説明

液晶表示装置およびその製造方法

【課題】映像信号線とコモン電極間が異物によってショートした場合に、レーザカットによってショートを解消する際の成功率を向上させる。
【解決手段】映像信号線200と走査線300によって囲まれた領域に間に画素電極110とコモン電極108が形成されている。コモン電極108はコモン電極スリット10によって、細いストライプ部とコモン電極本体とに分けられる。映像信号線200とコモン電極108とがショートした場合、コモン電極スリット10の両端をレーザカット30で開放することによってストライプ部をコモン電極本体と分離する。これによって映像信号線200とコモン電極108とのショートの影響を無くす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、特に工程において、配線等のショート不良が発生した場合の、修復を可能とする液晶表示装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置はフラットで軽量であることから、TV等の大型表示装置から、携帯電話やDSC(Digital Still Camera)等、色々な分野で用途が広がっている。
【0003】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタ等が形成された対向基板が配置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0004】
各画素は、薄膜トランジスタ(TFT)を介して映像信号線から映像信号が供給される。また、TFTのON、OFFは走査線から走査信号を供給することによって行われる。TFTが不良となると、対応する画素も不良となり、画面欠陥となる。画面欠陥が一定数を超えると液晶表示パネル自体が不良となる。
【0005】
したがって、たとえ、TFTが不良となってもなんらかの方法でこれを補償する手段が存在すれば、液晶表示パネルの製造歩留まりが向上し、ひいては液晶表示装置のコストを削減することが出来る。液晶表示装置を高輝度化しようとすると、バターン間の間隔を小さくする必要がある。パターン間の間隔が小さくなると、配線間のショート不良が増大する。
【0006】
「特許文献1」には、画素電極を複数の領域に分け、画素電極に不具合が生じた場合に、画素電極のうちの不具合が生じた部分を他の領域から切り離して、画素の欠陥を最小限に抑える構成が記載されている。また、画素電極において、複数の領域に分けられた領域間には、幅の狭い部分を設け、レーザによるカットを容易とする構成が記載されている。
【0007】
「特許文献2」には、画素電極への映像信号の供給のためのスイッチングを行う薄膜トランジスタ(TFT)に不良が生じた場合、画素電極を複数の領域に分割して欠陥の影響を最小限に抑える構成が記載されている。「特許文献2」では、画素電極の複数の部分にくびれを設け、レーザによる切断を容易にする構成が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−21087号公報
【特許文献2】特開2000−338511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
「特許文献1」および「特許文献2」に記載の技術では、画素欠陥を目立たなくするために、レーザによって画素電極を複数の領域に分断する技術が記載されている。画素電極には透明導電膜であるITO(Indium Tin Oxide)が使用されている。ITOはレーザを照射すると、比較的蒸発しやすい。
【0010】
配線あるいは導電膜のショートは例えば、映像信号線(映像信号線)等の金属による配線と画素電極あるいはコモン電極等のITO膜との間のショートも多い。なお、TN(Twisted Nematic)方式や、VA(Vertical Alignment)方式では、コモン電極は対向基板に形成されているが、IPS(In Plane Switching)方式では、コモン電極もTFT基板に形成され、かつ、映像信号線との距離は画素電極よりもコモン電極のほうが小さい。
【0011】
例えば、IPS方式において、金属で形成されている映像信号線とITOで形成されているコモン電極の間に異物が存在して、ショートが発生した場合、レーザを照射することによってショート部分をカットすることが行われる。以後これをレーザカットという。この部分におけるレーザカットは、コモン電極を構成するITOの蒸発と、映像信号線を構成する金属の蒸発を行わなければならない。
【0012】
コモン電極を構成するITOは比較的蒸発しやすいが、映像信号線を構成するAl等の金属膜は蒸発しにくく、レーザ照射によって形成されたホールの壁等に付着しやすい。そうすると、この付着した金属膜によって新たなショート不良を発生するという問題点がある。
【0013】
したがって、従来のレーザカットにおいては、十分な歩留りでレーザカットを行うことができなかった。言い換えると、レーザカットの成功率は、特定の割合にとどまっていた。また、確実にショートを無くそうとすると、金属膜が付着しても問題がない領域まで、広くレーザカットする必要があり、レーザカットによる除去範囲が大きくなるという問題があった。
