説明

波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器

【課題】応答性が良好な波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器を提供する。
【解決手段】波長可変干渉フィルター5は、固定基板51と、可動基板52と、固定基板51の反射膜固定面512Aに設けられた固定反射膜54と、可動基板52の可動面521Aに設けられた可動反射膜55と、反射膜間ギャップを変化させる静電アクチュエーター56と、を備え、固定反射膜54及び可動反射膜55が対向する反射膜対向領域Ar1には、反射膜固定面512A及び可動面521Aが第一ギャップG1で対向する第一領域Ar2と、第一ギャップG1より第二ギャップG2で対向する第二領域Ar3と、が設けられ、固定反射膜54及び可動反射膜55は、それぞれ反射膜対向領域Ar1のうち少なくとも第一領域Ar2に設けられ、前記第二領域Ar3を通る光路上に、光を遮光する遮光部516が設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の基板の互いに対向する面に、それぞれ反射膜を所定のギャップを介して対向配置した波長可変干渉フィルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の光共振器(波長可変干渉フィルター)は、表面に凹部が形成されたガラス基板と、凹部を閉塞するダイアフラムとを備え、ダイアフラムが凹部内部を閉塞するように接合されている。また、凹部の底部及びダイアフラムの凹部に対向する面に、互いに対向する高反射膜が設けられている。そして、ダイアフラムは、凹部に対向する領域に、肉厚部と薄肉部とが設けられており、薄肉部が撓むことで、肉厚部が凹部側に進退可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−243963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のような波長可変干渉フィルターでは、肉厚部を凹部側に撓ませて、反射膜間のギャップを変化させる際、肉厚部と凹部との間の空気が抵抗となる。特に、反射膜の面方向の寸法に対して、反射膜間のギャップの寸法が小さい場合、反射膜間の空気が外側に逃げにくくなり、空気抵抗も増大してしまう。このため、肉厚部を凹部側に変位させる際の応答性が悪化してしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みて、応答性が良好な波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の波長可変干渉フィルターは、第一フィルター部を有する第一基板と、前記第一フィルター部と対向する第二フィルター部を有する第二基板と、前記第一フィルター部に設けられた第一反射膜と、前記第二フィルター部に設けられ、前記第一反射膜に対向する第二反射膜と、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の間の寸法を変化させるギャップ変更部と、を備え、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が対向するフィルター対向領域には、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が第一ギャップで対向する第一領域と、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が前記第一ギャップよりも大きい寸法の第二ギャップで対向する第二領域と、が設けられ、前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、それぞれ、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部の前記フィルター対向領域のうち、少なくとも第一領域に設けられ、前記第二領域を通る光路上に、光を遮光する遮光部が設けられたことを特徴とする。
ここで、「第二領域を通る光路上」とは、仮に「遮光部」が設けられていない場合において、波長可変干渉フィルターに入射した光が第二領域を通過する仮の光路上のことを指すものである。なお、本発明では、遮光部が設けられているため、第二領域を通過する光、又は第二領域に入射する光が遮光される。
【0008】
この発明では、第一フィルター部及び第二フィルター部が対向するフィルター対向領域には、これらの第一フィルター部及び第二フィルター部が、第一ギャップで対向する第一領域と、第一ギャップより大きい第二ギャップで対向する第二領域とが設けられている。そして、第一反射膜及び第二反射膜は、フィルター対向領域のうち、少なくとも第一領域に設けられており、第二領域の光路上には、入射光又は射出光を遮光する遮光部が設けられる。
このような構成では、ギャップ変更部により、反射膜間ギャップが小さくなるように第一フィルター部及び第二フィルター部間の距離を変動させた場合でも、フィルター対向領域に存在する空気が、第二領域に逃げることで、空気抵抗を低減させることができる。このため、ギャップ変更部により反射膜間ギャップを変更する際の応答性を向上させることができる。更に、第二領域の光路上に遮光部が設けられていることによって、第二領域の第二ギャップに基づいた波長の光が、目的波長に混合して分解能が低下することを防止できる。
【0009】
また、第一フィルター部及び第二フィルター部の間の空気抵抗をなくすためには、波長可変干渉フィルターを真空パッケージ内に収納し、かつ凹部の内部を真空に保持することも考えられる。しかしながら、このような場合、内部を真空に保持するために、気密性が高いパッケージを用い、かつ信頼性の高い封止を行う必要がある。このため、高コストとなり、サイズも大型化してしまう。
これに対して、本発明では、第一基板及び第二基板の間を真空に保持する必要がないため、低コストであり、簡単な構成で小型化することができる。
【0010】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第一基板及び前記第二基板のうち、少なくともいずれか一方に溝が形成され、当該溝の溝底面から他方の基板までの距離が前記第二ギャップとなり、前記溝は、前記第一基板及び前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記フィルター対向領域の領域内部から、当該フィルター対向領域の領域外部まで延出したことが好ましい。
【0011】
この発明では、第一基板及び第二基板のうち少なくともいずれか一方に溝が形成されることで第二領域が設けられている。すなわち、第二領域では、基板に溝が形成されているため、第一フィルター部及び第二フィルター部の寸法が、この溝の溝深さの分だけ第一領域の第一ギャップよりも大きくなる。
フィルター形成領域内に第一領域及び第二領域を設けるために、例えばフィルター対向領域の第一領域に、透光性の層を形成することで、第二ギャップよりも小さい第一ギャップを形成することも可能である。しかしながら、この場合、当該層を別途容易にする必要があり、コストが高くなり、製造方法においても工程数が増える。これに対して上述のように、溝を形成する場合では、エッチングにより容易に溝を形成することができ、また、別の層を設ける必要がない分、低コストとなる。
【0012】
また、本発明では、第一基板及び第二基板を基板厚み方向から見た平面視(以降、フィルター平面視と略す)において、フィルター対向領域の内外に亘って溝が設けられる。つまり、第一反射膜及び第二反射膜が対向する領域の内外に亘って溝が設けられている。このため、第一フィルター部及び第二フィルター部を平行に維持して、これらの間の寸法が小さくなるように変化させた場合でも、フィルター対向領域の領域内の空気を、溝を通って、当該フィルター対向領域の領域外に容易に逃がすことができる。これにより、良好な応答性で、反射膜間ギャップを変化させることができる。
【0013】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記溝は、前記第一基板及び前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記フィルター対向領域の領域中心部から径外方向に延出して設けられたことが好ましい。
波長可変干渉フィルターでは、反射膜間ギャップを変動させた際の分解能の低下を抑えるために、第一反射膜及び第二反射膜が平行状態を維持したまま反射膜間ギャップが変化させる必要がある。ここで、反射膜間ギャップを小さくする場合、特に、反射膜間ギャップの中心部に存在する空気が外部に逃げにくくなり、空気抵抗となることが考えられる。
これに対して、本発明では、溝は、フィルター平面視において、フィルター対向領域の中心部から外周側に向かって、径外方向に放射状に延びて形成されている。
このため、フィルター対向領域のうち、最も逃がしにくい中心部の空気を、溝を介して逃がすことができるので、より良好な応答性で、反射膜間ギャップを変化させることができる。
【0014】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記遮光部は、前記第一基板及び前記第二基板のうち、光が入射する側の基板に設けられたことが好ましい。
波長可変干渉フィルターでは、一方の基板から入射した光を第一反射膜及び第二反射膜の間で多重干渉させ、反射膜間の距離に応じた目的波長の光を他方の基板側に透過させて取り出すことができる。この時、遮光部が、光射出側の基板に設けられている場合、例えば、溝の溝内周面に入射した光が、角度を変え、遮光部の無い領域を通過することによって、第一領域を透過した光に混合して波長可変干渉フィルターから射出されてしまうおそれがあり、この場合、分解能が低下する。
これに対して、本発明では、遮光部は、光入射側の基板に設けられている。このため、溝の溝内周面を光が通過することはなく、光射出側に透過する光への影響がない。したがって、波長可変干渉フィルターの分解能低下を防止することができる。
【0015】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第二基板は、前記第二反射膜が設けられた可動部と、前記可動部を前記第一基板に対して進退可能に保持する保持部と、を備え、前記ギャップ変更部は、前記可動部を前記第一基板に対して進退させることで、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の間のギャップを変動させ、前記溝は、前記第一基板に設けられたことが好ましい。
本発明では、ギャップ変更部は、保持部を撓ませて、第二基板の可動部を第一基板側に変位させることで、反射膜間ギャップを変化させる。一方、第一基板は、ギャップ変更部により形状が変形されず、固定状態となっており、この第一基板に溝が形成されている。
ここで、第二基板は、保持部を撓ませて可動部を第一基板側に変位させるが、この時、可動部にも保持部の変形量が伝達され、微小な形状変形が生じる場合があり、この場合、溝に微小な幅寸法の増大が起こるおそれがある。このような場合、溝に対して光が入射する恐れがあり、第二領域の第二ギャップに基づいた波長の光が、目的波長に混合して分解能が低下することが考えられる。また、遮光部の面積を大きくすることで、第二領域を透過する光をより確実に防止することが可能となるが、この場合、第一領域が小さくなることで、波長可変干渉フィルターにより取り出された光の光量も小さくなる。
これに対して、本発明では、形状変形がない第一基板に溝が設けられているため、上述のような形状変化による不都合が生じず、波長可変干渉フィルターの分解能の低下も防止できる。また、遮光部のサイズを大きくする必要もないので、十分な光量の目的波長の光を取り出すことができる。
【0016】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記ギャップ変更部は、前記第一基板に設けられた第一電極と、前記第二基板に設けられ、前記第一電極と電極間ギャップを介して対向した第二電極と、を有する静電アクチュエーターであり、前記第一基板は、前記第二基板に対向する面に前記第一電極が設けられる第一電極配置溝と、前記第一電極配置溝の溝底面から前記第二基板側に突出し、前記第一電極配置溝の溝底面から立ち上がる側面部、及び、前記第二基板に対向し、前記第一反射膜が設けられる反射膜固定面を有する第一反射膜固定部と、を備え、前記溝は、前記第一反射膜固定部の前記反射膜固定面の中心部から、前記側面部に亘って設けられたことが好ましい。
