説明

液晶表示装置

【課題】表示領域の周辺部分近傍に見られる表示ムラを無くし、優れた表示品位の液晶表示装置を得る。
【解決手段】各々にスイッチング素子を有する複数の画素13がマトリクス状に形成された表示領域3と表示領域3の外側であってスイッチング素子に信号を供給する引き出し配線6が形成された引き出し配線領域4とを有するアレイ基板2と、アレイ基板2上に、表示領域3と引き出し配線領域4の境界からアレイ基板2端部に向けて、相互に平行に延在する複数の畝状の凸部10と、表示領域3を覆う配向膜9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に関するものであり、詳しくは、液晶配向処理が施された液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、画素電極及び配線がマトリクス状に形成されたアレイ基板とカラーフィルタ基板とが一定間隙が保たれたまま対向して貼り合わされ、これらの基板の間隙に液晶材料が狭持された構造をしている。
【0003】
各基板の液晶材料に接する面にはポリイミド等からなる配向膜が形成されており、配向膜面をレーヨン等からなるラビング布で擦る(ラビングする)ことにより液晶材料を所定の方向に配向させる。このような液晶配向処理方法は、一般にラビング法と呼ばれ、配向膜に液晶配向規制力を与えるものである。
【0004】
ラビング法による液晶配向処理は、各基板について表示領域のみ行なうのではなく、アレイ基板、カラーフィルタ基板の全面について一括に行なわれる。従って、アレイ基板においては、ラビング法による液晶配向処理は、表示領域とその表示領域に隣接する引き出し配線領域とを区別すること無しに、アレイ基板の全面について同時に一括して行なわれる。アレイ基板の引き出し配線領域は、表示領域とは表面形状が異なるだけでなく均一性が低いため、引き出し配線領域をラビングした際に、レーヨン等からなるラビング布はその表面状態に乱れが生じる。その結果、引き出し配線領域をラビングした後に続けて表示領域をラビングすると、引き出し配線領域との境界付近の表示領域では、ラビング布の表面状態の乱れにより基板間に狭持された液晶材料の液晶配向が乱れ、表示ムラを生じることがある。
【0005】
そこで、表示領域周辺の引き出し配線領域のうちの引き出し配線を形成していない部分に、引き出し配線と同じ膜厚、幅、間隔のダミー配線を形成し、表示領域周辺の引き出し配線領域の凹凸を低減して、ラビング布の表面状態の乱れを抑制し、引き出し配線領域と境界付近の表示領域での表示ムラを無くす方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−084387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この表示領域周辺の引き出し配線領域であって、引き出し配線を形成していない部分にダミー配線を形成することにより、表示領域周辺の引き出し配線領域の凹凸を低減しただけでは、引き出し配線、ダミー配線の形成状態の不均一さに起因してラビング布の繊維配向乱れが生じることは十分に抑制できない。その結果、液晶配向が乱れ、引き出し配線領域との境界付近の表示領域に表示ムラを引き起こすという問題がある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、引き出し配線領域との境界付近の表示領域であっても表示ムラの発生が抑制された液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液晶表示装置は、各々にスイッチング素子を有する複数の画素がマトリクス状に形成された表示領域と表示領域の外側であってスイッチング素子に信号を供給する引き出し配線が形成された引き出し配線領域とを有するアレイ基板と、アレイ基板上に、表示領域と引き出し配線領域との境界からアレイ基板の端部に向けて、相互に平行に延在する複数の畝状の凸部と、表示領域を覆う配向膜と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶表示装置は、表示領域周辺の引き出し配線領域に、相互に平行に延設された複数の畝状の凸部を有することにより、ラビング布の表面状態の乱れを抑制し、引き出し配線領域との境界付近の表示領域での表示ムラを抑制することができ、表示品質が向上した液晶表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1の液晶パネルの構成を示す平面模式図である。
【図2】実施の形態1の液晶パネルの断面模式図である。
【図3】実施の形態1のアレイ基板の表示領域と引き出し配線領域との境界付近の拡大模式図である。
【図4】実施の形態1のアレイ基板の表示領域と引き出し配線領域との境界付近の断面模式図である。
【図5】畝状の凸部を形成しないアレイ基板を用いた液晶パネルの液晶分子の配向状態を説明するための模式図である。
【図6】実施の形態1の液晶分子の配向状態を説明するための模式図である。
【図7】実施の形態2のアレイ基板の表示領域と引き出し配線領域との境界付近の拡大模式図である。
【図8】実施の形態3のアレイ基板の表示領域と引き出し配線領域との境界付近の拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態の説明及び各図において、同一の符号を付した部分は、同一又は相当する部分を示すものである。
【0013】
実施の形態1.
