説明

液晶装置および電子機器

【課題】反射性画素電極の間に入射した光についても画像の表示に寄与させることのできる液晶装置、および該液晶装置を用いた電子機器を提供すること。
【解決手段】液晶装置100では、第2基板20側から入射した光は反射性画素電極9aで反射して第2基板20の側から出射される間に液晶層50によって光変調される。また第2基板20側から入射した光のうち、反射性画素電極9aの間に入射した光は、反射性画素電極9aによって挟まれた隙間9sに設けられた絶縁性反射層73aによって反射して第2基板20側から出射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型の液晶装置、および当該液晶装置を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の液晶装置のうち、反射型の液晶装置は、画素トランジスターおよび反射性画素電極が複数設けられた第1基板と、この第1基板に対向する透光性の第2基板と、第1基板と第2基板との間に保持された液晶層とを有している。かかる液晶装置においては、第2基板側から入射した光が反射性画素電極で反射して第2基板の側から出射される間に液晶層によって光変調される。従って、第2基板側から入射した光のうち、反射性画素電極の間に入射した光は変調光の出射に寄与しないことになる。
【0003】
一方、液晶層に高分子分散液晶を用いた反射型の液晶装置において、反射性画素電極の間に光吸収膜を設けることにより、反射性画素電極の間に入射した光が画素トランジスターに入射することを防止する構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−5454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶装置では、明るい画像を表示するなどの目的で変調光の出射光量を高めることが要求されているが、特許文献1に記載の構成では、反射性画素電極の間に入射した光が光吸収膜によって吸収されるため、上記の要求に対応することができない。
【0006】
そこで、本発明の課題は、反射性画素電極の間に入射した光についても画像の表示に寄与させることのできる液晶装置、および該液晶装置を用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、一方の基板面に反射性画素電極が複数設けられた第1基板と、前記第1基板の前記基板面に対向する透光性の第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に保持された液晶層と、を有する液晶装置であって、前記第1基板には、互いに隣り合う前記反射性画素電極によって挟まれた隙間内に絶縁性反射層が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る液晶装置は、反射型液晶装置であり、第2基板側から入射した光は反射性画素電極で反射して第2基板の側から出射される間に液晶層によって光変調される。従って、第2基板側から入射した光のうち、互いに隣り合う反射性画素電極によって挟まれた領域、すなわち、反射性画素電極の間に入射した光は反射性画素電極で反射されないことになる。しかるに本発明に係る液晶装置では、反射性画素電極によって挟まれた隙間内に絶縁性反射層が設けられているため、反射性画素電極の間に入射した光は、絶縁性反射層によって反射されて第2基板側から出射される。それ故、反射性画素電極の間に入射した光についても画像の表示に寄与させることができるので、明るい画像を表示することができる。また、反射層が絶縁性であるため、反射性画素電極の間に絶縁性反射層を設けた場合でも、反射性画素電極を短絡させるおそれがない。また、画素トランジスターは、通常、反射性画素電極の下層側に設けられているが、反射性画素電極の間に入射した光は、絶縁性反射層によって反射され、画素トランジスターに到達しないため、画素トランジスターでは光電流に起因する誤動作や、光劣化が発生しない。
【0009】
本発明において、前記反射性画素電極によって挟まれた前記隙間は前記絶縁性反射層によって埋められ、前記反射性画素電極の表面と前記絶縁性反射層の表面は連続した平坦面を形成していることが好ましい。かかる構成によれば、反射性画素電極の下層側には光が漏れないため、反射性画素電極の下層側に設けた画素トランジスターには光が到達しない。それ故、画素トランジスターでは光電流に起因する誤動作や、光劣化が発生しない。また、反射性画素電極の表面および絶縁性反射層の表面で反射した光の反射方向を制御することができる。さらに、反射性画素電極の上層に配向膜を形成した際、配向膜を平坦面上に形成することができるので、液晶層に対して均一に配向規制力を作用させることができる。
【0010】
本発明において、前記絶縁性反射層は、誘電体多層膜からなることが好ましい。
【0011】
本発明において、前記液晶装置に所定の色光が供給される場合、前記液晶装置に供給される色光に対応する波長域における前記絶縁性反射層の反射率は、該色光に対応する波長域とは異なる波長における前記絶縁性反射層の反射率よりも高いことが好ましい。すなわち、前記液晶装置に形成される絶縁性反射層の構成を、当該液晶装置に供給される光の波長に応じて最適化することが好ましい。