【0017】
本発明では、静電アクチュエーターの第一電極は、第一電極配置溝に設けられ、第一反射膜は、第一電極配置溝よりも第二基板側に突出した第一反射膜固定部の反射膜固定面に設けられている。つまり、第一電極及び第二電極の間の電極間ギャップは、反射膜間ギャップよりも大きくなる。
このような構成では、反射膜間ギャップをより大きい変動範囲で変化させることができ、波長可変干渉フィルターにより取り出すことが可能な波長域を広帯域化することができる。
また、一般に電極間に作用する静電引力は、距離の二乗に反比例するため、電極間ギャップが小さくなると、静電引力の制御が困難となり、反射膜間ギャップの調整が困難となる。これに対して、本発明では、電極間ギャップが反射膜間ギャップよりも大きく形成されるため、静電引力の制御が容易であり、反射膜間ギャップを精度よく所望の値に設定することができる。
【0018】
更に、本発明では、溝が、第一反射膜固定部において、反射膜固定面の中心部から、側面部に亘って形成されている。これにより、可動部を反射膜固定面側に変位させた際に、可動部及び反射膜固定面により挟まれる領域の空気が、溝を通り、側面部の外部に放出させることができる。このため、溝を通った空気が、第一反射膜及び第二反射膜の間に戻ることがなく、第一電極及び第二電極の間の空間に逃がすことができるため、より効果的に空気抵抗を低減させることができる。
【0019】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記溝の溝底面は、前記第一電極配置溝の溝底面と同一平面であることが好ましい。
この発明では、溝の溝底面と、第一電極配置溝の溝底面とが同一高さであるため、段差等による空気抵抗の増大がなく、溝に逃げた空気を良好に第一電極配置溝に逃がすことができる。また、第一基板の製造において、第一電極配置溝と溝を同一工程で形成することができ、製造工程を簡略化することができる。
【0020】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記遮光部は、前記第一基板及び前記第二基板のうち、前記溝が設けられた基板に設けられたことが好ましい。
本発明では、遮光部は、溝が形成された基板に設けられている。このような構成では、遮光部及び溝のアライメント調整が容易であり、かつ精度よくアライメントの調整を行える。したがって、第二領域の光路上に光が侵入することを防止でき、分解能の低下を防止できる。
【0021】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記遮光部は、前記溝の溝内周面に設けられたことが好ましい。
本発明では、溝の溝内周面に遮光部が設けられるため、溝の溝側面等に光が侵入したり、乱反射したりする不都合をより確実に防止することができる。したがって、より確実に分解能の低下を抑えることができる。
【0022】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記遮光部は、前記溝が設けられた基板において、当該溝が設けられた面とは反対側の面に設けられたことが好ましい。
本発明では、遮光部が、溝が設けられた基板に設けられることで、上述のように、アライメント調整を精度よく実施できる。
【0023】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記遮光部は、前記第二領域の光路上に設けられた第一遮光部と、前記第一基板及び前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記第一反射膜及び前記第二反射膜が対向する反射膜対向領域のうち、光を多重干渉させる規定領域外を遮光する環状の第二遮光部と、を備えたことが好ましい。
本発明では、第一遮光部により、上記発明と同様、第二領域への光の侵入、または第二領域からの光の透過を防止することができ、波長可変干渉フィルターにおける分解能の低下を防止できる。
これに加え、第二遮光部をアパーチャーとして機能させることができ、反射膜対向領域に入射させる、又は反射膜対向領域が入射された光の孔径を所定値に設定することで、精度の良い光測定を実施することができる。
【0024】
本発明の光学フィルターデバイスは、第一フィルター部を有する第一基板、前記第一フィルター部と対向する第二フィルター部を有する第二基板、前記第一フィルター部に設けられた第一反射膜、前記第二フィルター部に設けられ、前記第一反射膜に対向する第二反射膜、及び、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の間の寸法を変化させるギャップ変更部、を備えた波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターを収納し、少なくとも一部に前記波長可変干渉フィルターに光を導く導光部が設けられた筐体と、を備え、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が対向するフィルター対向領域には、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が第一ギャップで対向する第一領域と、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が前記第一ギャップよりも大きい寸法の第二ギャップで対向する第二領域と、が設けられ、前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、それぞれ、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部の前記フィルター対向領域のうち、少なくとも第一領域に設けられ、前記第二領域を通る光路上に、光を遮光する遮光部が設けられたことを特徴とする。
【0025】
本発明の光学フィルターデバイスでは、第一フィルター部及び第二フィルター部が対向するフィルター対向領域には、これらの第一フィルター部及び第二フィルター部が、第一ギャップで対向する第一領域と、第一ギャップより大きい第二ギャップで対向する第二領域とが設けられている。そして、第一反射膜及び第二反射膜は、少なくとも第一領域に設けられており、第二領域の光路上には、遮光部が設けられる。
このため、上述した発明と同様に、ギャップ変更部により、反射膜間ギャップが小さくなるように、第一フィルター部及び第二フィルター部間の距離を変動させた場合でも、第一領域の空気を、第二領域に逃がすことができ、空気抵抗を低減させることができる。このため、ギャップ変更部により反射膜間ギャップを変更する際の応答性を向上させることができる。
また、波長可変干渉フィルターが筐体内に収納されているため、大気に含まれるガス等による反射膜の劣化や、異物の付着を防止することができる。
【0026】
本発明の光学フィルターデバイスでは、前記遮光部は、前記導光部に設けられたことが好ましい。
本発明では、遮光部は、波長可変干渉フィルターに光を入射させる、又は波長可変干渉フィルターからの光を射出させる導光部に設けられている。このような導光部に遮光部が設けられる構成では、例えば、遮光部の膜応力が波長可変干渉フィルターに直接掛かることがなく、波長可変干渉フィルターの分光精度に影響を与えることがない。すなわち、遮光部の設計自由度が高い。また、波長可変干渉フィルターの製造プロセスから遮光部形成の工程を省略することもできる。
【0027】
本発明の光学モジュールは、第一フィルター部を有する第一基板と、前記第一フィルター部と対向する第二フィルター部を有する第二基板と、前記第一フィルター部に設けられた第一反射膜と、前記第二フィルター部に設けられ、前記第一反射膜に対向する第二反射膜と、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の間の寸法を変化させるギャップ変更部と、前記第一反射膜及び前記第二反射膜により取り出された光を検出する検出部と、を備え、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が対向するフィルター対向領域には、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が第一ギャップで対向する第一領域と、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が前記第一ギャップよりも大きい寸法の第二ギャップで対向する第二領域と、が設けられ、前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、それぞれ、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部の前記フィルター対向領域のうち、少なくとも第一領域に設けられ、前記第二領域を通る光路上に、光を遮光する遮光部が設けられたことを特徴とする。
【0028】
本発明の光学モジュールでは、第一フィルター部及び第二フィルター部が対向するフィルター対向領域には、これらの第一フィルター部及び第二フィルター部が、第一ギャップで対向する第一領域と、第一ギャップより大きい第二ギャップで対向する第二領域とが設けられている。そして、第一反射膜及び第二反射膜は、少なくとも第一領域に設けられており、第二領域の光路上には、遮光部が設けられる。
このため、上述した発明と同様に、ギャップ変更部により、反射膜間ギャップが小さくなるように、第一フィルター部及び第二フィルター部間の距離を変動させた場合でも、第一領域の空気を、第二領域に逃がすことができ、空気抵抗を低減させることができる。このため、ギャップ変更部により反射膜間ギャップを変更する際の応答性を向上させることができ、検出部において、迅速に目的波長の光を検出することができる。
【0029】
本発明の光学モジュールでは、前記遮光部は、前記検出部に設けられたことが好ましい。
本発明では、遮光部は、検出部に設けられている。検出部としては、例えば、複数の光電交換素子をアレイ状に配列した受光面を有する構成とすることができ、この場合、受光面の、第二領域を透過した光が到達する位置に遮光部を設けることで、第一領域を透過した光のみを検出することができる。
【0030】
本発明の電子機器では、第一フィルター部を有する第一基板と、前記第一フィルター部と対向する第二フィルター部を有する第二基板と、前記第一フィルター部に設けられた第一反射膜と、前記第二フィルター部に設けられ、前記第一反射膜に対向する第二反射膜と、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の間の寸法を変化させるギャップ変更部と、を備え、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が対向するフィルター対向領域には、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が第一ギャップで対向する第一領域と、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が前記第一ギャップよりも大きい寸法の第二ギャップで対向する第二領域と、が設けられ、前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、それぞれ、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部の前記フィルター対向領域のうち、少なくとも第一領域に設けられ、前記第二領域を通る光路上に、光を遮光する遮光部が設けられたことを特徴とする。
【0031】
本発明では、第一フィルター部及び第二フィルター部が対向するフィルター対向領域には、これらの第一フィルター部及び第二フィルター部が、第一ギャップで対向する第一領域と、第一ギャップより大きい第二ギャップで対向する第二領域とが設けられている。そして、第一反射膜及び第二反射膜は、少なくとも第一領域に設けられており、第二領域の光路上には、遮光部が設けられる。
