溶接部検出方法
【課題】ワークの溶接部の検出に要する時間を短縮できるとともに、低コストで溶接部の検出を行うことができる溶接部検出方法を提供する。
【解決手段】ワークの溶接部Yを検出する溶接部検出方法であって、ワーク100の伸長量とくびれの幅Lとの相関と、ワークの板幅Hおよび板厚Dの少なくとも一方のワーク100の伸長前後における変化量とくびれの幅Lとの相関とのうち、少なくとも一方の相関を予め求めておき、伸長量および変化量とくびれの幅Lとの相関が求められているワーク100の伸長量、板幅H、および板厚Dを取得することにより、相関に基づいて、くびれの幅Lを算出する算出工程と、算出工程で算出されるくびれの幅Lに応じて、搬送速度V2を設定する設定工程と、設定工程で設定される搬送速度V2でワーク100を搬送しながら、所定の間隔でワークの板幅Hを測定することにより、くびれ101を検出する検出工程とを含む。
【解決手段】ワークの溶接部Yを検出する溶接部検出方法であって、ワーク100の伸長量とくびれの幅Lとの相関と、ワークの板幅Hおよび板厚Dの少なくとも一方のワーク100の伸長前後における変化量とくびれの幅Lとの相関とのうち、少なくとも一方の相関を予め求めておき、伸長量および変化量とくびれの幅Lとの相関が求められているワーク100の伸長量、板幅H、および板厚Dを取得することにより、相関に基づいて、くびれの幅Lを算出する算出工程と、算出工程で算出されるくびれの幅Lに応じて、搬送速度V2を設定する設定工程と、設定工程で設定される搬送速度V2でワーク100を搬送しながら、所定の間隔でワークの板幅Hを測定することにより、くびれ101を検出する検出工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの溶接部の位置を検出する溶接部検出方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、板状部材の端部と端部とを溶接して接合してワークを形成した場合、前記ワークには溶接部が形成される。ワークにおいて、溶接部はその他の部分と比較してその特性、例えば、硬さ等が異なる。このため、溶接部だけを検査する、あるいは、溶接部以外の部分に加工を行うために、溶接部の位置を検出する必要がある。
しかし、圧延等によって伸長されるワークの溶接部を作業者が目視確認して検出する場合には、溶接部の位置が非常にわかりにくいため、検出に要する時間が長くなるという問題があった。このようなワークとしては、例えば、金属リングおよび金属帯等がある。
【0003】
以上のような問題を解消する溶接部検出方法として、以下に示す特許文献1および特許文献2のような技術が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された技術は、圧延後のワークの溶接部を検出するための技術であり、移動可能な検出用センサを用いる。
検出用センサは、ワークの内側に渦電流を発生させるとともに、当該渦電流を検出部によって検出することで溶接部の検出を行う。また、検出部によって検出される検出信号は、フィルタリング部でフィルタリングされる。このような検出センサを移動させて溶接部の検出を行う。
これによれば、検出信号に含まれるノイズがフィルタリング部で除去されるため、圧延後のワークの溶接部を検出できる。
【0005】
特許文献1に開示された技術は、渦電流によるインピーダンス変化を検出することで溶接部を検出する方法である。このため、熱処理を行ったワークの溶接部を検出する場合には、ワークの結晶組成が均一化されているため、溶接部が検出できない場合があった。つまり、検出精度が低下する場合があるという点で不利であった。
【0006】
また、特許文献2に開示された技術は金属リングの欠陥を検出するための技術であり、駆動プーリ、従動プーリ、および基準指標検出機構を用いる。
駆動プーリおよび従動プーリには、金属リングが巻回される。基準指標検出機構は、駆動プーリと従動プーリとの間に配置され、溶接部に金属リングの板幅に沿って形成される溶接跡を画像認識する。
駆動プーリを回動させてワークを搬送し、基準指標検出機構によって溶接跡の位置を検出する。また、金属リングの欠陥を検出する機構によって欠陥の検出が行われ、当該検出された位置は、溶接跡からの相対的な位置として特定される。
このような溶接跡を検出する基準指標検出機構を用いることにより、ワークの溶接部を検出できる。
【0007】
しかし、特許文献2に開示された技術を用いてワークの溶接部を検出した場合、溶接の条件、例えば、ビードの幅等によって溶接跡の形状および色合い等が変化する場合がある。つまり、溶接跡が見えにくくなる場合があり、ひいては、溶接跡を検出できない場合があるため、溶接部の検出精度が低下する場合があるという点で不利であった。また、検出精度を向上させるために、駆動プーリの回転数を下げることが考えられるが、この場合、溶接部の検出に要する時間が長くなってしまう。
【0008】
また、溶接後に圧延されたワークの溶接部には、板幅方向の内側に向かって切り欠かれたようなくびれ(微小変化)が形成される。
このようなくびれを検出することでワークの溶接部を検出することが考えられるが、当該くびれを短い時間で検出するためには、ワークの搬送速度を速くする必要があり、測定間隔の非常に短い高価なセンサを用いる必要がある。つまり、コストがかかるという点で不利であった。
一方、測定間隔の長いセンサを用いた場合には、くびれを読み飛ばさないようにするために、くびれを搬送する速度を遅くする必要がある。つまり、溶接部の検出に要する時間が長くなってしまうという点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−151455号公報
【特許文献2】特開2005−283303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、ワークの溶接部の検出に要する時間を短縮するとともに、低コストで溶接部の検出を行うことが可能な溶接部検出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1においては、溶接部を有するワークを伸長したときに、該ワークの溶接部に形成されるくびれを検出することにより、前記ワークの溶接部を検出する溶接部検出方法であって、前記ワークの伸長量と前記くびれの幅との相関と、前記ワークの板幅および板厚の少なくとも一方の前記ワークの伸長前後における変化量と前記くびれの幅との相関とのうち、少なくとも一方の相関を予め求めておき、前記伸長量および前記変化量と前記くびれの幅との相関が求められているワークの伸長量、板幅、および板厚を取得することにより、前記相関に基づいて、前記くびれの幅を算出する算出工程と、前記算出工程で算出されるくびれの幅に応じて、前記くびれを検出する際の前記ワークの搬送速度を設定する設定工程と、前記設定工程で設定されるワークの搬送速度で前記ワークを搬送しながら、所定の間隔で前記ワークの板幅を測定することにより、前記くびれを検出する検出工程と、を含むものである。
【0012】
請求項2においては、前記検出工程で前記くびれが検出されなかったときに、前記くびれを検出する際のワークの搬送速度および前記ワークの板幅の測定間隔の少なくともいずれかを再設定する再設定工程をさらに含み、前記検出工程は、前記再設定工程で再設定される前記搬送速度および測定間隔で前記ワークの板幅を測定することにより、前記くびれを検出するものである。
【0013】
請求項3においては、溶接部を有するワークを伸長したときに、該ワークの溶接部に形成されるくびれを、前記ワークを所定の搬送速度で搬送しながら検出することにより、前記ワークの溶接部を検出する溶接部検出方法であって、前記くびれを検出する際の前記ワークの搬送速度よりも速い速度で前記ワークを搬送しながら、前記ワークの板幅を測定することにより、前記くびれの位置候補を算出する算出工程と、前記くびれを検出する際の前記ワークの搬送速度で、前記算出工程で算出される位置候補の板幅を測定することにより、前記くびれを検出する検出工程と、を含むものである。
【0014】
請求項4においては、前記算出工程では、アナログ出力を用いて前記ワークの板幅を測定し、前記検出工程では、デジタル出力を用いて前記位置候補の板幅を測定するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ワークの溶接部の検出において、溶接部に形成されるくびれを検出する速度を最適に設定できる、あるいは、くびれを検出する範囲を減らすことができるため、ワークの溶接部の検出に要する時間を短縮できるとともに、低コストで溶接部の検出を行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】金属リングの溶接部を検出する第一実施形態の溶接部検出装置の全体的な構成を示す斜視図。
【図2】金属リングの溶接部を検出する第一実施形態の溶接部検出装置の動作を示す平面図。(a)ワークを取り付けた状態を示す図。(b)高速で板幅を測定する状態を示す図。(c)低速で板幅を測定する状態を示す図。(d)溶接部を停止位置へ移動した状態を示す図。
【図3】金属リングの溶接部を検出する第一実施形態の溶接部検出装置の動作を示すフロー図。
【図4】金属帯の溶接部を検出する第一実施形態の溶接部検出装置の動作を示す側面図。(a)ワークを取り付けた状態を示す図。(b)高速で板幅を測定する状態を示す図。(c)低速で板幅を測定する状態を示す図。
【図5】金属帯の溶接部を検出する第一実施形態の溶接部検出装置の動作を示すフロー図。
【図6】金属リングの溶接部を検出する第二実施形態の溶接部検出装置の動作を示すフロー図。
【図7】位置候補の算出に際して高速でワークの板幅を測定した結果を示すグラフ図。
【図8】金属リングの溶接部を検出する第二実施形態の溶接部検出装置の動作を示す側面図。(a)位置候補を算出した状態を示す図。(b)低速で位置候補の板幅を測定する状態を示す図。(c)低速で溶接部の板幅を測定する状態を示す図。(d)溶接部を停止位置へ移動した状態を示す図。
【図9】金属帯の溶接部を検出する第二実施形態の溶接部検出装置の動作を示すフロー図。
【図10】金属リングを成形する工程を示す図。
【図11】伸長量が最も小さい金属リングを点Aで切断した場合の金属リングの板面を示す説明図。
【図12】伸長量が最も大きい金属リングを点Aで切断した場合の金属リングの板面を示す説明図。
【図13】金属リングの板幅を測定した結果を示すグラフ図。(a)伸長量が最も小さい金属リングの結果を示す図。(b)伸長量が最も大きい金属リングの結果を示す図。
【図14】くびれの幅と板幅の緩やかな変化量との相関を示す図。
【図15】金属リングのくびれを示す拡大側面図。(a)伸長量が最も小さい金属リングのくびれを示す図。(b)伸長量が最も大きい金属リングのくびれを示す図。
【図16】くびれの幅と周長との相関を示す図。
【図17】金属リングの板厚を示す拡大平面図。(a)伸長量が最も小さい金属リングの板厚を示す図。(b)伸長量が最も大きい金属リングの板厚を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、第一実施形態に係る溶接部検出方法が用いられて溶接部Yの検出を行う溶接部検出装置1について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1および図10に示すように、溶接部検出装置1は、溶接後に圧延および周長調整等が行われることにより、溶接後の状態から伸長されるワークの溶接部Yを検出するものである。このようなワーク100としては、例えば、帯状の金属板の両端を溶接により接合した金属リング、および複数の帯状金属板の端部を溶接により接合して繋ぎ合わせた金属帯等がある。
【0019】
なお、溶接部検出装置1の構成は、円環状に形成されるワーク、例えば、金属リングの溶接部を検出する場合と、帯状に形成されるワーク、例えば、金属帯の溶接部を検出する場合とで異なる。
【0020】
以下では、金属リングの溶接部Yを検出する場合の溶接部検出装置1について説明する。
まず、溶接部Yの検出対象となるワーク100、すなわち金属リングについて説明する。
ワーク100は、図10に示すように、板状に形成される部材に所定の加工を行うことで成形される。
【0021】
ワーク100を成形するための素材となる金属板90は、曲げ工程S1において、回動する一対の曲げローラ41・41に挟まれることにより、略円筒状に曲げられる。このとき、金属板90は、その両端部が当接する長さに切断される。
【0022】
円筒状に曲げられた金属板90は、溶接工程S2において、当接する両端部を所定の溶接機構42によって溶接されることにより、略円筒状に成形される。これにより、金属板90には、溶接部Yが形成される。
【0023】
溶接された円筒状の金属板90は、熱処理工程S3において、熱処理炉43に収容されて熱処理が行われる。
【0024】
熱処理が行われた円筒状の金属板90は、切断工程S4において、所定の切断機構によって所定の間隔で切断される。これにより、円筒状の金属板90は、リング状のワーク100に成形される。
【0025】
熱処理が行われた円筒状の金属板90を切断することにより成形されたワーク100は、圧延工程S5において、回動する複数の圧延ローラ45・45・45によって圧延される。つまり、ワーク100は、複数の圧延ローラ45・45・45によって押さえられた状態で伸長される。このとき、ワークの板厚Dは薄くなる。
【0026】
圧延されたワーク100は、周長調整工程S6において、さらに伸長される。このとき、ワーク100は、その内周面が回動する二つの調整ローラ46・46に巻回される。そして、二つの調整ローラ46・46のうちのいずれか一方(図10においては右側の調整ローラ46)がワーク100の径方向外側に移動することで、ワーク100は引っ張られる。つまり、ワーク100に張力がかかり、ワーク100は伸長される。
【0027】
ここで、周長調整工程S6では、圧延工程S5よりも高い精度でワーク100を伸長できる。このため、周長の異なるワーク100を成形する場合においては、周長調整工程S6でワーク100の伸長量を変えている。
【0028】
これにより、ワーク100は、所定の周長を有した金属リングとして成形される。また、切断工程S4において成形される複数のリング状のワーク100は、周長の異なる複数の金属リングとして成形される。つまり、伸長量の異なる複数の金属リングとして成形される。
【0029】
このようなワーク100には、図11および図12に示すように、溶接部Yが一つだけ形成され、当該溶接部Yにくびれ101が形成される。くびれ101は、ワーク100の板幅方向において、ワーク100を両端部から内側に向かって切り欠いたように形成され、くびれ101が形成された部分の板幅Hは、他部よりも短くなっている。
このようなくびれ101は、圧延工程S5および周長調整工程S6等でワーク100を伸長したときに形成される。
【0030】
なお、以下において、図11に示す伸長量が最も小さいワークを「ワーク110」とし、その溶接部を「溶接部Y1」とする。そして、くびれを「くびれ111」とする。
