説明

減速ユニット、及び、この減速ユニットを用いた電子機器

【課題】 入力軸の回転速度に対して出力軸の回転速度を減少させる減速ユニットであって、人工ルビー等の適宜の軸受を配置するスペースを省いて超小型に構成できる減速ユニットを提供する。
【解決手段】 出力軸12の回転速度を入力軸11の回転速度に対して減少させる減速ユニット1であって、互いに歯合する複数のギヤ51と、前記複数のギヤ51を支持する複数のシャフト61と、前記複数のシャフト61を回転可能に直接支持する複数のプレート21とを備え、少なくとも1つの前記プレート21が、油を含侵させた粉末冶金材、黒鉛等の固形潤滑材を混入させた粉末冶金材、若しくは摺動性を有する繊維を混入させた粉末冶金材等の摺動性を有する材料からなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸の回転速度に対して出力軸の回転速度を減少させる減速ユニットに関し、特に超小型に構成された減速ユニット、及び、この減速ユニットを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入力軸の回転速度に対して、出力軸の回転速度を減少させる減速ユニットが提供されている。この種の減速ユニットにあっては、径方向に歯車を複数設けて、これらを噛み合わせることによって、入力軸の回転速度に対して出力軸の回転速度を減少させるように構成されている(特許文献1参照)。この種の減速ユニットにあっては、その複数の歯車を支える軸が嵌挿される臍穴に、その軸の軸受としてドーナツ状に形成された人工ルビーが設けられている。
【特許文献1】特開平9−138286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、この種の減速ユニットにあっては、内視鏡やデジタルカメラ等に組み込むものがあり、これらに組み込むにあたっては、この減速ユニット全体をさらに小型に構成したいといった要請がある。そこで、上述したような減速ユニットの構成を用いて、この要請に応えようとしても、ギヤ、シャフト、人工ルビー等の軸受等の配置に限界があり、この要請に応えることは困難なものとなっていた。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、その目的は、入力軸の回転速度に対して出力軸の回転速度を減少させる減速ユニットであって、人工ルビー等の適宜の軸受を配置するスペースを省いて超小型に構成できる減速ユニット、及び、この減速ユニットを用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するための手段として以下の減速ユニット、及び、この減速ユニットを用いた電子機器を提供する。
本発明の減速ユニットは、出力軸の回転速度を入力軸の回転速度に対して減少させる減速ユニットであって、互いに歯合する複数のギヤと、前記複数のギヤを支持する複数のシャフトと、前記複数のシャフトを回転可能に直接支持する複数の支持板とを備え、少なくとも1つの前記支持板が、摺動性を有する材料からなっていることを特徴とする。
【0006】
本発明の減速ユニットにあっては、ギヤを支持する複数のシャフトを、回転可能に直接支持する支持板が複数設けられており、この支持板は摺動性を有する材料からなっている。これによって、そのシャフトを支持する支持板にあっても、摺動性を有することとなって、このシャフトを滑らかに回転させることとなる。これによって、シャフトを滑らかに回転可能に支持するにあたっては、従来、人工ルビー等の軸受を配置していたが、シャフトを支持する支持板自体がシャフトを滑らかに回転可能に支持するので、このような軸受が不要とされる。従って、減速ユニットを構成するにあたって、部品点数を削減することができることとなって、この減速ユニット自体を超小型にすることができる。
【0007】
本発明の減速ユニットは、前記摺動性を有する材料として、油を含侵させた粉末冶金材、黒鉛等の固形潤滑材を混入させた粉末冶金材、若しくは摺動性を有する繊維を混入させた粉末冶金材のうち何れかを選択したことを特徴とする。
【0008】
本発明の減速ユニットにあっては、前記支持板を形成する材料として、油を含侵させた粉末冶金材、黒鉛等の固形潤滑材を混入させた粉末冶金材、若しくは摺動性を有する繊維を混入させた粉末冶金材のうち何れかを選択しているので、これらの粉末冶金材を焼結等させて形成された支持板にあっても、その含侵させた油、混入させた固形潤滑材、混入させた摺動性を有する繊維によって、その支持板には摺動性が付与されることとなる。
【0009】
