説明

減圧乾燥装置

【課題】減圧乾燥処理装置のチャンバーにおける配管の引き回し施行の簡略化と、装置の構造の簡素化を図ることにある。
【解決手段】隔壁部1にて大気と隔離して密封状態を保持可能な1乃至複数の基板pを収容する減圧チャンバー室Aと、該チャンバー室A内に装備され収容する前記1乃至複数の基板pを載置する可動式又は固定式の加熱用プレートCと、隔壁部21にて大気と隔離して密封状態を保持可能な加圧チャンバー室Bとを備え、前記減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、互いに近接位置に隣接して開閉する密閉シャッタ部25にて区画され、該密閉シャッタ部の開動作による連通状態と閉動作による互いに独立した密封状態とを保持可能であり、前記密閉シャッタ部25を閉鎖して減圧チャンバー室A内の基板pの減圧乾燥を行い、開放して減圧チャンバー室A内を大気圧に戻すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板等の板状基板面に塗布された揮発性のフォトレジスト等の塗布液を乾燥させるための減圧乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示装置などに用いられるカラーフィルタは、ガラス基板面にブラックマトリクス、着色画素、及び透明導電膜などをパターン状に積層して構成されているものである。
【0003】
このようなブラックマトリクス、着色画素、透明導電膜等を、ガラス基板面にパターン形成する形成方法には、例えば顔料分散法があり、フォトレジスト(感光性樹脂)液中に所定量のカラー着色用の顔料を分散させて構成される着色用のフォトレジスト液を用いて作成する方法であり、その他にも各種の方法がある。
【0004】
ガラス基板面に、ブラックマトリクス、着色画素、及び透明導電膜等をパターン形成してカラーフィルタを作成する場合には、ガラス基板面に、揮発性溶媒を含む感光性樹脂液(紫外線硬化型又は分解型のフォトレジスト)を均一薄膜状に塗布して乾燥させてフォトレジスト膜を形成した後に、フォトリソグラフィ法を用いて、所定のフォトマスク(ブラックマトリクス、着色画素、透明導電膜等のパターン原版)を介して、高圧水銀ランプ光(紫外光線)をパターン露光して、露光されたパターン部分を硬化(溶剤不溶化)し、未露光パターン部分を溶媒にて現像除去(剥離)し、又は露光分解された分解パターン部分をアルカリ系現像液にて現像除去(剥離)することにより、ガラス基板面にブラックマトリクスや着色画素、又は透明導電膜などをパターン形成する。
【0005】
上記のように、ガラス基板等の板状基板(ワーク)面に、揮発性溶剤を含むフォトレジストを均一薄膜状に塗布した後、ガラス基板面のフォトレジストを乾燥させる際には、減圧乾燥方法が実施され、フォトレジストが塗布されたガラス基板を、減圧したチャンバー内に収容して予備乾燥し、そのガラス基板を搬送コンベア(必要に応じて加熱された加熱プレートを配備)上に載置して、揮発性溶剤を揮散させて乾燥させて、ガラス基板面に均一薄膜状のフォトレジスト膜を得るものである。
【0006】
このような板状基板面に塗布した未乾燥の樹脂塗膜を乾燥処理するための減圧乾燥などの乾燥処理や減圧乾燥処理装置に関する従来技術としては、例えば、特開平8−57418号公報や、特開平9−24336号公報などがあるが、一般的に、板状基板面に塗布した未乾燥の樹脂塗膜を乾燥処理するための減圧乾燥処理装置には、図3に示すような、未乾燥の樹脂塗膜を塗布した板状基板を収容する真空状態等の減圧状態の雰囲気が形成される減圧用チャンバー(密封室)が使用される。
【0007】
減圧用チャンバーは、図3に示すように、隔壁部1にて大気と隔離して密封状態を保持可能なチャンバー室Aと、該チャンバー室A内に装備された可動式又は固定式の1乃至複数の基板pを載置して水平搬送する搬送コンベア(搬送路内に基板乾燥用の加熱プレートC又は加熱エア吹き付けノズルが配備されていてもよい)と、該チャンバー室A内のエアaを吸引して該チャンバー室A内を減圧状態(真空状態)にする減圧用コンプレッサ2と、チャンバー室A内の内圧(減圧状態)を計測する真空計測計3と、開閉バルブ4aを備えた排気管4と、基板(ワーク)をチャンバー室1内に搬入し、搬出する搬入口5、搬出口6と、該搬入出口5、6を閉鎖するシャッタ部5a、6aと、チャンバー室1内に圧縮エアbを送入する1乃至複数本の圧縮エア送入管7、8と、チャンバー室1内に送入する前記圧縮エアbを生成供給する圧縮エア供給部9と、該圧縮エアbを前記圧縮エア送入管7、8に供給送入する圧縮エア供給送入管9aと、該供給送入管9aの供給流路に順に備えるレギュレータ10、開閉パルブ11とを備えている。
【0008】
