説明

洗浄剤組成物

【課題】 pH値が7よりも低く、抗菌及び悪臭の化学的制御の両面で使用され、グラム陰性菌及びグラム陽性菌、イースト菌や水虫菌のような幅広い種類の微生物に対する活性がある洗浄剤組成物及びその使用方法を提供する。
【解決手段】 抗菌剤、第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤、並びに任意に第2硫黄結着及び/若しくは酸化剤を含有している洗浄剤組成物であって、前記洗浄剤組成物のpH値は、7若しくは7より低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌剤、第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤、並びに任意に第2硫黄決着及び/若しくは酸化剤を含有している洗浄剤組成物であって、前記洗浄剤組成物のpH値が7若しくはそれより低い値であることを特徴とする洗浄剤組成物と、前記洗浄剤組成物の製造方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な洗浄剤組成物が歯の保護のために使用されている。前記洗浄剤組成物は、例えば、歯列矯正具又は入れ歯のような補綴具を洗浄するために使用される。これら洗浄剤組成物の別の使用法は、例えば口臭、即ち悪臭を伴う息の治療(予防)或いは歯周炎の治療のための口腔リンス剤として使用される。
【0003】
口の中並びに歯列矯正具及び補綴具には、食物の滓や細胞残屑が堆積する。口内微生物の分解により、具体的には硫黄を含むアミノ酸類の分解に起因して、揮発性硫黄化合物が形成される。これら揮発性硫黄化合物は、息の悪臭又は該歯列矯正具及び補綴具に付着する悪臭を引き起こす。それ以上に、細胞残屑や食物の滓の堆積は、例えばポルフィロモナス・ギンギヴァリス(P. gingivalis)、ペプトストレプトコッカス.エスピーピー(Peptostreptococcus spp)、及びプレボテラ・インターメディア(P. intermedia)といった口内微生物の成長に好都合な環境を供給するようなものである。これらの口内微生物は悪臭だけでなく、歯周炎及び患者にとって多量の不快な症状の原因となっている病的な歯周ポケットをもたらす。
【0004】
背景技術として、歯周炎、息の悪臭、又は歯列矯正具若しくは補綴具の悪臭を克服するための種々の溶液(薬剤)が、提案されている。通常、(前記薬剤が)適用される方法の一つは、口若しくは歯列矯正具をすすぐためのリンス剤として使用することである。これらのリンス剤は、悪臭が伝達しないように、揮発性硫黄化合物を酸化する。他のリンス剤は、歯周炎或いは(含硫黄)アミノ酸類の分解に関与する口内微生物に対する抗菌効果を有している。このように、歯周炎、口又は歯列矯正具若しくは補綴具の悪臭は、十分に回避される。
【0005】
歯周炎、息の悪臭又は歯列矯正具若しくは補綴具の悪臭を克服するために使用される近年の洗浄剤組成物は、例えばクロロヘキシジンを含有している。クロロヘキシジンがもたらす効果は、抗菌効果、即ち主にグラム陰性菌に対する抗菌効果が得られる。しかしながら、クロロヘキシジンには、幾つかの欠点がある。最も重要な欠点として、病人がクロロヘキシジン含有洗浄剤組成物で定期的に口をすすいだ場合、病人自身の口又は舌が、茶色に変色してしまうことである。もちろんこのことは重大な欠点である。クロロヘキシジンの別の欠点は、比較的低濃度状態における、グラム陽性菌に対する重要な抗菌効果が無いことである。このことは、グラム陽性菌が、リンス剤によって抗菌効果がもたらされずに、歯周炎を引き起こす、或いは悪臭を引き起こす揮発性硫黄化合物を生産していることを意味している。
【0006】
口臭治療又は歯列矯正具若しくは補綴具の洗浄に使用されている他の洗浄剤組成物は、亜塩素酸塩を含有している。これら亜塩素酸塩含有洗浄剤組成物の効果は、揮発性硫黄化合物が引き起こす臭気が消滅、即ち酸化されるような二酸化塩素構造を誘発する口内バクテリアによって生産される酸に、亜塩素酸が反応したときに、発揮される。このようにこれらの亜塩素酸塩含有洗浄剤組成物は、口内微生物の量を減らす代わりに、分解、即ち揮発性硫黄化合物が引き起こす臭気の酸化目的にのみ使用される。
【0007】
例えば、米国特許第5772986号公報(特許文献1)には、口内酸性環境を創出するための第1洗浄剤組成物と、亜塩素酸塩を含む第2洗浄剤組成物とを具備したキットが開示されている。第1洗浄剤組成物による口の予備的酸化によって、亜塩素酸塩含有第2洗浄剤組成物の効力が増加する。しかしながら、この洗浄剤組成物の欠点は、キットが一つは酸化用、もう一つは亜塩素酸硫黄化合物の分解用という2種類の洗浄剤組成物を含有して使用されなくてはならないことである。それ以上に、亜塩素酸塩を使用することによって、口内微生物が多数滅菌されること無く、臭いの原因化合物の分解だけが進行される。