従って、上述したように、シャフトが回転した場合に、シャフトを滑らかに回転させ、滑らかに回転可能に支持していた人工ルビー等の軸受を不要なものとする。これによって、減速ユニットを構成する部品点数を削減することができ、減速ユニット自体を超小型にすることができる。
【0010】
本発明の減速ユニットは、前記摺動性を有する材料として、ポリイミド等の高分子樹脂を選択したことを特徴とする。
【0011】
本発明の減速ユニットにあっては、前記支持板を形成する材料として、ポリイミド等の高分子樹脂を選択しているので、このような高分子樹脂からなる樹脂基板によって支持板を構成した場合には、その高分子樹脂が有する摺動性によって、その支持板は摺動性を有することとなる。従って、上述したように、シャフトが回転した場合に、シャフトを滑らかに回転させ、滑らかに回転可能に支持していた人工ルビー等の軸受を不要なものとする。これによって、減速ユニットを構成する部品点数を削減することができ、減速ユニット自体を超小型にすることができる。
【0012】
本発明の減速ユニットは、前記複数の支持板同士の間にスペーサを介装させ、前記支持板を貫通させるように棒部材を設けて、前記支持板と前記スペーサとを一体に連結したことを特徴とする。
【0013】
本発明の減速ユニットにあっては、複数の支持板同士間に介装させたスペーサによって、複数の支持板を所望の位置に配置することができ、さらに、この配置された支持板とスペーサとを、支持板を貫通させるように設けられた棒部材によって連結して一体にさせることができる。従って、この減速ユニットは、ユニットして好適に組み付けられたものとなって、モータ等の入力軸及び電子機器等の出力軸に好適に繋ぐことができるものとなる。
【0014】
本発明の電子機器は、動力源と該動力源が発生する動力に従って回転する被回転部材とを備えた電子機器であって、前記動力源と前記被回転部材との間に、上述の減速ユニットを装置したことを特徴とする。
本発明の電子機器にあっては、動力源と被回転部材との間に上述の減速ユニットを装置したので、好ましく減少された回転速度で被回転部材を回転させることができる。さらに、装置される減速ユニットが超小型に構成可能とされるので、電子機器全体においても超小型に構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る減速ユニットによれば、入力軸の回転速度に対して出力軸の回転速度を減少させる減速ユニットでありながら、人工ルビー等の適宜の軸受を配置するスペースが省かれて超小型に構成できる。また、本発明に係る電子機器によれば、好ましく減速可能で且つ超小型に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る減速ユニットについての実施の形態について、図を参照しながら説明する。なお、図1は本発明に係る減速ユニットの断面図、図2は図3に示すA―Aで切った減速ユニットの断面図、図3は図1に示すB―Bで切った減速ユニットの断面図及びC−Cで切った断面図、図4は図1に示すD―Dで切った減速ユニットの断面図及びE−Eで切った断面図、図5はギヤとプレートの組み込みを示す断面図、図6はギヤの正面図である。
【0017】
図1に示す符号1は、本発明に係る減速ユニットである。この減速ユニット1は、この減速ユニット1の基端側に設けられる入力軸11に、モータMの回転軸M1が接続されるものである。なお、この減速ユニット1の先端側には、電子機器等の入力部(不図示)と接続可能な出力軸12が設けられている。この減速ユニット1は、この基端から突出する入力軸11の回転速度に対して、先端から突出する出力軸12の回転速度を減少させるように構成されるものである。
【0018】
この減速ユニット1は、図1に示すように、モータMの先端部に取り付けられるものであって、大まかに分けて、減速ユニット本体2と、モータMの先端部に取り付けるモータ固定座13とから構成されている。このモータ固定座13は、モータMの先端部に固定して取り付けられるものであって、具体的には、前記モータMの先端部の外周面M2に切られているネジ部と、前記モータ固定座13の内周面14に切られているネジ部とが互いに螺合し、モータMとモータ固定座13とは相対的に回転しないように互いに固着されたものとなっている。なお、このモータMの先端からは、回転軸M1が突出しており、この回転軸M1の先端には、減速ユニット本体2の入力軸11と一体に固着されたモータピニオンM3が設けられている。
【0019】
