説明

流動性材料を塗布する方法

【課題】製造物の部品に溶融流動性材料を塗布する方法を開示する。
【解決手段】本件に開示される方法および装置は、適切な流動性材料の作成,流動性材料が塗布される方法に対する制御,流動性材料の塗布前の製品処理などに関する。さらに、本装置および方法は、自動車,航空宇宙および海洋輸送手段における表面と部品とに流動性材料を塗布するのに特に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(先の出願日に基づく利益の主張)
米国仮特許出願番号60/351,967(2002年1月25日)に基づく出願日の利益を主張するものであり、係る仮出願は本明細書に含まれるべきものである。
【0002】
本発明は、一般に、製造物に流動性材料を塗布するための方法および装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、接着性材料,充填材料,膨張(発泡)性材料,可溶接材料,構造材料,可塗装材料などの溶融流動性材料を自動車部品に塗布する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
シーラント,接着剤およびその他の流動性または可成型材料は、多様な製造物の種々の部品に頻繁に用いられる。このような流動性材料は、たとえば車両の構造上の一体性を高め、車両部品間の封止や付着を行い、あるいは車両の雑音,振動または不快度(NVH)特性を改善する目的で、自動車のいろいろな部品に適用される。
【0004】
様々な部品に流動性材料を塗布するには、多様な問題が起こる。望ましい特性をもつ流動性材料を形成することが困難な場合がある。たとえば、流動性材料は、流動性材料が塗布される部品に相溶性を有する化学的性質,物理的性質あるいはその両方をもって形成し、流動性材料が部品に付着するか、あるいは相互に作用することができるようにする必要がある。流動性材料を異なる部品に塗布するための効率的な装置を設計製造する際にも困難がある。たとえば、流動性材料の製造速度と流動性材料の出力速度とを的確に制御することのできる装置を作成することが困難な場合がある。さらに、流動性材料が塗布される部品の様々な設計上の観点のために困難な場合もある。たとえば、部品の幾何学的形状,部品の処理およびその他の同様な設計上の問題点は、流動性材料の塗布において無数の問題を提示することがある。
【0005】
従来技術において発見された方法のいくつかは、組立工程の間に車両の特定の部分に塗布される流体材料であるいわゆる「汲み上げ可能な」製品に関する。これらの方法は、ある種の環境と用途においては極めて有利であるが、汲み上げ可能材料と装置を利用することにより、労力の必要性が高まるのみならず、製造設備においても余分な保守と洗浄の必要性が生まれる傾向が高くなる。本発明のある種の側面は、改善された押出技術により、選択された表面または位置に直接的に流動性材料を現場押出あるいは吐出するための方法,工程および装置を提供することにより、汲み出し可能製品と方法の必要性をなくする働きをする。この改善された押出技術を用いて、多様な熱可塑性材料および熱硬化性材料を塗布することができる。
【0006】
従って、本発明に開示される方法および装置は、流動性材料を製造物の部品に対して、経済的に効率よく押し出す、あるいは塗布することにより従来技術の短所や欠点を克服する。
【0007】
(発明の概要)
本発明は、流動性材料を製造物の部品に塗布するための方法および装置を広範に包含する。特に好適な実施例において、本発明は自動車の1つ以上の部品の1つ以上の所定の場所に対する、粘度の高い流動性材料の精密な押出を行う。
【0008】
本発明により塗布される流動性材料は、接着性材料,充填材料,膨張(発泡)性材料,構造材料,可溶接材料,ウェルドスルー(weld-through)材料,可塗装材料その他の適切な流動性材料である。極めて好適なある実施例においては、流動性材料は、流動性材料の上に、A種塗装面または他種の塗装面あるいは処理面の形成を容易にする、あるいは可能にする別の材料の塗布を行うために処理または加工することができる。他の実施例においては、流動性材料は、その全長または一部分に電導性,絶縁性,磁性,透明性またはその他の有利な特性を有することもある。
【0009】
好ましくは、本流動性材料は第1物理状態(たとえば、未発泡である、特定の断面プロフィルを有する、未硬化であるなど)における1つ以上の混合物であり、その後、熱,薬剤などの刺激またはその他の適切な刺激にさらされて、流動性材料が(可逆的あるいは不可逆的に)第2物理状態(たとえば発泡する,異なる断面プロフィルをもつ、硬化するなど)に変形するよう誘導または活性化される。さらに、流動性材料は、音の吸収,振動吸収,耐触性,粘着性,封止特性,強度,堅牢性など材料を塗布された部品の個別の特性を強化することのできる種々の望ましい特性を本来的に示すことができるものがある。あるいは、流動性材料を塗布すると、1つ以上の関連特性が強化される下部部品と結合する。
【0010】
本発明は、材料を受容部に直接塗布して、組立工程においてさらに処理され、組み込まれるアセンブリを形成する、改善された押出法,設計および装置などの装置および方法を利用することをさらに特徴とする。本発明で利用される流動性材料は、一般に、熱可塑性または熱硬化性材料などの流動性材料であり、これらは自動車用,航空宇宙用,海用その他の輸送手段ならびに機器,モータ駆動装置および家具の製造などの製造業において通常みられる。
【0011】
本発明の好適な装置の1つは、流動性材料を表面上に再現可能に塗布するアプリケータを備えるのが普通である。ある実施例においては、本装置は、ダイを通じて流動性材料を吐出する押出機を備える。別の実施例においては、本装置は装置のアプリケータ(たとえばダイ)に関して部品を移動させる機構,部品に関してアプリケータを移動させる機構あるいはそれらの組み合わせを備えることがある。たとえば、本発明の押出装置と機構は、選択した材料を押してころがすという二つの動きをさせることができる少なくとも1つのローラ・ベアリング(ころ軸受)を利用する。さらに詳しくは、本発明は軟度(consistency),セットバック(set back),ランピング(ramping)を減衰する反作用力に作用し、それに応答するとともに応答時間を制御する少なくとも1つの駆動スクリューを有する押出装置を含むこともある。この点に関して、本発明は押出機のスクリューを駆動し、その動作や、約0.1秒にも短くなる応答時間を制御するためにサーボ駆動位置制御システムを利用することもある。本発明のこの点に関して、サーボ駆動位置制御システムはエンコーダからのフィードバックを受け取るサーボ・ループと、位置制御を行うサーボ弁と、サーボ・システムの通信を容易にし、システムを予め選択された応答時間に合わせて機能するよう指示するコンピュータ・ソフトウェアとによってさらに構成される。さらに他の実施例において、本発明は流動性材料の吐出と塗布を行う精密制御システムのための装置を含むこともある。
【0012】
本発明の方法には、流動性材料を作成する方法,流動性材料を塗布する方法,流動性材料が塗布された表面を処理する方法およびこれらの方法の組み合わせがある。
【0013】
流動性材料を受容する部品は、流動性材料の受容に適する表面を持つことが好ましい。ある実施例においては、部品の表面は、溝,リブなど、流動性材料の受容表面積を大きくする構造を含むように構築される。別の実施例においては、部品表面を、流動性材料のその塗布面との粘着性を強化するよう処理する(たとえば、前処理,後処理など)こともある。本発明の別の観点においては、流動性材料は流動性材料,部品またはその両者の性質または特性のために、以前は流動性材料の受容に適さなかった材料にも塗布される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ロボット・アーム端部に装着される携帯押出機を示す装置の等角図であり、本発明のある見地によりオフラインで部品に押出材料を塗布する装置の使用を示す図。
【図2】図1の直線2−2で切断した、携帯押出機の断面図。
【図3】図1に示される携帯押出機の動作図。
【図4】図1の携帯押出機を、自動車製造の組立ラインとの関連で示す図。
【図5】車体の一部と図4に示す押出機の拡大等角図。
【図6】図5の直線6−6で切断した断面図。
【図7a】図6と類似の図であって、ルーフ・パネルを設置した状態を示し、押し出されたシーラント・ビーズの膨張前の位置を示す図。
【図7b】図6と類似の図であって、ルーフ・パネルを設置した状態を示し、押し出されたシーラント・ビーズの膨張後の位置を示す図。
【図8】図1の押出機と共に用いられるノズルの代替形状の部分的な断面図。
【図9】本発明による押出機の等角図であって、材料供給システムの代替形態を示す図。
