説明

混捏製品の製造装置、製造方法、混捏製品および加工品

【課題】 液が均一に分散した混和物および粘弾性が高い混捏物を簡便に短時間で調製し、風味、食感などが優れ、弱い生地の場合でも過度の剪断力によるオーバーミキシングを防止して、粘弾性大の混捏製品を製造する。
【解決手段】 混捏原料10を混捏装置2の容器11に収容し、容器11の下部で混和混捏部材12のロータ15を回転させ、ロータ15の上側周辺部から上向きかつ容器の内周壁方向に伸びる攪拌棒16により、混捏原料10を容器11の内周壁との間で回転させ上方に移送して混和物小塊60を形成し、ロータ15の下側の混和物小塊を掻揚部17上側に掻き揚げ、これらと同時にまたは前後して、空間部22で、混捏物20の外周部にさらなる混和物小塊60を付着させて混捏物20を肥厚させ、ロータの上側中央部と中蓋27に挟まれた空間部22で混捏物20の外周部に攪拌棒16の内周部で応力を加えて混捏することにより、粘性の高い混捏物20を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そば、うどん、中華そば、パスタ、パン生地、ケーキ生地、米粉生地など、混捏原料を混和および混捏した混捏製品の製造装置、製造方法、ならびにこれらにより製造される混捏製品、およびこの混捏製品を含む加工製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
そば、うどん、パスタ、パン生地、ケーキ生地、米粉生地などの混捏製品は、そば粉、小麦粉等の原料粉体に、調味料その他の副素材のほか、水、卵、油脂等の副素材を混合した加液物を混捏原料として混和および混捏し、得られる混捏物を圧延し、さらに線状その他の形状に切断し、混捏製品として混捏食品を製造している。そばの場合、そばの実を粉砕し、水等の液状物を添加した加液物を混和および混捏し、圧延、切断を行って製麺している。これらは一連の工程として、同一の場所で短時間に行うことにより、優れた風味、食感のそばの麺線が得られるが、特に加液物の混和および混捏工程が重要である。そば粉は、小麦粉のようにグルテンを生成しないため、製麺した時の繋がりが悪く、麺線が切れやすい。
【0003】
そばの麺線の繋がりを良くする方法として、つなぎとして小麦粉などの副素材を添加することが行われている。小麦粉を添加するとグルテンなどにより、麺線の繋がりが良くなって麺線が切れなくなるが、茹で時間が長くなるため風味や食感が損なわれてしまう。そばの麺線の繋がりを良くする他の方法として、湯を加えて混捏することにより、澱粉をα化して繋がりを良くすることができるが、香りがなくなり、糊化したゲル状物質の形成により麺の風味が損なわれる。また、ゆで麺の喉ごしなどの食感が低下してしまう。
【0004】
風味、食感などが優れたそばとして、十割そば、八割そば等のつなぎの少ないそばがある。十割そばは、つなぎとして小麦粉などの副素材を添加することなく、そば粉と水だけで製麺したそばである。また八割そばは、つなぎとして小麦粉などの添加量が少なく、そば粉が八割のそばである。このようなそばは、いずれも手打ちがほとんどであって、製法には熟練が求められている。
【0005】
このような混捏食品等の混捏製品の製造において、原料粉体に液状の副素材を加えた加液物を混捏原料として混和する際、水回し等の加液を伴う混和により、原料に液が均一に分散した混和物を形成し、この混和物を混捏して混捏製品を得ている。この場合混捏物の繋がりを良くするためには、水回し等の加液による混和は短時間で効率良く行い、乾燥を防止しながら混和して均一な混和物を形成する必要がある。従来は手作業で行われており、例えば手打ち麺製造工程においては、穀類粉体に加水して麺を製造する際に水回しが行われているが、長時間の操作による生地の乾燥や手への付着により、品質の低下した混和物が形成され、作業性も低下する。特に十割そばは、水回し工程に熟練が必要であり、簡便で作業性が高い混和技術が求められるが、手作業では困難である。
【0006】
従来混捏製品の製造に用いられる穀粉の混捏装置には、2軸ローラ、L型フック、ビータなどの他、スパイラル、パドル、M型等の混和・混捏機器が用いられているが、これらの装置は主に強いグルテンを生成する小麦粉用に開発されたものであり、グルテンを形成しないそばなどの弱い生地の調製が困難であり、そば用の混捏装置としては適さない。
【0007】
従って弱い生地に適した混捏原料の混和および混捏技術が求められており、特に生地の粘弾性が最大となるミキシング終点を自動的に判定して、弱い生地のオーバーミキシングを防止できる簡易な混捏製品の製造装置、方法および自動制御技術が求められている。
またパスタ、中華そばなどの場合、麺の風味、歯切れの良さ、独特の喉ごしなどの食感が求められるが、小麦粉に液状物を加えた混捏原料の混和および混捏が適正でないと、形成されたグルテンの切断などにより食感が損なわれ、麺帯の物理特性が変化するため、歯切れの良さなどの独特の食感が低下する。パン生地やケーキ生地の場合も同様のことがいえる。このため上記のような混捏製品の製造にも適した混捏原料の混和および混捏を行うことができる混捏製品の製造装置、方法が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、簡単な機構と操作により、そば粉などの原料粉体の加液物等の混捏原料を混和および混捏する際、原料粉体に液が均一に分散した混和物を簡便に短時間で調製し、風味、食感などが優れる混捏食品のような混捏製品を得ることができ、弱い生地の場合でも過度の強い剪断力を加えることなく、オーバーミキシングを防止して、生地の粘弾性が最大の混捏製品を製造することができる混捏製品の製造装置、製造方法、ならびにこれらにより製造される混捏製品、およびこの混捏製品を含む加工品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は次の混捏製品の製造装置、製造方法、混捏製品およびこれを含む加工品である。