モータMの先端と対向する減速ユニット本体2の基端に設けられる入力軸11は、上述したようにモータピニオンM3と歯合している。具体的には、入力軸11は、減速ユニット2本体の内部から基端外方へ突出するように延びて構成され、減速ユニット本体2の内部側は外周面に歯が切られた入力ギヤ50が形成され、減速ユニット本体2の外部側は円筒状に形成されると共に、その円筒状の内周面は前記モータピニオンM3と歯合可能に歯が切られている。これによって、減速ユニット本体2外部側の入力軸11は、前記モータピニオンM3と好適に歯合して、この減速ユニット本体2に回転動力を入力するものとなっている。なお、上述したように、前記モータMの先端部に取り付けられるモータ固定座13は、減速ユニット本体2のフレーム30に嵌挿されて固定されているので、前記モータピニオンM3と歯合する入力軸11は、この減速ユニット本体2の基端に設けられる第1プレート21の開口部21aの中心軸線上に、好適に位置決めされることとなっている。なお、この開口部21aが形成されており、以下に説明するギヤ51等は、例えば図6に示すように、周囲に歯が切られたものとなっている。
【0020】
この第1プレート21は、本発明における支持板に相当するものであって、摺動性を有する材料からなっている。具体的には、油を含侵させた粉末冶金材を、予め用意されていた型で焼結してなるものとされる。従って、この第1プレート21は、その材料とされた粉末冶金材に含侵される油によって摩擦力が低減するものとなって、滑らかに好ましく滑らせる性質とされた摺動性が付与されて形成されたものとなっている。このような摩擦力を低減させる摺動性を有する材料にあっては、このような油を含侵させた粉末冶金材のほか、黒鉛等の固形潤滑材を混入された粉末冶金材を選択したり、カーボンナノチューブ等の摺動性を有する繊維を混入させた粉末冶金材を選択したりすることが可能となっている。つまり、この第1プレート21の材料としては、焼結後に摩擦力を低減させる摺動性を有するものとなる適宜の材料を、基材とされる粉末冶金材に混入させて材料とすることが可能となっている。このように材料を選択して第1プレート21を形成することによって、その含侵若しくは混入させた材料に備えられる摩擦力を低減させる特有の性質が、この第1プレート21にも与えられることとなる。つまり、本発明における摺動性を有する材料としては、このような摩擦力を低減させる特有の性質を備えた材料であることを意味する。
【0021】
なお、この摩擦力を低減させる摺動性を有する材料としては、上述の摩擦力を低減させる特有の性質を備えた材料のほか、ポリイミド等の高分子樹脂を選択することが可能である。このようなポリイミド等の高分子樹脂にあっても、摩擦力を低減させる特有の性質を備えている。従って、このようなポリイミド等の高分子樹脂によって前記第1プレート21を構成した場合にあっても、この第1プレート21は、摩擦力を低減させる摺動性を有することとなる。
【0022】
次に、この減速ユニット本体2の構成ついて説明する。この減速ユニット本体2は、図1及び図2に示すように、大まかに、ケーシングとして円筒状に構成されたフレーム30と、このフレーム30に内蔵される、互いに歯合するギヤ51等と、それらのギヤ51等を支持するシャフト61等と、それらのシャフト61等を支持するプレート21,22,23,24及びスペーサ31,32,33とを備えて構成される。なお、このフレーム30あっては、図3及び図4に示すように、断面が円状とされるように構成され、内蔵されるこれら各種の部材の組み付けがはずれないように、内蔵されるこれらの各種の部材の外周面をフレーム30の内周面に当接させて支持している。さらに加えて、前記出力軸12の軸線方向に平行に延びる組付け用の雄ネジ81,82及び雌ネジ83,84によって、これらの内蔵される各種の部材を安定的に組み付けている。
【0023】
次に、このフレーム30に内蔵される各種の部材について説明する。すなわち、この減速ユニット1は、図1及び図2に示すように、基端側に設けられた前記第1プレート21に第1スペーサ31を介して第2プレート22が配置され、この第2プレート22に第2スペーサ32を介して第3プレート23が配置されている。そして、その第3プレート23に第3スペーサ33を介して第4プレート24が配置されている。このようにして、前記第1プレート21と前記第2プレート22と前記第3プレート23と前記第4プレート24とは、第1スペーサ31と第2スペーサ32と第3スペーサ33とによって互いに平行に配置され、前記第1プレート21と第2プレート22との間に第1ギヤ室41が形成され、前記第2プレート22と第3プレート23との間に第2ギヤ室42が形成され、前記第3プレート23と第4プレート24との間に第3ギヤ室43が形成されることとなっている。
【0024】
