説明

湯水混合栓の調整方法及び湯水混合栓

【課題】
単体でバネ定数が、二段となるように構成されたバイアスバネを備えた湯水混合栓において、モータの特定の回転量を、バネ定数の変化点に合致させて、モータ制御によってこの変化点を基準にした、大小のモータの回転量を指定すれば、バネ定数の異なる領域を、正確に指定することが湯水混合栓の調整方法及び湯水混合栓を提供する。
【解決手段】
湯水混合栓のバイアスバネ70は、大径部72、小径部74を備えて、バネ定数が2段の異なる値を有する。ステッピングモータ44におけるバイアスバネ70のバネ定数の変化点の位置を指定するステップ量(ステップ数)と、バイアスバネ70のバネ定数の変化点が合致して調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水混合栓の調整方法及び湯水混合栓に関し、特に、湯水の温度調整(以下、温調という)にステッピングモータを使用する湯水混合栓の調整方法及び湯水混合栓に関する。
【背景技術】
【0002】
湯水混合栓として、バルブハウジング内に、該バルブハウジングの水側シート及び湯側シートに対して接離自在に弁体が配置され、前記弁体を湯側シートと接近する方向に付勢する感温バネを備え、前記弁体を水側シートと接近する方向に付勢するように単体のバイアスバネを備えたものが公知である(特許文献1、特許文献2)。そして、この湯水混合栓では、温調用ハンドルの手動回転操作に連動して回転する温調用栓棒と、この温調用栓棒の螺合された雌ねじ部材と、該温調用栓棒の回転に伴う前記雌ねじ部材の回転によりバルブハウジング内を移動する移動部材を備える。湯水混合栓は、この移動部材の移動によって、バイアスバネを伸縮させて弁体を移動させることにより、吐水温度を調整可能にしている。
【0003】
上記の湯水混合栓では、バイアスバネは、不等ピッチのコイルバネ、或いは、弁体の移動方向に漸次径を変化させて巻回された円錐バネにて形成され、単体でバネ定数が、二段となるように構成されている。このようなバイアスバネは、例えば、温調用ハンドルを手動回転操作することにより、40℃付近の設定温度になるように弁体が移動したときのバネ定数よりも、弁体が40℃よりも高い最高温度付近の設定温度になるように移動したときのバネ定数の方が大きくなるようにされている。上記のように構成された湯水混合栓は、手動で温調用ハンドルを操作するタイプのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−69953号公報
【特許文献2】特開2007−139176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、手動で操作する温調用ハンドルの代わりに、リモートコントローラでモータを駆動制御して、前記温調用栓棒を回転駆動することが要望されている。しかしながら、上記のように単体でバネ定数が、二段となるように構成されたバイアスバネを備えた湯水混合栓の場合、特定の設定温度(例えば、40℃〜50℃のうちのいずれかの温度)において、バネ定数が変化する変化点と、モータの特定の回転量と合致させる技術は提案されていない。
【0006】
本発明の目的は、単体でバネ定数が、二段となるように構成されたバイアスバネを備えた湯水混合栓において、モータの特定の回転量を、バネ定数の変化点に合致させることにより、モータ制御によってこの変化点(すなわち、モータの特定の回転量)を基準にした、大小のモータの回転量を指定すれば、バネ定数の異なる領域を、正確に指定することができることができる湯水混合栓の調整方法及び湯水混合栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために請求項1に記載の発明は、バルブハウジング内を移動自在に設けられ、該バルブハウジング内の水側シートと、湯側シートに対して選択的に接離自在に配置された弁体と、前記弁体を、前記湯側シート側へ向かって付勢する感温バネと、前記弁体を、前記感温バネの付勢方向と反対側となる前記水側シート側へ向かって付勢するとともに、大径部及び小径部を有して異なるバネ定数を有してコイルスプリング状をなす単体のバイアスバネと、ステッピングモータと、前記バルブハウジング内に収容されて、前記ステッピングモータのステップ量に応じて回転する温度調節部材と、前記温度調節部材と雄・雌の関係で螺合し、前記温度調節部材の回転により、前記バイアスバネに当接して該バイアスバネの伸縮を行う当