説明

水力発電装置

【課題】発電用水車が回転した際の回転振動や回転ノイズの発生を防止可能な水力発電装置を提供すること。
【解決手段】水力発電装置の発電用水車5では、第1の羽根571と第2の羽根572が軸線方向で隣接する領域に形成され、第2の羽根572の外周端は円筒板部58で連結されている。4つの射出口34は、第1の羽根571および円筒板部58の双方に跨る方向に向かって開口し、射出口34から射出された水の一部は、第1の羽根571に直接、ぶつかる一方、残りは、円筒板部58の外端面に各方向から常時、ぶつかり、発電用水車5に調芯作用を発揮する。射出口34の数と羽根57の枚数とは互いに素の関係にあり、4枚の第1の羽根571が各々、射出口34に最接近するタイミングがずれているため、射出口34から射出される水が2枚以上の羽根57に同時に強烈に当たることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水などを利用して発電を行う水力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛇口の下方位置に手を差し出したとき、それをセンサが感知すると、蛇口から水を自動的に流すように構成した自動水栓装置が普及しつつある。また、近年、水道水の流路の途中位置に小型の水力発電装置を設けるとともに、この水力発電装置によって得た電力を蓄え、この電力を自動水栓装置のセンサ回路などに供給する装置も案出されている。
【0003】
この種の水力発電装置は、流体入口から流体出口までの間に流路を構成するケースと、この流路の途中位置に配置された支軸と、この支軸に回転可能に支持された円筒状の発電用水車とを有しており、従来、発電用水車としては、外周面から複数枚の羽根が各々、独立して外側に張り出したものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−340111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような水力発電装置において、発電用水車の軸穴と支軸との間にはクリアランスに存在する。また、発電用水車は、射出口から噴射された水が羽根にぶつかることにより回転するため、発電用水車の回転に伴って、羽根と射出口の位置関係が変動し、発電用水車が受ける力の方向が変動する。その結果、発電用水車が回転したときに回転振動や回転ノイズが発生するという問題点がある。
【0005】
以上の問題に鑑みて、本発明の課題は、発電用水車が回転した際の回転振動や回転ノイズの発生を防止可能な水力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、流体入口から流体出口に到る流路と、前記流路の途中位置で軸線周りに回転可能に配置された発電用水車と、該発電用水車の周りから水を噴射する射出口とを有する水力発電装置において、前記発電用水車は、外周側に張り出す複数枚の第1の羽根と、該第1の羽根に対して軸線方向で隣接する位置で前記発電用水車の回転中心軸線に対して同軸状に構成された円筒板部を備え、前記射出口は、前記第1の羽根および前記円筒板部の双方に跨る方向に向かって開口していることを特徴とする。
【0007】
本発明の水力発電装置に用いた発電用水車には、第1の羽根に対して軸線方向で隣接する位置に円筒板部を備え、射出口は、第1の羽根および円筒板部の双方に跨る方向に向かって開口しているため、射出口から射出された水の一部は、第1の羽根に直接、ぶつかる一方、射出口から射出された水の残りは、円筒板部の外端面に各方向から常時、ぶつかる。このため、円筒板部にぶつかった水の圧力は、発電用水車に調芯作用を発揮するため、発電用水車が回転した際の回転振動や回転ノイズの発生を防止することができる。
【0008】
本発明において、前記発電用水車は、前記第1の羽根に対して軸線方向で隣接する領域で外周側に張り出す複数枚の第2の羽根を備え、前記円筒板部は、前記第2の羽根の外周端同士を連結するように構成されていることが好ましい。このように構成すると、第1の羽根に直接、ぶつかった水流は、その後、円筒板部の内側を通るが、その際、第2の羽根に効率よくぶつかる。従って、発電用水車を効率よく回転させることができるので、水力発電装置の発電効率が向上する。
