説明

液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子

【課題】長期の使用に対しても液晶の配向性能が維持されるような長期の耐久性を有する液晶表示素子を得るための液晶配向剤を提供する。
【解決手段】エチレン性不飽和単量体に由来する繰り返し単位を有する重合体を含有し、前記繰り返し単位が、窒素原子に隣接する2つの炭素原子がそれぞれ下記式(S)で表される置換基2個を有している環状アミン構造、又は水酸基に対してオルト位の炭素原子のうち少なくとも1つの炭素原子が下記式(S)で表される置換基を有しているフェノール構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子に関し、詳しくは、長期に亘って用いられる液晶配向膜を得るために使用される液晶配向剤、並びに当該液晶配向剤を使用して形成される液晶配向膜及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子としては、電圧無印加時における液晶分子の配向方向によって水平配向型と垂直配向型とに大別されており、水平配向型としてはTN(Twisted Nematic)型素子やIPS(In−Plane Switching)型素子などが知られており、垂直配向型としてはVA(VerticalAlignment)型素子などが知られている。
【0003】
かかる電圧無印加時における液晶分子の配向制御は、液晶配向膜を用いて行われる。液晶配向膜は、ポリイミド又はポリアミック酸を含有する液晶配向剤を基板に塗布した後、これを焼成することによって得ることができる。
【0004】
液晶表示素子の表示性能を良好にするには、液晶配向膜によって液晶分子の配向制御が好適に行われる必要があり、これを実現可能な液晶配向膜を作製するための液晶配向剤が種々提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1には、フェニレン基を主鎖に有する繰り返し単位と、ビフェニレン基等を主鎖に有する繰り返し単位とを有するポリアミック酸を含有した液晶配向剤について開示されている。また、特許文献2には、ヒンダードアミン構造又はヒンダードフェノール構造を側鎖に有するポリアミック酸やポリイミドを含む液晶配向剤について開示されている。これら特許文献1,2では、上記構成のポリアミック酸やポリイミドを液晶配向剤中に含有させることで、液晶表示素子の長時間の連続使用後であっても液晶の配向性能が維持されるようにして、信頼性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−94179号公報
【特許文献2】特開2010−244015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、液晶表示素子は液晶テレビといった高品位モニターに適用されているが、このような高品位モニターに対しては長時間の連続使用に対する信頼性だけでなく、電圧のON・OFFが繰り返し行われながらの長期の使用に対しても液晶の配向性能が維持されるような長期の耐久性が要求されることとなる。そして、この長期の耐久性が要求される期間は、より長期化している。これに対して、上記特許文献1に記載のものや、上記特許文献2に記載のものでは、上記のような長期の耐久性という点において不十分であることが分かった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、長期の使用に対しても液晶の配向性能が維持されるような長期の耐久性を有する液晶表示素子を得るための液晶配向剤、当該液晶配向剤により形成した液晶配向膜及び当該液晶配向膜を備える液晶表示素子を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を達成すべく鋭意検討した結果、エチレン性不飽和単量体に由来する繰り返し単位を有する重合体であって、上記繰り返し単位として、特定の環状アミン構造又は特定のフェノール構造の繰り返し単位を有する重合体を含有することで、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明により以下の液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子が提供される。
【0010】
本発明によれば、エチレン性不飽和単量体に由来する繰り返し単位を有する重合体を含有し、前記繰り返し単位が、窒素原子に隣接する2つの炭素原子がそれぞれ下記式(S)で表される置換基2個を有している環状アミン構造、又は水酸基に対してオルト位の炭素原子のうち少なくとも1つの炭素原子が下記式(S)で表される置換基を有しているフェノール構造を有するものであることを特徴とする液晶配向剤が提供される。
【0011】
【化1】

(式中、R11は、単結合又は置換されていてもよい炭化水素基であり、Xは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−CO−O−又は−O−CO−であり、R12は、置換されていてもよい炭化水素基である。但し、Xが単結合ではない場合、R11及びR12が互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【0012】
本発明の液晶配向剤によれば、エチレン性不飽和単量体に由来する繰り返し単位であって上記環状アミン構造又は上記フェノール構造を有する繰り返し単位を含有する重合体(以下、重合体[A]ともいう)を有していることにより、長期の使用に対しても液晶の配向性能が維持されるような長期の耐久性を有する液晶表示素子を得ることが可能となる。
また、液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体(以下、重合体[B]ともいう)をさらに含有していることが好ましい。これにより、上記耐久性の向上が期待でき、さらに電圧保持率等といった電気特性の向上も期待できる。
【0013】
本発明において、上記長期の耐久性を生じさせることが可能な液晶配向剤を好適に得るためには、前記繰り返し単位は、下記式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位であることが好ましく、下記式(1−1−1)又は(1−2−1)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【0014】
【化2】

(式(1−1)及び式(1−2)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Aは単結合又は2価の連結基であり、R11は、それぞれ、単結合又は置換されていてもよい炭化水素基であり、Xは、それぞれ、単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−CO−O−又は−O−CO−であり、R12は、それぞれ、置換されていてもよい炭化水素基である。但し、Xが単結合ではない場合、R11及びR12が互いに結合して環構造を形成していてもよい。式(1−1)中、Bは、水素原子、酸素原子、ハロゲン原子、水酸基又は1価の有機基であり、mは0〜4の整数である。式(1−2)中、nは0〜3の整数である。)
【0015】
【化3】

(式(1−1−1)及び式(1−2−1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Aは単結合又は2価の連結基であり、R13は、それぞれ、炭素数1〜5のアルキル基であり、R14は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。式(1−1−1)中、Bは、水素原子、酸素原子、ハロゲン原子、水酸基又は1価の有機基である。)
【0016】
また、本発明において、上記重合体[A]がさらに下記式(2)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0017】
【化4】

(式(2)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Aは単結合又は2価の連結基であり、Bはステロイド骨格を有する炭素数17〜30の1価の有機基、トコフェロール構造を有する1価の有機基、又は下記式(B2)で表される1価の有機基である。
【0018】
【化5】

(B21は、シクロヘキシレン基であるか、又は置換若しくは無置換のフェニレン基であり、B22は水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基である。kは0〜3の整数である。但し、B22が水素原子である場合、kは1以上である。また、kが2又は3の場合、複数のB21はそれぞれ独立して上記定義を有する。「*」はAに結合する結合手を示す。))
【0019】
この場合、上記耐久性の長期化を図りながら、さらにプレチルト角を良好なものとすることが可能となる。
【0020】
また、本発明によれば、上記記載の液晶配向剤により形成された液晶配向膜、及び当該液晶配向膜を具備する液晶表示素子が提供される。これら液晶配向膜及び液晶表示素子は、特にVA型の液晶表示素子に好適に使用することができる。
【0021】
なお、本明細書において、「炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基が含まれる。この「炭化水素基」は、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。
【0022】
また、「鎖状炭化水素基」とは、鎖状構造のみで構成された炭化水素基を意味し、直鎖状であっても分岐状であってもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素を意味する。但し、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。但し、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。
【0023】
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の液晶配向剤は、エチレン性不飽和単量体に由来する繰り返し単位を有する重合体[A]を含有する。以下、本発明の液晶配向剤について詳細に説明する。
【0025】
<重合体[A]>
[繰り返し単位(a1)]
本発明における重合体[A]は、
窒素原子に隣接する2つの炭素原子がそれぞれ下記式(S)で表される置換基2個を有している環状アミン構造
又は
水酸基に対してオルト位の炭素原子のうち少なくとも1つの炭素原子が下記式(S)で表される置換基を有しているフェノール構造
を有する繰り返し単位(a1)を有している。
【0026】
【化6】

