説明

液処理装置および液処理方法

【課題】凸形状部の倒壊をより確実に防止するだけではなく、被処理体の処理効率を高くすること。
【解決手段】液処理装置は、本体部91と、本体部91に設けられた複数の凸形状部92とを有する被処理体90を処理する。液処理装置は、被処理体90の本体部91を支持する支持部50と、支持部50によって支持された被処理体90に薬液を供給する薬液供給機構1と、薬液供給機構1によって薬液が供給された後の被処理体90に、リンス液Rを供給するリンス液供給機構10と、を備えている。液処理装置は、リンス液供給機構10によってリンス液Rが供給された後の被処理体90に、疎水化ガスを噴出して供給する疎水化ガス供給機構20も備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部と、本体部に設けられた複数の凸形状部とを有する被処理体を処理する液処理装置および液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板本体部(本体部)の表面側に微細な複数の凸条列(凸形状部)が微細パターンとして形成された半導体基板(被処理体)に、純水などのリンス液を施す工程と、当該半導体基板に対してリンス液を施した後で乾燥処理を施す工程とを有する液処理方法が知られている。
【0003】
しかしながら、このような液処理方法を用いた場合には、半導体基板に供給されたリンス液を乾燥する際に、基板本体部上に形成された凸条列間でリンス液の表面張力が作用し、隣接する凸条列同士が引っ張られて倒壊してしまうことがある。
【0004】
この点、このような凸条列の倒壊を防止するために、半導体基板に対してリンス液を施す前に、微細パターンとしての凸条列に対して疎水化液を供給する疎水性化処理を施すことが試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−273083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような疎水化液を利用した疎水性化処理を施すと、工程数が増えてしまって被処理体を処理する効率が下がってしまい、また、高価な疎水化液の使用量が多くなってしまう。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、凸形状部が倒壊することを防止するとともに、被処理体の処理効率を高くすることができる液処理装置および液処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による液処理装置は、
本体部と、該本体部に設けられた複数の凸形状部とを有する被処理体を処理する液処理装置において、
前記被処理体の前記本体部を支持する支持部と、
前記支持部によって支持された前記被処理体に薬液を供給する薬液供給機構と、
前記薬液供給機構によって薬液が供給された後の前記被処理体に、リンス液を供給するリンス液供給機構と、
前記リンス液供給機構によってリンス液が供給された後の前記被処理体に、疎水化ガスを噴出して供給する疎水化ガス供給機構と、
を備えている。
【0009】
本発明による液処理方法は、
本体部と、該本体部に設けられた複数の凸形状部とを有する被処理体を処理する液処理方法であって、
支持部によって、前記被処理体を支持することと、
薬液供給機構によって、前記支持部に支持された前記被処理体に薬液を供給することと、
リンス液供給機構によって、前記薬液供給機構によって薬液が供給された後の前記被処理体にリンス液を供給することと、
疎水化ガス供給機構によって、前記リンス液供給機構によってリンス液が供給された後の前記被処理体に疎水化ガスを噴出して供給することと、
を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リンス液が供給された後の被処理体に、疎水化ガスが噴出されて供給されるので、凸形状部の倒壊をより確実に防止することができる。また、このような疎水化ガスを用いることによって、被処理体の処理効率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態による液処理装置の構成を示す側方断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態による液処理装置の構成を示す上方平面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態による疎水化ガス供給機構の構成とキャリアガス供給部近傍を示す側方断面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態による液処理方法による処理態様を示す側方断面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態による液処理方法による作用効果を説明するための側方断面図。
