説明

液晶装置及び電子機器

【課題】温度センサを備えながらも、狭額縁化を実現することができる。
【解決手段】液晶装置(1)は、複数の画素部(70)が形成される第1基板(10)と、第2基板(20)と、液晶層(50)とを備える液晶装置であって、複数の画素部を取り囲む第1基板上の周辺領域には、当該液晶装置の動作時に、抵抗値の変化に基づいて当該液晶装置の動作温度を検出するために用いられる導電層(120)と、当該液晶装置を駆動するための駆動信号を供給する駆動回路(103a、104a)又は複数の画素部の夫々の動作を検査する検査回路(103b、104b)とが形成されており、導電層は、駆動回路又は検査回路に対して電源電圧を供給する電源配線(208)と重なる位置に、絶縁層(207)を介在させて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置、及びこのような液晶装置を備える電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置では、例えば液晶パネルを構成する一対の基板間において液晶を所定の配向状態としておき、例えば画像表示領域に形成された画素部毎に、液晶に所定の電圧を印加することにより、液晶における配向や秩序を変化させて、光を変調することにより階調表示を行う。
【0003】
近年、このような液晶装置を車載用のディスプレイとして用いる使用態様が増えている。この場合、車両が低温環境下に置かれた場合であっても、液晶分子の応答速度の低下に起因した液晶装置の表示性能の低下を防止する必要がある。また、動画を主として表示することを目的としてOCB液晶を用いた液晶装置や、フィールドシーケンシャル方式の液晶装置の開発が進んでいる。この場合にも、特に低温環境下での液晶分子の応答速度の低下に起因した表示性能の低下を防止する必要がある。このため、低温環境下での表示性能の悪化を防ぐために、ヒータを内蔵する液晶装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−202520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ヒータを好適に制御するためには、液晶装置の動作温度を検出することが好ましい。このため、温度センサを構成する導電層を液晶装置内に形成すると共に温度の変化に起因した導電層の抵抗値の変化に基づいて動作温度等を検出する試みが本願発明者等によって行われている。ここで、走査線駆動回路やデータ線駆動回路やプリチャージ回路等の周辺回路に対する負荷容量を低減させるため、このような温度センサ用の導電層は、周辺回路とは平面上独立した箇所に形成される必要がある。しかしながら、温度センサ用の導電層を周辺回路とは平面上独立した箇所に形成すると、液晶装置の額縁が大きくなってしまうという技術的な問題点が生ずる。つまり、近年要請が強まっている狭額縁化を実現することが困難になってしまうという技術的な問題点が生ずる。
【0006】
本発明は、例えば上述した従来の問題点に鑑みなされたものであり、例えば温度センサを備えながらも、狭額縁化を実現することができる液晶装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(液晶装置)
上記課題を解決するために、本発明の液晶装置は、複数の画素部が形成される第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層とを備える液晶装置であって、前記複数の画素部を取り囲む前記第1基板上の周辺領域には、当該液晶装置の動作時に、抵抗値の変化に基づいて当該液晶装置の動作温度を検出するために用いられる導電層と、当該液晶装置を駆動するための駆動信号を供給する駆動回路又は前記複数の画素部の夫々の動作を検査する検査回路とが形成されており、前記導電層は、前記駆動回路又は前記検査回路に対して電源電圧を供給する電源配線と前記第1基板の表面の法線に沿って重なる位置に、絶縁層を介在させて形成されている。
【0008】
本発明の液晶装置によれば、一対の基板(つまり、第1基板及び第2基板)間に挟持されている液晶層に含まれる液晶分子の配向状態を、液晶層に印加する電界によって変化させることができる。特に、本発明の液晶装置は、例えば平面視マトリクス状に分布する複数の画素部を第1基板上に備えている。複数の画素部は、例えば画素電極と、薄膜トランジスタ等のスイッチング素子と、共通電極とを備えており、画素電極と共通電極との間の電位差に応じた電界が液晶層に印加されることで、画素部毎に液晶分子の配向状態を変化させることができる。その結果、画像表示を行うことができる。
