説明

流体封入式防振装置とその製造方法

【課題】ベース金具と筒状嵌着金具の嵌着固定部においてシール性能を確保しながら、それらベース金具と筒状嵌着金具の同軸度や平行度の精度を向上させることができる、新規な構造の流体封入式防振装置とその製造方法を提供する。
【解決手段】嵌着固定部128におけるシールゴム148によるシール部分144よりも筒状嵌着金具36が軸方向外方に延び出されてかしめ筒部146が形成されている一方、ベース金具102におけるかしめ筒部146の外挿部分に位置決め突部130,132が形成されており、シール部分144における筒状嵌着金具36の縮径量が位置決め突部130,132の外周面に対するかしめ筒部146の当接によって規定されて径方向位置決め部とされていると共に、かしめ筒部146が縮径されて位置決め突部130,132の軸方向エッジ部134,136に係止されて軸方向位置決め部とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンマウント等に適用される防振装置に係り、流体室に封入された流体の流動作用に基づいた防振効果を利用する流体封入式防振装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、非圧縮性流体が封入された流体室を設けて、振動入力時に惹起される流体の流動作用を利用して防振効果を得るようにした流体封入式防振装置が知られている。流体封入式防振装置では、第1の取付部材と第2の取付部材が本体ゴム弾性体で弾性連結されていると共に、本体ゴム弾性体によって流体室の壁部の一部が構成されることで振動が流体室に及ぼされるようになっている。また、近年では、より高度な防振特性を実現するために、電磁式アクチュエータを設けて流体室の圧力を積極的にコントロールする能動型の流体封入式防振装置も提案されている(特許文献1(特開2005−273682号公報))。
【0003】
ところで、このような流体封入式防振装置では、非圧縮性流体を封入したり電磁式アクチュエータを取り付けたりするために第2の取付部材を分割し、ベース金具の外周面に筒状嵌着金具を外挿してシールゴムを挟んで縮径かしめ固定した構造が、好適に採用されている。かかる構造によれば、縮径かしめによる嵌着固定部にシールゴムを介在させることで、流体室の流体密性を確保したり、電磁式アクチュエータ内部へのダストの入り込みを防止することができる。
【0004】
しかし、嵌着固定部にシールゴムが挟み込まれていると、縮径かしめに際しての縮径量のコントロールが難しいという問題があった。例えば、シールゴムに過度の変形が及ぼされると耐久性に悪影響が出るおそれがある一方、シールゴムへの圧縮量が小さいと充分なシール性能が得られないおそれがあり、また、縮径量のばらつきに因ってベース金具と筒状嵌着金具との同軸度や平行度の精度が低下するおそれもあった。
【0005】
特に、能動型の流体封入式防振装置では、電磁式アクチュエータの支持部を構成するベース金具と筒状嵌着金具の連結部分において、加振力を効率的に伝達するために同軸度や平行度の精度とその耐久性の要求が一段と高い。それ故、嵌着固定部において、シール性能を確保しつつ、寸法精度や固定強度および耐久性の更なる向上が希求されていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−273682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、ベース金具と筒状嵌着金具の嵌着固定部においてシール性能を確保しながら、それらベース金具と筒状嵌着金具の同軸度や平行度の精度を向上させることができる、新規な構造の流体封入式防振装置とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の第1の態様は、第1の取付部材と第2の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されていると共に、非圧縮性流体が封入されて振動が入力される流体室が形成されている一方、該第2の取付部材においてベース金具の外周面に対して筒状嵌着金具が外挿されてシールゴムを挟んで縮径かしめ固定された嵌着固定部が設けられた流体封入式防振装置であって、前記嵌着固定部における前記シールゴムによるシール部分よりも前記筒状嵌着金具が軸方向外方に延び出されてかしめ筒部が形成されている一方、前記ベース金具における該かしめ筒部の外挿部分に位置決め突部が形成されており、該シール部分における該筒状嵌着金具の径方向位置が該位置決め突部の外周面に対する該かしめ筒部の当接によって規定されて径方向位置決め部とされていると共に、該かしめ筒部が縮径されて該位置決め突部の軸方向エッジ部に係止されて軸方向位置決め部とされていることを特徴とする。
【0009】
このような第1の態様に記載された流体封入式防振装置によれば、ベース金具と筒状嵌着金具の嵌着固定部において、シールゴムによるシール部分と、縮径かしめによるかしめ筒部が、別々に設けられている。これにより、筒状嵌着金具においてシール部分とかしめ筒部にそれぞれ適当な縮径変形量を設定することが可能とされて、シール部分においてシールゴムを破断しない程度に充分に圧縮して、耐久性を確保しながらダスト等の異物の侵入を防ぐことができると共に、かしめ筒部においてベース金具と筒状嵌着金具の充分な固定強度を得ることができる。
【0010】
また、上記の如くシール部分とかしめ筒部が分離されていることから、かしめ筒部では、ベース金具(位置決め突部)と筒状嵌着金具(かしめ筒部)を強く押し付けることができる。それ故、かしめ筒部の縮径変形後に、スプリングバックによってかしめ筒部の形状が多少復元したとしても、かしめ筒部が位置決め突部に対して充分に強く押し付けられて、径方向および軸方向で位置決め作用が有効に発揮される。
【0011】
また、ベース金具と筒状嵌着金具のかしめ筒部は、何れも硬質とされており、ゴム等の弾性体を介することなく直接的に押し当てられることから、それらベース金具と筒状嵌着金具が径方向および軸方向で高精度に位置決めされる。更に、ゴム等のへたりに起因するベース金具と筒状嵌着金具のがたつき等も回避されて、位置決め精度が長期的に維持される。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記第2の取付部材に支持されるコイルを備えた固定子と、該固定子に対して軸方向で相対変位可能とされた可動子とを有する電磁式アクチュエータが配設されており、該可動子に連結された加振部材によって前記流体室の壁部の一部が構成されて該可動子の加振力が該流体室に及ぼされるようになっている一方、前記ベース金具が該電磁式アクチュエータの該固定子に設けられるハウジング金具によって構成されており、該ハウジング金具に前記筒状嵌着金具が外挿されて縮径かしめ固定されているものである。
【0013】
第2の態様によれば、防振装置本体と電磁式アクチュエータの間で特に同軸度や平行度に高い精度を要求される流体封入式能動型防振装置において、防振装置本体を構成する筒状嵌着金具と電磁式アクチュエータのハウジング金具が高精度に位置決めされることにより、加振力の効率的な伝達が実現される。
【0014】
しかも、縮径加工時に、位置決め突部の外周面とかしめ筒部の内周面との当接によって、シール部分の径方向位置(縮径変形後の直径)が規定されてシールゴムの圧縮量が適当に設定されることから、優れたシール性能が実現されて、ハウジング金具内への異物の侵入に起因する能動的な防振効果の低下や電磁式アクチュエータの故障等が回避される。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記かしめ筒部が縮径されて前記位置決め突部の軸方向外側エッジ部に係止されることにより、前記軸方向位置決め部としての軸方向抜止部が構成されているものである。
【0016】
第3の態様によれば、位置決め突部において軸方向エッジ部が軸方向外側に設けられており、その軸方向外側エッジ部にかしめ筒部が係止されて構成される軸方向抜止部によって、筒状嵌着金具とベース金具の連結固定において特に問題となり易い筒状嵌着金具とベース金具の抜け(分離)が防止される。
