残留することが望ましい。この場合、適量の歯面残留性とは、本発明の歯牙貼付剤を歯牙に1kgの力で5秒間押し付けて貼付し、加重せずに3分間静置した後に歯牙から剥離する時に、上記口腔ケア組成物が、歯牙貼付剤を貼付した歯牙1本当たり0.001〜0.5gの範囲で歯牙に残留することが望ましく、更に口腔ケア組成物単独での粘着力が、組成物を内径35mm×深さ15mmの円柱状カップに表面が平らになるよう充填して、測定機器に(株)サン科学製レオメーターCR−500DXとCR−150を使い、組成物の充填されたカップの上方から、直径20mm×高さ9mmのアクリル円柱を300mm/分の速さで、アクリル円柱に1kgの応力がかかるまでカップ内の組成物に進入させ、その状態でアクリル円柱を30秒間静置した後に、同じ毎分300mm/分の速さで上方に引っ張り上げたときの、引っ張り応力×時間の積分値である粘着力が0.005〜0.5Jであることが望ましい。
【0041】
また、本発明の歯牙貼付剤の適用前に、研磨剤入りの歯磨剤でブラッシングして歯牙表面の汚れを落とすことは、口腔ケア組成物中の有効成分、薬用成分又は機能性素材の歯牙表面への密着、浸透性がより促進されるため、特に好ましい用法である。この場合、研磨剤が入っていれば歯磨剤の成分は特定されるものではないが、本発明の歯牙貼付剤の使用形態が、使用時ごとに口腔ケア製剤を支持体に固定させてから歯牙に着用する用法の場合には、上記研磨剤を口腔ケア組成物に配合することにより、この歯磨剤として兼用することもできる。
【0042】
なお、口腔ケア組成物のpHは、口腔内及び人体に安全性上問題ない範囲であれば、特に限定されるものではないが、望ましくはpH4〜10であり、更に望ましくは5.5〜9である。pH4未満の場合には適用時間によっては脱灰の懸念があり、pH10を超える場合には、皮膚や粘膜に触れた場合、炎症を起こす等の懸念がある。pH調整剤として、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等を適量配合し得る。
【0043】
本発明の歯牙貼付剤は、予め口腔ケア組成物を塗布、塗膏、接着、吸着、積層、含浸、噴霧などの手段により、主としてコラーゲンフィルム又はコラーゲンシートからなる支持体に固定させて、そのまま歯牙に着用できるようにした方式、口腔ケア組成物と支持体を別途用意して、使用時に組成物を支持体に固定した後に歯牙に着用する方式、口腔ケア組成物を歯牙に付着させた後に支持体で被覆する方式のいずれにおいても、目的を達成することができる。
【0044】
本発明の歯牙貼付剤の大きさ、形状、厚みとしては、1歯又は複数の歯の表面、裏面、又は両面を十分に被覆するものであれば、特に規定されるものではないが、横方向の最大幅が3〜120mm、縦方向の最大高さは3〜50mmが好ましく、特に歯牙の審美性向上などを目的として前歯を中心とする歯牙1〜10本分の部分的貼付を行う場合には、最大幅5〜80mm、最大高さ5〜40mmが好適である。形状としては、被覆したい歯牙の形状に応じて、例えば正方形、長方形、台形、三角形、多角形、楕円形、円形、シートの歯肉接触部位が歯頸部ラインと同じ凹凸形状を形成したもの等が挙げられるが、特に一枚のシートを歯列上で折り返して歯牙の表裏両面を同時に被覆できるような形状にしたものが、歯牙への密着固定性に優れるため好ましい。更に複数の歯に折り返して貼付する場合には、シートの辺縁部に1本又は複数本の切り込みを形成することで、貼付剤が歯列形状に変形し易くなり密着固定性が向上して好ましい。また歯牙貼付剤の厚みとしては、支持体と口腔ケア組成物を合わせたトータルの厚みとして0.01〜5mmが好ましく、特に10分以上の長時間の貼付を目的とする場合には、0.05〜3mmが好ましい。歯牙貼付剤の厚みが0.01mm未満の場合には、薄すぎて歯牙への固定力が不足したり唾液が浸入する場合があり、5mmより厚い場合は、貼付剤が歯から剥がれ易くなったり、口腔内での違和感が大きく唾液の分泌を誘発するため、いずれも口腔ケア効果を損なう場合がある。
