説明

溶接装置及び溶接方法

【課題】ロータ軸の軸心と翼車の重心との位置合わせ精度を従来よりも向上させる。
【解決手段】支持軸の端面に翼車の背面の開先面を当接させて溶接する方法であって、翼車の重心位置を計測する重心計測工程S1と、支持軸の端面に翼車の背面に形成された開先面を当接させた状態で支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線との位置関係を計測する位置計測工程S2と、位置計測工程S2によって中心軸線同士が位置合わせされた支持軸及び翼車について、翼車の重心位置及び支持軸周りの溶接開始位置に基づいて溶接変形による重心位置の変位方向及び変位量を特定する重心変位特定工程S3と、溶接変形後の重心位置が支持軸の中心軸線の延長線に最も近くなるように支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線とを相対的に変位させる位置修正工程S4と、位置修正工程S4によって中心軸線同士が変位した支持軸の端面と翼車の開先面とを溶融接合する接合工程S5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接装置及び溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、過給機のタービンロータ軸の電子ビーム溶接方法が開示されている。この溶接方法は、ロータ軸の端部に凸部を形成する一方、当該端部に溶接接合される翼車の基部に凹部を形成し、上記凸部と凹部とを嵌合させた状態(つまりインロー嵌め状態)でロータ軸及び翼車をロータ軸の回転軸周りに回転させつつロータ軸の端部と翼車の基部との当接部に電子ビームを照射することにより、ロータ軸と翼車とを溶接接合するものである。上記ロータ軸の凸部と翼車の凹部とは、ロータ軸の中心軸線と翼車の重心とが一致するように形成されるので、溶接接合されたロータ軸の中心軸線と翼車の重心とは略一致する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3293712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術では、インロー嵌めのための上記凸部と凹部とは、確実に嵌合するように若干の嵌め合い余裕をもって形成されている。すなわち、凹部の外形は凸部の外形に対して若干大きめに形成されている。このような嵌め合い余裕は、ロータ軸(支持軸)の軸心(中心軸線の位置)と翼車の重心との位置合わせにおける誤差要因となる。
また、上記従来技術では、溶接変形に起因するロータ軸の中心軸線と翼車の重心との位置合わせ誤差を考慮していない。例えば、ロータ軸の端部と翼車の基部との当接部に対する電子ビームの照射開始位置(溶接開始位置)に応じて翼車の重心はロータ軸の中心軸線に対して変位し、この変位が上記中心軸線と重心との誤差となる。
したがって、上記従来技術では、上述したロータ軸と翼車との嵌め合い余裕及び溶接時の溶接変形に起因して、ロータ軸の軸心と翼車の重心との位置合わせ精度が必ずしも十分ではなかった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、支持軸の中心軸線と翼車の重心との位置合わせ精度を従来よりも向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、溶接方法に係る第1の解決手段として、支持軸の端面に翼車の背面に形成された開先面を当接させて接合する溶接方法であって、翼車の重心位置を計測する重心計測工程と、支持軸の端面に翼車の背面に形成された開先面を当接させた状態で支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線との位置関係を計測する位置計測工程と、該位置計測工程によって中心軸線の位置関係が計測された支持軸及び翼車について、翼車の重心位置及び支持軸周りの溶接開始位置に基づいて溶接変形による重心位置の変位方向及び変位量を特定する重心変位特定工程と、溶接変形後の重心位置が支持軸の中心軸線の延長線に最も近くなるように支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線とを相対的に変位させる位置修正工程と、該位置修正工程によって中心軸線同士が変位した支持軸の端面と翼車の開先面との当接部を溶融接合する接合工程とを備える、という手段を採用する。
【0007】
溶接方法に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、重心計測工程では、翼車の背面及び先端面における重心位置をそれぞれ計測し、重心変位特定工程では、溶接変形による各重心位置の変位方向及び変位量を特定し、位置修正工程では、溶接変形後の各重心位置が支持軸の中心軸線の延長線に最も近くなるように支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線とを相対的に変位させる、という手段を採用する。
【0008】
