説明

混成担持メタロセン触媒を利用した加工性及び耐圧特性に優れた給水管パイプ用ポリエチレン及びその製造方法

本発明は、非架橋方式の給水管パイプ用ポリオレフィン系共重合体に係り、さらに詳細には、混成担持メタロセン触媒を使用して製造したバイモーダルまたは広い分子量分布曲線を持ちつつ、低分子量では高密度分子構造を有し、高分子量では共単量体(コモノマー)含有量の多い低密度分子構造を持つエチレン系共重合体は、分子量分布が5〜30であり、炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合分布が高分子量鎖に集中するので、優れた加工性と優れた耐圧特性及び耐環境応力亀裂性を示すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物性と分子量の分布調節が、従来のチーグラー・ナッタ触媒技術と比較してさらに容易にポリオレフィンを合成できる混成担持メタロセン触媒技術を利用して製造した給水管パイプ用のポリエチレン共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
給水管プラスチックパイプは、その原料としてポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリブテンなどが使われるが、このようなプラスチックパイプは、鋼管や鋳鉄管または銅管に比べて剛性は低下するが、高い靭性及び施工の容易性、塩素などに対する耐化学的性質が優れるという長所があって、その市場規模がますます増大しつつある。特に、ポリエチレンパイプは、他のポリ塩化ビニル、ポリプロピレンのパイプより靭性が高くて熱接着が可能であって施工が容易であり、給水管に適用する時に上水に含まれている塩素に対する抵抗性が高い長所があって、市場が拡大しつつある。
【0003】
ところが、従来の給水管プラスチックパイプは、ポリエチレン樹脂が持っている耐圧特性及び耐環境応力亀裂性(Environmental Stress Cracking Resistance:ESCR)特性が弱いため化学架橋または水架橋方式で物性を改良してきた。このような化学架橋または水架橋方式による物性改善及び給水管パイプ用への適用事例は公知である。
【0004】
化学架橋方式のパイプとは、ポリエチレンにジクミルペルオキシドのような有機過酸化物を配合して作った樹脂組成物を、有機過酸化物の分解温度以上に加熱しつつパイプ状に押出成形したものであって、有機過酸化物が熱分解して有機ラジカルとなり、この有機ラジカルの作用でポリエチレンにラジカルが発生してポリエチレンの架橋が進む方式である。これと関連した技術が特公昭45−035658号公報に記述されている。
【0005】
水架橋方式のパイプとは、ポリエチレンにビニルエトキシシランのようなシラン化合物、有機過酸化物及びシラノール縮合触媒を配合し、得られた組成物を加熱しつつパイプ状に押出成形したものであって、その成形されたパイプを含水分環境に露出させてシラン架橋を進める方式である。これと関連した技術が、特公昭48−001711号公報、特公昭63−058090号公報、特開平2−253076号公報、特開平7−258496号公報などに記述されている。
【0006】
また、特開平8−073670号公報には、特定の溶融指数を持つエチレンとブテン−1との共重合体からなる架橋ポリエチレン組成物、特開平9−324081号公報には、ポリオレフィンと特定の酸化防止剤とからなる架橋ポリエチレンパイプ、特開平3−1709031号公報には、二重結合を多量含有したポリオレフィンを利用した架橋パイプ、特開昭57−170913号公報には、特定の密度、分子量を持つポリエチレンを利用した架橋パイプ、特開平9−020867号公報及び特開平7−157568号公報には、分子量分布の狭いシラン変性グラフトポリエチレンを利用した架橋パイプ、特開平7−041610号公報には、特殊な有機過酸化物を利用した飲物用架橋パイプ、特開昭60−001252号公報には、活性炭、シリカ、アルミナを添加した架橋パイプ、特開平10−182757号公報には、特定の有機不飽和シラン、特定のラジカル発生剤を利用した給水給湯パイプ、特開平7−330992号公報には、エポキシ化合物を添加した方法、特開平6−248089号公報には、高密度ポリエチレンを利用した架橋パイプが開示されている。
【0007】
しかし、上記従来技術において使われている原料であるポリエチレンは、従来のチーグラー・ナッタまたはバナジウム触媒のような従来の重合触媒技術により製造されたポリエチレン樹脂であって、このようなエチレン重合体を利用する場合にはいろいろな問題が発生する。すなわち、分子量の分布が広くて低分子量成分に共単量体の挿入量の多い従来エチレン重合体を利用した場合、低分子量側で架橋が進んで高分子量成分は十分に架橋されないために、架橋パイプの機械的強度、特に熱間耐圧クリープ特性が不良であるという問題点が発生する。
【0008】
一方、水架橋パイプの成形時、高分子量成分にも、シラン架橋を十分に進めるためには多量の不飽和シラン化合物を添加する必要がある。このように成形されたシラン架橋パイプは、使用時に不飽和シラン化合物などに由来する悪臭などの問題が発生し、パイプ押出成形に当っても多量のダイ屑(die gum from polyethylene residue)が発生して長期の圧出作業が困難になる。
【0009】
メタロセン触媒系は、4族金属を中心とした遷移金属化合物が主成分である主触媒と、アルミニウムが主成分である有機金属化合物である助触媒との組み合わせからなる。この触媒を利用すれば、単一活性点特性によって分子量分布の狭い高分子が得られる。ポリオレフィンの分子量及び分子量分布は、高分子の物理的特性、高分子の加工性に影響を及ぼす流動及び機械的特性を決定するところに重要な因子となる。多様なポリオレフィン製品を作るためには、分子量分布調節を通じて溶融加工性を向上させることが重要な因子である(C.A.Sperat,W.A.Franta,H.W.Starkweather Jr.,J.Am.Chem.Soc.,75,1953,6127)。特に、ポリエチレンの場合においては、強靭性(enhanced toughness)、強度(strength)、ESCRなどが非常に重要である。したがって、バイモーダル(bimodal)または広い分子量分布を持つポリオレフィンを製造することによって、高分子量の樹脂が持つ機械的な物性と、低分子量部分での加工性を向上させる方法が提示されている。
【0010】
最近では、メタロセン化合物とアルミノキサンから製造された触媒を利用して分子量分布が2〜3であるエチレン重合体を製造した試みが、特開昭58−019309号公報、特開昭60−035006号公報、特開昭60−035007号公報、特開昭61−130314号公報、特開昭61−221208号公報、特開昭62−121709号公報、特開昭62−121711号公報に開示されている。特開平10−193468号公報では、メタロセン触媒により得たポリエチレンを利用した架橋パイプが開示されているが、このエチレン重合体の場合、分子量分布が狭くて特にパイプの圧出工程時に流動性が不十分であるために押出器内の発熱が大きく、部分的に早期架橋が発生し、押し出されたパイプの表面状態が粗く、これによって機械的強度が低下するという問題がある。