【0009】
本発明の液晶装置では特に、第1基板の周辺領域(つまり、複数の画素部を含む画像表示領域を取り囲む周辺領域)には、導電層が形成されている。この導電層は、液晶装置の動作温度(例えば、液晶装置自体の温度であってもよいし、液晶装置が置かれた環境の温度であってもよい)の変化に起因して抵抗値が変化するように構成されている。このため、導電層の抵抗値の変化を検出することで、液晶装置の動作温度を検出することができる。つまり、導電層は、液晶装置の動作温度を検出する温度センサとして用いられる。これにより、液晶装置の動作温度を好適に検出することができる。従って、例えば低温環境下での使用を考慮してヒータが備え付けられた液晶装置であれば、導電層を用いて検出された液晶装置の動作温度に基づいて、ヒータの動作を好適に制御することができる。
【0010】
加えて、本発明の液晶装置では、液晶装置の駆動時に、駆動回路や検査回路が動作するための電源となる電源電圧が供給される電源配線と導電層との間に静電容量が形成される。特に、電源配線は、その他の各種駆動信号が供給される配線と比較して、相対的にサイズが大きい。このため、電源電圧が供給される電源配線と導電層との間の静電容量を相対的に大きくすることができる。これにより、導電層を、より大容量のバイパスコンデンサ(いわゆる、パスコン)として機能させることができる。このため、低ノイズ化や低EMI化をより確実に図ることができるため、液晶装置の高画質化及び高精細化をより確実に図ることができる。
【0011】
更に、導電層は電源配線との間で静電容量を形成するため、各種駆動回路又は各種検査回路との間の容量負荷(特に、各種駆動回路又は各種検査回路が動作又は駆動するための駆動信号等が供給される配線との間の容量負荷)の増大を抑制することができる。言い換えれば、導電層を駆動回路又は検査回路と平面上近接する又は同じ箇所に形成したとしてとも、駆動回路又は検査回路の容量負荷が増大することは殆ど又は全くなくなる。このため、駆動回路又は検査回路の容量負荷を増大させることなく、上述した各種効果を享受することができる。更には、導電層を駆動回路又は検査回路と平面上独立した箇所に形成する必要がなくなるため、温度センサとなる導電層を形成することに起因した周辺領域の拡大を確実に抑制することができる。その結果、液晶装置の狭額縁化を好適に図ることができる。
【0012】
尚、液晶装置の狭額縁化を図りながら温度センサを形成することができるという効果を享受するという観点から見れば、複数の画素部が形成される第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層とを備える液晶装置であって、前記複数の画素部を取り囲む前記第1基板上の周辺領域には、当該液晶装置の動作時に、抵抗値の変化に基づいて当該液晶装置の動作温度を検出するために用いられる導電層と、当該液晶装置を駆動するための駆動信号を供給する駆動回路又は前記複数の画素部の夫々の動作を検査する検査回路が形成されており、前記導電層は、前記駆動回路又は前記検査回路に対して電源電圧を供給する電源配線と前記第1基板の表面の法線に沿って重なる位置に、絶縁層を介在させて形成されるが形成されていることを特徴とする液晶装置であっても、上述した効果を享受することができる。
【0013】
本発明の液晶装置の一の態様では、前記導電層は、当該液晶装置の製造時に、発生する静電気の帯電を防止するために用いられる。
【0014】
この態様によれば、導電層は、液晶装置の製造時には、帯電防止に用いられる。より具体的には、液晶装置の製造時には、例えば液晶装置に設けられる配向膜の表面に対して、レーヨンやナイロン等の遷移からなる織布を所定の荷重で一定の方向に擦り付けるラビング処理が行われることが一般的である。この場合、摩擦に起因して生じた静電気は、導電層によって好適に集電される。このため、複数の画素部(特に、複数の画素部が備えるスイッチング素子等の能動素子)が静電気によって破壊されてしまう技術的な不都合を好適に抑制することができる。
【0015】
このように、本発明では、液晶装置の製造時に帯電防止に用いられる導電層を、液晶装置の駆動時には温度センサとして用いることができる。このため、温度センサを別個独立に形成する必要がなくなる。従って、帯電防止用の導電層とは別個独立に温度センサ用の導電層が形成される液晶装置と比較して、温度センサを形成することに起因した周辺領域の拡大を確実に抑制することができる。その結果、液晶装置の狭額縁化を図ることができる。
【0016】
