説明

液滴吐出装置および液滴吐出装置の洗浄方法

【課題】液滴吐出ヘッドや液滴吐出ヘッドを洗浄する洗浄機構に残留する汚れを好適に解消できる液滴吐出装置およびその洗浄方法を提供すること。
【解決手段】本発明の液滴吐出装置は、液滴吐出方式によるカラーフィルターの製造に用いられ、着色剤と樹脂材料と前記着色剤を溶解または分散する液性媒体とを含むカラーフィルター用インクを吐出する液滴吐出装置であって、この液滴吐出装置は、液滴吐出ヘッドに対して相対的に接離自在に設けられ、接触時に前記吐出部を気密的に覆う凹部を備えた洗浄ヘッドと、凹部内の媒体を吸引する吸引手段と、液滴吐出ヘッドの洗浄に用いる洗浄液を貯留する洗浄液貯留槽と、洗浄液貯留槽から洗浄ヘッドの凹部内へ洗浄液を送液するための洗浄液搬送路と、を有することを特徴とする。液滴吐出ヘッドは、洗浄ヘッドの凹部内に送液された洗浄液によって洗浄される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置および液滴吐出装置の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー表示を行う液晶表示装置(LCD)等には、一般に、カラーフィルターが用いられている。
カラーフィルターは、従来、着色剤、感光性樹脂、官能性モノマー、重合開始剤等を含む材料(着色層形成用組成物)で構成された塗膜を基板上に形成し、その後、フォトマスクを介して光を照射する感光処理、現像処理等を行う、いわゆるフォトリソグラフィー法を用いて製造されてきた。このような方法では、通常、基板のほぼ全面に、各色に対応する塗膜を形成し、その一部のみを硬化させ、それ以外の大部分を除去するという操作を繰り返すことにより、各色が重なり合わないようにカラーフィルターを製造する。このため、カラーフィルターの製造の過程で形成される塗膜は、最終的に得られるカラーフィルターには、その一部のみが着色層として残存するのみで、その大部分が製造工程において除去されることとなる。その結果、カラーフィルターの製造コストが上昇するばかりでなく、省資源の観点からも好ましくない。
【0003】
一方、近年、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)を用いて、カラーフィルターの着色層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような方法では、着色層形成用の材料(着色層形成用組成物)の無駄を少なくすることができるため、環境への負荷を低減することができ、また、製造コストも抑制することができる。
このようなカラーフィルターの製造においては、通常、光の三原色(赤色、緑色、青色)に対応する3色のインク(カラーフィルター用インク)が用いられる。
【0004】
ところで、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置(産業用)は、プリンターに適用されるもの(民生用)とは全く異なるものであり、例えば、大量生産を行うため、大量の液滴を長時間にわたって連続で吐出することが求められる。また、カラーフィルターの製造に用いるインク(産業用)では、プリンターに適用されるもの(民生用)で用いるインクに比べて、一般に、高粘度で、固形分の含有率が高いため、インクジェットヘッドの吐出部(ノズル)や吐出面に加え、インクの流路やインクジェットヘッドのキャップなどにもインク(固形分)が残存しやすい。この結果、継続して吐出した場合、インクに含まれる成分が液滴吐出装置のインクの流路に付着し、液滴吐出ヘッドへのインクの供給が不安定になる。また、カラーフィルターの製造に用いるインク(産業用)は、プリンターに適用されるもの(民生用)で用いるインクに比べて組成に制限が多く、一旦析出した固形分の再分散性、再溶解性等の特性が十分ではなく、顔料粒子等の固形分が析出、あるいは凝集して、液滴吐出ヘッドの吐出部の目詰まりを起こしやすく、液滴の飛行曲がりによる混色や吐出の不安定性による液滴重量の変化を頻発させる。このような場合、カラーフィルター用インクを所望の部位に、所望の量だけ付与することが困難となり、得られるカラーフィルターを用いて表示される画像において、色ずれ、色むら、濃度むら等を生じてしまうという問題があった。
【0005】
このため、例えば、液滴吐出装置のカラーフィルター製造用の基板のない部分で液滴を吐出することによる行う方法(つば吐き)により、液滴吐出ヘッドやインクの流路に存在する凝集物、付着物等を取り除き、インク等による汚れ、目詰まりの解消を行う。しかしながら、このような方法はプロセス時間とインクの消費を伴う上、この方法のみでは、十分に凝集物、付着物を取り除くことができず、再び液滴の吐出を行うと比較的短期間で、液滴の吐出量が不安定になったり、吐出部が再び目詰まりする問題があった。このような場合、液滴吐出ヘッドや他の部材を頻繁に交換する必要があり、カラーフィルターの生産性を極端に落とすものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−372613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、液滴吐出ヘッドや液滴吐出ヘッドを洗浄する洗浄機構に残留する汚れを好適に解消できる液滴吐出装置およびその洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液滴吐出装置は、液滴吐出方式によるカラーフィルターの製造に用いられ、着色剤と樹脂材料と前記着色剤を溶解または分散する液性媒体とを含むカラーフィルター用インクを吐出する液滴吐出装置であって、
前記インクを貯留するインク貯留槽と、
前記インク貯留槽から送液された前記インクを吐出する吐出部を備えた液滴吐出ヘッドと、
前記インク貯留槽から前記液滴吐出ヘッドへ前記インクを送液するためのインク搬送路と、
前記液滴吐出ヘッドに対して相対的に接離自在に設けられ、接触時に前記吐出部を気密的に覆う空洞を備えた洗浄ヘッドと、
前記空洞内の媒体を吸引する吸引手段と、
前記液滴吐出ヘッドの洗浄に用いる洗浄液を貯留する洗浄液貯留槽と、
前記洗浄液貯留槽から前記洗浄ヘッドの前記空洞内へ前記洗浄液を送液するための洗浄液搬送路と、を有することを特徴とする。
これにより、液滴吐出ヘッドや液滴吐出ヘッドを洗浄する洗浄機構(洗浄ヘッド)に残留する汚れを好適に解消できる液滴吐出装置が得られる。
【0009】
本発明の液滴吐出装置では、前記吸引手段と前記洗浄液搬送路とを連絡する連絡路を有し、
前記吸引手段により吸引した前記洗浄液を前記洗浄液搬送路に送液するよう構成されていることが好ましい。
これにより、連絡路を介して洗浄液を循環させることができる。その結果、洗浄液を無駄に消費することなく、液滴吐出ヘッドに付着した汚れを洗浄液の流れに曝すことができ、汚れの除去作用を増強することができる。
【0010】
本発明の液滴吐出装置では、前記吸引手段は、吸引した前記媒体を排出する排出路と、吸引した前記媒体の流路を前記連絡路と前記排出路とに切り替える流路選択部と、を備えていることが好ましい。
これにより、吸引した媒体のうち、不要なものは排出路を介して排出し、必要なものは連絡路を介して再び洗浄ヘッドへと送液するといった媒体の流路の選択をすることができる。その結果、洗浄液を無駄に消費することなく、液滴吐出ヘッドに付着した汚れを、より清浄な洗浄液の流れに曝すことができ、汚れの除去作用を特に増強することができる。
【0011】
本発明の液滴吐出装置では、前記吸引手段は、前記空洞内の媒体を吸引する吸引ポンプを備えており、
前記連絡路は、前記吸引ポンプの下流側と前記洗浄液搬送路とを連絡していることが好ましい。
これにより、吸引手段を動作することで、不要なインクの排出と、洗浄液の循環とを同時に行うことができる。
【0012】
本発明の液滴吐出装置では、前記吸引手段は、前記吸引ポンプの上流側に設けられたフィルターを備えていることが好ましい。
これにより、洗浄液を循環させる際に、汚れを含まない清浄な洗浄液を循環させることができ、液滴吐出ヘッドや洗浄ヘッドに対する汚れの再付着を防止することができる。
本発明の液滴吐出装置では、前記洗浄液は、前記インクの固形分を溶解または分散可能であり、かつ、前記液性媒体と相溶性を有する液体であることが好ましい。
これにより、インクの固形分が析出したとしても、再溶解または再分散により固形分を洗浄液中に取り込んで、洗い流すことができる。
【0013】
本発明の液滴吐出装置では、前記洗浄液は、前記インクの前記液性媒体の主成分と同じ液体であることが好ましい。
これにより、洗浄液は、インクとの置換性が特に優れたものとなり、残存したインクと素早く混合させ、かつ置換することができる。
本発明の液滴吐出装置では、前記洗浄液は、前記インクの前記液性媒体中に5vol%以上の割合で含まれる成分のうち、最も低沸点の成分より沸点の高い液体であることが好ましい。
これにより、インクに比べて洗浄液の揮発性を低下させることができるので、固形分の析出を抑制することができる。その結果、洗浄操作を行う頻度を少なくしても、固形分の析出が抑えられ、液滴吐出ヘッドを清浄状態で維持することが可能になる。
【0014】
本発明の液滴吐出装置では、前記洗浄液は、下記式(1)で示される化合物Aを含有することが好ましい。
【化1】

これにより、汚れをより好適に除去することができる。
【0015】
本発明の液滴吐出装置では、前記洗浄液は、下記式(2)で示される化合物Bを含有することが好ましい。
【化2】

これにより、汚れをより好適に除去することができる。
【0016】
本発明の液滴吐出装置では、前記洗浄液は、下記式(3)で示される化合物Cを含有することが好ましい。
【化3】

これにより、汚れをより好適に除去することができる。
【0017】
本発明の液滴吐出装置では、前記洗浄液は、下記式(4)で示される化合物Dを含有することが好ましい。
【化4】