接部材とを備えた湯水混合栓であって、前記ステッピングモータの所定のステップ量と、前記バイアスバネのバネ定数の変化点を合致させて調整することを特徴とする湯水混合栓の調整方法を要旨とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、バルブハウジング内を移動自在に設けられ、該バルブハウジング内の水側シートと、湯側シートに対して選択的に接離自在に配置された弁体と、前記弁体を、前記湯側シート側へ向かって付勢する感温バネと、前記弁体を、前記感温バネの付勢方向と反対側となる前記水側シート側へ向かって付勢するとともに、大径部及び小径部を有して異なるバネ定数を有してコイルスプリング状をなす単体のバイアスバネと、ステッピングモータと、前記バルブハウジング内に収容されて、前記ステッピングモータのステップ量に応じて回転する温度調節部材と、前記温度調節部材と雄・雌の関係で螺合し、前記温度調節部材の回転により、前記バイアスバネに当接して該バイアスバネの伸縮を行う当接部材とを備えた湯水混合栓であって、前記ステッピングモータの所定のステップ量と、前記バイアスバネのバネ定数の変化点が合致して調整されていることを特徴とする湯水混合栓を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、モータとしてステッピングモータを使用し、バイアスバネのバネ定数の変化点を前記ステッピングモータの所定のステップ量と合致させるため、モータ制御によってこのモータの特定の回転量を基準にした、大又は小のモータの回転量を指定すれば、バネ定数の異なる領域を、正確に指定することができることができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、モータとしてステッピングモータを使用し、バイアスバネのバネ定数の変化点を前記ステッピングモータの所定のステップ量と合致させるため、モータ制御によってこのモータの特定の回転量を基準にした、大又は小のモータの回転量を指定すれば、バネ定数の異なる領域を、正確に指定することができることができる湯水混合栓を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の湯水混合栓の断面図。
【図2】ステッピングモータのステップ数−給湯温度特性図。
【図3】給湯温度−感温バネ発生力特性図。
【図4】バネ荷重−たわみ−給湯温度特性図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態の湯水混合栓を図1〜4を参照して説明する。
図1に示すように、湯水混合栓のバルブハウジング10は、第1ハウジング12と、第2ハウジング14とから構成されている。第1ハウジング12は、円筒状に形成され、一端部に設けられた断面円形の貫通孔12aと、該貫通孔12aに連接して該貫通孔12aと同軸に設けられた第1内腔12bと、第1内腔12bに連接して第1内腔12bと同軸に設けられた第2内腔12cと、第2内腔12cに連接して第2内腔12cと同軸に設けられた嵌合孔12dを有する。第2内腔12cは、第1内腔12bよりも大径に形成されている。第2内腔12cと第1内腔12bとの段差は湯側シート12eとなる。湯側シート12eに対応して、第1ハウジング12には、湯導入口12fが形成されている。湯導入口12fは、第1ハウジング12の外周に設けられた湯配管接続口12gに連通されている。
【0013】
又、嵌合孔12dは、第2内腔12cよりも大径に形成され、該嵌合孔12dには、第2ハウジング14が水密状に嵌合固定されている。第2ハウジング14は、略円筒状に形成されるとともに外周に形成されたフランジ部16が第1ハウジング12の嵌合孔12d側の端面に当接されている。
【0014】
第2ハウジング14には、前記嵌合孔12dと同軸の流路孔14aが形成されている。第2ハウジング14の外端部側の流路孔14aの開口は、吐水口14cとなる。第2ハウジング14において、流路孔14aの内端部側の周縁は、第2内腔12c側へ行くほど拡径するテーパーが形成されている。同テーパー部分がリング状の水側シート14bとなる。水側シート14bに対応して、第1ハウジング12の第2内腔12cの内周面には、水導入口12hが形成されている。水導入口12hは、第1ハウジング12の外周に設けられた湯配管接続口12iに連通されている。
【0015】