(1) 混捏原料を混和および混捏して混捏製品を製造する装置であって、
混捏原料を収容する容器と、
容器の下部で回転可能なロータ、このロータの上側周辺部から上向きかつ容器の内周壁方向に伸びる攪拌棒、および回転によりロータの下側の混和物小塊を上側に掻き揚げる掻揚部を有する混和混捏部材と
を含む混捏製品の製造装置。
(2) 容器が内周壁に混捏原料および混和物小塊の回転の抵抗となるバッフルを有する上記(1)記載の装置。
(3) 混和混捏部材は、長さの異なる複数の攪拌棒が、ロータの上側周辺部の円周方向に間隔を置いて設けられた上記(1)または(2)記載の装置。
(4) 攪拌棒が後退角を有し、かつ前面外周側に傾斜面部を有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の装置。
(5) 掻揚部が、ロータ下側の周辺部に設けられたスクレーパと、スクレーパの上端部からロータの上側に向かって傾斜状に形成された掻揚路とを有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の装置。
(6) 容器の上部開口部からロータ上の混和物側に載置される下に凸の蓋部材を有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の装置。
(7) 混和混捏部材のロータに接続する動力部にかかる電気的負荷を検出する負荷検出手段と、一定の電気的負荷を検出した時点で動力装置の速度を減少または停止させる制御機構とを有する上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の装置。
(8)混和混捏部材により形成された混捏物塊を圧延する圧延部材を有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の装置。
(9)圧延部で圧延された圧延物を線状に切断する切断部を有する上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の装置。
(10) 混捏原料を混和および混捏して混捏製品を製造する方法であって、
容器に混捏原料を収容し、
容器の下部において混和混捏部材のロータを回転させ、
ロータの上側周辺部から上向きかつ容器の内周壁方向に伸びる攪拌棒により、混捏原料を容器の内周壁との間で回転させながら上方に移送および分散させて混和し、
混捏原料の混和および凝集により形成された混和物小塊を、ロータの下側から掻揚部上側の空間部に掻き揚げて、
これらと同時にまたは前後して、攪拌棒の内周部で混捏物の外周部にさらに混和物小塊を付着させて混捏物を肥厚させて混捏物塊を形成するとともに、混捏物塊の外周部に応力を加えることにより混捏して粘弾性の高い混捏物塊を形成する
ことを特徴とする混捏製品の製造方法。
(11) 上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の装置を用いて混捏物を形成する上記(10)記載の方法。
(12) 上記(10)または(11)記載の方法によって製造された混捏製品。
(13) 上記(12)記載の混捏製品を含む加工品。
【0010】
本発明において、混捏製品とは、そば粉、小麦粉、米粉等の原料粉体に、調味料その他の副素材のほか、水、卵、油脂等の液状の副素材を混合した加液物を混捏原料として混和および混捏し、得られる混捏物を圧延し、さらに線状その他の形状に切断して製造される混捏食品等の混捏製品であり、風味、食感などが優れ、手打ちの食感が要求されるそば、パスタ、中華そば、パン生地、ケーキ生地、米粉生地、餅などの食品のほか、化粧品、薬剤、医薬部外品などが挙げられる。
【0011】
本発明において、混捏原料を構成する原料は、このような混捏製品の原料となる有機物であり、そば、パスタ、中華そば、パン生地、ケーキ生地、米粉生地等の混捏食品の原料などが挙げられる。混和および混捏の対象となる混捏原料として、上記のような原料粉体の加液物があり、原料粉体に水、卵、その他の溶液、ならびに油脂などの液状物を加えることにより得られる。粉体でない原料でも、混和および混捏して混捏製品を製造できるものは、混捏原料として使用でき、例えば生の状態で粘性を有する果菜類、すり身、肉類等や、蒸煮した穀類、芋類等、ならびにゼラチン、カラギーナン等を含む混捏原料などがあげられる。
【0012】
本発明の混捏製品の製造装置は、原料粉体の加液物等の混捏原料を混和および混捏して混捏食品等の混捏製品を製造する装置であって、混捏原料を収容する容器と、容器の下部に設けられた混和混捏部材とを有する混捏装置を含む。混和混捏部材は、容器の下部で回転可能なロータ、このロータの上側周辺部から上向きかつ容器の内周壁方向に伸びる攪拌棒、および回転によりロータの下側の混和物小塊を上側に掻き揚げる掻揚部を有する装置である。
【0013】
上記の混捏装置において、容器は混捏原料を収容して混和および混捏できるように、上部に開口部を有する竪型の容器で、ボウル状、円筒状、円錐状、半紡錘状など、任意の形状のものが使用できるが、上部の口径が広くなるボウル状のものが好ましい。容器は内周壁に混捏原料および混和物小塊の回転の抵抗となるバッフルを有するものが好ましい。バッフルは容器の内側に突出する突起とすることができるが、ロータの回転方向と交差する方向に伸びるものが好ましい。容器は蓋がなく、開放状態とすることもできるが、上部開口部に蓋部材を設けるのが好ましく、特に上部開口部からロータ上の混捏物側に載置される下に凸の蓋部材を有するのが好ましい。
【0014】