【0012】
本発明を適用した液晶装置は、携帯電話機やモバイルコンピューター等の電子機器として用いることができる。
【0013】
また、本発明を適用した液晶装置は、電子機器としての投射型表示装置にも用いることができ、かかる投射型表示装置は、本発明を適用した液晶装置を複数備えている。また、投射型表示装置は、前記複数の液晶装置のうち第1の液晶装置に第1の色光を供給し、前記複数の液晶装置のうち第2の液晶装置に第1の色光とは異なる色の第2の色光を供給する光源部と、前記複数の液晶装置によって光変調された光を合成する合成手段と、前記合成手段によって合成された光を投射する投射光学系と、を備えている。かかる構成において、「第1の液晶装置」「第2の液晶装置」とは、例えば、3つの液晶装置が用いられる場合、3つの液晶装置のうちの任意の1つの液晶装置が「第1の液晶装置」に相当し、残り2つの液晶装置の一方あるいは双方が「第2の液晶装置」に相当する。
【0014】
かかる投射型表示装置(電子機器)において、前記第1の液晶装置に設けられた前記絶縁性反射層の反射率の波長依存性は、前記第2の液晶装置に設けられた前記絶縁性反射層の反射率の波長依存性とは異なる構成を採用することができる。かかる構成を採用すれば、前記液晶装置に形成される絶縁性反射層の構成を、当該液晶装置に供給される光の波長に応じて最適化することができるので、当該液晶装置に供給される色光に対する反射率が高い絶縁性反射層を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した投射型表示装置(電子機器)の光学系の構成を示す説明図である。
【図2】本発明を適用した液晶装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】(a)、(b)は各々、本発明を適用した液晶装置の液晶パネルを各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図、およびそのH−H′断面図である。
【図4】(a)、(b)は各々、本発明を適用した液晶装置に用いた素子基板において相隣接する画素の平面図、およびそのA−A′線に相当する位置で液晶装置を切断したときの断面図である。
【図5】本発明を適用した液晶装置に用いた絶縁性反射層(誘電体多層膜/誘電体ミラー)の説明図である。
【図6】本発明を適用した液晶装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図7】本発明を適用した液晶装置を直視型表示装置として用いた電子機器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0017】
[投射型表示装置の構成]
(全体構成)
図1は、本発明を適用した投射型表示装置(電子機器)の光学系の構成を示す説明図である。図1に示す投射型表示装置1000において、光源部890は、システム光軸Lに沿って光源810、インテグレーターレンズ820および偏光変換素子830が配置された偏光照明装置800を有している。また、光源部890は、システム光軸Lに沿って、偏光照明装置800から出射されたS偏光光束をS偏光光束反射面841により反射させる偏光ビームスプリッター840と、偏光ビームスプリッター840のS偏光光束反射面841から反射された光のうち、青色光(B)の成分を分離するダイクロイックミラー842と、青色光が分離された後の光束のうち、赤色光(R)の成分を反射させて分離するダイクロイックミラー843とを有している。
【0018】
また、投射型表示装置1000は、各色光が入射する3つの液晶装置100(液晶装置100R、液晶装置100G、液晶装置100B)を備えており、光源部890は、3つの液晶装置100(液晶装置100R、液晶装置100G、液晶装置100B)に所定の色光を供給する。
【0019】
かかる投射型表示装置1000においては、液晶装置100R、液晶装置100G、液晶装置100Bにて変調された光を、ダイクロイックミラー842、ダイクロイックミラー843、および偏光ビームスプリッター840を含む合成手段によって合成した後、この合成光を投射光学系850によってスクリーン860などの被投射部材に投射する。
【0020】
なお、投射型表示装置については、光源部として、各色の光を出射するLED光源などを用い、かかるLED光源から出射された色光を各々、別の液晶装置に供給するように構成してもよい。
【0021】
いずれの場合も、3つの液晶装置100(液晶装置100R、液晶装置100G、液晶装置100B)では、入射する光の波長域が限定されている。
【0022】
(液晶装置の構成)
図2は、図1に示す投射型表示装置に用いられる液晶装置の電気的構成を示すブロック図である。図3(a)、(b)は各々、図1に示す投射型表示装置に用いられる液晶装置の液晶パネルを各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図、およびそのH−H′断面図である。
【0023】