前記第2内腔12c内には、バルブハウジング10の長手方向に沿って延びる軸心Oに沿って弁体30が移動自在に配置され、湯側シート12eと水側シート14bとを選択的に当接可能にされている。
【0016】
すなわち、弁体30は、略有底筒状に形成され、図1において上端が湯側シート12eに当接した際に、湯導入口12fを閉じる。又、弁体30の下端面の周縁に形成されたテーパー面32aは、水側シート14bに当接した際に、水導入口12hを閉じる。
【0017】
弁体30の底部には、段差部30aを有する筒部30bが下方向にへ突出されている。筒部30bの下部には、下端を開口する摺動孔30cが軸心Oと同軸に形成されている。一方、第2ハウジング14の流路孔14a内には、円柱状のバネ座24が設けられている。バネ座24は、複数の連結部22を介して流路孔14aの内周面に一体に連結されている。前記複数の連結部22間には、連通孔22aが形成されている。連通孔22aにより、流路孔14aにおいて、連結部22を境に水側シート14b側の部位と吐水口14c側の部位を連通する。バネ座24から水側シート14b側に円柱状のガイド柱26が形成され、前記筒部30bの摺動孔30cに摺接自在に嵌入されている。
【0018】
筒部30bの段差部30aとバネ座24間には、形状記憶合金からなる感温バネ40が配置されている。感温バネ40は、コイルスプリング状に形成され、その両端がバネ座24、筒部30bにそれぞれ巻回されており、弁体30を湯側シート12eへ向かって付勢する。
【0019】
一方、第1ハウジング12の長手方向の一端(図1において、上端)には、ブラケット片42を介して、ステッピングモータ44が取付け固定されている。ステッピングモータ44は、後述するバイアスバネ70の与荷重調節装置として機能する。ステッピングモータ44の出力軸46には、カップリング48を介してスピンドル50が一体に連結されている。スピンドル50は、第1ハウジング12の端部に対して水密状に回動自在に挿入されており、バルブハウジング10の軸心Oの周りで回転する。スピンドル50の内端には、温度調節部材としての雄ネジ部材52が一体に設けられている。
【0020】
第1ハウジング12の第1内腔12bには、当接部材60が軸心Oに沿って移動自在にスプライン嵌合されている。当接部材60は、有底筒状に形成され、筒状部の内周面に雌ネジが形成されている。雄ネジ部材52は、当接部材60の筒状部の雌ネジに螺合されている。この結果、当接部材60は、雄ネジ部材52が軸心Oの周りで回転した際に、第1内腔12bとのスプライン嵌合により、当接部材60が軸心Oに沿って駆動される。当接部材60の底部からは筒部62が下方に突出されている。
【0021】
筒部62内には、棒状のバネ保持部材64が軸心Oに沿って摺接自在に挿入されている。バネ保持部材64の上端には、当接部材60の底部に係止するビス66が螺合されており、バネ保持部材64の当接部材60からの下方への抜け防止が図られている。バネ保持部材64の下端に設けられたフランジ68は、弁体30の底部上面から上方へ突出した筒部30dに当接されている。バネ保持部材64のフランジ68と、当接部材60の底部下面間には、上下両端が筒部62及びバネ保持部材64に巻回された単体のバイアスバネ70が配置されている。バイアスバネ70は、大径部72と小径部74とから構成されている。大径部72は、当接部材60の筒部62に巻回され、小径部74は、バネ保持部材64の下部に巻回されている。バイアスバネ70の材質は、温度に対しては、一定のバネ定数を有するが、たわみ(たわみ量)に対しては、後述するように2段のバネ定数を有するように変化する。
【0022】
なお、説明の便宜上、図1中、貫通孔12a,第1内腔12b,第2内腔12c,及び流路孔14aの内部において軸心Oを境に左半断面は、弁体30が湯側シート12eに当接した状態において、当接部材60、バネ保持部材64、バイアスバネ70、感温バネ40の位置及び状態を示している。又、図1中、貫通孔12a,第1内腔12b,第2内腔12c,及び流路孔14aの内部において軸心Oを境に右半断面は、弁体30が、水側シート14bに当接した状態における、当接部材60、バネ保持部材64、バイアスバネ70、感温バネ40の位置及び状態を示している。
【0023】
バイアスバネ70は、大径部72及び小径部74を有することにより、異なる2つのバネ定数を有する。ここで、上記のようにバイアスバネ70は大径部72及び小径部74を備えることにより、異なる大小の2つのバネ定数を有することから、バイアスバネ70を例えば伸張状態から圧縮する際、或いは圧縮状態から伸張する際にバネ定数が変化する変化点を有する。
