説明

液封位置調整装置およびそれを用いた軸用制振システム

【課題】制御応答性に優れ、かつ車輪、プーリ、ロボットのアームなどの回転軸で生じる振動を、少ない設置スペースで制御する。
【解決手段】支持金具2の下方への偏倚により弾性部材4が撓んで、剛性板7が下方にスライド移動すると共に、磁気粘性流体MRが第1の室R1から第2の室R2にオリフィス7aを通じて流れる場合、第1の電磁ソレノイド11を励磁することでオリフィス7aおよび連通路(通路9a,9b)を通じての流れが規制される。一方、第2の電磁ソレノイド12を励磁することで、永久磁石6との間に生ずる反発作用で、剛性板7と共に、可動部材9を上方に移動させる。これにより、支持金具2が、第1の室R1内の磁気粘性流体を介して持ち上げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液封位置調整装置およびそれを用いた軸用制振システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車輪、プーリ、ロボットのアームなどの回転軸で生じる振動を、設置スペースが少なくてすむ装置で制御したいという要求がある。
【0003】
しかし、回転軸に対し、多方向から回転軸の振動を制御できる装置がないのが現状である。
【0004】
ところで、第1の部材と第2の部材とが間隔を置いて筒状の弾性部材で結合されてハウジングが形成され、そのハウジングの内部に非圧縮性流体が封入され、前記非圧縮性流体の挙動を制御することで防振効果を発揮する防振装置は知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
そこで、そのような装置を、支持装置として円周方向に配置して、回転軸を支持させ、防振効果(制振効果)を得ることが考えられる。
【特許文献1】特開平5−1739号公報
【特許文献2】特開平5−164181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような防振装置は、そのままでは構造が複雑であるし、制御応答性に劣り、回転軸を支持させても十分な制振効果が得られない。
【0007】
そこで、発明者は、前述したような防振支持装置の構造を工夫して、制御応答性を高め、軸受け部分に組み込めば、車輪、プーリ、ロボットのアームなどの回転軸で生じる振動を、設置スペースが少なくてすむ装置で制御することができる本発明をなすに至ったものである。
【0008】
本発明は、制御応答性に優れる液封位置調整装置を提供すると共に、前記液封位置調整装置を、軸受け部分に組み込めば、車輪、プーリ、ロボットのアームなどの回転軸で生じる振動を、設置スペースが少なくてすむ装置で制御することができる軸用制振システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、第1の部材と第2の部材とが筒状の弾性部材で結合されてハウジングが形成され、そのハウジングの内部に非圧縮性流体が封入され、前記非圧縮性流体の挙動を制御することで前記第1の部材と第2の部材との間隔を調整する液封位置調整装置において、前記非圧縮性流体は磁気粘性流体であり、前記第2の部材が、底壁部と、その底壁部の中央部において一側に延びる筒状の内壁部と、前記底壁部の外縁より前記内壁部と同一側に前記内壁部より上方まで延びる外壁部とを有し、前記底壁部に前記内壁部に対応して設けた永久磁石と、前記外壁部の端部付近に前記ハウジング内部を区画して前記第1の部材側に第1室を形成し、中央部付近にオリフィスを有する第1の弾性板と、円柱形状で、前記内壁部内に一端部が移動可能に差し込まれ、他端部が前記第1の弾性板に結合され、周壁に開孔を有しこの開孔と前記第1の弾性板のオリフィスとを連通する連通路を有する可動部材と、この可動部材に設けられ前記連通路の周囲であって前記オリフィス付近に設けられる第1の電磁ソレノイドと、前記可動部材に設けられ前記永久磁石付近に位置する第2の電磁ソレノイドと、前記第1及び第2の電磁ソレノイドを制御する制御手段とを備えていることを特徴とする。ここで、磁気粘性流体としては、例えば、分散媒であるシリコン等の油中に強磁性体であるカルボニル鉄粉(直径5μm程度)を数十体積%の割合で均一分散させてなるものが用いられる。また、第1および第2の部材は、使用目的に応じた一定の剛性を有するものであればよく、金属材のほか、合成樹脂材(繊維強化樹脂を含む)で形成することも可能である。