【特許文献1】米国特許第5772986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の事情に鑑み、本発明の目的は、pH値が7よりも低く、抗菌及び悪臭の化学的制御の両面で使用され、グラム陰性菌及びグラム陽性菌、イースト菌や水虫菌のような幅広い種類の微生物に対する活性がある洗浄剤組成物及びその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様は、抗菌剤、第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤、並びに任意に第2硫黄結着及び/若しくは酸化剤を含有している洗浄剤組成物であって、前記洗浄剤組成物のpH値が7若しくはそれ以下である。
【0010】
本発明の利点は、一つの洗浄剤組成物が、抗菌及び悪臭の化学的制御の両面で使用されることである。更なる利点は、本発明の洗浄剤組成物は、グラム陰性菌及びグラム陽性菌、イースト菌や水虫菌のような幅広い種類の微生物に対する活性があることである。本発明の別の利点は、特許文献1に開示されているような第1及び第2洗浄剤組成物の代わりに、一つの洗浄剤組成物のみが使用される。更には、本発明の洗浄剤組成物を使用することで、口の中又は歯列矯正具若しくは補綴具の上にたまる粘液及び食物の滓が、それらに含まれる微生物の不活性化を引き起こすことによって、除去される。それ以上に、本発明の洗浄剤組成物を使用することによって、歯の上又は歯列矯正具若しくは補綴具上に堆積しているカルシウム析出物が取り除かれる。
【0011】
本発明の別の重要な利点は、本発明の洗浄剤組成物で洗浄した歯列矯正具又は補綴具には、十分に口内微生物が存在しなくなる。通常、歯列矯正具及び補綴具は、微生物にとって適切な環境を供給するような、多孔質の物質から製造される。しかしながら、本発明の洗浄剤組成物を使用した治療で、前記歯列矯正具及び/又は補綴具の多孔部分(マトリクス)に詰まった微生物及び食物の滓が取り除かれる。とりわけ、予め患者が歯周炎を治療したときには、洗浄した部分の再汚染が回避されるように、歯列矯正具及び/又は補綴具には十分に口内微生物が存在しなければ、そのことが利点となる。更に付け加えるなら、本発明の洗浄剤組成物は、好ましくは水溶性洗浄剤組成物である。また一方では、前記洗浄剤組成物は分散タイプ、ジェル状、或いはペースト状(例えば練り歯磨き粉)のような構造である。また一方では、洗浄剤組成物が病的な歯周ポケットの洗浄に用いられるときには、ジェル状の洗浄剤組成物が好ましい。
【0012】
本発明の好ましい態様は、pH値が1〜5の範囲であり、好ましくは2〜4である。このpH値の範囲は、(口内)微生物が効果的に殺菌されるための環境を創出するという理由から、好都合な値である。更には、比較的低いpH値はカルシウム結束効果を有する。カルシウム堆積物が歯又は歯列矯正具若しくは補綴具にたまることで外観不良を引き起こすことから、この効果は、本発明の特筆すべき利点である。前記pH値範囲の別の利点は、咽頭口部にある食べ物の滓及び微生物の残骸によって形成される粘液層が、少なくとも部分的に駆除されることである。この粘液層の破壊が、粘液層の下若しくは中に存在する歯周炎若しくは悪臭を引き起こす嫌気性バクテリアが、洗浄剤組成物の中の抗菌剤によって、効果的に不活性化されることを可能にする。それ以上に、相対的に低いpH値のおかげで、口の中又は歯列矯正具若しくは補綴具の上にこびりついたタンパク質が容易に除去される。
【0013】
第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤並びに/又は第2硫黄結着及び/若しくは酸化剤の量が0.005〜1重量%、好ましくは0.04〜1重量%、より好ましくは、0.04〜0.3重量%、最も好ましくは0.1〜0.3重量%である。これらの数値範囲内では、バクテリアによって産出される硫黄系化合物が十分に取り除かれ、口の悪臭が現れなくなる。
【0014】
特に好ましくは、第1硫黄結着及び/又は酸化剤がアンモニウムである。アンモニウムは、硫黄化合物ととてもよく反応するために、口の悪臭を除去する。更には、アンモニウムが口の中にある脂分の溶解を助ける。このことは(食物の滓のような)脂肪滓の中に含まれている硫黄化合物が取り除かれるということである。更には、脂肪滓が溶解すれば、本発明の洗浄剤組成物を使用されたときの抗菌剤の効果が増加される。結局は、脂肪滓に含まれる嫌気性バクテリアが、より容易に抗菌剤と接触して運ばれる。従って、アンモニウムの使用は、洗浄剤組成物の効能を増加する。
【0015】
更に好ましい態様は、該洗浄剤組成物中のアンモニウムの量が0.04〜0.5重量%であり、好ましくは0.1〜0.5重量%である。この数値範囲内では、効能が更に増加する。
【0016】
