説明

油圧シリンダ及び油圧駆動装置

【課題】伸張時にはより大きなシリンダ出力を得ることができ、収縮時には油圧シリンダの収縮方向の駆動を効率よく増速し、第2シリンダでエネルギーを回収する。
【解決手段】シリンダは大小2個のシリンダ室を持ち、本体とロッド棒共一体である。シリンダの伸縮の制御は第1シリンダ61で行い、第2シリンダ71の油はヘッド側室76とロッド側室72とを電磁弁4を介し移動し、過不足分を電磁弁4のTポートを介し出入りする。伸張時第1ヘッド側室66に負荷がかかり、圧力が上がると圧力スイッチ7よりの信号で電磁弁4に通電されAポートより圧油が出て、第2ヘッド側室76に入り伸張、加圧する。2個のシリンダで加圧するので出力が上がる。収縮は第1シリンダ61のみなので増速される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機等を駆動するための油圧シリンダ及び当該油圧シリンダを利用した油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレス機その他の各種機械を往復駆動するため油圧シリンダが多数使用されている。この油圧シリンダの伸縮速度が高いほど作業効率は高くなるが、一般的に油圧シリンダの伸縮速度は油圧ポンプの吐出量や吐出圧で決まる。従って、限られたポンプの吐出量や吐出圧でより高い伸縮速度を得るためには、無負荷時と負荷が少ない時に伸縮を増速させる必要がある。
【0003】
このためのものとして、第1シリンダ室を囲むシリンダ本体と、前記第1シリンダ室内をその軸方向に区画して第1ヘッド側室と第1ロッド側室とを形成するように当該第1シリンダ室内に装填される第1ピストン部及びこの第1ピストン部から前記第1ロッド側室側に延びて前記シリンダ本体の外部に突出する第1ロッド部を有する第1ピストンロッドとを備え、前記第1ロッド部は、前記第1シリンダ室の軸方向と平行な方向に延びる第2シリンダ室を内部に有し、前記シリンダ本体は、前記第1シリンダ室内で前記第1ヘッド側室側から第1ロッド側室側に延びる第2ピストンロッドを有し、この第2ピストンロッドの端部は、前記第2シリンダ室内に装填される第2ピストン部を構成し、この第2ピストン部は前記第2シリンダ室内で前記第2ピストン部よりも前記ロッド部の先端側の空間を密閉して第2ヘッド側室を形成し、前記シリンダ本体または前記第1ピストンロッドは、前記第2ヘッド側室内を前記油圧シリンダの外部に連通するためのヘッド側油路を有する油圧シリンダが公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−51194号公報(段落[0006] [0007])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記発明では、伸張時より小さな径を有するピストン(特許文献1において第2ピストン部32)だけが加圧されるので、大きなシリンダ出力を得ることが困難である。また、油圧シリンダの構造が複雑であり、製造コストが高価となり、また、油圧駆動制御装置が複雑である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、伸張時において一定以上の負荷がある時にはより大きなシリンダ出力を得ることができ、無負荷時と負荷が少ない時及び収縮時には油圧シリンダの駆動を効率よく増速するための簡単な構造の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、従来の技術に見られる欠点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、一端(68)が閉塞して他端(69)に貫通孔(80)が形成された第1シリンダ(61)の該一端側に第1ポート(63)を穿設して該他端側に第2ポート(64)を穿設し、一端(78)に貫通孔(80)が、他端(79)に第2貫通孔(82)がそれぞれ形成され、第1シリンダより大きな内径を有する第2シリンダ(71)の該一端側に第3ポート(73)を穿設して該他端側に第4ポート(74)を穿設し、貫通孔(80)を貫通した第1ロッド(67)が第1シリンダの内周壁に摺接する第1ピストン(65)と第2シリンダの内周壁に摺接する第2ピストン(75)とを連結し、前記第2ピストン(75)の他端(79)側面に連結した第2ロッド(77)が第2貫通孔を貫通する油圧シリンダ(6)によって課題を解決できる点に着眼し、かかる知見に基づき本発明を完成させた。