混和混捏部材のロータは、容器の下部で上下方向の回転軸により回転可能とされたものが好ましく、形状は特に限定されないが、掻揚部を有する円盤状、スクリュウ状、回転翼状などの形状のものがあげられる。混和混捏部材は、複数の攪拌棒がロータの上側周辺部の円周方向に間隔を置いて設けられ、攪拌棒が回転しても中央部に空間部を形成するものが好ましく、特に長さの異なる複数の攪拌棒がロータの上側周辺部の円周方向に間隔を置いて設けられたものが好ましい。攪拌棒はそれぞれ後退角を有するものが好ましく、また前面外周側に傾斜面部を有するものが好ましい。混和混捏部材の掻揚部は、回転によりロータの下側の混和物小塊を上側の空間部に掻き揚げるように構成されるが、ロータ下側の周辺部に設けられたスクレーパと、スクレーパの上端部からロータの上側に向かって傾斜状に形成された掻揚路とを有するものが好ましい。
【0015】
本発明の混捏製品の製造装置は、混和混捏部材の負荷検出手段および制御機構を有する制御装置を含むのが好ましい。負荷検出手段は、混和混捏部材のロータに接続する動力部にかかる電気的負荷を検出するように構成される。また制御機構は、一定の電気的負荷を検出した時点で動力装置の速度を減少または停止させるように構成される。この場合、混和混捏部材のロータに設けられた攪拌棒にかかる応力負荷が、ロータに接続する動力部に伝達され、負荷電流の微分値の絶対値が最大になった時点で、動力装置の速度を減少または停止させるように構成するのが好ましく、これにより過剰な混捏による生地の老化を防止して粘性が高い混捏物を生成できるようにすることができる。
【0016】
そば、パスタ、中華そば、ピザ生地等の薄い層状の混捏製品の場合には、混和混捏部材により形成された混捏物を圧延する圧延部材を有するものが好ましい。圧延部材としては、圧延ローラ、プレスなどがあげられるが、対向する圧延ローラ対を複数段に設けるもの、特に圧延工程が進むにつれて圧延ローラ対の間隔が狭まる複数の圧延ローラが好ましい。このような圧延部材として、対向する1対のローラ式圧延部が複式で設置された圧延機構で構成され、上部にローラから生地を剥離させるための剥離助剤の散布部およびローラに接触するバネ材の圧延ローラ用スクレーパを備えた構造を有するものがあげられる。圧延ローラ用スクレーパは、支持部材の上部にネジ締めの平ワッシャーなどの押圧部材で押圧を調整して圧延ローラに密着固定し、掻き取った生地滓を圧延ローラ用スクレーパの上面に沿って系外に排出するのが望ましい。
【0017】
そば、パスタ、中華そば等の線状の混捏製品の場合には、圧延部で圧延された圧延物を線状に切断する切断部を有するものが好ましい。切断部としてはロールカッタ、切り刃などを選択できる。ロールカッタの場合、カスリは、圧延ローラ用スクレーパと同様に、支持部材の上部にネジ締めの平ワッシャーなどの押圧部材で押圧を調整してロールカッタに密着固定し、掻き取った生地滓をカスリの上面に沿って系外に排出するのが望ましい。
【0018】
本発明の混捏製品の製造方法は、混捏原料を混和および混捏して混捏製品を製造する方法であって、混捏原料を容器に収容し、容器の下部で混和混捏部材のロータを回転させ、ロータの上側周辺部から上向きかつ容器の内周壁方向に伸びる攪拌棒により、加水物等の混捏原料を容器の内周壁との間で回転させながら上方に移送および分散して混和し、ロータの下側の混和物小塊を掻揚部上側の空間部に掻き揚げて、これらと同時にまたは前後して、攪拌棒の内周部で混和物小塊が凝集して形成された混捏物の外周部にさらなる混和物小塊を付着させて混捏物が肥厚した混捏物塊を形成するとともに、ロータの上側中央部の空間部で回転する混捏物塊の外周部に応力を加えて混捏することにより、粘性の高い混捏物塊を形成する。
【0019】
上記の混捏製品の製造装置を用いて混捏物を形成する場合、混和混捏部材のロータを回転させながら、容器内のロータ上に混捏原料を供給していくと、混捏原料は回転する攪拌棒により容器の内周壁との間で回転しながら上方に移送および分散されて混和する。混和物小塊は、容器の内周壁に形成されたバッフルにより回転を阻止されて、ロータの上または容器の底に落下する。ロータの下側に落下した混和物小塊は、ロータの回転に伴って、掻揚部によりロータの上側の空間部に掻き揚げられる。ロータの上側の混和物小塊は、空間部で加えられる応力により凝集して混捏物が形成され、混捏物の外周部にさらなる混和物小塊が付着して混捏物が肥厚した混捏物塊が形成される。これとともにロータの上側中央部の空間部で回転する混捏物の外周部に攪拌棒より応力が加えられて混捏され、粘性の高い混捏物塊が形成される。
【0020】
混捏製品製造装置の容器および混和混捏部材ロータの大きさ(寸法)は、形成する混捏物の量により任意に選択することができる。ロータの回転数は、容器の大きさ、混捏物の種類、量等により異なるが、一般的には50〜500rpm、好ましくは100〜300rpm、攪拌棒の周速として0.35〜3.5m/s、好ましくは0.7〜2.1m/sとすることができる。ロータの回転による混捏時間も形成する混捏物の種類、量等により異なるが、一般的には1〜10分、好ましくは2〜5分とすることができる。
【0021】
混捏原料としての原料粉体の加液物を形成するための液体の量は、目的とする混捏物の形成に必要な量であり、それぞれの混捏物の種類によって異なる。例えばそば生地を調製する場合、そば粉に対し、加水量は35〜55重量%、好ましくは45〜50重量%とすることができる。原料粉体の加液物はそのまま、またはゴムヘラ等の攪拌手段で攪拌した後、製造装置の容器に供給することができる。そばの場合、混捏原料としてそば粉の加液物を調理用ボールに加え、ゴムヘラ等で10秒程度混和し、混捏装置のロータを回転させた状態で混捏装置に投入すると、約2分でボール状の混捏物塊を得ることができる。
【0022】
製造装置の容器の内周壁にバッフルを形成すると、バッフルは混捏原料および混和物小塊の回転の抵抗となるため、加液物等の混捏原料の均質化、混捏原料が混和および凝集した混和物小塊の生成等が促進される。ロータの掻揚部は、回転により下側の混和物小塊をスクレーパの上端部からロータの上側に向かって傾斜状に形成された掻揚路を通して上側に移送させ、混和物小塊が混捏物塊に付着することにより混捏物塊の肥大化が促進される。
