説明

流路開閉弁

【課題】弁体とシートとの間の摩擦に起因する磨耗を低減するとともに、耐振性を向上することが可能な流路開閉弁を提供する。
【解決手段】流路開閉弁10は、第1及び第2シャフト32、34を介して回動可能に設けられた弁体14と、連通孔17を有する可動シート16と、可動シート16を弁体14とは反対側に付勢する弾性体18と、を備える。第1及び第2シャフト32、34は、その軸線A1が球面形状部30の曲率中心から外れた位置で弁体14に取り付けられている。流路開閉弁10は、弁体14の球面形状部30がシート面48に当接して連通孔17を閉塞することで弁閉状態となり、弁体14が可動シート16から離間して連通孔17を開放することで弁開状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流通する流路を開閉することにより該流体の流通状態を切り換える流路開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、流体の流通する流路に接続され、該流路の連通状態を切り換えることによって前記流体の流通状態を制御する流路開閉弁が知られている。このような流路開閉弁は、弁本体の内部にボールバルブが設けられ、該ボールバルブの上部に連結されたシャフトが回転することにより、前記ボールバルブの貫通孔が前記弁本体に形成された一対の通路(ガス流入口およびガス流出口)を互いに連通させる。また、ボールバルブのガス流入口側およびガス流出口側には、ボールバルブを挟むように固定シートおよび可動シートが設けられ、バネ部材により可動シートをボールバルブ側に付勢することにより、その間にボールバルブが保持される。この構成により、ボールバルブが固定シートおよび可動シートに常時接触するため、シール性が確保されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−114068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術では、ボールバルブと可動シートは、一定範囲で接しているので、バルブ開口が該一定範囲を越えないと連通しない。つまり、シャフトの回動に遅れてボールバルブが開口するので、シャフトの回動とバルブの開口に位相差が生じる。このような構成では、シャフト開度に比例した流量特性を得ることは困難であった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、弁体とシートとの離間を円滑に行うことができ、シャフト回動に比例した流量制御が可能となり、適正な流量特性を確保することができる流路開閉弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明に係る流路開閉弁は、シャフトを介して回動可能に設けられた弁体と、前記弁体を収容するバルブ室を有するボディ本体と、前記弁体が着座するシート面を有する可動シートと、前記可動シートを、前記可動シートを基準として前記弁体とは反対側に付勢する弾性体と、を備え、前記弁体は、少なくともその一部として、球面に形成された球面形状部を有し、前記シャフトは、その軸線が前記球面形状部の曲率中心から外れた位置で前記弁体に取り付けられ、前記可動シートは、前記シャフトの軸線と略直交する方向に軸線を有する連通孔を有し、前記弁体の前記球面形状部が前記シート面に当接して前記連通孔を閉塞することで弁閉状態となり、前記弁体が前記可動シートから離間して前記連通孔を開放することで弁開状態となることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、弁体が偏心した回動軸心を中心として回動(揺動)し、弁体が可動シートに着座することで弁閉状態となり、弁体が可動シートから離間することで弁開状態となる。このような構成では、弁閉状態にある弁体が可動シートから離間する方向に揺動する際、可動シートの弁体への追従性は、弁体とは逆方向への弾性体の付勢力により強制的に切断され、特に、弁体が可動シートから離れるとき、可動シートに追従されることなく離れられるので、シャフト回動直後にほぼ位相差なく連通孔を開くことができ、シャフト回動に比例した流量の制御が可能となり、適正な流量特性を確保することができる。また、従来の固定シートは不要であり、弁体が可動シートに接触しているのは、可動シートに着座している弁閉状態のときだけであり、弁体と可動シートとの常時接触がないため、弁体及び可動シートの磨耗を低減することができるとともに、回動トルクの増大を防止できる。また、リターンスプリングのスプリング荷重を可動シートで直接受けることができ、別途、全閉位置を決める位置決めストッパを設ける必要がないので、コスト削減にもつながる。さらに、弁体が可動シートから離間している間は、可動シートからの振動が弁体に伝わらないため、耐振性への影響を小さくすることができる。