(式中、R11は、単結合又は置換されていてもよい炭化水素基であり、Xは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−CO−O−又は−O−CO−であり、R12は、置換されていてもよい炭化水素基である。但し、Xが単結合ではない場合、R11及びR12が互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【0027】
上記環状アミン構造としては、その環構造を形成する炭素原子の数が2個以上7個以下であることが好ましく、より好ましくは5個である。また、上記フェノール構造としては、ベンゼン環において水酸基が結合する位置は任意であるが、好ましくは、当該ベンゼン環において主鎖側と結合する炭素原子に対してパラ位の位置である。
【0028】
繰り返し単位(a1)の好ましい構造としてより具体的には、環状アミン構造を有するものである場合にはヒンダードアミン構造を有するものであり、下記式(1−1)で表される構造である。一方、フェノール構造を有するものである場合にはヒンダードフェノール構造を有するものであり、下記式(1−2)で表される構造である。
【0029】
【化7】

(式(1−1)及び式(1−2)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Aは単結合又は2価の連結基であり、式(1−1)中、Bは、水素原子、酸素原子、ハロゲン原子、水酸基又は1価の有機基であり、mは0〜4の整数である。式(1−2)中、nは0〜3の整数である。R11、X及びR12の定義は、上記式(S)と同じである。)
【0030】
上記式(S)、上記式(1−1)及び上記式(1−2)中、R11の炭化水素基として具体的には、炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜15の2価の脂環式炭化水素基、及び炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。これらのうち好ましくは、メチレン基又は炭素数2〜5のアルキレン基である。炭素数2〜5のアルキレン基として具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができ、これらは直鎖状及び分岐状のいずれであってもよい。また、当該炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子、水酸基等を挙げることができる。
【0031】
上記式(S)、上記式(1−1)及び上記式(1−2)中、−R11−X−が単結合ではない場合、好ましくは、−CO−O−、−CH−CO−、又は−CH−CH(OH)−である。
【0032】
上記式(S)、上記式(1−1)及び上記式(1−2)中、R12として具体的には、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数7〜13のアラルキル基を挙げることができる。この場合、アリール基及びアラルキル基の有するベンゼン環の水素原子が、ホルミル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0033】
12の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等を;
炭素数6〜12のアリール基としては、例えばフェニル基、4−ホルミルフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基等を;
炭素数7〜13のアラルキル基としては、ベンジル基等を
それぞれ挙げることができる。
11及びR12が互いに結合して形成する環構造としては、例えばフラン、チオフェン、2H−ピラン、及び4H−ピラン等から1個の水素原子を除いた基を挙げることができる。
【0034】
上記式(S)、上記式(1−1)及び上記式(1−2)中、−R11−X−R12として好ましくは、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、4−ホルミルベンゾイル基、2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル基、2−オキソ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エチル基等を挙げることができる。また、−R11−X−R12としてより好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基であり、上記式(1−1)であればメチル基又はエチル基が特に好ましく、上記式(1−2)であればメチル基又はt−ブチル基が特に好ましい。
【0035】
上記式(1−1)中、mとしては0が好ましく、上記式(1−2)中、nとしては0又は1が好ましい。これらm及びnとの関係、及び上記−R11−X−R12との関係において、上記式(1−1)及び上記式(1−2)として好ましくは、下記式(1−1−1)及び下記式(1−2−1)で表されるものである。
【0036】
【化8】

(式(1−1−1)及び式(1−2−1)中、R13は、それぞれ、炭素数1〜5のアルキル基であり、式(1−2−1)中、R14は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。R、A、及びBの定義は、上記式(1−1)及び上記式(1−2)と同じである。)
【0037】
上記式(1−1)、上記式(1−2)、上記式(1−1−1)及び上記式(1−2−1)中、Aとしては2価の連結基が好ましい。Aの2価の連結基としては、下記式(A1)で表されるものを挙げることができる。
【0038】
【化9】

(式中、A11は、単結合、メチレン基、炭素数2〜5のアルキレン基、又はフェニレン基であり、A12は、単結合、−O−、−CO−、−CO−O−、又は−O−CO−であり、A13は、単結合であるか、又は置換されていてもよいメチレン基若しくは炭素数2〜5のアルキレン基であり、A14は、単結合、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−NR’−、又は−NR’−CO−O−であり、R’は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。但し、A11、A12、A13及びA14の全てが単結合であるものを除く。*1は、環状アミン構造の炭素原子又はフェノール構造の炭素原子に結合する結合手を示す。)
【0039】
上記式(A1)中、A11及びA13の炭素数2〜5のアルキレン基としては、上記R11で例示したものを挙げることができる。また、A13のメチレン基又は炭素数2〜5のアルキレン基が有していてもよい置換基としては、上記R11で例示したものを挙げることができる。また、R’の炭素数1〜6のアルキル基としては、上記R12で例示したものを挙げることができる。
【0040】
上記式(A1)で表される2価の連結基としては、例えば以下のものを挙げることができる。
【0041】
【化10】

(式(A1−1)〜式(A1−17)中、*1は、環状アミン構造の炭素原子又はフェノール構造の炭素原子に結合する結合手を示す。)
【0042】
上記式(A1−1)〜式(A1−17)中、得られる液晶配向膜の耐久性の向上を好適に図る上で、Aの2価の連結基として好ましくは、式(A1−2)、式(A1−5)、式(A1−8)、式(A1−10)、式(A1−11)、式(A1−16)及び式(A1−17)のいずれかで表されるものであり、より好ましくは、式(A1−2)、式(A1−5)及び式(A1−10)のいずれかで表されるものである。
【0043】
上記式(1−1)及び上記式(1−1−1)中、Bのハロゲン原子としては、フッ素原子や塩素原子等を挙げることができる。
【0044】
上記式(1−1)及び上記式(1−1−1)中、Bの1価の有機基としては、下記式(B1)で表されるものを挙げることができる。
【0045】
【化11】

(式中、B11は、単結合、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−NR’’−、又は−CO−NR’’−であり、R’’は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。B12は、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアラルキル基、炭素数3〜10の1価の複素環基、又は炭素数3〜15の脂環式炭化水素基であって、これらの基が有する水素原子が置換されていてもよい。)
【0046】
上記式(B1)中、R’’の炭素数1〜6のアルキル基としては、上記R12で例示したものを挙げることができる。
【0047】
上記式(B1)中、B12の炭素数1〜15のアルキル基としては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等を;
炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、4−エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基等を;
炭素数7〜13のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、ナフチルメチル基等を;
炭素数3〜10の1価の複素環基としては、含窒素複素環化合物が挙げられ、例えば、ピペリジン、モルホリン、ピリジン、ピラジン等を;
炭素数3〜15の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、4−メチルシクロへキシル基等を
それぞれ挙げることができる。
【0048】
また、B12の上記各基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。
【0049】
上記式(B1)で表される1価の有機基(−B11−B12)としては、例えば、メチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、t−ペンチル基、n−オクチル基、ベンジル基、4−エチルフェニル基、4−メチルシクロへキシル基、メトキシ基、オクチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アセチル基、アセチルオキシ基、テトラデカノイル基、α−メチルベンジルオキシ基、ピペリジノカルボニル基、モロフォリノカルボニル基、2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ基、−O−CONH−C等を挙げることができる。
【0050】
上記式(1−1)及び上記式(1−1−1)中、得られる液晶配向膜の耐久性の向上を好適に図る上で、Bとして好ましくは、水素原子、酸素原子、塩素原子、メチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、t−ペンチル基、ベンジル基、メトキシ基、オクチルオキシ基、アセチル基、アセチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基のいずれかであり、より好ましくは、水素原子、酸素原子、メチル基、ベンジル基、オクチルオキシ基のいずれかである。
【0051】
ヒンダードアミン構造を有する繰り返し単位(a1)として具体的には、下記式(a1−1−1)〜(a1−1−20)で表されるものを挙げることができる。
【0052】
【化12】