【0008】
また、本発明に係る油圧駆動装置は、油圧シリンダ(6)と、油圧ポンプ(1)と、該油圧ポンプの吐出油を前記油圧シリンダに導いて当該油圧シリンダを伸縮させる油圧回路(21)とを備えた油圧駆動装置(13)であって、前記油圧回路は、第1ピストン(65)と第1シリンダの一端(68)との間に形成される第1ヘッド側室(66)に油を導き、第1ピストンと第1シリンダの他端(69)との間に形成される第1ロッド側室(62)から油圧シリンダの外部に油を排出させるとともに、第2ピストン(75)と第2シリンダの他端(79)との間に形成される第2ロッド側室(72)から油圧シリンダの外部に排出する油を第2ピストンと第2シリンダの一端(78)との間に形成される第2ヘッド側室(76)に供給される油に合流させる伸張駆動用油路と、前記第1ロッド側室に油を供給し、第1ヘッド側室から油圧シリンダの外部に油を排出させるとともに、第2ヘッド側室から排出する油を第2ロッド側室に導く収縮駆動用油路とを含むことを特徴とする。
【0009】
伸張駆動用油路は、第1ヘッド側室と連通する第1ヘッド側油路(6A)の内圧が所定値を超えると油圧ポンプの吐出油を第2ヘッド側室(76)に供給することが好ましい。このことによって、伸張時において一定以上の負荷がある時には、より大きな内径を有する第2シリンダに油を供給するので、より大きなシリンダ出力を得ることができる。
【0010】
伸張駆動用油路は、第1シリンダの所定の位置に取り付けられたセンサ(7K)が第1ピストンを感知すると油圧ポンプの吐出油を第2ヘッド側室(76)に供給することが好ましい。このことによって、第1ピストンを感知することでより大きな出力を必要とすることが分かり、より大きな内径を有する第2シリンダに油を供給するので、伸張時において一定以上の負荷がある時より大きなシリンダ出力を得ることができる。また、油圧駆動装置の停止時、パイロットチェック弁5のはたらきにより、油圧シリンダの第1及び第2ロッドをより着実に静止させることができる。
【0011】
油圧回路は、第2ロッド側室と連通する第2ロッド側油路(7B)から第2ヘッド側室と連通する第2ヘッド側油路(7A)への油の流れを可能にする逆止弁を備えることが好ましい。このことによって、第2シリンダの内径がより大きな場合であっても油圧シリンダが伸張する時の速度を向上させることができる。
【0012】
収縮駆動用油路は、第1ロッド側室又は第1ロッド側油路(6B)内の油の圧力によって逆止弁の一方向通過性を解除し、第2ヘッド側油路から第2ロッド側油路への油の流れを可能にすることが好ましい。このことによって、第2シリンダの内径がより大きな場合であっても油圧シリンダが収縮する時の速度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る油圧シリンダによれば、第1シリンダとより大きな内径を有する第2シリンダが直列に接続され、第1シリンダの内周壁に摺接する第1ピストンと第2シリンダの内周壁に摺接する第2ピストンとが第1ロッドによって接続され、第2ピストンは第1ロッドの連結面の反対面に第2ロッドを連結しているので、油圧シリンダの収縮方向の駆動を効率よく増速するための簡単な構造を提供できる。