このため、上述した発明と同様に、ギャップ変更部により、反射膜間ギャップが小さくなるように、第一フィルター部及び第二フィルター部間の距離を変動させた場合でも、第一領域の空気を、第二領域に逃がすことができ、空気抵抗を低減させることができる。このため、ギャップ変更部により反射膜間ギャップを変更する際の応答性を向上させることができる。したがって、電子機器において、例えば、第一反射膜及び第二反射膜による多重干渉により取り出された光を検出して、その検出した光に基づいて、各種処理を実施する場合では、迅速な処理を実施することができる。更に、電子機器において、例えば、第一反射膜及び第二反射膜による光干渉により取り出された光を外部に出力する電子機器では、迅速に目的波長の光を外部に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る第一実施形態の測色装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの平面図。
【図3】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの断面図。
【図4】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの固定基板を可動基板側から見た平面図。
【図5】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの可動基板を固定基板側から見た平面図。
【図6】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの固定基板の製造工程を示す図。
【図7】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの可動基板の製造工程を示す図。
【図8】第二実施形態の波長可変干渉フィルターにおける反射膜固定部近傍の概略構成を示す断面図。
【図9】第三実施形態の検出部の概略構成を示す平面図。
【図10】第四実施形態に係る光学フィルターデバイスの概略構成を示す断面図。
【図11】他の実施形態における波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図。
【図12】他の実施形態における波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図。
【図13】他の実施形態における波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置を示す概略図。
【図14】図13のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図。
【図15】他の実施形態における波長可変干渉フィルターを備えた食物分析装置の概略構成を示す図。
【図16】他の実施形態における分光カメラの概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1.測色装置の概略構成〕
図1は、本実施形態の測色装置1(電子機器)の概略構成を示すブロック図である。
測色装置1は、図1に示すように、検査対象Aに光を射出する光源装置2と、測色センサー3(光学モジュール)と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備える。そして、この測色装置1は、光源装置2から射出される光を検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち検査対象Aの色を分析して測定する装置である。
【0034】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば検査対象Aが液晶パネル等の発光部材である場合、光源装置2が設けられない構成としてもよい。
【0035】
〔3.測色センサーの構成〕
測色センサー3は、図1に示すように、波長可変干渉フィルター5と、波長可変干渉フィルター5を透過する光を受光する検出部31と、波長可変干渉フィルター5で透過させる光の波長を可変する電圧制御部32とを備える。また、測色センサー3は、波長可変干渉フィルター5に対向する位置に、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー3は、波長可変干渉フィルター5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光を分光し、分光した光を検出部31にて受光する。
検出部31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、検出部31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0036】
(3−1.波長可変干渉フィルターの構成)
図2は、波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す平面図であり、図3は、図2のIII−III線を断面した波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す断面図である。
波長可変干渉フィルター5は、図2に示すように、平面正方形状の板状の光学部材である。この波長可変干渉フィルター5は、図3に示すように、本発明の第一基板である固定基板51、および本発明の第二基板である可動基板52を備えている。これらの固定基板51及び可動基板52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等の各種ガラスや、水晶等により形成されている。そして、これらの固定基板51及び可動基板52は、外周部近傍に形成される第一接合面513、第二接合面523が、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜等により構成された接合膜53により接合されることで、一体的に構成されている。
【0037】
固定基板51には、本発明の第一反射膜を構成する固定反射膜54が設けられ、可動基板52には、本発明の第二反射膜を構成する可動反射膜55が設けられている。ここで、固定反射膜54は、固定基板51の可動基板52に対向する面に固定され、可動反射膜55は、可動基板52の固定基板51に対向する面に固定されている。また、これらの固定反射膜54および可動反射膜55は、反射膜間ギャップを介して対向配置されている。この反射膜間ギャップは、各反射膜54,55の径寸法に対して十分小さく形成される。例えば、本実施形態では、各反射膜54,55の直径寸法が約3mmであるのに対し、反射膜間ギャップは、可動基板52が撓んでいない初期状態において、400nm程度に形成されている。
ここで、図2に示すような波長可変干渉フィルター5を固定基板51及び可動基板52の基板厚み方向から見た平面視(フィルター平面視)において、固定反射膜54及び可動反射膜55は、反射膜対向領域Ar1内に設けられており、この反射膜対向領域Ar1は、本発明のフィルター対向領域を構成する。また、詳細は後述するが、固定基板51には、空気逃げ溝である溝514が形成されており、反射膜対向領域Ar1のうち、溝514と重ならない領域が、本発明の第一領域Ar2であり、第一領域Ar2では、固定基板51及び可動基板52が第一ギャップG1を介して対向する。また、反射膜対向領域Ar1のうち、溝514と重なる領域が、本発明の第二領域Ar3であり、第二領域Ar3では、固定基板51及び可動基板52が第二ギャップG2を介して対向する。
【0038】
さらに、波長可変干渉フィルター5には、固定反射膜54および可動反射膜55の間の反射膜間ギャップの寸法を調整するのに用いられる静電アクチュエーター56(ギャップ変更部)が設けられている。この静電アクチュエーター56は、固定基板51側に設けられる本発明の第一電極としての固定電極561と、可動基板52側に設けられる本発明の第二電極としての可動電極562とを備えている。ここで、固定電極561及び可動電極562は、それぞれ固定基板51及び可動基板52の基板表面に直接設けられる構成であってもよく、他の膜部材を介して設けられる構成であってもよい。
また、フィルター平面視において、固定基板51及び可動基板52の平面中心点Oは、固定反射膜54及び可動反射膜55の中心点と一致し、かつ後述する反射膜固定面512A、可動部521の中心点と一致する。
【0039】
本実施形態では、測色センサー3に入射した検査対象の光は、図3に示すように、固定基板51側から波長可変干渉フィルター5に入射される。そして、波長可変干渉フィルター5に入射した光は、固定反射膜54及び可動反射膜55の間で多重干渉し、固定反射膜54及び可動反射膜55の間のギャップ(反射膜間ギャップ)に応じた所定波長の光が可動反射膜55、可動基板52を透過して検出部31に入射する。
【0040】
(3−1−1.固定基板の構成)
図4は、本実施形態の固定基板51を可動基板52側から見た平面図である。
固定基板51は、厚みが例えば500μmに形成されるガラス基材を加工することで形成される。具体的には、図3に示すように、固定基板51には、エッチングにより電極配置溝511(第一電極配置溝)および反射膜固定部512(第一反射膜固定部)が形成されている。この固定基板51は、可動基板52に対して厚み寸法が大きく形成されており、固定電極561および可動電極562間に電圧を印加した際の静電引力や、固定電極561の内部応力による固定基板51の撓みはない。
また、固定基板51の頂点C2(図2、図4参照)には、切欠部515が形成されており、波長可変干渉フィルター5の固定基板51側に、後述する可動電極パッド564Pが露出される。
【0041】
電極配置溝511は、フィルター平面視で、固定基板51の平面中心点Oを中心とした環状に形成されている。反射膜固定部512は、前記平面視において、電極配置溝511の中心部から可動基板52側に突出して形成される。ここで、電極配置溝511の溝底面は、固定電極561が配置される電極固定面511Aとなる。また、反射膜固定部512の突出先端面は、反射膜固定面512Aとなる。
また、固定基板51には、電極配置溝511から、固定基板51の外周縁の頂点C1,頂点C2に向かって延出する2つの電極引出溝511Bが設けられている。
【0042】
電極固定面511Aには、平面中心点Oを中心とした環状の固定電極561が形成されている。ここで、固定電極561の環状形状として、円環状に形成されることがより好ましい。また、この円環形状としては、当該円環形状の一部から固定引出電極563が突出する構成や、円環の一部が欠けている構成、円環の一部が分断されている略C字状となる構成をも含む。
また、固定基板51には、固定電極561の外周縁から延出する固定引出電極563が形成されている。この固定引出電極563は、固定電極561の外周縁から、頂点C1に延出する電極引出溝511B上に沿って、頂点C1まで形成されている。そして、固定引出電極563の先端部(固定基板51の頂点C1に位置する部分)は、固定電極パッド563Pを構成する。
これらの固定電極561及び固定引出電極563としては、導電性膜であれば、いかなる電極材料を用いてもよく、例えば、ITOや、Cr/Au積層電極等を用いることができる。
なお、この固定電極561上には、固定電極561および可動電極562の間の絶縁耐圧を確保するために、絶縁膜が積層される構成としてもよい。
【0043】
反射膜固定部512は、上述したように、電極配置溝511と同軸上で、電極配置溝511よりも小さい径寸法となる略円柱状に形成され、当該反射膜固定部512の可動基板52に対向する反射膜固定面512Aと、反射膜固定部512の円筒外周面を構成する側面部512Bと、を備えている。
この反射膜固定部512には、図2〜図4に示すように、溝514が形成されている。この溝514は、フィルター平面視において、反射膜固定面512Aの中心位置から、径外方向に向かって放射状に形成され、側面部512Bまで形成されており、電極配置溝511と連通している。また、溝514の溝底面は、電極配置溝511の電極固定面511Aと同一平面となり、溝514の溝底面及び電極固定面511Aの境界において、段差は存在しない。ここで、上述したように、溝514の溝底面及び可動基板52の可動部521は、第二ギャップG2を介して対向している。
また、溝514の溝幅としては、例えば10μmに形成されており、反射膜固定面512Aの寸法(例えば3mm)に対して十分に小さい溝幅となっている。