更に好ましい態様は、第2硫黄結着及び/若しくは酸化剤がカルシウム、ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ベンゼン誘導体、芳香族炭化水素、アセチルサリチル酸、或いはそれらの混合物を含んでいる。また一方では、1つ若しくはそれ以上の硫黄結着及び/若しくは酸化剤が第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤を形成することが可能になる。1つ若しくはそれ以上の硫黄結着及び/若しくは酸化剤を使用することで、口の中、咽頭口部、又は補綴具上にある硫黄化合物の削減が更にもっと好転する。
【0017】
好ましい態様は、抗菌剤が有機酸である。抗菌剤がより好ましくはヒドロキシ酸、クエン酸、酢酸、アセチルサリチル酸、酪酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、及び/又は炭酸水素ナトリウムである。これらの抗菌剤のうち1つを使用することによって、硫黄化合物を産出するような微生物、即ち悪臭を引き起こす微生物は、十分に不活性化される。これは、実質的な悪臭の形成が生じないことを意味している。
【0018】
洗浄剤組成物中の有機酸若しくは酸の含有量が1〜50重量%であり、好ましくは30〜45重量%又は1〜10重量%である。この数値範囲内であれば、より良い効能が得られる。
【0019】
更に好ましい態様は、洗浄剤組成物中の酢酸の含有量が0.05〜10重量%、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜6重量%である。(酢酸は)抗菌剤としての効能に加えて、脂肪を溶解する。これは、例えば食物滓から出た脂肪滓が(部分的に)溶解し、硫黄結着及び/若しくは酸化剤が容易に結合或いは硫黄化合物と反応することが可能である。また、口の中、咽頭口部、又は補綴具上にある微生物の不活性化が好転される。
【0020】
更に好ましくは、有機酸として酒石酸が使用される。酒石酸は効能の好転を促す。酒石酸の量は0.5〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。
【0021】
本発明の好ましい態様は、第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤の量が該洗浄剤組成物に対して0.1〜0.8重量%、好ましくは0.1〜0.3重量%であり、抗菌剤の量は該洗浄剤組成物の30〜45重量%であり、pH値は2〜4である。このような態様は、歯列矯正具及び補綴具のような清浄補綴具、手術器具及びステンレス鋼製歯科的手術器具のような歯科用器具のための洗浄剤組成物としてとりわけ適している。好ましくは、第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤がアンモニウムであり、抗菌剤が酒石酸及び/又は酢酸である。
【0022】
本発明の別の好ましい態様は、第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤の量が洗浄剤組成物に対して0.03〜0.15重量%であり、抗菌剤の量が洗浄剤組成物に対して1〜8重量%であり、pH値は2〜4の間である。この態様は、口臭、歯周炎若しくは歯肉炎のような、鼻及び/又は口腔咽頭の疾患の治療或いは予防、並びに/又は人肌若しくは細菌性膣炎の治療に使用することがとりわけ適している。好ましくは、第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤がアンモニウムであり、抗菌剤が酒石酸及び/又は酢酸である。
【0023】
好ましくは、抗菌剤及び硫黄結着(酸化)剤が同じ物質であることである。一つのみの薬剤であれば、製造物と原料のコストが低くて済むという利点がある。抗菌作用及び硫黄結着作用の両方を有している好ましい薬剤は、アセチルサリチル酸である。
【0024】
本発明の好ましい態様は、サリチル酸及び/又は炭酸水素ナトリウムの量が0.1〜2.5重量%である。サリチル酸は、抗菌作用及び硫黄結着(酸化)作用の両方を有していることから好ましい。それ以上に、サリチル酸には麻酔効果がある。炭酸水素ナトリウムは、洗浄剤組成物の品質保持を好転するという理由から好ましい。
【0025】
本発明の特に好ましい態様は、洗浄剤組成物がフッ化物源を含んでいることである。フッ化物源の添加が、口の中の治療、特に口の中の口臭、病的な歯周ポケット、及び/又は歯周炎の治療に用いるのにとりわけ適した洗浄剤組成物を製造する。フッ化物源の使用によって、口内微生物の減少及び口の中にある揮発性硫黄化合物の分解が行われている間、酸性洗浄剤組成物による可能な限りの脱ミネラル化が十分に回避される。
【0026】