さらに、伸張時において一定以上の負荷時には、第2シリンダに油を供給することによって、より大きなシリンダ出力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る油圧シリンダを示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る油圧駆動装置を示す説明図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る油圧駆動装置を示す説明図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る油圧駆動装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る油圧シリンダ6を示す。この油圧シリンダ6は、軸方向(図の上下方向)に伸縮可能であり、その伸縮によって例えばプレス機の上下駆動を行う。具体的に、この油圧シリンダ6は、シリンダ本体6aと、シリンダ本体6aに対して前記軸方向に相対移動可能な第2ロッド77とを有し、シリンダ本体6aの外側端部6b及び第2ロッド77の外側端部77aがそれぞれ駆動対象(例えば前記破砕機を構成する一対の破砕アーム)に連結される。
【0016】
シリンダ本体6aは、外径の異なる2つの円筒が前記軸方向の中心軸を共通にして接合された形状をなし、第2シリンダ71は外側端部6bを有する円筒である。第1シリンダ61は、一端68が閉塞し、他端69が第2シリンダ71と例えばネジ、フランジで結合され、第2シリンダ71より小さな内径を有する円筒である。
【0017】
第2ロッド77は、その一端部はシリンダ本体6aの外部に突出し、他端部は第2シリンダ71内に装填され、内周壁に摺接する第2ピストン75と連結する。第2ピストン75は、この第2シリンダ71内をその軸方向に区画することにより、第2ヘッド側室76と第2ロッド側室72とを形成する。第2ロッド77は、第2ピストン75から第2ロッド側室72側へ軸方向に延び、第2シリンダ71の他端79に形成された第2貫通孔82を貫いて、シリンダ本体6aの外部に突出する。
第2貫通孔82にはその内周に第2ロッド77との隙間を塞いで油漏れを防ぐシール部材(図示せず)が取り付けられている。
【0018】
第1ロッド67は、第1シリンダ61内に装填され、その内周壁に摺接する第1ピストン65と連結する。第1ピストン65は、この第1シリンダ61内をその軸方向に区画することにより、第1ヘッド側室66と第1ロッド側室62とを形成する。第1ロッド67は、第1ピストン65から第1ロッド側室62側へ軸方向に延び、他端69の貫通孔80を貫いて、第2シリンダ71の第2ヘッド側室76内に突出し、その端は第2ピストン75と連結する。
【0019】
貫通孔80にはその内周に第1ロッド67との隙間を塞いで油漏れを防ぐシール部材(図示せず)が取り付けられている。
図1では、第1シリンダ61の他端69は、第2シリンダ71の一端78の蓋と同一部材で構成されているが、別部材とすることもできる。この場合にも各々の部材に中心軸を共通とする貫通孔が設けられ、第1ロッド67は、他端69の貫通孔及び第2シリンダ71の一端78の蓋部材に設けられる貫通孔を貫いて、第2シリンダ71の第2ヘッド側室76内に突出する。
【0020】
第2ピストン75は第2シリンダ71の内周壁に摺接し、第1ピストン65は第1シリンダ61の内周壁に摺接する。第2シリンダ71の内径及び第2ピストン75の外径は、それぞれ第1シリンダ61の内径及び第1ピストン65の外径より大きい。
第2シリンダ71の一端78側及び他端79側に、油が油圧シリンダ6の外部から、又は外部に移動することができるように第3ポート73及び第4ポート74がそれぞれ形成されている。同様に、第1シリンダ61の一端68側及び他端69側に、第1ポート63及び第2ポート64がそれぞれ形成されている。
【0021】
第2ピストン75の一端が第2シリンダ71の他端79に当接しているとき、第1ピストン65は第1シリンダの他端69に当接していなく、このとき第1ロッド側室62は所定の容積を有するように第1ロッド67の長さが設定されている。このことによって、径の大きな第2シリンダ71の第2ロッド側室76に所定量を超える油が入り、第2ピストン75が第2シリンダの他端79方向に移動した場合においても、第1ピストン65が第1シリンダの他端69に当接する前に、第2ピストン75が第2シリンダの他端79に当接して移動が停止するので、より小さな第1シリンダ61が破損するのを防止することができる。