【0045】
なお、適用回数、時間等は適宜選定されるが、通常、1日1〜6回、特に1〜3回で、1回1〜120分、特に1〜60分であるが、就寝中に適用することも可能である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、各例中の%はいずれも質量%である。また、下記例で、PEはポリエチレン、PPはポリプロピレン、PETはポリエチレンテレフタレートであることを示し、平均分子量は重量平均分子量である。
【0047】
[実施例1,2、比較例1,2]
下記に示す歯牙美白用組成物(1),(2)のそれぞれを、溶媒にゲル化剤を分散し、80℃加熱溶解、常温冷却後にその他の成分を加え、4kPaまで減圧して均一混合する方法にて調製し、この組成物を厚さ0.3mmのケーシング用コラーゲンフィルム(ニッピ・コラーゲン社製)と、厚さ50μmのPET製フェイシングフィルム(商品名:セラピールBK、東洋メタライジング(株)製)の間に挟み、のし棒でフェイシングフィルムを含む歯牙貼付剤全体の厚みが約1.0mmになるよう組成物を展延して幅60mm(上辺)、45mm(下辺)×高さ25mmの台形にカットし、実施例の歯牙貼付剤1,2を作製した。なお、フェイシングフィルムは使用時、除去する(以下、同様)。
比較例として、下記に示す歯牙美白用組成物(1),(2)を同じ方法で調製し、実施例1,2のコラーゲンフィルムと厚みが同じ0.3mmであるPP製不織布(出光石油化学(株)製RN2030)と、実施例1,2と同じPET製フェイシングフィルム(商品名:セラピールBK)の間に挟み、のし棒でフェイシングフィルムを含む歯牙貼付剤全体の厚みが約1.0mmになるよう組成物を展延して実施例1,2と同じサイズ、形状にカットし、比較例1,2の歯牙貼付剤を作製した。
【0048】
歯牙美白用組成物(1)(使用法:貼付歯磨剤)
濃グリセリン 53.0%
(濃グリセリン、ライオン(株))
ポリエチレングリコール#400 23.5
(マクロゴール400、ライオン(株))
カルボキシメチルセルロースナトリウム 3.0
(平均分子量670,000、CMCダイセル1150、ダイセル化学工業(株))
無水ケイ酸 20.0
(化粧品原料基準規格品無水ケイ酸、Sorbosil AC33、イネオスシリカ)
ラウリル硫酸ナトリウム 0.3
香料 0.2
計 100.0%
【0049】
歯牙美白用組成物(2)(使用法:貼付剤)
1,3−ブチレングリコール 26.0%
(1,3−ブチレングリコール、ダイセル化学工業(株))
ポリエチレングリコール#400 58.0
(マクロゴール400,ライオン(株))
ヒドロキシプロピルセルロース−L 15.0
(平均分子量60,000、HPC−L、日本曹達(株))
ポリビニルピロリドン 1.0
(平均分子量1,200,000、ルビスコールK−90、BASFジャパン(株))
計 100.0%
【0050】
[歯牙白色化効果及び使用感の評価]
上顎中切歯及び側切歯の計4本が全て健常歯である10人を被験者として、全員が上記4種の貼付剤をそれぞれ30分間上顎前歯4本に貼付(貼付剤の半分の高さで折り返して対象歯の表裏両面に貼付)したときの貼付剤使用前と貼付剤使用後30分経過後の上顎中切歯及び側切歯の計4本の色調の変化を、色差計(日本電色工業(株)製SE2000+口径4mmペンセンサー)を使った色差Lab測色法による△L値で測定した。なお、上記歯牙美白用組成物による歯牙白色化効果の持続性は最大で1日程度のため、各サンプルは、間に1日以上の未使用期間をおいて使用した。
被験者ごとに得られた4本の対象歯の△L値の平均値を算出し、更に被験者10人の△L平均値を平均化した値を歯牙白色化効果として、下記基準による評点付けを行った。
△L値(平均値) 白色化効果
5.0以上 ◎