【0017】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記かしめ筒部が縮径されて前記位置決め突部の軸方向内側エッジ部に係止されることにより、前記軸方向位置決め部としての軸方向挿入規定部が構成されているものである。
【0018】
第4の態様によれば、位置決め突部において軸方向エッジ部が軸方向内側に設けられており、その軸方向内側エッジ部にかしめ筒部が係止されて構成される軸方向挿入規定部によって、筒状嵌着金具とベース金具の押込み方向への相対変位が防止される。
【0019】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、軸方向に離隔して複数の前記位置決め突部が形成されており、隣り合う該位置決め突部の軸方向間で前記かしめ筒部が縮径されて隣り合う該位置決め突部の軸方向対向側エッジ部に係止されることにより、前記軸方向位置決め部としての軸方向抜止部及び軸方向挿入規定部が構成されているものである。
【0020】
第5の態様によれば、軸方向エッジ部が隣り合う位置決め突部の軸方向対向側にそれぞれ設けられており、それら軸方向対向側エッジ部にかしめ筒部が係止されることによって、軸方向抜止部と軸方向挿入規定部が構成されている。これにより、筒状嵌着金具とベース金具の抜け方向での相対変位が軸方向抜止部によって防止されると共に、筒状嵌着金具とベース金具の押込み方向での相対変位が軸方向挿入規定部によって防止されることから、筒状嵌着金具とベース金具が軸方向で所定の相対位置に位置決めされる。
【0021】
しかも、かしめ筒部が隣り合う位置決め突部の軸方向間で縮径されて、それら隣り合う位置決め突部の軸方向対向側エッジ部に係止されることで、軸方向両側への位置決めが実現されることから、かしめ筒部を1箇所で縮径することにより軸方向両側での位置決め作用を得ることができる。
【0022】
また、複数の位置決め突部の外周面に対するかしめ筒部の当接によって、複数の径方向位置決め部が軸方向で相互に離隔して設けられることから、シールゴムの圧縮量をより高精度に設定することができると共に、筒状嵌着金具とベース金具の径方向での位置決めがより効果的に実現されて、特にそれら筒状嵌着金具とベース金具の相対的な傾斜が防止される。
【0023】
本発明の第6の態様は、第1〜第5の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記軸方向エッジ部が90度〜100度の角度を有する角形状とされているものである。
【0024】
第6の態様によれば、90度〜100度の角形状とされた軸方向エッジ部が、かしめ筒部に食い込むことにより、軸方向位置決め部において筒状嵌着金具とベース金具の相対的な軸方向変位に対する抗力(位置決め作用)が、より効果的に発揮される。
【0025】
また、本発明の第7の態様は、第1〜第6の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置の製造方法であって、前記ベース金具に前記筒状嵌着金具を外挿して、該筒状嵌着金具における前記シールゴムによるシール部分と前記かしめ筒部とに対して同時に縮径加工を施すことにより、該シール部分における該筒状嵌着金具の径方向位置を前記位置決め突部の外周面に対する該かしめ筒部の当接によって規定して前記径方向位置決め部を構成すると共に、該筒状嵌着金具における縮径加工に際しての縮径変形量を、該かしめ筒部の前記位置決め突部への外挿部分に比して該かしめ筒部の該位置決め突部を外れた部分において大きくすることにより前記軸方向位置決め部を構成することを特徴とする。
【0026】
このような第7の態様に従う流体封入式防振装置の製造方法によれば、シール部分における筒状嵌着金具の径方向位置(縮径変形後の直径)を、位置決め突部の外周面に対する該かしめ筒部の当接によって規定すると共に、かしめ筒部の位置決め突部を外れた部分が、かしめ筒部の位置決め突部への外挿部分よりも大きく縮径変形されることから、シールゴムを損傷させることなく、径方向での位置決め作用と、軸方向での抜けや押込みに対する抗力を、何れも有効に得ることができる。
【0027】
しかも、シール部分とかしめ筒部が同時に縮径加工されることから、製造工程数の増加も防止されて、本発明に従う構造の流体封入式防振装置を容易に製造することができる。
【0028】
なお、好適には、筒状嵌着金具におけるシール部分とかしめ筒部が縮径加工前の原形状で同じ内外径寸法の円筒形状とされていると共に、筒状嵌着金具がベース金具に外挿されて縮径加工される際、シール部分と位置決め突部への外挿部分とで同じ縮径変形量とされる。これにより、シール部分の縮径変形量が、位置決め突部への外挿部分の縮径変形量によって規定されて、シールゴムの圧縮量を精度良く調節することができる。その結果、縮径変形量の不足によるシール不良や、縮径変形量の過剰によるシールゴムの損傷等が防止される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、筒状嵌着金具においてシール部分よりも軸方向外方に延び出すかしめ筒部が、ベース金具の位置決め突部に対して縮径かしめ固定されることにより、筒状嵌着金具とベース金具がゴム等を介することなく当接して位置決めされることから、筒状嵌着金具とベース金具が高精度に位置決めされると共に、位置決め精度が安定して維持される。しかも、位置決め突部の外周面とかしめ筒部の内周面との当接によってシール部分の径方向位置が規定されることにより、シールゴムの圧縮変形量が損傷を生じることなく且つ有効なシール性能が発揮される程度に設定されて、優れた耐久性とシール性能を両立して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図。
【図2】図1に示されたエンジンマウントの要部を拡大して示す縦断面図。
【図3】図1に示されたエンジンマウントにおいて、筒状嵌着金具の上ヨーク金具への縮径かしめ固定前の状態を示す要部拡大縦断面図。
【図4】上ヨーク金具の筒状嵌着金具からの抜きに対する抗力を示すグラフ。
【図5】本発明の第2の実施形態としてのエンジンマウントの要部を拡大して示す縦断面図。
【図6】本発明の第3の実施形態としてのエンジンマウントの要部を拡大して示す縦断面図。
【図7】本発明の第4の実施形態としてのエンジンマウントの要部を拡大して示す縦断面図。
【図8】本発明の第5の実施形態としてのエンジンマウントの要部を拡大して示す縦断面図。
【図9】本発明の第6の実施形態としてのエンジンマウントの要部を拡大して示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第1の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第1の取付部材12と第2の取付部材14を本体ゴム弾性体16によって弾性連結した構造を有しており、第1の取付部材12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第2の取付部材14が外嵌されたアウタブラケット17を介して図示しない車両ボデーに取り付けられることにより、パワーユニットと車両ボデーを防振連結するようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、図1中の上下方向をいう。
【0033】
より詳細には、第1の取付部材12は、金属材料等で形成された高剛性の部材であって、上側が小径とされた略段付き円柱形状の本体部18と、本体部18の段部において外周側に突出するフランジ部20を、一体的に備えている。また、本体部18には、上面に開口して中心軸上を延びるねじ孔22が形成されており、ねじ孔22に対して植込みボルト24が螺着されている。
【0034】
一方、第2の取付部材14は、中間金具26を含んで構成されている。中間金具26は、薄肉大径の略円筒状で、下端部が径方向内側に向かって内フランジ状に突出した形状とされており、第1の取付部材12と同様の金属材料等で形成された高剛性の部材とされている。
【0035】
