説明

測距装置

【課題】 出力飽和を抑制しつつ、正確な測距が可能な測距装置を提供する。
【解決手段】 複数のキャパシタC1b,C2bは、それぞれ半導体領域FD1、FD2に振り分けられたキャリアをそれぞれ蓄積している。また、判定手段としての比較器COMP1,COMP2及び論理積回路ANDは、キャパシタC1b,C2bに蓄積されたキャリアの電荷量に対応する値(出力電圧VOUT1,VOUT2)が、全て閾値Vthを超えたかどうかを判定している。キャパシタC1b,C2bに蓄積されたキャリアの電荷量に対応する値(出力電圧VOUT1,VOUT2)が、全て閾値Vthを超えた旨を、判定手段が示す場合には、減算手段としてのスイッチSW1a,SW2a及び電荷引き抜き用キャパシタC1a,C2aは、それぞれのキャパシタC1b,C2bに蓄積されたキャリアの電荷量から、一定の電荷量を減じている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の測距装置は、光源から出射された光を対象物に照射し、対象物からの反射光を光検出素子で測定しており、照射光と反射光の位相差に基づいて対象物までの距離を求めている。ここで、特許文献1に記載の測距装置では、光検出素子が飽和しないように、モニタされた光量に応じてその検出期間を設定している。光検出素子は、長期間と短期間の2つの期間で反射光を検出し、光検出素子が飽和していない期間の電荷量を選択し、他方の期間の電荷量を破棄している。
【0003】
特許文献2に記載の測距装置も、特許文献1と同様に、光源から出射された光を対象物に照射し、対象物からの反射光を光検出素子で測定しており、照射光と反射光の位相差に基づいて対象物までの距離を求めている。ここで、特許文献2に記載の測距装置では、光検出素子の露光期間を、初期検出された光量レベルに応じて適切に設定し、光検出素子の飽和を抑制している。
【0004】
特許文献3に記載の測距装置は、上記と同様の測距動作を、マイクロプロセッサを用いて実現している。
【0005】
特許文献4に記載の測距装置は、位相差を有する2つの検出信号のうちのいずれか一方が飽和した場合に、画素をリセットしている。
【特許文献1】特開2006−84430号公報
【特許文献2】米国特許出願公開2006/0176467号明細書
【特許文献3】米国特許6,919,549号明細書
【特許文献4】米国特許7,157,685号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれの文献においても、信号電荷の飽和は抑制されているが、距離情報の検出精度は十分ではない。特に、特許文献4では、距離情報となる差分信号もリセットしており、飽和抑制を行う代わりに距離情報の検出精度が低くなるとうい問題がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、出力飽和を抑制しつつ、正確な測距が可能な測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明に係る測距装置は、変調した光を対象物に照射し、当該対象物で反射された光の入射に応答して発生したキャリアを時分割で振り分け、振り分けられたキャリアの電荷量に基づいて、対象物までの距離を求める測距装置において、振り分けられたキャリアをそれぞれ蓄積する複数のキャパシタと、キャパシタに蓄積されたキャリアの電荷量に対応する値が、全て閾値を超えたかどうかを判定する判定手段と、キャパシタに蓄積されたキャリアの電荷量に対応する値が、全て閾値を超えた旨を、判定手段が示す場合には、それぞれのキャパシタに蓄積されたキャリアの電荷量から、一定の電荷量を減じる減算手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る測距装置によれば、各キャパシタに蓄積された電荷量は、対象物までの距離に依存するが、この中には対象物からの反射光以外の光、すなわち、外光も含まれている。したがって、外光は一定値であるため、全ての値が閾値を超えた場合に、減算手段は一定値を蓄積電荷量から減じることで、キャパシタの飽和を抑制することができる。ここで、一定値を差し引いても、キャパシタ内には、対象物からの反射光によって発生したキャリアが測距有効電荷として残留しており、減算後においてキャパシタ内に測距有効電荷を更に蓄積することができる。したがって、電荷積算によって、キャパシタに蓄積される電荷のS/N比は向上するため、正確な測距が可能となる。
