説明

液体噴射装置及び液体噴射装置のクリーニング方法

【課題】液体噴射ヘッド内からの液体の吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンが設定された場合でも、液体噴射ヘッドからの液体の噴射不良が発生することを抑制できる液体噴射装置及び液体噴射装置のクリーニング方法を提供する。
【解決手段】制御部は、クリーニング機構がクリーニングを実行する場合に、そのクリーニングにおいて適用されるクリーニングパターンを、前記液体噴射ヘッド内からのインクの吸引流速に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンの中から選択し、該選択したクリーニングパターンに基づくクリーニングを実行させる。また、制御部は、選択したクリーニングパターンが中クリーニングパターン又は強クリーニングパターンである場合には、クリーニング終了時の起点時刻情報TをEEPROMに記憶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式プリンタなどの液体噴射装置、該液体噴射装置に設けられた液体噴射ヘッドをクリーニングする液体噴射装置のクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドからターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置として、インク(液体)を記録用紙(ターゲット)に対して噴射するインクジェット式プリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)が知られている。このプリンタは、主走査方向に沿って往復移動するキャリッジに搭載された記録ヘッドと、記録用紙を副走査方向に搬送する記録用紙搬送機構とを備え、記録ヘッドには、カートリッジ内から供給されたインクを記録用紙に向けて噴射するためのノズルが形成されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この特許文献1に記載のプリンタは、記録ヘッドのノズル形成面を封止自在なキャップを備えている。そして、このキャップがノズル形成面を封止した状態において吸引ポンプが駆動された場合には、その吸引ポンプの吸引作用によって記録ヘッドのクリーニングが実行されるようになっている。そして、このクリーニングの実行により、記録ヘッド内から増粘したインクや気泡が除去される結果、印刷時におけるインクの吐出不良(噴射不良)が抑制されるようになっている。ちなみに、このプリンタにおいて実行されるクリーニングの種類としては、作業者などによるスイッチ(クリーニング開始手段)の操作などに基づいて実行されるマニュアルクリーニング、予め設定された所定周期毎に実行されるタイマクリーニング、及びカートリッジの交換時に実行される交換クリーニングなどの種々のクリーニングがある。なお、タイマクリーニングとは、時刻情報記憶手段(例えばEEPROM;Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)に記憶された時刻情報が示す時刻から所定時間経過後に実行されるクリーニングのことをいう。
【0004】
そして、特許文献1に記載のプリンタでは、上記各クリーニングのうち何れか一種類のクリーニングが実行された場合、該クリーニング終了時の時刻情報が時刻情報記憶手段に記憶されるようになっている。この時刻情報は、次回のタイマクリーニングが実行されるまでの経過時間のカウント起点となる時刻を示す起点時刻情報であって、クリーニングが実行される度に、そのクリーニング終了時の時刻情報に必ず更新される。そのため、特許文献1に記載のプリンタでは、タイマクリーニング以外のクリーニングが実行された直後にタイマクリーニングが実行されるようなことがなくなることから、タイマクリーニングが必要以上に実行されなくなり、インクの不要な消費が抑制されるようになっている。
【特許文献1】特開2000−289229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記各クリーニングでは、近時、同種のクリーニングを実行する場合でも吸引ポンプによる記録ヘッドからのインクの吸引力に差をもたせた複数種類のクリーニングパターンが設定されることがある。例えばタイマクリーニングでは、インクの吸引力が最も小さい弱パターン、インクの吸引力が中程度の中パターン、及びインクの吸引力が最も大きい強パターンが設定されている。そして、通常は、記録ヘッド内に気泡が発生している場合において、中パターン及び強パターンが実行されたときには、該クリーニングによって記録ヘッド内の気泡が確実に除去される。一方、弱パターンが実行されたときには、ノズル開口近傍の増粘したインクや異物を除去するという具合に、各クリーニングパターンでの記録ヘッドからのインクの吸引力に差がもたされている。
【0006】
ところが、特許文献1に記載のプリンタでは、時刻情報記憶手段に記憶される起点時刻情報は、上述したような弱パターンのクリーニングが実行された場合においても、該弱パターンに基づくクリーニング終了時の時刻情報に更新され、その更新時点から再び次回のタイマクリーニングを実行するまでの経過時間の計測が開始されていた。したがって、その後にマニュアルクリーニング及び交換クリーニングが実行されない場合には、次回のタイマクリーニングが実行されるまでの期間が長くなるため、記録ヘッド内に気泡が残存している場合、該気泡が時間経過と共に大きくなってしまうおそれがあった。その結果、そのように大きく成長した気泡により記録ヘッド内でのインクの流動性が阻害され、印刷時におけるインクの吐出不良が発生してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体噴射ヘッドからの液体の吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンが設定された場合でも、液体噴射ヘッドからの液体の噴射不良が発生することを抑制できる液体噴射装置及び液体噴射装置のクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、液体噴射ヘッドのノズル形成面に形成されたノズルから液体を吸引することにより前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実行するクリーニング手段を備え、該クリーニング手段により予め設定された所定時間経過毎に実行されるタイマクリーニングを含む少なくとも一種類のクリーニングが実行される液体噴射装置であって、前記クリーニング手段が実行するクリーニングでのクリーニングパターンに関して