反射膜固定部512の反射膜固定面512Aは、可動部521に対して平行に形成されている。そして、反射膜固定面512A及び可動部521は、第二ギャップG2よりも小さい寸法である第一ギャップG1を介して対向している。
【0044】
そして、反射膜固定部512の反射膜対向領域Ar1の内側領域には、上記のように固定反射膜54が固定されている。つまり、固定反射膜54は、反射膜固定面512A及び、514の溝底面に固定されている。ここで、本実施形態では、反射膜固定面512Aのうち、固定反射膜54が設けられる領域が、本発明の第一フィルター部を構成する。
この固定反射膜54としては、例えばAg等の金属膜や、Ag合金等の合金膜を用いることができ、例えば高屈折層をTiO、低屈折層をSiOとした誘電体多層膜を用いることができる。また、誘電体多層膜及び金属膜の双方を積層した反射膜、又は誘電体多層膜及び合金膜の双方を積層した反射膜を用いてもよい。
【0045】
また、固定基板51の可動基板52とは対向しない反対側の面、すなわち光入射面51Aには、図3、図4に示すように、遮光部516が設けられている。この遮光部516は、フィルター平面視において溝514と重なる位置に設けられる第一遮光部516Aと、フィルター平面視において、固定反射膜54及び可動反射膜55の外周縁に沿う環状の第二遮光部516Bと、を備えている。この遮光部516としては、測定対象となる波長の光を透過しない膜であれば特に限定されず、例えば、可視光を利用する場合では、Cr膜を下地としたAu膜を用いてもよく、黒色塗料等を塗布することで構成されていてもよい。
第一遮光部516Aは、測色センサー3に入射した光が、第二領域Ar3に入るのを防止するために設けられている。ここで、溝514の溝側面への光の入射を考慮して、溝514の溝幅よりも僅かに大きい幅寸法を有することが好ましい。
また、第二遮光部516Bは、アパーチャーとして機能する。すなわち、第二遮光部516Bは、フィルター平面視において、内周径寸法が固定反射膜54及び静電アクチュエーター56の外周径寸法よりも僅かに小さく形成され、この内周縁により波長可変干渉フィルター5に入射する光の有効径が決定される。
【0046】
そして、本実施形態では、波長可変干渉フィルター5に光が入射する側の固定基板51に溝514及び遮光部516を設けることで、波長可変干渉フィルター5の光学特性の低下を抑制することができる。
つまり、光射出側の基板である可動基板52に遮光部516を設けると、溝514の溝側面に入射した光が角度を変えて遮光部516の無い領域を通過し、可動基板52を透過することがあり、この場合、波長可変干渉フィルター5の分解能が低下するおそれがある。遮光部516の幅寸法を大きくして、溝514の内周面を透過して可動基板52を透過する光を遮光することも考えられるが、この場合、光を透過させる第一領域Ar2の領域も小さくなるため、検出部31での受光量が小さくなってしまう。これに対して、光入射側の固定基板51に遮光部516を設ける構成では、上記のような問題が生じず、良好な光学特性の波長可変干渉フィルター5が得られる。
また、静電アクチュエーター56により可動部521を変位させた際に、歪み等の変形が生じない固定基板51に溝514が設けられている。したがって、例えば変形により溝514の幅が大きくなることがなく、溝514への光の入射を防止できる。したがって、第二領域Ar3における光の多重干渉が生じず、これにより目的波長以外の光が可動基板52側に透過される不都合も抑制でき、波長可変干渉フィルター5の分解能の低下を抑制できる。
さらに、溝514が設けられる固定基板51に遮光部516を設けることで、溝514と遮光部516との距離が近くなり、より確実に第二領域Ar3への光の侵入を防止することができる。
【0047】
また、固定基板51の光入射面51Aには、固定反射膜54に対応する位置に反射防止膜を形成してもよい。この反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成することができ、固定基板51の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
【0048】
(3−1−2.可動基板の構成)
図5は、本実施形態の可動基板52を固定基板51側から見た平面図である。
可動基板52は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。
具体的には、可動基板52は、図2に示すようなフィルター平面視において、平面中心点Oを中心とした円形の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する保持部522と、を備えている。
また、可動基板52には、図2に示すように、固定基板51の各頂点C1(図2、図5参照)に対応して、切欠部524が形成されており、波長可変干渉フィルター5を可動基板52側から見た面に固定電極パッド563Pが露出する。
【0049】
可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、可動基板52の厚み寸法と同一寸法である200μmに形成されている。また、可動部521は、フィルター平面視において、少なくとも固定電極561の外周縁の径寸法よりも大きい径寸法に形成される。そして、可動部521の固定基板51に対向する面は、反射膜固定面512Aに平行な可動面521Aとなり、可動反射膜55及び可動電極562が固定される。
【0050】
可動反射膜55は、上述した固定反射膜54と同一の構成の反射膜が用いられる。ここで、本実施形態では、可動面521Aのうち、可動反射膜55が設けられる領域が、本発明の第二フィルター部を構成する。
可動電極562は、フィルター平面視において、固定電極561と重なる領域に設けられている。
そして、可動基板52には、可動電極562の外周縁から延出する可動引出電極564が形成されている。この可動引出電極564は、可動電極562の外周縁から、頂点C2に向かって形成される。また、可動引出電極564の先端部(可動基板52の頂点C2に位置する部分)は、可動電極パッド564Pを構成する。
【0051】
また、可動部521には、固定基板51とは反対側の面において、反射防止膜が形成されていてもよい。この反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成することができる。
【0052】
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイアフラムであり、例えば厚み寸法が50μmに形成され、可動部521よりも厚み方向に対する剛性が小さく形成されている。
このため、保持部522は可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により固定基板51側に撓ませることが可能となる。この際、可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく、剛性が大きくなるため、静電引力により可動基板52を撓ませる力が作用した場合でも、可動部521の撓みはほぼなく、可動部521に形成された可動反射膜55の撓みも防止できる。
なお、本実施形態では、ダイアフラム状の保持部522を例示するが、これに限定されず、例えば、平面中心点Oを中心として、等角度間隔で配置された梁状の保持部が設けられる構成等としてもよい。
【0053】
(3−2.電圧制御手段の構成)
電圧制御部32は、固定電極パッド563P、可動電極パッド564Pに接続される。そして、電圧制御部32は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、これらの固定電極パッド563P、可動電極パッド564Pを所定の電位に設定することで、静電アクチュエーター56に電圧を印加して駆動させる。
具体的には、電圧制御部32は、固定電極パッド563P、可動電極パッド564Pに対して、反射膜間ギャップを所定の寸法に設定するための電位を設定する。これにより、固定電極561と、可動電極562との間に電圧が印加され、静電引力により可動部521が固定基板51側に移動して、反射膜間ギャップの寸法が所定値に設定される。
【0054】
〔4.制御装置の構成〕
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。
この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューター等を用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、および本発明の分析処理部を構成する測色処理部43等を備えて構成されている。
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部32は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター56への印加電圧を設定する。
測色処理部43は、検出部31により検出された受光量から、検査対象Aの色度を分析する。
【0055】
〔5.波長可変干渉フィルターの製造方法〕
次に、上記波長可変干渉フィルター5の製造方法について、図6及び図7に基づいて説明する。
波長可変干渉フィルター5を製造するためには、固定基板51及び可動基板52をそれぞれ製造し、製造された固定基板51と可動基板52とを貼り合わせる。
【0056】
(5−1.固定基板製造工程)
まず、固定基板51の製造素材である厚み寸法が500μmの石英ガラス基板を用意し、この石英ガラス基板の表面粗さRaが1nm以下となるまで両面を精密研磨する。
そして、図6(A)に示すように、固定基板51の光入射面51Aに、Cr/Au積層膜からなる遮光部516を成膜する。この時、第一領域Ar2への光を遮光する第一遮光部516Aに加え、反射膜対向領域Ar1の有効径を設定するアパーチャーとしての第二遮光部516Bも同時に成膜する。
【0057】
この後、固定基板51の可動基板52に対向する面にレジストを塗布して、塗布されたレジストをフォトリソグラフィ法により露光・現像し、電極配置溝511及び溝514を形成する箇所をパターニングする。この時、フィルター平面視において、溝514の形成位置と遮光部516とが重なるように、パターニングを実施することで、遮光部516及び溝514のアライメント調整を精度よく実施することが可能となる。また、溝514を形成するためのパターンは、エッチング時におけるサイドエッチングの影響を考慮し、フィルター平面視において、溝514形成用のパターンの外周縁が、遮光部516の外周縁の内側に位置するように形成することが好ましい。
次に、図6(B)に示すように、電極配置溝511及び溝514を所望の深さにエッチングする。本実施形態では、溝514の溝底面と、電極配置溝511の電極固定面511Aとが同一平面となるため、1度のエッチングにより、これらの電極配置溝511および溝514を同時に形成することが可能となる。
なお、ここでのエッチングとしては、フッ酸系を用いたウェットエッチングを行う。
【0058】
この後、電極配置溝511及び溝514形成用のレジストを除去した後、反射膜固定部512を形成するためのレジストを塗布し、反射膜固定面512Aが形成される箇所をパターニングする。
そして、図6(C)に示すように、反射膜固定面512Aが所望高さとなるようにエッチングし、レジストを除去する。これにより、電極配置溝511、反射膜固定部512、溝514が形成された固定基板51の基板形状が決定される。
【0059】
次に、固定基板51に固定電極561を形成する電極材料を成膜し、フォトリソグラフィ法等を用いてパターニングすることで、図6(D)に示すように、固定電極561(及び固定引出電極563)を形成する。
また、固定電極561上に絶縁層を成膜する場合、固定電極561の形成後、例えばプラズマCVD等により固定基板51の可動基板52に対向する面全体に、例えば100nm程度の厚みのSiOを成膜する。そして、固定電極パッド563P上のSiO2を、例えばドライエッチング等により除去する。
【0060】