図2に示すように、液晶装置100は、TN(Twisted Nematic)モードあるいはVA(Vertical Alignment)モードの液晶パネル100pを有しており、液晶パネル100pは、その中央領域に複数の画素100aがマトリクス状に配列された画素領域10bを備えている。かかる液晶パネル100pにおいて、後述する第1基板10には、画素領域10bの内側で複数本のデータ線6aおよび複数本の走査線3aが縦横に延びており、それらの交点に対応する位置に画素100aが構成されている。複数の画素100aの各々には、電界効果型トランジスターからなる画素トランジスター30、および後述する反射性画素電極9aが形成されている。画素トランジスター30のソースにはデータ線6aが電気的に接続され、画素トランジスター30のゲートには走査線3aが電気的に接続され、画素トランジスター30のドレインには、反射性画素電極9aが電気的に接続されている。
【0024】
第1基板10において、画素領域10bの外側領域には走査線駆動回路104およびデータ線駆動回路101が構成されている。データ線駆動回路101は各データ線6aの一端に電気的に接続しており、画像処理回路から供給される画像信号を各データ線6aに順次供給する。走査線駆動回路104は、各走査線3aに電気的に接続しており、走査信号を各走査線3aに順次供給する。
【0025】
各画素100aにおいて、反射性画素電極9aは、後述する対向基板に形成された共通電極と液晶を介して対向し、液晶容量50aを構成している。また、各画素100aには、液晶容量50aで保持される画像信号の変動を防ぐために、液晶容量50aと並列に保持容量60が付加されている。本形態では、保持容量60を構成するために、複数の画素100aに跨って走査線3aと並行して延びた容量線3bが形成されている。
【0026】
図3(a)、(b)に示すように、液晶装置100の液晶パネル100pでは、所定の隙間を介して第1基板10(素子基板)と第2基板20(対向基板)とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、シール材107は第2基板20の縁に沿うように配置されている。シール材107は、光硬化樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー、あるいはガラスビーズ等のギャップ材が配合されている。本形態において、第1基板10の基板本体10dは透光性基板であり、第2基板20の基板本体20dも透光性基板である。なお、第1基板10の基板本体10dとしては、単結晶シリコン基板などを用いてもよい。
【0027】
第1基板10において、シール材107の外側領域では、第1基板10の一辺に沿ってデータ線駆動回路101および複数の端子102が形成されており、この一辺に隣接する他の辺に沿って走査線駆動回路104が形成されている。また、第2基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、第1基板10と第2基板20との間で電気的導通をとるための上下導通材109が形成されている。
【0028】
詳しくは後述するが、第1基板10には、アルミニウムやアルミニウム合金などといったアルミニウム系材料や、銀や銀合金などといった銀系材料からなる反射性画素電極9a(反射性電極)がマトリクス状に形成されている。本形態では、反射性画素電極9aには、上記の金属材料のうち、アルミニウムやアルミニウム合金などといったアルミニウム系材料が用いられている。
【0029】
第2基板20には、シール材107の内側領域に遮光性材料からなる額縁108が形成され、その内側が画像表示領域10aとされている。第2基板20には、ITO(Indium Tin Oxide)膜からなる共通電極21(透光性電極)が形成されている。なお、第2基板20には反射性画素電極9a間と対向する位置にブラックマトリクスあるいはブラックストライプと称せられる遮光膜(図示せず)が形成されることがある。
【0030】
なお、画素領域10bには、額縁108と重なる領域にダミーの画素が構成される場合があり、この場合、画素領域10bのうち、ダミー画素を除いた領域が画像表示領域10aとして利用されることになる。
【0031】
かかる反射型の液晶装置100においては、矢印Lで示すように、第2基板20の側から入射した光が反射性画素電極9aで反射して再び、第2基板20の側から出射される間に液晶層50によって画素毎に光変調される結果、画像が表示される。第2基板20の光入射側の面には、使用する液晶層50の種類や、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板等が所定の向きに配置される。ここで、液晶装置100は、図1を参照して説明した投射型表示装置(液晶プロジェクター)において、赤色、青色または緑色の光が入射することになるので、カラーフィルターは形成されていない。なお、液晶装置100を、後述するモバイルコンピューターや携帯電話機等といった電子機器のカラー表示装置として用いる場合、第2基板20には、カラーフィルター(図示せず)や保護膜が形成される。
【0032】
(各画素の構成)
図4(a)、(b)は各々、本発明を適用した反射型の液晶装置100に用いた第1基板10に設けられた複数の画素の平面図、およびそのA−A′線に相当する位置で液晶装置100を切断したときの断面図である。なお、図4(a)において、データ線6aは一点鎖線で示し、走査線3aおよび容量線3bは実線で示し、半導体層1aは細い点線で示し、反射性画素電極9aについては二点鎖線で示してある。