、前記液体噴射ヘッドからの液体の吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンを記憶するパターン記憶手段と、前記クリーニング手段により次回のタイマクリーニングが実行されるまでの経過時間のカウント起点となる時刻を示す起点時刻情報が記憶される時刻情報記憶手段と、前記クリーニング手段がクリーニングを実行する場合に、そのクリーニングにおけるクリーニングパターンを前記パターン記憶手段に記憶された前記各クリーニングパターンの中から選択するパターン選択手段と、該パターン選択手段により選択されたクリーニングパターンに基づいたクリーニングが実行されるように前記クリーニング手段を制御すると共に、前記選択されたクリーニングパターンが、前記各クリーニングパターンのうち前記液体噴射ヘッドのノズルからの液体の吸引力が相対的に大きい設定のクリーニングパターンである場合に、該クリーニングパターンに基づくクリーニング終了時の時刻情報を前記時刻情報記憶手段に前記起点時刻情報として記憶させる制御手段とを備えた。
【0009】
この発明によれば、複数種類のクリーニングパターンのうち、液体噴射ヘッドからの液体の吸引力が相対的に大きい設定のクリーニングパターンに基づいたクリーニングが実行された場合にのみ、該クリーニング終了時の時刻情報が時刻情報記憶手段に起点時刻情報として記憶される。すなわち、液体噴射ヘッドからの液体の吸引力が相対的に小さいクリーニングパターン(所謂、弱パターン)に基づいたクリーニングが実行された場合には、時刻情報記憶手段に記憶されている起点時刻情報が更新されることはない。そのため、そのような弱パターンに基づいたクリーニングが終了した後においてタイマクリーニング以外のクリーニングが一回も実行されなかったとしても、時刻情報記憶手段が前述した弱パターンのクリーニング終了時には更新することなく記憶している起点時刻情報が示す時刻から所定時間経過後にはタイマクリーニングが確実に実行される。そして、該タイマクリーニングを実行することにより、液体噴射ヘッド内において気泡が大きく成長することを抑制できる結果、印刷時における液体の噴射不良が発生してしまうことが抑制される。したがって、液体噴射ヘッドからの液体の吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンが設定された場合でも、液体噴射ヘッドからの液体の噴射不良が発生することを抑制できる。
【0010】
本発明の液体噴射装置において、前記クリーニング手段には、前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止自在な封止手段と、該封止手段が前記ノズル形成面を封止した状態において前記ノズル形成面のノズルから液体を吸引するために駆動される吸引手段とが設けられている。
【0011】
この発明によれば、封止手段によってノズル形成面を封止した状態で吸引手段を駆動させることにより、クリーニングが実行される。したがって、吸引手段の吸引力で発生した負圧に基づき液体噴射ヘッドから液体が確実に吸引される。
【0012】
本発明の液体噴射装置において、前記クリーニング手段は、クリーニング開始の契機を付与するクリーニング開始手段が操作された場合に実行されるマニュアルクリーニングと、前記時刻情報記憶手段に記憶された起点時刻情報が示す時刻から前記所定時間経過後に実行されるタイマクリーニングと、前記液体噴射ヘッドのノズルへ供給する液体を貯留した液体貯留手段の着脱交換時に実行される交換クリーニングとがそれぞれ実行可能とされている。
【0013】
この発明によれば、タイマクリーニング以外にマニュアルクリーニングと交換クリーニングとが実行可能とされている。そのため、最後にクリーニングが実行されてから所定時間が経過する前でも、必要に応じて適宜にタイマクリーニング以外のクリーニングを実行することが可能となる。
【0014】
本発明の液体噴射装置において、前記パターン選択手段は、前回実行されたクリーニングのクリーニングパターンとは異なるクリーニングパターンを選択する。
この発明によれば、次回のクリーニングを実行する際には、複数あるクリーニングパターンの中から前回のクリーニングにおけるクリーニングパターン以外のクリーニングパターンに基づいたクリーニングが実行される。したがって、クリーニングが複数回に亘って実行された場合において、液体噴射ヘッド内から気泡が除去されないまま残存してしまうようなことがなくなる一方、液体噴射ヘッド内から液体を過剰に吸引して不必要に消費してしまうようなこともなくなる。
【0015】
本発明の液体噴射装置において、前記各クリーニングパターンは、前記液体噴射ヘッドからの液体の吸引力に対応する、前記液体噴射ヘッドからの液体の吸引流速、前記液体噴射ヘッドからの液体の単位時間当たりの吸引量、及びクリーニング時における前記液体噴射ヘッドからの液体の総吸引量のうち何れか一つに基づいて設定されている。
【0016】
一般に、液体噴射ヘッドからの液体の吸引力の差とは、液体噴射ヘッド内からの気泡の排出性の差と言い換えることができる。この点、本発明では、各クリーニングパターンが液体噴射ヘッドからの液体の吸引流速の速さに基づいて設定されている場合には、相対的に吸引流速が速いクリーニングパターンに基づくクリーニングが実行されたときに、液体噴射ヘッド内から気泡を液体と共に排出することが可能となる。また、各クリーニングパターンが液体噴射ヘッドからの液体の単位時間当たりの吸引量に基づいて設定されている場合には、相対的に単位時間当たりの吸引量が多いクリーニングパターンに基づくクリーニングが実行されたときに、液体噴射ヘッド内から気泡を液体と共に排出することが可能となる。また、各クリーニングパターンがクリーニング時における液体噴射ヘッドからの液体の総吸引量に基づいて設定されている場合には、相対的にクリーニング時における液体の総吸引量が多いクリーニングパターンに基づくクリーニングが実行されたときに、液体噴射ヘッド内から気泡を液体と共に排出することが可能となる。
【0017】
一方、本発明の液体噴射装置のクリーニング方法は、液体噴射ヘッドのノズル形成面に形成されたノズルから液体を吸引するクリーニングに関して、予め設定された所定時間経過毎に実行されるタイマクリーニングを含む少なくとも一種類のクリーニングを実行する液体噴射装置のクリーニング方法であって、前記クリーニングを実行する場合に、そのクリーニングにおいて適用されるクリーニングパターンを、前記液体噴射ヘッドからの液体の吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンの中から選択し、該選択したクリーニングパターンに基づくクリーニングを実行すると共に、前記選択したクリーニングパターンが、前記各クリーニングパターンのうち前記液体噴射ヘッドのノズルからの液体の吸引力が相対的に大きい設定のクリーニングパターンである場合には、前記クリーニング終了時の時刻情報が示す時刻から所定時間経過後に前記タイマクリーニングを実行するようにした。