【0011】
一方、上記架橋パイプは、化学架橋及び水架橋いずれも架橋時に未反応単量体が残留して飲用水管には適していないという問題があって、施工時に柔軟性が落ち、熱接着が容易でないという問題がある。
【特許文献1】特開昭58−019309号公報
【特許文献2】特開昭60−035006号公報
【特許文献3】特開昭60−035007号公報
【特許文献4】特開昭61−130314号公報
【特許文献5】特開昭61−221208号公報
【特許文献6】特開昭62−121709号公報
【特許文献7】特開昭62−121711号公報
【特許文献8】特開平10−193468号公報
【非特許文献1】C.A.Sperat,W.A.Franta,H.W.Starkweather Jr.,J.Am.Chem.Soc.,75,1953,6127
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、ポリエチレンの架橋なしに耐圧特性の優秀なパイプを製造するために、分子量分布のうち高分子量部分で共単量体含有量を増やし、低分子量部分で共単量体含有量を非常に減らして製品の剛性を維持できるポリエチレン組成物を設計しようとして努力した結果、低分子量の製造に適したメタロセン化合物と、高分子量の製造に適したメタロセン化合物とをそれぞれ担体に担持した混成担持触媒を利用して、分子量分布曲線でバイモーダル(双峰性)または広い分子量分布を持ち、炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合分布が高分子量鎖側に集中することによって、優れた加工性と優れた耐圧特性及び耐環境応力亀裂性を持つエチレン系共重合体を製造することにより本発明を完成した。
【0013】
本発明は、臭いの問題がなく、パイプ成形時に押出機の負荷上昇及び発熱、ダイ屑などの問題もなく、熱可塑性樹脂の特性をそのまま持っていて廃樹脂のリサイクルが可能なだけでなく経済的に安価であり、成形されたパイプの柔軟性が優れ、施工に便利な非架橋方式の給水管パイプ用エチレン系共重合体を提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、給水管パイプ用のポリエチレン共重合体において、a)2種以上の相異なるメタロセン化合物を担体に担持した混成担持触媒を使用して、b)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合により得られる、c)密度が0.930〜0.960g/cmであり、d)溶融フロー指数が0.3〜1.0g/10分(190度、2.16kg荷重条件)であり、e)分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が5〜30である非架橋方式の給水管パイプ用エチレン系共重合体を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
メタロセン触媒で重合したポリエチレンは、チーグラー・ナッタ触媒で重合したポリエチレンと比較して分子量が均一であって相対的に狭い分子量分布を持ち、α−オレフィン共単量体の分布も均一であり、触媒残渣の副反応性が顕著に低くて、物性面でチーグラー・ナッタ触媒で重合したポリエチレンより優れているということは、周知のことである。しかし、メタロセン触媒で重合したポリエチレンは、狭い分子量分布によって作業性が不良であり、特にパイプ加工には押出負荷などの影響で生産性が顕著に落ちるなど現場に適用し難いという問題があった。また、給水管パイプのように高い耐圧特性及び優れた耐環境応力亀裂性などが要求される用途には、同じ溶融指数においては高分子量エチレン含有量の絶対的不足でその特性を合わせ難かった。
【0016】
しかし、本発明では、上記メタロセン触媒が混成担持された触媒を使用することによって低分子量と高分子量との適切なバイモーダルまたは広い分子量分布曲線を示し、分子量分布が5〜30であるため、製品成形時に加工性に優れるだけでなくα−オレフィン共単量体が高分子量エチレン鎖に集中的に共重合されているので、耐圧特性及び耐環境応力亀裂性が非常に優秀なことを特徴とする。
【0017】
上記エチレン系共重合体は、エチレンの含有量が55〜99重量%、望ましくは65〜98重量%、さらに望ましくは70〜96重量%であり、炭素数3〜20のα−オレフィンの含有量が1〜45重量%、望ましくは2〜35重量%、さらに望ましくは4〜20重量%である。
【0018】
一つの担体に少なくとも2種の相異なるメタロセン化合物が担持された混成担持触媒を使用して、バイモーダルまたは広い分子量分布を持つエチレン共重合体を設計するが、この時、混成担持触媒のうち一つのメタロセン化合物(以下、“第一メタロセン化合物”と略称する)は主に低分子量ポリエチレンを作るところに作用し、他の一つのメタロセン化合物(以下、“第二メタロセン化合物”と略称する)は主に高分子量ポリエチレンを作るところに作用する。特に、2種のメタロセン化合物の作用により、α−オレフィン共単量体が高分子量鎖側に集中的に結合された高性能のエチレン系共重合体が製造できる。
【0019】
混成担持触媒に使われうる担体には、高温で乾燥されたシリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシアなどを使用でき、これらは通常的にNaOなどの酸化物、KCOなどの炭酸塩、BaSOなどの硫酸塩、Mg(NOなどの硝酸塩成分を含有できる。このような担体表面のアルコール基(−OH)の量は少ないほどよいが、あらゆるアルコール基(−OH)を除去することは現実的にむずかしい。アルコール基(−OH)の量は0.1ないし10mmol/gが望ましく、さらに望ましくは0.1ないし1mmol/gであり、もっとも望ましくは0.1ないし0.5mmol/gである。表面アルコール基(−OH)の量は担体の製造方法、製造条件または乾燥条件(温度、時間、真空またはスプレー乾燥のような方法を使用)などにより調節できる。乾燥後に残存するいくらかのアルコール基(−OH)による副反応を減らすために、担持に関与する反応性の大きいシロキサン基は保存しつつこのアルコール基(−OH)を化学的に除去した担体を利用してもよい(韓国公開特許第2001−003325号明細書参照)。
【0020】
また混成担持触媒において、メタロセン化合物は下記化合物から選択して使われる。
【0021】
混成担持触媒のうち“第一メタロセン”に該当するメタロセン化合物は、下記化学式1で表される化合物である:
【0022】
【化1】

