説明

気相成長装置および気相成長方法

【課題】基板表面上における原料ガスの流速を部分的に、かつ、基板表面上の全体的に連続して調節可能な気相成長装置および気相成長方法を提供する。
【解決手段】基板処理室230内に位置して、シャワープレート110と対向するように被処理基板300を支持する基板支持部210と、ガス導入室130内において、ガス配管140とシャワープレート110との間でシャワープレート110と対向するように位置してガス導入室130を分割し、ガス配管140側からシャワープレート110側に原料ガス180を通過させる複数の孔部121を有する仕切板120と、仕切板120を傾斜可能に支持して、仕切板120とシャワープレート110との間の距離を連続的に変更可能なシャフト160とを備える。シャフト160により仕切板120の位置を調節することにより、孔部111および孔部121を通過する流速を調整された原料ガス180を基板支持部210に支持された被処理基板300上に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置および気相成長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に成膜する気相成長装置を開示した先行文献として、特許文献1および2がある。特許文献1に開示された気相成長装置においては、多数のガス噴出穴を備えて原料ガスを基板上に供給するシャワーヘッドを中心から径方向に沿って複数に分割し、各ブロック毎にガス流量を独立に制御することにより、原料ガスの径方向のガス濃度分布を制御可能にして、均一な膜厚で成膜することを試みている。
【0003】
特許文献2に開示された気相成長装置は、チャンバと、ガス供給部とを備え、チャンバ内をバッファ領域と反応領域とに区分されている。また、気相成長装置は、貫通孔が形成されてプロセスガスを整流するガス整流板と、バッファ領域においてガス整流板に対して所定距離離間して設けられて、ガス整流板を通過するプロセスガスの流量を制御するガス遮蔽板とを備える。さらに、気相成長装置は、反応領域に設けられてウェハを載置するホルダと、チャンバ内からプロセスガスを排気するガス排気部とを備える。これにより、基板の気相成長膜が成膜される全面に供給されるプロセスガスの流量を調整し、基板全面における膜厚および不純物濃度の均一性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−309075号公報
【特許文献2】特開2009−71017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板上に均一な膜厚で成膜するためには、基板表面の全体の上方における原料ガスの流速を部分ごとに調節する必要がある。ただし、その調節は段階的なものではなく、連続的に流速が変化するように調節することが必要である。
【0006】
特許文献1に記載された気相成長装置においては、シャワーヘッドを中心から径方向に沿って複数に分割して、各ブロック毎にガス流量を調節しているため、ブロック間においてガス流量が段階的に変化する。そのため、基板上に成膜される膜の膜厚も段階的に変化して均一にすることができない。
【0007】
特許文献2に記載された気相成長装置においては、基板の大きさより小さなガス制御板を用いて原料ガスの流量を調整している。この場合、ガス制御板の縁より内側の部分と外側の部分とにおいてガス流量が段階的に変化する。そのため、基板上に成膜される膜の膜厚も段階的に変化して均一にすることができない。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、基板表面上における原料ガスの流速を部分的に、かつ、基板表面上の全体的に連続して調節可能な気相成長装置および気相成長方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に基づく気相成長装置は、被処理基板に気相成長を行なうための原料ガスを導入するガス導入部が接続されたガス導入室と、ガス導入室に隣接して設けられ、内部で被処理基板の気相成長が行なわれる基板処理室と、ガス導入室と基板処理室とを区切り、ガス導入室に導入された原料ガスを基板処理室内に通過させる複数の第1孔部を有する壁部とを備える。また、気相成長装置は、基板処理室内に位置して、壁部と対向するように被処理基板を支持する基板支持部と、ガス導入室内において、ガス導入部と壁部との間で壁部と対向するように位置してガス導入室を分割し、ガス導入部側から壁部側に原料ガスを通過させる複数の第2孔部を有する仕切板と、仕切板を傾斜可能に支持して、仕切板と壁部との間の距離を連続的に変更可能な可動支持部とを備える。可動支持部により仕切板の位置を調節することにより、第1孔部および第2孔部を通過する流速を調整された原料ガスを基板支持部に支持された被処理基板上に供給する。