【0009】
本発明において、前記円筒板部の外端面は、前記第1の羽根の外周端と同一の半径距離の位置にあることが好ましい。このように構成すると、第1の羽根に直接、ぶつかった後の水流を円筒板部の内側に効率よく導くことができる。
【0010】
本発明において、前記射出口は複数形成され、前記複数枚の第1の羽根が各々、前記射出口に最接近するタイミングがずれていることが好ましい。例えば、前記複数枚の第1の羽根が等角度間隔に配置されているとともに、前記射出口も等角度間隔に複数形成されている場合、前記第1の羽根の枚数と前記射出口の数は互いに素の関係にあればよい。すなわち、射出口の数と、第1の羽根の枚数とは、一方が他方の整数倍となる条件を避ければよい。このように構成すると、射出口から射出される水が2枚以上の羽根に同時に強烈に当たることを防ぐことができるので、発電用水車に大きな力が同時に加わることを防止できる。それ故、発電用水車が回転した際の回転振動や回転ノイズの発生を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水力発電装置に用いた発電用水車には、第1の羽根に対して軸線方向で隣接する位置に円筒板部を備え、射出口は、第1の羽根および円筒板部の双方に跨る方向に向かって開口しているため、射出口から射出された水の一部は、第1の羽根に直接、ぶつかる一方、射出口から射出された水の残りは、円筒板部の外端面に各方向から常時、ぶつかる。このため、円筒板部にぶつかった水の圧力は、発電用水車に調芯作用を発揮するため、発電用水車が回転した際の回転振動や回転ノイズの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した水力発電装置およびその製造方法を説明する。
【0013】
(全体構成)
図1(a)、(b)は、本発明を適用した水力発電装置の平面図、およびA−A′断面図である。なお、A−A′線は、射出口の形成位置を通らないが、図1(b)の左部分には、射出口についても図示してある。
【0014】
図1(a)、(b)に示す水力発電装置1は、水道水の流路の途中位置になどに配置される小型の水力発電装置であり、この水力発電装置1によって得た電力を蓄え、この電力を自動水栓装置のセンサ回路などに供給する用途などに用いられる。本形態の水力発電装置1は、後述する流路を構成する樹脂製の本体ケース21、この本体ケース21の上面を覆うカバー23、このカバー23を覆うステンレス製のカップ状の仕切り板25と、この仕切り板25のフランジ部との間にステータ部6を挟む環状ケース27と、環状ケース27の上方に被さる樹脂製の上ケース29とを有しており、上ケース29および仕切り板25はネジにより本体ケース21に固定されている。また、本体ケース21の底面にはEPDM製のシール281が重ねられ、仕切り板25と本体ケース21との間には、ゴム製のOリング282が配置されている。
【0015】
本体ケース21には、相対向する側面で開口する流体入口31および流体出口32を備えており、流体入口31から流体出口32に向かう流路(矢印Lで示す)の途中位置には、本体ケース21とカバー23とにより、後述する注水部が構成され、本体ケース21と仕切り板25との間に水車室35が構成されている。水車室35では、下端部および上端部が各々、本体ケース21および仕切り板25の軸固定穴に圧入固定された支軸4が直立しており、支軸4には、円筒状の発電用水車5が回転可能に支持されている。支軸4には、樹脂製のスリーブ45が嵌められており、発電用水車5は、支軸4のうち、スリーブ45から露出している上半部で支持されている。なお、発電用水車5は、支軸4に装着されたワッシャなどにより上下方向への変位が防止されている。
【0016】
発電用水車5において仕切り板25の円筒部251内に位置する上半部には、外周面に円筒状の永久磁石55が固着されている。また、仕切り板25の円筒部251の周りには環状のステータ組61、62が配置されており、永久磁石55およびステータ部6によって発電部が構成されている。
【0017】
(発電部の構成)
