説明

液圧アクチュエーター制御方法及びその装置

【課題】基底圧用ポンプより戻液管路内に基底圧力が常時付与されているため、両側室に圧力が作用しないゼロ荷重となる場合は無くなり、負荷の変動に対する変位位置決め精度の低下を防ぐことができ、制御の信頼性及び安定性を向上することができる。
【解決手段】液圧アクチュエーター1内の押側室Sに連通する切換弁2・3及び引側室Lに連通する切換弁を設け、各切換弁に液圧発生源に接続される給液管路4及びタンクTに接続される戻液管路5を接続し、給液管路に吐出量可変ポンプ7を配設すると共に給液管路に高速オンオフ弁8を配設し、荷重や変位等の目標値と実際値とを比較しつつ、吐出量可変ポンプ及び高速オンオフ弁により液圧アクチュエーターの作動状態を演算制御するに際し、戻液管路内に基底圧力を常時付与してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば土木建築用構造部材の材料載荷試験機における試験体への負荷制御、油圧プレス機のシリンダ荷重制御やシリンダの変位制御に用いられる液圧アクチュエーター制御方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の液圧アクチュエーター制御装置として、例えば、図3に示す如く、載荷試験機に内蔵された液圧アクチエーター1としての、押側室及び引側室の受圧面積が同一である両側ロッド型の油圧シリンダの一方のロッド1aに取付部材Dに取り付けられた制御対象物Wとしての試験体を連結し、液圧アクチュエーター1内の押側室Sに連通する二位置電磁切換弁からなる切換弁2及び引側室Lに連通する同構造の切換弁3を設け、各切換弁2・3に液圧発生源に接続される給液管路4及びタンクTに接続される戻液管路5を接続し、給液管路4にインバータ駆動のモータ6からなる吐出量可変ポンプ7を配設すると共に給液管路4とタンクTとの間に2ポート2位置スプリングリターン電磁高速切換弁からなる高速オンオフ弁8を配設し、かつ、上記ロッド1aの変位を取り出すポテンションメーター等の位置センサー9、荷重を測定するロードセル等の荷重センサー10及び給液管路4内の圧力を検出する圧力変換器としての制御圧センサー11並びにこれら主たる制御要素を演算制御する演算制御部12を設けて構成した構造のものが知られている。
【0003】
しかして、図3の如く、制御対象物Wに対する図中右方向への押荷重過程及び押荷重の除荷重過程、並びに、制御対象物Wに対する図中左方向への引荷重過程及び引荷重の除荷重過程において、液圧アクチュエータ1による荷重、ロッド1aの変位、給液管路4内の圧力をそれぞれ荷重センサー10、位置センサー9、制御圧センサー11からフィードバック信号としての実際値を得ながら、演算制御部12によって、予め定めた荷重やロッドの変位等の制御目的の目標値に合致すべく制御信号を出力して液圧アクチュエーターの作動状態をフィードバック制御するようにしている。
【0004】
即ち、制御対象物Wに対する押荷重過程においては、図3において、一方の切換弁2はそのままの非励磁位置にして、他方の切換弁3は励磁位置に切り換えて引側室LをタンクTに接続し、この状態で、上記液圧アクチュエーター1の押側室Sに切換弁2を介して給液管路4から作動油たる作動液体を供給し、この制御圧力は目標値とフィードバック信号である実際値との比較によりインバータ駆動される吐出量可変ポンプ7により制御され、実際値が目標値に到達したとき、押荷重の除荷重過程に移り、この押荷重の除荷重過程においては、高速オンオフ弁8を高速オンオフ制御し、このオンオフ制御は目標値とフィードバック信号である実際値との比較により制御され、ついに押荷重はゼロに至り、そして、引荷重過程に移ることになり、この引荷重過程においては、高速オンオフ弁8のオフ状態において一方の切換弁2を励磁位置に切り換えて押側室SをタンクTに接続し、かつ、上記切換弁3を非励磁位置に切り換えて液圧アクチュエーター1の引側室Lに給液管路4から作動液体を供給し、この制御圧力は上記押荷重過程と同様に、目標値とフィードバック信号である実際値との比較によりインバータ駆動される吐出量可変ポンプ7により制御され、実際値が目標値に到達したとき、引荷重の除荷重過程に移り、この引荷重の除荷重過程においては、高速オンオフ弁8を高速オンオフ制御し、このオンオフ制御は目標値とフィードバック信号である実際値との比較により制御され、ついに引荷重はゼロに至り、そして、必要に応じ、再び、押荷重過程に移り、このような液圧アクチュエーターの作動状態の制御により制御対象物Wである試験体の載荷試験がなされる。