溶接方法に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、位置合わせ工程では、中心軸線が鉛直方向となるように支持軸を支持すると共に当該支持軸の上端面に開先面を当接させた状態に翼車を載置して支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線とを位置合わせし、位置修正工程では、開先面が支持軸の端面に当接した翼車の状態で翼車を側方から押圧して翼車の中心軸線を支持軸の中心軸線に対して変位させる、という手段を採用する。
【0009】
溶接方法に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段において、接合工程では、支持軸の端面と翼車の開先面との当接部にレーザービームを照射して接合させる、という手段を採用する。
【0010】
また、本発明では、溶接装置に係る解決手段として、支持軸の端面に翼車の背面に形成された開先面を当接させた状態で接合する溶接装置であって、支持軸の端面に翼車の背面に形成された開先面を当接させた状態で支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線との位置関係を計測する位置計測手段と、該位置計測手段によって中心軸線の位置関係が計測された支持軸及び翼車について、予め記憶した翼車の重心位置及び支持軸周りの溶接開始位置に基づいて、溶接変形後の重心位置が支持軸の中心軸線の延長線に最も近くなるように支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線とを相対的に変位させる位置修正手段と、該位置修正手段によって中心軸線同士が変位した支持軸の端面と翼車の開先面との当接部を溶融接合させる溶融手段とを備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、支持軸の端面に翼車の背面に形成された開先面を当接させた状態で支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線との位置関係を計測し、翼車の重心位置及び支持軸周りの溶接開始位置に基づいて溶接変形による重心位置の変位方向及び変位量を特定し、溶接変形後の重心位置が支持軸の中心軸線の延長線に最も近くなるように支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線とを相対的に変位させるので、溶接変形に起因する翼車の重心位置と支持軸の中心軸線との偏差を小さくすることが可能である。したがって、このような本発明によれば、支持軸の中心軸線と翼車の重心との位置合わせ精度を従来よりも向上させることが可能である。
また、本発明によれば、従来のインロー嵌めではなく、支持軸の端面に翼車の背面に形成された開先面を当接させた状態で接合するので、嵌め合い余裕に起因する翼車の重心位置と支持軸の中心軸線との偏差が発生しない。したがって、本発明によれば、これによっても支持軸の中心軸線と翼車の重心との位置合わせ精度を従来よりも向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る溶接方法を示す工程図である。
【図2】本発明の一実施形態における翼車20(タービンインペラ)と支持軸30(タービン軸)とが一体的に溶接されてなるタービンロータの側面図(a)と、当該側面図におけるA−A線矢視図(b)である。
【図3】本発明の一実施形態に係る溶接装置1の概略構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は第1の側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る溶接装置1の概略構成を示す第2の側面図である。
【図5】本発明の一実施形態における翼車20の各重心位置G1,G2と支持軸30の中心軸線Cとの位置関係の一例を示すものであり、(a)は翼車20及び支持軸30を側方から見た模式図、(b)は翼車20の上方(先端面側)から見た模式図である。
【図6】本発明の一実施形態における支持軸30の半径R1の算出手法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る溶接方法は、図1に示すように5つの主要工程(ステップS1〜S5)からなるものである。以下では、説明の都合上、溶接対象であるワーク及び当該ワークの溶接接合に使用する溶接装置について、図2〜図4を参照して先に説明する。
【0014】
最初に、本実施形態におけるワークは、図2に示すような翼車20(タービンインペラ)と支持軸30(タービン軸)である。これら翼車20(タービンインペラ)及び支持軸30(タービン軸)は、過給機用ロータを構成する金属部品である。すなわち、翼車20が支持軸30の一端に溶接接合され、また支持軸30の他端にコンプレッサインペラ(図示略)が装着されることにより過給機用ロータが製造される。このような過給機ロータは、過給機のケーシング内に回転自在に収容され、内燃機関から導かれる排気ガスの運動エネルギーを回転駆動力に変換する。
【0015】
上記翼車20は、内燃機関から導かれる排気ガスの流動によって高速回転(例えば、10万rpm以上)する羽根車である。この翼車20は、高温の排気ガスが流動する領域内で使用されるため、高耐熱性・高剛性の金属材料(例えばインコネル等)を用いて一体的に成形された金属部品であり、図2(b)に示すように、ハブ21、翼部22及び翼側開先円23を備えている。なお、図2(b)では、翼車20の背面(支持軸30の接合側)における重心位置を符号G1で示し、また翼車20の先端面(上記接合側も反対側)における重心位置を符号G2で示している。