<液晶パネルの構成・製造>
図1〜図4を用いて、本発明の液晶表示装置の実施の形態1である液晶パネル1の構成およびその製造過程を説明する。図1は液晶パネル1の構成を示す平面模式図であり、図2は、液晶パネル1の断面模式図で、図1の液晶パネル1のA−Aにおける断面を示している。また図3は、液晶パネル1を構成するアレイ基板2の表示領域3と引き出し配線領域4との境界付近の拡大模式図であり、図1の破線の楕円で囲まれた領域を拡大したものである。図4はアレイ基板2の表示領域3と引き出し配線領域4との境界付近の断面模式図で、図3におけるB−B断面が示されている。
【0014】
図1及び図2に示された液晶パネル1にはアクティブマトリクス型駆動方式が採用されており、アレイ基板2の表面にはTFT(薄膜トランジスタ)アレイが形成されている。このTFTは例えばアモルファスシリコンやポリシリコン等の半導体で形成された電界効果型トランジスタが用いられている。さらに、アレイ基板2の表面には、マトリクス状に複数の画素13(図1及び図2では図示されないが、図3にて示される)が配置されている。各画素13にはそれぞれTFTが設けられており、スイッチング素子として動作するTFTによってそれぞれの画素13が駆動される。一方、アレイ基板2と対向して配置されたカラーフィルタ(以下CFと呼ぶ)基板5の表面には、CFが形成されている。アレイ基板2とCF基板5とは、それぞれ、TFT及びCFを形成した面が対向されて配置されている。
【0015】
液晶パネル1は、複数の画素13がマトリクス状に配列された表示領域3と、各画素13に設けられたTFTを駆動するためのソース信号及びゲート信号を入力するための引き出し配線6が形成された引き出し配線領域4とで構成されている。さらに引き出し配線領域4は、引き出し配線6が形成された部分と、その間の引き出し配線6が形成されていない部分がある。
【0016】
図1及び図2に模式的に示されるように、引き出し配線6が配列されるピッチについては、各画素13に設けられたTFTへソース信号、ゲート信号を入力するための表示領域3に近い側のピッチと外部からの信号を受けるアレイ基板2の端部の引き出し配線のピッチとが異なっている。
【0017】
図1には示していないが、アレイ基板2の端部では引き出し配線6に異方性導電膜(ACF)を介してフレキシブルプリント基板 (FPC)が実装され、外部の制御装置からソース信号、ゲート信号が液晶パネル1に入力される。従って、表示領域3に近い側の引き出し配線6は表示領域3の画素13の配列に合わせるためにピッチが大きく、アレイ基板2の端部の引き出し配線6はACFのサイズに合わせるためにピッチが小さい。そのため、引き出し配線領域4は、引き出し配線6が形成された部分とその間の引き出し配線6が形成されていない部分を有する。
【0018】
実施の形態1で説明する液晶パネルは、例えばIPS(In-Plane Switching)モードを適用した5型QVGA(320×240画素)液晶パネルであり、典型的には、表示領域3側の引き出し配線ピッチが、長辺(横方向)側で約100μm、短辺(縦方向)側で約300μmである。またアレイ基板2端部での引き出し配線ピッチが、長辺側、短辺側ともに約50μmである。
【0019】
図2に示されるように、アレイ基板2とCF基板5とが対向され、これらの基板の間に液晶材料7が狭持されており、シール材8がこれらの基板を保持している。また、図1に示されるように、アレイ基板2には、表示領域3と引き出し配線領域4が設けられている。さらに、図2に示されるように、アレイ基板2とCF基板5の表面にはポリイミドからなる配向膜9が形成されている。この配向膜9を図2に示された矢印の方向にレーヨン布を用いて、ラビング法による液晶配向処理(以下ラビング処理)を行ない、液晶材料7を配向させる。
【0020】
図3は、図1に示された破線の楕円で囲まれた領域の拡大模式図であり、アレイ基板2の表示領域3と引き出し配線領域4との境界付近を拡大して示している。畝状の凸部10は、引き出し配線6と重畳的にソース信号配線11の延在する方向に、複数形成されており、それぞれの畝状の凸部10は相互に平行に形成されている。図3では、一例として、畝状の凸部10は、大部分が引き出し配線6の下層側に形成されている。この畝状の凸部10は、幅が10μmで、間隔は画素ピッチと同じである。表示領域3は、ソース信号配線11とゲート信号配線12で囲まれた複数の画素13で構成されている。