【図6】本発明の第1の実施の形態の変形例による疎水化ガス供給機構の構成とキャリアガス供給部近傍を示す側方断面図。
【図7】本発明の第1の実施の形態の別の変形例による液処理装置の構成を示す上方平面図。
【図8】本発明の第2の実施の形態による液処理装置の構成を示す上方平面図。
【図9】従来の液処理方法を用いて被処理体を処理した態様を示す側方断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の実施の形態
以下、本発明に係る液処理装置および液処理方法の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図7は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0013】
液処理装置は、基板本体部(本体部)91と、当該基板本体部91に設けられた複数の凸形状部92とを有する被処理基板(被処理体)90を処理するために用いられる(図4(a)−(c)参照)。なお、この凸形状部92は、所定のパターンで基板本体部91に形成されている。また、このような被処理基板90としては、半導体ウエハなどの半導体基板を例として挙げることができる。
【0014】
また、図1に示すように、液処理装置は、被処理基板90の基板本体部91を保持するとともに支持する支持部50を有するとともに中空構造となった支持プレート51と、支持プレート51の下面に連結されて上下方向に延在するとともに中空構造となった回転軸52と、支持プレート51の中空内に配置されるとともに被処理基板90の裏面(下面)に当接可能なリフトピン55aを有するリフトピンプレート55と、リフトピンプレート55の下面に連結されて回転軸52の中空内を上下方向に延在するリフト軸56と、リフト軸56を上下方向に移動させるリフト駆動部45と、を備えている。なお、支持プレート51の周縁外方には、支持部50によって支持された被処理基板90の周縁とその斜め上方を覆うためのカップ59が設けられている。また、図1ではリフトピン55aが1つしか図示されていないが、本実施の形態において実際には、リフトピンプレート55に3つのリフトピン55aが設けられている。
【0015】
また、図1に示すように、液処理装置は、回転軸52の周縁外方に配置されたプーリ43と、このプーリ43に駆動ベルト42を介して駆動力を付与するモータ41とを有する回転駆動機構40をさらに備えている。そして、この回転駆動機構40は、モータ41が回転軸52を回転させることで支持部50を回転軸52を中心に回転させ、この結果、支持部50によって保持されて支持された被処理基板90を回転させるように構成されている。なお、回転軸52の周縁外方にはベアリング44が配置されている。
【0016】
また、図2に示すように、液処理装置は、支持部50によって支持された被処理基板90に薬液を供給する薬液供給機構1と、薬液供給機構1によって薬液が供給された後の被処理基板90に、リンス液R(図4(a)参照)を供給するリンス液供給機構10と、リンス液供給機構10によってリンス液Rが供給された後の被処理基板90に、疎水化ガスを噴出して供給する疎水化ガス供給機構20も備えている。なお、本実施の形態では、疎水化ガスにキャリアガスが混入された混合ガスG(図4(b)参照)が、被処理基板90に噴出されて供給されることとなる。
【0017】
また、図2に示すように、薬液供給機構1は、薬液を供給する薬液供給部2と、薬液供給部2から供給された薬液を案内する薬液供給管3と、当該薬液供給管3の一部が通過する液供給アーム15と、当該液供給アーム15の端部に設けられた液供給ノズル16と、を有している。なお、本実施の形態で用いられる薬液としては、例えば、硫酸過水、アンモニア過水、希フッ酸などを挙げることができるが、これに限られることはない。
【0018】
