説明

油圧タグライン装置

【課題】吊下体の保持時に、油圧ポンプに常時掛かっている負担を軽減させることにより動力損失を少なくする。
【解決手段】タグラインドラムを駆動する油圧モータ2と、油圧モータ2に圧油を供給する油圧ポンプ1と、蓄積した圧油を油圧モータ2に供給してするアキュムレータ3と、アンロードリリーフ弁4とが設けられている油圧タグライン装置であり、アンロードリリーフ弁4のプレッシャポートPには油圧ポンプ1が接続され、アンロードリリーフ弁4のタンクポートRにはタンク9が接続され、アンロードリリーフ弁4のアクチュエータポートAには油圧モータ2の一方のポートが接続され、油圧モータ2の一方のポートとアンロードリリーフ弁4のアクチュエータポートAとの間にアキュムレータ3が接続され、油圧モータ2の他方のポートはアンロードリリーフ弁4のタンクポートRと前記タンク9との間に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラムシェル作業におけるバケットや、リフティングマグネット作業におけるマグネット等の吊下体の振れ止め(タグライン機能)を行う油圧タグライン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧タグラインとして図3に示されているものが知られている。
【0003】
図3において、タグラインを有するクレーンは、機械本体の上部旋回体50とブーム52からなり、このブーム52に支持ロープ54を介して吊下体としてバケット56が吊下げられ、タグラインドラム(図示しない)から引き出されたタグラインロープ58の先端がバケット56に止め付けられている。
【0004】
また、このようなタグラインの張力を制御する油圧タグライン装置として、下記特許文献1、2に開示されているものが知られている。
【0005】
この特許文献1に開示された油圧タグラインの油圧回路は、油圧ポンプからの吐出油で油圧モータを一定トルクで回転させタグラインドラムを回転させる油圧タグライン回路に、油圧モータへ供給される油圧ポンプから吐出油量のうち余剰油量を分流させる分流弁を設け、分流弁により分流された油圧を畜圧するアキュムレータと、他の油圧機器の制御装置を経て油圧をタンクへ戻す回路を設けている。
【0006】
また、特許文献2に開示された油圧タグラインの油圧回路は、タグラインドラムに連結した油圧モータと油圧モータを駆動する油圧ポンプとを有するタグライン装置において、タグライン用ポンプに接続した油圧モータと並列にリリーフバルブを設け、リリーフバルブの設定圧力を、バルブに電磁切替弁を介して供給されるパイロット油圧源からのパイロット圧の供給・排出により、変更可能とし、電磁切替弁の切替スイッチを運転室内に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭58−176156号公報
【特許文献2】実開昭62−26387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の油圧タグライン装置は、タグライン機能時に、油圧ポンプにリリーフバルブの設定圧の負担すなわち一定の圧力負荷が常時掛かっているため、油圧モータの動力損失が大きく、発熱等の問題もあった。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、タグライン機能時に、油圧ポンプに常時掛かっている負担を軽減させることにより動力損失を少なくすることが出来るタグライン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、タグラインドラムを駆動する油圧モータと、この油圧モータに圧油を供給する油圧ポンプと、蓄積した圧油を前記油圧モータに供給して駆動させるアキュムレータと、プレッシャポートとタンクポートとアクチュエータポートとを有するアンロードリリーフ弁とが設けられている油圧タグライン装置であって、前記プレッシャポートには前記油圧ポンプが接続され、前記タンクポートにはタンクが接続され、前記アクチュエータポートには前記油圧モータの一方のポートが接続され、前記油圧モータの一方のポートと前記アンロードリリーフ弁のアクチュエータポートとの間の配管には前記アキュムレータが接続され、前記油圧モータの他方のポートは前記アンロードリリーフ弁のタンクポートと前記タンクとの間に接続されており、前記アンロードリリーフ弁は前記アキュムレータが接続されている配管内の圧力が設定圧より高くなるとアンロード弁として機能することを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、アンロードリリーフ弁とアキュムレータを設けることによって、前記アキュムレータに蓄積された圧油がない場合には、巻上げ時に油圧ポンプからの圧油を蓄積しながら油圧モータを作動させることができ、巻下げ時には前記油圧モータからの圧油を前記アキュムレータに蓄積することが出来る。