液体噴射ヘッドの製造方法および液体噴射ヘッド
【課題】圧電振動子の位置精度を向上させて噴射特性のばらつきを低減する液体噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】列設された各ノズル開口15に連通する圧力発生室19の列を有する流路形成基板11および振動板12を有する流路ユニット26と、上記圧力発生室19に圧力を発生させる圧電振動子14が固定板20に列状に固定された振動子ユニット30と、上記流路ユニット26が固着され振動子ユニット30が収容されたヘッドケース16とを準備し、上記固定板20の両面に、それぞれ固定板20の一端から突出するように圧電材料板40を固着し、上記固定板20両面の2つの圧電材料板40に対し、突出端から固定部に向かって同じワイヤーソー41で同時に切れ込み34を形成し、上記切れ込み34を一定ピッチで複数形成して上記固定板20の両面にそれぞれ棒状の圧電振動子14を列設する。
【解決手段】列設された各ノズル開口15に連通する圧力発生室19の列を有する流路形成基板11および振動板12を有する流路ユニット26と、上記圧力発生室19に圧力を発生させる圧電振動子14が固定板20に列状に固定された振動子ユニット30と、上記流路ユニット26が固着され振動子ユニット30が収容されたヘッドケース16とを準備し、上記固定板20の両面に、それぞれ固定板20の一端から突出するように圧電材料板40を固着し、上記固定板20両面の2つの圧電材料板40に対し、突出端から固定部に向かって同じワイヤーソー41で同時に切れ込み34を形成し、上記切れ込み34を一定ピッチで複数形成して上記固定板20の両面にそれぞれ棒状の圧電振動子14を列設する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体カートリッジ等から供給された液体を液滴として噴射する液体噴射ヘッドの製造方法および液体噴射ヘッドに係るものであり、圧電振動子の位置精度を向上させて噴射特性のばらつきを低減する液体噴射ヘッドの製造方法および液体噴射ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の代表例であるインクジェット式記録装置においては、圧力発生室を加圧する圧力発生手段と、加圧されたインクをインク滴として噴射するノズル開口とを有するインクジェット式の記録ヘッド(液体噴射ヘッド)がキャリッジに搭載されて構成されている。
【0003】
そして、1枚の基板に複数のノズル開口を配置したマルチノズル型インクジェット式記録ヘッドは、複数のノズル開口が穿設されたノズルプレートと、圧力発生室やインク供給流路となる空間が形成された流路形成基板と、他方の面を封止する振動板とが積層されて接合された流路ユニットを有している。上記流路ユニットは、圧電振動子が収容されたヘッドケースに固着され、圧電振動子による振動板の変形応力により圧力発生室に圧力を発生させ、ノズル開口からインク滴を噴射させるように構成されている。(例えば下記の特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−361868号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の記録ヘッドでは、圧電振動子が固定板の片面に列状に固着された振動子ユニットをヘッドケースに収容することにより構成されている。そして、ノズル列が複数列ある記録ヘッドの場合、各列ごとに振動子ユニットをつくり、各列ごとに振動子ユニットをヘッドケース内に位置決めして組み込む必要がある。このため、列間における圧電振動子の位置精度にばらつきが生じ、インク滴の吐出特性にもばらつきが生じ、画質の低下につながるおそれがあった。特に、上記流路ユニットは、2列1組のノズル列を有し、圧力発生室の列を対向させてその両側にそれぞれ共通のインク貯留室を配置した構造が採用されることが多い。この場合、圧力発生室の列が近接して対向していることから、限られたスペース内で圧電振動子列を近接させて位置決めしなければならず、作業性が悪く、製品精度にも悪影響を及ぼしていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、圧電振動子の位置精度を向上させて噴射特性のばらつきを低減する液体噴射ヘッドの製造方法および液体噴射ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、列状に形成された各ノズル開口に連通する圧力発生室の列を有する流路形成基板および、この流路形成基板の一面に接合された弾性板とを有する流路ユニットと、上記弾性板を変形させて圧力発生室に圧力を発生させる圧電振動子が固定板に列状に固定された振動子ユニットと、上記流路ユニットが固着されるとともに上記振動子ユニットが収容されたヘッドケースとを備えた液体噴射ヘッドの製造方法であって、上記固定板の両面に、それぞれ固定板の一端から突出するように圧電材料板を固着し、上記固定板の両面に固着した2つの圧電材料板に対し、固定板の一端から突出した突出端から固定部に向かって同じ工具で同時に切れ込みを形成し、上記切れ込みを一定ピッチで複数形成し、上記固定板の両面にそれぞれ棒状の圧電振動子が列設された振動子ユニットを形成し、上記振動子ユニットをヘッドケースに収容して液体噴射ヘッドを得ることを要旨とする。
【0007】
また、上記課題を解決するため、本発明の液体噴射ヘッドは列状に形成された各ノズル開口に連通する圧力発生室の列を有する流路形成基板および、この流路形成基板の一面に接合された弾性板とを有する流路ユニットと、上記弾性板を変形させて圧力発生室に圧力を発生させる圧電振動子が固定板に列状に固定された振動子ユニットと、上記流路ユニットが固着されるとともに上記振動子ユニットが収容されたヘッドケースとを備え、上記振動子ユニットは、固定板の両面において、それぞれ固定板の一端から圧電振動子が棒状に突出するよう一定ピッチで列設されるとともに、上記各圧電振動子の根元部分が固定板に固着されて形成され、上記振動子ユニットは、固定板の両面に形成された圧電振動子列のうち、一方の圧電振動子列の列方向端部を、2列の圧電振動子列の列方向の位置決め部としてヘッドケースに収容されていることを要旨とする。
【0008】
すなわち、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、上記固定板の両面に、それぞれ固定板の一端から突出するように圧電材料板を固着し、上記固定板の両面に固着した2つの圧電材料板に対し、固定板の一端から突出した突出端から固定部に向かって同じ工具で同時に切れ込みを形成し、上記切れ込みを一定ピッチで複数形成して上記固定板の両面にそれぞれ棒状の圧電振動子が列設された振動子ユニットを形成し、上記振動子ユニットをヘッドケースに収容する。このように、固定板の両面に固着した2つの圧電材料板に対して同一工具で切れ込みを形成して2列の圧電振動子列を形成することにより、2列の圧電振動子列はほぼ同一の位置精度で形成される。そして、1つの固定板に2列の圧電振動子列が形成された振動子ユニットをヘッドケースに収容するため、従来のように各列ごとに振動子ユニットを位置決めするのではなく、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子列が形成された固定板を位置決めすることにより、2列同時に位置決めすることができる。このように、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子列を同時に位置決めできるため、2列間における圧電振動子の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。3列以上の圧電振動子列を有する場合でも、全体の圧電振動子の位置精度のばらつきが抑えられ、結果的に、液滴の噴射特性のばらつきも少なくなって画質の向上につながる。また、固定板を金属板から構成することにより、液体噴射ヘッド自体の剛性を保ちながら固定板自体を薄型化することができ、液体噴射ヘッド自体の小型化に有利である。さらに、樹脂性のヘッドケースとの接触部が少なくなることから、ヘッドケースが環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0009】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記振動子ユニットをヘッドケースに収容する際、固定板の両面に形成された圧電振動子列のうち、一方の圧電振動子列の列方向端部を、2列の圧電振動子列の列方向の位置決め部として収容する場合には、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子列を、1箇所の位置決め部で同時に位置決めできるため、2列間における圧電振動子の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。また、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分液体噴射ヘッド全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。
【0010】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記工具がワイヤーソーであり、上記固定板の両面に固着した2つの圧電材料板に対して上記ワイーヤーソーで同時に切れ込みを形成する場合には、固定板の両面に固着した2つの圧電材料板に対して同一のワイヤーソーで切れ込みを形成し、2列の圧電振動子列をほぼ同一の位置精度で形成することができる。
【0011】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記ヘッドケースには、圧電振動子列の先端を流路ユニットに当接させるための2つの開口部が形成され、上記開口部同士の間に形成された固定バーに、固定板の流路ユニット側の面が当接している場合には、固定板の流路ユニット側の面を固定バーに当接させた状態で圧電振動子の列と直交する方向の位置決め作業を行うことができる。このため、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分液体噴射ヘッド全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。さらに、樹脂性のヘッドケースとの噴射方向と平行な接触部が少なくなることから、ヘッドケースが環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0012】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記流路ユニットは、圧力発生室の列が2列1組で対向させて配置され、その両側にそれぞれ共通のインク貯留室を配置した構造であり、上記振動子ユニットは、固定板の両面に、上記2列1組の圧力発生室の列に対応した圧電振動子が形成されている場合には、圧力発生室の列が近接して対向していることから、限られたスペース内で圧電振動子列を近接させて位置決めしなければならず、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が向上して、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分液体噴射ヘッド全体の精度にも良い影響を与えて精度レベルが向上する効果が顕著に現れ、効果的である。
