説明

液体漏出防止弁

【課題】液体の噴射後、流路を閉じても、筒体内に残留する液体が装着口から継続的に漏出又は漏洩するのを防止できる液体漏出防止弁及び液体漏出防止方法を提供する。
【解決手段】液体漏出防止構造は、ノズル装着口2を備えた筒体1と、この筒体の軸方向に延びる流路1aを開閉する第1の弁機構と、第1の弁機構よりも作動圧が大きく設定され、流路1a内に気体を導入するための第2の弁機構を備えている。第1の弁機構は、受圧部4aを有する弁体部4と、弁座部5と、弁体部4及び弁座部よりも上流側に配設され、所定の流体圧の解除により閉じ状態とする付勢部材7とを備えている。第2の弁機構は、筒体1の軸方向に対して直交する方向に延び、先端部の開放部12に至る通気流路11aを有するアダプター11と、受圧部18aを有する弁体部14と、弁座部15と、所定の流体圧の解除により開状態とする付勢部材17とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延や連続鋳造過程の冷却ゾーンでの鋼材及び鋳片の冷却などにおいて、冷却水などの液体の供給を停止した際に、配管内や筒体内に残留する液体が継続的にノズル装着口(又は噴射口)から漏出するのを防止するのに有用な液体漏出防止弁(ノズルの漏出防止弁構造又は鋼材冷却ノズルの漏出防止弁)、それを備えたノズル(噴射ノズル又は冷却ノズル)、並びに液体漏出防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延や連続鋳造される鋼材又は鋳片の両面に対して、水を噴射又は噴霧し、鋼材又は鋳片を冷却する方法が知られている。この方法では、通常、鋼材又は鋳片の幅方向に所定間隔をおいて設けられた複数のヘッダと、これらのヘッダにそれぞれ所定間隔毎に取り付けられた複数のノズルと、前記各ヘッダの上流端にそれぞれ連通して接続された分岐部を有し、かつ単一の配管に収束した収束配管と、この収束配管に取り付けられた遮断弁とを備えた冷却装置が利用されている。
【0003】
しかし、遮断弁を閉じて水の噴射を停止しても、配管内の残留水がノズルからしばらく滴下し続ける。この滴下水(水漏れ)は、鋼材を局部的に又は長手方向に筋状に過冷却する。特に、熱間圧延中の鋼材が冷却装置の位置で停止したり揺動しているため、過冷却部が生じやすい。しかも、板厚が薄くなる(例えば、50mm程度にまで薄くなる)につれて、過冷却部が生じやすく、均一な冷却が困難となる。
【0004】
このような水漏れを防止するため、各ノズルの近傍に遮断弁を取り付けることも考えられる。しかし、ノズル周辺は高温で水しぶきが生じるため、電気的に作動する遮断弁を取り付けることができないだけでなく、電磁弁を取り付けたとしても瞬時に流路を遮断できない。そのため、各ノズルに電気的に作動する遮断弁を取り付けることは現実的でない。
【0005】
特許第3617448号公報(特許文献1)には、圧延ラインに沿って設置された冷却装置から前記圧延ライン上の鋼板に向けて冷却水を噴射して、前記鋼板を冷却した後、前記鋼板への冷却水の噴射を停止し、直ちに、複数本のノズルを有し、前記圧延ラインと直交し且つ前記圧延ラインの片側に設置されている水切りノズル群から前記鋼板に向けて流体を噴射して、前記鋼板上面上に残留する残留冷却水を排除する、鋼板の水切り方法が開示されている。特許第3675372号公報(特許文献2)には、圧延ラインの片側に圧延ラインと直交し且つ冷却装置と併設して配置された一斉水切りノズル群により、圧延ライン上の鋼板上面の滞留水を水切りするに際し、最大水切り時間Tを、平均風量密度(Nm/hr・m)との関係で10秒以下とする、高温鋼板の水切り方法が開示されている。
【0006】
特開平9−141322号公報(特許文献3)には、熱間薄板連続圧延ラインのホットラン冷却時に、水と空気を1:5〜1:15の割合で混合して水切りノズルから噴射し、鋼帯上に滞留する冷却水を除去する、鋼帯上冷却水の除去方法が開示されている。
【0007】
これらの水切りノズルでは、鋼材上の残存冷却水は排除できるが、ノズルから水漏れが所定時間に亘り継続する。そのため、依然として過冷却部が生じる。特に、ヘッダに接続された配管の遮断弁を閉じても、この遮断弁の下流側の流路内に水が残存するため、ノズルからの水漏れを短時間内に防止できない。
【0008】
特開平9−52111号公報(特許文献4)には、弁箱に締結されたシリンダとノズルアダプタと、前記シリンダ及びノズルアダプタ内で流体の噴射方向にスライド移動自在なピストン弁体と、シリンダとノズルアダプタとの間の弁開閉部と、前記ピストン弁体を流体圧に抗する方向に付勢して、一定の流体圧内で前記弁開閉部を閉塞状態に維持し、かつ前記一定の流体圧よりも大きな流体圧が作用したとき、前記弁開閉部の開放を許容する付勢機構とを設けたスケール除去用ノズル装置が開示されている。このノズル装置は、前記シリンダの外部より付勢機構室へ貫通した穴と、前記弁箱のベント口の開閉機構とを設け、ベント口開閉機構を閉の状態とした場合は、前記付勢機構及び付勢機構室の内圧力により前記一定の流体圧力よりも大きな流体圧が作用した場合でも前記弁開閉部を閉塞状態に保っている。この文献には、ピストン弁体よりも下流側に位置する付勢機構によりピストン弁体を流体圧に抗する方向に付勢したノズル装置が図示されている。
【0009】
しかし、このノズル装置では、水などの液体を圧延鋼板の表面に噴射した後、前記弁開閉部を閉じても、前記シリンダ及びノズルアダプタ内には液体が残留し、この残留液体がノズルから液体が継続的(又は持続的に)に漏出する。そのため、短時間内に残留液体をノズル装置から排出できず、鋼材に過冷却部が生じるのを有効に防止できない。
