説明

活性水素を含む活性基を有するアルジミン

本発明は、式(I)のアルジミンに関する。このアルジミンは、少なくとも1個のアルジミノ基と、ヒドロキシル基、メルカプト基、または二級アミノ基の形態の活性水素を含む基を少なくとも1個とを有する。このアルジミンは、簡単な方法で、活性水素に反応性を有する化合物と一緒に変換させて、広範な反応生成物を得ることができる。すなわち、例えば、イソシアネート基とアルジミノ基とを含む反応生成物を得ることができる。このような反応生成物は、接着剤、シーリング配合物、およびコーティングとして特に用いられるポリウレタン組成物に本質的に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルジミンの分野および湿気硬化性ポリウレタンの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
アルジミン類は、アミンとアルデヒドとの縮合生成物であり、かねてから公知の物質群を構成している。水と接触すると、アルジミンは、対応するアミンおよびアルデヒドに加水分解され得るが、これらは水の不存在下では安定である。この性質によって、アルジミンは、アミンが化合または保護された形態として用いることができる。たとえば、アルジミンは、ポリウレタン化学において用いられ、イソシアネート含有ポリウレタン組成物のための、水分によって活性化されうる架橋剤、いわゆる「潜在性アミン」または「潜在性硬化剤」として作用する。イソシアネート含有システム中での潜在性硬化剤としてのアルジミンの使用は2つの利点を有している。第一に、硬化したポリマー中での望ましくない気泡の形成を避けることができる。なぜなら、硬化は、イソシアネートと水分との直接の反応とは対照的に、潜在性アミンを介して二酸化炭素(CO)の放出なしに起こるからである。第二に、より速い硬化速度が達成できる。しかし、湿気硬化性ポリウレタンにおけるアルジミンの使用には困難もある。例えば、イソシアネート基およびアルジミノ基が一緒に存在することによって組成物の貯蔵安定性が大幅に制限される場合がある。さらに、アルジミノ基を含有するポリウレタン組成物は、アルジミンの製造時に用いたアルデヒドによって、多くの用途に耐えない非常に強い臭気を有することが多い。
【0003】
追加の官能基を有するアルジミン類が公知である。これらは、適切な反応性化合物と付加体を形成する性質を有し、この付加体をさまざまな方法で利用することができる。
【0004】
米国特許第4,224,417号明細書および米国特許第6,136,942号明細書は、イソシアネート基に対して反応性の官能基を有するアルジミンを開示しており、このアルジミンは、一級もしくは二級の脂肪族アルデヒドまたは芳香族アルデヒドから出発して製造されている。しかし、このようなアルジミンを含む組成物は、貯蔵安定性が不十分であり、かつ/あるいは硬化形態での耐光性に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,224,417号明細書
【特許文献2】米国特許第6,136,942号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服する、追加の官能基を有するアルジミンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、請求項1に記載した新規なアルジミンによってこの目的が達成される。これらのアルジミンは、少なくとも1個のアルジミノ基に加えて、ヒドロキシル基、メルカプト基、またはアミン基の形態の、活性水素を含む部分を少なくとも1個有している。
【0008】
これらのアルジミンは、貯蔵安定であり、活性水素に対して反応性である化合物と簡単な方法で反応させて反応生成物を得ることができ、とりわけ、請求項7に記載のアルジミノ基含有化合物を得ることができる。このような反応生成物は、水分の影響下で架橋反応を引き起こすことができる。好ましい実施態様では、反応生成物は、請求項11に記載の化合物であり、これらは、少なくとも1個のアルジミノ基に加えて、少なくとも1個のイソシアネート基を有する。これらの反応生成物は、反応性基、特に例えばイソシアネート基がその中に存在するにもかかわらず、格別に貯蔵安定である。加えて、これらは、加水分解前、加水分解中、および加水分解後においてほんのわずかな臭気しか有さない。
【0009】
本発明のさらなる態様は、請求項15に記載の組成物に関する。より詳細には、このような組成物は、請求項20に記載の接着剤、シーリング材、ポッティング組成物(potting composition)、またはコーティング剤として好適である。このような組成物は、水分と反応して、請求項19に記載の硬化した組成物を与える。
【0010】
本発明のさらなる態様は、請求項21に記載の接着結合方法、請求項22に記載のシーリング方法、請求項23に記載のコーティング方法、および請求項28に記載のこれらの方法によって得られる物品に関する。
【0011】
驚くべきことに、請求項1に記載のアルジミンを使用することによって、ポリウレタンポリマー中、およびポリウレタンポリマーを含む組成物中の、ジイソシアネートモノマーの含有量を大幅に低減することができることが分かった。
【0012】
請求項30に記載のジイソシアネートモノマーの含有量を低減する方法は、したがって、本発明の特有の態様である。この方法によって、洗練されたやり方で、ポリウレタン化学における非常に大きな問題、特に、望ましくないジイソシアネートモノマー部分の存在の問題を、安価に且つ有効に解決することが可能になり、しかも、これらのモノマーの2つの官能基が失われるのではなく、これらがポリウレタンポリマーの架橋時に形成される高分子量ポリマーにむしろ有用なやり方で組み込まれるという利点を伴う。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の特に好ましい実施態様は、従属請求項の主題である。
【0014】
本発明は、下記式(I)のアルジミンを提供する:
【化1】

[式中、
およびRは、それぞれ独立に、1〜12個の炭素原子を有する1価の炭化水素基であるか、または
一緒になって、4〜12個の炭素原子を有する2価の炭化水素基であって、5〜8個、好ましくは6個の炭素原子を有し、かつ、場合により置換されていてもよい炭素環の一部である炭化水素基であるかのいずれかであり;
は、水素原子、アルキル基、またはアリールアルキル基、特に1〜12個の炭素原子を有するアルキル基またはアリールアルキル基であり;
は、1〜30個の炭素原子を有し、任意にエーテル酸素原子を有していてもよい炭化水素基であるか、または
【化2】

の基(式中、Rは、水素原子または1〜5個の炭素原子を有する炭化水素基である)であるかのいずれかであり;
Aは、2〜20個の炭素原子を有し、任意にヘテロ原子を有していてもよい(m+y)価の炭化水素基であるか、または
yが1であり、XがN-R7である場合には、Rと一緒になって、3〜20個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個のヘテロ原子、特にエーテル酸素または三級アミン窒素の形態のヘテロ原子を有していてもよい(m+2)価の炭化水素基であり;
Xは、O、S、N-R6、またはN-R7であり、
式中、Rは、1〜20個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個のカルボン酸エステル、ニトリル、ニトロ、ホスホン酸エステル、スルホン、またはスルホン酸エステル基を含んでいてもよい1価の炭化水素基であるか、または
下記式(II)の置換基:
【化3】

(式中、
pは、0または1〜10000の整数であり、かつ
Bは、場合によりヘテロ原子、特にエーテル酸素または三級アミン窒素の形態のヘテロ原子を有していてもよく、場合によりヒドロキシ基、二級アミノ基、またはメルカプト基の形態の活性水素を有していてもよい、(p+1)価の炭化水素基である。)
であるかのいずれかであり、かつ
は、Aと一緒になって、3〜20個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個のヘテロ原子、特にエーテル酸素または三級アミン窒素の形態のヘテロ原子を有していてもよい(m+2)価の炭化水素基であり;かつ
mは、1、2、3、または4であり、
yは、1、2、3、または4である。]
【0015】
本明細書において点線は、それぞれ置換基と相当する分子基との間の結合を表す。
【0016】
本明細書において、用語「一級アミノ基」は、有機基に結合したNH2基を意味する一方、用語「二級アミノ基」は、2つの有機基(これは一緒になって、環の一部となっていてもよい)に結合したNH基を意味し、用語「三級アミノ基」は、3つの有機基に結合した窒素原子を意味する。ここで、これらの有機基は、環を介して連結されていてもよい。
【0017】
本明細書において、用語「活性水素」は、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子に結合した、脱プロトン化可能な水素原子を意味する。
【0018】
式(I)および式(II)において、RおよびRは、それぞれメチル基であることが好ましい。加えて、Rは、水素原子であることが好ましく;Rは、
【化4】

の基であることが好ましく;yは1であることが好ましく、(y+m)は2または3、特に3であることが好ましい。
【0019】
式(I)のR、R、R、およびR基は、イソシアネートと反応性である部分を全く有さない。より特に、R、R、R、およびR基は、ヒドロキシル基、一級もしくは二級アミノ基、およびメルカプト基を全く有さない。
【0020】
式(I)のアルジミンは、例えば、少なくとも1種の下記式(III)のアミンB1と、少なくとも1種の下記式(IV)のアルデヒドALDとの反応から得ることができる:
【化5】

[式中、
は、O、S、N-R6a、またはN-R7であり、
式中、R6aは、1〜20個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個のカルボン酸エステル、ニトリル、ニトロ、ホスホン酸エステル、スルホン、もしくはスルホン酸エステル基を有していてもよい、1価の炭化水素基であるか、または
下記式(IIIa)の置換基:
【化6】

であるかのいずれかであり、
A、B、R、R、R、R、R、m、y、およびpは、それぞれ上述により定義した通りである。]
【0021】
式(III)のアミンB1と、式(IV)のアルデヒドALDとの間の反応は、水の脱離を伴う縮合反応で起きる。このような縮合反応は非常によく知られており、例えば、Houben-Weyl, 「Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry]」, vol. XI/2, 第73頁以下に記載されている。ここで、アルデヒドAは、アミンB1の一級アミノ基に対して化学量論量または化学量論過剰量で用いる。典型的には、このような縮合反応は、溶媒の存在下で、反応において生成する水を共沸除去することによって行う。しかし、式(I)のアルジミンの製造のためには、溶媒を用いない製造方法が好ましく、この場合には、縮合で生成する水を、減圧を適用することによって反応混合物から除去する。溶媒を用いない製造の結果として、製造が完了した後に溶媒を留去する必要がなく、これにより製造方法が簡略化される。加えて、これにより、このアルジミンは溶媒残渣を含まない。
【0022】
1つの実施態様において、式(I)のアルジミンに変換するために好適な下記式(IV)のアルデヒドALDは、下記式(IVa)のアルデヒドALD1である:
【化7】

(式中、R4aは、1〜30個の炭素原子を有し、場合によりエーテル酸素原子を有する炭化水素である。)
【0023】
式(IVa)のアルデヒドALD1は、脂肪族、脂環式、または芳香脂肪族(arylaliphatic)の2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒド類と、式:R4-OHのアルコール類またはフェノール類、例えば、脂肪アルコール類またはフェノールとのエーテル類である。次に、好適な2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒド類は、一級または二級び脂肪族アルデヒド(特にホルムアルデヒド)と、二級脂肪族、二級脂環式、または二級芳香脂肪族アルデヒド〔例えば、イソブチルアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、2-メチルバレルアルデヒド、2-エチルカプロンアルデヒド、シクロペンタンカルボキサルデヒド、シクロヘキサンカルボキサルデヒド、1,2,3,6-テトラヒドロベンズアルデヒド、2-メチル-3-フェニルプロピオンアルデヒド、2-フェニルプロピオンアルデヒド(ヒドラトロープアルデヒド)、またはジフェニルアセトアルデヒド〕との間のアルドール反応、特に、交差アルドール反応によって得ることができる。
【0024】
式(IVa)のアルデヒドALD1の好ましい例は、2,2-ジメチル-3-フェノキシプロパナール、3-シクロヘキシルオキシ-2,2-ジメチルプロパナール、2,2-ジメチル-3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロパナール、2,2-ジメチル-3-ラウロキシプロパナール、および2,2-ジメチル-3-ステアロキシプロパナールである。
【0025】
さらなる実施態様では、式(I)のアルジミンに変換するために好適な式(IV)のアルデヒドALDは、下記式(IVb)のアルデヒドALD2である:
【化8】