そして、第1の取付部材12と中間金具26は、径方向および軸方向に離隔して同一中心軸上に配置されており、本体ゴム弾性体16によって相互に弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、厚肉大径の略円錐台形状を呈しており、小径側端部に第1の取付部材12の本体部18が加硫接着されていると共に、大径側端部の外周面に中間金具26の内周面が重ね合わされて加硫接着されている。
【0036】
また、本体ゴム弾性体16には、ストッパゴム28が一体形成されている。ストッパゴム28は、本体ゴム弾性体16の小径側端部から延び出して第1の取付部材12のフランジ部20の外周面および上面を覆うように固着されており、フランジ部20の上面から上方に突出して、アウタブラケット17の上底部と軸方向で対向している。
【0037】
また、本体ゴム弾性体16の大径側端面には、中央凹所30が開口している。中央凹所30は、逆向きの略すり鉢状乃至は略円柱状の凹所であって、下方に向かって開口している。
【0038】
また、中間金具26には、可撓性膜32が取り付けられている。可撓性膜32は、薄肉の略円板形状乃至は略ドーム形状を呈するゴム膜であって、上下方向に充分な弛みを有している。また、可撓性膜32の外周縁部には略円筒形状の固着部34が一体形成されており、固着部34が筒状嵌着金具36に加硫接着されている。筒状嵌着金具36は、段付きの略円筒形状とされており、下側に位置する小径部分の内周面に固着部34が加硫接着されていると共に、上側に位置する大径部分が中間金具26に外挿されてから縮径加工されることにより、中間金具26に嵌着されている。このように筒状嵌着金具36が中間金具26に外嵌固定されて第2の取付部材14の一部とされることにより、可撓性膜32が第2の取付部材14に取り付けられて、第2の取付部材14を上下に仕切るように可撓性膜32が軸直角方向で広がって配設されている。なお、筒状嵌着金具36の大径部分の内周面が薄肉のゴム弾性体で形成されたシールゴム層38で被覆されており、中間金具26と筒状嵌着金具36がシールゴム層38を介して流体密に組み付けられている。
【0039】
このように可撓性膜32が第2の取付部材14に取り付けられることにより、本体ゴム弾性体16と可撓性膜32の対向面間には、外部から密閉された流体封入領域40が形成されて、非圧縮性流体が封入されている。なお、流体封入領域40に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、例えば、水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液等が好適に採用される。更に、後述する流体の流動作用に基づく防振効果をより効果的に発揮させるためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体が望ましい。
【0040】
また、流体封入領域40には、仕切部材42が配設されている。仕切部材42は、略円板形状の部材であって、仕切部材本体44と蓋部材46を有している。仕切部材本体44は、厚肉の略円板形状を呈しており、中央部分に円柱状の収容凹所48が形成されて上方に開口していると共に、外周部分に1周弱の長さで周方向に延びる周溝50が形成されて上方に開口している。
【0041】
蓋部材46は、仕切部材本体44よりも小径の薄肉円板形状を呈しており、仕切部材本体44の上面に重ね合わされて固定されている。かかる蓋部材46の仕切部材本体44への取付けによって、収容凹所48の開口部が蓋部材46で覆われて収容空所が形成されていると共に、周溝50の開口部が蓋部材46で覆われてトンネル状の通路が形成されている。なお、仕切部材本体44と蓋部材46は、仕切部材本体44から上方に突出するかしめ突起が、蓋部材46に貫通形成されたかしめ孔に挿通されてから上端部を拡径されて、該かしめ孔の開口部周縁に係止されることによって固定されている。
【0042】
そして、仕切部材42は、中間金具26と筒状嵌着金具36の蹴上部分との軸方向対向面間に仕切部材本体44の外周縁部が挟み込まれることにより、第2の取付部材14によって支持されて、流体封入領域40において軸直角方向に広がっている。このように仕切部材42が配設されることにより、流体封入領域40は、仕切部材42を挟んで上下に隔てられており、仕切部材42よりも上側に位置する部分が、壁部の一部を本体ゴム弾性体16で構成された受圧室56とされている。
【0043】
また、仕切部材42と可撓性膜32の軸方向間には、加振部材58が配設されている。加振部材58は、小径の略カップ形状乃至は略有底円筒形状を呈する金具であって、エンジンマウント10の中心軸上に配設されている。
【0044】
さらに、加振部材58の外周側には、環状の支持部材60が配設されている。支持部材60は、周方向環状に延びる環状溝部62と、環状溝部62の外周壁部の上端から外側に突出する円環板形状の支持フランジ64とを、一体的に備えた構造とされている。また、支持部材60の環状溝部62の内径寸法が加振部材58の外径寸法よりも大きくされており、環状溝部62の内周壁部が加振部材58の周壁部に対して径方向外側に離隔して対向配置されている。
【0045】
更にまた、加振部材58と支持部材60の間には、支持ゴム弾性体66が配設されている。支持ゴム弾性体66は、略円環板形状を有しており、内周側に向かって次第に厚肉となっている。そして、支持ゴム弾性体66の内周端部が加振部材58の周壁部に加硫接着されると共に、外周縁部が支持部材60における環状溝部62の内周壁部に加硫接着されることにより、それら加振部材58と支持部材60が支持ゴム弾性体66によって弾性連結されている。なお、支持ゴム弾性体66の内周端部が加振部材58の周壁部の内外両面に固着されていると共に、支持ゴム弾性体66の外周端部が環状溝部62の内周壁部の内外両面に固着されている。また、支持ゴム弾性体66は、加振部材58と支持部材60を備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0046】
このようにして形成された支持ゴム弾性体66の一体加硫成形品は、支持部材60の支持フランジ64が仕切部材本体44と筒状嵌着金具36の蹴上部分との間に全周に亘って挟持されることにより、第2の取付部材14によって支持されている。これにより、仕切部材42と可撓性膜32の軸方向間に形成された流体封入領域40の下側部分が、支持ゴム弾性体66の一体加硫成形品を挟んで上下に分割されている。そして、可撓性膜32と支持ゴム弾性体66の一体加硫成形品との間には、壁部の一部が可撓性膜32で構成された平衡室68が形成されている。一方、仕切部材42と加振部材58および支持ゴム弾性体66との間には、壁部の一部が加振部材58で構成された中間室70が形成されている。なお、言うまでもないが、受圧室56,平衡室68,中間室70には、何れも非圧縮性流体が封入されている。また、本実施形態では、流体室が受圧室56と中間室70を含んで構成されている。
【0047】
また、受圧室56と平衡室68は、オリフィス通路72によって相互に連通されている。オリフィス通路72は、周溝50を利用したトンネル状通路を含んで仕切部材42に設けられており、受圧室56と、平衡室68の一部を構成する環状溝部62の溝内部とを、連通するように設けられている。即ち、上記トンネル状通路の一方の端部が蓋部材46に形成された上側連通孔74を通じて受圧室56に連通されると共に、他方の端部が仕切部材本体44に形成された下側連通孔76を通じて平衡室68に連通されることにより、受圧室56と平衡室68の間で流体流動を生じさせるオリフィス通路72が形成されている。このオリフィス通路72は、エンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波数にチューニングされている。なお、環状溝部62の溝内部は、環状溝部62の底壁部に形成された複数の貫通孔77を通じて平衡室68に連通されており、実質的に平衡室68の一部とされている。
【0048】
また、受圧室56と中間室70は、仕切部材本体44に形成された複数の下側透孔80と、収容凹所48と、蓋部材46に形成された複数の上側透孔78とを通じて相互に連通されており、これら上下の透孔78,80と収容凹所48によって、圧力伝達通路としてのフィルタオリフィス82が構成されている。そして、フィルタオリフィス82を通じて中間室70の圧力が受圧室56に伝達されるようになっている。フィルタオリフィス82は、走行こもり音等に相当する120Hz程度の高周波数にチューニングされており、チューニング周波数がオリフィス通路72よりも高周波数に設定されている。