通常、ガラス基板等の板状基板面へのフォトレジストの塗布直後は、フォトレジスト塗膜は乾燥していないために流動性があり、次工程へ板状基板を搬送した場合には、搬送移動中に揺動などにより塗膜の膜厚が変化し易く、膜厚にムラを発生させることがある。また、次工程への基板の搬送中に浮遊しているパーティクルなどが付着し易く、不良品を発生させることがある。
【0009】
このような加熱プレートによる乾燥処理工程においては、ガラス基板等の板状基板面に塗布されているフォトレジスト塗膜の乾燥が不十分な状態から、急峻に加熱処理をした場合には、該基板と、移動手段にて乾燥移動中の加熱プレート上の板状基板を該加熱プレート上にて固定するための固定ピンや、加熱プレート上にて基板を昇降動作させる昇降ピン等のアクチュエータとが接触して、乾燥処理後の現像処理工程にて、その接触跡が、現像処理後の基板面上にパータン塗膜の膜厚変動として発生することがある。
【0010】
このような接触跡が、処理後の基板に残る現象は、基板とアクチュエータとの接触部分と、非接触部分とにより、加熱履歴が相違することが原因となることが多い。
【0011】
このような処理後の基板のパターン塗膜の膜厚変化を防止し、パーティクル(粒子、微小片)などの付着を防止し、また、昇降ピン等の接触跡を防止するために、塗布直後の塗膜に対し、減圧による乾燥処理が行われる。減圧乾燥処理装置は、塗膜中の溶剤を半ば蒸発させる、言わば予備的な乾燥処理装置であり、乾燥用のチャンバー内を密封にした上で気処理を行い、チャンバー内を減圧させて、フォトレジスト塗布直後の基板を、減圧したチャンバー内に搬入することにより、フォトレジスト中の溶剤を揮発乾燥させる装置であり、乾燥処理終了後は、チャンバー内部に強制的に圧縮空気(不活性ガスなど)を送り、チャンバー内を大気圧に戻してチャンバーを開放し、乾燥処理後の基板を次の工程装置に搬送するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−57418号公報
【特許文献2】特開平9−24336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の減圧乾燥処理装置のチャンバーは、フォトレジスト塗膜の塗布された直後の基板をチャンバーに入れ、密閉されたチャンバー内で排気を行い、減圧(又は真空)状態にしたチャンバー内にて、基板面のフォトレジスト中の溶剤成分を揮発させて、塗布されたフォトレジスト塗膜を乾燥させるものであるが、乾燥処理終了後は、チャンバー内を大気中に開放して大気開放処理した後、基板をチャンバー内から次工程に搬送処理するものであるが、通常、大気開放処理は、外部から配管を通じて圧縮空気を送り込むことにより実施されるが、その供給可能な時間当たりの圧縮空気量は、チャンバー室A内に圧縮エアbを送入する圧縮エア送入管7、8や、圧縮エア供給送入管9a等の配管径の太さに比例している。
【0014】
しかしながら、大気開放処理に懸ける時間を減らすために、元圧から配管径を太くすると、減圧乾燥処理装置のチャンバーにおける配管の引き回し等の施行や、装置の構造が複雑になる等の問題があった。
【0015】
本発明の課題は、上記問題点を解消して、減圧乾燥処理装置のチャンバーにおける配管の引き回し施行の簡略化と、装置の構造の簡素化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の請求項1に係る発明は、隔壁部1にて大気と隔離して密封状態を保持可能な1乃至複数の基板pを収容する減圧チャンバー室Aと、該チャンバー室A内に装備され収容する前記1乃至複数の基板pを水平に載置して搬送し移載する搬送用プレートCと、該チャンバー室A内のエアaを吸引して該チャンバー室A内を減圧状態(真空状態)にする減圧用コンプレッサ2と、チャンバー室A内の内圧(減圧状態)を計測する真空計測計3と、開閉バルブ4aを備えた排気管4と、基板(ワーク)を減圧チャンバー室A内に搬入し、搬出する搬入口5、搬出口6と、該搬入出口5、6を閉鎖するシャッタ部5a、6aと、隔壁部21にて大気と隔離して密封状態を保持可能な加圧チャンバー室Bと、該チャンバー室B内に圧縮エアbを送入する圧縮エア送入管22と、該圧縮エア送入管22に取り付けられたレギュレータ22a及び開閉バルブ22bと、圧縮エアbを生成供給する圧縮エアコンプレッサ23と、排気管24及び開閉バルブ24aとを備え、前記減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、互いに近接位置に隣接して開閉する密閉シャッタ部25にて区画され、該密閉シャッタ部の開動作による連通状態と閉動作による互いに独立した密封状態とを保持可能であり、前記密閉シャッタ部25を閉鎖して減圧チャンバー室A内の基板pの減圧乾燥を行い、開放して減圧チャンバー室A内を大気圧に戻すことを特徴とする減圧乾燥装置である。