【0008】
前記流路開閉弁において、前記可動シートは、その軸線方向と直交する方向に変位可能に前記ボディ本体内に配置されているとよい。
【0009】
上記の構成によれば、弁体が可動シートに着座する際に、製作誤差、組み付け、若しくは作動時の磨耗等に起因するズレが弁体と可動シートとの間にあっても、可動シートが弁体の表面(球面形状部)に追従して軸線と直交する方向に動くことが可能であるため、可動シートの位置が自動的に調整される。すなわち、可動シートの調芯機能が発揮されることで、上記ズレを許容できる。このため、ボールバルブのシート離間を円滑に行うことができるので、可動シートの追従性を効果的に切断でき、適正な流量特性を確保することができる。
【0010】
前記流路開閉弁において、前記シャフトの軸線と直交し、かつ前記弁体の曲率中心を含む平面における断面上で、前記可動シートの軸線方向と前記シート面とのなす角をシート角と定義したとき、前記弁閉状態にある前記弁体の前記球面形状部の曲率中心を通りかつ前記可動シートの軸線に直交する直線を基準として前記可動シートの反対側の領域内で、前記直線に対して前記曲率中心周りに前記シート角の分だけ角度をとった領域内に、前記弁体の回動軸心が設定されているとよい。
【0011】
上記のように弁体の回動軸心の位置を設定すると、弁体の回動軌跡が可動シートの内部を通らないので、弁体が可動シートに押し込まれず、弁体と可動シートの間の「こじり」を防止できる。従って、弁体と可動シートとの離間を円滑に行うことができるので、可動シートの追従性を効果的に切断でき、適正流量を確保することができる。
【0012】
前記流路開閉弁において、前記弁体における前記球面形状部の形成範囲は、前記弁体の回動範囲内で、前記弁体の回動状態にかかわらず、前記可動シートの前記連通孔を通して前記弁体を上流側から見たときに常に前記球面形状部のみが見えるように設定されているとよい。
【0013】
上記の構成によれば、弁体の回動状態にかかわらず弁体の球面形状部が可動シートの開口部に臨むので、可動シートの連通孔を通過したガスは、常に弁体の球面形状部に沿って流れてバルブ室に流入する。これにより、ガス流量が弁体の回動角度にほぼ比例し、ガス流量のリニア特性を担保できる。
【0014】
前記可動シートの外周面が前記ボディ本体の内面に接した状態で、前記連通孔を前記可動シートの軸線方向に投影してなる連通孔投影部と、前記可動シートの上流側に形成されたガス流入口を前記軸線方向に投影してなる流入口投影部とを重ねたとき、前記連通孔投影部が前記流入口投影部に包含されるように、前記連通孔が形成されているとよい。
【0015】
前記可動シートの上流側には、ガス流入口が設けられ、前記可動シートは、前記ガス流入口側の側面に補助孔を有し、前記可動シートの外周面が前記ボディ本体の内面に接した状態で、前記補助孔を前記可動シートの軸線方向に投影してなる補助孔投影部と、前記ガス流入口を前記軸線方向に投影してなる流入口投影部とを重ねたとき、前記補助孔投影部が前記流入口投影部を包含するように、前記補助孔が形成されているとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る流路開閉弁によれば、弁体とシートとの離間を円滑に行うことができ、シャフト回動に比例したガス流量制御が可能となり、適正な流量特性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る流路開閉弁の一部断面斜視図である。
【図2】図2Aは、図1におけるIIA−IIA線での断面図であり、図2Bは、弁開状態でのボールバルブ及びその周辺部位を示す断面図である。
【図3】シートとバルブの全閉位置関係における、シート角に基づいて規定される「こじり」有領域と「こじり」無領域についての説明図である。
【図4】シートとバルブの全閉位置関係図であって、図4Aは、弁体の回動軸心が「こじり」有領域に位置していることを示す模式説明図であり、図4Bは、弁体の回動軸心が「こじり」有領域と「こじり」無領域の境界に位置していることを示す模式説明図であり、図4Cは、弁体の回動軸心が「こじり」無領域に位置していることを示す模式説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る流路開閉弁について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る流路開閉弁10の一部断面斜視図である。流路開閉弁10は、ボディ本体12と、該ボディ本体12の内部に回動自在に設けられる弁体14と、弁体14に当接する可動シート16と、可動シート16を付勢する弾性体18と、ボディ本体12の上部に設けられ、弁体14に対して回転駆動力を付与する駆動力伝達機構20とを有する。
