説明

浮遊性海藻分解物の調製方法および浮遊性海藻分解物の調製のための組成物

【課題】飲食品組成物および飲食品添加物として適切な浮遊性海藻分解物を提供する。
【解決手段】従来公知の海藻分解活性を有する細菌よりも優れた新規の細菌を発見すること。好ましくは、上記海藻分解活性を有する細菌は、アルテロモナス属(Alteromonas)に属する細菌であり、より好ましくは、上記細菌は、固有の核酸配列からなる16S rRNA配列を有する細菌であり、最も好ましくは、上記細菌は、アルテロモナス属6532B2株(受託番号FERM AP-21070)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌を用いる浮遊性海藻分解物の調製方法および細菌を含有する浮遊性海藻分解物調製のための組成物に関する。さらに、本発明は、浮遊性海藻分解物を含有する飲食用組成物および飲食用添加物に関する。
【背景技術】
【0002】
海藻粉末を製造する場合、物理的処理により粉末を得ることが一般的であった。しかし、これら物理的処理による粉末化は、乾燥状態の海藻を粉末化するため、海藻粒子の径が不均一である。更に、食品としての利用段階になると、水分吸収により海藻粉末は膨潤し、粉末の粒子径、及び大きさのばらつきは一層大きくなる。これらの理由から、物理的処理による海藻の粉末化において、懸濁性、浮遊性に優れた海藻粒子を得ることは難しかった。
【0003】
自然界において、海藻葉体表面には細菌等の微生物が付着しており、海藻葉体に穴を開ける能力や葉体組織を分解する能力を有する微生物が存在している。そのため、物理処理以外の海藻の分解技術として、Alteromonas属細菌など微生物による方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、従来公知のAlteromonas属細菌を用いた場合には、浮遊性の海藻分解物の調製を行うことが困難であった。そのため、従来のAlteromonas属細菌によって調製された海藻分解物は、稚仔魚、甲殻類、及び軟体動物の幼生への飼料としては利用可能であるものの、この海藻分解物は十分に分解されてなく、懸濁性に乏しく、そのため、飲食用組成物および/または飲食用補填物としては適切ではないという問題がある。
【特許文献1】特許2772772号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記事情を考慮して、飲食品への利用が可能な、浮遊性に優れた海藻分解物を得ることが本発明の解決すべき課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、海藻の葉体組織を分解できる能力を有する海洋細菌を環境中より多数分離し、これらについての試験研究を行った。その結果、これらのうち海藻分解物に浮遊性を付与する能力を有する微生物株を見出し、これを利用することにより浮遊性海藻分解物を得ることができた。この細菌を浮遊性海藻分解物の調製に用いることによって、上記課題が解決された。
【0006】
従って、本発明に従って、以下が提供される:
(項目1)
アルテロモナス属(Alteromonas)に属する細菌と海藻分解物を接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物の調製方法。
(項目2)
以下の菌学的特徴:
人工海水培地中での形態的性質
細胞の形状:単桿菌
細胞の大きさ:約0.9μm(幅)×約2.6μm(長さ)
運動性の有無:有り
胞子の有無:なし
培養的性質
MarineAgar 2216
色素を産生せず、円形のコロニーを形成する、
MarineBroth 2216
30℃の培養で、良好に増殖する、
生理学的性状
グラム染色:グラム陰性
色素の生成:生成せず
オキシダーゼ:陽性
カタラーゼ:陽性
生育の範囲:30℃で良好に生育、
酸素に対する態度:好気性
OFテスト:O型(海洋細菌用に開発されたHughloifsonの培地:MOF培地による)
NaClの要求性:0〜1%NaClで生育せず、2.5%以上で生育、生育にNaClを要求する、
を有する細菌と海藻を接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物の調製方法。
(項目3)
配列番号1に記載の核酸配列からなる16S rRNA配列を有する細菌と海藻分解物を接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物の調製方法。
(項目4)
前記細菌がアルテロモナス属6532B2株(受託番号 FERM AP-21070)である、項目1〜3いずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記海藻分解物が、褐藻類海藻由来である、項目1〜3いずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記海藻分解物が、ワカメ、コンブまたはカジメ由来である、項目1〜3いずれか一項に記載の方法。
(項目7)
浮遊性海藻分解物を調製するための組成物であって、アルテロモナス属(Alteromonas)に属する細菌を含有する、組成物。
(項目8)
浮遊海藻分解物を調製するための組成物であって、以下の菌学的特徴:
形態的性質
人工海水培地中での形態的性質
細胞の形状:単桿菌
細胞の大きさ:約0.9μm(幅)×約2.6μm(長さ)
運動性の有無:有り
胞子の有無:なし
培養的性質
MarineAgar 2216
色素を産生せず、円形のコロニーを形成する、
MarineBroth 2216
30℃の培養で、良好に増殖する、
生理学的性状
グラム染色:グラム陰性
色素の生成:生成せず
オキシダーゼ:陽性
カタラーゼ:陽性
生育の範囲:30℃で良好に生育、
酸素に対する態度:好気性
OFテスト:O型(海洋細菌用に開発されたHughloifsonの培地:MOF培地による)
NaClの要求性:0〜1%NaClで生育せず、2.5%以上で生育、生育にNaClを要求する、
を有する細菌を含有する、組成物。
(項目9)
浮遊性海藻分解物を調製するための組成物であって、配列番号1に記載の核酸配列からなる16S rRNA配列を有する細菌を含有する、組成物。
(項目10)
前記細菌がアルテロモナス属6532B2株(受託番号 FERM AP-21070)である、項目7〜9いずれか一項に記載の組成物。
(項目11)
前記海藻分解物が、褐藻類海藻由来である、項目7〜9いずれか一項に記載の組成物。
(項目12)