【0021】
この液晶パネル1は、先に述べたように液晶表示モードとしてIPSモードが用いられている。この図では省略しているが、各画素13には一対のクシ型電極が備えられており、クシ型電極間に印加された電圧が液晶材料7を応答させ、表示を行なうものである。IPSモードの液晶パネル1では、図3に示された矢印の方向にラビング処理が行なわれ、液晶材料7を矢印の方向に配向させて用いる。
【0022】
図4は図3のB−B部分の断面を模式的にあらわしたもので、アレイ基板2の表示領域3と引き出し配線領域4との境界付近の断面模式図である。アレイ基板2の表面にアルミニウム(Al)層が200nm成膜され、フォトリソグラフィー法により、ゲート信号配線12と幅10μmの畝状の凸部10が形成される。その上にゲート信号配線12が他の電極配線等と電気的に接触しないため層間絶縁膜14として窒化珪素(SiN)層が300nm成膜され、さらに、銅(Cu)層が200nm成膜される。フォトリソグラフィー法によりソース信号配線11と引き出し配線6とが形成された後、最上層にSiNからなるオーバーコート層15が300nm成膜される。さらに、オーバーコート層15の上には、ポリイミドからなる配向膜9が塗布される。
【0023】
本実施の形態においては、先に述べたように、ACFを介してFPCが実装され、ソース信号、ゲート信号をアレイ基板2に入力する構成を用いたが、ソース信号、ゲート信号の入力のための構成はこれに限定するものでなく、安定して信号入力をすることのできる構成を用いることができる。例えば、アレイ基板2の引き出し配線6に直接ベアチップ実装により駆動IC等を実装してもよい。
【0024】
また本実施の形態においては、ラビング処理にレーヨン製の布を用いたが、その他のラビング用布、例えばコットン製の布であっても用いることができる。
【0025】
さらに本実施の形態においては、液晶パネル1は、その液晶表示モードとしてIPSモードを用いたが、これに限定するものではなく、ラビング処理により液晶材料7を配向させる液晶表示モードであれば用いることができる。例えば、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードを用いることができる。
【0026】
また、表示領域3側の引き出し配線6のピッチとアレイ基板2の端部での引き出し配線6のピッチは特に限定するものではなく、画素13のピッチ、FPCの実装ピッチに合わせて任意に設定する事ができる。なお、表示領域3側の引き出し配線6のピッチとアレイ基板2の端部での引き出し配線6のピッチが等しい場合、引き出し配線6は表示領域3からアレイ基板2の端部へ直線的に結ばれることで引き出し配線領域4の不均一さの程度は減少する。そのため、表示領域3の周辺部分の表示ムラは幾分低減されるが、成膜状態等に起因する引き出し配線領域4の不均一さは存在する。従って、畝状の凸部10を複数、且つ相互に平行に設けることにより一層の表示ムラの抑制効果が得られることは言うまでもない。
【0027】
畝状の凸部10を形成するためのAl層の膜厚は、200nmとしたが、特に限定するものではなく、50nm以上、500nm以下であれば用いることができる。Al層の膜厚が50nm未満では、表示ムラの改善効果が不十分であり、本発明の効果を達成することができない。また500nmを超える場合、表示ムラの改善効果は得られるが、Al層の上層に作製するソース信号配線11、引き出し配線6の段差部分の凹凸が大きくなりすぎ、配線切れが生じやすくなる。さらに、液晶パネル1のパネルギャップのムラを生じる場合もあり不適当である。したがって、畝状の凸部10を形成するためのAl層の膜厚は、50nm以上、500nm以下であることが必要であり、同様の理由から100nm以上、400nm以下であることが好ましい。
【0028】
畝状の凸部10の幅は10μmとしたが、2μm以上、100μm以下の範囲であれば任意の幅に設定することができる。2μm未満とすると、畝状の凸部10の幅が狭すぎて、表示ムラの改善効果が不十分となる。100μmを超えると、逆に畝状の凸部10の幅が広すぎて、ほとんど全体が凸部となり、平坦となってしまうため、表示ムラの改善効果が不十分となる。
【0029】