【0020】
本実施形態に係る流路開閉弁10は、排気ガス循環用バルブ(EGRバルブ)10Aとして構成されており、ボディ本体12の下部には、気化した燃料を含む排気ガスが供給されるガス流入口22が設けられ、ガス流入口22の弁体14を基準にした反対側には、排気ガスを導出して内燃機関(図示せず)へと循環させるガス流出口24が設けられている。
【0021】
ボディ本体12において、ガス流入口22とガス流出口24とは略一直線上に設けられる。ボディ本体12には、ガス流入口22とガス流出口24との間にバルブ室26が形成され、このバルブ室26の内部に球状の弁体14が回動自在に配設される。弁体14において、上部および下部は平面状に形成され、上部および下部を除いた部分の外周面は球面形状部30として構成されており、弁体14は、この球面形状部30の表面で可動シート16に当接する。
【0022】
弁体14の下部には、第1シャフト32の上端部が連結固定され、弁体14の上部には、第2シャフト34の下端部が連結固定されている。第1シャフト32は、ボディ本体12の下部に装着・固定された軸受36により軸線A1を中心として回転自在に支持されている。第2シャフト34は、ボディ本体12の上部に装着・固定された軸受38により軸線A1を中心として回転自在に支持されている。すなわち、第1シャフト32および第2シャフト34は、同一の軸線A1を中心として回転する。軸線A1は、可動シート16の軸線Cに直交する直線と平行である。
【0023】
ここで、図1中、可動シート16の軸線Cは、ガス流入口22の中心と、ガス流出口24の中心とを通る直線である。また、矢印X方向は、軸線Cに沿う方向であり、矢印Z方向は、X方向に直交する方向であって第1シャフト32および第2シャフト34の軸線A1に沿う方向(図1で上下方向)であり、矢印Y方向は、X方向およびZ方向に直交する方向である。
【0024】
第1シャフト32および第2シャフト34の軸線A1の位置は、球面形状部30の曲率中心(ほぼ球状の弁体14の場合、その中心)を通る軸線A2から偏心した位置に設定されている。すなわち、軸線A1は、弁体14の軸線A2に対して所定距離だけ離間して平行となるように設定されている。このため、弁体14は、軸線A2から偏心した位置に設定された軸線A1を中心として回動(揺動)するようにバルブ室26内に設置されている。
【0025】
駆動力伝達機構20は、上述した第2シャフト34と、第2シャフト34の上端部に連結されるバルブギア40と、ボディ本体12の上部に連結され、バルブギア40を介して第2シャフト34を回転駆動させる駆動源42と、弁体14が全開となった後、弁体14を強制的に全閉状態に戻すためのリターンスプリング43とを含む。
【0026】
第2シャフト34の上端部は、バルブギア40の略中央部に挿通されてナット44を締め付けることによって固定されている。駆動源42は、例えば、通電作用下に回転駆動するステッピングモータやロータリーアクチュエータからなり、その回転駆動力がバルブギア40を介して第2シャフト34へと伝達されることにより、第2シャフト34に連結された弁体14が軸線A1を中心として回動動作する。ここで、バルブギア40とボディ本体12との間には、リターンスプリング43が保持されており、弁体14が閉位置から開位置へ回転駆動されるときに該回転方向にバネ力が蓄えられ、該バネ力は、弁体14を開位置から閉位置に戻すときに開放される。この場合、弁体14の下部に連結された第1シャフト32は、軸受36の支持作用下に弁体14と一体となって回転する。
【0027】
図2Aは、図1におけるIIA−IIA線での断面図である。図1及び図2Aに示すように、弁体14とガス流入口22との間には、バルブ室26の一部を構成するシート収納部46が形成されており、このシート収納部46にリング状の可動シート16が配置されている。シート収納部46は、可動シート16の外周部の形状に沿って断面円形に形成されている。
【0028】
可動シート16は、軸線C方向に規制された範囲内で変位可能であり、弾性体18によって弁体14とは反対側(X2方向側)に付勢されている。可動シート16の外径は、シート収納部46の内径よりも小さく、これにより、可動シート16とシート収納部46との間に半径方向のクリアランス47が形成されている。このため、可動シート16は、ボディ本体12内で、軸線C方向と直交する方向に変位可能である。すなわち、可動シート16は、YZ平面内で変位可能である。
【0029】