【0023】
前記化学式1で、Mは、4族遷移金属であり;(C)は、水素ラジカル、炭素数1〜20のアルキルラジカル、アルケニルラジカル、アリールラジカル、アルキルアリールラジカル、アリールアルキルラジカル、ヒドロカルビルで置換された14族金属のメタロイドラジカルであるか、または、Cの隣接した2つの炭素原子がヒドロカルビルラジカルにより連結されてC〜C員環を形成したシクロペンタジエニルまたは置換されたシクロペンタジエニルリガンドであり;Qは、ハロゲン族元素または炭素数1〜20のアルキルラジカル、アルケニルラジカル、アリールラジカル、アルキルアリールラジカル、アリールアルキルラジカルまたはヒドロカルビルであり;pは、1または0であり;前記Rに存在する少なくともいずれか1つの水素ラジカルは、下記[化学式a]で表されるラジカル、[化学式b]で表されるラジカル、または[化学式c]で表されるラジカルで置換されている:
【0024】
【化2】

前記化学式aで、Zは、酸素原子または硫黄原子であり;R及びR’は、互いに同一または異なる、水素ラジカル;炭素数1〜40のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アルキルアリール、アリールアルキル;またはアリールアルケニルラジカルであり;二つのR’は互いに連結されて環を形成してもよく;Gは、炭素数1〜40のアルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、フェニル、または置換されたフェニルであり、R’と連結されて環を形成してもよく;Zが硫黄原子ならば、Gは必ずアルコキシまたはアリールオキシであり;Gがアルキルチオ、アリールチオ、フェニル、または置換されたフェニルであれば、Zは、必ず酸素原子である;
【0025】
【化3】

前記化学式bで、Zは、酸素原子または硫黄原子であり、2つのZのうち少なくともいずれか1つは酸素原子であり;R及びR’’は、互いに同一または異なる、水素ラジカル;炭素数1〜40のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはアリールアルケニルラジカルであり、Rは、R’’と連結されて環を形成してもよく、2つのR’’は、水素ラジカルでなければ互いに連結されて環を形成してもよい;
【0026】
【化4】