これらの第2〜第4プレート22,23,24は、上において説明した第1プレート21と同様に、本発明における支持板に相当するものである。すなわち、これらの第2〜第4プレート22,23,24は、摩擦力が低減された摺動性を有する材料からなっている。従って、上でも説明したように、その材料として、例えば、油を含侵させた粉末冶金材のほか、黒鉛等の固形潤滑材を混入させた粉末冶金材を選択したり、カーボンナノチューブ等の摺動性を有する繊維を混入させた粉末冶金材を選択したりすることができ、これらの粉末冶金材を焼結して、これらの第2〜第4のプレート22,23,24が構成されるものとなっている。なお、この摺動性を有する材料としては、このような粉末冶金材のほか、ポリイミド等の高分子樹脂を選択することも可能とされる。
【0025】
次に、上述した第1〜第4プレート21,22,23,24によって挟まれて形成されるギヤ室41,42,43に収容されるギヤ、そして、これらのギヤ51等を支持するシャフト61等について説明する。すなわち、図1の断面図に示すように、第1ギヤ室41には、図3(a)にも示すように、前記入力ギヤ50と歯合される第1ギヤ51が第1シャフト61に支持されながら固着されている。第1シャフト61は、前記第プレート21と第2プレート22とによって挟み込まれ、第1シャフト61は、回転可能に、その一端が前記第1プレート21に設けられた孔21bに嵌挿されて支持されると共に、その他端が前記第2プレート22に設けられた孔22aに支持されて、安定的に回転可能となっている。前記第1ギヤ51の歯数は、前記入力ギヤ50に比して大に設定される。この第1シャフト61には、前記第1ギヤ51に隣接して、この第1ギヤ51の歯数に比して小に設定された第2ギヤ52が、この第1シャフト61に支持されながら固着されて設けられている。従って、前記入力ギヤ51が回転されることによって、第1ギヤ51、第1シャフト61及び第2ギヤ52も連動して回転するものとなっている。
【0026】
さらに、この第1ギヤ室41には、図3(b)にも示すように、前記第2ギヤ52と歯合される第3ギヤ53が、第2シャフト62に支持されながら固着されて設けられている。この第3ギヤ53の歯数は、前記第2ギヤ52の歯数に比して大に設定されている。この第2シャフト62は、以下に詳述するが、その中段で前記第2プレート22に設けられた孔22bに、回転可能に第1ブッシュ71を介して挿入されて支持されている。つまり、この第2シャフト62は、第1ギヤ室41及び第2ギヤ室42の双方に突出して設けられるものであり、第2ギヤ室42側に設けられる第4ギヤ54も、この第2シャフト62に支持されながら固着されて設けられている。この第4ギヤ54と第3ギヤ53によって、前記第2プレート22を挟み込むことによって、前記第2シャフト62は、この第2プレート22に好適に支持されて安定的に回転可能となっている。なお、この第4ギヤ54の歯数は、前記第3ギヤ53の歯数に比して小に設定されている。
【0027】
ここで、第2プレート22に設けられた孔22bに挿入され支持される第2シャフト62について詳細に説明する。すなわち、前記第2シャフト62は、図5(a)の分解図に示すように、一端に第4ギヤ54が取り付けられると共に、その中段にブシュ71を挿入させ、そして、他端に第3ギヤ53が取り付けられてなるものである。この第2プレート22は前記第3ギヤ53側に凹部22c及び凸部22dが形成されており、また、第3ギヤ53は第2プレート22側に凹部53a及び凸部53bが形成されている。このように構成されることによって、図5(b)の嵌合図に示すように、凹部22cが凸部53bに嵌め込まれ、凸部22dが凹部53aに嵌め込まれ、この第2プレート22と第3ギヤ53とは、好適に嵌合する。従って、両者の幅方向が、第2プレート22に形成された凹部22c及び凸部22d、また第3ギヤ53に形成された凹部53a及び凸部53bの分だけ縮小され、減速ユニット本体2全体がコンパクトにされるのに繋がる。なお、第1ブシュ71は、この第2プレート22に前記第4ギヤ54が接触することを防止している。また、符号Tは、この第2プレート22を組み付ける際に、フレーム30内に第2プレート22を入れやすいように形成されたテーパ部である。以上の構成は、後に説明する第3プレート23に設けられた孔23aに挿入され支持される第3シャフト63についても同様に採用されている。
【0028】