次に、図6(E)に示すように、反射膜対向領域Ar1内に反射膜固定面512Aに固定反射膜54を形成する。ここで、本実施形態では、固定反射膜54として、Ag合金を用いる。固定反射膜54として、Ag合金等の金属膜やAg合金等の合金膜を用いる場合、固定基板51の電極配置溝511や反射膜固定部512が形成された面に、固定反射膜54の膜層を形成した後、フォトリソグラフィ法等を用いてパターニングする。この時、第二遮光部516Bをアパーチャーとして機能させるために、フィルター平面視において、反射膜形成部分が第二遮光部516Bの内周縁よりも大きくなるようにパターニングをする。
なお、固定反射膜54として誘電体多層膜を形成する場合では、例えばリフトオフプロセスによりパターニングをすることができる。この場合、フォトリソグラフィ法等により、固定基板51上の反射膜形成部分以外にレジスト(リフトオフパターン)を形成する。この時、第二遮光部516Bをアパーチャーとして機能させるために、フィルター平面視において、反射膜形成部分が第二遮光部516Bの内周縁よりも大きくなるようにリフトオフパターンを形成する。この後、固定反射膜54を形成するための材料(例えば、高屈折層をTiO、低屈折層をSiOとした誘電体多層膜)をスパッタリング法または蒸着法等により成膜する。そして、固定反射膜54を成膜した後、リフトオフにより、不要部分の膜を除去する。
以上により、固定基板51が製造される。
【0061】
(5−2.可動基板製造工程)
まず、図7(A)に示すように、可動基板52の形成素材である厚み寸法が200μmの石英ガラス基板を用意し、このガラス基板の表面粗さRaが1nm以下となるまで両面を精密研磨する。そして、可動基板52の全面にレジストを塗布し、塗布されたレジストをフォトリソグラフィ法により露光・現像して、保持部522が形成される箇所をパターニングする。
次に、石英ガラス基板をウェットエッチングすることで、図7(B)に示すように、例えば厚さ50μmの保持部522と、可動部521とを形成する。これにより、可動部521及び保持部522を有する可動基板52の基板形状が決定される。
【0062】
次に、図7(C)に示すように、可動面521Aの外周縁に沿って可動電極562(及び可動引出電極564)を形成する。
具体的に、上記固定基板51における固定電極561と同様に、可動基板52上に電極材料を成膜し、フォトリソグラフィ法等を用いてパターニングすることで、可動電極562及び可動引出電極564を形成する。
この後、図7(D)に示すように、可動面521Aに可動反射膜55を形成する。この可動反射膜55の形成は、固定反射膜54と同様の方法により形成することができる。つまり、可動反射膜55として、Ag等の金属膜やAg合金等の合金膜を用いる場合、可動基板52に、可動反射膜55の膜層を形成した後、フォトリソグラフィ法等を用いてパターニングする。また、可動反射膜55として誘電体多層膜を形成する場合、例えばリフトオフプロセスによりパターニングをすることができる。
以上により、可動基板52が製造される。
【0063】
(5−3.接合工程)
次に、前述の固定基板製造工程及び可動基板製造工程で形成された各基板を接合する。
具体的には、固定基板51の第一接合面513に、ポリオルガノシロキサンを主成分としたプラズマ重合膜を、例えばプラズマCVD法等により成膜する。同様に、可動基板52の第二接合面523に、ポリオルガノシロキサンを主成分としたプラズマ重合膜を、例えばプラズマCVD法等により成膜する。ここで、プラズマ重合膜の厚みとしては、例えば10nmから1000nmとすればよい。
【0064】
そして、固定基板51の第一接合面513及び可動基板52の第二接合面523に形成されたプラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与するために、Oプラズマ処理またはUV処理を行う。Oプラズマ処理の場合は、O流量30cc/分、圧力27Pa、RFパワー200Wの条件で30秒間実施する。また、UV処理の場合は、UV光源としてエキシマUV(波長172nm)を用いて3分間処理する。
プラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与した後、2つの基板51,52のアライメントを行い、プラズマ重合膜を介して第一接合面513及び第二接合面523を重ね合わせる。そして、接合部分に例えば10kgfの荷重を10分間かける。これにより、基板51,52同士が接合される。
【0065】
また、本実施形態の波長可変干渉フィルター5の製造方法では、1つのウエハー内に複数の波長可変干渉フィルター5を配置して、上記のような製造方法を用いることで、これらの複数の波長可変干渉フィルター5を同時に製造する。そして、上記の接合工程の後、ウエハーから各波長可変干渉フィルター5をチップ状態に分割する。この後、固定基板51の可動電極パッド564Pに対向する部分、及び可動基板52の固定電極パッド563Pに対向する部分を、例えば折る等して、切欠部515,524を形成し、実装端子部を露出させる。これにより、チップ単位の波長可変干渉フィルター5が製造される。
【0066】
〔6.実施形態の作用効果〕
上述したように、本実施形態に係る波長可変干渉フィルター5では、固定基板51の反射膜固定部512に溝514が設けられる。すなわち、反射膜対向領域Ar1には、第一領域Ar2と第二領域Ar3とが設けられ、第一領域Ar2は、検査対象光から目的波長の光を取り出すために、固定反射膜54が設けられた反射膜固定面512A、及び可動反射膜55が設けられた可動面521Aが、第一ギャップG1を介して対向している。また、第二領域Ar3は、第一領域Ar2よりも大きい第二ギャップG2で、溝514の溝底面と、可動面521Aとが対向している。
一般に、波長可変干渉フィルターでは、例えば可視光を分光させるためには、反射膜54,55の間のギャップ寸法が400nm程度に形成されているのに対し、透過した光の光量を得るために、各反射膜54,55の径寸法が3mm程度に形成される。このような構成では、反射膜間ギャップを小さくすると、反射膜間の隙間が小さいために、空気が逃げにくく、これが空気抵抗となって可動部521の応答性を阻害する。
これに対して、上述のような本実施形態では、静電アクチュエーター56により可動部521を固定基板51側に変位させた際に、反射膜対向領域Ar1内の空気を、第二領域Ar3の溝514を通って、電極配置溝511側に逃がすことができる。このため、可動部521を変位させる際の空気抵抗が低減され、応答性を向上させることができる。したがって、波長可変干渉フィルター5において、迅速に反射膜間ギャップを所望の値に設定することができる。これにより、測色センサー3による目的波長の光の光量検出、及び測色装置1による測色処理の処理速度をも向上させることができる。
また、空気抵抗を低減させるために、固定基板51及び可動基板52の間を高い真空度の状態に保持する等の複雑な構成が不要であり、簡単な構成により小型化が可能な波長可変干渉フィルター5を提供できる。
【0067】
溝514は、反射膜対向領域Ar1の領域内部から領域外部に亘って形成されているので、静電アクチュエーター56により可動部521を変位させた際に、反射膜対向領域Ar1の領域内部の空気を領域外部に逃がすことができる。
また、この溝514は、フィルター平面視において反射膜固定面512Aの平面中心点Oから、径外方向に延出している。
可動部521を固定基板51側に変位させる場合、反射膜対向領域Ar1の外周部の空気は、容易に電極配置溝511側に逃げることができるが、反射膜対向領域Ar1における中心部(平面中心点O)近傍の空気は、外部に逃げにくく、これが可動部521を変位させる際の抵抗となる。
これに対して、本実施形態では、溝514が反射膜固定面512Aの平面中心点Oから径外方向に延出しているため、反射膜対向領域Ar1における中心部の空気を径外側に逃がすことができ、径外側に逃げた空気は容易に電極配置溝511側に逃げることができる。これにより、より確実に空気抵抗を低減させることができ、応答性をより向上させることができる。
【0068】
更に、溝514は、反射膜固定面512Aの中心点から側面部512Bに亘って形成されている。つまり、溝514の端部が側面部512Bから電極配置溝511に露出し、溝514及び電極配置溝511が連通している。
溝514の端部が側面部512Bから電極配置溝511に露出しない構成としてもよいが、この場合、可動部521を固定基板51側に変位させると、溝514を通った空気が再び反射膜固定面512A及び可動面521Aの間に流れ込み、抵抗となる場合がある。これに対して、上記のように、溝514が電極配置溝511に連通する構成では、静電アクチュエーター56により可動部521を固定基板51側に変位させた際に、反射膜対向領域Ar1の空気を横方向、つまり電極配置溝511側に逃がすことができる。これにより、より確実に空気抵抗を低減させることができ、可動部521を変位させる際の応答性をより向上させることができる。
【0069】
そして、遮光部516は、光入射側の基板である固定基板51に設けられている。このため、溝514の溝側面部に入射した光が角度を変えて検出部31に向かって透過されるということがない。したがって、波長可変干渉フィルター5における分解能の低下を防止できる。
さらに、溝514は、静電アクチュエーター56に基板形状に変動がない固定基板51に設けられている。このため、静電アクチュエーター56により可動部521を変位させた場合でも、溝514の幅寸法等が変動しないため、溝514への光の入射が抑制でき、波長可変干渉フィルター5の分解能低下を抑制できる。
【0070】
そして、固定基板51は、電極配置溝511と、電極配置溝511の溝底面から突出する反射膜固定部512とを有し、反射膜固定部512の反射膜固定面512Aに固定反射膜54が設けられ、電極配置溝511の電極固定面511Aに固定電極561が設けられている。また、溝514は溝底面が電極固定面511Aと同じ高さ位置となるように形成されている。
このような構成では、電極配置溝511形成時に、同時に溝514を形成することができる。このため、溝514の製造構成を別途設ける必要がなく、容易に応答性が良好な波長可変干渉フィルター5を製造することができる。
また、本実施形態では、反射膜固定面512Aが電極固定面511Aよりも可動面521Aに近い位置に設けられている。すなわち、固定反射膜54及び可動反射膜55間の反射膜間ギャップは、固定電極561及び可動電極562間の電極間ギャップよりも小さく形成されている。このような構成では、反射膜間ギャップの変動可能領域を大きくでき、測色装置1の測定可能波長域を広域化することができる。これに加え、固定電極561,可動電極562間での静電引力の制御が容易となり、反射膜間ギャップの寸法をより精度よく、所望の値に設定することができる。
【0071】
そして、本実施形態では、遮光部516は、溝514が形成された固定基板51に設けられている。
このような構成では、遮光部516と溝514との距離が近いため、溝514に入射する光を確実に遮光部516により遮光することができる。
また、溝514を形成する際に、固定基板51に成膜された遮光部516を基準として、正確な位置に形成することができ、溝514及び遮光部516のアライメント調整の精度が向上する。これにより、第一領域Ar2の領域を大きくすることができる。
つまり、溝514及び516アライメント精度が悪い場合では、第二領域Ar3への光の侵入を防止するために、遮光部516を余分に形成する必要があり、この場合、第一領域Ar2の面積が小さくなる。これに対して、本実施形態では、上記のように溝514及び遮光部516のアライメント精度が良好であるため、遮光部516を必要な領域だけ形成すればよく、第一領域Ar2を大きくすることができる。
【0072】
また、遮光部516は、第二領域Ar3への光の侵入を防止する第一遮光部516Aと、アパーチャーとして機能する第二遮光部516Bとを備えている。
これにより、波長可変干渉フィルター5に入射する光、または波長可変干渉フィルター5により取り出された光の有効径を規定するアパーチャーを別途設ける必要がなく、構成を簡単にできる。
【0073】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第一実施形態では、固定基板51の溝514が形成される面とは反対側に、光入射面51Aに遮光部516が設けられる構成を例示した。これに対して、第二実施形態では、遮光部が溝の内周面上に設けられる点で、上記第一実施形態と相違する。