【特許文献1】特許第3617448号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第3675372号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平9−141322号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平9−52111号公報(特許請求の範囲、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、液体の噴射後、流路を閉じても、流路内に残存する液体を迅速に排出し、ノズル又はノズル装着口から液体が継続的に漏出又は漏洩するのを防止できる液体漏出防止弁(液体漏出防止弁構造又は鋼材冷却ノズルの漏出防止弁)及び液体漏出防止方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ノズルから流体を噴射した後、遮断弁で液体の供給を閉じても、ノズル又はノズル装着口からの液体の漏出又は漏洩を確実に防止でき、鋼材及び鋳片などの加熱鋼板を均一に冷却するのに有効な液体漏出防止弁(液体漏出防止弁構造又は鋼材冷却ノズルの漏出防止弁)及び液体漏出防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、筒体の流路を開閉するバルブ(弁機構)を、流路内に進退動可能に配設され、受圧部を有する弁体部と、この弁体部と関連して流路を開閉するための弁座部と、前記弁体部及び弁座部よりも上流側に配設され、かつ前記弁体部を上流方向に付勢するための付勢部材とで構成すると、付勢部材が弁体部及び弁座部よりも上流側に位置するため、装着口と弁機構との間の容積が小さく、残存する液体を少なくでき、液体の漏れを抑制できること、このような弁機構に加えて、前記弁機構が閉じた状態で、装着口と上記弁機構との間の流路と通気可能な通気手段(通気流路、加圧気体により強制的に残留水を追い出す加圧気体供給手段や第2の弁機構)をさらに設けると、液体を噴射した後、流路を閉じても、筒体内(流路内)の残留水を迅速に排出し、筒体内の液体が装着口から漏出又は漏洩するのを有効に防止できることを見いだし、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の液体漏出防止弁(又はノズルの液体漏出防止構造)は、ノズル装着口(例えば、少なくとも液体を噴射するためのノズルが装着可能な装着口)を備えた筒体(例えば、弁箱)と、この筒体の軸方向に延び、かつ前記装着口に通じる流路を開閉するための第1の弁機構(弁構造)とを備え、この流路に溜まった液体が前記装着口から漏出又は漏洩するのを防止するための構造であって、前記第1の弁機構が、前記流路内に進退動可能に配設された弁体部と、この弁体部の進退動に伴って前記弁体部と接触可能な弁座部と、前記弁体部及び弁座部よりも上流側に配設され、かつ前記弁体部を上流方向に付勢するための付勢部材とを備えている。このような構造では、付勢部材が弁座部よりも上流側に位置するため、装着口と弁機構との間の容積が小さく、残存する液体を少なくできる。そのため、液体の漏れを抑制でき、ノズル又はノズル装着口から液体が継続的に漏出するのを抑制できる。
【0014】
この液体漏出防止弁(又はノズルの液体漏出防止構造)において、第1の弁機構(弁構造)は、前記流路内に進退動可能に配設され、受圧部を有する弁体部と、この弁体部の進退動に伴って前記弁体部と接触可能な弁座部と、前記弁座部よりも上流側に配設され、かつ所定の流体圧の作用により前記弁座部に対して前記弁体部を離反させて開状態とし、前記流体圧の解除により前記弁座部に対して前記弁体部を押圧して閉じ状態とする(例えば、前記弁体部を上流方向に付勢する)ための付勢部材とを備えていてもよい。また、第1の弁機構は、筒体の軸方向に延びる流路内に進退動可能に配設されたシリンダ状の弁棒と、この弁棒の下流部に形成され、かつ下流方向にいくにつれて外径が大きくなる(流路を狭める)方向に傾斜した周壁部で形成された弁体部と、筒体の内壁に形成され、かつ前記周壁部に対応して上流方向にいくにつれて内径が小さくなる(流路を狭める)方向に傾斜した壁部で形成された弁座部と、この弁座部よりも上流側の筒体に配設され、かつ弁座部に対して弁体部を付勢(又は押圧)するための付勢部材とを備えていてもよい。このような傾斜壁部で弁体及び弁座を構成すると、両者の接触面積で大きく、シール性を有効に向上できる。なお、第1の弁機構において、付勢部材(スプリングなど)の伸長により弁体部を上流方向に引き寄せて弁体部を弁座部に対して付勢(又は押圧)してもよく、付勢部材(スプリングなど)の収縮により弁体部を弁座部から離反させてもよい。
【0015】
さらに、液体漏出防止弁(又はノズルの液体漏出防止構造)は、第1の弁機構が閉じた状態で、装着口と第1の弁機構との間の流路(以下、単に主流路という場合がある)と通気可能な通気手段を備えていてもよい。この通気手段は、通常、少なくとも、前記主流路と通気可能な通気流路(主流路に気体を導入可能な空気孔など)を備えている。通気手段は、第1の弁機構が閉じた状態で、前記主流路内に気体を導入するための第2の弁機構で構成してもよい。第2の弁機構は、前記主流路に通じる通気流路(分岐流路)を開閉する。このような構造では、第1の弁機構が閉じた状態では一端が閉じた状態となるため、主流路内での液体の自由な流動が抑制される場合があるものの、第2の弁機構により前記主流路内に気体を導入できるため、第1の弁機構が閉じた状態で主流路内に貯まった液体をノズル又はノズル装着口から効率よく排出でき、ノズル又はノズル装着口から長時間に亘る液体漏れを有効に防止できる。さらに、通気手段は、主流路と通気可能な通気流路と、第1の弁機構が閉じた状態で、この通気流路に加圧気体を供給可能な加圧気体供給手段とを備えていてもよい。このような液体漏出弁では、前記主流路内の残存液体を加圧気体(加圧空気など)により強制的に追い出すことができる。
【0016】
第2の弁機構は、第1の弁機構の下流側において筒体の軸方向に対して交差する方向に形成され、かつ筒体の主流路に通じる通気流路(分岐流路)と、第1の弁機構の付勢部材の伸縮動に連動してスライド可能であり、かつ前記通気流路(分岐流路)を開閉可能なスライド部材とを備えていてもよい。
【0017】
第2の弁機構は、筒体の軸方向に対して交差する方向に配設され、かつ筒体の主流路に通じて、先端部の開放部に至る通気流路を有するアダプターと、この通気流路内に摺動可能に配設された弁体部と、前記弁体部の摺動に伴って接触可能な弁座部と、所定の流体圧の作用により前記弁座部に対して前記弁体部を押圧して閉じ状態とし、前記流体圧の解除により前記弁座部に対して前記弁体部を離反させて開状態とする(例えば、前記弁体部を上流方向に付勢する)ための第2の付勢部材とを備えていてもよい。より具体的には、第2の弁機構(弁構造)は、筒体の軸方向に対して直交する方向に配設され、かつ筒体の主流路に通じて、先端部の開放部に至る通気流路を有する筒状アダプターと、この筒状アダプター内で摺動可能に配設され、かつ先端部に弁体部(頭部)を有するピストン部材と、前記アダプターの内壁に形成され、前記ピストン部材の摺動に伴って前記弁体部(頭部)が接触可能な弁座部と、この弁座部に対して前記弁体部(ピストン部材)を付勢するための付勢部材とを備えていてもよい。なお、第2の弁機構においては、第1の弁機構とは逆に、付勢部材(スプリングなど)の伸長により弁体部を弁座部から離反させてもよく、付勢部材(スプリングなど)の収縮により弁体部を下流方向に移動させて弁体部を弁座部に対して付勢(又は押圧)してもよい。