これにより、汚れをより好適に除去することができる。
【0018】
本発明の液滴吐出装置の洗浄方法は、液滴吐出装置によるカラーフィルターの製造に用いられ、着色剤と樹脂材料と前記着色剤を溶解または分散する液性媒体とを含むカラーフィルター用インクを吐出する液滴吐出装置の洗浄方法であって、
前記液滴吐出装置は、前記インクを貯留するインク貯留槽と、
前記インク貯留槽から送液された前記インクを吐出する吐出部を備えた液滴吐出ヘッドと、
前記インク貯留槽から前記液滴吐出ヘッドへ前記インクを送液するためのインク搬送路と、
前記液滴吐出ヘッドに対して相対的に接離自在に設けられ、接触時に前記吐出部を気密的に覆う空洞を備えた洗浄ヘッドと、
前記空洞内の媒体を吸引する吸引手段と、
前記液滴吐出ヘッドの洗浄に用いる洗浄液を貯留する洗浄液貯留槽と、
前記洗浄液貯留槽から前記洗浄ヘッドの前記空洞内へ前記洗浄液を送液するための洗浄液搬送路と、を有し、
前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドに対して接触させた状態で、前記空洞内の媒体を吸引し、それに伴い、前記洗浄液を前記空洞内に吸引することを特徴とする。
これにより、液滴吐出ヘッドや液滴吐出ヘッドを洗浄する洗浄機構(洗浄ヘッド)に残留する汚れを好適に解消することができる。
本発明の液滴吐出装置の洗浄方法では、前記空洞内を前記洗浄液で充填した状態で、前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドから離すことが好ましい。
これにより、液滴吐出ヘッドと洗浄ヘッドとを容易に引き離すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1の液滴吐出装置が備える液滴吐出ヘッドの概略構成を説明するための模式図である。
【図3】液滴吐出装置の全体構成の一例を示した模式図である。
【図4】図3に示す液滴吐出装置の部分拡大図(縦断面図)である。
【図5】本発明の液滴吐出装置の洗浄方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図6】本発明の液滴吐出装置の洗浄方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図7】カラーフィルターの製造方法を示す断面図である。
【図8】液滴吐出装置の全体構成の他の一例を示した模式図である。
【図9】液滴吐出装置の全体構成の他の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《液滴吐出装置および液滴吐出装置の洗浄方法》
まず、本発明の液滴吐出装置、および、当該液滴吐出装置を用いたカラーフィルターの製造方法の好適な実施形態について説明する。
図1は、液滴吐出装置(インクジェット装置)の好適な実施形態の一例を示す斜視図、図2は、図1の液滴吐出装置が備える液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)の概略構成を説明するための模式図、図3は、液滴吐出装置の全体構成の一例を示した模式図、図4は、図3に示す液滴吐出装置の部分拡大図(縦断面図)、図5、6は、本発明の液滴吐出装置の洗浄方法を説明するための図(縦断面図)、図7は、カラーフィルターの製造方法を示す断面図である。
【0021】
図1〜図4に示す液滴吐出装置(インクジェット装置)100は、顔料粒子等の着色剤が分散媒に分散したカラーフィルター用インク1を吐出することにより、カラーフィルター10の着色部12を形成するのに用いられる装置である。
まず、カラーフィルター10の製造の概要について説明する。図7に示すように、カラーフィルター10は、隔壁(遮光部)13が設けられた基板11を用意する基板用意工程(1a)と、図1〜図3に示す液滴吐出装置(インクジェット装置)100を用いて、カラーフィルター用インク1を隔壁13で囲まれた領域に付与するインク付与工程(1b)と、カラーフィルター用インク1から分散媒を除去し、固形状の着色部12とする着色部形成工程(1c)とを有する方法を用いて製造することができる。このようにして製造されるカラーフィルター10は、通常、複数色の着色部12を有している。図7に示す構成では、互いに異なる色の第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cを有している。
【0022】
図1および図3に示すように、液滴吐出装置100は、図2に示す液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド。以下、単にヘッドと呼ぶ)110と、ベース130と、テーブル140と、インク貯留槽150と、テーブル位置決め手段170と、ヘッド位置決め手段180と、制御装置190とを有している。
ベース130は、テーブル140、テーブル位置決め手段170、およびヘッド位置決め手段180等の液滴吐出装置100の各構成部材を支持する台である。
【0023】
テーブル140は、テーブル位置決め手段170を介してベース130に設置されている。また、テーブル140は、隔壁(遮光部)13が設けられた基板11(以下、単に基板11ともいう)を載置するものである。
テーブル位置決め手段170は、第1移動手段171と、モーター172とを有している。テーブル位置決め手段170は、ベース130におけるテーブル140の位置を決定し、これにより、ベース130における基板11の位置を決定する。
【0024】
第1移動手段171は、Y方向と略平行に設けられた2本のレールと、当該レール上を移動する支持台とを有している。第1移動手段171の支持台は、モーター172を介してテーブル140を支持している。そして、支持台がレール上を移動することにより、基板11を載置するテーブル140は、Y方向に移動および位置決めされる。
モーター172は、テーブル140を支持しており、θz方向にテーブル140を揺動および位置決めする。
【0025】
ヘッド位置決め手段180は、第2移動手段181と、リニアモーター182と、モーター183、184、185とを有している。ヘッド位置決め手段180は、ヘッド110の位置を決定する。
第2移動手段181は、ベース130から立設する2本の支持柱と、当該支持柱同士の間に当該支持柱に支持されて設けられ、2本のレールを有するレール台と、レールに沿って移動可能でヘッド110を支持する支持部材(図示せず)とを有している。そして、支持部材がレールに沿って移動することにより、ヘッド110は、X方向に移動および位置決めされる。
【0026】
リニアモーター182は、支持部材付近に設けられており、ヘッド110のZ方向の移動および位置決めをすることができる。
モーター183、184、185は、ヘッド110を、それぞれα,β,γ方向に揺動および位置決めする。
以上のようなテーブル位置決め手段170およびヘッド位置決め手段180とにより、インクジェット装置100は、ヘッド110のインク吐出面115Pと、テーブル140上の基板11との相対的な位置および姿勢を、正確にコントロールできるようになっている。
【0027】
図2に示すように、ヘッド110は、インクジェット方式(液滴吐出方式)によってインク1をノズル(突出部)118から吐出するものである。本実施形態では、ヘッド110は、圧電体素子としてのピエゾ素子113を用いてインクを吐出させるピエゾ方式を用いている。ピエゾ方式は、インク1に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えないなどの利点を有する。
【0028】
ヘッド110は、ヘッド本体111と、振動板112と、ピエゾ素子113とを有している。
ヘッド本体111は、本体114と、その下端面にノズルプレート115とを有している。そして、本体114を板状のノズルプレート115と振動板112とが挟み込むことにより、空間としてのリザーバー116およびリザーバー116から分岐した複数のインク室117が形成されている。
【0029】
リザーバー116には、後述するインク貯留槽150よりインク1が供給される。リザーバー116は、各インク室117にインク1を供給するための流路を形成している。
また、ノズルプレート115は、本体114の下端面に装着されており、インク吐出面115Pを構成している。このノズルプレート115には、インク1を吐出する複数のノズル118が、各インク室117に対応して開口されている。そして、各インク室117から対応するノズル(吐出部)118に向かって、インク流路が形成されている。
【0030】
振動板112は、ヘッド本体111の上端面に装着されており、各インク室117の壁面を構成している。振動板112は、ピエゾ素子113の振動に応じて振動可能となっている。
ピエゾ素子113は、その振動板112のヘッド本体111と反対側に、各インク室117に対応して設けられている。ピエゾ素子113は、水晶等の圧電材料を一対の電極(不図示)で挟持したものである。その一対の電極は、駆動回路191に接続されている。
【0031】
そして、駆動回路191からピエゾ素子113に電気信号を入力すると、ピエゾ素子113が膨張変形または収縮変形する。ピエゾ素子113が収縮変形すると、インク室117の圧力が低下して、リザーバー116からインク室117にインク1が流入する。また、ピエゾ素子113が膨張変形すると、インク室117の圧力が増加して、ノズル118からインク1が吐出される。なお、印加電圧を変化させることにより、ピエゾ素子113の変形量を制御することができる。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子113の変形速度を制御することができる。すなわち、ピエゾ素子113への印加電圧を制御することにより、インク1の吐出条件を制御し得るようになっている。
【0032】
制御装置190は、インクジェット装置100の各部位を制御する。例えば、駆動回路191で生成する印加電圧の波形を調節してインク1の吐出条件を制御したり、ヘッド位置決め手段170およびテーブル位置決め手段180を制御することにより基板11へのインク1の吐出位置を制御する。
インク貯留槽150は、インク1を貯留する。
【0033】
インク貯留槽150は、図3に示すように、インク搬送路151を介して、ヘッド110(リザーバー116)に接続されている。
インク搬送路151には、インク貯留槽150側とヘッド110との間に、インク1の逆流を防止するための自己封止弁153とが設けられている。また、インク貯留槽150と自己封止弁153との間には、インク搬送路151を開閉する開閉弁152が別途設けられている。
【0034】
インク貯留槽150に貯留されたインク1は、液滴吐出時等における必要に応じて、インク搬送路151に送られ、開閉弁152および自己封止弁153を介して、リザーバー116に供給される。
また、図3に示すように、液滴吐出装置100は、ヘッド110を洗浄するための洗浄機構200を備えている。
【0035】
洗浄機構200は、ヘッド110のノズル118付近を気密的に覆う凹部(空洞)211を備えた洗浄ヘッド210と、洗浄ヘッド210の凹部211内の媒体を吸引する吸引ポンプ220と、吸引ポンプ220により吸い出された媒体を回収する回収タンク230と、を備えている。
また、洗浄機構200は、洗浄ヘッド210の凹部211から回収タンク230へと媒体を送液する吸引媒体搬送路201を備えており、吸引ポンプ220はこの吸引媒体搬送路201の途中に設けられている。
【0036】
さらに、洗浄機構200は、ヘッド110の洗浄に用いる洗浄液(クリーニングインク)2を貯留する洗浄液貯留槽240と、洗浄液貯留槽240から洗浄ヘッド210の凹部211へと洗浄液2を送液する洗浄液搬送路202と、洗浄液搬送路202の途中に設けられ、洗浄液搬送路202を開閉する開閉弁250と、を備えている。
なお、洗浄機構200のうち、吸引媒体搬送路201および吸引ポンプ220により吸引手段を構成している。
【0037】
以下、洗浄機構200の各部について詳述する。
図4は、図3に示す液滴吐出装置の部分拡大図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図4中の上側を「上」、下側を「下」という。
洗浄ヘッド210は、ヘッド110のインク吐出面115Pに対向するよう配置される。そして、洗浄ヘッド210が有する凹部211は、インク吐出面115Pに対向する面に開口し、ノズル118を覆うよう構成されている。
【0038】
また、洗浄ヘッド210は、インク吐出面115Pに対して相対的に接離自在に設けられており、インク吐出面115Pに対して洗浄ヘッド210が接触させた状態では、凹部211はインク吐出面115Pとともに気密空間を画成する。なお、洗浄ヘッド210は、インク吐出面115Pに対して相対的に接触または離間すればよいので、洗浄ヘッド210のみが移動する構成、ヘッド110のみが移動する構成、双方が移動する構成のいずれであってもよい。以下の説明では、ヘッド110のみが移動する場合について説明し、図4は、洗浄ヘッド210とインク吐出面115Pとが接触した状態を示している。
【0039】
インク吐出面115Pに対する洗浄ヘッド210の接触部212は、洗浄ヘッド210の凹部211を囲うように、かつ上方に突出するように設けられている。そして、密着性の高い材料で構成されており、凹部211の気密性を確保している。密着性の高い材料としては、例えば、各種エラストマー、各種ゴム等が挙げられる。なお、凹部211は、洗浄液2を流すことのできる空洞であればよく、その形状は限定されない。
【0040】
吸引ポンプ220は、洗浄ヘッド210の凹部211内の媒体を吸引媒体搬送路201を介して強制的に吸い出し、回収タンク230へと送液する。なお、媒体としては、空気のような気体、インク1、洗浄液のような液体、またはこれらの2種以上を含む混合物が挙げられる。
また、開閉弁152および開閉弁250は、電気的に開閉操作を行い得る電磁バルブ等で構成される。そして、開閉弁152、開閉弁250および吸引ポンプ220は、前述した制御装置190と電気的に接続されており、制御装置190により開閉弁152および開閉弁250の開閉操作や吸引ポンプ220の動作条件を制御し得るよう構成されている。
【0041】
ここで、洗浄機構200の動作について説明する。
図5、6は、本発明の液滴吐出装置の洗浄方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図5、6中の上側を「上」、下側を「下」という。
液滴吐出装置100は、通常、ヘッド110のノズル118からインク1を吐出する動作を行うが、この動作を繰り返すうち、ノズル118やインク吐出面115Pにインク1に含まれる固形分(汚れ)が付着する。
【0042】
洗浄機構200の動作は、この通常動作の開始前・終了後や通常動作の合間等に行われ、ヘッド110に付着した固形分を除去するために行われる。
具体的には、まず、ヘッド110を降下させ、インク吐出面115Pが洗浄ヘッド210の上面と接する状態にする。この状態では、凹部211が気密的に封止される。
次いで、開閉弁250を閉状態にするとともに、開閉弁152を開状態にして、吸引ポンプ220により凹部211内を吸引する。これにより、凹部211内の圧力が低下し、それに伴い、ノズル118を介してヘッド110内およびインク搬送路151内のインク1が凹部211内に吸い出される(図5(a)参照)。そして、一定時間(例えば1〜60秒程度)経過後に、開閉弁152を閉状態にする。これにより、凹部211内は減圧状態に維持される。
【0043】
その後、開閉弁250を閉状態から開状態にすると、洗浄液貯留槽240内の洗浄液2が凹部211内に吸い出される(図5(a)参照)。そして、凹部211内に吸い出されたインク1および洗浄液2は、吸引媒体搬送路201を介して回収タンク230へと送液される。なお、吸引ポンプ220の動作は、開閉弁250を開状態にした後で停止するのが好ましいが、開状態にする前に停止しても構わない。後者の場合でも、凹部211内が減圧状態になっていれば、洗浄液2が凹部211内に吸い出されることとなる。
【0044】
凹部211内に充填された洗浄液2は、ノズル118やインク吐出面115Pに付着したインク1の汚れを溶解または分散し、除去することができる。この状態で一定時間放置することにより、洗浄液2が汚れに確実に作用する。放置時間は汚れの程度や洗浄液2の種類に応じて適宜設定されるものの、好ましくは5〜600秒程度とされ、より好ましくは10〜300秒程度とされる。
【0045】
なお、吸引ポンプ220による吸引動作を停止した後、凹部211内の圧力が平衡状態(洗浄液貯留槽240の内部圧力と等圧)になるまで、または開閉弁250を閉じるか吸引ポンプ220を停止するまで、凹部211内には洗浄液2が送液される。洗浄液の送液速度は、吸引ポンプ220による吸引速度に応じて変化するものの、1mL/min以上200mL/min以下であるのが好ましく、5mL/min以上150mL/min以下であるのがより好ましい。これにより、より効果的に洗浄を行うことができる。
【0046】
その後、凹部211内の圧力が平衡状態になると、洗浄液2の送液は終了する。この際、凹部211内の圧力は、洗浄液貯留槽240内の圧力で平衡するが、これを踏まえ、洗浄液貯留槽240内の圧力は大気圧よりやや低い程度に設定しておくのが好ましい。これにより、凹部211内が負圧で平衡状態になるため、吸引ポンプ220による吸引動作をしなくても、ヘッド110に対して洗浄ヘッド210が吸着した状態を維持することができる。その結果、上述したように凹部211内に洗浄液2を充填して一定時間保持する際、吸引ポンプ220を停止した状態でこれを行うことができる。
【0047】
また、洗浄液2を送液することで凹部211内の圧力が徐々に上昇する際、大気圧になる前に開閉弁250を閉じることで送液を終了させるようにしてもよい。この場合でも、凹部211内を負圧で封じ切ることができ、この状態を容易に維持することができる。
なお、この際の凹部211内の圧力は、大気圧未満であれば特に限定されないが、0.1気圧(0.01MPa)以上0.99気圧(0.1MPa)以下程度であるのが好ましく、0.2気圧(0.02MPa)以上0.9気圧(0.09MPa)以下程度であるのがより好ましい。これにより、適度な力で洗浄ヘッド210を吸着させることができるので、吸着に伴うヘッド110や洗浄ヘッド210の損傷等を防止することができる。
【0048】
また、インク1を先に吸い出した後、凹部211内に洗浄液2を送液することにより、ヘッド110内や凹部211内のインク1を優先的に吸い出すことができるので、汚れの原因となるインク1がヘッド110周辺や洗浄ヘッド210の凹部211内に残留するのを確実に防止することができる。
さらに、インク1を先に吸い出した後、これに遅れて洗浄液2を送液するようにすれば、凹部211内に洗浄液2が勢いよく供給されることとなる。これにより、流速の大きい洗浄液2が汚れに負荷(力)を作用させ、汚れの除去が促進される。
【0049】
なお、吸引ポンプ220による吸引動作は、凹部211内が洗浄液2で置換された後、速やかに停止するのが好ましい。このタイミングで停止すれば、洗浄液2の消費量を最小限に抑えることができる。また、凹部211内が洗浄液2で置換された後も、一定時間、吸引ポンプ220による吸引動作を継続してもよい。これにより、凹部211内に清浄な洗浄液2を流すことができるので、汚れの除去が促進されることとなる。
【0050】
さらには、洗浄液2を流す過程と、開閉弁250を閉じてポンプを停止する過程とを、複数回繰り返すようにしてもよい。
次いで、図6(a)に示すようにヘッド110を上昇させ、洗浄ヘッド210から引き離す。この際、前述したように、凹部211内の圧力をできるだけ大気圧に近付けておく(洗浄液2で置換しておく)ことで、洗浄ヘッド210とヘッド110とを容易に引き離すことができる。
【0051】
その後、吸引ポンプ220による吸引動作を再び行うことで、図6(b)に示すように、凹部211内に残留する洗浄液2を回収タンク230(図示せず)へと送液する。
以上のようにして洗浄機構200の一連の動作が終了する。
このような洗浄機構200によれば、ノズル118やインク吐出面115Pに付着した汚れを洗浄液2に浸漬させた状態を形成することができ、さらにはこの状態を保持することができる。これにより、汚れを洗浄液2で確実に除去することができる。
【0052】
また、凹部211内の減圧に伴って、凹部211内には、洗浄液搬送路202から吸引媒体搬送路201に向かう洗浄液2の流れが生起されることから、洗浄液2の流れに基づく負荷が汚れに加わり、汚れを確実に除去することができる。
以上のような効果は、ヘッド110内のインク1を排出し、かつ、ヘッド110の外側からノズル118やインク吐出面115Pを洗浄液2で洗浄することにより奏するものである。すなわち、洗浄ヘッド210の凹部211内を吸引しさえすれば、インク1の排出と洗浄液2によるヘッド110の洗浄とを同時に行うことができるという点で、洗浄機構200は簡単な構造であるにもかかわらず高い洗浄能力を発揮する。
【0053】
また、凹部211内に洗浄液2が供給された結果、ヘッド110周辺や凹部211内に残留するインク1は洗浄液2で希釈され、分散質の濃度が低下することとなる。これにより、インク1やヘッド110に付着したり、凹部211内に残留したとしても、インク1そのものが残留する場合に比べて、固形分を析出させ難くすることができる。したがって、前述した洗浄機構200の動作を定期的に行うことで、固形分の付着が継続的に防止されることとなり、ヘッド110を常時清浄状態に維持することができる。また、併せて、洗浄ヘッド210においても固形分の付着が継続的に防止されるため、洗浄ヘッド210を常時洗浄状態に維持することができる。その結果、液滴吐出装置100では、固形分の付着に伴う不具合の発生が確実に防止され、いわゆるメンテナンスフリーが実現される。
【0054】
また、洗浄機構200の動作が終了した後、必要に応じて、インク吐出面115Pを拭き取る(ワイピング)操作を行うようにしてもよい。これにより、洗浄液2による洗浄で除去し切れなかった汚れを確実に除去することができる。なお、この際、拭き取られる汚れは、洗浄液2に浸漬させた状態に保持されていたことで、洗浄液2の浸透によって柔軟化が進んでおり、容易に除去される。
【0055】
また、開閉弁250を閉状態にするとともに凹部211内の媒体を吸引して減圧した後、開閉弁250を開状態にして洗浄液2を凹部211内に供給し、その後凹部211内に充填された洗浄液2を回収タンク230へ送液するという一連の過程を、複数回繰り返すようにしてもよい。これにより、汚れの除去をさらに促進することができる。
なお、吸引媒体搬送路201の途中(吸引ポンプ220の上流側)には、必要に応じて、大気開放弁(図示せず)を設けるようにしてもよい。前述したように、洗浄完了後にヘッド110と洗浄ヘッド210とを引き離す際、この大気開放弁を開くことによって、凹部211内の圧力を大気圧に近付けることができる。このようにすれば、凹部211内の圧力を上げるためだけに洗浄液2が消費されるのを防止することができる。
【0056】
ここで、従来、凹部211内に洗浄液2を供給するのではなく、空気(大気)を導入する構成の液滴吐出装置が知られていた。このような装置では、ヘッド110内に残留したインク1を吸い出すことはできるため、ノズル118に付着した汚れの除去は期待できるものの、インク吐出面115Pに付着した汚れについては除去することができなかった。また、吸い出し切れなかったインク1がヘッド110のノズル118やインク吐出面115Pに付着したり、洗浄ヘッド210の凹部211内に残留したりすることがあった。この残留インクは、比較的濃度が高いことから速やかに固形分を析出させる。そして、この固形分がノズル118の目詰まりを発生させたり、液滴の飛行曲がりを発生させることが問題になっていた。
【0057】
これに対し、本発明によれば、凹部211内に洗浄液2を供給するため、残留したインク1は希釈されることとなる。このため、固形分の析出が抑制されることとなり、上述したような課題が確実に解消される。また、空気に比べて洗浄液2の比重が大きいため、凹部211内に洗浄液2を流すことにより、汚れに対して大きな負荷(力)を加えることができる。これにより汚れを確実に除去することができるのである。
以上、本発明の液滴吐出装置について、好適な実施形態について説明したが、これに限定されず、例えば、図8、9に示すような液滴吐出装置であってもよい。
【0058】
図8、9は、本発明の液滴吐出装置の全体構成の他の一例を示した模式図である。
本実施形態では、上述した実施形態と異なる点について説明し、同様の構成については、その説明を省略する。
図8に示す液滴吐出装置は、吸引媒体搬送路201の吸引ポンプ220と回収タンク230との間に設けられ、吸引媒体搬送路201を2つに分岐する分岐部203(流路選択部)と、洗浄液搬送路202の開閉弁250と洗浄液貯留槽240との間に設けられ、洗浄液搬送路202を2つに分岐する分岐部204(流路選択部)と、分岐部203と分岐部204とを連絡する連絡路205を備えている。これにより、連絡路205は、吸引ポンプ220の下流側と洗浄液搬送路202とを連絡している。
【0059】
分岐部203は、吸引媒体搬送路201を流れる媒体を回収タンク230へと送液する第1の状態と、連絡路205へと送液する第2の状態とを自在にとり得るものである。吸引媒体搬送路201のうち、分岐部203より回収タンク230側の部分は、排出路として機能することとなり、吸引した媒体のうち不要のものは排出路を介して回収タンク230へと送液される。
【0060】
また、分岐部204は、洗浄液貯留槽240に貯留された洗浄液2を洗浄ヘッド210へと送液する第1の状態と、連絡路205から送液された媒体を洗浄ヘッド210へと送液する第2の状態とを選択する。
分岐部203および分岐部204においてそれぞれ第1の状態を選択した場合、洗浄機構200の動作は前述した図5、6に基づく動作と同様になる。
【0061】
一方、分岐部203および分岐部204においてそれぞれ第2の状態を選択した場合、洗浄液2の消費が停止され、代わりに洗浄ヘッド210から吸引された洗浄液2を、再び洗浄ヘッド210へと送液することができる。その結果、この洗浄液2は、吸引ポンプ220を動作させることで、洗浄液搬送路202、凹部211、吸引媒体搬送路201および連絡路205で構成される環状の経路を循環することとなる。このようにすれば、洗浄液2の消費を抑えつつ、汚れの除去をさらに促進することができる。
【0062】
媒体を循環させる場合、インク1を含む洗浄液2を循環させるようにしてもよいが、インク1の含有率が高い吸引開始直後の媒体については回収タンク230に送液し、インク1の含有率が低下したタイミングで循環を開始するのが好ましい。これにより、洗浄液2を無駄に消費することなく、ノズル118やインク吐出面115Pに付着した汚れをより清浄な洗浄液2の流れに曝すことができ、汚れの除去作用を特に増強することができる。
【0063】
なお、この際、吸引ポンプ220の回転方向を一定時間だけ逆転させることで、媒体の流れを反転させるようにしてもよい。これにより、ノズル118やインク吐出面115Pに付着した汚れにも反対方向の負荷が加わることになり、汚れを除去(剥離)する確率を高めることができる。この際も、凹部211内の圧力は、大気圧よりやや低い圧力に維持されているのが好ましい。
【0064】
さらには、吸引ポンプ220の回転方向の正転と逆転とを短時間で交互に繰り返すようにしてもよい。これにより、汚れに対して両方向から小刻みに負荷を加えることができ、汚れを除去(剥離)する確率を特に高めることができる。このとき、回転方向を変更する周期は、0.1〜10秒程度であるのが好ましく、0.3〜5秒程度であるのがより好ましい。
【0065】
また、分岐部203および分岐部204は、制御装置190と電気的に接続され、その動作が制御されるよう構成されている。これにより、分岐部203および分岐部204の各動作を、吸引ポンプ220の吸引動作と協調的に制御することができるので、分岐部203および分岐部204を最適なタイミングで動作させ、洗浄液2の消費を最小限に抑えるとともに、汚れの除去作用を最大限に増強することができる。
【0066】
また、吸引媒体搬送路201の洗浄ヘッド210と吸引ポンプ220との間(吸引ポンプ220の上流側)には、フィルター260が設けられている。フィルター260により吸引媒体搬送路201内を流れる媒体を濾過し、含まれる汚れ(固形分)を濾別することができる。これにより、環状の経路には、汚れを含まない清浄な洗浄液2を循環させることができ、汚れの再付着を防止することができる。
【0067】
フィルター260としては、例えば、不織布、織布からなる布帛フィルター、糸巻きフィルター、メンブレンフィルター、スポンジフィルター、金属フィルター、セラミックスフィルター等が挙げられる。
図9に示す液滴吐出装置は、複数の洗浄液貯留槽(図9では、3つの洗浄液貯留槽2401、2402、2403)を有している。また、洗浄液搬送路202の途中には、洗浄液搬送路202を分岐させる3つの分岐部206、207、208が設けられており、分岐部206から分岐した分岐路2021には洗浄液貯留槽2401が、分岐部207から分岐した分岐路2022には洗浄液貯留槽2402が、分岐部208から分岐した分岐部2023には洗浄液貯留槽2403が、それぞれ接続されている。
【0068】
ここで、3つの洗浄液貯留槽2401、2402、2403には、互いに異なる種類(組成)の洗浄液2を貯留してもよく、同じ種類(組成)の洗浄液2を貯留するようにしてもよい。
前者の場合、使用したインク1の種類に応じて最適な洗浄液2を選択して、ヘッド110を洗浄することができる。なお、最適な洗浄液2とは、例えば、インク1が含む固形分に対して溶解性または分解性が高く、かつ、インク1が含む液性媒体(分散媒)と相溶性を有する液体が挙げられる。
【0069】
また、異なる種類の洗浄液2を順次用いることにより、汚れの除去作用が高められたり、洗浄液2によるヘッド110や洗浄ヘッド210の変質・劣化が抑制されたりすることがある。図9に示す液滴吐出装置であれば、このような操作を、分岐部206、207、208により洗浄液2の流路を選択するのみで容易に行うことができる。
具体的には、汚れの除去効率に優れた洗浄液2を凹部211内に供給した後、次いで、インク1が含む液性媒体と同じ組成の洗浄液2を凹部211内に供給する。このようにすれば、ヘッド110や洗浄ヘッド210はもともとインク1に対する優れた耐久性を有していることから、洗浄液2がヘッド110周辺や凹部211内に残留したとしても、これらの変質・劣化が抑制されることとなる。その結果、ヘッド110や洗浄ヘッド210の耐久性を高めることができる。
【0070】
また、インク1が含む着色剤や樹脂材料によっては、これらを同時に溶解または分散することができない場合もある。このような場合、着色剤と樹脂材料とを順次洗浄できるよう、それぞれを溶解または分散する2種類の洗浄液2を各洗浄液貯留槽2401、2402に貯留しておき、これらを凹部211内に順次供給するようにすればよい。これにより、さらに確実な汚れの除去が可能になる。
【0071】
一方、後者の場合、洗浄液2の貯留量を増やすことができるので、洗浄液2の補充頻度を少なくすることができ、メンテナンスフリーの期間を延長することができる。
また、分岐部206、207、208は、それぞれ制御装置190と電気的に接続され、その動作が制御されるよう構成されている。これにより、分岐部206、207、208の各動作を、吸引ポンプ220の吸引動作と協調的に制御することができるので、分岐部206、207、208を最適なタイミングで動作させ、洗浄液2の消費を最小限に抑えるとともに、汚れの除去作用を最大限に増強することができる。
【0072】
<洗浄液>
次に、本発明の洗浄方法(液滴吐出装置)に好適に適用することが可能な洗浄液について説明する。
本発明に適用される洗浄液(クリーニングインク)2は、カラーフィルターの製造に用いられるヘッド110の洗浄をするものであり、特に、後述するようなカラーフィルター用インク(以下単にインクともいう)による液滴吐出装置100の汚れ、目詰まり等を好適に解消するものである。
【0073】
本発明の洗浄方法に適用する洗浄液2は、前述したように、インク1が含む固形分に対する溶解性または分解性を有し、かつ、インク1が含む液性媒体(分散媒)と相溶性を有する液体が挙げられる。このような洗浄液2を用いることで、インク1が含む固形分が析出したとしても、汚れを洗浄液2中に取り込んで、洗い流すことができる。
また、洗浄液2は、後述するカラーフィルター用インクに含まれる分散媒(カラーフィルター用インク分散媒)と共通の成分を含むものであるのが好ましく、同じ組成ものであるのがより好ましい。これにより、インク1との置換性が特に優れたものとなり、残存したインク1と素早く混合、置換することができる。
【0074】
また、洗浄液2には、カラーフィルター用インクに含まれる分散媒(液性媒体)中に5vol%以上の割合で含まれる成分のうち、最も低沸点の成分より沸点の高いものが好ましく用いられる。これにより、インク1に比べて洗浄液2の揮発性が低下するため、固形分の析出を抑制することができる。すなわち、固形分が析出するまでにより長い時間がかかることになるため、本発明の洗浄方法を行う頻度を少なくしても、固形分の析出が抑えられ、ヘッド110を清浄状態で維持することができる。
【0075】
なお、洗浄液2の沸点とカラーフィルター用インクに含まれる分散媒(液性媒体)の低沸点成分の沸点との差は、20〜150℃程度であるのが好ましく、30〜100℃程度であるのがより好ましい。
また、洗浄液2の沸点は、190〜300℃程度であるのが好ましく、200〜280℃程度であるのがより好ましい。
【0076】
洗浄液2としては、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ヒドロキシケトン、炭酸ジエステル、環状アミド化合物等を用いることができ、中でも、〔1〕多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等)の縮合物としてのエーテル(多価アルコールエーテル)や、多価アルコールまたは多価アルコールエーテルのアルキルエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、エステル(例えば、ホルメート、アセテート、プロピオネート等)、〔2〕多価カルボン酸(例えば、こはく酸、グルタル酸等)のエステル(例えば、メチルエステル等)、〔3〕分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物(ヒドロキシ酸)のエーテル、エステル等、〔4〕多価アルコールとホスゲンとの反応で得られるような化学構造を有する炭酸ジエステルが好ましい。分散媒として用いることのできる化合物としては、例えば、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、グルタル酸ジメチル、エチレングリコールジn−ブチレート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,6−ジアセトキシヘキサン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブトキシプロパノール、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、オクタン酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸シクロヘキシル、こはく酸ジエチル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、こはく酸ジメチル、1−ブトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−n−ブチルアセテート、ジアセチン、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ブチルグリコレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ビス(2−プロポキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、n−ノニルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテート等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
<化合物A>
また、洗浄液2としては、特に、下記式(1)で示される化合物Aを含有するものが好ましい。
【0078】
【化5】