更に、導電層は、液晶装置の駆動時には大容量のバイパスコンデンサ(いわゆる、パスコン)としても機能する。このため、低ノイズ化や低EMI(Electro Magnetic Interference)化を図ることができるため、液晶装置の高画質化及び高精細化を図ることができる。
【0017】
本発明の液晶装置の他の態様では、前記導電層は、閉ループ状のパターンで前記第1基板上に形成されており、前記閉ループ状の導電層の端部に電気的に接続され且つ前記導電層の抵抗値の変化を検出することで前記動作温度を検出する温度検出回路を更に備える。
【0018】
この態様によれば、閉ループ状の導電層の端部に形成される温度検出回路により、導電層の抵抗値の変化を検出することができるため、液晶装置の動作温度を好適に検出することができる。
【0019】
(電子機器)
上記課題を解決するために、本発明の電子機器は、上述した本発明の液晶装置(但し、その各種態様を含む)を備える。
【0020】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の液晶装置(或いは、その各種態様)備えているため、上述した本発明の液晶装置が享受する各種効果と同様の効果を享受することができる。つまり、このため、上述した本発明の液晶装置が享受する各種効果と同様の効果を享受することができるテレビ、携帯電話、電子手帳、携帯オーディオプレーヤ、ワードプロセッサ、デジタルカメラ、ビューファインダ型若しくはモニタ直視型のビデオレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネル、又は投射型のプロジェクタなどの各種電子機器を実現することができる。
【0021】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から更に明らかにされよう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る液晶装置の構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H’断面図である。
【図3】実施形態に係る液晶装置の要部の電気的な構成を概念的に示すブロック図である。
【図4】導電層に関連した構成を抜きだした液晶装置の簡略化された平面図である。
【図5】導電層に関連した構成を抜きだした液晶装置の簡略化された断面図である。
【図6】液晶装置(特に、導電層が形成されるTFTアレイ基板)を製造する際の大型のマザー基板を示す平面図である。
【図7】液晶装置が適用されたモバイル型のパーソナルコンピュータの斜視図である。
【図8】液晶装置が適用された携帯電話の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づいて説明する。
【0024】
(1)液晶装置の基本構成
先ず、本実施形態に係る液晶装置の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る液晶装置の構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H’断面図である。
【0025】
図1及び図2において、本実施形態に係る液晶装置1では、本発明の「第1基板」の一具体例を構成するTFTアレイ基板10と本発明の「第2基板」の一具体例を構成する対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が封入されている。また、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置する枠状或いは額縁状のシール領域に設けられたシール材52により互いに貼り合わされている。
【0026】
図1において、シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの周辺領域である額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、ドライバIC101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。また、TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0027】