また、図2に示すように、リンス液供給機構10は、リンス液Rを供給するリンス液供給部12と、リンス液供給部12から供給されたリンス液Rを案内するリンス液供給管13と、当該リンス液供給管13の一部が通過する液供給アーム15と、当該液供給アーム15の端部に設けられた液供給ノズル16と、を有している。なお、本実施の形態では、液供給アーム15と液供給ノズル16が、薬液供給機構1とリンス液供給機構10の両方の構成要素となっているが、これに限られることはない。また、本実施の形態で用いられるリンス液Rとしては、例えば、純水(DIW)などを挙げることができるが、これに限られることはない。
【0019】
また、図2に示すように、疎水化ガス供給機構20は、疎水化ガスを供給する疎水化ガス供給部22と、疎水化ガス供給部22から供給された疎水化ガスを案内するガス供給管23と、当該ガス供給管23の一部が通過するガス供給アーム25と、当該ガス供給アーム25の端部に設けられたガス供給ノズル26と、を有している。なお、本実施の形態で用いられる疎水化ガスとしては、例えば、ジメチルアミノトリメチルシラン(TMSDMA)、ジメチル(ジメチルアミノ)シラン(DMSDMA)、1,1,3,3−テトラメチルジシラン(TMDS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などのシリル化剤や、界面活性剤、フッ素ポリマーなどを挙げることができるが、これに限られることはない。
【0020】
また、図2に示すように、液処理装置は、被処理基板90に対して、薬液供給機構1、リンス液供給機構10および疎水化ガス供給機構20を相対的に移動させる移動機構60をさらに備えている。
【0021】
この移動機構60は、リンス液供給機構10の構成要素である液供給アーム15を、揺動軸15aを中心として水平方向(回転軸52に直交する方向)に揺動させる液供給アーム移動部(リンス液移動部)61と、疎水化ガス供給機構20の構成要素であるガス供給アーム25を、揺動軸25aを中心として水平方向(回転軸52に直交する方向)に揺動させるガス供給アーム移動部(疎水化ガス移動部)62とを有している。なお、これら液供給アーム移動部61とガス供給アーム移動部62は、液供給アーム15とガス供給アーム25を選択的に揺動させるように構成されており、これら液供給アーム15とガス供給アーム25を別々または同時に揺動させることができる。なお、本実施の形態では、液供給アーム15とガス供給アーム25とが別々に構成されている態様を用いて説明するが、これに限られることはなく、液供給アーム15とガス供給アーム25とが一体となっていてもよい(一つのアームが液供給アームとガス供給アームの両方の機能を兼ねてもよい)。
【0022】
また、リンス液供給機構10の液供給ノズル16と疎水化ガス供給機構20のガス供給ノズル26の位置関係は、これら液供給ノズル16とガス供給ノズル26が被処理基板90の回転中心から周縁方向に向けて移動する間において、混合ガスGがリンス液Rよりも被処理基板90の回転中心側に供給されるようになっている(図2参照)。
【0023】
また、疎水化ガス供給機構20は、当該疎水化ガス供給機構20から加熱された疎水化ガスを供給するための疎水化ガス加熱部29hを有している。より具体的には、図3に示すように、疎水化ガス供給機構20の疎水化ガス供給部22は、疎水化液(疎水化ガスが液化した状態になっているもの)を供給する疎水化液供給部24と、疎水化液供給部24から供給された疎水化液を案内する疎水化液供給管24aと、疎水化液供給管24aを経た疎水化液を加熱して気化させることで高温の疎水化ガスを生成する疎水化ガス加熱部29hと、を有している。なお、疎水化液供給管24aには、疎水化液供給部24から供給される疎水化液の量を調整する疎水化液流量調整部24bが設けられている。また、疎水化ガス加熱部29hは、ガス供給管23に連結されたガス供給筐体29内に配置されている。
【0024】
また、図3に示すように、ガス供給筐体29には、疎水化ガスにNやArなどからなるキャリアガスを混入させるキャリアガス供給部30がキャリアガス供給管31を介して連結されている。そして、キャリアガス供給部30からキャリアガスが供給されることで、気化された高温の疎水化ガスとキャリアガスとが混ざり合った混合ガスGが生成され、当該混合ガスGがガス供給管23およびガス供給ノズル26を経て被処理基板90に供給されることとなる。
【0025】