【0014】
本発明は以上のような問題点を克服するものであり、レーザカットによるショート部分の修復の成功率の向上と、レーザカットによる除去範囲が大きくなることを防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。
【0016】
(1)第1の方向に延在し、第2の方向に特定ピッチで配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に特定ピッチで配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素が形成されたTFT基板を有する液晶表示装置であって、前記画素内にはコモン電圧が印加されるコモン電極と映像信号が印加される画素電極が形成され、前記コモン電極には前記映像信号線に対向する辺と平行にスリットが形成され、前記コモン電極は、コモン電極本体と、前記スリットより前記映像信号線側に存在するストライプ部とから構成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【0017】
(2)前記コモン電極のストライプ部と前記映像信号線との距離は前記画素電極と前記映像信号線との距離よりも小さいことを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0018】
(3)前記コモン電極に形成された前記スリットは、両端が閉じており、前記コモン電極の前記ストライプ部は、前記スリットの両端部において前記コモン電極本体と導通していることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0019】
(4)前記コモン電極に形成された前記スリットは、一方の端が閉じており、他方の端が開放されており、前記コモン電極の前記ストライプ部は、前記スリットの前記一方の端部において前記コモン電極本体と導通していることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0020】
(5)第1の方向に延在し、第2の方向に特定ピッチで配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に特定ピッチで配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素が形成されたTFT基板を有する液晶表示装置であって、前記画素内にはコモン電圧が印加されるコモン電極と映像信号が印加される画素電極が形成され、前記コモン電極には前記映像信号線に対向する一つの辺に2個のスリットが形成され、前記コモン電極は、コモン電極本体と、前記2個のスリットより前記映像信号線側に存在するストライプ部とから構成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【0021】
(6)前記コモン電極のストライプ部と前記映像信号線との距離は前記画素電極と前記映像信号線との距離よりも小さいことを特徴とする(5)に記載の液晶表示装置。
【0022】
(7)前記コモン電極に形成された前記2個のスリットのうちの第1のスリットの一方の端は開放され、他方の端は閉じており、第2のスリットの一方の端は開放され、他方の端は閉じており、前記コモン電極の前記ストライプ部は、前記第1のスリットと前記第2のスリットの閉じた端部において前記コモン電極の本体と導通していることを特徴とする
(5)に記載の液晶表示装置。
【0023】
(8)前記コモン電極のストライプ部が前記コモン電極の本体と導通している部分は、前記ストライプ部が形成されている辺のほぼ中央部であることを特徴とする(7)に記載の液晶表示装置。
【0024】
(9)第1の方向に延在し、第2の方向に特定ピッチで配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に特定ピッチで配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素が形成されたTFT基板を有する液晶表示装置の製造方法であって、前記画素内にはコモン電圧が印加されるコモン電極と映像信号が印加される画素電極が形成され、前記コモン電極には前記映像信号線に対向する辺と平行にスリットが形成され、前記コモン電極は、コモン電極本体と、前記スリットより前記映像信号線側に存在するストライプ部とから構成され、前記コモン電極と前記映像信号線とがショートを生じた時に、前記スリットの端部をレーザカットによって開放させることによって、前記映像信号線と前記コモン電極本体とのショートを回避することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【0025】