前記海藻分解物が、ワカメ、コンブまたはカジメ由来である、項目7〜9いずれか一項に記載の組成物。
(項目13)
項目1〜3いずれか一項に記載の方法によって調製された浮遊性海藻分解物を含有する、飲食用組成物。
(項目14)
項目1〜3いずれか一項に記載の方法によって調製された浮遊性海藻分解物を含有する飲食用組成物であって、以下:
飲料、飲料調製用粉末、サプリメント、スープ、調味料、バター、ジャム、マーガリン、ドレッシング、マヨネーズ、蒲鉾、珍味、および、菓子、
からなる群から選択される飲食品の調製に使用するための、組成物。
(項目15)
項目1〜3いずれか一項に記載の方法によって調製された浮遊性海藻分解物を含有する、飲食用添加物。
(項目16)
以下の菌学的特徴:
人工海水培地中での形態的性質
細胞の形状:単桿菌
細胞の大きさ:約0.9μm(幅)×約2.6μm(長さ)
運動性の有無:有り
胞子の有無:なし
培養的性質
MarineAgar 2216
色素を産生せず、円形のコロニーを形成する、
MarineBroth 2216
30℃の培養で、良好に増殖する、
生理学的性状
グラム染色:グラム陰性
色素の生成:生成せず
オキシダーゼ:陽性
カタラーゼ:陽性
生育の範囲:30℃で良好に生育、
酸素に対する態度:好気性
OFテスト:O型(海洋細菌用に開発されたHughloifsonの培地:MOF培地による)
NaClの要求性:0〜1%NaClで生育せず、2.5%以上で生育、生育にNaClを要求する、
を有する細菌より調製された、粗酵素液。
(項目17)
項目16に記載の粗酵素液と海藻分解物を接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物を調製する方法。
(項目18)
前記海藻分解物が、褐藻類海藻由来である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記海藻分解物が、ワカメ、コンブまたはカジメ由来である、項目17に記載の方法。
(項目20)
浮遊性海藻分解物を調製するための組成物であって、項目16に記載の粗酵素液を含有する、組成物。
(項目21)
前記海藻が、褐藻類海藻である、項目20に記載の組成物。
(項目22)
前記海藻が、ワカメ、コンブまたはカジメである、項目20に記載の組成物。
(項目23)
アルテロモナス属(Alteromonas)に属する細菌およびマイクロブルビファー属(Microbulbifer)に属する細菌と海藻を接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物の調製方法。
(項目24)
以下の菌学的特徴:
人工海水培地中での形態的性質
細胞の形状:単桿菌
細胞の大きさ:約0.9μm(幅)×約2.6μm(長さ)
運動性の有無:有り
胞子の有無:なし
培養的性質
MarineAgar 2216
色素を産生せず、円形のコロニーを形成する、
MarineBroth 2216
30℃の培養で、良好に増殖する、
生理学的性状
グラム染色:グラム陰性
色素の生成:生成せず
オキシダーゼ:陽性
カタラーゼ:陽性
生育の範囲:30℃で良好に生育、
酸素に対する態度:好気性
OFテスト:O型(海洋細菌用に開発されたHughloifsonの培地:MOF培地による)
NaClの要求性:0〜1%NaClで生育せず、2.5%以上で生育、生育にNaClを要求する、
を有する細菌およびマイクロブルビファー属(Microbulbifer)に属する細菌と海藻を接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物の調製方法。
(項目25)
配列番号1に記載の核酸配列からなる16S rRNA配列を有する細菌およびマイクロブルビファー属(Microbulbifer)に属する細菌と海藻を接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物の調製方法。
(項目26)
前記アルテロモナス属(Alteromonas)に属する細菌がアルテロモナス属6532B2株(受託番号 FERM AP-21070)である、項目23〜25いずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記海藻が、褐藻類海藻由来である、項目23〜25いずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記海藻が、ワカメ、コンブまたはカジメ由来である、項目23〜25いずれか一項に記載の方法。
(項目29)
浮遊性海藻分解物を調製するための組成物であって、アルテロモナス属(Alteromonas)に属する細菌を含有する、組成物。
(項目30)
浮遊海藻分解物を調製するための組成物であって、以下の菌学的特徴:
形態的性質
人工海水培地中での形態的性質
細胞の形状:単桿菌
細胞の大きさ:約0.9μm(幅)×約2.6μm(長さ)
運動性の有無:有り
胞子の有無:なし
培養的性質
MarineAgar 2216
色素を産生せず、円形のコロニーを形成する、
MarineBroth 2216
30℃の培養で、良好に増殖する、
生理学的性状
グラム染色:グラム陰性
色素の生成:生成せず
オキシダーゼ:陽性
カタラーゼ:陽性
生育の範囲:30℃で良好に生育、
酸素に対する態度:好気性
OFテスト:O型(海洋細菌用に開発されたHughloifsonの培地:MOF培地による)
NaClの要求性:0〜1%NaClで生育せず、2.5%以上で生育、生育にNaClを要求する、
を有する細菌を含有する、組成物。
(項目31)
浮遊性海藻分解物を調製するための組成物であって、配列番号1に記載の核酸配列からなる16S rRNA配列を有する細菌を含有する、組成物。
(項目32)
前記アルテロモナス属(Alteromonas)に属する細菌がアルテロモナス属6532B2株(受託番号 FERM AP-21070)である、項目29〜31いずれか一項に記載の組成物。
(項目33)
前記海藻が、褐藻類海藻由来である、項目29〜31いずれか一項に記載の組成物。
(項目34)
前記海藻が、ワカメ、コンブまたはカジメ由来である、項目29〜31いずれか一項に記載の組成物。
(項目35)
項目23〜25いずれか一項に記載の方法によって調製された浮遊性海藻分解物を含有する、飲食用組成物。
(項目36)
項目23〜25いずれか一項に記載の方法によって調製された浮遊性海藻分解物を含有する飲食用組成物であって、以下:
