説明

水中油中アルコール型エマルション組成物

【課題】本発明は、水及び油に極めて溶けにくい物質、又はほとんど溶けない物質、あるいは水に不安定な物質も配合可能な水中油中アルコール型エマルション組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 (a)ヒドロキシプロピルセルロースを含有し、ゲル状を呈するアルコール相、(b)パルミチン酸デキストリンを含有し、ゲル状を呈する油相、並びに(c)けん化度が70〜96mol%のポリビニルアルコール及びカルボキシビニルポリマーを含有し、ゲル状を呈する水相を有することを特徴とする水中油中アルコール型エマルション組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油中アルコール型エマルション組成物に関し、更に詳しくは、水や油に極めて溶けにくい物質、又はほとんど溶けない物質、あるいは水に不安定な物質を安定に内封することが可能な水中油中アルコール型エマルション組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、医薬部外品及び化粧品の分野において、油相に水相を分散状態で含む油中水型(W/O)エマルションから構成されるクリーム剤組成物は一般的に用いられている。
【0003】
このW/Oエマルションに薬物を配合する場合、水や油への溶解性の低い薬物は分散で配合する必要があり、分散安定性等が問題となる可能性がある。
【0004】
更に、インドメタシン等の薬物は、水の存在により分解が促進されることも知られており(非特許文献1参照)、一般的なエマルションに安定に配合することは困難であった。
【0005】
上記課題を解決する1つの方法として、内相をアルコール相とする油中アルコール型(A/O)エマルションが報告されている(特許文献1〜3参照)。A/Oエマルションはアルコールの揮発性によって、塗布直後に冷却感が得られるので、使用感も良好である。
【0006】
また、塗布後のべたつきや、さっぱりとした使用感をより良好にするために水中油中アルコール型(A/O/W)エマルション組成物が報告されている(特許文献4及び5、並びに非特許文献2参照)。A/O/Wエマルションは3相が共に異なっていることから、アルコール相と水相の浸透圧差が非常に大きくなることによって不安定になりやすい。従って、安定に存在させるためには界面活性剤を配合する必要がある。
【0007】
しかし、医薬品や化粧品のように直接皮膚に使用されるエマルション組成物では、配合される界面活性剤が皮膚に刺激を与える原因の一つとなることがあった(非特許文献3及び4参照)。従って、より安全性の高いエマルション組成物とするために、界面活性剤を使用しないA/O/Wエマルション組成物の作製が期待されているが、未だ報告例は無い。
【0008】
【特許文献1】特開2001−269115号公報
【特許文献2】特開昭61−209035号公報
【特許文献3】特開昭62−216635号公報
【特許文献4】特開2001−192459号公報
【特許文献5】特開2002−301356号公報
【非特許文献1】後藤茂ら、薬剤学、29(2)、118-124(1969)
【非特許文献2】Jin-Chu Kimら、Drug Delivery、10、119-123(2003)
【非特許文献3】鈴木民恵ら、日皮協ジャーナル、51、177-183(2004)
【非特許文献4】辰見寿ら、皮膚、33(11)、31-38(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水や油に極めて溶けにくい物質、又はほとんど溶けない物質、あるいは水に不安定な物質も配合可能な水中油中アルコール型(以下、適宜「A/O/W」という)エマルション組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、課題を解決するために種々検討した結果、パルミチン酸デキストリンで
ゲル状とした油にヒドロキシプロピルセルロースでゲル状としたアルコールを加え分散さ
せA/Oエマルションを作製し、さらにけん化度が70〜96mol%のポリビニルアルコール及びカルボキシビニルポリマーでゲル状とした水に前記A/Oエマルションを加え分散させることで、界面活性剤を配合しなくとも、目的が達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は
(1)(a)ヒドロキシプロピルセルロースを含有し、ゲル状を呈するアルコール相、(b)パルミチン酸デキストリンを含有し、ゲル状を呈する油相、並びに(c)けん化度が70〜96mol%のポリビニルアルコール及びカルボキシビニルポリマーを含有し、ゲル状を呈する水相を有することを特徴とする水中油中アルコール型エマルション組成物。
(2)アルコール相に多価アルコール、又は多価アルコール及び炭素原子数1〜3のアルコールを含むことを特徴とする(1)に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
(3)多価アルコールが、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びジプロピレングリコールから選ばれる1種又は2種以上である(2)に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
(4)炭素原子数1〜3のアルコールが、エタノール、及びイソプロパノールから選ばれる1種又は2種である(2)に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
(5)油相に非極性の液体油を含むことを特徴とする(1)に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
(6)油相に非極性の半固形脂、又は非極性の液体油及び非極性の半固形脂を含むことを特徴とする(1)に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
(7)実質的に界面活性剤を含まないことを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1つに記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
(8)アルコール相に実質的に水を含まないことを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1つに記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
(9)アルコール相に機能性成分が溶解又は分散していることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1つに記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
(10)機能性成分が、水及び油に極めて溶けにくい物質、又はほとんど溶けない物質、あるいは水に不安定な物質である(9)に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
(11)皮膚に適用されることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1つに記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、安定で、皮膚に使用した場合に刺激が少なく安全性の高い、水中油中アルコール型エマルションを得ることができた。また、アルコール中に水や油に極めて溶けにくい物質、又はほとんど溶けない物質、あるいは水に不安定な物質を配合することにより、該物質を安定に配合することが可能となった。さらに、得られたA/O/Wエマルションを皮膚外用剤として使用した場合、塗布時の使用感に優れていた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、水中油中アルコール型エマルション組成物とは連続相である水相に、油中アルコール型エマルションが分散している組成物である。油中アルコール型エマルションとは連続相である油相に、アルコール相が分散しているエマルション組成物である。本発明の水中油中アルコール型エマルション組成物の模式図を図1に示す。