ドライバIC101が形成される辺に沿ったシール領域よりも内側に、本発明における「駆動回路」の一具体例を構成するデータ線駆動回路103aが額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。また、データ線駆動回路103aが形成される辺に対向する辺に沿ったシール領域よりも内側に、製造途中や出荷時の当該液晶装置の品質、欠陥等を検査するためのデータ線検査回路103bが額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。また、本発明の「駆動回路」の他の一具体例を構成する走査線駆動回路104aは、ドライバIC101が形成される辺に隣接する2辺のうちの一方に沿ったシール領域の内側に、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。また、走査線駆動回路104aが形成される辺に対向する辺に沿ったシール領域よりも内側に、製造途中や出荷時の当該液晶装置の品質、欠陥等を検査するための走査線検査回路104bが額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。但し、データ線検査回路103bや走査線検査回路104bに代えて、例えばデータ線へのプリチャージを行うプリチャージ回路等が設けられていてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、画像表示領域10aの周辺領域には、導電層120が形成されている。尚、導電層は、周辺領域のうちシール領域の内側に額縁遮光膜53に覆われるように形成されることが好ましいが、周辺領域のうちシール領域の外側に形成されてもよい。この導電層120は、液晶装置1の製造時には、静電気に起因した帯電を防止するように機能し、液晶装置1の駆動時には、液晶装置1の動作温度を検出するための温度センサとして機能する。尚、導電層120については、図4を参照しながら後に詳述するため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0029】
加えて、液晶装置1には、ヒータ130が備え付けられている。ヒータ130は、例えば電気配線と電源とを備えており、電源から供給される電流が電気配線を流れることで生ずるジュール熱によって発熱する構造体である。或いは、ヒータ130は、その他の原理によって発熱する又は吸熱する構造体であってもよい。また、ヒータ130は、導電層120を用いて検出された液晶装置1の動作温度に応じて、その発熱の度合い(或いは、吸熱の度合い)が制御される。
【0030】
図2において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFT(Thin Film Transistor)や走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成されている。画像表示領域10aには、画素スイッチング用TFTや走査線、データ線等の配線の上層に、ITO等の透明電極からなる画素電極9がマトリクス状に設けられている。画素電極9上には、配向膜8が形成されている。他方、対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上に、不図示のブラックマトリクスが形成されている。ブラックマトリクスは、例えば遮光性金属膜等から形成されており、対向基板20上の画像表示領域10a内で、例えば格子状等にパターニングされている。そして、ブラックマトリクス上に、ITO等の透明材料からなる共通電極21が複数の画素電極9と対向してベタ状に形成されている。共通電極21上には配向膜8が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
【0031】
(2)液晶装置の詳細な構成
続いて、図3及びを参照して、本実施形態に係る液晶装置1の要部の詳細な構成について説明する。ここに、図3は、本実施形態に係る液晶装置1の要部の電気的な構成を概念的に示すブロック図である。
【0032】
図3において、本実施形態に係る液晶装置1は、そのTFTアレイ基板10上の画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、走査線駆動回路104a及びデータ線駆動回路103aや、不図示のドライバIC101等の駆動回路が形成されている。
【0033】
走査線駆動回路104aは、ドライバIC101から供給されるクロック信号等に応じて、走査信号を、走査線Y1からYnに順次供給する。例えば、ある走査線Yj(但し、jは、1≦j≦nを満たす整数)にハイレベルの走査信号が供給されると、この走査線Yjに接続されたTFT116が全てオン状態となり、この走査線Yjに対応する画素部70が全て選択される。
【0034】