(式中、Rは、水素原子または1〜5個の炭素原子を有する炭化水素基である。)
【0026】
式(IVb)のアルデヒドALD2は、上述した2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒド類(例えば、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロパナール、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-ブタナール、2-ヒドロキシメチル-2-エチルブタナール、2-ヒドロキシメチル-2-メチルペンタナール、2-ヒドロキシメチル-2-エチルヘキサナール、1-ヒドロキシメチルシクロペンタンカルボキサルデヒド、1-ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルボキサルデヒド、1-ヒドロキシメチルシクロヘキサ-3-エンカルボキサルデヒド、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-3-フェニルプロパナール、3-ヒドロキシ-2-メチル-2-フェニルプロパナール、および3-ヒドロキシ-2,2-ジフェニルプロパナール)と、カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、およびカプロン酸など)とのエステルである。
【0027】
上述した式(IVb)のアルデヒドALD2の好ましい例は、2,2-ジメチル-3-ホルミルオキシプロパナール、3-アセトキシ-2,2-ジメチルプロパナール、2,2-ジメチル-3-プロピオノキシプロパナール、3-ブチロキシ-2,2-ジメチルプロパナール、2,2-ジメチル-3-イソブチロキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-ペンチロオキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-イソペンチロオキシプロパナール、および2,2-ジメチル-3-ヘキシロオキシプロパナールである。
【0028】
好ましい式(IV)のアルデヒドALDは、式(IVb)のアルデヒドALD2である。
【0029】
特に好ましいのは、3-アセトキシ-2,2-ジメチルプロパナールである。
【0030】
式(IV)のアルデヒドALDは、三級脂肪族アルデヒドである。このアルデヒドALD、とりわけ式(IVb)のアルデヒドALD2は、アルジミンを製造するために従来技術で典型的に用いられるアルデヒド、例えば、イソブチルアルデヒドまたはピバルアルデヒドより顕著に臭気が低い。加えて、アルデヒドALD、とりわけアルデヒドALD2は、安価な原材料から効率的に製造することができる。
【0031】
式(I)のアルジミンに変換するために好適な式(III)のアミンB1は、1個以上の脂肪族一級アミノ基と、活性水素を有する反応性基少なくとも1個とを有する。
【0032】
「脂肪族アミノ基」は、脂肪族、脂環式、または芳香脂肪族の基に結合したアミノ基を意味する。したがって、このアミノ基は、例えば、アニリンまたは2-アミノピリジンにおけるように、芳香族基またはヘテロ芳香族基に直接結合した「芳香族アミノ基」とは異なる。
【0033】
1つの実施態様では、好適な式(III)のアミンB1は、1個または2個の一級アミノ基と、1個の二級アミノ基とを有する化合物、例えば、N-メチル-1,2-エタンジアミン、N-エチル-1,2-エタンジアミン、N-ブチル-1,2-エタンジアミン、N-ヘキシル-1,2-エタンジアミン、N-(2-エチルヘキシル)-1,2-エタンジアミン、N-シクロヘキシル-1,2-エタンジアミン、4-アミノメチルピペリジン、3-(4-アミノブチル)ピペリジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、ジエチレントリアミン(DETA)、ビスヘキサメチレントリアミン(BHMT)、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルアミン;一級モノおよびジアミンのシアノエチル化またはシアノブチル化反応およびその後の水素化反応からのジ-およびトリアミン〔例えば、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N-エチル-1,3-プロパンジアミン、N-ブチル-1,3-プロパンジアミン、N-ヘキシル-1,3-プロパンジアミン、N-(2-エチルヘキシル)-1,3-プロパンジアミン、N-ドデシル-1,3-プロパンジアミン、N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン、3-メチルアミノ-1-ペンチルアミン、3-エチルアミノ-1-ペンチルアミン、3-ブチルアミノ-1-ペンチルアミン、3-ヘキシルアミノ-1-ペンチルアミン、3-(2-エチルヘキシル)アミノ-1-ペンチルアミン、3-ドデシルアミノ-1-ペンチルアミン、3-シクロヘキシルアミノ-1-ペンチルアミン、ジプロピレントリアミン(DPTA)、N3-(3-アミノペンチル)-1,3-ペンタンジアミン、N5-(3-アミノプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、N5-(3-アミノ-1-エチルプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、および脂肪ジアミン(例えば、N-ココアルキル-1,3-プロパンジアミン、N-オレイル-1,3-プロパンジアミン、N-ソヤアルキル(soyaalkyl)-1,3-プロパンジアミン、N-タロウアルキル(tallowalkyl)-1,3-プロパンジアミン、またはN-(C16-22-アルキル)-1,3-プロパンジアミン、例えば、Akzo Nobel社から商品名Duomeen(登録商標)で入手可能なものなど〕; 脂肪族一級ジ-またはトリアミンと、アクリロニトリ
ル、マレイン酸もしくはフマル酸のジエステル、シトラコン酸ジエステル、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル、アクリル-およびメタクリルアミド、ならびにイタコン酸ジエステルとを、1:1のモル比で反応させたマイケルタイプの付加反応生成物である。
【0034】
さらなる実施態様では、好適な式(III)のアミンB1は、脂肪族ヒドロキシアミン類〔例えば、2-アミノエタノール、2-メチルアミノエタノール、 1-アミノ-2-プロパノール、3-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、4-アミノ-2-ブタノール、2-アミノ-2-メチルプロパノール、5-アミノ-1-ペンタノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、7-アミノ-1-ヘプタノール、8-アミノ-1-オクタノール、10-アミノ-1-デカノール、12-アミノ-1-ドデカノール、4-(2-アミノエチル)-2-ヒドロキシエチルベンゼン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサノール〕;グリコール類(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、およびこれらのグリコールの高級オリゴマーおよびポリマーなど)の誘導体であって、1個の一級アミノ基を有するもの〔例えば、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、トリエチレングリコールモノアミン、α-(2-ヒドロキシメチルエチル)-ω-(2-アミノメチルエトキシ)ポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル)) 〕;ポリアルコキシル化されたトリヒドロキシまたはそれより多価のポリヒドロキシアルコールの誘導体であって、1個のヒドロキシル基と1個の一級アミノ基とを有するもの;グリコールのモノシアノエチル化反応およびその後の水素化反応からの生成物〔例えば、3-(2-ヒドロキシエトキシ)プロピルアミン、3-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)プロピルアミン、3-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)プロピルアミン〕である。
【0035】
さらなる実施態様では、好適な式(III)のアミンB1は、脂肪族メルカプトアミン類〔例えば、2-アミノエタンチオール(システアミン)、3-アミノプロパンチオール、4-アミノ-1-ブタンチオール、6-アミノ-1-ヘキサンチオール、8-アミノ-1-オクタンチオール、10-アミノ-1-デカンチオール、12-アミノ-1-ドデカンチオール、およびアミノチオ糖(例えば、2-アミノ-2-デオキシ-6-チオグルコースなど)〕である。
【0036】
さらなる実施態様では、好適な式(III)のアミンB1は、1個以上の一級アミノ基に加えて、活性水素を有する反応性基をさらに複数有するアミンである。例えば、以下に特定した化合物である:
− 1個以上の一級アミノ基に加えて、1個より多い二級アミノ基を有する脂肪族アミン〔例えば、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン、および直鎖ポリエチレンアミン類の高級同族体、複数の一級アミノ基を有する一級ジ-およびポリアミンの多重シアノエチル化もしくはシアノブチル化反応およびその後の水素化反応からのポリアミン〔例えば、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)1,4-ジアミノブタン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノ-1-エチルプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミンなど〕ポリビニルアミン類、ならびに、様々な重合度を有するポリエチレンイミン類(500〜1000000 g/モルの範囲の分子量範囲)、例えば、純粋な形態または水溶液としてBASF社からLupasol(登録商標)の商品名で入手できるもの(これらのポリエチレンイミン類は、一級および二級アミノ基に加えて三級アミノ基も有する。)など〕;
− 1個以上のヒドロキシル基と、1個以上の一級アミノ基とを有するヒドロキシアミン、とりわけ、ポリアルコキシル化された3価もしくはそれ以上の多価アルコールの誘導体、ポリアルコキシル化された3価もしくはそれ以上の多価アミンの誘導体、およびアミノ糖(例えば、グルコサミンまたはガラクトサミンなど);
− ヒドロキシルアミンのシアノエチル化またはシアノブチル化反応およびその後の水素化反応からの、少なくとも1個のヒドロキシル基と、少なくとも1個の二級アミノ基とを有するヒドロキシポリアミン(例えば、N-ヒドロキシエチル-1,2-エタンジアミン、N-ヒドロキシルプロピル-1,2-エタンジアミン、N-ヒドロキシエチル-1,3-プロパンジアミン、N-ヒドロキシエチル-1,3-ペンタンジアミンなど)。
【0037】
とりわけ好適なアミンB1は、一級アミノ基とは別に1個だけの活性水素を有するアミン、すなわち式(III)中の指数yが1であるアミンB1である。
【0038】
好ましいアミンB1は、N-メチル-1,2-エタンジアミン、N-エチル-1,2-エタンジアミン、N-シクロヘキシル-1,2-エタンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N-エチル-1,3-プロパンジアミン、N-ブチル-1,3-プロパンジアミン、N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン、4-アミノメチル-ピペリジン、3-(4-アミノブチル)ピペリジン、DETA、DPTA、BHMT、および脂肪族ジアミン(例えば、N-ココアルキル-1,3-プロパンジアミン、N-オレイル-1,3-プロパンジアミン、N-ソヤアルキル-1,3-プロパンジアミン、およびN-タロウアルキル-1,3-プロパンジアミンなど);脂肪族一級ジアミンと、マレイン酸およびフマル酸ジエステル、アクリル酸およびメタクリル酸エステル、アクリル-およびメタクリルアミド、好ましくはマレイン酸ジエステル(特にジメチル、ジエチル、ジプロピル、およびジブチルマレエート)およびアクリル酸エステル(特にメチルアクリレート)とを1:1のモル比で反応させて得られるマイケル型の付加反応生成物;ならびに、一級アミノ基が、少なくとも5個の原子の鎖によってまたは環によってヒドロキシル基またはメルカプト基から隔てられている脂肪族ヒドロキシルアミンおよび脂肪族メルカプトアミン〔とりわけ、5-アミノ-1-ペンタノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、およびこれらの高級同族体、4-(2-アミノエチル)-2-ヒドロキシエチルベンゼン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、トリエチレングリコールモノアミン、およびこれらの高級同族体、3-(2-ヒドロキシエトキシ)プロピルアミン、3-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)プロピルアミン、ならびに3-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)プロピルアミンなど〕である。
【0039】
特に好ましいアミンB1は、N-メチル-1,2-エタンジアミン、N-エチル-1,2-エタンジアミン、N-シクロヘキシル-1,2-エタンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N-エチル-1,3-プロパンジアミン、N-ブチル-1,3-プロパンジアミン、N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン、4-アミノメチル-ピペリジン、3-(4-アミノブチル)ピペリジン、DETA、DPTA、BHMT、脂肪族ジアミン(例えば、N-ココアルキル-1,3-プロパンジアミン、N-オレイル-1,3-プロパンジアミン、N-ソヤアルキル-1,3-プロパンジアミン、およびN-タロウアルキル-1,3-プロパンジアミンなど)、 5-アミノ-1-ペンタノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、4-(2-アミノエチル)-2-ヒドロキシエチルベンゼン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、トリエチレングリコールモノアミン、3-(2-ヒドロキシエトキシ)プロピルアミン、3-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)プロピルアミン、および3-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)プロピルアミンからなる群から選択されるアミンである。
【0040】
アルデヒドALDとアミンB1との間の反応により、用いるアミンB1がヒドロキシアミンである場合にはヒドロキシアルジミンが導かれ、用いるアミンB1がメルカプトアミンである場合にはメルカプトアルジミンが導かれ、あるいは、用いるアミンB1が、1個以上の一級アミノ基に加えて1個以上の二級アミノ基を有する2価または多価アミンである場合には、アミノアルジミンが導かれる。
【0041】
一つの態様では、式(I)のアルジミンは、XがN-R6である。このような式(I)のアルジミンは、いくつかの場合において、これまで記述した合成ルートとはわずかに異なる合成ルートによって製造することができる。この合成ルートでは、第一工程で、式(IV)のアルデヒドALDを、式:H2N-Aa-NH2 の二官能脂肪族一級アミンB2と反応させて(ここで、Aaは、2〜20個の炭素原子を有し、場合によりヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基である)、アルジミノ基に加えて一級アミノ基をも含む中間体を得る。次いで第二工程では、この中間体を、その一級アミノ基をモノアルキル化することによって式(I)のアルジミンに変換する。このアルキル化のために、特に、1個だけの活性二重結合を有し、一級アミノ基とのマイケル型の付加反応に関与しうる化合物を用いる。このような化合物を、以下、「マイケル受容体」という。
【0042】
一級アミノ基を有する前記中間体を得るためのアルデヒドALDとアミンB2との反応は、少なくとも1種のアルデヒドALDと式(III)のアミンB1との反応についてさらに上に記載したように、水の脱離を伴う縮合反応で起こる。アルデヒドALDとアミンB2との間の化学量論は、1モルのアルデヒドALDを、2個の一級アミノ基を有する式(III)のアミンB1の1モル当たりに用いるように選択する。無溶媒製造法が好ましく、その場合において、縮合で生成した水は、減圧の適用によって反応混合物から除去する。
【0043】
一級アミノ基を有する前記中間体とマイケル受容体との反応は、例えば、中間体を、化学量論量またはわずかに化学量論過剰量のマイケル受容体と混合し、中間体が式(I)のアルジミンに完全に変換されるまで、その混合物を20〜110℃の温度で加熱することによって行う。この反応は好ましくは溶媒を使用することなしに行う。
【0044】
好適なアミンB2の例は、脂肪族ジアミン、例えば、エチレンジアミン、1,2-および1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,2-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,3-および1,4-ブタンジアミン、1,3-および1,5-ペンタンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンおよびそれらの混合物(TMD)、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、2,4-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、4-アミノメチル-1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,9-ノナンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、イソデカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、メチルビス(3-アミノプロピル)アミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD)、1,3-ジアミノペンタン(DAMP)、2,5-ジメチル-1,6-ヘキサメチレンジアミン; 脂環式ジアミン、例えば、1,2-、1,3-、および1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(H12MDA)、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチル-5-メチルシクロヘキシル)メタン(M−MECA)、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(=イソホロンジアミン、すなわちIPDA)、2-および4-メチル-1,3-ジアミノシクロヘキサンおよびこれらの混合物、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-シクロヘキシルアミノ-3-アミノプロパン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDA、三井化学社製)、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,4-ジアミノ-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDA)、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン; 芳香脂肪族ジ
アミン、例えば、1,3-キシリレンジアミン(MXDA)、1,4-キシリレンジアミン(PXDA); エーテル基を含む脂肪族ポリアミン、例えば、ビス(2-アミノエチル)エーテル、3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミン、4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン、4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン、5,8-ジオキサドデカン-3,10-ジアミン、およびそれらのジアミンの高分子量オリゴマー、ならびにポリオキシアルキレンジアミンである。ポリオキシアルキレンジアミンは、典型的には、ポリオキシアルキレンジオール類のアミノ化による生成物であり、例えば、Jeffamine(登録商標)(Huntsman Chemical製)の名称、Polyetheramin(登録商標)(BASF製)の名称、またはPC Amine(登録商標)(Nitroil製)の名称で入手可能である。とりわけ好適なポリオキシアルキレンジアミンは、Jeffamine(登録商標)D-230、Jeffamine(登録商標)D-400、Jeffamine(登録商標)XTJ-511、Jeffamine(登録商標)XTJ-568、Jeffamine(登録商標)XTJ-569;Polyetheramine(登録商標)D 230、Polyetheramine(登録商標)D 400;PC Amine(登録商標)DA 250、およびPC Amine(登録商標)DA 400である.
【0045】
好ましいアミンB2は、一級アミノ基が、少なくとも5原子の鎖または環によって隔てられているジアミンであることが好ましく、特に以下のものである:
1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンおよびこれらの混合物、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,3-および1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,4-ジアミノ-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDA)、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3-および1,4-キシリレンジアミン、ならびに、上述したエーテル基を有する脂肪族ジアミンおよびポリオキシアルキレンジアミン。
【0046】
好適なマイケル受容体の例は、マレイン酸またはフマル酸のジエステル(例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル);シトラコン酸ジエステル(例えば、シトラコン酸ジメチル);アクリル酸またはメタクリル酸のエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル);イタコン酸エステル(例えば、イタコン酸ジメチル);桂皮酸エステル(例えば、桂皮酸メチル);ビニルホスホン酸ジエステル(例えば、ビニルホスホン酸ジメチル);ビニルスルホン酸エステル、特にビニルスルホン酸アリール;ビニルスルホン類;ビニルニトリル(例えば、アクリロニトリル、2-ペンテンニトリル、またはフマロニトリル);1-ニトロエチレン(例えば、β-ニトロスチレン);およびクノーブナーゲル縮合物(例えば、マロン酸ジエステルと、アルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、またはベンズアルデヒドとからの縮合物)である。マレイン酸ジエステル、アクリル酸エステル、ホスホン酸ジエステル、およびビニルニトリルが好ましい。
【0047】
式(I)のアルジミンは、式(V)においてy=1である場合についての例で示されるように、環状形と平衡にある可能性がある。これらの環状形態は、アミノアルジミンの場合には、環状アミナール、例えば、イミダゾリジンまたはテトラヒドロピリミジン;ヒドロキシアルジミンの場合には、環状アミノアセタール、例えば、オキサゾリジンまたはテトラヒドロオキサジン;メルカプトアルジミンの場合には、環状チオアミナール類、例えば、チアゾリジンまたはテトラヒドロチアジンである。
【化9】