飲料、飲料調製用粉末、サプリメント、スープ、調味料、バター、ジャム、マーガリン、ドレッシング、マヨネーズ、蒲鉾、珍味、および、菓子、
からなる群から選択される飲食品の調製に使用するための、組成物。
(項目37)
項目23〜25いずれか一項に記載の方法によって調製された浮遊性海藻分解物を含有する、飲食用添加物。
(項目38)
以下の菌学的特徴:
人工海水培地中での形態的性質
細胞の形状:単桿菌
細胞の大きさ:約0.9μm(幅)×約2.6μm(長さ)
運動性の有無:有り
胞子の有無:なし
培養的性質
MarineAgar 2216
色素を産生せず、円形のコロニーを形成する、
MarineBroth 2216
30℃の培養で、良好に増殖する、
生理学的性状
グラム染色:グラム陰性
色素の生成:生成せず
オキシダーゼ:陽性
カタラーゼ:陽性
生育の範囲:30℃で良好に生育、
酸素に対する態度:好気性
OFテスト:O型(海洋細菌用に開発されたHughloifsonの培地:MOF培地による)
NaClの要求性:0〜1%NaClで生育せず、2.5%以上で生育、生育にNaClを要求する、
を有する細菌より調製された、粗酵素液。
(項目39)
項目38に記載の粗酵素液とマイクロブルビファー属(Microbulbifer)に属する細菌の粗酵素液と海藻とを接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物を調製する方法。
(項目40)
前記海藻が、褐藻類海藻由来である、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記海藻が、ワカメ、コンブまたはカジメ由来である、項目39に記載の方法。
(項目42)
浮遊性海藻分解物を調製するための組成物であって、項目38に記載の粗酵素液とマイクロブルビファー属(Microbulbifer)に属する細菌の粗酵素液とを含有する、組成物。
(項目43)
前記海藻が、褐藻類海藻である、項目42に記載の組成物。
(項目44)
前記海藻が、ワカメ、コンブまたはカジメである、項目42に記載の組成物。
(項目45)
項目1〜3いずれか一項に記載の方法によって調製された海藻分解物を含有する、皮膚外用剤。
(項目46)
項目45に記載の皮膚外用剤であって、化粧品、保湿剤、化粧水、クリーム、ゲル、軟膏、乳液、美容液、パック、洗顔料、クレンジング剤、ヘアケア剤、石鹸、浴用剤、シャンプー、リンス、リップスティック、口紅、および、ファンデーションからなる群から選択される、皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、海藻粉末もしくは粒子に本発明微生物を作用させ、浮遊性に優れた海藻粉末もしくは粒子を得ることができる。このようにして得られた海藻粉末もしくは粒子は様々な形態の食品に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念も含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0009】
本発明に使用する細菌株の特徴としては、褐藻類、特にワカメ及びコンブの細胞構造を維持する構造多糖類に作用し、海藻を分解・単細胞化することにある。海藻分解能力を有する海洋細菌を探索するために、本発明者らは日本沿岸の28地点から124の海藻サンプルを分離源として採取した。これらの分離源から400株以上の海洋細菌を分離し、海藻分解能を有すると思われる64株を分離した。更に、これらについて海藻分解能、海藻分解物にの浮遊性向上能、各種多糖類分解能、細菌学的性状など様々な試験を実施し、特に有用だと思われる海洋細菌株を得ることに成功した。
【0010】
本明細書において使用する場合、用語「海藻」とは、肉眼的大きさ以上の海産藻類をいい、例えば、褐藻類海藻が挙げられるが、これに限定されない。また、本明細書において使用する場合、用語「藻類」とは、藻類(そうるい, algae)とは、酸素発生型光合成を行う生物のうち、主に地上に生息するコケ植物、シダ植物、種子植物を除いた植物をいう。
【0011】
本明細書において使用する場合、「浮遊性海藻分解物」とは、海藻を、微生物学的、酵素学的、物理学的、化学的かのいずれかにおいて分解した海藻分解物であって、攪拌後2〜4時間経過しても沈降が見られない海藻分解物をいう。
【0012】
本発明に使用する細菌は、好ましくは、アルテロモナス属(Alteromonas)に属する細菌である。
【0013】
本発明に使用する細菌は、好ましくは、形態的性質として、
細胞の形状:単桿菌
細胞の大きさ:約0.9μm(幅)×約2.6μm(長さ)
運動性の有無:有り
胞子の有無:なし
という性質を有する。
【0014】
本発明に使用する細菌は、好ましくは、培養的性質として、Marine Agar 2216においては、色素を産生せず、円形のコロニーを形成するという性質を示す。
【0015】
本発明に使用する細菌は、好ましくは、培養的性質として、Marine Broth 2216において、30℃で、良好に生育するという性質を示す。
【0016】
本発明に使用する細菌は、好ましくは、生理学的性状として、
グラム染色:グラム陰性
色素の生成:生成せず
オキシダーゼ:陽性
カタラーゼ:陽性
生育の範囲:30℃で良好に生育
酸素に対する態度:好気性
OFテスト:O型(海洋細菌用に開発されたHughloifsonの培地:MOF培地による)
NaClの要求性:0〜1%NaClで生育せず。2.5%以上で生育。生育にNaClを要求する。
という性質を示す。
【0017】
本発明に使用する細菌は、好ましくは、配列番号1に記載の核酸配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする16S rRNA配列を有する細菌である。また、本発明に使用する細菌は、好ましくは、配列番号1に記載の核酸配列に1または数個の欠失、付加、または、置換を有する配列からなる16SrRNA配列を有する細菌である。より好ましくは、本発明に使用する細菌は、配列番号1に記載の核酸配列からなる16S rRNA配列を有する細菌である。また、本発明に使用する細菌は、最も好ましくは、アルテロモナス属6532B2株(受託番号FERM AP-21070)である。
【0018】
本発明において分解される海藻は、好ましくは、褐藻類海藻であり、より好ましくは、ワカメ、コンブまたはカジメである。
【0019】