好ましくは、フッ化物源がフルオラミン、フッ化ナトリウム、フッ化カルシウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化亜鉛、フッ化ジルコニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、酸性リン酸塩、フッ化物、塩化フッ化スズ、フッ化マグネシウム、フッ化第一スズカリウム、フッ化チタン、フッ化鉄、ヘキサフルオロジルコン酸スズである。
【0027】
好ましくは、洗浄剤組成物が0.05〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.2重量%、更に好ましくは約0.15重量%のフルオラミン及び/又はフッ化ナトリウムを含む。
【0028】
好ましくは、洗浄剤組成物がリゾチーム及び/又はラクトペルオキシダーゼのような酵素を含む。これらのような酵素を使用する利点は、増加及びより早い抗菌効果が、洗浄剤組成物の使用時に得られることである。
【0029】
より活性的な洗浄剤組成物を製造するには、カラーリング剤、香料、及び/又は安定剤が洗浄剤組成物に加えられることである。
【0030】
本発明の第2態様は、前記洗浄剤組成物の製造方法であって、抗菌剤、第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤、並びに任意に第2硫黄結着及び/若しくは酸化剤からなる洗浄剤組成物を製造する工程と、前記洗浄剤組成物のpH値を7若しくはそれより低い値に調整する工程とを具備している洗浄剤組成物の製造方法に関する。
【0031】
本発明の第3態様は、前記製造方法によって得られた洗浄剤組成物に関する。
【0032】
本発明の第4態様は、薬剤として使用するための前記洗浄剤組成物に関する。
【0033】
本発明の第5態様は、口臭、歯周炎、歯肉炎のような鼻及び/又は口腔疾患の予防若しくは治療、歯根(歯内)管の洗浄、並びに/又は人肌若しくは細菌性膣炎の治療のための薬剤として製造された、前記洗浄剤組成物の使用方法に関する。
【0034】
本発明の第6態様は、歯科用歯列矯正具及び補綴具のような清浄補綴具、外科的手術器具及びステンレス鋼製歯科用手術器具のような歯科用治療器具のための洗浄剤組成物の使用方法に関する。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る洗浄剤組成物によれば、該組成物の構成(組成)が抗菌剤、第1及び第2硫黄結着及び/若しくは酸化剤から成り、該組成物のpH値を7もしくはそれより低くすることで、口臭若しくは歯周炎の治療予防並びに進行を停止することができ、更には、細菌性膣炎の治療が可能である。
【0036】
また、本発明に係る洗浄剤組成物によれば、歯科用歯列矯正具及び補綴具並びに外科的手術器具及びステンレス鋼製歯科用手術器具のような歯科用治療器具の洗浄が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例を基に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]義歯用洗浄剤組成物
水性洗浄剤組成物は、カルシウム結着剤としての500mlの酢酸(25%/l)、硫黄結着剤になるアンモニウムイオン源として200mlのアンモニア水(10%/l、NH)、100mlのアセチルサリチル酸(5%/l)、及びpH値を2より低くするために約200mlのクエン酸(5%〜10%/l)から製造した。前記洗浄剤組成物には、心地よい臭いを与えるためにメントール香料を更に含ませた。歯列矯正具なら3回、補綴具なら2回の使用で、前記洗浄剤組成物中に約15分間浸漬された。治療後は、歯石、滓(歯垢)及び悪臭は残らなかった。
【0039】
[実施例2]義歯用洗浄剤組成物
水性洗浄剤組成物は、約0.15重量%のサリチル酸、約2.5重量%の酒石酸、約6重量%の酢酸、約35重量%のクエン酸と約55重量%の水を混合して製造した。また、前記水性洗浄剤組成物は、アンモニア水の添加によって得られたアンモニウム分を約0.2重量%含んでいた。前記洗浄剤組成物の風味と臭いをよくする為に、ペパーミント油とシクラミン酸ナトリウムが用いられた。得られた洗浄剤組成物は、義歯が組み合わさっているような補綴具の洗浄にとりわけ適した。
【0040】
洗浄剤組成物の効能は、部分入れ歯、フレーム型補綴具及び歯列矯正具といった、義歯を装着している158人全員に対してテストされた。全ての回答者は、義歯を洗浄するために前記洗浄剤組成物を使用すること及び前記洗浄剤組成物がもたらす効果について、義歯が十分に洗浄される時間、即ち食物滓が十分に取り除かれ、義歯にはもはや臭いが残らない時間について問われた。表1から明らかなように、全ての回答者は、25分のうちで義歯は十分に清浄になると回答し、回答者の50%以上は、15分で十分に清浄になると回答した。
【0041】
【表1】