畝状の凸部10の材料にはAlを用いたが、これに限定するものではなく、その他の電極材料、アモルファルシリコン(αSi)等を用いることができる、引き出し配線6、ソース信号配線11の材料にCu、ゲート信号配線12の材料にAlを用いたが、これらの材料は特に限定するものではなく、Al、Cuの他にAlNd系合金等の通常の電極材料を用いることができる。ソース信号配線11と他の配線との電気的接触防止する層間絶縁膜14、オーバコート層15に用いる材料は特に限定するものではなく、絶縁性を有し、電極層の保護を行なうことができればよく、SiNの他にSiO等の通常の層間絶縁膜14が用いられる。
【0030】
<表示特性>
本実施の形態で製造したアレイ基板2とCF基板5の間隙に液晶材料7を注入して液晶パネル1を作製した。図1、図2には示していないが、この液晶パネル1の表面と裏面に偏光板を各々の透過軸が直交するように配置して貼付し、表示ムラの有無、その程度の観察を行なった。
【0031】
図5、図6を用いて液晶パネル1の液晶分子16の配向状態、表示ムラの発生について説明し、本発明の畝状の凸部10をアレイ基板2上に設けたことの効果を述べる。
【0032】
図5は比較用であり、畝状の凸部10を形成しないアレイ基板を用いた液晶パネルの液晶分子16の配向状態の模式図であり、図6は実施の形態1の液晶分子16の配向状態の模式図である。
【0033】
図5、図6の矢印は、図の上から下にラビング処理が行なわれた時のラビング布の繊維の方向を示している。ラビング処理を行なうと、ラビング布の繊維の方向に液晶分子16を配向させる配向規制力が配向膜9に生じる。したがってこの矢印の方向は、液晶配向処理方向であり、配向膜9の配向規制力の方向を示している。
【0034】
まず、引き出し配線6が形成された引き出し配線領域4に、畝状の凸部10を形成しない従来のアレイ基板2に対して、図5の上から下にかけてラビング処理する場合を考える。
【0035】
引き出し配線6が斜めに形成されている部分では、ラビング布の繊維の方向が乱され、引き出し配線6の方向にラビング布の繊維がやや傾斜して配列する。そのため、配向膜9の配向規制力も引き出し配線6方向にやや傾いた方向となる。一方、ソース信号配線11が延在する方向に引き出し配線6が形成されている部分では、ラビング布の繊維の方向が乱れることはなく、そのままラビング処理方向に配列するため、配向膜9の配向規制力もまっすぐに図の上下方向となる。
【0036】
引き出し配線6が形成された引き出し配線領域4から表示領域3にわずかに入った部分では、上記のラビング布の繊維の配列の分布がそのまま維持される。つまり、引き出し配線6が斜め方向に形成された領域の近傍では、その引き出し配線6の方向にやや傾いた方向にラビングされ、引き出し配線6がソース信号配線11が延在する方向に形成されている領域の近傍では、上下方向にまっすぐにラビングされることになる。この時、配向膜9の配向規制力はラビング処理方向に生じるので、引き出し配線6が斜めに形成された領域付近ではやや傾いて、引き出し配線6がソース信号配線11の方向に形成された領域付近では、上下方向にまっすぐ液晶分子16が配向する。
【0037】
さらに表示領域3の中に入った領域(図5の下部)では、ソース信号配線11が上下方向にまっすぐに形成されている。この時、引き出し配線6の影響で、傾いて配列していたラビング布の繊維方向がソース信号配線11の影響で元に戻り、上下方向となるため、液晶分子16が図の上下方向にまっすぐに配向する。
【0038】
このようにラビング処理をした結果、図5の破線で囲んだ領域では、液晶分子16の配向方向がやや傾き、液晶パネル1を観察した時、表示ムラとして観察される。
【0039】
次に、引き出し配線領域4に、畝状の凸部10を相互に平行に複数形成したアレイ基板2に対して、図6の上から下にラビング処理する場合を考える。
【0040】
引き出し配線領域4をラビング処理すると、引き出し配線6がラビング処理方向に対して斜めに形成されている部分では、ラビング布の繊維方向は乱れ、引き出し配線6の傾きによりラビング布の繊維も傾斜して配向しようとする。しかし、引き出し配線領域4には、ソース信号配線11の方向に延在し、畝状の凸部10が相互に平行に複数形成されているため、ラビング布の繊維が引き出し配線6の方向に傾斜することを防ぎ、繊維をそのままラビング処理方向に配列させる。
【0041】
この状態で、引き出し配線領域4から表示領域3に入った領域をラビング処理すると、ラビング布の繊維の方向は、ラビング処理方向にまっすぐ配列しているので、液晶分子16の配列も図の上下方向にまっすぐ配向し、配向乱れを生じない。そのため、表示ムラのない良好な表示品位を達成することができる。