【0010】
なお、上記閾値は、キャパシタの飽和電荷量に対応する値の50%以下に設定されることが好ましい。すなわち、本発明では、キャパシタが飽和してから初めて減算を行うのではなく、キャパシタの飽和よりも随分と低い値で減算を行う。これにより、測距有効電荷の積算回数を増加させても、キャパシタが飽和しないため、積算回数を増加させることで、S/N比を向上させ、更に正確な測距を可能とする。
【0011】
また、本発明に係る測距装置は、それぞれのキャパシタを入出力端子間に含むチャージアンプを更に備え、チャージアンプの入力端子と出力端子は、異なる電位でリセットされ、リセット後にキャパシタへのキャリア蓄積が行われることが好ましい。
【0012】
チャージアンプへの入力電荷は、電圧に変換されて出力される。この場合、上述のキャパシタの蓄積電荷に対応する値は、チャージアンプの出力電圧になる。チャージアンプのリセット時の電位を変えておくことで、キャパシタに蓄積可能な電荷量のダイナミックレンジを広くすることができる。
【0013】
また、減算手段は、それぞれのキャパシタの入力側にスイッチを介して接続された電荷引き抜き用キャパシタを備えており、キャパシタに蓄積されたキャリアの電荷量に対応する値が、全て閾値を超えた旨を、判定手段が示す場合には、スイッチは接続されることを特徴とする。
【0014】
この場合、スイッチを接続すると、元のキャパシタに蓄積された電荷量が、引き抜き用キャパシタに移動するため、元のキャパシタに蓄積された電荷量の減算処理が行われたこととなる。
【0015】
また、判定手段は、それぞれのキャパシタに蓄積されたキャリアの電荷量に対応する値がそれぞれ入力される複数の比較器と、比較器の出力がそれぞれ入力される複数のDラッチ回路と、Dラッチ回路の出力が入力される論理積回路とを備え、論理積回路の出力は前記減算手段に入力されることが好ましい。
【0016】
この場合、比較器の出力が切り替わってから、これが論理積回路に入力されるまでの期間に遅れがあるため、論理積回路が確実に全ての値の閾値超えを認識してから、上記減算処理を行うことができ、また、リセット時などの場合に、比較器から不本意な出力が瞬間的に出力された場合においては、論理積回路が全ての値の閾値超えを認識しないので、誤認識に基づく誤動作を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る測距装置によれば、出力飽和を抑制しつつ正確な測距を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、実施の形態に係る測距装置について説明する。なお、同一要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は測距装置の構成を示す説明図である。
【0020】
本例の測距センサ1は、裏面入射型測距センサであるとするが、表面入射型測距センサとすることもできる。この測距装置は、測距センサ1と、近赤外光を出射する光源3と、光源3にパルス駆動信号Sを与える駆動回路4と、裏面入射型測距センサ1の各画素に含まれる第1及び第2ゲート電極(TX1,TX2:図5参照)に、パルス駆動信号Sに同期した検出用ゲート信号S,Sを与える制御回路2と、測距センサ1の第1及び第2半導体領域(FD1,FD2:図5参照)から読み出された距離情報を示す信号d’(m,n)から、歩行者などの対象物Hまでの距離を演算する演算回路(演算手段)5を備えている。測距センサ1から対象物Hまでの水平方向Dの距離をdとする。本例はパルス状の駆動信号で光の変調を行った例を主として説明するが、駆動信号はパルス状に限らず、正弦波状でもよい。
【0021】