3.0〜4.9 ○
2.9以下 ×
【0051】
併せて各被験者に、貼付剤着用中の歯面からのズレの有無と違和感についてそれぞれ下記の5段階評価でアンケート調査を実施した。最終的に、ズレ、違和感とも被験者10人の評点の平均値を結果として使用した。
評点(評価) 貼付剤の歯面からのズレ、着用中の違和感
5(◎) 全くない
4(○) ほとんどない
3(○〜△) どちらともいえない
2(△) ややある
1(×) かなりある
【0052】
実施例1,2及び比較例1,2の使用による、歯牙白色化の効果(全被験者対象歯の△L平均値)と貼付剤着用中のズレ、違和感の結果(全被験者の平均値)を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
以上の結果から、支持体にコラーゲンフィルムを用いた歯牙貼付剤は、同じ厚さのPP製不織布を支持体に使った場合に比べて、同じ美白用組成物を適用した場合でも、歯牙に貼付したときのズレや違和感が少なく、歯牙白色化効果を向上させることを確認した。
【0055】
[実施例3、比較例3]
下記に示す知覚過敏予防組成物を常法(溶媒に薬用成分、ゲル化剤、pH調整剤を常温常圧で撹拌しながら投入し、溶解、ゲル化させた後に、香料、無水ケイ酸、ラウリル硫酸ナトリウムを加えて30mmHgの4kPaまで減圧して均一混合)により調製し、この組成物を厚さ1.0mmのコラーゲンシート(ニッピ・コラーゲン社製、商品名:ニッピコラーゲンシート100、コラーゲン含有率100%)と、厚さ50μmのPET製フェイシングフィルム(商品名:セラピールBK、東洋メタライジング(株)製)の間に挟み、のし棒でフェイシングフィルムを含む歯牙貼付剤全体の厚みが約2.0mmになるよう組成物を展延して幅7mm×高さ20mmの長方形にカットし、実施例3の歯牙貼付剤を作製した。
比較例として、下記に示す知覚過敏予防組成物を同じ方法で調製し、実施例3のコラーゲンシートと厚みが同じ1.0mmであるPP/PEフィルム/レーヨン製3層不織布(出光石油化学(株)製RN2050/厚さ20μm低密度PEフィルム/日本バイリーン(株)製試作レーヨン不織布、貼り合せ加工:シンコーラミ工業(株))と実施例と同じPET製フェイシングフィルム(商品名:セラピールBK)の間に挟み、のし棒でフェイシングフィルムを含む歯牙貼付剤全体の厚みが約2.0mmになるよう組成物を展延して実施例3と同じサイズ、形状にカットし、比較例3の歯牙貼付剤を作製した。
【0056】
知覚過敏予防組成物(使用法:貼付歯磨剤)
硝酸カリウム 5.0%
(食品添加物硝酸カリウム、大塚化学(株))
乳酸アルミニウム 2.0
(乳酸アルミニウム、(株)武蔵野化学研究所)
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.73
(SMFP、ローディア日華社)
ソルビット 30.0
(Neosorb,ロケット社)
ポリエチレングリコール#400 3.0
(マクロゴール400,ライオン(株))
無水ケイ酸 15.0
(化粧品原料基準規格品無水ケイ酸、Tixosil73、ローディア日華(株))
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
(平均分子量670,000、CMCダイセル1150、ダイセル化学工業(株))
ヒドロキシエチルセルロース 0.4
(平均分子量1,560,000、HECダイセルSE900、ダイセル化学工業(株))
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2
リン酸水素ナトリウム 0.1
香料 1.0
水 バランス
計 100.0%
【0057】
[知覚過敏予防効果の評価]
