説明

流体加熱装置およびそれを用いた基板処理装置

【課題】発熱体の劣化を防止しつつ、流体の加熱効率を高めた流体加熱装置およびそれを用いた基板処理装置を提案する。
【解決手段】非磁性材料より成り内部空間内に流体が給送される配管5と、配管5の外側に巻回される誘導加熱コイル6と、磁性材料より成り誘導加熱により発熱される発熱体7とを具備してなり、誘導加熱コイル6に高周波電流を流して発熱体7を発熱させ、発熱された発熱体7により配管5内を流れる流体を加熱する流体加熱装置において、配管5は、内部中空を有する筒状の本体部50と、本体部50の軸中心C上に沿って内部空間の中途部まで延出されるとともに、本体部50の内部空間と区画されかつ外部空間と連通される収容部51とが設けられ、発熱体7が収容部51に収容されて配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体加熱装置およびそれを用いた基板処理装置の技術に関し、より詳細には、誘導加熱コイルに高周波電流を流して発熱体を発熱させ、該発熱体により配管内を流れる流体を加熱する流体加熱装置およびそれを用いた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体や液晶ディスプレイの製造装置に関し、半導体ウェハやガラス基板に対して所定の処理を施す基板処理装置の構成が公知である。この種の基板処理装置においては、例えば、レジスト剥離装置(アッシング装置)として、数十℃〜百数十℃程度の所定の温度まで加熱した処理液(剥離液)をポンプにより圧送し、かかる処理液を基板処理用の処理液槽や基板そのものに供給する構成や、ウェハ乾燥装置として、イソプロピルアルコールなどのアルコール蒸気を所定温度に加熱して、減圧状態のチャンバ内に収容された基板に供給する構成などが採用されている。また、大気圧プラズマを用いた基板表面への処理装置として、成膜用の成分ガスや処理ガスを加熱して供給する構成も採用されている。
【0003】
通常、このような基板処理装置においては、配管内を流れる各種流体を加熱して供給するための流体加熱装置が設けられている。近年では、流体加熱装置として、非磁性材料より成り内部空間内に流体が給送される管体と、管体の外側に巻回される誘導加熱コイルと、磁性材料より成り誘導加熱により発熱される発熱体とを具備してなり、誘導加熱コイルに高周波電流を流して発熱体を発熱させ、この発熱体により配管内を流れる流体を加熱する構成が公知となっている。
【0004】
誘導加熱によって流体を加熱する流体加熱装置においては、発熱体を配管の内部空間に配置することで、流体と接触する発熱体の表面積を大きく確保して、流体の加熱効率を向上させることができる。しかしながら、上述した基板処理装置では、処理液としての各種有機溶剤やアルコール蒸気等の反応性ガスなどの各種流体が供給されるため、流体加熱装置において発熱体を流体中に直接暴露すると、各種有機溶剤や反応性ガスにより発熱体が劣化してしまい、発熱体の交換に要するメンテナンスが煩雑となり、さらには、発熱体が流体中で剥離して微粒化したり金属成分が溶出したりして流体を汚染してしまうといった課題があった。
【0005】
かかる観点から、従来の流体加熱装置においては、例えば、表面に耐熱酸化性の被覆部材をコーティングした発熱体を用いた構成(特許文献1参照)や、加熱容器(管体)の軸線方向に沿って管状部が形設され、管状部により形成され端部が外部に開口した間通行に金属材料によって棒状に形成された発熱体が挿入され、管状の保護部材によって被覆された状態で発熱体を加熱容器の内部に配設させた構成(特許文献2参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−203138号公報
【特許文献2】特開2000−121153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される流体加熱装置の構成では、発熱体の表面を覆うようにして被覆部材がコーティングされるため、発熱体がより高温に加熱されたり、加熱・冷却が繰り返されたりすると、発熱体と被覆部材との加熱膨張率の差によって、発熱体から被覆部材が剥離してしまう場合があった。そのため、かかる構成では発熱体の製品寿命に劣り、発熱体を交換するためのメンテナンスの点で上述した課題を改善するには至っていない。
【0008】
また、特許文献2に開示される流体加熱装置の構成では、発熱体に被覆部材が直接コーティングされる構成ではないため、上述した特許文献1に開示される流体加熱装置の構成のように、被覆部材が剥離してしまう問題は回避されるが、その一方で、管状部が加熱容器(管体)の軸線方向に貫通されるとともに、加熱容器の軸線周りに等配されるように構成されるため、流体に対する発熱体の加熱領域(面積)が制限されてしまい、流体の加熱効率に劣っていた。特に、近年の流体加熱装置においては、流体の加熱効率を高め、より短い間で瞬時に流体を加熱できる装置が待望されているところであり、かかる構成では、発熱体から流体への入熱が小さく、装置を大型化・複雑化しなければ流体を急速加熱することができないという課題があった。