また、図12に示す伸長量が最も大きいワークを「ワーク120」とし、その溶接部を「溶接部Y2」とする。そして、くびれを「くびれ121」とする。
【0031】
次に、ワークの板幅Hの変化とくびれの幅Lとの関係について説明する。
ワーク100は、切断工程S4において円筒状の金属板90を切断して成形された時点では、その板幅Hは全周にわたって略同じである。一方、周長調整工程S6においてワーク100が引っ張られた時点では、図11および図12に示すように、ワーク100には、板幅Hが小さくなるように緩やか(弓なり)に変化する部分が生じる(図11および図12に示す点線部分参照)。つまり、周長調整工程S6でワーク100には、板幅Hが短い部分が形成される。
【0032】
伸長量が最も大きいワーク120の板幅が短い部分H2は、伸長量が最も小さいワーク110の板幅が短い部分H1よりも短くなる。つまり、ワーク120の板幅Hの変化は、ワーク110の板幅Hの変化より大きい。
ここで、ワーク120は、周長調整工程S6でワーク110よりもより多く伸長されている。つまり、周長調整工程S6で多く引っ張られると、板幅Hの変化は大きくなる。
【0033】
なお、以下において、このようなワーク100が周長調整工程S6を経る前後での板幅Hの変化量(図11に示す矢印C1および図12に示す矢印C2参照)を「板幅の緩やかな変化量C」とする。
【0034】
ワーク110の板幅Hを測定した結果を図13(a)に示す。この場合、溶接部Y1に形成されるくびれ111の影響により、溶接部Y1の位置だけ板幅Hの変化量が大きく、溶接部Y1以外の部分の板幅Hの変化量が小さいことがわかる。つまり、板幅の緩やかな変化量C1は、小さいことがわかる。
【0035】
また、ワーク120の板幅Hを測定した結果を図13(b)に示す。この場合、溶接部Y2に形成されるくびれ121の影響および板幅Hの緩やかな変化の影響により、ワーク全体の板幅Hの変化量が大きいことがわかる。つまり、板幅の緩やかな変化量C2は、大きいことがわかる。
【0036】
このような、板幅の緩やかな変化量Cが異なるワーク100に対応するくびれの幅Lを測定した実験結果を図14に示す。板幅の緩やかな変化量Cが大きくなるにつれて、くびれの幅Lが大きくなっている。つまり、板幅の緩やかな変化量Cとくびれの幅Lとの間には相関があることがわかる(図14に示すグラフG1参照)。
特に、板幅の緩やかな変化量Cが最も大きいワーク120のくびれの幅L2は、板幅の緩やかな変化量Cが最も小さいワーク110のくびれの幅L1の約二倍の長さとなっている。
【0037】
次に、溶接部検出装置1の全体的な構成について説明する。
図1に示すように、溶接部検出装置1は、搬送機構10と検出機構20とを具備する。
【0038】
搬送機構10は、ワーク100を搬送するものである。搬送機構10は、駆動プーリ11とテンションプーリ12とを備える。
駆動プーリ11は、その外形が略円形状に形成された部材であり、所定の駆動源によって駆動する。また、駆動プーリ11には、ロータリーエンコーダが取り付けられる。これにより、溶接部検出装置1は、駆動プーリ11の回転を監視する。
テンションプーリ12は、駆動プーリ11と略同一の形状に形成され、駆動プーリ11との間に所定の間隔が空けられた状態で配置される。
【0039】
検出機構20は、ワークの板幅Hを測定するものである。検出機構20は、駆動プーリ11とテンションプーリ12とにワーク100を取り付けたときに、当該ワーク100に干渉しないように配置される。本実施形態の検出機構20には、非接触式のレーザセンサが用いられる。
【0040】
このような溶接部検出装置1は、搬送機構10にワーク100を取り付けて、駆動プーリ11を回動させることによりテンションプーリ12が一体的に回動し、ワーク100を搬送する。つまり、ワーク100を検出機構20に対して周長方向へ移動させる。このとき、検出機構20によってワークの板幅Hを測定することで、溶接部Yに形成されるくびれ101を検出する。これにより、溶接部検出装置1は、ワークの溶接部Yを検出し、当該溶接部Yが所定の位置(以下、「停止位置1a」とする)に配置されるようにワーク100を搬送する。
また、溶接部検出装置1は、駆動プーリ11を所望の回数だけ回動させることにより、ワーク100を所定の位置まで搬送する。
【0041】
溶接部検出装置1において、板幅Hを測定する際のワーク100の搬送速度は、駆動プーリ11の回転数に応じて変化する。つまり、駆動プーリ11の回転数は、板幅Hを測定する際のワーク100の搬送速度となる。
また、溶接部検出装置1は、駆動プーリ11の回転数を設定可能に構成される、換言すれば、ワーク100の搬送速度を設定可能に構成される。
【0042】
ここで、ワークの板幅Hを測定することで板幅の緩やかな変化量Cを算出する場合、くびれ101を検出する必要がない。また、ワーク100の緩やかな変化は、ワーク100の周方向に大きく現れる(図11に示す点線部分参照)。つまり、ワーク100を引っ張った方向に大きく現れる。このため、くびれ101を読み飛ばしても(くびれ101部分の板幅Hが測定できなくても)、板幅の緩やかな変化量Cは算出できる。
第一実施形態において、板幅の緩やかな変化量Cを算出するためにワークの板幅Hを測定する際のワーク100の搬送速度、つまりくびれ101を読み飛ばす速度(くびれ101部分の板幅Hを測定可能な速度よりも速い速度)を「高速時の搬送速度V1」とする。
【0043】
一方、くびれ101を検出する場合、くびれの幅Lが非常に小さいため検出機構20の分解能を高くする必要がある。従って、検出機構20の測定間隔を一定とした場合、高速時の搬送速度V1と比較して板幅Hを測定する際のワーク100の搬送速度を遅くする必要がある。
第一実施形態において、ワークの板幅Hを測定する際のワーク100の搬送速度のうち、くびれ101を検出するときの速度を「低速時の搬送速度V2」とする。
【0044】
高速時の搬送速度V1は、所定の速度に設定されている。また、検出機構20によるワークの板幅Hの測定間隔は、検出機構20が測定可能な測定間隔のうち、最も短い測定間隔に設定されている。
そして、溶接部検出装置1は、予め求めておいた板幅の緩やかな変化量Cとくびれの幅Lとの相関(図14に示すグラフG1参照)に基づいて、くびれの幅Lを算出可能に構成される。また、溶接部検出装置1は、くびれの幅Lに応じて、低速時の搬送速度V2を設定可能に構成される。
【0045】
以上の構成を備える溶接部検出装置1が用いられて行われる、第一実施形態に係る溶接部検出方法について説明する。
【0046】
まず、図2(a)および図3に示すように、溶接部検出装置1にワーク100を取り付ける(S110)。より詳細には、駆動プーリ11とテンションプーリ12とにワーク100を巻回する。
【0047】
図2(b)および図3に示すように、ワーク100を取り付けた後で、高速でワークの板幅Hを測定する(S120)。この場合、溶接部検出装置1は、駆動プーリ11を高速回転することにより、ワーク100を搬送速度V1で搬送する。また、溶接部検出装置1は、ワーク一周分よりも十分長い距離だけワーク100を搬送し、ワークの板幅Hを測定する。
【0048】
高速でワークの板幅Hを測定した後で、当該測定結果より板幅の緩やかな変化量Cを算出する(S130)。つまり、溶接部検出装置1は、ステップS120にて、板幅の緩やかな変化量Cを算出するために必要な数値である、ワークの板幅Hを取得する。
【0049】
板幅の緩やかな変化量Cを算出した後で、予め求めておいた板幅の緩やかな変化量Cとくびれの幅Lとの相関に基づいて、くびれの幅Lを算出する(S140)。
【0050】
くびれの幅Lを算出した後で、当該くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を設定する(S150)。
【0051】
図2(c)および図3に示すように、低速時の搬送速度V2を設定した後で、当該設定された低速時の搬送速度V2で板幅Hを測定する(S160)。これにより、溶接部検出装置1は、くびれ101の検出を行う。
【0052】
ステップS160にてくびれ101が検出された場合には、図2(d)および図3に示すように、当該検出されたくびれ101、すなわち溶接部Yが停止位置1aへ移動するようにワーク100を搬送する(S170:Yes、S190)。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S230)。
【0053】
一方、ステップS160にてくびれ101が検出されない場合においては、高速で板幅Hを測定してからの経過時間(S120〜S170までに要した時間)を確認する(S170:No)。本実施形態では、溶接部検出装置1でタイマー制御を行うことで、経過した時間を測定する。
【0054】
溶接部Yの検出を開始してから5秒以上経過していない場合には、引き続き低速でくびれ101の検出を行う(S180:No)。
【0055】
一方、溶接部Yの検出を開始してから5秒以上経過している場合には、最低速度以下であるかを確認する(S180:Yes)。
【0056】
第一実施形態において最低速度とは、伸長量が最も小さいワーク110のくびれ111(図15(a)参照)を測定する場合に設定される、低速時の搬送速度V2である。
【0057】
低速時の搬送速度V2が最低速度より大きい場合には、低速時の搬送速度V2を再設定する(S200:No、S210)。このとき、溶接部検出装置1は、現在設定されている低速時の搬送速度V2をより遅い速度に再設定する。そして、当該再設定した搬送速度V2で板幅Hの検出を行う(S160、S170)。
これによれば、板幅の緩やかな変化量Cを測定したときに誤差が生じ、本来のくびれの幅Lよりも大きなくびれの幅Lを算出した場合等においても、確実に溶接部Yを検出できる。
【0058】
低速時の搬送速度V2が最低速度以下の場合、溶接部Yが検出不可能なワーク100であると判断(NG判断)する(S200:Yes、S220)。このとき、溶接部検出装置1は、溶接部Yが検出できなかったことを所定の手段によって作業者等に通知する。このような通知するための手段としては、溶接部検出装置1に所定の表示部を電気的に接続し、当該表示部にNG判断したことを表示する等がある。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S230)。
【0059】
このように、第一実施形態の溶接部検出方法は、溶接部Yを有するワーク100を伸長したときに、ワークの溶接部Yに形成されるくびれ101を検出することにより、ワークの溶接部Yを検出する。
これによれば、くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を設定できるため、例えば、最低速度で溶接部Yを検出する場合と比較して、より速い速度で溶接部Yを検出できる。つまり、溶接部Yに形成されるくびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を最適に設定できるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
また、ワークの板幅Hの測定間隔が長い安価なセンサを用いた場合でも、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を最適に設定できる。つまり、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できるとともに、低コストで溶接部Yの検出を行うことができる。
【0060】
また、板幅の緩やかな変化量Cが最も大きいワーク120のくびれの幅L2は、前述のように、板幅の緩やかな変化量Cが最も小さいワーク110のくびれの幅L1の約二倍の長さとなっている。従って、検出機構20の測定間隔を一定とした場合、溶接部検出装置1は、ワーク120における低速時の搬送速度V2を、ワーク110における低速時の搬送速度V2の約二倍の速さに設定できる。
つまり、ワーク100の伸長量によって、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を約半分に短縮できる。
【0061】
また、板幅の緩やかな変化量Cとくびれの幅Lとの相関に基づいてくびれの幅Lを算出する場合には、くびれの幅Lの算出およびくびれ101の検出を一つの検出機構20で行うことができる。つまり、くびれの幅Lを算出するために別途センサ等を用いる必要がない。このため、低コストでワークの溶接部Yを検出できる。
【0062】
次に、ワーク100の伸長量とくびれの幅Lとの関係について説明する。
図15に示すように、ワーク120のくびれの幅L2は、ワーク110のくびれの幅L1よりも長い。
【0063】
このような、伸長量を変えたワーク100に対応するくびれの幅Lを測定した実験結果を図16に示す。ワーク100の伸長量を大きくすることによって、換言すれば、ワーク100の周長(図11に示す周長W1および図12に示す周長W2参照)を長くすることによって、くびれの幅Lも大きくなっている。つまり、ワークの伸長量とくびれの幅Lとの間には相関があることがわかる(図16に示すグラフG2参照)。
【0064】
従って、ワーク100の伸長量とくびれの幅Lとの相関に基づいてくびれの幅Lを算出できる。つまり、伸長量を算出することにより、低速時の搬送速度V2を設定できる。
第一実施形態の溶接部検出方法では、予め求めておいた伸長量とくびれの幅Lとの相関に基づいて、くびれの幅Lを算出しても構わない。
【0065】
この場合、溶接部検出装置1は、ワークの周長Wを算出する周長測定機構をさらに具備する。
【0066】
周長測定機構は、例えば、駆動プーリ11の中点からテンションプーリ12の中点までの距離を測定する。そして、駆動プーリ11およびテンションプーリ12の円周の半分の距離と測定した距離の二倍の距離との和を算出することで、ワークの周長Wを算出する。
【0067】
また、溶接部検出装置1は、予め求めておいた伸長量とくびれの幅Lとの相関に基づいて、くびれの幅Lを算出可能に構成される。
【0068】
このように構成される溶接部検出装置1は、溶接部Yの検出を開始すると、まず、周長測定機構によってワークの周長Wを算出する。
【0069】
ワークの周長Wを測定した後で、圧延工程S5(図10参照)で伸長される前のワークの周長に基づいて、ワーク100の伸長量を算出する。つまり、溶接部検出装置1は、ワークの周長Wを測定することで、ワーク100の伸長量を算出するために必要な数値である、ワーク100の伸長量を取得する。そして、ワーク100の伸長量とくびれの幅Lとの相関に基づいてくびれの幅Lを算出する。
【0070】
くびれの幅Lを算出した後は、前述したような、くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を算出し、くびれ101の検出を行う(S150〜S230)。
【0071】