知覚過敏歯(対象歯)を1歯以上有する、他に知覚過敏と誤解するようなう蝕、歯周疾患などの重篤な口腔疾患のない10人を被験者として、対象歯の本数と、5℃冷水で洗口したときの対象歯ごとの痛みのレベル(被験者の自覚に基づく下記の5段階評価)を調べた。その後、対象歯の本数と対象歯ごとの痛みの平均値が等しくなるように、被験者を5人ずつA群,B群の2つに層別した。A群の5人は実施例3記載の歯牙貼付剤を、B群の5人は比較例3記載の貼付剤を、それぞれ対象歯1歯につき1枚ずつ、全ての対象歯に10分間貼付(貼付剤の半分の高さで折り返して対象歯の両面に貼付)した後に、貼付剤を剥がして歯に付着した製剤でブラッシング、ぬるま湯で洗口する処置を、1日2回、7日間継続して行った。なおこの間、被験者は対象歯への他の口腔清掃を停止した。7日間の処置後に、再び5℃冷水で洗口したときの対象歯ごとの痛みのレベルを、試験前と同じ指標で調べ、A,B群の対象歯ごとの痛みの5人の平均値から、知覚過敏症状の改善効果を比較評価した。
評点(評価) 5℃冷水洗口時の痛み
5(◎) 痛みはない
4(○) ほとんどない・どちらともいえない
3(△) やや痛む
2(×) 痛む
1(×) 非常に痛む
実施例3及び比較例3の使用による、知覚過敏症状改善の結果(各群の被験者対象歯の評点の平均値)を表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
以上の結果から、支持体にコラーゲンシートを用いた歯牙貼付剤は、同じ厚さのPP/PEフィルム/レーヨン製3層不織布を支持体に使った場合に比べて、同じ知覚過敏予防組成物を適用した場合でも、優れた知覚過敏改善効果を発揮することを確認した。
【0060】
[実施例4、比較例4]
下記に示す口臭予防組成物を常法(溶媒に薬用成分、ゲル化剤、甘味剤を常温常圧で撹拌しながら投入し、溶解、ゲル化させた後に、香料、無水ケイ酸、ラウリル硫酸ナトリウムを加えて4kPaまで減圧して均一混合)により調製し、この組成物を厚さ1.0mmの海洋性コラーゲンシート(商品名:オーシャンコラーゲンシート、エアウォーター(株)製、魚類(サケ)由来コラーゲン含有率95%+ポリソルベート80添加)と、厚さ50μmのPET製フェイシングフィルム(商品名:セラピールBK、東洋メタライジング(株)製)の間に挟み、のし棒でフェイシングフィルムを含む歯牙貼付剤全体の厚みが約1.5mmになるよう組成物を展延して幅125mm×高さ8mmの長方形にカットし、実施例4の歯牙貼付剤を作製した。
比較例として、下記に示す口臭予防組成物を同じ方法で調製し、実施例4のコラーゲンシートと厚みが同じ1.0mmである発泡PEシート(商品名:ボラーラIF1501、積水化学工業(株)製)と実施例と同じPET製フェイシングフィルム(商品名:セラピールBK)の間に挟み、のし棒でフェイシングフィルムを含む歯牙貼付剤全体の厚みが約1.5mmになるよう組成物を展延して実施例4と同じサイズ、形状にカットし、比較例4の歯牙貼付剤を作製した。
【0061】
口臭予防組成物使用法:(貼付剤)
L−メントール 0.7%
(L−メントール、高砂香料工業(株))
ローズマリー 0.5
(ローズマリーエキス、レオミール100、スタンレー(株))
グルコン酸銅 0.5
(食品添加物グルコン酸銅、扶桑化学工業(株))
トリクロサン 0.3
(医薬部外品原料規格品トリクロサン、チバ社)
濃グリセリン 40.0
(濃グリセリン、ライオン(株))
プロピレングリコール 3.0
(プロピレングリコール、昭和電工(株))
キサンタンガム 4.0
(ケルトロール630,CPケルコ社)
アルギン酸ナトリウム 2.5
(化粧品用アルギン酸ナトリウム、(株)紀文フードケミファ)
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
フッ化ナトリウム 0.1
サッカリンナトリウム 0.1
香料 0.5
水 バランス
計 100.0%
【0062】
[口臭抑制効果及び使用感の評価]