【0048】
上記式(V)中、R、R、R、R、A、X,およびmは、それぞれ、式(I)について記述したものと同じ意味を有する。
【0049】
驚くべきことに、式(I)のほとんどのアルジミンは、環化する傾向を示さない。特にアミノアルジミンについては、IRおよびNMRスペクトル法を用いて、これらの化合物が主に開鎖(オープンチェーン)形態、すなわちアルジミンの形態で存在している一方で、環状形態、すなわちアミナールの形態は生じていないかまたは僅かに微量生じているだけであることを示すことができる。このことは、従来技術によるアミノアルジミン、例えば同6,136,942号明細書に記載されているアミノアルジミンの挙動とは対照的である:これらは実際に、主として環状アミナール形で存在する。一級アミノ基が、少なくとも5原子の鎖または環によって、ヒドロキシル基またはメルカプト基から隔てられているヒドロキシアルジミンおよびメルカプトアルジミンも、ほとんど環化を示さない。式(I)のアルジミンにおける環状構造の実質的な不存在は、とりわけ、イソシアネート含有組成物中でのそれらの使用に関して利点であると考えられる。なぜなら、これらのアルジミンは、アミナール、オキサゾリジン、およびチオアミナールに存在し且つイソシアネート含有組成物の貯蔵寿命を短くし得る塩基性窒素原子を実質的に有さないからである。
【0050】
式(I)のアルジミンは、適切な条件下、特に水分の不存在下で貯蔵安定である。水分が侵入すると、アルジミノ基が形式的に中間体を経てアミノ基に加水分解され、式(I)のアルジミンの製造のために用いた対応するアルデヒドALDが遊離する。この加水分解反応は可逆的であり、化学平衡は明らかにアルジミン側にあるので、アミンに対して反応性の基の不存在下では、アルジミノ基のわずかに一部しか加水分解を起こさないと推測される。
【0051】
式(I)のアルジミンは、これらのアルジミノ基(aldimino group)に関して三級の構造を有している。したがって、これらは、アルジミノ基のα位の炭素原子上に水素原子を全く有さない。したがって、これらのアルジミノ基は、エナミノ基に異性化することができず、立体障害がある。これらの性質に起因して、加水分解されていない形態で、これらはほとんどの化合物、例えばエポキシドおよびイソシアネートに対して不活性である。
【0052】
三級構造を有する公知のアルジミン、例えば、ピバルアルデヒドから誘導されたアルジミンと比較して、式(I)のアルジミンは、臭気が低く、多くの用途、とりわけ、密閉空間で組成物が高温でスプレーまたは塗布される用途において非常に有利である。これらは、ポリマーシステム、とりわけポリウレタンとの相溶性が良好であり、安価な原材料から簡単な方法における製造性が良好である。
【0053】
式(I)のアルジミンは広範囲に利用することができる。主として、これらは式(IV)のアルデヒドALDまたは式(III)のアミンB1の供給源として作用しうる。より詳細には、アルデヒド反応性および/またはアミン反応性システム中で、保護されたアミンまたは保護されたアルデヒドの役割において利用することができ、必要な場合に、制御された方法でそのシステム中で脱保護することができる。より詳細には、これらは、一級アミン類と反応する化合物が存在するシステム中での用途を有する。脱保護は加水分解によって、例えば、水または湿分、特に大気中の湿気と接触させることによって行われる。
【0054】
第二に、式(I)のアルジミンは、式(I)のアルジミンがさらに官能化された反応生成物の合成における用途を有する。例えば、式(I)のアルジミンを、活性水素を有するHX基と反応する化合物と反応、特に付加反応させることができる。付加反応を起こす好適なこの種の化合物は、反応性基、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、シラン基、無水物基、または多少高度に活性化された二重結合もしくは三重結合、例えば、(メタ)アクリレート基、アクリルアミド基、1-エチニルカルボニルもしくは1-プロピニルカルボニル基、マレイミドもしくはシトラコンイミド基、ビニルもしくはイソプロペニル基、またはアリル基などを有する。このような付加反応からの反応生成物は、アルジミノ基を有しており、必要に応じて、式(IV)のアルデヒドALDおよび一級アミノ基を有する化合物に加水分解され得、次いでさらなる反応、例えば架橋反応を起こす。
【0055】
アルジミノ基を二級アミノ基に還元することによって、式(I)のアルジミン、または上述した式(I)のアルジミンとの付加反応からの反応生成物は、例えば、イソシアネートおよび/またはエポキシドを含有する組成物のための硬化剤として次に使用することができる特別な二級アミノ基を有する化合物の合成にも役立ち得る。
【0056】
加えて、式(I)のアルジミンを用いて、例えば、反応性ポリマー組成物、とりわけイソシアネート基を有するポリウレタン組成物のための、潜在的硬化剤またはコモノマーとして好適なアルジミノ基含有化合物を製造することができる。
【0057】
式(I)のアルジミンは、イソシアネートもしくはエポキシ樹脂に基づく組成物、とりわけ、例えば、接着剤、シーリング材、ポッティング組成物、コーティング剤、床仕上げ材、塗料、ラッカー、プライマー、またはフォームなどの用途のための組成物の構成成分として特に好適である。このような組成物は、少なくとも1種の酸、とりわけ有機カルボン酸もしくはスルホン酸、またはこれらの酸に加水分解される化合物を含むことが好ましく、これらの酸は、アルジミノ基の加水分解を触媒する。
【0058】
式(I)のアルジミンは、とりわけ、1成分形または2成分形の湿気硬化性ポリウレタン組成物(例えば、接着剤、シーリング材、ポッティング組成物、コーティング剤、床仕上げ材、塗料、ラッカー、プライマー、またはフォームなど)のための硬化剤もしくは硬化剤の前駆体として好適であり、かつ、迅速に硬化する反応性ポリウレタンホットメルト接着剤であってイソシアネートモノマーの含有量が低いものの製造に好適である。
【0059】
水分が浸入すると、このような組成物中に存在するイソシアネート基が、式(I)のアルジミンのアルジミノ基の加水分解によって形式的な意味で放出される一級アミノ基と反応して、アルデヒドALDを放出する。アルジミノ基に対して過剰のイソシアネート基は、水分と直接反応する。この反応の結果として、組成物は最終的に硬化する:この過程は、架橋とも呼ばれる。イソシアネート基と加水分解されたアルジミノ基との反応は、必ずしも遊離のアミノ基を介して進行することを要さない。加水分解反応の中間体との反応も可能であることを理解されたい。例えば、加水分解中のアルジミノ基が、へミアミナールの形態で、イソシアネート基と直接反応することが考えられる。
【0060】
本発明はさらに、少なくとも1種の式(I)のアルジミンと、HX基との付加反応に参入可能な反応性基を1個以上有する少なくとも1種の化合物Dとの反応からの付加生成物である、アルジミノ基含有化合物AVを提供する。式(I)のアルジミンのHX基は、化合物Dの少なくとも1個の反応性基と付加反応して、アルジミノ基を有する化合物AVを生成する。
【0061】
この反応のために、式(I)において指数yが1の値であるアルジミンを用いることが好ましい。
【0062】
この反応を化学量論的に、すなわち、化合物Dの反応性基1モル当量当たり、式(I)のアルジミンの活性水素1モル当量で行う場合、これらの反応性基が完全に転化される結果として、得られるアルジミノ基含有化合物AVはポリアルジミンである。こうして、ポリアルジミンを、簡単な方法で、これらの製造のために対応する一級ポリアミン(これらは、技術的および商業的な理由で限られた範囲でしか入手可能でない)を用いることを要さずに得ることができる。化合物Dの、および式(I)のアルジミンの、構造、官能性、および分子量に応じて、これらのポリアルジミンは非常にさまざまな特性を有し得る;したがって、これらを特定用途の要求に合わせることができる。これらのポリアルジミンは、とりわけ、イソシアネート基を有する組成物のための潜在的硬化剤として適している。
【0063】
式(I)のアルジミンと化合物Dとの化学量論的な反応によって、1個以上のアルジミノ基に加えて、多重反応を起こし得る1個以上の他の反応性基を有するアルジミノ基含有化合物AV(いわゆるヘテロ官能性化合物AV)を製造することもできる。この場合、式(I)のアルジミンの活性水素の1モル当量未満を、化合物Dの反応性基の1モル当量に用いる。化合物Dそれ自体は、ホモまたはヘテロ官能性であってよい。このようなヘテロ官能性化合物AVは、例えば、反応性ポリマー組成物のためのコモノマーまたは潜在的硬化剤として用いることができ;あるいは、ヘテロ官能性化合物AVが、少なくとも1個のアルジミノ基に加えて、加水分解されたアルジミノ基と反応して複数の分子を連結することができる少なくとも1個の反応性基を有する場合には、反応性ポリマー組成物自体としても用いることができる。このことは、とりわけ、イソシアネート基を有するアルジミノ基含有化合物AVの場合に当てはまる。
【0064】
好適な化合物Dは、化合物Dの反応性基が、イソシアネート、イソチオシアネート、シクロカーボネート(環状カーボネート)、エポキシド、エピスルフィド、アジリジン、アクリロイル、メタクリロイル、1-エチニルカルボニル、1-プロピニルカルボニル、マレイミド、シトラコンイミド、ビニル、イソプロペニル、およびアリル基からなる群から選択される物質である。ここで、個々の反応性基は互いに同じであっても異なっていてもよい。イソシアネート、エポキシド、アクリロイル、マレイミド、ビニル、イソプロペニル、およびアリル基が好ましい。
【0065】
好適な化合物Dの例は以下の通りである。
− 二官能性または多官能の、モノマーおよび/またはオリゴマー性の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、および芳香族のポリイソシアネート〔例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2-メチルペンタメチレン-1,5-ジイソシアネート、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート(TMDI)、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、リジンおよびリジンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-および1,4-ジイソシアネートおよびこれらの異性体の任意の所望の混合物、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン (=イソホロンジイソシアネート、すなわちIPDI)、パーヒドロ-2,4'-および4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、1,4-ジイソシアナト-2,2,6,-トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m-およびp-キシリレンジイソシアネート(m-およびp-XDI)、 1,3,5-トリス(イソシアナトメチル)ベンゼン、m-およびp-テトラメチルキシレン-1,3-および1,4-ジイソシアネート(m-およびp-TMXDI)、ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ナフタレン、α, α, α’, α,’ α’’, α’’-ヘキサメチル-1,3,5-メシチレントリイソシアネート、脂肪酸イソシアネートダイマーおよびトリマー〔例えば、3,6-ビス(9-イソシアナトノニル)-4,5-ジ(1-ヘプテニル)シクロヘキセン(ジメリルジイソシアネート)、2,4-および2,6-トリレンジイソシアネートならびにこれらの異性体の任意の所望の混合物(TDI)、4,4’-、2,4’-および2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートならびにこれらの異性体の任意の所望の混合物(MDI)、MDIおよびMDI同族体の混合物(MDIポリマーすなわちPMDI)、1,3-および1,4-フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ジイソシアナトベンゼン、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニル(TODI)、トリス(4-イソシアナトフェニル)メタン、トリス(4-イソシアナト
フェニル)チオホスフェート;ウレトジオン、イソシアヌレート、またはイミノオキサジアジンジオン基を含む、これらのイソシアネートのオリゴマー;エステル、尿素、ウレタン、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトンイミン、またはオキサジアジントリオン基を含む、修飾された二官能および多官能イソシアネート;ならびに、イソシアネート含有ポリウレタンポリマー、すなわち、ポリイソシアネートと、2つ以上のヒドロキシル基を有する物質(いわゆる「ポリオール」、例えば、二官能もしくは多官能のアルコール、グリコール、またはアミノアルコール、ポリヒドロキシ官能性の、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、またはポリ炭化水素、とりわけポリエーテル)との反応生成物であって1個より多いイソシアネート基を有するもの;
− 二官能性または多官能エポキシド(ポリエポキシド)、例えば、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、ポリヒドロキシ脂肪族および脂環式アルコール〔例えば、1,4-ブタンジオール、ポリプロピレングリコール、および2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンなど〕のポリグリシジルエーテル;多価フェノールのポリグリシジルエーテル〔多価フェノールは、例えば、レゾルシノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、酸性条件下で得られるフェノールとホルムアルデヒドとの縮合生成物(例えば、フェノールノボラックおよびクレゾールノボラックなど)〕、ならびに、これらのアルコールおよびフェノールで、またはポリカルボン酸(例えば、脂肪酸ダイマーまたはその混合物)で、予備伸長させたポリグリシジルエーテル;多塩基カルボン酸(例えば、フタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、およびヘキサヒドロフタル酸)のポリグリシジルエステル;アミン、アミド、およびヘテロ環窒素塩基のN-グリシジル誘導体〔例えば、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、N,N,O-トリグリシジル-4-アミノフェノール、N,N,N’,N’-テトラグリシジルビス(4-アミノフェニル)メタン、トリグリシジルシアヌレート、およびトリグリシジルイソシアヌレート〕;
− アクリロイル、メタクリロイル、またはアクリルアミド基を有する二官能性または多官能化合物〔例えば、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)シアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、N,N’,N’’-トリス(メタ)アクリロイルパーヒドロトリアジンなど〕; 脂肪族ポリエーテル、ポリエステル、ノボラック、フェノール、脂肪族または脂環式のアルコール、グリコール、およびポリエステルグリコール、ならびに、前記の化合物のモノ-およびポリアルコキシル化誘導体の二官能性または多官能アクリレートおよびメタクリレート〔例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート〕; 2以上の官能性を有する、アクリロイルまたはメタクリロイル官能性のポリブタジエン、ポリイソプレンまたはこれらのブロックコポリマー;二官能または多官能エポキシド(例えば、上述したエポキシドなどの)と、アクリル酸およびメタクリル酸との付加体; 二官能または多官能ポリウレタン(メタ)アクリレート; 二官能または多官能アクリルアミド(例えば、N,N’-メチレンビスアクリルアミドなど);
【0066】
− 1-エチニルカルボニルまたは1-プロピニルカルボニル基を有する二官能または多官能化合物;
− マレイミドまたはシトラコンイミド基を有する二官能または多官能化合物、例えば、脂肪族、脂環式、または芳香族のジ-およびポリアミンと、マレイン酸無水物またはシトラコン酸無水物とのビス-およびポリマレイミド、〔例えば、α,ω-ダイマー脂肪酸ビス(マレイミド)、4,4’-ジフェニルメタンビス(マレイミド)、1,3-キシリレンビス(シトラコンイミド); アミノ末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー(例えば、Noveon社からHycar(登録商標)ATBNの名称で入手可能)とマレイン酸無水物またはシトラコン酸無水物とのビス-およびポリマレイミド; ジ-およびポリイソシアネートとN-ヒドロキシエチルマレイミドとの二官能または多官能付加体; 2価または多価アルコールと6-マレイミドヘキサン酸とのエステル;
− ビニル基および/またはイソプロペニル基を有する二官能または多官能化合物、例えば、1,3-および1,4-ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、クロトン酸ビニル、ジアリリデンペンタエリスリトールアセタール、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、および1,3,5-トリイソプロペニルベンゼン、3-(2-ビニルオキシエトキシ)スチレン、ジビニルジメチルシラン、トリビニルメチルシラン、トリビニルメトキシシラン、ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジフェニル-1,3-ジメチルジシロキサン、1,3-ジビニルテトラエトキシジシロキサン、トリビニルペンタメチルトリシロキサン、4-ビニルオキシブトキシトリビニルシラン、トリス(4-ビニルオキシブトキシ)ビニルシラン; 2または多官能ビニルおよびイソプロペニルエーテル、例えば、ジビニルエーテル、イソプロペニルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、オクタデカンジオールジビニルエーテル、脂肪酸ダイマージオールジビニルエーテル、およびジビニルブチラール; ジカルボン酸のジビニルエステル、例えば、アジピン酸ジビニル;
− アリル基を有する二官能または多官能化合物、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート; アルコールおよびグリコールならびにこれらのモノおよびポリアルコキシル化誘導体の二官能または多官能アリルエーテル、例えば、1,4-ビス(アリルオキシ)ブタン、1,6-ビス(アリルオキシ)ヘキサン、トリエチレングリコールジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、3,3’-ジアリルビスフェノールAジアリルエーテル、3,3’-ジアリルビスフェノールA、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリルトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル; カルボン酸の二官能または多官能アリルエステルおよびアリルアミド、例えば、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレートおよびテレフタレート、ジアリルオキサレート、ジアリルセバケート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート; 二官能アリルカーボネート、例えば、ジアリルカーボネート、ジ-およびトリエチレングリコールビス(アリルカーボネート); ジおよびポリイソシアネートとグリシドール、アリルアルコール、またはアリルグリコールとの二官能または多官能付加体、例えば、1,6-ヘキサメチレンビス(アリルカルバメート);
− および、ヘテロ官能性の二官能または多官能化合物、すなわち、上述したものの中から少なくとも2種の異なる反応性基を有する二官能または多官能化合物、例えば、4-アリルオキシフェニルイソシアネート、1-アルケニルイソシアネート(例えば、ビニルイソシアネート、プロペニルイソシアネート、およびイソプロペニルイソシアネート)、2-イソシアナトエチルメタクリレート、1,2-ジメチル-3-イソシアナトプロピルアクリレート、p-イソシアナトスチレン、m-およびp-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート(m-およびp-TMI)、m-およびp-エテニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、イソプロペニル-α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、グリシジルアリルエーテル、グリシドキシトリビニルシラン、トリグリシドキシビニルシラン、N-(トリビニルシリルオキシメチル)マレイミド; ジ-およびポリイソシアネートと、グリシドール、アリルアルコール、アリルグリコール、N-ヒドロキシエチルマレイミド、ヒドロキシ官能性アクリレートおよびメタクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレートおよびメタクリレート)とのヘテロ官能性付加体; ジおよびポリイソシアネートのモノおよびポリカルボジイミドとアクリルまたはメタクリル酸とのヘテロ官能性付加体; 二官能または多官能エポキシドと、アクリルまたはメタクリル酸、ビニルアリルエーテル、エチレングリコールビニルアリルエーテル、ビニルアリルフタレート、エチレングリコール2-アリルフェニルビニルエーテル、アリル(メタ)アクリレート、ビニルアクリレート、2-ビニルオキシエチル(メタ)アクリレートとのヘテロ官能性付加体。
【0067】
特に好適な化合物Dは、二官能または多官能の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、および芳香族のイソシアネート、例えば、上述したポリイソシアネートモノマーおよびオリゴマー、ならびにポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物(これらの反応生成物は1個以上のイソシアネート基を有する)であり、ここで、ポリオールは、特に、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ炭化水素系ポリオール、およびこれらのポリオールの混合物である。
【0068】
化合物Dの反応性基と、活性水素を有する式(I)のアルジミンの反応性基とに応じて、アルジミノ基含有化合物AVへと導く付加反応は、求核的またはフリーラジカル的に進行し得る。簡単にするために、本明細書中の「付加反応」の用語は、例えば、エポキシドと求核剤によって起こる開環置換反応も含み、なぜなら、別の分子として求核剤を遊離しないこれらの置換反応の結果は、付加反応と等価だからである。活性水素を有するアルジミンの反応性基が化合物Dの求電子反応性基を攻撃することによって求核剤として作用する場合、例えば、アミノ基またはヒドロキシル基がイソシアネート基を攻撃する場合は、この付加反応は求核的に進行する。アクリレート基へのメルカプト基の反応は、フリーラジカル付加反応の例として挙げることができ、フリーラジカル開始剤が、この種の付加反応には通常必要とされる。
【0069】
アルジミノ基含有化合物AVを得るための式(I)のアルジミンと化合物Dとの間の反応は、それぞれの反応に関与する反応性基の間の反応に典型的に用いられる公知の条件下、例えば、20〜100℃で行う。この反応は、溶媒を用いて、あるいは好ましくは溶媒の不存在下で行う。適切な場合には、補助剤、例えば、触媒、開始剤、または安定化剤などを用いることができる。アミノアルジミンについては、イソシアネートとの反応は、室温でかつ触媒なしで行うことが好ましい。ヒドロキシおよびメルカプトアルジミンについては、40〜100℃で、イソシアネートとアルコールとの間のウレタン化反応に用いられる触媒、例えば、有機錫化合物、ビスマス錯体、三級アミン化合物、またはこのような触媒の組み合わせを用いて行うことが好ましい。
【0070】
本明細書において「室温」は、25℃を表す。
【0071】
上述した方法で得られるアルジミノ基含有化合物AVは、式(I)のアルジミン同様に、適切な条件下、特に水分の不存在下で、貯蔵安定である。アルジミノ基に加えて多重反応に利用可能な追加の反応性基を有するヘテロ官能性アルジミノ基含有化合物AVは、これらが、例えば、熱またはUV照射などの、これらの反応性基の反応を誘発する因子から遠ざけられている場合は、貯蔵安定である。
【0072】
水分が侵入すると、アルジミノ基含有化合物AVのアルジミノ基が、形式的な意味で中間体を経てアミノ基に加水分解され、このアルジミンの製造に用いた対応するアルデヒドALDが遊離する。この加水分解反応は可逆的であり、化学平衡は明らかにアルジミン側にあるので、アミンに対する反応性の基の不存在下では、アルジミノ基のほんのわずかだけしか部分的または完全に加水分解を受けないと考えられる。アミンに対して反応性の基、特にイソシアネート基を含むヘテロ官能性アルジミノ基含有化合物AVの特別な場合には、加水分解されるアルジミノ基は、対照的に、さらに例えばイソシアネート基と反応して、尿素基を生成する。この場合には、結果としてヘテロ官能性アルジミノ基含有化合物AVの架橋が起こり、さらなる物質の関与なしに、硬化ポリマー組成物に直接導くこともできる。アミノ基に対して反応性の基と、加水分解されたアルジミノ基との反応は、必ずしもアミノ基を経由することを要さない。加水分解反応の中間体との反応が可能であることを理解されたい。例えば、加水分解中のアルジミノ基が、ヘミアミナールの形態で、アミンに対して反応性の基と直接反応することが考えられる。
【0073】
アルジミノ基含有化合物AVは、広範囲に利用することができる。主として、これらは、加水分解においてアルジミノ基含有化合物AVから生じる、式(IV)のアルデヒドALDまたは式(III)のアミンの供給源としてこれらが作用し得るあらゆる場合に利用することができる。より詳細には、これらは、アルデヒド反応性および/またはアミン反応性システム中で、保護されたアミンまたは保護されたアルデヒドの役割において利用することができ、必要に応じて脱保護することができる。より詳細には、これらは、一級アミン類と反応する化合物が存在するシステム中での用途を有する。脱保護は加水分解によって、例えば、水または湿分、特に大気中の湿気と接触させることによって行われる。
【0074】
他方では、アルジミノ基含有化合物AVは、化合物Dにも存在するような反応性基を含むポリマー組成物中での用途を有する。
【0075】
アルジミノ基含有化合物AVは、イソシアネート基を有し、湿気の作用下で架橋するポリウレタン組成物の構成成分としてとりわけ好適である。アルジミノ基含有化合物AVを含むこのようなポリウレタン組成物は、1成分形であっても2成分形であってもよい。これらは、接着剤、シーリング材、ポッティング組成物、コーティング剤、床仕上げ材、塗料、ラッカー、プライマー、またはフォームとして好適であり、かつ、迅速に硬化する反応性ポリウレタンホットメルト接着剤であってイソシアネートモノマーの含有量が低いものとしても好適である。
【0076】
アルジミノ基含有化合物AVの好ましい実施態様は、下記式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1である:
【化10】