(10)第1の方向に延在し、第2の方向に特定ピッチで配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に特定ピッチで配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素が形成されたTFT基板を有する液晶表示装置の製造方法であって、前記画素内にはコモン電圧が印加されるコモン電極と映像信号が印加される画素電極が形成され、前記コモン電極には前記映像信号線に対向する一つの辺に2個のスリットが形成され、前記コモン電極は、コモン電極本体と、前記2個のスリットより前記映像信号線側に存在するストライプ部とから構成されており、前記映像信号線と前記コモン電極とがショートしたときに、前記2個のスリットのうちの一方の端部をレーザカットによって開放することによって前記映像信号線と前記コモン電極本体とのショートを回避することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、IPS方式の液晶表示装置において、コモン電極と映像信号線とがショートした場合、コモン電極に形成されたスリット部をレーザカットにより開放させることによってコモン電極と映像信号線とのショートを回避するので、ショートの修正歩留りが向上する。ひいては、液晶表示装置の製造歩留りを向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、映像信号線200等の金属配線と、画素電極110あるいはコモン電極108等の透明導電膜との間のショート、あるいは、金属配線同士のショート等をレーザカット30によって修復する場合の修復を容易に、かつ、歩留り良く行うことである。
【0028】
IPS方式の液晶表示装置は、液晶表示装置の問題点の一つである、視野角特性を改善することが出来る。従来から使用されてきたTN方式の液晶では、画素電極110が形成されたTFT基板100とコモン電極108が形成された対向基板との間に映像信号による電界を印加し、液晶を垂直方向に傾けて液晶層を透過する光の量を制御する。一方、IPS方式では、画素電極110とコモン電極108を同じTFT基板100の上に形成し、基板と平行方向の電界によって、液晶分子400を基板と平行方向に回転させることに
よって液晶層を透過する光の量を制御する。
【0029】
図1はIPS方式のTFT付近の断面図である。図1において、ガラスで形成されるTFT基板100の上に、走査線300が形成されている。走査線300はAl合金で形成されている。走査線300と平行してコモン電極108にコモン電圧を供給するためのコモン配線1081が形成されている。コモン電極108にコモン電圧を供給するためである。コモン配線1081はゲート配線と同じAl合金で形成されている。
【0030】
コモン配線1081と並列して、コモン電極108が画素領域全体に、平面状に形成されている。コモン電極108は透明電極であるITO(Indium Tin Oxide)によって形成されている。後で述べる画素電極110に映像信号を印加すると、コモン電極108との間に図のような電気力線が発生し、液晶分子400を回転させて液晶層を透過する光の量を制御する。
【0031】
走査線300、コモン配線1081、コモン電極108等を覆って、ゲート絶縁膜102がSiNによって形成される。ゲート絶縁膜102の上に、半導体層103がa−Siによって形成されている。a−SiはプラズマCVDによって形成される。a−SiはTFTのチャネル部を形成するが、チャネル部を挟んでa−Si上にn+Si層が形成される。ソース電極104およびドレイン電極105とオーミックコンタクトを取るためである。n+Si層の上にソース電極104とドレイン電極105が形成される。
【0032】
ドレイン電極105は映像信号線200が兼用し、ソース電極104はスルーホールを介して画素電極110と接続される。ソース電極104もドレイン電極105も同層で同時に形成される。本実施例では、ソース電極104あるいはドレイン電極105はAl合金で形成される。
【0033】
TFTを覆って無機パッシベーション膜106がSiNによって形成される。無機パッシベーション膜106はTFTの、特にチャネル部を不純物から保護する。無機パッシベーション膜106の上には画素電極110が形成される。画素電極110は先端が閉じた櫛歯状の電極であり、透明導電膜であるITOによって形成される。画素電極110に映像信号を印加すると、図のようにコモン電極108との間に電気力線を発生して、液晶分子400を回転させ、液晶層を透過する光の量を制御する。
【0034】
無機パッシベーション膜106には図示しないスルーホールが形成され、スルーホールによってTFTのソース電極104と画素電極110を接続し、映像信号が画素電極110に供給される。画素電極110の上には配向膜120が形成される。配向膜120にはラビング処理が施され、液晶分子400の初期配向を決める。
【0035】
本発明の具体的な実施例を説明する前に、レーザによるショートの修復、および、レーザによる断線の修復について説明する。図6(a)は表示領域における画素の平面図である。図6(a)では、2個の画素電極110が記載されている。図6(a)において、映像信号線200が縦方向に延在し、特定ピッチで横方向に配列している。また、走査線300が横方向に延在し、特定ピッチで縦方向に配列している。映像信号線200と走査線300とで囲まれた領域に画素電極110およびコモン電極108が形成されている。