ところで、本実施の形態において、後述する液処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムが記憶媒体81に格納されている(図1参照)。そして、液処理装置は、記憶媒体81を受け付けるコンピュータ80と、当該コンピュータ80からの信号を受けて、液処理装置自身(より具体的には、薬液供給機構1、リンス液供給機構10、疎水化ガス供給機構20、回転駆動機構40およびリフト駆動部45)を制御する制御装置85も備えている。そして、記憶媒体81をコンピュータ80に挿入する(または取り付ける)ことで、制御装置85によって、後述する一連の液処理方法を液処理装置に実行させることができる。なお、本願において記憶媒体81とは、例えば、CD、DVD、MD、ハードディスク、RAMなどを意味している。
【0026】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0027】
まず、リフト駆動部45によって、リフトピンプレート55が上方位置(搬送ロボット(図示せず)が被処理基板90を受け渡す位置)に位置づけられる(上方位置づけ工程)。
【0028】
次に、リフトピンプレート55の3つのリフトピン55aによって、搬送ロボットから被処理基板90が受け取られ、当該リフトピン55aによって被処理基板90の裏面(下面)が支持される(受取工程)。
【0029】
次に、リフト駆動部45によって、リフトピンプレート55が下方位置(被処理基板90が薬液などによって処理される位置)に位置づけられる(下方位置づけ工程)(図1参照)。
【0030】
このようにリフトピンプレート55が下方位置に位置づけられる間に、支持プレート51の支持部50によって、被処理基板90の基板本体部91が保持されるとともに支持される(支持工程)(図1参照)。このとき、被処理基板90は、凸形状部92が上方に位置し、基板本体部91が下方に位置するように位置づけられている(図4(a)−(c)参照)。
【0031】
次に、モータ41によって回転軸52が回転駆動されることによって、支持プレート51の支持部50で保持されて支持された被処理基板90が回転される(回転工程)(図2の矢印A参照)。そして、このように被処理基板90が回転している間に、以下の工程が行われる。
【0032】
まず、薬液供給機構1によって、被処理基板90に薬液が供給される(薬液供給工程)(図2参照)。すなわち、薬液供給部2から薬液供給管3に薬液が供給され、当該薬液供給管3を経た薬液が液供給ノズル16から被処理基板90の表面(上面)に供給される。
【0033】
次に、リンス液供給機構10によって、薬液供給機構1によって薬液が供給された後の被処理基板90の表面に被処理基板90の凸形状部92を液面から露出させない状態でリンス液Rが供給される(リンス液供給工程)(図2および図4(a)参照)。このように凸形状部92が液面から露出されないので、凸形状部92の間で表面張力が働くことを防止することができる。なおこのとき、リンス液供給部12からリンス液供給管13にリンス液Rが供給され、当該リンス液供給管13を経たリンス液Rが液供給ノズル16から被処理基板90の表面に供給されることとなる。
【0034】
次に、液供給ノズル16からリンス液Rが被処理基板90に供給されている状態で、液供給アーム移動部61によって、液供給アーム15が、液供給ノズル16が被処理基板90の中心から周縁方向に向かって円弧を描くようにして、水平方向に揺動され始める(リンス液移動工程が開始される)(図2の矢印Aおよび図4(b)の矢印A参照)。
【0035】
このとき、疎水化ガス供給機構20によって、リンス液Rが供給された後の被処理基板90の表面に混合ガスGが噴出されて供給され始め(ガス供給工程が開始され)、かつ、ガス供給アーム移動部62によって、ガス供給アーム25が、ガス供給ノズル26が被処理基板90の周縁方向に向かって円弧を描くようにして、水平方向に揺動され始める(ガス移動工程が開始される)(図2の矢印A参照および図4(b)の矢印A参照)。なおこのとき、ガス供給ノズル26は、液供給ノズル16とガス供給ノズル26が被処理基板90の回転中心から周縁方向に向けて移動する間において、液供給ノズル16から被処理基板90へリンス液Rが供給される位置よりも、被処理基板90の回転中心側の位置に対して混合ガスGを供給する。
【0036】