【0009】
そこで、本発明では、流体加熱装置およびそれを用いた基板処理装置に関し、前記従来の課題を解決するもので、発熱体の劣化を防止しつつ、流体の加熱効率を高めた流体加熱装置およびそれを用いた基板処理装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
すなわち、請求項1においては、非磁性材料より成り内部空間内に流体が給送される配管と、前記配管の外側に巻回される誘導加熱コイルと、磁性材料より成り誘導加熱により発熱される発熱体とを具備してなり、前記誘導加熱コイルに高周波電流を流して前記発熱体を発熱させ、該発熱体により前記配管内を流れる流体を加熱する流体加熱装置において、前記配管は、内部中空を有する筒状の本体部と、前記本体部の軸中心上に沿って内部空間の中途部まで延出されるとともに、前記本体部の内部空間と区画されかつ外部空間と連通される収容部とが設けられ、前記発熱体が前記収容部に収容されて配設されるものである。
【0012】
請求項2においては、前記収容部は、前記本体部と同心円の筒状に形成され、前記本体部の内側面との間に所定の離間を有するように前記本体部の軸中心と同一軸心上に配設されるものである。
【0013】
請求項3においては、前記収容部は、前記本体部の側面に開口された開口部の縁部から前記本体部の内部方向に向けて延出される隔壁部材により構成され、前記発熱体が前記隔壁部材により囲繞された空間内に収容されるものである。
【0014】
請求項4においては、前記本体部及び収容部は、石英ガラスより成形されるものである。
【0015】
請求項5においては、前記発熱体は、カーボン系材料より成形されるものである。
【0016】
請求項6においては、前記本体部は、外周面がフッ素樹脂材料より成形される保護部材により覆われるものである。
【0017】
請求項7においては、前記請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の流体加熱装置と、前記流体加熱装置に流体を供給する流体供給装置と、前記流体加熱装置により加熱された流体が供給されて基板に対して各種の処理を施す処理装置と、を具備してなるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、本体部の内部空間を給送される流体中に発熱体が直接暴露されないため、発熱体の劣化を防止できるとともに、発熱体により流体を加熱可能な領域が増大されるため、流体の加熱効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例に係る基板処理装置の全体的な構成を示した模式図。
【図2】流体加熱装置の側断面図。
【図3】図2におけるA−A矢視断面図。
【図4】本体部の内部空間内の流体の流れを示した側断面図。
【図5】別実施例の流体加熱装置の側断面図。
【図6】同じく別実施例の流体加熱装置の側断面図。
【図7】同じく別実施例の流体加熱装置の側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、発明を実施するための形態を説明する。
以下の実施例においては、基板処理装置1を半導体ウェハに対して乾燥処理を施すウェハ乾燥装置として構成した場合について説明する。本実施例の基板処理装置1では、処理装置4に収容された半導体ウェハに対して流体加熱装置2にて所定温度に温調されたアルコール蒸気が吹きつけられて乾燥処理が施される。
【0021】
まず、本実施例の基板処理装置1の全体構成について、以下に概説する。
図1に示すように、本実施例の基板処理装置1は、誘導加熱により流体を加熱する流体加熱装置2と、流体加熱部2に流体を供給する流体供給装置3と、流体加熱部2により加熱された流体が供給されて半導体ウェハに対して乾燥処理など各種処理を施す処理装置4等とで構成されている。流体加熱装置2は、接続管10で接続された流体供給装置3と処理装置4との間に挿設されている。基板処理装置1では、イソプロピルアルコールなどのアルコール蒸気が流体供給装置3から接続管10を介して流体加熱部2に給送される。そして、流体加熱部2によりかかるアルコール蒸気が所定温度(70℃〜90℃)に温調された後に、接続管10を介して処理装置4に給送され、減圧状態のチャンバ内に収容された半導体ウェハに吹き付けられる。
【0022】
次に、本実施例の流体加熱装置2の構成について、以下に詳述する。