[式中、
uは、0、1、2、3、4、または5であり、
vは、1、2、3、4、5、または6であり、
但し、(u+v)は、2、3、4、5、または6であり;
Qは、(u+v)個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートから全てのイソシアネート基を取り除いた後の基であり;
A’は、2〜20個の炭素原子を有し、場合によりヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素であるか、または
7’と一緒になって、3〜20個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個のヘテロ原子、特にエーテル酸素または三級アミン窒素の形態のヘテロ原子を有していてもよい3価の炭化水素であるかのいずれかであり;
X’は、O、S、N-R6’、またはN-R7’であり、
式中、R6’は、1〜20個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個のカルボン酸エステル、ニトリル、ニトロ、ホスホン酸エステル、スルホン、またはスルホン酸エステル基を含んでいてもよい1価の炭化水素基であるか、または
下記式(II’)の置換基:
【化11】

(式中、
B’は、2〜20個の炭素原子を有し、場合によりヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基である。)
であるかのいずれかであり、かつ
7’は、A’と一緒になって、3〜20個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個のヘテロ原子、特にエーテル酸素または三級アミン窒素の形態のヘテロ原子を有していてもよい3価の炭化水素基であり、
、R、R、およびR基は、それぞれ上述により定義した通りである。]
【0077】
本明細書中、「ポリ」で始まる物質名、例えば、ポリイソシアネートまたはポリオールは、形式的な意味において、1分子当たり、それらの名称中にある官能基を2個以上有する物質を意味する。
【0078】
式(VI)において、RおよびRは、好ましくはそれぞれメチルであり、Rは、好ましくは水素原子であり、Rは、好ましくは
【化12】

の基であり、式中、Rは、既に定義した通りである。
【0079】
式(VI)のアルジミン基含有化合物AV1は、少なくとも1種の下記式(VII)のポリイソシアネートと、活性水素を1個だけ有する少なくとも1種の下記式(VIII)のアルジミンとの反応によって得ることができる。
【化13】

【0080】
式(VII)および式(VIII)において、Q、u、v、X’、A’、R、R、R、およびRは、それぞれ上述により定義した通りである。
【0081】
1つの実施態様において、好適な式(VII)のポリイソシアネートは、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPUPである。
【0082】
本明細書中、用語「ポリマー」は、第一に、化学的には均一であるが、重合度、分子量、および鎖長に関して異なり、多重反応(重合、重付加、重縮合)によって製造される高分子の集合体を包含する。
【0083】
この用語は、第二に、このような多重反応からの巨大分子の集合体の誘導体、すなわち、所与の高分子の官能基の反応(例えば付加または置換)によって得られ、化学的に均一であっても不均一であってもよい化合物をも包含する。この用語は、プレポリマーとして知られるもの、すなわち、反応性のオリゴマー性予備付加体であってその官能基が高分子の形成に関与するものもさらに含む。
【0084】
用語「ポリウレタンポリマー」は、ジイソシアネート重付加工程として公知の方法によって製造された全てのポリマーを包含する。この用語は、ウレタン基が実質的にまたは全く存在しないポリマーも含む。ポリウレタンポリマーの例は、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレア、ポリウレア、ポリエステルポリウレア、ポリイソシアヌレート、およびポリカルボジイミドである。
【0085】
好適なイソシアネート基含有ポリウレタンポリマーPUPは、少なくとも1種のポリオールと少なくとも1種のポリイソシアネートとの反応によって得ることができる。
【0086】
ポリウレタンポリマーPUPの製造のためのポリオールは、例えば、以下の市販されているポリオール、またはこれらの任意の所望の混合物であってよい:
− ポリエーテルポリオール、これらはポリオキシアルキレンポリオールまたはオリゴエーテロールともいわれ、これらは、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,2-または2,3-ブチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、またはこれらの混合物の重合生成物であり、2個以上の活性水素原子を有する開始剤分子の助けを借りて重合することができ、この開始剤は、例えば、水、アンモニア、または複数のOHまたはNH基を有する化合物、例えば、1,2-エタンジオール、1,2-および1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールの異性体類、ブタンジオール異性体類、ペンタンジオール異性体類、ヘキサンジオール異性体類、ヘプタンジオール異性体類、オクタンジオール異性体類、ノナンジオール異性体類、デカンジオール異性体類、ウンデカンジオール異性体類、1,3-および1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール、アニリン、および前述の化合物の混合物である。不飽和度(ASTM D-2849-69に準拠して測定し、ポリオール1g当たりのミリ当量不飽和度(mEq/g)で表されるもの)が低いポリオキシアルキレンポリオール〔これは、例えば、ダブルメタルシアニド錯体触媒(DMC触媒)の助けを借りて製造される〕、またはより高い不飽和度を有するポリオキシアルキレンポリオール〔これは、例えば、アニオン触(例えば、NaOH、KOH、CsOH、またはアルカリ金属アルコラートなど)の助けを借りて製造される〕のいずれかを用いることができる。
【0087】
特に好適なポリエーテルポリオールは、ポリオキシアルキレンジオールおよびトリオール、とりわけポリオキシアルキレンジオールである。特に好ましいポリオキシアルキレンジ-およびトリオールは、ポリオキシエチレンジ-およびトリオール、ならびにポリオキシプロピレンジ-およびトリオールである。
【0088】
特に好適なポリオキシプロピレン-ジオールおよびトリオールは、0.02mEq/g未満の不飽和度を有し且つ1000〜30000g/molの範囲の分子量を有する。さらに、400〜8000g/molの分子量を有するポリオキシプロピレン-ジオールおよびトリオールも好ましい。本明細書では、「分子量」または「モル質量」は、常に、平均分子量Mを意味すると理解されたい。とりわけ好適なものは、不飽和度が0.02mEq/g未満であり、かつ、1000〜12000g/molの範囲、とりわけ1000〜8000g/molの範囲の分子量を有するポリオキシプロピレンジオールである。このようなポリエーテルポリオールは、例えば、Bayer社からAcclaim(登録商標)の名称で販売されている。
【0089】
同様に、特に好適なものは、いわゆる「EO末端キャップ」(エチレンオキシドで末端キャップされた)ポリオキシプロピレン-ジオールまたはトリオールである。後者は、例えば、純粋なポリオキシプロピレンポリオールを、ポリプロポキシル化反応の完了時に、エチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られ、この結果、一級ヒドロキシル基を有する。
− スチレン/アクリロニトリル、およびアクリロニトリル/メチルメタクリレートグラフト化ポリエーテルポリオール。
− ポリエステルポリオール、これはオリゴエステロールとしても知られ、公知の方法、特に、ヒドロキシカルボン酸の重縮合、または脂肪族および/または芳香族ポリカルボン酸と2価または多価アルコールとの重縮合によって製造される。
【0090】
特に好適なポリエスエルポリオールは、2価または3価、特に3価アルコール〔例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,12-ヒドロキシステアリルアルコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、脂肪酸ダイマージオール(ダイマージオール)、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステル、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン、またはこれらのアルコール類の混合物〕から、有機ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、特に、ジカルボン酸、またはこれらの無水物もしくはエステル類〔例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、ダイマー脂肪酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、およびトリメリット酸無水物、またはこれらの酸の混合物〕を用いて製造されるポリエステルポリオール、並びにまた、ラクトン類(例えばε-カプロラクトン)から、開始剤(例えば、上述した2価または3価アルコール類)を用いて形成されるポリエステルポリオールである。
【0091】
特に好適なポリエステルポリオールは、ポリエステルジオールである。特に好適なポリエステルジオールは、ジカルボン酸としての、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、脂肪酸ダイマー、フタル酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸と、2価アルコールとしての、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、脂肪酸ダイマージオール、および1,4-シクロヘキサンジメタノールとから製造されるものである。さらに特に好適なものは、ε-カプロラクトンと、開始剤としての上述した2価アルコール類の1種とから製造されるポリエステルジオールである。
【0092】
特に好適な物質は、室温で液状、非晶質、部分的結晶性、および結晶性のポリエステルジオールおよびトリオール、特にポリエステルジオールである。好適な室温液状ポリエステルポリオールは、室温からそう低くない、例えば、0℃〜25℃の温度で固体であり、且つ少なくとも1種の非晶質、部分的結晶性、または結晶性のポリエステルポリオールと組み合わせて用いることが好ましい。
− ポリカーボネートポリオール。例えば、上述したアルコール(ポリエステルポリオール類を形成するために用いるもの)と、ジアルキルカーボネート(例えば、ジメチルカーボネート、ジアリールカーボネート、例えば、ジフェニルカーボネートなど)またはホスゲンとを反応させることによって得ることができる。
【0093】
特に好適な物質は、ポリカーボネートジオール、特に非晶質のポリカーボネートジオールである。
− ポリオールとして同様に好適なものは、少なくとも2つのヒドロキシル基を有し、且つ上述したタイプのポリエーテル、ポリエステル、および/またはポリカーボネート構造をもつ少なくとも2種の異なるブロックを有するブロックコポリマーである。
− ポリアクリレート-およびポリメタクリレートポリオール。
− ポリヒドロキシ官能性の脂肪および油、例えば、天然油脂、特にひまし油;または油脂化学ポリオールとして公知のポリオール類であって天然油脂の化学的改質によって得られるもの(例えば、不飽和油のエポキシ化反応およびその後のカルボン酸またはアルコールを用いる開環反応によって得られるエポキシポリエステルまたはエポキシポリエーテルなど)、または、不飽和油のヒドロホルミル化反応および水素化反応によって得られるポリオール類;あるいは、分解過程(例えばアルコール分解またはオゾン分解)とそれに続く化学結合(例えば、分解生成物またはそれらの誘導体のエステル交換もしくは二量化)によって、天然油脂から得られるポリオール類。天然油脂の好適な分解生成物は、特に脂肪酸および脂肪アルコール、ならびに脂肪酸エステル、特にそのメチルエステル(FAME)であり、これらは例えばヒドロホルミル化および水素化によってヒドロキシ脂肪酸エステルへと誘導することができる。
− ポリ炭化水素ポリオール(オリゴハイドロカーボノールとしても知られる)。例えば、ポリヒドロキシ官能性のエチレン-プロピレン、エチレン-ブチレン、またはエチレン-プロピレン-ジエンコポリマー類(例えば、Kraton Polymers社によって製造されているもの)、あるいは、ジエン(例えば、1,3-ブタジエンまたはジエン混合物)とビニルモノマー類(例えば、スチレン、アクリロニトリル、またはイソブチレン)とのポリヒドロキシ官能性コポリマー類、あるいは、ポリヒドロキシ官能性ポリブタジエンポリオール類(例えば、1,3-ブタジエンとアリルアルコールとの共重合によって製造され、水素化されていてもよいもの)。
− ポリヒドロキシ官能性アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー類。例えば、エポキシド類またはアミノアルコール類とカルボキシル末端アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー類(Hanse Chemie社からHycar(登録商標)CTBN名で市販されている)とから製造することができる。
【0094】
言及したこれらのポリオールは、250〜30000g/モル、特に400〜20000g/モルの平均分子量を有することが好ましく、かつ、1.6〜3の範囲の平均OH官能数を有することが好ましい。
【0095】
言及したこれらのポリオールに加えて、少量の低分子量の2価または多価アルコール類(例えば、1,2-エタンジオール、1,2-および1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールの異性体類、ブタンジオールの異性体類、ペンタンジオールの異性体類、ヘキサンジオールの異性体類、ヘプタンジオールの異性体類、オクタンジオールの異性体類、ノナンジオールの異性体類、デカンジオールの異性体類、ウンデカンジオールの異性体類、1,3-および1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、ダイマー脂肪アルコール類、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、前述した2価および多価アルコール類の低分子量アルコキシル化生成物、ならびに前述したアルコール類の混合物など)を、ポリウレタンポリマーPUPの製造に追加的に用いることができる。
【0096】
ポリウレタンポリマーPUPの製造に用いるポリイソシアネートは、市販の脂肪族、脂環式、または芳香族のポリイソシアネート、特にジイソシアネートであってよく、例えば以下のものであってよい:
【0097】
1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2,2,4-および2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,10-デカメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、およびリシンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン1,3-および1,4-ジイソシアネートおよびこれらの異性体の任意の所望の混合物、1-メチル-2,4-および2,6-ジイソシアナトシクロヘキサンおよびこれらの異性体の任意の所望の混合物(HTDIまたはHTDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(= イソホロンジイソシアネートすなわちIPDI)、パーヒドロ-2,4’-および4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDIまたはH12MDI)、1,4-ジイソシアナト-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m-およびp-キシリレンジイソシアネート(m-およびp-XDI)、m-およびp-テトラメチル-1,3-および1,4-キシリレンジイソシアネート(m-およびp-TMXDI)、ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ナフタレン、2,4-および2,6-トリレンジイソシアネートおよびこれらの異性体の任意の所望の混合物(TDI)、4,4’-, 2,4’-および2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよびこれらの異性体の任意の所望の混合物(MDI)、1,3-および1,4-フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ジイソシアナトベンゼン、ナフタレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニル(TODI)、ジアニシジンジイソシアネート(DADI)、前述したイソシアネート類のオリゴマーおよびポリマー、ならびに前述したイソシアネート類の任意の所望の混合物。ジイソシアネートモノマー、特に、MDI、TDI、HDI、およびIPDIが好ましい。
【0098】
ポリウレタンポリマーPUPは、ポリイソシアネートとポリオールとから直接に、または鎖延長反応としても知られている種類の段階的付加法により、公知の方法で製造される。
【0099】
好ましい実施態様では、ポリウレタンポリマーPUPは、少なくとも1種のポリイソシアネートと少なくとも1種のポリオールとの反応によって、そのイソシアネート基をそのヒドロキシル基に対して化学量論的に過剰に存在させて製造する。イソシアネート基とヒドロキシル基との間の比は、1.3〜5、より特に1.5〜3が有利である。
【0100】
この反応は、有利には、用いるポリオールおよびポリイソシアネートと、生成するポリウレタンポリマーとが液状形態で存在する温度にて行う。
【0101】
ポリウレタンポリマーPUPは、好ましくは、500g/モルを超える分子量、特に1000〜50000g/モル、好ましくは2000〜30000g/モルの分子量を有する。
【0102】
さらに、ポリウレタンポリマーPUPは、1.8〜3の範囲の平均官能基数を有することが好ましい。
【0103】
1つの実施態様では、ポリウレタンポリマーPUPは、室温で固体のポリウレタンポリマーPUP1である。室温で固体のポリウレタンポリマーPUP1は、有利には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびポリカーボネートポリオールから進めて得ることができる。特に好適な物質は、室温で液状、非晶質、部分的に結晶性、および結晶性のポリエステルおよびポリカーボネートのジオールおよびトリオール、特にポリエステルジオールおよびポリカーボネートジオールであるが、室温で液状のポリエステルおよびポリカーボネートのジオールおよびトリオールは、室温からそれほど低くない、例えば0℃〜25℃の間の温度で固体であり、さらに、少なくとも1種の非晶質、部分的に結晶性、または結晶性のポリオールと組み合わせて用いることが好ましい。
【0104】
上記ポリエステル-およびポリカーボネートジ-およびトリオールは、500〜5000g/モルの分子量を有することが有利である。
【0105】
室温で固体のポリウレタンポリマーPUP1は、結晶性、部分的に結晶性、または非晶質であってよい。部分的結晶性または非晶質のポリウレタンポリマーPUP1は、室温で、流動するとしてもわずかに限定された自由流動性しか持たず、これはより特にそれが20℃で5000Pa・秒より大きな粘度を有することを意味する。
【0106】
ポリウレタンポリマーPUP1は、1000〜10000g/モル、特に2000〜5000g/モルの平均分子量を有することが好ましい。
【0107】
さらなる実施態様では、式(VIII)のアルジミンとの反応に適した式(VII)のポリイソシアネートは、ジイソシアネートの形態、ジイソシアネートの低分子量オリゴマーの形態、またはジイソシアネートの誘導体の形態のポリイソシアネートPIであり、ここで、好適なジイソシアネートは、ポリウレタンポリマーPUPの製造に好適であるとして既に特定したジイソシアネートと同じである。
【0108】
好適なポリイソシアネートPIは、特に、ジイソシアネート(特に、HDI、IPDI、TDI、およびMDI)のオリゴマーまたはオリゴマー混合物である。市販されているタイプは、特に、HDIビウレット〔例えば、Desmodur(登録商標)N 100およびN 3200(Bayer社)、Tolonate(登録商標)HDBおよびHDB-LV(Rhodia社)、およびDuranate(登録商標)24A-100(Asahi Kasei社)〕;HDIイソシアヌレート〔例えば、Desmodur(登録商標)N 3300、 N 3600、およびN 3790 BA(全てBayer社から)、Tolonate(登録商標)HDT、HDT-LV、およびHDT-LV2(Rhodia社)、Duranate(登録商標)TPA-100およびTHA-100(Asahi Kasei社)、ならびにCoronate(登録商標)HX(Nippon Polyurethane社)〕;HDIウレトジオン〔例えば、Desmodur(登録商標)N 3400(Bayer社)〕;HDIイミノオキサジンジオン〔例えば、Desmodur(登録商標)XP 2410(Bayer社)〕;HDIアロファネート〔例えば、Desmodur(登録商標)VP LS 2102(Bayer社)〕;IPDIイソシアヌレート〔例えば、Desmodur(登録商標)Z 4470(Bayer社)として溶液で、あるいはVestanat(登録商標)T 1890/100(Degussa社)として固体形態で〕;TDIオリゴマー〔例えば、Desmodur(登録商標)IL(Bayer社)〕;TDI/HDIに基づく混合イソシアネート〔例えば、Desmodur(登録商標)HL(Bayer社)〕である。
【0109】
好ましいポリイソシアネートPIは、HDIおよび/またはIPDIのオリゴマー類、特にそのイソシアヌレート類である。
【0110】
上述したポリイソシアネートPIは、典型的には、様々なオリゴマー化度および/または様々な化学構造をもつ物質の混合物である。それらは、好ましくは、2.1〜4.0の平均NCO官能性を有し、かつ、特に、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン、ウレトジオン、ウレタン、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトンイミン、またはオキサジアジントリオン基を有する。
【0111】
同様に、式(VIII)のアルジミンとの反応に適した式(VII)のポリイソシアネートは、少なくとも1種のポリウレタンポリマーPUPおよび少なくとも1種のポリイソシアネートPIからなる混合物であることができる。
【0112】
式(VII)のポリイソシアネートとの反応に適した式(VIII)のアルジミンは、活性水素を1個だけ有する。このような式(VIII)のアルジミンは、基本的に、式(I)のアルジミンのためにすでに上述した方法と同様の方法によって得ることができるが、上述により特定した全ての式(III)のアミンB1が適するわけではないという制約がある。1つの実施態様では、式(VIII)のアルジミンの製造のために好適なアミンCは、式(IX)のアミンである。
【化14】