図8は、本発明の第二実施形態の波長可変干渉フィルターにおける反射膜固定部近傍の概略構成を示す断面図である。なお、以降の説明に当たり、第一実施形態と同様の構成については、同符号を付し、その説明を省略又は簡略する。
【0074】
第二実施形態の波長可変干渉フィルター5Aは、上記第一実施形態と同様に、固定基板51及び可動基板52を備えている。固定基板51及び可動基板52の互いに対向する面に、固定反射膜54及び可動反射膜55が設けられている。また、可動基板52は、可動部521及び保持部522を備え、静電アクチュエーター56により可動部521が固定基板51側に変位可能となっている。
そして、波長可変干渉フィルター5Aの固定基板51には、第一実施形態と同様、可動基板52に対向する面にエッチングにより形成される電極配置溝511及び反射膜固定部512が設けられている。また、反射膜固定部512には、フィルター平面視において、反射膜固定面512Aの平面中心点Oから径外方向に延出し、側面部512Bから電極配置溝511に連通する溝514が形成されている。
【0075】
また、本実施形態の波長可変干渉フィルター5Aでは、図8に示すように、この溝514の溝表面に亘って、遮光部517が成膜されている。この遮光部517は、第一実施形態と同様に、溝514を覆う第一遮光部517Aと、アパーチャーとして機能する第二遮光部517Bとを備えている。また、遮光部517としては、上記第一実施形態と同様に、Cr/Au積層膜を用いることができ、この場合、固定電極561の成膜と同時に、遮光部517を形成することができる。また、遮光部517としては、測定対象となる光が透過しないものであればいかなる素材が用いられていてもよく、例えば可視光を対象とする場合、黒色塗料等を用いてもよい。
【0076】
本実施形態の波長可変干渉フィルター5Aでは、溝514の溝内周面に沿って遮光部517が形成されている。このため、波長可変干渉フィルター5Aに入射した光が溝514を通ることがなく、第二領域Ar3への光の侵入を確実に防止することができる。
このため、より確実に第二領域Ar3を透過した光が検出部31に到達する不都合を回避でき、波長可変干渉フィルター5Aにおける分解能低下をより確実に防止できる。
【0077】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第一実施形態では、波長可変干渉フィルター5の固定基板51に遮光部516が設けられる構成を例示したが、第三実施形態では、測色センサーにおける検出部に遮光部が設けられる点で、上記第一実施形態と相違する。
【0078】
図9は、第三実施形態の検出部の概略構成を示す平面図である。
第三実施形態の測色装置は、第一実施形態と同様の構成を有する。すなわち、本実施形態の測色装置1は、図1に示すように、検査対象Aに光を射出する光源装置2と、測色センサー3(光学モジュール)と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備える。
ここで、本実施形態の測色センサー3の検出部31は、図9に示すように、反射膜対向領域Ar1を透過した光を受光する受光面400を備えている。また、この受光面400には、第一領域Ar2を透過した光(目的波長の光)を受光する有効受光領域410と、第二領域Ar3を透過した光を遮光する遮光部420と、が設けられている。
【0079】
このような検出部31を有する測色センサー3では、波長可変干渉フィルター5の第二領域Ar3を透過した光が検出部31により受光されることを防止し、第一領域Ar2を透過した目的波長の光の光量を精度よく検出することができる。
なお、本実施形態では、第二領域Ar3を透過する光が検出部31にて検出される不都合をより確実に防止するために、波長可変干渉フィルター5の固定基板51にも遮光部516が形成されているが、これに限定されない。例えば、測色センサー3に入射する光が精度の高い平行光である場合、波長可変干渉フィルター5に遮光部516を形成しない構成としてもよい。この場合、検査対象光の光路上のいずれかに、アパーチャーを設けることが好ましい。
【0080】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第一実施形態の測色装置1では、光学モジュールである測色センサー3に対して、波長可変干渉フィルター5が直接設けられる構成とした。この場合、測色センサー3に設けられた所定の配置位置に波長可変干渉フィルター5を設け、固定電極パッド563Pや可動電極パッド564Pに対して配線を実施する。しかしながら、光学モジュールとしては、複雑な構成を有するものもあり、特に小型化の光学モジュールに対して、波長可変干渉フィルター5を直接設けることが困難な場合がある。本実施形態では、そのような光学モジュールに対しても、波長可変干渉フィルター5を容易に設置可能にする光学フィルターデバイスについて、以下に説明する。
図10は、本発明の第四実施形態に係る光学フィルターデバイスの概略構成を示す断面図である。
【0081】
図10に示すように、光学フィルターデバイス600は、波長可変干渉フィルター5を収納する筐体610を備えている。
この筐体610は、底部611と、リッド612と、入射側ガラス窓613(導光部)と、射出側ガラス窓614(導光部)と、を有する。
【0082】
底部611は、例えば単層セラミック基板により構成される。この底部611には、波長可変干渉フィルター5の固定基板51が固定される。また、底部611には、波長可変干渉フィルター5の反射膜対向領域Ar1に対向する領域に、光入射孔611Aが開口形成されている。この光入射孔611Aは、波長可変干渉フィルター5により分光したい入射光(検査対象光)が入射される窓であり、入射側ガラス窓613が接合されている。なお、底部611及び入射側ガラス窓613の接合としては、例えば、ガラス原料を高温で熔解し、急冷したガラスのかけらであるガラスフリットを用いたガラスフリット接合を用いることができる。
また、入射側ガラス窓613には、波長可変干渉フィルター5の反射膜対向領域Ar1と対向する領域(反射膜対向領域Ar1に入射する光が透過する領域)に、遮光部618が設けられている。この遮光部618は、第二領域Ar3への光の入射を防止するための第一遮光部618Aと、波長可変干渉フィルター5を通過させる光の孔径を絞るアパーチャーとしての第二遮光部618Bとを備えている。このため、本実施形態では、波長可変干渉フィルター5の固定基板51の光入射面51Aには、遮光部616が設けられない。
【0083】
また、底部611の上面(筐体610の内部側)には、波長可変干渉フィルター5の固定電極パッド563Pに接続される端子部616Aと、波長可変干渉フィルター5の可動電極パッド564Pに接続される端子部616Bとが設けられている。また、底部611は、端子部616Aが設けられる位置に、貫通孔615Aが形成されており、端子部616Aは、貫通孔615Aを介して、底部611の下面(筐体610の外部側)に設けられた接続端子617Aに接続されている。同様に、底部611の端子部616Bが設けられる位置には、端子部616Bが形成されており、端子部616Bは、貫通孔615Bを介して、底部611の下面(筐体610の外部側)に設けられた接続端子617Bに接続されている。
また、底部611の外周縁には、リッド612に接合される封止部619が設けられている。
【0084】
リッド612は、図10に示すように、底部611の封止部619に接合される封止部620と、封止部620から連続し、底部611から離れる方向に立ち上がる側壁部621と、側壁部621から連続し、波長可変干渉フィルター5の可動基板52側を覆う天面部622とを備えている。このリッド612は、例えばコバール等の合金または金属により形成することができる。
このリッド612は、封止部620と、底部611の封止部619とが、例えばレーザー封止等により接合されることで、底部611に接合されている。また、リッド612の天面部622には、波長可変干渉フィルター5の反射膜対向領域Ar1に対向する領域に、光射出孔612Aが開口形成されている。この光射出孔612Aは、波長可変干渉フィルター5により分光されて取り出された光が通過する窓であり、例えばガラスフリット接合等により射出側ガラス窓614が接合されている。なお、筐体610内の気体は、例えば窒素とする。ここで、筐体610の内部を高い真空度で維持することは要求されない。
【0085】
このような光学フィルターデバイス600では、筐体610により波長可変干渉フィルター5が保護されているため、異物や大気に含まれるガス等による波長可変干渉フィルター5の特性変化を防止でき、また、外的要因による波長可変干渉フィルター5の破損を防止できる。したがって、測色センサー等の光学モジュールや電子機器に対して、波長可変干渉フィルター5を設置する際や、メンテナンス時において、他の部材との衝突等による破損を防止できる。
また、例えば工場で製造された波長可変干渉フィルター5を、光学モジュールや電子機器を組み立てる組み立てライン等まで運搬する場合に、光学フィルターデバイス600により保護された波長可変干渉フィルター5では、安全に運搬することが可能となる。
また、光学フィルターデバイス600は、筐体610の外周面に露出する接続端子617A,617Bが設けられているため、光学モジュールや電子機器に対して組み込む際にも容易に配線を実施することが可能となる。
【0086】
また、本実施形態では、入射側ガラス窓613に、第一遮光部618A及び第二遮光部618Bを有する遮光部618が設けられている。このような構成では、例えば、遮光部618に膜応力の高い材料を厚く形成しても、波長可変干渉フィルター5に直接応力が掛かることがなく、分光精度に影響を与えることがない。
【0087】
なお、本実施形態では、入射側ガラス窓613に遮光部618が設けられる構成を例示したが、例えば、射出側ガラス窓614に遮光部618が設けられる構成としてもよい。
さらに、入射側ガラス窓613及び射出側ガラス窓614の双方に遮光部が設けられる構成としてもよく、この場合、アパーチャーとして機能する第二遮光部は、入射側ガラス窓613及び射出側ガラス窓614のうちいずれか一方のみに設けられることが好ましい。
さらには、波長可変干渉フィルター5の固定基板51にも遮光部516が設けられる構成としてもよい。この場合、入射側ガラス窓613(射出側ガラス窓614)に遮光部を設ける必要がないが、より確実に第二領域Ar3への光の侵入、第二領域Ar3を透過した光の遮光を行うために、入射側ガラス窓613や射出側ガラス窓614に、第二領域Ar3の光路上を遮光する遮光部(第一遮光部のみ)を設ける構成としてもよい。
【0088】
[他の実施形態]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0089】
例えば、上記第一及び第二実施形態では、光入射側の基板である固定基板51に溝514が形成される構成を例示したが、図11に示す波長可変干渉フィルター5Bのような構成としてもよい。この波長可変干渉フィルター5Bでは、溝527は、光射出側の基板であり、静電アクチュエーター56により形状が変形される可動基板52に設けられる。
この場合、可動部521の可動面521Aに、フィルター平面視において、可動面521Aの平面中心点Oから径外方向に延出する溝527を形成する。この時、溝527は、可動面521Aのうち反射膜固定部512に対向する反射膜対向領域Ar1の内部から外部に亘って形成される。これにより、可動部521が固定基板51側に変動した際に、反射膜対向領域Ar1内の空気が溝527を通って電極配置溝511側に排出され、空気抵抗を低減させることが可能となる。
また、可動基板52に遮光部528(第一遮光部528A及び第二遮光部528B)が設けられることで、溝527が設けられた第二領域Ar3内で多重干渉された光が透過することを回避できる。
【0090】
さらに、上記第一及び第二実施形態では、溝514の溝底面にも固定反射膜54が成膜される例を示したが、図12に示すように、溝514の溝底面には、固定反射膜54が形成されない構成としてもよい。このような構成の波長可変干渉フィルター5Cでは、可動反射膜55で反射された光が溝514に入射した場合であっても、溝514の底部に固定反射膜54がないため、そのまま固定基板51を透過する。ここで、遮光部516が例えば黒色塗料等の光を吸収する特性を有する場合、再び反射膜対向領域Ar1に入射されることがなく、遮光部516により吸収される。このような構成とすることで、より確実に可動基板52側に目的波長以外の光が透過される不都合を回避でき、波長可変干渉フィルター5Cの分解能の低下を抑制できる。