ところで、本実施の形態では、液供給アーム15とガス供給アーム25が同じ方向に揺動する態様を用いて説明するが、これに限られることはなく、例えば、液供給アーム15とガス供給アーム25は互いに逆方向に揺動されてもよい。この場合においても、被処理基板90が回転されているので、同様の効果が得られる。すなわちこの際にも、ガス供給ノズル26は、液供給ノズル16とガス供給ノズル26が被処理基板90の回転中心から周縁方向に向けて移動する間において、液供給ノズル16から被処理基板90へリンス液Rが供給される位置よりも、被処理基板90の回転中心側の位置に対して混合ガスGを供給することとなるので、被処理基板90を中心から周縁に向かって順次処理することができる。
【0037】
以下、リンス液供給工程、リンス液移動工程、ガス供給工程およびガス移動工程が行われている間の作用について、具体的に説明する。
【0038】
なお、凸形状部92を倒壊させようとする力Fは、以下の式によって導かれる。
【数1】

ここで、γはリンス液Rと凸形状部92との間の界面張力を意味し、θはリンス液Rの凸形状部92の側面に対する傾斜角度を意味し、Hは凸形状部92の間のリンス液Rの液面高さを意味し、Dは凸形状部92の奥行きの長さを意味し(図示せず)、Sは凸形状部92間の間隔を意味している(図5(a)参照)。
【0039】
まず、被処理基板90の表面に混合ガスGが噴出されて供給され始める際について説明する。このように混合ガスGが噴出されて供給され始める際には、図5(a)に示すように、混合ガスGが勢いよく噴出されるので、被処理基板90の凸形状部92に対してθを90°に近い状態で液面を低下させることができ、凸形状部92間に働く表面張力を小さくすることができる。
【0040】
すなわち、(従来のように)疎水化ガスを噴出しない場合には、リンス液Rの液面の高さがゆっくり低下するので、図9(a)に示すようにθが小さくなってしまい(cosθが大きくなってしまい)、結果的に凸形状部92を倒壊させようとする力Fが大きくなってしまうことから、凸形状部92が倒壊してしまう(図9(b)参照)。これに対して、本実施の形態によれば、混合ガスGを勢いよく噴出することができるので、図5(a)に示すようにθを小さくすることができ(θを90°(cosθ=0)に近い状態にすることができ)、結果的に凸形状部92を倒壊させようとする力Fを小さくすることができる。
【0041】
次に、被処理基板90の表面に疎水化ガスによる疎水化面93が形成され始めた後について説明する。このように被処理基板90の表面に疎水化面93が形成され始めた後においては、隣接する凸形状部92のうちの少なくとも一つに疎水化面93が形成されることとなる。このため、例えリンス液Rが疎水化面93の形成された凸形状部92側に跳ねるようなことがあっても、単にNやArなどからなる不活性ガスを吹きつけた場合と異なり、当該リンス液Rは弾かれ、凸形状部92の間にリンス液Rが跨って存在することを防止することができる(図5(b)参照)。この結果、凸形状部92の間に表面張力が働くことがなくなるので、凸形状部92が倒壊することを防止することができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、液供給ノズル16とガス供給ノズル26が同時に揺動され、リンス液Rが供給される位置よりもわずかに被処理基板90の回転中心側の位置に混合ガスGが供給される(図4(b)参照)。このため、隣接する凸形状部92のうちの少なくとも一つに疎水化面93が素早く形成され、凸形状部92の間に表面張力が働くことを防止することができる。
【0043】
また、本実施の形態では、混合ガスGが噴出されるので、既に疎水化面93が形成された凸形状部92側から未だ疎水化面93が形成されていない凸形状部92側へと混合ガスGの噴出力が加わり、リンス液Rが疎水化された凸形状部92側へと移動することを防止することができる(図5(b)参照)。このため、リンス液Rが凸形状部92の間に跨って存在することをさらに確実に防止することができる。
【0044】
ところで、疎水化ガスとしてジメチルアミノトリメチルシラン(TMSDMA)などのシリル化剤を用いた場合には、凸形状部92の側面に存在する親水性の−OH基がシリル化して、疎水性のトリメチルシロキシ基(−OSi(CH33)が生成されることで、疎水化されることとなる(疎水化面93が形成されることとなる)。
【0045】
また、本実施の形態では、気体となって容量の大きくなった疎水化ガスを用いているので、従来技術と比較して高価な疎水化液の使用量を少なくすることができ、被処理基板90を処理するコストを低くすることができる。
【0046】