【0010】
このようにすれば、第1の部材の下方への偏倚により弾性部材が撓んで、磁気粘性流体が第1の室から第2の室にオリフィスを通じて流れる場合、第1の電磁ソレノイドを励磁することで、オリフィスおよび連通路を通じての流れる磁気粘性流体の粘度が調整され、その流量が規制される。一方、第1の部材を元の位置に復帰させる場合には、第2の電磁ソレノイドを励磁することで、永久磁石との間に生ずる反発作用で、可動部材を上方に移動させる。これにより、第1の部材が、第1の室内の磁気粘性流体を介して持ち上げられる。
【0011】
請求項2に記載のように、前記内壁部と前記外壁部とが第2の弾性板にて連結され、この第2の弾性板と前記第1の弾性板との間に第2の室が、前記第2の弾性板と前記底壁部との間に第3の室がそれぞれ形成され、前記第1および第2の室に前記磁気粘性流体が、前記第3室に空気が封入されている構成とすることも可能である。
【0012】
このようにすれば、第2の弾性板が、第2の室の圧力変動を吸収するダイヤフラムとして、そして第3の室がダイヤフラム室としてそれぞれ機能する。
【0013】
請求項3に記載のように、前記弾性部材は、前記第2の部材側から前記第1の部材側に向かって半径が徐々に小さくなっている構成とすることができる。
【0014】
このようにすれば、第1の部材の下降により、弾性部材が外側に広がるように無理なく変形することができる。
【0015】
請求項4に記載のように、前記第1の弾性板に代えて、剛性板を用いることもできる。ここで、「剛性板」とは、必要な剛性を有する金属板や、合成樹脂板(繊維強化樹脂板を含む)を意味する。
【0016】
請求項5の発明は、装置本体に、軸部材が支持される軸用制振システムであって、前記軸部材が内筒部材内に挿通されて支持され、前記内筒部材が外筒部材内に直接的または間接的に嵌挿されて支持され、前記外筒部材が、前記外筒部材の外周囲に周方向にかつ対称に配置された請求項1〜4のいずれかに記載の液封位置調整装置を介して前記装置本体に支持され、前記各液封位置調整装置の、前記内筒部材側あるいはそれとは反対側に圧力センサが配置され、前記各圧力センサよりの信号に基づいて前記各液封位置調整装置の第1および第2の電磁ソレノイドを制御する構成とされていることを特徴とする。
【0017】
このようにすれば、軸部材と装置本体との間で生じる振動を、設置スペースをあまり必要としない液封位置調整装置を利用して、制御することができる。また、軸部材の両端が逆方向に動く振れも抑制することができる。なお、軸部材の両端に請求項1〜3のいずれかに記載の液封位置調整装置を取り付ける場合には、軸方向に配置してなくても、前述した逆方向の動く振れを抑制することは可能である。
【0018】
その場合、請求項6に記載のように、前記外筒部材は環状の中空ゴム栓を介して装置本体に弾性的に支持され、前記中空ゴム栓内に前記請求項1〜4のいずれかに記載の液封位置調整装置が設けられていることができ、さらに、請求項7に記載のように、前記中空ゴム栓内には、ガスなどの媒体が充填されている構成とすることもできる。
【0019】
このようにすれば、軸部材と装置本体との間で生ずる振動は、液封位置調整装置およびゴム栓、あるいは液封位置調整装置およびゴム栓、ガスなどの媒体によって支えられる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように構成したから、本発明によれば、制御応答性に優れる液封位置調整装置が得られる。また、そのような液封位置調整装置を、装置本体の軸部材を支持する部分に組み込めば、軸部材と装置本体との間で生ずる振動(例えば車輪、プーリ、ロボットのアームなどの回転軸で生じる振動)を、設置スペースをあまり必要としない液封位置調整装置を利用して、制御することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0022】