(式中、
a’は、O、S、N-R6a’、またはN-R7’であり、
式中、R6a’は、1〜20個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個のカルボン酸エステル、ニトリル、ニトロ、ホスホン酸エステル、スルホン、もしくはスルホン酸エステル基を有していてもよい、1価の炭化水素基であるか、または
下記式(X)の置換基:
【化15】

であるかのいずれかであり、
A’、B’、およびR7’は、それぞれ既に定義した通りである。)
少なくとも1種の式(IX)のアミンCを、既に上述により特定した少なくとも1種の式(IV)のアルデヒドALDと既に上述した方法で反応させて、式(VIII)のアルジミンを得ることができる。
【0113】
1つの実施態様では、式(IX)のアミンCは、好適なアミンB1として既に言及した、1個または2個の一級アミノ基と1個の二級アミノ基とを有する化合物である。さらなる実施態様では、好適な式(IX)のアミンCは、好適なアミンB1として既に言及した、1個または2個の一級アミノ基を有する脂肪族ヒドロキシアミンまたは脂肪族メルカプトアミンである。
【0114】
好ましいアミンCは、N-メチル-1,2-エタンジアミン、N-エチル-1,2-エタンジアミン、N-シクロヘキシル-1,2-エタンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N-エチル-1,3-プロパンジアミン、N-ブチル-1,3-プロパンジアミン、N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン、4-アミノメチル-ピペリジン、3-(4-アミノブチル)ピペリジン、DETA、DPTA、BHMT、および脂肪族ジアミン(例えば、N-ココアルキル-1,3-プロパンジアミン、N-オレイル-1,3-プロパンジアミン、N-ソヤアルキル-1,3-プロパンジアミン、およびN-タロウアルキル-1,3-プロパンジアミンなど);脂肪族一級ジアミンと、マレイン酸およびフマル酸ジエステル、アクリル酸およびメタクリル酸エステル、アクリル-およびメタクリルアミド、好ましくはマレイン酸ジエステル(特にジメチル、ジエチル、ジプロピル、およびジブチルマレエート)ならびにアクリル酸エステル(特にメチルアクリレート)とを1:1のモル比で反応させて得られるマイケル型の付加反応生成物;ならびに、一級アミノ基が、少なくとも5個の原子の鎖によってまたは環によってヒドロキシル基またはメルカプト基から隔てられている脂肪族ヒドロキシルアミンおよび脂肪族メルカプトアミン〔とりわけ、5-アミノ-1-ペンタノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、およびこれらの高級同族体、4-(2-アミノエチル)-2-ヒドロキシエチルベンゼン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、トリエチレングリコールモノアミン、およびこれらの高級オリゴマーおよびポリマー、3-(2-ヒドロキシエトキシ)プロピルアミン、3-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)プロピルアミン、ならびに3-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)プロピルアミンなど〕である。
【0115】
特に好ましいアミンCは、N-メチル-1,2-エタンジアミン、N-エチル-1,2-エタンジアミン、N-シクロヘキシル-1,2-エタンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N-エチル-1,3-プロパンジアミン、N-ブチル-1,3-プロパンジアミン、N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン、4-アミノメチル-ピペリジン、3-(4-アミノブチル)ピペリジン、DETA、DPTA、BHMT、および脂肪族ジアミン(例えば、N-ココアルキル-1,3-プロパンジアミン、N-オレイル-1,3-プロパンジアミン、N-ソヤアルキル-1,3-プロパンジアミン、およびN-タロウアルキル-1,3-プロパンジアミンなど)、 5-アミノ-1-ペンタノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、4-(2-アミノエチル)-2-ヒドロキシエチルベンゼン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、トリエチレングリコールモノアミン、3-(2-ヒドロキシエトキシ)プロピルアミン、3-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)プロピルアミン、および3-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)プロピルアミンからなる群から選択されるアミンである。
【0116】
一つの態様では、式(VIII)のアルジミンは、X’がN-R6’である。このような式(VIII)のアルジミンは、これまで記述した合成ルートとはわずかに異なる合成ルートによって製造することができる。この合成ルートでは、第一工程で、式(IV)のアルデヒドALDを、式:H2N-Aa-NH2 の二官能脂肪族一級アミンB2と反応させて(ここで、Aaは、2〜20個の炭素原子を有し、場合によりヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基である)、アルジミノ基に加えて一級アミノ基をも含む中間体を得る。次いで第二工程では、この中間体を、その一級アミノ基をマイケル受容体の助けを借りてモノアルキル化することによって式(VIII)のアルジミンに変換する。この反応は、式(I)のアルジミンのために既に記述した方法と同じ方法で行い、同じアミンB2および同じマイケル受容体が好ましい。
【0117】
少なくとも1種の式(VII)のポリイソシアネートと少なくとも1種の式(VIII)のアルジミンとから、少なくとも1種の式(VI)のアルジミン基含有化合物AV1を得る反応は、個々の反応に関与する活性基間の反応において典型的に用いられる公知の条件下で、既に上述した通りに行う。
【0118】
この付加反応を化学量論的に、すなわち、式(VII)のポリイソシアネートのイソシアネート基1モル当量当たり、式(VIII)のアルジミンの活性水素1モル当量で行う場合、これらの反応性基が完全に転化される結果として、得られる付加生成物は、式(VI)において指数uがゼロに等しいアルジミノ基含有化合物AV1である。このような化合物AV1は、ポリアルジミンである。
【0119】
対照的に、この付加反応を化学量論未満、すなわち、式(VII)のポリイソシアネートのイソシアネート基1モル当量当たり、式(VIII)のアルジミンの活性水素1モル当量未満で行う場合、イソシアネート基が部分的にのみ転化される結果として、得られる付加生成物はヘテロ官能性化合物、すなわち、1個以上のアルジミノ基に加えて、少なくとも1個のイソシアネート基をさらに有する式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1である。この場合、式(VI)における指数uは、ゼロより大きい。
【0120】
式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1は、適切な条件、とりわけ湿気がない条件下で貯蔵安定である。
【0121】
本発明はさらに、
a)少なくとも1種の式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1と、
b)場合により少なくとも1種のポリイソシアネートPと
を含む組成物に関する。
但し、この組成物中のアルジミノ基の数の、イソシアネート基の数に対する比が、最大で1であることを条件とする。
【0122】
好適な式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1は、上述したもの、またはこれらの好ましい実施態様として上述したものである。
【0123】
本組成物は、式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1に加えて、場合により少なくとも1種のポリイソシアネートPを含むが、組成物中のアルジミノ基の数のイソシアネート基の数に対する比が、最大で1であることを条件とする。
【0124】
組成物中に存在する式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1が、指数vよりも大きいかまたは指数vと等しい平均指数uを有する場合、式(VI) の化合物AV1は、湿気によって自己硬化性である。このことは、湿気が作用すると、このような式(VI) の化合物AV1が単独で硬化されて高分子量ポリウレタンがもたらされることを意味する。この場合、ポリイソシアネートPの存在は任意である。
【0125】
組成物中に存在する式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1が、指数vより小さい平均指数uを有する場合、少なくとも1種のポリイソシアネートPは、組成物中に存在していなければならず、かつ、湿気の作用で高分子量ポリウレタンポリマーを生成するように、組成物中に存在するアルジミノ基1個当たり少なくとも1個のイソシアネート基が存在する量で存在していなければならない。
【0126】
1つの実施態様では、好適なポリイソシアネートPは、式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1を製造するために好適な式(VII)のポリイソシアネートとして既に上述した、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPUPである。
【0127】
さらなる実施態様では、好適なポリイソシアネートPは、式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1を製造するために好適な式(VII)のポリイソシアネートとして既に上述した、ジイソシアネートの形態、ジイソシアネートの低分子量オリゴマーの形態、またはジイソシアネートの誘導体の形態のポリイソシアネートPIである。
【0128】
同様に、ポリイソシアネートPとして可能性のあるものは、少なくとも1種のポリウレタンポリマーPUPと、少なくとも1種のポリイソシアネートPIとからなる混合物である。
【0129】
組成物中に存在する全てのポリイソシアネートPが、式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1の親(製造原料)である式(VII)のポリイソシアネートと同じポリイソシアネートであることが好ましい。
【0130】
式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1とポリイソシアネートPとを両方含む組成物は、好ましくは、少なくとも1種の式(VII)のポリイソシアネートと、少なくとも1種の式(VIII)のアルジミンとを、反応後に、未転化の式(VII)のポリイソシアネートの残存含量がポリイソシアネートPとして組成物中に残るような比で反応させることによって得ることができる。
【0131】
しかし、式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1を製造する目的で用いた式(VII)のポリイソシアネートを完全に転化した後、適切な場合には、化合物AV1にポリイソシアネートPを添加することも可能である。
【0132】
少なくとも1種の式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1と、場合により少なくとも1種のポリイソシアネートPとを含む組成物は、化合物AV1の親である式(VII)のポリイソシアネートと、ポリイソシアネートPとが、いずれもポリウレタンポリマーPUPまたはジイソシアネートオリゴマーの形態のポリイソシアネートPIであることを条件として、驚くべき低いジイソシアネート含有量を有する。
【0133】
さらなる実施態様では、本発明は、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマー中、ポリイソシアネートオリゴマー中、またはイソシアネート基を有するポリウレタンポリマーもしくはポリイソシアネートオリゴマーを含む組成物中の、ジイソシアネートモノマー含有量を低減させるための方法であって、これらを、上述した式(I)のアルジミンの少なくとも1種と反応させることによる方法に関する。
【0134】
ポリオールとジイソシアネートとが反応してイソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPUPが生成する反応において、可能性のある反応生成物がランダムに分布することにより、未転化のジイソシアネートモノマーの残存含量が生成したポリマー中に残る。同様に、ポリイソシアネートオリゴマーの製造においても、未転化のジイソシアネートモノマーの残存含量が生成物中に残る。これらのジイソシアネートモノマーは、略して「イソシアネートモノマー」とも呼ばれ、揮発性化合物であり、その刺激性、アレルギー性、および/または毒性作用に起因して有害であり得る。したがって、これらは、多くの用途分野において望ましくない。これは、とりわけ、スプレー塗布、および熱時に加工されることとなる組成物、例えば、ホットメルト接着剤の場合に当てはまる。
【0135】
特定のジイソシアネートモノマー含有量を有する式(VII)のポリイソシアネートの、式(VIII)のアルジミンとの上述した様な不完全な反応により、驚くほど低いジイソシアネートモノマー含有量が低い組成物がもたらされる。このジイソシアネートモノマー含有量は、反応前の式(VII)のポリイソシアネートのジイソシアネートモノマー含有量より顕著に低い。
【0136】
この驚くほど低いジイソシアネートモノマー含有量は、おそらく、少なくとも1種の式(VII)のポリイソシアネートと少なくとも1種の式(VIII)のアルジミンとの、少なくとも1種の式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1を与える反応において、式(VIII)のアルジミンの活性水素が、ポリイソシアネート中に存在するジイソシアネートモノマーと優先的に反応するという事実によって達成される。このように、式(VII)のポリイソシアネートの一部が式(VIII)のアルジミンと反応しないような化学量論で反応が行われるのにも関わらず、初めから存在していたジイソシアネートモノマーの大部分が転化され、しかし組成物中にポリイソシアネートPとして残る。こうして、組成物中のジイソシアネートモノマー含有量が、顕著に低減することができる。
【0137】
このような組成物は、組成物の湿気反応性構成成分に基づいて、ジイソシアネートモノマー含有量が1重量%未満、とりわけ0.5重量%未満であることが好ましい。
【0138】
少なくとも1種の式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1と、場合により少なくとも1種のポリイソシアネートPとを含む組成物は、場合により、さらなる補助剤および添加剤を含んでいてもよい。この目的のために、例えば、以下の物質が好適である:
− 可塑剤、例えば、カルボン酸エステル類、例えばフタレート類、例えば、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、またはジイソデシルフタレート、アジペート、例えば、ジオクチルアジペート、アゼレートおよびセバケート、有機リン酸およびスルホン酸のエステル類、またはポリブテン類;
− 溶媒;
− 無機および有機フィラー、例えば、任意にステアレートでコーティングされていてもよい粉砕または沈降炭酸カルシウム、カーボンブラック、特に工業生産されたカーボンブラック(以下で「カーボンブラック」という)、バライト(BaSO、重晶石としても知られる)、カオリン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、シリカ、特に熱分解法による高分散性シリカ、PVC粉末、または中空球体;
− 繊維、例えば、ポリエチレン繊維;
− 顔料、例えば、二酸化チタンまたは酸化鉄;
− アルジミンの加水分解を促進する触媒、例えば、有機カルボン酸、例えば、安息香酸、サリチル酸、または2-ニトロ安息香酸、有機カルボン酸無水物、例えば、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、および無水ヘキサヒドロメチルフタル酸、有機カルボン酸のケイ酸エステル、有機スルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、または4-ドデシルベンゼンスルホン酸、スルホン酸エステル、その他の有機または無機酸、あるいは前述の酸および酸エステルの混合物;