【0016】
ハブ21は、略円錐状に形成された部材であって、翼部22のベースとなるものである。翼部22は、ハブ21の外周面で周方向に複数並んで配置されている。翼部22は、排気ガスの流動を受けて、翼車20を回転させるためのものである。翼側開先円23は、ハブ21の後端面における中央部に設けられ、支持軸30との接続に用いられる箇所である。翼側開先円23は、略円筒状に形成され、その中心軸が前後方向と平行する向きで設置されている。翼側開先円23の後端面(支持軸30側の端面)は、前後方向と直交する平面(翼側開先面)である。
【0017】
支持軸30は、丸棒形状の金属部品であり、一端が上記翼車20の翼側開先円23と一体的に接合されて翼車20を支持するものである。この支持軸30は、過給機の軸受ハウジング(図示せず)に回転自在に支持される。支持軸30は、高剛性を備える一般的な金属材料(例えばクロムモリブデン鋼等)を用いて成形されている。支持軸30には、軸側接続部31及び雄ネジ部33が設けられている。なお、図2(b)では、支持軸30の中心軸線を符号Cで示している。
【0018】
軸側接続部31は、支持軸30の前端側に設けられ、翼車20の翼側開先円23との接続に用いられる箇所である。また、軸側接続部31の前端面(すなわち翼車20側の端面)は、中心軸線Cに直交する平面(軸側開先面)である。この軸側開先面には、翼側開先円23の翼側開先面が面合わせ状態に当接しており、両部材の当接部の外周近傍領域は後述する溶接装置により一時的に溶融した溶接部Wとなっている。雄ネジ部33は、支持軸30の後端側に設けられ、コンプレッサインペラを接続するためのものである。なお、この図2(b)では、支持軸30の中心軸線Cの延長線上に翼車20の重心位置G1,G2が最も近くなるように支持軸30と翼車20とが溶接接合された状態を示している。
【0019】
続いて、このような翼車20及び支持軸30を前提として、本実施形態に係る溶接装置1について、図3及び図4を参照して説明する。なお、図3及び図4では、装置構成の理解を容易とするために、各部材の大きさを意図的に実際の部材の大きさと変えている。
【0020】
また、以下では、図3(b)及び図4中に示すX-Y-Z直交座標系を参照しながら翼車20及び支持軸30の位置関係を説明する。図3(b)及び図4では、X-Y平面が水平面と平行な基準面として設定され、Z軸がX-Y平面に直交して鉛直方向に延びる座標軸として設定されている。また、図3(a)に示すように、X軸とY軸との交点を装置原点Oとし、この装置原点Oを中心としてX軸から時計回りに(Y軸側の反対側に)135°回転した方向に延びる座標軸をL軸とする。
【0021】
本溶接装置1は、図3及び図4に示すように、ワークテーブル2、チャック3、軸側X軸アクチュエータ4、軸側Y軸アクチュエータ5、軸側L軸アクチュエータ6、翼側X軸アクチュエータ7、翼側Y軸アクチュエータ8、翼側L軸アクチュエータ9、制御装置10、溶接トーチ40及びレーザ発振器41等から構成されている。
【0022】
これら構成要素のうち、軸側X軸アクチュエータ4、軸側Y軸アクチュエータ5、軸側L軸アクチュエータ6、翼側X軸アクチュエータ7、翼側Y軸アクチュエータ8、翼側L軸アクチュエータ9及び制御装置10は位置計測手段を構成している。また、翼側X軸アクチュエータ7、翼側Y軸アクチュエータ8、翼側L軸アクチュエータ9及び制御装置10は位置修正手段を構成している。また、制御装置10、溶接トーチ40及びレーザ発振器4は、溶融手段を構成している。
【0023】
ワークテーブル2は、基準面(X-Y平面)に対して平行となるように設置された円板状の回転テーブルである。このワークテーブル2は、制御装置10による制御の下、モータ等からなる回転駆動機構(図示略)によって回転駆動される。
【0024】
チャック3は、ワークテーブル2の上面に設置されたワーク把持装置であり、上述した中心軸線Cが鉛直方向となる姿勢(つまり中心軸線Cが基準面に直交するZ軸と平行となる姿勢)で支持軸30を把持する。すなわち、支持軸30は、軸側接続部31に設けられた軸側開先面が上側かつ水平面と平行になるようにチャック3に把持される。また、このようなチャック3は、支持軸30を中心軸線C回りに回転させる回転駆動機能を備えている。さらに、図示していないが、本溶接装置1には翼車20を把持するワーク把持装置も設けられており、翼車20は、当該ワーク把持装置によって、翼側開先円23の翼側開先面が上記軸側開先面と面合わせした状態で支持軸30上に載置(仮置き)される。
【0025】
ここで、図3(a)に示す符号Mは、ワークテーブル2が回転した時の基準面(X-Y平面)内における支持軸30の中心軸線Cの移動軌跡を示している。ワークテーブル2は、所定の回転軸周りに回転することにより、支持軸30の中心軸線Cが移動軌跡Mに沿って移動し、また基準面に設定された装置原点Oの近傍を通過するようにチャック3を移動させる。図3(b)は、このようなワークテーブル2の回転によって、支持軸30の中心軸線Cが装置原点Oの近傍に位置決めされた状態を示している。
【0026】