【図10】バッチ吐出直後の、図9に示すシステムのバッチ・ホッパおよび材料供給管の拡大断面図。
【図11】本発明による押出機の代替形状を、コンベヤ・ラインとの関係で示す等角図。
【図12】図11の押出機の部分的な背面図。
【図13】材料を追跡する自動化システムのブロック図。
【図14】自動車のパネル上に流動性材料を吐出するシステムおよび装置の天面図。
【実施例】
【0015】
本発明においては、自動車用車両などの製造物の種々の部品に流動性材料を塗布する。本発明の詳細な説明では、まず本発明の方法により、本発明の装置を用いて塗布することのできる可能性のある流動性材料を論ずる。その後で、この流動性材料を塗布するために利用される方法および装置を論ずる。最後に、流動性材料を受容する製造物の部品と、流動性材料が塗布される方法とを論ずる。
【0016】
流動性材料
本発明の流動性材料は、広範な異なる材料から選択することができる。場合により、流動性材料は従来のものであってもよいが、新規の方法により、あるいは新規の装置を用いて、あるいはその両方を用いて塗布することができる。また、別の場合には、流動性材料は従来のもの、あるいは既知のものである場合もあるが、この流動性材料が塗布される部品が新規のものである場合もある。さらに別の実施例においては、流動性材料自身が新規のものである場合がある。以下の説明は、特定の所望の用途に関して選択あるいは適応させることが通常必要とされる材料を、当業者が選定する際の助けとなるように、一般的にその化学的構造およびその特性に従って流動性材料を紹介することを意図する。
【0017】
本発明のある実施例により、流動性材料は熱活性化する。好適な熱活性化材料は、発泡性あるいは他の流動性高分子配合物または組成物であり、下塗りまたは塗装乾燥段階の間など、通常の自動車塗装作業の加熱作業が行われると、活性化されて発泡する、流動化するあるいは状態を変化させる材料であることが好ましい。特に好適な材料は、ペレット状に配合される活性ポリマであり、各ペレットが通常1ないし20mmの直径を持ち、必然ではないにしても一般的に球形などの幾何学的または多角形状に構築され、押出機などのアプリケータをこのペレットが容易に流動できるようにする。好適な材料の1つは、オレフィン系ポリマーベースの発泡体であり、さらに詳しくは、エチレンベースのポリマーである。たとえば、ポリマー発泡体は、アルファ−オレフィンを有するエチレン共重合体または三元共重合体を基材とするが、これに限らない。共重合体または三元共重合体として、ポリマーは2個または3個の異なる単量体(モノマー)、すなわち類似の分子と結合することのできる高い化学的反応性を有する小型の分子で構成される。特に好適なポリマーの例としては、エチレン酢酸ビニル,EPDMまたはそれらの混合物があげられる。市販される好適な発泡体配合物の他の例としては、L&L Products, Inc.(ミシガン州 Romeo)からL-2105, L-2100, L-7005またはL-2018, L-7100, L-7101, L-7102, L-7700, L-2410, L-2411, L-2412, L-4201, L-4141などの名称で市販されるポリマーベースの材料があるが、これに限らない。また、これらは連続気泡または独立気泡ポリマーベースの材料のいずれで構成されてもよい。これらの材料は、吸音性,防振性,密封性,耐触性などの特性を示すことがある。
【0018】
この材料は、また、電着塗装またはその他の自動車用塗装炉作業で通常発する熱を利用して活性化することにより、発泡特性を有する熱活性化エポキシベースの樹脂でもよい。発泡性材料が加熱されると、膨張し、架橋して、隣接する表面と構造的に結合する。好適な配合物の例としては、エチレン共重合体または三元共重合体のポリマー変異体を含み、L&L Products, Inc.(ミシガン州 Romeo)からL-5204, L-5206, L-5207, L-5208, L-5222の名称で市販されるエポキシベースの材料、またはそれらの組み合わせがあげられる。これらの材料は、比較的高い強度と堅牢性を含む特性を示し、粘着性,剛性を促進し、その他の貴重な物理的化学的特性や性質をもたらすことができる。
【0019】
消音特性が望まれる場合は、本発明は活性化後に振動と雑音の軽減を助けるよう配合される発泡性材料を利用することができる。これに関しては、強化され、振動を減衰した部品が堅牢性を高めることができ、自動車のシャーシを通じて共鳴する固有振動数を軽減する。それによって、結合する音響製品の利用を通じ、伝導を軽減し、雑音を阻止または吸収する。車両部品の堅牢性と剛性を強化することにより、車両の動作により起こり、車両を通じて伝わる雑音,振動またはその両方の全体的な振幅と振動数を小さくすることができる。
【0020】
消音材料の利用に加えて、本発明では消音材料と構造を強化する膨張性材料とを組み合わせ、所望の用途の要件により部材の異なる部分または領域に用いることができる。音響膨張性材料を構造材料と結合して用いることにより、構造的には更なる改善が得られるが、一義的にはNVH特性を改善するために組み込まれる。
【0021】
当技術においては、他の適切なエポキシベースの材料もいくつか知られており、利用される。このような発泡体の1つに、エチレンベースのポリマーなど、適切な成分(通常は発泡剤または硬化剤)と混合されると加熱または特定の周辺条件の存在により確実に、予測可能な方法で膨張および硬化するポリマ基材が好ましくは含まれる。熱活性化材料に関して化学的観点から見ると、発泡体は、硬化前に流動性熱可塑性材料として初期処理されるのが普通である。発泡体は硬化すると架橋し、さらなる流動または最終形状の変化に耐性を有する材料となる。
【0022】
流動性材料は、選択される材料が熱活性化する、あるいは周辺条件(たとえば湿度,圧力,時間など)により活性化され、特定の用途に関して適切な条件下で予測可能に確実な方法で硬化する場合は、他の材料(たとえば、当技術では構造発泡体と見なされる発泡体)で作成することができる。このような材料の1つは、本件と共通の所有者を有する同時継続出願である米国特許出願第09/268,810号(1999年3月8日出願)に開示されるポリマーベースの樹脂である。この出願の教義は本件に参考文献として含まれる。
【0023】
他の可能な材料としては、ポリオレフィン材料,少なくとも1つの単量体形式のアルファ−オレフィンを有する共重合体および三元重合体,フェノール/ホルムアルデヒド材料,フェノキシ材料およびポリウレタンがあるが、これに限らない。米国特許第5,266,133号;第5,766,719号;第5,755,486号;第5,575,526号;第5,932,680号WO00/27920号(PCT/US99/24795)をさらに参照されたい(これらはすべて参考文献として、明示的に包含される)。適切な溶融流動性(メルトフロー)材料の例としては、共通の所有者による同時継続出願である、2000年8月7日出願の「Paintable Seal System」と、2001年8月24日出願の「Paintable Material」に含まれるが、これに限らない。これらはいずれも本件に参考文献として含まれる。さらに別の材料および方法は、2000年8月3日出願の同時継続出願である米国特許出願第09/631,211号「Sound Absorption System for Automotive Vehicles」に開示される。
【0024】
一般に、得られる材料の望ましい特性としては、ガラス転移点が比較的低いことと耐触性が優れていることがあげられる。このように、材料は自動車製造業者が採用する材料系に全体として干渉しない。さらに、電着塗装下塗り,洗浄とグリース除去および他のコーティング工程などの車両製造と、車両の最終的な組立で行われる塗装作業において通常出会う処理条件に耐える特性を有する。
【0025】
この点に関して、熱活性化される熱膨張性材料が利用される用途においては、材料の選択と配合に関して考慮すべき点は、材料の反応または膨張および場合によっては硬化が起こる温度である。たとえば、多くの場合、材料が室温または製造ライン環境における周辺温度において反応することは望ましくない。これは、ある実施例において、材料が供給業者により押込成型装置に押し出され、一体化製品として車両製造業者に出荷されるからである。材料は、昇温状態で、あるいはより高いエネルギ・レベルを印加された状態で、自動車組立工場などのより高い処理温度において、たとえば電着塗装準備段階やその他の塗装サイクルの間などに車両部品と共に処理されると、活性状態となるのがもっとも一般的である。自動車の電着塗装作業の温度は、摂氏約145度ないし210度(華氏約300ないし400度)であり、下塗り,充填および塗装工場での適用は摂氏約100度(華氏約200度)以上となる。このため、材料はこの範囲全体で働く。必要に応じて、発泡剤活性剤を組成内に含めて、上記範囲外の異なる温度での膨張を起こす。