表1から明らかなように、本発明の洗浄剤組成物は相対的に高い効能を有している。
【0042】
[実施例3]器具用洗浄剤組成物
実施例2と同様に、洗浄剤組成物は、ステンレス鋼製歯科用器具の洗浄のために製造された。前記洗浄剤組成物は、約0.5重量%のアンモニウム、約0.15重量%のサリチル酸、約7.5重量%の酒石酸、約8重量%の酢酸、約27.5重量%のクエン酸一水和物、約1.5重量%のシクラミン酸ナトリウム、及び約55重量%の水から製造された。この洗浄剤組成物は10種の歯科用器具(5本の歯肉切除用ナイフ、5本のデンタルミラー)に対してテストされた。全ての器具は、15分以内で十分に洗浄された。
【0043】
[実施例4]口腔用洗浄剤組成物
水性洗浄剤組成物は、フッ化物源としての約25mg/lのフルオラミン、100mlのアンモニア水(8%/l)、100mlのアセチルサリチル酸(5%/l)、400mlの酢酸(20%/l)、第2硫黄結着剤としてのナトリウム(イオン)及び酸化剤としての炭酸(イオン)源としての炭酸水素ナトリウム(4%/l)、並びにpH値を3より低くするためにだいたい500mlのクエン酸(10〜20%/l)を含有することで製造された。更に、前記洗浄剤組成物に風味を与えるためのメントール香料と、同じく甘みを与えるためのソルビトールが添加された。6人の口臭に不快さを感じる患者には、1回毎に2分間、1日に2回口をすすいでもらった。2週間後には、口臭に不快さを感じた患者はいなかった。
【0044】
[実施例5]口腔洗浄剤組成物
水性洗浄剤組成物は、約0.15重量%のサリチル酸、約0.15重量%のフッ化ナトリウム、約0.5重量%の炭酸水素ナトリウム、約1.0重量%の乳酸、約1.0重量%の酒石酸、約1.2重量%の酢酸、約1.5重量%のクエン酸、約28重量%のソルビトール、約0.1重量%のアンモニウムを含有することで製造された。6人の口臭に不快さを感じる患者には、1回毎に2分間、1日に2回口をすすいでもらった。2週間後には、口臭に不快さを感じた患者はいなかった。
【0045】
[実施例6]歯周炎洗浄剤組成物(ジェル型)
水性洗浄剤組成物は、フッ化物源としての25mg/lのフルオラミン、200mlのアンモニア水(12%/l)、100mlのアセチルサリチル酸(5%/l)、400mlの酢酸(20%/l)、100mlの炭酸水素ナトリウム(4%/l)、並びにpH値を3より低くするためにだいたい200mlのクエン酸(10〜20%/l)を含有することで製造された。また、リゾチーム及び/又はラクトペルオキシダーゼ又はそれらの類縁体のようなヒト由来酵素が前記洗浄剤組成物に添加された。更に、前記洗浄剤組成物に風味を与えるためのメントール香料が添加され、甘みを与えるためのソルビトールが添加された。6人の口臭に不快さを感じる患者に、1回毎に2分間、1日に2回、3週間続けて口をすすいでもらった。試験後は、患者は、歯石除去及び病的な歯周ポケットの根面平滑化に伴って、歯周炎が治療され、患者らの歯周ポケットが元の状態に戻った。ジェル型のこの洗浄剤組成物は、病的な歯周ポケットに対して、シリンジによってもまた大いに効果をもたらされた。6ヶ月後には、歯周炎が進行した患者はいなかった。
【0046】
[実施例7]歯周炎洗浄剤組成物(溶液型)
水性洗浄剤組成物は、約0.1重量%のアンモニウム、約0.15重量%のサリチル酸、約0.15重量%のフッ化ナトリウム、約0.75重量%の炭酸水素ナトリウム、約1.35重量%の乳酸、約1.5重量%の酒石酸、約1.2重量%の酢酸、約2.5重量%のクエン酸、約28重量%のソルビトールと約64重量%の水を含有することで製造された。6人の口臭に不快さを感じる患者に、1回毎に2分間、1日に2回、3週間続けて口をすすいでもらった。試験後は、患者は、歯石除去及び病的な歯周ポケットの根面平滑化に伴って、歯周炎が治療され、患者らの歯周ポケットが基の状態に戻った。ジェル型のこの洗浄剤組成物は、病的な歯周ポケットに対して、シリンジによってもまた大いに効果をもたらされた。6ヶ月後には、歯周炎が進行した患者はいなかった。
【0047】
同様に、前記溶液が、多数の口内微生物に対して活性があれば、歯肉炎は14日の間に、1回毎に2分間、1日に2回口をすすぐことによって治療される。疾患が重い場合には、該リンス剤を含ませた脱脂綿が、歯肉に接触することで口の周りに直接的に効果がもたらされる。
【0048】