【0033】
図4(a)、(b)に示すように、第1基板10には、石英基板やガラス基板等からなる透光性基板、あるいは単結晶シリコン基板などの基板本体10dの第1面10xおよび第2面10yのうち、第2基板20側に位置する第1面10x(一方の基板面)にシリコン酸化膜等からなる透光性の下地絶縁層15が形成されている。また、第1基板10には、下地絶縁層15の上層側において、反射性画素電極9aと重なる位置にNチャネル型の画素トランジスター30が形成されている。画素トランジスター30は、島状のポリシリコン膜、あるいは島状の単結晶半導体層からなる半導体層1aに対して、チャネル領域1g、低濃度ソース領域1b、高濃度ソース領域1d、低濃度ドレイン領域1c、および高濃度ドレイン領域1eが形成されたLDD構造を備えている。半導体層1aの表面側には、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜からなる透光性のゲート絶縁層2が形成されており、ゲート絶縁層2の表面には、金属膜やドープトシリコン膜からなるゲート電極(走査線3a)が形成されている。また、半導体層1aにおける高濃度ドレイン領域1eからの延設部分には、ゲート絶縁層2を介して容量線3bが対向し、保持容量60が形成されている。
【0034】
本形態において、画素トランジスター30はLDD(Lightly Doped Drain)構造を備えているが、高濃度ソース領域および高濃度ドレイン領域が走査線3aに自己整合的に形成されている構造を採用してもよい。また、本形態では、ゲート絶縁層2は、熱酸化により形成されたシリコン酸化膜からなるが、CVD法等により形成されたシリコン酸化膜やシリコン窒化膜を用いることもできる。さらに、ゲート絶縁層2には、熱酸化により形成されたシリコン酸化膜と、CVD法等により形成されたシリコン酸化膜やシリコン窒化膜との多層膜を用いることもできる。また、基板本体10dが単結晶シリコン基板である場合、単結晶シリコン基板自身に画素トランジスター30を形成してもよい。
【0035】
画素トランジスター30の上層側には、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の透光性絶縁膜からなる層間絶縁膜71、72が形成されている。層間絶縁膜71の表面には金属膜やドープトシリコン膜からなるデータ線6aおよびドレイン電極6bが形成され、データ線6aは、層間絶縁膜71に形成されたコンタクトホール71aを介して高濃度ソース領域1dに電気的に接続し、ドレイン電極6bは、層間絶縁膜71に形成されたコンタクトホール71bを介して高濃度ドレイン領域1eに電気的に接続している。層間絶縁膜72の表面には反射性画素電極9aが島状に形成されており、反射性画素電極9aは、層間絶縁膜72に形成されたコンタクトホール72bを介してドレイン電極6bに電気的に接続されている。かかる電気的な接続を行なうにあたって、本形態では、コンタクトホール72bの内部は、プラグ8aと称せられる導電膜によって埋められ、反射性画素電極9aは、プラグ8aを介してドレイン電極6bに電気的に接続されている。層間絶縁膜72の表面とプラグ8aの表面は、連続した平坦面を形成しており、かかる平坦面上に反射性画素電極9aが形成されている。
【0036】
本形態において、隣り合う反射性画素電極9aにより挟まれた隙間9sの内側には、絶縁性反射層73aが形成されている。本形態において、絶縁性反射層73aは、後述する誘電体多層膜からなる。ここで、反射性画素電極9aの表面と絶縁性反射層73aの表面は、連続した平坦面を形成していた方が好ましい。かかる平坦面上に配向膜16を形成すれば、平坦な配向膜16を設けることができる。
【0037】
配向膜16は、ポリイミドなどの樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜などの斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜16は、シリコン酸化膜などの斜方蒸着膜からなり、かかる無機配向膜を用いた場合、配向膜16と反射性画素電極9aとの層間にシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などの保護膜が形成されることもある。
【0038】
第2基板20では、透光性の基板本体20dにおいて第1基板10と対向する面全体にITO膜からなる共通電極21が形成され、共通電極21の表面側にも、第1基板10と同様、配向膜26が形成されている。かかる配向膜26も、配向膜16と同様、ポリイミドなどの樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜などの斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜26は、シリコン酸化膜などの斜方蒸着膜からなり、かかる無機配向膜を用いた場合、配向膜26と共通電極21との層間にシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などの保護膜が形成されることもある。