【0026】
一般に、適切な膨張発泡性流動性材料は、約0ないし2,000パーセント超の体積膨張範囲を有する。防振性材料20の膨張レベルは、1,500パーセント以上まで高くすることができる。ある実施例では、材料は1,500パーセント、好ましくは約2,000パーセント膨張する超膨張性材料である。この材料は、個々のノードが膨張時に互いに離れる程度まで(あるいは表面上に位置する)まで、あるいは、互いに接触する(間隙空間を有することも有しないこともある)まで膨張することができる。
【0027】
別の実施例においては、材料を密閉あるいは部分的密閉形式で提供することもできる。これは、接着性の外殻内に密閉あるいは部分密閉された膨張発泡性材料を含むペレットによって構成される。このような系の一例を、本件に参考文献として包含される、共通の所有者を持つ同時継続出願である、米国特許出願第09/524,298号(「Expandable Pre-Formed Plug」)に開示する。
【0028】
さらに、流動性材料としては、米国特許第6,030,701号(本件に参考文献として明示的に包含される)に開示されるような可溶融材料があげられる。
【0029】
使用される流動性材料の選定は、特定の用途の性能要件と経済性および要件により決定する。概して、自動車や他の用途では、米国特許第4,922,596号,第4,978,562号,第5,124,186号および第5,884,960号,同所有者による同時継続出願である2000年2月11日出願の米国特許出願第09/502,686号,2000年3月14日出願の第09/524,961号,2000年8月7日出願の第60/223,667号,2000年8月14日出願の第60/225,126号,2000年9月29日出願の第09/676,443号,2000年9月29日出願の第09/676,335号,2000年9月29日出願の第09/676,725号および、特に1999年12月10日出願の第09/459,756号に開示されるような技術と工程とを利用することができる。これらはすべて、本件に参考文献として明示的に包含される。
【0030】
塗布のためには、本発明の流動性材料を種々の異なる処理段階または温度において所望の特性(たとえば、粘着性または非粘着性)を示すよう配合することが望ましい場合が多い。もちろん、このような特性または温度は、流動性材料の用途により変化することがある。
【0031】
自動車産業に関して特に論ずると、本発明の流動性材料は、塗装サイクル中の温度において活性化および流動化することが一般的に望ましい。しかし、活性化の前には、流動性材料は室温に近い温度(たとえば摂氏約5度ないし約50度)では固体で実質的に非粘着特性を示し、中間レベルの温度(たとえば摂氏約50度ないし約100度)では、活性化することなしに多少の流動性と粘着性を示すことが好ましい。これらの特性により、ペレット同士が実質的に接着せずに材料をペレット状に保存,輸送および維持することができるという利点が得られる。同時に、材料を中間レベルの温度まで加熱して、材料の塗布中には基板に接着させることができるようにすることが可能である。これについては、下記に説明する。
【0032】
このような所望の特性を示す流動性材料を作成するために、分子量分布の狭い原樹脂を材料に含めることが好ましい。分子量分布は、原樹脂内のポリマの70%が互いに10,000原子質量単位(amu)内にあることが好ましく、原樹脂のポリマの80%が互いに5,000amu内にあることがより好ましく、ポリマの90%が互いに1,000amu内にあることがさらに好ましい。好ましくは、原樹脂は、材料または材料の重合体成分の約50ないし約100重量パーセントで構成され、より好ましくは、材料または材料の重合体成分の約60ないし約90重量パーセントで構成される。
【0033】
流動性材料は、1つ以上の構成成分を配合されることもある。これにより、塗布の際に基板への材料の接着を助ける。通常、このような構成成分は、流動性材料と汚染物質(たとえばオイルや潤滑剤)との間に所望の相互作用を得るために加えられる。このような汚染物質は、流動性材料が塗布される基板の表面に存在する。
【0034】
ある実施例においては、流動性材料は1つ以上の可溶化剤を含み、これは基板表面上で流動性材料が汚染物質を可溶性にする助けをする。このような可溶化剤の例としては、炭化水素(たとえば炭化水素処理オイル),フタレート可塑剤,液状ポリオレフィンなどがあげられる。このような可溶化剤は使用時に、好ましくは流動性材料の約1ないし約30重量パーセント、より好ましくは流動性材料の約5ないし約20重量パーセントである。
【0035】
別の実施例においては、流動性材料は、1つ以上の不相溶性または低相溶性成分を含み、これらは流動性材料の塗布時に、汚染物質を置換して、流動性材料の基板への接着を助ける。好ましくは、このような成分は比較的分子量が小さく(たとえば1,000g/mol未満)、成分が流動性材料の樹脂系から移動するものである。このような成分の例としては、ポリブテン,ポリブタジエン,種々のワックスなどがあげられる。このような低相溶性成分は使用時には、好ましくは流動性材料の約0.1ないし30重量パーセントであり、より好ましくは、流動性材料の約2ないし約15重量パーセントである。
【0036】
別の実施例においては、流動性材料は1つ以上の有極性成分を含み、これが流動性材料の基板に対する接着を助けることができる。好ましくは、このような成分は、溶融点が比較的低い(たとえば、摂氏約50度ないし約100度)。このような成分の例としては、酸化または官能化ワックス,エポキシ樹脂またはそれらの組み合わせがあげられる。このような有極性成分は使用時には、流動性材料の約1ないし約30重量パーセントであることが好ましく、流動性材料の約2ないし約15重量パーセントであることがより好ましい。
【0037】
さらに別の実施例では、流動性材料は酸無水物基などの接着促進剤により改質されるワックスなどの成分を1つ以上含む。このような改質成分は使用時には流動性材料の約1ないし約30重量パーセントであることが好ましく、流動性材料の約5ないし約20重量パーセントであることがより好ましい。
【0038】
さらに別の実施例においては、流動性材料は2成分系を含み、第1成分が第2成分と作用して、塗布中の流動性材料の粘性を高める。たとえば、比較的分子量の小さい材料のペレットを、相溶性のある分子量のより大きな基材ポリマのペレットと組み合わせる。それを混合して中間範囲の温度まで昇温すると2種類のペレットの相溶性により粘性が高まる。別の例としては、1つの材料のペレットを少量、第2材料で形成されるペレットと組み合わせることができる。この場合、第1材料は第2材料と混合されると活性化する反応性機能を有して、接着を促進する。
【0039】
流動性材料の塗布装置
本発明により流動性材料を部品に塗布する装置は、種々の構成で提供される。本装置は、通常は、流動性材料が通過する流出口を有する少なくとも1つのアプリケータを備える。アプリケータは、圧縮または射出成型装置,押出装置またはその他のアプリケータ装置などの成型装置によって構成される。本装置は、流動性材料の塗布に先立ち所望の形状に流動性材料を形成する助けを行う。さらに、本装置は、アプリケータを移動させて(たとえば単軸または多軸ロボット技術により)アプリケータが1つ以上の部品に流動性材料を塗布することを助ける。
【0040】
図1,図2および図3を参照して、溶融された流動性材料を塗布する装置の実施例が図示される。本装置は、一般に軽量で持ち運びができる材料アプリケータを備え、アプリケータ全体を20と示す。本発明のアプリケータは、押出機,油圧,電気または空気圧アプリケータまたは他の適切なアプリケータとすることができる。
【0041】
図1,および図3において、アプリケータ20は、ロボット機構22に装着される押出機として図示される。ロボット22は、静止して装着される基台26を備え、その上にタレット24が3つの旋回(ピボット)接続されるアーム28,30および32に沿って回転可能に装着される。図示される如く、アプリケータ20は、アーム32の端部に装着されるので、6本の軸において自由に移動することができる。代替の実施例においては、アプリケータ20は、ロボット22以外の機構により可動性をもたせてもよい。たとえば、アプリケータ20を、アプリケータが1つまたは複数の軸において移動できるようにする軌道上に装着してもよい。さらに別の代替実施例においては、アプリケータ20を静止させてもよい。
【0042】