(式中、Rは水素原子又はメチル基である。)
【0053】
上記ヒンダードアミン構造の繰り返し単位(a1)を与える単量体は、有機化学の定法を組み合わせることにより容易に合成することができる。例えば、上記式(a1−1−1)〜式(a1−1−16)の繰り返し単位を与える単量体であれば、ハロゲン化(メタ)アクリロイルと、下記式(C−1)で表される化合物とを、公知のエステル化反応に準じて反応させることにより得ることができる。また、上記式(a1−1−17)又は式(a1−1−18)の繰り返し単位を与える単量体であれば、ハロゲン化2−プロペニル又はハロゲン化9−デシルと、下記式(C−1)で表される化合物とを、公知のエーテル化反応に準じて反応させることにより得ることができる。また、上記式(a1−1−19)又は式(a1−1−20)の繰り返し単位を与える単量体であれば、ハロゲン化(メタ)アクリロイルと、下記式(C−1)においてOH−A13−A14−をNH−に代えた化合物とを、公知のアミド化反応に準じて反応させることにより得ることができる。
【0054】
【化13】

(式中、A13、A14、B及びR13の定義は、既に説明したものと同じである。)
【0055】
また、上記各単量体は、市販のものを用いることもでき、例えば、メタクリル酸2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル、及びメタクリル酸1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルはそれぞれ、FA−712HM、FA−711MMとして、日立化成工業株式会社より市販されている。
【0056】
ヒンダードフェノール構造を有する繰り返し単位(a1)として具体的には、下記式(a1−2−1)〜式(a1−2−10)で表されるものを挙げることができる。
【0057】
【化14】

(式中、Rは水素原子又はメチル基である。)
【0058】
上記ヒンダードフェノール構造の繰り返し単位(a1)を与える単量体は、有機化学の定法を組み合わせることにより容易に合成することができる。
【0059】
繰り返し単位(a1)としては、得られる液晶配向膜の耐久性の向上を好適に図る上では、ヒンダードフェノール構造を有するものよりも、ヒンダードアミン構造を有するものが好ましい。
【0060】
重合体[A]は、繰り返し単位(a1)を、1種単独で有していてもよく、2種以上を組み合わせて有してもよい。その機構は定かではないが、重合体[A]が繰り返し単位(a1)を有していることにより、バックライト等から照射された紫外線が重合体[A]にて好適に吸収され、当該紫外線の影響が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体に及びづらくなると推測される。これにより、長期の使用に対しても液晶の配向性能が維持されるようにすることが可能となり、長期の耐久性を有する液晶表示素子を得ることが可能となる。また、当該効果を高める上での重合体[A]における繰り返し単位(a1)の含有割合(又は繰り返し単位(a1)を与える単量体の共重合割合)は、重合体[A]の全重量(又は重合体[A]を合成する上で用いられる単量体の合計重量)のうち、1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは1重量%以上50重量%以下であり、さらに好ましくは1重量%以上30重量%以下であり、特に1重量%以上20重量%以下であることが好ましい。
【0061】
<その他の繰り返し単位>
重合体[A]は、上記繰り返し単位(a1)以外の繰り返し単位として、下記に示す繰り返し単位(a2)を有していることが好ましく、さらに下記に示す繰り返し単位(a3)〜(a7)の少なくともいずれかを有していることが好ましい。
【0062】
[繰り返し単位(a2)]
繰り返し単位(a2)は、シクロヘキサン構造及びベンゼン環構造の少なくとも一方を有している。具体的には、繰り返し単位(a2)として、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0063】
【化15】

(式(2)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Aは単結合又は2価の連結基であり、Bはステロイド骨格を有する炭素数17〜30の1価の有機基、トコフェロール構造を有する1価の有機基、又は下記式(B2)で表される1価の有機基である。
【0064】
【化16】

(B21は、シクロヘキシレン基であるか、又は置換若しくは無置換のフェニレン基であり、B22は水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基である。kは0〜3の整数である。但し、B22が水素原子である場合、kは1以上である。また、kが2又は3の場合、複数のB21はそれぞれ独立して上記定義を有する。「*」はAに結合する結合手を示す。))
【0065】
上記式(2)中、Aの2価の連結基としては、フェニレン基、又は下記式(A2−1)〜式(A2−6)のいずれかで表されるもの等を挙げることができる。
【0066】
【化17】

(上記式中のpは0又は2であり、qは0又は1であり、r及びsはそれぞれ1〜6の整数であり、「*2」はBと結合する結合手を示す。)
【0067】
としては、単結合が好ましい。
上記式(2)中、Bのステロイド骨格を有する炭素数17〜30の1価の有機基としては、例えば、コレスタン−3−イル基、コレスタ−5−エン−3−イル基、コレスタ−24−エン−3−イル基、コレスタ−5,24−ジエン−3−イル基、ラノスタン−3−イル基等を挙げることができる。
【0068】
上記式(B2)中、B21のフェニレン基が有する置換基としては、上記B12で列挙したものを挙げることができ、好ましくはフッ素原子である。また、B22の炭素数1〜30のアルキル基としては、上記B12の炭素数1〜15のアルキル基として列挙したものに加えて、イコシル基、ペンタコシル基、トリアコンチル基等を挙げることができる。
上記式(B2)で表される1価の有機基として好ましくは、炭素数4〜8のアルキル基を有するシクロヘキシル基、炭素数3〜30のアルキル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、又は下記式(B2−1)で表される基等を挙げることができる。
【0069】
【化18】

(式中、k1は1又は2であり、B22の定義は上記式(B2)と同じである。)
【0070】
この場合、k1としては2が好ましく、B22としては炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。また、上記式(B2−1)で表される基としては、4−(4’−ペンチルビシクロヘキシル−4−イル)フェニル基が特に好ましい。
【0071】
としては、ステロイド骨格を持つ炭素数17〜30の1価の有機基、トコフェロール構造を有する1価の有機基、炭素数4〜8のアルキル基を有するシクロヘキシル基、又は上記式(B2−1)で表される基が好ましい。
【0072】
繰り返し単位(a2)として好ましくは、コレスタニルメタクリレート、4−(4’−ペンチルビシクロヘキシル−4−イル)フェニルメタクリレート、トコフェロールメタクリレートといった各単量体により得られる繰り返し単位である。
【0073】
なお、繰り返し単位(a2)を与える単量体は、例えばハロゲン化(メタ)アクリロイルと化合物B−A−OHとを、公知のエステル化反応に準じて反応させることにより得ることができる。
【0074】
重合体[A]は、繰り返し単位(a2)を、1種単独で有していてもよく、2種以上を組み合わせて有してもよい。重合体[A]が繰り返し単位(a2)を有していることにより、プレチルト角安定性を高めることが可能となり、液晶配向性をさらに向上させることが可能となる。また、当該効果を高める上での重合体[A]における繰り返し単位(a2)の含有割合(又は繰り返し単位(a2)を与える単量体の共重合割合)は、重合体[A]の全重量(又は重合体[A]を合成する上で用いられる単量体の合計重量)のうち、好ましくは60重量%以下であり、より好ましくは1重量%以上60重量%以下であり、さらに好ましくは2重量%以上40重量%以下である。
【0075】
[繰り返し単位(a3)]
繰り返し単位(a3)は、熱架橋反応を可能とする環状エーテル構造を有している。具体的には、繰り返し単位(a3)として、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0076】
【化19】