【0013】
本発明の液体噴射ヘッドは、上記振動子ユニットは、固定板の両面において、それぞれ固定板の一端から圧電振動子が棒状に突出するよう一定ピッチで列設されるとともに、上記各圧電振動子の根元部分が固定板に固着されて形成され、上記振動子ユニットは、固定板の両面に形成された圧電振動子列のうち、一方の圧電振動子列の列方向端部を、2列の圧電振動子列の列方向の位置決め部としてヘッドケースに収容されている。従来のように各列ごとに振動子ユニットを位置決めするのではなく、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子列が形成された固定板を位置決めすることにより、2列同時に位置決めすることができるため、2列間における圧電振動子の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。また、上記2列の圧電振動子列は、1箇所の位置決め部で同時に位置決めできるため、2列間における圧電振動子の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。また、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分液体噴射ヘッド全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。3列以上の圧電振動子列を有する場合でも、全体の圧電振動子の位置精度のばらつきが抑えられ、結果的に、液滴の噴射特性のばらつきも少なくなって画質の向上につながる。また、固定板を金属板から構成することにより、液体噴射ヘッド自体の剛性を保ちながら固定板自体を薄型化することができ、液体噴射ヘッド自体の小型化に有利である。さらに、樹脂性のヘッドケースとの接触部が少なくなることから、ヘッドケースが環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0014】
本発明の液体噴射ヘッドにおいて、上記ヘッドケースには、圧電振動子列の先端を流路ユニットに当接させるための2つの開口部が形成され、上記開口部同士の間には、固定板の流路ユニット側の面が当接する固定バーが形成されている場合には、固定板の流路ユニット側の面を固定バーに当接させた状態で圧電振動子の列と直交する方向の位置決め作業を行うことができる。このため、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分液体噴射ヘッド全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。さらに、樹脂性のヘッドケースとの噴射方向と平行な接触部が少なくなることから、ヘッドケースが環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0015】
本発明の液体噴射ヘッドにおいて、上記流路ユニットは、圧力発生室の列が2列1組で対向させて配置され、その両側にそれぞれ共通のインク貯留室を配置した構造であり、上記振動子ユニットは、固定板の両面に、上記2列1組の圧力発生室の列に対応した圧電振動子が形成されている場合には、圧力発生室の列が近接して対向していることから、限られたスペース内で圧電振動子列を近接させて位置決めしなければならず、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が向上して、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分液体噴射ヘッド全体の精度にも良い影響を与えて精度レベルが向上する効果が顕著に現れ、効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0017】
図1〜図7は、本発明の液体噴射ヘッドを適用したインクジェット式の記録ヘッド1の構造の一例を示す図である。図1は上記記録ヘッド1の全体構造を示す分解斜視図、図2は記録ヘッド1の縦断面図、図3は上記記録ヘッド1のA−A断面図(流路ユニットを除去してノズルプレート側から見た図)、図4は上記記録ヘッド1をヘッドケース側から見た図、図5は上記記録ヘッド1のB−B断面図、図6は振動子ユニットの斜視図、図7はヘッドケースの一部破断斜視図である。
【0018】
上記記録ヘッド1は、圧力発生手段としての圧電振動子14が収容されるヘッドケース16と、このヘッドケース16のユニット固着面に接着剤等で固着される流路ユニット26とを備えている。
【0019】
図1および図2に示すように、上記流路ユニット26は、インクを噴射するノズル開口15が列状に形成されたノズルプレート10と、上記各ノズル開口15に連通する圧力発生室19の列と上記各圧力発生室19に供給するインクを貯留するインク貯留室17を含む流路空間が形成された流路形成基板11と、上記流路形成基板11の一面に接合され圧力発生室19を含む流路空間を封止する振動板(弾性板)12とが積層されて構成されている。
【0020】
上記ノズルプレート10は、ノズル開口15が複数列設されてノズル列25が形成され、この例では2列のノズル列25が形成されてそれぞれ異なる種類のインクを噴射するようになっている。このノズルプレート10は、ステンレス板から形成されている。
【0021】
上記流路形成基板11は、上記各ノズル開口15に連通する圧力発生室19が列設されている。また、各圧力発生室19にインク供給路18を介して連通して各圧力発生室19に対して供給するインクを貯留する共通のインク貯留室17が、上記圧力発生室19の列に沿って配置されるよう形成されている。
【0022】
上記ノズル列25は、図2における紙面に垂直な方向に設けられている。そして、この例では、上記ノズル列25が2列設けられ、各ノズル列25に対応するよう圧力発生室19の列も2列設けられている。上記圧力発生室19の列は2列1組で対向させて配置され、その両側に、各圧力発生室19の列に対応してそれぞれ1つずつ共通のインク貯留室17を配置した構造である。上記流路形成基板11は、この例ではSi単結晶基板をエッチングすることにより形成されている。
【0023】
上記振動板12は、ポリフェニレンサルファイドフィルムからなり、ステンレス板製の島部13等がラミネートされて形成されている。
【0024】
そして、上記流路形成基板11の一面にノズルプレート10が積層され、他面に振動板12が島部13を外側に配置するように積層されて流路ユニット26が構成されている。
【0025】
一方、上記ヘッドケース16は、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が射出成形されてなり、上下に貫通する収容空間21に、上記各圧力発生室19に対応して上記振動板12を変形させて圧力発生室19に圧力を発生させる圧電振動子14が収容されるようになっている。
【0026】
上記圧電振動子14は、縦振動モードの圧電振動子14であり、後端側が固定板20に固着されて棒状の圧電振動子14が列状をなしており、上記圧電振動子14が固定板20に列状に固定された振動子ユニット30として組み込まれている。
【0027】
図6に示すように、上記記録ヘッド1における振動子ユニット30は、固定板20の両面において、それぞれ固定板20のノズルプレート10側に位置する一端から圧電振動子14がノズルプレート10側に棒状に突出するよう一定ピッチで列設されている。そして、上記各圧電振動子14の根元部分が、一体的な略板状部33となって連結されて固定板20に固着されて形成されている。各圧電振動子14の間は、スリット状の切れ込み34が形成されており、上記切れ込み34は、圧電振動子14の先端から根元側に向かって延び、固定板20のノズルプレート10側に位置する一端まで形成されている。また、圧電振動子14の根元部では、上記切れ込み34は、圧電振動子14の固定板20との固着面側よりも表面側の方が深くなるよう、固定板20の上記一端から圧電振動子14の固着部と反対側の面に向かって斜めに切れ込んでいる。上記固定板20は、この例ではアルミニウム等の金属板から形成されている。
【0028】
また、上記振動子ユニット30は、固定板20の両面に形成された2列の圧電振動子14の列は、上記流路ユニット26において2列1組で対向させて配置された圧力発生室19の列のそれぞれに対応している。
【0029】
図7に示すように、上記ヘッドケース16には、上述した振動子ユニット30を収容する収容空間21が形成されている。上記収容空間21は、ヘッドケース16の流路ユニット26の固着面と反対側に大きく1つの開口を有し、流路ユニット26の固着面には、圧電振動子14の列の先端を流路ユニット26の振動板12の島部13に当接させるための2つの開口部32が形成されている。そして、上記開口部32同士の間には、振動子ユニット30が収容空間21内に収容された状態で、固定板20の流路ユニット側の端面が当接する固定バー31が形成されている。
【0030】
また、上記ヘッドケース16には、収容空間21の固定バー31よりも流路ユニット固着面と反対の開口側に、固定板20をガイドするガイド溝36が形成されている。さらに、上記ガイド溝36を挟んだ両側には、振動子ユニット30を収容空間21内に開口側から挿入する際に圧電振動子14をガイドするガイド斜面37が形成されている。そして、上記ガイド斜面37よりも流路ユニット26固着面側の内壁面が圧電振動子14の列方向の位置を位置決めする位置決め面Sになっている。また、固定板20のガイド溝36の側壁が圧電振動子14の列と直交する方向の位置を決める位置決め面Uになっている。
【0031】
図3〜図5に示すように、上記振動子ユニット30は、固定板20の両面に形成された圧電振動子14の列のうち、一方の圧電振動子14の列の列方向端部Tを、2列の圧電振動子14の列の列方向の位置決め部Tとしてヘッドケース16に収容されている。このとき、上記圧電振動子14の列の位決め部Tと、ヘッドケース16の開口部の列方向端部の内壁面Sである位置決め面Sとが対面し当接して位置決めされている。