ステータ部6は、軸線方向に重ねて配置された2つの相のステータ組61、62で構成されている。2つのステータ組61、62のいずれにおいても、外ステータコア、コイルボビンに巻回されたコイル、および内ステータコアが重ねられた構造を有しており、コイルボビンの内周に沿って、外ステータコアの極歯と内ステータコアの極歯が交互に並んでいる。また、コイルの巻き始め部分および巻き終わり部分は、端子台66の端子67およびワイヤー68を介してコネクタ69に接続されている。なお、上ケース29には、端子台66を覆うフード部291が形成されており、ステータ部6に水が浸入するのを防止する構造になっている。
【0018】
(注水部およびバイパス流路の構成)
本形態の水力発電装置1において、本体ケース21では、流体入口31に対向するように隔壁219が起立しており、その上方には、水車室35の周りに環状流路33が形成されている。ここで、環状流路33は、底面、内周面、外周面、および上面が各々、本体ケース21の環状の仕切り壁211、本体ケース21の環状の内側垂直壁212、本体ケース21の環状の外側垂直壁213、およびカバー23により規定されている。
【0019】
ここで、内側垂直壁212には、周方向の複数箇所、例えば、4箇所に切り欠きが形成されており、本体ケース21の上面にカバー23を被せると、4つの切り欠きによって、環状流路33から発電用水車5の羽根57に向けて水を高速噴射する4つの射出口34が構成される。
【0020】
なお、隔壁219には、流体入口31から流入した水を環状流路33を通らずに流体出口32に向かわせるバイパス用の開口38が形成されており、この開口38は、隔壁219の裏面側に配置されたスライダ90により塞がれている。隔壁219には流体入口31に向けて延びた円筒部217を有する一方、スライダ90は、隔壁219の裏面に樹脂製シール96を介して当接する板状の弁部901と、弁部901から円筒部217内に延びた軸部902と、軸部902の先端部にプッシュナット91により固定されたワッシャ92とを備えており、円筒部217の端部とワッシャ92との間にはコイルバネ95が配置されている。従って、流体入口31から流入した水の圧力が低い場合には、スライダ90は、コルイバネ95に付勢されて弁部901が隔壁219に当接しているので、バイパス用の開口38は閉鎖されている。但し、流体入口31から流入した水の圧力が高く、ワッシャ92がコイルバネ95の付勢力よりも大きな水圧を受けると、スライダ90は、弁部901が隔壁219から離間する方向に変位し、バイパス用の開口38は開放される。それ故、流体入口31から流入した水の圧力が低い場合には、流入した水の全てが環状流路33に導かれる一方、流体入口31から流入した水の圧力が高い場合には、流入した水の一部が環状流路33に導かれずにバイパス用の開口38を通ってそのまま流体出口32に向かうことになる。従って、流入する水の圧力が過剰に高くなった場合でも、環状流路33を介して水車室35に導入される水量を規制することができるので、回転ノイズなどの発生を防止することができる。
【0021】
(発電用水車5の構成)
図2(a)、(b)、(c)は、図1に示す水力発電装置に用いた発電用水車を第1のラジアル軸受側からみたときの斜視図、この発電用水車を第2のラジアル軸受側からみたときの平面図、およびB−B′断面図である。
【0022】
図2(a)、(b)、(c)に示すように、本形態の水力発電装置1において、発電用水車5は、外周面から複数枚の羽根57が等角度間隔で張り出す円筒体50と、この円筒体50の貫通穴501の一方側端部(本体ケース21が位置する下方側)に位置する円筒状の第1のラジアル軸受51と、貫通穴501の他方側端部(仕切り板25の円筒部251が位置する上方側)に位置する円筒状の第2のラジアル軸受52とを備えており、第1のラジアル軸受51の軸穴510、および第2のラジアル軸受52の軸穴520に対して、図1(b)に示す支軸4が嵌ることにより、発電用水車5は支軸4の周りで回転可能に支持されている。円筒体50は、羽根57が形成された下端部は大径である一方、上半部は小径であり、この小径部分に円筒状の永久磁石55が固定されている。
【0023】