前記化学式cで、R及びR’’’は、互いに同一または異なる、水素ラジカル;炭素数1〜40のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはアリールアルケニルラジカルであり;隣接した二つのR’’’は、互いに連結されて環を形成してもよく;Rのうち少なくとも1つが水素ラジカルならば、R’’’はいずれも水素ラジカルでなく、R’’’のうち少なくとも1つが水素ラジカルならば、Rはいずれも水素ラジカルでない。
【0027】
また、混成担持触媒のうち“第二メタロセン”に該当するメタロセン化合物は、下記化学式2または化学式3で表される化合物である。
【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
前記化学式2及び化学式3で、Mは、4族遷移金属であり;(C)、(C)及び(C)はそれぞれ同一または異なる、炭素数1〜40のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールアルケニルラジカルまたはヒドロカルビルで置換された14族金属のメタロイドであるシクロペンタジエニルまたは置換されたシクロペンタジエニルリガンドであるか、またはCの隣接した2つの炭素原子がヒドロカルビルラジカルにより連結されて、C〜C16員環を一つ以上形成した置換されたシクロペンタジエニルリガンドであり;Qは、それぞれ同一または異なるハロゲンラジカルであるか、炭素数1〜20のアルキルラジカル、アルケニルラジカル、アリールラジカル、アルキルアリールラジカル、アリールアルキルラジカルであるか、または炭素数1〜20のアルキリデンラジカルであり;
Bは、2つのシクロペンタジエニルリガンドまたはシクロペンタジエニルリガンドとJRz−yとを共有結合により繋ぐ橋(架橋)であり、さらに前記シクロペンタジエニルは、炭素数1〜4のアルキレンラジカル、ジアルキルシリコンまたはゲルマニウム、アルキルホスフィンまたはアミンを含んでいる;
;Rは、水素ラジカル、炭素数1〜20のアルキルラジカル、アルケニルラジカル、アリールラジカル、アルキルアリールラジカルまたはアリールアルキルラジカルであり;Jは、15族元素であるか、または16族元素であり;Yは、酸素または窒素原子であり;Aは、水素ラジカル、炭素数1〜20のアルキルラジカル、アルケニルラジカル、アリールラジカル、アルキルアリールラジカル、アリールアルキルラジカル、アルキルシリルラジカル、アリールシリルラジカル、メトキシメチル、t−ブトキシメチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチルまたはt−ブチルであり;z−yは、1または2であり;aは、4ないし8の整数であり;(C)、(C)及び(C)のR、R及びR中に存在する少なくともいずれか1つの水素ラジカルは、上記化学式1で定義された化学式a、化学式bおよび化学式cの中から選択されたラジカルで置換される。
【0031】
上記メタロセン化合物の活性化に使われうる代表的な助触媒には、アルキルアルミニウム系のトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどがあり、ボロン系の中性またはイオン性化合物に、トリペンタフルオロフェニルボロン、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロンなどがある。
【0032】
また、上記混成担持触媒を利用して得られた低分子量ポリオレフィンの分子量が1000ないし100,000であり、高分子量ポリオレフィンの分子量が低分子量ポリオレフィンの分子量より高くて10,000ないし1,000,000であることが望ましい。
【0033】
また、本発明は2種以上の相異なるメタロセン化合物を担体に担持した混成担持触媒下で、エチレンと炭素数3−20のα−オレフィンの共重合工程を含むエチレン系共重合体の製造方法を提供する。
【0034】
すなわち、本発明は、オレフィンに対して相異なる重合特性を持つ少なくとも2種類以上のメタロセン触媒を1つの担体に順次に付加した混成担持触媒を製造し、この触媒を利用してそれぞれのメタロセン化合物が持つ固有の特異なオレフィン重合特性によって、多様な性質と、バイモーダルまたは広い分子量分布を持つエチレン系共重合体を製造できる。
【0035】
さらに詳細には、低分子量のオレフィンを誘導する第一メタロセン化合物と高分子量を誘導する第二メタロセン化合物とを助触媒と共に一つの担体に含浸させて、単一反応器でも分子量分布調節の容易な混成担持触媒を利用してエチレン系共重合体を製造する。
【0036】
本発明で最終的に製造される混成担持触媒の4族金属含有量は、0.1ないし20重量%がオレフィン重合に良く、望ましくは0.1ないし10重量%であり、さらに望ましくは1ないし3重量%である。
【0037】
また、混成担持メタロセン触媒の[13族金属]/[4族金属]のモル比は1ないし10,000が良く、望ましくは1ないし1,000であり、さらに望ましくは10ないし100である。
【0038】
また、第二メタロセン化合物の担持量は、第一メタロセン化合物のモルを基準に0.01ないし100のモルの割合で担持することが、最終ポリオレフィンの分子量分布を多様に調節するために望ましい(Mw/Mn=3〜20)。
【0039】
本発明の混成担持触媒は、それ自体がオレフィン重合に使われることができ、別途、混成担持触媒をエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、1−オクテンなどのオレフィン系単量体と接触させて予備重合された触媒としてオレフィン重合に使われてもよい。
【0040】
本発明の混成担持触媒を利用する重合工程は、溶液工程をはじめとしてスラリーまたは気相工程、及びスラリーと気相との混合工程などをいずれも使用でき、望ましくはスラリーまたは気相工程であり、さらに望ましくは単一反応器形態のスラリーまたは気相工程である。
【0041】
本発明の混成担持触媒は、オレフィン重合工程に適した炭素数5ないし12の脂肪族炭化水素溶媒、例えば、ペンタン、へキサン、ヘプタン、ノナン、デカン及びこれらの異性体;トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロベンゼンのような塩素原子に置換された炭化水素溶媒にスラリー形態で希釈して注入が可能である。これに使われる溶媒は、少量のアルミニウム処理を施して触媒毒として作用する少量の水、空気などを除去して使用することが望ましい。
【0042】
本発明の混成担持メタロセン触媒を利用して重合可能なオレフィン系単量体には、エチレン、プロピレン、αオレフィン、環状オレフィンなどがあり、二重結合を2個以上持っているジエンオレフィン系単量体またはトリエンオレフィン系単量体なども重合が可能である。このような単量体の例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−ヘプテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−アイコセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ブタジエン、1,5−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、3−クロロメチルスチレンなどがあり、これら単量体を2種以上混合して共重合してもよい。
【0043】
このような単量体を本発明の混成担持メタロセン触媒下で重合する時の重合温度は25ないし500℃が良く、望ましくは25ないし200℃であり、さらに望ましくは50ないし100℃である。また重合圧力は1ないし100Kgf/cmで行うことが良く、望ましくは1ないし50Kgf/cmであり、さらに望ましくは5ないし40Kgf/cmである。
【0044】