【0018】
この発明によれば、複数種類のクリーニングパターンのうち、液体噴射ヘッドからの液体の吸引力が相対的に大きい設定のクリーニングパターンに基づいたクリーニングが実行された場合にのみ、該クリーニング終了時の時刻情報が時刻情報記憶手段に起点時刻情報として記憶される。すなわち、液体噴射ヘッドからの液体の吸引力が相対的に小さいクリーニングパターン(所謂、弱パターン)に基づいたクリーニングが実行された場合には、時刻情報記憶手段に記憶されている起点時刻情報が更新されることはない。そのため、そのような弱パターンに基づいたクリーニングが終了した後においてタイマクリーニング以外のクリーニングが一回も実行されなかったとしても、時刻情報記憶手段が前述した弱パターンのクリーニング終了時には更新することなく記憶している起点時刻情報が示す時刻から所定時間経過後にはタイマクリーニングが確実に実行される。そして、該タイマクリーニングを実行することにより、液体噴射ヘッド内において気泡が大きく成長することを抑制できる結果、印刷時における液体の噴射不良が発生してしまうことが抑制される。したがって、液体噴射ヘッドからの液体の吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンが設定された場合でも、液体噴射ヘッドからの液体の噴射不良が発生することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を、インクジェット式プリンタに具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は図1に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0020】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ11は、平面視矩形状をなすフレーム12を備えている。フレーム12内には、左右方向に延びるプラテン13が設けられると共に、該プラテン13上には、フレーム12外の紙送りモータ14を有して構成された紙送り機構により記録用紙Pが給送されるようになっている。また、フレーム12内におけるプラテン13の上方には、該プラテン13の長手方向(左右方向)と平行に棒状のガイド部材15が架設されている。
【0021】
このガイド部材15には、キャリッジ16が、該ガイド部材15に対し、その軸線方向(左右方向)への往復移動可能に支持されている。キャリッジ16は、フレーム12内の後面に設けられた一対のプーリ17a間に張設されたタイミングベルト17を介してキャリッジモータ18に連動されている。そして、キャリッジ16は、キャリッジモータ18の駆動により、ガイド部材15に沿って往復移動されるようになっている。
【0022】
キャリッジ16の下面には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド19が搭載されると共に、この記録ヘッド19の下面は、図2に示すように、複数(図2では4つのみ図示)のノズル20が形成されたノズル形成面19aとされている。また、キャリッジ16における記録ヘッド19の上側には、液体貯留手段としてのカートリッジ21が着脱可能に搭載されると共に、カートリッジ21内には、液体としてのインクがそれぞれ記録ヘッド19に供給可能に収容されている。
【0023】
そして、カートリッジ21内のインクは、記録ヘッド19に備えられた図示しない圧電素子の駆動により、カートリッジ21から記録ヘッド19へと供給され、該記録ヘッド19の各ノズル20からプラテン13上に給送された記録用紙Pに吐出(噴射)されるようになっている。すなわち、記録用紙Pに対して印刷が実行されるようになっている。また、フレーム12内の右端部に位置する非印刷領域に設けられたホームポジション領域付近には、非印刷時に記録ヘッド19のノズル形成面19aをクリーニングするためのクリーニング機構(クリーニング手段)23が設けられている。
【0024】
次に、クリーニング機構23について図2に基づき以下説明する。
図2に示すように、クリーニング機構23は、有底四角箱状をなすキャップ(封止手段)24と、該キャップ24を上下方向に移動させるための昇降装置25とを備えている。そして、このクリーニング機構23は、キャリッジ16をホームポジション領域に移動させた場合に、キャップ24を昇降装置25により上昇させることで、記録ヘッド19のノズル形成面19a(各ノズル20)をキャップ24により封止するようになっている。また、キャップ24の底壁からは突部27が下方に向かって突設されると共に、該突部27内には、キャップ24内からインクを排出するための排出路27aが上下方向に沿うように貫通形成されている。
【0025】
突部27には、可撓性材料よりなる排出チューブ29の上端部29aが接続されると共に、該排出チューブ29の下端部29bは、廃インクタンク30内に挿入されている。また、キャップ24と廃インクタンク30との間における排出チューブ29の中間部には、吸引ポンプ31が配設されている。そして、吸引ポンプ31が駆動した場合には、記録ヘッド19の各ノズル20からインクが吸引されて排出チューブ29内を流動し、該排出チューブ29の下端部29bから廃インクタンク30内に排出されるようになっている。なお、廃インクタンク30内には、多孔質部材からなる廃インク吸収材32が収容されている。
【0026】
次に、上記インクジェット式プリンタ11の電気的構成について図3に基づき以下説明する。
図3に示すように、インクジェット式プリンタ11は、制御手段としての制御部40を備えると共に、該制御部40には、クリーニング機構23によるクリーニング開始の契機を付与するために操作される操作スイッチ(クリーニング開始手段)SWが電気的に接続されている。この操作スイッチSWは、例えばユーザにより操作された場合にクリーニング開始の契機となる操作信号を制御部40に出力するようになっている。また、制御部40には、紙送りモータ14、キャリッジモータ18、昇降装置25及び吸引ポンプ31などが電気的に接続されている。そして、これら各モータ14,18、昇降装置25及び吸引ポンプ31などは、それぞれの駆動状態が制御部40により制御されるようになっている。さらに、制御部40は、外部装置としてのホストコンピュータ50と通信可能な状態で接続されている。
【0027】