制御回路2は、パルス駆動信号Sを駆動回路4のスイッチ4bに入力している。LED又はレーザダイオードからなる投光用の光源3は、スイッチ4bを介して電源4aに接続されている。したがって、スイッチ4bにパルス駆動信号Sが入力されると、パルス駆動信号Sと同じ波形の駆動電流が光源3に供給され、光源3からは測距用のプローブ光としてのパルス光Lが出力される。
【0022】
パルス光Lが対象物Hに照射されると、対象物Hによってパルス光が反射され、パルス光Lとして、裏面入射型測距センサ1に入射して、パルス検出信号Sを出力する。パルス検出信号Sはパルス光Lの入射に応じて基板内部で発生した総電荷量を示し、立ち上がりと立ち下がりのタイミングはパルス光Lに一致するが、距離dに応じた分だけパルス光Lに対して位相が遅延している。
【0023】
測距センサ1は、配線基板10上に固定されており、配線基板10上の配線を介して、距離情報を有する信号d’(m,n)が各画素から出力される。
【0024】
パルス駆動信号Sの波形は、周期Tの方形波であり、ハイレベルを「1」、ローレベルを「0」とすると、その電圧V(t)は以下の式で与えられる。
・パルス駆動信号S
・V(t)=1(但し、0<t<(T/2)の場合)
・V(t)=0(但し、(T/2)<t<Tの場合)
・V(t+T)=V(t)
【0025】
検出用ゲート信号S、Sの波形は、周期Tの方形波であり、その電圧V(t)は以下の式で与えられる。
・検出用ゲート信号S
・V(t)=1(但し、0<t<(T/2)の場合)
・V(t)=0(但し、(T/2)<t<Tの場合)
・V(t+T)=V(t)
・検出用ゲート信号S(=Sの反転):
・V(t)=0(但し、0<t<(T/2)の場合)
・V(t)=1(但し、(T/2)<t<Tの場合)
・V(t+T)=V(t)
【0026】
上記パルス信号S,S、S、Sは、全てパルス周期2×Tを有していることとする。検出用ゲート信号S及びパルス検出信号Sが共に「1」のときに測距センサ1内で発生する電荷量をQ1、検出用ゲート信号S及びパルス検出信号Sが共に「1」のときに測距センサ1内で発生する電荷量をQ2とする。
【0027】
測距センサ1における一方の検出用ゲート信号Sとパルス検出信号Sの位相差は、他方の検出用ゲート信号Sとパルス検出信号Sが「1」の時の重複期間において、裏面入射型測距センサ1において発生した電荷量Q2に比例する。すなわち、電荷量Q2は、検出用ゲート信号Sとパルス検出信号Sの論理積が「1」である期間において発生した電荷量である。1画素内において発生する全電荷量をQ1+Q2とし、駆動信号Sの半周期のパルス幅をTとすると、Δt=T×Q2/(Q1+Q2)の期間だけ、駆動信号Sに対してパルス検出信号Sが遅れていることになる。
【0028】
1つのパルス光の飛行時間Δtは、対象物までの距離をd、光速をcとすると、Δt=2d/cで与えられるため、特定の画素からの距離情報を有する信号d’として2つの電荷量(Q1,Q2)が出力されると、演算回路5は、入力された電荷量Q1,Q2と、予め判明している半周期パルス幅Tに基づいて、対象物Hまでの距離d=(c×Δt)/2=c×T×Q2/(2×(Q1+Q2))を演算する。
【0029】
上述のように、電荷量Q1、Q2を分離して読み出せば、演算回路5は、距離dを演算することができる。なお、上述のパルスは繰り返して出射され、その積分値を各電荷量Q1,Q2として出力することができる。
【0030】
また、電荷量Q1,Q2の全体電荷量に対する比率は、上述の位相差、すなわち、対象物Hまでの距離に対応しており、演算回路5は、この位相差に応じて対象物Hまで距離を演算している。上述のように、位相差に対応する時間差をΔtとすると、距離dは、好適にはd=(c×Δt)/2で与えられるが、適当な補正演算をこれに加えて行ってもよい。例えば、実際の距離と、演算された距離dとが異なる場合、後者を補正する係数βを予め求めておき、出荷後の製品では演算された距離dに係数βを乗じたものを最終的な演算距離dとしてもよい。また、外気温度を測定しておき、外気温度に応じて光速cが異なる場合には、光速cを補正する演算を行ってから、距離演算を行うこともできる。また、演算回路に入力された信号と、実際の距離との関係を予めメモリに記憶しておき、ルックアップテーブル方式によって、距離を演算してもよい。また、センサ構造によっても演算方法は変更することができ、これには従来から知られている演算方法を用いることができる。