これによれば、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を最適に設定できるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
【0072】
ワークの周長Wを測定することで低速時の搬送速度V2を算出する場合には、低速時の搬送速度V2を算出した後で、ワーク一周分だけ(測定した周長Wだけ)低速で板幅Hの測定を行っても構わない。
これによれば、伸長量を算出したときに誤差が生じて、本来のくびれの幅Lよりも大きなくびれの幅Lを算出した場合等においても、速やかに低速時の搬送速度V2を再設定できる。
【0073】
次に板厚Dとくびれ101との関係について説明する。
ワークの板厚Dは、圧延工程S5および周長調整工程S6を経ることにより薄くなる。このとき、ワーク100は、板厚Dの薄くなる割合と伸長される割合とが同じ割合となるように塑性変形する。
つまり、ワーク100が圧延工程S5および周長調整工程S6を経る前後での板厚Dの変化量と伸長量との間には相関がある。従って、図17に示すように、板厚D2が薄いワーク120のくびれの幅L2は、板厚D1が厚いワーク110のくびれの幅L1よりも長くなる。
【0074】
くびれの幅Lは、板厚Dの変化量とくびれの幅Lとの相関に基づいて算出できる。つまり、板厚Dを測定することにより、低速時の搬送速度V2を設定できる。
第一実施形態の溶接部検出方法では、板厚Dの変化量とくびれの幅Lとの相関に基づいて、くびれの幅Lを算出しても構わない。
【0075】
この場合、溶接部検出装置1は、ワークの板厚Dを測定する板厚測定機構をさらに具備する。
【0076】
板厚測定機構には、例えば、検出機構20にあるようなレーザセンサが用いられる。
【0077】
また、溶接部検出装置1は、板厚Dの変化量とくびれの幅Lとの相関に基づいて、くびれの幅Lを算出可能に構成される。
【0078】
このように構成される溶接部検出装置1は、溶接部Yの検出を開始すると、まず、測定装置によってワークの板厚Dを測定する。このとき、溶接部Yを読み飛ばしても板厚Dの測定結果に影響はないため、低速時の搬送速度V2より速い速度、例えば、高速時の搬送速度V1で板厚Dを測定する。
【0079】
ワークの板厚Dを測定した後で、予め求めておいた板厚Dの変化量とくびれの幅Lとの相関に基づいてくびれの幅Lを算出する。つまり、溶接部検出装置1は、ワークの板厚Dを測定することで、板厚Dの変化量を算出するために必要な数値である、ワークの板厚Dを取得する。
【0080】
くびれの幅Lを算出した後は、前述したような、くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を算出し、くびれ101の検出を行う(S150〜S230)。
【0081】
これによれば、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を最適に設定できるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
【0082】
なお、金属リングの溶接部Yを検出する第一実施形態の溶接部検出方法では、くびれ101が検出されない場合において、高速で板幅Hを測定してからの経過時間(S120〜S170までに要した時間)を確認したが、これに限定されるものでない。すなわち、低速時の搬送速度V2で金属リング一周分以上の板幅Hを測定できればよい。
【0083】
次に、帯状に延出する長尺部材である金属帯の溶接部Yを検出する場合の溶接部検出装置1の構成について説明する。
金属帯であるワーク100は、複数の金属板を溶接によって接合した後で、圧延によって伸長される。その結果、図4(b)に示すように、ワーク100には、複数の溶接部Yが形成される。一方、引っ張られて伸長されないため、ワークの板幅Hは、緩やかに変化しない。つまり、ワークの板幅Hは、くびれ101を除いて変化しない。
【0084】
図4(a)に示すように、溶接部検出装置1は、搬送機構10と検出機構20と長さ測定機構30とを具備する。
【0085】
搬送機構10は、第一搬送ローラ13・13と第二搬送ローラ14とを備える。第一搬送ローラ13・13は、ワーク100の板面を挟むように配置され、所定の駆動源によって回動可能に構成される。また、第一搬送ローラ13・13のいずれか一方(本実施形態では、上側の第一搬送ローラ13)には、ロータリーエンコーダが取り付けられ、第一搬送ローラ13・13の回転を監視する。
第二搬送ローラ14は、第一搬送ローラ13・13と略同一の形状に形成され、第一搬送ローラ13・13に対して、ワーク100の搬送方向へ所定の間隔を空けた状態で配置される。また、第二搬送ローラ14は、第一搬送ローラ13・13と同じ回転数で回動可能に構成される。
【0086】
検出機構20は、第一搬送ローラ13・13と第二搬送ローラ14との間に配置される。また、第一搬送ローラ13・13および第二搬送ローラ14上をワーク100が移動したときに干渉しないように配置される。検出機構20は、被接触式のレーザセンサによって構成され、ワークの板幅Hを測定可能に構成される。
【0087】
長さ測定機構30は、第一搬送ローラ13・13と第二搬送ローラ14との間に配置され、第一搬送ローラ13・13および第二搬送ローラ14上をワーク100が移動したときに干渉しないように配置される。長さ測定機構30は、被接触式のレーザセンサによって構成され、ワークの長手方向の長さ(ワークの搬送方向の長さ)を測定可能に構成される。
【0088】
高速時の搬送速度V1は、所定の速度に設定されている。また、検出機構20の測定間隔は、検出機構20が測定可能な測定間隔のうち、最も短い測定間隔に設定されている。
また、溶接部検出装置1は、伸長量とくびれの幅Lとの相関(図16に示すグラフG2参照)に基づいて、くびれの幅Lを算出可能に構成される。
【0089】
以上の構成を備える溶接部検出装置1が用いられて行われる、第一実施形態に係る溶接部検出方法について説明する。
【0090】
まず、図4(a)および図5に示すように、溶接部検出装置1にワーク100を取り付ける(S310)。より詳細には、第一搬送ローラ13・13の間にワークの始端102を挟んだ状態でセットする。
【0091】
次に、図4(b)および図5に示すように、溶接部検出装置1は、搬送機構10によって高速でワーク100を搬送するとともに、長さ測定機構30によってワークの長手方向の長さを測定する(S320)。
【0092】
ワークの長手方向の長さを測定した後で、圧延工程S5(図10参照)で伸長される前のワークの長手方向の長さに基づいて、ワーク100の伸長量を算出する(S330)。
【0093】
ワーク100の伸長量を算出した後で、予め求めておいたワーク100の伸長量とくびれの幅Lとの相関に基づいて、くびれの幅Lを算出する。(S340)。
【0094】
くびれの幅Lを算出した後で、当該くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を設定する(S350)。
【0095】
図4(c)および図5に示すように、低速時の搬送速度V2を設定した後で、搬送機構10は、当該設定された搬送速度V2で板幅Hを測定する(S360)。このとき、搬送機構10は、ワークの長手方向の長さを測定した方向と反対の方向にワーク100を搬送する。
【0096】
ステップS370にてくびれ101が検出された場合には、当該検出されたくびれ101の位置、すなわち溶接部Yの位置を記憶する(S370:Yes、S380)。そして、ワークの終端103まで、低速でワークの板幅Hの測定を行う(S390:No)。
【0097】
ワークの終端103までくびれ101の検出を行ったとき、くびれ101の位置が記憶されているかを確認する(S390:Yes)。
【0098】
ステップS380にて溶接部Yの位置が記憶されていた場合には、溶接部Yの位置を作業者等に通知する。このような手段としては、例えば、溶接部検出装置1に電気的に接続されるボタンを取り付けて、当該ボタンを押下する度に、順番に所定の位置に溶接部Yが配置されるようにワーク100を搬送する等がある。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S440)。
【0099】
一方、ステップS380にて溶接部Yの位置が記憶されていなかった場合には、最低速度以下であるかを確認する(S400:No)。
【0100】
最低速度より大きい場合には、低速時の搬送速度V2を再設定する(S410:No、S420)。このとき、溶接部検出装置1は、現在設定されている低速時の搬送速度V2をより遅い速度に再設定する。そして、当該再設定した搬送速度V2でくびれ101の検出を行う(S360、S370)。
【0101】
最低速度以下の場合には、溶接部Yが検出不可能なワーク100であると判断(NG判断)する(S410:Yes、S430)。このとき、溶接部検出装置1は、溶接部Yが検出できなかったことを所定の手段によって作業者等に通知する。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S440)。
【0102】
このように第一実施形態の溶接部検出方法は、溶接部Yを有するワーク100を伸長したときに、ワーク100を所定の搬送速度で搬送しながら検出することにより、ワークの溶接部Yに形成されるくびれ101を検出することにより、ワークの溶接部Yを検出する。
これによれば、くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を設定できる。つまり、溶接部Yに形成されるくびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を最適に設定できるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
【0103】
なお、金属帯を検出する場合における第一実施形態の溶接部検出方法は、ワーク100が圧延される前後での板厚Dの変化量とくびれの幅Lとの相関に基づいてくびれの幅Lを算出し、当該くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を設定しても構わない。また、板幅の緩やかな変化量Cとくびれの幅Lとの相関に基づいて低速時の搬送速度V2を設定しても構わない。
ただし、第一実施形態の金属帯のように、圧延することで伸長した場合、換言すれば、引っ張ることによって伸長しなかった場合には、ワークの板幅Hが緩やかに変化しない。この場合、ワーク100の伸長量および板厚Dの変化量のいずれかと、くびれの幅Lとの相関に基づいてくびれの幅Lを算出し、当該くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を設定することとなる。
【0104】
また、第一実施形態の溶接部検出方法では、ワーク100の伸長量、板厚Dの変化量、および板幅の緩やかな変化量Cとの少なくともいずれかと、くびれの幅Lとの相関に基づいてくびれの幅Lを算出したが、これに限定されるものでない。
すなわち、溶接部検出方法では、ワーク100の伸長量とくびれの幅Lとの相関、板厚Dの変化量とくびれの幅Lとの相関、および板幅の緩やかな変化量Cとくびれの幅Lとの相関の全てに基づいてくびれの幅Lを算出しても構わない。
この場合、くびれの幅Lを算出する前にワーク100を測定する工程(S120およびS320)において、ワーク100の伸長量と板厚Dと板幅Hとを全て測定する。
【0105】
これによれば、例えば、ワーク100の伸長量によってくびれの幅Lを算出しにくいとき等においても、板厚Dの変化量および板幅の緩やかな変化量Cによってくびれの幅Lを確実に算出できる。つまり、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を最適に設定できるため、一回の測定でくびれ101を検出できる。従って、低速時の搬送速度V2を再設定することなくくびれ101を検出できるため、溶接部Yの検出に要する時間が長くなることを防止できる。
【0106】
このように、くびれの幅Lを算出する工程(S140およびS340)は、ワーク100の伸長量とくびれの幅Lとの相関と、ワークの板幅Hおよび板厚Dの少なくとも一方のワーク100の伸長前後における変化量とくびれの幅Lとの相関とのうち、少なくとも一方の相関を予め求めておき、伸長量および変化量とくびれの幅Lとの相関が求められているワーク100の伸長量、板幅H、および板厚Dを取得することにより、相関に基づいて、くびれの幅Lを算出する算出工程として機能する。
【0107】
また、低速時の搬送速度V2を設定する工程(S150およびS350)は、くびれの幅Lを算出する工程(S140およびS340)で算出されるくびれの幅Lに応じて、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を設定する設定工程として機能する。
【0108】
また、低速でワークの板幅Hを測定する工程(S160、S360)は、低速時の搬送速度V2を設定する工程(S150およびS350)で設定されるワークの搬送速度V2でワーク100を搬送しながら、所定の間隔でワークの板幅Hを測定することにより、くびれ101を検出する検出工程として機能する。
【0109】
これによれば、溶接部Yに形成されるくびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を最適に設定できるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
【0110】
なお、溶接部検出方法の低速時の搬送速度V2は、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できるため、くびれ101を検出できる範囲の中で、速い速度であることが好ましい。
【0111】
また、低速時の搬送速度V2の再設定においては、検出機構20がより小さい幅のくびれ101を検出可能となればよい。つまり、検出機構20の測定間隔を再設定する、あるいは、低速時の搬送速度V2と検出機構20の測定間隔とを再設定しても構わない。
【0112】
例えば、検出機構20の測定間隔をさらに短くできる場合には、低速時の搬送速度V2を再設定するときに、検出機構20の測定間隔を短くしても構わない。これにより、低速時の搬送速度V2を変更することなく、より小さい幅のくびれ101の検出を行うことができる。この場合、より小さい幅のくびれ101を検出可能な範囲の中で、低速時の搬送速度V2を速くしても構わない。
【0113】
このように、低速時の搬送速度V2を再設定する工程(S210、S420)は、低速でワークの板幅Hを測定する工程(S160、S360)でくびれ101が検出されなかったときに、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2およびワークの板幅Hの測定間隔の少なくともいずれかを再設定する再設定工程として機能する。