本発明のエチレン系共重合体の密度は、α−オレフィン共単量体(コモノマー)使用量の影響を受ける。すなわち、α−オレフィン共単量体の使用量が多ければ密度が低くなり、α−オレフィン共単量体使用量が少なければ密度が高くなる。本発明のエチレン系共重合体の密度は0.930〜0.960g/cm、特に密度が0.933〜0.952g/cmであることが製品の最適耐圧特性及び耐環境応力亀裂性を得るために望ましい。
【0045】
溶融フロー指数は0.3〜1.0g/10分、特に溶融フロー指数が0.4〜0.8g/10分であることが、成形加工時の垂れ現象及びフロー性不良による製品成形不良などの問題点がなくて望ましい。
【0046】
本発明は、一つの連続式スラリー重合反応器で2種以上のメタロセン化合物を担体に担持した混成担持触媒を使用してエチレンと溶媒、そして、炭素数3〜20のα−オレフィンを一定割合で連続供給しつつ、重合温度75〜85℃でエチレンとα−オレフィンとを共重合するエチレン系共重合体の製造方法を提供する。
【0047】
本発明で得たエチレン系共重合体には、最終用途に合わせて酸化防止剤、カラー処方のための顔料などが使われることができる。酸化防止剤としては、押出機通過時の熱酸化防止及び長期耐熱酸化性向上を目的としてフェノール系酸化防止剤を主に使用し、カラー処方のための顔料としては、通常のカラーマスターバッチを使用する。
【0048】
本発明で得たエチレン系共重合体は、優れた成形性と優れた耐圧特性及び耐環境応力亀裂性を持っているので、パイプ成形時に架橋せずとも給水管の用途への適用が可能である。これにより、エチレン系共重合体自体をそのまま原料として使用するので、架橋剤配合工程などが必要なく、通常の一般押出機で設備の改造なしに容易に加工が可能であり、消費電力も変わらないために経済的に非常に有利である。
【0049】
また、未反応架橋剤の残留問題がなくて臭い問題もなく、これにより本発明のエチレン系共重合体を使用して作ったパイプは、既存の化学架橋または水架橋方式のパイプに比べて飲用水の給水管として適している。
【0050】
〔実施例〕
以下、実施例及び比較例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、実施例は本発明を例示するためのものであるだけで、これらにより発明の範囲が限定されるものではない。
【0051】
触媒製造及び重合に必要な有機試薬及び溶媒は、アルドリッチ(Aldrich)社製品であって標準方法により精製し、エチレンはアプライド・ガステクノロジー(Applied Gas Technology)社製の高純度製品を水分及び酸素ろ過装置に通過させた後に重合し、触媒合成、担持及び重合のあらゆる工程で空気と水分との接触を遮断して実験の再現性を高めた。
【0052】
触媒の構造を立証するために、300MHz NMR(Bruker社製)を使用してスペクトルを得た。見かけ密度は、DIN 53466とISOR 60とに定められた方法で、見かけ密度試験器(APT Institute fr Prftechnik製造のApparent Density Tester 1132)を利用して測定した。
【0053】
<製造例1> 第一メタロセン触媒の合成−[Bu−O−(CH−CZrClの合成
6−クロロヘキサノールを用いて、文献(Tetrahedron Lett.2951(1988))に示された方法でt−Butyl−O−(CH−Clを製造し、ここにNaCpを反応させてt−Butyl−O−(CH−Cを得た(収率60%、b.p.80℃/0.1mmHg)。得られたt−Butyl−O−(CH−Cに1当量のn-BuLiを滴下して加え、混合物を−20℃またはそれ以下で0.5当量のZrCl(THF)と反応させて、白色固体[Bu−O−(CH−CZrClを得た(収率92%)。
H NMR(300MHz,CDCl):6.28(t,J=2.6Hz,2H),6.19(t,J=2.6Hz,2H),3.31(t,6.6Hz,2H),2.62(t,J=8Hz),1.7−1.3(m,8H),1.17(s,9H);13C NMR(CDCl):135.09,116.66,112.28,72.42,61.52,30.66,30.61,30.14,29.18,27.58,26.00。
【0054】
<製造例2>第二メタロセン触媒の製造[Bu−O−(CH(CH)Si(C)(9−C13)]ZrClの合成
ジエチルエーテル(EtO)溶媒中で、Bu−O−(CHCl化合物とMg(0)との反応から、グリニャール(Grignard)試薬であるBu−O−(CHMgCl溶液0.14molを得た。これに−100℃の状態でMeSiCl化合物(24.7ml、0.21mol)を加え、常温で3時間以上攪拌した後、濾過した溶液を真空乾燥してBu−O−(CHSiMeClの化合物を得た(収率84%)。
−78℃でへキサン(50ml)に溶けているBu−O−(CHSiMeCl(7.7g、0.028mol)溶液に、フルオレニルリチウム(fluorenyllithium、4.82g、0.028mol)/へキサン(150ml)溶液を2時間にかけて徐々に加えた。白色沈殿物(LiCl)を濾過して、へキサンで所望の生成物を抽出してあらゆる揮発性物質を真空乾燥し、薄黄色オイル状の(Bu−O−(CH)SiMe(9−C1310)の化合物を得た(収率99%)。
これにTHF溶媒(50ml)を加え、常温でCLi(2.0g、0.028mol)/THF(50ml)溶液と3時間以上反応させた後、あらゆる揮発性物質を真空乾燥してへキサンで抽出し、最終リガンドであるオレンジオイル状の(Bu−O−(CH)(CH)Si(C)(9−C1310)化合物を得た(収率95%)。リガンドの構造はH NMRで確認された。
H NMR(400MHz,CDCl):1.17,1.15(t−BuO,9H,s),−0.15,−0.36(MeSi,3H,s),0.35,0.27(CH,2H,m),0.60,0.70(CH,2H,m),1.40,1.26(CH,4H,m),1.16,1.12(CH,2H,m),3.26(tBuOCH,2H,t,3JH−H=7Hz),2.68(methyleneCpH,2H,brs),6.60,6.52,6.10(CpH,3H,brs),4.10,4.00(FluH,1H,s),7.86(FluH,2H,m),7.78(FluH,1H,m),7.53(FluH,1H,m),7.43−7.22(FluH,4H,m)。
【0055】
また、−78℃で(Bu−O−(CH)(CH)Si(C)(9−C1310)(12g、0.028mol)/THF(100mol)溶液に2当量のn−BuLiを加えて、室温に上げつつ4時間以上反応させてオレンジ固体の(Bu−O−(CH)(CH)Si(CLi)(9−C1310Li)の化合物を得た(収率81%)。
また、−78℃でZrCl(1.05g、4.50mmol)/エーテル(30ml)の懸濁溶液にジリチウム塩(2.0g、4.5mmol)/エーテル(30ml)溶液を徐々に加えて室温で3時間さらに反応させた。あらゆる揮発性物質を真空乾燥し、得られたオイル性液体物質にジクロロメタン溶媒を加えて濾過した。濾過した溶液を真空乾燥した後、へキサンを加えて沈殿物を生じさせた。得られた沈殿物を数回へキサンで洗い、赤色固体のracemic−(Bu−O−(CH)(CH)Si(C)(9−C13)ZrCl化合物を得た(収率54%)。
H NMR(400MHz,CDCl):1.19(t−BuO,9H,s),1.13(MeSi,3H,s),1.79(CH,4H,m),1.60(CH,4H,m),1.48(CH,2H,m),3.35(tBuOCH,2H,t,3JH−H=7Hz),6.61(CpH,2H,t,3JH−H=3Hz),5.76(CpH,2H,d,3JH−H=3Hz),8.13(FluH,1H,m),7.83(FluH,1H,m),7.78(FluH,1H,m),7.65(FluH,1H,m),7.54(FluH,1H,m),7.30(FluH,2H,m),7.06(FluH,1H,m)。