図1に示したように、本実施例の流体加熱装置2は、非磁性材料より成り内部空間内に流体が給送される配管5と、配管5の外側に巻回される誘導加熱コイル6と、磁性材料より成り誘導加熱により発熱される発熱体7等とを具備してなり、誘導加熱コイル6に接続された加熱制御装置8によって誘導加熱コイル6に高周波電流を流して発熱体7を発熱させ、かかる発熱体7によって配管5内を流れる流体が加熱されるように構成されている。
【0023】
配管5は、断面円形であって内部中空の筒状に形成され、後述するように基板処理装置1の接続管10に接続される流体給入口52及び流体排出口53が設けられており、この流体給入口52を介して接続管10内の流体が配管5の内部空間内に給送されるとともに、流体排出口53を介して配管5の内部空間内の流体が接続管10内へと排出される。本実施例の配管5は非磁性材料より成り、耐熱性の観点から、非磁性材料として石英ガラス(透明石英ガラス、不透明ガラス、合成石英ガラスなど)が好ましく用いられる。具体的には、本実施例の配管5は、非磁性材料としての石英ガラスを母材として、筒状(チューブ状)に成形されている。
【0024】
また、本実施例の配管5には、配管5の内部空間と区画されかつ外部空間と連通される収容部51が形成されており、収容部51に発熱体7が収容されることで、発熱体7が配管5の内部空間内を流れる流体に直接暴露されないように構成されている。この収容部51の詳細は後述する(図2等参照)。
【0025】
誘導加熱コイル6は、銅材などの導電性材料より成り、配管5の外周形状に沿うように延出されて配管5の外側に巻回されている。誘導加熱コイル6の端部(リード導体部)は、後述する加熱制御装置8の高周波電源80に接続され、かかる高周波電源80から一方の端部に供給された高周波電流は、誘導加熱コイル6の形状にそって流れた後に、他方の端部より高周波電源80に戻る。
【0026】
発熱体7は、磁性材料より成り、配管5と断面同心円の円柱部材として形成され、配管5に設けられた収容部51に収容されて配設される。磁性材料としては、ステンレス鋼などの金属系材料やシリコンカーバイドなどの炭化ケイ素系材料を用いることができるが、耐熱性及び化学的安定性の観点から、特に、カーボン単体(黒鉛など)、カーボン複合体(カーボン−セラミックス、ガラス状カーボンなど)等のカーボン系材料が好ましく用いられる。特に、カーボン系材料は、熱伝導がよく、さらに一般的な金属系材料に比べて熱膨張率が小さいため、好ましく用いられる。カーボン系材料を母材として発熱体7を成形した場合には、発熱による熱変化(寸法変化)が小さく、かつ高温でムラなく発熱させることができる。
【0027】
加熱制御装置8は、誘導加熱コイル6に高周波電流を供給する高周波電源80と、誘導加熱コイル6への高周波電流の供給量を制御する電流制御部81と、流体加熱装置2の温度を検出する温度検出部82等とで構成されている。電流制御部81では、誘導加熱コイル6が所定温度となるように高周波電源80から誘導加熱コイル6に供給される高周波電流が制御される。また、温度検出部82は、電熱対や測温抵抗体などで構成され、配管5の外周面50aに配設される。
【0028】
加熱制御装置8による発熱体7の加熱制御方法について説明すると、まず、温度検出部82により配管5の温度が検出され、温度検出部82により検出された温度信号に基づいて、配管5が所定温度となるように高周波電源80から誘導加熱コイル6に供給される高周波電流が電流制御部81により制御される。誘導加熱コイル6では、高周波電源80より所定電流に制御された高周波電流が流れることで交番磁束が発生され、この交番磁束によって発熱体7にうず電流が発生する。そして、発熱体7に発生するうず電流による抵抗発熱と、誘導加熱コイル6からの交番磁束によるヒステリシス損から生じる発熱とによって発熱体7が発熱され、発熱体7が所定温度に加熱される。
【0029】
次に、本実施例の配管5の構成について、以下に詳述する。
図2乃至図4に示すように、本実施例の配管5は、流体としてのアルコール蒸気に直接暴露されないように発熱体7を配設可能な構成とされており、具体的には、内部中空を有する筒状の本体部50と、本体部50の軸中心C上に沿って内部空間の中途部まで延出されるとともに、本体部50の内部空間と区画されかつ外部空間と連通される収容部51と、本体部50の内部空間と連通される流体給入口52及び流体排出口53等とで構成されている。
【0030】