可動シート16の連通孔17は、該可動シート16がY方向に動き、その外周がシート収納部46内面に達してもガス流入口22をふさがない大きさに設定されている。すなわち、可動シート16の外周面がボディ本体12の内面に接した状態で、連通孔17を可動シートの軸線C方向に投影してなる連通孔投影部と、可動シート16の上流側に形成されたガス流入口22を軸線C方向に投影してなる流入口投影部とを重ねたとき、前記連通孔投影部が前記流入口投影部に包含されるように、連通孔17が形成されている。
【0030】
さらに、可動シート16の連通孔17のX2方向には補助孔19が設けられ、該補助孔19は、可動シート16がY方向に動き、その外周がシート収納部46内面に達してもガス流入口22をふさがない大きさに設定されている。すなわち、可動シート16の外周面がボディ本体12の内面に接した状態で、補助孔19を可動シート16の軸線C方向に投影してなる補助孔投影部と、可動シート16の上流側に形成されたガス流入口22を軸線C方向に投影してなる流入口投影部とを重ねたとき、補助孔投影部が流入口投影部を包含するように、補助孔19が形成されている。
【0031】
可動シート16には、その中心部に軸線C方向に貫通する連通孔17が形成されるとともに、連通孔17のX1方向側には、弁体14が着座するシート面48が形成されている。このシート面48は、可動シート16の軸線Cを中心に延在する円環状の面であって、当該軸線Cに対して所定角度(図3に示すシート角θ)だけ傾斜した面である。すなわち、シート面48は、X1方向側に向かうにつれて内径が直線的に拡大するように形成されている。可動シート16の、シート面48が設けられた側と反対側(X2方向側)の側面50は、軸線Cに対して垂直な平面である。
【0032】
可動シート16のX1方向側には、リング状のストッパ56が配置され、このストッパ56と可動シート16との間に弾性体18が配置されている。図示例のストッパ56は、シート収納部46のX1方向側に形成されたストッパ装着部57に固定して装着されたリング状の部材であり、X2側の端面で弾性体18のX1方向側の端部に当接することで、軸線C方向の弾性体18の変位を規制している。なお、ストッパ56は、リング状に限らず、ストッパ装着部57の周方向に間隔を置いて配置された複数のストッパ片により構成されるものであってもよい。
【0033】
弾性体18は、X1方向側の端部でストッパ56のX2方向側の側面に当接し、X2方向側の端部で可動シート16のX1方向側の外周寄りの側面に当接し、可動シート16をX2方向側に弾性的に付勢している。図1等に示した一構成例に係る弾性体18は、ウェーブワッシャとして構成されている。このウェーブワッシャは、周方向の位置によって軸線方向の位相が異なるように形成されたリング状の部品であり、バネとして機能する。なお、弾性体18は、ウェーブワッシャに限られず、コイルバネ等の他のバネ材でもよく、あるいは、可動シート16を弁体14とは反対側に付勢する機能を有するゴム弾性体からなるものでもよい。
【0034】
可動シート16の、弁体14とは反対側(X2方向側)には、可動シート16が当接するシート当接部58が設けられている。このシート当接部58における、可動シート16が当接する面は、軸線Cに垂直な平面である。なお、図示例のシート当接部58は、ボディ本体12の一部として一体的に形成された部位であるが、変形例として、ボディ本体12とは別体の部品として構成されたリング状の部材であってもよい。
【0035】
図2Aに示すように、可動シート16は、弾性体18によりシート当接部58側に付勢されることで、その側面50において、シート当接部58に摺動可能に当接している。上述したように、可動シート16の外周面とシート収納部46の内周面との間には、所定のクリアランス47が形成されているため、可動シート16は、軸線Cに直交するYZ平面内で、シート当接部58に対して摺動しながら変位することが可能である。
【0036】
また、上述したように、可動シート16の側面50とシート当接部58の側面はともに軸線Cに対して垂直な平面であるため、当該側面は周方向の全周にわたって互いに密着し、これによって可動シート16とシート当接部58との間のシールがなされ、両者間での流体の流通が阻止される。
【0037】
本実施形態に係る流路開閉弁10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、ここでは、図1及び図2Aに示されるように、ガス流入口22とガス流出口24との間の流路が弁体14によって遮断された弁閉状態を初期位置として説明する。
【0038】
図2Aに示すように、初期位置では、弁体14の側面に設けられた球面形状部30が可動シート16に設けられたシート面48に当接している。すなわち、弁体14が可動シート16に着座し、可動シート16の連通孔17が閉塞された状態となっている。