(式(3)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Aは単結合、メチレン基又は炭素数2〜10のアルキレン基であり、Bは炭素数2〜10の環状エーテル構造を有する基である。)
【0077】
上記式(3)におけるAの炭素数2〜10のアルキレン基としては、上記R11で列挙したものに加えて、ヘキシレン基、ヘプチレン基、デシレン基等を挙げることができる。
上記式(3)におけるBの炭素数2〜10の環状エーテル構造としては、熱架橋反応性を有する1,2−エポキシ構造、又は1,3−エポキシ構造が好ましく、反応性に優れる点で1,2−エポキシ構造がより好ましい。
【0078】
繰り返し単位(a3)としては、上記式(3)においてAがメチレン基又は炭素数2〜10のアルキレン基であってBが1,2−エポキシ構造を有する基である繰り返し単位が好ましく、Aがメチレン基又は炭素数2若しくは5のアルキレン基であってBが1,2−エポキシ構造を有する基である繰り返し単位がより好ましい。
【0079】
繰り返し単位(a3)として好ましくは、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチルといった各単量体により得られる繰り返し単位が好ましく、これらのうち、得られる液晶配向膜の膜密度が高く、優れた電気特性を発現しうる点で、(メタ)アクリル酸グリシジルにより得られる繰り返し単位がより好ましい。
【0080】
重合体[A]は、繰り返し単位(a3)を、1種単独で有していてもよく、2種以上を組み合わせて有してもよい。重合体[A]が繰り返し単位(a3)を有していることにより、本発明の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成後、加熱処理(ポストベーク)を行うことによって熱架橋反応し、これにより得られる液晶配向膜の耐熱性、耐液晶性(耐溶剤性)、膜密度をさらに向上することができる。さらには液晶中に含まれる不純物イオンの液晶配向膜への拡散をより低減することができる。そして、これらの効果により、得られる液晶表示素子に熱ストレスを印加したり、液晶パネルを長時間駆動させたりしても、電圧保持率の低下や焼付きの問題がより確実に解消された液晶配向膜を与える液晶配向剤を得ることができる。また、当該効果を高める上での重合体[A]における繰り返し単位(a3)の含有割合(又は繰り返し単位(a3)を与える単量体の共重合割合)は、重合体[A]の全重量(又は重合体[A]を合成する上で用いられる単量体の合計重量)のうち、50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以上50重量%以下であり、さらに好ましくは15重量%以上45重量%以下であり、特に20重量%以上40重量%以下であることが好ましい。
【0081】
[繰り返し単位(a4)]
繰り返し単位(a4)は、カルボキシル基を有しており、具体的には下記一般式(4)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0082】
【化20】

(式(4)中、R41は水素原子、メチル基又はカルボキシメチル基であり、R42は水素原子、メチル基又はカルボキシル基である。但し、R41がカルボキシメチル基である場合、R42は水素原子又はメチル基である。)
【0083】
繰り返し単位(a4)としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の各単量体により得られる繰り返し単位を挙げることができる。これらのうち、ポリアミック酸及びそのイミド化重合体に対する重合体[A]の相溶性を高め、且つ得られる液晶配向膜の膜密度を高めるとともに、電気特性について高度の信頼性を発現させる点で、(メタ)アクリル酸により得られる繰り返し単位が好ましい。
【0084】
重合体[A]は、繰り返し単位(a4)を、1種単独で有していてもよく、2種以上を組み合わせて有してもよい。重合体[A]が繰り返し単位(a4)を有していることにより、液晶配向剤にポリアミック酸及びそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体が含有されている場合において、当該重合体に対する重合体[A]の相溶性を向上させることが可能となる。また、重合体[A]が上記繰り返し単位(a3)を有している場合には、さらに繰り返し単位(a4)を有することで、繰り返し単位(a3)の環状エーテル構造の架橋反応を促進させることができる。また、当該効果を高める上での重合体[A]における繰り返し単位(a4)の含有割合(又は繰り返し単位(a4)を与える単量体の共重合割合)は、重合体[A]の全重量(又は重合体[A]を合成する上で用いられる単量体の合計重量)のうち、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは1重量%以上40重量%以下であり、さらに好ましくは1重量%以上30重量%以下である。
【0085】
[繰り返し単位(a5)]
繰り返し単位(a5)は、マレイミド構造を有しており、具体的には下記一般式(5)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0086】
【化21】

(式(5)中、Aは単結合、酸素原子若しくは硫黄原子であるか、又は酸素原子、硫黄原子、窒素原子若しくはケイ素原子を含む二価の基であり、Bは炭素数6〜30のアリール基又は炭素数4〜10の脂環式基である。)
【0087】
上記式(5)中、Aとしては、単結合が好ましい。
上記式(5)中、Bの炭素数6〜30のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基等を;
炭素数4〜10の脂環式基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等を
それぞれ挙げることができ、特にフェニル基又はシクロヘキシル基が好ましい。
【0088】
繰り返し単位(a5)としては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−アントラセニルマレイミド、N−フルオレニルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等といった各単量体により得られる繰り返し単位を挙げることができ、これらのうち、N−フェニルマレイミド又はN−シクロヘキシルマレイミドにより得られる繰り返し単位が好ましい。
【0089】
重合体[A]は、繰り返し単位(a5)を、1種単独で有していてもよく、2種以上を組み合わせて有してもよい。重合体[A]が繰り返し単位(a5)を有していることにより、得られる液晶配向膜の耐熱性をより向上させることが可能となる。また、当該効果を高める上での重合体[A]における繰り返し単位(a5)の含有割合(又は繰り返し単位(a5)を与える単量体の共重合割合)は、重合体[A]の全重量(又は重合体[A]を合成する上で用いられる単量体の合計重量)のうち、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは1重量%以上15重量%以下であり、さらに好ましくは1重量%以上10重量%以下である。
【0090】
[繰り返し単位(a6)]
繰り返し単位(a6)は、具体的には下記一般式(6)で表される。
【0091】
【化22】

(式(6)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Aは単結合、酸素原子若しくは硫黄原子であるか、又は酸素原子、硫黄原子、窒素原子若しくはケイ素原子を含む二価の基であり、Bは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基である。)
【0092】
上記式(6)中、Aとしては、単結合が好ましい。
上記式(6)中、Bの炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基等を;
炭素数6〜30のアリール基としては、例えばフェニル基、4−ビフェニル基、2−ビフェニル基、1−ナフタレニル基、2−ナフタレニル基等を
それぞれ挙げることができ、これらのうちフェニル基が好ましい。
【0093】
繰り返し単位(a6)としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィン、スチレン、4−ビニルビフェニル、2−ビニルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、α−メチルスチレン等といった各単量体により得られる繰り返し単位を挙げることができ、これらのうち、スチレンにより得られる繰り返し単位が好ましい。
【0094】
重合体[A]は、繰り返し単位(a6)を、1種単独で有していてもよく、2種以上を組み合わせて有してもよい。重合体[A]が繰り返し単位(a6)を有していることにより、得られる液晶配向膜の耐熱性をより向上させることが可能となる。また、当該効果を高める上での重合体[A]における繰り返し単位(a6)の含有割合(又は繰り返し単位(a6)を与える単量体の共重合割合)は、重合体[A]の全重量(又は重合体[A]を合成する上で用いられる単量体の合計重量)のうち、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは1重量%以上15重量%以下であり、さらに好ましくは1重量%以上10重量%以下である。
【0095】
[繰り返し単位(a7)]
繰り返し単位(a7)は、水酸基を有しており、具体的には下記一般式(7)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0096】
【化23】