【0014】
本発明において、水中油中アルコール型エマルションを構成する水相、油相、及びアルコール相はいずれもゲル状を呈することを特徴とする。各相をゲル状にすることで各相の流動性を低下させ、各相同士の合一速度を遅くすることによって、A/O/Wエマルションを安定に保つことができる。そのために各相は、高い粘度を示すゲル状である必要がある。すなわち本発明においてゲル状とは、A/O/Wエマルションを安定に存在させることができる程度の粘度を有することを意味する。
【0015】
本発明において、ヒドロキシプロピルセルロースは、セルロースを水酸化ナトリウムで処理した後、プロピレンオキサイド等のエーテル化剤と反応して得られる非イオン性のセルロースエーテルであり、日本薬局方にも収載されている。本発明においては一般に市販されているものを使用することができる。
【0016】
ヒドロキシプロピルセルロースは、セルロースが部分的にヒドロキシプロピルで置換されたものであり、例えば2%水溶液の粘度が6.0〜10.0mPa・s、150〜4000mPa・s、1000〜40000mPa・sなどの粘度の異なるいくつかのタイプあるが、本発明ではそれら分子量や粘度に関係なく、一般に使用されるものを用いることができる。
【0017】
ヒドロキシプロピルセルロースの配合量は、安定性及び製剤化の点からA/O/Wエマルション組成物全量に対して、0.02〜1.5質量%が好ましく、0.05〜1質量%がさらに好ましい。
【0018】
パルミチン酸デキストリンはパルミチン酸とデキストリンのエステルであり、置換度などによりいくつかのタイプあるが、本発明ではそれら分子量や置換度に関係なく、一般に使用されるものを用いることができる。
【0019】
パルミチン酸デキストリンの配合量は、安定性及び製剤化の点からA/O/Wエマルション組成物全量に対して、0.005〜6質量%が好ましく、0.05〜6質量%がさらに好ましく、0.1〜5質量%がよりさらに好ましい。
【0020】
ポリビニルアルコールとは、酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニルを部分的にけん化したものを意味し、例えば、水溶液粘度(4%)が4.8〜5.8、20.5〜24.5、27.0〜33.0、40.0〜46.0など粘度の異なるいくつかのタイプがあるが、本発明はそれら分子量や粘度に関係なく、一般に使用されているけん化度が70〜96mol%のものを使用すれば、安定なA/O/Wエマルションを製造することができる。製剤化や使用感の観点から、78〜96mol%のポリビニルアルコールが好ましく、特に85〜90mol%のポリビニルアルコールが好ましい。
【0021】
ポリビニルアルコールの配合量は、安定性及び製剤化の点からA/O/Wエマルション組成物全量に対して0.1〜4.0質量%が好ましく、0.2〜3.0質量%がさらに好ましい。
【0022】
カルボキシビニルポリマーとは、アクリル酸の共重合体を意味し、例えば、水溶液粘度(0.5%)4000〜10000mPa・s、40000〜60000mPa・sなど粘度の異なるいくつかのタイプがあるが、本発明はそれらの種類に関係なく、通常増粘剤として用いられているものを使用することができる。例えば皮膚用の外用クリームとする場合には、比較的粘度の高いタイプを主に用いるのが好ましく、ローション剤とする場合には、粘度の低いタイプを主に用いるのが好ましい。
【0023】
カルボキシビニルポリマーの配合量は、安定性及び製剤化の点からA/O/Wエマルション組成物全量に対して0.05〜3.0質量%が好ましく、0.1〜0.6質量%がさらに好ましい。
【0024】
本発明におけるアルコール相を形成するアルコール成分の例としては、炭素数1〜3のアルコール、多価アルコールが挙げられる。炭素数1〜3のアルコールとしては、安全性の点からエタノール及びイソプロパノ−ルが好ましい。多価アルコールとしては、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましい。また、これらアルコールを任意に組み合わせることが可能である。
【0025】
本発明において多価アルコールと炭素数1〜3のアルコールを混合して配合する場合は、多価アルコールに対する炭素数1〜3のアルコールの配合比は1以下が好ましい。多価アルコールに対する炭素数1〜3のアルコールの配合比が1を超えると、A/O/Wエマルションがうまく調製できない場合があるからである。
【0026】
本発明において、油相を形成する油成分は非極性の液体油又は非極性の半固形脂が好ましい。ここで、非極性の液体油とは極性を持たず、常温(25℃)で液体の油成分であり、特に好ましいものとして流動パラフィン、軽質流動パラフィン及びスクワランから選ばれる1種又は2種以上をあげることができる。また、非極性の半固形脂とは極性を持たず、常温(25℃)で軟膏ようの油成分であり、特に好ましいものとして白色ワセリン、ゲル化炭化水素から選ばれる1種又は2種以上をあげることができる。
【0027】
油成分は、1種又は2種以上組み合わせて使用することができ、本発明の効果を損なわない範囲で固形脂などを配合することもできる。
【0028】
A/O/Wエマルション組成物中のA/Oエマルションにおけるアルコール相の油相に対する割合は、製剤上の観点から1以下が好ましい。
【0029】
A/O/Wエマルション組成物中のA/Oエマルションの水相に対する割合は、製剤上の観点から、2/3以下が好ましい。
【0030】
本発明のA/O/Wエマルション組成物は、pHが3.5〜8.5に調整することが好ましい。pHの値が3.5以下の場合には乳化安定性が悪くなり、目的のA/O/Wエマルション組成物を得ることができない。また、本発明のA/O/Wエマルション組成物を皮膚用に使用する場合、pH8.5以上では皮膚に対する刺激が起きることが懸念され、皮膚用には適さない。製剤化の観点から、pHは4.5〜8.0に調整することがより好ましい。
【0031】
pH調節剤は、特に制限されないが、通常の医薬品や化粧品に配合される塩基性の化合物を使用することができる。例えば、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化カリウム、クエン酸ナトリウムを挙げることができる。pH調節の際には、これらのpH調節剤を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
本発明ではアルコール相に機能性成分などの成分を任意に配合することができる。本発明において、機能性成分とは医薬品、医薬部外品、化粧品などで何らかの機能を期待して配合する成分であり、特に、水や油に極めて溶けにくい物質、又はほとんど溶けない物質、あるいは水に不安定な物質を用いる場合、本発明で特に好適に用いられる。極めて溶けにくい物質、又はほとんど溶けない物質とは、日本薬局方で定義されている、「極めて溶けにくい」又は「ほとんど溶けない」物質を意味する。また、水に不安定な物質とは、水の存在により加水分解や酸化分解をおこしてしまう物質を意味する。そのような具体的な物質としては、グリチルレチン酸、デキサメタゾン及びその塩類、ヒドロコルチゾン及びその塩類、インドメタシン、ピロキシカム、ミコナゾール及びその塩類、テルビナフィン及びその塩類、生薬成分などがあげられる。
【0033】
本発明において「アルコール相に実質的に水を含まない」とは、アルコール相に水を加える操作を行わず、一般に市販されているアルコール類をそのまま用いる、ということを意味する。好ましくは、無水アルコールが用いられる。
【0034】
本発明では界面活性剤を配合しなくても安定なA/O/Wエマルションを得ることができる。ここで界面活性剤とは親水基と疎水基を有しており、一般的に水に溶解して表面張力などの性質を大きく変化させると同時に、水中でミセル等の会合体を形成する化合物を意味する。
【0035】
本発明において「実質的に界面活性剤を含まない」とは、界面活性剤が配合されていないか、又は界面活性剤が界面活性作用を発揮することができない程度の少量配合されていることを意味する。具体的には、A/O/Wエマルション組成物の全量に対し、0.00003質量%以下である。