【0039】
このように構成した第1基板10と第2基板20は、反射性画素電極9aと共通電極21とが対面するように対向配置され、かつ、これらの基板間には、シール材107により囲まれた空間内に電気光学物質としての液晶層50が封入されている。液晶層50は、反射性画素電極9aからの電界が印加されていない状態で、第1基板10および第2基板20に形成された配向膜16、26により所定の配向状態をとる。液晶層50は、例えば一種または数種のネマティック液晶を混合したもの等からなる。
【0040】
(絶縁性反射層73aの構成)
図5は、本発明を適用した液晶装置に用いた絶縁性反射層(誘電体多層膜/誘電体ミラー)の説明図である。
【0041】
図4(b)に示す絶縁性反射層73aは、屈折率が低い誘電体膜からなる低屈折率層と、この低屈折率層より屈折率が高い誘電体膜からなる高屈折率層とが交互に積層された誘電体多層膜である。かかる誘電体多層膜では、低屈折率層と高屈折率層とが交互に1層ずつ、計2層形成された構成や、低屈折率層と高屈折率層とを1組にして複数組(例えば、2組)が積層された構成を有している。ここで、低屈折率層と高屈折率層とは、屈折率の相対的な高低に定義されるものであり、その高低に絶対的な数値が存在するものではない。従って、例えば、屈折率が1.7未満のものを低屈折率層とし、屈折率が1.7以上のものを高屈折率層と定義すれば、低屈折率層および高屈折率層としては、以下の材料
低屈折率層
フッ化マグネシウム(MgF2)/屈折率=1.38
二酸化シリコン(SiO2)/屈折率=1.46
フッ化ランタン(LaF3)/屈折率=1.59
酸化アルミニウム(Al23)/屈折率=1.62
フッ化セリウム(CeF3)/屈折率=1.63
高屈折率層
酸化インジウム(In23)/屈折率=2.00
窒化シリコン(SiN)/屈折率=2.05
酸化チタン(TiO2)/屈折率=2.10
酸化ジルコニウム(ZrOF2)/屈折率=2.10
酸化タンタル(Ta25)/屈折率=2.10
酸化タングステン(WO3)/屈折率=2.35
硫化亜鉛(ZnS)/屈折率=2.35
酸化セリウム(CeO2)/屈折率=2.42
の単一系や混合系が用いられる。
【0042】
これらのいずれの誘電体膜を用いた場合も、低屈折率層および高屈折率層の各々の光学的膜厚nd(n=屈折率、d=膜厚)は、設計の際の指定波長λ0の1/4倍に設定される。
【0043】
かかる構成によれば、高屈折率から低屈折率への境界面での反射波面の位相の変化が発生せず、かつ、その逆の境界面での反射波面の位相の変化は180°である。また、隣り合う面からの2つの反射波面の間の光路差に因る位相差が180°となり、位相の変化量と合わせると、各境界面での反射波面は全て同位相になる。その結果、高い反射率を発揮する。その際、屈折率の差が大きな2つの誘電体材料の組み合わせを用いると、少ない層数でも高い反射特性を得ることができる。
【0044】
かかる誘電体多層膜の反射率の波長依存性は、図5(a)に示されたように、指定波長λ0で反射率が最大となる。また、高い反射率を示す波長域の外では、反射率は振動しながらゼロへと低下する。ここで、高反射率の領域の幅と高さは、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率の比、および層数の関数になり、積層数を増やしても屈折率の比を増しても反射率のピーク値が増加する。
【0045】
ここで、液晶装置100は、図1を参照して説明したライトバルブ(赤色光変調用の液晶装置100R、緑色光変調用の液晶装置100G、青色光変調用の液晶装置100B)として用いられることから入射した光の波長域が限定されている。そこで、本形態では、液晶装置100(赤色光変調用の液晶装置100R、緑色光変調用の液晶装置100G、青色光変調用の液晶装置100B)毎に、低屈折率層および高屈折率層の各々の光学的膜厚ndを設定する際の波長λ0を各々、赤色波長域(概ね650〜750nmの波長域)、緑色波長域(概ね530〜550nmの波長域)、青色波長域(概ね470〜480nmの波長域)に設定してある。このため、絶縁性反射層73aは、液晶装置100毎に反射率の波長依存性が相違する。
【0046】
より具体的には、赤色光変調用の液晶装置100Rに形成した絶縁性反射層73aの反射率の波長依存性は、図5(b)に示すように表され、赤色波長域の反射率は、赤色光に対応する波長域とは異なる波長域における反射率に比較して高くなっている。また、緑色光変調用の液晶装置100Gに形成した絶縁性反射層73aの緑色波長域における反射率は、緑色光に対応する波長域とは異なる波長域における反射率よりも高い。青色光変調用の液晶装置100Bに形成した絶縁性反射層73aの青色波長域における反射率は、青色光に対応する波長域とは異なる波長域における反射率よりも高い。かかる構成によれば、液晶装置100R、液晶装置100G、液晶装置100B各々の隙間9sに入射した色光を効率よく反射させて、画像の表示に寄与させることができるので、明るい画像を表示することができる。
【0047】
(液晶装置100の第1基板10の製造方法)
以下、図6を参照して、本発明を適用した液晶装置100の製造方法を説明しながら、液晶装置100の構成を詳述する。図6は、本発明を適用した液晶装置100の製造方法を示す工程断面図であり、反射性画素電極9aを形成した後、絶縁性反射層73aを形成するまでの工程を示している。