【0022】
本発明の第1の実施形態に係る油圧駆動装置13について図2を参照しながら説明する。
〈伸張時〉
【0023】
油圧シリンダ6が伸張する時には、油圧回路13は伸張駆動用油路を構成する。
伸張時切換弁3のソレノイド3aに通電する。このことにより、油圧ポンプの吐出油はAポート3Aを通って第1ヘッド側油路6Aより第1シリンダ61のヘッド側室66に入り、その圧力で第1ピストン65が第1ヘッド側室66の体積を増加させる方向(図2の下方向)に移動する。すると、第1ロッド側室62の体積が減少するので、第1シリンダ61の第2ポート64(図1参照)から油が排出され、第1ロッド側油路6Bを通って切換弁3のTポート3Tから油タンク31に流れる。
【0024】
一方、第2ピストン75は第1ロッド62を介して第1ピストン65と連結しているので、第1ピストン65が動く方向、つまり、第2ロッド72が伸張する方向に同じ速度で動く。このため、第2ヘッド側室76の体積は増加し、第2ロッド側室72の体積は減少する。つまり、油の流れの方向は、第2シリンダ71の第2ヘッド側油路7Aは入り方向に、第2ロッド側油路7Bは出方向になる。
【0025】
このとき切換弁4は中立位置4Cであり、Aポート4AとBポート4BとTポート4Tとが同一回路で連結され、第2ヘッド側油路7Aと第2ロッド側油路7Bが繋がっている。このため、第2ロッド側油路6LBから第2ヘッド側油路7Aに油が移動する。この際、油が不足すると、Tポート4Tより供給できる。
第2ロッド72の伸張は、第1ヘッド側圧力スイッチ7が作動するまで続く。
以上より、小さいシリンダ(第1シリンダ61)に与える油の流量で大きいシリンダ(第1シリンダ71)を小さいシリンダと同じ距離だけ動かすことができるので増速を達成できる。
【0026】
第1ピストン65が第2ポート64(図2に図示せず)の近くまで達し負荷がかかると、第1ロッド側油路6B内の油の圧力が上昇する。この圧力が所定値を超えると第1ヘッド側圧力スイッチ7が作動し、切換弁4のソレノイド4aに加電する信号を送る。すると、油圧ポンプ1から吐出した油が切換弁4のAポート4Aより第2ヘッド側油路7Aを通って第2ヘッド側室76に入り、第2ロッド77を伸張させ、加圧する。
第2ロッド側室72から排出された油は第2ロッド側油路7Bから切換弁4のTポート4Tから油タンク31に戻る。第2ヘッド側油路7A内の油の圧力が上昇し、この圧力が所定値を超えると第2ヘッド側圧力スイッチ9が作動し、切換弁3及び切換弁4への通電が停止する。油圧シリンダ6はこのまま停止する。
このことにより、小さいシリンダ(第1シリンダ61)に所定以上の負荷がかかるとより大きいシリンダ(第2シリンダ71)で加圧するので、無負荷時と負荷が少ない時には油圧シリンダの駆動を効率よく増速し、一定以上の負荷時にはより大きなシリンダ出力を得ることができる。
〈収縮時〉
【0027】
油圧シリンダ6が収縮する時には、油圧回路21は収縮駆動用油路を構成する。
収縮時には、切換弁3のソレノイド3bに通電する。このことにより、油圧ポンプの吐出油は、Bポート3B、第1ロッド側油路6Bを通って第1ロッド側室62に入り、その圧力で第1ピストン65が第1ロッド側室62の体積を増加させる方向(図2の上方向)に移動する。すると、第1ヘッド側室66の体積が減少するので、第1シリンダ61の第1ポート63(図1参照)から油が出て第1ヘッド側油路6Aを通って切換弁3のTポート3Tから油タンク31に流れる。
【0028】
一方、第2ピストン75は第1ロッド62を介して第1ピストン65と連結しているので、第1ピストン65が動く方向、つまり、第2ロッド72が収縮する方向に同じ速度で動く。このため、第2ヘッド側室76の体積は減少し、第2ロッド側室72の体積は増加する。つまり、油の流れの方向は、第2シリンダ71の第2ロッド側油路7Bは入り方向に、第2ヘッド側油路7Aは出方向になる。