本体部50は、円筒状に成形された石英ガラスより構成され、外周面50aの形状に沿って上述した誘導加熱コイル6が巻回されている。本体部50は、一方の端部が閉止されて端面50bが形成されるとともに、他方の端部の端面50cが開口されて開口部50dが形成されている。また、本体部50の両端部には、同じく石英ガラスより成形された流体給入口52及び流体排出口53が設けられており、流体給入口52は、流体の送給方向の上流側(図2において下側)の端面50bに軸中心C上に沿う方向に向けて突設され、流体排出口53は、流体の送給方向の下流側(図2において上側)の外周面50aに軸中心Cと直交する方向に向けて突設されている。流体は、流体給入口52を介して本体部50の一方の端部より内部空間内に給送され、流体排出口53を介して本体部50の他方の端部より内部空間外に排出される。
【0031】
収容部51は、本体部50と同心円の筒状に形成され、本体部50の軸中心C上に沿って内部空間の中途部まで延出されており、具体的には、一方の端部が本体部50の内部空間内で閉止されて端面51aが形成されるとともに、他方の端部が本体部50の端面50cに開口されている。本実施例の収容部51は、本体部50と同じく発熱体7の保護部材としての石英ガラスより成形され、本体部50の他方の端部の端面50cに開口された開口部50dの縁部から、本体部50の内部方向に向けて延出される隔壁部材54により構成されている。
【0032】
このように本実施例の配管5は、本体部50において、両端部が端面50b・50cで閉止されて内部空間が外部空間と遮断されるとともに、収容部51において、隔壁部材54にて本体部50の内部空間が区画されつつ、隔壁部材54にて囲繞される空間が本体部50の開口部50dを介して外部空間と連通されている。発熱体7は、収容部51において隔壁部材54により囲繞された空間内に収容されることで、本体部50の内部空間と隔壁部材54によって隔離されるとともに、開口部50dを介して外部空間と連通された状態で配設される。
【0033】
本実施例の配管5は、発熱体7が本体部50の開口部50dを介して収容部51に挿脱され、本体部50において少なくとも開口部50dが発熱体7の内径よりも大きく、かつ収容部51において少なくとも発熱体7の内径よりも大きくなるように形成されている。また、配管5は、本体部50の開口部50dが上方を向くようにして設置されることから(図2参照)、発熱体7は、配管5の上方より本体部50の開口部50dに挿通されて収容部51内に収容され、収容部51の一方の端部(端面51a)にて係止された状態で配置される。
【0034】
収容部51の延出長さは、本体部50の軸中心C上に沿った内部空間の中途部であって、少なくとも収容部51に収容された発熱体7が誘導加熱コイル6によって発熱可能な領域にまで延出される。すなわち、本実施例の収容部51に収容された発熱体7は、収容部51の端面51aにて係止された状態で、長さ方向の領域内に誘導加熱コイル6が位置するように配置される。
【0035】
収容部51は、本体部50の軸中心Cと同一軸心上に配置され、本体部50の内側面50eと側面51bの間に離間Dを有するようにして配設されている(図3参照)。収容部51は、本体部50と同心円の筒状に形成されるため、本体部50の軸中心Cと同一軸心上に配置されることで、離間Dは本体部50の軸中心Cに対して円周方向に同一とされる。また、収容部51が本体部50の軸中心Cと同一軸心上に配置されることで、収容部51に収容された発熱体7においても同様に、本体部50の軸中心Cと同一軸心上に配置される。
【0036】
このように収容部51が形成されることで、本体部50の内部空間には、流体を給送可能な二つの領域空間A及び領域空間Bが形成されている。具体的には、領域空間Aは、流体の給送方向の上流側(図2において下側)の空間であって、流体の給送方向に対して本体部50の端面50bから収容部51の一方の端部(端面51a)までの空間である。一方、領域空間Bは、流体の給送方向の下流側(図2において上側)の本体部50の内側面50eと収容部51の側面51bとの離間Dに形成された空間であって、流体の給送方向に対して収容部51の一方の端部(端面51a)から他方の端部、すなわち本体部50の端面50cまでの空間である。
【0037】
そして、図2及び図4において矢印で示すように、まず、流体給入口52を介して本体部50の内部空間内に給送された流体は(図2の矢印a)、領域空間Aを本体部50の軸心方向に沿って下流側へと移送される(図4の矢印b)。次いで、かかる流体は、収容部51の一方の端部に形成された端面51aに当接され、収容部51の端面51a及び側面51bに沿って発熱体7によって加熱されながら領域空間Bへと移送され(図4の矢印c)、やがて所定温度にまで加熱されて流体排出口53を介して外部空間へと排出される(図2の矢印d)。
【0038】