本形態において、発電用水車5では、複数枚の羽根57が各々、軸線方向において第2のラジアル軸受52側に位置する第1の羽根571と、第1のラジアル軸受51側に位置する第2の羽根572とに2分割されており、第2の羽根572の外周端は、円筒体50の軸線方向と平行な円筒板部58により連結されている。ここで、円筒板部58の外端面は、第1の羽根571の外周端と同一の半径距離の位置にある。
【0024】
このように構成した発電用水車5に対しては、図2(b)、(c)に示すように、4つの射出口34が発電用水車5の周りに等角度間隔に形成されている。また、4つの射出口34は、第1の羽根571および円筒板部58の双方に跨る方向に向かって開口しており、図2(c)に矢印L1、L2で示すように、4つの射出口34は各々、第1の羽根571と円筒板部58とに跨って水を射出するように構成されている。すなわち、射出口34から射出された水の一部は、矢印L1で示すように、第1の羽根571に直接、ぶつかる一方、射出口34から射出された水の残りは、円筒板部58の外周面にぶつかるようになっている。
【0025】
また、本形態において、注水部に形成した射出口34の数と羽根57の枚数とは、素の関係にあり、一方が他方の整数倍となる条件を避けてある。例えば、本形態では、射出口34は4つであるのに対して、羽根57の枚数は7枚である。
【0026】
本形態において、第1のラジアル軸受51および第2のラジアル軸受52はいずれも、円筒体50とは別体の樹脂成形品であり、第1のラジアル軸受51は、貫通穴501の一方側端部に圧入後、円筒体50に溶着されて貫通穴501内に固定されている。従って、貫通穴501の一方側端部における内周面と第1のラジアル軸受51の外周面とのクリアランスは、例えば、0〜0.03mmと小さい。これに対して、第2のラジアル軸受52は、後述するように、第1のラジアル軸受51の軸穴510を基準にラジアル方向で位置決めされた状態で貫通穴501内に挿入され、円筒体50に溶着されている。このため、第2のラジアル軸受52を第1のラジアル軸受51の軸穴510を基準にラジアル方向で位置決めする際、貫通穴501内でラジアル方向で位置調整が可能なように、貫通穴501の他方側端部における内周面と第2のラジアル軸受52の外周面とのクリアランスは、例えば、0.04〜0.07mmと大きく設定されている。
【0027】
(水力発電装置11の製造方法)
以下、図1、図2および図3を参照して、本形態の水力発電装置1の製造方法のうち、発電用水車5の組み立て方法を説明しながら、発電用水車5の構成を詳述する。
【0028】
図3(a)〜(d)は、図2に示す発電用水車の組み立て方法を示す工程断面図である。まず、図3(a)に示すように、円筒体50では、下端面に4枚の板状の溶着用突起506が形成されており、これらの溶着用突起506は、貫通穴501の内周縁に沿って等角度間隔に形成されている。これに対して、第1のラジアル軸受51は、下端寄りの位置で拡径する円盤状のフランジ部514が形成されており、このフランジ部514の付け根部分には、円筒体の溶着用突起506が嵌る4つの穴515が形成されている。また、第1のラジアル軸受51の下端面では、穴515が形成されている位置より内周側で軸穴510を囲むように軸線方向に凹む周溝518が開口しており、軸穴510と周溝518との間には肉薄の円筒壁519が形成されている。ここで、軸穴510は、軸線方向で内径が切り換わっており、内径が小さい部分が支軸4との摺動部分511であるため、周溝518は、摺動部分511の全体を肉薄の円筒壁519で構成する深さに形成されている。
【0029】
また、円筒体50では、上端面に3枚の板状の溶着用突起507が形成されており、これらの溶着用突起507は、貫通穴501の内周縁に沿って等角度間隔に形成されている。これに対して、第2のラジアル軸受52は、上端寄りの位置で拡径する円盤状のフランジ部524が形成されており、このフランジ部524の付け根部分には、円筒体の溶着用突起507が嵌る3つの穴525が形成されている。また、第2のラジアル軸受52の上端面には、穴525が形成されている位置より内周側で軸穴520を囲むように軸線方向に凹む周溝528が開口しており、軸穴520と周溝528との間には肉薄の円筒壁529が形成されている。ここで、軸穴520は、軸線方向で内径が切り換わっており、内径が小さい部分が支軸4との摺動部分521であるため、周溝528は、摺動部分521の全体を肉薄の円筒壁529で構成する深さに形成されている。