【0032】
また、振動子ユニット30が収容された状態で、固定板20のガイド溝36側壁の位置決め面Uと、固定板20の板面とが当接して圧電振動子14の列と直交する方向の位置決めが行われる。上記のように振動子ユニット30が収容された状態で、振動子ユニット30の固定板20の列方向の両端部とガイド溝36の内面とが接着剤35で接着固定されている。
【0033】
そして、上記ヘッドケース16のユニット固着面に、流路ユニット26の振動板12側が接着剤で接合された状態で、圧電振動子14の先端面が振動板12の島部13に固着されるとともに、固定板20がヘッドケース16に接着固定されることにより、記録ヘッド1が構成されている。
【0034】
上記構成の記録ヘッド1は、駆動回路(図示せず)で発生させた駆動信号をフレキシブル回路板22を介して圧電振動子14に入力することにより、圧電振動子14が長手方向に伸縮される。この圧電振動子14の伸縮により、振動板12の島部13を振動させて圧力発生室19内の圧力を変化させ、圧力発生室19内のインクをノズル開口15からインク滴として吐出させるようになっている。図において、24はインク貯留室17にインクを供給するインク流路24であり、27はヘッドカバーである。
【0035】
上記記録ヘッド1は、記録用紙の紙幅方向に往復移動するキャリッジに取り付けられ、キャリッジを移動させながら記録用紙上にインク滴を吐出させ、記録用紙に画像や文字をドットマトリックスにより印刷するようになっている。
【0036】
このような構成により、本発明の記録ヘッド1は、上記振動子ユニット30は、固定板20の両面において、それぞれ固定板20の一端から圧電振動子14が棒状に突出するよう一定ピッチで列設されるとともに、上記各圧電振動子14の根元部分が一体的な略板状部33となって連結されて固定板20に固着されて形成され、上記振動子ユニット30は、固定板20の両面に形成された圧電振動子14列のうち、一方の圧電振動子14列の列方向端部Tを、2列の圧電振動子14列の列方向の位置決め部Tとしてヘッドケース16に収容されている。
【0037】
このため、従来のように各列ごとに振動子ユニット30を位置決めするのではなく、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子14列が形成された固定板20を位置決めすることにより、2列同時に位置決めすることができるため、2列間における圧電振動子14の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。また、上記2列の圧電振動子14列は、1箇所の位置決め部Tで同時に位置決めできるため、2列間における圧電振動子14の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。また、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分記録ヘッド1全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。
【0038】
また、固定板20を金属板から構成することにより、記録ヘッド1自体の剛性を保ちながら固定板20自体を薄型化することができ、記録ヘッド1自体の小型化に有利である。さらに、樹脂性のヘッドケース16との接触部が少なくなることから、ヘッドケース16が環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子14の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0039】
さらに、上記ヘッドケース16には、圧電振動子14列の先端を流路ユニット26に当接させるための2つの開口部32が形成され、上記開口部32同士の間には、固定板20の流路ユニット26側の面が当接する固定バー31が形成されているため、固定板20の流路ユニット26側の面を固定バー31に当接させた状態で圧電振動子14の列と直交する方向の位置決め作業を行うことができる。このため、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分記録ヘッド1全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。さらに、樹脂性のヘッドケース16との噴射方向と平行な接触部が少なくなることから、ヘッドケース16が環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子14の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0040】
また、上記流路ユニット26は、圧力発生室19の列が2列1組で対向させて配置され、その両側にそれぞれ共通のインク貯留室17を配置した構造であり、上記振動子ユニット30は、固定板20の両面に、上記2列1組の圧力発生室19の列に対応した圧電振動子14が形成されているため、圧力発生室19の列が近接して対向していることから、限られたスペース内で圧電振動子14列を近接させて位置決めしなければならず、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が向上して、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分記録ヘッド1全体の精度にも良い影響を与えて精度レベルが向上する効果が顕著に現れ、効果的である。
【0041】
つぎに、上記本発明の記録ヘッド1の製造方法について説明する。
【0042】
まず、振動子ユニット30をつくる。
【0043】
図8に示すように、圧電材料板40を準備する。この圧電材料板40は、例えば、定盤の上にペースト状に調整した圧電材料(例えばチタン酸・ジルコン酸鉛系複合ペロプスカイトセラミックス材料を薄く塗布して第1の圧電材料層を形成し、この表面に蒸着や導電性塗料により第1の圧電材料層の一部に露出部を残すようにして第1の導電層を形成し、さらにその表面に圧電材料を薄く塗布して第2の圧電材料層を形成し、さらに第1の導電層と異なる側に導電層を形成することを必要回数繰り返す。その後その積層体を乾燥させて100〜1200℃で焼成して板状の圧電材料板40が形成される。このようにして形成された圧電材料板40には、電圧の印加により縦振動する活性部42と、振動に寄与しない非活性部43が存在している。
【0044】
図9に示すように、固定板20の両面に、それぞれ固定板20の一端から突出するように圧電材料板40を導電性接着剤等で固着する。このとき、圧電材料板40の非活性部43と固定板20とが固着され、圧電材料板40の活性部42を固定板20の一端から突出させている。この突出した活性部42が圧電振動子14に形成される。
【0045】
図10および図11に示すように、上記固定板20の両面に固着した2つの圧電材料板40に対し、固定板20の一端から突出した突出端から固定部に向かって同じ工具(1本のワイヤーソー41)で、同時に切れ込み34を形成する。このようにして、1本のワイヤーソー41で固定板20の両面に固着された2つの圧電材料板40に対して同時に切れ込み34を形成する。
【0046】
このとき、圧電材料板40の突出端から徐々に固定部に向かって切れ込み34を形成し、最終的には、固定板20の端部近傍まで切れ込み34を形成する。このとき、ワイヤーソー41は、圧電材料板40の突出端から固定部の方向にテンションがかかるように掛け渡され、その状態でワイヤーソー41を長手方向に送りながら圧電材料板40の切断が行われて切れ込み34が形成される。このとき、ワイヤーソー41はテンションをかける方向に斜めになることから、圧電材料板40の根元部では、上記切れ込み34は、圧電材料板40の固定板20との固着面側よりも表面側の方が深くなるよう斜めに切れ込むよう形成されている。
【0047】
そして(図6参照)、上記切れ込み34を、圧電材料板40の長手方向すなわち列方向に一定ピッチで複数形成し、上記固定板20の両面にそれぞれ棒状の圧電振動子14が列設された振動子ユニット30を形成する。このとき、切れ込み34は上記活性部42に形成されるため、切れ込み34同士に挟まれて残った棒状の部分が縦振動モードの圧電振動子14に形成される。また、圧電材料板40の固定板20と固着された非活性部43は、切れ込み34が完全に形成されず、一体的な略板状に連結された板状部33に形成される。このようにして、振動子ユニット30が形成される。
【0048】
つぎに、図12および図13に示すように、上記のようにして形成した振動子ユニット30をヘッドケース16に収容して記録ヘッド1を得る。
【0049】
すなわち、ヘッドケース16のユニット固着面に、流路ユニット26を接着剤等で接合して固着する。この状態のヘッドケース16に対し、ユニット固着面と反対側の開口から振動子ユニット30を圧電振動子14先端側から挿入する。圧電振動子14の先端面には、接着剤を塗布しておき、圧電振動子14の先端面と振動板12の島部13とを接着剤で接合する。
【0050】
この振動子ユニット30をヘッドケース16に収容する際、固定板20の両面に形成された圧電振動子14列のうち、一方の圧電振動子14列の列方向端部Tを、2列の圧電振動子14列の列方向の位置決め部Tとして収容することが行われる。
【0051】
すなわち、ヘッドケース16のユニット固着面と反対側の開口から振動子ユニット30を圧電振動子14先端側から挿入する際、圧電振動子14の列は、収容空間21に向かって挿入される。そして、圧電振動子14列は、その両端部の圧電振動子14がガイド斜面37に当接してガイドされながら開口部32内に挿入される。また、固定板20はガイド溝36にガイドされて挿入される。そして、さらに振動子ユニット30の固定板20の流路ユニット側の面が、上記開口部32同士の間に形成された固定バー31に当接するまで挿入される。
【0052】
このとき、固定板20の両面に形成された圧電振動子14列のうち、一方の圧電振動子14列の列方向端部Tを、ヘッドケース16の開口部の列方向端部の内壁面Sである位置決め面Sとが対面し当接させて位置決めすることが行われる。また、固定板20の一方のガイド溝36の側壁Uと固定板20の板面とを当接させることにより、2列の圧電振動子14列を、圧電振動子14の列と直交する方向の位置を同時に決めることが行われる。
【0053】