本発明のアルテロモナス属細菌またはその酵素液を用いて浮遊性海藻分解物を調製するには、大きく2つの方法、すなわち、1)既に分解された海藻分解物に対して、本発明の細菌または細菌の粗酵素液もしくは精製酵素液を添加する方法、および、2)海藻を分解する細菌またはそのような細菌の粗酵素液もしくは精製酵素液とともに、本発明の細菌または細菌の粗酵素液もしくは精製酵素液を海藻(分解されてもされていなくてもよい)に添加する方法、が挙げられるが、これに限定されない。海藻分解物に対して、本発明の細菌または細菌の粗酵素液もしくは精製酵素液を用いる際には、前処理として、海藻を分解する必要がある。
【0020】
(海藻分解物の調製法)
本発明において使用する海藻分解物は、例えば、微生物学的、酵素学的、化学的、または、物理的、あるいは、これらの2つ以上の手法を用いて、調製することが可能である。
【0021】
(1.微生物学的方法および酵素学的方法)
海藻を例えば、マイクロブルビファー属(Microbulbifer)に属する細菌を用いて微生物学的に分解できる。使用するマイクロブルビファー属細菌は、形態的性質として、
細胞の形状:桿菌
細胞の大きさ:約1.0μm(幅)×約3.2μm(長さ)
運動性の有無:有り
胞子の有無:なし
という性質を有する。
【0022】
本発明に使用するマイクロブルビファー属細菌は、好ましくは、培養的性質として、Marine Agar 2216においては、色素を産生せず、コロニー中心部にくぼみを形成し、周辺部がヒダ状に拡がるという性質を示す。
【0023】
本発明に使用するマイクロブルビファー属細菌は、好ましくは、培養的性質として、寒天平板培地を液状化するという性質を示す。
【0024】
本発明に使用するマイクロブルビファー属細菌は、好ましくは、培養的性質として、Marine Broth 2216において、良好に増殖し、30℃、48時間培養でフロックを形成するという性質を示す。
【0025】
本発明に使用するマイクロブルビファー属細菌は、好ましくは、生理学的性状として、
グラム染色:グラム陰性
色素の生成:生成せず
オキシダーゼ:陽性
カタラーゼ:陽性
生育の範囲:4℃で生育せず、30℃で良好に生育、50℃で生育可
酸素に対する態度:好気性
OFテスト:O型(海洋細菌用に開発されたHughloifsonの培地:MOF培地による)
NaClの要求性:0〜1%NaClで生育せず。2.5〜5.0%で生育。生育にNaClを要求する。
という性質を示す。
【0026】
本発明に使用するマイクロブルビファー属細菌は、好ましくは、菌体外酵素の多糖分解酵素活性として、
アルギン酸:陽性
フコイダン:陰性
ラミナラン:陰性
寒天:陽性(強力:寒天平板培地にて寒天平板を液状化する)
という性質を示す。
【0027】
本発明に使用するマイクロブルビファー属細菌は、好ましくは、配列番号2に記載の核酸配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする16S rRNA配列を有する細菌である。また、本発明に使用する細菌は、好ましくは、配列番号2に記載の核酸配列に1または数個の欠失、付加、または、置換を有する配列からなる16SrRNA配列を有する細菌である。より好ましくは、本発明に使用する細菌は、配列番号2に記載の核酸配列からなる16S rRNA配列を有する細菌である。また、本発明に使用する細菌は、最も好ましくは、マイクロブルビファー属6532A株(受託番号FERM AP-21069)である。
【0028】
上記マイクロブルビファー属細菌を海藻に添加して培養することによって、海藻分解物を調製することが可能である。さらに、上記マイクロブルビファー属細菌から粗酵素液または精製酵素液を調製し、その酵素液を用いて海藻を処理することによっても、同様に海藻分解物を調製することが可能である。さらに、海藻にセルラーゼ、アルギナーゼなどの酵素を作用させることによっても、海藻分解物を調製することが可能である。
【0029】
(2.化学的方法)
化学的分解方法として、クエン酸などの有機酸等によるキレートにより海藻が軟化する手法が挙げられるが、これに限定されない。この手法により組織を崩し易くし、物理的処理などを組み合わせて海藻微細化物、粒子、分解物を得る手法を用いることができる。また、酸、アルカリ、熱処理により海藻を軟化、もしくは分解し、物理処理と合わせて海藻分解物を得る手法も挙げられる。
【0030】
(3.物理学的方法)
物理的分解方法としては、ホモジナイザー等による細断、ミルなどの粉砕機による粉砕が挙げられるが、これに限定されない。
【0031】
(4.化学的分解法と物理的分解法の組合せ)
本発明においては、化学的分解法と物理的分解法とを組み合わせて用いることが可能である。例えば、(A)酸(アルカリ)分解と物理的処理を組み合わせる場合には、(1)海藻をホモジナイザーを用いて細かくする工程;(2)この海藻をHCl(NaCO)溶液に添加する工程;(3)80℃にて2〜5時間放置して、分解反応を行う工程;および、(4)分解後、HCl(NaCO)を用いて中和する工程、を包含する方法を用いることができる。また、(B)有機酸分解と物理的処理を組み合わせる場合には、(1)海藻をクエン酸ソーダ溶液で膨潤させ、軟化させる工程;および(2)上記(1)の軟化物をホモジナイザー等で細断する工程を包含する方法を用いることができる。
【0032】
(海藻分解と同時に浮遊性海藻分解物を調製する方法)
本発明においては、予め海藻を分解することなしに、海藻分解と同時に浮遊性海藻分解物を調製することが可能である。そのような方法においては、本発明のアルテロモナス属(Alteromonas)細菌またはその粗酵素液もしくは精製酵素液を使用する際に、同時に、マイクロブルビファー属細菌またはその粗酵素液もしくは精製酵素液を使用する。使用するマイクロブルビファー属細菌は、形態的性質として、
細胞の形状:桿菌
細胞の大きさ:約1.0μm(幅)×約3.2μm(長さ)
運動性の有無:有り
胞子の有無:なし
という性質を有する。
【0033】
本発明に使用するマイクロブルビファー属細菌は、好ましくは、培養的性質として、Marine Agar 2216においては、色素を産生せず、コロニー中心部にくぼみを形成し、周辺部がヒダ状に拡がるという性質を示す。
【0034】
本発明に使用するマイクロブルビファー属細菌は、好ましくは、培養的性質として、寒天平板培地を液状化するという性質を示す。
【0035】
本発明に使用するマイクロブルビファー属細菌は、好ましくは、培養的性質として、Marine Broth 2216において、良好に増殖し、30℃、48時間培養でフロックを形成するという性質を示す。
【0036】
本発明に使用するマイクロブルビファー属細菌は、好ましくは、生理学的性状として、