図1において、アプリケータ20はオフラインで操作され、個別のテーブル38上に支持されるジグ36に装着される、図示されるルーフ・パネル34などの、静止しているあるいは動いている部品上の適切な位置に押出を行う。押出機20は、1対の油圧ライン42を含む機構などの駆動機構により油圧ポンプ44や、それに関係する油圧液46の貯蔵タンクに結合される適切なモータ72(油圧モータなど)により動力を供給される。
【0043】
流動性材料は、種々の方式でアプリケータに供給される。流動性材料は、流動状態でアプリケータにくみ出されることもある。機械的なコンベヤにより運ばれることもある。スクリューにより進むこともある。ピストンにより進むこともある。さらに別の方法も可能である。材料は、固体としてアプリケータに送られ、アプリケータが材料を処理(たとえば熱や、溶剤、反応体またはそれらの組み合わせにより)して、流動性材料を形成することができる。さらに、様々な位置で、様々な成分をアプリケータに送ることができる。たとえば、押出機は押出機内に導入され、混合される種々の材料成分を受け取る1つまたは複数の流入口を有することがある。
【0044】
材料は、箱やその他の容器など、ほぼ任意の適切な容器から供給され、ペレット,微粒子,細粒など多くの形状で供給することができる。適切なペレット形状の例としては、円筒形,多角形,卵形,長台形,環状,立方体,球形,半球形,多面体,角柱,角錐その他の幾何学的なあるいは不規則な形状があげられる。
【0045】
材料がどのような形状で供給されるかは、供給される材料の性質により決まるのが普通である。一般に、ペレットには鋭い端部があっても、ほとんどないことが好ましい。ここで用いるペレットの端部は、通常はペレットの表面を隣接させることにより規定され、このような端部の鋭度は、これらの表面が互いに配置される角度により規定されるのが普通である(すなわち、端部が鋭いほど、角度は小さく鋭角になる)。好適な実施例においては、ペレットの端部を形成する表面は約70度超で配置され、より好ましくは約90度超、さらに好ましくは約110度超で配置される。極めて好適な実施例においては、ペレットは実質的に端部をもたず、曲面のみ、平面のみまたはその両方を有する。
【0046】
一例として、図1には、空気圧シリンダ58による上昇に応じて軸点56に関して傾斜するテーブル54上に置かれた供給容器52が図示される。真空ポンプ48が、引抜管50を通じて供給容器52から材料の固体ペレットをアプリケータ20の上方の点までくみ出す。その後、ペレットは、アプリケータ20の流入管74(図2)まで送り管40を通じて重力供給される。
【0047】
多様な形態の接着剤および封止材、とりわけ発泡性接着剤の押出に関しては、処理温度を材料の活性化温度より低く維持することが重要である。これを行うための1つの方法は、シアーを制御して、材料に圧力が印加されても材料が加熱されないようにすることである。押出機を駆動する精密制御モータ(油圧モータなど)を利用すると、押出機の圧縮特性を精密に制御することができる。たとえば、油圧モータ72は大量のトルクを与え、高速の応答曲線を有するので、押出を極めて迅速に開始および停止させることができる。この制御特性は、許容限度が厳格な用途において流動性材料を押し出す際に特に有利である。
【0048】
流動性材料を塗布するための好適な装置の1つは、少なくとも部分的に自動制御される。ただし、手動制御と自動制御との組み合わせも行われ、場合によってはそれが望ましいこともある。好ましくは、制御システムがコンピュータ処理されたコマンドを送って、流動性材料を部品の適切な所定の表面に適切に塗布するために、流動性材料を部品に供給するべきときをアプリケータに命令する。図3に示す好適な実施例においては、押出機20とそれに伴うロボット22のほぼすべての機能を、PLC60(プログラム可能論理コントローラ)により制御することができる。ただし、本発明において、他のコンピュータ化システムおよびコンピュータ・ソフトウェア駆動システムを用いることもできる。電気的制御信号がPLC60からライン66を介して油圧ポンプ44に配信され、一方のライン64を介してロボット22の種々のサーボ・モータへ、また他方のライン62を介して、押出機20の胴部(たとえば円筒形胴部)86の中央部および下部を囲む3つの別々の加熱素子114,116,118に送られる。
【0049】
押出機は、押出速度(処理量)を調節することが求められるので、スクリューは極めて可変的なトルクにさらされ、そのために可変する反力を受ける。従って、好適なスクリュー・ベアリング・アセンブリは、反対方向に動作する少なくとも2つのスラスト・ベアリング(など)によって構成される。本発明では、押出機が本質的にはスクリューの回転角度を厳密に制御することのできる準容積ポンプとして機能するように、反復可能で予測可能な量の材料を利用する工程を組み込むことも行う。閉ループ・サーボ制御システムを用いて、スクリューの位置を求め、制御し、動作させることができる。この制御システムは、(さらにサーボ弁を含む)油圧系または電気サーボモータによって構成される。重量が重要な要因となる用途においては、油圧系が望ましく、一方、静止系については、電気系が第1の選択肢となる。
【0050】
流動性材料を表面に塗布する前に、流動性材料を受容する部品の表面を加熱することが望ましい場合がある。たとえば、本発明のある工程では、洗浄する(たとえば汚染物質を除去する)ため、接着力を強化するため、部品を熱膨張させるため、またこれらを組み合わせた目的のために表面を加熱する段階が含まれる。表面は、オーブンまたは炉など、部品が出し入れされる、あるいは通過するヒータを用いて、または温度調節装置,光源(たとえばレーザ,ランプなど),炎,インダクタまたはその他の適切なヒータによって、放射,伝導,対流またはその組み合わせにより加熱される。このヒータは、流動性材料を塗布する装置の一部として設けても、別体として設けてもよく、その両方を下記に説明する。
【0051】
図示される実施例においては、オプションの送風機47がロボット20のアーム30に装着され、ライン45を通じて空気を電気的に加熱されたマニフォールド68に送る。このマニフォールド68には、流出エアノズル70が付いている。マニフォールド68と、ノズル70端部の温度センサ69とは、それぞれライン71,73を介してPLC60に接続される。マニフォールド68は、押出機20の一部を形成するハブ110に固定される螺刻された装着フランジ85内で長さ方向に調節可能なロッド83に旋回可能に装着される。この装着法により、ノズル70の端部は、押し出された材料ビーズが押出ダイ126を出て部品上に付着する点に近接して、所望の温度の温風が基板に向くよう調整される。
【0052】
図2に示す油圧モータ72に関しては、1対の螺刻流体口95,97が油圧ライン42と結合される。油圧モータ72は、スペーサ96とアダプタ・リング94とを通じて円筒形のハブ110に装着される。アダプタ・リング94は、出力シャフト102を囲み、ハブ110内の環状くぼみに収容される。モータ72の回転可能な出力シャフト102は、ハブ96を貫通して延在し、ハブ110の開口部内に入り、そこでキー100によって送りスクリュー88の上部に固定される。タッチセンサなどのセンサ98が、スペーサ96に装着され、シャフト102の回転速度を含むシャフト120の回転を検知する。送りスクリュー88の上端は、1対のベアリング・レース104,108とローラ・ベアリング106によって構成されるスラスト・ベアリングにより、ハブ内で回転する。
【0053】
円筒形胴部86の上端は円筒形フランジ101を備え、これはハブ110の周囲に延在するショルダにボルトで固定される。胴部86の側壁にある横形開口部112が圧力逃し部となる。胴部86の入口開口部90によって、固形の材料ペレット105が、送りスクリュー88の上端で胴部86内部に導入される。入口送り管74は、開口部90内への多少湾曲した送り経路を形成する。この開口部90は、ペレット105の性質と押出機20の姿勢により、ときに詰まることがあり、そのために送りスクリュー88への一定した流れが妨げられることがある。この問題をなくするために、スイベル送り管接続部を設けて、送り管40を入口管74に結合する。この接続部は、入口管74内に延在する内側筒状スリーブ92によって構成され、送り管40に固定される。内側スリーブ92は、入口管74の上端に嵌め合いフランジ109を回転可能に支持する円周フランジ107を備える。フランジ107,109は、スリーブ92に固定され、入口管74を囲む部分を有するカラー84の溝内に収納される。上記の内部接続の説明から、内側スリーブ92,カラー84および送り管40は、入口管74とは独立して回転することが理解頂けよう。この構造により、材料ペレット105が入口管74の底付近で詰まると、送り管40の回転運動、すなわち内側スリーブ92が傾いて、ペレットを押しのけるので、ペレットは入口開口部90内に自由に流れ込んでスクリュー88内に円滑に送られる。代替の実施例においては、空気などの気体を定期的に送り管内部に吹き込んで、ペレットの流れと吐出を助け、あるいはペレットのつまりを避ける。また、送り管40は押出機20の上で自由に回転するので、押出工程中に、送り管40内のペレットの適切な流れに応力を加えたり、妨害しないように押出機を動作、操作できることも理解頂けよう。