軸側X軸アクチュエータ4は、制御装置10による制御の下、支持軸30に接触する軸側接触子4aをX軸に沿って移動させる直動アクチュエータである。軸側Y軸アクチュエータ5、制御装置10による制御の下、支持軸30に接触する軸側接触子5aをY軸に沿って移動させる直動アクチュエータである。軸側L軸アクチュエータ6は、制御装置10による制御の下、支持軸30に接触する軸側接触子6aをL軸に沿って移動させる直動アクチュエータである。
【0027】
また、翼側X軸アクチュエータ7は、制御装置10による制御の下、翼車20の翼側開先円23に接触する翼側接触子7aをX軸に沿って移動させる直動アクチュエータである。翼側Y軸アクチュエータ8は、制御装置10による制御の下、翼車20の翼側開先円23に接触する翼側接触子8aをY軸に沿って移動させる直動アクチュエータである。翼側L軸アクチュエータ9は、制御装置10による制御の下、翼車20の翼側開先円23に接触する翼側接触子9aをL軸に沿って移動させる直動アクチュエータである。
【0028】
上記軸側X軸アクチュエータ4と翼側X軸アクチュエータ7は、同一構造のアクチュエータであり、Z軸方向に対して重なり合うように配置されている。また、軸側Y軸アクチュエータ5と翼側Y軸アクチュエータ8は、同一構造のアクチュエータであり、Z軸方向に対して重なり合うように配置されている。また、軸側L軸アクチュエータ6と翼側L軸アクチュエータ9は、同一構造のアクチュエータであり、Z軸方向に対して重なり合うように配置されている。これら合計6個のアクチュエータ4〜9は、基準面内の装置原点Oで交わる3つの座標軸(X軸、Y軸、L軸)に沿って、支持軸30に接触する軸側接触子4a、5a、6a及び翼車20の翼側開先円23に接触する翼側接触子7a、8a、9aを移動させる。
【0029】
図3(a)に示すように、ワークテーブル2の回転によって支持軸30の中心軸線Cが装置原点Oの近傍に位置決めされた状態では、支持軸30は合計6個のアクチュエータ4〜9によって囲まれた状態となるが、この状態からワークテーブル2が反時計回りに所定角度だけ回転すると、支持軸30は、図4に示すように溶接トーチ40と対向する状態となる。
【0030】
すなわち、溶接トーチ40は、制御装置10による制御の下、図示しないトーチ駆動機構によってZ軸方向の位置(高さ)が翼車20の翼側開先面と支持軸30の軸側開先面との面合わせ位置、かつ、軸側開先面の周辺(軸側接続部31の周面)から所定距離隔てた位置に位置設定される。このような溶接トーチ40には、レーザ発振器41から所定出力の溶接用レーザ光が供給される。溶接トーチ40は、この溶接用レーザ光をレーザービームとしてワーク(翼車20及び支持軸30)に向けて照射することにより相互に接合させる。レーザ発振器41は、例えばYAGレーザであり、制御装置10による制御の下、溶接用レーザ光を光ファイバを介して溶接トーチ40に供給する。
【0031】
制御装置10は、所定の制御プログラムに基づいて動作する一種のコンピュータであり、当該制御プログラムに基づいて、上記ワークテーブル2、チャック3、各アクチュエータ4〜9及びレーザ発振器41等を制御する。すなわち、制御装置10は、制御プログラムに基づいて、ワークテーブル2(詳細には回転駆動機構)を回転制御して支持軸30の中心軸線Cが装置原点Oと一致するようにチャック3を移動させた後、各アクチュエータ4〜9を制御して、支持軸30と各軸側接触子4a、5a、6aとの接触位置と、翼車20の翼側開先円23と各翼側接触子7a、8a、9aとの接触位置とを計測し、このれら計測結果に基づいて支持軸30の中心軸線Cが座標(xj,yj)及び翼車20の中心軸線Caが座標(xi,yi)を演算する。
【0032】
また、制御装置10は、例えばLAN等の通信ネットワークに接続されており、上記制御プログラムに基づいて、上記翼車20の支持軸30に対する水平位置の調整に必要なデータを外部から取得して内部に記憶する。上記通信ネットワークには、制御装置10が上記制御プログラムに基づいて各部を制御するために必要なデータを提供する各種装置が接続されている。この各種装置の1つは、翼車20の背面及び先端面における重心位置G1,G2に関するデータ(重心データ)を当該重心位置G1,G2を計測するバランス計測装置であり、周知のものである。
【0033】
また、制御装置10は、上記重心データ、支持軸30の中心軸線Cが座標(xj,yj)及び翼車20の中心軸線Caが座標(xi,yi)及び溶接開始位置、また内部メモリに予め記憶された溶接変形データに基づいて、ワーク(翼車20及び支持軸30)の溶接変形を特定する。また、制御装置10は、上記溶接変形に基づいて、翼車20と支持軸30との溶接接合後における翼車20の背面における重心位置G1と翼車20の先端面における重心位置G2とが支持軸30の中心軸線Cの延長線に最も近くなるように翼車20の支持軸30に対する水平位置(X位置及び/あるいはY位置)を調整する。なお、上記溶接変形データの詳細については後述する。
【0034】
さらに、制御装置10は、上記制御プログラムに基づいて、上記チャック3、トーチ駆動機構やレーザ発振器41等を制御することにより、回転状態のワーク(翼車20及び支持軸30)に所定のタイミングで溶接トーチ40からレーザービームを照射することにより支持軸30と翼車20とを溶接接合させる。上記溶接開始位置は、回転状態にあるワークの周方向において、レーザービームが最初に照射される部位に相当する位置である。なお、このような制御装置10の各種処理については、詳細を後述する。