このホストコンピュータ50は、本体51と、キーボードやマウスなどの入力装置52と、表示部53とを備えている。本体51では、プログラムとCPU(図示略)とにより、コンピュータプログラムとしてのプリンタドライバ54が構築されている。このプリンタドライバ54は、画像データや文書データを印刷データに変換する処理、及び印刷データに用紙枚数や用紙サイズなどの設定情報を付する処理などを実行するようになっている。そして、プリンタドライバ54で変換された印刷データは、ホストコンピュータ50からインクジェット式プリンタ11に送信され、該インクジェット式プリンタ11のインターフェース41にて受信される。そして、制御部40は、受信した印刷データに基づいた印刷を記録用紙Pに対して行うために、紙送りモータ14やキャリッジモータ18などの駆動制御を行うようになっている。
【0028】
また、制御部40内には、インターフェース41、CPU42、ROM43、RAM44、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)45、及びRTC(Real Time Clock)46などが設けられている。ROM43には、インクジェット式プリンタ11を制御するための各制御プログラム、及び各種情報(後述する各クリーニングパターンを示すテーブル、及び所定時間)などが記憶されている。RAM44には、インクジェット式プリンタ11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記憶されるようになっている。
【0029】
EEPROM45には、インクジェット式プリンタ11が電源オフ状態にされたとしても消去されるべきではない各種の情報(後述する起点時刻情報やクリーニングカウンタなど)が記憶されるようになっている。したがって、本実施形態では、EEPROM45を備える制御部40が、時刻情報記憶手段としても機能するようになっている。また、RTC46は、インクジェット式プリンタ11が電源オン状態である間は勿論のこと、インクジェット式プリンタ11が電源オフ状態となってからも図示しないコンデンサからの給電がある間は、時刻を計時可能とされている。そして、上述したホストコンピュータ50から例えば印刷データの受信時などにその時点の現在時刻を示す時刻情報を制御部40が受信した場合、制御部40では、その受信した時刻情報に基づきRTC46にて計時される時刻が補正されるようになっている。
【0030】
次に、ROM43に記憶されるテーブルについて図4に基づき以下説明する。
図4に示すテーブルには、本実施形態のクリーニング機構23が実行するクリーニングにおいて適用される複数種類(本実施形態では7種類)のクリーニングパターンが示されている。すなわち、ROM43の所定領域には、各クリーニング(マニュアルクリーニング、タイマクリーニング、交換クリーニング)の種類毎に各クリーニングパターンが分類して記憶されている。したがって、本実施形態では、ROM43を備える制御部40が、パターン記憶手段としても機能するようになっている。
【0031】
具体的には、マニュアルクリーニングは、操作スイッチSWが操作された場合に実行されるクリーニングであって、吸引ポンプ31の駆動に基づいた記録ヘッド19からのインクの吸引力(本実施形態では、吸引流速)に差を持たせることにより、複数種類(本実施形態では3種類)のマニュアルクリーニングパターンMCL1,MCL2,MCL3が設定されている。すなわち、第1マニュアルクリーニングパターンMCL1は、各マニュアルクリーニングパターンMCL1〜MCL3のうち、記録ヘッド19からのインクの吸引流速が最も遅い設定のパターンである。また、第2マニュアルクリーニングパターンMCL2は、各マニュアルクリーニングパターンMCL1〜MCL3のうち、記録ヘッド19からのインクの吸引流速が中程度の設定のパターンである。そして、第3マニュアルクリーニングパターンMCL3は、各マニュアルクリーニングパターンMCL1〜MCL3のうち、記録ヘッド19からのインクの吸引流速が最も速い設定のパターンである。なお、本実施形態では、第2マニュアルクリーニングパターンMCL2及び第3マニュアルクリーニングパターンMCL3が、吸引ポンプ31の駆動に起因した記録ヘッド19からのインクの吸引流速(吸引力)が相対的に速い(大きい)設定のクリーニングパターンとされている。
【0032】
また、タイマクリーニングは、EEPROM45に記憶された起点時刻情報T(図5参照)が示す時刻から所定時間(例えば7日間)経過後に実行されるクリーニングである。そして、タイマクリーニングは、吸引ポンプ31の駆動に基づいた記録ヘッド19からのインクの吸引力(吸引流速)に差を持たせることにより、複数種類(本実施形態では3種類)のタイマクリーニングパターンTCL1,TCL2,TCL3が設定されている。すなわち、第1タイマクリーニングパターンTCL1は、各タイマクリーニングパターンTCL1〜TCL3のうち、記録ヘッド19からのインクの吸引流速が最も遅い設定のパターンである。また、第2タイマクリーニングパターンTCL2は、各タイマクリーニングパターンTCL1〜TCL3のうち、記録ヘッド19からのインクの吸引流速が中程度の設定のパターンである。そして、第3タイマクリーニングパターンTCL3は、各タイマクリーニングパターンTCL1〜TCL3のうち、記録ヘッド19からのインクの吸引流速が最も速い設定のパターンである。なお、本実施形態では、第2タイマクリーニングパターンTCL2及び第3タイマクリーニングパターンTCL3が、吸引ポンプ31の駆動に起因した記録ヘッド19からのインクの吸引流速(吸引力)が相対的に速い(大きい)設定のクリーニングパターンとされている。
【0033】
さらに、交換クリーニングは、カートリッジ21の着脱交換時に実行されるクリーニングであって、一種類の交換クリーニングパターンCCLが設定されている。この交換クリーニングパターンCCLは、上述した第3マニュアルクリーニングパターンMCL3及び第3タイマクリーニングパターンTCL3と同程度の流速でインクを吸引することが可能に設定されている。したがって、本実施形態では、交換クリーニングパターンCCLも、吸引ポンプ31の駆動に起因した記録ヘッド19からのインクの吸引流速(吸引力)が相対的に速い(大きい)設定のクリーニングパターンとされている。
【0034】
上記各クリーニングパターンMCL1〜MCL3,TCL1〜TCL3,CCLは、各パターンに基づくクリーニングが実行された場合における記録ヘッド19からのインクの吸引流速(吸引力)の差に応じて、3つに分類可能である。すなわち、第1マニュアルクリーニングパターンMCL1と第1タイマクリーニングパターンTCL1とは、記録ヘッド19からのインクの吸引流速が遅い設定であることから弱クリーニングパターンに分類される。第2マニュアルクリーニングパターンMCL2と第2タイマクリーニングパターンTCL2とは、記録ヘッド19からのインクの吸引流速が中程度の設定であることから中クリーニングパターンに分類される。そして、第3マニュアルクリーニングパターンMCL3と第3タイマクリーニングパターンTCL3と交換クリーニングパターンCCLとは、記録ヘッド19からのインクの吸引流速が最も速い設定であることから強クリーニングパターンに設定される。