【0049】
さらに、収容凹所48には、可動ゴム板84が配設されている。可動ゴム板84は、略円板形状のゴム弾性体で形成されており、径方向で厚肉部分と薄肉部分が交互に設けられている。また、可動ゴム板84は、軸方向両側に突出する支軸部が、仕切部材本体44と蓋部材46の各径方向中央に貫通形成された位置決め孔にそれぞれ挿入された状態で、収容凹所48内に配設されており、仕切部材42に対して径方向で位置決めされていると共に、軸方向で微小変位を許容されている。
【0050】
さらに、可動ゴム板84は、上下の透孔78,80の形成位置よりも外周側まで広がって、フィルタオリフィス82の流体流路上に配設されている。そして、エンジンシェイク等の低周波大振幅振動が入力されると、可動ゴム板84が仕切部材42によって拘束されて、フィルタオリフィス82が可動ゴム板84で遮断されることにより、フィルタオリフィス82を通じての流体流動量が制限される。これにより、受圧室56の平衡室68に対する相対的な圧力変動が有効に惹起されて、オリフィス通路72を通じての流体流動が効率的に生じることから、流体の流動作用に基づく防振効果が有効に発揮される。一方、走行こもり音等の中乃至高周波小振幅振動が入力されると、可動ゴム板84の微小変位によってフィルタオリフィス82が連通されて流体流動が許容されることから、後述する電磁式アクチュエータ94の加振力が受圧室56に伝達されて、能動的な防振効果が発揮される。
【0051】
また、加振部材58には、出力軸90が取り付けられている。出力軸90は、全体として上下方向に延びる小径のロッド形状を呈しており、上端部分にはかしめ固定用の突起が一体形成されており、加振部材58の底壁部に貫通形成されたかしめ用の孔に挿入されて上端部分を拡径変形されることにより、出力軸90の上端部が加振部材58の底壁部に固定されている。
【0052】
さらに、出力軸90の軸方向中間部分には、径方向外側に向かって突出する円環板形状の固着フランジ92が一体形成されており、固着フランジ92が可撓性膜32の中央部分に加硫接着されている。これにより、出力軸90は、可撓性膜32を上下に貫通して配設されていると共に、可撓性膜32に対して流体密に固着されて流体封入領域40の流体密性が確保されている。
【0053】
更にまた、出力軸90の下端部は、電磁式アクチュエータ94に取り付けられている。電磁式アクチュエータ94は、コイル100を備えた固定子96と、固定子96に対して軸方向上下に加振変位可能とされた可動子98とを、備えている。
【0054】
固定子96は、円筒形状のコイル100の周囲にヨーク金具102が組み付けられた構造を有している。なお、コイル100とヨーク金具102の間には電気絶縁性の合成樹脂材料で形成された絶縁部材103が設けられており、コイル100の周囲が絶縁部材103によって覆われている。
【0055】
ヨーク金具102は、強磁性を有する金属材料で形成されており、底壁中央に円形の貫通孔を有する有底円筒形状の外周ヨーク金具104と、略円環形状で外周ヨーク金具104の貫通孔に嵌め込まれた内周ヨーク金具106と、略円環板形状で外周ヨーク金具104の上側開口部に取り付けられる上ヨーク金具108とを、組み合わせて形成されている。また、内周ヨーク金具106の内周上端部と、上ヨーク金具108の内周下端部が、相互に離隔して磁気ギャップが形成されており、それらヨーク金具106,108の内周端部が、コイル100への通電によって磁極が形成される磁極部110,112とされている。
【0056】
なお、上ヨーク金具108の下端外周縁部には、下方に延び出すかしめ片114が一体形成されており、外周ヨーク金具104の上端に設けられたフランジ状のかしめ部116にかしめ固定されることによって、上ヨーク金具108と外周ヨーク金具104が固定されている。本実施形態では、上ヨーク金具108を含んだヨーク金具102によって、電磁式アクチュエータ94のハウジング金具が構成されており、かかるハウジング金具によってベース金具が構成されている。
【0057】
また、固定子96の中央部分には、可動子98が配設されている。可動子98は、強磁性体で形成された略円筒形状の部材であって、上端部分には内周側に突出する内フランジ部118が一体形成されている。この可動子98は、上ヨーク金具108の中央孔に挿入されていると共に、内周ヨーク金具106の内周端部と軸方向で対向して配置されている。そして、コイル100に通電されて内周ヨーク金具106の内周端部(磁極部110)に磁極が形成されると、磁力の作用に基づいて可動子98に内周ヨーク金具106側への引力が及ぼされて、可動子98が軸方向下方に変位されるようになっている。
【0058】
このような構造とされた電磁式アクチュエータ94の可動子98は、出力軸90に取り付けられている。即ち、出力軸90の可撓性膜32から下方に延び出した部分が、可動子98の中心孔に挿通されて、固着フランジ92と可動子98の上面との間にコイルスプリング120が介装されると共に、出力軸90の下端部に設けられた雄ねじ部に係止ナット122が螺着されて可動子98の内フランジ部118に下方から当接することで、出力軸90と可動子98が弾性的に位置決めされて連結されている。なお、上記の説明からも明らかではあるが、出力軸90の上端部分と可動子98は、軸方向離隔方向への相対変位が係止ナット122によって規制されていると共に、軸方向接近方向への相対変位がコイルスプリング120の変形によって許容されている。
【0059】
そして、可動子98が出力軸90に連結された状態で、コイル100に対して外部の電源124から通電されて、可動子98に軸方向下向きの力が及ぼされると、可動子98に連結された出力軸90が下方に変位して、出力軸90の上端に固定された加振部材58が下方に変位する。その後、電源124からコイル100への通電を停止すると、加振部材58の変位によって弾性変形させられた支持ゴム弾性体66の弾性に基づく復元力が作用して、加振部材58とそれに連結された出力軸90および可動子98が初期位置に復帰する。従って、電源124からコイル100への通電を制御手段126によって制御することにより、加振部材58が電磁式アクチュエータ94によって上下に加振変位されて、中間室70に所定の加振力が及ぼされるようになっている。なお、制御手段126によるコイル100への通電の制御は、マップ制御やフィードバック制御等によって実現される。
【0060】
また、電磁式アクチュエータ94のヨーク金具102が第2の取付部材14の一部を構成しており、電磁式アクチュエータ94のコイル100が第2の取付部材14によって支持されている。即ち、筒状嵌着金具36の下端部が、電磁式アクチュエータ94の上ヨーク金具108への外挿後に、後述するシールゴム148を挟んで縮径かしめ固定されることによって、嵌着固定部128が設けられており、電磁式アクチュエータ94のヨーク金具102が第2の取付部材14の一部を構成している。以下、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の連結構造について説明する。
【0061】
図2に示されているように、上ヨーク金具108は外周部分が上方に向かって突出しており、径方向外側に向かって次第に厚肉となっている。この上ヨーク金具108の外周面には、径方向外側に突出する上側位置決め突部130が形成されていると共に、上側位置決め突部130に対して軸方向下方に所定距離を隔てた部分において径方向外側に突出する下側位置決め突部132が形成されている。なお、上側位置決め突部130と下側位置決め突部132は、互いに同じ突出高さで形成されており、それらの突出先端面(外周面)が同径の円筒面をなしている。
【0062】
さらに、上側位置決め突部130の外周下端縁部が環状の軸方向外側エッジ部134とされていると共に、下側位置決め突部132の外周上端縁部が環状の軸方向内側エッジ部136とされている。これら軸方向エッジ部134,136は、好適には、90度以上且つ100度以下の角度を有する角形状とされており、本実施形態では何れも略90度とされている。なお、軸方向エッジ部134,136の角度とは、軸方向外側エッジ部134では、上側位置決め突部130の外周面と下端面とが縦断面においてなす角度を、軸方向内側エッジ部136では、下側位置決め突部132の外周面と上端面とが縦断面においてなす角度を、それぞれ意味する。また、軸方向外側エッジ部134と軸方向内側エッジ部136は、互いに異なる角度で形成されていても良い。