上述した本発明の製造方法によれば、固定板20の両面に固着した2つの圧電材料板40に対して同一工具で切れ込み34を形成して2列の圧電振動子14列を形成することにより、2列の圧電振動子14列はほぼ同一の位置精度で形成される。そして、1つの固定板20に2列の圧電振動子14列が形成された振動子ユニット30をヘッドケース16に収容するため、従来のように各列ごとに振動子ユニット30を位置決めするのではなく、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子14列が形成された固定板20を位置決めすることにより、2列同時に位置決めすることができる。このように、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子14列を同時に位置決めできるため、2列間における圧電振動子14の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。3列以上の圧電振動子14列を有する場合でも、全体の圧電振動子14の位置精度のばらつきが抑えられ、結果的に、インク滴の噴射特性のばらつきも少なくなって画質の向上につながる。また、固定板20を金属板から構成することにより、記録ヘッド1自体の剛性を保ちながら固定板20自体を薄型化することができ、記録ヘッド1自体の小型化に有利である。さらに、樹脂性のヘッドケース16との接触部が少なくなることから、ヘッドケース16が環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子14の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0054】
また、上記振動子ユニット30をヘッドケース16に収容する際、固定板20の両面に形成された圧電振動子14列のうち、一方の圧電振動子14列の列方向端部を、2列の圧電振動子14列の列方向の位置決め部として収容するため、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子14列を、1箇所の位置決め部で同時に位置決めできるため、2列間における圧電振動子14の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。また、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分液体噴射ヘッド全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。
【0055】
さらに、上記固定板20の両面に固着した2つの圧電材料板40に対してワイーヤーソー41で同時に切れ込み34を形成するため、固定板20の両面に固着した2つの圧電材料板40に対して同一のワイヤーソー41で切れ込み34を形成し、2列の圧電振動子14列をほぼ同一の位置精度で形成することができる。
【0056】
また、上記ヘッドケース16には、圧電振動子14列の先端を流路ユニット26に当接させるための2つの開口部32が形成され、上記開口部32同士の間に形成された固定バー31に、固定板20の流路ユニット26側の面が当接しているため、固定板20の流路ユニット26側の面を固定バー31に当接させた状態で圧電振動子14の列と直交する方向の位置決め作業を行うことができる。このため、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分記録ヘッド1全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。さらに、樹脂性のヘッドケース16との噴射方向と平行な接触部が少なくなることから、ヘッドケース16が環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子14の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0057】
また、上記流路ユニット26は、圧力発生室19の列が2列1組で対向させて配置され、その両側にそれぞれ共通のインク貯留室17を配置した構造であり、上記振動子ユニット30は、固定板20の両面に、上記2列1組の圧力発生室19の列に対応した圧電振動子14が形成されているため、圧力発生室19の列が近接して対向していることから、限られたスペース内で圧電振動子14列を近接させて位置決めしなければならず、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が向上して、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分記録ヘッド1全体の精度にも良い影響を与えて精度レベルが向上する効果が顕著に現れ、効果的である。
【0058】
なお、上述した説明は、ノズル列25が2列でインク貯留室17が2つ設けられた流路形成基板11について説明したが、これに限定するものではなく、ノズル列25が3列以上でインク貯留室17が3つ以上形成された流路形成基板11や、複数のノズル列25に対応する複数のインク貯留室17が連通した流路形成基板11にも適用することができる。この場合も、同様の作用効果を奏し、全体の圧電振動子14の位置精度のばらつきが抑えられ、結果的に、インク滴の噴射特性のばらつきも少なくなって画質の向上につながる。
【0059】
上記各実施例では、縦振動モードの圧電振動子14を備えた記録ヘッド1について説明したが、これに限定するものではなく、本発明は撓み振動モードの圧電振動子を備えた記録ヘッド1に適用することもできるし、圧力発生手段として圧電振動子ではなく、圧力発生室内部の液体を加熱して気泡を発生させるバブルジェット(登録商標)タイプの記録ヘッド1に適用することも可能である。
【0060】
本発明は、液体噴射装置に適用可能であり、その代表例としては、画像記録用のインクジェット式記録ヘッド1を備えたインクジェット式記録装置がある。その他の液体噴射装置としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等があげられる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明が適用される記録ヘッドの一例を示す分解斜視図である。
【図2】上記記録ヘッドを示す断面図である。
【図3】上記記録ヘッドのA−A断面図である。
【図4】上記記録ヘッドを流路ユニットと反対側から見た図である。
【図5】上記記録ヘッドのB−B断面図である。
【図6】振動子ユニットを示す斜視図である。
【図7】ヘッドケースを示す一部破断斜視図である。
【図8】本発明の製造方法の工程を説明する図である。
【図9】本発明の製造方法の工程を説明する図である。
【図10】本発明の製造方法の工程を説明する図である。
【図11】本発明の製造方法の工程を説明する図である。
【図12】本発明の製造方法の工程を説明する図である。
【図13】本発明の製造方法の工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0062】
1 記録ヘッド,10 ノズルプレート,11 流路形成基板,12 振動板,13 島部,14 圧電振動子,15 ノズル開口,16 ヘッドケース,17 インク貯留室,18 インク供給路,19 圧力発生室,20 固定板,21 収容空間,22 フレキシブル回路板,24 インク流路,25 ノズル列,26 流路ユニット,27 ヘッドカバー,30 振動子ユニット,31 固定バー,32 開口部,33 板状部,34 切れ込み,35 接着剤,36 ガイド溝,37 ガイド斜面,40 圧電材料板,41 ワイヤーソー,42 活性部,43 非活性部,
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体カートリッジ等から供給された液体を液滴として噴射する液体噴射ヘッドの製造方法および液体噴射ヘッドに係るものであり、圧電振動子の位置精度を向上させて噴射特性のばらつきを低減する液体噴射ヘッドの製造方法および液体噴射ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の代表例であるインクジェット式記録装置においては、圧力発生室を加圧する圧力発生手段と、加圧されたインクをインク滴として噴射するノズル開口とを有するインクジェット式の記録ヘッド(液体噴射ヘッド)がキャリッジに搭載されて構成されている。
【0003】
そして、1枚の基板に複数のノズル開口を配置したマルチノズル型インクジェット式記録ヘッドは、複数のノズル開口が穿設されたノズルプレートと、圧力発生室やインク供給流路となる空間が形成された流路形成基板と、他方の面を封止する振動板とが積層されて接合された流路ユニットを有している。上記流路ユニットは、圧電振動子が収容されたヘッドケースに固着され、圧電振動子による振動板の変形応力により圧力発生室に圧力を発生させ、ノズル開口からインク滴を噴射させるように構成されている。(例えば下記の特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−361868号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の記録ヘッドでは、圧電振動子が固定板の片面に列状に固着された振動子ユニットをヘッドケースに収容することにより構成されている。そして、ノズル列が複数列ある記録ヘッドの場合、各列ごとに振動子ユニットをつくり、各列ごとに振動子ユニットをヘッドケース内に位置決めして組み込む必要がある。このため、列間における圧電振動子の位置精度にばらつきが生じ、インク滴の吐出特性にもばらつきが生じ、画質の低下につながるおそれがあった。特に、上記流路ユニットは、2列1組のノズル列を有し、圧力発生室の列を対向させてその両側にそれぞれ共通のインク貯留室を配置した構造が採用されることが多い。この場合、圧力発生室の列が近接して対向していることから、限られたスペース内で圧電振動子列を近接させて位置決めしなければならず、作業性が悪く、製品精度にも悪影響を及ぼしていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、圧電振動子の位置精度を向上させて噴射特性のばらつきを低減する液体噴射ヘッドの製造方法および液体噴射ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、列状に形成された各ノズル開口に連通する圧力発生室の列を有する流路形成基板および、この流路形成基板の一面に接合された弾性板とを有する流路ユニットと、上記弾性板を変形させて圧力発生室に圧力を発生させる圧電振動子が固定板に列状に固定された振動子ユニットと、上記流路ユニットが固着されるとともに上記振動子ユニットが収容されたヘッドケースとを備えた液体噴射ヘッドの製造方法であって、上記固定板の両面に、それぞれ固定板の一端から突出するように圧電材料板を固着し、上記固定板の両面に固着した2つの圧電材料板に対し、固定板の一端から突出した突出端から固定部に向かって同じ工具で同時に切れ込みを形成し、上記切れ込みを一定ピッチで複数形成し、上記固定板の両面にそれぞれ棒状の圧電振動子が列設された振動子ユニットを形成し、上記振動子ユニットをヘッドケースに収容して液体噴射ヘッドを得ることを要旨とする。