【0024】
この変化点は、感温バネ40の給湯温度(すなわち、吐水口14cにおける湯の設定温度)−バネ発生力の特性の中で、好適な領域に位置するように調整されている。本実施形態において、感温バネ40の給湯温度(すなわち、吐水口14cにおける湯の設定温度)−バネ発生力(N)の特性は、図3に示すグラフで表わされている。図3に示すように、本実施形態で使用する感温バネ40では、給湯温度35℃〜50℃の領域が、他の温度領域よりも、バネ発生力の変化率(温度変化に対するバネ発生力変化の割合)が大きい。従って、この温度領域35℃〜50℃を好適な領域としている。そして、本実施形態では、この好適な温度領域中、感温バネ40は、45℃において、46(N)のバネ発生力が生ずるため、このポイントにバイアスバネ70のバネ定数の変化点を合致させている。なお、説明の便宜上、ポイントを45℃において、46(N)のものを採用しているが、限定するものではない。
【0025】
具体的に説明すると、本実施形態のバイアスバネ70の大径部72の直径を11.5mmとし、小径部74の直径が7mmとした場合、図4においてバイアスバネ70のバネ荷重とたわみの特性はAの特性グラフで示されている。なお、図4において、一点鎖線で示されているBは、従来のバイアスバネのバネ定数が一定の場合の、たわみとバネ荷重の特性を示している。この図4のAの特性グラフにおいて、たわみが5mmのときに、すなわち、原寸(バネ荷重が加わらないときの長さ)から5mm分、縮小したときバネ荷重が46(N)になったとする。この場合、このたわみが5mmの位置がバネ定数の変化点となる。この例では、このたわみ5mmを越えると、バイアスバネ70のバネ定数が増加し(バネ荷重の変化率が増加し)、逆にたわみが5mm未満の場合は、バネ定数が少なくなる(バネ荷重の変化率が減少する)。又、図4において、Dで示されている特性グラフは、本実施形態の下記の一例におけるたわみと、設定される給湯温度との関係を示している。
【0026】
そこで、本実施形態では、ステッピングモータ44のステップ量(すなわち、ステップ数)が「0」(バイアスバネ70にバネ荷重を印加しないステップ量)から、バネ荷重が46(N)となる(すなわち、たわみが5mmとなる)ステップ数を所定のステップ数としている。本実施形態では、この所定のステップ数は、具体的には、図2に示すように「1200」としている。図2は、本実施形態のステッピングモータ44のステップ数−給湯温度特性図である。図2において、一点鎖線は、本実施形態の湯水混合栓に求められている要求特性である。
【0027】
この所定のステップ数とは、すなわち、バイアスバネのバネ定数の変化する変化点の位置を指定するステップ量である。この所定のステップ数は、前記バネ定数の変化点と合致するステップ数である。例えば、本実施形態では、ステップ数を1200ステップ数としたときが、バイアスバネのバネ定数の変化点となり、すなわち、バイアスバネ70のたわみが5mmとなる。
【0028】
従って、リモートコントローラ(湯温調節装置)100にて吐水温度の設定温度が設定されて、ステッピングモータ44にこの所定のステップ数となるように該リモートコントローラ100から位置指令が付与されるだけで、このバイアスバネ70のバネ定数の変化点に達する分のたわみをバイアスバネ70に与えることができる。
【0029】
又、バネ定数の変化点を基準として、すなわち、前記所定のステップ数を基準として、バイアスバネ70に2種類の異なるバネ定数の異なる範囲となるステップ数をそれぞれ位置指令として付与することにより、バネ定数が異なるところで、バイアスバネ70を作用させることができる。このことは、例えば、図示しないリモートコントローラ100から、位置指令をモータに付与させる制御プログラムを作成する場合、基準のステップ数が分かっていると、湯水混合栓により温調を行うための制御プログラムを作成する場合、基準を越える位置指令から基準未満の指令かがすぐ理解できるため有利である。
【0030】
さて、上記湯水混合栓では、図示しないリモートコントローラ100からステッピングモータ44に現在の給湯温度よりも低温度となるように給湯温度(設定温度)を設定すべく位置指令が出されたとする。この場合、ステッピングモータ44の出力軸46により、スピンドル50、雄ネジ部材52が回転されて、当接部材60が上方移動する。この結果、バイアスバネ70が退動(伸張)して該バイアスバネ70による付勢力が低下し、バイアスバネ70のバネ力と感温バネ40の付勢力と拮抗する位置まで弁体30が移動するため、弁体30は湯側シートに接近すると共に水側シートから離隔し、設定温度が低下する。