【0031】
このように、演算回路5は、それぞれ読み出された電荷Q1(Q2)の全体電荷量(Q1+Q2)に対する比率に基づいて、対象物Hまでの距離を演算している。対象物Hまでの距離は、このような比率に依存するため、演算回路5は、かかる比率に基づいて距離を演算することができる。上記では、180度の位相差で2つのゲート電極TX1,TX2(図5参照)を駆動した場合の例を説明した。
【0032】
なお、フォトゲート電極PG(図5)の横方向の両端に位置する半導体領域FD1,FD2から電荷量Q1,Q2が出力されるが、この他にフォトゲート電極PGに対して縦方向の両端に位置する半導体領域から電荷量Q3,Q4を出力させることもできる。この場合の縦方向の構造は、横方向の構造と同一とする。
【0033】
この場合、90度毎の位相差で上記4つのゲート電極を駆動し、各半導体領域から、Q1,Q2,Q3,Q4を出力する。この場合、距離d=Φ×c/2×2πfで与えられる。なお、駆動信号が正弦波状の場合には、fは駆動信号Sの繰り返し周波数であり、位相Φ=−arctan((Q2−Q4)/(Q1−Q3))で与えられる。
【0034】
図2は測距センサ1の平面図である。
【0035】
測距センサ1は、二次元状に配列した複数の画素P(m,n)からなる撮像領域1Bを有する半導体基板1Aを備えている。各画素P(m,n)からは、上述の距離情報を有する信号d’(m,n)として2つの電荷量(Q1,Q2)が出力される。各画素P(m,n)は微小測距センサとして対象物Hまでの距離に応じた信号d’(m,n)を出力するので、対象物Hからの反射光を、撮像領域1Bに結像すれば、対象物H上の各点までの距離情報の集合体としての対象物の距離画像を得ることができる。
【0036】
図3は図2に示した測距センサのIII−III矢印断面図である。
【0037】
測距センサ1には、光入射面1BKからパルス光Lが入射する。裏面入射型測距センサ1の光入射面1BKとは逆側の表面1FTは、接着領域ADを介して配線基板10に接続されている。接着領域ADは、バンプなどの接着素子を含む領域であり、必要に応じて絶縁性の接着剤やフィラーを有している。裏面入射型測距センサ1を構成する半導体基板1Aは、補強用のフレーム部Fと、フレーム部Fよりも薄い薄板部TFを有しており、これらは一体化している。薄板部TFの厚さは、10μm以上100μm以下である。本例のフレーム部Fの厚さは200μm以上600μm以下である。
【0038】
図4は変形例に係る測距センサの断面図である。
【0039】
この測距センサは、図3に示したものと半導体基板1Aの形状のみが異なり、他の構成は同一である。半導体基板1Aは、ストライプ状又は格子状に形成された補強部AFを更に有しており、補強部AFの間に薄板部TFが形成され、これらは一体化している。本例の補強部AFの厚みは、フレーム部AFの厚さと同じであり、200μm以上600μm以下である。薄板部TFには前述の各画素が形成されている。薄板部TFはKOH等のアルカリ性エッチング液を用いたウエットエッチングによって形成する。エッチングによって形成された露出表面の粗さは1μm以下である。
【0040】
図5は、図3又は図4に示した測距センサの領域Vの拡大図である。
【0041】
裏面入射型測距センサ1は、反射防止膜1Dが設けられる光入射面及び光入射面とは逆側の表面を有するP型の半導体基板1Aと、この表面上において絶縁層1Eを介して設けられたフォトゲート電極PGと、この表面上において絶縁層1Eを介しフォトゲート電極PGに隣接して設けられた第1及び第2ゲート電極TX1,TX2とを備えている。反射防止膜1Dの材料は、SiOまたはSiN(窒化シリコン)である。
【0042】