また、低速でワークの板幅Hを測定する工程(S160、S360)は、低速時の搬送速度V2および測定間隔を再設定する工程(S210、S420)で再設定される搬送速度V2および測定間隔でワークの板幅Hを測定することにより、くびれ101を検出する。
これにより、くびれの幅Lの算出において誤差が生じた場合等においても、確実に溶接部Yを検出できる。
【0114】
次に、第二実施形態に係る溶接部検出方法が用いられて溶接部Yの検出が行われる溶接部検出装置1について、図面を参照して説明する。
【0115】
第二実施形態の溶接部検出装置1の構成は、円環状に形成されるワーク100、例えば、金属リング等を検査する場合と、帯状に形成されるワーク100、例えば、金属帯の溶接部Yを検出する場合とで異なる。
【0116】
以下では、金属リングの溶接部Yを検出する場合の溶接部検出装置1について説明する。
溶接部検出装置1は、検出機構20の構成が異なる点を除いて図1に示す第一実施形態の溶接部検出装置1と同様に構成される。
【0117】
検出機構20は、ワークの板幅Hを測定し、その検出結果をアナログ出力する、あるいはデジタル出力することが可能に構成される。従って、検出機構20は、アナログ出力を用いることにより高速で測定できるとともに、デジタル出力を用いてノイズによる影響を受けることなく高精度に測定できる構成となる。
また、アナログ出力の測定間隔およびデジタル出力の測定間隔は、それぞれ検出機構20が測定可能な測定間隔のうち最も短い測定間隔に設定されている。アナログ出力の測定間隔は、デジタル出力の測定間隔よりも短く設定されている。
【0118】
第二実施形態において、アナログ出力を用いて板幅Hを測定したときにくびれ101を検出する際のワークの搬送速度を「高速時の搬送速度V1」とする。
第二実施形態において、デジタル出力を用いて板幅Hを測定したときにくびれ101を検出する際のワークの搬送速度を「低速時の搬送速度V2」とする。
【0119】
高速時の搬送速度V1および低速時の搬送速度V2は、それぞれ伸長量が最も小さいワークのくびれの幅L1を算出可能な所定の速度に設定されている。
ここで、アナログ出力の測定間隔は、前述のように、デジタル出力の測定間隔より短いため、高速時の搬送速度V1は、低速時の搬送速度V2よりも速い。
【0120】
以上の構成を備える溶接部検出装置1が用いられて行われる、第二実施形態に係る溶接部検出方法について説明する。
【0121】
まず、図2(a)および図6に示すように、溶接部検出装置1にワーク100を取り付ける(S510)。
【0122】
図2(b)および図6に示すように、ワーク100を取り付けた後で、高速でワークの板幅Hを測定する(S520)。このとき、検出機構20は、アナログ出力を用いて板幅Hの測定を行う。また、溶接部検出装置1は、ワーク一周分よりも十分長い距離だけワーク100を搬送し、当該ワークの板幅Hを測定する。
【0123】
ここで、アナログ出力の測定結果では、ノイズの影響等を受けて、くびれ101の位置を誤検出する場合がある。
【0124】
高速でワークの板幅Hを測定した後で、ワーク100を取り付けた位置に搬送する(S530)。つまり、搬送機構10の駆動プーリ11を逆回転させて、高速で板幅Hを測定したとき(S520)に搬送した距離だけワーク100を搬送する。このとき、検出機構20による板幅Hの測定を行わないため、溶接部検出装置1は、高速時の搬送速度V1よりも速い速度でワーク100を搬送する。
【0125】
ワーク100を取り付けた位置に搬送した後で、くびれ101の位置候補を算出する(S540)。より詳細には、図7に示すように、高速でワークの板幅Hを測定したとき(S520)に、板幅Hの変化量が大きい位置が検出される。そこで、板幅Hの変化量に閾値Qを設け、当該閾値Qを超えた位置を位置候補として記憶する。本実施形態では、図7および図8(a)に示すように、点P1〜P4までが位置候補となる。
【0126】
なお、以下において、点P1〜P4を「位置候補P1〜P4」とする。
また、図7に示す測定結果においては、位置候補P1、P2、およびP4は、ノイズの影響等によってその変化量が大きくなった部分である。また、位置候補P3は、くびれ101によってその変化量が大きくなった部分、すなわち、溶接部Yである。
【0127】
また、以下において、検出機構20がワークの板幅Hを測定する位置を「測定位置20a」とする。
【0128】
図6に示すように、ステップS540にて位置候補が検出されなかった場合、溶接部Yが検出不可能なワーク100であると判断(NG判断)する(S550:No、S610)。このとき、溶接部検出装置1は、溶接部Yが検出できなかったことを所定の手段によって作業者等に通知する。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S620)。
【0129】
一方、ステップS540にて位置候補P1〜P4が検出された場合、図6および図8(b)に示すように、最初に算出された位置候補P1が測定位置20aに配置されるように、ワーク100を高速で搬送する(S550:Yes、S560)。このとき、検出機構20による板幅Hの測定を行わないため、溶接部検出装置1は、高速時の搬送速度V1よりも速い速度でワーク100を搬送する。
【0130】
高速でワーク100を搬送した後で、低速で当該位置候補P1の板幅Hを測定する(S570)。このとき、検出機構20は、デジタル出力を用いて位置候補P1の板幅Hの測定を行う。これにより、当該位置候補がくびれ101であるかノイズの影響等を受けたものであるかがわかる。このとき、溶接部検出装置1は、位置候補P1より所定の距離だけ、板幅Hの測定を行う。
図7に示す測定結果においては、溶接部検出装置1は、位置候補P1がノイズの影響等を受けたものであると判断する。
【0131】
ステップS570にて位置候補P1がノイズの影響等によるものであると判断した場合には、未確認の位置候補があるかを確認する(S580:No)。このように、溶接部検出装置1は、位置候補P1〜P4のうち、ノイズの影響等によって誤検出されたものを除去していく。
図7に示す測定結果においては、未確認の位置候補として位置候補P2〜P4があることを確認する。
【0132】
未確認の位置候補P2〜P4がある場合には、ノイズの影響等と判断された位置候補P1の次に算出された位置候補P2が測定位置20aに配置されるように、ワーク100を高速時の搬送速度V1より速い速度で搬送する(S600:Yes、S560)。そして、検出機構20のデジタル出力を用いて低速で位置候補P2の板幅Hの測定を行う(S570)。
図7に示す測定結果においては、低速で位置候補P2の板幅Hを測定し、ノイズの影響等によるものと判断する。そして、図8(c)に示すように、測定位置20aに位置候補P3が配置されるようにワーク100を高速時の搬送速度V1よりも速い速度で搬送し、低速で板幅Hを測定する。
【0133】
ステップS570にて位置候補P3の板幅Hを測定したとき、くびれ101であると判断した場合には、図6および図8(d)に示すように、当該くびれ101と判断した位置候補P3を停止位置1aへ移動して検出を終了する(S580:Yes、S590)。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S620)。
【0134】
なお、ワーク100が金属リングである場合、ワーク100には、溶接部Yが一つ形成される。このため、溶接部検出装置1は、溶接部Yを検出すると、溶接部以降の位置候補P4がノイズの影響等によるものと判断して、板幅Hの測定を行わない。
【0135】
一方、未確認の位置候補がない場合には、溶接部Yが検出不可能なワーク100であると判断(NG判断)する(S600:No、S610)。このとき、溶接部検出装置1は、溶接部Yが検出できなかったことを所定の手段によって作業者等に通知する。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S620)。
【0136】
これによれば、ワークの溶接部Yの検出において、くびれ101を検出する範囲を位置候補だけに減らすことができる。言い換えれば、低速で板幅Hを測定する部分が位置候補だけとなるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
また、ワークの板幅Hの測定間隔が長い安価なセンサを用いた場合でも、くびれ101を検出する範囲が位置候補だけである。また、位置候補の算出および溶接部Yの算出において、ワークの板幅Hを測定するため、一つのセンサで溶接部Yを検出できる。つまり、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できるとともに、低コストで溶接部Yの検出を行うことができる。
【0137】
次に、金属帯の溶接部Yを検出する場合の溶接部検出装置1の構成について説明する。
なお、金属帯は、第一実施形態の金属帯と同様に複数の溶接部Yが形成される。
【0138】
溶接部検出装置1は、長さ測定機構30を具備しない点、および検出機構20の構成が異なる点を除いて図4に示す第一実施形態の溶接部検出装置1と同様に構成される。
【0139】
検出機構20は、第二実施形態の金属リングの溶接部Yを検出する溶接部検出装置1の検出機構20と同様に、アナログ出力およびデジタル出力を用いてワークの板幅Hを測定可能な構成である。
また、アナログ出力の測定間隔およびデジタル出力の測定間隔は、それぞれ検出機構20が測定可能な測定間隔のうち最も短い測定間隔に設定されている。アナログ出力の測定間隔は、デジタル出力の測定間隔よりも短く設定されている。
【0140】
高速時の搬送速度V1および低速時の搬送速度V2は、それぞれ伸長量が最も小さいワークのくびれの幅L1を算出可能な所定の速度に設定されている。
【0141】
以上の構成を備える溶接部検出装置1が用いられて行われる、第二実施形態に係る溶接部検出方法について説明する。
【0142】
なお、ワーク100を取り付ける工程から位置候補の板幅Hを測定する工程(S710〜S760)までは、ワークの長手方向の長さより十分長い距離だけワーク100を搬送する点を除いて、金属リングのワーク100を取り付ける工程から位置候補の板幅Hを測定する工程(S510〜S560)までと同様である。従って、ワーク100を取り付ける工程から低速で位置候補の板幅Hを測定する工程(S710〜S770)までの説明は省略する。
【0143】
図9に示すように、ステップS770にてくびれ101であると判断した場合には、その位置を溶接部Yの位置として記憶する(S780:Yes、S790)。
【0144】
一方、ステップS770にてくびれ101でないと判断した場合、すなわち、位置候補がノイズの影響等によるものであると判断した場合には、未確認の位置候補があるかを確認する(S800:No)。
【0145】
未確認の位置候補がある場合には、ノイズの影響等と判断された位置候補の次に算出された位置候補が測定位置20aに配置されるように、ワーク100を高速時の搬送速度V1よりも速い速度で搬送する(S800:Yes、S760)。そして、検出機構20のデジタル出力を用いて低速で位置候補の板幅Hの測定を行う(S770)。
【0146】
一方、未確認の位置候補がない場合には、溶接部Yの位置が記憶されているかを確認する。
くびれ101と判断した位置が記憶されている場合には、当該くびれ101の位置を溶接部Yとして所定の手段によって作業者等に通知する(S810:Yes)。
【0147】
一方、ステップS770にてくびれ101と判断した位置が記憶されていない場合には、溶接部Yが検出不可能なワーク100であると判断する(S810:No、S820)。このとき、溶接部検出装置1は、溶接部Yが検出できなかったことを所定の手段によって作業者等に通知する。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S830)。
【0148】
このように、くびれ101の位置候補を算出する工程(S540、S740)は、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2よりも速い搬送速度V1でワーク100を搬送しながら、ワークの板幅Hを測定することにより、くびれ101の位置候補を算出する算出工程として機能する。
【0149】
また、低速で位置候補の板幅Hを測定する工程(S570、S770)は、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2で、くびれ101の位置候補を算出する工程(S540、S740)で算出される位置候補の板幅Hを測定することにより、くびれ101を検出する検出工程として機能する。
【0150】
これによれば、ワークの溶接部Yの検出において、くびれ101を検出する範囲を減らすことができるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
【0151】
なお、第二実施形態の溶接部検出方法において、位置候補を算出する前にワークの長手方向の長さを測定した場合には、当該測定した長さだけワーク100を搬送しても構わない。
【0152】
また、第二実施形態の溶接部検出方法では、位置候補の算出に際して板幅Hを測定するときにアナログ出力を用い、位置候補の板幅Hを測定するときにデジタル出力を用いたが、これに限定されるものでない。
【0153】
例えば、位置候補の算出に際して板幅Hを測定するときにアナログ出力を用いるとともに、位置候補の板幅Hを測定するときにアナログ出力を用いても構わない。この場合、位置候補の板幅Hを測定するときの搬送速度V2を遅くする、あるいは、測定間隔を短くすることで、位置候補がノイズの影響等によるものであるか、くびれ101であるかを判断できる。この場合、位置候補の板幅Hを検出するときにノイズの影響等を受ける場合がある。
【0154】
このため、第二実施形態の溶接部検出方法では、位置候補の算出に際して板幅Hを測定するときにアナログ出力を用いるとともに、位置候補の板幅Hを測定するときにデジタル出力を用いることが好ましい。
【0155】
このように、くびれ101の位置候補を算出する工程(S540、S740)では、アナログ出力を用いてワークの板幅Hを測定する。
これにより、デジタル出力を用いてワークの板幅Hを測定した場合と比較して、より速い搬送速度V2で板幅Hを測定できる。つまり、位置候補の算出に要するまでの時間を短縮できる。
【0156】
また、低速で位置候補の板幅Hを測定する工程(S570、S770)工程では、デジタル出力を用いて位置候補の板幅Hを測定する。
これにより、アナログ出力を用いてワークの板幅Hを測定した場合にあるようなノイズの影響を受けることがないため、溶接部Yの検出精度を向上できる。
【0157】
また、本実施形態の溶接部検出方法では、高速時の搬送速度V1および低速時の搬送速度V2を所定の速度としたが、これに限定されるものでない。すなわち、溶接部検出方法では、位置候補を検出する前に、第一実施形態にあるようなワークの搬送速度を設定する工程(S150、S350)を行って、高速時の搬送速度V1および低速時の搬送速度V2を設定しても構わない。