【0030】
このように構成した円筒体50、第1のラジアル軸受51、および第2のラジアル軸受52を用いて発電用水車5を組み立てるにあたっては、まず、図3(b)に示す第1のラジアル軸受固定工程において、円筒体50の下端面に形成した溶着用突起506が第1のラジアル軸受51の穴515に嵌るように、第1のラジアル軸受51を貫通穴501の一方側端部に圧入した後、穴515から突き出た溶着用突起506の先端部を加熱溶融し、第1のラジアル軸受51を貫通穴501の一方側端部に溶着により固定する。
【0031】
次に、芯出し工程では、図3(c)に示すように、貫通穴501の一方側端部に固定された第1のラジアル軸受51の軸穴510に位置決め軸9を嵌めた後、位置決め軸9を第2のラジアル軸受52の軸穴520に嵌めて、図3(d)に示すように、第2のラジアル軸受52を貫通穴501の他方側端部に挿入する。その際、円筒体50の上端面に形成した溶着用突起507を第2のラジアル軸受52のフランジ部524に形成した穴525に嵌める。ここで、貫通穴501の内周面と第2のラジアル軸受52の外周面とのクリアランスは、例えば、0.04〜0.07mmと大きく設定されているため、第2のラジアル軸受52を第1のラジアル軸受51の軸穴510を基準にラジアル方向で位置決めする際、貫通穴501内でラジアル方向で第2のラジアル軸受52の位置調整が可能である。なお、穴525と溶着用突起507との間にも十分なクリアランスが設定されている。
【0032】
次に、第2のラジアル軸受固定工程において、穴525から突き出た溶着用突起507の先端部を加熱溶融し、第2のラジアル軸受52を貫通穴501の他方側端部に溶着により固定する。このように固定した第2のラジアル軸受52は、永久磁石55が円筒体50から脱落することを防止する機能も担うことになる。
【0033】
しかる後には、位置決め軸9を抜く。このように構成した発電用水車5については、水力発電装置1を組み立てる際、第1のラジアル軸受51の軸穴510、および第2のラジアル軸受52の軸穴520に支軸4が嵌った状態で水車室35に配置される。
【0034】
(動作)
このように構成した水力発電装置1において、流体入口31から流れ込んだ水は、隔壁にぶつかって上方の環状流路33に流れ込んだ後、4つの射出口34から発電用水車5の羽根57に向けて射出される。その結果、発電用水車5が回転し、それに伴い、永久磁石55も回転することにより、ステータ部6のコイルに誘起電圧が発生する。発電用水車5を回し終えた水は、下方に落下し、そこから流体出口32を経て排出される。また、ステータ部6で発生した誘起電圧は、コネクタ69を介して外部の回路に導かれ、この回路で直流に変換された後、整流され電池に充電される。
【0035】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の水力発電装置1に用いた発電用水車5は、第1の羽根571に対して軸線方向で隣接する位置に円筒板部58を備え、この円筒板部58は振動防止壁として機能する。すなわち、4つの射出口34は、第1の羽根571および円筒板部58の双方に跨る方向に向かって開口しており、射出口34から射出された水の一部は、第1の羽根571に直接、ぶつかる一方、射出口34から射出された水の残りは、円筒板部58の外端面に各方向から常時、ぶつかる。このため、円筒板部58にぶつかった水の圧力は、発電用水車5に調芯作用を発揮するため、発電用水車5が回転した際の回転振動や回転ノイズの発生を防止することができる。
【0036】
また、第1の羽根571に直接、ぶつかった後の水流は、円筒板部58の内側を通る際、第2の羽根572に効率よくぶつかるため、発電用水車5を効率よく回転させる。しかも、円筒板部58の外端面は、第1の羽根571の外周端と同一の半径距離の位置にあるため、第1の羽根571に直接、ぶつかった後の水流を円筒板部58の内側に効率よく導くことができるので、第1の羽根571に直接、ぶつかった後の水流が第2の羽根572に効率よく供給され、発電用水車5を効率よく回転させる。それ故、本形態によれば、水力発電装置1の発電効率が高いという利点がある。
【0037】