図1は本発明にかかる液封位置調整装置の一実施の形態を示す概略断面図である。
【0023】
図1に示すように、液封位置調整装置1は、第1の部材である円板形状の支持金具2と第2の部材である筒状金具3の上端部とが間隔を置いて筒状の弾性部材4で結合されて、内部空間が密閉空間となるハウジング5が形成されている。そのハウジング5の内部に磁気粘性流体が封入されている。
【0024】
筒状金具3は、円板形状の底壁部3aと、その底壁部3aの中央部において上側に延びる円筒状の内壁部3bと、底壁部3aの外周縁より内壁部3bと同一側に内壁部3bよりも上方まで延びる円筒状の外壁部3cとを有する。また、底壁部3aの中央部分には、内壁部3bに対応して永久磁石6が埋設されている。なお、この実施の形態では、外壁部3cの直径、高さおよび壁厚さは、それぞれ、内壁部3bの直径、高さおよび壁厚さのほぼ3倍程度で、外壁部3cの上端面は、内周側ほど高さが低くなる環状の傾斜面とされている。
【0025】
筒状金具3の外壁部3cの上端部付近において、円板形状の剛性板7(例えば金属板)が内周面に沿ってスライド移動可能に設けられている。この剛性板7によって、ハウジング5の内部が区画されて、支持金具2側に第1室R1が形成されている。この剛性板7の中央部付近には、オリフィス7aが設けられている。なお、筒状金具3の上端部には、剛性板7の移動を抑制する環状のストッパ13が設けられている。
【0026】
また、剛性板7と平行に配置される環状の弾性板8(第2の弾性板)によって、内壁部3bの外周面と外壁部3cの内周面とが結合され、この弾性板8によってもハウジング5の内部空間が区画されている。具体的には、弾性板8は、剛性板7との間に第2の室R2を、底壁部3aとの間に第3の室R3をそれぞれ形成している。
【0027】
このようにして、ハウジング5内に形成される第1及び第2の室R1,R2内には磁気粘性流体MRが封入される一方、第3室R3には空気が封入されている。
【0028】
また、筒状金具3のハウジング5内には、円柱形状の可動部材9が上下方向に移動可能に設けられている。この可動部材9は、下端部が内壁部3b内に移動可能に差し込まれ、上端部が剛性板7の下面に結合され、この可動部材9の移動により剛性板7がスライド可能に変位し、第1室R1の内圧(容積)を変化させるようになっている。
【0029】
この可動部材9は、剛性板7のオリフィス7aに一端部が連通し上下方向(軸線方向)に延びる第1の通路9aが形成されている。この通路9aは、可動部材9の上端部から上下方向中間位置付近まで延び、一端部が可動部材9の外周面に開放される第2の通路9bの他端部に連通している。この両通路9a,9bによって、剛性板7のオリフィス7aと可動部材9の外周壁の開孔とを連通する連通路が構成される。
【0030】
また、この可動部材9には、第1の通路9aの周囲に第1の電磁ソレノイド10が設けられている。この第1の電磁ソレノイド10は、オリフィス7a付近に設けられ、第1の通路9a内を流れる磁気粘性流体MRの粘度を変化させて、連通路における磁気粘性流体MRの流量を制御するものである。
【0031】
また、第2の通路9bの下側には、第1の電磁ソレノイド10に対応して同軸状に第2の電磁ソレノイド11が設けられている。この第2の電磁ソレノイド11は、永久磁石6付近に位置し、励磁されることで永久磁石6との間に反発力を生じ、底壁部3aと可動部材9との間隔が変化する構成とされている。なお、第1および第2の電磁ソレノイド10,11の励磁・消磁は、制御手段12にて制御される。また、可動部材9と内壁部3bとの間にはシール手段14が施され、可動部材9の移動により負圧状態が発生しないように底壁部3aには空気抜き孔15が設けられている。
【0032】