【0158】
これによれば、位置候補の算出において搬送速度V1を最適な速度に設定できる。また、くびれ101の検出において搬送速度V2を最適な速度に設定できる。つまり、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
【0159】
ただし、溶接部Yの検出精度を向上させるという観点より、位置候補が検出できなかったときに高速時の搬送速度V1およびアナログ出力の測定間隔を再設定する工程(S210、S420)を行う、あるいは高速時の搬送速度V1をやや遅い速度に設定することが好ましい。
また、溶接部Yが検出できなかったときに低速時の搬送速度V2およびデジタル出力の測定間隔を再設定する工程(S210、S420)を行う、あるいは設定する低速時の搬送速度V2をやや遅い速度に設定することが好ましい。
【0160】
また、第二実施形態の溶接部検出方法では、一つの検出機構20によってアナログ出力およびデジタル出力で板幅Hの測定を行ったが、これに限定されるものでない。すなわち、溶接部検出方法では、アナログ出力によってワークの板幅Hの測定を行う第一検出機構およびデジタル出力によって位置候補の板幅Hの測定を行う第二検出機構を用いて溶接部Yの検出を行っても構わない。この場合、測定位置20aは、溶接部Yの検出を行う第二検出機構がワークの板幅Hを測定する位置となる。
【0161】
また、ワーク100の搬送方向上流側に第一検出機構を配置するとともに、搬送方向下流側に第二検出機構を配置することで、ワークの溶接部Yの検出に要する時間をさらに短縮できる。
より詳細には、高速で第一検出機構によって板幅Hの測定を行い、当該位置候補が測定位置20aまで搬送されたときに、低速で第二検出機構によって位置候補の板幅Hの測定を行う。これにより、ワークを一回搬送するだけで溶接部Yの検出を行うことができるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間をさらに短縮できる。
【0162】
ここで、例えば、検出機構20の構成を、ワーク100を溶接したときに形成される溶接跡を画像処理によって検出する構成とした場合における、溶接部Yの検出について説明する。
【0163】
溶接跡は、ワーク100を溶接したときに、当該溶接した部分の板幅方向に沿って連続して形成される。溶接跡は、圧延等によって伸長されることで、その幅が大きくなる。
従って、前述したような伸長量、板厚D、および板幅の緩やかな変化量Cによって、溶接跡の幅を算出できる。
【0164】
ここで、溶接跡は、溶接の条件によって見えやすさが変化する。従って、溶接の条件によって、低速時の搬送速度V2を遅くする必要がある。言い換えれば、低速時の搬送速度V2を設定する工程において、溶接跡の見えやすさが変化する要因を考慮する必要がある。
【0165】
この場合、低速時の搬送速度V2を設定するときに見えやすさが変化する要因の情報が必要となる。従って、当該見えやすさが変化する要因の情報を入力する工程等が必要となる。つまり、溶接部Yの検出に要する工程が増加してしまい、ひいては、溶接部Yの検出に要する時間が増加してしまう。また、用途等が異なるワーク100を測定する場合には、当該ワーク100の溶接時の状態等が必要となるため、汎用性が低下してしまう。
【0166】
一方、くびれ101は、溶接の条件等の影響でわずかに形状が変化する場合があるが、この場合、くびれ101の検出に与える影響もわずかである。
つまり、くびれ101を検出する構成とした場合、溶接の条件等の影響を受けることなく確実に溶接部Yを検出できる。
【0167】
また、渦電流を用いて溶接部Yの検出を行う場合、本実施形態の金属リングのように製造工程で熱処理が行われたときに、検出精度が低下してしまう。
【0168】
一方、本実施形態のようなレーザセンサを用いて溶接部Yの検出を行う場合、熱処理によって検出精度が低下することがなく、確実に溶接部Yを検出できる。
このように、溶接部Yを検出するための手段には、ワークの板幅Hを測定する機構を用いることが好ましい。ただし、ワーク100に傷が生じる可能性があるという観点より、ワーク100に接触することなくワークの板幅Hを測定する機構、例えば、非接触式のレーザセンサ等を用いることが好ましい。
【0169】
これによれば、溶接の条件および熱処理による組織の変化等に影響を受けることなく、確実に溶接部Yを検出できる。
【0170】
なお、本実施形態の溶接部検出方法では、金属リングおよび金属帯の溶接部Yを検出したが、これに限定されるものでない。すなわち、溶接部検出方法は、溶接した部分を圧延することによってくびれ101が生じる部材に対して広く適用可能である。
【0171】
また、本実施形態の溶接部検出方法では、板幅Hを測定するときおよびくびれ101を検出するときに、ワークの周長Wあるいはワークの長手方向の長さより十分長い距離だけワーク100を搬送したが、これに限定されるものでない。すなわち、溶接部検出方法では、ワークの板幅Hの測定およびくびれ101を検出ができればよく、例えば、検出機構20を二つ配置することにより、ワークの周長Wあるいはワークの長手方向の長さの半分の長さより十分長い距離だけワーク100を搬送しても構わない。
【0172】
また、搬送機構10は、ワーク100を搬送する構成であったが、これに限定されるものでない。すなわち、搬送機構10は、ワーク100の形状に沿って検出機構20を移動させる構成としても構わない。この場合、検出機構20を移動させる速度がくびれ101を検出する際の搬送速度V2となる。
つまり、本実施形態の搬送速度V1および搬送速度V2は、検出機構20に対するワーク100の相対的な速度である。
【0173】
また、本実施形態の溶接部検出方法では、測定間隔を検出機構20が測定可能な最も短い間隔に設定したが、これに限定されるものでない。すなわち、検出機構20が測定可能な最も短い間隔よりも長い間隔に設定しても構わない。
この場合、ワークの板幅Hを測定する回数を減らせるため、位置候補の算出等に要する時間を短くできる。
【符号の説明】
【0174】
1 溶接部検出装置
10 搬送機構
20 検出機構
100 ワーク
101 くびれ
C 板幅の緩やかな変化量
D 板厚
H 板幅
L くびれの幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの溶接部の位置を検出する溶接部検出方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、板状部材の端部と端部とを溶接して接合してワークを形成した場合、前記ワークには溶接部が形成される。ワークにおいて、溶接部はその他の部分と比較してその特性、例えば、硬さ等が異なる。このため、溶接部だけを検査する、あるいは、溶接部以外の部分に加工を行うために、溶接部の位置を検出する必要がある。
しかし、圧延等によって伸長されるワークの溶接部を作業者が目視確認して検出する場合には、溶接部の位置が非常にわかりにくいため、検出に要する時間が長くなるという問題があった。このようなワークとしては、例えば、金属リングおよび金属帯等がある。
【0003】
以上のような問題を解消する溶接部検出方法として、以下に示す特許文献1および特許文献2のような技術が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された技術は、圧延後のワークの溶接部を検出するための技術であり、移動可能な検出用センサを用いる。
検出用センサは、ワークの内側に渦電流を発生させるとともに、当該渦電流を検出部によって検出することで溶接部の検出を行う。また、検出部によって検出される検出信号は、フィルタリング部でフィルタリングされる。このような検出センサを移動させて溶接部の検出を行う。
これによれば、検出信号に含まれるノイズがフィルタリング部で除去されるため、圧延後のワークの溶接部を検出できる。
【0005】
特許文献1に開示された技術は、渦電流によるインピーダンス変化を検出することで溶接部を検出する方法である。このため、熱処理を行ったワークの溶接部を検出する場合には、ワークの結晶組成が均一化されているため、溶接部が検出できない場合があった。つまり、検出精度が低下する場合があるという点で不利であった。
【0006】
また、特許文献2に開示された技術は金属リングの欠陥を検出するための技術であり、駆動プーリ、従動プーリ、および基準指標検出機構を用いる。
駆動プーリおよび従動プーリには、金属リングが巻回される。基準指標検出機構は、駆動プーリと従動プーリとの間に配置され、溶接部に金属リングの板幅に沿って形成される溶接跡を画像認識する。
駆動プーリを回動させてワークを搬送し、基準指標検出機構によって溶接跡の位置を検出する。また、金属リングの欠陥を検出する機構によって欠陥の検出が行われ、当該検出された位置は、溶接跡からの相対的な位置として特定される。
このような溶接跡を検出する基準指標検出機構を用いることにより、ワークの溶接部を検出できる。
【0007】
しかし、特許文献2に開示された技術を用いてワークの溶接部を検出した場合、溶接の条件、例えば、ビードの幅等によって溶接跡の形状および色合い等が変化する場合がある。つまり、溶接跡が見えにくくなる場合があり、ひいては、溶接跡を検出できない場合があるため、溶接部の検出精度が低下する場合があるという点で不利であった。また、検出精度を向上させるために、駆動プーリの回転数を下げることが考えられるが、この場合、溶接部の検出に要する時間が長くなってしまう。
【0008】
また、溶接後に圧延されたワークの溶接部には、板幅方向の内側に向かって切り欠かれたようなくびれ(微小変化)が形成される。
このようなくびれを検出することでワークの溶接部を検出することが考えられるが、当該くびれを短い時間で検出するためには、ワークの搬送速度を速くする必要があり、測定間隔の非常に短い高価なセンサを用いる必要がある。つまり、コストがかかるという点で不利であった。
一方、測定間隔の長いセンサを用いた場合には、くびれを読み飛ばさないようにするために、くびれを搬送する速度を遅くする必要がある。つまり、溶接部の検出に要する時間が長くなってしまうという点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−151455号公報
【特許文献2】特開2005−283303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、ワークの溶接部の検出に要する時間を短縮するとともに、低コストで溶接部の検出を行うことが可能な溶接部検出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1においては、溶接部を有するワークを伸長したときに、該ワークの溶接部に形成されるくびれを検出することにより、前記ワークの溶接部を検出する溶接部検出方法であって、前記ワークの伸長量と前記くびれの幅との相関と、前記ワークの板幅および板厚の少なくとも一方の前記ワークの伸長前後における変化量と前記くびれの幅との相関とのうち、少なくとも一方の相関を予め求めておき、前記伸長量および前記変化量と前記くびれの幅との相関が求められているワークの伸長量、板幅、および板厚を取得することにより、前記相関に基づいて、前記くびれの幅を算出する算出工程と、前記算出工程で算出されるくびれの幅に応じて、前記くびれを検出する際の前記ワークの搬送速度を設定する設定工程と、前記設定工程で設定されるワークの搬送速度で前記ワークを搬送しながら、所定の間隔で前記ワークの板幅を測定することにより、前記くびれを検出する検出工程と、を含むものである。
【0012】
請求項2においては、前記検出工程で前記くびれが検出されなかったときに、前記くびれを検出する際のワークの搬送速度および前記ワークの板幅の測定間隔の少なくともいずれかを再設定する再設定工程をさらに含み、前記検出工程は、前記再設定工程で再設定される前記搬送速度および測定間隔で前記ワークの板幅を測定することにより、前記くびれを検出するものである。
【0013】
請求項3においては、溶接部を有するワークを伸長したときに、該ワークの溶接部に形成されるくびれを、前記ワークを所定の搬送速度で搬送しながら検出することにより、前記ワークの溶接部を検出する溶接部検出方法であって、前記くびれを検出する際の前記ワークの搬送速度よりも速い速度で前記ワークを搬送しながら、前記ワークの板幅を測定することにより、前記くびれの位置候補を算出する算出工程と、前記くびれを検出する際の前記ワークの搬送速度で、前記算出工程で算出される位置候補の板幅を測定することにより、前記くびれを検出する検出工程と、を含むものである。
【0014】
請求項4においては、前記算出工程では、アナログ出力を用いて前記ワークの板幅を測定し、前記検出工程では、デジタル出力を用いて前記位置候補の板幅を測定するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ワークの溶接部の検出において、溶接部に形成されるくびれを検出する速度を最適に設定できる、あるいは、くびれを検出する範囲を減らすことができるため、ワークの溶接部の検出に要する時間を短縮できるとともに、低コストで溶接部の検出を行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】金属リングの溶接部を検出する第一実施形態の溶接部検出装置の全体的な構成を示す斜視図。
【図2】金属リングの溶接部を検出する第一実施形態の溶接部検出装置の動作を示す平面図。(a)ワークを取り付けた状態を示す図。(b)高速で板幅を測定する状態を示す図。(c)低速で板幅を測定する状態を示す図。(d)溶接部を停止位置へ移動した状態を示す図。
【図3】金属リングの溶接部を検出する第一実施形態の溶接部検出装置の動作を示すフロー図。
【図4】金属帯の溶接部を検出する第一実施形態の溶接部検出装置の動作を示す側面図。(a)ワークを取り付けた状態を示す図。(b)高速で板幅を測定する状態を示す図。(c)低速で板幅を測定する状態を示す図。
【図5】金属帯の溶接部を検出する第一実施形態の溶接部検出装置の動作を示すフロー図。
【図6】金属リングの溶接部を検出する第二実施形態の溶接部検出装置の動作を示すフロー図。
【図7】位置候補の算出に際して高速でワークの板幅を測定した結果を示すグラフ図。
【図8】金属リングの溶接部を検出する第二実施形態の溶接部検出装置の動作を示す側面図。(a)位置候補を算出した状態を示す図。(b)低速で位置候補の板幅を測定する状態を示す図。(c)低速で溶接部の板幅を測定する状態を示す図。(d)溶接部を停止位置へ移動した状態を示す図。
【図9】金属帯の溶接部を検出する第二実施形態の溶接部検出装置の動作を示すフロー図。
【図10】金属リングを成形する工程を示す図。
【図11】伸長量が最も小さい金属リングを点Aで切断した場合の金属リングの板面を示す説明図。
【図12】伸長量が最も大きい金属リングを点Aで切断した場合の金属リングの板面を示す説明図。