さらに、この第2ギヤ室42には、図4(a)にも示すように、前記第4ギヤ54と歯合される第5ギヤ55が、第3シャフト63に支持されながら固着されて設けられている。この第5ギヤ55の歯数は、前記第4ギヤ54の歯数に比して大に設定されている。この第3シャフト63は、その中段で、前記第3プレート23に設けられた孔23aに、回転可能に第2ブッシュ72を介して挿入されて支持されている。つまり、この第3シャフト63は、第2ギヤ室42及び第3ギヤ室43の双方に突出して設けられるものであり、第3ギヤ室43側に設けられる第6ギヤ56も、この第3シャフト63に支持されながら固着されて設けられている。この第6ギヤ56と第5ギヤ55によって、前記第3プレート23を挟み込むことによって、前記第3シャフト63は、この第3プレート23に好適に支持されて安定的に回転可能となっている。なお、この第6ギヤ56の歯数は、前記第5ギヤ55の歯数に比して小に設定されている。
【0029】
そして、前記第3ギヤ室43には、図4(b)にも示すように、前記第6ギヤ56と歯合される第7ギヤ57が、上述した出力軸12の内部に圧入される伝達軸25に支持されながら固着して設けられている。この伝達軸25は、前記出力軸12が図示しない適宜の部材によって減速ユニット本体2の中心軸線上に位置決めされているので、この出力軸12の内部に圧入される伝達軸25も、減速ユニット本体2の中心軸線上に位置決めされるものとなっている。
【0030】
このようにして、この減速ユニット本体2にあっては、フレーム30内において、前記第1シャフト61、前記第2シャフト62、前記第3シャフト63が千鳥状(図1中において上下に配置されることによって、各ギヤ室41,42,43に配置されるギヤにあっても千鳥状(図1中において上下)に配置されることとなる。これによって、これらのシャフト及びギヤを組み付けた際には、全体としてコンパクトとなる。
【0031】
次に、このように構成された各種の部材は、次のようにして組み付ける。
すなわち、図1及び図2に示すように、まず、前記第4プレート24に当接するように、第3スペーサ33を配置する。そして、前記第3シャフト63が挿通され且つその第3シャフト63の両端に前記第6ギヤ56及び第5ギヤ55が取り付けられた第3プレート23を、その第3スペーサ33に当接するように配置する。次いで、この第3プレート23に当接するように第2スペーサ32を、その第3スペーサ33(図4(a)参照)に当接するように配置する。そして、前記第2シャフト62が挿通され且つその第2シャフト62の両端に前記第4ギヤ54及び第3ギヤ53が取り付けられた第2プレート22を、その第2スペーサ32に当接するように配置する。
【0032】
さらに、この第2プレート22に当接するように第1スペーサ31を配置する。そして、第2ギヤ52及び第1ギヤ51が取り付けられた第1シャフトの一端を、前記第2プレート22に設けられた孔22aに挿入する。次いで、第1プレート21に設けられた孔21aに前記第1シャフト61の他端を挿入しながら、前記第1プレート21を配置する。なお、上述した組み付けにおいては、各種のギヤが好適に歯合されるように、各々のギヤ同士の歯合を確認しながら行う。
【0033】
このように、各種シャフト及び各種ギヤを内蔵させながら、第1〜第4プレート21,22,23,24と第1〜第3スペーサ31,32,33とを組み付けた後に、図2に示すように、この減速ユニット本体2の軸線方向と平行とされるように配置された雌ネジ83,84が、前記第2ギヤ52の中心軸と第3ギヤ53の中心軸とを結んだ線と直交する位置に配置され、前記第1〜第4プレート21,22,23,24を貫通させるように設けられる。なお、前記雌ネジ83,84は、上述した各種のギヤにぶつかることがないように、減速ユニット本体2の軸線方向と平行とされるように配置される。
【0034】
また、この雌ネジ83,84のうち、減速ユニット1の基端側には、フランジ部85,86が設けられている。雄ネジ81,82と雌ネジ83,84とが互いに螺着することによって、このフランジ部85,86は、各種のギヤを互いに歯合させながら、前記第1〜第4プレート21,22,23,24及び前記第1〜第3スペーサ31,32,33を、好適にかしめる。なお、この雄ネジ81,82及び雌ネジ83,84は、本発明における棒部材に相当する。次いで、このように組み付けられたものを、前記フレーム30内に、前記第4プレート24がフレーム30内の段部39に当接するまで入れ込む。そして、このフレーム30内に、前記伝達軸25が嵌挿された出力軸12を配置して、この減速ユニット本体2を構成する。
【0035】
さらに、この組み付けた減速ユニット本体2に、前記モータ固定座13を嵌挿させて、ネジ部材87によって、この減速ユニット本体2とモータ固定座13とを固着させる。このようにして減速ユニット1が構成されることとなる。なお、減速ユニット1にモータMを取り付けるに際しては、入力軸11を予めモータピニオンM3に歯合させておき、そのモータMを、前記第1ギヤ51に入力軸11が歯合されていくように、モータMを減速ユニット1に取り付ける。