【0054】
材料がアプリケータ内に適切に流れ込み、そこを通過し、また流れ出るよう流動性材料の温度を上下する、あるいは維持することが望ましい場合がある。流動性材料を加熱により流動状態にする場合は特に、材料温度を上げることが望ましい場合が非常に多い。流動性材料の加熱は、アプリケータに入る前に、アプリケータ内で、またはアプリケータを出てから行うことができる。流動性材料がアプリケータに入る前に、アプリケータ内にある間に、あるいはその後で材料を加熱するために様々な加熱機構が利用される。加熱素子の例としては、ワイヤを巻いたラバー・ヒーター,搭載ヒータ・サブアセンブリ,コイル・ワイヤ加熱素子,可撓性加熱素子などがあげられる。
【0055】
上記の如く、好適な実施例においては、胴部86の中間部および下部において、PLC60により制御される帯状の加熱素子114がその周囲に装着される。加熱帯114,116,118は胴部86を囲み、表示装置(図示せず)とPLC60とに温度フィードバック情報を提供する温度センサ113が装備される。下側加熱帯118は、押出ノズル120に隣接する胴部86のほぼ端部に到達するように見える。加熱帯114〜116は、ペレット105を流動性材料に溶融するよう働き、流動性材料は送りスクリュー88のスクリュー動作によって蓄積チャンバ122内に送られ、そこからノズル120内の先細送り経路124を通って押出ダイ126に送られる。押出ダイ126は、その中に押出開口部を有し、この断面は押し出されるビーズの所望の形状と一致する。押出ダイ126は、ノズル120内に螺着可能に収容され、ノズル120は胴部86の下側螺刻開口部内に螺着可能に収容される。この開口部は送りスクリュー88の中心軸と同心円をなす。ノズル120内に固定される圧力センサ128は、流動性材料がダイ126に入るときの圧力に関する信号をPLC60に送る。
【0056】
好適な実施例においては、PLCは押出機のスクリューの回転に関して閉ループ制御を利用して押出機を作動させる(すなわち、押出物がどの程度の速さで放出されるかをセンサがPLCに伝え、押出機のスクリューは適切な速度を実現するためにより遅く、あるいは速く回転する)。このようにして、押出物の放出速度に対する制御を精密に行い、押出機は極めて短時間(たとえば1秒未満)のうちに所望の放出速度に到達することができる。
【0057】
極めて好適な実施例においては、アプリケータは計量システムに基づいた閉ループ制御を利用する。このようなシステムにおいては、押出機からの流動性材料の出力は、押出機の配置角度と押出機スクリューの回転速度とに、経験的に結びつけて決定される。妥当な量の実験により、押出機スクリューの異なる回転速度における流動性材料出力の体積量を、かなり高度な確実性をもって知ることができ、それによって押出機スクリューの回転速度がこの出力に釣り合う限り、流動性材料の適切な体積出力を得ることができる。この後で、選定した部品について、所望のプロファイルをPLCに入力することができる。好ましくは、このプロファイルは、時間に対する流動性材料出力の所望の量,押出機の所望の配置角度またはその両方を、押出機スクリューの選定した部品に対する所望の回転速度に関連付けるものである。流動性材料が出力されると、押出機の角度と押出機スクリューの回転速度に関するデータは、センサ98などのセンサや他の装置を介して監視され、データをPLCに送ることができる。さらに、PLCはモータに対して、モータが押出機スクリューにかけているトルク量を上下あるいは維持するよう命令して、流動性材料の出力または押出機スクリューの回転速度が所望のプロファイルを厳密に反映するようにする。このようにして、押出機を計量装置として利用する。流動性材料の出力量はスクリューの回転速度に極めて密接に関連し、またそれに基づいて予測可能である。
【0058】
塗布される流動性材料によっては、塗布と塗布との間に、あるいは塗布中に間欠的にアプリケータから過剰なあるいははみ出た材料を除去して、流動性材料出力との干渉を回避することが望ましい場合がある。
【0059】
実施例においては、アプリケータ出口で空気などの気体を吹き付けてアプリケータから過剰な材料を除去する。あるいは、布やその他のふき取り材で出口を拭くことにより、手動で余分な材料を除去することもできる。研削または研磨段階を採用する場合もある。図1に示すように、ロッド76の端部に装着される2本のアーム78の端部間に保持されるふき取りワイヤ80によって構成されるワイパを設けることもある。好ましくは、ロッド76はテーブル38上に装着されるホルダ77内において摺動的に長さ調整可能に保持される。ノズル126の端部から余剰な材料をふき取るために、ロボット22は、ダイ126の外側端が余剰材料を切り取るワイヤ80を横切るように押出機20を移動させる。
【0060】
あるいは、またはさらに、塗布毎にアプリケータ20内の流動性材料を引き出して余剰材料が除去されるよう、アプリケータ20をプログラミングしてもよい。アプリケータが押出機である実施例においては、塗布のたびに短い時間で、あるいは短い距離で押出機20内に流動性材料が戻るように押出機スクリューの回転方向を逆転するようPLCをプログラミングしてもよい。これにより、塗布の後にダイ126端部に残る余剰材料が最小限に抑えられる。
【0061】
次に図8を参照する。ここでは押出機20のノズル配置の代替の形態がより大きな尺度で描かれており、複数の押出ダイ128,130,132が設けられる。複数のダイ128〜132は、互いに所望の位置または角度においてノズル本体120a内に配置され、特性(寸法,断面形状など)が異なるダイ開口部を有する。これにより、ダイを交換したり複数の押出機を用いる必要なしに異なる設定のビーズのオンライン押出を行うことができる。送り通路124の底端が、分配チャネル部140,142,144を介してダイ128〜132に流動性材料を送る。図示される実施例においては、材料の流れは複数のダイ128〜132に対して選択的に制御される。これはここでは、適切な任意の形状のモータまたは空気圧シリンダ136などの駆動機構により作動される結合ロッド138により作動されるボール弁138として図示される弁動作を介して行われる。
【0062】
代替の実施例においては、種々の締め付け機構を利用して、押出ダイ128,130,132などのダイを押出機20などのアプリケータに取り付ける。たとえば、締め付け機構にはクィック接続ナットおよびボルト・ファスナ,油圧式クィック接続ファスナ,雄雌クィック接続ファスナなどのクィック接続またはクィック交換装置を備える。
【0063】
他の代替の実施例においては、流動性材料を塗布する装置は、複数の材料(たとえばプラスティック同士の組み合わせ,金属とプラスティックの組み合わせなど)を同時押出するよう構成することもできる。たとえば、2つ以上のダイを1つのアプリケータに固定する、あるいは1つのダイに別々の材料ビーズを放出する2つ以上の開口部を備えることができる。
【0064】
本発明の特定の実施例に関して、流動性材料をある位置において基板または部品に塗布し、その部品または基板を第2の位置に移送して製造物に組み付けることが望まれる場合がある。たとえば、自動車産業においては、自動車製造業者は組立工場(たとえば本来の自動車組立ライン)から地理的に離れた自身の施設において、基板または部品に流動性材料を塗布することを望むことがある。その後、部品または基板は自動車組立工場に出荷または輸送され、そこで、好ましくは車両の塗装前に車両に組み付けられる。あるいは、部品または基板が製造物に組み付けられるのと同じ場所でその部品または基板に流動性材料が塗布されることが望ましいこともある。
【0065】
次に図4,図5および図6を参照する。ここでは、生産ライン上の車両の自動組立のためにインライン押出塗布に用いる押出機20が図示される。動く生産ライン154上の車体146は、前記に説明した、ロボット22の端部に装着された押出機20によって構成される充填材塗布ステーションを通過する。PLC60(図3)のプログラム制御下で、押出機20は材料ビーズ152を各車両146のルーフ面148に形成されるチャネル150内に自動的に押し出す。モータ72による材料流の精密な制御により、また、その構造から押出機20がロボット・アームの端部に置くことができるほど極めて軽量であるために、車両146が組立ラインを移動する間に、極めて精密に形成される充填材ビーズが、ルーフ面148の周縁全体のチャネル150内の適切な位置に導入される。