以上のように、本実施例の流体加熱装置2は、非磁性材料より成り内部空間内に流体が給送される配管5と、配管5の外側に巻回される誘導加熱コイル6と、磁性材料より成り誘導加熱により発熱される発熱体7とを具備してなり、誘導加熱コイル6に高周波電流を流して発熱体7を発熱させ、この発熱体7により配管5内を流れる流体を加熱する流体加熱装置において、配管5は、内部中空を有する筒状の本体部50と、本体部50の軸中心C上に沿って本体部50の内部空間の中途部まで延出されるとともに、本体部50の内部空間と区画されかつ外部空間と連通される収容部51とが設けられ、発熱体7が収容部51に収容されて配設されるため、発熱体7の劣化を防止しつつ、流体の加熱効率を高めることができるのである。
【0039】
すなわち、本実施例の流体加熱装置2は、配管5の構成において、本体部50の内部空間と区画されかつ外部空間と連通される収容部51に収容されるため、発熱体7が本体部50の内部空間を給送される流体中に直接暴露されることなく、各種有機溶剤や反応性ガスなどによって劣化するのを防止し、また発熱体7が流体中で剥離して微粒化したり金属成分が溶出したりして流体を汚染するのを防止することができる。また、発熱体7を外部空間と連通された状態で収容することができるため、誘導加熱コイル6により発熱体7が高温状態になっても、発熱体7自体が熱膨張により変形したり、収容部51内の空気が熱膨張したりすることによって配管5が損傷等するのを防止できる。
【0040】
さらに、収容部51を本体部50の軸中心C上に沿って内部空間の中途部まで延出させることで、収容部51の外側面(本実施例では端面51a及び側面51b)が本体部50の内部空間内に露出されるため、流体に対する発熱体7の加熱領域を大きくして発熱体7から流体への入熱を増大でき、本体部50の内部空間内を給送される流体の加熱効率をより高めることができるとともに、ひいては、装置全体を大型化・複雑化することなく流体を所定温度まで急速加熱することが可能となる。
【0041】
また、本実施例の流体加熱装置2は、収容部51が本体部50と同心円の筒状に形成され、本体部50の内側面50eとの間に所定の離間Dを有するように収容部51が本体部50の軸中心Cと同一軸心上に配設されるため、収容部51と本体部50の内側面50eとの間に形成される領域に向けて収容部51の側面51bが円周方向に均等に露出されるため、かかる領域を流れる流体を均等に加熱することができ、流体の加熱効率をより向上できる。
【0042】
本実施例の流体加熱装置2は、収容部51が本体部50の端面50cに開口された開口部50dの縁部から本体部50の内部方向に向けて延出される隔壁部材54により構成され、隔壁部材54により囲繞された空間内に発熱体7が収容されるため、簡易な構成で収容部51を構成することができ、また発熱体7の収容部51への挿脱が容易である。
【0043】
なお、基板処理装置1及び流体加熱装置2の構成としては、上述した実施例に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0044】
すなわち、上述した実施例の配管5は、各部材(本体部50、収容部51、流体給入口52、及び流体排出口53)が石英ガラスによって成形されるが、少なくとも本体部50及び収容部51が非磁性材料より成形されればよく、また、非磁性材料としては、その他に、アルミナやサファイア等の酸化アルミニウムを用いることができる。
【0045】
上述した実施例の配管5は、本体部50が円筒状に成形された石英ガラスより成形されるが、図5に示すように、さらに本体部50の外周面50aを保護部材55で覆ってダブルチューブ構造として構成されてもよい。保護部材55としては、耐熱性、耐薬品性、及び本体部50の強度補強の観点から、フッ素樹脂材料が好ましく用いられる。このように、本体部50の外周面50aがフッ素樹脂材料より成形される保護部材55により覆われる構成とすることで、石英ガラスより成形される本体部50の強度を高めることができ、また本体部50が破損等した場合であっても、本体部50の内部空間内の流体が系外に漏出するのを防止できる。
【0046】
また、上述した実施例の配管5は、収容部51が本体部50の他方の端部の端面50cに開口された開口部50dの縁部から、本体部50の内部方向に向けて延出される隔壁部材54により構成されるが、かかる収容部51の構成としてはこれに限定されない。例えば、図6に示す実施例のように、本体部150の外周面150aに開口された開口部150dの縁部から、本体部150の内部方向に向けて延出される隔壁部材154により構成されてもよい。
【0047】