ゲート電極TX1の外側の半導体基板(エピタキシャル層)1A内の領域には、基板の表面側から高濃度のN型不純物が添加されており、N型の半導体領域FD1からなるフローティング・ディフュージョン領域が形成されている。ゲート電極TX2の外側の半導体基板1A内の領域には、基板表面側から高濃度のN型不純物が添加されており、N型の半導体領域FD2からなるフローティング・ディフュージョン領域が形成されている。半導体領域FD1,FD2は、ゲート電極TX1,TX2をそれぞれ含む電界効果トランジスタのドレインを構成している。なお、フォトゲート電極PGには、若干の直流正電位が印加される。
【0043】
半導体基板1Aに反射防止膜1Dを介して対象物からの反射光が入射すると、半導体基板1A内のフォトゲート電極PGの直下の領域でキャリアが発生する。ゲート電極TX1,TX2に交互に高電位を与える(検出用ゲート信号S,Sを印加する)と、基板内において発生したキャリアが、交互に半導体領域FD1,FD2内に流れ込む。この際、半導体基板1A内にはフリンジング電界が形成されている。絶縁層1Eを厚くすることで、半導体基板内にフリンジング電界を形成することができる。フリンジング電界を形成するための好適な絶縁層1Eの厚みは、50〜5000nmである。
【0044】
半導体領域FD1,FD2には、電極18a、21aが接触しており、接着層AD内に埋め込まれた内部配線を介して、配線基板を構成する半導体基板10Aの表面に形成された電極配線18g,21gに電気的に接続されている。なお、ゲート電極TX1,PG,TX2は、それぞれ、接着層AD内に埋め込まれた内部配線を介して、半導体基板10Aの表面に形成された電極配線12g,13g,14gに電気的に接続されている。なお、半導体基板1Aの電位をグランド電位などの基準電位に接続するため、半導体基板1A内の適当な位置にバックゲート電極が設けられているが、基板内の厚み方向に貫通する貫通電極を設け、これをグランド電位に接続してもよい。
【0045】
図6は、配線基板10内の回路を示す回路図である。制御回路2からの出力を利用して、光源3と電源4aをパルス駆動信号Sが入力するスイッチ4bが接続する駆動回路4の実際の構成を同時に示してある。なお、同図では、フォトゲート電極PG、ゲート電極TX1,TX2は、それぞれの電界効果トランジスタのゲート電極として示されており、説明の便宜上、トランジスタはそのゲート電極と同一の符号を用いることとする。
【0046】
光の入射によってフォトゲート電極PGの直下で発生したキャリアは、ゲート電極TX1に高電位が印加されている場合には、電極配線18gを介して、チャージアンプCA1の入力端子である節点P1に流れ込む。チャージアンプCA1がリセットされているものとすると、スイッチSW1r、SW1aを切断しておくことにより、チャージアンプCA1の入出力端子間に接続されたキャパシタC1bに、節点P1に流れ込んだキャリアが蓄積される。ゲート電極TX1は、繰り返し高電位が与えられるので、キャパシタC1bに蓄積されるキャリアの電荷量は徐々に増加し、チャージアンプCA1の出力電圧が上昇する。チャージアンプCA1の出力端子である節点P2の電位が、閾値Vthを超えた場合には、比較器COMP1の出力VCOMP1がハイレベルとなり、比較器COMP1の出力は、DラッチFF1を介して、僅かな遅延が与えられた後、論理積回路(AND回路)ANDに入力される。
【0047】
同様に、光の入射によってフォトゲート電極PGの直下で発生したキャリアは、ゲート電極TX2に高電位が印加されている場合には、電極配線21gを介して、チャージアンプCA2の入力端子である節点P3に流れ込む。チャージアンプCA2がリセットされているものとすると、スイッチSW2r、SW2aを切断しておくことにより、チャージアンプCA2の入出力端子間に接続されたキャパシタC2bに、節点P3に流れ込んだキャリアが蓄積される。ゲート電極TX2は、繰り返し高電位が与えられるので、キャパシタC2bに蓄積されるキャリアの電荷量は徐々に増加し、チャージアンプCA2の出力電圧が上昇する。チャージアンプCA2の出力端子である節点P4の電位が、閾値Vthを超えた場合には、比較器COMP2の出力VCOMP2がハイレベルとなり、比較器COMP2の出力は、DラッチFF2を介して、僅かな遅延が与えられた後、論理積回路(AND回路)ANDに入力される。
【0048】