【0036】
本発明のA/O/Wエマルション組成物は、クリーム剤やローション剤として利用することができ、主に皮膚に適用される。
【0037】
本発明のA/O/Wエマルション組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、有効成分及び医薬品、医薬部外品及び化粧品に配合可能な種々の基剤成分を加えることができる。
【0038】
有効成分としては、例えば、抗菌剤、抗炎症剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、組織修復剤、鎮痒剤、保湿剤、美白剤、血管収縮剤、抗アレルギー剤、抗ウイルス剤、清涼化剤、酸素除去剤、ビタミン、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤があげられる。これらは水相、油相、アルコール相に適宜配合することができる。
【0039】
基剤成分としては、炭化水素、ワックス成分、抗酸化剤、乳化安定剤、ゲル化剤、増粘剤、粘着剤等、各種動植物からの抽出物、防腐剤、キレート剤、香料、色素等があげられる。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例、比較例、試験例により、本発明を更に詳しく説明する。以下で、w/w%とは質量%を意味する。実施例及び比較例には、ジイソプロパノールアミン、水酸化ナトリウム、トリエチルアミンのうち1種を適量配合してpHを5.0〜7.5に調整した。
【0041】
実施例1
軽質流動パラフィン 12.4w/w%
パルミチン酸デキストリン 1.6w/w%
1,3−ブチレングリコール 5.9w/w%
ヒドロキシプロピルセルロース 0.1w/w%
カルボキシビニルポリマー 0.25w/w%
ポリビニルアルコール(けん化度86.5〜89.0mol%) 0.5w/w%
ジイソプロパノールアミン 適量
精製水 全100w/w%
【0042】
パルミチン酸デキストリン1.6gを70〜95℃に加温した軽質流動パラフィン12.4gに分散し、油相とする。更にヒドロキシプロピルセルロース0.1gを70〜95℃に加温した1,3−ブチレングリコール5.9gに分散し、アルコール相とする。油相にアルコール相を加え、攪拌しながら室温まで冷却してA/Oエマルションとした。別にカルボキシビニルポリマー0.25gを精製水30gに分散し、70〜95℃まで加温する。更にポリビニルアルコール0.5gを70〜95℃に加温した精製水30gに溶解する。2つの水溶液を合わせ水相とした。室温まで冷却した水相にA/Oエマルションを加え撹拌した後、ジイソプロパノールアミン(適量)を精製水10gに溶解したものを加え、更に残りの精製水を加え、均一になるまで攪拌してクリーム剤を得た。
【0043】
実施例2
酢酸ヒドロコルチゾン 0.04w/w%
軽質流動パラフィン 12.46w/w%
パルミチン酸デキストリン 1.5w/w%
1,3−ブチレングリコール 5.9w/w%
ヒドロキシプロピルセルロース 0.1w/w%
カルボキシビニルポリマー 0.25w/w%
ポリビニルアルコール(けん化度86.5〜89.0mol%) 0.5w/w%
ジイソプロパノールアミン 適量
精製水 全100w/w%
【0044】
パルミチン酸デキストリン1.5gを70〜95℃に加温した軽質流動パラフィン12.46gに分散し、油相とする。更に酢酸ヒドロコルチゾン0.04g、ヒドロキシプロピルセルロース0.1gを70〜95℃に加温した1,3−ブチレングリコール5.9gに分散し、アルコール相とする。油相にアルコール相を加え、攪拌しながら室温まで冷却してA/Oエマルションとした。別にカルボキシビニルポリマー0.25gを精製水30gに分散し、70〜95℃まで加温する。更にポリビニルアルコール0.5gを70〜95℃に加温した精製水30gに溶解する。2つの水溶液を合わせ水相とした。室温まで冷却した水相にA/Oエマルションを加え撹拌した後、ジイソプロパノールアミン(適量)を精製水10gに溶解したものを加え、更に残りの精製水を加え、均一になるまで攪拌してクリーム剤を得た。
【0045】
実施例3
酢酸ヒドロコルチゾン 0.06w/w%
軽質流動パラフィン 18.69w/w%
パルミチン酸デキストリン 2.25w/w%
1,3−ブチレングリコール 8.85w/w%
ヒドロキシプロピルセルロース 0.15w/w%
カルボキシビニルポリマー 0.25w/w%
ポリビニルアルコール(けん化度86.5〜89.0mol%) 0.5w/w%
ジイソプロパノールアミン 適量
精製水 全100w/w%
【0046】
パルミチン酸デキストリン2.25gを70〜95℃に加温した軽質流動パラフィン18.69gに分散し、油相とする。更に酢酸ヒドロコルチゾン0.06g、ヒドロキシプロピルセルロース0.15gを70〜95℃に加温した1,3−ブチレングリコール8.85gに分散し、アルコール相とする。油相にアルコール相を加え、攪拌しながら室温まで冷却してA/Oエマルションとした。別にカルボキシビニルポリマー0.25gを精製水25gに分散し、70〜95℃まで加温する。更にポリビニルアルコール0.5gを70〜95℃に加温した精製水25gに溶解する。2つの水溶液を合わせ水相とした。室温まで冷却した水相にA/Oエマルションを加え撹拌した後、ジイソプロパノールアミン(適量)を精製水10gに溶解したものを加え、更に残りの精製水を加え、均一になるまで攪拌してクリーム剤を得た。
【0047】
実施例4
軽質流動パラフィン 12.4w/w%
パルミチン酸デキストリン 1.6w/w%
1,3−ブチレングリコール 4.35w/w%
エタノール 1.45w/w%
ヒドロキシプロピルセルロース 0.2w/w%
カルボキシビニルポリマー 0.25w/w%
ポリビニルアルコール(けん化度86.5〜89.0mol%) 0.5w/w%
ジイソプロパノールアミン 適量
精製水 全100w/w%
【0048】
パルミチン酸デキストリン1.6gを70〜95℃に加温した軽質流動パラフィン12.4gに分散し、40〜60℃まで冷却して油相とする。更にヒドロキシプロピルセルロース0.2gを40〜60℃に加温したエタノール1.45g及び1,3−ブチレングリコール4.35gの混合液に分散し、アルコール相とする。油相にアルコール相を加え、攪拌しながら室温まで冷却してA/Oエマルションとした。別にカルボキシビニルポリマー0.25gを精製水30gに分散し、70〜95℃まで加温する。更にポリビニルアルコール0.5gを70〜95℃に加温した精製水30gに溶解する。2つの水溶液を合わせ水相とした。室温まで冷却した水相にA/Oエマルションを加え撹拌した後、ジイソプロパノールアミン(適量)を精製水10gに溶解したものを加え、更に残りの精製水を加え、均一になるまで攪拌してクリーム剤を得た。
【0049】
実施例5
軽質流動パラフィン 12.4w/w%
パルミチン酸デキストリン 1.6w/w%
1,3−ブチレングリコール 5.9w/w%
ヒドロキシプロピルセルロース 0.1w/w%
カルボキシビニルポリマー 0.2w/w%
ポリビニルアルコール(けん化度86.5〜89.0mol%) 0.5w/w%
ジイソプロパノールアミン 適量
精製水 全100w/w%
【0050】
パルミチン酸デキストリン1.6gを70〜95℃に加温した軽質流動パラフィン12.4gに分散し、油相とする。更にヒドロキシプロピルセルロース0.1gを約70〜95℃に加温した1,3−ブチレングリコール5.9gに分散し、アルコール相とする。油相にアルコール相を加え、攪拌しながら室温まで冷却してA/Oエマルションとした。別にカルボキシビニルポリマー0.2gを精製水30gに分散し、70〜95℃まで加温する。更にポリビニルアルコール0.5gを70〜95℃に加温した精製水30gに溶解する。2つの水溶液を合わせ水相とした。室温まで冷却した水相にA/Oエマルションを加え撹拌した後、ジイソプロパノールアミン(適量)を精製水10gに溶解したものを加え、更に残りの精製水を加え、均一になるまで攪拌してクリーム剤を得た。
【0051】
実施例6
合成スクワラン 12.4w/w%
パルミチン酸デキストリン 1.6w/w%
1,3−ブチレングリコール 5.9w/w%