【0036】
コモン電極108にはコモン配線1081によってコモン電圧が供給され、画素電極110にはTFTのソース電極104から映像信号が供給される。TFTは図6には図示していないが、走査線300上に形成される。TFTのゲート電極は走査線300が使用され、TFTのドレイン電極105は、映像信号線200に接続される。また、TFTのソース電極104と画素電極110の接続は、無機パッシベーション膜106に形成されたスルーホールを介して行われる。
【0037】
図6(a)において、画素電極110には画素電極スリット1101が形成されている。画素電極110に映像信号が供給されると、画素電極スリット1101を介して画素電極110表面から下層に形成されたコモン電極108に電気力線が形成され、この電気力線によって液晶分子400が回転して液晶層を通過する光の量を制御して画像を形成する。コモン電極108の幅は画素電極110の幅よりも大きく、したがって、映像信号線200とコモン電極108との距離のほうが、画素電極110と映像信号線200との距離よりも小さい。コモン電極108が映像信号線200に近いことによって、映像信号線2
00を通る映像信号の影響が画素電極110におよぶことを防止することが出来る。
【0038】
しかし、コモン電極108と映像信号線200との距離が近いことによって、コモン電極108と映像信号線200とのショートの危険が大きい。例えば、図6(a)に示すように、映像信号線200の上に異物20が存在したような場合、映像信号線200とコモン電極108の間でショートを生ずる。この部分を拡大した断面図が図6(b)である。
【0039】
図6(b)において、コモン電極108の上にゲート絶縁膜102を挟んで映像信号線200が形成され、映像信号線200の上に無機パッシベーション膜106を挟んで画素電極110が形成されている。図6(b)は、映像信号線200とコモン電極108との間に異物20が存在して映像信号線200とコモン電極108をショートしている状態を示している。このままでは、画面欠陥となるので、異物20およびその周辺をレーザによってカットし、ショートを開放する必要がある。
【0040】
図7は図6に示すショートが生じている部分にレーザを照射して、ショートをおこさせている部分を蒸発させてショートを開放し(以後このプロセスをレーザカット30という)、その後、レーザカット30によってカットされた映像信号線200をレーザCVD60によって接続するプロセスを示す図である。
【0041】
図7において、まず、異物20の部分にレーザカット30を行い、異物20を蒸発、消滅させる。しかし、このとき、Al合金等で形成された映像信号線200も蒸発させられる。レーザによる金属のカットを以後メタルカット40と呼ぶ。Al合金等の金属は、レーザカット30(メタルカット40)を受けた場合、完全に蒸発せずに、一部が残渣として残り、この残渣が新たなショートを引き起こす場合がある。
【0042】
図12はこの状態を示したものである。図12(a)において、映像信号線200とコモン電極108との間に異物20が存在して映像信号線200とコモン電極108をショートさせている。異物20部分にレーザを照射してレーザカット30を行うと、図12(b)に示すように、異物20は蒸発して消失する。レーザは同時に映像信号線200も蒸発させ、メタルカット40を生じさせるが、映像信号線200の一部は残渣として残り、この残渣が、図12(b)に示すように、映像信号線200とコモン電極108との新たなショート80を引き起こしている。
【0043】
このようにメタルカット40による新たなショートの影響を受けないように、図7に示すように、メタルカット40が行われた周辺の、コモン電極108を形成するITOをレーザによって取り除く。このプロセスをITOカット50と呼ぶ。ITOはレーザによって蒸発しやすく、残渣によるショートの問題は少ない。その後、メタルカット40によって生じた映像信号線200の断線部をレーザCVD60を用いて接続する。
【0044】
このように、レーザカット30による映像信号線200とコモン電極108とのショートの解消は、3段階のプロセスを必要とする。また、修復部周辺のコモン電極108を除去する必要があるので、その分、透過率の減少を引き起こす。
【0045】
図8は、映像信号線200と画素電極110との間に異物20等が存在しているために、映像信号線200と画素電極110がショートした状態を示す図である。図8(a)は画素部の平面図であり、詳細は図6(a)で説明したのと同様である。図8(a)において、映像信号線200と画素電極110と間の異物20の影響で、画素電極110の一部がエッチングできず、エッチング残り70によって映像信号線200と重なった部分が生じ、この部分を異物20がショートしている状態を示してしる。
【0046】
図8(b)は図8(a)において、ショートが生じている部分の拡大断面図である。図8(b)において、映像信号線200と画素電極110の間に異物20が存在し、この異物20が画素電極110と映像信号線200をショートしている。また、画素電極110のエッチング残り70が存在し、画素電極110のエッチング残り70と映像信号線200との間も異物20によってショートされている。