また、本形態では、射出口34および羽根57は等角度間隔に複数、形成されているため、安定した発電を行うことができる。しかも、本形態では、射出口34は等角度間隔に4つ形成されている一方、羽根57は等角度間隔に7枚形成され、かつ、射出口34の数と、羽根57の枚数とは、互いに素の関係にある。すなわち、射出口34の数と、羽根57の枚数とでは、一方が他方の整数倍となる条件を避けてある。このため、射出口34から射出される水が2枚以上の羽根57に同時に強烈に当たることを防ぐことができるので、発電用水車5に大きな力が同時に加わることを防止できる。それ故、発電用水車5が回転した際の回転振動や回転ノイズの発生を確実に防止することができる。すなわち、射出口34の数と、羽根57の枚数との間で一方が他方の整数倍となる条件であると、射出口34から射出される水が複数枚の羽根57に同時に強烈に当たるため、発電用水車5に大きな力が同時に加わって回転振動や回転ノイズが発生しやすくなるが、本形態によれば、4枚の第1の羽根571が各々、射出口34に最接近するタイミングがずれているため、かかる現象の発生を回避することができる。
【0038】
また、本形態では、発電用水車5を構成するにあたって、外周面から羽根57が張り出す円筒体50と、第1のラジアル軸受51および第2のラジアル軸受52とを別体で形成しているため、円筒体50、第1のラジアル軸受51および第2のラジアル軸受52を樹脂成形品で構成した場合でも、ヒケ等が発生しにくい。それ故、双方の軸穴510、520が高い寸法精度をもって同一サイズとなるように、第1のラジアル軸受51および第2のラジアル軸受52を樹脂成形により製造できる。また、円筒体50に対して第1のラジアル軸受51を固定した後、第1のラジアル軸受51の軸穴510を基準に第2のラジアル軸受52の位置決めを行うので、第1のラジアル軸受51と第2のラジアル軸受52とを同芯位置に配置することができる。それ故、発電用水車5が回転した際の回転振動や回転ノイズの発生を確実に防止することができる。
【0039】
また、円筒体50と、第1のラジアル軸受51および第2のラジアル軸受52とが別体であるため、円筒体第1のラジアル軸受51および第2のラジアル軸受52についてはカーボンファイバー含有ポリアセタール樹脂などの耐磨耗性材料で形成し、ポリフェニレンエーテルなどの安価な樹脂材料や軽量化に適した樹脂材料で円筒体50を形成することも可能である。それ故、ラジアル軸受51、52を耐磨耗性材料で構成した場合でも製造コストを低く抑えることができる。
【0040】
また、第1のラジアル軸受51および第2のラジアル軸受52では、軸穴510、520を囲むように軸線方向に凹む周溝518、528が形成され、軸穴510、520と周溝518、528との間には肉薄の円筒壁519、529が形成されている。しかも、軸穴510、520のうち、支軸4との摺動部分511、521の全体が肉薄の円筒壁519、529で構成されている。このため、第1のラジアル軸受51および第2のラジアル軸受52を樹脂成形により製造する際、摺動部分511、521でのヒケを防止できる。それ故、第1のラジアル軸受51および第2のラジアル軸受52では、軸穴510、520の摺動部分511、521の径寸法に高い精度を得ることができる。また、第1のラジアル軸受51を円筒体50の貫通穴501に圧入した際に、その変形が周溝518で吸収されるので、軸穴510の内径寸法に影響を及ぼさない。さらに、第1のラジアル軸受51および第2のラジアル軸受52を円筒体50の貫通穴501に溶着した際に、その変形が周溝518、528で吸収されるので、軸穴510、520の内径寸法に影響を及ぼさないという利点がある。
【0041】
また、貫通穴501の内周面と第2のラジアル軸受52の外周面とのクリアランスが、貫通穴501の内周面と第1のラジアル軸受51の外周面とのクリアランスより大きいため、第1のラジアル軸受51については貫通穴501の一方側端部に圧入でき、第1のラジアル軸受51の軸穴510を基準に第2のラジアル軸受52の位置決めを行う際には、第2のラジアル軸受52が貫通穴501の他方側端部で内周面に当たって芯出しできないという事態を回避することができる。
【0042】