【0048】
まず、図6(a)に示すように島状の反射性画素電極9aを形成した後、図6(b)に示すように、反射性画素電極9aの表面、および反射性画素電極9aの間で露出している層間絶縁膜72の表面を覆うように、スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などのPVD(Physical Vapor Deposition)法や、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などの方法によって低屈折率層と高屈折率層とを交互に形成して誘電体多層膜73を形成する。
【0049】
次に、誘電体多層膜73に対する研磨工程を行なう。その結果、図6(c)に示すように、反射性画素電極9aの表面が露出するとともに、反射性画素電極9aの隙間9sには、誘電体多層膜73が絶縁性反射層73aとして残り、隙間9sは、絶縁性反射層73aによって埋められた状態となる。また、反射性画素電極9aの表面と絶縁性反射層73aの表面は、連続した平坦面を形成する。かかる研磨には化学機械研磨を利用でき、化学機械研磨では、研磨液に含まれる化学成分の作用と、研磨剤と第1基板10との相対移動によって、高速で平滑な研磨面を得ることができる。より具体的には、研磨装置において、不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等からなる研磨布(パッド)を貼り付けた定盤と、第1基板10を保持するホルダーとを相対回転させながら、研磨を行なう。その際、例えば、平均粒径が0.01〜20μmの酸化セリウム粒子、分散剤としてのアクリル酸エステル誘導体、および水を含む研磨剤を研磨布と第1基板10との間に供給する。
【0050】
しかる後には、図4(b)に示すように、反射性画素電極9aの表面、および絶縁性反射層73aの表面を覆うように配向膜16を形成する。
【0051】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の液晶装置100は、反射型液晶装置であり、第2基板20側から入射した光は反射性画素電極9aで反射して第2基板20の側から出射される間に液晶層50によって光変調される。従って、第2基板20側から入射した光のうち、互いに隣り合う反射性画素電極9aの間に入射した光は反射性画素電極9aで反射されないことになる。しかるに本形態の液晶装置100では、反射性画素電極9aによって挟まれた隙間9s内に絶縁性反射層73aが設けられているため、反射性画素電極9aの間に入射した光は、絶縁性反射層73aによって反射されて第2基板20側から出射される。それ故、反射性画素電極9aの間に入射した光についても画像の表示に寄与させることができるので、明るい画像を表示することができる。
【0052】
また、液晶装置100に供給される色光に対応する波長域における絶縁性反射層73aの反射率は、該色光に対応する波長域とは異なる波長における絶縁性反射層73aの反射率よりも高い。従って、液晶装置100R、液晶装置100G、液晶装置100B各々に所定の色光を供給する方式の投射型表示装置1000においても、液晶装置100R、液晶装置100G、液晶装置100B各々の隙間9sに入射した色光を効率よく反射させて、画像の表示に寄与させることができるので、明るい画像を表示することができる。
【0053】
また、反射層(絶縁性反射層73a)が絶縁性であるため、反射性画素電極9aの間に絶縁性反射層73aを設けた場合でも、反射性画素電極9aを短絡させるおそれがない。従って、反射性画素電極9aによって挟まれた隙間9sを絶縁性反射層73aによって埋めことができる。このため、反射性画素電極9aの下層側には光が漏れないため、反射性画素電極9aの下層側に設けた画素トランジスター30には光が到達しない。それ故、画素トランジスターでは光電流に起因する誤動作や、光劣化が発生しない。
【0054】
また、反射性画素電極9aの表面と絶縁性反射層73aの表面は連続した平坦面を形成しているため、反射性画素電極9aの上層に配向膜16を形成する際、配向膜16を平坦面上に形成することができるので、液晶層に対して均一に配向規制力を作用させることができる。また、反射性画素電極9aの表面および絶縁性反射層73aの表面で反射した光の反射方向を制御することができる。
【0055】
[他の電子機器への搭載例]
上記実施の形態では、液晶装置100を、図1に示す投射型表示装置1000のライトバルブ(赤色光変調用の液晶装置100R、緑色光変調用の液晶装置100G、青色光変調用の液晶装置100B)として用いたが、以下に説明する電子機器の直視型表示装置に液晶装置100を用いてもよい。
【0056】