ヒドロキシプロピルセルロース 0.1w/w%
カルボキシビニルポリマー 0.25w/w%
ポリビニルアルコール(けん化度86.5〜89.0mol%) 0.5w/w%
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100w/w%
【0052】
パルミチン酸デキストリン1.6gを70〜95℃に加温した合成スクワラン12.4gに分散し、油相とする。更にヒドロキシプロピルセルロース0.1gを70〜95℃に加温した1,3−ブチレングリコール5.9gに分散し、アルコール相とする。油相にアルコール相を加え、攪拌しながら室温まで冷却してA/Oエマルションとした。別にカルボキシビニルポリマー0.25gを精製水30gに分散し、70〜95℃まで加温する。更にポリビニルアルコール0.5gを70〜95℃に加温した精製水30gに溶解する。2つの水溶液を合わせ水相とした。室温まで冷却した水相にA/Oエマルションを加え撹拌した後、水酸化ナトリウム(適量)を精製水10gに溶解したものを加え、更に残りの精製水を加え、均一になるまで攪拌してクリーム剤を得た。
【0053】
実施例7
軽質流動パラフィン 10w/w%
白色ワセリン 2.4w/w%
パルミチン酸デキストリン 1.6w/w%
1,3−ブチレングリコール 5.9w/w%
ヒドロキシプロピルセルロース 0.1w/w%
カルボキシビニルポリマー 0.25w/w%
ポリビニルアルコール(けん化度86.5〜89.0mol%) 0.5w/w%
トリエチルアミン 適量
精製水 全100w/w%
【0054】
パルミチン酸デキストリン1.6gを70〜95℃に加温した軽質流動パラフィン10gと白色ワセリン2.4gに分散し、油相とする。更にヒドロキシプロピルセルロース0.1gを70〜95℃に加温した1,3−ブチレングリコール5.9gに分散し、アルコール相とする。油相にアルコール相を加え、攪拌しながら室温まで冷却してA/Oエマルションとした。別にカルボキシビニルポリマー0.25gを精製水30gに分散し、70〜95℃まで加温する。更にポリビニルアルコール0.5gを70〜95℃に加温した精製水30gに溶解する。2つの水溶液を合わせ水相とした。室温まで冷却した水相にA/Oエマルションを加え撹拌した後、トリエチルアミン(適量)を精製水10gに溶解したものを加え、更に残りの精製水を加え、均一になるまで攪拌してクリーム剤を得た。
【0055】
実施例8
白色ワセリン 13.8w/w%
パルミチン酸デキストリン 0.2w/w%
1,3−ブチレングリコール 5.9w/w%
ヒドロキシプロピルセルロース 0.1w/w%
カルボキシビニルポリマー 0.5w/w%
ポリビニルアルコール(けん化度86.5〜89.0mol%) 1w/w%
ジイソプロパノールアミン 適量
精製水 全100w/w%
【0056】
パルミチン酸デキストリン0.2gを70〜95℃に加温した白色ワセリン13.8gに分散し、油相とする。更にヒドロキシプロピルセルロース0.1gを70〜95℃に加温した1,3−ブチレングリコール5.9gに分散し、アルコール相とする。油相にアルコール相を加え、攪拌しながら室温まで冷却してA/Oエマルションとした。別にカルボキシビニルポリマー0.5gを精製水30gに分散し、70〜95℃まで加温する。更にポリビニルアルコール1gを70〜95℃に加温した精製水30gに溶解する。2つの水溶液を合わせ水相とした。室温まで冷却した水相にA/Oエマルションを加え撹拌した後、ジイソプロパノールアミン(適量)を精製水10gに溶解したものを加え、更に残りの精製水を加え、均一になるまで攪拌してクリーム剤を得た。
【0057】
実施例9
ゲル化炭化水素 13.8w/w%
パルミチン酸デキストリン 0.2w/w%
1,3−ブチレングリコール 5.9w/w%
ヒドロキシプロピルセルロース 0.1w/w%
カルボキシビニルポリマー 0.5w/w%
ポリビニルアルコール(けん化度86.5〜89.0mol%) 1w/w%
ジイソプロパノールアミン 適量
精製水 全100w/w%
【0058】
パルミチン酸デキストリン0.2gを70〜95℃に加温したゲル化炭化水素13.8gに分散し、油相とする。更にヒドロキシプロピルセルロース0.1gを70〜95℃に加温した1,3−ブチレングリコール5.9gに分散し、アルコール相とする。油相にアルコール相を加え、攪拌しながら室温まで冷却してA/Oエマルションとした。別にカルボキシビニルポリマー0.5gを精製水30gに分散し、70〜95℃まで加温する。更にポリビニルアルコール1gを70〜95℃に加温した精製水30gに溶解する。2つの水溶液を合わせ水相とした。室温まで冷却した水相にA/Oエマルションを加え撹拌した後、ジイソプロパノールアミン(適量)を精製水10gに溶解したものを加え、更に残りの精製水を加え、均一になるまで攪拌してクリーム剤を得た。
【0059】
実施例10
ゲル化炭化水素 12.4w/w%
流動パラフィン 1.4w/w%
パルミチン酸デキストリン 0.2w/w%
1,3−ブチレングリコール 5.9w/w%
ヒドロキシプロピルセルロース 0.1w/w%
カルボキシビニルポリマー 0.5w/w%
ポリビニルアルコール(けん化度86.5〜89.0mol%) 1w/w%
ジイソプロパノールアミン 適量
精製水 全100w/w%
【0060】
パルミチン酸デキストリン0.2gを70〜95℃に加温したゲル化炭化水素12.4gと流動パラフィン1.4gに分散し、油相とする。更にヒドロキシプロピルセルロース0.1gを70〜95℃に加温した1,3−ブチレングリコール5.9gに分散し、アルコール相とする。油相にアルコール相を加え、攪拌しながら室温まで冷却してA/Oエマルションとした。別にカルボキシビニルポリマー0.5gを精製水30gに分散し、70〜95℃まで加温する。更にポリビニルアルコール1gを70〜95℃に加温した精製水30gに溶解する。2つの水溶液を合わせ水相とした。室温まで冷却した水相にA/Oエマルションを加え撹拌した後、ジイソプロパノールアミン(適量)を精製水10gに溶解したものを加え、更に残りの精製水を加え、均一になるまで攪拌してクリーム剤を得た。
【0061】
実施例11
ゲル化炭化水素 12.4w/w%
白色ワセリン 1.4w/w%
パルミチン酸デキストリン 0.2w/w%
1,3−ブチレングリコール 5.9w/w%
ヒドロキシプロピルセルロース 0.1w/w%
カルボキシビニルポリマー 0.5w/w%
ポリビニルアルコール(けん化度86.5〜89.0mol%) 1w/w%
ジイソプロパノールアミン 適量
精製水 全100w/w%
【0062】
パルミチン酸デキストリン0.2gを70〜95℃に加温したゲル化炭化水素12.4gと白色ワセリン1.4gに分散し、油相とする。更にヒドロキシプロピルセルロース0.1gを70〜95℃に加温した1,3−ブチレングリコール5.9gに分散し、アルコール相とする。油相にアルコール相を加え、攪拌しながら室温まで冷却してA/Oエマルションとした。別にカルボキシビニルポリマー0.5gを精製水30gに分散し、70〜95℃まで加温する。更にポリビニルアルコール1gを70〜95℃に加温した精製水30gに溶解する。2つの水溶液を合わせ水相とした。室温まで冷却した水相にA/Oエマルションを加え撹拌した後、ジイソプロパノールアミン(適量)を精製水10gに溶解したものを加え、更に残りの精製水を加え、均一になるまで攪拌してクリーム剤を得た。
【0063】
試験例1 試作試験(ポリビニルアルコール配合量変更試作試験)
実施例1の処方をA/O/Wエマルションの基本処方として、基本処方中のポリビニルアルコール配合量を変更した処方を、基本処方と同様にしてクリーム剤とした。ポリビニルアルコール配合量変化分については、精製水により補正した。
【0064】
これらの変更処方について、直後のエマルションの分散性の確認、及び外観より均一な製剤が調製可能か確認した。確認は4名で行った。結果を表1に示した。表中の○は分散性が良いこと、エマルションが均一であったことを示す。ポリビニルアルコールを抜いた処方では、A/Oエマルションの水への分散性が悪かった。40℃−1M及び40℃−3Mの項は、40℃で1ヶ月及び3ヶ月保存後の外観を確認した。
【0065】
【表1】