【0079】
洗浄液2が化合物Aを含有することにより、汚れを好適に除去することができる。これは、洗浄液2中に含まれる化合物Aが、液滴吐出装置の構成部材に悪影響を及ぼすことなく、汚れと、汚れが付着している構成部材との密着性を低下させることができる機能を有しているためであると思われる。また、特に、化合物Aを含有する洗浄液2は、汚れに対して強力に作用する一方、エラストマーやゴム等の材料に対しては相互作用し難いので、汚れの除去作用を低下させることなく、ヘッド110や洗浄ヘッド210の変質・劣化を抑制することができる。
上記式(1)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数が1〜3のアルキル基であればよいが、いずれも、メチル基であるのが好ましい。これにより、洗浄液による液滴吐出装置の洗浄の効率を特に優れたものとすることができる。
【0080】
また、上記式(1)中、X、X、X、X、Xは、それぞれ、独立に、水素原子またはハロゲン原子であればよいが、いずれも、水素原子であるのが好ましい。これにより、洗浄液による液滴吐出装置の洗浄の効率を特に優れたものとすることができる。
なお、洗浄液2は、化学構造の異なる複数種の化合物Aを含むものであってもよい。
洗浄液2中における化合物Aの含有率は、特に限定されないが、40wt%以上であるのが好ましく、50wt%以上98wt%以下であるのがより好ましく、55wt%以上95wt%以下であるのがさらに好ましい。化合物Aの含有率が前記範囲内の値であると、洗浄液2による液滴吐出装置の洗浄の効率を特に優れたものとすることができる。これに対し、化合物Aの含有率が前記下限値未満であると、洗浄液2が化合物Aを含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。また、化合物Aの含有率が前記上限値を超えると、後に詳述するような成分(インク(カラーフィルター用インク)の液性媒体を構成するのと同一の成分等)を十分な比率で含有することができず、当該成分を併用することによる効果を十分に発揮させることが困難となる。なお、洗浄液2が化学構造の異なる複数種の化合物Aを含むものである場合、化合物Aの含有率の値としては、これら複数の化合物の含有率の総和を採用するものとする。
【0081】
<化合物B>
また、洗浄液2としては、特に、下記式(2)で示される化合物Bを含有するものが好ましい。
【0082】
【化6】