− イソシアネート基の反応を促進する触媒、例えば、有機スズ化合物、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジアセチルアセトナート、およびジオクチルスズジラウレート、ビスマス化合物、例えば、ビスマストリオクトエートおよびビスマストリス(ネオデカノエート)、ならびに三級アミノ基を有する化合物、例えば、2,2-ジモルホリノジエチルエーテルおよび1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン;
− レオロジー調節剤、例えば、増粘剤、例えば、尿素化合物、ポリアミドワックス、ベントナイト、またはヒュームドシリカ;
− 反応性希釈剤および架橋剤、例えば、ポリイソシアネートモノマー、例えば、MDI、TDI、MDI、およびMDIとMDI同族体との混合物(MDIまたはPMDIポリマー)、ならびにこれらのポリイソシアネートのオリゴマー、特に、イソシアヌレート、カルボジイミド、ウレトンイミン、ビウレット、アロファネート、またはイミノオキサジアジンジオンの形態のオリゴマー、ポリイソシアネートモノマーと短鎖ポリオールとの付加体、さらにまたアジピン酸ジヒドラジドおよびその他のヒドラジド類;
− 保護されたアミノ基を有するさらなる潜在性硬化剤、例えば、ケチミン類、オキサゾリジン類、エナミン類、または別のアルジミン類;
− 乾燥剤、例えば、モレキュラーシーブス、酸化カルシウム、高反応性イソシアネート類、例えば、p-トシルイソシアネート、オルトギ酸エステル類、アルコキシシラン類、例えば、テトラエトキシシラン、有機アルコキシシラン、例えば、ビニルトリメトキシシラン、およびシラン基のα位に官能基を有する有機アルコキシシラン類;
− 接着促進剤、特にオルガノアルコキシシラン類(「シラン類」)、例えば、エポキシシラン類、ビニルシラン類、(メタ)アクリルシラン類、イソシアナトシラン類、カルバメートシラン類、アルキルシラン類、S-(アルキルカルボニル)メルカプトシラン類、およびアルジミノシラン類、ならびにこれらのシラン類のオリゴマー形態;
− 熱、光、およびUV安定化剤;
− 難燃性物質;
− 界面活性剤、例えば、湿潤剤、レベリング剤、液化剤、消泡剤;
− 殺生物剤、例えば、殺藻剤、防かび剤、または真菌の増殖を阻害する物質。
【0139】
このような添加剤が組成物の貯蔵安定性を低下させないことを確実にすることが有利である。このことは、これらの添加剤が、架橋をもたらす反応、例えば、アルジミノ基の加水分解またはイソシアネート基どうしの架橋を、貯蔵中に有意な程度に引き起こしてはならないことを意味する。より特に、このことは、これらの添加剤がいずれも、たとえ含んでいたとしても高々微量の水しか含まないことが必要であることを意味する。添加剤を組成物中に混合する前に、特定の添加剤を化学的または物理的に乾燥することが望ましい可能性がある。
【0140】
このような添加剤は、式(VI)の化合物AV1の製造の完了時に組成物に添加することができる。しかし、これらは、少なくとも1種の式(VII)のポリイソシアネートと少なくとも1種の式(VIII)のアルジミンとから、少なくとも1種の式(VI)の化合物AV1を得る反応の過程において既に存在していてもよい。
【0141】
記述した組成物は、少なくとも1種の式(VI)の化合物AV1および場合により少なくとも1種のポリイソシアネートPに加えて、少なくとも1種の触媒を含むことが好ましい。この触媒は、とりわけ、上述した酸(例えば、安息香酸もしくはサリチル酸など)の1つ、上述した金属化合物の1つ、または上述した三級アミンの1つである。特に、この触媒は、アルジミノ基の加水分解を加速する触媒であり、好ましくは酸である。異なる触媒または異なるタイプの触媒を、互いに混合する場合が有利である可能性もある。
【0142】
少なくとも1種の式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1と、場合により少なくとも1種のポリイソシアネートPとを含む組成物は、湿気を排除して貯蔵する。この組成物は、貯蔵安定であり、すなわち、湿気を排除して、適切な包装または装置、例えば、バット、ペール缶、バケット、バッグ、カートリッジ、またはボトルの中で、数ヶ月から1年さらにそれより長い期間にわたって、その適用特性または硬化後の特性がその使用に関わるほどの程度まで変化することなく、貯蔵することができる。典型的には、貯蔵安定性は粘度の測定によって判断する。
【0143】
式(VI)の化合物AV1のアルジミノ基および存在する全てのさらなるアルジミノ基は、湿気(水分)と接触して加水分解される性質を有する。組成物中に存在するイソシアネート基は、形式的な意味で、アルジミノ基の加水分解(これは式(IV)の対応するアルデヒドALDを放出する)の過程で放出されたアミノ基と反応する。アルジミノ基に対して過剰なイソシアネート基は、存在する水と反応する。この反応の結果として、組成物は硬化して高分子量ポリマーを形成する。この過程は架橋ともいわれる。イソシアネート基と加水分解を受けつつあるアルジミノ基との反応は、必ずしもアミノ基を介して進行する必要がない。アルジミノ基のアミノ基への加水分解の中間体との反応も可能であることが考えられる。例えば、加水分解を受けつつあるアルジミノ基が、ヘミアミナールの形態で、イソシアネート基と直接反応することが考えられる。ホットメルト接着剤組成物の場合には、これが架橋を引き起こし、その結果として組成物はもはや溶融可能ではなくなる。硬化の過程で放出されるアルデヒドALDは、従来技術においてアルジミンの製造のために典型的に用いられるアルデヒド(例えば、イソブチルアルデヒドまたはピバルアルデヒド)と比較して、より臭気が低く、このことは多くの用途において非常に有利である。
【0144】
硬化反応に必要な水は、空気(空気の湿気)に由来することができ、あるいは組成物を水含有成分と例えばスプレーによって接触させることもでき、あるいは水含有成分を適用の過程で組成物に添加することもできる。
【0145】
組成物は、気泡の形成なしに、湿気と接触して硬化する。硬化速度は、1種以上の任意に存在してもよい触媒の種類と量、硬化の過程の温度、および湿気もしくは添加する水の量に影響されうる。
【0146】
組成物を弾性接着結合のための接着剤として使用する場合、構造的に粘稠な性質があるペースト状のコンシステンシーを有することが好ましい。このような接着剤を、適切な装置を使用することによって、好ましくは、断面が実質的に丸もしくは三角であってよいビードの形態で、基材に適用する。接着剤を適用するための好適な方法は、例えば、市販のカートリッジ(これは手動で、あるいは圧縮空気を用いて操作する)から、あるいはデリバリーポンプまたは押出機を用いてバットまたはペール缶から、適切な場合には塗布ロボットを用いて適用する方法である。良好な適用特性をもつ接着剤は、長い貯蔵寿命と短い糸引きとを有する。言い換えれば、適用後、適用ユニットを除去した後で、適用された形態で残り、すなわちバラバラに流れず、たとえあったとしても非常に短い糸状物のみを形成し、そのため基材が汚されない。
【0147】
組成物は、少量の水で、かつ、気泡の形成なしに、速やかに架橋する。例えば、接着剤としての適用のためには、このことは、たとえそれまでに環境からのかなり少ない水しか組成物と接触していなくても、接着結合は初期の段階である程度まで既に応力がかけられることを意味する。これは、工業生産、例えば、車両の組み立てにおいて大きな利点であり、なぜなら、接着結合によって付着された部材は、かなり短い時間の後でもその接着結合によってその位置で保たれる必要があり、結果として、その接着結合された物品をさらなる固定なしにさらに移動および加工することができるからである。
【0148】
硬化した状態で、組成物は、注目すべき優れた特性を有する。例えば、高い伸び性および高い引張強さを有する。弾性率は、組成物を製造するために用いた成分(例えば、ポリオール、ポリイソシアネート、またはジアミン)に応じてさまざまであり、したがって、特定用途の要求(例えば、接着剤に対して高い値、またはシーリング材に対して低い値など)に適合させることができる。
【0149】
組成物は、広範囲なさまざまな用途に使用することができる。例えば、ざまざまな基材の接着結合のための接着剤として好適である。例えば、自動車、鉄道車両、船舶、または他の工業製品の製造における構成部品の接着結合に、とりわけ反応性ホットメルト接着剤、あらゆる種類のシーリング材(例えば、密封継手)、さまざまな物品もしくはさまざまな基材のためのコーティングもしくは床仕上げ剤として好適である。好ましいコーティングは、保護塗料、シーリング、および保護コーティング、とりわけプライマーである。
【0150】
本明細書中、「プライマー」は、アンダーコートとして適切な組成物を意味することが理解され、これは、非反応性揮発物質および場合により固体添加剤に加えて、少なくとも1種のポリマーおよび/または反応性基を有する少なくとも1種の物質を含み、基材に適用した場合に、典型的には少なくとも5μmの層厚さの固体のしっかり接着するフィルムに硬化されることができ、その硬化は非反応性揮発物質(例えば、溶媒または水)の揮発のみ、化学反応、またはこれらの因子の組み合わせのいずれかによって起こり、これが次に適用する層(例えば、接着剤またはシーラント)の接着力を向上させる。
【0151】
記述した組成物は、低いジイソシアネートモノマー含有量が要求される用途のために特に好適である。これらの用途、とりわけ、組成物がスプレーされる用途、および組成物が高温で、例えばホットメルト接着剤として適用される用途である。
【0152】
好ましい実施態様では、少なくとも1種の式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1と、場合により少なくとも1種のポリイソシアネートPとを含む組成物は、反応性ホットメルト接着剤である。この場合、式(VI)の化合物AV1を製造するために用いた式(VII)のポリイソシアネートと、任意のポリイソシアネートPとの両方が、上述した、イソシアネートを有する室温で固体のポリウレタンポリマーPUP1である。
【0153】
上述した補助剤および添加剤に加えて、このような反応性ホットメルト接着剤は、場合により、少なくとも1種の非反応性熱可塑性ポリマーを含んでいてよい。ここで、非反応性熱可塑性ポリマーは、例えば、不飽和モノマー類(とりわけ、エチレン、プロピレン、ブチレンイソブチレン、イソプレン、酢酸ビニル、またはその高級エステル)のホモ-またはコポリマーであり、ならびに(メタ)アクリレート、エチレン-ビニルアセテートコポリマー(EVA)アタクティックポリ-α-オレフィン類(APAO)、ポリプロピレン類(PP)、およびポリエチレン類(PE)を含む群からのものである。
【0154】
反応性ホットメルト接着剤の作用の様式にとっては、接着剤が溶融可能であることが重要であり、このことは、それが適用される適応温度で十分に低い粘度を有し、かつ、それが、大気湿度での架橋反応が完了する前でも、冷却の過程で充分な接着強度を非常に迅速に作り出す(初期強度)ことを意味する。記述した組成物は、それがポリウレタンポリマーPUP1から進めて製造されたものである場合には、85℃〜200℃、典型的には120℃〜160℃の範囲のホットメルト接着剤に典型的な適用温度で、容易に扱える粘度を有し、かつ、良好な接着強度が冷却の過程で十分迅速に作り出されることが判明している。
【0155】
適用すると、反応性ホットメルト接着剤は、湿気(水分)、特に大気湿度の形態の湿気と接触する。冷却の過程における固化による物理的硬化と並行して、湿気による化学架橋も起こり、これは主として、存在するアルジミノ基が湿気によって加水分解され、かつ、イソシアネート基と既に記述した仕方で速やかに反応することによる。過剰なイソシアネート基も同様に公知の態様で湿気により架橋する。
【0156】
記述したホットメルト接着剤は、低いジイソシアネートモノマー含有量を有する。
【0157】
記述したホットメルト接着剤は、湿気による硬化の過程で、気泡を形成する非常に低い傾向しか示さず、なぜなら、アルジミノ基が存在する結果として、(化学量論にしたがって)ほとんどまたは全く、二酸化炭素が架橋の過程で形成されないからである。
【0158】
ホットメルト接着剤により接着結合する場合の、接着層の厚さ(接着結合厚さ)は、典型的には10マイクロメートル以上である。より特に、接着結合厚さは、特に、10マイクロメートル〜20ミリメートル、特に、80マイクロメートル〜500マイクロメートルである。しかし、厚い層の場合には、水の拡散が遅いことに起因して、架橋は典型的には非常に遅い。
【0159】
記述したホットメルト接着剤は、特に工業生産工程で用いられる。
【0160】
さらなる好ましい実施態様では、少なくとも1種の式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1と、場合により少なくとも1種のポリイソシアネートPとを含む組成物は、コーティングであり、例えば、塗料、ラッカー、またはプライマーとして好適である。
【0161】
この場合、式(VI)の化合物AV1を製造するために用いた式(VII)のポリイソシアネートまたは任意に存在するポリイソシアネートPのいずれかが、上述したポリイソシアネートPIであるか、または少なくとも1種のポリウレタンポリマーPUPと少なくとも1種のポリイソシアネートPIとの混合物である。
【0162】
このようなコーティング剤に存在する1つの補助剤および添加剤は、少なくとも1種の溶媒であることが好ましい。好適な溶媒は、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、およびメシチルオキシドなど)、および環状ケトン類(例えば、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンなど);エステル類(例えば、 酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸-tert-ブチル、ホルメート、プロピオネート、またはマロナートなど);エーテル類、例えば、ケトンエーテル、エステルエーテル、およびジアルキルエーテル(例えば、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、およびエチレングリコールジエチルエーテルなど);脂肪族および芳香族炭化水素〔例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、オクタン、および鉱物油(例えば、ナフサ、ホワイトスピリット、石油エーテル、あるいはベンジンなど)〕;ハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレンなど);N-アルキル化ラクタム(例えば、N-メチルピロリドン、N-シクロヘキシルピロリドン、またはN-ドデシルピロリドンなど)である。
【0163】
上述した補助剤および添加剤に加えて、記述したコーティング剤のさらなる好適な構成成分は、トリスイソシアネート類〔例えば、トリス(4-イソシアナトフェニル)メタンおよびトリス(4-イソシアナトフェニル)チオホスフェートなど〕;チタネート類〔好ましくは、酸素−チタン原子結合によってチタン原子に結合した少なくとも1個の置換基(とりわけ、アルコキシ基、スルホナート基、カルボキシレート基、ジアルキルホスフェート基、ジアルキルピロホスフェート基、またはアセチルアセトナート基)を有するチタネートであって、置換基が複数である場合には、置換基が全て同じであっても異なる置換基の混合であってもよいもの。〕である。好適なチタネート類の例は、Kenrich Petrochemicals社から商標名Ken-React(登録商標)の下で入手可能な、以下のタイプのもの:KR TTS、KR 7、KR 9S、KR 12、KR 26S、KR 33DS、KR 38S、KR 39DS、KR44、KR 134S、KR 138S、KR 158FS、KR212、KR 238S、KR 262ES、KR 138D、KR 158D、KR238T、KR 238M、KR238A、KR238J、KR262A、LICA 38J、KR 55、LICA 01、LICA 09、LICA 12、LICA 38、LICA 44、LICA 97、LICA 99、KR OPPR、およびKR OPP2;およびDuPont社から商標名Tyzor(登録商標)の下で入手可能な、以下のタイプのもの:ET、TPT、NPT、BTM、AA、AA-75、AA-95、AA-105、TE、ETAM、およびOGT;シラン類、とりわけアミノシラン類〔例えば、 3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノ-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルジメトキシメチルシラン、4-アミノ-3-メチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチ
ルブチルジメトキシメチルシラン、[3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン(=4,7,10-トリアザデシルトリメトキシシラン)、2-アミノエチルトリメトキシシラン、2-アミノエチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルメトキシジメチルシラン、7-アミノ-4-オキサヘプチルジメトキシメチルシラン、N-(メチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランなど〕;トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,3,5-トリアジ-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン尿素)((=トリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート)、およびメトキシ基がエトキシ基またはイソプロポキシ基と置き換えられた対応する同族体;メルカプトシラン類(例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、または3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン)、エポキシシラン類(例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン);ウレイドアルキルシラン類、ならびに、アミノ-および/またはメルカプト-シラン類とエポキシドまたはエポキシシラン(例えば、3-グリシジルオキシプロピルシラン)との付加体である。
【0164】
有利には、記述したコーティング剤は、チタネート類またはシラン類の形態の少なくとも1種の接着促進剤を含む。
【0165】
有利には、記述したコーティング剤は、少なくとも1種の上述した触媒を含む。
【0166】
記述したコーティング剤は、典型的には、ブラシ、フェルト、クロス、スポンジ、またはスプレーガンによって基材に適用する。この適用は、手動で行っても、特にロボットを使用して機械的におこなってもよい。
【0167】
記述したコーティング剤は、水分、例えば大気湿気の形態の水分と接触すると、既に記載した方法で反応し、その過程で、さらなる水反応性成分、例えば、同様に水と反応するチタネート基またはシラン基を含む化合物が水と反応する。加えて、コーティング剤の適用が完了した後、その中に存在する揮発性溶媒が全て蒸発し始める。この結果、基材上に、固体であり、固く接着するフィルムが形成される。この層の厚さは、有利には、5〜10μm、とりわけ10〜50μmである。
【0168】
本発明のさらなる態様は、基材S1を基材S2に接着結合させるための方法であって、
i) 上述した組成物の1つを、基材S1に適用する工程と、
ii) 前記組成物の可使時間内に、適用した前記組成物を基材S2に接触させる工程と、
を含むか、または
i’) 上述した組成物の1つを、基材S1および基材S2に適用する工程と、
ii’) 前記組成物の可使時間内に、適用した前記組成物を互いに接触させる工程と
を含み、
基材S2が、基材S1と同じ材料からなるかまたは異なる材料からなる方法に関する。
【0169】
本発明のさらなる態様は、シーリング方法に関する。この方法は、
i’’) 上述した組成物を、基材S1と基材S2との間に適用して、前記組成物を基材S1および基材S2と接触させる工程
を含み、
基材S2が、基材S1と同じ材料からなるかまたは基材S1とは異なる材料からなる。典型的には、シーリング材は、継手(joint)に注入される。
【0170】
本発明のさらなる態様は、基材S1をコーティングする方法に関する。この方法は、
i’’’)上述した組成物を、前記組成物の可使時間内に基材S1に適用する工程
を含む。
【0171】
これらの3つの方法において、好適な基材S1および/またはS2は、例えば、無機材料、例えば、ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、煉瓦、タイル、石膏、または天然石(例えば、花崗岩または大理石など);金属または合金(例えば、アルミニウム、スチール、非鉄金属、亜鉛メッキした金属など);有機基材(例えば、皮革、繊維、紙、木材、樹脂結合木材、樹脂-繊維複合材料など)、ポリマー(例えば、PVC、ポリカーボネート、PMMA、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン(PU)など);コーティングされた基材(例えば、粉体塗装された金属または合金など);または、塗装もしくはラッカー塗装、特に自動車のトップコートである。
【0172】
好適なポリマーは、特に、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、SMC(シートモールディングコンポジット)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、PMMA、エポキシ樹脂、ポリウレタン(PU)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリオレフィン(PO)〔特に、表面をプラズマ、コロナ、または火炎で処理したポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)〕、エチレン/プロピレンコポリマー(EPM)、およびエチレン/プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)である。
【0173】
基材は、必要な場合には、組成物の適用の前に前処理することができる。そのような前処理には、特に物理的及び/又は化学的洗浄方法(例えば、研磨、サンドブラスト、ブラシがけ等、あるいは洗浄剤または溶媒での処理、あるいは接着促進剤、接着促進剤溶液またはプライマーの適用)が含まれる。
【0174】
組成物は、広範な温度範囲で適用することができる。例えば、組成物は、弾性接着剤またはシーリング材には典型的であるように、室温で適用することができる。しかし、組成物は低温でも高温でも適用することができる。後者は、特に組成物が高粘度または溶融可能な成分(溶融適用接着剤、例えば、ワームメルト接着剤またはホットメルト接着剤に典型的に存在する成分)を含む場合に有利である。ワームメルト接着剤の適用温度は、例えば、40〜80℃の範囲であり、ホットメルト接着剤の場合は85〜200℃の範囲である。
【0175】
このように、ワームメルト接着剤の場合は、上述した工程i)、i’)、i’’)、またはi’’’)において、適用前に組成物を40℃〜85℃の温度、特に60℃〜80℃の温度に加熱し、特にこの温度で適用する。ホットメルト接着剤の場合は、上述した工程i)、i’)、i’’)、またはi’’’)において、適用前に組成物を85℃〜200℃の温度、特に100℃〜180℃の温度、好ましくは120℃〜160℃の温度に加熱し、特にこの温度で適用する。
【0176】
工程i’’’)の後に、典型的には、組成物の水分による架橋工程iv)が続く。当業者であれば、架橋反応が、用いる組成物、基材、温度、周囲の湿気、および接着の幾何学的形状などの要因次第で、接着結合と同時に開始されることをよく知っている。しかし、架橋の大部分は、一般に、接着結合の後で起こる。
【0177】
記述した接着結合方法、シーリング方法、またはコーティング方法により物品がもたらされる。
【0178】
この物品は、特に、構造物、とりわけ建築または土木工事における構造物、生産財または消費財、とりわけ窓、家庭電化製品、輸送手段、とりわけ水上用もしくは陸上用輸送手段、好ましくは自動車、バス、トラック、列車、もしくは船舶、または輸送手段の内装部品、または家具、繊維、もしくは包装産業における物品である
【実施例】
【0179】
[試験方法の説明]
「赤外吸収スペクトル」は、Perkin-Elmer社からのFT-IR 1600装置(ZnSe結晶を用いる水平ATR分析ユニット)を使用し、物質を希釈せずにフィルムとして塗布して測定した。吸収帯は、波数(cm-1)で記録した (測定ウィンドウ: 4000〜650 cm-1)で測定した。
1H NMRスペクトル」は、Bruker DPX-300スペクトロメータを使用して300.13 MHzで測定した。ケミカルシフトδは、テトラメチルシラン(TMS)に対してppmで記録した。カップリング定数Jは、Hzで記録した。真のカップリングパターンおよび擬似カップリングパターンの識別は行わなかった。
「粘度」は、温度調節されたPhysica UMコーン-プレート粘度計を使用して、指定した温度で測定した(コーン直径20 mm、コーン角度1°、コーンの先端とプレートとの距離0.1 mm、剪断速度10〜1000秒-1)。
製造したジアルジミンの「アミン含有量」、すなわちアルジミノ基の形態で保護されたアミノ基の含有量は、滴定によって測定(酢酸中の0.1 N HClO4を用い、クリスタルバイオレットを使用)し、常にmmol N/gで記録する。
「ジイソシアネートモノマー含有量」は、HPLCによって測定(フォトダイオードアレイによる検出;移動相として0.04M酢酸ナトリウム/アセトニトリルを使用)し、組成物の総重量に基づいて重量%で記録する。
「引張強さ」、「破断伸び」、および「弾性率」は、DIN 53504に準拠して、1 mmの厚さおよび75 mmの長さを有するダンベル状試験片(中心要素の長さ30 mm、中心要素の幅4 mm)について測定した。これらのダンベル状試験片を作製するために、1 mmの厚さの接着剤フィルムを(接着剤の適用温度130℃で)作製し、これからダンベル状試験片を打ち抜き、23℃および50%の相対湿度で指定された期間の間貯蔵した。
【0180】
[a)式(I)のアルジミンの製造]
実施例1:アルジミンA−1
窒素雰囲気下、丸底フラスコに、16.74 gの3-アセトキシ-2,2-ジメチルプロパナールを最初にチャージした。激しく撹拌しながら、12.00 gの2-(2-アミノエトキシ)エタノール(Diglycolamine(登録商標)Agent;Huntsman社)を滴下漏斗からゆっくりと添加した。この過程で混合物の温度が上昇した。その後、減圧下で揮発性の成分を除去した(10 mbar、100℃)。収率:26.5 g、無色透明の液体。アミン含有量4.25 mmol N/g および粘度10 mPa・秒(20℃)。
IR: 3415br (O-H), 2962, 2928, 2914, 2902, 2888sh, 2866, 2849sh, 2722br, 1736 (C=O), 1666 (C=N), 1470, 1458sh, 1439sh, 1395, 1374, 1234, 1126, 1038, 1009, 988, 931, 894, 847, 814, 793sh.
1H NMR (CDCl3, 300 K): δ 7.59 (t, 1 H, J = 約 1.3, CH=N), 4.03 (s, 2 H, CH2O), 3.71 (m, 4 H, HOCH2CH2OCH2CH2N), 3.58 (m, 4 H, HOCH2CH2OCH2CH2N), 3.06 (s, 1 H, OH), 2.06 (s, 3 H, CH3CO), 1.11 (s, 6 H, C(CH3)2).
【0181】
実施例2:アルジミンA−2
窒素雰囲気下、丸底フラスコに、14.39 gの3-アセトキシ-2,2-ジメチルプロパナールを最初にチャージした。激しく撹拌しながら、10.00 gの固体の5-アミノ-1-ペンタノールを少しずつに分けて添加した。5-アミノ-1-ペンタノールが溶解する過程で混合物の温度が上昇した。その後、減圧下で揮発性の成分を除去した(10 mbar、100℃)。収率:22.4 g、無色透明の液体。アミン含有量4.28 mmol N/g および粘度50 mPa・秒(20℃)。
IR: 3380br (O-H), 2932, 2860, 2723br, 1738 (C=O), 1666 (C=N), 1470, 1458, 1437sh, 1395, 1374, 1238, 1069sh, 1038, 1012sh, 988, 928, 891, 846, 775,734.
1H NMR (CDCl3, 300 K): δ 7.52 (t, 1 H, J = 約 1.2, CH=N), 4.02 (s, 2 H, CH2O), 3.63 (t, 2 H, J = 約 6.5, HOCH2CH2CH2), 3.39 (t×d, 2 H, J = 約 6.9 / 1.2, CH=NCH2CH2), 2.11 (s, 1 H, OH), 2.05 (s, 3 H, CH3CO), 1.60 (m, 4 H, HOCH2CH2CH2 and CH=NCH2CH2), 1.36 (m, 2 H, HOCH2CH2CH2), 1.11 (s, 6 H, C(CH3)2).
【0182】
実施例3:アルジミンA−3
窒素雰囲気下、丸底フラスコに、15.94 gの3-アセトキシ-2,2-ジメチルプロパナールを最初にチャージした。激しく撹拌しながら、60℃にて液状化させた12.00 gのビス(ヘキサメチレントリアミン) (BHMT-HP;Invista社)をピペットから少しずつに分けて添加した。この過程で混合物の温度が上昇した。その後、減圧下で揮発性の成分を除去した(10 mbar、100℃)。収率:26.1 g、無色透明の液体。アミン含有量6.24 mmol N/g および粘度60 mPa・秒(20℃)。
IR: 3313 (N-H), 2963sh, 2928, 2852, 2826, 1738 (C=O), 1668 (C=N), 1468, 1437sh,1394,1374,1339sh,1234,1128,1038,1011sh,986,928,844,730,668.
1H NMR (CDCl3, 300 K): δ 7.51 (t, 2 H, J = 約 1.2, CH=N), 4.02 (s, 4 H, CH2O), 3.36 (t×d, 4 H, J = 約 6.9 / 1.2, CH=NCH2CH2), 2.58 (t, 4 H, J = 約 7.2, NHCH2CH2CH2), 2.04 (s, 6 H, CH3CO), 1.63-1.43 (m, 9 H, CH=NCH2CH2CH2 and NHCH2CH2CH2), 1.30 (m, 8 H, CH=NCH2CH2CH2 and NHCH2CH2CH2), 1.10 (s, 12 H, C(CH3)2).
【0183】
[b)ポリウレタンポリマーの製造]
ポリウレタンポリマーPUP−1
780 gのDynacoll(登録商標)7360ポリオール(Degussa;結晶性ポリエステルジオール、OH価32 mg KOH/g、酸価約2 mg KOH/g)および120 gの4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI;Desmodur(登録商標)44 MC L、Bayer)を、公知の方法によって、80℃にて、NCO-末端ポリウレタンポリマーに変換した。室温にて固体であるこの反応生成物は、滴定によって測定して、1.97重量%の遊離のイソシアネート基含有量を有していた。
【0184】
ポリウレタンポリマーPUP−2
435 gのDynacoll(登録商標)7360ポリオール(Degussa;結晶性ポリエステルジオール、OH価32 mg KOH/g、酸価約2 mg KOH/g)および65 gのイソホロンジイソシアネート(IPDI;Vestanat(登録商標)IPDI、Degussa)を、公知の方法によって、80℃にて、NCO-末端ポリウレタンポリマーに変換した。室温にて固体であるこの反応生成物は、滴定によって測定して、2.25重量%の遊離のイソシアネート基含有量を有していた。
【0185】
[c)ホットメルト接着剤の製造]
実施例4〜6および比較例7
各実施例について、表1に従った特定の構成成分を100℃に加熱し、窒素雰囲気下、指定された重量部でねじぶた付きのポリプロピレンカップに秤り入れ、遠心撹拌機(SpeedMixer(登録商標)DAC 150、Flack Tek Inc.;3000rpmで1分間)を使用して混合した。その後直ちに、こうして得られた流動性のある混合物を、内側がコーティングされたアルミニウムチューブに移して気密に密封し、100℃にて1時間にわたって貯蔵した。
【0186】
【表1】