【0066】
好適な実施例により、本発明の装置は極めて狭い許容範囲をもって、車両の部品上に流動性材料を入れるように設計される。好適な実施例においては、流動性材料は目指す位置の少なくとも1cm以内に入れることができ、より好ましくは、目指す位置の3ミリ以内、またさらに好ましくは目指す位置の1ミリ以内に入れることができる。
【0067】
前述の如く、充填材ビーズ152は適切な温度において、適切な流動特性をもって、充填材ビーズ152の所望の断面形状をもって押出機20から出て、きちんとその役割を果たすことが重要である。これらの材料特性は、種々の用途において特に重要である。たとえば、硬化後に、あるいは加熱後に膨張して空隙(たとえば空洞部,間隙,継ぎ目など)を埋める充填材として用いる場合などである。このような用途は、隔壁,ダッシュボード,ホイール・ウェル,床板,ドア・ビーム,ヘム・フランジ,車両ベルトライン,ドア枠,揺材(ロッカー),デッキ面,ボンネットなどの自動車部品に適用される。さらに、これらの部品は、金属型押し,成型プラスティック,押出プラスティック,加工または注型金属などで形成することができる。
【0068】
一例として、図7aは、ルーフ・パネル154を車両146の上に配置した直後のルーフ面148を示す。ルーフ・パネル154とルーフ面148との間には空隙を形成する小さな間隙部がある。図7bは、硬化および/または加熱により充填材ビーズを膨張させて車体部分間の空隙を埋めた後のこれらの部品の関係を示す。充填材の流出特性制御は、いくつかの理由により、極めて精密に行われる。第1に、前述したように、油圧モータ72を利用することにより、送りスクリュー88に極めて高レベルのトルクを与えながら、油圧モータ72の重量はロボット・アームに押出機20を装着することを邪魔するほど大きくならない。センサ98は、送りスクリュー88の回転を精密に検知するので、直ちにフィードバック情報を送り、PLC60がそれに従って油圧モータ72を制御することができる。また、加熱帯114〜118は、温度センサ113と共に充填材を囲み、別個に制御可能な加熱領域を画成し、材料が押出ダイ126を出る際の最終温度を極めて精密に制御する。ダイ126を出る充填材の正確な流速は、充填材が押し出される直前の圧力に関するフィードバック情報、すなわち流速に関する情報をPLC60に送る圧力センサ128によって、またこれも流速に関連する押出機スクリューの回転速度を監視するセンサ98によって、さらに制御される。送り管40の押出機20への独自の回転可能な接続部も、一定した制御可能な流速を保証する。これは、材料供給の一時的な中断や減少が回避されるためである。最後に、加熱ノズル70から出る精密に向きを制御される熱風の流れを起こすことにより、基板を予備加熱することができる。これにより、押し出される材料をより良く調整して、基板からオイルなどを吸収することができる。
【0069】
用途によっては、充填材の固体ペレットを押出機20に送る別の形態を設けることもできる。たとえば、図9および図10に示すように、前述の可撓性送り管40ではなくバッチ・ホッパ156を押出機20上に装着して、材料ペレットを供給することもできる。バッチ・ホッパ156は、入口管74に接続されるエルボ管166を通じてペレットを重力供給する。バッチ・ホッパ156の寸法は、所定の部分または特定の作業のために充填材を塗布するのに充分な「1回分の量」を送ることのできる程度とする。バッチ・ホッパ156に補充するために、ロボット22は押出機20をロード位置まで揺動させ、そこでホッパ156が材料ディスペンサ158の下に位置し、ディスペンサ168の排出管160はホッパ156の内部にまで延在する。これは図10に良く見ることができる。電気,油圧または空気圧で機能するモータ部材162は、数字164に示される排出弁を制御し、1回分の材料が排出管160を通りホッパ156内に吐出されるようにする。1回分の材料がこのようにして排出されると、ロボット22は押出機20を下げて、ディスペンサ158と排出管160の関係を解除する。ホッパ156は常にこのように移動するので、弁164下方の排出管160内に残っている材料は下に流れて、ホッパ156に入る。別の代替実施例においては、アプリケータをペレット供給部の下に連続して位置させ(たとえばアプリケータは相対的に静止状態となる)、ビーズまたはペレットの供給が断続的に補充されて、ビーズが重力下でアプリケータに連続して流れ込むことができるようにすることもできる。
【0070】
好適な実施例においては、異なるペレットを押出機に送って、混合された材料群として流動性材料を形成することもできる。特に好適な実施例においては、1つの材料をペレットまたは他の形状で押出機の第1開口部内に導入し、第2の材料をペレットまたは他の形状で押出機の第2開口部内に導入する。このようにして、流動性材料が部品に塗布されるときに、材料の長さに沿って「飴棒縞模様の」異なる材料の層を含む流動性材料を形成することができる。好ましくは、異なる材料のペレットがアプリケータに入る開口部は、全体として互いに対向し、流動性材料の層を形成する。このようにして、より反応性の高い材料などの種々の材料を、所望の流動性材料作成工程の後の方においてその他の材料と組み合わせることで、これらの材料間の望ましくない、あるいは早すぎる反応が起こらないようにすることができる。
【0071】
次に、図11および図12を参照する。これらの図には、全体を数字180で示す本発明の押出機の代替形態が示される。押出機180は、その構成部品に関しては前述の押出機と類似または同一である。前述のものと異なる部分のみをここに説明する。押出機180は、コンベヤ168を備える組立ラインに沿ったある静止位置において2つの直交軸周囲に限られた動きをするよう装着される。コンベヤ168は、金属チャネル部172などの部品を、横方向に間隔をおいて配置される静止送りガイド170により導かれる経路に沿って移動させる。送りガイド170が、押出機180を通過する際に部分172の横方向の位置を精密に制御する。
【0072】
押出機180は、基台192に固定される1対の間隔をおいて配置される装着フランジ186上に旋回可能に装着される。1対の前方向に延在するアーム190は、一端を押出機180を支持する構造に接続させ、他端を押出ダイ176を上下させるように働く油圧または空気圧シリンダ188の出力シャフトに接続させる。必要に応じて、釣合い重りを押出機180の対向端に装着して、適当なバランスをとることもできる。バッチ型ホッパ178が押出機180上に置かれ、充填材のペレットまたは他の固体形状を供給する。熱風源(たとえば送風機)182が押出ダイ176の上流に装着され、出口ノズル184を介して所望の温度の熱風を送り、部品172を予熱する。本件で説明される他の加熱機構を、所望に応じて用いることもできる。
【0073】
押出機180のガイド・アーム194に装着されるガイド・シュー174が、部分192内の溝またはチャネル部内に収容され、部分172内のチャネルまたは溝の横方向の位置に応じて、軸(たとえば縦軸)の周囲に押出機180を旋回するよう働く。このようにして、シュー174は、部品のチャネルに相対して押出ダイ176を精密に移動配置するカム・ガイドとして機能し、充填材ビーズが部品172内の溝またはチャネル内の正確な位置に吐出される。
【0074】
品質管理
品質管理のためには、材料がアプリケータに送られる際にそれを追跡することが望ましい。たとえば、材料ペレットのバッチを特定の順序で供給し、適切な材料が種々の部品に確実に塗布されるようにする、あるいは用いられている材料が古くなって劣化しないようにすることが望ましい。他の例としては、より多くの材料が必要な場合にそれを判断するために材料の供給状態を監視できるよう、材料の使用状況を追跡することが望ましい場合もある。
【0075】
材料の追跡は、ラベル,手動のシステム,自動システムなどを用いて行うことができる。ある実施例においては、また図13を参照して、バーコード・システム300を採用する。図13においては、流動性材料を供給する装置302の各部分にバーコード・スキャナを備える。好ましくは、バーコード・スキャナは、流動性材料をペレットの状態で処理前に最初に受け取る装置302の各部分上に置かれる。このようなスキャナの配置例としては、図3の容器52などの供給容器314に隣接する位置や、図11のバッチ・ホッパ178に隣接する位置などがあげられ、好ましくは容器314から装置302へ材料が導入される前に、供給容器に付けられたバーコードをスキャナが読みとることができるようにする。
【0076】