13C NMR(400MHz,CDCl):27.5(MeCO,q,1JC−H=124Hz),−3.3(MeSi,q,1JC−H=121Hz),64.6,66.7,72.4,103.3,127.6,128.4,129.0(7C,s),61.4(MeCOCH,t,1JC−H=135Hz),14.5(ipsoSiCH,t,1JC−H=122Hz),33.1,30.4,25.9,22.7(4C,t,1JC−H=119Hz),110.7,111.4,125.0,125.1,128.8,128.1,126.5,125.9,125.3,125.1,125.0,123.8 (FluC および CpC,12C,d,1JC−H=171Hz,3JC−H=10Hz)。
【0056】
<製造例3> 混成担持触媒の製造
シリカ(Grace Davison社製のXPO 2412)を800℃で15時間真空の状態で脱水した。このシリカ1.0gを3個のガラス反応器に入れ、これにへキサン10mLを入れて前記製造例1で合成された第一メタロセン化合物が溶けているへキサン溶液10mLずつを入れた後、90℃で4時間攪拌して反応させた。反応が終わった後に攪拌を止めてへキサンを層分離して除去した後、20mLのへキサン溶液で3回洗浄した後に減圧してへキサンを除去して固体粉末を得た。これにトルエン溶液中に12mmolアルミニウムを含んでいるメチルアルミノキサン(MAO)溶液を加えて40℃で攪拌して徐々に反応させた後、過量のトルエンで洗浄して未反応のアルミニウム化合物を除去した後、50℃で減圧して残っているトルエンを除去した。
混成触媒を製造するために、上記で得られた担持触媒に製造例2で合成した第二メタロセン化合物が溶けているトルエン溶液をガラス反応器に加えて40℃で攪拌して反応させた後、過量のトルエンで洗浄した後に乾燥して固体粉末を得て最終触媒として使用するか、30psigのエチレンを2分間加えて1時間常温で予備重合を行ってもよい。この後、真空乾燥して固体の触媒を得た。
【0057】
<実施例1〜2>
上記製造例3の混成担持触媒を1kg規模で合成した。合成された触媒は、窒素雰囲気下の密閉容器に入れて50リットルの精製へキサンに懸濁させて100リットルの攪拌タンク反応器に注入し、200rpmの速度で回転させつつ重合反応器へ注入する用意をした。重合は、機械式攪拌器が装着された、温度調節が可能であって高圧で利用される200リットルの連続250rpm速度で攪拌する連続攪拌タンク反応器で行い、反応器から出された高分子スラリーを、遠心分離機を経て乾燥器を通過させた後、固体粉末を得た。重合は、エチレンを10ないし15kg/hrの流速で注入しつつ80℃でエチレンの圧力が8ないし9kgf/cmになるように触媒注入量を調節した。触媒の注入は、段階的に一回の注入量を10mlとし、注入時間間隔を合せて注入量を調節した。重合反応時間は、反応器内の滞留時間が2ないし3時間になるように溶媒の量で調節し、α−オレフィンとしては1−ブテンを使用して共重合特性を検討し、分子量調節のために少量の水素を添加した。
前記製造例3で製造した混成担持触媒に対するエチレン重合活性、共単量体(コモノマー)として1−ブテン及び分子量調節のための水素に対する反応を考慮してこれらの投入量を異ならせることによって、2種の規格(実施例1及び実施例2)でエチレン系共重合体を製造して下記表1にそれぞれの活性、見かけ密度、密度、分子量、分子量分布及び基本的な物性分析結果を示した。また、本発明を通じて開発された触媒を利用した場合、連続反応システム内でのファウリング(fouling)により起こる操業中断の問題は全く生じず、重合体の見かけ密度が0.3ないし0.5g/mlで優秀であった。
【0058】
<実施例3〜4>
前記実施例1〜2で得られたエチレン系共重合体のパイプ成形は、単軸押出機(L/D=22、圧縮比=3.5)を使用して、押出温度210〜230℃で外径32mm、厚さ2.9mmの規格になるように押出成形した。特性評価結果は表1に示した。
【0059】
<比較例1>
マグネシウム担持チタン系列のチーグラー・ナッタ触媒を使用し、実施例1〜2のように連続工程下で1−ブテンを共単量体としてエチレン共重合体を製造した。有機過酸化物0.7重量%、酸化防止剤0.3重量%を添加して実施例と同じ規格で化学架橋パイプを成形した。特性評価結果は表1に示した。
【0060】
<比較例2>
比較例1と同じ方法によりエチレン共重合体を製造し、シラン化合物2.0重量%、有機過酸化物0.3重量%、酸化防止剤0.2重量%を処方して実施例と同じ規格で水架橋パイプを成形した。特性評価結果は表1に示した。
【0061】
<比較例3>
比較例1と同じ方法によりエチレン共重合体を製造し、連続式2段スラリー重合工程を用い、共単量体は1−ブテンを使用した。1段反応器でエチレンホモ重合を行なった後に水素を除去して2段反応器へ移送し、エチレン/1−ブテン共重合を連続的に実施してバイモーダル分子量分布を持つエチレン系共重合体を製造した。得られたエチレン系共重合体を使用して実施例と同じ規格でパイプを成形した。特性評価結果は表1に示した。
【0062】
<比較例4>
溶液重合工程を用い、共単量体は1−オクテンを使用し、使われた触媒はチーグラー・ナッタ系を使用した。得られたエチレン系共重合体を使用して実施例と同じ規格でパイプを成形した。特性評価結果は表1に示した。
【0063】
<比較例5>
Bu−O−(CH−CZrCl触媒を利用し、標準法によって製造した。連続式スラリー重合工程を用い、共単量体は1−ブテンを使用した。得られたエチレン系共重合体はバイモーダル分子量分布を持ち、パイプは実施例と同じ規格で成形した。特性評価結果は表1に示した。
【0064】
<試験例>
本発明の実施例及び比較例で製造されたエチレン系共重合体の評価項目及び評価方法は次の通りである。外径32mm、厚さ2.9mmの規格でパイプを成形して、パイプ物性を評価した。
【0065】
1.原料物性
1)密度
ASTM D792、架橋剤を処方した試料は架橋剤処方前の試料で測定した。
2)溶融フロー指数(Melt Index)(2.16kg)
測定温度は190℃、架橋剤を処方した試料は架橋剤処方前の試料で測定した。
3)分子量分布
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を利用して数平均分子量、重量平均分子量、Z平均分子量を測定した。分子量分布は、重量平均分子量と数平均分子量との比で表し、架橋剤を処方した試料は架橋剤処方前の試料で測定した。
4)引張強度、伸び率
ASTM D638、3mm厚さのホットプレスシートを用いて、引張速度50mm/minで測定した。架橋剤が処方された試料は架橋させた形態で測定した。
5)耐環境応力亀裂性(ESCR)
ASTM D1693、10% Igepal CO−630 Solutionを使用して温度50℃条件下でF50(50%破壊)までの時間を測定した。架橋剤が処方された試料は架橋させた形態で測定した。
6)アイゾット衝撃強度(Izod Impact Strength)
ASTM D256、温度20℃で測定した。架橋剤が処方された試料は架橋させた形態で測定した。
【0066】
2.パイプ加工性
パイプ成形時に作業線速(m/min)を尺度に加工性を良好、普通、不良と評価した。
【0067】
3.パイプ物性
1)95℃熱間内圧クリープ
成形されたパイプを95℃の熱水中で3.5Mpaの条件で試験応力を加えて破壊されるまでの時間を評価した。
2)パイプ外観
肉眼観察で良好、普通、不良と判定した。
3)臭い評価
成形されたパイプを20cm長さに10個ずつ切断して50℃の温水5リットル中に24時間浸水させた後、その水に悪い臭いがするかを良好、普通、不良と評価した。
4)パイプの施工性
パイプ施工時の熱接着性、柔軟性を尺度に施工性を良好、普通、不良と評価した。
5)経済性
原料及び工程コスト、パイプ製造コストなどを基準に経済性を良い、悪いと評価した。
【0068】
【表1A】