このとき切換弁4は中立位置4Cであり、Aポート4AとBポート4BとTポート4Tとが同一回路で連結され、第2ヘッド側油路7Aと第2ロッド側油路7Bが繋がっている。このため、第2ヘッド側油路7Aから第2ロッド側油路7Bに油が移動する。この際、過剰の油はTポート4Tより油タンク31に戻る。
【0029】
第2ヘッド72の収縮は、第1ロッド側圧力スイッチ8が作動するまで続く。
第1ピストン65が第1ポート63(図1参照)の近くまで達すると、第1ヘッド側油路6A内の油の圧力が上昇する。この圧力が所定値を超えると第1ロッド側圧力スイッチ8が作動し、切換弁3の通電を停止する。
以上の作動により、小さいシリンダ(第1シリンダ61)に与える小流量の油で大きいシリンダ(第2シリンダ71)を小さいシリンダと同じ距離を動かすことができる。
【0030】
本発明の第2の実施形態に係る油圧駆動装置14について図3を参照しながら説明する。ここで、第1の実施形態に係る油圧駆動装置13と同じ部材については同じ番号を使用し、重複する説明は省略する。
【0031】
図3に示す油圧駆動装置14では、油圧シリンダが大きく油流量が多くなると切換弁4の許容通過流量より大きい許容通過流量を有するパイロットチェック弁10が油圧回路22に設置されている。パイロットチェック弁10は、第2シリンダ71の第2ヘッド側室76と連通する第2ヘッド側油路7Aと第2ロッド側室72と連通する第2ロッド側油路7Bとのに連結して設けられ、第2ロッド側油路7Bから第2ヘッド側油路7Aの方向に油が流れ、平常時逆方向の流れは阻止される。
【0032】
このパイロットチェック弁10は、例えば別の油の流れ(圧力)を加えることによって、油の流れの一方向性を解除することができるものとし、第2ヘッド側油路7Aから第2ロッド側油路7Bへの油の流れを可能にすることができる。
【0033】
また、図3において、油圧回路22にはパイロットチェック弁10と第1シリンダ61の第1ロッド側室67と連通する第1ロッド側油路6Bとが油回路で連結され、その間に切換弁11が設けられる。切換弁11としては、例えば電磁弁が使用され、切換弁11のAポート11Aを第1ロッド側油路6Bに、Pポート11Pをパイロットチェック弁10に、Tポート11Tを油タンク32に接続する。切換弁11に加電することにより、第1ロッド側油路6B内の圧力でパイロットチェック弁10の流れの一方向性を解除することができる。
〈伸張時〉
【0034】
油圧シリンダ6が伸張する時には、油圧回路22は収縮駆動用油路を構成する。
伸張時には、上記のように、切換弁3に通電し、油圧ポンプの吐出油は第1ロッド側室62に入り、その圧力で第2ロッド77が伸張する方向(図3の下方向)に移動する。このとき、第2シリンダ71の第2ロッド側室72から油が排出され第2ロッド側油路6LBからパイロットチェック弁10を通って第2ヘッド側油路7Aから第2ヘッド側室76へ導かれる。このとき不足する油量は、切換弁4のTポート4Tより第1シリンダ61の第1ロッド側室67から排出された油が供給される。
【0035】
以上より、小さいシリンダ(第1シリンダ61)に必要な小流量の油で大きいシリンダ(第2シリンダ71の第2ロッド77)を小さいシリンダ(第1シリンダ61の第1ロッド67)と同じ距離を動かすことができるので増速を達成することができることになる。
【0036】
第1ピストン65が第2ポート64(図2に図示せず)の近くまで達して第1ロッド側油路6B内の油の圧力が所定値を超えると第1ヘッド側圧力スイッチ7が作動し、切換弁4のソレノイド4aに加電する信号を送る。すると、油圧ポンプ1から吐出した油が切換弁4のAポート4Aより第2ヘッド側油路7Aへ導かれる。第2ヘッド側油路7A内の油圧はパイロットチェック弁10を閉じる方向に作用するため油はパイロットチェック弁10を通過することができないため、すべての油が第2ヘッド側室76に入り、第2ロッド77を伸張させ、加圧する。
【0037】