スキャナは、コントローラ320(たとえばコンピュータまたはその他のコントローラ)と信号通信を行い、装置302に材料を送るための適切な位置に配置される任意の供給容器314の識別子またはバーコードをコントローラ320に対して知らせることが好ましい。コントローラ320には、所望のバーコードを有する所望の供給容器314が所望の時刻に装置302に供給するよう配置されているか否かを判断するためのデータをプログラミングすることもできる。これによって、望ましくない供給容器314が材料を供給する位置に置かれると、コントローラ320が応答する。可聴性応答(たとえば警笛,ベル,トーンまたはサイレン),視覚応答(たとえば点滅光などの光),それらの組み合わせまたはその他の応答など、多様な応答を行うことができる。ある実施例においては、コントローラ320は装置302と通信して、望ましくない材料が装置302に送られている場合に装置が部分的に、あるいは全面的に停止するようにする。
【0077】
部品と、流動性材料の部品への塗布
本件に開示される流動性材料は、いくつもの製造物の多様な部品の表面に塗布できる。本明細書で用いる部品とは、製造物のいくつかの部品のうちの1つであっても、製造物の唯一の部品であってもよい。流動性材料が塗布される表面は実質的に平坦であっても、立体的形状(たとえば曲面,角度を持つ面,弧をなす面など)をなしてもよい。好適な実施例においては、表面は少なくとも部分的に、流動性材料を受け取るためのチャネル部を画成する。別の実施例においては、表面は自動車部品の一部である。極めて好適な実施例においては、表面は自動車の車両構造内に組み込まれる型押し金属部品である。
【0078】
流動性材料を表面に塗布する前に、部品の表面を処理することが望ましい場合がある。流動性材料の塗布前に表面の埃,すす,オイルなどの不純物を洗浄したり、流動性材料の塗布前に表面を加熱したり、流動性材料の塗布前に表面をコーティングしたり、あるいはこれらの処理を組み合わせを行うことができる。特に自動車産業においては、型押し金属部品などの部品には、オイルなどの過剰な不純物が含まれることが多く、これを流動性材料の塗布前に除去することが好ましい。このような不純物は、複合物の表面をエネルギ源のエネルギにさらすことにより除去することが好ましい。
【0079】
ある実施例においては、表面をプラズマ発生装置により形成されるプラズマにさらすことにより、表面の洗浄を行う。プラズマ発生装置は、非熱プラズマ,非平衡プラズマまたは誘電性バリア・プラズマなど種々のプラズマを発生することができる。表面をプラズマにさらすと、プラズマが表面上にある、あらゆる不純物にエネルギを供給する。これで不純物は焼却,蒸発あるいは表面から除去されて、表面は流動性材料を受け入れるのにより適切なものとなる。
【0080】
代替の実施例においては、レーザまたはフラッシュ・ランプを用いて、部品の表面をエネルギ・ビームまたはエネルギ・パルスにさらすことができる。レーザまたはフラッシュ・ランプは、比較的高いピーク電力を持つエネルギ・パルスを生成するために比較的低いエネルギ入力を要するものであることが好ましい。レーザの一例としては、比較的高速の高ピーク電力パルス(たとえば、約10ナノ秒のパルス時間と、10ワット以上のパルス電力と、約1ミクロンのパルス波長を有するパルス)を送ることのできる、QスイッチNdYagレーザがあげられる。この例のレーザは、約100Hzの周波数でこのようなパルスを送ることができることが好ましい。エネルギ・パルスは部品の表面上に不安定なプラズマを形成し、安定しようとするプラズマが衝撃波効果を生んで、部品の表面からグリース,すすや、その他の不純物を吹き飛ばすと考えられる。
【0081】
別の実施例により、部品の表面は1つ以上の熱ランプの光にあてることもできる。熱ランプは、部品表面に向かって、典型的には、可視光または近赤外光(たとえば約750ナノメートル)の波長を持つ光を放出することが好ましい。フラッシュ・ランプは、部品表面から不純物を除去し、熱ランプは部品表面を加熱することもする。極めて好適な実施例においては、熱ランプは自動車の型押し金属部品の表面に向かって光を当て、それによって型押し金属部品の表面上によくある不純物(たとえば、特にオイル)を蒸発させる。さらに、この極めて好適な実施例においては、部品表面をある時間の間、熱ランプの光にあて、流動性材料が部品に塗布される温度と実質的に同じ温度まで表面を加熱する。
【0082】
さらに別の代替の実施例においては、部品表面に流動性材料を塗布する前に、表面に下塗りを施す。下塗りは、部品表面に対し手動または自動で行われる。好ましくは、下塗りは部品表面の洗浄を行った後で施す。下塗りにより、流動性材料が部品表面に接着することを助けるという利点がある。ある極めて好適な実施例においては、流動性材料を塗布する装置に、下塗りを行う第1ノズルまたは開口部と、下塗りを施した後に流動性材料を塗布する第2の開口部(たとえばダイの)とを装備することができる。
【0083】
ある好適な塗布方法により、塗布される流動性材料の種類によっては、部品を予熱せずに流動性材料を部品表面に塗布することもある。部品表面にこのような方法で流動性材料を塗布する際には、上記の方法の1つ(たとえばプラズマ,下塗り,レーザなど)を用いて表面を前処理または洗浄することが好ましい。ある実施例においては、流動性材料またはペレットまたは複数のペレット(未硬化状態の)は一般的に乾燥していたり、あるいは室温ではべと付かない粘性の比較的低いものである。
【0084】
状況によっては、部品をアプリケータに対して移動させて、アプリケータから放出される溶融した流動性材料が部品表面上に適切に位置するようにする。たとえば、部品を表面上、または他の支持部に載せ、コンベヤ・ベルト,ロボット,ロボット・アーム,カルーセル,回転台などの移動システム上に配置または装着して、アプリケータの下に部品を移動させることもできる。このようなシステムは、ある軸の回りに半径上において、あるいは立体的な経路に沿って、あるいは1本以上の直線などに沿って部品を移動させることができる。さらにこのようなシステムは、アプリケータを動かすロボット・アームに対し独立して、あるいは依存して動くことができ、これらのシステムがロボット・アームと同じ、あるいは異なるコントローラを有することがある。流動性材料がアプリケータから放出される速度よりも速くも、遅くも、あるいは実質的に同じ速度でも、部品を流動性材料に対して移動させることができる。流動性材料は、ほぼ任意の所定の経路に沿って部品に塗布される。
【0085】
また、流動性材料は種々な形状で部品に塗布することができる。一例として、流動性材料をダイを通じてビーズとして塗布し、ダイの開口部の形を模する。異なるダイを用いることにより、異なる形状を作り出すことができる。さらに、流動性材料は単独の連続するビーズとしても、複数の間隔をおいたビーズとしても塗布することができる。ビーズの大きさも、望み通りに変えることができる。たとえば、ビーズの断面積は約1mm2から約1000mm2まで、より好ましくは約10mm2から約500mm2まで、さらに好ましくは約100mm2から約300mm2までとすることができる。
【0086】
ある実施例により、流動性材料は特定の化学的または物理的性質、ここでは組立前特性と呼ぶが、このような性質を、流動性材料の部品への塗布と、製造物への部品の組立との間の比較的長い時間に亘って、維持することが望ましい場合がある。しかし、組立後は、流動性材料は他の物理的性質、ここでは組立後特性と呼ぶが、この性質を呈することが望ましい場合がある。部品に塗布された流動性材料が、最初に部品に塗布されてまもなく、非粘着性などの性質を呈する流動性材料が本発明により提供される。このようにして、流動性材料は輸送に適する条件で部品に塗布される(すなわち、部品群を互いにまたは他の部品と隣接して、あるいは接触して置き、流動性材料が隣接部品に粘着または付着しないようにすることができる)。この後で、流動性材料を熱,薬剤その他の刺激により誘導して、流動性材料が塗布された部品が製造物内に組み込まれる間、あるいはその後で、流動性材料の化学的または物理的性質が変化するようにすることができる。誘導後の化学的または物理的性質としては、粘性,膨張などがある。
【0087】
流動性材料20は、部品の外表面のそれが硬化および結合する場所に比較的清浄な方法で容易に均一に塗布することのできる粘弾性状態で塗布される。流動性材料が所望の形状およびパターンで部品に塗布されると、材料が本来の固体または乾燥した化学状態に戻ることのできる製造設備内の周辺温度において材料は冷却され、それによって部品の外表面に材料が結合および接着する。次に部品は、自動車などの製造物内に組み込まれて、電着塗装やその他の、自動車製造設備によく見られる塗装作業サイクルにより加熱される。材料は膨張し、それによって製造物の隣接する部品の外表面上の材料と架橋する。
【0088】