【0042】
本実施の形態においては、ラビング処理方向が液晶パネル1の縦方向(ソース信号配線11方向)であり、畝状の凸部10もソース信号配線11を延在した方向に、相互に平行に複数形成したが、ラビング処理方向が液晶パネル1の横方向(ゲート信号配線12方向)である場合であれば、畝状の凸部10をゲート信号配線12を延在した方向に相互に平行に複数形成しても同様の効果を得ることができる。
【0043】
このような液晶パネル1は、引き出し配線領域4にソース信号配線11、またはゲート信号配線12のいずれかの方向に延在し、相互に平行に複数の畝状の凸部10を有することにより、表示領域3と引き出し配線領域4の境界付近の表示ムラを防止することができ、表示品質が低下することがない液晶表示装置を得ることができる。
【0044】
また、畝状の凸部10は、ゲート信号配線12と同時に作製するため、新たなプロセス、製造装置を用いることなく作成することができるため、製造コストの増加無しに表示ムラを抑制することができ、表示品質が低下することがない液晶表示装置を得ることができる。
【0045】
なお、以上では畝状の凸部10をゲート信号配線12と同時に作成する場合について説明したが、畝状の凸部10をゲート信号配線12を作成する工程とは別工程で形成するようにしても、表示ムラが抑制されると共に表示品質が低下することがない液晶表示装置を得ることができることは言うまでもない。
【0046】
さらに、畝状の凸部10を引き出し配線6よりも上層側に設けるようにしても、表示ムラが抑制されると共に表示品位が低下することがないという効果を得ることができることは言うまでもない。
【0047】
実施の形態2.
<アレイ基板の構成・製造>
本実施の形態に用いるアレイ基板2の構成、製造工程は、特に記載しないものについては、実施の形態1と同様の構成、製造工程を用いている。
【0048】
図7を用いて、本実施の形態の液晶表示装置である液晶パネル1のアレイ基板2の構成を説明する。図7は本発明の実施の形態2の液晶パネル1のアレイ基板2の表示領域3と引き出し配線領域4との境界付近の拡大模式図である。図7は液晶パネル1の平面模式図(図1)中の破線の楕円で示した部分の拡大図である図3に相当する実施の形態2の拡大模式図である。ただし液晶パネル1内の位置は、図3が、引き出し配線6が集まっている部分の拡大図であるのに対し、図7は引き出し配線6が集まっている部分間の拡大図である点が異なっている。
【0049】
図7に示すように、ソース信号配線11が延在する方向に、畝状の凸部10が相互に平行に複数形成されている。ただし、この畝状の凸部10は、ソース信号配線11の方向と引き出し配線6の配列方向とが、一致している部分に形成されておらず、ソース信号配線11の方向と引き出し配線6の方向が異なっている部分と、引き出し配線6が形成されていない部分に形成されている。言い替えれば、畝状の凸部10は、形成された引き出し配線6の配列方向と畝状の凸部10の延在する方向とが異なる部分と、引き出し配線6が形成されていない部分に形成されている。
【0050】
この畝状の凸部10は、実施の形態1と同様に、ゲート信号配線12と同時にAl層を200nm成膜し、フォトリソフラフィー法を用いてパターニングすることで作製する。また、液晶パネル1はアレイ基板2とCF基板5とがシール材8で保持されている。この畝状の凸部10は、表示領域3と引き出し配線領域4の境界から、シール材8より内側の領域に形成されている。
【0051】
<表示特性>
本実施の形態で製造したアレイ基板2に配向膜9を形成して、図7の矢印方向にラビング処理を行ない、同様にラビング処理したCF基板5と張り合わせて、液晶材料7を狭持し、液晶パネル1を作製した。この液晶パネル1の表面と裏面に偏光板を各々の透過軸が直交するように配置して貼付し、表示ムラの有無、その程度の観察を行なう。
【0052】
この液晶パネル1では、引き出し配線領域4のうち、引き出し配線6の引き出し方向とソース信号配線11の方向とが異なっている部分と引き出し配線6が形成されていない部分に、相互に平行に複数の畝状の凸部10が形成されている。つまり引き出し配線領域6の全体で、引き出し配線6、または畝状の凸部10のいずれかがソース信号配線11の延在した方向に形成されていることになる。したがって、ラビング処理により、ラビング布の繊維が傾斜して配向することがなく、引き出し配線領域4からわずかに表示領域3に入った部分でも、配向膜9の配向規制力の方向が乱されることがなく、液晶材料7もまっすぐにラビング処理方向に配向する。