【0035】
次に、このような溶接装置1、ワーク(翼車20及び支持軸30)及びバランス計測装置を用いた本溶接方法について、図1に示す工程図に沿って詳しく説明する。なお、この工程図に示す主要工程(ステップS1〜S5)のうち、重心計測工程(ステップS1)は上記バランス計測装置を用いた処理工程であり、残りの位置計測工程(ステップS2)、重心変位特定工程(ステップS3)、位置修正工程(ステップS4)及び接合工程(ステップS5)は、溶接装置1を用いた処理工程である。
【0036】
最初の重心計測工程(ステップS1)では、上記バランス計測装置を用いることにより翼車20の背面における重心位置G1と翼車20の先端面における重心位置G2とが計測される。すなわち、バランス計測装置は、翼車20の翼側開先円23をチャッキングして当該翼側開先円23の中心軸線Ca(回転中心線)周りに回転させることにより、翼車20の背面における重心位置G1と翼車20の先端面における重心位置G2とを個別に計測する。
【0037】
このような各重心位置G1,G2は、図5(b)に示すように、基準面(X-Y平面)上において翼車20の周方向における基準位置Psを起点とする方位角θ1,θ2と当該方位角θにおける回転中心線Caからの変位量h1,h2とによって示される。図5(b)では、一例として方位角θ1,θ2が何れも90度であり、また背面における重心位置G1の変位量h1が先端面における重心位置G2の変位量h2よりも大きい状態を示している。
【0038】
このように重心計測工程(ステップS1)は、バランス計測装置を用いるものであり、溶接装置1を用いたステップS2〜S5の前工程として行われるものである。溶接装置1の制御装置10は、このような前工程の結果である翼車20の重心位置G1,G2に関するデータ(重心データ)をバランス計測装置からステップS2〜S5に先立って取得して内部メモリに記憶する。
【0039】
次の位置計測工程(ステップS2)では、ワークテーブル2の回転によって支持軸30の中心軸線Cが装置原点Oの近傍に位置決めされた図3の状態で、合計6個のアクチュエータ4〜9を用いた翼車20の中心軸線Ca及び支持軸30の中心軸線Cの計測処理が行われる。すなわち、制御装置10は、軸側X軸アクチュエータ4、軸側Y軸アクチュエータ5及び軸側L軸アクチュエータ6を力制御モードで作動させて各軸側接触子4a,5a,6aを支持軸30へ向けて最小力で移動させ、各軸側接触子4a,5a,6aの先端面が支持軸30の周面に接触して静止した位置を軸側接触位置TX1,TY1,TL1として計測し、この計測結果を内部メモリに記憶する。そして、制御装置10は、内部メモリに記憶した各軸側接触位置TX1,TY1,TL1を用いて以下のように支持軸30の半径R1を算出する。
【0040】
以下では、図6を参照することにより、支持軸30の半径R1及び中心軸線Cを計測値である各軸側接触位置TX1,TY1,TL1に基づいて算出する手法を詳説する。図6における符号TX1,TY1,TL1は、上記の軸側接触位置を示し、符号TX0、TY0、TL0は、各軸側接触子4a,5a,6aの先端面の初期位置(基準位置)を示している。また、図6における符号X0は、装置原点Oから軸側接触子4aの初期位置TX0までのX軸方向の距離を示し、符号X1は、装置原点Oから軸側接触子4aの軸側接触位置TX1までのX軸方向の距離を示し、符号Xmは、軸側接触子4aの初期位置TX0から軸側接触位置TX1までのX軸方向の距離を示している。
【0041】
また、図6における符号Y0は、装置原点Oから軸側接触子5aの初期位置TY0までのY軸方向の距離を示し、符号Y1は、装置原点Oから軸側接触子5aの軸側接触位置TY1までのY軸方向の距離を示し、符号Ymは、軸側接触子5aの初期位置TY0から軸側接触位置TY1までのY軸方向の距離を示している。また、図6における符号L0は、装置原点Oから軸側接触子6aの初期位置TL0までのL軸方向の距離を示し、符号L1は、装置原点Oから軸側接触子6aの軸側接触位置TL1までのL軸方向の距離を示し、符号Lmは、軸側接触子6aの初期位置TL0から軸側接触位置TL1までのL軸方向の距離を示している。
【0042】
ここで、X1=X0−Xm、Y1=Y0−Ym、L1=L0−Lmの関係式が成立し、距離X0,Y0,L0は既知の値であり、距離Xm,Ym,Lmは軸側接触位置TX1、TY1、TL1から求まる値であるので、結果的に、距離X1,Y1,L1は数値演算によって求めることができる。
【0043】
また、図6中の符号Dで示される直線の長さは、距離X1,Y1,L1を用いて下記(1)式で表される。この下記(1)式において、距離X2は距離L1のX軸成分(=L1/√2)であり、距離Y2は距離L1のY軸成分(=L1/√2)である。
D=X1+Y1+X2+Y2
=X1+Y2+(L1/√2)+(L1/√2)
=X1+Y2+L1√2 ・・・(1)
【0044】
また、符号Eで示される直線の長さは、長さDを用いると下記(2)式で表され、支持軸30の半径R1を用いると下記(3)式で表される。従って、支持軸30の半径R1は、(2)(3)式から最終的に下記(4)式で表される。