【0023】
混和混捏部材として、複数の攪拌棒がロータの上側周辺部の円周方向に間隔を置いて設けられている場合は、中央に空間部を形成し、周辺部で加液物等の混捏原料の分散、回転力の付与、水分分布の均質化、応力の付加等が可能となり、混捏効果を高めることができる。特に長さの異なる複数の攪拌棒が、ロータの上側周辺部の円周方向に間隔を置いて設けられていると、複数の攪拌棒の先端部が異なる回転半径と高さに設置され、混捏効果をさらに高めることができる。攪拌棒が後退角を有するものは混和物小塊の上方への掻き揚げが容易になり、また前面外周側に傾斜面部を有する場合は容器の内周壁側への押し付けが容易になる。攪拌棒は先端部が容器の内周壁に近づくように、上開き斜め後方向きにロータの上側周辺部に形成されているのが好ましく、これによりロータ上側の中央部に空間部を形成するとともに、容器の内周壁側への押し付け力を変化させることができ、混捏原料の混和、混捏原料の凝集による混和物小塊の形成等が効率良く行われる。
【0024】
混捏原料として穀類などの粉末状材料の加液物を攪拌して混和する際、強い回転力を加えると混和物が剪断されて粘度が低下するが、上記の装置により混捏原料を攪拌して核となる微小混和物を形成させ、微小混和物を回転させて周囲に混捏原料を付着させて混和物小塊を形成させることにより、混和物小塊の内部に剪断力を伴った過剰な応力を加えることを回避できるとともに、混和物小塊の外周部に加わる応力で内部を弱く混捏して、粘性の高い混和物を簡便に短時間で調製し、風味、食感などが優れた混捏物および加工物を得ることができる。混和混捏部材のロータに固定された複数の攪拌棒は回転方向の前面外周部が凸面の形状を有するともに、上開き斜め後方向きにロータ上部の外周に沿って高さを変えると、先端部が異なる回転半径と高さに設置され、ロータの回転により混捏原料を攪拌容器の内壁と攪拌棒の外側との間隙で回転させながら上方に移送および分散する応力を加えて混捏原料の水分と原料を第1次生地原料に形成する混和を行うことができる。
【0025】
上記の操作は容器の上部開口部に蓋部材がない場合でも行えるが、蓋部材を用いることにより、混捏物の凝集が促進される。蓋部材がない場合、あるいは平板状の蓋部材である場合には、じゃがいも状に分割された複数の混捏物が形成されるが、容器の上部開口部からロータ上の混和物側に載置される下に凸の蓋部材を、落とし蓋として用いると、分散した複数の混捏物が凝集して大きな塊となり、取り扱いが容易になる。混和混捏部材のロータに固定された複数の攪拌棒は、ロータに上開き斜め後方向きに配置され、ロータの掻揚路を通じてロータ上部に移動した混和物小塊を、ロータ上部において攪拌棒の内側と蓋部材で囲まれた空隙部で回転させて、混捏物に混和物小塊を付着させることにより雪だるま状に肥厚させて混捏物塊を形成するとともに、混捏物塊の外周部に攪拌棒の内側で応力を加えて混捏することにより、粘性の高い混捏物塊を形成することができる。
【0026】
混捏工程の終了は、負荷検出手段により混和混捏部材のロータに接続する動力部にかかる電気的負荷を検出し、制御機構により一定の電気的負荷を検出した時点で動力装置の速度を減少または停止させる。この制御により過剰な混捏による生地の老化を防止して粘性が高い状態の混捏物を生成できるように制御することができ、生地の粘弾性が最大となるミキシング終点を自動的に判定して、弱い生地のオーバーミキシングを防止できる。この場合、混和混捏部材のロータに設けられた攪拌棒にかかる応力負荷がロータに接続する動力部に伝達され、負荷電流の変化を検出することにより、応力負荷の簡易な検出、制御機構を構成することができる。
【0027】
そば、パスタ、中華そば、ピザ生地等の薄い層状の混捏製品の場合には、混和混捏部材により形成された混捏物を圧延部材により圧延することができる。圧延に先立って混捏物を加圧プレス等の混捏物成形装置で角型等の取り扱いが容易な形状に成形した後、混捏物分割装置を用いて厚さ5〜10mm、好ましくは厚さ6〜8mmの小片に切り出し、打ち粉を両面に塗布して圧延部材で圧延するのが好ましい。圧延部材が多段の圧延ローラ対の場合、バネ材で形成されるテンション調整用のループ形成ガイドをローラ上部に設置し、二重巻き付き防止用のループ形成ガイドを他方のローラ側部に配置して最後尾を自然落下させることにより圧延生地が折れて二重に下部ローラに巻き付くことを防止できる。巻き付き防止のための下部の圧延ローラを傾斜させる場合は、圧延部材の配置は、圧延生地が上部圧延ローラの間隙より降下する位置より仰角で1〜60度、好ましくは水平より1〜10度傾けて、下部圧延ローラ半径を超えない範囲に配置するのが好ましい。このような配置により生地の最後尾が折れて二重に下部圧延ローラに巻き付くことを防止できる。圧延ローラは圧延ローラ用スクレーパ付きが好ましく、この圧延ローラ用スクレーパは、支持部材の上部にネジ締めの平ワッシャーなどの押圧部材で押圧を調整して圧延ローラに密着固定し、掻き取った生地滓を圧延ローラ用スクレーパの上面に沿って系外に排出するのが望ましい。
【0028】
そば、パスタ、中華そば等の線状の混捏製品の場合には、圧延部で圧延された圧延物を切断部で線状に切断することができる。そば生地の麺線を20番、すなわち切り幅1.5mmのロールカッタで切断して形成する場合、そば生地の圧延は2段の圧延ローラで行うことができる。第1圧延部のローラの間隔は、2〜5mm、好ましくは2〜4mm、第二圧延部のローラの間隔は、1〜1.5mm、好ましくは1.2〜1.4mmが好ましい。
【0029】