(式(7)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Aは単結合又は−COO−*3(「*3」はBに結合する結合手を示す。)であり、Bは炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基又は炭素数4〜10の2価の脂環式基である。)
【0097】
上記式(7)中、Bの炭素数2〜10のアルキレン基としては、例えばエチレン基、1,4−ブチレン基等を;
炭素数6〜30のアリーレン基としては、例えばフェニレン基等を;
炭素数4〜10の二価の脂環式基としては、例えばシクロへキサン−1,4−ジイル基等を
それぞれ挙げることができる。
【0098】
繰り返し単位(a7)としては、例えば、イソプロペニルフェノール、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等といった各単量体により得られる繰り返し単位を挙げることができ、これらのうち、2−ヒドロキシエチルメタクリレートにより得られる繰り返し単位が好ましい。
【0099】
重合体[A]は、繰り返し単位(a7)を、1種単独で有していてもよく、2種以上を組み合わせて有してもよい。重合体[A]が繰り返し単位(a7)を有していることにより、液晶配向剤にポリアミック酸及びそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体が含有されている場合において、当該重合体に対する重合体[A]の相溶性を向上させることができる。また、当該効果を高める上での重合体[A]における繰り返し単位(a7)の含有割合(又は繰り返し単位(a7)を与える単量体の共重合割合)は、重合体[A]の全重量(又は重合体[A]を合成する上で用いられる単量体の合計重量)のうち、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは1重量%以上40重量%以下であり、さらに好ましくは1重量%以上30重量%以下である。
【0100】
重合体[A]につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定されるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という)は、好ましくは2×10以上1×10以下、より好ましくは5×10以上5×10以下、特に好ましくは1×10以上4×10以下である。Mwを2×10以上とすることにより低分子成分の溶出が抑制され、パネル特性の悪化が抑制される(低分子成分の溶出は電圧保持率の低下やパネル焼付きの要因になる)。一方1×10以下とすることにより、得られる液晶配向剤の溶液粘度を適度なものとすることが可能となり、塗布性の向上が図られる。また、分子量分布(以下、「Mw/Mn」という。Mnは、GPCを用いて測定されたポリスチレン換算の数平均分子量である。)は、好ましくは20.0以下、より好ましくは15.0以下、特に好ましくは10.0以下である。Mw/Mnを小さくすることで塗布性に優れ、且つ前述の低分子成分の溶出などに起因するパネル特性悪化の問題が発生しない液晶配向剤を得ることが容易となる。
【0101】
[重合体[A]の製造方法]
上記重合体[A]を製造する方法は特に限定されないが、例えば、適宜選択される開始剤や連鎖移動剤の存在下、適当な重合溶媒中で、対応する一以上のラジカル重合性単量体をラジカル重合することによって製造することができる。かかる重合に際しての繰り返し単位(a1)〜(a7)を与える単量体の使用割合(共重合割合)は、所望の重合体[A]の組成により適宜に設定することができる。
【0102】
上記重合溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、3−フェニル−1−プロパノール等のアルコール;
テトラヒドロフラン、ジ−n−アミルエーテル等のエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル;
メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル;
プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート;
プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールブチルエーテルプロピオネート等のプロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネート;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジイソブチルケトン等のケトン;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロピル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸ブチル、2−ブトキシプロピオン酸メチル、2−ブトキシプロピオン酸エチル、2−ブトキシプロピオン酸プロピル、2−ブトキシプロピオン酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸プロピル、3−エトキシプロピオン酸ブチル、3−プロポキシプロピオン酸メチル、3−プロポキシプロピオン酸エチル、3−プロポキシプロピオン酸プロピル、3−プロポキシプロピオン酸ブチル、3−ブトキシプロピオン酸メチル、3−ブトキシプロピオン酸エチル、3−ブトキシプロピオン酸プロピル、3−ブトキシプロピオン酸ブチル等のエステル;
等を挙げることができる。
【0103】
これらのうち、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートが好ましく、特に、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートまたは3−メトキシプロピオン酸メチルが好ましい。
【0104】
上記重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用できる。例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、及び過酸化水素が挙げられる。ラジカル重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、過酸化物を還元剤とともに用いてレドックス型開始剤としてもよい。
【0105】
重合体[A]の合成においては、重合体[A]の分子量を調整するために分子量調整剤を使用することができる。その具体例としては、クロロホルム、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素;n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン;ジメチルキサントゲンスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどのキサントゲン;ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0106】
重合体[A]の合成において、重合条件(溶媒種、溶媒と単量体との仕込み比、重合温度、開始剤種とその添加量、分子量調整剤の種類及びその添加量等)を適切に調整することによって、上記の分子量範囲に制御することが好ましい。上記の分子量範囲を実現するための適切な重合条件は、当業者が少しの予備実験を行うことによって容易に推知可能であろう。
【0107】
上記のようにして重合体[A]を含有する重合体溶液が得られる。この重合体溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、重合体溶液中に含まれる重合体[A]を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離した重合体[A]を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。重合体[A]の単離は、上記重合体溶液を大量の貧溶媒中に注ぐことにより得た析出物を減圧下乾燥する方法、あるいは、重合体溶液をエバポレーターで減圧留去する方法により行うことができる。また、単離した重合体[A]を再び有機溶媒に溶解し、次いで貧溶媒で析出させる方法、あるいは、エバポレーターで減圧留去する工程を1回又は数回行う方法により、重合体[A]を精製することができる。
【0108】
液晶配向剤中における重合体[A]の含有量は、後述する重合体[B]100重量部に対して、3重量部以上20重量部以下が好ましい。これにより、長期の使用に対しても液晶の配向性能が維持されるような耐久性の向上を好適に実現することが可能となる。より好ましくは、3重量部以上15重量部以下であり、3重量部以上10重量部以下が特に好ましい。
【0109】
<重合体[B]>
本発明の液晶配向剤は、上記重合体[A]に加えて、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種である重合体[B]を含有していてもよい。
【0110】
[テトラカルボン酸二無水物]
上記ポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
【0111】
これら各テトラカルボン酸二無水物として具体的には、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物等を;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン等を;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物等を;
それぞれ挙げることができるほか、
特開2010−97188号に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0112】
前記ポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、これらのうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むものであることが好ましく、より具体的には、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を含むものであることが好ましく、特に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物を含むものであることが好ましい。
【0113】
前記ポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を、全テトラカルボン酸二無水物に対して、10モル%以上含むものであることが好ましく、20モル%以上含むものであることがより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物のみからなるものであることが、最も好ましい。
【0114】
[ジアミン]
上記ポリアミック酸を合成するために用いられるジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。
【0115】
これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
芳香族ジアミンとして、例えばo−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、1−(2,4−ジアミノフェニル)ピペラジン−4−カルボン酸、4−(モルホリン−4−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン、1,3−ビス(N−(4−アミノフェニル)ピペリジニル)プロパン、α−アミノ−ω−アミノフェニルアルキレン及び下記式(D1)
【0116】
【化24】

(式(D1)中、X及びXIIは、それぞれ、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−であり、Rd1は、メチレン基又は炭素数2若しくは3のアルキレン基であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数であり、dは0又は1である。但し、a及びbが同時に0になることはない。)
で表される化合物などを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号に記載のジアミンを用いることができる。
【0117】
上記式(D1)における−X−(Rd1−XII−で表される2価の基としては、メチレン基、炭素数2もしくは3のアルキレン基、*4−O−、*4−COO−又は*4−O−CHCH−O−(但し、「*4」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。−C2c+1基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等を挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
【0118】
上記式(D1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(D1−1)〜(D1−3)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
【0119】
【化25】