【特許文献1】特公平5−9641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらこの従来構造の場合、上記過程中、上記押荷重の除荷重過程から引荷重過程、又は、上記引荷重の除荷重過程から押荷重過程に移る際に、押側室及び引側室の両室に圧力が作用しないゼロ荷重となる場合があり、この状態では、液圧アクチュエーターの誤差補正移動に対して摩擦力が干渉し、スティックスリップが生じ、負荷の変動に対して変位位置決め精度が低下することがあり、又、上記切換弁は制御対象物たる試験体に対する衝撃を与えないように、例えば0.5MPa以下の極低圧力の付近で切り換えているため、押側室又は引側室内の圧力が抜けにくくて除荷が遅れ、制御信号に対する追従性が低下することがあり、ゼロ荷重付近における制御の信頼性及び安定性に欠けることがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の方法の発明は、液圧アクチュエーター内の押側室に連通する切換弁及び引側室に連通する切換弁を設け、該各切換弁に液圧発生源に接続される給液管路及びタンクに接続される戻液管路を接続し、該給液管路に吐出量可変ポンプを配設すると共に給液管路に高速オンオフ弁を配設し、荷重や変位等の目標値と実際値とを比較しつつ、該吐出量可変ポンプ及び高速オンオフ弁により液圧アクチュエーターの作動状態を演算制御するに際し、上記戻液管路内に基底圧力を常時付与することを特徴とする液圧アクチュエーター制御方法にある。
【0007】
又、請求項2記載の方法の発明は、上記液圧アクチュエーターは両側ロッド型シリンダであることを特徴とするものである。
【0008】
又、請求項3記載の装置の発明は、液圧アクチュエーター内の押側室に連通する切換弁及び引側室に連通する切換弁を設け、該各切換弁に液圧発生源に接続される給液管路及びタンクに接続される戻液管路を接続し、該給液管路に吐出量可変ポンプを配設すると共に給液管路に高速オンオフ弁を配設し、荷重や変位等の目標値と実際値とを比較しつつ、該吐出量可変ポンプ及び高速オンオフ弁により液圧アクチュエーターの作動状態を演算制御する演算制御部を設けてなり、上記戻液管路内に基底圧力を常時付与可能な基底圧用ポンプを配設してなることを特徴とする液圧アクチュエーター制御装置にある。
【0009】
又、請求項4記載の装置の発明は、上記液圧アクチュエーターは両側ロッド型シリンダであることを特徴とするものであり、又、請求項5記載の装置の発明は、上記戻液管路に戻液管路内の基底圧力を検出する基底圧センサーを設けてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述の如く、請求項1又は2記載の発明にあっては、基底圧用ポンプより戻液管路内に基底圧力が常時付与されているため、両側室に圧力が作用しないゼロ荷重となる場合は無くなり、負荷の変動に対する変位位置決め精度の低下を防ぐことができ、かつ、押側室又は引側室内の圧力の抜けが速やかになされ、除荷重の遅れを防ぐことができ、制御信号に対する追従性を高めることができ、制御の信頼性及び安定性を向上することができる。
【0011】
又、請求項2又は4記載の発明にあっては、上記液圧アクチュエーターは両側ロッド型シリンダであるから、押側室及び引側室の受圧面積を同一とすることにより、押側室及び引側室に掛ける基底圧力を同一にすることができ、回路構成の簡素化及び変位又は荷重等の制御の容易性を得ることができ、又、請求項5記載の発明にあっては、上記戻液管路に戻液管路内の基底圧力を検出する基底圧センサーを設けているから、戻液管路内の基底圧力の設定を容易に行うことができると共に制御をもすることもでき、それだけ、変位又は荷重等の制御の信頼性及び安定性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1、図2は本発明の実施の形態例を示している。尚、本発明及び実施の形態例と背景技術との対比及び明確化を図るため、上記背景技術を示す図3に用いた符号と同一態様部分には同符合を付して説明を省略する。
【0013】
13は基底圧用ポンプであって、この場合、インバーター駆動のモータ14を備えてなり、上記戻液管路5とタンクTとの間に設けられ、かつ、戻液管路5に逆止弁15を設けると共に基底圧力調整用のリリーフ弁を設け、戻液管路5内に基底圧力を常時付与するように構成している。
【0014】
16は基底圧センサーであって、この場合、圧力変換器からなり、上記戻液管路5に設けられ、戻液管路5内の基底圧力を検出し、上記演算制御部12に接続され、戻液管路5内の基底圧力の設定及び制御に用いられる。
【0015】
16は過負荷防止回路であって、過負荷防止用の逆止弁18からなり、過大な圧力が生じたときに戻液管路5内の圧力を逃がすようにしている。
【0016】
この実施の形態例は上記構成であるから、図1において、上記基底圧用ポンプ13より戻液管路5内に基底圧力が常時付与されることになり、このため、押荷重過程において、引側室LをタンクTに接続し、押側室Sが吐出量可変ポンプ7により制御され、実際値が目標値に到達し、押荷重の除荷重過程に移り、この押荷重の除荷重過程においては、高速オンオフ弁8により目標値と実際値との比較により制御され、ついに押荷重は基底圧力に至り、そして、引荷重過程に移り、引荷重過程においては、押側室SをタンクTに接続し、引側室Lが吐出量可変ポンプ7により制御され、実際値が目標値に到達し、引荷重の除荷重過程に移り、この引荷重の除荷重過程においては、高速オンオフ弁8により目標値と実際値との比較により制御され、ついに引荷重は基底圧力に至り、そして、必要に応じ、再び、押荷重過程に移り、このような液圧アクチュエーターの作動状態の制御により制御対象物Wである試験体の載荷試験がなされることになる。