そば粉の場合は、混捏により強固なグルテンを形成できないため、小麦粉製品のような繋ぎが得られない。手打ちの十割そばで麺が切れない程度の繋ぎが得られるのは、水溶性のグロブリンやアルブミンの弱い架橋などにより、分子間の弱い結合が得られるためと推測されている。そば粉に水などの液状物を加えて得られる混捏原料に押圧を繰り返していくと、分子間結合の生成により混捏原料の粘度が高まり、繋ぎが得られるようになる。しかし一般の回転式攪拌子による混捏装置のように、強い剪断力がかかると、いったん形成された分子間結合が切断される。
【0030】
このため強い剪断力がかからないように、加液物等の混捏原料を容器の内壁と攪拌棒で、分子間結合の生成を促す。このとき混和混捏部材のロータにかかる負荷の増大を検出してロータの回転を制御することにより、強い剪断力がかかることを防止できるため、いったん形成された結合が切断されるのを防止できる。負荷が最大値を示した状態でさらに強い応力を付与すると、分子間結合が切れて粘度が低下し、良好な食感などを有するそば等の混捏物が得られなくなる。そこで負荷が最大値を示した段階で強い押圧を止め、後は調整程度の攪拌にとどめるのが好ましい。これにより風味、食感などが優れた混捏製品を製造することができる。
【0031】
本発明の混捏製品は、上記により製造された混捏物からなる混捏食品等の製品である。また本発明の加工品は上記の混捏製品を含むように加工した製品加工等の加工品である。これは上記のように風味、食感などが優れた製品等の加工品である。
【発明の効果】
【0032】
以上のとおり、本発明によれば、容器に混捏原料を収容し、容器の下部において混和混捏部材のロータを回転させ、ロータの上側周辺部から上向きかつ容器の内周壁方向に伸びる攪拌棒により、混捏原料を容器の内周壁との間で回転させながら上方に移送および分散して混和し、ロータの下側の混和物小塊を掻揚部上側に掻き揚げて、これらと同時にまたは前後して、攪拌棒の内周部で混捏物の外周部にさらなる混和物小塊を付着させて肥厚させるとともに、混捏物塊の外周部に応力を加えることにより混捏して粘弾性が高い混捏物塊を生成するようにしたので、簡単な機構と操作により、そば粉の加液物などの混捏原料を混和する際、原料に液が均一に分散した混捏原料の混和物を簡便に短時間で調製し、風味、食感などが優れる混捏製品を得ることができ、弱い生地の場合でも過度の強い剪断力を加えることなく、オーバーミキシングを防止して、生地の粘弾性が最大の混捏製品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を、混捏食品の製造の場合について、図面により説明する。
図1は実施形態による混捏製品の製造装置を示す構成図、図2は混捏装置を示す垂直断面図、図3は混和混捏部材の斜視図、図4(a)は混捏物分割装置の使用前の斜視図、図4(b)は同分割後の斜視図である。
【0034】
図1ないし図4において、装置本体1には、混捏装置2、混捏物成形装置3、混捏物分割装置4、混捏物圧延装置5、混捏物切断装置6、切断混捏物受7、搬出装置8を備えている。
【0035】
混捏装置2は、原料粉体の加液物からなる混捏原料10を収容するボール状の容器11内に混和混捏部材12が設けられ、動力装置としてのモータ13により伝達機構14を介して回転可能とされている。混和混捏部材12は、容器11の下部で回転可能な円盤状のロータ15、このロータ15の上側周辺部から上向きかつ容器11の内周壁方向に伸びる複数の攪拌棒16、および回転によりロータ15の下側の混和物小塊を上側に掻き揚げる掻揚部17を有する。容器11の側壁部には、内側に突出する複数のバッフル18が形成され、上部には蓋部材19が設けられている。バッフル18は混捏原料10および混和物小塊60の回転方向と交差する方向に延びる構造となっている。
【0036】
混和混捏部材12のロータ15は、容器11の下部で上下方向の回転軸21により回転可能とされており、上側面が凹面状(皿状)に形成され、周辺部に掻揚部17を有する円盤状に形成されているが、スクリュウ状、回転翼状などの形状のものでもよい。この混和混捏部材12は、複数の攪拌棒16がロータ15の上側周辺部の円周方向に間隔を置いて設けられ、先端が内周壁方向に伸びているため、攪拌棒16が回転しても中央部に空間部22を形成するように構成されている。複数の攪拌棒16はそれぞれ長さが異なり、ロータ15の上側周辺部の円周方向に間隔を置いて配置されている。
【0037】
攪拌棒16はそれぞれ容器11の内壁方向に外傾するとともに後退角を有するように傾斜して設けられ、回転方向前面の外周側に傾斜面部23を有する構成となっている。傾斜面部23はロータ15の接線方向に対して傾斜しており、ロータ15の回転により混捏原料10を容器11の内壁方向に押出すように構成されている。混和混捏部材12の掻揚部17はロータ15の周辺部に、回転によりロータ15の下側の混和物小塊を上側に掻き揚げるように複数の切欠部として構成され、ロータ15下側の周辺部に設けられたスクレーパ24と、スクレーパ24の上端部からロータ15の上側に向かって傾斜状に形成された掻揚路25とを有する。
【0038】
蓋部材19は容器11の上部開口部26を覆うように設けられ、上部開口部26からロータ15上の混和物側に載置される落とし蓋状の中蓋27がスライド軸28により上下に移動できるように設けられている。中蓋27は下に凸の半球状の形状を有し、ロータ15の中央部に形成される空間部22にはまり込んで自重で落下し、空間部22を上部中央部から縮小させる構成となっている。
【0039】
動力装置としてのモータ13には、モータ13にかかる電気的負荷を検出する負荷検出手段、および一定の電気的負荷を検出した時点でモータ13の速度を減少または停止させる制御機構を備えた制御装置29が設けられており、混和混捏部材12のロータ15に設けられた攪拌棒16にかかる応力負荷が、ロータ15に接続するモータ13に伝達され、負荷電流の微分値の絶対値が最大になった時点で、モータ13の速度を減少または停止させるように構成されている。