【0035】
なお、弱クリーニングパターンに基づくクリーニングが実行された場合には、吸引ポンプ31の駆動によるインクの吸引力がそれほど強くないため、もし仮に記録ヘッド19内に気泡が発生している場合、該気泡がインクと共にキャップ24内に吐出されずに残存することがあり得る。その一方、中クリーニングパターン又は強クリーニングパターンに基づくクリーニングが実行された場合には、吸引ポンプ31によるインクの吸引力が十分に強いため、もし仮に記録ヘッド19内に気泡が発生していたとしても、該気泡はインクと共にキャップ24内へ確実に吐出される。
【0036】
次に、本実施形態の制御部40が実行する制御処理ルーチンのうち、クリーニング機構23にクリーニングを実行させるためのクリーニング処理ルーチンについて図5に基づき以下説明する。
【0037】
さて、制御部40は、所定周期毎(例えば、0.1秒毎)にクリーニング処理ルーチンを実行する。そして、このクリーニング処理ルーチンにおいて、制御部40は、キャリッジ16がホームポジション領域に位置しているか否かを判定する(ステップS10)。この判定結果が否定判定である場合、制御部40は、キャリッジ16が印刷領域を左右方向に沿って移動中であるものと判断し、クリーニング処理ルーチンを終了する。一方、ステップS10の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、カートリッジ21が交換されたか否かを判定する(ステップS11)。この判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、カートリッジ21が着脱交換されたものと判断し、その処理を後述するステップS20に移行する。
【0038】
一方、ステップS11の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、操作スイッチSWが操作されたか否かを判定する(ステップS12)。すなわち、制御部40は、操作スイッチSWからの操作信号が入力されたか否かを判定する。そして、ステップS12の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、その処理を後述するステップS14に移行する。一方、ステップS12の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、EEPROM45から起点時刻情報TをRAM44に読み出すと共に、RTC46が計時している時刻をRAM44に読み出し、EEPROM45から読み出した起点時刻情報Tが示す時刻から予め設定された所定時間KTTCLが経過したか否かを判定する(ステップS13)。この所定時間KTTCLは、最後に中クリーニングパターン又は強クリーニングパターンに基づくクリーニングが実行されてから記録ヘッド19内に気泡が発生することに起因してインクの吐出不良が発生し得るまでの時間であって、予め実験やシミュレーションなどによって設定される。
【0039】
そして、ステップS13の判定結果が否定判定である場合、制御部40は、EEPROM45に記憶された起点時刻情報Tが示す時刻からの経過時間が所定時間KTTCLに達していないものと判断し、クリーニング処理ルーチンを終了する。一方、ステップS13の判定結果が肯定判定である場合、制御部40は、EEPROM45に記憶された起点時刻情報Tが示す時刻からの経過時間が所定時間KTTCLに達したものと判断し、その処理をステップS14に移行する。
【0040】
ステップS14において、制御部40は、EEPROM45からクリーニングカウンタKKを読み出し、該クリーニングカウンタKKが「1」であるか否かを判定する。このクリーニングカウンタKKは、クリーニングを実行させる際に選択するクリーニングパターン(弱,中,強クリーニングパターン)を選択するためのものである。したがって、この点で、本実施形態では、制御部40が、パターン選択手段としても機能する。そして、ステップS14の判定結果が肯定判定(KK=「1」)である場合、制御部40は、弱クリーニングパターンを選択し、該弱クリーニングパターンに基づくクリーニングをクリーニング機構23に実行させる(ステップS15)。
【0041】
すなわち、制御部40は、ステップS12の判定結果が肯定判定であった場合には、ROM43から第1マニュアルクリーニングパターンMCL1を読み出し、該第1マニュアルクリーニングパターンMCL1に基づくマニュアルクリーニングを実行させるべくクリーニング機構23を制御する。また、制御部40は、ステップS13の判定結果が肯定判定であった場合には、ROM43から第1タイマクリーニングパターンTCL1を読み出し、該第1タイマクリーニングパターンTCL1に基づくタイマクリーニングを実行させるべくクリーニング機構23を制御する。
【0042】
続いて、制御部40は、クリーニングカウンタKKを「2」にセットする(ステップS16)。すなわち、制御部40は、次回のクリーニングにおいては前回のクリーニング(ステップS15で実行したクリーニング)での弱クリーニングパターン(第1タイマクリーニングパターンTCL1等)とは異なるクリーニングパターンである中クリーニングパターンが選択されるように、クリーニングカウンタKKを「2」にセットする。そして、その後、制御部40は、クリーニング処理ルーチンを終了する。
【0043】
その一方で、ステップS14の判定結果が否定判定(KK≠「1」)である場合、制御部40は、クリーニングカウンタKKが「2」であるか否かを判定する(ステップS17)。この判定結果が否定判定(KK=「3」)である場合、制御部40は、その処理を後述するステップS20に移行する。一方、ステップS17の判定結果が肯定判定(KK=「2」)である場合、制御部40は、中クリーニングパターンを選択し、該中クリーニングパターンに基づくクリーニングを実行する(ステップS18)。
【0044】
すなわち、制御部40は、ステップS12の判定結果が肯定判定であった場合には、ROM43から第2マニュアルクリーニングパターンMCL2を読み出し、該第2マニュアルクリーニングパターンMCL2に基づくマニュアルクリーニングを実行させるべくクリーニング機構23を制御する。また、制御部40は、ステップS13の判定結果が肯定判定であった場合には、ROM43から第2タイマクリーニングパターンTCL2を読み出し、該第2タイマクリーニングパターンTCL2に基づくタイマクリーニングを実行させるべくクリーニング機構23を制御する。
