説明

流体圧アクチュエータ

【課題】第1の流体圧シリンダにおいて流体圧を効率良く発生させることができてコンパクトな流体圧アクチュエータを提供する。
【解決手段】
第1の流体圧シリンダ37からの流体圧を第2の流体圧シリンダ23に付与して第2の流体圧シリンダから駆動力を出力する。第1の流体圧シリンダ37は、第1のシリンダ本体371と、中空の第1のピストン372と、進退する第1のピストンに接して第1のシリンダ本体を閉塞するシール部材47とを備える。第1のピストンに沿ってボールねじ38を挿入する。ボールねじを回転駆動手段40により回転させ、第1のピストンに固設されたナット39を介して第1のピストンを進退させる。第2の流体圧シリンダは、第1の流体圧シリンダからの作動用流体が第2のシリンダ本体231に供給され、第2のピストンの往復動によりピストンロッド233の進退動作を駆動力として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の流体圧シリンダにより生成された流体圧を第2の流体圧シリンダに付与することにより第2の流体圧シリンダから駆動力を出力する流体圧アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、人間の手を模倣したハンド装置等においては、屈伸機能を有する複数の指機構を備えている。そして、従来、各指機構の屈伸動作を駆動するために、流体圧アクチュエータを用いたものが知られている(例えば下記特許文献1参照)。この流体圧アクチュエータは、第1の流体圧シリンダにより生成された流体圧を第2の流体圧シリンダに付与し、第2の流体圧シリンダから出力された駆動力により指機構の屈曲動作を行う。即ち、第1の流体圧シリンダと第2の流体圧シリンダとを流体圧伝達管を介して接続し、第2の流体圧シリンダを指機構が備える関節に付設させる。そして、第1の流体圧シリンダをハンド装置の外部に配設することにより、ハンド装置をコンパクトに構成している。
【0003】
また、第1の流体圧シリンダは、ピストンの後端に連設されたボールねじと、このボールねじに螺合するナットとを備え、モータでナットを回転駆動することによりボールねじと共にピストンが往復動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−126984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、第1の流体圧シリンダは、ピストンによりシリンダ本体内部に形成される圧力室で流体圧を効率良く発生させるため、シリンダ本体内面に対してピストンを気密に摺接させて圧力室への外気の侵入等を防止する必要がある。そこで、ピストンの長さを大とし、ピストンの外径を略全長にわたってシリンダ本体の内径に対応させ、シリンダ本体の内面へのピストンの接触面積を大とすることで圧力室の気密性を得ることが考えられる。そして、ピストンの長さは、少なくともシリンダ本体内部の全長と同等とすることが好ましい。
【0006】
しかし、上記従来のようにピストンの後端にボールねじを連設した構成では、ピストンの長さをシリンダ本体内部の全長と同等とした場合に、ボールねじが極めて長い距離にわたってピストンの後方に延出する。このため、第1の流体圧シリンダをコンパクトに構成することができない。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑み、第1の流体圧シリンダにおいて流体圧を効率良く発生させることができ、しかも第1の流体圧シリンダをコンパクトに構成することができる流体圧アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の流体圧シリンダにより生成された流体圧を第2の流体圧シリンダに付与することにより第2の流体圧シリンダから駆動力を出力する流体圧アクチュエータにおいて、前記第1の流体圧シリンダは、第1のシリンダ本体と、該第1のシリンダ本体の一方端から挿入されて進退自在の中空の第1のピストンと、該第1のピストンの進退移動を許容しつつ前記第1のシリンダ本体を閉塞するシール部材と、該第1のピストンの軸線に沿って該ピストン内に挿入されるボールねじと、該ボールねじに螺合し且つ前記第1のピストンに固設されたナットと、前記ボールねじを回転駆動することにより前記ナットを介して前記第1のピストンを進退させる回転駆動手段とを備え、前記第2の流体圧シリンダは、前記第1の流体圧シリンダからの作動用流体が供給される第2のシリンダ本体と、該第2のシリンダ本体内を往復動自在の第2のピストンと、該第2のピストンに連設され、該第2のピストンの往復動に伴う進退動作を駆動力として出力するピストンロッドとを備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成により、回転駆動手段がボールねじを回転駆動すると、ボールねじの回転方向に応じてナットが移動する。ナットは第1のピストンに固設されているので、ナットと共に第1のピストンが移動する。第1のピストンの移動により第1のシリンダ本体で流体圧が生成され、この流体圧が前記第2の流体圧シリンダの第2のシリンダ本体に供給されて第2のピストンが作動する。