【0040】
混捏物成形装置3は、加圧プレス31および成形盤32を有し、混捏装置2で形成された混捏物20を取り扱いが容易な角型形状の成形物33に成形するようにされている。混捏物分割装置4は図4(a)、(b)に示すように、成形物収容部34およびカッタ35を有する。成形物収容部34は対向面に縦方向の複数の平行なスリット36を有する。カッタ35は軸37を中心に角運動する複数の線カッタ38からなり、成形物収容部34は対向するスリット36に挿入される複数の線カッタ38を有し、成形物33から複数の小片39を切り出すように構成されている。
【0041】
混捏物圧延装置5は、複数段の圧延ローラ対41、42を有し、モータ43により伝達機構44、45を介して回転可能とされ、小片39を圧延ローラ対41、42間で圧延混捏物50に圧延するように構成されている。伝達機構44、45は圧延ローラ対41、42の回転数を変えるように設定されている。圧延ローラ対41、42はそれぞれ圧延ローラ用スクレーパ46が支持部材47により取り付けられている。第1段の圧延ローラ対41の上部には、剥離助剤48を自然落下させる剥離助剤ホッパ49が設けられている。第1段の圧延ローラ対41と第2段の圧延ローラ対42間には、圧延混捏物50を迂回させるためのループ形成ガイド56、57が設けられている。
【0042】
混捏物切断装置6はロールカッタ対51からなり、最終段の圧延ローラ対42から伝達機構52を介して回転可能とされ、圧延混捏物50を縦方向に平行に切断して、多数の切断混捏物55を形成するように構成されている。ロールカッタ対51の各カッタにはそれぞれカスリ53がカスリ支持部材54により取り付けられている。切断混捏物受7は混捏物切断装置6の切断混捏物55の取出部に配置され、搬出装置8で搬出されるようにされている。
【0043】
上記の装置による混捏製品の製造方法は、原料粉体に水等の液を加えた原料粉体の加液物からなる混捏原料10を混捏装置2の容器11に収容し、容器11の下部で混和混捏部材12のロータ15を回転させ、ロータ15の上側周辺部から上向きかつ容器の内周壁方向に伸びる攪拌棒16により、混捏原料10を容器11の内周壁との間で回転させながら上方に移送して混和し、ロータ15の下側の混和物小塊60を掻揚部17で上側に掻き揚げて、これらと同時にまたは前後して、空間部22で混捏物20の外周部にさらなる混和物小塊60を付着させて混捏物20を成長させるとともに、ロータの上側中央部の空間部22で攪拌棒16の内周部で混捏物20の外周部に応力を加えて混捏することにより、粘性の高い混捏物20を形成する。
【0044】
混捏装置2の容器11は、内周壁にバッフル18を形成しているので、バッフル18は混捏原料10の回転の抵抗となり、混捏原料10の混和等が促進される。ロータ15では、回転により、ロータ15下側の周辺部に設けられたスクレーパ24でロータ15の下側の混和物小塊60を上側に掻き揚げ、スクレーパ24の上端部からロータ15の上側に向かって傾斜状に形成された掻揚路25を通してロータ15の上側に移送させて混捏物20に付着させることにより混捏物の肥厚が促進される。
【0045】
混和混捏部材12として、複数の攪拌棒16がロータ15の上側周辺部の円周方向に間隔を置いて設けられているので、中央に空間部22を形成し、周辺部で混捏原料10の分散、回転力の付与、水分の均質化、応力の付加等が可能となり、混和効果が高められる。特に長さの異なる複数の攪拌棒16が、ロータ15の上側周辺部の円周方向に間隔を置いて設けられているので、複数の攪拌棒16の先端部が異なる回転半径と高さに設置され、混和効果はさらに高められる。攪拌棒16は後退角を有するので、混捏原料10の上方への掻き揚げと分散が容易になり、また前面外周側に傾斜面部23を有するので、容器11の内周壁側への押し付けが容易になる。攪拌棒16は先端部が容器11の内周壁に近づくように、異なる長さで上開き斜め後方向きにロータ15の上側周辺部に形成されているので、ロータ15上側の中央部に空間部22を形成するとともに、容器11の内周壁側への押し付け力を変化させることができ、混捏原料10の混和、混和物小塊の形成、混捏物20の肥厚等が効率良く行われる。
【0046】
穀類などの粉末状材料の加液物からなる混捏原料10を攪拌して混和する際、強い回転力を加えると混捏物20が剪断されて粘度が低下するが、上記の装置では混捏原料10を攪拌して混和物小塊60を形成させ、混捏物20を回転させながら混和物小塊60を周囲に付着させることにより、混捏物20の内部に剪断力を伴った過剰な応力を加えることを回避できるとともに、混捏物20の肥大した外周部に加わる応力で内部を弱く混捏して、粘性の高い混捏物20を簡便に短時間で調製し、風味、食感などが優れた混捏製品および加工物を得ることができる。混和混捏部材12のロータ15に固定された複数の攪拌棒16は回転方向の後方外周部が凸面の形状を有するとともに、上開き斜め後方向きにロータ15上部の外周に沿って高さが変るので、先端部が異なる回転半径と高さに設置され、ロータ15の回転により混捏原料10を容器11の内壁と攪拌棒16の外側との間隙で回転させながら上方に移送する応力を加えて混捏原料10の水分とそば粉などの原料を混和して、混和物小塊60に形成することができる。
【0047】
上記の操作は容器11の上部開口部26に蓋部材19がない場合でも行えるが、蓋部材19を用いることにより、混捏物20の凝集が促進される。蓋部材19がない場合、あるいは平板状の蓋部材19である場合には、じゃがいも状に分割された複数の混捏物20が形成されるが、容器11の上部開口部26からロータ15上の混和物小塊60側に載置される下に凸の中蓋27を、落とし蓋として用いることにより、複数の混捏物20が凝集して大きな混捏物塊となり、取り扱いが容易になる。混和混捏部材12のロータ15に固定された複数の攪拌棒16は、ロータ15に上開き斜め後方向きに配置され、ロータ15の掻揚路25を通じてロータ上部の空間部22に移動した混和物小塊60を、ロータ15上部において攪拌棒16の内側と蓋部材19の中蓋27で囲まれた空間部22で回転させて、混捏物20に混和物小塊60を付着させて雪だるま状に肥厚させて成長させ、混捏物20の大きな塊を形成するとともに、混捏物20の外周部に攪拌棒16の内側で応力を加えて混捏することにより、粘弾性の高い混捏物20を形成する。