【0047】
図8に示すようなショートを解消するために、図9に示すようなレーザカット30を行う。レーザカット30のプロセスは図7で説明したのと同様である。異物20をレーザで消失させようとすると、映像信号線200にもレーザを照射し、映像信号線200のメタルカット40を行うことになる。このとき、Al合金等の金属の残渣が発生し、画素電極110と映像信号線200との間に新たなショートを発生させる。図12は、映像信号線200とコモン電極108との間に新たなショートが生ずることを示しているが、映像信号線200と画素電極110に間にも同様な現象が生ずる。
【0048】
このような新たなショートの影響を無くすために、図7に示すように、ITOカット50を行う。この場合のITOカット50は画素電極110に対して行う。その後、メタルカット40によって生じた映像信号線200の断線部をレーザCVD60を用いて接続する。
【0049】
このように、画素電極110と映像信号線200との間に生じたショートの対策もコモン電極108と映像信号線200とに間に生じたショートに対する対策と同様に、3段階のプロセスを必要とする。また、修復部周辺の画素電極110を除去する必要があるので、透過率の減少を引き起こすことは、映像信号線200とコモン電極108とのショート対策の場合と同様である。
【0050】
図10は映像信号線200の上に異物20が存在し、その影響によって映像信号線200が断線する例である。図10(a)は画素部分の平面図であり、詳細は図6で説明したのと同様である。図10(a)において、映像信号線200の上に異物20が存在している部分では、映像信号線200に断線が生じている。図10(a)において、映像信号線200に断線が生じている部分の拡大断面図が図10(b)である。
【0051】
映像信号線200の断線を修復するためには、図11に示すように、まず、レーザを照射して、異物20を蒸発させ、除去する必要がある。図11では、異物20を完全に除去するために、映像信号線200の両側にレーザを照射する場合を示している。このときのレーザカット30は同時に映像信号線200もカットするのでメタルカット40となる。したがって、映像信号線200を構成するAl合金等の残渣が新たなショートを引き起こす。
【0052】
この新たなショートの影響を無くすために、映像信号線200の両側において、ITOで形成されたコモン電極108、あるいは画素電極110、あるいはその両方をレーザによるITOカット50によって除去する。その後、レーザCVD60を用いて映像信号線200の断線部を修復する。
【0053】
このように、映像信号線200が断線した場合も、コモン電極108と映像信号線200との間のショート、あるいは、画素電極110と映像信号線200との間の生じたショートに対する対策と同様に、3段階のプロセスを必要とする。また、修復部周辺の画素電極110を除去する必要があることも同様である。
【0054】
図13は、コモン電極108と映像信号線200との距離を大きくした画素構造の平面図である。すなわち、コモン電極108と映像信号線200との距離が小さいことによってショートが生ずるので、この距離を大きく取ったものである。しかし、コモン電極108と映像信号線200との距離を大きく取ると、画素電極110と映像信号線200との間におけるコモン電極108によるシールド効果が生じなくなり、画素電極110電位に対して、映像信号線を通過する映像信号による影響が生ずることになる。
【0055】
また、図13の構成では、画素領域において表示に寄与する面積が小さくなるので、液晶層の透過率が低下し、液晶表示装置の画面の明るさが低下する。コモン電極108と同時に画素電極110の幅を小さくした場合も、画素領域における表示に寄与する面積が小さくなることは同じである。
【0056】
本発明は、以上のような問題点を克服するものであり、映像信号線200とコモン電極108あるいは画素電極110とのショート、あるいは、映像信号線200の断線を歩留り良く修正する手段を提供することである。以下、実施例にしたがって、本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0057】
図2は本発明の第1の実施例を示す平面図である。図2(a)はレーザカット30による修復前の平面図であり、図2(b)はレーザカット30を行った平面図である。図2(a)において、映像信号線200が縦方向に延在し、走査線300が横方向に延在している。画素は縦方向に延在し、横方向に一定ピッチで配列した映像信号線200と横方向に延在し、縦方向に一定ピッチで配列した走査線300とで囲まれた領域に形成される。走査線300の上にはTFTが形成されるが、図2では省略されている。
【0058】