口臭の評価には、臭気識別判定の専門家(臭気判定士)1名によるUBC式官能評価法を採用した。呼気採取方法は、まず口呼吸を3回行った後に、1分間口を閉じて口腔内に溜まった息のみを所定のビニールパイプを通して臭気判定士に吹きかけ、その臭いの強さに応じて下記の6段階で評価した。
評点(評価) 臭いの強度
5(××) 強烈なにおい
4(×) 強いにおい
3(△〜×) らくに感知できるにおい
2(△) 感知できるが、弱いにおい
1(○) やっと感知できるにおい
0(○) においなし
歯磨きをしないで水洗口のみを行った30分後の呼気が、上記の評価方法で2点以上の「口臭あり」と判定された20〜45才の非喫煙者12人を被験者として、口臭の強さの平均値が等しくなるように、被験者を6人ずつA群,B群の2つに層別した。A群の6人は実施例4記載の歯牙貼付剤を、B群の6人は比較例4記載の貼付剤を、それぞれ上下顎ごとに1枚ずつ、上下全ての歯の頬側のみを覆うように5分間貼付して剥がし、水洗口した後に他の口腔清掃や飲食をせずに1時間経過させた時の各被験者の口臭を、試験開始前と同じ評価方法で判定した。
【0063】
また併せて各被験者に、貼付剤着用中の歯面からのズレの有無と、違和感についてそれぞれ下記の5段階評価でアンケート調査を実施した。最終的に、ズレ、違和感ともA,Bの各群ごとの被験者6人の評点を平均化した値を結果として使用した。
評点(評価) 貼付剤の歯面からのズレ、着用中の違和感
5(◎) 全くない
4(○) ほとんどない
3(○〜△) どちらともいえない
2(△) ややある
1(×) かなりある
【0064】
実施例4及び比較例4の使用による、口臭減少の結果(各群の被験者評点の平均値)と貼付剤着用中のズレ、違和感の結果(各群の被験者評点の平均値)を表3に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
以上の結果から、支持体に海洋性コラーゲンシートを用いた歯牙貼付剤は、同じ厚さの発泡PEシートを支持体に使った場合に比べて、同じ口臭予防組成物を適用した場合でも、歯牙に貼付したときのズレや違和感が少なく、優れた口臭抑制効果を発揮することを確認した。
【0067】
[実施例5、比較例5]
下記に示すう蝕及び歯周病予防組成物(ゾル状)を、常法(油性成分と加熱溶解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油をエタノールに投入溶解させた後に、この溶液を残りの成分を溶かした水溶液中に投入し常温常圧で均一混合)により調製し、この組成物3.0gを、厚さ2.0mm×幅120mm×高さ20mmの長方形にカットして高さが半分になるように2つ折りにプレス加工し、歯列弓状に沿ったU字型に変形し易いよう、舌側に貼付する面の底辺の端から30mm、60mm、90mmの位置に、それぞれ高さ10mmの底辺に対して垂直な切り込みを入れたコラーゲンシート(商品名:オリエンコラーゲンシート、ニプロ(株)製、原材料:牛由来コラーゲン繊維+流動イソパラフィン+ポリオキシプロピレンステアリルエーテル+オレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(40E.O.)を凍結乾燥したもの、コラーゲン含有率92.1%)に使用直前に含浸させて実施例5の歯牙貼付剤を作製した。
比較例として、下記に示すう蝕及び歯周病予防組成物を同じ方法で調製し、この組成物3.0gを実施例5と同じ厚み、サイズ、形状にカットしたスポンジ(材質:ナイロンポリウレタンフォーム)に使用直前に含浸させて比較例5の歯牙貼付剤を作製した。
【0068】
う蝕及び歯周病予防組成物(使用法:貼付後ブラッシング)
デキストラナーゼ 0.3%
(デキストラナーゼ、10,000単位/g)
フッ化ナトリウム 0.2
(特級フッ化ナトリウム、和光純薬工業(株))
イソプロピルメチルフェノール 0.05
(ビオゾール(商標登録)、大阪化成(株))
塩化セチルピリジニウム 0.05