【0066】
表1よりポリビニルアルコールが必須成分であることが確認できた。また、本発明の実施例1は、分散性が良好で、40℃で3ヶ月経過後もエマルションが均一であり、安定であった。
【0067】
試験例2 試作試験(アルコール相へのエタノール配合量変更試作試験)
A/O/Wエマルションの基本処方中の1,3−ブチレングリコールをエタノールに変更、またはアルコール相全量に対するエタノールの質量比を25、50、75%と変化させた処方を、基本処方と同様にしてクリーム剤とした。表中、w/wは質量比であることを示す。
【0068】
この時、エタノール比率の増加に伴い、ヒドロキシプロピルセルロースの配合量も増加させ、アルコール相の粘度を一定に保った。ただし、A/Oエマルション中のアルコール相量、及びA/O/Wエマルション中のA/Oエマルション量は一定とした。
【0069】
これらの変更処方が、顕微鏡での観察より、A/O/Wエマルション製剤を調製可能か確認した。確認は4名で行った。結果を表2に示した。表中の○は、A/O/Wエマルションの調製が可能であったものを示す×はできなかったものを示す。
【0070】
【表2】

【0071】
表2よりアルコール相に1,3−ブチレングリコールとエタノールを用いた場合には、エタノールの1,3−ブチレングリコールに対する質量比が3以上になると、A/O/Wエマルションの調製ができなくなることが判明した。
【0072】
試験例3 試作試験(カルボキシビニルポリマー配合量変更試作試験)
A/O/Wエマルションの基本処方中のカルボキシビニルポリマー配合量を0.05〜0.6質量%に変更した処方を、基本処方と同様にしてクリーム剤とした。カルボキシビニルポリマー配合量変化分については、精製水により補正した。
【0073】
これらの変更処方が、外観より均一な製剤を調製可能か確認した。確認は4名で行った。結果を表3に示した。表中の○は、A/O/Wエマルションの調製が可能であったものを示す。×はできなかったものを示す。
【0074】
【表3】