【0017】
本発明の請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明において、前記減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、その隔壁部1と隔壁部21の面的な接触相当部位にて互いに近接位置に隣接し、その面的な接触相当部位の全面が開口部として互いに連通し、前記密閉シャッタ部25は、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bとを区画するようにその開口部に取り付けられ、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、前記密閉シャッタ部25の開動作による連通状態と、閉動作による互いに独立した密封状態とを保持可能であり、前記密閉シャッタ部25を閉鎖して減圧チャンバー室A内の基板pの減圧乾燥を行い、開放して減圧チャンバー室A内を大気圧に戻すことを特徴とする減圧乾燥装置である。
【0018】
本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1に係る発明において、前記減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、その隔壁部1面と隔壁部21面が、その面的な非接触部位にて近接位置に隣接し、その非接触部位に設けた2以上複数本の連通管を介して互いに連通し、前記密閉シャッタ部25は、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bとを区画するようにその連通管の開閉を行う位置に連通管密閉シャッタ部27a、28a、・・・(開閉バルブ部)として取り付けられ、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、前記連通管密閉シャッタ部の開動作による連通状態と、閉動作による互いに独立した密封状態とを保持可能であり、前記密閉シャッタ部25を閉鎖して減圧チャンバー室A内の基板pの減圧乾燥を行い、開放して減圧チャンバー室A内を大気圧に戻すことを特徴とする減圧乾燥装置である。
【0019】
本発明の請求項4に係る発明は、上記請求項3に係る発明において、2以上複数本の前記連通管の総容積は、前記加圧チャンバー室Bの容積の1/5以下又は1/10以下であることを特徴とする減圧乾燥装置である。
【0020】
本発明の請求項5に係る発明は、上記請求項1乃至4のいずれか1項に係る発明において、前記減圧チャンバーAと加圧チャンバーBのそれぞれ気圧計の示す数値に基づき、それぞれ開閉バルブ4a、密封シャッタ5a、6a、開閉バルブ24a、密閉シャッタ部2
5の開閉動作タイミングを任意なタイミングに設定可能であることを特徴とする減圧乾燥装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の減圧乾燥装置によれば、乾燥対象の基板pを収容する減圧チャンバー室Aと、加圧チャンバー室Bが、極めて接近した位置に隣接して配置され、開閉する密閉シャッタ部25にて、互いに独立して密封可能に区画されているため、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bとを、長い連通管を介さずに、該密閉シャッタ部25の開動作により、互いに連通させることができ、一方、閉動作により、互いに独立した密封状態にすることができる。
【0022】
そのため、減圧チャンバー室A内に搬入口5より基板pを搬入収容して密閉し、前記密閉シャッタ部25を閉鎖し、減圧チャンバー室A内を減圧し、減圧チャンバー室A内の基板pの減圧乾燥を行った後に、減圧チャンバー室A内を大気圧に戻す際には、密閉シャッタ部25の開動作により、長い連通管を介さずに、減圧チャンバー室Aに近接する加圧チャンバー室B内の圧縮された加圧エア(減圧チャンバー室A密閉以前に圧縮された加圧エアでもよい)を、減圧状態の減圧チャンバー室A内に、いち早く取り入れて、減圧チャンバー室A内を迅速に大気圧に戻すことができるものである。
【0023】