(塩化セチルピリジニウム、和光純薬工業(株))
トリクロサン 0.02
(医薬部外品原料規格品トリクロサン、チバ社)
濃グリセリン 5.0
(濃グリセリン、ライオン(株))
エタノール 10.0
キサンタンガム 1.0
(ケルトロール630、CPケルコ社)
ポリオキシエチレン(100モル)硬化ヒマシ油 1.2
サッカリンナトリウム 0.1
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.25
安息香酸ナトリウム 0.3
メチルパラベン 0.2
香料 0.2
水 バランス
計 100.0%
【0069】
[歯垢付着抑制効果及び使用感の評価]
う蝕及び歯周病の原因となる歯垢の抑制効果を評価した。歯垢付着状態の評価法には、PHP(Patient Hygiene Performance)法を採用した。評価の対象歯として、上顎左右6番の頬側、下顎左右6番の舌側及び上顎右1番、下顎左1番の唇側の計6歯を用いた。被験者にエリスロシン ウエハー(Wafer)を噛ませて染色した後、各歯を5分割し、これら各部に歯垢があれば1点を加え、なければ0点として、各人1歯当たりの平均値を算出した(最高5点)。
歯磨きをしないで水洗口のみを行った30分後の歯垢付着状態が、上記の評価方法で1歯当たりの平均値が1点以上の「歯垢あり」と判定された、20〜40才の健常人20人を被験者として、各群間の1歯当たりの歯垢付着平均値がほぼ等しくなるように、被験者を10人ずつA群,B群の2つに層別した。A群の10人は実施例5記載の歯牙貼付剤を、B群の10人は比較例5記載の貼付剤を、それぞれ上下顎ごとに1枚ずつ、上下顎とも1〜6番の歯の両面を覆うように3分間貼付して剥がし、そのまま歯ブラシで3分間ブラッシングして水洗口する操作を1日3回、計10日間行った。なお試験期間中は、他の口腔清掃行為は禁止した。10日後の各被験者の歯垢付着状態を、試験開始前と同じ評価方法で判定した。
【0070】
また併せて各被験者に、貼付剤着用中の歯面からのズレの有無と、違和感についてそれぞれ下記の5段階評価でアンケート調査を実施した。最終的に、ズレ、違和感ともA,Bの各群ごとの被験者10人の評点を平均化した値を結果として使用した。
評点(評価) 貼付剤の歯面からのズレ、着用中の違和感
5(◎) 全くない
4(○) ほとんどない
3(○〜△) どちらともいえない
2(△) ややある
1(×) かなりある
実施例5及び比較例5の使用による、歯垢付着量の変化(各群の被験者1歯当たりの平均値)と貼付剤着用中のズレ、違和感の結果(各群の被験者評点の平均値)を表4に示す。
【0071】
【表4】

【0072】
以上の結果から、支持体にオリエンコラーゲンシートを用いた歯牙貼付剤は、同じ厚さ、形状のナイロンポリウレタン製スポンジを支持体に使った場合に比べて、同じう蝕及び歯周病予防組成物を適用した場合でも、歯牙に貼付したときのズレや違和感が少なく、う蝕や歯周病の原因である歯垢の抑制効果に優れる(5%有意)ことを確認した。
【0073】
従って、本発明は歯牙の美白にとどまらず、むし歯、知覚過敏、歯肉炎、歯周病などの歯牙や歯茎の疾患予防や治療、歯質の強化、歯面の汚れ除去、口臭予防などの口腔ケア効果を大きく向上させることが期待される。
【0074】
[実施例6]歯牙美白用貼付剤
下記に示すステイン除去組成物を、厚さ0.05mmのアテロコラーゲンフィルム(豚由来コラーゲンを凍結乾燥したもの、コラーゲン含有率100%)に塗膏させた歯牙貼付歯磨き剤(使用方法:貼付後に剥がしてブラッシング)。
ステイン除去組成物
トリポリリン酸ナトリウム 5.0%
ラウリル硫酸ナトリウム 2.0
エタノール 8.0
ソルビット 30.0
無水ケイ酸 20.0
ヒドロキシエチルセルロース 3.0
アルギン酸ナトリウム 1.0
サッカリンナトリウム 0.02
香料 1.0
水 バランス
計 100.0%
【0075】