このように構成すれば、例えば支持金具2の下方への偏倚により弾性部材4が外方に膨らむように撓むと、剛性板7が下方にスライド移動すると共に、磁気粘性流体MRが第1の室R1から第2の室R2にオリフィス7aを通じて流れる。この場合には、第1の電磁ソレノイド10を励磁することで(第2の電磁ソレノイド11は消磁状態で)第1の通路9a内の磁気粘性流体MRの粘度が高められる。この粘度を調整することで、オリフィス7aおよび連通路(通路9a,9b)を通じての流量を制御することができ、支持金具2の位置の変化速度が調整される。
【0033】
また、第1の電磁ソレノイド10を消磁状態とすれば、弾性部材4の弾性力により、剛性板7が上方にスライド移動すると共に、第2の室R2から第1の室R1への磁気粘性流体MRの流れが生じ、支持金具2を元の位置に戻す現象が発生するが、これは磁気粘性流体MRの粘性のためにゆっくりとした動きである。なお、この場合、剛性板7の上限位置は、ストッパ13にて規制される。
【0034】
このとき、第2の電磁ソレノイド11を励磁することで永久磁石6との間に反発力を生じさせると、この反発力により剛性板7および可動部材9が速やかに持ち上げられ、支持金具2の位置を変化させるので、支持金具2を元の位置に戻す場合の応答性が高まる。この第2の電磁ソレノイド11の励磁による可動部材9の変位量は小さいので、制御する必要がある支持金具2の変位量が小さい場合に特に有効である。
【0035】
続いて、上述したような液封位置調整装置1を用いて、図2に示すように、装置本体(の軸受け部)に、(軸部材としての)回転軸が回転可能に支持される軸用制振システム構成する場合について説明する。
【0036】
回転軸(図示せず)が挿通される内筒部材21が、ベアリング22を介して外筒部材23に取り付けられている。内筒部材21には、回転軸を固定するキーを取り付けるためのキー溝21aが設けられている。
【0037】
外筒部材23の外側には、多数の液封位置調整装置1を内蔵する中空ゴム栓24を介して装置本体である環状の部品25が取り付けられている。この中空ゴム栓24は、横断面がコの字形状で、中心側の開放部分が外筒部材23の外周面に結合され、外筒部材23と中空ゴム栓24とで複数の液封位置調整装置1が配置される閉空間が構成されている。つまり、外筒部材23は環状の中空ゴム栓24を介して部品25に弾性的に支持されている。中空ゴム栓24内には、液封位置調整装置1が周方向に複数個が等角度間隔で対称に設けられ、軸方向には3列が間隔を存して設けられている。つまり、部品25と、内筒部材21(回転軸)を(ベアリング22を介して)回転可能に支持する外筒部材23との間に、軸方向、周方向にかつ対称に複数個(図2においては8個)の液封位置調整装置1が配置され、その複数個からなる組の液封位置調整装置1の環状列が、外筒部材23の軸線方向においては3列配置されている。なお、この場合各液封位置調整装置1は、支持金具2が中心側に位置するように配置してもよいし、外方側に位置するように配置してもよい。
【0038】
部品25と外筒部材23とは、中空ゴム栓24を挟んで一体に結合されており、中空ゴム栓24内は外筒部材23の外周面によって密閉状態に閉塞されている。液封位置調整装置1の外側端部に対応する、中空ゴム栓24の周壁部分に、外筒部材23(回転軸)の振動(変動)を圧力として検出する圧力センサ26が埋設されている。その密閉されたゴム栓24内の空間にはガスGが注入されており、ゴム栓24、液封位置調整装置1およびガスGからなる制振構造で、軸アッセンブリ(回転軸、内筒部材21、ベアリング22および外筒部材23)を支える構成となっている。
【0039】
このように、多方向に対称に複数の液封位置調整装置1を配置することで、各圧力センサ26よりの信号に基づいて前記各液封位置調整装置1の第1および第2の電磁ソレノイド10,11を制御して、各部分の圧力がほぼ一定になるように制御することで、部品25に対する外筒部材23の位置をほぼ一定に維持することができるで、多方向からの回転軸の振動を制御する軸用制振システムを構成することができる。このシステムの場合は、制御する必要がある回転軸の変位量は小さいので、前述した構造の液封位置調整装置1を用いることは有効である。
【0040】