【0010】
好ましくは、気相成長装置は、可動支持部の動作を制御する制御部と、被処理基板上に気相成長される膜の膜厚を検知する検知部とをさらに備える。制御部は、検知部による被処理基板上の膜の膜厚の検知結果に基づいて可動支持部を動作させる。
【0011】
好ましくは、仕切板を基板支持部に支持された被処理基板の主表面に直交する方向に投影した投影領域内に、被処理基板が基板支持部により支持されている。
【0012】
本発明に基づく気相成長方法は、被処理基板に気相成長を行なうための原料ガスをガス導入室に導入する工程と、ガス導入室とは複数の第1孔部を有する壁部を介して隣接する基板処理室に、ガス導入室から壁部の複数の第1孔部を通過させて、基板処理室内の被処理基板上に原料ガスを供給して気相成長させる工程とを備える。上記気相成長させる工程において、ガス導入室を分割するように位置して複数の第2孔部を有する仕切板のガス導入室内における位置を調節することにより、第1孔部および第2孔部を通過する原料ガスの流速を被処理基板上において連続的に変化するように調整して、被処理基板上に原料ガスを供給する。
【0013】
好ましくは、気相成長方法は、被処理基板上に気相成長している膜の膜厚を検知する工程をさらに備える。上記流速を調整する工程において、膜厚の検知結果に基づいて、仕切板の位置を調節する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板表面上における原料ガスの流速を部分的に、かつ基板表面上の全体的に連続して調節することにより、基板上に均一な膜厚で成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る気相成長装置の構成を示す断面図である。
【図2】仕切板の上方から仕切板、シャワープレートおよび基板支持部を見た平面図である。
【図3】締結部材である球面座金の構成を示す断面図である。
【図4】同実施形態の変形例の締結部材の構成を示す断面図である。
【図5】原料ガスとして水素または窒素を用いた際の流速分布を示すグラフである。
【図6】同実施形態の気相成長装置において仕切板を傾けた状態を示す断面図である。
【図7】同実施形態に係る気相成長装置において形成した膜の膜圧のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る気相成長装置および気相成長方法について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰返さない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る気相成長装置の構成を示す断面図である。図2は、仕切板の上方から仕切板、シャワープレートおよび基板支持部を見た平面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の気相成長装置1は、上方に位置するシャワーヘッド100と、下方に位置する反応炉200とを含む。シャワーヘッド100および反応炉200は、略円筒状の外形を有している。
【0019】
シャワーヘッド100には、被処理基板300に気相成長を行なうための原料ガスを導入するガス導入部であるガス配管140が接続されたガス導入室130が形成されている。
【0020】
反応炉200には、ガス導入室130に隣接して設けられ、内部で被処理基板300の気相成長が行なわれる基板処理室230が形成されている。ガス導入室130と基板処理室230とは、壁部であるシャワープレート110により区切られている。
【0021】
シャワープレート110には、ガス導入室130に導入された原料ガス180を基板処理室230内に通過させる第1孔部である複数の孔部111が形成されている。複数の孔部111は、互いに所定の間隔を置いて均等に配置され、上下方向に貫通している。また、シャワープレート110には、冷媒が流動するための流路112が形成されている。流路112は、複数の孔部111の各々の周囲を繋いで連通するように形成されている。シャワープレート110の一方の側部に流路112の入口が形成され、他方の側部に流路112の出口が形成されている。
【0022】
ガス導入室130内には、ガス配管140とシャワープレート110との間でシャワープレート110と対向するように位置してガス導入室130を分割する仕切板120が設けられている。ガス導入室130は、仕切板120により上部空間131と下部空間132とに分割される。