【0083】
洗浄液2が化合物Bを含有することにより、汚れを好適に除去することができる。これは、洗浄液2中に含まれる化合物Bが、液滴吐出装置の構成部材に悪影響を及ぼすことなく、汚れと、汚れが付着している構成部材との密着性を低下させることができる機能を有することによるものと思われる。また、特に、化合物Bを含有する洗浄液2は、汚れに対して強力に作用する一方、沸点が比較的高いので、固形分の析出をより確実に抑制することを可能にする。
【0084】
上記式(2)中、Rは、炭素数が1〜4の炭化水素基であればよいが、メチル基であるのが好ましい。これにより、洗浄液による液滴吐出装置の洗浄の効率を特に優れたものとすることができる。
また、上記式(2)中、X、X、X、X、Xは、それぞれ、独立に、水素原子またはハロゲン原子であればよいが、いずれも、水素原子であるのが好ましい。これにより、洗浄液による液滴吐出装置の洗浄の効率を特に優れたものとすることができる。
【0085】
なお、洗浄液2は、化学構造の異なる複数種の化合物Bを含むものであってもよい。
洗浄液2中における化合物Bの含有率は、特に限定されないが、15wt%以上であるのが好ましく、30wt%以上98wt%以下であるのがより好ましく、40wt%以上90wt%以下であるのがさらに好ましい。化合物Bの含有率が前記範囲内の値であると、洗浄液2による液滴吐出装置の洗浄の効率を特に優れたものとすることができる。これに対し、化合物Bの含有率が前記下限値未満であると、洗浄液2が化合物Bを含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。また、化合物Bの含有率が前記上限値を超えると、後に詳述するような成分(インク(カラーフィルター用インク)の液性媒体を構成するのと同一の成分等)を十分な比率で含有することができず、当該成分を併用することによる効果を十分に発揮させることが困難となる。なお、洗浄液2が化学構造の異なる複数種の化合物Bを含むものである場合、化合物Bの含有率の値としては、これら複数の化合物の含有率の総和を採用するものとする。
【0086】
<化合物C>
また、洗浄液2としては、特に、下記式(3)で示される化合物Cを含有するものが好ましい。
【0087】
【化7】