また、本発明の減圧乾燥装置によれば、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、その隔壁部1面と隔壁部21面の面的な接触相当部位にて、互いに近接位置に隣接し、その面的な接触相当部位の全面を開口部として互いに連通させ、その開口部に、前記密閉シャッタ部25を減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bとを区画するように取り付けることにより、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bとを、長い連通管を介さずに、該密閉シャッタ部25の開動作により、互いに連通させることができ、閉動作により、互いに独立した密封状態にすることができる。
【0024】
また、本発明の減圧乾燥装置によれば、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、その隔壁部1面と隔壁部21面の面的な非接触相当部位にて、互いに近接位置に非接触状態にて隣接し、その面的な非接触部位に設けた前記加圧チャンバー室Bの容積の、1/5以下、又は1/10以下(あるいは連通管27、28の合計容積以上)の総容積の2以上複数本の連通管27、28、・・・を介して、互いに連通させ、その各連通管の開口部(管内)に、前記密閉シャッタ部25として連通管密閉シャッタ部27a、28a、・・・を減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bとを区画するように取り付けることにより、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bとを、長い連通管を介さずに、該密閉シャッタ部25の開動作により、互いに連通させることができ、閉動作により、互いに独立した密封状態にすることができる。
【0025】
そのため、減圧チャンバー室A内に搬入口5より基板pを搬入収容して密閉し、前記密閉シャッタ部25を閉鎖し、減圧チャンバー室A内を減圧し、減圧チャンバー室A内の基板pの減圧乾燥を行った後に、減圧チャンバー室A内を大気圧に戻す際には、密閉シャッタ部25の開動作により、長い連通管を介さずに、減圧チャンバー室Aに近接する加圧チャンバー室B内の圧縮された加圧エアを、減圧状態の減圧チャンバー室A内に、いち早く取り入れて、減圧チャンバー室A内を迅速に大気圧に戻すことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の減圧乾燥装置の一実施例を説明する全体側面図。
【図2】本発明の減圧乾燥装置の他の実施例を説明する全体側面図。
【図3】従来の減圧乾燥装置を説明する全体側面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の減圧乾燥装置の発明の実施の形態を、図1に基づいて、以下に詳細に説明すれば、本発明の減圧乾燥装置は、隔壁部1にて大気と隔離して密封状態を保持可能な、乾燥対象の1乃至複数の基板p(ワーク)を収容して減圧乾燥を行うための減圧チャンバー室Aを備え、該チャンバー室A内には1乃至複数の基板pを水平に載置して搬送し、前記減圧チャンバー室A内外に移載する搬送用プレートC(加圧チャンバー室Aの隔壁部1内面に支持されたブラケットに水平移動、昇降移動可能に支持されて取り付けられている)とを備えている。
【0028】
該減圧チャンバー室Aには、その隔壁部1の外面から外側に、チャンバー室A内のエアaを吸引して、該チャンバー室A内を減圧状態(真空状態)にする減圧用コンプレッサ2と、チャンバー室A内の内圧(減圧状態)を計測する真空計測計3と、開閉バルブ4aを備えた排気管4と、基板p(ワーク)をチャンバー室1内に搬入し、搬出する搬入口5、搬出口6と、チャンバー室Aの搬入出口5、6を密封閉鎖するシャッタ部5a、6a(上下又は左右方向にスライド摺動するシーリングシャッタ、シャッタータイプ)とを備えている。
【0029】
前記減圧チャンバー室Aには、その隔壁部1の外面に近接する位置に、隔壁部21にて大気と隔離して密封状態を保持可能な加圧チャンバー室Bが、近接位置に隣接して配置されている。
【0030】
前記隔壁部21の外面から外側には、前記加圧チャンバー室B内に、圧縮エアbを送入するための圧縮エア送入管22と、該圧縮エア送入管22に取り付けられたレギュレータ22a及び開閉バルブ22bと、該圧縮エアbを生成供給するための圧縮エアコンプレッサ23と、排気管24及び開閉バルブ24aとを備えていて、前記圧縮エア送入管22の総容積は、本発明では特に限定するものではないが、前記加圧チャンバー室Bの容積の1/5以下、又は1/10以下となっていることが、後述する減圧チャンバー室A内を大気圧に戻す際の戻し速度、効率を適当である。
【0031】