グラム染色:グラム陰性
色素の生成:生成せず
オキシダーゼ:陽性
カタラーゼ:陽性
生育の範囲:4℃で生育せず、30℃で良好に生育、50℃で生育可
酸素に対する態度:好気性
OFテスト:O型(海洋細菌用に開発されたHughloifsonの培地:MOF培地による)
NaClの要求性:0〜1%NaClで生育せず。2.5〜5.0%で生育。生育にNaClを要求する。
という性質を示す。
【0037】
本発明に使用するマイクロブルビファー属細菌は、好ましくは、菌体外酵素の多糖分解酵素活性として、
アルギン酸:陽性
フコイダン:陰性
ラミナラン:陰性
寒天:陽性(強力:寒天平板培地にて寒天平板を液状化する)
という性質を示す。
【0038】
本発明に使用するマイクロブルビファー属細菌は、好ましくは、配列番号2に記載の核酸配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする16S rRNA配列を有する細菌である。また、本発明に使用する細菌は、好ましくは、配列番号2に記載の核酸配列に1または数個の欠失、付加、または、置換を有する配列からなる16SrRNA配列を有する細菌である。より好ましくは、本発明に使用する細菌は、配列番号2に記載の核酸配列からなる16S rRNA配列を有する細菌である。また、本発明に使用する細菌は、最も好ましくは、マイクロブルビファー属6532A株(受託番号FERM AP-21069)である。
【0039】
(浮遊性海藻分解物の調製)
2.5%海藻粒子(平均粒子径=約7μm)添加人工海水培地に微生物株6532B2を接種した。その後、30℃にて10日間振蘯培養した。培養後、培養液を静置し、海藻粒子の沈降状態を調べた。対照区としては、菌未接種を用いた。その結果、菌未接種群は静置後30分で海藻粒子の沈降が見られ、8時間経過で、ほぼ全ての海藻粒子の沈降が見られた。そこで本明細書においては、攪拌後2〜4時間経過では沈降が見られない海藻分解物を浮遊性階層分解物と定義した。また、6532B2株を接種させた群では、8時間経過後も沈降は見られず、浮遊性の向上が確認された。
【0040】
(飲食用組成物および飲食用添加物)
本発明の方法によって製造された浮遊性海藻分解物は、飲食用組成物および飲食用添加物、ならびに皮膚外用剤および皮膚外用材添加物として利用可能である。本発明の海藻分解物を含有する飲食品は、任意の飲食品であり得る。飲食品は、固体であっても、半固体であっても、液体であってもよいが、好ましくは液体である。飲食品は、好ましくは、健康食品であり、より好ましくは健康飲料であるが、これらに限定されない。健康食品は、その健康食品に含まれる海藻分解物と同じ通常の用途に用いられ得る。本発明の海藻分解物を含有する飲食品としては、例えば、(1)飲料(液体(海藻スポーツ飲料など)、粉体(海藻青汁など)、サプリメント(本発明の海藻分解物以外にα-リポ酸、リコピン、BRMなどを含有する)、地産品(本発明の海藻分解物以外に海洋深層水、白山伏流水などを含有する)、(2)スープ(例えば、海藻スープなど)、(3)調味料(パン用調味料(海藻ジャム、海藻マーガリンなど)、サラダ用調味料、ドレッシング、マヨネーズなど)、(4)固形食品(蒲鉾(オードブル、伊達巻)ならびに珍味(副原料として)など)、(5)可溶化海藻粉末(例えば、バルク商材(菓子材料など)など)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
さらに本発明の海藻分解物を含有する飲食品は、例えば、冷菓(アイスクリーム、アイスミルク、氷菓など)、嗜好性飲料(例えば、清涼飲料、炭酸飲料(サイダー、ラムネ等)、薬味飲料、アルコール性飲料、粉末ジュースなど)、乳製品(牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム、バター、マーガリン、チーズ、ホイップクリーム等)、菓子類(洋菓子、和菓 子、スナック菓子等、例えば、あんこ、羊羹、饅頭、チョコレート、ガム、ゼリー、寒天、杏仁豆腐、ケーキ、カステラ、クッキー、煎餅、錠菓等)、パン、餅、水産練製品(蒲鉾、ちくわ等)、畜肉加工品(ソーセージ、ハム等)、果実加工品(ジャム、マーマレード、果実ソース等)、調味料(ドレッシング、マヨ ネーズ、味噌等)、麺類(うどん、そば等)、漬物、および蓄肉、魚肉、果実の瓶詰、缶詰類などであり得る。
【0042】
本発明の方法で調製された海藻分解物を飲食品に添加するには特別な工程を必要とせず、飲食品の製造工程の初期において原料と共に添加するか、製造工程中に添加するか、あるいは製造工程の終期に添加する。添加方式は混和、混練、溶解、浸漬、散布、噴霧、塗布等通常の方法を食品の種類および性状に応じて選択する。本発明の飲食品は、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0043】
本発明の海藻分解物は皮膚外用剤にも使用することが出来る。皮膚外用剤の形状は特に問わない。例えば、液状、ゲル状、クリーム状、顆粒状、固体などの形態で使用できる。本発明の海藻分解物を皮膚外用剤として使用する場合、化粧品、保湿剤、化粧水、クリーム、ゲル、軟膏、乳液、美容液、パック、洗顔料、クレンジング剤、ヘアケア剤、石鹸、浴用剤、シャンプー、リンス、リップスティック、口紅、ファンデーション、等の化粧料や医薬部外品、医薬品に配合することができる。
【0044】
以下に実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
(実施例1:Alteromonassp. 6532B株の単離)
分離源として、石川県及び富山県沿岸に漂流している海藻を採取した。分離用培地として、人工海水に0.1%硝酸アンモニウム、0.002%リン酸水素ニカリウム、0.05%酵母エキスを添加したものを人工海水培地とし、オートクレーブにて滅菌処理を行った。また、平板培地は上記液体培地に1.5%寒天末を添加したものを用いた。
【0046】
人工海水培地(NaCl30.0g、KCl 0.7g、MgCl2・6H2O 10.8g、MgSO4・7H2O 5.4g、CaCl2・2H2O 1.0g、NH4NO3 1.0g、K2HPO4 0.02g、Yeast Extract 0.5g / 蒸留水 1000ml)に採取した海藻を重量比10%添加し、30℃で2〜5日間振蘯培養を行った。振蘯培養後、この培養液を1%ワカメ粉末添加海水寒天培地に塗布し、30℃で2〜14日間培養を行った。この培養により、海藻資化能を有すると思われる微生物を111株分離した。次に、得られた海藻分解菌を1%ワカメ葉体(約9.0〜15.0mm角)添加人工海水培地に摂取し、ワカメ葉体に対する作用を調べた。培養は、30℃にて2〜14日間行なった。