【0088】
洗浄液2が化合物Cを含有することにより、汚れを好適に除去することができる。これは、洗浄液2中に含まれる化合物Cが、液滴吐出装置の構成部材に悪影響を及ぼすことなく、汚れと、汚れが付着している構成部材との密着性を低下させることができる機能を有することによるものと思われる。
上記式(3)中、Rは、炭素数が1〜6の炭化水素基であればよいが、Rの炭素数が1〜5であるのが好ましく、Rの炭素数が1〜4であるのがより好ましく、Rがプロピル基またはブチル基であるのがさらに好ましい。これにより、洗浄液による液滴吐出装置の洗浄の効率を特に優れたものとすることができる。
また、上記式(3)中、X、X、X、X、Xは、それぞれ、独立に、水素原子またはハロゲン原子であればよいが、いずれも、水素原子であるのが好ましい。これにより、洗浄液による液滴吐出装置の洗浄の効率を特に優れたものとすることができる。
【0089】
なお、洗浄液2は、化学構造の異なる複数種の化合物Cを含むものであってもよい。
洗浄液2中における化合物Cの含有率は、特に限定されないが、40wt%以上であるのが好ましく、50wt%以上98wt%以下であるのがより好ましく、55wt%以上95wt%以下であるのがさらに好ましい。化合物Cの含有率が前記範囲内の値であると、洗浄液2による液滴吐出装置の洗浄の効率を特に優れたものとすることができる。これに対し、化合物Cの含有率が前記下限値未満であると、洗浄液2が化合物Cを含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。また、化合物Cの含有率が前記上限値を超えると、後に詳述するような成分(インク(カラーフィルター用インク)の液性媒体を構成するのと同一の成分等)を十分な比率で含有することができず、当該成分を併用することによる効果を十分に発揮させることが困難となる。なお、洗浄液2が化学構造の異なる複数種の化合物Cを含むものである場合、化合物Cの含有率の値としては、これら複数の化合物の含有率の総和を採用するものとする。
【0090】
<化合物D>
また、洗浄液2としては、特に、下記式(4)で示される化合物Dを含有するものが好ましい。
【0091】
【化8】