互いに近接位置に隣接する前記減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、開閉動作する密閉シャッタ部25にて区画されていて、該密閉シャッタ部25の開動作により、互いに独立した密封状態にある減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bとを、連通状態に保持することが可能であり、一方、閉動作により、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bとを、互いに独立した密封状態に保持することが可能となっている。
【0032】
本発明の減圧乾燥装置のチャンバー室Aの搬入出口5、6を閉鎖する機構としては、図1に示すように、前述した搬入出口5、6をシャッタ部5a、6aの摺動にて密封閉鎖する機構(シャッタータイプ)の他に、図1に示すチャンバー室Aの上部(屋根部)の隔壁部1及び搬入出口5、6の上部と、シャッタ部5a、6aとを一体化して、該チャンバー室A下部(底部及び密閉シャッタ部25)及び搬入出口5、6の下部に対して分離できるように接続構成し、適宜なるアクチュエータ(空圧、油圧等)により、チャンバー室Aの上部(屋根部)の隔壁部1及び搬入出口5、6の上部及びシャッタ部5a、6aを一体に同時に昇降移動可能にした機構(フードタイプ、図示せず)でもよい。なお、本発明の減圧乾燥装置をフードタイプとした場合は、図1に示すチャンバー室Aの上部の隔壁部1に設置されている減圧用コンプレッサ2、吸引管2a、開閉バルブ2b、真空計測計3、排気管4、開閉バルブ4aは、減圧チャンバー室A下部の隔壁部1(密閉シャッタ部25の設置された底部)に設置してもよい。
【0033】
これにより、一体化した前記上部(屋根部)の隔壁部1及び搬入出口5、6の上部とシャッタ部5a、6aは、アクチュエータにより同時に上昇移動動作させることができて、チャンバー室A下部(底部及び密閉シャッタ部25)及び搬入出口5、6の下部から切り離されて、前記チャンバー室Aの搬入出口5、6は開放する。一方、下降移動動作させることにより、上部(屋根部)の隔壁部1及び搬入出口5、6の上部及びシャッタ部5a、6aは、開放動作前の元の位置に復帰して、チャンバー室A下部(底部及び密閉シャッタ部25)及び搬入出口5、6の下部に接続し、チャンバー室Aの搬入出口5、6を密封閉鎖する。
【0034】
本発明の減圧乾燥装置は、減圧チャンバー室Aの搬入口5より基板pを搬入して、該減圧チャンバー室A内の搬送用プレートC(必要に応じて乾燥加熱用熱源、乾燥加熱用ブロアを付帯)上に載置して収容し、排気管4の開閉バルブ4aと搬入口5のシャッター5aと搬出口6のシャッター6aを閉鎖する。
【0035】
次に、密閉シャッタ部25を閉鎖することにより、減圧チャンバー室Aと、該減圧チャンバー室Aに近接して配置されている加圧チャンバー室Bとを、互いに独立した密封状態に保持した後、まず減圧チャンバー室A内の空気を減圧用コンプレッサ2にて吸引して、減圧チャンバー室A内を減圧状態(真空に近い状態)にする。
【0036】
続いて、減圧状態にある減圧チャンバー室A内の搬送用プレートC上に載置されている基板pの塗膜を、その塗膜に含有する溶剤の揮散速度を、室A内の減圧状態の雰囲気(必要に応じてプレートCの熱源、ブロアを併用)により促進させて乾燥を短縮に行う。
【0037】
基板pの塗膜の乾燥が終了した後は、減圧チャンバー室Aに近接する密閉シャッタ部25にて密封状態に区画されている加圧チャンバー室B内の空気を圧縮エアコンプレッサ23にて圧縮して、加圧チャンバー室B内を加圧状態にする。
【0038】
そして、減圧チャンバー室Aの排気管4の開閉バルブ4a(必要に応じて搬入口5のシャッター5a、搬出口6のシャッター6a)を開放し、及び密閉シャッタ部25を開放して、加圧チャンバー室B内の圧縮された加圧エアbを、減圧状態の減圧チャンバー室A内に取り入れて、減圧チャンバー室A内を大気圧に戻すものである。なお開閉バルブ4a、搬入口5のシャッター5a、搬出口6のシャッター6a、開閉バルブ24a、密閉シャッタ部25の開放は、気圧計3、26が任意に設定した所定の数値を示した時点のタイミングにて開放可能とするものである。
【0039】
本発明の減圧乾燥装置においては、図1に示すように、大気と隔離して密封状態を保持可能な減圧チャンバー室Aが、その隔壁部1の外面相当部を大気と隔離して密封状態を保持可能な加圧チャンバー室Bの隔壁部21の外面相当部に近接するように、密閉シャッタ部25を介して、互いにチャンバー室AとBが連通状態又は独立密封状態を保持するように隣接して配置されているものである。
【0040】
例えば、本発明の減圧乾燥装置においては、具体的には、図1に示すように、前記減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、その隔壁部1の面と隔壁部21の面との面的な接触相当部位にて、互いに近接位置に隣接していて、その面的な接触相当部位の全面が、開口部として互いに連通し、前記密閉シャッタ部25は、その開口部を開閉するように、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bとを区画するように、その開口部に取り付けられていている。