【0007】
また、上記課題を解決するため、本発明の液体噴射ヘッドは列状に形成された各ノズル開口に連通する圧力発生室の列を有する流路形成基板および、この流路形成基板の一面に接合された弾性板とを有する流路ユニットと、上記弾性板を変形させて圧力発生室に圧力を発生させる圧電振動子が固定板に列状に固定された振動子ユニットと、上記流路ユニットが固着されるとともに上記振動子ユニットが収容されたヘッドケースとを備え、上記振動子ユニットは、固定板の両面において、それぞれ固定板の一端から圧電振動子が棒状に突出するよう一定ピッチで列設されるとともに、上記各圧電振動子の根元部分が固定板に固着されて形成され、上記振動子ユニットは、固定板の両面に形成された圧電振動子列のうち、一方の圧電振動子列の列方向端部を、2列の圧電振動子列の列方向の位置決め部としてヘッドケースに収容されていることを要旨とする。
【0008】
すなわち、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、上記固定板の両面に、それぞれ固定板の一端から突出するように圧電材料板を固着し、上記固定板の両面に固着した2つの圧電材料板に対し、固定板の一端から突出した突出端から固定部に向かって同じ工具で同時に切れ込みを形成し、上記切れ込みを一定ピッチで複数形成して上記固定板の両面にそれぞれ棒状の圧電振動子が列設された振動子ユニットを形成し、上記振動子ユニットをヘッドケースに収容する。このように、固定板の両面に固着した2つの圧電材料板に対して同一工具で切れ込みを形成して2列の圧電振動子列を形成することにより、2列の圧電振動子列はほぼ同一の位置精度で形成される。そして、1つの固定板に2列の圧電振動子列が形成された振動子ユニットをヘッドケースに収容するため、従来のように各列ごとに振動子ユニットを位置決めするのではなく、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子列が形成された固定板を位置決めすることにより、2列同時に位置決めすることができる。このように、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子列を同時に位置決めできるため、2列間における圧電振動子の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。3列以上の圧電振動子列を有する場合でも、全体の圧電振動子の位置精度のばらつきが抑えられ、結果的に、液滴の噴射特性のばらつきも少なくなって画質の向上につながる。また、固定板を金属板から構成することにより、液体噴射ヘッド自体の剛性を保ちながら固定板自体を薄型化することができ、液体噴射ヘッド自体の小型化に有利である。さらに、樹脂性のヘッドケースとの接触部が少なくなることから、ヘッドケースが環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0009】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記振動子ユニットをヘッドケースに収容する際、固定板の両面に形成された圧電振動子列のうち、一方の圧電振動子列の列方向端部を、2列の圧電振動子列の列方向の位置決め部として収容する場合には、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子列を、1箇所の位置決め部で同時に位置決めできるため、2列間における圧電振動子の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。また、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分液体噴射ヘッド全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。
【0010】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記工具がワイヤーソーであり、上記固定板の両面に固着した2つの圧電材料板に対して上記ワイーヤーソーで同時に切れ込みを形成する場合には、固定板の両面に固着した2つの圧電材料板に対して同一のワイヤーソーで切れ込みを形成し、2列の圧電振動子列をほぼ同一の位置精度で形成することができる。
【0011】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記ヘッドケースには、圧電振動子列の先端を流路ユニットに当接させるための2つの開口部が形成され、上記開口部同士の間に形成された固定バーに、固定板の流路ユニット側の面が当接している場合には、固定板の流路ユニット側の面を固定バーに当接させた状態で圧電振動子の列と直交する方向の位置決め作業を行うことができる。このため、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分液体噴射ヘッド全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。さらに、樹脂性のヘッドケースとの噴射方向と平行な接触部が少なくなることから、ヘッドケースが環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0012】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記流路ユニットは、圧力発生室の列が2列1組で対向させて配置され、その両側にそれぞれ共通のインク貯留室を配置した構造であり、上記振動子ユニットは、固定板の両面に、上記2列1組の圧力発生室の列に対応した圧電振動子が形成されている場合には、圧力発生室の列が近接して対向していることから、限られたスペース内で圧電振動子列を近接させて位置決めしなければならず、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が向上して、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分液体噴射ヘッド全体の精度にも良い影響を与えて精度レベルが向上する効果が顕著に現れ、効果的である。
【0013】
本発明の液体噴射ヘッドは、上記振動子ユニットは、固定板の両面において、それぞれ固定板の一端から圧電振動子が棒状に突出するよう一定ピッチで列設されるとともに、上記各圧電振動子の根元部分が固定板に固着されて形成され、上記振動子ユニットは、固定板の両面に形成された圧電振動子列のうち、一方の圧電振動子列の列方向端部を、2列の圧電振動子列の列方向の位置決め部としてヘッドケースに収容されている。従来のように各列ごとに振動子ユニットを位置決めするのではなく、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子列が形成された固定板を位置決めすることにより、2列同時に位置決めすることができるため、2列間における圧電振動子の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。また、上記2列の圧電振動子列は、1箇所の位置決め部で同時に位置決めできるため、2列間における圧電振動子の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。また、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分液体噴射ヘッド全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。3列以上の圧電振動子列を有する場合でも、全体の圧電振動子の位置精度のばらつきが抑えられ、結果的に、液滴の噴射特性のばらつきも少なくなって画質の向上につながる。また、固定板を金属板から構成することにより、液体噴射ヘッド自体の剛性を保ちながら固定板自体を薄型化することができ、液体噴射ヘッド自体の小型化に有利である。さらに、樹脂性のヘッドケースとの接触部が少なくなることから、ヘッドケースが環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0014】
本発明の液体噴射ヘッドにおいて、上記ヘッドケースには、圧電振動子列の先端を流路ユニットに当接させるための2つの開口部が形成され、上記開口部同士の間には、固定板の流路ユニット側の面が当接する固定バーが形成されている場合には、固定板の流路ユニット側の面を固定バーに当接させた状態で圧電振動子の列と直交する方向の位置決め作業を行うことができる。このため、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分液体噴射ヘッド全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。さらに、樹脂性のヘッドケースとの噴射方向と平行な接触部が少なくなることから、ヘッドケースが環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0015】
本発明の液体噴射ヘッドにおいて、上記流路ユニットは、圧力発生室の列が2列1組で対向させて配置され、その両側にそれぞれ共通のインク貯留室を配置した構造であり、上記振動子ユニットは、固定板の両面に、上記2列1組の圧力発生室の列に対応した圧電振動子が形成されている場合には、圧力発生室の列が近接して対向していることから、限られたスペース内で圧電振動子列を近接させて位置決めしなければならず、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が向上して、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分液体噴射ヘッド全体の精度にも良い影響を与えて精度レベルが向上する効果が顕著に現れ、効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0017】
図1〜図7は、本発明の液体噴射ヘッドを適用したインクジェット式の記録ヘッド1の構造の一例を示す図である。図1は上記記録ヘッド1の全体構造を示す分解斜視図、図2は記録ヘッド1の縦断面図、図3は上記記録ヘッド1のA−A断面図(流路ユニットを除去してノズルプレート側から見た図)、図4は上記記録ヘッド1をヘッドケース側から見た図、図5は上記記録ヘッド1のB−B断面図、図6は振動子ユニットの斜視図、図7はヘッドケースの一部破断斜視図である。