【0031】
ここで、流路孔14a内で水導入口12hから流入した水と、湯導入口12fから流入した湯とが混合されるが、この混合された湯の温度(すなわち、吐水温度)が設定温度よりも低くなると、感温バネのバネ力が減少し、弁体30が湯側シート12eから離間するとともに水側シート14bへ移動して、湯が増加し、水が減少して、吐水温度が高くなる。又、前記混合された湯の温度が設定温度よりも高くなると、感温バネ40のバネ力が増加し、弁体30が水側シート14bから離間するとともに湯側シート12eへ移動して、湯が減少し、水が増加して、吐水温度が低くなる。
【0032】
一方、上記湯水混合栓においては、図示しないリモートコントローラ100からステッピングモータ44に現在の給湯温度よりも高温度となるように給湯温度(設定温度)を設定すべく位置指令が出されたとする。この場合、ステッピングモータ44の出力軸46により、スピンドル50、雄ネジ部材52が回転されて、当接部材60が下方移動する。この結果、バイアスバネ70が前進(圧縮)して該バイアスバネ70による付勢力が増大し、バイアスバネ70のバネ力と感温バネ40の付勢力と拮抗する位置まで弁体30が移動するため、弁体30は湯側シート12eから離隔すると共に水側シート14bに接近し、設定温度が高くなる。
【0033】
ここで、吐水温度が設定温度よりも低くなると、感温バネ40がバネ力が減少し、弁体30が湯側シート12eからより離間(水側シート14b側へ移動)して、湯が増加し、水が減少して、吐水温度が高くなる。又、吐水温度が設定温度よりも高くなると、感温バネ40のバネ力が増加し、弁体30が水側シート14bから離間するとともに湯側シート12eへ移動して、湯が減少し、水が増加して、吐水温度が低くなる。
【0034】
なお、図2に示す比較例1は、たわみにかかわらずバネ定数が略一定であって、変化点がないバイアスバネを採用した場合の特性グラフであり、1200ステップまでのたわみでは、本実施形態と略同様の給湯温度の設定が可能としているものである。しかし、比較例1では、1200ステップを越える場合、略一定のバネ定数であるため、同じステップ数であると、給湯温度は、要求特性とは、かけ離れた低い給湯温度にしか設定できない。仮に、本実施形態と同じ給湯温度に設定したい場合、ステップ数を増大させれば可能であるが、この場合は、弁体30の移動量を多くする必要があり、バルブハウジングの長さが長くなる問題がある。
【0035】
又、図2中の比較例2は、たわみにかかわらずバネ定数が略一定で、かつ、本実施形態のバイアスバネ70よりも大きいバネ定数を有する場合の、特性グラフである。比較例2では、給湯温度の設定は、バネ定数が、本実施形態よりも大きいため、1200ステップまでのステップ数では、要求特性とは、かけ離れた高い給湯温度にしか設定できない問題がある。
【0036】
さて、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態の湯水混合栓の調整方法は、ステッピングモータ44における、バイアスバネ70のバネ定数の変化する変化点の位置を指定するステップ量(ステップ数)と、バイアスバネ70のバネ定数の変化点を合致させて調整するようにした。この結果、バイアスバネ70のバネ定数の変化点をステッピングモータ44の所定のステップ量と合致させるため、モータ制御によってこの変化点(すなわち、モータの特定のステップ量)を基準にした、大又は小のステッピングモータ44の回転量(ステップ量)を指定すれば、バネ定数の異なる領域を、正確に指定することができる。
【0037】
(2) 本実施形態の湯水混合栓は、ステッピングモータ44におけるバイアスバネ70のバネ定数の変化する変化点の位置を指定するステップ量(ステップ数)と、バイアスバネ70のバネ定数の変化点が合致して調整されている。
【0038】
この結果、本実施形態の湯水混合栓は、バイアスバネ70のバネ定数の変化点をステッピングモータ44の所定のステップ量と合致させるため、モータ制御によってこの変化点(すなわち、モータの特定のステップ量)を基準にした、大小のステッピングモータ44の回転量(ステップ量)を指定すれば、バネ定数の異なる領域を、正確に指定することができる。
【0039】