この治療において、口腔と膣粘液組織の類似を考慮すると、即ち本発明の洗浄剤組成物は、膣の中の微生物(ヴァギノース)にも効果的である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌剤、第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤、並びに任意に第2硫黄結着及び/若しくは酸化剤を含有している洗浄剤組成物であって、前記洗浄剤組成物のpH値が7若しくはそれより低いことを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤並びに/又は第2硫黄結着及び/若しくは酸化剤の量が0.005〜1重量%であり、好ましくは0.04〜1重量%、より好ましくは0.04〜0.3重量%、最も好ましくは0.1〜0.3重量%である請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤がアンモニウムである請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記洗浄剤組成物中の前記アンモニウムの量が0.04〜0.5重量%であり、好ましくは0.1〜0.5重量%である請求項3に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記第2硫黄結着及び/若しくは酸化剤がカルシウム、ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ベンゼン誘導体、芳香族炭化水素、炭酸水素ナトリウム、サリチル酸、アセチルサリチル酸、又はこれらの混合物である請求項1乃至4のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記洗浄剤組成物のpH値が1〜5であり、好ましくは2〜4である請求項1乃至5のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
前記抗菌剤がカルボン酸のような有機酸である請求項1乃至6のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項8】
前記有機酸の量が1.0〜50重量%の範囲であり、好ましくは30〜45重量%或いは1.0〜10重量%である請求項7に記載の洗浄剤組成物。
【請求項9】
前記抗菌剤がヒドロキシ酸、クエン酸、アセチルサリチル酸、酪酸、乳酸、酒石酸、酢酸、リンゴ酸、炭酸水素ナトリウム、又はこれらの混合物である請求項1乃至8のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項10】
前記洗浄剤組成物中の酢酸の量が0.05〜10重量%の範囲であり、好ましくは1〜6重量%である請求項9に記載の洗浄剤組成物。
【請求項11】
前記酒石酸の量が0.5〜10重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜3重量%である請求項9又は10に記載の洗浄剤組成物。
【請求項12】
前記第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤の量が前記洗浄剤組成物に対して0.1〜0.8重量%であり、前記抗菌剤の量が前記洗浄剤組成物に対して30〜45重量%であり、前記pH値が2〜4である請求項1乃至11のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項13】
前記第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤の量が前記洗浄剤組成物に対して0.03〜0.15重量%であり、前記抗菌剤の量が前記洗浄剤組成物に対して1〜8重量%であり、前記pH値が2〜4である請求項1乃至11のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項14】
前記第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤がアンモニウムであり、前記抗菌剤が酒石酸及び/又は酢酸である請求項12又は13に記載の洗浄剤組成物。
【請求項15】
前記第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤と前記抗菌剤が同じである請求項1乃至14のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項16】
前記洗浄剤組成物がフッ化物源を含む請求項1乃至15のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項17】
前記フッ化物源がフルオラミン、フッ化ナトリウム、フッ化カルシウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化亜鉛、フッ化ジルコニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、酸性リン酸塩、フッ化物、塩化フッ化スズ、フッ化マグネシウム、フッ化第一スズカリウム、フッ化チタン、フッ化鉄、ヘキサフルオロジルコン酸スズである請求項16に記載の洗浄剤組成物。
【請求項18】