【0023】
図2に示すように、仕切板120は、円盤状の外形を有し、第2孔部である上下方向に貫通した複数の孔部121が形成されている。複数の孔部121は、互いに所定の間隔を置いて均等に配置されている。仕切板120の大きさは、基板支持部210の上面の大きさより大きい。言い換えると、仕切板120を基板支持部210に支持された被処理基板300の主表面に直交する方向に投影した投影領域内に、被処理基板300が基板支持部210により支持されている。具体的には、仕切板120の直径を500mmとした。
【0024】
仕切板120に形成された複数の孔部121の各々の直径は、シャワープレート110に形成された複数の孔部111の各々の直径よりも大きい。また、仕切板120に形成された複数の孔部121の位置は、気相成長装置1における上下方向すなわち鉛直方向において、シャワープレート110の複数の孔部111の位置と重複しないように形成されている。仕切板120の縁とガス導入室130の内壁との間には、隙間133が設けられている。
【0025】
仕切板120には、可動支持部である3本のシャフト160の各々が、締結部材170により取付けられている。具体的には、仕切板120の中心にシャフト162が取付けられ、シャフト162から等間隔に対称な位置にシャフト161とシャフト162とが取付けられている。仕切板120には、3本のシャフト160が取付けられる位置に3つの貫通孔123が設けられている。
【0026】
3本のシャフト160は、シャワーヘッド100の外部に配置された3台のモータ150にそれぞれ接続されている。3台のモータ150は、3本のシャフト160をそれぞれ独立して上下方向に移動させることができる。3本のシャフト160を同時に同様に移動させることにより、仕切板120をシャワープレート110に対して略平行な状態を維持して移動させることができる。本実施形態においては、3本のシャフト160で仕切板120を支持しているが、仕切板120の支持構造はこれに限られず、後述するように仕切板120を傾斜可能に支持できる構造であればよい。
【0027】
基板処理室230内には、シャワープレート110と対向するように被処理基板300を支持する基板支持部210が設けられている。具体的には、基板支持部210の上面に凹部211が形成され、その凹部211内に被処理基板300が載置される。被処理基板300は、基板支持部210に支持された状態において、シャワープレート110の下面に対向している。
【0028】
基板支持部210は、図示しないアクチュエータによって回転自在に保持された回転軸212と連結されている。基板支持部210が回転軸212を中心として回転することにより、被処理基板300が基板支持部210上で回転しつつ保持される。基板支持部210の下方には、被処理基板300を加熱するためのヒータ220が配置されている。
【0029】
反応炉200の下部には、基板処理室230と連通して、基板処理室230内を排気するための排気口240が設けられている。排気口240は、図示しないポンプに接続されている。
【0030】
以下、仕切板120とシャフト160との締結構造について説明する。図3は、締結部材である球面座金の構成を示す断面図である。図3に示すように、本実施形態においては、3本のシャフト160の各々は、仕切板120の貫通孔123に挿通する細径部分160aの直径が他の部分の直径より小さくされている。また、3本のシャフト160の各々において、モータ150と接続される側とは反対側の端部にはねじが切られている。
【0031】
図1,3に示すように、仕切板120は、仕切板120の両面に接触するように球面座金171が配置された状態で、3つの貫通孔123に3本のシャフト160が挿通されてナット172と3本のシャフト160の各々のねじが締結されることにより、3本のシャフト160で支持される。
【0032】
図3に示すように、球面座金171は、凸面部材173と凹面部材174とから構成されている。凸面部材173のシャフト160が挿入される内面173aと直径がL1であるシャフト160の細径部分160aとの間には、2L2のクリアランスが設けられている。
【0033】
このクリアランス2L2の分だけ、凸面部材173は、凹面部材174に対してスライド面175に沿って図中の矢印で示す方向にスライドすることができる。その結果、仕切板120をシャフト160の軸方向に対して傾けることができる。
【0034】
図4は、本実施形態の変形例の締結部材の構成を示す断面図である。図4に示すように、変形例の締結部材170aは、球面座金の代わりに平座金171aを用いて、ナット172aで固定する際に、平座金171aと仕切板120との間に隙間179が形成されるようにしている。このようにした場合にも、仕切板120をシャフト160の軸方向に対して傾けることができる。なお、締結部材170の構成は、上記の構成に限られない。