【0018】
上記記録ヘッド1は、圧力発生手段としての圧電振動子14が収容されるヘッドケース16と、このヘッドケース16のユニット固着面に接着剤等で固着される流路ユニット26とを備えている。
【0019】
図1および図2に示すように、上記流路ユニット26は、インクを噴射するノズル開口15が列状に形成されたノズルプレート10と、上記各ノズル開口15に連通する圧力発生室19の列と上記各圧力発生室19に供給するインクを貯留するインク貯留室17を含む流路空間が形成された流路形成基板11と、上記流路形成基板11の一面に接合され圧力発生室19を含む流路空間を封止する振動板(弾性板)12とが積層されて構成されている。
【0020】
上記ノズルプレート10は、ノズル開口15が複数列設されてノズル列25が形成され、この例では2列のノズル列25が形成されてそれぞれ異なる種類のインクを噴射するようになっている。このノズルプレート10は、ステンレス板から形成されている。
【0021】
上記流路形成基板11は、上記各ノズル開口15に連通する圧力発生室19が列設されている。また、各圧力発生室19にインク供給路18を介して連通して各圧力発生室19に対して供給するインクを貯留する共通のインク貯留室17が、上記圧力発生室19の列に沿って配置されるよう形成されている。
【0022】
上記ノズル列25は、図2における紙面に垂直な方向に設けられている。そして、この例では、上記ノズル列25が2列設けられ、各ノズル列25に対応するよう圧力発生室19の列も2列設けられている。上記圧力発生室19の列は2列1組で対向させて配置され、その両側に、各圧力発生室19の列に対応してそれぞれ1つずつ共通のインク貯留室17を配置した構造である。上記流路形成基板11は、この例ではSi単結晶基板をエッチングすることにより形成されている。
【0023】
上記振動板12は、ポリフェニレンサルファイドフィルムからなり、ステンレス板製の島部13等がラミネートされて形成されている。
【0024】
そして、上記流路形成基板11の一面にノズルプレート10が積層され、他面に振動板12が島部13を外側に配置するように積層されて流路ユニット26が構成されている。
【0025】
一方、上記ヘッドケース16は、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が射出成形されてなり、上下に貫通する収容空間21に、上記各圧力発生室19に対応して上記振動板12を変形させて圧力発生室19に圧力を発生させる圧電振動子14が収容されるようになっている。
【0026】
上記圧電振動子14は、縦振動モードの圧電振動子14であり、後端側が固定板20に固着されて棒状の圧電振動子14が列状をなしており、上記圧電振動子14が固定板20に列状に固定された振動子ユニット30として組み込まれている。
【0027】
図6に示すように、上記記録ヘッド1における振動子ユニット30は、固定板20の両面において、それぞれ固定板20のノズルプレート10側に位置する一端から圧電振動子14がノズルプレート10側に棒状に突出するよう一定ピッチで列設されている。そして、上記各圧電振動子14の根元部分が、一体的な略板状部33となって連結されて固定板20に固着されて形成されている。各圧電振動子14の間は、スリット状の切れ込み34が形成されており、上記切れ込み34は、圧電振動子14の先端から根元側に向かって延び、固定板20のノズルプレート10側に位置する一端まで形成されている。また、圧電振動子14の根元部では、上記切れ込み34は、圧電振動子14の固定板20との固着面側よりも表面側の方が深くなるよう、固定板20の上記一端から圧電振動子14の固着部と反対側の面に向かって斜めに切れ込んでいる。上記固定板20は、この例ではアルミニウム等の金属板から形成されている。
【0028】
また、上記振動子ユニット30は、固定板20の両面に形成された2列の圧電振動子14の列は、上記流路ユニット26において2列1組で対向させて配置された圧力発生室19の列のそれぞれに対応している。
【0029】
図7に示すように、上記ヘッドケース16には、上述した振動子ユニット30を収容する収容空間21が形成されている。上記収容空間21は、ヘッドケース16の流路ユニット26の固着面と反対側に大きく1つの開口を有し、流路ユニット26の固着面には、圧電振動子14の列の先端を流路ユニット26の振動板12の島部13に当接させるための2つの開口部32が形成されている。そして、上記開口部32同士の間には、振動子ユニット30が収容空間21内に収容された状態で、固定板20の流路ユニット側の端面が当接する固定バー31が形成されている。
【0030】
また、上記ヘッドケース16には、収容空間21の固定バー31よりも流路ユニット固着面と反対の開口側に、固定板20をガイドするガイド溝36が形成されている。さらに、上記ガイド溝36を挟んだ両側には、振動子ユニット30を収容空間21内に開口側から挿入する際に圧電振動子14をガイドするガイド斜面37が形成されている。そして、上記ガイド斜面37よりも流路ユニット26固着面側の内壁面が圧電振動子14の列方向の位置を位置決めする位置決め面Sになっている。また、固定板20のガイド溝36の側壁が圧電振動子14の列と直交する方向の位置を決める位置決め面Uになっている。
【0031】
図3〜図5に示すように、上記振動子ユニット30は、固定板20の両面に形成された圧電振動子14の列のうち、一方の圧電振動子14の列の列方向端部Tを、2列の圧電振動子14の列の列方向の位置決め部Tとしてヘッドケース16に収容されている。このとき、上記圧電振動子14の列の位決め部Tと、ヘッドケース16の開口部の列方向端部の内壁面Sである位置決め面Sとが対面し当接して位置決めされている。
【0032】
また、振動子ユニット30が収容された状態で、固定板20のガイド溝36側壁の位置決め面Uと、固定板20の板面とが当接して圧電振動子14の列と直交する方向の位置決めが行われる。上記のように振動子ユニット30が収容された状態で、振動子ユニット30の固定板20の列方向の両端部とガイド溝36の内面とが接着剤35で接着固定されている。
【0033】
そして、上記ヘッドケース16のユニット固着面に、流路ユニット26の振動板12側が接着剤で接合された状態で、圧電振動子14の先端面が振動板12の島部13に固着されるとともに、固定板20がヘッドケース16に接着固定されることにより、記録ヘッド1が構成されている。
【0034】
上記構成の記録ヘッド1は、駆動回路(図示せず)で発生させた駆動信号をフレキシブル回路板22を介して圧電振動子14に入力することにより、圧電振動子14が長手方向に伸縮される。この圧電振動子14の伸縮により、振動板12の島部13を振動させて圧力発生室19内の圧力を変化させ、圧力発生室19内のインクをノズル開口15からインク滴として吐出させるようになっている。図において、24はインク貯留室17にインクを供給するインク流路24であり、27はヘッドカバーである。
【0035】
上記記録ヘッド1は、記録用紙の紙幅方向に往復移動するキャリッジに取り付けられ、キャリッジを移動させながら記録用紙上にインク滴を吐出させ、記録用紙に画像や文字をドットマトリックスにより印刷するようになっている。
【0036】
このような構成により、本発明の記録ヘッド1は、上記振動子ユニット30は、固定板20の両面において、それぞれ固定板20の一端から圧電振動子14が棒状に突出するよう一定ピッチで列設されるとともに、上記各圧電振動子14の根元部分が一体的な略板状部33となって連結されて固定板20に固着されて形成され、上記振動子ユニット30は、固定板20の両面に形成された圧電振動子14列のうち、一方の圧電振動子14列の列方向端部Tを、2列の圧電振動子14列の列方向の位置決め部Tとしてヘッドケース16に収容されている。
【0037】
このため、従来のように各列ごとに振動子ユニット30を位置決めするのではなく、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子14列が形成された固定板20を位置決めすることにより、2列同時に位置決めすることができるため、2列間における圧電振動子14の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。また、上記2列の圧電振動子14列は、1箇所の位置決め部Tで同時に位置決めできるため、2列間における圧電振動子14の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。また、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分記録ヘッド1全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。
【0038】
また、固定板20を金属板から構成することにより、記録ヘッド1自体の剛性を保ちながら固定板20自体を薄型化することができ、記録ヘッド1自体の小型化に有利である。さらに、樹脂性のヘッドケース16との接触部が少なくなることから、ヘッドケース16が環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子14の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0039】
さらに、上記ヘッドケース16には、圧電振動子14列の先端を流路ユニット26に当接させるための2つの開口部32が形成され、上記開口部32同士の間には、固定板20の流路ユニット26側の面が当接する固定バー31が形成されているため、固定板20の流路ユニット26側の面を固定バー31に当接させた状態で圧電振動子14の列と直交する方向の位置決め作業を行うことができる。このため、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分記録ヘッド1全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。さらに、樹脂性のヘッドケース16との噴射方向と平行な接触部が少なくなることから、ヘッドケース16が環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子14の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0040】