【0091】
また、反射膜固定部512に溝514を設けることで、反射膜固定面512A及び可動面521Aが第一ギャップG1を介して対向する第一領域Ar2と、反射膜固定面512A及び可動面521Aが第二ギャップG2を介して対向する第二領域Ar3とを形成する例を示したが、これに限定されない。
例えば、固定基板51は、可動基板52に対向する面全体が平坦面であり、反射膜対向領域Ar1内の第一領域Ar2のみに、例えばSiO層等の別層を積層する構成としてもよい。この場合、第二領域Ar3では、別層が積層されていない分、固定基板51及び可動基板52の間のギャップが大きくなり、第一及び第二実施形態の溝514と同様に、可動部521が変位した際に空気を外部に逃がすことができる。
また、反射膜固定部512に溝514が形成されず、反射膜固定面512Aのうち、第一領域Ar2のみに、例えばSiO層等の別層を積層する構成としてもよい。さらには、反射膜固定部512に溝514が形成されず、反射膜固定面512Aのうち、第一領域Ar2のみに、例えば誘電体多層膜等の比較的厚み寸法が大きい固定反射膜54を形成し、第二領域Ar3には、固定反射膜54を形成しない構成としてもよい。
【0092】
第一実施形態では、溝514の溝底面が電極固定面511Aと同一高さとなるように、当該溝514が形成された例を示したが、例えば溝514の溝底面と、電極固定面511Aとが異なる高さ位置となる構成としてもよい。
また、溝514は、反射膜固定面512Aの平面中心点Oから、反射膜固定部512の側面部512Bまで延出し、端部が側面部512Bから電極配置溝511に露出する構成としたが、これに限定されない。例えば、溝514が、フィルター平面視において、反射膜固定面512Aの平面中心点Oから、側面部512Bよりも内部側で、かつ反射膜対向領域Ar1(フィルター対向領域)よりも外側となる位置まで延出する構成としてもよい。この場合、溝514の端部に、径外方向に向かうに従って溝底面から反射膜固定面512A側に傾斜するテーパ面を形成してもよく、テーパ面に沿って空気を流すことで、空気の滞留による抵抗増大を防止することができる。
【0093】
そして、第一実施形態では、図2、図4に示すように、フィルター平面視で十字形状の溝514が設けられる例を示したが、これに限定されない。例えば、反射膜固定面512Aの平面中心点Oを通る1本の溝のみが設けられる構成としてもよく、反射膜固定面512Aの平面中心点Oから側面部512Bまで伸びる5本以上の溝が設けられていてもよい。
さらには、これらの平面中心点Oから側面部512Bまでの間で、複数分岐する溝が設けられていてもよい。
さらには、例えば径外方向に向かうに従って溝幅や溝深さが大きくなる溝等が形成されていてもよい。
【0094】
また、上記実施形態において、可動部521を固定基板51側に変位させるギャップ変更部として、静電アクチュエーター56を例示したが、これに限定されない。
例えば、固定電極561の代わりに、第一誘電コイルを配置し、可動電極562の代わりに第二誘電コイルまたは永久磁石を配置した誘電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。
さらに、静電アクチュエーター56の代わりに圧電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。この場合、例えば保持部522に下部電極層、圧電膜、および上部電極層を積層配置させ、下部電極層および上部電極層の間に印加する電圧を入力値として可変させることで、圧電膜を伸縮させて保持部522を撓ませる。
【0095】
本発明の電子機器として、測色装置1を例示したが、その他、様々な分野により本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、本発明の波長可変干渉フィルターを用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器等のガス検出装置を例示できる。
このようなガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0096】
図13は、波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置の一例を示す概略図である。
図14は、図13のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図13に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、波長可変干渉フィルター5、および受光素子137(検出部)等を含む検出装置(光学モジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。なお、波長可変干渉フィルター5を用いる構成を例示するが、上述した波長可変干渉フィルター5A,5B,5Cを用いる構成としてもよい。さらに、このような波長可変干渉フィルター5,5A,5B,5Cが収納された、第四実施形態のような光学フィルターデバイス600を用いる構成としてもよい。
また、図14に示すように、ガス検出装置100の表面には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、図14に示すように、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、波長可変干渉フィルター5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150等を備えている。
【0097】
次に、上記のようなガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0098】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光を射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0099】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光が波長可変干渉フィルター5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、波長可変干渉フィルター5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0100】
なお、上記図13及び図14において、ラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光学モジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の電子機器とする。このような構成でも、本発明の波長可変干渉フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0101】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
以下に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0102】
図15は、波長可変干渉フィルター5を利用した電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。なお、ここでは波長可変干渉フィルター5を用いているが、波長可変干渉フィルター5A,5B,5Cを用いる構成としてもよい。また、このような波長可変干渉フィルター5,5A,5B,5Cが収納された、第四実施形態のような光学フィルターデバイス600を用いる構成としてもよい。
この食物分析装置200は、図15に示すように、検出器210(光学モジュール)と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光する波長可変干渉フィルター5と、分光された光を検出する撮像部213(検出部)と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、波長可変干渉フィルター5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0103】
この食物分析装置200は、システムを駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通って波長可変干渉フィルター5に入射する。波長可変干渉フィルター5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御して波長可変干渉フィルター5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0104】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、上述のようにした得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0105】
また、図15において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0106】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光学モジュールに設けられた波長可変干渉フィルターにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光学モジュールを備えた電子機器により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0107】
また、電子機器としては、本発明の波長可変干渉フィルターにより光を分光することで、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機等にも適用できる。このような分光カメラの一例として、波長可変干渉フィルターを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図16は、分光カメラの概略構成を示す模式図である。分光カメラ300は、図16に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330(検出部)とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、図16に示すように、対物レンズ321、結像レンズ322、及びこれらのレンズ間に設けられた波長可変干渉フィルター5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、波長可変干渉フィルター5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0108】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルターをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを波長可変干渉フィルターで分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明の波長可変干渉フィルターを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩等の認証装置にも適用できる。
【0109】
さらには、光学モジュールおよび電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、波長可変干渉フィルターにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0110】
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、および電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明の波長可変干渉フィルターは、上述のように、1デバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光学モジュールや電子機器の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用の光学デバイスとして好適に用いることができる。