論理積回路ANDは、双方の入力がハイレベルの場合に、出力端子である節点P5のレベルをハイレベルとする。論理積回路ANDの出力がハイレベルの場合には、スイッチSW1a,SW2aが接続される。スイッチSW1a,SW2aは、節点P1,P3と、電荷引き抜き用キャパシタC1a,C2aとの間にそれぞれ接続されている。電荷引き抜き用キャパシタC1a,C2aの両端間にはそれぞれ短絡スイッチSW1c,SW2cが接続され、各キャパシタC1a,C2aの一方端は、電位Vに接続されている。短絡スイッチSW1c,SW2cが切断された状態で、スイッチSW1a,SW2aが接続されると、キャパシタC1b,C2bに蓄積されたキャリア(電荷)が、キャパシタC1a,C2a内に流れ込み、キャパシタC1b,C2bから一定量の電荷が減算される。
【0049】
これにより、チャージアンプCA1,CA2の出力電圧は、外光に相当する直流分が減じられて大きく低下することになる。したがって、比較器VCOMP1、VCOMP2の出力は、ローレベルとなり、DラッチFF1,FF2によりローレベルに切り替わってから僅かに遅延して、論理積回路ANDの出力がローレベルに切り替わり、スイッチSW1a、SW2aが切断される。
【0050】
キャリアの引き抜き後、スイッチSW1a,SW2aが切断された状態で、各キャパシタC1a,C2aに設けられた短絡スイッチSW1c,SW2cを接続して、キャパシタC1a,C2aに蓄積された電荷を放電する。
【0051】
これにより、信号分に対応する電荷がキャパシタC1b,C2b内に残留するが、以上の動作を残留電荷量がある程度の値になるまで繰り返し、積算を行う。
【0052】
上述のように、減算手段を構成する電荷引き抜き用キャパシタC1a,C2aは、それぞれのキャパシタC1b、C2bの入力側にスイッチSW1a,SW2aを介して接続されており、キャパシタC1b、C2bに蓄積されたキャリアの電荷量に対応する値が、全て閾値Vthを超えた旨を、判定手段が示す場合には、スイッチSW1a,SW2aは接続される。この場合、スイッチSW1a,SW2aを接続すると、元のキャパシタC1b、C2bに蓄積された電荷量が、引き抜き用キャパシタC1a,C2aに移動するため、元のキャパシタC1b、C2bに蓄積された電荷量の減算処理が行われたこととなる。
【0053】
しかる後、リセットを行う。リセット時には、スイッチSW1r,SW2rを接続し、節点P2,P4を基準電位Vrefに接続する。これにより、キャパシタC1b,C2bの出力側の電位は、基準電位Vrefとなる。一方、キャパシタC1b,C2bの入力側の電位は、オペアンプA1,A2の仮想接地により、電位Vに固定されているが、オペアンプの2つの入力端子間にスイッチを設けて強制的に短絡し、電位Vに固定することもできる。
【0054】
すなわち、キャパシタC1b,C2bを入出力端子間に含むチャージアンプCA1,CA2の入力端子である節点P1,P3と、出力端子である節点P2,P4は、異なる電位でリセットされ、リセット後にキャパシタC1b,C2bへのキャリア蓄積が行われている。
【0055】
チャージアンプCA1,CA2への入力電荷は、電圧に変換されて出力されている。なお、キャパシタC1b,C2bの蓄積電荷に対応する値は、チャージアンプC1b,C2bの出力電圧VOUT1,VOUT2である。チャージアンプCA1,CA2のリセット時の入力端子と出力端子の電位を変えておくことで、キャパシタC1b,C2bに蓄積可能な電荷量のダイナミックレンジを広くすることができる。
【0056】
なお、各電位V,V,Vrefは、上述の機能を達成すべく、設定される。また、VOUT1,VOUT2は、それぞれ電荷量Q1,Q2に対応するものであり、上述の数式に従って、これから距離を演算することができる。さらに、外光強度を測定する別の光検出素子を設け、閾値Vthを、この光検出素子によって検出された外光強度に応じて設定することとしてもよい。
【0057】
以上、説明したように、実施形態に係る測距装置は、変調した光を対象物に照射し、対象物で反射された光の入射に応答して発生したキャリアを時分割で振り分け、振り分けられたキャリアの電荷量に基づいて、対象物までの距離を求める測距装置を対象としている。
【0058】