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記実施形態では、ステッピングモータ44をブラケット片42を介して第1ハウジング12に固定したが、ステッピングモータ44は、第1ハウジング12に固定する必要はない。例えば、第1ハウジング12とステッピングモータ44を図示しないケースに固定するようにしてもよい。
【0040】
・ 前記実施形態において詳述したように、図4のAで示したものは一例であり、バイアスバネ70の大径部72、及び小径部74の径の大きさを適宜変更することは勿論可能である。例えば、図4において、Cの特性を有するバイアスバネでは、大径部72の径が11.5mmであり、小径部74の径が9mmのものである。このようなバイアスバネでは、例えば、たわみが7mmのときに、すなわち、原寸(バネ荷重が加わらないときの長さ)から7mm分、縮小したときバネ荷重が50(N)である。この場合、このたわみが7mmの位置がバネ定数の変化点となる。この例では、このたわみ7mmを越えると、バイアスバネ70のバネ定数が増加し(バネ荷重の変化率が増加し)、逆にたわみが7mm未満の場合は、バネ定数が少なくなる(バネ荷重の変化率が減少する)。このようなバイアスバネを使用することも勿論可能である。
【0041】
・ 前記実施形態において、温度調節部材の雄ネジ部材と、当接部材60のネジの螺合関係を逆にしてもよい。すなわち、温度調節部材に雌ネジを設け、当接部材に雄ネジを設けて、互いに螺合させてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…バルブハウジング、12e…湯側シート、14b…水側シート、
30…弁体、40…感温バネ、44…ステッピングモータ、
52…雄ネジ部材(温度調節部材)、60…当接部材、70…バイアスバネ、
100…リモートコントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブハウジング内を移動自在に設けられ、該バルブハウジング内の水側シートと、湯側シートに対して選択的に接離自在に配置された弁体と、
前記弁体を、前記湯側シート側へ向かって付勢する感温バネと、
前記弁体を、前記感温バネの付勢方向と反対側となる前記水側シート側へ向かって付勢するとともに、大径部及び小径部を有して異なるバネ定数を有してコイルスプリング状をなす単体のバイアスバネと、
ステッピングモータと、
前記バルブハウジング内に収容されて、前記ステッピングモータのステップ量に応じて回転する温度調節部材と、
前記温度調節部材と雄・雌の関係で螺合し、前記温度調節部材の回転により、前記バイアスバネに当接して該バイアスバネの伸縮を行う当接部材とを備えた湯水混合栓であって、
前記ステッピングモータの所定のステップ量と、前記バイアスバネのバネ定数の変化点を合致させて調整することを特徴とする湯水混合栓の調整方法。
【請求項2】
バルブハウジング内を移動自在に設けられ、該バルブハウジング内の水側シートと、湯側シートに対して選択的に接離自在に配置された弁体と、
前記弁体を、前記湯側シート側へ向かって付勢する感温バネと、
前記弁体を、前記感温バネの付勢方向と反対側となる前記水側シート側へ向かって付勢するとともに、大径部及び小径部を有して異なるバネ定数を有してコイルスプリング状をなす単体のバイアスバネと、
ステッピングモータと、
前記バルブハウジング内に収容されて、前記ステッピングモータのステップ量に応じて回転する温度調節部材と、
前記温度調節部材と雄・雌の関係で螺合し、前記温度調節部材の回転により、前記バイアスバネに当接して該バイアスバネの伸縮を行う当接部材とを備えた湯水混合栓であって、
前記ステッピングモータの所定のステップ量と、前記バイアスバネのバネ定数の変化点が合致して調整されていることを特徴とする湯水混合栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−276046(P2010−276046A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126518(P2009−126518)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(597014420)マツイ機器工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】