【0075】
表3より、他の配合成分及び配合量を実施例1と同じにした場合には、カルボキシビニルポリマー配合量が0.05質量%以下ではA/O/Wエマルションの調製ができないことが判明した。従って、カルボキシビニルポリマーが必須成分であることがわかった。
【0076】
試験例4 インドメタシン安定性試験
インドメタシンは水の存在下で分解しやすく、pHに影響されることが知られている。そこで、サンプルとして最内相にインドメタシンを配合し、pHを6.3〜6.5に調整した実施例12、実施例13のA/O/Wエマルション、内相の油相にインドメタシンを配合した比較例1のO/Wエマルションを用いて、インドメタシンの安定性を比較した。
【0077】
実施例12
インドメタシン 0.133w/w%
軽質流動パラフィン 12.367w/w%
パルミチン酸デキストリン 1.5w/w%
1,3−ブチレングリコール 5.9w/w%
ヒドロキシプロピルセルロース 0.1w/w%
カルボキシビニルポリマー 0.2w/w%
ポリビニルアルコール(けん化度86.5〜89.0mol%) 0.4w/w%
ジイソプロパノールアミン 適量
精製水 全100w/w%
pH 6.44
【0078】
パルミチン酸デキストリン1.5gを70〜95℃に加温した軽質流動パラフィン12.367gに分散し、油相とする。更にインドメタシン0.133g、ヒドロキシプロピルセルロース0.1gを70〜95℃に加温した1,3−ブチレングリコール5.9gに分散し、アルコール相とする。油相にアルコール相を加え、攪拌しながら室温まで冷却してA/Oエマルションとした。別にカルボキシビニルポリマー0.2gを精製水30gに分散し、70〜95℃まで加温する。更にポリビニルアルコール0.4gを70〜95℃に加温した精製水30gに溶解する。2つの水溶液を合わせ水相とした。室温まで冷却した水相にA/Oエマルションを加え撹拌した後、ジイソプロパノールアミン(適量)を精製水10gに溶解したものを加え、更に残りの精製水を加え、均一になるまで攪拌してクリーム剤を得た。
【0079】
実施例13
インドメタシン 0.2w/w%
軽質流動パラフィン 18.55w/w%
パルミチン酸デキストリン 2.25w/w%
1,3−ブチレングリコール 8.85w/w%
ヒドロキシプロピルセルロース 0.15w/w%
カルボキシビニルポリマー 0.2w/w%
ポリビニルアルコール(けん化度86.5〜89.0mol%) 0.4w/w%
ジイソプロパノールアミン 適量
精製水 全100w/w%
pH 6.37
【0080】
パルミチン酸デキストリン2.25gを70〜95℃に加温した軽質流動パラフィン18.55gに分散し、油相とする。更にインドメタシン0.2g、ヒドロキシプロピルセルロース0.15gを70〜95℃に加温した1,3−ブチレングリコール8.85gに分散し、アルコール相とする。油相にアルコール相を加え、攪拌しながら室温まで冷却してA/Oエマルションとした。別にカルボキシビニルポリマー0.2gを精製水25gに分散し、70〜95℃まで加温する。更にポリビニルアルコール0.4gを70〜95℃に加温した精製水25gに溶解する。2つの水溶液を合わせ水相とした。室温まで冷却した水相にA/Oエマルションを加え撹拌した後、ジイソプロパノールアミン(適量)を精製水10gに溶解したものを加え、更に残りの精製水を加え、均一になるまで攪拌してクリーム剤を得た。
【0081】
比較例1
インドメタシン 0.2w/w%
軽質流動パラフィン 20.8w/w%
カルボキシビニルポリマー 0.25w/w%
ポリビニルアルコール(けん化度86.5〜89.0mol%) 0.25w/w%
1,3−ブチレングリコール 9w/w%
ジイソプロパノールアミン 適量
精製水 全100w/w%
pH 6.48
【0082】
カルボキシビニルポリマー0.25gを精製水25gに分散し、70〜95℃まで加温する。更にポリビニルアルコール0.25gを70〜95℃に加温した精製水25gに溶解する。2つの水溶液を合わせ水相とした。別に軽質流動パラフィン20.8gと1,3−ブチレングリコール9gを70〜95℃に加温し、インドメタシン0.2gを溶解して油相とした。水相に油相を添加した後、ジイソプロパノールアミン(適量)を精製水10gに溶解したものを加え、更に残りの精製水を加え、均一になるまで攪拌した後、攪拌しながら室温まで冷却してクリーム剤を得た。
【0083】
製剤中のインドメタシンの残存量を高速液体クロマトグラフ法により測定した。実施例12、実施例13並びに比較例1の40℃-2週間保存での対直後値を表4に示す。表4より本発明のA/O/Wエマルション組成物である実施例12、実施例13は比較例1に比べて、配合したインドメタシンの安定性が高いことが確認された。
【0084】
【表4】

【0085】
試験例5 使用感試験
A/Oエマルション組成物、O/Wエマルション組成物、A/O/Wエマルション組成物のそれぞれの使用感比較を行った。
【0086】
前腕部に実施例1、4のクリーム剤(A/O/Wエマルション組成物)及び比較例2、3(A/Oエマルション組成物)、4(O/Wエマルション組成物)のクリーム剤を適量塗布し、使用感を比較した。試験は4名で行い、評点は塗布直後のべたつき感と冷却感を指標にし、それぞれを4:強い、3:やや強い、2:普通、1:やや弱い、0:弱い、の基準で採点し、平均点を求めた。
【0087】
比較例2
軽質流動パラフィン 62w/w%
パルミチン酸デキストリン 8.0w/w%
1,3−ブチレングリコール 29.5w/w%
ヒドロキシプロピルセルロース 0.5w/w%
【0088】
軽質流動パラフィン62gにパルミチン酸デキストリン8.0gを分散し、70〜95℃に加温して溶解して油相とした。一方、ヒドロキシプロピルセルロース0.5gを加温した1,3−ブチレングリコール29.5gに溶解し、アルコール相とした。油相にアルコール相を添加し、攪拌しながら室温まで冷却してクリーム剤を得た。
【0089】
比較例3
軽質流動パラフィン 62w/w%
パルミチン酸デキストリン 8.0w/w%
1,3−ブチレングリコール 21.75w/w%
エタノール 7.25w/w%
ヒドロキシプロピルセルロース 1.0w/w%
【0090】
軽質流動パラフィン62gにパルミチン酸デキストリン8.0gを分散し、70〜95℃に加温して溶解した後、約50℃まで冷却して油相とした。一方、ヒドロキシプロピルセルロース1.0gを加温した1,3−ブチレングリコール21.75g、エタノール7.25gに溶解し、アルコール相とした。油相にアルコール相を添加し、攪拌しながら室温まで冷却してクリーム剤を得た。
【0091】
比較例4
軽質流動パラフィン 20.8w/w%
カルボキシビニルポリマー 0.25w/w%
ポリビニルアルコール(けん化度86.5〜89.0mol%) 0.25w/w%
1,3−ブチレングリコール 9w/w%
ジイソプロパノールアミン 適量
精製水 全100w/w%
【0092】
カルボキシビニルポリマー0.25gを精製水25gに分散し、70〜95℃まで加温する。更にポリビニルアルコール0.25gを70〜95℃に加温した精製水25gに溶解する。2つの水溶液を合わせ水相とした。別に軽質流動パラフィン20.8gと1,3−ブチレングリコール9gを70〜95℃に加温、混合して油相とした。水相に油相を添加した後、ジイソプロパノールアミン(適量)を精製水10gに溶解したものを加え、更に残りの精製水を加え、均一になるまで攪拌した後、攪拌しながら室温まで冷却してクリーム剤を得た。
【0093】
結果を表5に示す。表5より、塗布直後のべたつき感は、本発明の実施例1、4のクリーム剤では低く、比較例4のクリーム剤(O/Wエマルション組成物)と同程度以上であることが示された。塗布直後の冷却感は、実施例1、4において強く、比較例4と同程度以上であることが示された。使用感では、実施例1、4が特に優れていることが判明した。
【0094】
【表5】