【図13】金属リングの板幅を測定した結果を示すグラフ図。(a)伸長量が最も小さい金属リングの結果を示す図。(b)伸長量が最も大きい金属リングの結果を示す図。
【図14】くびれの幅と板幅の緩やかな変化量との相関を示す図。
【図15】金属リングのくびれを示す拡大側面図。(a)伸長量が最も小さい金属リングのくびれを示す図。(b)伸長量が最も大きい金属リングのくびれを示す図。
【図16】くびれの幅と周長との相関を示す図。
【図17】金属リングの板厚を示す拡大平面図。(a)伸長量が最も小さい金属リングの板厚を示す図。(b)伸長量が最も大きい金属リングの板厚を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、第一実施形態に係る溶接部検出方法が用いられて溶接部Yの検出を行う溶接部検出装置1について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1および図10に示すように、溶接部検出装置1は、溶接後に圧延および周長調整等が行われることにより、溶接後の状態から伸長されるワークの溶接部Yを検出するものである。このようなワーク100としては、例えば、帯状の金属板の両端を溶接により接合した金属リング、および複数の帯状金属板の端部を溶接により接合して繋ぎ合わせた金属帯等がある。
【0019】
なお、溶接部検出装置1の構成は、円環状に形成されるワーク、例えば、金属リングの溶接部を検出する場合と、帯状に形成されるワーク、例えば、金属帯の溶接部を検出する場合とで異なる。
【0020】
以下では、金属リングの溶接部Yを検出する場合の溶接部検出装置1について説明する。
まず、溶接部Yの検出対象となるワーク100、すなわち金属リングについて説明する。
ワーク100は、図10に示すように、板状に形成される部材に所定の加工を行うことで成形される。
【0021】
ワーク100を成形するための素材となる金属板90は、曲げ工程S1において、回動する一対の曲げローラ41・41に挟まれることにより、略円筒状に曲げられる。このとき、金属板90は、その両端部が当接する長さに切断される。
【0022】
円筒状に曲げられた金属板90は、溶接工程S2において、当接する両端部を所定の溶接機構42によって溶接されることにより、略円筒状に成形される。これにより、金属板90には、溶接部Yが形成される。
【0023】
溶接された円筒状の金属板90は、熱処理工程S3において、熱処理炉43に収容されて熱処理が行われる。
【0024】
熱処理が行われた円筒状の金属板90は、切断工程S4において、所定の切断機構によって所定の間隔で切断される。これにより、円筒状の金属板90は、リング状のワーク100に成形される。
【0025】
熱処理が行われた円筒状の金属板90を切断することにより成形されたワーク100は、圧延工程S5において、回動する複数の圧延ローラ45・45・45によって圧延される。つまり、ワーク100は、複数の圧延ローラ45・45・45によって押さえられた状態で伸長される。このとき、ワークの板厚Dは薄くなる。
【0026】
圧延されたワーク100は、周長調整工程S6において、さらに伸長される。このとき、ワーク100は、その内周面が回動する二つの調整ローラ46・46に巻回される。そして、二つの調整ローラ46・46のうちのいずれか一方(図10においては右側の調整ローラ46)がワーク100の径方向外側に移動することで、ワーク100は引っ張られる。つまり、ワーク100に張力がかかり、ワーク100は伸長される。
【0027】
ここで、周長調整工程S6では、圧延工程S5よりも高い精度でワーク100を伸長できる。このため、周長の異なるワーク100を成形する場合においては、周長調整工程S6でワーク100の伸長量を変えている。
【0028】
これにより、ワーク100は、所定の周長を有した金属リングとして成形される。また、切断工程S4において成形される複数のリング状のワーク100は、周長の異なる複数の金属リングとして成形される。つまり、伸長量の異なる複数の金属リングとして成形される。
【0029】
このようなワーク100には、図11および図12に示すように、溶接部Yが一つだけ形成され、当該溶接部Yにくびれ101が形成される。くびれ101は、ワーク100の板幅方向において、ワーク100を両端部から内側に向かって切り欠いたように形成され、くびれ101が形成された部分の板幅Hは、他部よりも短くなっている。
このようなくびれ101は、圧延工程S5および周長調整工程S6等でワーク100を伸長したときに形成される。
【0030】
なお、以下において、図11に示す伸長量が最も小さいワークを「ワーク110」とし、その溶接部を「溶接部Y1」とする。そして、くびれを「くびれ111」とする。
また、図12に示す伸長量が最も大きいワークを「ワーク120」とし、その溶接部を「溶接部Y2」とする。そして、くびれを「くびれ121」とする。
【0031】
次に、ワークの板幅Hの変化とくびれの幅Lとの関係について説明する。
ワーク100は、切断工程S4において円筒状の金属板90を切断して成形された時点では、その板幅Hは全周にわたって略同じである。一方、周長調整工程S6においてワーク100が引っ張られた時点では、図11および図12に示すように、ワーク100には、板幅Hが小さくなるように緩やか(弓なり)に変化する部分が生じる(図11および図12に示す点線部分参照)。つまり、周長調整工程S6でワーク100には、板幅Hが短い部分が形成される。
【0032】
伸長量が最も大きいワーク120の板幅が短い部分H2は、伸長量が最も小さいワーク110の板幅が短い部分H1よりも短くなる。つまり、ワーク120の板幅Hの変化は、ワーク110の板幅Hの変化より大きい。
ここで、ワーク120は、周長調整工程S6でワーク110よりもより多く伸長されている。つまり、周長調整工程S6で多く引っ張られると、板幅Hの変化は大きくなる。
【0033】
なお、以下において、このようなワーク100が周長調整工程S6を経る前後での板幅Hの変化量(図11に示す矢印C1および図12に示す矢印C2参照)を「板幅の緩やかな変化量C」とする。
【0034】
ワーク110の板幅Hを測定した結果を図13(a)に示す。この場合、溶接部Y1に形成されるくびれ111の影響により、溶接部Y1の位置だけ板幅Hの変化量が大きく、溶接部Y1以外の部分の板幅Hの変化量が小さいことがわかる。つまり、板幅の緩やかな変化量C1は、小さいことがわかる。
【0035】
また、ワーク120の板幅Hを測定した結果を図13(b)に示す。この場合、溶接部Y2に形成されるくびれ121の影響および板幅Hの緩やかな変化の影響により、ワーク全体の板幅Hの変化量が大きいことがわかる。つまり、板幅の緩やかな変化量C2は、大きいことがわかる。
【0036】
このような、板幅の緩やかな変化量Cが異なるワーク100に対応するくびれの幅Lを測定した実験結果を図14に示す。板幅の緩やかな変化量Cが大きくなるにつれて、くびれの幅Lが大きくなっている。つまり、板幅の緩やかな変化量Cとくびれの幅Lとの間には相関があることがわかる(図14に示すグラフG1参照)。
特に、板幅の緩やかな変化量Cが最も大きいワーク120のくびれの幅L2は、板幅の緩やかな変化量Cが最も小さいワーク110のくびれの幅L1の約二倍の長さとなっている。
【0037】
次に、溶接部検出装置1の全体的な構成について説明する。
図1に示すように、溶接部検出装置1は、搬送機構10と検出機構20とを具備する。
【0038】
搬送機構10は、ワーク100を搬送するものである。搬送機構10は、駆動プーリ11とテンションプーリ12とを備える。
駆動プーリ11は、その外形が略円形状に形成された部材であり、所定の駆動源によって駆動する。また、駆動プーリ11には、ロータリーエンコーダが取り付けられる。これにより、溶接部検出装置1は、駆動プーリ11の回転を監視する。
テンションプーリ12は、駆動プーリ11と略同一の形状に形成され、駆動プーリ11との間に所定の間隔が空けられた状態で配置される。
【0039】
検出機構20は、ワークの板幅Hを測定するものである。検出機構20は、駆動プーリ11とテンションプーリ12とにワーク100を取り付けたときに、当該ワーク100に干渉しないように配置される。本実施形態の検出機構20には、非接触式のレーザセンサが用いられる。
【0040】
このような溶接部検出装置1は、搬送機構10にワーク100を取り付けて、駆動プーリ11を回動させることによりテンションプーリ12が一体的に回動し、ワーク100を搬送する。つまり、ワーク100を検出機構20に対して周長方向へ移動させる。このとき、検出機構20によってワークの板幅Hを測定することで、溶接部Yに形成されるくびれ101を検出する。これにより、溶接部検出装置1は、ワークの溶接部Yを検出し、当該溶接部Yが所定の位置(以下、「停止位置1a」とする)に配置されるようにワーク100を搬送する。
また、溶接部検出装置1は、駆動プーリ11を所望の回数だけ回動させることにより、ワーク100を所定の位置まで搬送する。
【0041】
溶接部検出装置1において、板幅Hを測定する際のワーク100の搬送速度は、駆動プーリ11の回転数に応じて変化する。つまり、駆動プーリ11の回転数は、板幅Hを測定する際のワーク100の搬送速度となる。
また、溶接部検出装置1は、駆動プーリ11の回転数を設定可能に構成される、換言すれば、ワーク100の搬送速度を設定可能に構成される。
【0042】
ここで、ワークの板幅Hを測定することで板幅の緩やかな変化量Cを算出する場合、くびれ101を検出する必要がない。また、ワーク100の緩やかな変化は、ワーク100の周方向に大きく現れる(図11に示す点線部分参照)。つまり、ワーク100を引っ張った方向に大きく現れる。このため、くびれ101を読み飛ばしても(くびれ101部分の板幅Hが測定できなくても)、板幅の緩やかな変化量Cは算出できる。
第一実施形態において、板幅の緩やかな変化量Cを算出するためにワークの板幅Hを測定する際のワーク100の搬送速度、つまりくびれ101を読み飛ばす速度(くびれ101部分の板幅Hを測定可能な速度よりも速い速度)を「高速時の搬送速度V1」とする。
【0043】
一方、くびれ101を検出する場合、くびれの幅Lが非常に小さいため検出機構20の分解能を高くする必要がある。従って、検出機構20の測定間隔を一定とした場合、高速時の搬送速度V1と比較して板幅Hを測定する際のワーク100の搬送速度を遅くする必要がある。
第一実施形態において、ワークの板幅Hを測定する際のワーク100の搬送速度のうち、くびれ101を検出するときの速度を「低速時の搬送速度V2」とする。
【0044】
高速時の搬送速度V1は、所定の速度に設定されている。また、検出機構20によるワークの板幅Hの測定間隔は、検出機構20が測定可能な測定間隔のうち、最も短い測定間隔に設定されている。
そして、溶接部検出装置1は、予め求めておいた板幅の緩やかな変化量Cとくびれの幅Lとの相関(図14に示すグラフG1参照)に基づいて、くびれの幅Lを算出可能に構成される。また、溶接部検出装置1は、くびれの幅Lに応じて、低速時の搬送速度V2を設定可能に構成される。
【0045】
以上の構成を備える溶接部検出装置1が用いられて行われる、第一実施形態に係る溶接部検出方法について説明する。
【0046】
まず、図2(a)および図3に示すように、溶接部検出装置1にワーク100を取り付ける(S110)。より詳細には、駆動プーリ11とテンションプーリ12とにワーク100を巻回する。
【0047】
図2(b)および図3に示すように、ワーク100を取り付けた後で、高速でワークの板幅Hを測定する(S120)。この場合、溶接部検出装置1は、駆動プーリ11を高速回転することにより、ワーク100を搬送速度V1で搬送する。また、溶接部検出装置1は、ワーク一周分よりも十分長い距離だけワーク100を搬送し、ワークの板幅Hを測定する。
【0048】
高速でワークの板幅Hを測定した後で、当該測定結果より板幅の緩やかな変化量Cを算出する(S130)。つまり、溶接部検出装置1は、ステップS120にて、板幅の緩やかな変化量Cを算出するために必要な数値である、ワークの板幅Hを取得する。
【0049】
板幅の緩やかな変化量Cを算出した後で、予め求めておいた板幅の緩やかな変化量Cとくびれの幅Lとの相関に基づいて、くびれの幅Lを算出する(S140)。
【0050】
くびれの幅Lを算出した後で、当該くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を設定する(S150)。
【0051】
図2(c)および図3に示すように、低速時の搬送速度V2を設定した後で、当該設定された低速時の搬送速度V2で板幅Hを測定する(S160)。これにより、溶接部検出装置1は、くびれ101の検出を行う。
【0052】
ステップS160にてくびれ101が検出された場合には、図2(d)および図3に示すように、当該検出されたくびれ101、すなわち溶接部Yが停止位置1aへ移動するようにワーク100を搬送する(S170:Yes、S190)。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S230)。
【0053】
一方、ステップS160にてくびれ101が検出されない場合においては、高速で板幅Hを測定してからの経過時間(S120〜S170までに要した時間)を確認する(S170:No)。本実施形態では、溶接部検出装置1でタイマー制御を行うことで、経過した時間を測定する。
【0054】
溶接部Yの検出を開始してから5秒以上経過していない場合には、引き続き低速でくびれ101の検出を行う(S180:No)。
【0055】
一方、溶接部Yの検出を開始してから5秒以上経過している場合には、最低速度以下であるかを確認する(S180:Yes)。
【0056】
第一実施形態において最低速度とは、伸長量が最も小さいワーク110のくびれ111(図15(a)参照)を測定する場合に設定される、低速時の搬送速度V2である。
【0057】
低速時の搬送速度V2が最低速度より大きい場合には、低速時の搬送速度V2を再設定する(S200:No、S210)。このとき、溶接部検出装置1は、現在設定されている低速時の搬送速度V2をより遅い速度に再設定する。そして、当該再設定した搬送速度V2で板幅Hの検出を行う(S160、S170)。
これによれば、板幅の緩やかな変化量Cを測定したときに誤差が生じ、本来のくびれの幅Lよりも大きなくびれの幅Lを算出した場合等においても、確実に溶接部Yを検出できる。
【0058】
低速時の搬送速度V2が最低速度以下の場合、溶接部Yが検出不可能なワーク100であると判断(NG判断)する(S200:Yes、S220)。このとき、溶接部検出装置1は、溶接部Yが検出できなかったことを所定の手段によって作業者等に通知する。このような通知するための手段としては、溶接部検出装置1に所定の表示部を電気的に接続し、当該表示部にNG判断したことを表示する等がある。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S230)。
【0059】