【0039】
また、弾性体18により可動シート16がシート当接部58側に付勢されることで、可動シート16とシート当接部58との間のシールがなされている。このように、弁体14と可動シート16との間、および可動シート16とシート当接部58との間がシールされることで、ガス流入口22とガス流出口24との間の流路が遮断されている。従って、ガス流入口22には図示しないガスが供給されているが、当該ガスは、可動シート16よりも下流側には流入しない。
【0040】
このような弁閉状態から、図1に示す駆動源42が駆動すると、駆動源42の回転駆動力がバルブギア40を介して第2シャフト34に伝達され、この第2シャフト34に連結された弁体14が軸線A2から偏心した位置に設定された軸線A1を中心として回転し、図2Bに示す状態となる。このように、偏心した軸線A1を中心に弁体14が回転するとき、弁体14は可動シート16に対して後退する方向(X1方向)に変位する。
【0041】
この場合、可動シート16は弾性体18によりシート当接部58側に付勢されているため、可動シート16の弁体14への追従性は強制的に切断され、弁体14は、X1方向側への変位に伴って可動シート16から離間する。この結果、可動シート16と弁体14との間に隙間が形成され、弁開状態となる。このような弁開状態では、ガス流入口22に供給されたガスは、可動シート16と弁体14との間に形成された隙間を流れ、ガス流出口24から流出して図示しない内燃機関へと導入される。
【0042】
上述したように、本実施形態に係る流路開閉弁10(EGRバルブ10A)によれば、弁体14が偏心した回動軸心を中心として回動(揺動)し、弁体14が可動シート16に着座することで弁閉状態となり、弁体14が可動シート16から離間することで弁開状態となる。このような構成では、従来の固定シートは不要であり、弁体14が可動シート16に接触しているのは、可動シート16に着座している弁閉状態のときだけであり、弁体14と可動シート16との常時接触がないため、弁体14および可動シート16の磨耗を低減することができるとともに、回動トルクの増大を防止できる。
【0043】
また、リターンスプリング43のスプリング荷重を可動シート16で直接受けることができ、リターンスプリング43用のストッパを別途設けることが不要となるので、コスト削減にもつながる。
【0044】
また、弁閉状態にある弁体14が可動シート16から離間する方向に揺動する際、可動シート16の弁体14への追従性は、弁体14とは逆方向への弾性体18の付勢力により強制的に切断され、特に、弁体14が可動シート16から離れるとき、可動シート16に追従されることなく離れられることから、シャフト回動直後にガス流路が開くことになるため、シャフト回動に比例したガス流量の制御が容易となり、適正な流量特性を確保することができる。
【0045】
またさらに、可動シート16がその軸線C方向と直交する方向に変位可能に配置されているので、弁体14が可動シート16に着座する際に、製作誤差や組付け誤差に起因するズレが弁体14と可動シート16との間にあっても、可動シート16が弁体14の表面(球面形状部30)に追従して軸線と直交する方向に動くことが可能であるため、可動シート16の位置が自動的に調整される。すなわち、可動シート16の調芯機能が発揮されることで上記誤差を許容できる。このため、弁閉状態において弁体14と可動シート16とが確実に密着し、良好なシール性を確保できる。
【0046】
本実施形態において、弁体14はほぼ球状であるため、弁体14の回動範囲内で、弁体14の回動状態にかかわらず、連通孔17を通して弁体14を上流側から見たときに常に球面形状部30のみが見えることになる。すなわち、可動シート16越しに弁体14を見た場合、弁体14が弁閉状態にあっても(図2A参照)、弁開状態にあっても(図2B参照)、あるいは弁開状態から弁閉状態の途中の状態にあっても、常に球面形状部30のみが見える。
【0047】
従って、弁体14の回動状態にかかわらず弁体14の球面形状部30が可動シート16の連通孔17に臨むので、可動シート16の連通孔17を通過したガスは、常に弁体14の球面形状部30に沿って流れて下流側のバルブ室26に流入する。これにより、ガス流量が弁体14の回動角度にほぼ比例し、ガス流量のリニア特性を担保できる。
【0048】
なお、ガス流量のリニア特性を担保するためには、弁体14のほぼ全体が球面形状部30である必要はなく、弁体14における球面形状部30の形成範囲が、弁体14の回動範囲内で、弁体14の回動状態にかかわらず、可動シート16の連通孔17を通して弁体14を上流側から見たときに常に球面形状部30のみが見えるように設定されていればよい。従って、例えば、図2Aおよび図2Bに示すように、弁体14に対して平坦部15(破線で示す)を設け、弁体14を球の一側を平面状に切り取った形状に形成してもよい。