走査線300と平行してコモン配線1081が形成されている。映像信号線200と走査線300で囲まれた領域に画素電極110およびコモン電極108が形成されている。コモン電極108にはコモン配線1081からコモン電圧が供給され、画素電極110には、TFTから映像信号が供給される。コモン電極108の幅は画素電極110の幅よりも大きく形成されている。したがって、映像信号線200とコモン電極108との距離は、映像信号線200と画素電極110との距離よりも小さい。
【0059】
コモン電極108は映像信号線200により近い構成となっているので、映像信号線200を通過する映像信号の影響はコモン電極108によってシールドされる。一方、コモン電極108と映像信号線200との距離が小さいために、映像信号線200とのショートは主としてコモン電極108との間で生ずる。
【0060】
図2(a)において、コモン電極108の映像信号線200に近い領域にはコモン電極スリット10が形成され、コモン電極108の左右の端部は細いストライプ状となっている。コモン電極108のストライプ部には、上端では、コモン配線1081から、下端では、コモン電極108のブリッジ部からコモン電圧が供給される。
【0061】
図3は図2(a)のA−A断面図である。図3において、TFT基板100上にコモン電極108が形成されている。コモン電極108は映像信号線200付近において、コモン電極スリット10によって、ストライプ部となっている。コモン電極108を覆ってゲート絶縁膜102が形成され、ゲート絶縁膜102の上に映像信号線200が形成されている。映像信号線200を覆って無機パッシベーション膜106が形成され、無機パッシベーション膜106の上に画素電極110が形成されている。
【0062】
コモン電極108のストライプ部は、画素電極110よりも映像信号線200の近くに存在している。コモン電極108のストライプ部によって、画素電極110が映像信号線200の信号の影響を受けることを防止する。コモン電極108のストライプ部は映像信号線200と近いために、この部分において、映像信号線200とのショートを生じ易い。
【0063】
図2にもどり、映像信号線200の上に異物20が存在し、コモン電極108と映像信号線200とが導通している。このままでは、ショートしている画素が不良になるのみならず、該映像信号線200につながる全ての画素がショートの影響を受ける。従来は、ショートの原因となる異物20をレーザによって蒸発、除去すると同時に、映像信号線200も蒸発除去する必要があった。同時に新たなショートの影響を防止するために、周辺のコモン電極108および画素電極110をレーザによって除去していた。
【0064】
本発明では、コモン電極108をコモン電極スリット10によって、両サイドのストライプ部とコモン電極本体とに分けている。そして、映像信号線200とショートする部分は、映像信号線200に近いコモン電極スリット10の部分である。本実施例では、図2(b)に示すように、コモン電極108とコモン電極スリット10を接続しているコモン配線1081およびブリッジ部をレーザで切断することによって、コモン電極本体と映像信号線200とのショートを解消している。
【0065】
すなわち、本実施例によれば、コモン配線1081およびブリッジ部の狭い領域のみをレーザカット30することによってショートを解消することが出来る。また、本発明では、レーザカット30をする可能性が生ずる画素のコーナー部においては、画素電極110をあらかじめトリミングしておき、レーザカット30によるコモン電極108と画素電極110の新たなショートが生じないようにしている。さらに、本実施例では、コモン電極108の下部のブリッジ部のレーザカット30はITOのみをカットするITOカット50であるので、レーザカット30の残渣による新たなショートの危険を防止することが出
来る。
【0066】
以上のように、本実施例によれば、映像信号線200とコモン電極108とのショートの解消を、映像信号線200をレーザによってメタルカット40することなく、コモン電極108あるいはコモン配線1081のカットだけで行うことが出来る。また、レーザカット30を画素のコーナー部のみとすることが出来るので、レーザカット30による透過率の低下を最小限とすることが出来る。
【0067】
なお、本実施例において、コモン配線1081を切断するが、コモン電極108は、別な画素からコモン電圧が供給されるので、コモン電極108にコモン電圧が供給されずに、その画素が動作しなくなるということは無い。
【実施例2】
【0068】
図4は本発明の第2の実施例である。図4(a)はレーザカット30による修復前の平面図であり、図4(b)はレーザカット30を行った平面図である。図4(a)の構成は、コモン電極スリット10がコモン電極108の下部にまで形成されている点を除いて実施例1の図2(a)と同様である。すなわち、図4(a)においては、コモン電極108のストライプ部は、コモン配線1081のみによってコモン電極本体と接続している。
【0069】
図4(a)に示すように、映像信号線200に異物20が存在する等して、コモン電極108と映像信号線200がショートする場合が生じても、実際のショートはコモン電極108のストライプ部に生ずる場合が大部分であり、ストライプ部をコモン電極本体から切り離すことによってショートの問題を回避することが出来る。
【0070】