【0018】
前記第1の弁機構と第2の弁機構とは、装着口からの液体の漏出を有効に防止できればよく、第1の弁機構は、常態(液体が供給されていない状態又は液体による非加圧状態)において付勢部材の付勢力により筒体の主流路を閉じ、ノズル内に液体の供給圧が所定値に達したとき、筒体の主流路を開放してもよく、第2の弁機構は、常態において付勢部材の付勢力によりアダプターの通気流路を開放し、液体の供給圧が所定値に達したとき、アダプター内の流路を閉じてもよい。
【0019】
さらに、第1の弁機構において筒体の主流路を開放する開放圧力P1よりも、第2の弁機構において通気流路を閉じる閉じ圧P2が大きくしてもよい。換言すれば、筒体の主流路を開放する第1の弁機構の作動圧よりも、通気流路を閉じる第2の弁機構の作動圧が大きくてもよい。より具体的には、第1の弁機構は、第1の基準圧未満では閉じ状態となり、第1の基準圧以上の圧力で開状態となる弁機構であり、第2の弁機構は、第1の基準圧よりも高い第2の基準圧未満では開状態となり、第2の基準圧以上の圧力で閉じ状態となる弁機構であってもよい。
【0020】
前記液体漏出防止弁では主流路内の残留液体を効率よく排出できるため、冷却水が流通する流路を開閉する遮断弁を備えた配管が接続されたヘッダに装着され、かつ筒体のノズル装着口にノズルが装着される鋼材冷却ノズルの液体漏出防止弁として有用である。
【0021】
本発明の前記液体漏出防止弁(液体漏出防止構造)の筒体のノズル装着口に対してノズルを装着し、噴射ノズルを形成してもよい。この噴射ノズルは、加熱鋼材(例えば、圧延鋼材などの高温鋼材)に対して、ノズルから少なくとも液体を噴射して前記鋼材を冷却するのに適しており、鋼材の噴射ノズル又は冷却ノズル(鋼材冷却ノズル)を形成してもよい。
【0022】
さらに本発明は、ノズル装着口を備えた筒体の軸方向に延び、かつ前記装着口に通じる主流路を前記弁機構(第1の弁機構)で開閉するとともに、第1の弁機構が前記主流路を閉じた状態で、前記主流路内に貯まった液体を前記装着口又は装着口に装着されたノズルから排出し、前記主流路に残存又は残留する液体が継続的に前記装着口又は装着口に装着されたノズルから漏出するのを防止する方法も包含する。この方法において、第1の弁機構が閉じた状態で、通気手段により主流路と通気可能な通気流路を開放してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、付勢部材が弁体部及び弁座部よりも上流側に位置するため、液体の噴射後、主流路を閉じても、主流路内に残存する液体を迅速に排出し、ノズル又はノズル装着口から液体が継続的又は持続的に漏出又は漏洩するのを防止できる。第1の弁機構と、通気手段(通気孔、加圧気体供給手段、第2の弁機構)とを組み合わせると、主流路内に残存する液体を確実かつ迅速に排出でき、装着口と第1の弁機構との間に液体が残存するのを防止できる。そのため、電磁弁などの電気的遮断弁を用いることなく、機械的動作により、配管内や筒体内に残留する液体がノズル又はノズル装着口から継続的又は持続的に漏出又は漏洩するのを防止できる。また、装着口にノズルを装着して、鋼材及び鋳片などの加熱鋼材(高温鋼材)を均一に冷却できる。特に、鋼材の板厚が薄くても均一に冷却でき、過冷却部が生じるのを防止できる。さらに、第1の弁機構と第2の弁機構との作動圧を調整することにより、高い圧力で液体を噴射しても、液体の漏出又は漏洩を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に必要に応じて添付図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。図1は本発明の漏出防止弁構造又は漏出防止弁の一例を示す一部切り欠き概略側面図であり、図2は図1に示す漏出防止弁構造又は漏出防止弁の弁機構を示す概略断面図であり、図3及び図4は図1に示す漏出防止弁構造又は漏出防止弁の第2の弁機構を示す概略断面図であり、図3は第2の弁機構が開いた状態、図4は第2の弁機構が閉じた状態を示している。図5は図1に示す漏出防止弁構造又は漏出防止弁の下流端の概略図である。
【0025】
図示する漏出防止弁構造又は漏出防止弁は、先端部にノズル装着口2を有する筒体(又は弁箱)1と、この筒体1の軸方向に延び、かつ前記装着口2に通じる主流路1aを開閉するための第1の弁機構と、この第1の弁機構の下流側に位置する第2の弁機構とを備えており、筒体1の上流端部には、スリット状の孔8aが周方向に間隔をおいて形成されたフィルタ部8が装着されている。なお、前記筒体1の上流側の端部はヘッダHに装着され、前記フィルタ部8はヘッダH内の水流に臨んでいる。また、ヘッダHには水圧計Pが取り付けられている。
【0026】
前記第1の弁機構は、筒体1の主流路1a内に進退動可能に配設され、第1の弁体部(頭部)4を有するシリンダ部材3と、この弁体部4よりも上流側に位置し、前記第1の弁体部4の進退動に伴って前記弁体部4と接触可能な第1の弁座部5と、この弁座部5よりも上流側に配設され、かつ前記第1の弁体部4を上流方向(弁座部5の方向)に付勢するための第1の付勢部材7とを備えている。より詳細には、シリンダ部材3の弁体部(頭部)4は、シリンダ部材3の下流部に形成されており、この頭部は、下流方向にいくにつれて外径が大きくなる(径大となり主流路1aを狭める)方向に傾斜した周壁部を備えている。この周壁部は受圧部(水圧の受け面)又は受圧面4a及び弁体部4を構成する。
【0027】
前記第1の弁座部5は、筒体1の内壁(周壁)に形成され、前記周壁部4aに対応して上流方向にいくにつれて内径が小さくなる(径小となり主流路1aを狭める)方向に傾斜した壁部で形成されている。さらに、前記第1の弁体部4としての傾斜周壁部4aの凹部には、シール部材としてのO−リング6が装着され、傾斜周壁部4aで形成された第1の弁体部4と第1の弁座部5との間の主流路1aを緊密に開閉する。なお、傾斜周壁部で弁体部4及び弁座部5を構成するため、シール性を大きく向上できる。