[実施例7]う蝕予防貼付剤
下記に示すう蝕予防組成物を、使用直前に厚さ1.5mmの海洋性コラーゲンシート(商品名:オーシャンコラーゲンシート、エアウォーター(株)製、原材料:魚類(サケ)由来コラーゲン+ポリソルベート80、コラーゲン含有率95%)に含浸させた歯牙貼付剤。
う蝕予防組成物(非水物)
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7%
キシリトール 10.0
乳酸カルシウム 0.1
デキストラナーゼ 0.2
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 0.5
香料 0.2
グリセリン バランス
計 100.0%
【0076】
[実施例8]歯牙コーティング用貼付剤
下記に示す歯牙白色化を目的とするコーティング組成物を、厚さ0.5mmのアテロコラーゲンフィルム(鳥由来コラーゲンを凍結乾燥したもの、コラーゲン含有率100%)に塗膏した歯牙貼付剤。
歯牙コーティング組成物(非水物)
ポリエチレングリコール#400 30.0%
シェラック 1.0
(乾燥透明明白ラック、日本シェラック工業(株))
オイドラギットRSPO 1.0
二酸化チタン 3.0
カルボキシビニルポリマー 2.0
サッカリンナトリウム 0.1
香料 0.1
1,3−ブチレングリコール バランス
計 100.0%
【0077】
[実施例9]タバコヤニ除去用貼付剤
下記に示す歯面に付着したタバコヤニ除去を目的とする組成物を、厚さ3.0mmの2層シート(0.5mmのエチルセルロースと2.5mmのコラーゲンスポンジシートで構成、ライオン(株)試作品、コラーゲン含有率60%)のエチルセルロース層側に塗膏した歯牙貼付剤。
タバコヤニ除去組成物
ピロリン酸ナトリウム 3.0%
トリポリリン酸ナトリウム 7.0
シトラールジメチルアセタール 0.3
2−オクタノール 0.05
カルボン 0.05
ソルビトール 20.0
濃グリセリン 30.0
カルボキシビニルポリマー(カーボポール980) 3.0
N−ラウロイルサルコシンナトリウム 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
香料 0.5
水 バランス
計 100.0%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1歯又は複数の歯牙表面に貼ることで、歯牙又は歯茎に口腔ケア物質を供給するための歯牙貼付用製品であって、(a)水不溶性の支持体として、厚さ0.01〜3mmのコラーゲンフィルム又はコラーゲンシートと、(b)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤、口臭予防・除去・隠蔽剤、歯肉炎予防・改善剤、歯周病予防・改善剤から選ばれる1種又は2種以上の有効成分、薬用成分又は機能性素材を含む口腔ケア組成物とを備えたことを特徴とする歯牙貼付用製品。
【請求項2】
(b)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、知覚過敏予防・抑制剤、う蝕予防・修復剤、口臭予防・除去・隠蔽剤、歯肉炎予防・改善剤、歯周病予防・改善剤から選ばれる1種又は2種以上の有効成分、薬用成分又は機能性素材を含む口腔ケア組成物を貼付側に有する(a)水不溶性の支持体としての厚さ0.01〜3mmのコラーゲンフィルム又はコラーゲンシートを、1歯又は複数の歯牙表面に貼ることにより、歯牙又は歯茎に口腔ケア物質を供給する方法。

【公開番号】特開2006−182705(P2006−182705A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378546(P2004−378546)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】