図7は、本発明を適用した反射型の液晶装置100を直視型の表示装置として用いた電子機器の説明図である。まず、図7(a)に示す携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001、スクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての液晶装置100を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、液晶装置100に表示される画面がスクロールされる。図7(b)に示す情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)は、複数の操作ボタン4001、電源スイッチ4002、並びに表示ユニットとしての液晶装置100を備えており、電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が液晶装置100に表示される。また、本発明を適用した液晶装置100が搭載される電子機器としては、図7(a)、(b)に示すものの他、ヘッドマウンティトディスプレイ、デジタルスチールカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型、モニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、銀行端末などの電子機器などが挙げられる。
【0057】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、図6(b)に示すように誘電体多層膜73を形成した後、研磨工程を行なって、隙間9sを絶縁性反射層73aによって埋めたが、誘電体多層膜73を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて誘電体多層膜73をパターニングして絶縁性反射層73aを形成してもよい。この場合、反射性画素電極9aの端部に絶縁性反射層73aが重なった構造となることがあるが、かかる構造であっても、反射性画素電極9aの間に入射した光を絶縁性反射層73aによって反射して第2基板20側から出射できるという効果を奏する。また、絶縁性反射層73aが反射性画素電極9aよりも薄い場合には隙間9s内の一部のみに絶縁性反射層73aが形成され、凹部が形成されることがあるが、かかる構造であっても、反射性画素電極9aの間に入射した光を絶縁性反射層73aによって反射して第2基板20側から出射できるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0058】
9a・・反射性画素電極、9s・・隣り合う反射性画素電極の隙間、10・・第1基板、20・・第2基板、21・・共通電極、30・・画素トランジスター、50・・液晶層、73・・誘電体多層膜、73a・・絶縁性反射層、100、100R、100G、100B・・液晶装置、100a・・画素、850・・投射光学系、890・・光源部、1000・・投射型表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の基板面に反射性画素電極が複数設けられた第1基板と、
前記第1基板の前記基板面に対向する透光性の第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に保持された液晶層と、
を有する液晶装置であって、
前記第1基板には、互いに隣り合う前記反射性画素電極によって挟まれた隙間内に絶縁性反射層が設けられていることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記反射性画素電極によって挟まれた前記隙間は前記絶縁性反射層によって埋められ、
前記反射性画素電極の表面と前記絶縁性反射層の表面は連続した平坦面を形成していることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記絶縁性反射層は、誘電体多層膜からなることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記液晶装置に供給される色光に対応する波長域における前記絶縁性反射層の反射率は、該色光に対応する波長域とは異なる波長における前記絶縁性反射層の反射率よりも高いことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の液晶装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の液晶装置を複数備え、
前記複数の液晶装置のうち第1の液晶装置に第1の色光を供給し、前記複数の液晶装置のうち第2の液晶装置に第1の色光とは異なる色の第2の色光を供給する光源部と、
前記複数の液晶装置によって光変調された光を合成する合成手段と、
前記合成手段によって合成された光を投射する投射光学系と、
を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
前記第1の液晶装置に設けられた前記絶縁性反射層の反射率の波長依存性は、前記第2の液晶装置に設けられた前記絶縁性反射層の反射率の波長依存性とは異なることを特徴とする請求項6に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−243629(P2010−243629A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89818(P2009−89818)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】