【0028】
さらに、前記第1の弁体部4及び第1の弁座部5よりも上流側に配設された第1の付勢部材7は、スプリングで構成され、筒体1の内壁において軸方向に延びるガイド部に収容され、前記第1の弁体部4を上流方向(図中、右方向)に付勢し弁座部5に押圧している。すなわち、所定の水圧が作用しない状態では、付勢部材(スプリング)7が伸長して弁体部4を上流方向に引き寄せて弁体部4を弁座部5に対して付勢(又は押圧)し、閉じ状態となる。また、所定の水圧以上になると、付勢部材(スプリング)7が収縮し、弁体部4が弁座部5から離反し、開状態となる。そのため、水流が筒体1内に流入しない常態、およびフィルタ部から筒体1内に流入した水の水圧が小さい場合には、第1の弁体部4と第1の弁座部5との間はシールされ、水圧が所定の圧力に達する(付勢部材7の付勢力を越える)と、第1の弁座部5から第1の弁体部4が離反し、弁が開放される。この例では、第1の弁機構は、0.01〜0.05MPa程度の圧力で作動し、主流路1aを開放する。
【0029】
一方、第2の弁機構は、筒体(又は筒状弁箱)1から突出して形成されている。すなわち、筒体(又は弁箱)1の軸方向に対して直交する方向に筒体1から突出して配設され、かつ筒体1の主流路1aに通じて、先端部の開放部12に至る通気流路(分岐流路)11aを有する円筒状アダプター11と、このアダプター11内の通気流路11a内に摺動自在に配設され、かつ先端部に第2の弁体部(頭部)14を有する円筒状のピストン部材13と、前記ピストン部材13の摺動に伴って第2の弁体部14が接触可能な第2の弁座部15と、前記第2の弁体部(頭部)14の凹部に装着されたシール部材としてのO−リング16と、前記アダプタ11の内壁のガイド部内に配設され、第2の弁体部14を筒体1の軸芯方向に付勢し、前記第2の弁座部15から離反させるための第2の付勢部材(スプリング)17とを備えている。すなわち、第2の弁機構において、第1の弁機構とは逆に、所定の水圧が作用しない状態では、付勢部材(スプリング)17の伸長により弁体部14を弁座部15から離反させて開状態となる。また、所定の水圧以上になると、付勢部材(スプリング)17が収縮して弁体部14を下流方向に移動させて弁体部14を弁座部15に対して付勢(又は押圧)し、閉じ状態となる。第2の付勢部材17の付勢力は、第1の付勢部材7の付勢力よりも大きく設定されている。
【0030】
なお、ピストン部材13において筒体1の軸芯方向端部には、周辺部に周方向に間隔をおいて開口部が形成され、かつ受圧部(水圧の受け面)18aを有する受圧部材18が装着されている。また、前記受圧部材18の開口部は、前記円筒状アダプター11の内壁とピストン部材13との間に形成された流路を介して、円筒状アダプター11の先端部の開放部12に通じている。この例では、第2の弁機構は、0.07〜0.5MPa程度の圧力で作動し、通気流路11aを閉じる。
【0031】
このような弁機構を備えていると、第2の付勢部材(スプリング)17が弁体部14を筒体1の軸芯方向に付勢する常態(第1の弁機構の弁の開放に伴って水が通気流路11aに流入して水圧がピストン部材13の受圧部18aに作用し、水圧が第2の付勢部材17の付勢力よりも小さい場合)には、第2の付勢部材17の付勢力によりアダプター11の先端部の開放部12が開放される。一方、水圧が第2の付勢部材17の付勢力よりも大きくなると、ピストン部材13がアダプター11の先端部の開放部12に向かって前進し、前記第2の弁座部15に対して第2の弁体部14が押圧され、シール部材16でシールされる。そのため、水圧を上昇しても、第2の弁機構の閉じ状態を維持でき、先端部のノズル装着口2に装着されたノズルから、少なくとも水を含む流体を噴射できる。しかも、第1の付勢部材7に比べて第2の付勢部材17の付勢力が大きいため、ヘッダへの水の供給を遮断弁で閉じ、水圧を低下させて噴射を停止すると、先ず第2の弁機構でアダプター11の先端部の開放部12が開放した後(開状態となった後)、第1の弁機構が閉じるため、瞬間的には通気流路11aから開放部12へ水が噴出する場合もあるが、その後、通気流路11aから筒体1内に空気を導入して、筒体1内に残存する水を装着口2から迅速に流出でき、装着口2から水が持続的に漏出することがない。また、電磁弁などの電気的遮断弁を用いることなく、機械的動作により、水の漏出を防止できるため、周囲が高温のノズル(例えば、前記鋼材の冷却域のノズルなど)に有効に適用できるとともに、鋼材及び鋳片などの加熱鋼材(高温鋼材)を均一に冷却できる。特に、鋼材の板厚が薄くても均一に冷却でき、過冷却部が生じるのを防止できる。
【0032】
なお、本発明の液体漏出防止構造は、少なくとも液体を噴射するためのノズルが装着される装着口を備えた筒体と、第1の弁機構(弁構造)とを備え、主流路に溜まった液体が前記装着口から継続的に漏出又は漏洩するのを抑制できればよい。筒体には、ノズルを直接装着してもよく、筒体はノズルを装着するためのノズルアダプタを備えていてもよい。筒体は、前記装着口に通じる主流路を有していればよく、この主流路は単一の円筒状流路で構成してもよく、流路径の異なる複数の流路で構成してもよい。また、本発明において、通常、筒体は弁箱を形成している。
【0033】
筒体の主流路を開閉するための第1の弁機構は、所定の流体圧の作用により弁座部に対して弁体部を離反させて開状態とし、前記流体圧の解除により前記弁座部に対して前記弁体部を押圧して閉じ状態とすればよい。第1の弁機構は、通常、筒体の軸方向に延びる主流路内に進退動可能に配設され、かつ受圧部(又は流体圧を受ける面)を有する弁体部と、この弁体部の進退動に伴って接触可能な弁座部と、前記弁体部及び弁座部よりも上流側に配設され、かつ弁座部に対して弁体部を付勢するための付勢手段とを備えており、弁座部は、前記弁体部(又は弁体)の下流側又は上流側に位置していてもよい。弁体部は、通常、主流路内に進退動可能に配設されたシリンダ状の弁棒(シリンダ弁)の下流部に形成される場合が多く、弁体部は、前記のように、弁棒の下流側の頭部に形成する必要はなく、傾斜周壁部で形成する必要もない。弁体部は、弁座部との関係で種々の形態(例えば、立設又は起立した壁部、湾曲した壁部など)で形成できる。また、受圧部は、前記傾斜周壁部で形成する必要はなく、弁棒の軸方向の適所で主流路の半径方向に拡がり、かつ流体が流通可能な壁部(例えば、弁棒から起立又は突出した周壁など)などで形成してもよい。このような受圧部を有する弁体部は、液体の供給圧に応じて主流路内で進退動可能であり、液体の供給圧に応じて主流路を開閉するのに有用である。