【0017】
従って、上記過程中、特に、上記押荷重の除荷重過程から引荷重過程、又は、上記引荷重の除荷重過程から押荷重過程に移る際に、戻液管路5内には基底圧力が常時付与されているため、両側室に圧力が作用しないゼロ荷重となる場合は無くなり、このため、負荷の変動に対する変位位置決め精度の低下を防ぐことができ、かつ、押側室又は引側室内の圧力の抜けが速やかになされ、除荷重の遅れを防ぐことができ、制御信号に対する追従性を高めることができ、制御の信頼性及び安定性を向上することができる。
【0018】
又、この場合、上記液圧アクチュエーター1は両側ロッド型シリンダであるから、押側室S及び引側室Lの受圧面積を同一とすることにより、押側室S及び引側室Lに掛ける基底圧力を同一にすることができ、回路構成の簡素化及び変位又は荷重等の制御の容易性を得ることができ、又、この場合、上記戻液管路5に戻液管路5内の基底圧力を検出する基底圧センサー16を設けているから、戻液管路5内の基底圧力の設定を容易に行うことができると共に制御をもすることもでき、それだけ、変位又は荷重等の制御の信頼性及び安定性を向上することができる。
【0019】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、液圧アクチュエーター1、切換弁2・3の形態や回路要素等は適宜変更して設計される。例えば、上記形態例の液圧アクチュエーターは受圧面積が同一の両側ロッド型シリンダとなっているが、受圧面積の異なる両側ロッド型シリンダや片側ロッド型シリンダに適用することもできる。この場合、互いの受圧面積が異なるから、受圧面積比及び基底圧力を考慮し、互いに荷重が同じになったとき、ロッド側室及びヘッド側室の各荷重が同じになったとき、制御弁2・3を切換えることになる。
【0020】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態例の全体構成系統回路図である。
【図2】本発明の実施の形態例の説明ブロック図である。
【図3】従来構造の全体構成系統回路図である。
【符号の説明】
【0022】
W 制御対象物
S 押側室
L 引側室
1 液圧アクチュエーター
2 切換弁
3 切換弁
4 給液管路
5 戻液管路
7 吐出量可変ポンプ
8 高速オンオフ弁
12 演算制御部
13 基底圧ポンプ
16 基底圧センサー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧アクチュエーター内の押側室に連通する切換弁及び引側室に連通する切換弁を設け、該各切換弁に液圧発生源に接続される給液管路及びタンクに接続される戻液管路を接続し、該給液管路に吐出量可変ポンプを配設すると共に給液管路に高速オンオフ弁を配設し、荷重や変位等の目標値と実際値とを比較しつつ、該吐出量可変ポンプ及び高速オンオフ弁により液圧アクチュエーターの作動状態を演算制御するに際し、上記戻液管路内に基底圧力を常時付与することを特徴とする液圧アクチュエーター制御方法。
【請求項2】
上記液圧アクチュエーターは両側ロッド型シリンダであることを特徴とする請求項1記載の液圧アクチュエーター制御方法。
【請求項3】
液圧アクチュエーター内の押側室に連通する切換弁及び引側室に連通する切換弁を設け、該各切換弁に液圧発生源に接続される給液管路及びタンクに接続される戻液管路を接続し、該給液管路に吐出量可変ポンプを配設すると共に給液管路に高速オンオフ弁を配設し、荷重や変位等の目標値と実際値とを比較しつつ、該吐出量可変ポンプ及び高速オンオフ弁により液圧アクチュエーターの作動状態を演算制御する演算制御部を設けてなり、上記戻液管路内に基底圧力を常時付与可能な基底圧用ポンプを配設してなることを特徴とする液圧アクチュエーター制御装置。
【請求項4】
上記液圧アクチュエーターは両側ロッド型シリンダであることを特徴とする請求項3記載の液圧アクチュエーター制御装置。
【請求項5】
上記戻液管路に戻液管路内の基底圧力を検出する基底圧センサーを設けてなることを特徴とする請求項3又は4記載の液圧アクチュエーター制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−220243(P2006−220243A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35447(P2005−35447)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000250465)理研精機株式会社 (12)
【Fターム(参考)】