【0092】
洗浄液2が化合物Dを含有することにより、汚れを好適に除去することができる。これは、洗浄液2中に含まれる化合物Dが、液滴吐出装置の構成部材に悪影響を及ぼすことなく、汚れと、汚れが付着している構成部材との密着性を低下させることができる機能を有することによるものと思われる。また、特に、化合物Dを含有する洗浄液2は、汚れに対して強力に作用する一方、沸点が比較的高いので、固形分の析出をより確実に抑制することを可能にする。また、ジエーテル構造のため粘度が低く、凹部211内への洗浄液の充填および洗浄液の除去などが容易である。
【0093】
上記式(4)中、Rは、炭素数が1〜4の炭化水素基であればよいが、Rの炭素数が1〜3であるのが好ましく、Rの炭素数が1〜2であるのがより好ましく、Rがメチル基であるのがさらに好ましい。これにより、洗浄液による液滴吐出装置の洗浄の効率を特に優れたものとすることができる。
また、上記式(4)中、nは、1〜3の数であればよいが、1〜2であるのが好ましい。これにより、洗浄液による液滴吐出装置の洗浄の効率を特に優れたものとすることができる。
【0094】
また、上記式(4)中、X、X、X、X、Xは、それぞれ、独立に、水素原子またはハロゲン原子であればよいが、いずれも、水素原子であるのが好ましい。これにより、洗浄液による液滴吐出装置の洗浄の効率を特に優れたものとすることができる。
なお、洗浄液2は、化学構造の異なる複数種の化合物Dを含むものであってもよい。
洗浄液2中における化合物Dの含有率は、特に限定されないが、40wt%以上であるのが好ましく、50wt%以上98wt%以下であるのがより好ましく、55wt%以上95wt%以下であるのがさらに好ましい。化合物Dの含有率が前記範囲内の値であると、洗浄液2による液滴吐出装置の洗浄の効率を特に優れたものとすることができる。これに対し、化合物Dの含有率が前記下限値未満であると、洗浄液2が化合物Dを含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。また、化合物Dの含有率が前記上限値を超えると、後に詳述するような成分(インク(カラーフィルター用インク)の液性媒体を構成するのと同一の成分等)を十分な比率で含有することができず、当該成分を併用することによる効果を十分に発揮させることが困難となる。なお、洗浄液2が化学構造の異なる複数種の化合物Dを含むものである場合、化合物Dの含有率の値としては、これら複数の化合物の含有率の総和を採用するものとする。
【0095】
また、洗浄液2は、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、表面張力調整剤、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール、チオ尿素等が挙げられる。
また、上述したような洗浄液2は、後述するカラーフィルター用インクより25℃での表面張力と同程度であるか、あるいは低いものであることが好ましい。これにより、洗浄時において、液滴吐出装置100の洗浄部位に好適に洗浄液2が濡れ広がることができる。このため、洗浄後における洗浄部位に残存する汚れが特に少ないものとなる。
なお、上記「同程度」とは、カラーフィルター用インクの表面張力の1倍以上1.3倍程度とされる。
【0096】
洗浄液2は、後述するカラーフィルター用インクより25℃における粘度が低いものであることが好ましい。これにより、洗浄時において、液滴吐出装置100の洗浄部位に好適に洗浄液2が濡れ広がることができる。また、洗浄時において、洗浄液2は、洗浄液搬送路202や凹部211内での流速を早いものとすることができる。このため、洗浄後における洗浄部位に残存する汚れが特に少ないものとなる。
【0097】
以下、カラーフィルター用インクについて説明する。
《カラーフィルター用インク》
次に、本発明の洗浄方法に適用される液滴吐出装置から吐出されるカラーフィルター用インクについて説明する。
カラーフィルター用インクは、基板上に着色部を形成するのに用いるインクであり、特に、液滴吐出法によってカラーフィルターの着色部を形成するのに用いるインクである。
【0098】
以下、カラーフィルター用インクの各構成成分について詳細に説明する。
[着色剤]
カラーフィルターは、通常、異なる複数色の着色部(一般に、RGBに対応する3色の着色部)を有している。着色剤は、通常、形成すべき着色部の色調に応じて選択される。カラーフィルター用インクを構成する着色剤としては、例えば、各種顔料、各種染料を用いることができる。
【0099】
顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,40,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,53:1,57,57:1,57:2,58:2,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,81,81:1,83,88,90:1,97,101,102,104,105,106,108,108:1,112,113,114,122,123,144,146,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,180,185,187,188,190,193,194,202,206,207,208,209,215,216,220,224,226,242,243,245,254,255,264,265;C.I.ピグメントグリーン7,36,15,17,18,19,26,50,58;C.I.ピグメントブルー1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,17:1,18,60,27,28,29,35,36,60,80;C.I.ピグメントイエロー1,3,12,13,14,15,16,17,20,24,31,34,35,35:1,37,37:1,42,43,53,55,60,61,65,71,73,74,81,83,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,116,117,119,120,126,127,128,129,138,139,150,151,152,153,154,155,156,157,166,168,175,180,184,185;C.I.ピグメントバイオレット1,3,14,16,19,23,29,32,36,38,50;C.I.ピグメントオレンジ1,5,13,14,16,17,20,20:1,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73,104;C.I.ピグメントブラウン7,11,23,25,33;C.I.ピグメントブラック1,7や、これらの誘導体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
また、特に、カラーフィルター用インクが、顔料(緑色顔料)として、C.I.ピグメントグリーン58(臭素化亜鉛フタロシアニン顔料)を含むものであると、当該カラーフィルター用インク(緑色のカラーフィルター用インク)の発色性を特に優れたものとすることができる。また、C.I.ピグメントグリーン58は、明度に優れるという特徴を有しているものの、各種顔料の中でも、特に分散性の低い材料であるため、従来において液滴吐出に供するインクに適用する場合には、液滴吐出装置のインクの流路への付着、液滴吐出ヘッドの吐出部の目詰まり等の問題を特に生じ易かった。これに対し、本発明では、カラーフィルター用インクがC.I.ピグメントグリーン58を含む場合であっても、上記のような問題を好適に解消することができる。すなわち、カラーフィルター用インクがC.I.ピグメントグリーン58を含むものであると、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0101】
カラーフィルター用インク中における顔料の含有率は、2wt%以上25wt%以下であるのが好ましく、3wt%以上20wt%以下であるのがより好ましい。
カラーフィルター用インク中に含まれる顔料の平均粒径は、10nm以上200nm以下であるのが好ましく、20nm以上180nm以下であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性や、カラーフィルターインクの吐出安定性を十分に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターの耐久性(耐光性等)を十分に優れたものとし、カラーフィルターにおける発色性、コントラスト等を特に優れたものとすることができる。
【0102】
一方、染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、縮合多環芳香族カルボニル染料、インジゴイド染料、カルボニウム染料、フタロシアニン染料、メチン,ポリメチン染料等が挙げられる。染料の具体例としては、例えば、C.I.ダイレクトレッド2,4,9,23,26,28,31,39,62,63,72,75,76,79,80,81,83,84,89,92,95,111,173,184,207,211,212,214,218,221,223,224,225,226,227,232,233,240,241,242,243,247、C.I.アシッドレッド35,42,51,52,57,62,80,82,111,114,118,119,127,128,131,143,145,151,154,157,158,211,249,254,257,261,263,266,289,299,301,305,319,336,337,361,396,397、C.I.リアクティブレッド3,13,17,19,21,22,23,24,29,35,37,40,41,43,45,49,55、C.I.ベーシックレッド12,13,14,15,18,22,23,24,25,27,29,35,36,38,39,45,46、C.I.ダイレクトバイオレット7,9,47,48,51,66,90,93,94,95,98,100,101、C.I.アシッドバイオレット5,9,11,34,43,47,48,51,75,90,103,126、C.I.リアクティブバイオレット1,3,4,5,6,7,8,9,16,17,22,23,24,26,27,33,34、C.I.ベーシックバイオレット1,2,3,7,10,15,16,20,21,25,27,28,35,37,39,40,48、C.I.ダイレクトイエロー8,9,11,12,27,28,29,33,35,39,41,44,50,53,58,59,68,87,93,95,96,98,100,106,108,109,110,130,142,144,161,163、C.I.アシッドイエロー17,19,23,25,39,40,42,44,49,50,61,64,76,79,110,127,135,143,151,159,169,174,190,195,196,197,199,218,219,222,227、C.I.リアクティブイエロー2,3,13,14,15,17,18,23,24,25,26,27,29,35,37,41,42、C.I.ベーシックイエロー1,2,4,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,39,40、C.I.アシッドグリーン16、C.I.アシッドブルー9,45,80,83,90,185、C.I.ベーシックオレンジ21,23等が挙げられる。
【0103】
カラーフィルター用インク中における染料の含有率は、2wt%以上25wt%以下であるのが好ましく、3wt%以上20wt%以下であるのがより好ましい。染料の含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターにおいて、より高い色濃度を確保することができ、より鮮明な画像表示に用いることができる。また、所定の色濃度の着色部を形成するのに要するカラーフィルター用インクの量を少なくすることができ、省資源の観点から有利である。また、カラーフィルターの着色部を形成する際における溶剤の揮発量を抑制することができるため、環境に対する負荷を軽減することができる。
【0104】
[分散媒]
分散媒(カラーフィルター用インク分散媒)としては、上述した、洗浄液の分散媒(洗浄液分散媒)と同様の液体を用いることができる。
カラーフィルター用インク中における分散媒の含有率は、50wt%以上98wt%以下であるのが好ましく、55wt%以上95wt%以下であるのがより好ましく、65wt%以上93wt%以下であるのがさらに好ましい。
【0105】
[樹脂材料]
カラーフィルター用インクは、形成される着色部の基板に対する密着性向上等の目的で、通常、樹脂材料を含んでいる。
樹脂材料としては、硬化性樹脂を用いるのが好ましい。
カラーフィルター用インクが硬化性樹脂を含むものであると、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる等の効果が得られるが、カラーフィルター用インクが顔料等の着色剤に加え、硬化性樹脂を含むものであると、従来においては、液滴吐出装置のノズル118やインク吐出面115Pへの固形分の付着、ヘッド110のノズル118の目詰まり等の問題を特に生じ易かった。これに対し、本発明では、カラーフィルター用インクが硬化性樹脂を含む場合であっても、上記のような問題を好適に解消することができる。すなわち、カラーフィルター用インクが硬化性樹脂を含むものであると、本発明の効果がより顕著に発揮され、固形分の生成等を考慮することなく、カラーフィルター用インクが含む樹脂材料の選択肢を拡大することができる。
【0106】
硬化性樹脂は、例えば、エポキシ構造を有するものであるのが好ましい。このような構造を有する硬化性樹脂を含むカラーフィルター用インクによれば、製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる等の効果が得られるが、カラーフィルター用インクが顔料等の着色剤に加え、硬化性樹脂を含むものであると、従来においては、ノズル118やインク吐出面115Pへの固形分の付着、ヘッド110のノズル118の目詰まり等の問題を特に生じ易かった。これに対し、本発明では、カラーフィルター用インクが上記のような構造を有する硬化性樹脂を含む場合であっても、上記のような問題を好適に解消することができる。すなわち、カラーフィルター用インクが上記のような構造を有する硬化性樹脂を含むものであると、本発明の効果がより顕著に発揮され、固形分の生成等を考慮することなく、カラーフィルター用インクが含む樹脂材料の選択肢を拡大することができる。
また、カラーフィルター用インク中における樹脂材料の含有率は、0.5wt%以上18wt%以下であるのが好ましく、1.0wt%以上15wt%以下であるのがより好ましく、3.0wt%以上12wt%以下であるのがさらに好ましい。
【0107】
[分散剤]
カラーフィルター用インクは、分散剤を含むものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子等の着色剤の分散安定性を優れたものとすることができ、より長期間にわたって安定的な液滴吐出を行うことができる。分散剤としては、上述した、洗浄液の構成成分としての分散剤と同様の材料を用いることができる。
カラーフィルター用インク中における分散剤の含有率は、0.5wt%以上15wt%以下であるのが好ましく、0.6wt%以上8.0wt%以下であるのがより好ましい。
【0108】
[その他の成分]
カラーフィルター用インクは、上記以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。
このような成分としては、例えば、各種架橋剤、熱酸発生剤、光酸発生剤、各種重合開始剤、酸架橋剤、界面活性剤、増感剤、光安定剤、各種染料、各種分散剤、発光材料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、各種重合促進剤、各種光安定化剤、ガラス、ジルコニア、アルミナ、酸化チタン等のセラミックス、密着促進剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を用いることができる。
【0109】
カラーフィルター用インクの25℃における粘度(振動式粘度計を用いて測定される粘度)は、特に限定されないが、4mPa・s以上12mPa・s以下であるのが好ましく、5mPa・s以上11mPa・s以下であるのがより好ましい。カラーフィルター用インクの粘度が前記範囲内の値であると、後述するようなインクジェット方式による液滴吐出において、吐出されるカラーフィルター用インクの液適量のばらつきを特に小さいものとしつつ、液滴吐出ヘッドにおける目詰まりの発生等をより確実に防止することができる。なお、カラーフィルター用インクの粘度の測定は、例えば、振動式粘度計を用いて行うことができ、特に、JIS Z8809に準拠して行うことができる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、液滴吐出装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
【実施例】
【0110】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
[1]洗浄液およびカラーフィルター用インクの調製
各実施例および各比較例における洗浄液およびカラーフィルター用インクは、以下のようにして製造した。
【0111】
[洗浄液の調製]
(洗浄液1)
洗浄液1としてジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを用意した。なお、洗浄液1の沸点は247℃であった。
(洗浄液2)
洗浄液2として1,3−ブチレングリコールジアセテートを用意した。なお、洗浄液2の沸点は232℃であった。
【0112】
(洗浄液3)
洗浄液3としてジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用意した。
(洗浄液4)
洗浄液4として下記式(5)で示される化合物Aと、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートと、3−エトキシプロピオン酸エチルの混合物を用意した。
【0113】
【化9】