また、上記流路ユニット26は、圧力発生室19の列が2列1組で対向させて配置され、その両側にそれぞれ共通のインク貯留室17を配置した構造であり、上記振動子ユニット30は、固定板20の両面に、上記2列1組の圧力発生室19の列に対応した圧電振動子14が形成されているため、圧力発生室19の列が近接して対向していることから、限られたスペース内で圧電振動子14列を近接させて位置決めしなければならず、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が向上して、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分記録ヘッド1全体の精度にも良い影響を与えて精度レベルが向上する効果が顕著に現れ、効果的である。
【0041】
つぎに、上記本発明の記録ヘッド1の製造方法について説明する。
【0042】
まず、振動子ユニット30をつくる。
【0043】
図8に示すように、圧電材料板40を準備する。この圧電材料板40は、例えば、定盤の上にペースト状に調整した圧電材料(例えばチタン酸・ジルコン酸鉛系複合ペロプスカイトセラミックス材料を薄く塗布して第1の圧電材料層を形成し、この表面に蒸着や導電性塗料により第1の圧電材料層の一部に露出部を残すようにして第1の導電層を形成し、さらにその表面に圧電材料を薄く塗布して第2の圧電材料層を形成し、さらに第1の導電層と異なる側に導電層を形成することを必要回数繰り返す。その後その積層体を乾燥させて100〜1200℃で焼成して板状の圧電材料板40が形成される。このようにして形成された圧電材料板40には、電圧の印加により縦振動する活性部42と、振動に寄与しない非活性部43が存在している。
【0044】
図9に示すように、固定板20の両面に、それぞれ固定板20の一端から突出するように圧電材料板40を導電性接着剤等で固着する。このとき、圧電材料板40の非活性部43と固定板20とが固着され、圧電材料板40の活性部42を固定板20の一端から突出させている。この突出した活性部42が圧電振動子14に形成される。
【0045】
図10および図11に示すように、上記固定板20の両面に固着した2つの圧電材料板40に対し、固定板20の一端から突出した突出端から固定部に向かって同じ工具(1本のワイヤーソー41)で、同時に切れ込み34を形成する。このようにして、1本のワイヤーソー41で固定板20の両面に固着された2つの圧電材料板40に対して同時に切れ込み34を形成する。
【0046】
このとき、圧電材料板40の突出端から徐々に固定部に向かって切れ込み34を形成し、最終的には、固定板20の端部近傍まで切れ込み34を形成する。このとき、ワイヤーソー41は、圧電材料板40の突出端から固定部の方向にテンションがかかるように掛け渡され、その状態でワイヤーソー41を長手方向に送りながら圧電材料板40の切断が行われて切れ込み34が形成される。このとき、ワイヤーソー41はテンションをかける方向に斜めになることから、圧電材料板40の根元部では、上記切れ込み34は、圧電材料板40の固定板20との固着面側よりも表面側の方が深くなるよう斜めに切れ込むよう形成されている。
【0047】
そして(図6参照)、上記切れ込み34を、圧電材料板40の長手方向すなわち列方向に一定ピッチで複数形成し、上記固定板20の両面にそれぞれ棒状の圧電振動子14が列設された振動子ユニット30を形成する。このとき、切れ込み34は上記活性部42に形成されるため、切れ込み34同士に挟まれて残った棒状の部分が縦振動モードの圧電振動子14に形成される。また、圧電材料板40の固定板20と固着された非活性部43は、切れ込み34が完全に形成されず、一体的な略板状に連結された板状部33に形成される。このようにして、振動子ユニット30が形成される。
【0048】
つぎに、図12および図13に示すように、上記のようにして形成した振動子ユニット30をヘッドケース16に収容して記録ヘッド1を得る。
【0049】
すなわち、ヘッドケース16のユニット固着面に、流路ユニット26を接着剤等で接合して固着する。この状態のヘッドケース16に対し、ユニット固着面と反対側の開口から振動子ユニット30を圧電振動子14先端側から挿入する。圧電振動子14の先端面には、接着剤を塗布しておき、圧電振動子14の先端面と振動板12の島部13とを接着剤で接合する。
【0050】
この振動子ユニット30をヘッドケース16に収容する際、固定板20の両面に形成された圧電振動子14列のうち、一方の圧電振動子14列の列方向端部Tを、2列の圧電振動子14列の列方向の位置決め部Tとして収容することが行われる。
【0051】
すなわち、ヘッドケース16のユニット固着面と反対側の開口から振動子ユニット30を圧電振動子14先端側から挿入する際、圧電振動子14の列は、収容空間21に向かって挿入される。そして、圧電振動子14列は、その両端部の圧電振動子14がガイド斜面37に当接してガイドされながら開口部32内に挿入される。また、固定板20はガイド溝36にガイドされて挿入される。そして、さらに振動子ユニット30の固定板20の流路ユニット側の面が、上記開口部32同士の間に形成された固定バー31に当接するまで挿入される。
【0052】
このとき、固定板20の両面に形成された圧電振動子14列のうち、一方の圧電振動子14列の列方向端部Tを、ヘッドケース16の開口部の列方向端部の内壁面Sである位置決め面Sとが対面し当接させて位置決めすることが行われる。また、固定板20の一方のガイド溝36の側壁Uと固定板20の板面とを当接させることにより、2列の圧電振動子14列を、圧電振動子14の列と直交する方向の位置を同時に決めることが行われる。
【0053】
上述した本発明の製造方法によれば、固定板20の両面に固着した2つの圧電材料板40に対して同一工具で切れ込み34を形成して2列の圧電振動子14列を形成することにより、2列の圧電振動子14列はほぼ同一の位置精度で形成される。そして、1つの固定板20に2列の圧電振動子14列が形成された振動子ユニット30をヘッドケース16に収容するため、従来のように各列ごとに振動子ユニット30を位置決めするのではなく、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子14列が形成された固定板20を位置決めすることにより、2列同時に位置決めすることができる。このように、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子14列を同時に位置決めできるため、2列間における圧電振動子14の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。3列以上の圧電振動子14列を有する場合でも、全体の圧電振動子14の位置精度のばらつきが抑えられ、結果的に、インク滴の噴射特性のばらつきも少なくなって画質の向上につながる。また、固定板20を金属板から構成することにより、記録ヘッド1自体の剛性を保ちながら固定板20自体を薄型化することができ、記録ヘッド1自体の小型化に有利である。さらに、樹脂性のヘッドケース16との接触部が少なくなることから、ヘッドケース16が環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子14の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0054】
また、上記振動子ユニット30をヘッドケース16に収容する際、固定板20の両面に形成された圧電振動子14列のうち、一方の圧電振動子14列の列方向端部を、2列の圧電振動子14列の列方向の位置決め部として収容するため、ほぼ同一の位置精度で形成された2列の圧電振動子14列を、1箇所の位置決め部で同時に位置決めできるため、2列間における圧電振動子14の位置精度のばらつきがほとんどなくなる。また、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分液体噴射ヘッド全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。
【0055】
さらに、上記固定板20の両面に固着した2つの圧電材料板40に対してワイーヤーソー41で同時に切れ込み34を形成するため、固定板20の両面に固着した2つの圧電材料板40に対して同一のワイヤーソー41で切れ込み34を形成し、2列の圧電振動子14列をほぼ同一の位置精度で形成することができる。
【0056】
また、上記ヘッドケース16には、圧電振動子14列の先端を流路ユニット26に当接させるための2つの開口部32が形成され、上記開口部32同士の間に形成された固定バー31に、固定板20の流路ユニット26側の面が当接しているため、固定板20の流路ユニット26側の面を固定バー31に当接させた状態で圧電振動子14の列と直交する方向の位置決め作業を行うことができる。このため、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が飛躍的に向上するため、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分記録ヘッド1全体の精度にも良い影響を与え、精度レベルが向上する。さらに、樹脂性のヘッドケース16との噴射方向と平行な接触部が少なくなることから、ヘッドケース16が環境湿度等の影響で膨張しても、その膨張が圧電振動子14の配置精度に与える影響が少なくなり、環境湿度等に起因する噴射特性の悪化が少なくなる。
【0057】
また、上記流路ユニット26は、圧力発生室19の列が2列1組で対向させて配置され、その両側にそれぞれ共通のインク貯留室17を配置した構造であり、上記振動子ユニット30は、固定板20の両面に、上記2列1組の圧力発生室19の列に対応した圧電振動子14が形成されているため、圧力発生室19の列が近接して対向していることから、限られたスペース内で圧電振動子14列を近接させて位置決めしなければならず、限られたスペースにおける位置決め作業の作業性が向上して、作業能率が向上するとともに、作業性が良い分記録ヘッド1全体の精度にも良い影響を与えて精度レベルが向上する効果が顕著に現れ、効果的である。
【0058】
なお、上述した説明は、ノズル列25が2列でインク貯留室17が2つ設けられた流路形成基板11について説明したが、これに限定するものではなく、ノズル列25が3列以上でインク貯留室17が3つ以上形成された流路形成基板11や、複数のノズル列25に対応する複数のインク貯留室17が連通した流路形成基板11にも適用することができる。この場合も、同様の作用効果を奏し、全体の圧電振動子14の位置精度のばらつきが抑えられ、結果的に、インク滴の噴射特性のばらつきも少なくなって画質の向上につながる。
【0059】