【0047】
その結果、3つの試験区において海藻分解作用が確認され、その中の1つにおいて海藻分解物の沈降が見られない試験区が見られた。この試験区より微生物の分離を行なったところ、海藻分解能を有する株と分解物に浮遊性を付与する株が得られた。
【0048】
次に、上記スクリーニングにより得られた海藻分解物に浮遊性を付与する海洋細菌の菌学的性質と16S rRNA遺伝子から菌種の同定を行った。16S rRNA配列の相同性検索及び分類学的位置の解析は、BLAST及びCLUSTAL W(日本DNAデータバンク(DDBJ)ホームページ)を用いた。
【0049】
本発明細菌株は、16S rRNA配列の解析の結果により、アルテロモナス マクレオディ(Alteromonas macleodii)であると同定された。前記した菌学的性質と総合するとアルテロモナス属に属する微生物であるとされる可能性が強い。
【0050】
そこで本発明者らは、16S rRNA解析の結果に基づき、上記微生物を一応、アルテロモナス属の新種であるとした上で、これをアルテロモナス エスピー 6532B(Alteromonassp. 6532B)と命名した。そしてこれを6532B株として、独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センター(〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)へ寄託した。
【0051】
代表的な性状を以下の表に示す。
【0052】
【表1】



【0053】
【表2】




【0054】
【表3】




(実施例2:浮遊性海藻分解物の調製1)
乾燥ワカメ1kgを3%食塩水20Lと混合し、膨潤させた。110℃、15分滅菌処理し、これにアルテロモナス属(Alteromonas)に属する浮遊性向上菌6532B2株培養液100mlとマイクロブルビファー属(Microbulbifer)に属する海藻分解菌6532A株を接種し、30℃で5日間、振蘯培養を行い海藻分解物を調製した。尚、発明菌の培養液は以下の組成培地(乾燥ワカメ20.0g、NaCl30.0g、KCl 0.7g、MgCl2・6H2O 10.8g、MgSO4・7H2O 5.4g、CaCl2・2H2O 1.0g、NH4NO3 10.0g、K2HPO4 0.2g、Yeast Extract 5.0g / Distilled Water 1000ml)を30℃、24時間振蘯培養することにより調整した。
【0055】
調製した海藻分解物と従来の物理処理されたワカメ粉末の浮遊性について、それぞれ2.5%濃度になるよう水に懸濁して十分攪拌した後、静置し、ワカメの沈降状態を比較検討した。結果、従来の物理破砕粉末ワカメが30分程で沈降が見られるのに対し、本発明ワカメでは、5時間ほど沈降が見られなかった。
【0056】
(実施例3:浮遊性海藻分解物の調製2)
2.5%ワカメ葉体添加海水培地に、マイクロブルビファー属(Microbulbifer)に属する海藻分解菌6532A株とアルテロモナス属(Alteromonas)に属する浮遊性向上菌6532B2株を摂取し、得られる海藻分解物の浮遊性を調べた。両菌体を接種後、30℃にて10日間振蘯培養を行なった。培養後、海藻分解物が得られていることを確認した後、培養液を静置し、分解物の沈降状態を調べた。その結果を示すのが図1の写真である。写真右は、6532A株をワカメに接種し、10日間培養後の海藻分解物を示し、写真左は、6532A株と6532B2株をワカメに接種し、10日間培養後の海藻分解物を示す。培養後、両者を静置し沈殿の様子を経時的に追跡した。図1中、(1)は撹拌直後、(2)は撹拌120分後、(3)は撹拌240分後、(4)は撹拌480分後である。この結果から、海藻分解菌6532A株のみの場合より、浮遊性向上菌6532B2株を接種した場合の方が、海藻分解物の浮遊性向上が確認された。海藻分解菌6532A株のみの培養で海藻分解物を調製した場合においては、静置後30分程度すると海藻分解物の沈降が確認された。しかし、海藻分解菌6532A株と浮遊性向上菌6532B2株を同時培養し静置した場合、8時間経過しても海藻分解物が沈降しないという特徴を有していた。
【0057】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に従って、海藻に特定の海洋細菌を作用させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物を調製する方法、およびそのような浮遊性海藻分解物を調製するための組成物が提供される。また、本発明に従って、そのような浮遊性海藻分解物を含有する飲食
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、微生物の作用による浮遊性海藻分解物の調製を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0060】
配列番号1 アルテロモナス属6532B2株(受託番号 FERM AP-21070)の16S rRNA配列
配列番号2 マイクロブルビファー属6532A株(受託番号 FERM AP-21069)の16S rRNA配列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルテロモナス属(Alteromonas)に属する細菌と海藻分解物を接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物の調製方法。
【請求項2】
以下の菌学的特徴:
人工海水培地中での形態的性質
細胞の形状:単桿菌
細胞の大きさ:約0.9μm(幅)×約2.6μm(長さ)
運動性の有無:有り
胞子の有無:なし
培養的性質
MarineAgar 2216
色素を産生せず、円形のコロニーを形成する、
MarineBroth 2216
30℃の培養で、良好に増殖する、
生理学的性状
グラム染色:グラム陰性
色素の生成:生成せず
オキシダーゼ:陽性
カタラーゼ:陽性
生育の範囲:30℃で良好に生育、
酸素に対する態度:好気性
OFテスト:O型(海洋細菌用に開発されたHughloifsonの培地:MOF培地による)
NaClの要求性:0〜1%NaClで生育せず、2.5%以上で生育、生育にNaClを要求する、