【0041】
そして、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、前記密閉シャッタ部25の開動
作による連通状態と、閉動作による互いに独立した密封状態とを保持可能となっていて、前記密閉シャッタ部25を閉鎖して、チャンバー室A、Bを独立した密封状態にして、減圧チャンバー室A内の基板pの減圧乾燥を行い、前記密閉シャッタ部25を開放してチャンバー室A、Bを連通状態にして、減圧チャンバー室A内を大気圧に戻すものである。
【0042】
また、例えば、本発明の減圧乾燥装置においては、図2に示すように、前記減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、その隔壁部1面と隔壁部21面の面的な非接触部位にて、互いに近接位置に隣接していて、その非接触部位に設けた前記加圧チャンバー室Bの容積の1/5以下、又は1/10以下(あるいは連通管27、28の合計容積以上)の総容積の2以上複数本の連通管27、28、・・・を、チャンバー室A、Bを連通状態とする開口部として、互いに連通させてもよい。
【0043】
そして、前記密閉シャッタ部25として、非接触状態の隣接部位に設けた2以上複数本の前記各々連通管27、28、・・・には、その開口を開閉する連通管密閉シャッタ部27a、28a、・・・(開閉バルブ部)を設け、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bとを区画するようにその連通管に取り付け、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、連通管密閉シャッタ部27a、28a、・・・の開動作による連通状態と、閉動作による互いに独立した密封状態とを保持可能とし、前記密閉シャッタ部27a、28a、・・・を閉鎖して、減圧チャンバー室A内の基板pの減圧乾燥を行い、開放して減圧チャンバー室A内を大気圧に戻すようにするものである。
【0044】
本発明の減圧乾燥装置においては、減圧チャンバーAと加圧チャンバーBのそれぞれに気圧計3、26が設置されていて、また装置に設置されている各々開閉バルブや密閉シャッタ等の動作部位、及び基板搬送用プレートC等は、装置の動作制御手段にて制御されて動作し、電動にて開閉動作、搬送移動動作が可能になっている。各気圧計3、26等の計測計に示される数値は、動作制御手段に制御用データ信号として入力され、その信号に基づき、任意の適正タイミングにて、それぞれ前記開閉バルブ4a、密封シャッタ5a、6a、開閉バルブ24a、密閉シャッタ部25の開閉動作、基板搬送動作を行うように、その開閉動作、搬送動作の任意なタイミングが、予め動作制御手段に設定できるようになっている。
【0045】
ここで、減圧チャンバーAの容積をL1 、加圧チャンバーBの容積をL2 、配管(連通管等)の総容積をL3 、減圧時のAの圧力をP1 (単位:Pa)、Bの圧力をP2 (単位:Pa)とした時、
1<[(1−P1 )L1 +L2 +L3 ]/(L2 +L3 )<P2
とすることが適当であり、全体が1Paになるより、やや多く設定し、排気管にて微調整するものである。
【0046】
本発明の減圧乾燥装置において、その減圧チャンバーA内の気圧を、負圧条件下に設定し、加圧チャンバーB内の気圧を、0.2MPaの場合と、0.3MPaの場合に設定した後、密封シャッタ部25(27a、28a)を開放して、減圧チャンバーA内の気圧が大気圧に戻るまでの所要時間を計測した。その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
本発明の減圧乾燥装置によれば、加圧チャンバーB内の気圧を0.2MPaに加圧した場合には、負圧条件下の減圧チャンバーA内の気圧が、大気圧に戻るまでの平均所要時間が3.43秒であったが、加圧チャンバーB内の気圧を0.3MPaに上げて加圧した場合には、負圧条件下の減圧チャンバーA内の気圧が大気圧に戻るまでの平均所要時間を、2.70秒に減少させることができ、平均で21%の時間短縮できることが判明した。
【符号の説明】
【0049】
A…減圧チャンバー
B…加圧チャンバー
C…基板搬送用プレート
p…乾燥対象の基板
a…吸引エア
b…圧縮エア
1…隔壁部
2…減圧エア用コンプレッサ
2a…吸引管
2b…開閉バルブ
3…気圧計
4…排気管
4a…開閉バルブ
5…搬入口
5a…密封シャッタ
6…搬出口