【0010】
そして、本発明においては、第1のピストンが中空に形成されていてその内部にボールねじが挿入するようになっているので、第1のピストンが後退したときにはボールねじが第1のピストンの内部に収容される。これによって、従来のようにボールねじをピストンに連設した構成とは異なり、第1の流体圧シリンダをコンパクトに構成しながら、第1のピストンを第1のシリンダ本体内部の全長と同等とすることができる。しかも、前記シール部材が設けられていることによって、第1のピストンが進退する際に、前記第1のシリンダ本体を閉塞した状態を確実に維持することができ、第1のシリンダ本体の気密性を向上して流体圧を効率良く発生させることができる。
【0011】
なお、前記作動用流体として採用されるものとして、エア等の気体や油等の液状流体が挙げられるが、第1の流体圧シリンダに対する第2の流体圧シリンダの応答性を考慮すると、非圧縮性流体である油等の液状流体を前記作動用流体として採用するのが望ましい。
【0012】
ここで、前記作動用流体として液状流体を採用した場合に、第1のシリンダ本体内部の液状流体にエアが混入していると、第1の流体圧シリンダに対する第2の流体圧シリンダの応答性が低下するおそれがある。第1のシリンダ本体は、前記シール部材により閉塞されているためエアの混入は防止できる反面、万一他部から侵入したエアが液状流体に混入した場合には第1のシリンダ本体の内部からエアを抜くことが困難となる。
【0013】
そこで、本発明においては、前記作動用流体として用られる液状流体を貯留する流体貯留タンクを設け、前記第1の流体圧シリンダを、前記第1のシリンダ本体の前記一方端を上方として前記第1のピストンの後退方向が上方向となる姿勢に設け、該第1のシリンダ本体の上端部に、後退した前記第1のピストンの先端を非接触状態で収容する収容部を設け、該収容部に、前記流体貯留タンクに接続されて液状流体を導通させる導通孔と、該導通孔の上方に形成されて前記第1のシリンダ本体内部のエアを導出するエア抜き孔とを設けることが好ましい。
【0014】
これによれば、万一作動用流体たる液状流体に混入したエアが第1のシリンダ本体の内部に侵入しても、第1のピストンを後退させてその先端を前記収容部に収容するだけで、容易にエアを抜くことができる。即ち、前記第1のシリンダ本体がその一方端(第1のピストンの挿入側)を上方として前記第1のピストンの後退方向が上方向となる姿勢に設けられていることにより、第1のシリンダ本体内部のエアは上方側に向かう。第1のピストンを上方に後退させて、前記第1のシリンダ本体の上端部にある収容部に第1のピストンの先端を収容すると、収容部と第1のピストンの先端との間にエアが入り込む。そして、収容部と第1のピストンの先端との間に入り込んだエアは収容部に形成された前記エア抜き孔から第1のシリンダ本体の外部に導出される。
【0015】
また、収容部には前記流体貯留タンクに接続された導通孔が形成されている。これによれば、第1のピストンを下方に前進させてその先端が前記収容部から脱出する際に、収容部が負圧となって流体貯留タンクの液状流体が収容部内に引き込まれるので、収容部のエアと液状流体とを置換して収容部に液状流体を充填することができる。従って、エアが抜けたことによる第1のシリンダ本体内部の液状流体の充填量の減少を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の流体圧アクチュエータを採用した実施形態を示す説明図。
【図2】本実施形態の流体圧アクチュエータにより駆動する指機構を示す説明的断面図。
【図3】流体圧アクチュエータの要部の説明的断面図。
【図4】流体圧アクチュエータの作動を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の流体圧アクチュエータを駆動手段として採用したハンド装置1を示している。ハンド装置1は、人間の手を模倣したハンド本体2と、ハンド本体2を駆動する流体圧アクチュエータ3とにより構成され、所謂ヒューマノイドロボットに好適に用いることができるものである。
【0018】
ハンド本体2は、基部4と、5本の指に夫々対応する屈伸機能を有した5つの指機構である拇指機構5、示指機構6、中指機構7、環指機構8、及び小指機構9とを備えている。基部4は、各指機構を連結支持するフレーム10を備え、基部4の表側が手の甲とされ裏側が手の平とされる。図1においては、ハンド本体2の手の平側を示している。各指機構は、各関節を露出させて指表皮部材11により被覆され、基部4は基部表皮部材12により被覆されている。