E=D/√2 ・・・(2)
E=√2・R1+R1 ・・・(3)
R1=D/√2+2=D/3.4142 ・・・(4)
つまり、制御装置10は、軸側接触位置TX1,TY1,TL1の計測結果から算出した距離X1,Y1,L1を上記(1)式に代入して長さDを求め、さらに、この長さDを上記(4)式に代入することにより、支持軸30の半径R1を算出する。
【0045】
そして、制御装置10は、このようにして得られた半径R1と軸側接触位置TX1,TY1とに基づいて基準面(X-Y平面)における支持軸30の中心軸線Cの座標を計算する。すなわち、中心軸線CのX座標xjは、軸側接触位置TX1からX軸のマイナス方向に半径R1だけ移動した位置として求められ、また中心軸線CのY座標yjは、軸側接触位置TY1からY軸のマイナス方向に半径R1だけ移動した位置として求められる。
【0046】
制御装置10は、上記のように支持軸30の半径R1及び中心軸線Cの座標を算出すると、当該算出結果を内部メモリに記録した後、軸側X軸アクチュエータ4、軸側Y軸アクチュエータ5及び軸側L軸アクチュエータ6を位置制御モードで作動させて各軸側接触子4a、5a、6aを軸側接触位置TX1,TY1,TL1にて固定する。これにより、支持軸30は、上述した位置計測時の位置つまり中心軸線Cが座標(xj,yj)となる位置に固定される。
【0047】
続いて、制御装置10は、翼側X軸アクチュエータ7、翼側Y軸アクチュエータ8及び翼側L軸アクチュエータ9を力制御モードで作動させることにより各翼側接触子7a、8a、9aを翼車20の翼側開先円23へ向けて最小力で移動させ、各翼側接触子7a、8a、9aがの先端面が翼側開先円23に接触して静止した位置をそれぞれ翼側接触位置として計測し、当該計測結果を内部メモリに記録する。
【0048】
そして、制御装置10は、上述した支持軸30の位置計測の場合と同様にして、各翼側接触位置の計測結果から翼側開先円23の半径R2及び中心軸線Caの座標(xi,yi)を算出し、当該算出結果を内部メモリに記録する。そして、制御装置10は、翼側X軸アクチュエータ7、翼側Y軸アクチュエータ8及び翼側L軸アクチュエータ9を位置制御モードで作動させることにより、中心軸線Caが座標(xi,yi)となる位置に翼車20を固定する。
【0049】
重心変位特定工程(ステップS3)では、上記重心データ、位置計測処理の結果及び溶接トーチ40による溶接開始位置等に基づいて、後工程のステップS5におけるワークの溶接に起因する溶接変形後の各重心位置G1,G2の変位方向と変位量とが制御装置10によって特定される。
【0050】
すなわち、制御装置10は、内部メモリに記憶した各重心位置G1,G2に関する方位角θ1,θ2及び変位量h1,h2、支持軸30の中心軸線Cの座標(xj,yj)及び翼車20の中心軸線Caの座標(xi,yi)、並びにワーク(翼車20及び支持軸30)の溶接開始位置(回転状態のワークに対するレーザービームの照射タイミング)等に基づいて、溶接変形後の各重心位置G1,G2の変位方向と変位量とを特定する。
【0051】
以下では、図5(a)、(b)を参照して重心変位特定工程における演算処理について詳しく説明する。なお、レーザービームによる翼車20と支持軸30との溶接接合に起因する溶接変形は、主に翼車20の支持軸30に対する倒れである。
【0052】
すなわち、翼車20の翼側開先円23の下端面である翼側開先面を支持軸30の軸側接続部31の上端面である軸側開先面とを面合わせした状態では、翼車20の中心軸線Caは、基準面(X-Y平面)に対して垂直な状態、つまり支持軸30の中心軸線Cに対して平行な状態となるが、レーザービームによる入熱によって翼車20の翼側開先面(つまり支持軸30の軸側開先面)の高さ位置を起点として支持軸30の中心軸線Cに対して所定角度がけ傾く傾向がある。
【0053】
この支持軸30の中心軸線Cに対する翼車20の中心軸線Caの傾き方向θnは、レーザービームによる溶接開始位置に相関があり、また当該傾き量hnは、レーザービームの出力や翼車20及び支持軸30の材質や性状等に依存する。そして、これら傾き方向θn及び傾き量hnは、事前実験によって精度良く見積ることが可能である。
【0054】
制御装置10は、溶接開始位置に対応する傾き方向θnと、溶接トーチ40がワークに照射するレーザービームの出力やワーク(翼車20及び支持軸30)に対応する傾き量hnとからなる溶接変形データを予め内部メモリに記憶しており、当該溶接変形データに基づいて溶接変形に起因する各重心位置G1,G2の変位方向を上記傾き方向θnとして特定すると共に変位量を上記傾き量hnとして特定する。
【0055】
例えば、図5(b)に示す基準位置Psを溶接開始位置とした場合における傾き方向θnが90度であった場合、翼車20は、図5(a)の右側の図つまり(溶接状態)に示すように、支持軸30の中心軸線Cに対して左側に倒れることになる。なお、上記傾き量hnは、レーザービームの出力やワーク(翼車20及び支持軸30)の材質等が決定されることによって固定値として与えられるが、傾き方向θnは、溶接開始位置に応じて可変することができる。
【0056】
位置修正工程(ステップS4)では、上記重心変位特定工程(ステップS3)の演算結果に基づいて翼側X軸アクチュエータ7、翼側Y軸アクチュエータ8及び翼側L軸アクチュエータ9を作動させることにより、支持軸30の中心軸線Cに対する翼車20の水平位置が修正(調整)される。