上記のように、第2ロッド側室72から排出された油は第2ロッド側油路7Bから切換弁4のTポート4Tから油タンク31に戻り、第2ヘッド側油路7A内の油の圧力が所定値を超えると第2ヘッド側圧力スイッチ9が作動し、切換弁3及び切換弁4への通電が停止し、油圧シリンダ6はこのまま停止する。
【0038】
このことにより、第1シリンダ71が大きく油流量が多くなって、第2ロッド側室72から排出される油量が切換弁4を通過することができる流量を超える場合であっても、パイロットチェック弁10によって油をバイパスさせることができ、小さいシリンダ(第1シリンダ61)に所定以上の負荷がかかるとより大きいシリンダ(第1シリンダ71)で加圧して、無負荷時と負荷が少ない時には油圧シリンダの駆動を効率よく増速し、一定以上の負荷時にはより大きなシリンダ出力を得ることができる。
〈収縮時〉
【0039】
油圧シリンダ6が収縮する時には、油圧回路22は収縮駆動用油路を構成する。
収縮時には、上記のように切換弁3のソレノイド3bに通電することにより、油圧ポンプの吐出油は、Bポート3B、第1ロッド側油路6Bを通って第1ロッド側室62に入り、その圧力で油圧シリンダ6が収縮し、第1シリンダ61から排出された油は第1ヘッド側油路6Aを通って切換弁3のTポート3Tから油タンク31に流れる。
【0040】
また、収縮に伴って、上記のように第2シリンダ71の第2ロッド側室72から油が排出された油は、切換弁4を通って第2ロッド側油路7Aから第2ヘッド側室76へ導かれるが、第2シリンダ71がより大きい場合には切換弁4を通過することのできる許容油量を超えることがある。
この場合には、切換弁11に加電することにより、第1ロッド側油路6B内の圧力でパイロットチェック弁10の流れの一方向性が解除され、第2へッド側室76から油が排出された油が第2ヘッド側油路7Aからパイロットチェック弁10を通って第2ロッド側油路7Bから第2ヘッド側室72へ導かれる。

【0041】
第2ヘッド72の収縮は、第1ロッド側圧力スイッチ8が作動するまで続く。
第1ピストン65が第1ポート63(図1参照)の近くまで達し、第1ヘッド側油路6A内の油の圧力が所定値を超えると第1ロッド側圧力スイッチ8が作動し、切換弁11及び切換弁4への通電を停止する。
以上の作動により、第2シリンダ71か大きい場合であっても、小さいシリンダ(第1シリンダ61)に与える小流量の油で大きいシリンダ(第2シリンダ71)を小さいシリンダと同じ距離を動かすことができ、増速を達成することができる。
【0042】
本発明の第3の実施形態に係る油圧駆動装置15について図4を参照しながら説明する。ここで、第1の実施形態に係る油圧駆動装置13と同じ部材については同じ番号を使用し、重複する説明は省略する。
本実施形態では、第1の実施形態に係る油圧駆動装置13において第1ヘッド側圧力スイッチ7、第1ロッド側圧力スイッチ8、及び第2ヘッド側圧力スイッチ9の替わりにそれぞれ近接スイッチ7K,8K及び9Kを第1シリンダ61に取り付けたものであり、その他の構成は第1の実施形態と同じである。
【0043】
このようにすることで、第1ピストン65が各近接スイッチ7K,8K,9Kに近接したとき応答して信号を発することができる。第1ピストン65の感知方法としては、例えば第1ピストン65に鉄分を含ませた磁石によって感知させる方法などが採用できる。第1シリンダ61への上記近接スイッチの取り付け位置は適宜変更できる。
図3では、第1の実施形態に係る油圧駆動装置13について示しているが、第2の実施形態に係る油圧駆動装置14についても適用できることは当業者であれば容易に考え付くことである。
【0044】
本発明に係る油圧シリンダ6及びその油圧装置13,14,15には、シリンダを高速に動かすことができるメリットがある。特に伸張時の負荷の小さなときと収縮時は従来品(油圧シリンダ6において第2シリンダだけのもの)の約4〜9倍の速度になり、作業効率が上がる。また、油が第2シリンダ71の第2ヘッド側室72と第2ロッド側室76との間を移動できる構造なのでエネルギーを回収することができ、エネルギー損失が少なく、電力消費量を下げることができる。