【0053】
このような液晶パネル1は、引き出し配線6の引き出し方向が、ソース信号配線11、またはゲート信号配線12のいずれかの方向と一致しない部分、及び引き出し配線6の形成されていない部分に、相互に平行に複数の畝状の凸部10を有し、表示領域3周辺の表示領域3と引き出し配線領域4の境界付近の表示ムラを防止することができ、表示品質が低下することがない液晶表示装置を得ることができる。
【0054】
また、畝状の凸部10は、ゲート信号配線12と同時に作製するため、新たなプロセス、製造装置を用いることなく作成することができるため、製造コストの増加無しに表示ムラを防止することができ、表示品質が低下することがない液晶表示装置を得ることができる。
【0055】
さらに、畝状の凸部10は、シール材8より内側の領域に形成されており、シール材8の部分には形成されていない。従って、畝状の凸部10とシール材8の重なりによるアレイ基板2とCF基板5の間隙のムラを生じることがなく、間隙のムラに起因する表示ムラのない良好な表示品位の液晶表示装置を得ることができる。
【0056】
実施の形態3.
<アレイ基板の構成・製造>
本実施の形態に用いるアレイ基板2の構成、製造工程は、特に記載しないものについては、実施の形態1と同様の構成、製造工程を用いている。
【0057】
図8を用いて、本実施の形態の液晶表示装置である液晶パネル1aのアレイ基板2aの構成を説明する。図8は本発明の実施の形態3の液晶表示装置である液晶パネル1aのアレイ基板2aの表示領域3と引き出し配線領域4aの境界付近の拡大模式図であり、実施の形態1において、液晶パネル1の平面模式図(図1)中の破線の楕円で示した部分の拡大図である図3に相当する図である。
【0058】
本実施の形態では、TNモードの液晶表示モードを用いており、ラビング処理は、アレイ基板2aの表面については、図8の矢印で示すように、左上から右下へ45°角度で行ない、対向するCF基板5は、これと直交する方向にラビング処理する。
【0059】
図8に示すように、引き出し配線領域4aに畝状の凸部10aが複数形成されており、それぞれの畝状の凸部10aは相互に平行に形成されている。実施の形態1、2では、ソース信号配線11が延在する方向に畝状の凸部10を形成したが、本実施の形態では、液晶材料7を配向させる方向、つまり、図8の左上から右下へ45°の方向に畝状の凸部10aを形成している。
【0060】
この畝状の凸部10aは、アレイ基板2aのTFTの半導体層と同時に、アモルファスシリコン(αSi)を200nm成膜し、フォトリソフラフィー法を用いてパターニングすることで作製する。またこの畝状の凸部10aは、表示領域3と引き出し配線領域4aの境界部分から、シール材8の部分より内側の領域に形成されている。
【0061】
本実施の形態においては、引き出し配線領域4aの畝状の凸部10aを、左上から右下にかけての45°の方向に形成したが、この畝状の凸部10aを形成する方向は特に限定するものではなく、適用する液晶表示モード等により、適した液晶配向方向と一致する方向とすることで、本発明の効果を得ることができる。
【0062】
また本実施の形態においては、畝状の凸部10aはαSiを用いて形成したが、実施の形態1及び実施の形態2のように、Al等の電極材料を用いて畝状の凸部10aを形成することもできる。また層間絶縁膜14を介して、Al等の電極材料とαSi等の半導体との2層を用いて畝状の凸部10aを形成することもできる。
【0063】
<表示特性>
本実施の形態で製造したアレイ基板2aに配向膜9を形成して、図8の矢印方向にラビング処理を行ない、これと直交する方向にラビング処理したCF基板5と張り合わせて、液晶材料7を狭持し、液晶パネル1を作製した。この液晶パネル1の表面と裏面に偏光板を透過軸が、それぞれの基板の液晶配向方向に一致するように配置して貼付し、表示ムラの有無、その程度の観察を行なった。
【0064】
この液晶パネル1aでは、引き出し配線領域4aに、液晶配向方向と一致するように、相互に平行に複数の畝状の凸部10aが形成されている。したがって、ラビング処理により、ラビング布の繊維が傾斜して配向することがなく、引き出し配線領域4aからわずかに表示領域3に入った部分でも、実質的なラビング処理方向が乱れることがなく、ラビング処理方向に液晶分子16が乱れることなく配向する。