【0048】
混捏工程の終了は、制御装置29の負荷検出手段により混和混捏部材12のロータ15に接続する動力部にかかる電気的負荷を検出し、制御機構により一定の電気的負荷を検出した時点でモータ13の速度を減少または停止させる。この制御により過剰な混捏による生地の老化を防止して粘性が高い混捏物20を生成できるように制御することができ、これにより混捏物20の粘弾性が最大となるミキシング終点を自動的に判定して、弱い生地のオーバーミキシングを防止できる。この場合、混和混捏部材12のロータ15に設けられた攪拌棒16にかかる応力負荷がロータ15に接続するモータ13に伝達され、負荷電流の微分値の絶対値を制御装置29で検出することにより、簡易な検出、制御を行うことができる。
【0049】
パン生地等の場合には、以上により得られた混捏物20をそのまま加工に供することができるが、そば、パスタ、中華そば、ピザ生地等の薄い層状の混捏食品の場合には、混捏装置2で形成された混捏物20を混捏物成形装置3、混捏物分割装置4、混捏物圧延装置5により処理して圧延することができる。この場合、圧延に先立って混捏物20を、混捏物成形装置3で角型等の取り扱いが容易な形状に成形した後、混捏物分割装置4で厚さ5〜10mm、好ましくは厚さ6〜8mmの小片に切り出し、混捏物圧延装置5で剥離助剤を両面に塗布して圧延部材で圧延する。
【0050】
混捏物成形装置3では、混捏装置2で形成された混捏物20を成形盤32の成形凹部に入れ、上から加圧プレス31を用いて加圧プレスし、取り扱いが容易な角型形状の成形物33に成形する。混捏物分割装置4による成形は、図4(a)、(b)に示すように、成形物収容部34に混捏物成形装置3で成形された成形物33を収容し、カッタ35で小片39に分割する。成形物収容部34は対向面に縦方向の複数の平行なスリット36を有するので、軸37を中心にカッタ35を角運動により倒すと、複数の線カッタ38は成形物収容部34の対向するスリット36に挿入され、線カッタ38により成形物33が切断され、複数の小片39が切り出される。
【0051】
混捏物圧延装置5では、複数段の圧延ローラ対41、42をモータ43により伝達機構44、45を介して回転させ、切り出された小片39を圧延ローラ対41、42間に送り込んで圧延混捏物50に圧延する。第1段の圧延ローラ対41に上部の剥離助剤ホッパ49から各圧延ローラ上に剥離助剤48を落下させ、圧延混捏物50の各圧延ローラへの付着を防止する。伝達機構44、45は、各段の圧延混捏物50の圧延比に応じて圧延ローラ対41、42の回転数を変えるように設定する。圧延部材が多段の圧延ローラ対の場合、バネ材で形成されるテンション調整用のループ形成ガイド56をローラ上部に設置し、二重巻き付き防止用のループ形成ガイド57を他方のローラ側部に配置して最後尾を自然落下させることにより圧延生地が折れて二重に下部ローラに巻き付くことを防止できる。巻き付き防止のために下部の圧延ローラを傾斜させる場合は、圧延部材の配置は、圧延生地が上部圧延ローラの間隙より降下する位置より仰角で1〜60度、好ましくは水平より1〜10度傾けて、下部圧延ローラ半径を超えない範囲に配置するのが好ましい。圧延ローラ対41、42にはそれぞれ圧延ローラ用スクレーパ46が圧延ローラ対41、42に付着する生地滓を掻き取るように設置されており、この圧延ローラ用スクレーパ46を、支持部材47の上部にネジ締めの平ワッシャーなどの押圧部材で押圧を調製して圧延ローラに密着固定し、掻き取った生地滓を圧延ローラ用スクレーパ46の上面に沿って系外に排出する。
【0052】
混捏物切断装置6ではロールカッタ対51を、最終段の圧延ローラ対42から伝達機構52を介して回転し、圧延混捏物50を縦方向に平行に切断して、多数の切断混捏物55を形成する。ロールカッタ対51の各カッタはそれぞれカスリ支持部材54に取り付けられたカスリ53により生地滓を掻き取って排出する。混捏物切断装置6で切断した切断混捏物55は、その取出部に配置された切断混捏物受7に受け、混捏製品として搬出装置8で搬出する。
【0053】
上記の混捏装置2では、強い剪断力がかからないようにして、混捏原料10を容器11の内壁と攪拌棒16で、分子間結合の生成を促すことができる。このとき混和混捏部材12のロータ15にかかる負荷の増大を検出してロータ15の回転を減少または停止させることにより、オーバーミキシングを防止できるため、いったん形成された結合が切断されるのを防止できる。負荷が最大値を示した状態でさらに応力付加を継続すると、分子間結合が切れて粘度が低下し、良好な食感などを有するそば等の混捏物20が得られなくなる。このため負荷が最大値を示した段階で混捏を止め、後は形状の調整程度にとどめることにより風味、食感などが優れた混捏食品等の混捏製品を製造することができる。
【0054】