【0045】
続いて、制御部40は、クリーニングカウンタKKを「3」にセットする(ステップS19)。すなわち、制御部40は、次回のクリーニングにおいては前回のクリーニング(ステップS18で実行したクリーニング)での中クリーニングパターン(第2タイマクリーニングパターンTCL2等)とは異なるクリーニングパターンである強クリーニングパターンが選択されるように、クリーニングカウンタKKを「3」にセットする。そして、その後、その処理を後述するステップS22に移行する。
【0046】
ステップS20において、制御部40は、強クリーニングパターンを選択し、該強クリーニングパターンに基づくクリーニングを実行する(ステップS20)。すなわち、制御部40は、ステップS11の判定結果が肯定判定である場合には、ROM43から交換クリーニングパターンCCLを読み出し、該交換クリーニングパターンCCLに基づく交換クリーニングを実行させるべくクリーニング機構23を制御する。また、ステップS12の判定結果が肯定判定であった場合には、ROM43から第3マニュアルクリーニングパターンMCL3を読み出し、該第3マニュアルクリーニングパターンMCL3に基づくマニュアルクリーニングを実行させるべくクリーニング機構23を制御する。
【0047】
そして、制御部40は、ステップS13の判定結果が肯定判定であった場合には、ROM43から第3タイマクリーニングパターンTCL3を読み出し、該第3タイマクリーニングパターンTCL3に基づくタイマクリーニングを実行させるべくクリーニング機構23を制御する。
【0048】
続いて、制御部40は、クリーニングカウンタKKを「1」にセットする(ステップS21)。すなわち、制御部40は、次回のクリーニングにおいては前回のクリーニング(ステップS20で実行したクリーニング)での強クリーニングパターン(第3タイマクリーニングパターンTCL3等)とは異なるクリーニングパターンである弱クリーニングパターンが選択されるように、クリーニングカウンタKKを「1」にセットする。そして、その後、その処理を後述するステップS22に移行する。
【0049】
ステップS22において、制御部40は、ステップS18又はステップS20にて設定したクリーニングパターンに基づくクリーニングが終了したか否かを判定する。この判定結果が否定判定である場合、制御部40は、クリーニング機構23によるクリーニングが未だ実行中であるものと判断し、ステップS22の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS22の判定処理を繰り返し実行する。一方、ステップS22の判定結果が肯定判定になった場合、制御部40は、ホストコンピュータ50側からインターフェース41を介して現在時刻を示す時刻情報を受信し、該受信した時刻情報を起点時刻情報TとしてEEPROM45の所定領域に記憶させる(ステップS23)。その後、制御部40は、クリーニング処理ルーチンを終了する。
【0050】
次に、本実施形態のインクジェット式プリンタ11のクリーニング方法について、図6に基づき以下説明する。なお、カートリッジ21が交換されてから所定時間KTTCLが経過する前に操作スイッチSWが操作されたものとする。
【0051】
さて、カートリッジ21が、インクの貯留量が残り僅かとなった旧いカートリッジ21からインクが充分に充填された新しいカートリッジ21に交換されると、クリーニング機構23は、交換クリーニングパターンCCLに基づく交換クリーニングを実行する。すなわち、昇降装置25の駆動に基づき上昇したキャップ24が、ホームポジション領域に位置する記録ヘッド19のノズル形成面19aを封止する。この状態で吸引ポンプ31が駆動し、記録ヘッド19内からインクがキャップ24内に吐出され、該吐出されたインクが排出路27a及び排出チューブ29を介して廃インクタンク30内に排出される。ここで、もし仮に記録ヘッド19内に気泡が発生していたとすると、交換クリーニングパターンCCLは強クリーニングパターンであるため、記録ヘッド19内の気泡は、吸引ポンプ31の吸引力に起因した記録ヘッド19内におけるインクの流動によって、インクと共にキャップ24内に吐出される。
【0052】
すると次に、図6に示すように、制御部40内では、クリーニングカウンタKKが「1」にセットされると共に、交換クリーニングパターンCCLが強クリーニングパターンであるため、EEPROM45に記憶される起点時刻情報Tが交換クリーニングパターンCCLに基づくクリーニングの終了時の起点時刻情報Tに更新される。そして、新たにEEPROM45に記憶された起点時刻情報Tが示す時刻から所定時間KTTCLが経過する前に操作スイッチSWが操作されると、クリーニング機構23は、第1マニュアルクリーニングパターンMCL1に基づくマニュアルクリーニングを実行する。
【0053】
すると、このマニュアルクリーニングの実行により、記録ヘッド19の各ノズル20の開口付近に付着した付着物(溶媒が揮発して増粘したインクなど)が吸引ポンプ31の駆動により廃インクタンク30内に排出される。その一方で、この場合のマニュアルクリーニングにおける第1マニュアルクリーニングパターンMCL1は弱クリーニングパターンである。そのため、記録ヘッド19内に気泡が発生している場合、吸引ポンプ31の駆動に基づく記録ヘッド19内におけるインクの流速が遅いことに起因して、該気泡が記録ヘッド19内のインクと共にキャップ24内に吐出されずに記録ヘッド19内に残存することもあり得る。そして、制御部40内では、クリーニングカウンタKKが「2」にセットされる一方、EEPROM45に記憶される起点時刻情報Tは、第1マニュアルクリーニングパターンMCL1は弱クリーニングパターンであるため、クリーニング終了時の時刻情報に更新されない。
【0054】
そして、EEPROM45に記憶された起点時刻情報Tが示す時刻から所定時間KTTCLが経過すると、クリーニングカウンタKKが「2」にセットされていることから、クリーニング機構23は、第2タイマクリーニングパターンTCL2に基づくタイマクリーニングを実行する。第2タイマクリーニングパターンTCL2は中クリーニングパターンであるため、ここでのクリーニングでは、記録ヘッド19内に気泡が発生していた場合には、吸引ポンプ31の吸引力に起因した記録ヘッド19内におけるインクの流動によって、該気泡が記録ヘッド19内のインクと共にキャップ24内に吐出される。そのため、記録ヘッド19内において気泡が大きく成長してしまった場合と異なり、記録ヘッド19内でのインクの流動性が阻害され、印刷時におけるインクの吐出不良が発生してしまうことが良好に抑制される。すなわち、強クリーニングパターン及び中クリーニングパターンは、記録ヘッド19からの気泡排出性が比較的高いクリーニングパターンということができる一方、弱クリーニングパターンは、気泡排出性が比較的低いクリーニングパターンということができる。