【0065】
このような液晶パネル1aは、液晶配向方向に、相互に平行に複数の畝状の凸部10aを有し、表示領域3と引き出し配線領域4aの境界付近の表示ムラを防止することができ、表示品質が低下することがない液晶表示装置を得ることができる。
【0066】
また、畝状の凸部10aは、TFTを構成するαSiを用いて形成するため、新たなプロセス、製造装置を用いることなく作成することができるため、製造コストの増加無しに表示ムラを防止することができ、表示品質が低下することがない液晶表示装置を得ることができる。
【0067】
本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変更、省略することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 液晶パネル、1a 液晶パネル、2 アレイ基板、2a アレイ基板、3 表示領域、4 引き出し配線領域、4a 引き出し配線領域、5 CF基板、6 引き出し配線、7 液晶材料、8 シール材、9 配向膜、10 畝状の凸部、10a 畝状の凸部、11 ソース信号配線、12 ゲート信号配線、13 画素、14 層間絶縁膜、15 オーバーコート膜、16 液晶分子 。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々にスイッチング素子を有する複数の画素がマトリクス状に形成された表示領域と
前記表示領域の外側であって前記スイッチング素子に信号を供給する引き出し配線が形成された引き出し配線領域と、を有するアレイ基板と、
前記アレイ基板上に、前記表示領域と前記引き出し配線領域との境界から前記アレイ基板の端部に向けて、相互に平行に延在する複数の畝状の凸部と、
前記表示領域を覆う配向膜と、
を備える液晶表示装置。
【請求項2】
畝状の凸部が、画素の配列方向に延在する方向に形成されている請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
畝状の凸部が、配向膜の配向規制力方向に延在する方向に形成されている請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
畝状の凸部が、引き出し配線領域のうち、
引き出し配線の引き出し方向と前記畝状の凸部が延在する方向とが異なる部分と、
前記引き出し配線が形成されていない部分と、
の2種類の部分に形成された請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
畝状の凸部が、アレイ基板と前記アレイ基板と対向して設けられたフィルター基板とを保持するシール材よりも内側の引き出し配線領域に形成されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
畝状の凸部の厚みが、50nm以上、500nm以下である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
畝状の凸部の幅が、2μm以上、100μm以下である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
スイッチング素子が電界効果型トランジスタであり、引き出し配線が、前記電界効果型トランジスタのゲート信号配線から引き出された請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
スイッチング素子が電界効果型トランジスタであり、引き出し配線が、前記電界効果型トランジスタのソース信号配線から引き出された請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
畝状の凸部が、前記ゲート信号配線と同工程により形成される、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
畝状の凸部が、半導体膜と同工程により形成される、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−97191(P2013−97191A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240320(P2011−240320)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】