を有する細菌と海藻を接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物の調製方法。
【請求項3】
配列番号1に記載の核酸配列からなる16S rRNA配列を有する細菌と海藻分解物を接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物の調製方法。
【請求項4】
前記細菌がアルテロモナス属6532B2株(受託番号 FERM AP-21070)である、請求項1〜3いずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記海藻分解物が、褐藻類海藻由来である、請求項1〜3いずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記海藻分解物が、ワカメ、コンブまたはカジメ由来である、請求項1〜3いずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
浮遊性海藻分解物を調製するための組成物であって、アルテロモナス属(Alteromonas)に属する細菌を含有する、組成物。
【請求項8】
浮遊海藻分解物を調製するための組成物であって、以下の菌学的特徴:
形態的性質
人工海水培地中での形態的性質
細胞の形状:単桿菌
細胞の大きさ:約0.9μm(幅)×約2.6μm(長さ)
運動性の有無:有り
胞子の有無:なし
培養的性質
MarineAgar 2216
色素を産生せず、円形のコロニーを形成する、
MarineBroth 2216
30℃の培養で、良好に増殖する、
生理学的性状
グラム染色:グラム陰性
色素の生成:生成せず
オキシダーゼ:陽性
カタラーゼ:陽性
生育の範囲:30℃で良好に生育、
酸素に対する態度:好気性
OFテスト:O型(海洋細菌用に開発されたHughloifsonの培地:MOF培地による)
NaClの要求性:0〜1%NaClで生育せず、2.5%以上で生育、生育にNaClを要求する、
を有する細菌を含有する、組成物。
【請求項9】
浮遊性海藻分解物を調製するための組成物であって、配列番号1に記載の核酸配列からなる16S rRNA配列を有する細菌を含有する、組成物。
【請求項10】
前記細菌がアルテロモナス属6532B2株(受託番号 FERM AP-21070)である、請求項7〜9いずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記海藻分解物が、褐藻類海藻由来である、請求項7〜9いずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記海藻分解物が、ワカメ、コンブまたはカジメ由来である、請求項7〜9いずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜3いずれか一項に記載の方法によって調製された浮遊性海藻分解物を含有する、飲食用組成物。
【請求項14】
請求項1〜3いずれか一項に記載の方法によって調製された浮遊性海藻分解物を含有する飲食用組成物であって、以下:
飲料、飲料調製用粉末、サプリメント、スープ、調味料、バター、ジャム、マーガリン、ドレッシング、マヨネーズ、蒲鉾、珍味、および、菓子、
からなる群から選択される飲食品の調製に使用するための、組成物。
【請求項15】
請求項1〜3いずれか一項に記載の方法によって調製された浮遊性海藻分解物を含有する、飲食用添加物。
【請求項16】
以下の菌学的特徴:
人工海水培地中での形態的性質
細胞の形状:単桿菌
細胞の大きさ:約0.9μm(幅)×約2.6μm(長さ)
運動性の有無:有り
胞子の有無:なし
培養的性質
MarineAgar 2216
色素を産生せず、円形のコロニーを形成する、
MarineBroth 2216
30℃の培養で、良好に増殖する、
生理学的性状
グラム染色:グラム陰性
色素の生成:生成せず
オキシダーゼ:陽性
カタラーゼ:陽性
生育の範囲:30℃で良好に生育、
酸素に対する態度:好気性
OFテスト:O型(海洋細菌用に開発されたHughloifsonの培地:MOF培地による)
NaClの要求性:0〜1%NaClで生育せず、2.5%以上で生育、生育にNaClを要求する、
を有する細菌より調製された、粗酵素液。
【請求項17】
請求項16に記載の粗酵素液と海藻分解物を接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物を調製する方法。
【請求項18】
前記海藻分解物が、褐藻類海藻由来である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記海藻分解物が、ワカメ、コンブまたはカジメ由来である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
浮遊性海藻分解物を調製するための組成物であって、請求項16に記載の粗酵素液を含有する、組成物。
【請求項21】
前記海藻が、褐藻類海藻である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記海藻が、ワカメ、コンブまたはカジメである、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
アルテロモナス属(Alteromonas)に属する細菌およびマイクロブルビファー属(Microbulbifer)に属する細菌と海藻を接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物の調製方法。
【請求項24】
以下の菌学的特徴:
人工海水培地中での形態的性質
細胞の形状:単桿菌
細胞の大きさ:約0.9μm(幅)×約2.6μm(長さ)
運動性の有無:有り
胞子の有無:なし
培養的性質
MarineAgar 2216
色素を産生せず、円形のコロニーを形成する、
MarineBroth 2216
30℃の培養で、良好に増殖する、
生理学的性状
グラム染色:グラム陰性
色素の生成:生成せず
オキシダーゼ:陽性
カタラーゼ:陽性
生育の範囲:30℃で良好に生育、
酸素に対する態度:好気性
OFテスト:O型(海洋細菌用に開発されたHughloifsonの培地:MOF培地による)
NaClの要求性:0〜1%NaClで生育せず、2.5%以上で生育、生育にNaClを要求する、
を有する細菌およびマイクロブルビファー属(Microbulbifer)に属する細菌と海藻を接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物の調製方法。