【0055】
また、制御部40内では、クリーニングカウンタKKが「3」にセットされると共に、第2タイマクリーニングパターンTCL2は中クリーニングパターンであるため、EEPROM45に記憶される起点時刻情報Tが第2タイマクリーニングパターンTCL2に基づくクリーニングの終了時の時刻情報に更新される。そして、新たにEEPROM45に記憶された起点時刻情報Tが示す時刻から所定時間KTTCLが経過する前に操作スイッチSWが操作されると、クリーニングカウンタKKが「3」にセットされているため、クリーニング機構23は、第3マニュアルクリーニングパターンMCL3に基づくクリーニングを実行する。すると、制御部40内では、クリーニングカウンタKKが「1」にセットされると共に、EEPROM45に記憶される起点時刻情報Tが第3マニュアルクリーニングパターンMCL3に基づくクリーニングの終了時の時刻情報に更新される。
【0056】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)複数種類(本実施形態では7種類)のクリーニングパターンMCL1〜MCL3,TCL1〜TCL3,CCLのうち、特定のクリーニングパターンMCL2,MCL3,TCL2,TCL3,CCLは、そのクリーニング実行時における記録ヘッド19からのインクの吸引流速(吸引力)が相対的に速い(大きい)設定とされている。そして、それらの特定のクリーニングパターンMCL2,MCL3,TCL2,TCL3,CCLに基づいたクリーニングが実行された場合には、該クリーニング終了時の時刻情報がEEPROM(時刻情報記憶手段)45に起点時刻情報Tとして記憶(更新)される。そのため、クリーニングが終了してから所定時間KTTCLが経過するまでの間にタイマクリーニング以外のクリーニングが一回も実行されなかったとしても、所定時間KTTCL経過後には、タイマクリーニングが確実に実行される。そして、そのタイマクリーニングを実行することにより、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)19内において気泡が大きく成長することを抑制できる結果、印刷時におけるインク(液体)の吐出不良(噴射不良)が発生してしまうことが抑制される。したがって、記録ヘッド19内からのインクの吸引流速に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンMCL1〜MCL3,TCL1〜TCL3,CCLが設定された場合でも、記録ヘッド19からのインクの吐出不良が発生することを抑制できる。
【0057】
(2)キャップ(封止手段)24によって記録ヘッド(液体噴射ヘッド)19のノズル形成面19aを封止した状態で吸引ポンプ(吸引手段)31を駆動させることにより、クリーニングが実行される。したがって、吸引ポンプ31の吸引力でキャップ24内及び排出チューブ29内に発生する負圧に基づき、記録ヘッド19内からインク(液体)を確実に吸引できる。
【0058】
(3)タイマクリーニング以外にマニュアルクリーニングと交換クリーニングとが実行可能とされている。そのため、最後にクリーニング(中クリーニングパターン又は強クリーニングパターンに基づくクリーニング)が実行されてから所定時間KTTCLが経過する前でも、必要に応じて適宜にタイマクリーニング以外のクリーニングを実行することができる。
【0059】
(4)クリーニングが実行された場合、そのクリーニングでのクリーニングパターンとは異なるクリーニングパターンで次回のクリーニング(本実施形態では、マニュアルクリーニング又はタイマクリーニング)が実行されように、制御部40は、クリーニングカウンタKKを設定する。そのため、次回のクリーニング(マニュアルクリーニング又はタイマクリーニング)時には、複数あるクリーニングパターンの中から前回のクリーニングにおけるクリーニングパターン以外のクリーニングパターンに基づいたクリーニングが実行される。したがって、交換クリーニングが連続して実行される場合を除き、クリーニングが複数回に亘って実行された場合において、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)19内から気泡が除去されないまま残存してしまうようなことがなくなる一方、記録ヘッド19内からインクを過剰に吸引して不必要に消費してしまうようなこともなくなる。
【0060】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態(別例)に変更してもよい。
・上記実施形態において、各クリーニングパターンは、記録ヘッド19からのインクの吸引力の差として、記録ヘッド19からのインクの単位時間当たりの吸引量の差に基づいて、強,中,弱パターンを設定するようにしてもよい。この場合、相対的に単位時間当たりの吸引量が多いクリーニングパターンに基づくクリーニングが実行されたときに、記録ヘッド19内から気泡をインクと共に確実に排出させることができる。
【0061】
・また、各クリーニングパターンは、記録ヘッド19からのインクの吸引力の差として、クリーニング時における記録ヘッド19からのインクの総吸引量の差に基づいて、強,中,弱パターンを設定するようにしてもよい。この場合、相対的にクリーニング時におけるインクの総吸引量が多いクリーニングパターンに基づくクリーニングが実行されたときに、記録ヘッド19内から気泡をインクと共に確実に排出させることができる。
【0062】
・上記実施形態において、交換クリーニングのクリーニングパターンについても、記録ヘッド19からのインクの吸引流速に差を持たせることにより、弱・中・強の複数種類を設定するようにしてもよい。この場合、図5に示すフローチャートにおいて、制御部40は、ステップS11の判定結果が肯定判定のとき、その処理をステップS20ではなくステップS14に移行するようにすればよい。
【0063】
・上記実施形態において、タイマクリーニングパターンTCL1〜TCL3を、記録ヘッド19からのインクの吸引流速に差を持たせることにより、3種類以外の複数種類(例えば4種類)設定してもよい。また、タイマクリーニング以外のクリーニングにおいて複数種類のクリーニングパターンが設定されているならば、タイマクリーニングパターンは一種類であってもよい。
【0064】