【0057】
すなわち、制御装置10は、X軸、Y軸及びZ軸からなる直交3次元座標系において2つの重心位置G1,G2を通る直線の方程式を評価対象方程式Lsとして求めると共に、支持軸30の中心軸線Cの方程式を基準直線Lrとして、また翼車20の中心軸線Caの方程式を操作対象直線Lcとして求める。そして、制御装置10は、評価対象方程式Lsの基準直線Lrに対する倒れ角φを求め、上記傾き量hnが倒れ角φを最小化する溶接開始位置を求める。
【0058】
例えば、図5(b)に示す場合では、溶接開始位置を基準位置Psに設定した場合に溶接変形による傾き方向θnが評価対象方程式Lsの倒れ方向と正反対の方向となるので、倒れ角φが傾き量hnによって最小化する。これに対して、例えば溶接開始位置を基準位置Psから180度変位した位置に設定した場合には、溶接変形による傾き方向θnが補正対象方程式Lsの倒れ方向と同一方向となるので、倒れ角φが傾き量hnの分だけ大きくなってしまう。
【0059】
制御装置10は、このようにして倒れ角φが傾き量hnによって最小化する溶接開始位置を決定すると、評価対象方程式Lsを傾き量hnによって補正することにより倒れ角φが傾き量hnによって最小化された評価対象方程式(修正対象方程式Ls1)を求め、さらに当該修正対象方程式Ls1上における各重心位置G1,G2の修正位置(修正重心位置)を求める。
【0060】
そして、制御装置10は、各重心位置G1,G2の修正重心位置が基準直線Lr(つまり支持軸30の中心軸線Cの延長線)に最も近くなる、つまり各重心位置G1,G2の修正重心位置と基準直線Lr(つまり支持軸30の中心軸線Cの延長線)との距離が最小化する操作対象直線Lcの操作量、つまりX軸方向における翼車20の移動量xc及びY軸方向における翼車20の移動量ycを計算する。
【0061】
このような移動量xc及び移動量ycは、例えば重心位置G1の修正重心位置と重心位置G2の修正重心位置とが支持軸30の中心軸線Cの延長線に対して同一距離となる条件を満足するものとして求められる。すなわち、図5(b)の二点鎖線(仮想線)で示すように、重心位置G1の修正重心位置と重心位置G2の修正重心位置とが基準面(X-Y平面)上で支持軸30の中心軸線Cを挟んで同一距離となるように翼車20を移動させることにより、2つの修正重心位置は支持軸30の中心軸線Cの延長線に最も近くなるので、支持軸30に対する翼車20のバランス状態が最も良好な状態となる。
【0062】
そして、制御装置10は、このようにして翼車20の移動量xc,ycを計算すると、翼側X軸アクチュエータ7、翼側Y軸アクチュエータ8及び翼側L軸アクチュエータ9を位置制御モードで作動させることにより、翼車20を支持軸30に対して上記移動量xc,ycだけ変位させ、位置修正工程(ステップS4)を終了する。
【0063】
最後の接合工程(ステップS5)では、溶接トーチ40とレーザ発振器41とが作動することによりワーク(翼車20及び支持軸30)が溶接接合される。
すなわち、制御装置10は、位置修正工程(ステップS4)が完了すると、ワークテーブル2を反時計回りに所定角度だけ回転させることにより、支持軸30を中心軸線Cが装置原点Oの近傍に位置決めされた状態から溶接トーチ40に対向する状態に移動させる。そして、制御装置10は、トーチ駆動機構を作動させることにより溶接トーチ40を翼車20の翼側開先面と支持軸30の軸側開先面との面合わせ位置、かつ、軸側開先面の周辺(軸側接続部31の周面)から所定距離隔てた位置に位置設定させる。
【0064】
さらに、制御装置10は、チャック3に回転指示信号を出力することにより支持軸30及び翼車20を回転させ、この回転速度が所定の速度に到達すると、レーザ発振器41を作動させてレーザ光を溶接トーチ40に供給する。この結果、翼車20の翼側開先面と支持軸30の軸側開先面との当接部の外周にレーザービームが順次照射されて溶接部Wが形成され、翼車20と支持軸30とが溶接接合される。
【0065】
このような本実施形態によれば、支持軸30の軸側開先面に翼車20の背面に形成された翼側開先面を当接させた状態で支持軸30の中心軸線Cと翼車20の中心軸線Caとの位置関係を計測し、翼車20の重心位置Ca及び支持軸30周りの溶接開始位置に基づいて翼車20の倒れ(溶接変形)による各重心位置G1,G2の変位方向θn及び変位量hnを特定し、溶接変形後の重心位置が支持軸30の中心軸線Cの延長線に最も近くなるように支持軸30の中心軸線Cに対して翼車20の中心軸線Caを変位させるので、溶接変形に起因する翼車20の重心位置G1,G2と支持軸30の中心軸線Cとの偏差を小さくすることが可能であり、よって支持軸30の中心軸線Cと翼車20の重心位置G1,G2との位置合わせ精度を従来よりも向上させることが可能である。
【0066】