図4(b)は、レーザカット30によって、コモン電極108のストライプ部をコモン電極108の本体から切り離した状態を示すものである。図4(b)において、コモン配線1081にレーザカット30を行うことによって、ストライプ部をコモン配線1081、あるいはコモン電極108と切り離している。したがって、映像信号線200は、切り離されたコモン電極108のストライプ部のみとショートすることになり、液晶表示装置の動作には、ショートに影響はほとんど表れない。
【0071】
レーザカット30はコモン配線1081に対して行うので、メタルカット40になるが、この部分には、あらかじめトリミングが行われているので、新たなショートが発生する危険は小さい。また、画素電極110をトリミングした部分は、画素のコーナー部なので、透過率に対する影響もほとんどない。本実施例においても、コモン配線1081を切断するが、コモン電極108に対してコモン電圧は問題なく供給できることは実施例1で説明したとおりである。
【0072】
このように、本実施例では、レーザカット30の場所が画素当たり一箇所ですむので、レーザカット30によるショート解消の工数を実施例1に比較してさらに低減することが出来る。
【実施例3】
【0073】
図5は本発明の第3の実施例を示す平面図である。図5(a)はレーザカット30による修復前の平面図であり、図5(b)はレーザカット30を行った平面図である。図5(a)の構成は、コモン電極スリット10がコモン電極108の中央部に位置するブリッジによってコモン電極本体と接続している点を除いては、図2(a)あるいは図4(a)等と同様である。コモン電極108にブリッジが形成された部分では、画素電極110に矩形状のトリミングが形成されている。
【0074】
図5(a)に示すように、映像信号線200に異物20が存在する等して、コモン電極108と映像信号線200がショートする場合が生じても、実際のショートはコモン電極108のストライプ部に生ずる場合が大部分であり、ストライプ部をコモン電極本体から切り離すことによってショートの問題を回避することが出来る。
【0075】
図5(a)において、コモン電極108のストライプ部はブリッジを挟んで上側と下側に分かれる。図5(a)におけるショートは上側のストライプ部との間に生じている。したがって、映像信号線200とコモン電極108とのショートの問題を解消するには、上側のストライプ部をコモン電極本体から切り離せば良い。
【0076】
図5(b)は、レーザカット30によって、コモン電極108の上側のストライプ部をコモン電極108の本体から切り離した状態を示すものである。図5(b)において、コモン配線1081のブリッジ付近のストライプ部の端部をレーザカット30することによって上側のストライプ部をコモン電極本体から切り離している。これによって、映像信号線200とコモン電極108とのショートの影響は、フロートとなった、コモン電極108の上側のストライプ部のみに限られ、実質的な問題点は無くなる。
【0077】
本実施例の特徴は、レーザカット30によって失われるコモン電極108の端部は、上側のストライプ部だけである。つまり、コモン電極の下側のストライプ部は通常どおり動作をするので、画素の下側では、コモン電極108が画素電極110に対するシールド効果を維持することが出来る。さらに、本発明の優れた点は、コモン電極108のストライプ部を切り離すためのレーザカット30はコモン電極108を構成するITOのみに対して行えばよいということである。したがって、メタルカット40を行った場合のメタルの残渣による新たなショートの危険を小さくすることが出来る。本実施例においても、レーザカット30は画素当たり1箇所ですむので、レーザカット30による問題点は最小限にとどめることが出来る。
【0078】
以上のように、本実施例によれば、映像信号線200とコモン電極108とのショートが生じても、レーザカット30によって切り離すコモン電極108のストライプ部を最小限に抑えることが出来るので、コモン電極108による一定のシールド効果を維持しつつ、映像信号線200とコモン電極108のショートの問題を解決することが出来る。また、レーザカット30を実質ITOカット50のみと、かつ、レーザカット30の箇所を最小限に抑えるので、レーザカット30に起因する問題点を抑えることが出来る。
【0079】
以上の実施例ではすべて、映像信号線200とコモン電極108とのショートの問題について説明した。しかし、実施例1〜実施例3に示す構成は、映像信号線200と画素電極110との間にショートが生じた場合にもメリットを有している。すなわち、図8あるいは図9に示すように、画素電極110と映像信号線200とがショートした場合に、レーザカット30によって対策すると、メタルカット40が生じ、画素電極110あるいは、コモン電極108との新たなショートが問題となる。しかし、本発明のように、コモン電極108のストライプ部を同時に切断しておけば、コモン電極本体と画素電極110との導通の問題は回避することが出来る。
【0080】