【0035】
以下、気相成長装置1に導入された原料ガス180の流動形態について説明する。
図1に示すように、気相成長装置1においては、ガス配管140からガス導入室130の上部空間131内に導入された原料ガス180は、まず、仕切板120の上面122に当たって上部空間131内において拡散する。上部空間131内に導入された原料ガス180の一部は、仕切板120の複数の孔部121を通過して下部空間132に流入する。また、原料ガス180のうちの極一部は、隙間133を通過して下部空間132に流入する。
【0036】
上部空間131の高さ、すなわち、仕切板120の上面122とそれに対向するガス導入室130の内壁との間の距離が一定である場合、複数の孔部121を通過した原料ガス181の流速は、複数の孔部121の全体において略均一となる。
【0037】
下部空間132に流入した原料ガス181は、シャワープレート110の複数の孔部111を通過して基板処理室230内に供給される。複数の孔部111を通過した原料ガス182は、基板支持部210上で回転されつつ支持されている被処理基板300の表面上に達する。被処理基板300上に達した原料ガス182は、排気口240から矢印183で示す方向に排気される。
【0038】
本実施形態においては、仕切板120に形成された複数の孔部121の各々の直径は、シャワープレート110に形成された複数の孔部111の各々の直径よりも大きいため、下部空間132内の圧力は、基板処理室230内の圧力より高くなる。そのため、下部空間132に流入して均一化された原料ガス181を、均一性を維持した状態で基板処理室230内に供給することができる。
【0039】
また、仕切板120に形成された複数の孔部121の位置は、鉛直方向において、シャワープレート110の複数の孔部111の位置と重複しないように形成されているため、複数の孔部121を通過した原料ガス181が真っ直ぐに流動して複数の孔部111を通過することを抑制することができる。このようにすることにより、シャワープレート110の複数の孔部111の各々を通過して流動する原料ガス182の流速のばらつきを低減することができる。
【0040】
被処理基板300の表面上に均一な膜厚の膜を形成するためには、ヒータ220による被処理基板300の加熱分布および排気口240からの排気などの影響を考慮して、被処理基板300の表面上における原料ガス182の流速分布を調節する必要がある。特に、排気口240に近くかつヒータ220から遠い位置である、基板支持部210の上面の縁部の近傍に位置している被処理基板300において膜厚が不均一になりやすい。そのため、基板支持部210の縁部の近傍に位置している被処理基板300の表面上における原料ガス182の流速を調節する必要がある。
【0041】
また、原料ガス182の流速分布は、原料ガスの種類によっても異なる。図5は、原料ガスとして水素または窒素を用いた際の流速分布を示すグラフである。図5においては、縦軸に原料ガスの流速を示し、横軸に仕切板の中心からの径方向における距離を示している。なお、図5に示すグラフは、シミュレーション解析の結果である。
【0042】
図5に示すように、原料ガス180として水素を用いた場合と窒素を用いた場合とでは、まったく同じ条件で原料ガス180を導入したにも関わらず、仕切板120の径方向において原料ガス182の流速分布がまったく異なる。
【0043】
上記のように、原料ガス182の流速分布は種々の要因から影響を受けるため、仕切板120を仕切板120の径方向において同一の高さで配置した状態では、原料ガス182の流速分布を所望の流速分布にすることはできない。そのため、本実施形態においては、仕切板120を傾斜して支持可能にされている。
【0044】
たとえば、図中の左側における原料ガス182の流速を大きくし、右側における原料ガス182の流速を小さくするように調節する場合について説明する。図6は、本実施形態の気相成長装置において仕切板を傾けた状態を示す断面図である。図6においては、分かりやすくするために、仕切板120の傾斜を大きく図示している。
【0045】
図6に示すように、モータ150を駆動してシャフト161を矢印161aで示す方向に移動させる。また、モータ150を駆動してシャフト163を矢印163bで示す方向に移動させる。このとき、シャフト162は固定されている。このように3本のシャフト160を配置することにより、仕切板120は、図中の左側が右側より低くなるように傾斜した状態で支持される。
【0046】