前記洗浄剤組成物が0.05〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.2重量%、より好ましくは約0.15重量%のフルオラミン及び/又はフッ化ナトリウムを含む請求項17に記載の洗浄剤組成物。
【請求項19】
前記洗浄剤組成物がリゾチーム及び/又はラクトペルオキシダーゼのような酵素を含む請求項1乃至18のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項20】
前記洗浄剤組成物がカラーリング剤、香料、及び/又は安定剤を含む請求項1乃至19のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれかに記載の洗浄剤組成物の製造方法であって、抗菌剤、第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤、並びに任意に第2硫黄結着及び/若しくは酸化剤若しくは追加的に硫黄結着及び/若しくは酸化剤から成る洗浄剤組成物を製造する工程と、前記洗浄剤組成物のpH値を7若しくはそれより低く調整する工程とを具備することを特徴とする洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項22】
前記pH値が1〜5、好ましくは2〜4に調整される請求項21に記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項23】
クエン酸が前記pH値の調整に使用される請求項21又は22に記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項24】
前記第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤並びに/又は第2硫黄結着及び/若しくは酸化剤の量が前記洗浄剤組成物に対して0.005〜1重量%であり、好ましくは0.04〜1重量%、より好ましくは0.04〜0.3重量%、最も好ましくは0.1〜0.3重量%である請求項21乃至23のいずれかに記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項25】
アンモニウムが形成されるように、前記第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤を得るために、アンモニアが前記洗浄剤組成物に添加される請求項21乃至24のいずれかに記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項26】
前記洗浄剤組成物中に形成されるアンモニウムの量が0.04〜0.5重量%であり、好ましくは0.1〜0.5重量%である請求項25に記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項27】
前記第2硫黄結着及び/若しくは酸化剤がカルシウム、ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ベンゼン誘導体、芳香族炭化水素、炭酸水素ナトリウム、サリチル酸、又はこれらの混合物である請求項21乃至26のいずれかに記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項28】
前記抗菌剤がカルボン酸のような有機酸である請求項21乃至27のいずれかに記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項29】
前記有機酸の量が前記洗浄剤組成物に対して、1.0〜50重量%の範囲であり、好ましくは30〜45重量%或いは1〜10重量%である請求項28に記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項30】
前記抗菌剤がヒドロキシ酸、クエン酸、アセチルサリチル酸、酪酸、乳酸、酒石酸、酢酸、リンゴ酸、炭酸水素ナトリウム、又はこれらの混合物である請求項21乃至29のいずれかに記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項31】
前記洗浄剤組成物中の酢酸の量が0.05〜10重量%の範囲であり、好ましくは1〜6重量%である請求項30に記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項32】
前記酒石酸の量が0.5〜10重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜3重量%である請求項30又は31に記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項33】