【0063】
更にまた、外周側に突出する上側位置決め突部130と下側位置決め突部132が軸方向で離隔して形成されることにより、上側位置決め突部130と下側位置決め突部132の軸方向間には、外周側に開口する環状凹溝138が形成されている。この環状凹溝138の開口縁部に、上側位置決め突部130と下側位置決め突部132の軸方向エッジ部134,136が設けられている。要するに、本実施形態の軸方向エッジ部134,136は、軸方向で隣り合って設けられた複数の位置決め突部130,132の軸方向対向側エッジ部とされている。
【0064】
また、上ヨーク金具108には、環状シール部140が一体形成されている。環状シール部140は、上側位置決め突部130よりも軸方向上方に突出しており、その外周面が環状凹溝138の底面(外周面)よりも大径且つ位置決め突部130,132よりも小径の略円筒面とされている。更に、環状シール部140の軸方向中間部分には、径方向外側に向かって突出するシール突条142が一体形成されている。このシール突条142は、突出先端に向かって次第に狭幅となる略半円形の断面形状で全周に亘って延びており、上側位置決め突部130の外周面よりも内周側に控えて設けられている。
【0065】
一方、筒状嵌着金具36の小径部分の下端には、シール部分144と、シール部分144よりも軸方向外方(下方)にまで延び出されたかしめ筒部146が、一体的に設けられている。シール部分144とかしめ筒部146は、後述する縮径加工を施される前には略同一直径の円筒形状を有しており、シール部分144の内周面に対して可撓性膜32の固着部34の下端部を利用して構成されたシールゴム148が固着されていると共に、かしめ筒部146が固着部34を下方に外れて設けられている。また、シール部分144とかしめ筒部146は、縮径加工前の内径寸法が、上側位置決め突部130および下側位置決め突部132の形成部分における上ヨーク金具108の外径寸法よりも大きくされている。なお、上述の説明からも明らかなように、シールゴム148は、可撓性膜32と一体形成されており、部品点数や製造工程数の減少が図られている。
【0066】
そして、筒状嵌着金具36のシール部分144が上ヨーク金具108の環状シール部140に外挿されており、それらシール部分144と環状シール部140の径方向間にシールゴム148が介在している。更に、筒状嵌着金具36のかしめ筒部146が、上ヨーク金具108に外挿されて環状凹溝138を跨いで延びており、上側位置決め突部130および下側位置決め突部132に外挿されている。
【0067】
このようにして、筒状嵌着金具36のシール部分144およびかしめ筒部146が上ヨーク金具108に外挿された後、それらシール部分144およびかしめ筒部146が八方絞り等の手段によって縮径加工されることにより、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の嵌着固定部128において、シールと縮径かしめ固定が同時に実現される。この縮径加工は、筒状嵌着金具36の小径部分の下端に施されており、筒状嵌着金具36の中間部分に形成される傾斜部150を挟んで下方が上方よりも小径になっている。なお、図2には、縮径前の筒状嵌着金具36が、2点鎖線で示されている。
【0068】
すなわち、筒状嵌着金具36におけるシール部分144が縮径されることにより、シール部分144と上ヨーク金具108の環状シール部140との間でシールゴム148が挟み込まれて、特にシール突条142の形成部分でシールされている。この際、シール部分144の径方向位置(縮径変形後の直径)が、かしめ筒部146の上側位置決め突部130の外周面への当接によって規定されるようになっており、それによって径方向位置決め部とされている。なお、本実施形態では、シールゴム148の下端が上側位置決め突部130の上面に当接することでシールゴム148の弾性変形が制限されるようになっており、シール性能が有効に発揮されるようになっている。
【0069】
さらに、筒状嵌着金具36におけるかしめ筒部146が縮径されることにより、筒状嵌着金具36のかしめ筒部146が上ヨーク金具108に縮径かしめ固定されて、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108が連結されると共に、径方向および軸方向で相対的に位置決めされる。
【0070】
具体的には、かしめ筒部146において環状凹溝138を跨ぐ部分が、かしめ筒部146における上側位置決め突部130および下側位置決め突部132に外挿された部分よりも大きく縮径変形されて、環状凹溝138に押し込まれている。これにより、かしめ筒部146において環状凹溝138に押し込まれた部分の軸方向両側が軸方向に対して傾斜する上下のテーパ部152,154とされて、軸方向外側エッジ部134が上側テーパ部152に押し当てられると共に、軸方向内側エッジ部136が下側テーパ部154に押し当てられる。これにより、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108が径方向で位置決めされて、それら筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108が同一中心軸上に配置されている。なお、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の径方向での位置決めは、かしめ筒部146が上側位置決め突部130の外周面と下側位置決め突部132の外周面との何れか一方に当接することで設けられていても良い。
【0071】
また、軸方向外側エッジ部134がかしめ筒部146の上側テーパ部152に押し当てられていると共に、軸方向内側エッジ部136がかしめ筒部146の下側テーパ部154に押し当てられており、それら軸方向エッジ部134,136がそれぞれかしめ筒部146に食い込んで係止されている。そして、軸方向外側エッジ部134の上側テーパ部152への係止によって、上ヨーク金具108の筒状嵌着金具36に対する下方への抜けを阻止する軸方向抜止部が設けられていると共に、軸方向内側エッジ部136の下側テーパ部154への係止によって、上ヨーク金具108の筒状嵌着金具36に対する上方への押込みを阻止する軸方向挿入規定部が設けられている。なお、本実施形態では、これら軸方向抜止部と軸方向挿入規定部が、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108を軸方向で相対的に位置決めする軸方向位置決め部とされている。
【0072】
このような筒状嵌着金具36の縮径変形によるシールと位置決めは、一度の縮径加工によって同時に実現される。具体的には、例えば、図3に示されているように、エンジンマウント10を製造するに際して、筒状嵌着金具36に縮径加工を施すためのジグ156を準備する。そのジグ156には、上ヨーク金具108の環状凹溝138と対応する位置において内周側に突出する押込突起158が設けられている。そして、筒状嵌着金具36を上ヨーク金具108に外挿すると共に、筒状嵌着金具36に対してジグ156を外挿し、そのジグ156を、円筒形状とされた筒状嵌着金具36のシール部分144とかしめ筒部146に対して、外周側から同時に押し当てて、シール部分144とかしめ筒部146を同時に縮径加工する。これにより、筒状嵌着金具36の縮径変形量は、ジグ156の押込突起158が押し当てられる上下の位置決め突部130,132の軸方向間に外挿された部分において、それら上下の位置決め突部130,132への外挿部分およびシール部分144よりも大きくされる。従って、ジグ156における押込突起158の突出高さを調節することにより、シール部分144での縮径変形量およびかしめ筒部146における位置決め突部130,132への外挿部分での縮径変形量と、かしめ筒部146における位置決め突部130,132を外れた部分での縮径変形量が、一度の縮径加工によってそれぞれ適当に設定される。図3からも明らかなように、本実施形態では、シール部分144での縮径変形量と、かしめ筒部146における位置決め突部130,132への外挿部分での縮径変形量とが、互いに略同じとされている。