【0034】
前記弁座部は、前記弁体部(又は弁体)の上流側に位置するのが好ましく、弁体部の上流方向への移動に伴って前記弁体部と接触し主流路を閉じる。弁座部は、筒体の内壁とは別の部材に形成してもよいが、通常、筒体の内壁で形成される。弁座部の形態は、通常、弁体部の形態に対応していればよい。
【0035】
なお、弁体部と弁座部との間のシール部材は必ずしも必要ではないが、緊密にシールするためには、弁体部と弁座部との間にシール部材を介在させるのが好ましい。シール部材は、弁体部及び弁座部のうちいずれか一方に配設すればよい。
【0036】
付勢部材は、弁座部に対して弁体部を付勢可能であればよく、弁体部を上流方向に付勢することにより、常態では第1の弁機構を閉じることができる。また、付勢部材は筒体の内壁のガイド部に限らず、流体の流通を損なわない限り、主流路の適所に配設できる。なお、付勢部材が弁体部や弁座部よりも下流側にあると、弁機構と装着口との間の容積が大きくなり、主流路内に残存する液体が多くなる。従って、付勢部材は、主流路内に液体が残存するのを抑制又は防止するため、前記弁座部(又は弁体部と弁座部とで構成される弁構造)よりも上流側に位置すればよい。付勢部材は、通常、スプリング(又はバネ)で構成できる。第1の弁機構は、常態では閉じており、筒体内への流体の流入を規制し、所定の流体圧により開いて、筒体内へ流体を流入させる。すなわち、第1の弁機構は、付勢部材により、所定の流体圧の作用により前記弁座部に対して前記弁体部を離反させて開状態とし、前記流体圧の解除により前記弁座部に対して前記弁体部を押圧して閉じ状態とする。
【0037】
本発明において、第1の弁機構により主流路を閉じると、通常、ノズル吐出口の口径が小さく、しかも一端が閉じた状態となるため、主流路内に残留する液体の自由な流動が妨げられ、ノズルからの排出効率が低下しやすい。本発明では、前記第2の弁機構は必ずしも必要ではないが、第1の弁機構が閉じた状態で、主流路と通気可能な通気手段を備えていると、主流路に気体を導入でき、前記主流路内に残留する液体を迅速に開放したノズル装着口から流出させることができ、ノズル又はノズル装着口から液体が持続的又は継続的に漏出するのを有効に防止できる。この通気手段は、主流路と通気可能な通気流路(前記主流路と外部空間とを連通可能な通気流路又は分岐流路)を備えており、この通気流路は、スライド機構により開閉(又は遮蔽)可能であってもよく、例えば、第1の弁機構が開き状態では閉じており、第1の弁機構が閉じ状態では開いていてもよい。また、通気手段は、主流路に気体を導入又は供給可能であればよく、前記第1の弁機構よりも下流側に設ければよい。さらに、通気手段は、第1の付勢部材の伸縮に連動して、通気流路を開閉可能であってもよく、例えば、第1の付勢部材により第1の弁機構が開き状態では、前記通気流路を閉じ、第1の弁機構が閉じ状態では、通気流路を開き状態とし、通気流路により、前記主流路又は第1の弁機構の下流域に気体を導入又は流入してもよい。
【0038】
図6は本発明の漏出防止弁構造又は漏出防止弁の他の例を示す一部切り欠き概略側面図であり、図6(A)は第1の弁機構の閉じ状態、図6(B)は第1の弁機構の開き状態を示す。図7は図6のVII−VII線断面図である。
【0039】
図6及び図7に示す液体漏出防止弁は、先端部にノズル装着口22を有する筒体(又は弁箱)21と、この筒体21の軸方向に延び、かつ前記装着口22に通じる主流路21aを開閉するための第1の弁機構と、この第1の弁機構の下流側に位置する通気機構(通気手段)とを備えている。第1の弁機構は、筒体21の内壁において軸方向に延びるガイド部に収容された第1の付勢部材27と、この第1の付勢部材27の伸縮動に伴って軸方向にスライド可能なリング状スライド部材23と、このスライド部材23の下流端において側壁の形態で軸芯方向に屈曲して形成された第1の弁体部24と、この側壁状弁体部の上流側内壁で構成された第1の受圧部24aと、前記筒体21の内壁から間隔をおいて内筒状の形態で形成され、かつ前記側壁状弁体部24がスライド可能なガイド壁25aを有する第1の弁座部25とを備えており、前記弁座部25は主流路21aを塞いでいる。この例でも、第1の付勢部材27は、前記第1の弁体部24及び弁座部25よりも上流側に配設されており、スライド部材23及び弁体部24を上流方向へ付勢している。また、スライド部材23の上流端は付勢部材27の上流側端部と係合している。
【0040】
一方、通気機構(通気手段)は、前記弁座部25のガイド壁25a及び筒体21の半径方向に穿設され、かつ前記弁体部24の上流方向への移動に伴って筒体21の主流路21aと連通可能な流路31を備えている。この流路31は、ガイド壁25aに形成された連絡流路31aと、筒体21に形成された通気流路31bとで構成されている。なお、側壁の形態で形成された弁体部24は、前記ガイド壁25aの連絡流路31aを跨いでスライド可能である。
【0041】
このような構造では、筒体21内に供給される液体圧が受圧部24aに作用して付勢部材27が収縮すると、弁体部24が下流方向へ前進動(又はスライド)し、前記流路31を通過すると、図6(B)に示されるように、筒体21の通気流路31bをスライド部材23により閉じた状態で、筒体21の主流路21aとガイド壁25aの連絡流路31aとが連通する。そのため、装着口22に装着されたノズルから液体を噴霧又は噴射できる。一方、液体圧を低下させ、ノズルからの噴霧又は噴射を停止すると、図6(A)に示されるように、付勢部材27の付勢力によりスライド部材23が上流方向に後退動(又はスライド)し、前記流路31(連絡流路31a及び通気流路31b)を開放するとともに、筒体21の主流路21aを閉じる。その際、前記流路31の開放に伴って、通気流路31bを通じて、装着口22と第1の弁機構との間の流路(第1の弁機構の下流域)に気体が導入又は流入するため、前記流路内に残留する液体を迅速に開放したノズルから流出でき、ノズルから残留液体が継続的に少しずつ漏出するのを防止できる。
【0042】