さらに、油圧シリンダ6が動いてないとき、油圧ポンプ1は無負荷であり、上記のことと相まって油温が上がりにくい。さらに、速度が上がり、出力も上がる(6%〜18%)ため、同一出力を発揮させる場合、モータの出力及びポンプの容量を下げることができ、油圧シリンダの大きさも下げることができる可能性がある。
【0045】
本発明の油圧シリンダ6の計算数値表を表1に示す。
表1から判るように、第2シリンダが同一出力を出すとき、本発明品は従来品に較べて、伸張時間、収縮時間とも大幅に短縮することができる。また、本発明品の第1シリンダの出力は第2シリンダの出力に較べて大幅に小さい。このことは、同一の出力を出すときポンプ容量及び電動機出力が小さくてよいことを示している。
【0046】
【表1】

ここで、圧力は14MPa、第1シリンダの出力はロッド側の出力でシリンダを動かす力でもあり、総出力は加算した。また、第1シリンダでの伸張時間は800mmを無負荷で、200mmを負荷で伸張させる場合について計算した。なお油の圧縮による減少分は一般作動油で圧力14MPaのとき、1%未満なので計算に含まれてない。
以下、本発明の具体例を図2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0047】
第2シリンダの太さ100mm、ロッド径56mmφ、第1シリンダの太さ50mm、ロット径28mmφ、ストローク600mmの油圧シリンダを使用し、切換弁として電磁弁を使用した。電磁弁3と第1シリンダ61のとの間は3/8インチ径の2本の油圧ホースで、電磁弁4と第2シリンダ71との間は1/2インチ径の2本の油圧ホースで、吸引側のパイプは1/2インチ径で、Pポート、Tポートは3/8インチ径のパイプ及び油圧ホースとした。
【0048】
油圧ポンプの吐出容量は毎分6リットルで、1Kw電動機の直結とした。ポンプを始動し、電磁弁3、電磁弁4を手動操作し、第1及び第2シリンダを作動させ、十分にエア抜きを行った後、ポンプ吐出圧力を11MPaにした。圧力スイッチ7,9はいずれも10.5MPaに圧力スイッチ8は4MPa設定した。無負荷運転するとシリンダの伸張には約12秒、収縮には約9秒かかった。この結果は計算値とほぼ一致した。圧力スイッチ8は
なるべく低く設定した方が良い。電磁弁3のAポートに通電時、シリンダから油がBポートを通りTポートに戻る時、熱が発生する。これを少なくするためであつた。
【0049】
プレスで負荷をかけて運転すると、ロッドの伸張には平均15秒、収縮には約7秒かかり110mmまで圧縮できた。シリンダ出力は合計で10.2トンである。本発明の油圧シリンダを使用しないで従来の油圧シリンダでこの出力を出すには、毎分16リットルの油圧ポンプ、3.7kwの電動機が必要になり、圧力を13MPaに設定で、シリンダの出力は10.2トンになる。シリンダのストロークは490mmで計算した。シリンダの伸張時間は14.4秒、収縮は9.9秒になる。以上をまとめると表2のとおりである。
【0050】
【表2】


ここで、従来品については計算数値である。
【0051】
本実施例より、同一出力を出すとき、本発明に係る油圧シリンダ及び油圧駆動装置は、従来品に較べて、小さなポンプ容量と電動機出力で足りることが判った。また、伸張時間は略同じで、収縮時間は短縮できた。
【符号の説明】
【0052】
1 油圧ポンプ
3,4,11 切換弁(電磁弁)
3a,3b,4a,11a ソレノイド
3A,4A,11A Aポート
3B,4B Bポート
3P,4P,11P Pポート
3T,4T,11T Tポート
3C,4C,11C 中立位置
5 パイロットチェック弁5
6 油圧シリンダ
6a シリンダ本体
6A 第1ヘッド側油路
6B 第1ロッド側油路
7A 第2ヘッド側油路
7B 第2ロッド側油路
7,8,9 圧力スイッチ
7K,8K,9K 近接スイッチ
10 パイロットチェック弁10
61 第1シリンダ
62 第1ロッド側室
65 第1ピストン
66 第1ヘッド側室
67 第1ロッド
71 第2シリンダ