そして、アキュムレータに圧油が蓄積されている場合には、その後の巻上げ時にはこのアキュムレータに蓄積された圧油を使用することができる。前記アキュムレータに圧油が蓄積されている場合には、前記アンロードリリーフ弁が油圧ポンプからの圧油をアンロードさせることができるため、前記油圧ポンプに設定圧が常時かかることがなくなり、動力損失を少なくすることができる。
【0012】
また、前記アンロードリリーフ弁が、電磁比例アンロードリリーフ弁であり、前記アキュムレータが、圧油の供給される可変ポートをバネ室に有するバネ式アキュムレータであり、前記可変ポートに圧油を供給することで前記バネ式アキュムレータの設定圧を変更するための電磁比例リリーフ弁が前記可変ポートに接続されており、前記電磁比例リリーフ弁と前記電磁比例アンロードリリーフ弁には、これら両弁に対する入力信号を変更することでそれぞれの設定圧を変更するためのコントローラが接続されるようにしてもよい。
【0013】
この構成によれば、タグライン装置を可変張力型として使用することができる。張力の変更は、コントローラの調節により、電磁比例アンロードリリーフ弁と電磁リリーフ弁の設定圧を変更することで容易に行うことができる。
【0014】
そして、前記アンロードリリーフ弁のアクチュエータポートと前記油圧モータとの間の配管と、前記タンクとがリリーフ弁を介して接続され、前記リリーフ弁は、前記アンロードリリーフ弁のアクチュエータポートと前記油圧モータとの間の配管内の圧力が所定値以上になった場合に、当該配管内の圧油をタンクにリリーフするようにすることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、アキュムレータとアンロードリリーフ弁が接続されている配管内の圧力が高くなった場合に、リリーフ弁が作動し、この配管内に圧油が溜まりすぎるのを防ぐことができるため、油圧タグライン装置の油圧回路の故障を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、油圧ポンプに一定の圧力負荷が常時掛かることが無いため、動力損失を少なくさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係る油圧タグライン装置の油圧回路図である。
【図2】本発明の実施形態2に係る油圧タグライン装置の油圧及びその制御回路図である。
【図3】タグライン装置を備えた作業機械の概略図を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の油圧タグライン装置の油圧回路の実施形態を図面を参照して説明する。
【0019】
(実施形態1)
図1に示すように、タグラインドラム12には、このタグラインドラム12を駆動させるための油圧モータ2が接続されている。この油圧モータ2は油圧ポンプ1からの圧油により駆動される。この油圧ポンプ1と前記油圧モータ2との間には、アンロードリリーフ弁4が接続されている。このアンロードリリーフ弁4はプレッシャポートPとアクチュエータポートAとタンクポートRを有している。前記プレッシャポートPには前記油圧ポンプ1が接続されており、前記アクチュエータポートAには前記油圧モータ2の第1ポート(一方のポート)が接続されており、前記タンクポートRにはタンク9が接続されている。前記アンロードリリーフ弁4と前記油圧モータ2とを接続している配管は分岐配管を有しており、その分岐配管にアキュムレータ3が接続されている。前記アンロードリリーフ弁4と前記タンク9との間の配管には背圧弁5が接続されている。前記油圧モータ2の第2ポート(他方のポート)は、前記アンロードリリーフ弁4と前記背圧弁5とを接続している配管に接続されている。また、リリーフ弁8が前記油圧モータ2と前記アンロードリリーフ弁4の間の圧油をタンク9へリリーフさせることができるように設けられている。本実施形態1では、前記リリーフ弁8の第1ポートは前記油圧モータ2と前記アンロードリリーフ弁4のアクチュエータポートAが接続されている配管に接続されており、前記リリーフ弁8の第2ポートは、前記油圧モータ2の第2ポートと前記タンク9との間の配管に接続されている。
【0020】