なお、隙間133は、3本のシャフト160の動きにより、仕切板120とガス導入室130の内壁とが接触しないようにするために設けられている。隙間の大きさとしては、仕切板120の複数の孔部121の数および孔径との関係から、たとえば、0.5mm以上1.8mm以下に設定され、本実施形態においては0.8mmである。
【0047】
3本のシャフト160の移動パターンは様々であり、たとえば、シャフト163を固定した状態で、シャフト161およびシャフト162を下方に移動させることによっても、仕切板120を左肩下がりに支持することができる。
【0048】
上記のように仕切板120を左肩下がりに支持した場合、ガス導入室130内の上部空間131においては、仕切板120の上面122とそれに対向するガス導入室130の内壁との距離は、図中の左側の方が右側の方よりも長くなる。言い換えると、上部空間131は、図中の左側の方が右側の方より広くなっている。
【0049】
そのため、ガス配管140から上部空間131内に導入された原料ガス180は、仕切板120の上面122に沿って矢印180aで示す方向である広い空間が存在する左側の方に向けて流動する。その結果、上部空間131内における原料ガス180の流速は、左側の方が右側より大きくなる。
【0050】
よって、左側の方において仕切板120の複数の孔部121を通過した原料ガス181aの流速は、右側の方における原料ガス181bの流速より大きくなる。この流速の違いは、シャワープレート110の複数の孔部111を通過する際に小さくなるが、左側の方において複数の孔部111を通過した原料ガス182aの流速の方が右側の方における原料ガス182bの流速より大きくなる。
【0051】
このように、仕切板120を傾斜して支持した状態において、原料ガス180を導入することにより、所望の流速分布で原料ガス182を供給することができる。仕切板120は、基板支持部210の上面より大きく形成されているため、被処理基板300の表面の上方における原料ガス182の流速分布は連続的に変化している。言い換えると、仕切板120の縁の外側において、原料ガス182の流速が急激に変化する位置に被処理基板300は配置されていない。その結果、被処理基板300上に均一な膜厚の膜を形成することができる。
【0052】
なお、仕切板120を傾斜させるために設けた隙間133は、仕切板120の複数の孔部121の面積に比べて十分に小さいため、原料ガス182の流速分布に対する実質的な影響はない。
【0053】
好ましくは、気相成長装置1は、3本のシャフト160の動作を制御する図示しない制御部と、被処理基板300上に気相成長される膜の膜厚を検知する図示しない検知部とをさらに備える。制御部は、検知部による被処理基板300上の膜の膜厚の検知結果に基づいてモータ150を駆動して3本のシャフト160をそれぞれ動作する。
【0054】
このようにした場合、気相成長を行ないつつ、形成される膜の状態に対応して仕切板120を傾斜させることができる。その結果、複数の孔部121を通過する原料ガス181および複数の孔部111を通過する原料ガス182の流速を調整した状態で、基板支持部210に支持された被処理基板300上に原料ガス182を供給することができる。よって、被処理基板300上に形成される膜の膜厚を均一にすることができる。
【0055】
なお、本実施形態においては、原料ガス180として水素ガスを用いたが、原料ガス180はこれに限られず、窒素ガスなどの他のガス種を用いることができる。
【0056】
以下、本実施形態の気相成長装置1を用いて気相成長した場合の膜厚をシミュレーションした結果を説明する。図7は、本実施形態に係る気相成長装置において形成した膜の膜圧のシミュレーション結果を示すグラフである。図7においては、縦軸に膜厚分布、横軸に基板上の位置を示している。基板上の位置は、基板中心からの距離で示している。
【0057】
シミュレーション条件としては、原料ガス180として水素ガスを使用し、原料ガス180の導入量は300SLMとした。図7中の補正前とは、仕切板120を傾斜させていない状態で気相成長を行なった場合であり、補正後とは、仕切板120を3°傾斜させた状態で気相成長を行なった場合である。具体的には、3本のシャフト160の1つを固定した状態において、残りの2つを下側に1.5mm傾ける補正を実施した。被処理基板300は直径360mmのものを使用した。図7においては、被処理基板300の半径分を図示している。
【0058】
図7に示すように、補正前の状態においては、被処理基板300の縁の近傍で膜厚が厚くなり不均一となっている。一方、補正後の状態においては、被処理基板300の表面全体において均一な膜が形成されていることが確認された。