【0095】
試験例4及び5より、本発明の実施例は、インドメタシンを安定に配合しつつ、使用感は、O/Wエマルション組成物と比較して同等以上であるという、有利な効果を有することが示された。
【0096】
試験例6 試作試験(A/Oエマルションと水相の配合比率変更試作試験)
実施例5の処方中の水相に対するA/Oエマルションの配合比率を変更した処方を、実施例5と同様にしてクリーム剤とした。
【0097】
この時、A/Oエマルション比率の増加に伴い、水相中でのカルボキシビニルポリマー及びポリビニルアルコールの濃度が一定となるように配合量を調整した。
【0098】
これらの変更処方が、顕微鏡での観察より、A/O/Wエマルション製剤を調製可能か確認した。確認は4名で行った。結果を表6に示した。表中の○は、A/O/Wエマルションの調製が可能であったものを示す。×はできなかったものを示す。表中、w/wは質量比であることを示す。
【0099】
【表6】

【0100】
表6より、実施例5におけるA/Oエマルションと水相を用いた場合、A/Oエマルションの水相に対する質量比が1以上では、A/O/Wエマルションを調製できないことがわかった。
【0101】
参考試験例1 油相配合高分子種類の検討
比較例2の処方をA/Oエマルションの基本処方として、A/Oエマルションの基本処方中のパルミチン酸デキストリンをそれぞれパルミチン酸デキストリン(低置換度、パルミチン酸のエステル化率が低いもの)、パルミチン酸/オクタン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリンに置き換えた変更処方を、基本処方と同様にしてクリーム剤とした。
【0102】
これらの変更処方が、外観より均一な製剤を調製可能か確認した。確認は4名で行った。結果を表7に示した。40℃−1M、3Mの項は、40℃で1ヶ月、3ヶ月保存後の外観を確認した。表中の○はエマルションが均一であったもの、×は分離のあったものを示す。
【0103】
【表7】

【0104】
表7より、本発明のA/O/Wエマルションを調製するのに必要なA/Oエマルションの調製における油相の高分子としては、パルミチン酸デキストリンが好ましいことがわかった。
【0105】
参考試験例2 パルミチン酸デキストリン配合量の検討
A/Oエマルションの基本処方におけるパルミチン酸デキストリン配合量を0、4、6、8、10、12質量%とした変更処方を基本処方と同様にして調製した。パルミチン酸デキストリン配合量変化分については、軽質流動パラフィンにて補正した。
【0106】
これらの変更処方が、外観より均一な製剤を調製可能か確認した。確認は4名で行った。結果を表8に示した。40℃−1M、3Mの項は、40℃で1ヶ月、3ヶ月保存後の外観を確認した。表中の○はエマルションが均一であったもの、△はアルコール相の分散性が悪いもの、×は分離のあったものを示す。
【0107】
【表8】

【0108】
表8より、本発明のA/O/Wエマルションを調製するのに必要なA/Oエマルションの調製には、パルミチン酸デキストリンは必須成分であることが判明した。また、A/Oエマルションの基本処方をもとにすると、パルミチン酸デキストリンの配合量が10質量%以上ではA/Oエマルションを調製できないことがわかった。
【0109】
参考試験例3 油成分種類の検討
A/Oエマルションの基本処方中の軽質流動パラフィンをそれぞれ流動パラフィン、合成スクワラン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、セバシン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソプロピルに置き換えた変更処方を、基本処方と同様にしてクリーム剤とした。表9中のIOB値(Inorganic Organic Balance)は、[甲田善生、「有機概念図―基礎と応用」、三共出版(1984)]に基づいて、有機性値と無機性値を求め、無機性値/有機性値により求められる数値である。
【0110】
これらの変更処方が、外観より均一な製剤を調製可能か確認した。確認は4名で行った。結果を表9に示した。40℃−1Mの項は、40℃1ヶ月保存後の外観を確認した。表中の○は調製が可能であったもの、×は分離がみられたものを示す。
【0111】
【表9】

【0112】
表9より、本発明のA/O/Wエマルションを調製するのに必要なA/Oエマルションの調製には、非極性の液体油を用いることが好ましいことが判明した。
【0113】
参考試験例4 油成分種類の検討2
A/Oエマルションの基本処方中の軽質流動パラフィンを、非極性の半固形脂である白色ワセリン、またはゲル化炭化水素に置き換えた変更処方、及び非極性の固形脂であるパラフィンに置き換えた変更処方を基本処方と同様にしてクリーム剤とした。なお、パルミチン酸デキストリン配合量は1質量%、各油成分配合量は69質量%とした。
【0114】
これらの変更処方が、外観より均一な製剤を調製可能か確認した。確認は4名で行った。結果を表10に示した。40℃−1Mの項は、40℃1ヶ月保存後の外観を確認した。表中の○は調製が可能であったもの、×は分離がみられたものを示す。
【0115】
【表10】