【0187】
実施例4〜6において、ポリウレタンポリマーPUP−1のイソシアネート基と、アルジミンのイソシアネート基に対して反応性の基(ヒドロキシル基、二級アミノ基、およびアルジミノ基)の合計との比は、1.0/0.9である。
【0188】
このように製造した、実施例4〜6および比較例7のホットメルト接着剤の粘度と、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートモノマー(4,4’-MDI)の含有量とを測定した。引張強さ、破断伸び、および弾性率は、7日間に亘って貯蔵した接着フィルムについて測定した。結果を表2に示す。
【0189】
【表2】

【0190】
各実施例について、表3に従った特定の構成成分を100℃に加熱し、窒素雰囲気下、指定された重量部でねじぶた付きのポリプロピレンカップに秤り入れ、遠心撹拌機(SpeedMixer(登録商標)DAC 150、Flack Tek Inc.;3000rpmで1分間)を使用して混合した。その後直ちに、こうして得られた流動性のある混合物を、内側がコーティングされたアルミニウムチューブに移して気密に密封し、100℃にて1時間にわたって貯蔵した。
【0191】
【表3】

【0192】
実施例8において、ポリウレタンポリマーPUP−2のイソシアネート基と、アルジミンA−1のヒドロキシル基およびアルジミノ基の合計との比は、1.0/0.9である。
【0193】
このように製造した、実施例8および比較例9のホットメルト接着剤の粘度と、イソホロンジイソシアネートモノマーの含有量(IPDI;シスおよびトランス異性体の合計)を測定した。引張強さ、破断伸び、および弾性率は、3週間に亘って貯蔵した接着フィルムについて測定した。結果を表4に示す。
【0194】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)のアルジミン:
【化1】

[式中、
およびRは、それぞれ独立に、1〜12個の炭素原子を有する1価の炭化水素基であるか、または
一緒になって、4〜12個の炭素原子を有する2価の炭化水素基であって、かつ、5〜8個、好ましくは6個の炭素原子を有し、場合により置換されていてもよい炭素環の一部である炭化水素基であるかのいずれかであり;
は、水素原子、アルキル基、またはアリールアルキル基、特に1〜12個の炭素原子を有するアルキル基またはアリールアルキル基であり;
は、1〜30個の炭素原子を有し、場合によりエーテル酸素原子を有していてもよい炭化水素基であるか、または
【化2】

の基(式中、Rは、水素原子または1〜5個の炭素原子を有する炭化水素基である)であるかのいずれかであり;
Aは、2〜20個の炭素原子を有し、場合によりヘテロ原子を有していてもよい(m+y)価の炭化水素基であるか、または
yが1であり、XがN-R7である場合には、Rと一緒になって、3〜20個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個のヘテロ原子、特にエーテル酸素または三級アミン窒素の形態のヘテロ原子を有していてもよい(m+2)価の炭化水素基であるかのいずれかであり;
Xは、O、S、N-R6、またはN-R7であり、
式中、Rは、1〜20個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個のカルボン酸エステル、ニトリル、ニトロ、ホスホン酸エステル、スルホン、またはスルホン酸エステル基を含んでいてもよい1価の炭化水素基であるか、または
下記式(II)の置換基:
【化3】

(式中、
pは、0または1〜10000の整数であり、かつ
Bは、場合によりヘテロ原子、特にエーテル酸素または三級アミン窒素の形態のヘテロ原子を有していてもよく、場合によりヒドロキシ基、二級アミノ基、またはメルカプト基の形態の活性水素を有していてもよい、(p+1)価の炭化水素基である。)
であるかのいずれかであり、かつ
は、Aと一緒になって、3〜20個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個のヘテロ原子、特にエーテル酸素または三級アミン窒素の形態のヘテロ原子を有していてもよい(m+2)価の炭化水素基であり;かつ
mは、1、2、3、または4であり、
yは、1、2、3、または4である。]
【請求項2】
y=1であることを特徴とする、請求項1に記載のアルジミン。
【請求項3】
m+y=2または3であり、特にm+y=2であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアルジミン。
【請求項4】
およびRが、それぞれメチルであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルジミン。
【請求項5】
少なくとも1種の下記式(III)のアミンB1と、少なくとも1種の下記式(IV)のアルデヒドALDとの反応から得られることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルジミン。
【化4】

(式中、
は、O、S、N-R6a、またはN-R7であり、
式中、R6aは、1〜20個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個のカルボン酸エステル、ニトリル、ニトロ、ホスホン酸エステル、スルホン、もしくはスルホン酸エステル基を有していてもよい、1価の炭化水素基であるか、または
下記式(IIIa)の置換基:
【化5】

であるかのいずれかである。)
【請求項6】
アミンB1が、N-メチル-1,2-エタンジアミン、N-エチル-1,2-エタンジアミン、N-シクロヘキシル-1,2-エタンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N-エチル-1,3-プロパンジアミン、N-ブチル-1,3-プロパンジアミン、N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン、4-アミノメチル-ピペリジン、3-(4-アミノブチル)ピペリジン、ジエチレントリアミン(DETA)、ビス(ヘキサメチレントリアミン)(BHMT)、ジプロピレントリアミン(DPTA)、脂肪族ジアミン(例えば、N-ココアルキル-1,3-プロパンジアミン、N-オレイル-1,3-プロパンジアミン、N-ソヤアルキル-1,3-プロパンジアミン、およびN-タロウアルキル-1,3-プロパンジアミンなど)、 5-アミノ-1-ペンタノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、4-(2-アミノエチル)-2-ヒドロキシエチルベンゼン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、トリエチレングリコールモノアミン、3-(2-ヒドロキシエトキシ)プロピルアミン、3-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)プロピルアミン、および3-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)プロピルアミンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載のアルジミン。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の式(I)のアルジミンと、HX基との付加反応に参加可能な1個以上の反応性基を有する化合物Dとの反応によって得ることができることを特徴とする、アルジミノ基含有化合物AV。
【請求項8】
化合物Dの前記反応性基が、イソシアネート、イソチオシアネート、シクロカーボネート、エポキシド、エピスルフィド、アジリジン、アクリロイル、メタクリロイル、1-エチニルカルボニル、1-プロピニルカルボニル、マレイミド、シトラコンイミド、ビニル、イソプロペニル、およびアリル基からなる群から選択され、個々の反応性基が互いに同じであっても異なっていてもよいことを特徴とする、請求項7に記載のアルジミノ基含有化合物。
【請求項9】
化合物Dがポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項7または8に記載のアルジミノ基含有化合物。
【請求項10】
化合物Dがポリエポキシドであることを特徴とする、請求項7または8に記載のアルジミノ基含有化合物。
【請求項11】
下記式(VI)のアルジミノ基含有化合物AV1であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載のアルジミノ基含有化合物:
【化6】

[式中、
uは、0、1、2、3、4、または5であり、
vは、1、2、3、4、5、または6であり、
但し、(u+v)は、2、3、4、5、または6であり;
Qは、(u+v)個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートから全てのイソシアネート基を取り除いた後の基であり;
A’は、2〜20個の炭素原子を有し、場合によりヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素であるか、または
7’と一緒になって、3〜20個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個のヘテロ原子、特にエーテル酸素または三級アミン窒素の形態のヘテロ原子を有していてもよい3価の炭化水素であるかのいずれかであり;
X’は、O、S、N-R6’、またはN-R7’であり、
式中、R6’は、1〜20個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個のカルボン酸エステル、ニトリル、ニトロ、ホスホン酸エステル、スルホン、またはスルホン酸エステル基を含んでいてもよい1価の炭化水素基であるか、または
下記式(II’)の置換基:
【化7】

(式中、
B’は、2〜20個の炭素原子を有し、場合によりヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基である。)
であるかのいずれかであり、かつ
7’は、A’と一緒になって、3〜20個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個のヘテロ原子、特にエーテル酸素または三級アミン窒素の形態のヘテロ原子を有していてもよい3価の炭化水素基である。]。
【請求項12】
Qが、特に、少なくとも1種のポリオールと少なくとも1種のポリイソシアネートとの反応、特に少なくとも1種のジオールと少なくとも1種のジイソシアネートとの反応から得ることができる、(u+v)個の末端イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPUPから全てのイソシアネート基を取り除いた後の基であることを特徴とする、請求項11に記載のアルジミノ基含有化合物AV1。
【請求項13】
前記(u+v)個の末端イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPUPが、イソシアネート基を有する室温で固体のポリウレタンポリマーPUP1であることを特徴とする、請求項12に記載のアルジミノ基含有化合物AV1。
【請求項14】
Qが、脂肪族、脂環式、もしくは芳香族のジイソシアネートの形態、これらのジイソシアネートの低分子量オリゴマーの形態、またはこれらのジイソシアネートの誘導体の形態の、(u+v)個の末端イソシアネート基を有するポリイソシアネートPIから、全てのイソシアネート基を取り除いた後の基であることを特徴とする、請求項11に記載のアルジミノ基含有化合物AV1。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のアルジミンまたは請求項7〜14のいずれか一項に記載のアルジミノ基含有化合物を含む、組成物。
【請求項16】
a)請求項11〜14のいずれか一項に記載のアルジミノ基含有化合物AV1を少なくとも1種と、
b)場合により少なくとも1種のポリイソシアネートPと
を含むことを特徴とする組成物であって、
但し、前記組成物中のアルジミノ基の数の、イソシアネート基の数に対する比が、最大で1であることを条件とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
ポリイソシアネートPが、(u+v)個の末端イソシアネート基を有するポリイソシアネートであって、それから化合物AV1の前記式(IV)中のQが誘導されるポリイソシアネートと同じポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物の湿気反応性成分に基づいて、1重量%以下、とりわけ0.5重量%以下のジイソシアネートモノマー含有量を有することを特徴とする、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれか一項に記載の組成物と、水分、とりわけ湿気の形態の水分との反応によって得られる、硬化した組成物。
【請求項20】
請求項15〜18のいずれか一項に記載の組成物の、接着剤、シーリング材、ポッティング用組成物、またはコーティング剤としての使用。
【請求項21】
基材S1を基材S2に接着結合させるための方法であって、
i) 請求項15〜18のいずれか一項に記載の組成物を基材S1に適用する工程と、
ii) 前記組成物の可使時間内に、適用した前記組成物を基材S2に接触させる工程と、
を含むか、または
i’) 請求項15〜18のいずれか一項に記載の組成物を、基材S1および基材S2に適用する工程と、
ii’) 前記組成物の可使時間内に、適用した前記組成物を互いに接触させる工程と
を含み、
基材S2が、基材S1と同じ材料からなるかまたは異なる材料からなる、方法。
【請求項22】
シーリング方法であって、
i’’) 請求項15〜18のいずれか一項に記載の組成物を、基材S1と基材S2との間に適用して、前記組成物を基材S1および基材S2と接触させる工程
を含み、
基材S2が、基材S1と同じ材料からなるかまたは異なる材料からなる、方法。
【請求項23】
基材S1をコーティングする方法であって、
i’’’)請求項15〜18のいずれか一項に記載の組成物を、前記組成物の可使時間内に基材S1に適用する工程
を含む、方法。
【請求項24】
工程i)、i’)、i’’)、またはi’’’)において、前記組成物を、適用前に40℃〜80℃、特に60℃〜80℃にまで加熱し、特にこの温度で適用することを特徴とする、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
工程i)、i’)、i’’)、またはi’’’)において、前記組成物を、適用前に85℃〜200℃、特に100℃〜180℃、好ましくは120℃〜160℃の温度にまで加熱し、特にこの温度で適用することを特徴とする、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
基材S1および/または基材S2を、接着結合工程、シーリング工程、またはコーティング工程の前に、特にプライマーまたは接着促進組成物で前処理することを特徴とする、請求項21〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
基材S1および/または基材S2が、無機材料、例えば、ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、煉瓦、タイル、石膏、または天然石(例えば、花崗岩または大理石など);金属または合金(例えば、アルミニウム、スチール、非鉄金属、亜鉛メッキした金属など);有機基材(例えば、木材)、ポリマー(例えば、PVC、ポリカーボネート、PMMA、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂など);コーティングされた基材(例えば、粉体塗装された金属または合金など);または、塗装もしくはラッカー塗装、特に自動車のトップコートであることを特徴とする、請求項21〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項21〜27のいずれか一項に記載の方法によって接着結合、シーリング、またはコーティングされた物品。
【請求項29】
前記物品が、構造物、とりわけ建築または土木工事における構造物、生産財または消費財、とりわけ窓、家庭電化製品、輸送手段、とりわけ水上用もしくは陸上用輸送手段、好ましくは自動車、バス、トラック、列車、もしくは船舶、または輸送手段の内装部品、または家具、繊維、もしくは包装産業における物品であることを特徴とする、請求項28に記載の物品。
【請求項30】
イソシアネート基を有するポリウレタンポリマー中、ポリイソシアネートオリゴマー中、またはイソシアネート基を有するポリウレタンポリマーもしくはポリイソシアネートオリゴマーを含む組成物中の、ジイソシアネートモノマー含有量を低減させるための方法であって、これらを請求項1〜6のいずれか一項に記載の式(I)のアルジミンの少なくとも1種と反応させることによる、方法。

【公表番号】特表2010−522726(P2010−522726A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500289(P2010−500289)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053712
【国際公開番号】WO2008/116928
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】