上記各実施例では、縦振動モードの圧電振動子14を備えた記録ヘッド1について説明したが、これに限定するものではなく、本発明は撓み振動モードの圧電振動子を備えた記録ヘッド1に適用することもできるし、圧力発生手段として圧電振動子ではなく、圧力発生室内部の液体を加熱して気泡を発生させるバブルジェット(登録商標)タイプの記録ヘッド1に適用することも可能である。
【0060】
本発明は、液体噴射装置に適用可能であり、その代表例としては、画像記録用のインクジェット式記録ヘッド1を備えたインクジェット式記録装置がある。その他の液体噴射装置としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等があげられる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明が適用される記録ヘッドの一例を示す分解斜視図である。
【図2】上記記録ヘッドを示す断面図である。
【図3】上記記録ヘッドのA−A断面図である。
【図4】上記記録ヘッドを流路ユニットと反対側から見た図である。
【図5】上記記録ヘッドのB−B断面図である。
【図6】振動子ユニットを示す斜視図である。
【図7】ヘッドケースを示す一部破断斜視図である。
【図8】本発明の製造方法の工程を説明する図である。
【図9】本発明の製造方法の工程を説明する図である。
【図10】本発明の製造方法の工程を説明する図である。
【図11】本発明の製造方法の工程を説明する図である。
【図12】本発明の製造方法の工程を説明する図である。
【図13】本発明の製造方法の工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0062】
1 記録ヘッド,10 ノズルプレート,11 流路形成基板,12 振動板,13 島部,14 圧電振動子,15 ノズル開口,16 ヘッドケース,17 インク貯留室,18 インク供給路,19 圧力発生室,20 固定板,21 収容空間,22 フレキシブル回路板,24 インク流路,25 ノズル列,26 流路ユニット,27 ヘッドカバー,30 振動子ユニット,31 固定バー,32 開口部,33 板状部,34 切れ込み,35 接着剤,36 ガイド溝,37 ガイド斜面,40 圧電材料板,41 ワイヤーソー,42 活性部,43 非活性部,
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列状に形成された各ノズル開口に連通する圧力発生室の列を有する流路形成基板および、この流路形成基板の一面に接合された弾性板とを有する流路ユニットと、
上記弾性板を変形させて圧力発生室に圧力を発生させる圧電振動子が固定板に列状に固定された振動子ユニットと、
上記流路ユニットが固着されるとともに上記振動子ユニットが収容されたヘッドケースとを備えた液体噴射ヘッドの製造方法であって、
上記固定板の両面に、それぞれ固定板の一端から突出するように圧電材料板を固着し、
上記固定板の両面に固着した2つの圧電材料板に対し、固定板の一端から突出した突出端から固定部に向かって同じ工具で同時に切れ込みを形成し、上記切れ込みを一定ピッチで複数形成して上記固定板の両面にそれぞれ棒状の圧電振動子が列設された振動子ユニットを形成し、
上記振動子ユニットをヘッドケースに収容して液体噴射ヘッドを得ることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項2】
上記振動子ユニットをヘッドケースに収容する際、固定板の両面に形成された圧電振動子列のうち、一方の圧電振動子列の列方向端部を、2列の圧電振動子列の列方向の位置決め部として収容する請求項1記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項3】
上記工具がワイヤーソーであり、上記固定板の両面に固着した2つの圧電材料板に対して上記ワイーヤーソーで同時に切れ込みを形成する請求項1または2記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項4】
上記ヘッドケースには、圧電振動子列の先端を流路ユニットに当接させるための2つの開口部が形成され、上記開口部同士の間に形成された固定バーに、固定板の流路ユニット側の面が当接している請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項5】
上記流路ユニットは、圧力発生室の列が2列1組で対向させて配置され、その両側にそれぞれ共通のインク貯留室を配置した構造であり、上記振動子ユニットは、固定板の両面に、上記2列1組の圧力発生室の列に対応した圧電振動子が形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項6】
列状に形成された各ノズル開口に連通する圧力発生室の列を有する流路形成基板および、この流路形成基板の一面に接合された弾性板とを有する流路ユニットと、
上記弾性板を変形させて圧力発生室に圧力を発生させる圧電振動子が固定板に列状に固定された振動子ユニットと、
上記流路ユニットが固着されるとともに上記振動子ユニットが収容されたヘッドケースとを備え、
上記振動子ユニットは、固定板の両面において、それぞれ固定板の一端から圧電振動子が棒状に突出するよう一定ピッチで列設されるとともに、上記各圧電振動子の根元部分が固定板に固着されて形成され、
上記振動子ユニットは、固定板の両面に形成された圧電振動子列のうち、一方の圧電振動子列の列方向端部を、2列の圧電振動子列の列方向の位置決め部としてヘッドケースに収容されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項7】
上記ヘッドケースには、圧電振動子列の先端を流路ユニットに当接させるための2つの開口部が形成され、上記開口部同士の間には、固定板の流路ユニット側の面が当接する固定バーが形成されている請求項6記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
上記流路ユニットは、圧力発生室の列が2列1組で対向させて配置され、その両側にそれぞれ共通のインク貯留室を配置した構造であり、上記振動子ユニットは、固定板の両面に、上記2列1組の圧力発生室の列に対応した圧電振動子が形成されている請求項7または8記載の液体噴射ヘッド。
【請求項1】
列状に形成された各ノズル開口に連通する圧力発生室の列を有する流路形成基板および、この流路形成基板の一面に接合された弾性板とを有する流路ユニットと、
上記弾性板を変形させて圧力発生室に圧力を発生させる圧電振動子が固定板に列状に固定された振動子ユニットと、
上記流路ユニットが固着されるとともに上記振動子ユニットが収容されたヘッドケースとを備えた液体噴射ヘッドの製造方法であって、
上記固定板の両面に、それぞれ固定板の一端から突出するように圧電材料板を固着し、
上記固定板の両面に固着した2つの圧電材料板に対し、固定板の一端から突出した突出端から固定部に向かって同じ工具で同時に切れ込みを形成し、上記切れ込みを一定ピッチで複数形成して上記固定板の両面にそれぞれ棒状の圧電振動子が列設された振動子ユニットを形成し、
上記振動子ユニットをヘッドケースに収容して液体噴射ヘッドを得ることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項2】
上記振動子ユニットをヘッドケースに収容する際、固定板の両面に形成された圧電振動子列のうち、一方の圧電振動子列の列方向端部を、2列の圧電振動子列の列方向の位置決め部として収容する請求項1記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項3】
上記工具がワイヤーソーであり、上記固定板の両面に固着した2つの圧電材料板に対して上記ワイーヤーソーで同時に切れ込みを形成する請求項1または2記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項4】
上記ヘッドケースには、圧電振動子列の先端を流路ユニットに当接させるための2つの開口部が形成され、上記開口部同士の間に形成された固定バーに、固定板の流路ユニット側の面が当接している請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項5】
上記流路ユニットは、圧力発生室の列が2列1組で対向させて配置され、その両側にそれぞれ共通のインク貯留室を配置した構造であり、上記振動子ユニットは、固定板の両面に、上記2列1組の圧力発生室の列に対応した圧電振動子が形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項6】
列状に形成された各ノズル開口に連通する圧力発生室の列を有する流路形成基板および、この流路形成基板の一面に接合された弾性板とを有する流路ユニットと、
上記弾性板を変形させて圧力発生室に圧力を発生させる圧電振動子が固定板に列状に固定された振動子ユニットと、
上記流路ユニットが固着されるとともに上記振動子ユニットが収容されたヘッドケースとを備え、
上記振動子ユニットは、固定板の両面において、それぞれ固定板の一端から圧電振動子が棒状に突出するよう一定ピッチで列設されるとともに、上記各圧電振動子の根元部分が固定板に固着されて形成され、
上記振動子ユニットは、固定板の両面に形成された圧電振動子列のうち、一方の圧電振動子列の列方向端部を、2列の圧電振動子列の列方向の位置決め部としてヘッドケースに収容されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項7】
上記ヘッドケースには、圧電振動子列の先端を流路ユニットに当接させるための2つの開口部が形成され、上記開口部同士の間には、固定板の流路ユニット側の面が当接する固定バーが形成されている請求項6記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
上記流路ユニットは、圧力発生室の列が2列1組で対向させて配置され、その両側にそれぞれ共通のインク貯留室を配置した構造であり、上記振動子ユニットは、固定板の両面に、上記2列1組の圧力発生室の列に対応した圧電振動子が形成されている請求項7または8記載の液体噴射ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−231583(P2006−231583A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46597(P2005−46597)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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