上記の製造装置および方法では、容器11に混捏原料10を収容し、容器11の下部において混和混捏部材12のロータ15を回転させ、ロータ15の上側周辺部から上向きかつ容器11の内周壁方向に伸びる攪拌棒16により、混捏原料10を容器11の内周壁との間で回転させながら上方に移送および分散して混和し、ロータ15の下側の混和物小塊60を掻揚部17で上側に掻き揚げて、これらと同時にまたは前後して、ロータ15上部において攪拌棒16の内周部で混捏物20に混和物小塊60を付着させて混捏物20の塊を肥厚させるとともに、混捏物20の外周部に応力を加えることにより混捏して粘性の高い混捏物20を形成することにより、簡単な機構と操作により、そば粉などの原料の混捏原料10を混和する際、原料に液が均一に分散した混和物を簡便に短時間で調製し、風味、食感などが優れる混捏製品を得ることができ、弱い生地の場合でも過度の強い剪断力を加えることなく、オーバーミキシングを防止して、生地の粘弾性が最大の混捏製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施形態による混捏製品の製造装置を示す構成図である。
【図2】混捏装置を示す垂直断面図である。
【図3】混和混捏部材の斜視図である。
【図4】(a)は混捏物分割装置の使用前の斜視図、(b)は同分割後の斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 装置本体
2 混捏装置
3 混捏物成形装置
4 混捏物分割装置
5 混捏物圧延装置
6 混捏物切断装置
7 切断混捏物受
8 搬出装置
10 混捏原料
11 容器
12 混和混捏部材
13、43 モータ
14、44、45、52 伝達機構
15 ロータ
16 攪拌棒
17 掻揚部
18 バッフル
19 蓋部材
20 混捏物
21 回転軸
22 空間部
23 傾斜面部
24 スクレーパ
25 掻揚路
26 上部開口部
27 中蓋
28 スライド軸
29 制御装置
31 加圧プレス
32 成形盤
33 成形物
34 成形物収容部
35 カッタ
36 スリット
37 軸
38 線カッタ
39 小片
41、42 圧延ローラ対
46 圧延ローラ用スクレーパ
47 支持部材
48 剥離助剤
49 剥離助剤ホッパ
50 圧延混捏物
51 ロールカッタ対
53 カスリ
54 カスリ支持部材
55 切断混捏物
56、57 ループ形成ガイド
60 混和物小塊

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混捏原料を混和および混捏して混捏製品を製造する装置であって、
混捏原料を収容する容器と、
容器の下部で回転可能なロータ、このロータの上側周辺部から上向きかつ容器の内周壁方向に伸びる攪拌棒、および回転によりロータの下側の混和物小塊を上側に掻き揚げる掻揚部を有する混和混捏部材と
を含む混捏製品の製造装置。
【請求項2】
容器が内周壁に混捏原料および混和物小塊の回転の抵抗となるバッフルを有する請求項1記載の装置。
【請求項3】
混和混捏部材は、長さの異なる複数の攪拌棒が、ロータの上側周辺部の円周方向に間隔を置いて設けられた請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
攪拌棒が後退角を有し、かつ前面外周側に傾斜面部を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
掻揚部が、ロータ下側の周辺部に設けられたスクレーパと、スクレーパの上端部からロータの上側に向かって傾斜状に形成された掻揚路とを有する請求項1ないし4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
容器の上部開口部からロータ上の混捏物側に載置される下に凸の蓋部材を有する請求項1ないし5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
混和混捏部材のロータに接続する動力部にかかる電気的負荷を検出する負荷検出手段と、一定の電気的負荷を検出した時点で動力装置の速度を減少または停止させる制御機構とを有する請求項1ないし6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
混和混捏部材により形成された混捏物塊を圧延する圧延部材を有する請求項1ないし7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
圧延部で圧延された圧延物を線状に切断する切断部を有する請求項1ないし8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
混捏原料を混和および混捏して混捏製品を製造する方法であって、
容器に混捏原料を収容し、
容器の下部において混和混捏部材のロータを回転させ、
ロータの上側周辺部から上向きかつ容器の内周壁方向に伸びる攪拌棒により、混捏原料を容器の内周壁との間で回転させながら上方に移送および分散させて混和し、
混捏原料の混和および凝集により形成された混和物小塊を、ロータの下側から掻揚部上側の空間部に掻き揚げて、
これらと同時にまたは前後して、攪拌棒の内周部で混捏物の外周部にさらに混和物小塊を付着させて混捏物を肥厚させて混捏物塊を形成するとともに、混捏物塊の外周部に応力を加えることにより混捏して粘弾性の高い混捏物塊を形成する
ことを特徴とする混捏製品の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれかに記載の装置を用いて混捏物を形成する請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項10または11記載の方法によって製造された混捏製品。
【請求項13】
請求項12記載の混捏製品を含む加工品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−259819(P2007−259819A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92439(P2006−92439)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(502283800)有限会社つくば食料科学研究所 (5)
【Fターム(参考)】