【0019】
流体圧アクチュエータ3は、拇指機構5、示指機構6、中指機構7、環指機構8、及び小指機構9の屈伸動作を駆動する。
【0020】
ここで、示指機構6の構成について説明する。示指機構6は、図2に示すように、指先側から順に、DIP関節13(遠位指節間関節)、PIP関節14(近位指節間関節)、MP1関節15、及びMP2関節16を備えて、各関節毎に回動自在とされている。
【0021】
DIP関節13は1軸で回動し、PIP関節14はDIP関節13と平行の軸線回りに1軸で回動する。MP1関節15及びMP2関節16は2軸で回動する中手指節関節を構成するものであって、MP1関節15はPIP関節14と平行の軸線回りに回動し、MP2関節16はMP1関節15に交差する軸線回りに回動する。
【0022】
DIP関節13と、PIP関節14と、MP1関節15とは、基部4の手の平側に向かう方向に回動して握り動作等の屈伸運動が行えるようになっている。MP2関節16は、各指機構同士が近接・離間する方向に各指機構を揺動させ、例えば手を広げる動作等が行えるようになっている。
【0023】
図2に示すように、示指機構6は、MP1関節15の回動軸151を回動させる第1の従動流体圧シリンダ23(第2の流体圧シリンダ)と、PIP関節14の回動軸141を回動させる第2の従動流体圧シリンダ24(第2の流体圧シリンダ)とを備えている。
【0024】
第1の従動流体圧シリンダ23のシリンダ本体231(第2のシリンダ本体)は、人間の中手骨に相当し、MP2関節16の回動軸161により回動自在に前記基部4のフレーム10(図1参照)に支持されている。第2の従動流体圧シリンダ24のシリンダ本体241(第2のシリンダ本体)は、人間の基節骨に相当し、MP1関節15の回動軸151を介して第1の従動流体圧シリンダ23に回動自在に連結されている。
【0025】
第2の従動流体圧シリンダ24のシリンダ本体241に作動用流体である作動油を供給する配管244は、MP1関節15の回動軸151の内部に収容されている。これにより、MP1関節15の回動時に配管244が邪魔にならず、示指機構6の屈伸動作を円滑に行うことができる。
【0026】
また、第2の従動流体圧シリンダ24のシリンダ本体241を示指機構6の長手方向に沿ってMP1関節15とPIP関節14との間に配設することにより、示指機構6をコンパクトに構成することができる。
【0027】
PIP関節14には、人間の中節骨に相当する連結部材25を介してDIP関節13が連結されている。DIP関節13の回動軸131には、指先部材22が回動自在に連結されている。連結部材25は、その一端がPIP関節14の回動軸141に回動自在に連結され、他端がDIP関節13の回動軸131に連結されている。更に、PIP関節14とDIP関節13との間には、リンク部材27が設けられている。リンク部材27は、第2の従動流体圧シリンダ24のシリンダ本体241と指先部材22とを連結する。
【0028】
第1の従動流体圧シリンダ23は、シリンダ本体231内部に作動油が供給されることによりピストン232(第2のピストン)が摺動し、ピストンロッド233が伸縮してMP1関節15を回動させる。これにより、示指機構6がMP1関節15を介して屈伸する。
【0029】
第2の従動流体圧シリンダ24は、シリンダ本体241内部に作動油が供給されることによりピストン242(第2のピストン)が摺動し、ピストンロッド243が伸縮してPIP関節14を回動させる。このとき、PIP関節14とDIP関節13とが、連結部材25とリンク部材27とにより連結されているので、第2の従動流体圧シリンダ24によるPIP関節14の回動に追従してDIP関節13が回動する。
【0030】
DIP関節13は、第2の従動流体圧シリンダ24によるPIP関節14の回動に連動するように構成されているので、人間の指の動きに近い動作が得られるだけでなく、DIP関節13を駆動するためのシリンダ等が不要となり、示指機構6を軽量に構成することができる。
【0031】
以上の構成により、示指機構6は、第1の従動流体圧シリンダ23及び第2の従動流体圧シリンダ24のピストンロッド231,241を伸長させることにより折り曲げ状態となり、ピストンロッド231,241を収縮させることにより延ばし状態となる。なお、示指機構6のMP2関節16は、図外の第3の従動流体圧シリンダにより回動される。
【0032】
以上、示指機構6の構成を詳しく述べたが、他の指機構も略同様の構成を備えているのでその説明を省略する。
【0033】