【0073】
また、筒状嵌着金具36のシール部分144およびかしめ筒部146には、縮径加工後にスプリングバック(かしめ筒部146の弾性に基づく形状の復元)が発生する。そこで、筒状嵌着金具36の各部位におけるかしめ加工時の縮径量が、スプリングバックを考慮して設定されている。即ち、筒状嵌着金具36の弾性等に起因するスプリングバックの発生後に、シールゴム148が充分に圧縮されて、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の間のシールが確保されていると共に、上側位置決め突部130から更に軸方向外方に延び出したかしめ筒部146の内周面が、上下の位置決め突部130,132の外周面より径方向内方に入り込んで、上下の位置決め突部130,132の軸方向エッジ部134,136への係止状態が確保されている。なお、シールゴム148は、その厚さ寸法が、上側位置決め突部130の突出高さ(環状シール部140の外周面を基準とした突出高さ)にシール部分144のスプリングバック量を加えた寸法よりも大きくされており、シール部分144が縮径加工後にスプリングバックしても、有効なシール性能が確保されるようになっている。
【0074】
本実施形態では、かしめ筒部146のスプリングバック後に、かしめ筒部146の軸方向エッジ部134,136への係止状態を充分に維持するために、図3にも示されているように、ジグ156における押込突起158の上下方向寸法が、上ヨーク金具108における環状凹溝138の上下方向寸法(幅寸法)よりも小さくされている。これにより、かしめ筒部146の縮径加工時に押込突起158が上下の位置決め突部130,132に干渉することなく環状凹溝138に充分に押し込まれて、スプリングバック後にもかしめ筒部146の軸方向エッジ部134,136への係止が維持されるようになっている。なお、好適には、軸直角方向の投影において、押込突起158と上下の位置決め突部130,132の間に、筒状嵌着金具36の厚さ寸法以上の隙間がそれぞれ設けられている。また、押込突起158の上下両面は、縮径加工時のジグ156の移動方向である軸直角方向に広がる平面とされていることが望ましく、これによって押込突起158と上下の位置決め突部130,132の干渉が防止されている。
【0075】
このような本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント10においては、シールゴム148が筒状嵌着金具36のシール部分144と上ヨーク金具108の環状シール部140との間で挟み込まれることにより、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の連結部分においてシール性能が確保される。同時に、筒状嵌着金具36のかしめ筒部146が、上ヨーク金具108の上下の位置決め突部130,132に対して当接することにより、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108が相対的に位置決めされている。このように、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の嵌着固定部128において、シールゴム148によってシールされる部分と、かしめ筒部146によって連結される部分が、軸方向で別々に設けられていることにより、シール部分144とかしめ筒部146とで縮径変形量を異ならせることができる。それ故、シールゴム148が損傷しない程度に圧縮されることで、優れたシール性能およびシールの耐久性が確保されると共に、かしめ筒部146が上下の位置決め突部130,132に強く押し付けられることによって、固定強度を充分に得ることができる。
【0076】
また、筒状嵌着金具36のかしめ筒部146と、上ヨーク金具108の上下の位置決め突部130,132が、ゴム等の弾性体を介することなく、直接に当接することから、当接による位置決め作用に基づいて同軸度や平行度を高精度に設定することが可能である。それ故、電磁式アクチュエータ94の加振力が加振部材58に対して効率的に伝達されて、目的とする能動的な防振効果を得ることができる。しかも、金属材料で形成された部材同士の当接によって位置決め作用が発揮されていることから、初期の位置決め作用が長期間に亘って安定して発揮されて、時間経過による加振力の伝達効率の低下等が生じ難く、目的とする防振性能が維持される。
【0077】
また、かしめ筒部146が、上側位置決め突部130の軸方向外側エッジ部134と下側位置決め突部132の軸方向内側エッジ部136の軸方向間で、大きく縮径加工されて、それら軸方向エッジ部134,136にそれぞれ押し当てられている。これにより、筒状嵌着金具36に対する上ヨーク金具108の抜けと押込みが何れも防止されて、かしめ筒部146の1箇所での縮径によって、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108が軸方向両側において位置決めされている。しかも、軸方向外側エッジ部134と軸方向内側エッジ部136が何れも略90度の角形状とされており、それら軸方向エッジ部134,136がかしめ筒部146の内周面に楔のように食い込んで、大きな係止力が発揮されることから、軸方向での抜けや押込みに対する抗力を効率的に得ることができて、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108が軸方向で位置決めされる。
【0078】
さらに、上側位置決め突部130の軸方向外側エッジ部134と、下側位置決め突部132の軸方向内側エッジ部136が、それぞれかしめ筒部146の内周面に対してゴム等を介することなく直接的に当接していることにより、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108が径方向で位置決めされる。特に、上下の位置決め突部130,132とかしめ筒部146の当接部分が、軸方向で所定距離を隔てて設けられていることによって、径方向でのより高精度な位置決めが実現されると共に、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の相対的な傾斜が防止されて、出力軸90と加振部材58の相対的な傾斜が回避される。その結果、出力軸90と加振部材58が連結部分(出力軸90の上端)において精度良く位置決めされて、それら出力軸90と加振部材58が、支持ゴム弾性体66に不要な初期歪みを生じることなく、容易に連結される。
【0079】
なお、本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント10において、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の嵌着固定部128で発揮される抜けに対する抗力が、従来構造のエンジンマウントに比して大きいことは、実験によって抜けに対する抗力を測定した結果を示す図4のグラフからも明らかである。即ち、図4のグラフでは、本実施形態に従う構造の嵌着固定部128において発揮される抜けに対する抗力が、実施例として実線で示されていると共に、筒状嵌着金具と上ヨーク金具がシールゴムを介してかしめ固定された従来の連結構造において発揮される抜けに対する抗力が、比較例として破線で示されている。これらの結果から、本発明の連結構造(嵌着固定部128の構造)を有する実施例では、従来の連結構造を有する比較例に対して、抜けに対する抗力が略2倍の大きさで発揮されることが確認された。このように、実験結果からも、本発明に従う構造とされたエンジンマウント10において、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の抜けに対する抗力が、効果的に発揮されることが明らかである。
【0080】