【0049】
このような平坦部15を設けた場合、弁閉状態では、図2Aに示すように、上流側から可動シート16越しに見て常に球面形状部30が見え、弁開状態では、図2Bに示すように、上流側から可動シート16越しに見て常に球面形状部30が見える。また、図示しないが、弁閉状態と弁開状態の途中の状態でも同様に球面形状部30が見える。従って、弁体14に平坦部15を設けた場合においても、ガス流量が弁体14の回動角度にほぼ比例し、ガス流量のリニア特性を担保できる。
【0050】
ところで、上述した構成では、弁体14の回動軸心つまり軸線A1の位置によって、弁体14と可動シート16相互間にいわゆる「こじり」が発生する場合がある。このような「こじり」は、可動シート16の弁体14に対する追従性を促進し、良好な流量特性及び耐久性に影響するため、これを防止または低減することが望ましい。以下、このような「こじり」を防止または低減するための構成について説明する。
【0051】
まず、図3を参照して、シート角によって決まる「こじり」有領域K2と、「こじり」無領域K1について説明する。なお、図3では、ほぼ球状の弁体14の場合を例示しているが、以下の説明は、弁体14に平坦部15(図2A及び図2B参照)を設けた場合についても同様に妥当する。後述する図4に関連した説明についても同様である。
【0052】
図3に示すように、第1シャフト32及び第2シャフト34の軸線と直交し、かつ弁体14の曲率中心を含む平面における断面上で、可動シート16の軸線方向とシート面48とのなす角をシート角θと定義する。また、弁閉状態にあるときの弁体14の球面形状部30を球(仮想球体)Sの一部としたときの当該球Sの中心(すなわち、球面形状部30の曲率中心)をP1で示し、弁体14と可動シート16のシート面48との接触位置をP2で示す。なお、図1〜図2Bに示した弁体14のように、形状がほぼ球状である場合には、球Sの中心は、弁体14の中心と一致する。
【0053】
このような条件において、弁閉状態にあるときの球Sの中心を通りかつ可動シート16の軸線に直交する直線Bを基準として可動シート16の反対側の領域内で、直線Bに対して球Sの中心周りにシート角θの分だけ角度をとった領域が「こじり」無領域K1であり、シート角θを越えた領域が「こじり」有領域K2である。直線Bに対してシート角θだけ傾斜した境界線Lは、「こじり」無領域K1に含まれる。
【0054】
なお、図3では、弁体14が開くときの弁体14の回動方向がこの図で反時計方向であることを前提としているため、直線Bに対してシート角θをとる領域を軸線Cより下側としたが、弁体14が開くときの弁体14の回動方向が図3で時計方向である場合には、直線Bに対してシート角θをとる領域は軸線Cより上側となる。
【0055】
弁体14の回動軸心、すなわち第1シャフト32および第2シャフト34の中心位置(軸線A1)の位置を「こじり」無領域K1内に設定することにより、弁体14の回動軌跡が可動シート16の内部を通らないので、弁体14が可動シート16に押し込まれず、弁体14と可動シート16の間の「こじり」を防止できる。従って、弁体14と可動シート16との離間を円滑に行うことができるので、可動シート16の追従性を効果的に切断でき、適正流量を確保することができる。
【0056】
図4A〜図4Cを参照して、シート角θが45°である場合を例に、弁体14の回動軸心の位置と「こじり」の発生との関係について説明する。図4A〜図4Cにおいて、弁体14の回動軸心を参照符号P3で示す。
【0057】
図4Aでは、回動軸心P3が、偏心量xが偏心量yよりも大きくなるような位置(偏心量x>偏心量y)にある。このため、回動軸心P3は、「こじり」有領域K2に設定されている。この場合、弁体14の回動軌跡T1が可動シート16に入り込むため、弁体14が可動シート16に着座する際、または弁体14が可動シート16から離脱する際に、弁体14と可動シート16のシート面48との間に「こじり」が生じる。
【0058】
図4Bでは、回動軸心P3の位置が、偏心量xと偏心量yが同じになるような位置(偏心量x=偏心量y)にある。このため、回動軸心P3の位置は、直線Bに対して45°傾斜した境界線上の「こじり」無領域K1に設定されている。この場合、弁体14の回動軌跡T1が可動シート16に入り込まないため、弁体14が可動シート16に着座する際、または弁体14が可動シート16から離脱する際に、弁体14と可動シート16のシート面48との間に「こじり」が発生しない。
【0059】