【0114】
(洗浄液5)
洗浄液5として下記式(6)で示される化合物Bと、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートと、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合物を用意した。
【0115】
【化10】

【0116】
(洗浄液6)
洗浄液6として下記式(7)で示される化合物Cと、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートと、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルと、3−エトキシプロピオン酸エチルとを混合物を用意した。
【0117】
【化11】

【0118】
(洗浄液7)
洗浄液7として下記式(8)で示される化合物Dと、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートと、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルと、3−エトキシプロピオン酸エチルとを混合物を用意した。
【0119】
【化12】

【0120】
表1に、用意した各洗浄液の組成を示す。なお、表中、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを「S1」、1,3−ブチレングリコールジアセテートを「S2」、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを「S3」、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを「S4」で示した。3−エトキシプロピオン酸エチルを「S5」で示した。
【0121】
【表1】

【0122】
[カラーフィルター用インクの調製]
(カラーフィルター用インク1)
顔料としてのC.I.ピグメントグリーン58と、分散媒としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートと、分散剤としてのディスパービック166と、熱硬化性樹脂としての樹脂a1(エポキシ構造を有する熱硬化性樹脂)とを所定の割合で配合し、カラーフィルター用インク1(インク1)とした。
【0123】
樹脂a1の合成は以下のようにして行った。
まず、四つ口フラスコに、n−ヘキサン:320重量部、メタアクリル酸:86重量部、トリエチルアミン:111重量部を投入した後、この四つ口フラスコに、温度計、還流冷却器、撹拌機および窒素ガス導入口を取り付けた。この四つ口フラスコを、氷水で冷却しつつ、トリメチルクロルシラン:120重量部を滴下した。この際、反応系内の温度が25℃以下となるようにした。その後、25℃で1時間反応を続けた。次に、トリエチルアミンの塩酸塩を濾別し、得られたろ液から減圧下でn−ヘキサンを除去した後、減圧蒸留にて精製し、シリルアセテート構造を有するエチレン性不飽和単量体を得た。
【0124】
次に、温度計、還流冷却器、撹拌機および窒素ガス導入口が取り付けられ、溶媒としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:100重量部を仕込んだ四つ口フラスコを用意した。この四つ口フラスコ内のジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを攪拌しつつ60℃まで昇温した後、上記エチレン性不飽和単量体:27重量部と、メタアクリル酸グリシジル:30重量部と、スチレン:38重量部と、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル):6重量部との混合物を1時間かけて滴下した。滴下後60℃にて1時間保持した後、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル):0.08重量部を加え、さらに60℃で6時間反応させ、その後、未反応のモノマーを減圧処理により除去することにより、エポキシ構造とを有するエポキシ系樹脂としての樹脂a1を得た。
【0125】
(カラーフィルター用インク2〜9)
カラーフィルター用インクの各材料の種類および配合量を表1に示すように変更した以外は、前記カラーフィルター用インク1と同様にしてカラーフィルター用インク2〜7(インク2〜インク9)を得た。
表2に、製造した各カラーフィルター用インクの組成を示す。なお、表中、C.I.ピグメントグリーン58を「PG58」、C.I.ピグメントグリーン36を「PG36」、C.I.ピグメントレッド254を「PR254」、C.I.ピグメントレッド177を「PR177」、C.I.ピグメントイエロー150を「PY150」、C.I.ピグメントブルー15:6を「PB15:6」、C.I.ピグメントバイオレット23を「PV23」、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを「S1」、1,3−ブチレングリコールジアセテートを「S2」、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを「S3」、ディスパービック111を「DA1」、ディスパービック166を「DA2」、ヒノアクトT8000Eを「DA3」、樹脂a1を「a1」で示した。
【0126】
【表2】

【0127】
[液滴吐出装置に用いる洗浄液およびカラーフィルター用インクの選定、および洗浄]
(実施例1〜22)
上記のように製造した各洗浄液および各カラーフィルター用インクのうち、表3に示すように洗浄液およびカラーフィルター用インクをそれぞれ選定し、各実施例における洗浄液およびカラーフィルター用インクとした。
【0128】
(比較例)
上記のように製造した各カラーフィルター用インクのうち、表3に示すようにカラーフィルター用インクをそれぞれ選定し、比較例におけるカラーフィルター用インクとした。
前記各カラーフィルター用インクの25℃における粘度(振動式粘度計を用いて測定される粘度)は、いずれも、5mPa・s以上11mPa・s以下であった。
【0129】
また、前記の洗浄液とカラーフィルター用インクの組み合わせでは、いずれも、洗浄液の25℃での表面張力が、カラーフィルター用インクの25℃での表面張力と同程度か、あるいは低いものであった。
また、前記各実施例は、いずれも、洗浄液の25℃における粘度が、カラーフィルター用インクの25℃における粘度よりも低いものであった。
【0130】
【表3】