【請求項25】
配列番号1に記載の核酸配列からなる16S rRNA配列を有する細菌およびマイクロブルビファー属(Microbulbifer)に属する細菌と海藻を接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物の調製方法。
【請求項26】
前記アルテロモナス属(Alteromonas)に属する細菌がアルテロモナス属6532B2株(受託番号 FERM AP-21070)である、請求項23〜25いずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記海藻が、褐藻類海藻由来である、請求項23〜25いずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記海藻が、ワカメ、コンブまたはカジメ由来である、請求項23〜25いずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
浮遊性海藻分解物を調製するための組成物であって、アルテロモナス属(Alteromonas)に属する細菌を含有する、組成物。
【請求項30】
浮遊海藻分解物を調製するための組成物であって、以下の菌学的特徴:
形態的性質
人工海水培地中での形態的性質
細胞の形状:単桿菌
細胞の大きさ:約0.9μm(幅)×約2.6μm(長さ)
運動性の有無:有り
胞子の有無:なし
培養的性質
MarineAgar 2216
色素を産生せず、円形のコロニーを形成する、
MarineBroth 2216
30℃の培養で、良好に増殖する、
生理学的性状
グラム染色:グラム陰性
色素の生成:生成せず
オキシダーゼ:陽性
カタラーゼ:陽性
生育の範囲:30℃で良好に生育、
酸素に対する態度:好気性
OFテスト:O型(海洋細菌用に開発されたHughloifsonの培地:MOF培地による)
NaClの要求性:0〜1%NaClで生育せず、2.5%以上で生育、生育にNaClを要求する、
を有する細菌を含有する、組成物。
【請求項31】
浮遊性海藻分解物を調製するための組成物であって、配列番号1に記載の核酸配列からなる16S rRNA配列を有する細菌を含有する、組成物。
【請求項32】
前記アルテロモナス属(Alteromonas)に属する細菌がアルテロモナス属6532B2株(受託番号 FERM AP-21070)である、請求項29〜31いずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記海藻が、褐藻類海藻由来である、請求項29〜31いずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記海藻が、ワカメ、コンブまたはカジメ由来である、請求項29〜31いずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
請求項23〜25いずれか一項に記載の方法によって調製された浮遊性海藻分解物を含有する、飲食用組成物。
【請求項36】
請求項23〜25いずれか一項に記載の方法によって調製された浮遊性海藻分解物を含有する飲食用組成物であって、以下:
飲料、飲料調製用粉末、サプリメント、スープ、調味料、バター、ジャム、マーガリン、ドレッシング、マヨネーズ、蒲鉾、珍味、および、菓子、
からなる群から選択される飲食品の調製に使用するための、組成物。
【請求項37】
請求項23〜25いずれか一項に記載の方法によって調製された浮遊性海藻分解物を含有する、飲食用添加物。
【請求項38】
以下の菌学的特徴:
人工海水培地中での形態的性質
細胞の形状:単桿菌
細胞の大きさ:約0.9μm(幅)×約2.6μm(長さ)
運動性の有無:有り
胞子の有無:なし
培養的性質
MarineAgar 2216
色素を産生せず、円形のコロニーを形成する、
MarineBroth 2216
30℃の培養で、良好に増殖する、
生理学的性状
グラム染色:グラム陰性
色素の生成:生成せず
オキシダーゼ:陽性
カタラーゼ:陽性
生育の範囲:30℃で良好に生育、
酸素に対する態度:好気性
OFテスト:O型(海洋細菌用に開発されたHughloifsonの培地:MOF培地による)
NaClの要求性:0〜1%NaClで生育せず、2.5%以上で生育、生育にNaClを要求する、
を有する細菌より調製された、粗酵素液。
【請求項39】
請求項38に記載の粗酵素液とマイクロブルビファー属(Microbulbifer)に属する細菌の粗酵素液と海藻とを接触させる工程を包含する、浮遊性海藻分解物を調製する方法。
【請求項40】
前記海藻が、褐藻類海藻由来である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記海藻が、ワカメ、コンブまたはカジメ由来である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
浮遊性海藻分解物を調製するための組成物であって、請求項38に記載の粗酵素液とマイクロブルビファー属(Microbulbifer)に属する細菌の粗酵素液とを含有する、組成物。
【請求項43】
前記海藻が、褐藻類海藻である、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記海藻が、ワカメ、コンブまたはカジメである、請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
請求項1〜3いずれか一項に記載の方法によって調製された海藻分解物を含有する、皮膚外用剤。
【請求項46】
請求項15に記載の皮膚外用剤であって、化粧品、保湿剤、化粧水、クリーム、ゲル、軟膏、乳液、美容液、パック、洗顔料、クレンジング剤、ヘアケア剤、石鹸、浴用剤、シャンプー、リンス、リップスティック、口紅、および、ファンデーションからなる群から選択される、皮膚外用剤。

【図1】
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【公開番号】特開2008−187948(P2008−187948A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24898(P2007−24898)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000132172)株式会社スギヨ (23)
【Fターム(参考)】