このように、第一実施形態の溶接部検出方法は、溶接部Yを有するワーク100を伸長したときに、ワークの溶接部Yに形成されるくびれ101を検出することにより、ワークの溶接部Yを検出する。
これによれば、くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を設定できるため、例えば、最低速度で溶接部Yを検出する場合と比較して、より速い速度で溶接部Yを検出できる。つまり、溶接部Yに形成されるくびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を最適に設定できるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
また、ワークの板幅Hの測定間隔が長い安価なセンサを用いた場合でも、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を最適に設定できる。つまり、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できるとともに、低コストで溶接部Yの検出を行うことができる。
【0060】
また、板幅の緩やかな変化量Cが最も大きいワーク120のくびれの幅L2は、前述のように、板幅の緩やかな変化量Cが最も小さいワーク110のくびれの幅L1の約二倍の長さとなっている。従って、検出機構20の測定間隔を一定とした場合、溶接部検出装置1は、ワーク120における低速時の搬送速度V2を、ワーク110における低速時の搬送速度V2の約二倍の速さに設定できる。
つまり、ワーク100の伸長量によって、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を約半分に短縮できる。
【0061】
また、板幅の緩やかな変化量Cとくびれの幅Lとの相関に基づいてくびれの幅Lを算出する場合には、くびれの幅Lの算出およびくびれ101の検出を一つの検出機構20で行うことができる。つまり、くびれの幅Lを算出するために別途センサ等を用いる必要がない。このため、低コストでワークの溶接部Yを検出できる。
【0062】
次に、ワーク100の伸長量とくびれの幅Lとの関係について説明する。
図15に示すように、ワーク120のくびれの幅L2は、ワーク110のくびれの幅L1よりも長い。
【0063】
このような、伸長量を変えたワーク100に対応するくびれの幅Lを測定した実験結果を図16に示す。ワーク100の伸長量を大きくすることによって、換言すれば、ワーク100の周長(図11に示す周長W1および図12に示す周長W2参照)を長くすることによって、くびれの幅Lも大きくなっている。つまり、ワークの伸長量とくびれの幅Lとの間には相関があることがわかる(図16に示すグラフG2参照)。
【0064】
従って、ワーク100の伸長量とくびれの幅Lとの相関に基づいてくびれの幅Lを算出できる。つまり、伸長量を算出することにより、低速時の搬送速度V2を設定できる。
第一実施形態の溶接部検出方法では、予め求めておいた伸長量とくびれの幅Lとの相関に基づいて、くびれの幅Lを算出しても構わない。
【0065】
この場合、溶接部検出装置1は、ワークの周長Wを算出する周長測定機構をさらに具備する。
【0066】
周長測定機構は、例えば、駆動プーリ11の中点からテンションプーリ12の中点までの距離を測定する。そして、駆動プーリ11およびテンションプーリ12の円周の半分の距離と測定した距離の二倍の距離との和を算出することで、ワークの周長Wを算出する。
【0067】
また、溶接部検出装置1は、予め求めておいた伸長量とくびれの幅Lとの相関に基づいて、くびれの幅Lを算出可能に構成される。
【0068】
このように構成される溶接部検出装置1は、溶接部Yの検出を開始すると、まず、周長測定機構によってワークの周長Wを算出する。
【0069】
ワークの周長Wを測定した後で、圧延工程S5(図10参照)で伸長される前のワークの周長に基づいて、ワーク100の伸長量を算出する。つまり、溶接部検出装置1は、ワークの周長Wを測定することで、ワーク100の伸長量を算出するために必要な数値である、ワーク100の伸長量を取得する。そして、ワーク100の伸長量とくびれの幅Lとの相関に基づいてくびれの幅Lを算出する。
【0070】
くびれの幅Lを算出した後は、前述したような、くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を算出し、くびれ101の検出を行う(S150〜S230)。
【0071】
これによれば、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を最適に設定できるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
【0072】
ワークの周長Wを測定することで低速時の搬送速度V2を算出する場合には、低速時の搬送速度V2を算出した後で、ワーク一周分だけ(測定した周長Wだけ)低速で板幅Hの測定を行っても構わない。
これによれば、伸長量を算出したときに誤差が生じて、本来のくびれの幅Lよりも大きなくびれの幅Lを算出した場合等においても、速やかに低速時の搬送速度V2を再設定できる。
【0073】
次に板厚Dとくびれ101との関係について説明する。
ワークの板厚Dは、圧延工程S5および周長調整工程S6を経ることにより薄くなる。このとき、ワーク100は、板厚Dの薄くなる割合と伸長される割合とが同じ割合となるように塑性変形する。
つまり、ワーク100が圧延工程S5および周長調整工程S6を経る前後での板厚Dの変化量と伸長量との間には相関がある。従って、図17に示すように、板厚D2が薄いワーク120のくびれの幅L2は、板厚D1が厚いワーク110のくびれの幅L1よりも長くなる。
【0074】
くびれの幅Lは、板厚Dの変化量とくびれの幅Lとの相関に基づいて算出できる。つまり、板厚Dを測定することにより、低速時の搬送速度V2を設定できる。
第一実施形態の溶接部検出方法では、板厚Dの変化量とくびれの幅Lとの相関に基づいて、くびれの幅Lを算出しても構わない。
【0075】
この場合、溶接部検出装置1は、ワークの板厚Dを測定する板厚測定機構をさらに具備する。
【0076】
板厚測定機構には、例えば、検出機構20にあるようなレーザセンサが用いられる。
【0077】
また、溶接部検出装置1は、板厚Dの変化量とくびれの幅Lとの相関に基づいて、くびれの幅Lを算出可能に構成される。
【0078】
このように構成される溶接部検出装置1は、溶接部Yの検出を開始すると、まず、測定装置によってワークの板厚Dを測定する。このとき、溶接部Yを読み飛ばしても板厚Dの測定結果に影響はないため、低速時の搬送速度V2より速い速度、例えば、高速時の搬送速度V1で板厚Dを測定する。
【0079】
ワークの板厚Dを測定した後で、予め求めておいた板厚Dの変化量とくびれの幅Lとの相関に基づいてくびれの幅Lを算出する。つまり、溶接部検出装置1は、ワークの板厚Dを測定することで、板厚Dの変化量を算出するために必要な数値である、ワークの板厚Dを取得する。
【0080】
くびれの幅Lを算出した後は、前述したような、くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を算出し、くびれ101の検出を行う(S150〜S230)。
【0081】
これによれば、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を最適に設定できるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
【0082】
なお、金属リングの溶接部Yを検出する第一実施形態の溶接部検出方法では、くびれ101が検出されない場合において、高速で板幅Hを測定してからの経過時間(S120〜S170までに要した時間)を確認したが、これに限定されるものでない。すなわち、低速時の搬送速度V2で金属リング一周分以上の板幅Hを測定できればよい。
【0083】
次に、帯状に延出する長尺部材である金属帯の溶接部Yを検出する場合の溶接部検出装置1の構成について説明する。
金属帯であるワーク100は、複数の金属板を溶接によって接合した後で、圧延によって伸長される。その結果、図4(b)に示すように、ワーク100には、複数の溶接部Yが形成される。一方、引っ張られて伸長されないため、ワークの板幅Hは、緩やかに変化しない。つまり、ワークの板幅Hは、くびれ101を除いて変化しない。
【0084】
図4(a)に示すように、溶接部検出装置1は、搬送機構10と検出機構20と長さ測定機構30とを具備する。
【0085】
搬送機構10は、第一搬送ローラ13・13と第二搬送ローラ14とを備える。第一搬送ローラ13・13は、ワーク100の板面を挟むように配置され、所定の駆動源によって回動可能に構成される。また、第一搬送ローラ13・13のいずれか一方(本実施形態では、上側の第一搬送ローラ13)には、ロータリーエンコーダが取り付けられ、第一搬送ローラ13・13の回転を監視する。
第二搬送ローラ14は、第一搬送ローラ13・13と略同一の形状に形成され、第一搬送ローラ13・13に対して、ワーク100の搬送方向へ所定の間隔を空けた状態で配置される。また、第二搬送ローラ14は、第一搬送ローラ13・13と同じ回転数で回動可能に構成される。
【0086】
検出機構20は、第一搬送ローラ13・13と第二搬送ローラ14との間に配置される。また、第一搬送ローラ13・13および第二搬送ローラ14上をワーク100が移動したときに干渉しないように配置される。検出機構20は、被接触式のレーザセンサによって構成され、ワークの板幅Hを測定可能に構成される。
【0087】
長さ測定機構30は、第一搬送ローラ13・13と第二搬送ローラ14との間に配置され、第一搬送ローラ13・13および第二搬送ローラ14上をワーク100が移動したときに干渉しないように配置される。長さ測定機構30は、被接触式のレーザセンサによって構成され、ワークの長手方向の長さ(ワークの搬送方向の長さ)を測定可能に構成される。
【0088】
高速時の搬送速度V1は、所定の速度に設定されている。また、検出機構20の測定間隔は、検出機構20が測定可能な測定間隔のうち、最も短い測定間隔に設定されている。
また、溶接部検出装置1は、伸長量とくびれの幅Lとの相関(図16に示すグラフG2参照)に基づいて、くびれの幅Lを算出可能に構成される。
【0089】
以上の構成を備える溶接部検出装置1が用いられて行われる、第一実施形態に係る溶接部検出方法について説明する。
【0090】
まず、図4(a)および図5に示すように、溶接部検出装置1にワーク100を取り付ける(S310)。より詳細には、第一搬送ローラ13・13の間にワークの始端102を挟んだ状態でセットする。
【0091】
次に、図4(b)および図5に示すように、溶接部検出装置1は、搬送機構10によって高速でワーク100を搬送するとともに、長さ測定機構30によってワークの長手方向の長さを測定する(S320)。
【0092】
ワークの長手方向の長さを測定した後で、圧延工程S5(図10参照)で伸長される前のワークの長手方向の長さに基づいて、ワーク100の伸長量を算出する(S330)。
【0093】
ワーク100の伸長量を算出した後で、予め求めておいたワーク100の伸長量とくびれの幅Lとの相関に基づいて、くびれの幅Lを算出する。(S340)。
【0094】
くびれの幅Lを算出した後で、当該くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を設定する(S350)。
【0095】
図4(c)および図5に示すように、低速時の搬送速度V2を設定した後で、搬送機構10は、当該設定された搬送速度V2で板幅Hを測定する(S360)。このとき、搬送機構10は、ワークの長手方向の長さを測定した方向と反対の方向にワーク100を搬送する。
【0096】
ステップS370にてくびれ101が検出された場合には、当該検出されたくびれ101の位置、すなわち溶接部Yの位置を記憶する(S370:Yes、S380)。そして、ワークの終端103まで、低速でワークの板幅Hの測定を行う(S390:No)。
【0097】
ワークの終端103までくびれ101の検出を行ったとき、くびれ101の位置が記憶されているかを確認する(S390:Yes)。
【0098】
ステップS380にて溶接部Yの位置が記憶されていた場合には、溶接部Yの位置を作業者等に通知する。このような手段としては、例えば、溶接部検出装置1に電気的に接続されるボタンを取り付けて、当該ボタンを押下する度に、順番に所定の位置に溶接部Yが配置されるようにワーク100を搬送する等がある。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S440)。
【0099】
一方、ステップS380にて溶接部Yの位置が記憶されていなかった場合には、最低速度以下であるかを確認する(S400:No)。
【0100】
最低速度より大きい場合には、低速時の搬送速度V2を再設定する(S410:No、S420)。このとき、溶接部検出装置1は、現在設定されている低速時の搬送速度V2をより遅い速度に再設定する。そして、当該再設定した搬送速度V2でくびれ101の検出を行う(S360、S370)。
【0101】
最低速度以下の場合には、溶接部Yが検出不可能なワーク100であると判断(NG判断)する(S410:Yes、S430)。このとき、溶接部検出装置1は、溶接部Yが検出できなかったことを所定の手段によって作業者等に通知する。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S440)。
【0102】
このように第一実施形態の溶接部検出方法は、溶接部Yを有するワーク100を伸長したときに、ワーク100を所定の搬送速度で搬送しながら検出することにより、ワークの溶接部Yに形成されるくびれ101を検出することにより、ワークの溶接部Yを検出する。
これによれば、くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を設定できる。つまり、溶接部Yに形成されるくびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を最適に設定できるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
【0103】
なお、金属帯を検出する場合における第一実施形態の溶接部検出方法は、ワーク100が圧延される前後での板厚Dの変化量とくびれの幅Lとの相関に基づいてくびれの幅Lを算出し、当該くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を設定しても構わない。また、板幅の緩やかな変化量Cとくびれの幅Lとの相関に基づいて低速時の搬送速度V2を設定しても構わない。