なお、各圧力センサ26および各液封位置調整装置1の電磁ソレノイド10,11は、図示しないコントローラに電気的に接続されており、前記コントローラが各圧力センサ26よりの信号を受け、その信号に応じて前記各液封位置調整装置の第1および第2の電磁ソレノイド10,11の励磁・消磁を制御するようになっている。
【0041】
よって、各圧力センサ26で圧力の変動を測定し、低周波振動の場合は、液封位置調整装置1は第1の電磁ソレノイド10でオリフィス7a内の磁気粘性流体MRの粘度を調整して、第2の室R2と第1の室R1との間で移動する流量を調整することで、第1の室R1で圧力の変動と外筒部材23からの入力とを同位相にし、低周波振動を制御(抑制)する。なお、第3の室R1はダイヤフラム調圧室として機能する。一方、高周波振動の場合は、第2の電磁ソレノイド11と永久磁石6との間での反発力の変化で高周波振動を発生させることで、剛性板7も高周波振動させ、第1の室R1での圧力変動と外筒部材23からの入力とを逆位相にし、高周波振動を制御(抑制)する。
【0042】
そして、液封位置調整装置1を、多方向に配置することで、このような振動の抑制動作を多方向において行うことができるようになり、多方向の振動の制御をできる。よって、車輪、プーリ、ロボットのアームなどの回転軸で生じる振動の制御を、設置スペースが少なくてすむ液封位置調整装置1複数個用いることで実現することができる。
【0043】
上記実施の形態のほか、本発明は、次のように構成することも可能である。
(i)内筒部材21をベアリング22を介して外筒部材23で支持する必要はなく、例えば図3(a)(b)に示すように、外筒部材123を、内筒部材21が回転可能である摺動スリーブとして、ベアリングを省略することも可能である。
【0044】
その場合、各圧力センサ26は、中空ゴム栓ではなく、例えば図4(a)(b)に示すように、外筒部材223(摺動スリーブ)に埋設することもできる。また、液封位置調整装置1は軸方向に複数組設ける必要はなく、図5(a)(b)に示すように、外筒部材323の軸方向の中間部分に1組だけ液封位置調整装置1および圧力センサ26を設けるようにしてもよい。また、軸方向の両端にだけ液封位置調整装置1および圧力センサ26を設ければ、軸部材の軸方向の両端が互いに反対方向に動く振れを抑制することができる。
(ii)軸部材が回転する場合のみに限らず、軸部材と装置本体が共に静止している場合、両方が回転している場合、装置本体が回転する場合のいずれも適用可能である。
(iii)ゴム栓で密閉された空間部に充填するのは、ガスのほか、空気、水、アルキルグリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油などを用いることが可能である。
また、軸部材に大きな荷重が作用せず、液封位置調整装置1だけで支えることができる場合には、ガスが充填されたゴム栓を用いて自動車タイヤのようにガス圧で荷重を指させる必要がないので、ガスや中空ゴム栓を省略することができる。
(iv)剛性板7に代えて、弾性板(第1の弾性板)を用いることもできる。この場合には、弾性板の外周縁が筒状金具3の外壁部3cの内周部分に結合され、可動部材9の移動に応じて、弾性板の中央部分が撓むので、それにより前述した実施の形態と同様な作用効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明にかかる液封位置調整装置の一実施の形態を示す概略断面図である。
【図2】(a)(b)はそれぞれ上記液封位置調整装置を用いた軸用制振システムの一実施の形態を示す概略正面断面図および概略側面断面図である。
【図3】(a)(b)はそれぞれ上記液封位置調整装置を用いた軸用制振システムの一実施の形態を示す概略正面断面図および概略側面断面図である。
【図4】(a)(b)はそれぞれ上記液封位置調整装置を用いた軸用制振システムの一実施の形態を示す概略正面断面図および概略側面断面図である。
【図5】(a)(b)はそれぞれ上記液封位置調整装置を用いた軸用制振システムの一実施の形態を示す概略正面断面図および概略側面断面図である。
【符号の説明】
【0046】
R1 第1の室
R2 第2の室
R3 第3の室
1 液封位置調整装置