【表1B】

【0069】
上記表1から分かるように、実施例1〜2で得たエチレン系共重合体を給水管パイプ用に適用する場合には架橋させないので、架橋方式の比較例1または比較例2より経済的に有利であり、臭いの問題がないので飲用水管としてさらに適しており、パイプ連結時に熱接着が可能であって施工性も優秀である。また、比較例3と比較すれば、バイモーダル分子量分布を持つという点では同一であるが、比較例3の製品はチーグラー・ナッタ触媒を使用するので、共単量体(コモノマー)添加量を増やすのに限界があり、これによって密度が高くて給水管パイプのように柔軟性が要求される製品には適しておらず、MIが低くて生産性が低いという問題がある。また、共単量体として1−オクテンを使用した比較例4では、いろいろな物性面で良好であるが、共単量体のコストが高く、溶液重合工程を利用するので工程コストが高くて経済的でないという短所がある。また、比較例5では、メタロセン触媒を使用するという側面では実施例と同一であるが、典型的な狭い単一分子量分布を持つので加工性がよくなく、一般押出成形機で作業し難いという問題がある。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によるエチレン系共重合体は、給水管パイプ用として適用する時、非架橋方式であるために臭い問題がなく、パイプ成形時に押出機の負荷上昇及び発熱、ダイ屑などの問題もないだけでなく、架橋剤の配合工程が必要なくて経済的に有利であり、成形されたパイプの柔軟性が優秀で熱接着が可能であって施工しやすい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管パイプ用のポリエチレン共重合体において、
a)2種以上の相異なるメタロセン化合物を担体に担持した混成担持触媒を使用して、
b)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合により得られる
c)密度が0.930〜0.960g/cmであり、
d)溶融フロー指数が0.3〜1.0g/10分(190度、2.16kg荷重条件)であり、
e)分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が5〜30であることを特徴とする非架橋方式の給水管パイプ用エチレン系共重合体。
【請求項2】
前記メタロセン化合物が下記化学式1で表されるメタロセン化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の非架橋方式の給水管パイプ用エチレン系共重合体:
【化1】