また、本発明によれば、従来のインロー嵌めではなく、支持軸30の軸側開先面(平面)に翼車20の背面に形成された軸側開先面(平面)を当接させた状態で溶接接合するので、従来のようなインロー嵌めの嵌め合い余裕に起因する翼車の重心位置と支持軸の中心軸線との偏差が発生せず、これによっても支持軸30の中心軸線Cと翼車20の重心位置G1,G2との位置合わせ精度を従来よりも向上させることが可能である。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、本発明をタービンインペラ20(翼車)とタービン軸30(支持軸)との溶接接合に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、タービンインペラ20及びタービン軸30以外の様々な回転部材の溶接接合に適用可能である。
【0068】
(2)上記実施形態では、翼車20に関する2つの重心位置、つまり背面における重心位置G1と先端面における重心位置G2とを求めて支持軸30と翼車20とのバランスを最小化する溶接方法について説明したが、本発明はこれに限定さない。例えば、翼車について単一の重心位置を計測して支持軸と溶接接合することは従来から行われている事項であり、本発明は、このような単一の重心位置が計測された翼車にも適用可能である。
【0069】
(3)上記実施形態では、レーザービームを用いてワーク(翼車20及び支持軸30)を溶接したが、本発明はこれに限定されない。例えば電子ビームをワーク(翼車20及び支持軸30)に照射して溶接接合してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…溶接装置、2…ワークテーブル、3…チャック、4…軸側X軸アクチュエータ、5…軸側Y軸アクチュエータ、6…軸側L軸アクチュエータ、7…翼側X軸アクチュエータ、8…翼側Y軸アクチュエータ、9…翼側L軸アクチュエータ、10…制御装置、20…翼車、30…支持軸、40…溶接トーチ、41…レーザ発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持軸の端面に翼車の背面に形成された開先面を当接させて接合する溶接方法であって、
翼車の重心位置を計測する重心計測工程と、
支持軸の端面に翼車の背面に形成された開先面を当接させた状態で支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線との位置関係を計測する位置計測工程と、
該位置計測工程によって中心軸線の位置関係が計測された支持軸及び翼車について、翼車の重心位置及び支持軸周りの溶接開始位置に基づいて溶接変形による重心位置の変位方向及び変位量を特定する重心変位特定工程と、
溶接変形後の重心位置が支持軸の中心軸線の延長線に最も近くなるように支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線とを相対的に変位させる位置修正工程と、
該位置修正工程によって中心軸線同士が変位した支持軸の端面と翼車の開先面との当接部を溶融接合する接合工程と
を備えることを特徴とする溶接方法。
【請求項2】
重心計測工程では、翼車の背面及び先端面における重心位置をそれぞれ計測し、
重心変位特定工程では、溶接変形による各重心位置の変位方向及び変位量を特定し、
位置修正工程では、溶接変形後の各重心位置が支持軸の中心軸線の延長線に最も近くなるように支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線とを相対的に変位させることを特徴とする請求項1記載の溶接方法。
【請求項3】
位置計測工程では、中心軸線が鉛直方向となるように支持軸を支持すると共に当該支持軸の上端面に開先面を当接させた状態に翼車を載置して支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線との位置関係を計測し、
位置修正工程では、開先面が支持軸の端面に当接した翼車の状態で翼車を側方から押圧して翼車の中心軸線を支持軸の中心軸線に対して変位させる
ことを特徴とする請求項1または2記載の溶接方法。
【請求項4】
接合工程では、支持軸の端面と翼車の開先面との当接部にレーザービームを照射して接合させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶接方法。
【請求項5】
支持軸の端面に翼車の背面に形成された開先面を当接させた状態で接合する溶接装置であって、
支持軸の端面に翼車の背面に形成された開先面を当接させた状態で支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線との位置関係を計測する位置計測手段と、
該位置計測手段によって中心軸線の位置関係が計測された支持軸及び翼車について、予め記憶した翼車の重心位置及び支持軸周りの溶接開始位置に基づいて、溶接変形後の重心位置が支持軸の中心軸線の延長線に最も近くなるように支持軸の中心軸線と翼車の中心軸線とを相対的に変位させる位置修正手段と、
該位置修正手段によって中心軸線同士が変位した支持軸の端面と翼車の開先面との当接部を溶融接合させる溶融手段と
を備えることを特徴とする溶接装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−764(P2013−764A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133145(P2011−133145)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】