【0059】
仕切板120の傾斜位置を変える際には、シャワーヘッド100を開放する必要がないため、簡易に仕切板120の位置の変更を行なうことができる。なお、3本のシャフト160の動作を制御するには、作業者がモータ150の駆動を操作することによって行なってもよいし、上記の制御部により管理してもよい。
【0060】
上記構成により、被処理基板表面上における原料ガスの流速を部分的に、かつ、被処理基板表面上の全体的に連続して調節できるため、大面積な被処理基板に均等な結晶性の膜を形成することが可能となる。また気相成長装置のメンテナンスが容易となり、装置のコストを低減することもできる。
【0061】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 気相成長装置、100 シャワーヘッド、110 シャワープレート、111,121 孔部、112 流路、120 仕切板、122 上面、123 貫通孔、130 ガス導入室、131 上部空間、132 下部空間、133,179 隙間、140 ガス配管、150 モータ、160,161,162,163 シャフト、160a 細径部分、170,170a 締結部材、171 球面座金、171a 平座金、172,172a ナット、173 凸面部材、173a 内面、174 凹面部材、175 スライド面、180,181,181a,181b,182,182a,182b 原料ガス、200 反応炉、210 基板支持部、211 凹部、212 回転軸、220 ヒータ、230 基板処理室、240 排気口、300 被処理基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に気相成長を行なうための原料ガスを導入するガス導入部が接続されたガス導入室と、
前記ガス導入室に隣接して設けられ、内部で被処理基板の気相成長が行なわれる基板処理室と、
前記ガス導入室と前記基板処理室とを区切り、前記ガス導入室に導入された前記原料ガスを前記基板処理室内に通過させる複数の第1孔部を有する壁部と、
前記基板処理室内に位置して、前記壁部と対向するように被処理基板を支持する基板支持部と、
前記ガス導入室内において、前記ガス導入部と前記壁部との間で前記壁部と対向するように位置して前記ガス導入室を分割し、前記ガス導入部側から前記壁部側に前記原料ガスを通過させる複数の第2孔部を有する仕切板と、
前記仕切板を傾斜可能に支持して、前記仕切板と前記壁部との間の距離を連続的に変更可能な可動支持部と
を備え、
前記可動支持部により前記仕切板の位置を調節することにより、前記第1孔部および前記第2孔部を通過する流速を調整された前記原料ガスを前記基板支持部に支持された被処理基板上に供給する、気相成長装置。
【請求項2】
前記可動支持部の動作を制御する制御部と、
被処理基板上に気相成長される膜の膜厚を検知する検知部と
をさらに備え、
前記制御部は、前記検知部による被処理基板上の膜の膜厚の検知結果に基づいて前記可動支持部を動作させる、請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記仕切板を前記基板支持部に支持された被処理基板の主表面に直交する方向に投影した投影領域内に、被処理基板が前記基板支持部により支持されている、請求項1または2に記載の気相成長装置。
【請求項4】
被処理基板に気相成長を行なうための原料ガスをガス導入室に導入する工程と、
前記ガス導入室とは複数の第1孔部を有する壁部を介して隣接する基板処理室に、前記ガス導入室から前記壁部の前記複数の第1孔部を通過させて、前記基板処理室内の被処理基板上に前記原料ガスを供給して気相成長させる工程と、
を備え、
前記気相成長させる工程において、前記ガス導入室を分割するように位置して複数の第2孔部を有する仕切板の前記ガス導入室内における位置を調節することにより、前記第1孔部および前記第2孔部を通過する前記原料ガスの流速を被処理基板上において連続的に変化するように調整する、気相成長方法。
【請求項5】
被処理基板上に気相成長している膜の膜厚を検知する工程をさらに備え、
前記流速を調整する工程において、前記膜厚の検知結果に基づいて、前記仕切板の位置を調節する、請求項4に記載の気相成長方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−126968(P2012−126968A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280419(P2010−280419)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】