前記アキュムレータ3は、圧油が蓄積されていない状態においては、タグラインの巻上げ時や巻下げ時に圧油を溜め、圧油が蓄積された状態においては、この蓄積された圧油を利用し、前記油圧モータ2を駆動させるものである。
【0021】
前記アンロードリリーフ弁4は、前記アキュムレータ3が接続されている配管内の圧力が高くなった場合にアンロード弁として機能する。前記油圧ポンプ1は前記アンロードリリーフ弁4が前記油圧ポンプ1からの圧油をアンロードしている間、前記アンロードリリーフ弁4のオンロード時(タグライン機能時)よりも負荷が少なくなる。このため、アンロードリリーフ弁4のアンロード時には、油圧ポンプ1に掛かる無駄な動力の損失が少なくなる。
【0022】
前記リリーフ弁8は、前記アキュムレータ3と前記アンロードリリーフ弁4が接続されている配管内の圧力が前記アンロードリリーフ弁4の設定圧より高くなった場合に、圧油を前記タンク9へと逃がし、油圧タグライン装置の油圧回路の破損を防ぐものである。
【0023】
前記背圧弁5は、前記タンク9からの圧油の逆流を防ぐと共に、巻下げ時に前記油圧モータ2に背圧を与え、キャビテーションを防ぐものである。
【0024】
次に本発明に係る油圧回路の動作を説明する。タグラインドラム12の巻上げ時、前記アキュムレータ3に蓄積された圧油がない場合には、前記油圧ポンプ1より吐出された圧油は前記アンロードリリーフ弁4を通り、アクチュエータポートAより吐出し、前記アキュムレータ3に圧油を蓄積しながら、前記油圧モータ2を駆動させる。しかし、このアキュムレータ3に蓄圧された圧油がある場合には、このアキュムレータ3の圧油が前記油圧モータ2を駆動させる。このとき、前記アキュムレータ3と前記アンロードリリーフ弁4が接続されている配管内の圧力が高くなっているので、前記アンロードリリーフ弁4がアンロード弁として機能し、前記油圧ポンプ1から吐出された圧油はアンロードリリーフ弁4のタンクポートRを通り、前記タンク9に流れる。また、タグラインの巻上げ時における揚程が大きく、前記アキュムレータ3に蓄積された圧油では前記油圧モータ2を全揚程分駆動させることができない場合には、巻上げ途中で前記アキュムレータ3と前記アンロードリリーフ弁が接続されている配管内の圧力が下がるため、前記アンロードリリーフ弁4はアンロード状態からオンロード状態へと変更される。従って、残りの巻上げに対する必要量の圧油は、前記油圧ポンプ1から前記アクチュエータポートAを通って、前記油圧モータ2へ供給される。
【0025】
一方、タグラインの巻下げ時に前記油圧ポンプ1より吐出された圧油は、前記アキュムレータ3と前記アンロードリリーフ弁4が接続されている配管の圧力を高くする。そのため、前記アンロードリリーフ弁4がアンロード弁として機能し、このアンロードリリーフ弁4のタンクポートRより吐出された圧油が、前記油圧モータ2の第2ポートと接続している回路を通り、油圧モータ2を駆動させる。そして、油圧モータ2から吐出された圧油は、前記アキュムレータ3に蓄積される。
【0026】
また、タグラインの巻上げ作業や巻下げ作業を行い前記アキュムレータ3に圧油が溜まっている状態での吊下体の保持時には、前記アキュムレータ3の圧油が、タグラインロープの張力を保つために、前記油圧モータ2を駆動させるとともに、前記タグラインドラム12を巻上げ側に作動させる。このとき、この油圧モータ2を駆動させる分だけの圧油が前記アキュムレータ3より供給される。また、前記アキュムレータ3に圧力が蓄積されている状態では前記アキュムレータ3と前記アンロードリリーフ弁4とが接続されている配管内の圧力が高くなっているため、前記油圧ポンプ1からの圧油は、前記アンロードリリーフ弁4がアンロードし、前記タンクポートRから吐出され前記タンク9へ流れる。
【0027】
これらの作業の時、前記アンロードリリーフ弁4と前記アキュムレータ3とが接続されている配管内の圧力が前記アンロードリリーフ弁4の設定圧力より高くなった場合には前記リリーフ弁8が作動する。そして、圧油をタンク5へと逃がすことで、この配管の圧油が高圧になりすぎるのを防ぎ、油圧回路の破損を防ぐことが出来る。
【0028】
前記アンロードリリーフ弁4と前記アキュムレータ3の作動により、タグライン機能の場合であっても、前記アンロードリリーフ弁4がアンロードしている場合には、油圧ポンプ1に掛かる負担が小さくなる。そのため、前記油圧ポンプ1に一定の圧力負荷が常時掛からないので、動力損失を少なくすることができる。
【0029】
また、前記アキュムレータ3に圧油を蓄積して、これを油圧モータ2の駆動に用いることで、前記アキュムレータ3が前記油圧ポンプの補助をすることが出来るので、アキュムレータ3の容量を使用状況に応じて適切に設定しておく(例えばタグラインの最大揚程巻上げ時の場合は、それに応じた容量とする)ことにより、前記油圧ポンプ1の容量を従来のものよりも小型化することも出来る。