前記第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤の量が前記洗浄剤組成物に対して0.1〜0.8重量%であり、前記抗菌剤の量が前記洗浄剤組成物に対して30〜45重量%であり、前記pH値が2〜4に調整される請求項21乃至32のいずれかに記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項34】
前記第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤の量が前記洗浄剤組成物に対して0.03〜0.15重量%であり、前記抗菌剤の量が前記洗浄剤組成物に対して1〜8重量%であり、前記pH値が2〜4に調節される請求項21乃至32のいずれかに記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項35】
前記第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤がアンモニウムであり、前記抗菌剤が酒石酸及び/又は酢酸である請求項33又は34に記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項36】
前記第1硫黄結着及び/若しくは酸化剤と前記抗菌剤が同じである請求項21乃至35のいずれかに記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項37】
フッ化物源が前記洗浄剤組成物に添加される請求項21乃至36のいずれかに記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項38】
前記フッ化物源がフルオラミン、フッ化ナトリウム、フッ化カルシウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化亜鉛、フッ化ジルコニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、酸性リン酸塩、フッ化物、塩化フッ化スズ、フッ化マグネシウム、フッ化第一スズカリウム、フッ化チタン、フッ化鉄、ヘキサフルオロジルコン酸スズである請求項37に記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項39】
前記洗浄剤組成物が0.05〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.2重量%、より好ましくは約0.15重量%のフルオラミン及び/又はフッ化ナトリウムを含む請求項38に記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項40】
リゾチーム及び/又はラクトペルオキシダーゼのような酵素が、前記洗浄剤組成物に対して添加される請求項21乃至39のいずれかに記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項41】
カラーリング剤、香料、及び/又は安定剤が、前記洗浄剤組成物に対して添加される請求項21乃至40のいずれかに記載の洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項42】
請求項21乃至41のいずれかに記載の製造方法によって得られた洗浄剤組成物。
【請求項43】
薬剤として使用する請求項1乃至20又は42のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項44】
口臭、歯周炎、歯肉炎のような鼻及び/又は口腔疾患の治療若しくは予防、並びに/又は人肌若しくは細菌性膣炎の治療のための薬剤として製造された請求項1乃至20又は42のいずれかに記載の洗浄剤組成物の使用方法。
【請求項45】
歯列矯正具及び補綴具のような清浄補綴具、手術器具のような歯科用器具、並びにステンレス鋼製歯科用及び外科用手術器具の為に用いる請求項1乃至20又は42のいずれかに記載の洗浄剤組成物の使用方法。


【公表番号】特表2009−522385(P2009−522385A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547906(P2008−547906)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012656
【国際公開番号】WO2007/077039
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(508194593)ラウゲマン ラボラトリーズ ビー.ブイ. (1)
【氏名又は名称原語表記】LAUGEMAN LABORATORIES B.V.
【住所又は居所原語表記】Pr.Frederik Hendrikstraat 63,NL−3051 EN Rotterdam(NL)
【Fターム(参考)】