さらに、通気手段は、第1の弁機構が閉じた状態で、前記主流路内の第1の弁機構よりも下流域に気体を導入するための第2の弁機構で構成してもよい。この第2の弁機構は、主流路内に気体を導入して(又は流入させて)主流路内に残存する流体を、開放した装着口又はノズルから迅速に流出可能であればよく、例えば、前記主流路に通じて形成され、筒体内に供給される液体の圧力に応じて、前記主流路内に気体を導入し、流路内に貯まった液体をノズル装着口又はノズルから流出可能であればよい。第2の弁機構は、筒体の周方向の適所に1又は複数の第2の弁機構を形成してもよい。
【0043】
このような第2の弁機構は、主流路内の液体の圧力に応じて、前記主流路に通じる通気流路を開閉して前記主流路内に気体を導入し、前記主流路内に貯まった液体を装着口又はノズルから円滑に排出する。第2の弁機構は、通常、筒体の軸方向に対して交差する方向に配設され、かつ筒体の流路に通じる通気流路を有するアダプターと、この通気流路内に摺動可能に配設され、かつ第2の受圧部を有する第2の弁体部と、この第2の弁体部の摺動に伴って接触可能な第2の弁座部と、この第2の弁座部に対して前記第2の弁体部を押圧又は離反させるための第2の付勢部材(例えば、前記第2の弁体部を筒体の軸芯方向に付勢するための第2の付勢部材)とを備えている。すなわち、第2の弁機構において、付勢部材は、所定の流体圧の作用により前記弁座部に対して前記弁体部を押圧して閉じ状態とし、前記流体圧の解除により前記弁座部に対して前記弁体部を離反させて開状態とする。
【0044】
前記アダプターの流路(通気又は分岐流路)は、第2の弁体部が摺動(又は往復動)可能である限り断面円筒状に限らず断面多角形状であってもよい。アダプターは、通常、筒体に対して直交する方向に配設され、筒体の主流路に連通して通気流路(分岐流路)を形成している。また、アダプターは、弁機構により開閉可能な開放部を有している。この開放部は弁機構の開閉部に応じて、アダプターの適所に形成でき、通常、先端部に形成される。
【0045】
第2の弁体部は、通気流路内で摺動(又は往復動)可能であればよく、通常、通気流路内に摺動可能に配設されたピストン部材(弁棒)において筒体の軸芯側とは反対側(筒体の軸芯から離反する方向)に形成する場合が多い。また、ピストン部材(弁棒)は前記アダプターの流路の断面形状に応じて、断面円形状、断面多角形状などであってもよい。第2の弁体部はピストン部材(弁棒)において開放部側に形成された頭部に限らず適所に形成できる。
【0046】
第2の弁座部は、第2の弁体部よりも筒体の軸芯側に位置していてもよく筒体の軸芯から離反する側に位置していてもよい。第2の弁座部は、通常、前記第2の弁体部よりも筒体の軸芯側とは反対側(開放部側)に位置している場合が多く、前記弁体部(又はピストン部材)の摺動(筒体の軸芯から離反する方向への前進道)に伴って第2の弁体部と接触する。第2の弁座部は、第2の弁体部の形態に対応させて形成できる。第2の弁座部は、通常、前記アダプターの内壁に形成する場合が多い。
【0047】
なお、前記第1の弁機構と同じく、第2の弁体部と第2の弁座部との間のシール部材は必ずしも必要ではないが、緊密にシールするためには、シール部材(パッキンなど)を、第2の弁体部及び第2の弁座部のうちいずれか一方に配設し、第2の弁体部と第2の弁座部との間に介在させるのが好ましい。
【0048】
第2の付勢部材は、圧力の解除により伸長して弁体部を弁座部から離反させて開状態とし、所定の圧力の作用に伴って収縮して弁体部を弁座部に対して付勢(又は押圧)して閉じ状態とする。第2の付勢部材は、通常、前記第2の弁体部を筒体の軸芯方向(図中、下方向)に付勢し、第2の弁座部とは反対方向に第2の弁体部を押圧する。そのため、常態では第2の弁機構は通気流路(分岐流路)を開放している。
【0049】
前記第1の弁機構と第2の弁機構とは、装着口からの液体の漏出を有効に防止できればよく、第1の弁機構は、常態において付勢部材の付勢力により筒体の主流路を閉じ、ノズル内に液体の供給圧が所定値に達したとき、筒体の主流路を開放してもよく、第2の弁機構は、常態において付勢部材の付勢力によりアダプタを開放し、液体の供給圧が所定値に達したとき、アダプター内の流路(通気流路)を閉じてもよい。好ましい態様では、第1の弁機構において筒体の主流路を開放する開放圧力(第1の付勢部材の付勢力)P1よりも、第2の弁機構において通気流路を閉じる閉じ圧(第2の付勢部材の付勢力)P2を大きくしてもよい。換言すれば、筒体の主流路を開放する第1の弁機構の作動圧よりも、通気流路を閉じる第2の弁機構の作動圧が大きくてもよい。すなわち、第2の弁機構は、第1の弁機構の作動圧よりも大きな作動圧で流路に通じる通気流路を開閉可能であってもよい。より具体的には、第1の弁機構は、第1の基準圧未満では閉じ状態となり、第1の基準圧以上の圧力で開状態となる弁機構であってもよく、第2の弁機構は、第1の基準圧よりも高い第2の基準圧未満では開状態となり、第2の基準圧以上の圧力で閉じ状態となる弁機構であってもよい。なお、第1の弁機構の作動圧P1は0.01〜0.1MPa(例えば、0.01〜0.05MPa)程度であってもよく、第2の弁機構の作動圧P2は0.05〜0.7MPa(例えば、0.07〜0.15MPa)程度であってもよい。また、第1の弁機構と第2の弁機構との作動圧の差(P2−P1)は、例えば、0.05〜0.5MPa(例えば、0.05〜0.2MPa)程度であってもよい。このような作動圧の異なる複数の弁機構を利用すると、筒体内の液体の圧力が所定圧未満では、第1の弁機構を閉鎖するとともに第2の弁機構を開放して、装着口と第1の弁機構との間の空間に残った液体を、開放した装着口又はノズルから迅速に排出できる。また、圧力の上昇に伴って、第1の弁機構が開放して第2の弁機構が閉鎖するため、筒体の主流路を通じて装着口に装着したノズルに流体を有効に供給でき、ノズルから流体を効率よく噴射できる。
【0050】
さらに、本発明において、通気手段は、主流路に残留する液体を、装着口又はノズルから強制的に排出又は流出させてもよい。例えば、通気手段は、前記主流路と通気可能な通気流路と、第1の弁機構が閉じた状態で、前記通気流路に加圧気体を供給可能な加圧気体供給手段とを備えていてもよい。より具体的には、前記図1〜図5、図6及び図7に示す液体漏出防止弁(液体漏出防止弁構造)において、筒体の通気流路に加圧空気ライン(配管)を接続してもよい。また、加圧気体供給手段は、前記第1の弁機構の開閉に応答又は連動させて、前記の態様で通気流路を開閉してもよい。第1の弁機構が閉じ状態で、このような加圧気体供給手段により加圧気体を主流路内に導入すると、前記主流路内に残存又は残留する液体を装着口又はノズルから迅速に排出でき、主流路内の液体が装着口又はノズルから徐々に漏出することがない。