・同様に、マニュアルクリーニングパターンMCL1〜MCL3を、記録ヘッド19からのインクの吸引流速に差を持たせることにより、3種類以外の複数種類(例えば2種類)設定してもよい。また、マニュアルクリーニング以外のクリーニングにおいて複数種類のクリーニングパターンが設定されているならば、マニュアルクリーニングパターンは一種類であってもよい。
【0065】
・上記実施形態において、マニュアルクリーニングパターンMCL1〜MCL3を設定しなくてもよい。
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンタ11として具体化したが、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造や、有機ELディスプレイ等の画素形成に利用される液体噴射装置に具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態におけるインクジェット式プリンタの概略斜視図。
【図2】本実施形態におけるクリーニング機構の模式図。
【図3】本実施形態における電気的構成を示すブロック回路図。
【図4】各クリーニングパターンを示すテーブル。
【図5】クリーニング処理ルーチンを示すフローチャート。
【図6】EEPROM内でクリーニングカウンタと起点時刻情報とが更新されるタイミングを説明するタイミングチャート。
【符号の説明】
【0067】
11…インクジェット式プリンタ(液体噴射装置)、19…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、19a…ノズル形成面、20…ノズル、21…カートリッジ(液体貯留手段)、23…クリーニング機構(クリーニング手段)、24…キャップ(封止手段)、31…吸引ポンプ(吸引手段)、40…制御部(パターン記憶手段、時刻情報記憶手段、パターン選択手段、制御手段)、50…ホストコンピュータ(外部装置)、KTTCL…所定時間、MCL1〜MCL3,TCL1〜TCL3,CCL…クリーニングパターン、SW…操作スイッチ(クリーニング開始手段)、T…起点時刻情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射ヘッドのノズル形成面に形成されたノズルから液体を吸引することにより前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実行するクリーニング手段を備え、該クリーニング手段により予め設定された所定時間経過毎に実行されるタイマクリーニングを含む少なくとも一種類のクリーニングが実行される液体噴射装置であって、
前記クリーニング手段が実行するクリーニングでのクリーニングパターンに関して、前記液体噴射ヘッドからの液体の吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンを記憶するパターン記憶手段と、
前記クリーニング手段により次回のタイマクリーニングが実行されるまでの経過時間のカウント起点となる時刻を示す起点時刻情報が記憶される時刻情報記憶手段と、
前記クリーニング手段がクリーニングを実行する場合に、そのクリーニングにおけるクリーニングパターンを前記パターン記憶手段に記憶された前記各クリーニングパターンの中から選択するパターン選択手段と、
該パターン選択手段により選択されたクリーニングパターンに基づいたクリーニングが実行されるように前記クリーニング手段を制御すると共に、前記選択されたクリーニングパターンが、前記各クリーニングパターンのうち前記液体噴射ヘッドのノズルからの液体の吸引力が相対的に大きい設定のクリーニングパターンである場合に、該クリーニングパターンに基づくクリーニング終了時の時刻情報を前記時刻情報記憶手段に前記起点時刻情報として記憶させる制御手段とを備えた液体噴射装置。
【請求項2】
前記クリーニング手段には、前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止自在な封止手段と、該封止手段が前記ノズル形成面を封止した状態において前記ノズル形成面のノズルから液体を吸引するために駆動される吸引手段とが設けられている請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記クリーニング手段は、クリーニング開始の契機を付与するクリーニング開始手段が操作された場合に実行されるマニュアルクリーニングと、前記時刻情報記憶手段に記憶された起点時刻情報が示す時刻から前記所定時間経過後に実行されるタイマクリーニングと、前記液体噴射ヘッド内に供給する液体を貯留した液体貯留手段の着脱交換時に実行される交換クリーニングとがそれぞれ実行可能とされている請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記パターン選択手段は、前回実行されたクリーニングのクリーニングパターンとは異なるクリーニングパターンを選択する請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記各クリーニングパターンは、前記液体噴射ヘッドからの液体の吸引力に対応する、前記液体噴射ヘッドからの液体の吸引流速、前記液体噴射ヘッドからの液体の単位時間当たりの吸引量、及びクリーニング時における前記液体噴射ヘッドからの液体の総吸引量のうち何れか一つに基づいて設定されている請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
液体噴射ヘッドのノズル形成面に形成されたノズルから液体を吸引するクリーニングに関して、予め設定された所定時間経過毎に実行されるタイマクリーニングを含む少なくとも一種類のクリーニングを実行する液体噴射装置のクリーニング方法であって、
前記クリーニングを実行する場合に、そのクリーニングにおいて適用されるクリーニングパターンを、前記液体噴射ヘッドからの液体の吸引力に差を持たせた複数種類のクリーニングパターンの中から選択し、該選択したクリーニングパターンに基づくクリーニングを実行すると共に、前記選択したクリーニングパターンが、前記各クリーニングパターンのうち前記液体噴射ヘッドのノズルからの液体の吸引力が相対的に大きい設定のクリーニングパターンである場合には、前記クリーニング終了時の時刻情報が示す時刻から所定時間経過後に前記タイマクリーニングを実行するようにした液体噴射装置のクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−276439(P2007−276439A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226784(P2006−226784)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】