【0116】
表10より、本発明のA/O/Wエマルションを調製するのに必要なA/Oエマルションの調製には、非極性の半固形脂を用いることが好ましいことが判明した。
【0117】
参考試験例5 パルミチン酸デキストリン配合量の検討2
A/Oエマルションの基本処方中の軽質流動パラフィンを白色ワセリン、またはゲル化炭化水素に置き換え、さらにパルミチン酸デキストリン配合量を0、0.1、1、4質量%とした変更処方を基本処方と同様にして調製した。パルミチン酸デキストリン配合量変化分については、各油成分にて補正した。
【0118】
これらの変更処方が、外観より均一な製剤を調製可能か確認した。確認は4名で行った。結果を表11に示した。40℃−1Mの項は、40℃1ヶ月保存後の外観を確認した。表中の○はエマルションが均一であったもの、×は均一なエマルションを調製できなかったものを示す。
【0119】
【表11】

【0120】
表11より、本発明のA/O/Wエマルションを調製するのに必要なA/Oエマルションの調製には、油成分に半固形脂を用いた場合でもパルミチン酸デキストリンは必須成分であることが判明した。
【0121】
参考試験例6 アルコール相の高分子有無の検討
A/Oエマルションの基本処方におけるアルコール相からヒドロキシプロピルセルロースを抜いた処方を、基本処方と同様に調製した。ヒドロキシプロピルセルロースを抜いた部分は、1,3−ブチレングリコールにて補正した。
【0122】
A/Oエマルションの基本処方及びヒドロキシプロピルセルロースを抜いた処方が、外観より均一な製剤を調製可能か確認した。確認は4名で行った。結果を表12に示した。40℃−1M、3Mの項は、40℃1ヶ月、3ヶ月保存後の外観を確認した。表中の○はエマルションが均一であったもの、×は分離がみられたものを示す。
【0123】
【表12】

【0124】
表12より、本発明のA/O/Wエマルションを調製するのに必要なA/Oエマルションの調製には、ヒドロキシプロピルセルロースは必須成分であることが判明した。
【0125】
参考試験例7 アルコール相へ配合する高分子種類の検討
アルコール相に配合する高分子の種類について検討するために、1,3-ブチレングリコールに対する、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸Na、トラガント、キサンタンガム、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、パルミチン酸デキストリンの分散性を0.5質量%の配合量で検討した。
【0126】
表13に各高分子の分散性及び増粘性の結果を示す。△は分散性・増粘性がヒドロキシプロピルセルロースに比べてやや劣ったこと、×は悪かったことを示す。
【0127】
【表13】

【0128】
表13より、分散性と増粘性の観点からアルコール相へ配合する高分子としては、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましいことがわかった。分散性と増粘性が良好でないと、本発明のA/O/Wエマルションを調製することが困難となるため、本発明のアルコール相へ配合する高分子としては、ヒドロキシプロピルセルロースが適していると考えられる。
【0129】
参考試験例8 アルコール相の検討
アルコール相について検討するために、1,3−ブチレングリコールをプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、マクロゴール400、グリセリンに変更して、2質量%のヒドロキシプロピルセルロースを室温で撹拌して分散性及び増粘性を確認した。
【0130】
表14にヒドロキシプロピルセルロースの分散性及び増粘性の結果を示す。○はヒドロキシプロピルセルロースが分散し、アルコール相が増粘したこと、×は分散性・増粘性が1,3ブチレングリコールに比べてやや劣ったことを示す。
【0131】
【表14】

【0132】
表14より、アルコール相へ配合する高分子をヒドロキシプロピルセルロースとすれば、アルコール相を1,3−ブチレングリコールのみならず、グリセリン以外の他の多価アルコールへ変更しても、ヒドロキシプロピルセルロースが良好に分散し、アルコール相を増粘させることが可能であることがわかった。
【0133】
参考試験例9 アルコール相/油相比率の検討
A/Oエマルションの基本処方におけるアルコール相と油相の配合比率を、アルコール相対油相の比率が3対7、4対6、5対5、6対4とした変更処方を基本処方と同様にして調製した。
【0134】
これらの変更処方が、外観より均一な製剤を調製可能か確認した。確認は4名で行った。結果を表15に示した。40℃−1Mの項は、40℃1ヶ月保存後の外観を確認した。表中の○はエマルションが均一であったもの、△は若干の分離がみられたものを示す。表中、w/wは質量比であることを示す。
【0135】
【表15】

【0136】
表15より、本発明のA/O/Wエマルションを調製するのに必要なA/Oエマルションの調製において、A/Oエマルションの基本処方におけるアルコール相と油相を用いた場合には、アルコール相の油相に対する質量比は1以下が好ましいことがわかった。
【0137】
以上の試験例及び参考試験例の結果から、本発明の構成とすることによってのみ、水及び油に極めて溶けにくい物質、又はほとんど溶けない物質、あるいは水に不安定な物質を安定に配合することが可能で、使用感に優れ、安定である、という特有の効果を併せ持つA/O/Wエマルション組成物を調製することが可能となったことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の水中油中アルコール型エマルション組成物は、医薬品、医薬部外品、化粧品などとして、主に外用剤として利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の水中油中アルコール型エマルション組成物の模式図である。
【符号の説明】
【0140】
(a)水相
(b)油相
(c)アルコール相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒドロキシプロピルセルロースを含有し、ゲル状を呈するアルコール相、(b)パルミチン酸デキストリンを含有し、ゲル状を呈する油相、並びに(c)けん化度が70〜96mol%のポリビニルアルコール及びカルボキシビニルポリマーを含有し、ゲル状を呈する水相を有することを特徴とする水中油中アルコール型エマルション組成物。
【請求項2】
アルコール相に多価アルコール、又は多価アルコール及び炭素原子数1〜3のアルコールを含むことを特徴とする請求項1に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
【請求項3】
多価アルコールが、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びジプロピレングリコールから選ばれる1種又は2種以上である請求項2に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
【請求項4】
炭素原子数1〜3のアルコールが、エタノール、及びイソプロパノールから選ばれる1種又は2種である請求項2に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
【請求項5】
油相に非極性の液体油を含むことを特徴とする請求項1に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
【請求項6】
油相に非極性の半固形脂、又は非極性の液体油及び非極性の半固形脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
【請求項7】
実質的に界面活性剤を含まないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
【請求項8】
アルコール相に実質的に水を含まないことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
【請求項9】
アルコール相に機能性成分が溶解又は分散していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
【請求項10】
機能性成分が、水及び油に極めて溶けにくい物質、又はほとんど溶けない物質、あるいは水に不安定な物質である請求項9に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。
【請求項11】
皮膚に適用されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の水中油中アルコール型エマルション組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−114180(P2009−114180A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263714(P2008−263714)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】