さらに、発電用水車5を組み立てる際の芯出し工程では、貫通穴501の一方側端部に固定された第1のラジアル軸受51の軸穴510に位置決め軸9を嵌めた後、この位置決め軸9を第2のラジアル軸受52の軸穴520に嵌めて第2のラジアル軸受52を位置決めする。このため、第1のラジアル軸受51の軸穴510を基準に第2のラジアル軸受52の位置決めを容易にかつ、確実に行うことができる。
【0043】
[その他の実施の形態]
上記形態においては、発電用水車5を組み立てる際、円筒体50に対して第1のラジアル軸受51および第2のラジアル軸受52を溶着により固定したが、機械的な潰しや接着などの方法を採用してもよい。また、上記形態では、第1のラジアル軸受51および第2のラジアル軸受52が別体で構成された発電用水車5を用いたが、第1のラジアル軸受51および第2のラジアル軸受52が円筒体50と一体に構成された発電用水車5を用いた場合に本発明を適用してもよい。さらに上記形態では、4つの射出口34が等角度間隔に形成されていたが、4つの射出口34が不等角度間隔に形成されているために、第1の羽根571が各々、射出口34に最接近するタイミングがずれている構成を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(a)、(b)は、本発明を適用した水力発電装置の平面図、およびA−A′断面図である。
【図2】(a)、(b)、(c)は、図1に示す水力発電装置に用いた発電用水車を第1のラジアル軸受側からみたときの斜視図、この発電用水車を第2のラジアル軸受側からみたときの平面図、およびB−B′断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、図2に示す発電用水車の組み立て方法を示す工程断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 水力発電装置
5 発電用水車
6 ステータ部
9 位置決め軸
34 射出口
35 水車室
50 円筒体
51 第1のラジアル軸受
52 第2のラジアル軸受
55 永久磁石
57 羽根
58 円筒板部
501 貫通穴
510、520 軸穴
518、528 周溝
571 第1の羽根
572 第2の羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体入口から流体出口に到る流路と、前記流路の途中位置で軸線周りに回転可能に配置された発電用水車と、該発電用水車の周りから水を噴射する射出口とを有する水力発電装置において、
前記発電用水車は、外周側に張り出す複数枚の第1の羽根と、該第1の羽根に対して軸線方向で隣接する位置で前記発電用水車の回転中心軸線に対して同軸状に構成された円筒板部を備え、
前記射出口は、前記第1の羽根および前記円筒板部の双方に跨る方向に向かって開口していることを特徴とする水力発電装置。
【請求項2】
請求項1において、前記発電用水車は、前記第1の羽根に対して軸線方向で隣接する領域で外周側に張り出す複数枚の第2の羽根を備え、
前記円筒板部は、前記第2の羽根の外周端同士を連結するように構成されていることを特徴とする水力発電装置。
【請求項3】
請求項2において、前記円筒板部の外端面は、前記第1の羽根の外周端と同一の半径距離の位置にあることを特徴とする水力発電装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記射出口は複数形成され、
前記複数枚の第1の羽根が各々、前記射出口に最接近するタイミングがずれていることを特徴とする水力発電装置。
【請求項5】
請求項4において、前記複数枚の第1の羽根は等角度間隔に配置されているとともに、前記射出口も等角度間隔に複数形成され、
前記第1の羽根の枚数と前記射出口の数は互いに素の関係にあることを特徴とする水力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−262918(P2007−262918A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85750(P2006−85750)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】