2 支持金具
3 筒状金具
3a 底壁部
3b 外壁部
3b 内壁部
4 弾性部材
5 ハウジング
6 永久磁石
7 剛性板
7a オリフィス
8 弾性板
9 可動部材
9a,9b 通路
11 第1の電磁ソレノイド
12 第2の電磁ソレノイド
21 内筒部材
22 ベアリング
23,123,223,323 外筒部材
24 中空ゴム栓
25 部品
26 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材とが筒状の弾性部材で結合されてハウジングが形成され、そのハウジングの内部に非圧縮性流体が封入され、前記非圧縮性流体の挙動を制御することで前記第1の部材と第2の部材との間隔を調整する液封位置調整装置において、
前記非圧縮性流体は磁気粘性流体であり、
前記第2の部材が、底壁部と、その底壁部の中央部において一側に延びる筒状の内壁部と、前記底壁部の外縁より前記内壁部と同一側に前記内壁部より上方まで延びる外壁部とを有し、
前記底壁部に前記内壁部に対応して設けた永久磁石と、
前記外壁部の端部付近に前記ハウジング内部を区画して前記第1の部材側に第1室を形成し、中央部付近にオリフィスを有する第1の弾性板と、
円柱形状で、前記内壁部内に一端部が移動可能に差し込まれ、他端部が前記第1の弾性板に結合され、周壁に開孔を有しこの開孔と前記第1の弾性板のオリフィスとを連通する連通路を有する可動部材と、
この可動部材に設けられ前記連通路の周囲であって前記オリフィス付近に設けられる第1の電磁ソレノイドと、
前記可動部材に設けられ前記永久磁石付近に位置する第2の電磁ソレノイドと、
前記第1及び第2の電磁ソレノイドを制御する制御手段とを備えていることを特徴とする液封位置調整装置。
【請求項2】
前記内壁部と前記外壁部とが第2の弾性板にて連結され、この第2の弾性板と前記第1の弾性板との間に第2の室が、前記第2の弾性板と前記底壁部との間に第3の室がそれぞれ形成され、前記第1および第2の室に前記磁気粘性流体が、前記第3室に空気が封入されていることを特徴とする請求項1記載の液封位置調整装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記第2の部材側から前記第1の部材側に向かって半径が徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項1または2記載の液封位置調整装置。
【請求項4】
前記第1の弾性板に代えて、剛性板を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液封位置調整装置。
【請求項5】
装置本体に、軸部材が支持される軸用制振システムであって、
前記軸部材が内筒部材内に挿通されて支持され、前記内筒部材が外筒部材内に直接的または間接的に嵌挿されて支持され、前記外筒部材が、前記外筒部材の外周囲に周方向にかつ対称に配置された請求項1〜4のいずれかに記載の液封位置調整装置を介して前記装置本体に支持され、前記各液封位置調整装置の、前記内筒部材側あるいはそれとは反対側に圧力センサが配置され、前記各圧力センサよりの信号に基づいて前記各液封位置調整装置の第1および第2の電磁ソレノイドを制御する構成とされていることを特徴とする軸用制振システム。
【請求項6】
前記外筒部材は環状の中空ゴム栓を介して装置本体に弾性的に支持され、
前記中空ゴム栓内に前記請求項1〜4のいずれかに記載の液封位置調整装置が設けられていることを特徴とする請求項5記載の軸用制振システム。
【請求項7】
前記中空ゴム栓内には、ガスなどの媒体が充填されていることを特徴とする請求項6記載の軸用制振システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−300152(P2006−300152A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120438(P2005−120438)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】