72 第2ロッド側室
75 第2ピストン
76 第2ヘッド側室
77 第2ロッド
93 第1ポート
94 第2ポート
95 第3ポート
96 第4ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端(68)が閉塞して他端(69)に貫通孔(80)が形成された第1シリンダ(61)の該一端側に第1ポート(63)を穿設して該他端側に第2ポート(64)を穿設し、
一端(78)に貫通孔(80)が、他端(79)に第2貫通孔(82)がそれぞれ形成され、前記第1シリンダより大きな内径を有する第2シリンダ(71)の該一端側に第3ポート(73)を穿設して該他端側に第4ポート(74)を穿設し、
前記貫通孔(80)を貫通した第1ロッド(67)が前記第1シリンダの内周壁に摺接する第1ピストン(65)と前記第2シリンダの内周壁に摺接する第2ピストン(75)とを連結し、
前記第2ピストン(75)の前記他端(79)側面に連結した第2ロッド(77)が前記第2貫通孔(80)を貫通する
ことを特徴とする油圧シリンダ(6)。
【請求項2】
前記第2ピストン(75)が前記第2シリンダの他端(79)に当接しているとき、前記第1ピストン(65)と前記第1シリンダの他端(69)との間に所定容積の室が形成されていることを特徴とする請求項1記載の油圧シリンダ(6)。
【請求項3】
請求項1又は2記載の油圧シリンダ(6)と、油圧ポンプ(1)と、該油圧ポンプの吐出油を前記油圧シリンダに導いて当該油圧シリンダを伸縮させる油圧回路(21)とを備えた油圧駆動装置(13)であって、前記油圧回路は、
前記第1ピストン(65)と前記第1シリンダの一端(68)との間に形成される第1ヘッド側室(66)に油を導き、前記第1ピストンと前記第1シリンダの他端(69)との間に形成される第1ロッド側室(62)から前記油圧シリンダの外部に油を排出させるとともに、前記第2ピストン(75)と前記第2シリンダの他端(79)との間に形成される第2ロッド側室(72)から前記油圧シリンダの外部に排出する油を前記第2ピストンと前記第2シリンダの一端(78)との間に形成される第2ヘッド側室(76)に供給される油に合流させる伸張駆動用油路と、
前記第1ロッド側室(62)に油を供給し、前記第1ヘッド側室(66)から前記油圧シリンダの外部に油を排出させるとともに、前記第2ヘッド側室から排出する油を前記第2ロッド側室に導く収縮駆動用油路と
を含むことを特徴とする油圧駆動装置。
【請求項4】
前記伸張駆動用油路は、前記第1ヘッド側室と連通する第1ヘッド側油路(6A)の内圧が所定値を超えると前記油圧ポンプの吐出油を前記第2ヘッド側室(76)に供給することを特徴とする請求項3記載の油圧駆動装置。
【請求項5】
前記伸張駆動用油路は、前記第1シリンダの所定の位置に取り付けられたセンサ(7K)が前記第1ピストンを感知すると前記油圧ポンプの吐出油を前記第2ヘッド側室に供給することを特徴とする請求項3記載の油圧駆動装置。
【請求項6】
前記油圧回路は、前記第2ロッド側室と連通する第2ロッド側油路(7B)から前記第2ヘッド側室と連通する第2ヘッド側油路(7A)への油の流れを可能にするパイロットチェック弁10を備えることを特徴とする請求項3乃至5項のいずれかに記載の油圧駆動装置。
【請求項7】
前記収縮駆動用油路は、前記第1ロッド側室又は前記第1ロッド側油路(6B)内の油の圧力によって前記パイロットチェック弁の一方向性を解除し、前記第2ヘッド側油路から前記第2ロッド側油路への油の流れを可能にすることを特徴とする請求項6記載の油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−2272(P2012−2272A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136698(P2010−136698)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(710005647)
【Fターム(参考)】