流体圧アクチュエータ3は、図1に示すように、ハンド本体2の外部に設けられた駆動シリンダユニット35と、この駆動シリンダユニット35を介してハンド本体2を制御するコントローラ36と、前述した示指機構6の従動流体圧シリンダ23,24を従動流体圧シリンダ含む各指機構の従動流体圧シリンダにより構成される。
【0034】
駆動シリンダユニット35は、図1に示すように、複数の駆動流体圧シリンダ37を備えている。駆動シリンダユニット35の各駆動流体圧シリンダ37は、ハンド本体2に内蔵されている前述の従動流体圧シリンダ23,24に、1つずつ対応して設けられ、駆動シリンダユニット35の各駆動流体圧シリンダ37とハンド本体2の各従動流体圧シリンダ23,24とは夫々が流体圧伝達管45を介して各別に接続される。即ち、駆動流体圧シリンダ37は本発明の第1の流体圧シリンダであり、従動流体圧シリンダ23,24は本発明の第2の流体圧シリンダである。
【0035】
駆動流体圧シリンダ37は、図3に示すように、内部に作動用流体としての作動油を収容するシリンダ本体371(第1のシリンダ本体)と、シリンダ本体371の内部に作動油による圧力室37aを形成して往復動自在のピストン372(第1のピストン)とを備えている。ピストン372は、先端が閉塞され、基端が開放された中空の胴部372aを備えている。胴部372aは、シリンダ本体371の全長に相当する長さを有し、その周壁がシリンダ本体371の内径に摺接する外径に形成されている。胴部372aの先端には、ゴム製のガスケット372bが設けられている。
【0036】
また、ピストン372の胴部372aの開放された一方端からは、胴部372aの軸線に沿ってボールねじ38が挿入され、ボールねじ38に螺合するナット39が胴部372aに固設されている。ボールねじ38は、モータ40(回転駆動手段)により回転駆動され、これによりナット39を介してピストン372が進退される。また、モータ40には、作動量を検出するためのエンコーダ41が設けられている。
【0037】
モータ40は、プーリ42,43に掛けわたされたベルト44を介してボールねじ38を回転駆動する。これにより、モータ40の出力軸401とピストン372の胴部372aとの軸線が平行となり、モータ40をシリンダ本体371に隣設することができてコンパクトに形成される。
【0038】
駆動流体圧シリンダ37は、シリンダ本体371の前記一方端を上方としてのピストン372の後退方向が上方向となる姿勢(即ち、圧力室37aが下側に位置する姿勢)に設けられている。駆動流体圧シリンダ37には、上方に後退したピストン372を回転不能の状態で上下方向に案内するガイド部材373が連設され、ガイド部材373の上端にはベアリング45を介してボールねじ38を回転自在に支持する支持部材46が連設されている。
【0039】
ガイド部材373とシリンダ本体371との間には、ピストン372の外周に接してシールする環状のシール部材47を備えてガイド部材373とシリンダ本体371とを連結する連結ブロック374が一体に設けられている。こうすることにより、ピストン372の進退動作時であってもシール部材47によりシリンダ本体371の閉塞された状態が確実に維持され、シリンダ本体371の気密性を向上して作動油圧を効率良く発生させることができる。
【0040】
また、連結ブロック374の内周面には、シリンダ本体371よりも内径が大とされてシリンダ本体371の上端側に後退したピストン372の先端部を収容する収容部374aが形成されており、シリンダ本体371の上端にはシリンダ本体371の圧力室37aから次第に各径して収容部374aに連続するテーパ部37bが形成されている。収容部374aは、ピストン372との間に空隙sを形成し、収容部374aにピストン372の先端部が収容されたときには、シリンダ本体371の圧力室37aがテーパ部37bを介して収容部374aとピストン372との間の空隙sに連通する。
【0041】
また、駆動シリンダユニット35は、各駆動流体圧シリンダ37に接続される流体貯留タンク48を備えている。流体貯留タンク48は、作動用流体として用いる作動油(液状流体)を貯留する。そして、前記収容部374aには、流体貯留タンク48に第1配管481を介して接続されて作動油を導通させる導通孔374bと、該導通孔374bの上方に形成されてシリンダ本体371内部のエアを収容部374aから導出するエア抜き孔374cとが形成されている。エア抜き孔374cは、第2配管482を介して流体貯留タンク48に接続されている。なお、第1配管481は流体貯留タンク48内の作動油の貯留位置に接続され、第2配管482は流体貯留タンク48の作動油上のエア溜まりの位置に接続されている。
【0042】