なお、本実施の形態によれば、キャリアガス供給部30から供給されるキャリアガスが疎水化ガスに混入されて、混合ガスGとして被処理基板90に供給される。このため、少ない量の疎水化ガスであっても強い噴出力で凸形状部92の表面に到達させることが可能となり、使用する疎水化液の量をより低減させることができる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、混合ガスG中の疎水化ガスによって被処理基板90を疎水化させるとともに、当該被処理基板90を混合ガスGで乾燥させることができるので、従来技術のように疎水化処理を施す工程を別途設ける必要がない。このため、従来技術と比較して、被処理基板90の処理効率を高くすることができる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、液供給アーム15とガス供給アーム25が同時に揺動され、リンス液Rによって被処理基板90を洗浄する処理と、混合ガスGによって被処理基板90を疎水化するとともに乾燥する処理とを並行して行うことができる。このため、被処理基板90の処理効率をより高くすることができる。
【0049】
ところで、本実施の形態では、疎水化ガス加熱部29hで加熱されて気化された高温の疎水化ガスを用いているので、高温の混合ガスGで被処理基板90の表面を効率よく乾燥させることができる。このため、被処理基板90の処理効率をさらに高くすることができる。
【0050】
上述のように、リンス液供給工程、リンス液移動工程、ガス供給工程およびガス移動工程を行いながら、ガス供給アーム25に設けられたガス供給ノズル26が終端位置まで移動させられると、被処理基板90の表面全体が疎水化されるとともに乾燥されることとなる(図4(c)参照)。そして、その後に、モータ41の回転が停止されて、被処理基板90の回転が停止されることとなる(図1参照)。
【0051】
このように被処理基板90の回転が停止されると、リフト駆動部45によって、リフトピンプレート55が上方位置に位置づけられ、リフトピン55aによって被処理基板90が持ち上げられる(上方位置づけ工程)。その後、搬送ロボットによって被処理基板90が受け取られて搬出される(搬出工程)。
【0052】
ところで、上記では、高温の混合ガスGを被処理基板90に供給するために、疎水化ガス供給機構20の疎水化ガス供給部22が疎水化ガスを加熱する疎水化ガス加熱部29hを有する態様を用いて説明したが、これに限られることはない。例えば、図6(a)に示すように、キャリアガス供給管31に、キャリアガス供給部30から供給されるキャリアガスを加熱するキャリアガス加熱部31hが設けられた態様を用いてもよいし、図6(b)に示すように、ガス供給管23に、疎水化ガスとキャリアガスとが混ざり合った混合ガスGを加熱する混合ガス加熱部23hが設けられた態様を用いてもよい。
【0053】
なお、このようにキャリアガス加熱部31hや混合ガス加熱部23hを用いる態様においては、図6(a)(b)に示すように、疎水化ガス供給機構20が疎水化液を貯留する貯留筐体28を有し、当該貯留筐体28内の疎水化液内にキャリアガスを供給することで、疎水化ガスとキャリアガスが混合した混合ガスGをガス供給管23に供給するようにしてもよい。
【0054】
ところで、本実施の形態において、液処理装置は、図7に示すように、疎水化ガス供給機構20によって疎水化ガスが供給された後の被処理基板90(搬出工程で搬出された後の被処理基板90)を載置するための載置台72と、当該被処理基板90に紫外線を照射する紫外線照射部71とを有する紫外線照射機構70をさらに備えてもよい。なお、紫外線照射部71には当該紫外線照射部71を水平方向に(被処理基板90の表面に沿って)移動させる紫外線移動部67が設けられている。
【0055】
このような紫外線照射機構70を設けることによって、被処理基板90の表面に形成された疎水化面93を除去することができ、かつ、有機物からなるパーティクルを被処理基板90から除去することもできる。
【0056】
なお、紫外線照射部71は被処理基板90に対して「相対的」に移動すればよいので、上述のように紫外線移動部67によって紫外線照射部71を水平方向に移動する態様に限らず、載置台72を水平方向に移動させる紫外線移動部67’を用いてもよい(図7の二重鎖線および点線の矢印、参照)。
【0057】
第2の実施の形態
次に、図8により、本発明の第2の実施の形態について説明する。図1乃至図7に示した第1の実施の形態は、モータ41が、回転軸52を回転させることで被処理基板90を回転させるものであり、液供給アーム移動部(リンス液移動部)61によって液供給アーム15が水平方向に揺動され、ガス供給アーム移動部(疎水化ガス移動部)62によってガス供給アーム25が水平方向に揺動される態様であった。