ある極めて好適な実施例においては、流動性材料はたとえば摂氏約40度の第1温度では非粘性であるが、第1温度より高く加熱されると粘性を示し、それよりも高い第2温度、すなわち上記のような通常の電着塗装工程により与えられる温度程度においてより高い粘性を示すプラスティック接着剤である。このため、プラスティック接着剤は、摂氏40度ないし摂氏180度の温度で部品に塗布することができ、接着剤は、流動性材料の高度な変形を起こすことなく輸送される接着剤としては充分に部品に接着する。好ましくは、流動性材料は、依然として実質的には未加工の状態、すなわち非活性化/非硬化状態にある。その後で、接着剤はおおよそ40度以下の温度まで冷却または部分的に硬化し、接着剤をそれが接触する他の物体に接着せずに、部品と接着剤とを輸送することができる。次に、部品が製造物内に組み込まれ、接着剤の温度は第2温度まで昇温されて、接着剤が再び冷却または最終硬化すると、製造物の部品として部品が接着固定される。このような接着剤は、処理や取扱の間に垂れたり、流れたり、落ちたり、移動することがないので、他の接着剤と比べて利点を有する。
【0089】
L&L Products, Inc.(ミシガン州 Romeo)が販売する製品名称L-5204, L-5205, L-5206, L-5207, L-5208, L-5209, L-5214, L-5222および L-8000からなる群から材料を選択すると、構造的接着がもっとも良く得られることがわかった。半構造的接着に関しては、L&L Products, Inc.(ミシガン州 Romeo)が販売する製品名称L-4100, L-4200, L-4000, L-2100, L-1066, L-2106およびL-2108からなる群から材料を選択すると、最良の結果が得られる。
【0090】
本発明による流動性材料を受容するのに適した部品は多くある。流動性材料は、コーティング面であろうと非コーティング面であろうと、塗装面であろうと非塗装面であろうと、溶接面であろうと非溶接面であろうと、部品の金属表面に塗布することができる。好適な実施例においては、流動性材料はドア・ビーム,トランク・リッドまたはボンネット・リッドなどの閉鎖パネル、ルーフ・バウ,燃料口ドア,外装部,車両のAピラーなどの自動車部品に塗布される。また、流動性材料は、自動車のルーフ溝,エンブレム上,車両のトランク・スペースを囲む排水溝内部などにも塗布することができる。さらに、流動性材料はサスペンション部品,ハンガー部,ブラケット、その他排気系などのシステムにも塗布することができる。他の部品としては、ヘム・フランジ,エンブレムなどがある。さらに、流動性材料は、緩衝,封止または腐食保護を必要とする際にも塗布することができる。
【0091】
流動性材料は、ネズミ穴(ラットホール),異なる金属間の隙間,切欠部などの様々な穴や開口部を密閉または埋めるためにも塗布することができる。好適な実施例により、流動性材料は垂れることなく穴,開口部その他の間隙の両側に延在することができる。
【0092】
ある実施例により、流動性材料を実質的に車体サイド・パネルのいろいろな部分または領域に塗布する。図14を参照すると、自動車の車体サイド・パネル504に流動性材料を塗布するシステム500が図示される。このシステム500は、サイド・パネル504を移動または操作するロボット508を備える。システム500は、溶融流動性材料を塗布する装置512も備える。装置512は上記のアプリケータ(たとえば押出機)を備える。ある実施例により、ロボット508は、パネル504を支持し、装置に対してパネル504を動かす能力を持つ。好ましくは、ロボット508は、所定のパターンに従って、装置512のアプリケータの下において少なくとも1つのパネル504を動かす。パネル504が動かされると、アプリケータは所定の時に流動性材料を放出し、流動性材料が所定の位置にパネル504に塗布されるようにすることが好ましい。
【0093】
上記には明確に論じられない程度に、請求項においては、明細書に説明される段階または部品のいくつかの異なる組み合わせを採用することができ、それが本発明により意図されることが理解頂けよう。
【0094】
もちろん、当業者は、当技術に対する本発明の貢献の精神と範囲から逸脱することなく、本発明を説明するために選定された好適な実施例に種々の変更または追加を加えることができることは明白である。従って、本明細書により求められもたらされる保護は、請求される主題と、本発明の範囲内に正当に存在するそのすべての均等物に拡大されるものと見なされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の第1表面を設ける段階と、流動性材料が前記第1表面を濡らし、そこに付着するように、多少流動状態で前記第1表面上に前記流動性材料を塗布する段階とを含む流動性材料を製造物の部品に塗布する方法であって、
前記流動性材料を塗布する段階が、前記流動性材料を自動化装置により押し出す段階を含み、この自動化装置が、
i)ペレットとして容器内に納められた前記流動性材料を供給する装置と、
ii)前記流動性材料を供給する装置と連通して前記ペレットを押し出す押出機であって、流動性材料の前記ペレットを粘弾性状態に混合し、前記流動性材料を吐出することができる押出機であり、前記流動性材料を吐出する回転可能なスクリューを備える押出機と、
iii) 前記押出機または前記部品を、前記流動性材料の吐出中に移動させるシステムと、
iv) 前記押出機および前記システムと接続するコントローラであって、スクリューの回転速度を流動性材料の出力に関連付ける計量装置に基づき、前記出力を制御するために閉ループ制御を採用するコントローラとを備える方法。
【請求項2】
前記コントローラが、前記押出機スクリューの回転方向を反転させて、前記流動性材料が前記部品に塗布された後に短い距離だけ前記流動性材料を後退させるようプログラミングされることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記コントローラが前記押出機と接続するプログラミング可能な論理コントローラであって、前記プログラミング可能な論理コントローラには、流動性材料の出力速度を前記押出機の位置角度と前記押出機スクリューの回転速度とに関連付けるプロファイルがプログラミングされており、前記プログラミング可能な論理コントローラが前記プロファイルと連係する閉ループ制御を採用して、前記出力速度を所望のレベルに設定することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記押出機が、前記押出機から前記部品に対して材料を押し出す際に通過する押出ダイを含むノズル構造を備え、前記押出機ダイがクィック接続ナットおよびボルト・ファスナ,油圧式クィック接続ファスナまたは雄雌クィック接続ファスナから選択されるクィック変換アタッチメント装置により前記押出機に取り付けられ、さらに、前記押出機ダイが流動性材料の複数のビーズを放出する複数の開口部を備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記押出機が前記流動性材料を所望の温度に加熱する加熱素子を備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記押出機と連携するスクリュー・ベアリング・アセンブリをさらに含み、このスクリュー・ベアリング・アセンブリが第1スラスト・ベアリングと第2スラスト・ベアリングとを有し、前記第1および第2スラスト・ベアリングが反対方向に動作するよう設定されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記押出機が、前記部品の表面上に3ミリメートル未満の許容差内で前記部品上に前記流動性材料を吐出するよう設定されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記システムが、前記部品を移動させるためのロボットアーム,コンベヤまたはカルーセルを備え、前記装置が前記容器から前記押出機にペレットを移動させる真空圧源を備えることを特徴とする請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−56510(P2011−56510A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255299(P2010−255299)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【分割の表示】特願2003−16277(P2003−16277)の分割
【原出願日】平成15年1月24日(2003.1.24)
【出願人】(507150873)ゼファロス インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】