6a…密封シャッタ
7、8…圧縮エア送入管
9…圧縮エア供給部
10…レギュレータ
11…開閉パルブ
21…隔壁部
22…圧縮エア送入管
23…圧縮エアコンプレッサ
24…排気管
25…密閉シャッタ部
26…気圧計
27、28…連通管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁部1にて大気と隔離して密封状態を保持可能な1乃至複数の基板pを収容する減圧チャンバー室Aと、該チャンバー室A内に装備され収容する前記1乃至複数の基板pを水平に載置して搬送し移載する搬送用プレートCと、該チャンバー室A内のエアaを吸引して該チャンバー室A内を減圧状態(真空状態)にする減圧用コンプレッサ2と、チャンバー室A内の内圧(減圧状態)を計測する真空計測計3と、開閉バルブ4aを備えた排気管4と、基板(ワーク)を減圧チャンバー室A内に搬入し、搬出する搬入口5、搬出口6と、該搬入出口5、6を閉鎖するシャッタ部5a、6aと、隔壁部21にて大気と隔離して密封状態を保持可能な加圧チャンバー室Bと、該チャンバー室B内に圧縮エアbを送入する圧縮エア送入管22と、該圧縮エア送入管22に取り付けられたレギュレータ22a及び開閉バルブ22bと、圧縮エアbを生成供給する圧縮エアコンプレッサ23と、排気管24及び開閉バルブ24aとを備え、前記減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、互いに近接位置に隣接して開閉する密閉シャッタ部25にて区画され、該密閉シャッタ部の開動作による連通状態と閉動作による互いに独立した密封状態とを保持可能であり、前記密閉シャッタ部25を閉鎖して減圧チャンバー室A内の基板pの減圧乾燥を行い、開放して減圧チャンバー室A内を大気圧に戻すことを特徴とする減圧乾燥装置。
【請求項2】
前記減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、その隔壁部1と隔壁部21の面的な接触相当部位にて互いに近接位置に隣接し、その面的な接触相当部位の全面が開口部として互いに連通し、前記密閉シャッタ部25は、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bとを区画するようにその開口部に取り付けられ、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、前記密閉シャッタ部25の開動作による連通状態と、閉動作による互いに独立した密封状態とを保持可能であり、前記密閉シャッタ部25を閉鎖して減圧チャンバー室A内の基板pの減圧乾燥を行い、開放して減圧チャンバー室A内を大気圧に戻すことを特徴とする請求項1記載の減圧乾燥装置。
【請求項3】
前記減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、その隔壁部1面と隔壁部21面が、その面的な非接触部位にて近接位置に隣接し、その非接触部位に設けた2以上複数本の連通管を介して互いに連通し、前記密閉シャッタ部25は、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bとを区画するようにその連通管の開閉を行う位置に連通管密閉シャッタ部27a、28a、・・・(開閉バルブ部)として取り付けられ、減圧チャンバー室Aと加圧チャンバー室Bは、前記連通管密閉シャッタ部の開動作による連通状態と、閉動作による互いに独立した密封状態とを保持可能であり、前記密閉シャッタ部25を閉鎖して減圧チャンバー室A内の基板pの減圧乾燥を行い、開放して減圧チャンバー室A内を大気圧に戻すことを特徴とする請求項1記載の減圧乾燥装置。
【請求項4】
2以上複数本の前記連通管の総容積は、前記加圧チャンバー室Bの容積の1/5以下又は1/10以下又は連通管容積より大であることを特徴とする請求項3記載の減圧乾燥装置。
【請求項5】
前記減圧チャンバーAと加圧チャンバーBのそれぞれ気圧計の示す数値に基づき、それぞれ開閉バルブ4a、密封シャッタ5a、6a、開閉バルブ24a、密閉シャッタ部25の開閉動作タイミングを任意なタイミングに設定可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の減圧乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−137239(P2012−137239A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289665(P2010−289665)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】