【0058】
これに対して、図8に示す第2の実施の形態は、支持部(図示せず)を有する支持プレート51’によって支持された被処理基板90(凸形状部92が上方に位置し、基板本体部91が下方に位置するように位置づけられている被処理基板90)の上方に、薬液を供給する薬液供給機構1’と、リンス液Rを供給するリンス液供給機構10’と、疎水化ガス(または混合ガスG)を噴出して供給する疎水化ガス供給機構20’が設けられている態様である。また、薬液供給機構1には当該薬液供給機構1を水平方向に移動させる薬液移動部66が設けられ、リンス液供給機構10には当該リンス液供給機構10を水平方向に移動させるリンス液移動部61’が設けられ、疎水化ガス供給機構20には当該疎水化ガス供給機構20を水平方向に移動させる疎水化ガス移動部62’が設けられている。
【0059】
なお、本実施の形態でも、被処理基板90に紫外線を照射する紫外線照射部71を有する紫外線照射機構70が設けられ、紫外線照射部71には当該紫外線照射部71を水平方向に移動させる紫外線移動部67が設けられている。また、薬液移動部66、リンス液移動部61’、疎水化ガス移動部62’および紫外線移動部67によって移動機構60’が構成されている。
【0060】
ところで、移動機構60’を構成する薬液移動部66、リンス液移動部61’、疎水化ガス移動部62’および紫外線移動部67は、薬液供給機構1’、リンス液供給機構10’、疎水化ガス供給機構20’および紫外線照射機構70の各々を同時に水平方向に移動させることができる。
【0061】
その他の構成は図1乃至図7に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図8に示す第2の実施の形態において、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0062】
本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができ、主要な効果としては、凸形状部92の倒壊を確実に防止することができるとともに、被処理基板90の処理効率を高くし、かつ、被処理基板90の処理コストを低くすることができる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、薬液供給機構1’、リンス液供給機構10’、疎水化ガス供給機構20’および紫外線照射機構70の各々が同時に水平方向に移動されるので、薬液によって被処理基板90を洗浄する処理と、リンス液Rによって被処理基板90を洗浄する処理と、疎水化ガスによって被処理基板90を疎水化するとともに乾燥する処理と、紫外線によって被処理基板90から疎水化面93を除去するとともに有機物からなるパーティクルを除去する処理を並行して行うことができる。このため、高い効率で被処理基板90の処理することができる。
【0064】
なお、薬液供給機構1、リンス液供給機構10、疎水化ガス供給機構20および紫外線照射機構70は、被処理基板90に対して「相対的」に移動すればよい。このため、上述のように、薬液供給機構1を移動させる薬液移動部66や、リンス液供給機構10を移動させるリンス液移動部61’や、疎水化ガス供給機構20を移動させる疎水化ガス移動部62’や、紫外線照射部71を移動させる紫外線移動部67を用いる代わりに、支持プレート51を移動させる移動機構60”が設けられてもよい(図8の二重鎖線および点線の矢印、参照)。この場合には、この移動機構60”が、薬液移動部66、リンス液移動部61’、疎水化ガス移動部62’および紫外線移動部67を構成することとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、該本体部に設けられた複数の凸形状部とを有する被処理体を処理する液処理装置において、
前記被処理体の前記本体部を支持する支持部と、
前記支持部によって支持された前記被処理体に薬液を供給する薬液供給機構と、
前記薬液供給機構によって薬液が供給された後の前記被処理体に、リンス液を供給するリンス液供給機構と、
前記リンス液供給機構によってリンス液が供給された後の前記被処理体に、疎水化ガスを噴出して供給する疎水化ガス供給機構と、