図5には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第2の実施形態として、自動車用のエンジンマウントの要部が示されている。なお、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことで説明を省略する。また、以下の説明において、図示されている部分以外は、第1の実施形態に示されたエンジンマウント10と実質的に同一であることから、ここでは説明を省略する。
【0081】
このエンジンマウントでは、上ヨーク金具108において、上側位置決め突部130の軸方向外側エッジ部160と、下側位置決め突部132の軸方向内側エッジ部162が、前記実施形態の軸方向エッジ部134,136に面取り加工を施した構造とされており、かしめ筒部146の縮径加工後に、それら軸方向エッジ部160,162が、かしめ筒部146のテーパ部152,154の内周面に対して面で当接している。なお、軸方向外側エッジ部160の面取りが上側テーパ部152と略同じ傾斜角度で形成されていると共に、軸方向内側エッジ部162の面取りが下側テーパ部154と略同じ傾斜角度で形成されている。
【0082】
このような本実施形態に従う構造とされたエンジンマウントによれば、軸方向エッジ部160,162が面取り加工されて、筒状嵌着金具36のかしめ筒部146と上ヨーク金具108の位置決め突部130,132が面で当接することから、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108が径方向および軸方向で安定して位置決めされる。
【0083】
また、かしめ筒部146と位置決め突部130,132が面で当接することによって、当接部分での応力集中が緩和されて、耐久性の向上等も図られ得る。
【0084】
図6には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第3の実施形態として、自動車用のエンジンマウントの要部が示されている。
【0085】
このエンジンマウントでは、筒状嵌着金具36のかしめ筒部146にリング金具170が外嵌されており、そのリング金具170が上ヨーク金具108における上側位置決め突部130と下側位置決め突部132の軸方向間(環状凹溝138)に嵌め込まれている。このリング金具170は、環状とされていても良いし、軸方向視でC字状を呈していても良く、かしめ筒部146に外挿された状態で縮径加工されることによって、環状凹溝138に入り込んで、軸方向の投影において上下の位置決め突部130,132と部分的に重なり合っている。
【0086】
これによれば、リング金具170と上下の位置決め突部130,132がかしめ筒部146を介して軸方向で係止されることにより、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の間で、軸方向での抜けおよび押込みに対するより大きな抗力が発揮されて、それら筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108が軸方向でより強固に位置決めされる。
【0087】
図7には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第4の実施形態として、自動車用のエンジンマウントの要部が示されている。
【0088】
このエンジンマウントでは、上ヨーク金具108の外周面上に、1つの位置決め突部180が設けられて、全周に亘って径方向外側に突出している。この位置決め突部180は、上ヨーク金具108の外周面の軸方向中間部分に設けられており、その突出先端(外周端)の下端縁部に環状の軸方向外側エッジ部182が形成されていると共に、上端縁部に環状の軸方向内側エッジ部184が形成されている。なお、上ヨーク金具108の外周面において、環状シール部140および位置決め突部180を外れた部分は、位置決め突部180よりも小径且つ環状シール部140よりも大径の略円筒面とされており、位置決め突部180を挟んだ両側が略同一の直径を有している。
【0089】
そして、筒状嵌着金具36のかしめ筒部146が上ヨーク金具108に外挿されて、縮径加工によって位置決め突部180に押し当てられている。より詳細には、かしめ筒部146は、位置決め突部180を軸方向で外れた部分において、位置決め突部180に外挿された部分よりも大きく縮径変形されている。これにより、位置決め突部180の外周面がかしめ筒部146に当接して、それによってシール部分144の径方向位置(縮径変形後の直径)が規定されていると共に、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108を径方向で位置決めする径方向位置決め部とされている。また、位置決め突部180の軸方向エッジ部182,184がかしめ筒部146に当接することによって、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108を軸方向で位置決めする軸方向抜止部と軸方向挿入規定部が形成されている。
【0090】
これによれば、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の軸方向への相対変位が、1つの位置決め突部180によって、軸方向両側で制限されて、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の抜けおよび押込みに対する抗力が何れも有効に発揮される。
【0091】
また、位置決め突部180の外周面とかしめ筒部146の内周面が、広い面積で当接することから、1つの位置決め突部180であっても、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の径方向での位置決めが効果的に実現されると共に、それら筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の相対的な傾斜を防止することができる。なお、軸方向で離隔するように複数の位置決め突部180を形成すれば、径方向での位置決め作用をより効果的に発揮させることができると共に、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の相対的な傾斜をより効果的に防ぐことができる。
【0092】
図8には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第5の実施形態として、自動車用のエンジンマウントの要部が示されている。
【0093】
このエンジンマウントでは、かしめ筒部190が環状凹溝138を跨ぐことなく、環状凹溝138の幅方向(マウント軸方向)の中間部分までの長さとされている。要するに、本実施形態では、1つの位置決め突部130だけがシールゴム148に対して軸方向下方に隣接して設けられている。
【0094】
そして、かしめ筒部190の下端が縮径されて、環状凹溝138に押し込まれることにより、かしめ筒部190が位置決め突部130の軸方向外側エッジ部134に係止されて、軸方向抜止部が設けられている。
【0095】
このように、軸方向位置決め部は、軸方向の抜けを制限する軸方向抜止部と、軸方向の押込みを制限する軸方向挿入規定部との何れか一方だけによって構成されていても良い。
【0096】
また、軸方向位置決め部が軸方向抜止部だけとされた本構造によれば、かしめ筒部190の軸方向寸法を小さくすることができると共に、上ヨーク金具108の軸方向での厚さ寸法も小さくすることができる。それ故、エンジンマウントの軸方向での小型化が図られ得る。
【0097】
図9には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第6の実施形態として、自動車用のエンジンマウントの要部が示されている。
【0098】
このエンジンマウントでは、筒状嵌着金具200においてかしめ筒部202が周上で断続的に複数設けられていると共に、上ヨーク金具108において上側位置決め突部206が周上で複数に分割されて、周上でかしめ筒部202の外挿位置に対応する部分に設けられている。また、上ヨーク金具108における複数の上側位置決め突部206の周方向間には、外周側に突出する係止突部208が設けられている。係止突部208は、上側位置決め突部206よりも大きな突出高さで外周側に向かって突出しており、周方向に所定の長さ(周上で隣り合うかしめ筒部202,202の離隔距離と略同じ長さ)で形成されている。要するに、上ヨーク金具108には、径方向の突出高さが異なる上側位置決め突部206と係止突部208が、周上で交互に設けられている。