【0051】
前記液体漏出防止弁(又は漏出防止弁構造)は種々の用途に利用でき、例えば、液体漏出防止弁の前記筒体の装着口にノズルを装着することにより噴射ノズルを形成してもよく、ノズルは一流体ノズルであってもよく、二流体ノズルであってもよい。なお、液体としては種々の液体(アルコールなどの有機溶媒など)が利用できるが、通常、水が使用され、二流体ノズルにおいては、気体として不活性ガスなども利用できるが、通常、空気を利用する場合が多い。また、ノズルによる流体の噴射方向は、筒体(又はノズル)の軸線に対して平行であってもよく、斜め方向(斜め下方向など)又は直交する方向(下方向など)などであってもよい。また、ノズルからの流体は、幅方向の広がり及び/又は所定の噴射角度をもって噴射してもよい。前記弁構造は筒体内の液体の漏出を防止できるため、鋼材などの冷却ノズルを形成するのが好ましい。換言すれば、前記液体漏出防止弁構造又は漏出防止弁は鋼材冷却ノズルの液体漏出防止弁、例えば、冷却水が流通する流路を開閉する遮断弁を備えた配管が接続されたヘッダに装着され、かつ筒体のノズル装着口にノズルが装着される鋼材冷却ノズルの液体漏出防止弁であってもよい。
【0052】
また、前記噴射ノズルは、加熱鋼材に対して、ノズルから少なくとも液体を噴射して前記鋼材を冷却する鋼材冷却ノズルであってもよい。前記弁構造を備えた鋼材の冷却ノズルは、前記筒体の装着部にノズル(二流体ノズルなど)が装着され、加熱鋼材(熱間圧延された熱間鋼材や高温薄鋼材などの高温加熱鋼材など)に対して、少なくとも液体を噴射して前記鋼材を冷却する。特に、ノズルからの液体漏れ(水漏れ)がないため、板厚が薄くなっても(例えば、50mm程度にまで薄くなっても)過冷却部を生じさせることなく、均一に冷却できる。
【0053】
なお、本発明において、一流体ノズルを装着口に装着して液体(水など)を噴射する場合、液体は、通常、加圧液体(又は高圧液)として供給され、圧力は、0.01〜2MPa、好ましくは0.02〜1.5MPa、さらに好ましくは0.03〜1MPa程度であってもよい。また、二流体ノズルを装着口に装着して二流体ノズルを形成する場合、気体の圧力は、通常、0.01〜1MPa(例えば、0.02〜0.8MPa)、好ましくは0.03〜0.7MPa程度である。液体の圧力は、上記と同様であってもよい。また、気体と液体との流量比(体積割合)は、例えば、気体/液体(気液体積比)=3〜500、好ましくは5〜400、さらに好ましくは7〜300(例えば、10〜250)程度であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明では、装着口にノズルを装着して噴射ノズルを構成し、種々の用途、例えば、被冷却体(連続鋳造装置の二次冷却帯での鋼材、熱間圧延の鋼材などの加熱体)の冷却、被処理体の洗浄などに利用できる。特に、熱間圧延や連続鋳造装置の二次冷却帯において並設されたロール間に配設したスプレーノズルから水を鋼材又は鋳片の全面に噴出して二次冷却する方法に利用できる。なお、二次冷却には気液混合ミスト(冷却ミスト)を利用してもよい。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0056】
比較例1
図1〜図5に示す装置において、第2の弁機構を備えておらず、図1〜図5に示す液体漏出防止弁とは逆に付勢部材が弁座部よりも下流に位置する液体漏出防止弁を用いた。なお、付勢部材(スプリング)の作動圧は約0.02MPaとした。この液体漏出防止弁の構造は、特許文献4に記載の装置に対応する。
【0057】
実施例1
図1〜図5に示す液体漏出防止弁において、第2の弁機構を備えていない液体漏出防止弁(付勢部材が弁座部よりも上流側に位置する液体漏出防止弁)を用いた。なお、第1の弁機構において、付勢部材(スプリング)の作動圧は約0.02MPaとした。
【0058】
実施例2
図6及び図7に示す液体漏出防止弁を用いた。なお、第1の弁機構において、付勢部材(スプリング)の作動圧は約0.02MPaとした。
【0059】
実施例3
図1〜図5に示す液体漏出防止弁を用いた。なお、第1の弁機構において、付勢部材(スプリング)の作動圧は約0.02MPa、第2の弁機構において、付勢部材(スプリング)の作動圧は約0.1MPaとした。
【0060】
実施例4
図6及び図7に示す弁構造において、通気流路に加圧空気配管を接続した液体漏出防止弁を用いた。なお、加圧空気配管による加圧空気(圧力0.03MPa)の供給は、第1の弁機構の開閉動作に連動させ、第1の弁機構が閉じた状態で加圧空気(5秒間)を供給し、第1の弁機構が開いた状態で加圧空気の供給を停止した。
【0061】
そして、各液体漏出防止弁の装着口に、図8に示すスプレーノズル41を取り付け、冷却水を(圧力0.2MPa、流量50L/分)で噴射し、噴射停止後、各ノズルから冷却水が漏れ続けた時間を測定したところ、冷却水が漏れ続けた時間は、比較例1では15秒、実施例1では7秒、実施例2及び3ではそれぞれ3秒、実施例4では1秒であった。なお、スプレーノズル41は一流体ノズルであり、図8に示されるように、前記液体漏出防止弁の装着部に対する接続部42のネジサイズが1インチであり、円筒状流路43がアール状に湾曲して狭まり断面円形状の吐出口44に至る構造を有している。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は本発明の漏出防止弁構造又は漏出防止弁の一例を示す一部切り欠き概略側面図である。
【図2】図2は図1に示す漏出防止弁構造又は漏出防止弁の弁機構を示す概略断面図である。
【図3】図3は図1に示す漏出防止弁構造又は漏出防止弁の第2の弁機構を示す概略断面図である。
【図4】図4は図3の第2の弁機構を示す概略断面図である。
【図5】図5は図1に示す漏出防止弁構造又は漏出防止弁の下流端の概略図である。
【図6】図6は本発明の漏出防止弁構造又は漏出防止弁の他の例を示す一部切り欠き概略側面図であり、図6(A)は第1の弁機構の閉じ状態、図6(B)は第1の弁機構の開き状態を示す。
【図7】図7は図6のVII−VII線断面図である。
【図8】図8は実施例で用いたノズルを示す概略図であり、図8(A)は一部切り欠き概略側面図であり、図8(B)はノズル先端部を示す端面図である。
【符号の説明】
【0063】