前記化学式1で、
Mは、4族遷移金属であり;
(C)は、水素ラジカル、炭素数1〜20のアルキルラジカル、アルケニルラジカル、アリールラジカル、アルキルアリールラジカル、アリールアルキルラジカル、ヒドロカルビルで置換された14族金属のメタロイドラジカルであるか、または、Cの隣接した2つの炭素原子がヒドロカルビルラジカルにより連結されてC〜C員環を形成したシクロペンタジエニルまたは置換されたシクロペンタジエニルリガンドであり;
Qは、ハロゲン族元素または炭素数1〜20のアルキルラジカル、アルケニルラジカル、アリールラジカル、アルキルアリールラジカル、アリールアルキルラジカルまたはヒドロカルビルであり;
pは、1または0であり;
前記Rに存在する少なくともいずれか1つの水素ラジカルは、下記化学式aで表示されるラジカル、化学式bで表示されるラジカル、または化学式cで表示されるラジカルで置換され;
【化2】

前記化学式aで、
Zは、酸素原子または硫黄原子であり;
R及びR’は、互いに同一または異なる、水素ラジカル;炭素数1〜40のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アルキルアリール、アリールアルキル;またはアリールアルケニルラジカルであり;2つのR’は互いに連結されて環を形成してもよく;
Gは、炭素数1〜40のアルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、フェニル、または置換されたフェニルであり、R’と連結されて環を形成してもよく;
Zが硫黄原子ならば、Gは必ずアルコキシまたはアリールオキシであり;
Gがアルキルチオ、アリールチオ、フェニル、または置換されたフェニルであれば、Zは、必ず酸素原子であり;
【化3】

前記化学式bで、
Zは、酸素原子または硫黄原子であり、2つのZのうち少なくともいずれか一つは酸素原子であり;
R及びR’’は、互いに同一または異なる、水素ラジカル;炭素数1〜40のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはアリールアルケニルラジカルであり、
Rは、R’’と連結されて環を形成してもよく、
2つのR’’は、水素ラジカルでなければ互いに連結されて環を形成してもよく;
【化4】

前記化学式cで、
R及びR’’’は、互いに同一または異なる、水素ラジカル;炭素数1〜40のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはアリールアルケニルラジカルであり;
隣接した2つのR’’’は、互いに連結されて環を形成してもよく;
Rのうち少なくとも1つが水素ラジカルならば、R’’’はいずれも水素ラジカルでなく、R’’’のうち少なくとも1つが水素ラジカルならば、Rはいずれも水素ラジカルでない。
【請求項3】
前記メタロセン組成物が、下記化学式2または下記化学式3で表されるメタロセン化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の非架橋方式の給水管パイプ用エチレン系共重合体:
【化5】

【化6】

前記化学式2及び化学式3で、
Mは、4族遷移金属であり;
(C)、(C)及び(C)はそれぞれ同一または異なる炭素数1〜40のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールアルケニルラジカルまたはヒドロカルビルで置換された14族金属のメタロイドであるシクロペンタジエニルまたは置換されたシクロペンタジエニルリガンドであるか、またはCの隣接した2つの炭素原子がヒドロカルビルラジカルにより連結されて、C〜C16員環を1つ以上形成した置換されたシクロペンタジエニルリガンドであり;
Qは、それぞれ同一または異なるハロゲンラジカルであるか、炭素数1〜20のアルキルラジカル、アルケニルラジカル、アリールラジカル、アルキルアリールラジカル、アリールアルキルラジカルであるか、または炭素数1〜20のアルキリデンラジカルであり;
Bは、2つのシクロペンタジエニルリガンドまたはシクロペンタジエニルリガンドとJRz−yとを共有結合により繋ぐ橋(架橋)であり、さらに前記シクロペンタジエニルは、炭素数1〜4のアルキレンラジカル、ジアルキルシリコンまたはゲルマニウム、アルキルホスフィンまたはアミンを含んでいる;
は、水素ラジカル、炭素数1〜20のアルキルラジカル、アルケニルラジカル、アリールラジカル、アルキルアリールラジカルまたはアリールアルキルラジカルであり;
Jは、15族元素であるか、または16族元素であり;
Yは、酸素または窒素原子であり;
Aは、水素ラジカル、炭素数1〜20のアルキルラジカル、アルケニルラジカル、アリールラジカル、アルキルアリールラジカル、アリールアルキルラジカル、アルキルシリルラジカル、アリールシリルラジカル、メトキシメチル、t−ブトキシメチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチルまたはt−ブチルであり、
z−yは、1または2であり;
aは、4ないし8の整数であり;
(C)、(C)及び(C)のR、R及びR中に存在する少なくともいずれか1つの水素ラジカルが、前記請求項2に定義された化学式a、化学式bまたは化学式cから選択されたラジカルで置換された化合物である。
【請求項4】
前記混成担持触媒を利用して得られた低分子量ポリオレフィンの分子量が1000ないし100,000であり、高分子量ポリオレフィンの分子量が低分子量ポリオレフィンの分子量より高くて10,000ないし1,000,000であることを特徴とする請求項1に記載の非架橋方式の給水管パイプ用エチレン系共重合体。
【請求項5】
前記エチレン系共重合体が1つのスラリーまたは気相単一反応器で製造されることを特徴とする請求項1に記載の非架橋方式の給水管パイプ用エチレン系共重合体。
【請求項6】
前記エチレン系共重合体が、2つ以上のスラリーまたは気相多段反応器で製造されることを特徴とする請求項1に記載の非架橋方式の給水管パイプ用エチレン系共重合体。
【請求項7】
前記α−オレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−ヘプテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−アイコセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ブタジエン、1,5−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン、スチレン、α−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、3−クロロメチルスチレンまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の非架橋方式の給水管パイプ用エチレン系共重合体。
【請求項8】
請求項1に記載のエチレン系共重合体で製造される非架橋方式の給水管パイプ用成形物。

【公表番号】特表2007−517087(P2007−517087A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543749(P2006−543749)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000854
【国際公開番号】WO2006/001588
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】