【0099】
そして、係止突部208における上側位置決め突部206よりも外周側に突出した部分の周方向端面と、かしめ筒部202の周方向端面が、互いに当接することによって、筒状嵌着金具200と上ヨーク金具108の周方向での相対回転が制限されており、もって、周方向位置決め部が設けられている。なお、係止突部208とかしめ筒部202は、周方向で当接していなくても良く、筒状嵌着金具200と上ヨーク金具108の相対回転によって当接して、相対回転量を制限するようになっていても良い。
【0100】
これによれば、位置決め突部206,132の外周面とかしめ筒部202の当接による径方向位置決め部と、位置決め突部206,132の軸方向エッジ部134,136とかしめ筒部202の当接による軸方向位置決め部に加えて、係止突部208とかしめ筒部202の当接による周方向位置決め部が設けられており、筒状嵌着金具200と上ヨーク金具108をより高度に位置決めして連結することができる。
【0101】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、2つ又は1つの位置決め突部が設けられた構造が示されているが、位置決め突部は3つ以上の複数が設けられていても良く、それによって軸方向および径方向の位置決め作用をより高度に得ることが可能となる。
【0102】
また、位置決め突部130,132の突出先端面は、必ずしも円筒形状に限定されるものではなく、テーパ状に傾斜していても良い。これによれば、かしめ筒部146の縮径時に筒状嵌着金具36と上ヨーク金具108の位置ずれが防止されて、縮径加工をより行い易くなり得る。
【0103】
また、筒状嵌着金具は、可撓性膜32の外周端部に固着されるダイヤフラムアウタ金具に限定されるものではなく、流体封入式防振装置の第2の取付部材14を構成する金具であれば良い。更に、ベース金具は、電磁式アクチュエータ94のハウジング金具に限定されるものではなく、本発明は、流体封入式能動型防振装置のみならず、電磁式アクチュエータ94を持たない流体封入式防振装置にも適用され得る。また、ベース金具が電磁式アクチュエータ94のハウジング金具である場合に、ハウジング金具がヨーク金具102とは別に設けられて固定子96に固定されていても良い。
【0104】
また、シールゴム148は、通常、本体ゴム弾性体16や可撓性膜32と一体形成されて、部品点数や製造工程数の減少が図られるが、それら流体室の壁部を構成するゴム弾性体とは別体で設けられていても良い。
【0105】
また、上ヨーク金具108の環状シール部140に設けられるシール突条142は、必ずしも1つだけに限定されるものではなく、例えば、軸方向に離隔して2つ以上の複数が設けられていても良い。これによって、シールゴム148によるシール性能をより向上させることができる。
【0106】
また、本発明は、必ずしも自動車用のエンジンマウントにのみ適用されるものではなく、例えば、自動車用のサブフレームマウントやボデーマウント、デフマウント等の他、自動車以外の各種振動体(例えば、自動二輪車や鉄道用車両、産業用車両等)の防振装置に対して、何れも適用可能である。
【符号の説明】
【0107】
10:エンジンマウント(流体封入式防振装置)、12:第1の取付部材、14:第2の取付部材、16:本体ゴム弾性体、36,200:筒状嵌着金具、56:受圧室(流体室)、58:加振部材、70:中間室(流体室)、94:電磁式アクチュエータ、96:固定子、98:可動子、100:コイル、104:外周ヨーク金具(ハウジング金具)、106:内周ヨーク金具(ハウジング金具)、108:上ヨーク金具(ハウジング金具)、128:嵌着固定部、130,206:上側位置決め突部(位置決め突部)、132:下側位置決め突部(位置決め突部)、134,160,182:軸方向外側エッジ部、136,162,184:軸方向内側エッジ部、144:シール部分、146,190,202:かしめ筒部、148:シールゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の取付部材と第2の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されていると共に、非圧縮性流体が封入されて振動が入力される流体室が形成されている一方、該第2の取付部材においてベース金具の外周面に対して筒状嵌着金具が外挿されてシールゴムを挟んで縮径かしめ固定された嵌着固定部が設けられた流体封入式防振装置であって、
前記嵌着固定部における前記シールゴムによるシール部分よりも前記筒状嵌着金具が軸方向外方に延び出されてかしめ筒部が形成されている一方、前記ベース金具における該かしめ筒部の外挿部分に位置決め突部が形成されており、該シール部分における該筒状嵌着金具の径方向位置が該位置決め突部の外周面に対する該かしめ筒部の当接によって規定されて径方向位置決め部とされていると共に、該かしめ筒部が縮径されて該位置決め突部の軸方向エッジ部に係止されて軸方向位置決め部とされていることを特徴とする流体封入式防振装置。
【請求項2】
前記第2の取付部材に支持されるコイルを備えた固定子と、該固定子に対して軸方向で相対変位可能とされた可動子とを有する電磁式アクチュエータが配設されており、該可動子に連結された加振部材によって前記流体室の壁部の一部が構成されて該可動子の加振力が該流体室に及ぼされるようになっている一方、
前記ベース金具が該電磁式アクチュエータの該固定子に設けられるハウジング金具によって構成されており、該ハウジング金具に前記筒状嵌着金具が外挿されて縮径かしめ固定されている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
【請求項3】
前記かしめ筒部が縮径されて前記位置決め突部の軸方向外側エッジ部に係止されることにより、前記軸方向位置決め部としての軸方向抜止部が構成されている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項4】
前記かしめ筒部が縮径されて前記位置決め突部の軸方向内側エッジ部に係止されることにより、前記軸方向位置決め部としての軸方向挿入規定部が構成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項5】
軸方向に離隔して複数の前記位置決め突部が形成されており、隣り合う該位置決め突部の軸方向間で前記かしめ筒部が縮径されて隣り合う該位置決め突部の軸方向対向側エッジ部に係止されることにより、前記軸方向位置決め部としての軸方向抜止部及び軸方向挿入規定部が構成されている請求項1〜4の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項6】
前記軸方向エッジ部が90度〜100度の角度を有する角形状とされている請求項1〜5の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載された流体封入式防振装置の製造方法であって、
前記ベース金具に前記筒状嵌着金具を外挿して、該筒状嵌着金具における前記シールゴムによるシール部分と前記かしめ筒部とに対して同時に縮径加工を施すことにより、該シール部分における該筒状嵌着金具の径方向位置を前記位置決め突部の外周面に対する該かしめ筒部の当接によって規定して前記径方向位置決め部を構成すると共に、該筒状嵌着金具における縮径加工に際しての縮径変形量を、該かしめ筒部の前記位置決め突部への外挿部分に比して該かしめ筒部の該位置決め突部を外れた部分において大きくすることにより前記軸方向位置決め部を構成することを特徴とする流体封入式防振装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−215290(P2012−215290A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−35215(P2012−35215)
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】