図4Cでは、回動軸心P3の位置が、偏心量xが偏心量yよりも小さくなるような位置(偏心量x<偏心量y)にある。このため、回動軸心P3の位置は、「こじり」無領域K1内に設定されている。この場合、弁体14の回動軌跡T1が可動シート16に入り込まないため、弁体14が可動シート16に着座する際、または弁体14が可動シート16から離脱する際に、弁体14と可動シート16のシート面48との間に「こじり」が発生しない。
【0060】
なお、図4Bのように回動軸心P3の位置を設定した場合、弁体14の中心(球Sの中心)の軌道T2が最小となり、図4Cの場合と比較して、弁体14を収容するバルブ室26の必要スペースを小さくできることから、ボディ本体12の小型化を図ることが可能である。
【0061】
なお、本発明の適用範囲は、EGRバルブに限定されるものではなく、種々の流体の流路を開閉する弁として用いることができる。
【0062】
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
10…流路開閉弁 10A…EGRバルブ
12…ボディ本体 14…弁体
16…可動シート 17…連通孔
22…ガス流入口 24…ガス流出口
26…バルブ室 30…球面形状部
48…シート面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを介して回動可能に設けられた弁体と、
前記弁体を収容するバルブ室を有するボディ本体と、
前記弁体が着座するシート面を有する可動シートと、
前記可動シートを、前記可動シートを基準として前記弁体とは反対側に付勢する弾性体と、を備え、
前記弁体は、少なくともその一部として、球面に形成された球面形状部を有し、
前記シャフトは、その軸線が前記球面形状部の曲率中心から外れた位置で前記弁体に取り付けられ、
前記可動シートは、前記シャフトの軸線と略直交する方向に軸線を有する連通孔を有し、
前記弁体の前記球面形状部が前記シート面に当接して前記連通孔を閉塞することで弁閉状態となり、
前記弁体が前記可動シートから離間して前記連通孔を開放することで弁開状態となる、
ことを特徴とする流路開閉弁。
【請求項2】
請求項1記載の流路開閉弁において、
前記可動シートは、その軸線方向と直交する方向に変位可能に前記ボディ本体内に配置されている、
ことを特徴とする流路開閉弁。
【請求項3】
請求項1または2記載の流路開閉弁において、
前記可動シートの軸線方向と前記シート面とのなす角をシート角と定義したとき、
前記シャフトの軸線と直交し、かつ前記弁体の曲率中心を含む平面における断面上で、
前記弁閉状態にある前記弁体の前記球面形状部の曲率中心を通りかつ前記可動シートの軸線に直交する直線を基準として前記可動シートの反対側の領域内で、前記直線に対して前記曲率中心周りに前記シート角の分だけ角度をとった領域内に、前記弁体の回動軸心が設定されている、
ことを特徴とする流路開閉弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の流路開閉弁において、
前記弁体における前記球面形状部の形成範囲は、前記弁体の回動範囲内で、前記弁体の回動状態にかかわらず、前記可動シートの前記連通孔を通して前記弁体を上流側から見たときに常に前記球面形状部のみが見えるように設定されている、
ことを特徴とする流路開閉弁。
【請求項5】
請求項2記載の流路開閉弁において、
前記可動シートの外周面が前記ボディ本体の内面に接した状態で、前記連通孔を前記可動シートの軸線方向に投影してなる連通孔投影部と、前記可動シートの上流側に形成されたガス流入口を前記軸線方向に投影してなる流入口投影部とを重ねたとき、前記連通孔投影部が前記流入口投影部に包含されるように、前記連通孔が形成されている、
ことを特徴とする流路開閉弁。
【請求項6】
請求項2記載の流路開閉弁において、
前記可動シートの上流側には、ガス流入口が設けられ、
前記可動シートは、前記ガス流入口側の側面に補助孔を有し、
前記可動シートの外周面が前記ボディ本体の内面に接した状態で、前記補助孔を前記可動シートの軸線方向に投影してなる補助孔投影部と、前記ガス流入口を前記軸線方向に投影してなる流入口投影部とを重ねたとき、前記補助孔投影部が前記流入口投影部を包含するように、前記補助孔が形成されている、
ことを特徴とする流路開閉弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−72793(P2012−72793A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216488(P2010−216488)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】