データ線駆動回路103aは、ドライバIC101から供給されるクロック信号等に応じて、画像信号を、データ線X1からXmに順次供給し、オン状態のTFT116を介してこの画像信号に基づく書込電圧を画素電極9に書き込む。
【0035】
本実施形態に係る液晶装置1には、更に、そのTFTアレイ基板10の中央を占める画像表示領域10aに、マトリクス状に配列された複数の画素部70が設けられている。
【0036】
図3に示すように、画素部70は、垂直方向に延在するデータ線Xk(但し、kは1≦k≦mを満たす整数)と、水平方向に延在する走査線Yj(但し、jは1≦j≦nを満たす整数)と、データ線Xk及び走査線Yjの交点付近に形成される画素スイッチング用のTFT116と、液晶素子118と、蓄積容量119を備えている。
【0037】
TFT116は、ソース端子がデータ線X1〜Xm(但し、図4では不図示)のいずれかに電気的に接続され、ゲート端子が走査線Y1からYn(但し、図4では不図示)のいずれかに電気的に接続され、ドレイン端子が画素電極9に電気的に接続されている。画素スイッチング用のTFT116は、走査線駆動回路104から供給される走査信号によってオン状態及びオフ状態が切り換えられる。
【0038】
液晶素子118は、画素電極9、共通電極21並びに画素電極9及び共通電極21間に位置する液晶分子から構成されている。画素電極9は、TFT116を介してデータ線X1からXmのいずれかと電気的に接続されている。液晶装置1の動作時には、データ線X1からXm及びTFT116を介して供給された画像信号の電位(書込電位)を有する画素電極9と、共通電位を有する共通電極21との間に電界が生じる。液晶は、当該電界に応じて駆動されることによって、即ち、当該電界に応じて分子集合の配向や秩序が変化することによって、光を変調し、階調表示を可能とする。
【0039】
蓄積容量119は、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、液晶素子118と並列に付加されている。蓄積容量119を構成する一方の電極は、画素電極9に電気的に接続され、他方の電極は、共通電極21に電気的に接続されている。
(3)導電層の具体的構成
続いて、図4を参照して、画像表示領域10aの周辺領域に形成される導電層120のより具体的な構成について説明する。ここに、図4は、導電層120に関連した構成を抜きだした液晶装置1の簡略化された平面図である。尚、図4では、説明の簡略化のため、図1から図3を用いて説明した液晶装置1が備える構成要素のうちの一部のみを図示している。
【0040】
図4に示すように、導電層120は、例えばITO等の透明電極から構成されており、画像表示領域10aの周辺領域に形成されている。また、導電層120は、データ線駆動回路103a、走査線駆動回路104a、データ線検査回路103b及び走査線検査回路104bの少なくとも一部と重なるように又はそれらを取り囲むように形成されることが好ましい。特に、導電層120は、データ線駆動回路103a、走査線駆動回路104a、データ線検査回路103b及び走査線検査回路104bに対して電源電圧信号を供給する電源配線に重なるように形成されることが好ましい。このとき、導電層120の全てが電源配線に重なるように形成されてもよいし、或いは導電層120の一部が電源配線に重なり且つ導電層120の他の一部が電源配線に重ならないように形成されてもよい。
【0041】
ここで、電源配線と導電層120との位置関係について、図5を参照しながらより詳細に説明する。ここに、図5は、導電層120に関連した構成を抜きだした液晶装置1の簡略化された断面図である。
【0042】
尚、データ線駆動回路103a、走査線駆動回路104a、データ線検査回路103b及び走査線検査回路104bは各種回路素子を備えているが、図5では、各種回路素子を構成する基本的な回路素子であるTFT(Thin Film Transistor)に着目して説明を進める。
【0043】
図5に示すように、TFTアレイ基板10上には、走査線駆動回路104a、データ線検査回路103b及び走査線検査回路104bが備える各種回路素子を構成するTFT201が形成されている。TFT201は、多結晶シリコン(ポリシリコン)から構成されるチャネル領域201aと、イオンプランテーション法等の不純物打ち込み法によって不純物が打ち込まれた多結晶シリコンであるソース領域201bと、イオンプランテーション法等の不純物打ち込み法によって不純物が打ち込まれた多結晶シリコンであるドレイン領域201cとから構成されている。
【0044】