あるいは、図10および図11に示すように、映像信号線200の断線を修復するために、映像信号線200をメタルカット40する場合も、コモン電極108のストライプ部をコモン電極本体から切り離しておけば、コモン電極本体と映像信号線200とのショート、あるいは、コモン電極本体と画素電極110とのショートというような新たな問題は回避することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】IPS方式の液晶表示装置の断面図である。
【図2】実施例1の平面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】実施例2の平面図である。
【図5】実施例3の平面図である。
【図6】映像信号線とコモン電極のショートを示す図である。
【図7】図6の構成に対するレーザカットによる対策の従来例である。
【図8】映像信号線と画素電極のショートを示す図である。
【図9】図8の構成に対するレーザカットによる対策の従来例である。
【図10】映像信号線の断線を示す図である。
【図11】図10の断線を修復する対策の従来例である。
【図12】レーザカットによって生ずる新たな問題を説明する図である。
【図13】コモン電極の幅を小さくした図である。
【符号の説明】
【0082】
10…コモン電極スリット、 20…異物、 30…レーザカット、 40…メタルカット、 50…ITOカット、 60…レーザCVD、 70…エッチング残り、 80…新たなショート、 100…TFT基板、 102…ゲート絶縁膜、 103…半導体層、 104…ソース電極、 105…ドレイン電極、 106…無機パッシベーション膜、 108…コモン電極、 110…画素電極、 120…配向膜、 200…映像信号線、 300…走査線、 400…液晶分子、 1081…コモン配線、 1101…画素電極スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延在し、第2の方向に特定ピッチで配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に特定ピッチで配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素が形成されたTFT基板を有する液晶表示装置であって、
前記画素内にはコモン電圧が印加されるコモン電極と映像信号が印加される画素電極が形成され、
前記コモン電極には前記映像信号線に対向する一つの辺に2個のスリットが形成され、前記コモン電極は、コモン電極本体と、前記2個のスリットより前記映像信号線側に存在するストライプ部とから構成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記コモン電極のストライプ部と前記映像信号線との距離は前記画素電極と前記映像信号線との距離よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記コモン電極に形成された前記2個のスリットのうちの第1のスリットの一方の端は開放され、他方の端は閉じており、第2のスリットの一方の端は開放され、他方の端は閉じており、前記コモン電極の前記ストライプ部は、前記第1のスリットと前記第2のスリットの閉じた端部において前記コモン電極の本体と導通していることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記コモン電極のストライプ部が前記コモン電極の本体と導通している部分は、前記ストライプ部が形成されている辺のほぼ中央部であることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
第1の方向に延在し、第2の方向に特定ピッチで配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に特定ピッチで配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素が形成されたTFT基板を有する液晶表示装置の製造方法であって、
前記画素内にはコモン電圧が印加されるコモン電極と映像信号が印加される画素電極が形成され、
前記コモン電極には前記映像信号線に対向する一つの辺に2個のスリットが形成され、前記コモン電極は、コモン電極本体と、前記2個のスリットより前記映像信号線側に存在するストライプ部とから構成されており、
前記映像信号線と前記コモン電極とがショートしたときに、前記2個のスリットのうちの一方の端部をレーザカットによって開放することによって前記映像信号線と前記コモン電極本体とのショートを回避することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−230431(P2012−230431A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−188101(P2012−188101)
【出願日】平成24年8月28日(2012.8.28)
【分割の表示】特願2008−216993(P2008−216993)の分割
【原出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】