【0036】
上述したように構成された減速ユニット1にあっては、次のような作用を奏する。
すなわち、減速ユニット1にあっては、ギヤ51,52,53,54,55,56を支持する複数のシャフト61,62,63を、回転可能に直接支持するプレート(支持板)21,22,23が複数設けられており、このプレート21,22,23は摺動性を有する材料からなっている。これによって、そのシャフト61,62,63を支持するプレート21,22,23にあっても、摺動性を有することとなって、このシャフト61,62,63を滑らかに回転させることとなる。これによって、シャフト61,62,63を滑らかに回転可能に支持するにあたっては、従来、人工ルビー等の軸受を配置していたが、シャフト61,62,63を支持するプレート21,22,23自体がシャフト61,62,63を滑らかに回転可能に支持するので、このような軸受が不要とされる。従って、入力軸11の回転速度に対して出力軸12の回転速度を減少させる減速ユニット1を構成するにあたって、部品点数を削減することができることとなって、この減速ユニット1自体を超小型にすることができる。
【0037】
また、減速ユニット1にあっては、前記プレート21,22,23を形成する材料として、油を含侵させた粉末冶金材、黒鉛等の固形潤滑材を混入させた粉末冶金材、若しくは摺動性を有する繊維を混入させた粉末冶金材のうち何れかを選択しているので、これらの粉末冶金材を焼結等させて形成されたプレート21,22,23にあっても、その含侵させた油、混入させた固形潤滑材、混入させた摺動性を有する繊維によって、その支持板には摺動性が付与されることとなる。従って、上述したように、シャフト61,62,63が回転した場合に、このシャフト61,62,63を滑らかに回転させ、滑らかに回転可能に支持していた人工ルビー等の軸受を不要なものとする。これによって、減速ユニット1を構成する部品点数を削減することができ、減速ユニット1自体を超小型にすることができる。
【0038】
また、減速ユニット1にあっては、前記プレート21,22,23を形成する材料として、ポリイミド等の高分子樹脂を選択した場合にあっても、同様に、その高分子樹脂が有する摺動性によって、その支持板は摺動性を有することとなる。従って、上述したように、シャフト61,62,63が回転した場合に、このシャフト61,62,63を滑らかに回転させ、滑らかに回転可能に支持していた人工ルビー等の軸受を不要なものとする。これによって、減速ユニット1を構成する部品点数を削減することができ、減速ユニット1自体を超小型にすることができる。
【0039】
また、減速ユニット1にあっては、複数のプレート21,22,23同士間に介装させたスペーサ31,32,33によって、複数のプレート21,22,23を所望の位置に配置することができ、さらに、この配置されたプレート21,22,23とスペーサ31,32,33とを、プレート21,22,23を貫通させるように設けられた雄ネジ81,82及び雌ネジ83,84によって連結して一体にさせることができる。従って、この減速ユニット1は、ユニットして好適に組み付けられたものとなって、入力軸11及び出力軸12に好適に繋ぐことができるものとなる。
【0040】
なお、上述の減速ユニット1にあっては、複数のプレート21,22,23同士の間に、スペーサ31,32,33を介装させてなるものとしたが、これに限定されず、この複数プレート21,22,23に予めスペーサ31,32,33が一体となっているように、これらの複数のプレート21,22,23が形成されているものであってもよい。具体的には、これらのプレート21,22,23のそれぞれにスペーサ31,32,33のそれぞれが一体となるように、油を含侵させた粉末冶金材を焼結させる型が構成されるものであってもよい。このように、プレート21,22,23のそれぞれにスペーサ31,32,33のそれぞれが一体となるように、プレート21,22,23が形成された場合には、スペーサ31,32,33の分だけ、部品点数を減らすことができて、作業の煩雑さを解消すると共に、製造コストを抑えることができる点で有利なものとされる。
【0041】
また、上述の複数のプレート21,22,23に設けられる各種の孔にあっては、これらのプレート21,22,23が形成される際には、同時に形成されるものとなっていた。具体的には、これらのプレート21,22,23に各種の孔が同時に形成されるように、油を含侵させた粉末冶金材を焼結させる型が構成されていた。しかしながら、これらの各種の孔は、これらのプレートが形成される段階に同時に形成されることに限定されない。例えば、プレート21,22,23を形成する際には同時に各種の孔を形成せず、プレート21,22,23を焼結して形成した後に、切削加工等によって各種の孔が形成されるものであってもよい。このように、切削加工等によって各種の孔が形成された場合には、設計変更等により、これらの孔の位置を適宜に変更したい場合に容易に行えて有利なものとされる。