TFT201上には、ゲート絶縁膜202が形成される。ゲート絶縁膜202上には、ゲート電極203が形成される。また、TFTアレイ基板10上には、TFT201、ゲート絶縁膜202及びゲート電極203を覆うように第1層間絶縁膜212が形成されている。
【0045】
第1層間絶縁膜206には、TFT201のソース領域201bに到達するコンタクトホールが形成されており、当該コンタクトホールにはソース電極204が形成されている。また、第1層間絶縁膜206には、TFT201のドレイン領域201cに到達するコンタクトホールが形成されており、当該コンタクトホールにはドレイン電極205が形成されている。第1層間絶縁膜206上には、更に、電源電圧信号をソース電極204に供給するための電源配線208が形成されている。この電源配線208は、ソース電極204と電気的に接続されている。
【0046】
第1層間絶縁膜206上には、ソース電極204、ドレイン電極205及び電源配線208を覆うように第2層間絶縁膜207が形成されている。第2層間絶縁膜207上には、導電層120が形成されている。このとき、導電層120は、TFTアレイ基板10の表面の法線方向に沿って電源配線208と重なる位置に形成される。
【0047】
第2層間絶縁膜207上には、導電層120を覆うように配向膜8が形成されている。また、対向基板20上にも同様に不図示の配向膜が形成されており、TFTアレイ基板10上の配向膜8と対向基板20上の配向膜8との間に液晶層50が封入されている。
【0048】
再び図4(a)において、導電層120は、閉ループ状のパターンを形成するように周辺領域に形成されている。より具体的には、導電層120は、外部接続端子102が備える一の端子から他の端子へと戻るパターンであって、上述した電源配線208に重なる位置に対応するパターンを描くように、周辺領域に形成される。但し、導電層120は、外部接続端子102が備える一の端子から他の端子へと戻るパターンを描くように構成されていればよく、その一部が開放端を構成してもよい。
【0049】
導電層120と電気的に接続される外部接続端子102の2つの端子には、温度検出回路140が接続されている。温度検出回路140は、導電層120の抵抗値(或いは、抵抗値の変化)を検出可能に構成されている。更に、温度検出回路140は、導電層120の変化に基づいて、液晶装置1の動作温度を検出可能に構成されている。温度検出回路140によって検出された動作温度は、ヒータ制御回路150へと出力される。
【0050】
ヒータ制御回路150は、温度検出回路140によって検出された動作温度に基づいて、ヒータ130の動作を制御する。例えば、ヒータ制御回路150は、温度検出回路140によって検出された動作温度が所定の閾値を上回る場合には、ヒータ130が発熱しないようにヒータ130の動作を制御し、温度検出回路140によって検出された動作温度が所定の閾値を下回る場合には、ヒータ130を発熱させるようにヒータ130の動作を制御する。その結果、低温環境下にある液晶装置1は、ヒータ130の発熱によって暖められ、動作温度が上昇することになる。
【0051】
このように、本実施形態に係る液晶装置1では、導電層120の抵抗値の変化を検出することで、液晶装置1の動作温度を好適に検出することができる。その結果、ヒータ130を好適に制御することができる。従って、低温環境下での液晶分子の応答速度の低下に起因した液晶装置1の表示性能の低下を防ぐ必要がある。
【0052】
更に、本実施形態に係る液晶装置1に形成される導電層120は、液晶装置1の製造時には、帯電防止に用いられる。具体的には、液晶装置1の製造時には、配向膜8の表面に対して、レーヨンやナイロン等の遷移からなる織布を所定の荷重で一定の方向に擦り付けるラビング処理が行われる。その結果、摩擦に起因した高電圧の静電気が発生する。この場合、仮に導電層120が形成されていなければ、高電圧の静電気によってTFT116等の素子が静電破壊されてしまいかねない。しかるに、本実施形態では、摩擦に起因して生じた静電気は、導電層120によって好適に集電される。このため、TFT116等の素子が静電気によって静電破壊されてしまう技術的な不都合を好適に抑制することができる。
【0053】
つまり、本実施形態では、液晶装置1の製造時に帯電防止に用いられる導電層120を、液晶装置1の駆動時には温度センサとして用いることができる。このため、液晶装置1の動作電圧を測定するための温度センサを構成するための導電層120を、帯電防止用の導電層120とは別個独立に形成する必要がなくなる。従って、帯電防止用の導電層とは別個独立に温度センサ用の導電層が形成される液晶装置と比較して、温度センサを構成する導電層120を形成することに起因した周辺領域の拡大を確実に抑制することができる。その結果、液晶装置1の狭額縁化を図ることができる。