ここで、複数のキャパシタC1b,C2bは、それぞれ半導体領域FD1、FD2に振り分けられたキャリアをそれぞれ蓄積している。また、判定手段としての比較器COMP1,COMP2及び論理積回路ANDは、キャパシタC1b,C2bに蓄積されたキャリアの電荷量に対応する値(出力電圧VOUT1,VOUT2)が、全て閾値Vthを超えたかどうかを判定している。また、キャパシタC1b,C2bに蓄積されたキャリアの電荷量に対応する値(出力電圧VOUT1,VOUT2)が、全て閾値Vthを超えた旨を、判定手段が示す場合には、減算手段としてのスイッチSW1a,SW2a及び電荷引き抜き用キャパシタC1a,C2aは、それぞれのキャパシタC1b,C2bに蓄積されたキャリアの電荷量から、一定の電荷量を減じている。
【0059】
各キャパシタC1b,C2bに蓄積された電荷量は、対象物までの距離dに依存するが、この中には対象物からの反射光以外の光、すなわち、外光も含まれている。外光は一定値であるため、全ての値が閾値Vthを超えた場合に、減算手段は一定値を蓄積電荷量から減じることで、キャパシタC1b,C2bの飽和を抑制している。ここで、一定値を差し引いても、キャパシタC1b,C2b内には、対象物からの反射光によって発生したキャリアが測距有効電荷として残留しており、減算後においてキャパシタC1b,C2b内に測距有効電荷を更に蓄積することができる。したがって、電荷の積算によって、キャパシタC1b,C2bに蓄積される電荷のS/N比は向上するため、正確な測距が可能となる。
【0060】
また、上述のように、判定手段は、それぞれのキャパシタC1b,C2bに蓄積されたキャリアの電荷量に対応する値(出力電圧VOUT1,VOUT2)がそれぞれ入力される複数の比較器COMP1,COMP2と、比較器COMP1,COMP2の出力がそれぞれ入力される複数のDラッチ回路FF1,FF2と、Dラッチ回路FF1,FF2の出力が入力される論理積回路ANDとを備えており、論理積回路ANDの出力は減算手段のスイッチSW1a,SW2aに入力されている。
【0061】
この場合、比較器COMP1,COMP2の出力が切り替わってから、これが論理積回路ANDに入力されるまでの期間に遅れがあるため、論理積回路ANDが確実に全ての値の閾値超えを認識してから、上記減算処理を行うことができ、また、リセット時などの場合に、比較器COMP1,COMP2から不本意な出力が瞬間的に出力された場合においては、論理積回路ANDが全ての値の閾値超えを認識しないので、誤認識に基づく誤動作を抑制することができる。
【0062】
図7は、上述の回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。なお、比較器出力VCOMP1,VCOMP2は、Dラッチ回路の後段における出力を示している。
【0063】
チャージアンプCA1,CA2の出力電圧VOUT1,VOUT2は、予め基準電位Vrefにリセットされる。この状態で、時間の経過と共に、出力電圧VOUT1,VOUT2が上昇し、一方の出力電圧VOUT1が閾値Vthを超えた場合には(時刻t)、僅かに遅延して比較器VCOMP1からの出力がハイレベルとして論理積回路ANDに入力され(時刻t)、もう一方の出力電圧VOUT2も閾値Vthを超えた場合には(時刻t)、僅かに遅延して比較器VCOMP2からの出力がハイレベルとして論理積回路ANDに入力され(時刻t)、論理積回路ANDの出力がハイレベルとなり、上述の電荷の引き抜きが行われる。これにより、出力電圧VOUT1はΔVだけ低下し、信号成分となる測距有効電荷に対応した電圧Aが残留し、同様に出力電圧VOUT2もΔVだけ低下し、信号成分となる測距有効電荷に対応した電圧Bが残留する。しかる後、双方の比較器出力VCOMP1,VCOMP2がローレベルに切り替わり、出力電圧VOUT1,VOUT2は再び上昇を始める。この動作は、リセットが行われるまで継続する。
【0064】