【0120】
以上列挙したジアミンのうち、重合体[B]の合成に使用されるジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル及び1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンよりなる群から選択される少なくとも一種を含んでいることが好ましい。
【0121】
本発明の液晶配向剤は、上記重合体[A]の組成と、液晶配向剤中の重合体[A]の含有割合とを適当な範囲に調整することによって、望みのプレチルト角を発現させることができるが、本発明の液晶配向剤がTN型、STN型、OCB型又はVA型の液晶表示素子に用いられる場合、液晶配向剤に含有される重合体[B]の合成に使用されるジアミンとしてプレチルト角発現部位を有するジアミンを使用することにより、得られる液晶配向膜のプレチルト角を制御することも可能である。
【0122】
かかるプレチルト角発現部位を有するジアミンとしては、例えば下記一般式(D2)又は下記一般式(D3)で表される化合物等を挙げることできる。
【0123】
【化26】

(式(D2)中、Rd2及びRd3は、それぞれ、水素原子又はメチル基であり、Rd4は直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜20のアルキル基であり、Rd5及びRd6は、それぞれ、2価の有機基である。)
【0124】
【化27】

(式(D3)中、Rd7は、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−又はメチレン基であり、Rd8は、コレスタニル骨格若しくはコレステニル骨格を有する1価の基、トリフルオロメチルフェニル基若しくはトリフルオロメトキシフェニル基を有する1価の基又は炭素数1〜22のアルキル基であり、Rd9は炭素数1〜4のアルキル基であり、dは0〜3の整数である。)
【0125】
上記式(D2)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(D2−1)及び(D2−2)のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。
【0126】
【化28】

上記式(D3)中、R18のコレスタニル骨格又はコレステニル骨格を有する1価の基としては、炭素数17〜30のものが好ましく、例えば3−コレスタニル基、3−コレステニル基等を挙げることができる。また、R19はメチル基であることが好ましく、a3は0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0127】
上記式(D3)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(D3−1)〜(D3−5)のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。
【0128】
【化29】

【0129】
上記のようなプレチルト角発現部位を有するジアミン化合物は1種単独で、又は2種類以上組み合わせて用いられる。
【0130】
本発明の液晶配向剤がVA型の液晶表示素子に用いられる場合は、優れた液晶の垂直配向性を発現することから、上記プレチルト角発現部位を有するジアミン化合物のうち式(D3)で表される化合物を用いることが好ましく、上記式(D3−1)〜(D3−5)のそれぞれで表される化合物のうちから選択される少なくとも一種を使用することがより好ましく、特に上記式(D3−1)で表される化合物及び上記式(D3−2)で表される化合物のうちの少なくとも一種を使用することが好ましい。
【0131】
プレチルト角発現部位を有するジアミンの使用割合は、全ジアミンに対して、好ましくは8モル%以上60モル%以下であり、より好ましくは9モル%以上50モル%以下であり、特に好ましくは10モル%以上40モル%以下である。この場合、プレチルト角発現部位を有するジアミンと、他のジアミンとを併用してもよく、かかる際の上記他のジアミンの使用割合は、全ジアミンに対して好ましくは1モル%以上90モル%以下であり、より好ましくは10モル%以上90モル%以下である。
【0132】
[分子量調節剤]
前記ポリアミック酸を合成するに際して、上記の如きテトラカルボン酸二無水物及びジミアンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。かかる末端修飾型の重合体とすることにより、本発明の効果を損なうことなく液晶配向剤の塗布性(印刷性)をさらに改善することができる。
【0133】
前記分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。これらの具体例としては、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを;
モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどを;
モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを、それぞれ挙げることができる。
【0134】
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
【0135】
[ポリアミック酸の合成]
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
【0136】
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は−20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
【0137】
ここで、有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール及びその誘導体、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。
【0138】
これら有機溶媒の具体例としては、上記非プロトン性極性溶媒として、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを;
上記フェノール誘導体として、例えばm−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどを;
上記アルコールとして、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどを;
上記ケトンとして、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを;
上記エステルとして、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルなどを;
上記エーテルとして、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどを;
上記ハロゲン化炭化水素として、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼンなどを;
上記炭化水素として、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを、それぞれ挙げることができる。
【0139】
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒並びにフェノール及びその誘導体よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される1種以上、又は前記第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される一種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒及び第二群の有機溶媒の合計に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に30重量%以下であることが好ましい。
【0140】
有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜50重量%になるような量とすることが好ましい。
【0141】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。ポリアミック酸の単離および精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0142】
[ポリイミドの合成]
ポリイミドは、上記の如くして合成されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
【0143】
本発明におけるポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、50%以上99%以下であることがより好ましく、65%以上99%以下であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0144】
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
【0145】
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
【0146】
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0147】
[重合体[B]の溶液粘度]
以上のようにして得られる重合体[B]は、これを濃度10重量%の溶液としたときに、20〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、30〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。
【0148】
上記重合体[B]の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体[B]の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0149】
<その他の添加剤>
本発明の液晶配向膜は、上記の如き重合体[A]を必須成分として含有するとともに、より好ましくは重合体[B]を含有するが、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えばその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物等を挙げることができる。
【0150】
[エポキシ化合物]
上記エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミン等を好ましいものとして挙げることができる。
【0151】
これらエポキシ化合物の配合割合は、重合体の合計100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは0.1〜30重量部である。
【0152】
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0153】
これら官能性シラン化合物の配合割合は、重合体の合計100重量部に対して、好ましくは2重量部以下、より好ましくは0.02〜0.2重量部である。
【0154】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上記重合体[A]及び上記重合体[B]、並びに必要に応じて任意的に配合されるその他の添加剤が、好ましくは有機溶媒中に溶解含有されて構成される。
【0155】
本発明の液晶配向剤に使用される有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは単独で使用することができ、または2種以上を混合して使用することができる。
【0156】
本発明の液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより液晶配向膜である塗膜または液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができず、一方固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得ることができず、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる。
【0157】
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には固形分濃度1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
【0158】
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
【0159】
<液晶配向膜及び液晶表示素子>
本発明の液晶配向膜は、上記の液晶配向剤により形成される。また、本発明の液晶表示素子は、該液晶配向膜を具備するものである。液晶表示素子における動作モードについて、IPS型やTN型、STN型といった水平配向型に適用してもよいし、VA型のような垂直配向型に適用してもよい。
【0160】
以下に、本発明の液晶表示素子の製造方法を説明するとともに、その説明の中で本発明の液晶配向膜の製造方法についても説明する。本発明の液晶表示素子は、例えば以下(P1)〜(P3)の工程により製造することができる。
【0161】
[工程(P1):塗膜の形成]
先ず基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
【0162】
(P1−1)TN型、STN型又はVA型液晶表示素子を製造する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布し、次いで、各塗布面を加熱(好ましくは予備加熱(プレベーク)及び焼成(ポストベーク)からなる二段階加熱)することにより塗膜を形成する。ここで、本発明の液晶配向剤は、印刷性に優れているので、塗布方法としてオフセット印刷法を採用することが、本発明の優れた効果を最大限に発揮するとの観点から好ましい。
【0163】
基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス基材、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。
【0164】
基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができ、パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成するべき面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
【0165】
液晶配向剤塗布後の塗布面を、次いで予備加熱(プレベーク)し、さらに焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。焼成(ポストベーク)温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。このようにして、形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0166】
(P1−2)一方、IPS型液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜が設けられている基板の導電膜形成面と、導電膜が設けられていない対向基板の一面とに、本発明の液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、塗布方法、塗布後の加熱条件、透明導電膜のパターニング方法、基板の前処理ならびに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記(P1−1)と同様である。
【0167】
上記(P1−1)及び(P1−2)のいずれの場合も、基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって配向膜となる塗膜が形成される。この場合、塗膜形成後に更に加熱することによって脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。
【0168】
[工程(P2):ラビング処理]
TN型、STN型又はIPS型液晶表示素子を製造する場合には、上記のようにして形成された塗膜を、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を施す。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。
【0169】
さらに、上記の液晶配向膜に対し、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成した上で先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにすることによって得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
【0170】
なお、VA型液晶表示素子を製造する場合には、上記工程(1)で形成された塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、上記のラビング処理を施してもよい。
【0171】
[工程(P3):液晶セルの構築]
基板間に液晶を配置するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
【0172】
第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部を、シール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
【0173】
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法であり、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
【0174】
いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、さらに、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶注入時の流動配向を除去することが望ましい。
【0175】
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0176】
液晶としては、ネマチック型液晶及びスメクチック型液晶を挙げることができ、その中でもネマチック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
【0177】
液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0178】
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビなどの表示装置に用いることができる。
【実施例】
【0179】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、以下の各合成例では、必要に応じて下記のスケールで繰り返すことにより、以下の重合例における必要量を確保した。
【0180】
<コレスタニルメタクリレートの合成>
[合成例1]
β−コレスタノール800gを8,000mLの脱水テトラヒドロフラン(THF)に溶解し、トリエチルアミン270gを加えた後、塩化メタクリロイル360gを徐々に滴下し、室温で3時間攪拌して反応を行った。反応終了後、ろ過によりトリエチルアミン塩化水素酸塩を取り除き、減圧蒸留によりTHFを除去した後にクロロホルム4,000mLを加えた。得られた溶液を水洗し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、クロロホルムを減圧蒸留により除去した。その後、エタノールによる再結晶を行なうことにより、白色固体状のコレスタニルメタクリレート540gを得た(収率:57.4%)。
【0181】
<重合体[A]の合成>
上記コレスタニルメタクリレート以外の化合物は、それぞれ市販のものを使用した。例えば、繰り返し単位(a1)を与える単量体であるメタクリル酸2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル、及びメタクリル酸1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルはそれぞれ、日立化成工業株式会社の市販品「FA−712HM」及び「FA−711MM」をそのまま使用した。
【0182】
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、東ソー株式会社製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒にテトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0183】
[合成例2:重合体[A−1]の合成]
攪拌棒、三方コックおよび温度計を装着した四つ口フラスコに、モノマーとして、メタクリル酸2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルを5g(0.0222モル)、上記合成例1で得たコレスタニルメタクリレート30.0g(0.0657モル)、グリシジルメタクリレート25.0g(0.176モル)、メタクリル酸10.0g(0.116モル)、N−シクロヘキシルマレイミド7.50g(0.0418モル)、スチレン7.50g(0.0720モル)、及び2−ヒドロキシエチルメタクレレート15.0g(0.115モル)を仕込み、さらに溶媒としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル200g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8.00g並びに分子量調整剤としてα−メチルスチレンダイマー4.00gを添加した。これを窒素気流で約10分間バブリングして系内の窒素置換を行った後、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応を行うことにより、重合体[A−1]を33.2重量%含有する溶液を得た。重合体[A−1]の分子量測定を行ったところ、Mw=10,000、Mw/Mn=2.4であり、残留モノマーに起因するピークは認められなかった。
【0184】
[合成例3〜10、比較合成例1〜3]
合成例3〜10、及び比較合成例1及び3については、使用するモノマーの種類、組成比を下記表1のようにした以外は、合成例1と同様にして、重合体[A−2](33.1重量%含有)、重合体[A−3](33.2重量%含有)、重合体[A−4](33.1重量%含有)、重合体[A−5](33.1重量%含有)、重合体[A−6](33.2重量%含有)、重合体[A−7](33.2重量%含有)、重合体[A−8](33.3重量%含有)、重合体[A−9](33.0重量%含有)、重合体[R−1](33.1重量%含有)、重合体[R−3](33.3重量%含有)をそれぞれ含有する溶液を調製した。
【0185】
また、比較合成例2については、使用するモノマーの種類、組成比を下記表1のようにするとともに、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を8.00gに代えて4.50g添加する点、及び分子量調整剤としてα−メチルスチレンダイマーを4.00gに代えて2.00g添加する点を除き、合成例1と同様にして、重合体[R−2]を33.0重量%含有する重合体溶液を調製した。
【0186】
【表1】