【0054】
更に、本実施形態では、導電層120は、相対的に形状が大きい又は幅が広い電源配線208に重なるように形成されている。このため、導電層120は主として電源配線208との間で静電容量を形成する。従って、データ線駆動回路103a及び走査線駆動回路104a(更には、データ線検査回路103b及び走査線検査回路104b)と導電層120との間の容量負荷の増大を抑制することができる。言い換えれば、データ線駆動回路103a及び走査線駆動回路104aが備える電源配線208以外の電気配線(例えば、走査信号や画像信号等の駆動信号が供給される電気配線等)と導電層120との間の容量負荷の増大を抑制することができる。従って、データ線駆動回路103a及び走査線駆動回路104aの容量負荷を増大させることなく、上述した各種効果を享受することができる。更には、データ線駆動回路103a及び走査線駆動回路104aの動作に影響を与えることなく、導電層120をデータ線駆動回路103a及び走査線駆動回路104aの周辺に形成することができる。これにより、温度センサとなる導電層120を形成することに起因した周辺領域の拡大を確実に抑制することができる。その結果、液晶装置1の狭額縁化をより好適に図ることができる。
【0055】
加えて、導電層120は、液晶装置1の駆動時には大容量のバイパスコンデンサ(いわゆる、パスコン)としても機能する。この場合、導電層120が電源配線208と重なる位置に形成されるため、電源配線208と導電層120との間の静電容量を相対的に大きくすることができる。これにより、導電層120を、より大容量のバイパスコンデンサ(いわゆる、パスコン)として機能させることができる。このため、低ノイズ化や低EMI(Electro Magnetic Interference)化をより確実に図ることができるため、液晶装置1の高画質化及び高精細化をより確実に図ることができる。
【0056】
尚、導電層120が液晶装置1の製造時(特に、ラビング処理時)に発生する静電気の帯電防止に用いられると言う観点から見れば、導電層120は、配向膜8に近接して形成されることが好ましい。このため、導電層120は、画素電極9と同じ工程(或いは、配向膜8が形成される直前の工程)で形成されることが好ましい。これにより、ラビング処理時に発生する静電気の帯電防止をより確実に図ることができる。更には、導電層120を形成するための工程を別個独立に設ける必要がなくなるため、液晶装置1の製造工程を増加させることなく、上述した各種効果を好適に享受することができる。
【0057】
また、液晶装置1の製造時には、1枚の大型のマザー基板を切り出すことで複数個の液晶装置1をまとめて形成する方法が一般的であることを考慮すれば、導電層120は、1枚の大型のマザー基板上での配置も考慮したパターン状に形成されることが好ましい。この態様について、図6を参照して説明する。ここに、図6は、液晶装置1(特に、導電層120が形成されるTFTアレイ基板10)を製造する際の大型のマザー基板を示す平面図である。
【0058】
図6に示すように、液晶装置1の製造時には、1枚の大型のマザー基板300上に複数のTFTアレイ基板10をまとめて形成する。更に、他の大型のマザー基板上に複数の対向基板20をまとめて形成し、これら2つのマザー基板を張り合わせた後に切断することで、複数の液晶装置1が製造される。
【0059】
このとき、図6に示すように、大型のマザー基板300上に形成される複数のTFTアレイ基板10の夫々に形成される導電層120は、隣り合うTFTアレイ基板10に形成される導電層120と短絡するように形成されることが好ましい。図6に示す例では、TFTアレイ基板10の下方側に形成される導電層120は、下方側で隣り合う他のTFTアレイ基板10の上方側に形成される導電層120と短絡している。同様に、図6に示す例では、TFTアレイ基板10の上方側に形成される導電層120は、上方側で隣り合う他のTFTアレイ基板10の下方側に形成される導電層120と短絡している。同様に、図6に示す例では、TFTアレイ基板10の右方側に形成される導電層120は、右方側で隣り合う他のTFTアレイ基板10の左方側に形成される導電層120と短絡している。同様に、図6に示す例では、TFTアレイ基板10の左方側に形成される導電層120は、左方側で隣り合う他のTFTアレイ基板10の右方側に形成される導電層120と短絡している。
【0060】