【0131】
[3]液滴吐出の安定性評価(安定吐出性評価)
[3.1]洗浄操作
(実施例1〜16)
室温25℃、相対湿度50%、クラス100のクリーンルーム内に設置した図8に示すようなインクジェット装置に、前記各実施例および比較例のカラーフィルター用インクを充填し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、インクジェットヘッドの各ノズルから、200000発(200000滴)の液滴の連続吐出を行い、その後、60分間、液滴の吐出を中断した(1シーケンス目)。その後、同様に、液滴の連続吐出、および、滴々の吐出の中断の操作を繰り返し行った。30シーケンス目の液滴吐出の後、20時間放置した。その後、前記各実施例の洗浄液にて、液滴吐出ヘッドを洗浄した。
【0132】
洗浄は、まず、開閉弁250を閉状態、開閉弁152を開状態にして、洗浄ヘッド210に液滴吐出ヘッド110を接触させ、吸引ポンプ220により洗浄ヘッド210の凹部211内を吸引した。5秒経過後、開閉弁152を閉状態にし、さらに5秒経過後、開閉弁250を開状態に切り替えた。これにより、洗浄液が凹部211内に供給され、充填された。なお、洗浄液の供給速度(搬送速度)は、表3に示す速度とした。
【0133】
さらに5秒経過後、分岐部203と分岐部204とを切り替え、連絡路205を介して吸引した洗浄液が循環できるようにした。そして、吸引ポンプ220の回転方向を0.5秒ごとに逆転させる動作を100秒間行った。
その後、吸引ポンプ220を停止し、10秒間放置した。
次いで、液滴吐出ヘッド110を上昇させて洗浄ヘッド210から離し、続いて、吸引ポンプ220により凹部211内の洗浄液を排出した。
その後、上記のプロセスを100回繰り返した。
【0134】
(実施例17)
吸引ポンプ220の回転方向を3秒ごとに逆転させるようにした以外は、実施例1と同様にしてインクの吐出と液滴吐出ヘッドの洗浄とを行った。
(実施例18)
吸引ポンプ220の回転方向を10秒ごとに逆転させるようにした以外は、実施例1と同様にしてインクの吐出と液滴吐出ヘッドの洗浄とを行った。
【0135】
(実施例19)
吸引ポンプ220の回転方向を一定時間ごとに逆転させる動作を省略し、同一の方向に回転させ続けるようにした以外は、実施例1と同様にしてインクの吐出と液滴吐出ヘッドの洗浄とを行った。
(実施例20)
吸引ポンプ220の回転を停止し、300秒間放置するようにした以外は、実施例1と同様にしてインクの吐出と液滴吐出ヘッドの洗浄とを行った。
【0136】
(実施例21)
図3に示すようなインクジェット装置を用いるようにした以外は、実施例1と同様にしてインクの吐出と液滴吐出ヘッドの洗浄とを行った。なお、分岐部203、204の操作は省略した。
(実施例22)
図9に示すようなインクジェット装置を用いるようにした以外は、実施例1と同様にしてインクの吐出と液滴吐出ヘッドの洗浄とを行った。なお、分岐部203、204の操作は省略した。また、洗浄液貯留槽2401には洗浄液4を、洗浄液貯留槽2402には洗浄液1をそれぞれ貯留し、最初に洗浄液4を50秒間送液した後、続いて洗浄液1を50秒間送液するようにした。
(比較例1)
図8において洗浄液貯留槽240内を空にし、洗浄液の代わりに凹部211内に空気を供給するようにした以外は、実施例1と同様にしてインクの吐出と液滴吐出ヘッドの洗浄とを行った。
【0137】
[3.2]着弾位置精度評価
まず、上述したプロセスを10回繰り返した時点で、インクジェット装置のインクの流路に同じインクを再び充填した。充填は、インクの流路内に、カラーフィルター用インクを1.0ml/minの流速で、300秒間流すことによって行った。その後、引き続きインクジェットヘッドの各ノズルから、300000発(300000滴)の液滴の連続吐出を行った。そして、カラーフィルター用インクを充填した後の、インクジェットヘッドの中央部付近の指定したノズルから吐出された300000発の液滴について、着弾した各液滴の中心位置の中心狙い位置からのズレ量dの平均値を求め、これを以下の6段階の基準に従い、評価した。この値が小さいほど飛行曲がりの発生が効果的に防止されていると言える。
【0138】
A:ズレ量dの平均値が1μm未満。
B:ズレ量dの平均値が1μm以上、3μm未満。
C:ズレ量dの平均値が3μm以上、5μm未満。
D:ズレ量dの平均値が5μm以上、10μm未満。
E:ズレ量dの平均値が10μm以上、15μm未満。
F:ズレ量dの平均値が15μm以上。
これらの結果を表3に合わせて示す。
【0139】
その後、上述したプロセスを100回繰り返した後に、再び、インクジェット装置のインクの流路に同じインクを充填した。そして、上述したのと同様にして300000発(300000滴)の液滴の連続吐出を行った。そして、カラーフィルター用インクを充填した後の、インクジェットヘッドの中央部付近の指定したノズルから吐出された300000発の液滴について、着弾した各液滴の中心位置の中心狙い位置からのズレ量dの平均値を求め、これを上記6段階の基準に従い、評価した。この値が小さいほど飛行曲がりの発生が効果的に防止されていると言える。
これらの結果を表3に合わせて示す。
表3から明らかなように、本発明の液滴吐出装置では、インクの流路における汚れを容易に除去することができ、インクの吐出安定性に優れていた。これに対し、比較例では、満足な結果が得られなかった。
【0140】
[3.3]残留物評価
上述したプロセスを100回繰り返した後、インクジェット装置の液滴吐出ヘッドおよび洗浄ヘッドについて、固形分の析出(残留物)の有無を光学顕微鏡および目視にて検査した。そして、検査の結果を以下の基準に従い、評価した。
A:光学顕微鏡でも残留物が認められない。
B:光学顕微鏡では残留物が認められないが、目視にてわずかに残留物が認められる。
C:目視にて多数の残留物が認められる。
D:ノズルの目詰まり、または洗浄ヘッドの目詰まりが発生する。
これらの結果を表3に合わせて示す。
【0141】
表3から明らかなように、本発明の液滴吐出装置では、ヘッドの洗浄後、インクジェット装置の液滴吐出ヘッドおよび洗浄ヘッドに、固形分の析出(残留物)がほとんど認められなかった。これに対し、比較例では、プロセスを10回繰り返した時点で固形分の析出が認められ、プロセスを100回繰り返すとノズルの目詰まり、または洗浄ヘッドの目詰まりに発展した。
【符号の説明】
【0142】
1…カラーフィルター用インク(インク) 2…洗浄液 10…カラーフィルター 11…基板 12…着色部 12A…第1の着色部 12B…第2の着色部 12C…第3の着色部 13…隔壁(バンク、遮光部) 100…インクジェット装置(液滴吐出装置) 110…インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド、ヘッド) 111…ヘッド本体 112…振動板 113…ピエゾ素子 114…本体 115…ノズルプレート 115P…インク吐出面 116…リザーバー 117…インク室 118…ノズル(吐出部) 130…ベース 140…テーブル 150…インク貯留槽 151…インク搬送路 152…開閉弁 153…自己封止弁 170…テーブル位置決め手段 171…第1移動手段 172…モーター 180…ヘッド位置決め手段 181…第2移動手段 182…リニアモーター 183、184、185…モーター 190…制御装置 191…駆動回路 200…洗浄機構 201…吸引媒体搬送路 202…洗浄液搬送路 2021、2022、2023…分岐路 203、204…分岐部 205…連絡路 206、207、208…分岐部 210…洗浄ヘッド 211…凹部 212…接触部 220…吸引ポンプ 230…回収タンク 240…洗浄液貯留槽 2401、2402、2403…洗浄液貯留槽 250…開閉弁 260…フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出方式によるカラーフィルターの製造に用いられ、着色剤と樹脂材料と前記着色剤を溶解または分散する液性媒体とを含むカラーフィルター用インクを吐出する液滴吐出装置であって、
前記インクを貯留するインク貯留槽と、
前記インク貯留槽から送液された前記インクを吐出する吐出部を備えた液滴吐出ヘッドと、
前記インク貯留槽から前記液滴吐出ヘッドへ前記インクを送液するためのインク搬送路と、
前記液滴吐出ヘッドに対して相対的に接離自在に設けられ、接触時に前記吐出部を気密的に覆う空洞を備えた洗浄ヘッドと、
前記空洞内の媒体を吸引する吸引手段と、
前記液滴吐出ヘッドの洗浄に用いる洗浄液を貯留する洗浄液貯留槽と、
前記洗浄液貯留槽から前記洗浄ヘッドの前記空洞内へ前記洗浄液を送液するための洗浄液搬送路と、を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記吸引手段と前記洗浄液搬送路とを連絡する連絡路を有し、
前記吸引手段により吸引した前記洗浄液を前記洗浄液搬送路に送液するよう構成されている請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記吸引手段は、吸引した前記媒体を排出する排出路と、吸引した前記媒体の流路を前記連絡路と前記排出路とに切り替える流路選択部と、を備えている請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記吸引手段は、前記空洞内の媒体を吸引する吸引ポンプを備えており、
前記連絡路は、前記吸引ポンプの下流側と前記洗浄液搬送路とを連絡している請求項2または3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記吸引手段は、前記吸引ポンプの上流側に設けられたフィルターを備えている請求項4に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記洗浄液は、前記インクの固形分を溶解または分散可能であり、かつ、前記液性媒体と相溶性を有する液体である請求項1ないし5のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記洗浄液は、前記インクの前記液性媒体の主成分と同じ液体である請求項6に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記洗浄液は、前記インクの前記液性媒体中に5vol%以上の割合で含まれる成分のうち、最も低沸点の成分より沸点の高い液体である請求項6に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記洗浄液は、下記式(1)で示される化合物Aを含有する請求項6に記載の液滴吐出装置。
【化1】

【請求項10】
前記洗浄液は、下記式(2)で示される化合物Bを含有する請求項6に記載の液滴吐出装置。
【化2】

【請求項11】
前記洗浄液は、下記式(3)で示される化合物Cを含有する請求項6に記載の液滴吐出装置。
【化3】

【請求項12】
前記洗浄液は、下記式(4)で示される化合物Dを含有する請求項6に記載の液滴吐出装置。
【化4】

【請求項13】
液滴吐出装置によるカラーフィルターの製造に用いられ、着色剤と樹脂材料と前記着色剤を溶解または分散する液性媒体とを含むカラーフィルター用インクを吐出する液滴吐出装置の洗浄方法であって、
前記液滴吐出装置は、前記インクを貯留するインク貯留槽と、
前記インク貯留槽から送液された前記インクを吐出する吐出部を備えた液滴吐出ヘッドと、
前記インク貯留槽から前記液滴吐出ヘッドへ前記インクを送液するためのインク搬送路と、
前記液滴吐出ヘッドに対して相対的に接離自在に設けられ、接触時に前記吐出部を気密的に覆う空洞を備えた洗浄ヘッドと、
前記空洞内の媒体を吸引する吸引手段と、
前記液滴吐出ヘッドの洗浄に用いる洗浄液を貯留する洗浄液貯留槽と、
前記洗浄液貯留槽から前記洗浄ヘッドの前記空洞内へ前記洗浄液を送液するための洗浄液搬送路と、を有し、
前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドに対して接触させた状態で、前記空洞内の媒体を吸引し、それに伴い、前記洗浄液を前記空洞内に吸引することを特徴とする液滴吐出装置の洗浄方法。
【請求項14】
前記空洞内を前記洗浄液で充填した状態で、前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドから離す請求項13に記載の液滴吐出装置の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−98507(P2012−98507A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245981(P2010−245981)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】