1,21…筒体
1a,21a…流路
2,22…装着口
3…シリンダ部材
4,24…第1の弁体部
4a,24a…受圧部(傾斜周壁部)
5,25…第1の弁座部
6…第1のシール部材
7,27…第1の付勢部材
11…アダプター
11a,31b…通気流路(分岐流路)
12…開放部
13…ピストン部材
14…第2の弁体部
15…第2の弁座部
16…第2のシール部材
17…第2の付勢部材
18a…受圧部
23…スライド部材
25a…ガイド壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル装着口を備えた筒体と、この筒体の軸方向に延び、かつ前記装着口に通じる流路を開閉するための第1の弁機構とを備え、この流路に溜まった液体が前記装着口から漏出するのを防止するための構造であって、前記第1の弁機構が、前記流路内に進退動可能に配設され、かつ受圧部を有する弁体部と、この弁体部の進退動に伴って前記弁体部と接触可能な弁座部と、前記弁体部及び弁座部よりも上流側に配設され、かつ前記弁体部を上流方向に付勢するための付勢部材とを備えている液体漏出防止弁。
【請求項2】
第1の弁機構が、前記流路内に進退動可能に配設され、受圧部を有する弁体部と、この弁体部の進退動に伴って前記弁体部と接触可能な弁座部と、前記弁座部よりも上流側に配設され、かつ所定の流体圧の作用により前記弁座部に対して前記弁体部を離反させて開状態とし、前記流体圧の解除により前記弁座部に対して前記弁体部を押圧して閉じ状態とするための付勢部材とを備えている請求項1記載の液体漏出防止弁。
【請求項3】
第1の弁機構が、筒体の軸方向に延びる流路内に進退動可能に配設されたシリンダ状の弁棒と、この弁棒の下流部に形成され、かつ下流方向にいくにつれて外径が大きくなる方向へ傾斜した周壁部で形成された弁体部と、筒体の内壁に形成され、かつ前記周壁部に対応して上流方向にいくにつれて内径が小さくなる方向へ傾斜した壁部で形成された弁座部と、この弁座部よりも上流側の筒体に配設され、かつ弁座部に対して弁体部を付勢するための付勢部材とを備えている請求項1又は2記載の液体漏出防止弁。
【請求項4】
第1の弁機構が閉じた状態で、装着口と第1の弁機構との間の流路と通気可能な通気手段を備えている請求項1〜3のいずれかに記載の液体漏出防止弁。
【請求項5】
通気手段が、第1の弁機構が閉じた状態で、前記装着口と第1の弁機構との間の流路内に気体を導入するための第2の弁機構で構成されている請求項4記載の液体漏出防止弁。
【請求項6】
第2の弁機構が、筒体の軸方向に対して交差する方向に配設され、かつ筒体の流路に通じて、先端部の開放部に至る通気流路を有するアダプターと、この通気流路内に摺動可能に配設され、受圧部を有する弁体部と、前記弁体部の摺動に伴って接触可能な弁座部と、所定の流体圧の作用により前記弁座部に対して前記弁体部を押圧して閉じ状態とし、前記流体圧の解除により前記弁座部に対して前記弁体部を離反させて開状態とするための第2の付勢部材とを備えている請求項5記載の液体漏出防止弁。
【請求項7】
第2の弁機構が、筒体の軸方向に対して直交する方向に配設され、かつ筒体の流路に通じて、先端部の開放部に至る通気流路を有する筒状アダプターと、この筒状アダプター内で摺動可能に配設され、かつ先端部に弁体部を有するピストン部材と、前記アダプターの内壁に形成され、前記ピストン部材の摺動に伴って前記弁体部が接触可能な弁座部と、この弁座部に対して前記弁体部を付勢するための付勢部材とを備えている請求項5又は6記載の液体漏出防止弁。
【請求項8】
第1の弁機構が、常態において付勢部材の付勢力により筒体の流路を閉じており、筒体内の液体の供給圧が所定値に達したとき、筒体の流路を開放し、第2の弁機構が、常態において付勢部材の付勢力によりアダプターの通気流路を開放しており、液体の供給圧が所定値に達したとき、アダプター内の流路を閉じる請求項6又は7記載の液体漏出防止弁。
【請求項9】
筒体の流路を開放する第1の弁機構の作動圧よりも、通気流路を閉じる第2の弁機構の作動圧が大きい請求項5〜8のいずれかに記載の液体漏出防止弁。
【請求項10】
第1の弁機構が、第1の基準圧未満では閉じ状態となり、第1の基準圧以上の圧力で開状態となる弁機構であり、第2の弁機構が、第1の基準圧よりも高い第2の基準圧未満では開状態となり、第2の基準圧以上の圧力で閉じ状態となる弁機構である請求項5〜9のいずれかに記載の液体漏出防止弁。
【請求項11】
通気手段が、装着口と第1の弁機構との間の流路と通気可能な通気流路と、第1の弁機構が閉じた状態で、この通気流路に加圧気体を供給可能な加圧気体供給手段とを備えている請求項4〜10のいずれかに記載の液体漏出防止弁。
【請求項12】
冷却水が流通する流路を開閉する遮断弁を備えた配管が接続されたヘッダに装着され、かつ筒体のノズル装着口にノズルが装着される鋼材冷却ノズルの液体漏出防止弁である請求項1〜11のいずれかに記載の液体漏出防止弁。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の液体漏出防止弁の筒体のノズル装着口に対してノズルが装着されている噴射ノズル。
【請求項14】
加熱鋼材に対して、ノズルから少なくとも液体を噴射して前記鋼材を冷却する鋼材冷却ノズルである請求項13記載の噴射ノズル。
【請求項15】
ノズル装着口を備えた筒体の軸方向に延び、かつ前記装着口に通じる流路を請求項1記載の第1の弁機構で閉じた状態で、前記装着口と第1の弁機構との間の流路内に貯まった液体を前記装着口又は装着口に装着されたノズルから排出し、液体が前記装着口又は装着口に装着されたノズルから継続的に漏出するのを防止する方法。
【請求項16】
第1の弁機構が閉じた状態で、通気手段により装着口と第1の弁機構との間の流路と通気可能な通気流路を開放する請求項15記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−84839(P2010−84839A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254048(P2008−254048)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000142023)株式会社共立合金製作所 (24)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】