【0187】
表1中、各化合物の略称は、それぞれ以下のとおりである。
[繰り返し単位(a1)]
a1−1:メタクリル酸2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル
a1−2:メタクリル酸1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル
a1−3:2−(メタクリロイルオキシ)−エチル−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−カルボキシレート
a1−4:メタクリル酸2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ−4−ピペリジル
a1−5:メタクリル酸2,2,6,6−テトラメチル−1−オキソ−4−ピペリジル
a1−6:メタクリル酸2,2,6,6−テトラメチル−1−ベンジル−4−ピペリジル
a1−7:2−プロペニルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリニル
[繰り返し単位(a2)]
a2−1:コレスタニルメタクリレート
a2−2:4−(4’−ペンチルビシクロヘキシル−4−イル)フェニルメタクリレート
[繰り返し単位(a3)]
a3−1:グリシジルメタクリレート
[繰り返し単位(a4)]
a4−1:メタクリル酸
[繰り返し単位(a5)]
a5−1:N−シクロヘキシルマレイミド
[繰り返し単位(a6)]
a6−1:スチレン
[繰り返し単位(a7)]
a7−1:2−ヒドロキシエチルメタクレレート
【0188】
<重合体[B]の合成>
下記重合例における各重合体溶液の溶液粘度およびポリイミドのイミド化率は以下の方法により測定した。
【0189】
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度(mPa・s)は、所定の溶媒を用い、重合体濃度10重量%に調製した溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
【0190】
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定した。得られたH−NMRスペクトルから、下記数式によりイミド化率を求めた。
【0191】
イミド化率(%)=(1−A/A×α)×100
(Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
【0192】
[合成例11:重合体[B−1]の合成]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.50モル)、並びにジアミンとしてp−フェニレンジアミン43g(0.40モル)及び上記式(D3−1)で表される化合物52g(0.10モル)を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)830gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として粘度を測定したところ、60mPa・sであった。
【0193】
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1,900gを追加し、ピリジン40gおよび無水酢酸51gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換(本操作にて脱水閉環反応に使用したピリジンおよび無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)することにより、イミド化率約50%のイミド化重合体[B−1]を15重量%含有する溶液約1,400gを得た。この溶液を少量分取し、NMPを加えてイミド化重合体濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は47mPa・sであった。
【0194】
[合成例12:重合体[B−2]の合成]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.50モル)、並びにジアミンとしてp−フェニレンジアミン43g(0.40モル)及び上記式(D3−2)で表される化合物49g(0.10モル)をNMP820gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として粘度を測定したところ、60mPa・sであった。
【0195】
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1,900gを追加し、ピリジン40gおよび無水酢酸51gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約50%のイミド化重合体[B−2]を15重量%含有する溶液約1,300gを得た。この溶液を少量分取し、NMPを加えてイミド化重合体濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は47mPa・sであった。
【0196】
[合成例13:重合体[B−3]の合成]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.50モル)、並びにジアミンとして3,5−ジアミノ安息香酸53g(0.35モル)、上記式(D3−1)で表される化合物52g(0.10モル)及び上記式(D3−2)で表される化合物25g(0.050モル)をNMP970gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として粘度を測定したところ、60mPa・sであった。
【0197】
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1,200gを追加し、ピリジン40gおよび無水酢酸51gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約50%のイミド化重合体[B−3]を15重量%含有する溶液約1,600gを得た。この溶液を少量分取し、NMPを加えてイミド化重合体濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は50mPa・sであった。
【0198】
<液晶配向剤の調製>
[実施例1]
上記合成例2で得られた重合体[A−1]を含有する溶液と上記合成例11で得られたイミド化重合体[B−1]を含有する溶液とを、重合体[A−1]:イミド化重合体[B−1]の重量比が1:99となるように混合し、これにNMP及びブチルセロソルブを加えて、溶媒組成がNMP:ブチルセロソルブ:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル=49.6:50:0.4(重量比)、固形分濃度が3.5重量%の溶液を得た。この溶液を十分に攪拌後、孔径0.2μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
【0199】
[実施例2〜13、比較例1〜4]
重合体[A]及びイミド化重合体[B]の種類及び重量比、並びに溶媒の種類及び重量比を下記表2のようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜13及び比較例1〜4についての液晶配向剤を調製した。
【0200】
[比較例5]
上記合成例11で得られたイミド化重合体[B−1]を含有する溶液にNMP及びブチルセロソルブを加えて希釈し、溶媒組成がNMP:ブチルセロソルブ=50:50(重量比)、固形分濃度3.5重量%の溶液とした。この溶液を十分に攪拌後、孔径0.2μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
【0201】
[比較例6及び7]
上記比較例5において、重合体溶液として、それぞれ下記表2に記載の重合体を含む溶液を使用したほかは比較例5と同様にして液晶配向剤を調製した。
【0202】
<液晶セルの製造>
調製した実施例1〜13、比較例1〜7のそれぞれの液晶配向剤を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数500rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押しこみ長さ0.4mmでラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行ない、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
【0203】
次に、上記一対の基板の液晶配向膜を有するどちらか一枚の外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。
【0204】
<液晶セルの評価>
[垂直配向性の評価]
上記の如くに製造した垂直配向型液晶表示素子につき、中央精機(株)製のアンカリング強度測定装置「OMS−J3」によりプレチルト角を測定した。このプレチルト角が87°以上であった場合、垂直配向性は「良好」といえ、87°未満であった場合、垂直配向性は「不良」といえる。
【0205】
[電圧保持性の評価]
上記の如くに製造した液晶表示素子に対し、60℃において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、1,670ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から1,670ミリ秒後の電圧保持率を60℃の雰囲気下で測定した。電圧保持率の測定装置は(株)東陽テクニカ製VHR−1を使用した。電圧保持率の値が97.5%以上であれば電圧保持率は「良好」といえ、97.5%未満であれば「不良」といえる。
【0206】
[液晶表示素子の耐久性試験(表示欠陥の有無)]
高温高湿環境(温度70℃,相対湿度80%)下において、液晶表示素子を、5V、60Hzの矩形波で駆動させ、1,500時間経過後における白いシミ状の表示欠陥の有無を顕微鏡で観察した。その結果、白いシミ状の表示欠陥がなかった場合を耐久性「良好」、白いシミ状の表示欠陥があった場合を耐久性「不良」として評価した。
【0207】
[耐焼付き性の評価(残留DC電圧の測定、加速試験)]
上記の如くに製造した液晶表示素子に、17Vの直流電圧を100℃の雰囲気下で20時間印加した後、当該電圧の印加を解除し、室温環境下にて15分間静置した後、液晶セル内に残留した電圧(残留DC電圧)をフリッカー消去法により求めた。残留DC電圧の値が小さいほど、長期の耐焼付き性に優れた液晶表示素子であると判断できる。残留DC電圧値が200mV以下の液晶表示素子は耐焼付き性「良好」といえ、残留DC電圧値が200mVより大きい場合には耐焼付き性は「不良」といえる。
【0208】
実施例1〜13及び比較例1〜7の評価結果を、各組成とともに下記表2に示す。
【0209】
【表2】