これにより、導電層120全体として、1枚の大型のマザー基板300上で大きな静電容量を形成することができるため、ラビング処理に起因して生ずる静電気を確実に集電することができる。更に、集電した静電気(つまり、電荷)を導電層120全体で分散することができる。このため、各TFTアレイ基板10間での電位差をなくして同電位面を拡張することができるため、ラビング処理に起因して生ずる静電気による放電を確実に防止することができる。このため、TFT116等の素子が静電気によって静電破壊されてしまう技術的な不都合をより好適に抑制することができる。
【0061】
尚、上述した実施形態では液晶装置1として、TN(ツイスト・ネマティック)、ECB(複屈折電界効果)、VA(垂直配向)などの縦電界の構成として記載しているが、IPS(イン・プレーン・スイッチング)及びFFS(フリンジ・フィールド・スイッチング)等の横電界の構成としても、上述した各種効果を享受できる。
【0062】
(4)電子機器
続いて、図7及び図8を参照しながら、上述の液晶装置1を具備してなる電子機器の例を説明する。
【0063】
図7は、上述した液晶装置1が適用されたモバイル型のパーソナルコンピュータの斜視図である。図7において、コンピュータ1200は、キーボード1202を備えた本体部1204と、上述した液晶装置1を含んでなる液晶表示ユニット1206とから構成されている。
【0064】
次に、上述した液晶装置1を携帯電話に適用した例について説明する。図8は、電子機器の一例である携帯電話の斜視図である。図8において、携帯電話1300は、複数の操作ボタン1302とともに、半透過反射型の表示形式を採用し、且つ上述した液晶装置1と同様の構成を有する液晶装置1005を備えている。
【0065】
これらの電子機器においても、上述した液晶装置1を含んでいるため、上述した各種効果を好適に享受することができる。
【0066】
尚、図7及び図8を参照して説明した電子機器の他にも、液晶テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた直視型の液晶装置や、プロジェクタやヘッドアップディスプレイ等の投射型の液晶装置を備える装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に対して、上述した液晶装置1を適用可能なのは言うまでもない。
【0067】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なう液晶装置及び電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1…液晶装置、9…画素電極、10…TFTアレイ基板、20…対向基板、21…共通電極、70…画素部、103a…データ線駆動回路、104a…走査線駆動回路、103b…データ線検査回路、104b…走査線検査回路、120…導電層、201…TFT、208…電源配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素部が形成される第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層とを備える液晶装置であって、
前記複数の画素部を取り囲む前記第1基板上の周辺領域には、当該液晶装置の動作時に、抵抗値の変化に基づいて当該液晶装置の動作温度を検出するために用いられる導電層と、当該液晶装置を駆動するための駆動信号を供給する駆動回路又は前記複数の画素部の夫々の動作を検査する検査回路とが形成されており、
前記導電層は、前記駆動回路又は前記検査回路に対して電源電圧を供給する電源配線と前記第1基板の表面の法線に沿って重なる位置に、絶縁層を介在させて形成されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記導電層は、当該液晶装置の製造時に発生する静電気の帯電を防止するために用いられることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記導電層は、閉ループ状のパターンで前記第1基板上に形成されており、
前記閉ループ状の導電層の端部に電気的に接続され且つ前記導電層の抵抗値の変化を検出することで前記動作温度を検出する温度検出回路を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−224398(P2010−224398A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73834(P2009−73834)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】