【0042】
この減速ユニット1にあっては、図1及び図2に示して説明したように、動力源とされるモータMが、前記モータ固定座13に取り付けられている。ここで、出力軸12に、例えば、撮像可能なカメラ(被回転部材)を取り付けた場合、全体として、内視鏡カメラ(電子機器)を構成することとなる。このように内視鏡カメラを構成した場合には、好ましく減少された回転速度でカメラを回転させることができる。さらに、装置される減速ユニット1が超小型に構成可能とされるので、この内視鏡カメラ全体においても超小型に構成することができる。
【0043】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施の形態にあっては、ギヤ室が3つで構成されるように、プレート及びシャフト等を適宜に設けて構成したが、これに限定されることなく、ギヤ室を適宜の数で構成されるようにプレート及びシャフト等を適宜に設けて構成するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る減速ユニットの断面図である。
【図2】図3に示すA―Aで切った減速ユニットの断面図である。
【図3】図1に示すB―Bで切った減速ユニットの断面図及びC−Cで切った断面図である。
【図4】図1に示すD―Dで切った減速ユニットの断面図及びE−Eで切った断面図である。
【図5】ギヤとプレートの組み込みを示す断面図である。
【図6】ギヤの正面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 減速ユニット
2 減速ユニット本体
11 入力軸
12 出力軸
21 プレート
51 ギヤ
61 シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸の回転速度を入力軸の回転速度に対して減少させる減速ユニットであって、
互いに歯合する複数のギヤと、前記複数のギヤを支持する複数のシャフトと、前記複数のシャフトを回転可能に直接支持する複数の支持板とを備え、
少なくとも1つの前記支持板が、摺動性を有する材料からなっていることを特徴とする減速ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の減速ユニットにおいて、
前記摺動性を有する材料として、油を含侵させた粉末冶金材を選択したことを特徴とする減速ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の減速ユニットにおいて、
前記摺動性を有する材料として、黒鉛等の固形潤滑材を混入させた粉末冶金材を選択したことを特徴とする減速ユニット。
【請求項4】
請求項1に記載の減速ユニットにおいて、
前記摺動性を有する材料として、摺動性を有する繊維を混入させた粉末冶金材を選択したことを特徴とする減速ユニット。
【請求項5】
請求項1に記載の減速ユニットにおいて、
前記摺動性を有する材料として、ポリイミド等の高分子樹脂を選択したことを特徴とする減速ユニット。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち何れか一項に記載の減速ユニットにおいて、
前記複数の支持板同士の間にスペーサを介装させたことを特徴とする減速ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載の減速ユニットにおいて、
前記支持板を貫通させるように棒部材を設けて、前記支持板と前記スペーサとを一体に連結したことを特徴とする減速ユニット。
【請求項8】
動力源と該動力源が発生する動力に従って回転する被回転部材とを備えた電子機器であって、
前記動力源と前記被回転部材との間に、請求項1から請求項7のうち何れか一項に記載の減速ユニットを装置したことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−258127(P2006−258127A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73314(P2005−73314)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】