【0030】
(実施形態2)
図2に示すように、実施形態1からの変更点として、前記アンロードリリーフ弁4を電磁比例アンロードリリーフ弁10とし、アキュムレータ3をバネ式アキュムレータ11とされている。そして、このバネ式アキュムレータ11のバネ室側に電磁比例リリーフ弁6を介して油圧源13が接続されている。前記電磁比例リリーフ弁6と前記電磁比例アンロードリリーフ弁10には、これらの弁6、10に対する入力信号をそれぞれ変更することで、これら両弁6、10の設定圧をそれぞれ変更するコントローラ7が接続されている。
【0031】
前記バネ式アキュムレータ11に前記電磁比例リリーフ弁6を介し油圧源13に接続したことにより、油圧源13からの圧油をバネ室側へ供給し、バネ室を加圧ポートにすることで前記バネ式アキュムレータ11の設定圧を変更できるようにしている。このときの加圧ポートに掛ける圧力は前記コントローラ7で前記電磁比例リリーフ弁6の設定圧力を変更することによって調節することができる。また、前記電磁比例アンロードリリーフ弁10もコントローラ7で設定圧を変更することができる。したがって、タグライン張力の変更は、前記電磁比例アンロードリリーフ弁10とバネ式アキュムレータ11の設定圧力を前記コントローラ7の調節により変更することによって容易に行うことができる。
【0032】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内のすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1 油圧ポンプ
2 油圧モータ
3 アキュムレータ
4 アンロードリリーフ弁
5 背圧弁
6 電磁比例リリーフ弁
7 コントローラ
8 リリーフ弁
9 タンク
10 電磁比例アンロードリリーフ弁
11 バネ式アキュムレータ
12 タグラインドラム
13 油圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タグラインドラムを駆動する油圧モータと、この油圧モータに圧油を供給する油圧ポンプと、蓄積した圧油を前記油圧モータに供給して駆動させるアキュムレータと、プレッシャポートとタンクポートとアクチュエータポートとを有するアンロードリリーフ弁とが設けられている油圧タグライン装置であって、前記プレッシャポートには前記油圧ポンプが接続され、前記タンクポートにはタンクが接続され、前記アクチュエータポートには前記油圧モータの一方のポートが接続され、前記油圧モータの一方のポートと前記アンロードリリーフ弁のアクチュエータポートとの間の配管には前記アキュムレータが接続され、前記油圧モータの他方のポートは前記アンロードリリーフ弁のタンクポートと前記タンクとの間に接続されており、前記アンロードリリーフ弁は前記アキュムレータが接続されている配管内の圧力が設定圧より高くなるとアンロード弁として機能することを特徴とする油圧タグライン装置。
【請求項2】
前記アンロードリリーフ弁が、電磁比例アンロードリリーフ弁であり、前記アキュムレータが、圧油の供給される可変ポートをバネ室に有するバネ式アキュムレータであり、前記可変ポートに圧油を供給することで前記バネ式アキュムレータの設定圧を変更するための電磁比例リリーフ弁が前記可変ポートに接続されており、前記電磁比例リリーフ弁と前記電磁比例アンロードリリーフ弁には、これら両弁に対する入力信号を変更することでそれぞれの設定圧を変更するためのコントローラが接続されていることを特徴とする請求項1記載の油圧タグライン装置。
【請求項3】
前記アンロードリリーフ弁のアクチュエータポートと前記油圧モータとの間の配管と、前記タンクとが、リリーフ弁を介して接続され、前記リリーフ弁は、前記アンロードリリーフ弁のアクチュエータポートと前記油圧モータとの間の配管内の圧力が所定値以上になった場合に、前記タンクに当該配管内の圧油をリリーフすることを特徴とする請求項1又は2に記載の油圧タグライン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−41161(P2012−41161A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185686(P2010−185686)
【出願日】平成22年8月21日(2010.8.21)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】