かかる実施例の配管105では、本体部150は、外周面150aに開口部150dが形成されるとともに、両端部が閉止されて端面150b・150cが形成されている。収容部151は、本体部150と同心円の略筒状に形成され、本体部150の軸中心C上に沿って内部空間の中途部まで延出されており、両端部が本体部150の内部空間内で閉止されて端面151a・151bが形成されるとともに、外周面151cの一部が開口されて本体部150の外周面150aに形成された開口部150dと連通されている。そして、配管105は、本体部150の開口部150dが上方を向くようにして設置され(図6参照)、発熱体107は、配管105の上方より水平状態で本体部150の開口部150dに挿通されて収容部151内に収容される。収容部151に収容された発熱体107は、上述した実施例と同じく、本体部150の軸中心Cと同一軸心上に配置される。
【0048】
上述した実施例(図2等参照)の配管5は、本体部50に対して、流体給入口52が流体の送給方向の上流側の端面50bに軸中心C上に沿う方向に向けて突設され、流体排出口53が流体の送給方向の下流側の外周面50aに軸中心Cと直交する方向に向けて突設されているが、流体給入口52及び流体排出口53の配置構成はこれに限定されず、例えば、図7に示すように、流体給入52が流体の送給方向の下流側の外周面50aに軸中心Cと直交する方向に向けて突設されてもよい。
【0049】
上述した実施例の発熱体7は、配管5と断面同心円の円柱部材として形成されるが、発熱体7の形状はこれに限定されず、例えば、円筒状や角柱部材として形成されてもよい。
【0050】
上述した実施例の加熱処理装置2は、半導体や液晶ディスプレイの製造装置で用いられる半導体ウェハやガラス基板に対して所定の処理を施す基板処理装置(レジスト剥離装置、塗布/現像装置、ウェハ乾燥装置、薄膜製造装置など)に用いることができるとともに、その他、各種の液体や気体を処理する汎用の流体処理装置(洗浄装置、恒温装置など)に用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 基板処理装置
2 流体加熱装置
3 加熱処理装置
4 処理装置
5 配管
6 誘導加熱コイル
7 発熱体
8 加熱制御装置
50 本体部
51 収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性材料より成り内部空間内に流体が給送される配管と、
前記配管の外側に巻回される誘導加熱コイルと、
磁性材料より成り誘導加熱により発熱される発熱体とを具備してなり、
前記誘導加熱コイルに高周波電流を流して前記発熱体を発熱させ、該発熱体により前記配管内を流れる流体を加熱する流体加熱装置において、
前記配管は、
内部中空を有する筒状の本体部と、
前記本体部の軸中心上に沿って内部空間の中途部まで延出されるとともに、前記本体部の内部空間と区画されかつ外部空間と連通される収容部とが設けられ、
前記発熱体が前記収容部に収容されて配設されることを特徴とする流体加熱装置。
【請求項2】
前記収容部は、前記本体部と同心円の筒状に形成され、前記本体部の内側面との間に所定の離間を有するように前記本体部の軸中心と同一軸心上に配設されることを特徴とする請求項1に記載の流体加熱装置。
【請求項3】
前記収容部は、前記本体部の側面に開口された開口部の縁部から前記本体部の内部方向に向けて延出される隔壁部材により構成され、
前記発熱体が前記隔壁部材により囲繞された空間内に収容されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体加熱装置。
【請求項4】
前記本体部及び収容部は、石英ガラスより成形されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の流体加熱装置。
【請求項5】
前記発熱体は、カーボン系材料より成形されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の流体加熱装置。
【請求項6】
前記本体部は、外周面がフッ素樹脂材料より成形される保護部材により覆われることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の流体加熱装置。
【請求項7】
前記請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の流体加熱装置と、
前記流体加熱装置に流体を供給する流体供給装置と、
前記流体加熱装置により加熱された流体が供給されて基板に対して各種の処理を施す処理装置と、
を具備してなることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−17496(P2011−17496A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162769(P2009−162769)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(594020248)株式会社幸和電熱計器 (11)
【Fターム(参考)】