以上の構成により、図4(a)及び(b)に模式的に示すように、駆動流体圧シリンダ37の内部に流体を送出・吸入すれば、それに対応して各従動流体圧シリンダ23(24)では流体が圧入・排出され、従動流体圧シリンダ37による指機構6の駆動が行われる。このとき、コントローラ36がモータ40を介して駆動流体圧シリンダ37における流体の送出量及び吸入量を制御することにより、従動流体圧シリンダ23(24)によって指機構6に所望の屈伸作動を行わせることができる。なお、指機構6だけでなく、指機構6と同様の構成を有する他の指機構5,7,8,9においても同様に動作させることができる。
【0043】
更に、図3に示すように、駆動流体圧シリンダ37のシリンダ本体371は、圧力室37aが下側に位置する姿勢に設けられていることにより、万一作動油に混入したエアがシリンダ本体371の内部に侵入しても、エアはシリンダ本体371の上方に向かう。従って、ピストン372を後退させてその先端を収容部374aに収容することによって、シリンダ本体371の圧力室37aのエアがテーパ部37bを介して収容部374aとピストン372との間の空隙sに入り込み、エア抜き孔374cから流体貯留タンク48のエア溜まりに排出される。
【0044】
そして、ピストン372が下方に移動すると、ピストン372の先端がテーパ部37bを経てシリンダ本体371の圧力室37aに入り、エアが排出された圧力室37aにより確実に作動油圧を得ることができる。しかも、ピストン372がテーパ部37bから圧力室37aに侵入するとき、収容部374aが負圧となって流体貯留タンク48の作動油が収容部374a内に引き込まれるので、収容部374aに作動油を充填することができる。従って、エアが抜けたことによるシリンダ371本体内部の作動油の充填量の減少を防止することができる。
【0045】
なお、本実施形態においては、本発明の流体圧アクチュエータを人間の手を模倣した指機構に採用した例を示したが、これに限るものではなく、例えば、他の屈曲機構等の駆動源として本発明の流体圧アクチュエータを好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0046】
3…流体圧アクチュエータ、23,24…従動流体圧シリンダ(第2の流体圧シリンダ)、231,241…シリンダ本体(第2のシリンダ本体)、232,242…ピストン(第2のピストン)、233,243…ピストンロッド、37…駆動流体圧シリンダ(第1の流体圧シリンダ)、371…シリンダ本体(第1のシリンダ本体)、372…ピストン(第1のピストン)、374a…収容部、374b…導通孔、374c…エア抜き孔、38…ボールねじ、39…ナット、40…モータ(回転駆動手段)、47…シール部材、48…流体貯留タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流体圧シリンダにより生成された流体圧を第2の流体圧シリンダに付与することにより第2の流体圧シリンダから駆動力を出力する流体圧アクチュエータにおいて、
前記第1の流体圧シリンダは、第1のシリンダ本体と、該第1のシリンダ本体の一方端から挿入されて進退自在の中空の第1のピストンと、該第1のピストンの進退移動を許容しつつ前記第1のシリンダ本体を閉塞するシール部材と、該第1のピストンの軸線に沿って該第1のピストン内に挿入されるボールねじと、該ボールねじに螺合し且つ前記第1のピストンに固設されたナットと、前記ボールねじを回転駆動することにより前記ナットを介して前記第1のピストンを進退させる回転駆動手段とを備え、
前記第2の流体圧シリンダは、前記第1の流体圧シリンダからの作動用流体が供給される第2のシリンダ本体と、該第2のシリンダ本体内を往復動自在の第2のピストンと、該第2のピストンに連設され、該第2のピストンの往復動に伴う進退動作を駆動力として出力するピストンロッドとを備えることを特徴とする流体圧アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載の流体圧アクチュエータにおいて、
液状流体を前記作動用流体として用いてこの液状流体を貯留する流体貯留タンクを設け、
前記第1の流体圧シリンダを、前記第1のシリンダ本体の前記一方端を上方として前記第1のピストンの後退方向が上方向となる姿勢に設け、
該第1のシリンダ本体の上端部に、後退した前記第1のピストンの先端を非接触状態で収容する収容部を設け、
該収容部に、前記流体貯留タンクに接続されて液状流体を導通させる導通孔と、該導通孔の上方に形成されて前記第1のシリンダ本体内部のエアを導出するエア抜き孔とを設けたことを特徴とする流体圧アクチュエータ。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−58564(P2011−58564A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208932(P2009−208932)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】