【0111】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等に適宜変更できる。
【符号の説明】
【0112】
1…測色装置(電子機器)、3…測色センサー(光学モジュール)、5,5A,5B,5C…波長可変干渉フィルター、31…検出部、51…固定基板(第一基板)、52…可動基板(第二基板)、54…固定反射膜(第一反射膜)、55…可動反射膜(第二反射膜)、56…静電アクチュエーター(ギャップ変更部)、100…ガス検出装置(電子機器)、200…食物分析装置(電子機器)、300…分光カメラ(電子機器)、511…電極配置溝(第一電極配置溝)、512…反射膜固定部(第一反射膜固定部)、512A…反射膜固定面、512B…側面部、514,527…溝、516,517,528,420,618…遮光部、516A,517A,618A…第一遮光部、516B,517B,618B…第二遮光部、521…可動部、522…保持部、600…光学フィルターデバイス、610…筐体、613…入射側ガラス窓(導光部)、614…射出側ガラス窓(導光部)、Ar1…反射膜対向領域(フィルター対向領域)、Ar2…第一領域、Ar3…第二領域、G1…第一ギャップ、G2…第二ギャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一フィルター部を有する第一基板と、
前記第一フィルター部と対向する第二フィルター部を有する第二基板と、
前記第一フィルター部に設けられた第一反射膜と、
前記第二フィルター部に設けられ、前記第一反射膜に対向する第二反射膜と、
前記第一反射膜及び前記第二反射膜の間の寸法を変化させるギャップ変更部と、を備え、
前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が対向するフィルター対向領域には、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が第一ギャップで対向する第一領域と、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が前記第一ギャップよりも大きい寸法の第二ギャップで対向する第二領域と、が設けられ、
前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、それぞれ、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部の前記フィルター対向領域のうち、少なくとも第一領域に設けられ、
前記第二領域を通る光路上に、光を遮光する遮光部が設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第一基板及び前記第二基板のうち、少なくともいずれか一方に溝が形成され、当該溝の溝底面から他方の基板までの距離が前記第二ギャップとなり、
前記溝は、前記第一基板及び前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記フィルター対向領域の領域内部から、当該フィルター対向領域の領域外部まで延出した
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記溝は、前記第一基板及び前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記フィルター対向領域の領域中心部から径外方向に延出して設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記遮光部は、前記第一基板及び前記第二基板のうち、光が入射する側の基板に設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第二基板は、前記第二反射膜が設けられた可動部と、前記可動部を前記第一基板に対して進退可能に保持する保持部と、を備え、
前記ギャップ変更部は、前記可動部を前記第一基板に対して進退させることで、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の間のギャップを変動させ、
前記溝は、前記第一基板に設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項6】
請求項5に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記ギャップ変更部は、前記第一基板に設けられた第一電極と、前記第二基板に設けられ、前記第一電極と電極間ギャップを介して対向した第二電極と、を有する静電アクチュエーターであり、
前記第一基板は、
前記第二基板に対向する面に前記第一電極が設けられる第一電極配置溝と、
前記第一電極配置溝の溝底面から前記第二基板側に突出し、前記第一電極配置溝の溝底面から立ち上がる側面部、及び、前記第二基板に対向し、前記第一反射膜が設けられる反射膜固定面を有する第一反射膜固定部と、を備え、
前記溝は、前記第一反射膜固定部の前記反射膜固定面の中心部から、前記側面部に亘って設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項7】
請求項6に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記溝の溝底面は、前記第一電極配置溝の溝底面と同一平面である
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項8】
請求項2から請求項7のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記遮光部は、前記第一基板及び前記第二基板のうち、前記溝が設けられた基板に設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項9】
請求項8に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記遮光部は、前記溝の溝内周面に設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項10】
請求項8に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記遮光部は、前記溝が設けられた基板において、当該溝が設けられた面とは反対側の面に設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記遮光部は、
前記第二領域の光路上に設けられた第一遮光部と、
前記第一基板及び前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記第一反射膜及び前記第二反射膜が対向する反射膜対向領域のうち、光を多重干渉させる規定領域外を遮光する環状の第二遮光部と、を備えた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項12】
第一フィルター部を有する第一基板、
前記第一フィルター部と対向する第二フィルター部を有する第二基板、
前記第一フィルター部に設けられた第一反射膜、
前記第二フィルター部に設けられ、前記第一反射膜に対向する第二反射膜、
及び、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の間の寸法を変化させるギャップ変更部、を備えた波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターを収納し、少なくとも一部に前記波長可変干渉フィルターに光を導く導光部が設けられた筐体と、を備え、
前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が対向するフィルター対向領域には、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が第一ギャップで対向する第一領域と、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が前記第一ギャップよりも大きい寸法の第二ギャップで対向する第二領域と、が設けられ、
前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、それぞれ、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部の前記フィルター対向領域のうち、少なくとも第一領域に設けられ、
前記第二領域を通る光路上に、光を遮光する遮光部が設けられた
ことを特徴とする光学フィルターデバイス。
【請求項13】
請求項12に記載の光学フィルターデバイスにおいて、
前記遮光部は、前記導光部に設けられた
ことを特徴とする光学フィルターデバイス。
【請求項14】
第一フィルター部を有する第一基板と、
前記第一フィルター部と対向する第二フィルター部を有する第二基板と、
前記第一フィルター部に設けられた第一反射膜と、
前記第二フィルター部に設けられ、前記第一反射膜に対向する第二反射膜と、
前記第一反射膜及び前記第二反射膜の間の寸法を変化させるギャップ変更部と、
前記第一反射膜及び前記第二反射膜により取り出された光を検出する検出部と、を備え、
前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が対向するフィルター対向領域には、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が第一ギャップで対向する第一領域と、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が前記第一ギャップよりも大きい寸法の第二ギャップで対向する第二領域と、が設けられ、
前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、それぞれ、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部の前記フィルター対向領域のうち、少なくとも第一領域に設けられ、
前記第二領域を通る光路上に、光を遮光する遮光部が設けられた
ことを特徴とする光学モジュール。
【請求項15】
請求項14に記載の光学モジュールにおいて、
前記遮光部は、前記検出部に設けられた
ことを特徴とする光学モジュール。
【請求項16】
第一フィルター部を有する第一基板と、
前記第一フィルター部と対向する第二フィルター部を有する第二基板と、
前記第一フィルター部に設けられた第一反射膜と、
前記第二フィルター部に設けられ、前記第一反射膜に対向する第二反射膜と、
前記第一反射膜及び前記第二反射膜の間の寸法を変化させるギャップ変更部と、を備え、
前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が対向するフィルター対向領域には、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が第一ギャップで対向する第一領域と、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部が前記第一ギャップよりも大きい寸法の第二ギャップで対向する第二領域と、が設けられ、
前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、それぞれ、前記第一フィルター部及び前記第二フィルター部の前記フィルター対向領域のうち、少なくとも第一領域に設けられ、
前記第二領域を通る光路上に、光を遮光する遮光部が設けられた
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−72931(P2013−72931A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210327(P2011−210327)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】