を備えたことを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
前記被処理体に対して、前記疎水化ガス供給機構を相対的に移動させる移動機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記被処理体に対して、前記リンス液供給機構と前記疎水化ガス供給機構を相対的に移動させる移動機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記リンス液供給機構を前記被処理体に対して相対的に移動させるリンス液移動部と、前記疎水化ガス供給機構を前記被処理体に対して相対的に移動させる疎水化ガス移動部とを有し、
前記リンス液移動部と前記疎水化ガス移動部は、前記リンス液供給機構と前記疎水化ガス供給機構を同時に移動させることを特徴とする請求項3に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記支持部を回転軸を中心に回転させることで、前記被処理体を回転させる回転駆動機構をさらに備え、
前記移動機構は、前記リンス液供給機構と前記疎水化ガス供給機構を前記回転軸に直交する方向に同時に移動させ、
前記リンス液供給機構と前記疎水化ガス供給機構の位置関係は、該リンス液供給機構と該疎水化ガス供給機構が少なくとも前記被処理体の回転中心から周縁方向に向けて移動する際に、疎水化ガスがリンス液よりも該被処理体の回転中心側に供給されるようになっていることを特徴とする請求項3に記載の液処理装置。
【請求項6】
前記疎水化ガス供給機構は、該疎水化ガス供給機構から加熱された疎水化ガスを供給するための疎水化ガス加熱部を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項7】
疎水化ガスにキャリアガスを混入させることで、前記被処理体に疎水化ガスとキャリアガスとが混ざり合った混合ガスを供給させるキャリアガス供給部をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項8】
前記キャリアガス供給部から供給されるキャリアガスを加熱するキャリアガス加熱部をさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の液処理装置。
【請求項9】
疎水化ガスとキャリアガスとが混ざり合った混合ガスを加熱する混合ガス加熱部をさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の液処理装置。
【請求項10】
前記疎水化ガス供給機構によって疎水化ガスが供給された後の前記被処理体に、紫外線を照射する紫外線照射機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項11】
前記疎水化ガス供給機構によって疎水化ガスが供給された後の前記被処理体に、紫外線を照射する紫外線照射機構と、
前記被処理体に対して、少なくとも前記疎水化ガス供給機構および前記紫外線照射機構を相対的に移動させる移動機構と、をさらに備え、
前記移動機構は、前記疎水化ガス供給機構と前記紫外線照射機構を同時に移動させることを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項12】
本体部と、該本体部に設けられた複数の凸形状部とを有する被処理体を処理する液処理方法において、
支持部によって、前記被処理体を支持することと、
薬液供給機構によって、前記支持部に支持された前記被処理体に薬液を供給することと、
リンス液供給機構によって、前記薬液供給機構によって薬液が供給された後の前記被処理体にリンス液を供給することと、
疎水化ガス供給機構によって、前記リンス液供給機構によってリンス液が供給された後の前記被処理体に疎水化ガスを噴出して供給することと、
を備えたことを特徴とする液処理方法。
【請求項13】
移動機構によって、前記被処理体に対して前記疎水化ガス供給機構を相対的に移動させることを特徴とする請求項12に記載の液処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−258068(P2010−258068A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103767(P2009−103767)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】