【0210】
表2に示すように、実施例1〜13はいずれも、垂直配向性、電圧保持性、耐久性及び耐焼付き性が良好であった。これに対して、繰り返し単位(a1)を有していない比較例1〜7はいずれも、耐久性が不良であった。なお、比較例1〜7については、耐久性の試験を開始する前において表示欠陥が存在していないことを確認している。
また、重合体[A]の繰り返し単位として、繰り返し単位(a1)だけでなく繰り返し単位(a2)も有していない比較例2は、耐久性だけでなく垂直配向性も不良であった。また、重合体[A]の繰り返し単位として、繰り返し単位(a1)だけでなく繰り返し単位(a3)も有していない比較例3は、耐久性だけでなく電圧保持性も不良であった。また、重合体成分として重合体[A]を含有していない比較例5〜7はいずれも、耐久性に加えて耐焼付き性も不良であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和単量体に由来する繰り返し単位を有する重合体を含有し、
前記繰り返し単位が、
窒素原子に隣接する2つの炭素原子がそれぞれ下記式(S)で表される置換基2個を有している環状アミン構造
又は
水酸基に対してオルト位の炭素原子のうち少なくとも1つの炭素原子が下記式(S)で表される置換基を有しているフェノール構造
を有するものであることを特徴とする液晶配向剤。
【化1】

(式中、R11は、単結合又は置換されていてもよい炭化水素基であり、Xは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−CO−O−又は−O−CO−であり、R12は、置換されていてもよい炭化水素基である。但し、Xが単結合ではない場合、R11及びR12が互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【請求項2】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記繰り返し単位が、下記式(1−1)又は(1−2)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【化2】

(式(1−1)及び式(1−2)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Aは単結合又は2価の連結基であり、R11は、それぞれ、単結合又は置換されていてもよい炭化水素基であり、Xは、それぞれ、単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−CO−O−又は−O−CO−であり、R12は、それぞれ、置換されていてもよい炭化水素基である。但し、Xが単結合ではない場合、R11及びR12が互いに結合して環構造を形成していてもよい。式(1−1)中、Bは、水素原子、酸素原子、ハロゲン原子、水酸基又は1価の有機基であり、mは0〜4の整数である。式(1−2)中、nは0〜3の整数である。)
【請求項4】
前記繰り返し単位が、下記式(1−1−1)又は(1−2−1)で表されることを特徴とする請求項3に記載の液晶配向剤。
【化3】

(式(1−1−1)及び式(1−2−1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Aは単結合又は2価の連結基であり、R13は、それぞれ、炭素数1〜5のアルキル基であり、R14は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。式(1−1−1)中、Bは、水素原子、酸素原子、ハロゲン原子、水酸基又は1価の有機基である。)
【請求項5】
前記繰り返し単位を有する重合体が、さらに下記式(2)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の液晶配向剤。
【化4】

(式(2)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Aは単結合又は2価の連結基であり、Bはステロイド骨格を有する炭素数17〜30の1価の有機基、トコフェロール構造を有する1価の有機基、又は下記式(B2)で表される1価の有機基である。
【化5】

(B21は、シクロヘキシレン基であるか、又は置換若しくは無置換のフェニレン基であり、B22は水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基である。kは0〜3の整数である。但し、B22が水素原子である場合、kは1以上である。また、kが2又は3の場合、複数のB21はそれぞれ独立して上記定義を有する。「*」はAに結合する結合手を示す。))
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液晶配向剤により形成された液晶配向膜。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。

【公開番号】特開2012−128372(P2012−128372A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282262(P2010−282262)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】