ここで、上記閾値Vthは、キャパシタC1b,C2bの飽和電荷量に対応する値(キャパシタC1b,C2b及びチャージアンプCA1,CA2が飽和したときの出力電圧VOUT1,VOUT2)=Vsatの半分(50%)以下に設定されることが好ましい。すなわち、キャパシタC1b,C2bが飽和してから初めて減算を行うのではなく、キャパシタの飽和よりも随分と低い値で減算を行う。これにより、測距有効電荷の積算回数を増加させても、キャパシタC1b,C2bが飽和しないため、積算回数を増加させることで、S/N比を向上させ、更に正確な測距を可能とする。
また、上述の装置では、検出される信号が小さいときには、減算処理が行われないので、そのまま計測を行うことができる。また、上述のトランジスタPGの代わりに、逆バイアス印加されたフォトダイオードを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】測距装置の構成を示す説明図である。
【図2】測距センサ1の平面図である。
【図3】図2に示した測距センサのIII−III矢印断面図である。
【図4】変形例に係る測距センサの断面図である。
【図5】図3又は図4に示した測距センサの領域Vの拡大図である。
【図6】配線基板10内の回路を示す回路図である。
【図7】回路動作を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0066】
PG・・・フォトゲート電極、TX1,TX2・・・ゲート電極、COMP1,COMP2・・・比較器、AND・・・論理積回路、C1b,C2b・・・キャパシタ、C1a,C2a・・・電荷引き抜き用キャパシタ。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調した光を対象物に照射し、当該対象物で反射された光の入射に応答して発生したキャリアを時分割で振り分け、振り分けられたキャリアの電荷量に基づいて、前記対象物までの距離を求める測距装置において、
前記振り分けられたキャリアをそれぞれ蓄積する複数のキャパシタと、
前記キャパシタに蓄積されたキャリアの電荷量に対応する値が、全て閾値を超えたかどうかを判定する判定手段と、
前記キャパシタに蓄積されたキャリアの電荷量に対応する値が、全て閾値を超えた旨を、前記判定手段が示す場合には、それぞれの前記キャパシタに蓄積されたキャリアの電荷量から、一定の電荷量を減じる減算手段と、
を備える、
ことを特徴とする測距装置。
【請求項2】
前記閾値は、前記キャパシタの飽和電荷量に対応する値の50%以下に設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
それぞれの前記キャパシタを入出力端子間に含むチャージアンプを更に備え、
前記チャージアンプの入力端子と出力端子は、異なる電位でリセットされ、リセット後に前記キャパシタへのキャリア蓄積が行われる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の測距装置。
【請求項4】
前記減算手段は、
それぞれの前記キャパシタの入力側にスイッチを介して接続された電荷引き抜き用キャパシタを備えており、
前記キャパシタに蓄積されたキャリアの電荷量に対応する値が、全て閾値を超えた旨を、前記判定手段が示す場合には、前記スイッチは接続される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測距装置。
【請求項5】
前記判定手段は、それぞれの前記キャパシタに蓄積されたキャリアの電荷量に対応する値がそれぞれ入力される複数の比較器と、
前記比較器の出力がそれぞれ入力される複数のDラッチ回路と、
前記Dラッチ回路の出力が入力される論理積回路と、
を備え、前記論理積回路の出力は前記減算手段に入力される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の測距装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−47659(P2009−47659A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216514(P2007−216514)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】