ただし、第一実施形態の金属帯のように、圧延することで伸長した場合、換言すれば、引っ張ることによって伸長しなかった場合には、ワークの板幅Hが緩やかに変化しない。この場合、ワーク100の伸長量および板厚Dの変化量のいずれかと、くびれの幅Lとの相関に基づいてくびれの幅Lを算出し、当該くびれの幅Lに応じて低速時の搬送速度V2を設定することとなる。
【0104】
また、第一実施形態の溶接部検出方法では、ワーク100の伸長量、板厚Dの変化量、および板幅の緩やかな変化量Cとの少なくともいずれかと、くびれの幅Lとの相関に基づいてくびれの幅Lを算出したが、これに限定されるものでない。
すなわち、溶接部検出方法では、ワーク100の伸長量とくびれの幅Lとの相関、板厚Dの変化量とくびれの幅Lとの相関、および板幅の緩やかな変化量Cとくびれの幅Lとの相関の全てに基づいてくびれの幅Lを算出しても構わない。
この場合、くびれの幅Lを算出する前にワーク100を測定する工程(S120およびS320)において、ワーク100の伸長量と板厚Dと板幅Hとを全て測定する。
【0105】
これによれば、例えば、ワーク100の伸長量によってくびれの幅Lを算出しにくいとき等においても、板厚Dの変化量および板幅の緩やかな変化量Cによってくびれの幅Lを確実に算出できる。つまり、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を最適に設定できるため、一回の測定でくびれ101を検出できる。従って、低速時の搬送速度V2を再設定することなくくびれ101を検出できるため、溶接部Yの検出に要する時間が長くなることを防止できる。
【0106】
このように、くびれの幅Lを算出する工程(S140およびS340)は、ワーク100の伸長量とくびれの幅Lとの相関と、ワークの板幅Hおよび板厚Dの少なくとも一方のワーク100の伸長前後における変化量とくびれの幅Lとの相関とのうち、少なくとも一方の相関を予め求めておき、伸長量および変化量とくびれの幅Lとの相関が求められているワーク100の伸長量、板幅H、および板厚Dを取得することにより、相関に基づいて、くびれの幅Lを算出する算出工程として機能する。
【0107】
また、低速時の搬送速度V2を設定する工程(S150およびS350)は、くびれの幅Lを算出する工程(S140およびS340)で算出されるくびれの幅Lに応じて、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を設定する設定工程として機能する。
【0108】
また、低速でワークの板幅Hを測定する工程(S160、S360)は、低速時の搬送速度V2を設定する工程(S150およびS350)で設定されるワークの搬送速度V2でワーク100を搬送しながら、所定の間隔でワークの板幅Hを測定することにより、くびれ101を検出する検出工程として機能する。
【0109】
これによれば、溶接部Yに形成されるくびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2を最適に設定できるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
【0110】
なお、溶接部検出方法の低速時の搬送速度V2は、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できるため、くびれ101を検出できる範囲の中で、速い速度であることが好ましい。
【0111】
また、低速時の搬送速度V2の再設定においては、検出機構20がより小さい幅のくびれ101を検出可能となればよい。つまり、検出機構20の測定間隔を再設定する、あるいは、低速時の搬送速度V2と検出機構20の測定間隔とを再設定しても構わない。
【0112】
例えば、検出機構20の測定間隔をさらに短くできる場合には、低速時の搬送速度V2を再設定するときに、検出機構20の測定間隔を短くしても構わない。これにより、低速時の搬送速度V2を変更することなく、より小さい幅のくびれ101の検出を行うことができる。この場合、より小さい幅のくびれ101を検出可能な範囲の中で、低速時の搬送速度V2を速くしても構わない。
【0113】
このように、低速時の搬送速度V2を再設定する工程(S210、S420)は、低速でワークの板幅Hを測定する工程(S160、S360)でくびれ101が検出されなかったときに、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2およびワークの板幅Hの測定間隔の少なくともいずれかを再設定する再設定工程として機能する。
また、低速でワークの板幅Hを測定する工程(S160、S360)は、低速時の搬送速度V2および測定間隔を再設定する工程(S210、S420)で再設定される搬送速度V2および測定間隔でワークの板幅Hを測定することにより、くびれ101を検出する。
これにより、くびれの幅Lの算出において誤差が生じた場合等においても、確実に溶接部Yを検出できる。
【0114】
次に、第二実施形態に係る溶接部検出方法が用いられて溶接部Yの検出が行われる溶接部検出装置1について、図面を参照して説明する。
【0115】
第二実施形態の溶接部検出装置1の構成は、円環状に形成されるワーク100、例えば、金属リング等を検査する場合と、帯状に形成されるワーク100、例えば、金属帯の溶接部Yを検出する場合とで異なる。
【0116】
以下では、金属リングの溶接部Yを検出する場合の溶接部検出装置1について説明する。
溶接部検出装置1は、検出機構20の構成が異なる点を除いて図1に示す第一実施形態の溶接部検出装置1と同様に構成される。
【0117】
検出機構20は、ワークの板幅Hを測定し、その検出結果をアナログ出力する、あるいはデジタル出力することが可能に構成される。従って、検出機構20は、アナログ出力を用いることにより高速で測定できるとともに、デジタル出力を用いてノイズによる影響を受けることなく高精度に測定できる構成となる。
また、アナログ出力の測定間隔およびデジタル出力の測定間隔は、それぞれ検出機構20が測定可能な測定間隔のうち最も短い測定間隔に設定されている。アナログ出力の測定間隔は、デジタル出力の測定間隔よりも短く設定されている。
【0118】
第二実施形態において、アナログ出力を用いて板幅Hを測定したときにくびれ101を検出する際のワークの搬送速度を「高速時の搬送速度V1」とする。
第二実施形態において、デジタル出力を用いて板幅Hを測定したときにくびれ101を検出する際のワークの搬送速度を「低速時の搬送速度V2」とする。
【0119】
高速時の搬送速度V1および低速時の搬送速度V2は、それぞれ伸長量が最も小さいワークのくびれの幅L1を算出可能な所定の速度に設定されている。
ここで、アナログ出力の測定間隔は、前述のように、デジタル出力の測定間隔より短いため、高速時の搬送速度V1は、低速時の搬送速度V2よりも速い。
【0120】
以上の構成を備える溶接部検出装置1が用いられて行われる、第二実施形態に係る溶接部検出方法について説明する。
【0121】
まず、図2(a)および図6に示すように、溶接部検出装置1にワーク100を取り付ける(S510)。
【0122】
図2(b)および図6に示すように、ワーク100を取り付けた後で、高速でワークの板幅Hを測定する(S520)。このとき、検出機構20は、アナログ出力を用いて板幅Hの測定を行う。また、溶接部検出装置1は、ワーク一周分よりも十分長い距離だけワーク100を搬送し、当該ワークの板幅Hを測定する。
【0123】
ここで、アナログ出力の測定結果では、ノイズの影響等を受けて、くびれ101の位置を誤検出する場合がある。
【0124】
高速でワークの板幅Hを測定した後で、ワーク100を取り付けた位置に搬送する(S530)。つまり、搬送機構10の駆動プーリ11を逆回転させて、高速で板幅Hを測定したとき(S520)に搬送した距離だけワーク100を搬送する。このとき、検出機構20による板幅Hの測定を行わないため、溶接部検出装置1は、高速時の搬送速度V1よりも速い速度でワーク100を搬送する。
【0125】
ワーク100を取り付けた位置に搬送した後で、くびれ101の位置候補を算出する(S540)。より詳細には、図7に示すように、高速でワークの板幅Hを測定したとき(S520)に、板幅Hの変化量が大きい位置が検出される。そこで、板幅Hの変化量に閾値Qを設け、当該閾値Qを超えた位置を位置候補として記憶する。本実施形態では、図7および図8(a)に示すように、点P1〜P4までが位置候補となる。
【0126】
なお、以下において、点P1〜P4を「位置候補P1〜P4」とする。
また、図7に示す測定結果においては、位置候補P1、P2、およびP4は、ノイズの影響等によってその変化量が大きくなった部分である。また、位置候補P3は、くびれ101によってその変化量が大きくなった部分、すなわち、溶接部Yである。
【0127】
また、以下において、検出機構20がワークの板幅Hを測定する位置を「測定位置20a」とする。
【0128】
図6に示すように、ステップS540にて位置候補が検出されなかった場合、溶接部Yが検出不可能なワーク100であると判断(NG判断)する(S550:No、S610)。このとき、溶接部検出装置1は、溶接部Yが検出できなかったことを所定の手段によって作業者等に通知する。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S620)。
【0129】
一方、ステップS540にて位置候補P1〜P4が検出された場合、図6および図8(b)に示すように、最初に算出された位置候補P1が測定位置20aに配置されるように、ワーク100を高速で搬送する(S550:Yes、S560)。このとき、検出機構20による板幅Hの測定を行わないため、溶接部検出装置1は、高速時の搬送速度V1よりも速い速度でワーク100を搬送する。
【0130】
高速でワーク100を搬送した後で、低速で当該位置候補P1の板幅Hを測定する(S570)。このとき、検出機構20は、デジタル出力を用いて位置候補P1の板幅Hの測定を行う。これにより、当該位置候補がくびれ101であるかノイズの影響等を受けたものであるかがわかる。このとき、溶接部検出装置1は、位置候補P1より所定の距離だけ、板幅Hの測定を行う。
図7に示す測定結果においては、溶接部検出装置1は、位置候補P1がノイズの影響等を受けたものであると判断する。
【0131】
ステップS570にて位置候補P1がノイズの影響等によるものであると判断した場合には、未確認の位置候補があるかを確認する(S580:No)。このように、溶接部検出装置1は、位置候補P1〜P4のうち、ノイズの影響等によって誤検出されたものを除去していく。
図7に示す測定結果においては、未確認の位置候補として位置候補P2〜P4があることを確認する。
【0132】
未確認の位置候補P2〜P4がある場合には、ノイズの影響等と判断された位置候補P1の次に算出された位置候補P2が測定位置20aに配置されるように、ワーク100を高速時の搬送速度V1より速い速度で搬送する(S600:Yes、S560)。そして、検出機構20のデジタル出力を用いて低速で位置候補P2の板幅Hの測定を行う(S570)。
図7に示す測定結果においては、低速で位置候補P2の板幅Hを測定し、ノイズの影響等によるものと判断する。そして、図8(c)に示すように、測定位置20aに位置候補P3が配置されるようにワーク100を高速時の搬送速度V1よりも速い速度で搬送し、低速で板幅Hを測定する。
【0133】
ステップS570にて位置候補P3の板幅Hを測定したとき、くびれ101であると判断した場合には、図6および図8(d)に示すように、当該くびれ101と判断した位置候補P3を停止位置1aへ移動して検出を終了する(S580:Yes、S590)。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S620)。
【0134】
なお、ワーク100が金属リングである場合、ワーク100には、溶接部Yが一つ形成される。このため、溶接部検出装置1は、溶接部Yを検出すると、溶接部以降の位置候補P4がノイズの影響等によるものと判断して、板幅Hの測定を行わない。
【0135】
一方、未確認の位置候補がない場合には、溶接部Yが検出不可能なワーク100であると判断(NG判断)する(S600:No、S610)。このとき、溶接部検出装置1は、溶接部Yが検出できなかったことを所定の手段によって作業者等に通知する。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S620)。
【0136】
これによれば、ワークの溶接部Yの検出において、くびれ101を検出する範囲を位置候補だけに減らすことができる。言い換えれば、低速で板幅Hを測定する部分が位置候補だけとなるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
また、ワークの板幅Hの測定間隔が長い安価なセンサを用いた場合でも、くびれ101を検出する範囲が位置候補だけである。また、位置候補の算出および溶接部Yの算出において、ワークの板幅Hを測定するため、一つのセンサで溶接部Yを検出できる。つまり、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できるとともに、低コストで溶接部Yの検出を行うことができる。
【0137】
次に、金属帯の溶接部Yを検出する場合の溶接部検出装置1の構成について説明する。
なお、金属帯は、第一実施形態の金属帯と同様に複数の溶接部Yが形成される。
【0138】
溶接部検出装置1は、長さ測定機構30を具備しない点、および検出機構20の構成が異なる点を除いて図4に示す第一実施形態の溶接部検出装置1と同様に構成される。
【0139】
検出機構20は、第二実施形態の金属リングの溶接部Yを検出する溶接部検出装置1の検出機構20と同様に、アナログ出力およびデジタル出力を用いてワークの板幅Hを測定可能な構成である。
また、アナログ出力の測定間隔およびデジタル出力の測定間隔は、それぞれ検出機構20が測定可能な測定間隔のうち最も短い測定間隔に設定されている。アナログ出力の測定間隔は、デジタル出力の測定間隔よりも短く設定されている。
【0140】
高速時の搬送速度V1および低速時の搬送速度V2は、それぞれ伸長量が最も小さいワークのくびれの幅L1を算出可能な所定の速度に設定されている。
【0141】
以上の構成を備える溶接部検出装置1が用いられて行われる、第二実施形態に係る溶接部検出方法について説明する。
【0142】
なお、ワーク100を取り付ける工程から位置候補の板幅Hを測定する工程(S710〜S760)までは、ワークの長手方向の長さより十分長い距離だけワーク100を搬送する点を除いて、金属リングのワーク100を取り付ける工程から位置候補の板幅Hを測定する工程(S510〜S560)までと同様である。従って、ワーク100を取り付ける工程から低速で位置候補の板幅Hを測定する工程(S710〜S770)までの説明は省略する。
【0143】
図9に示すように、ステップS770にてくびれ101であると判断した場合には、その位置を溶接部Yの位置として記憶する(S780:Yes、S790)。
【0144】
一方、ステップS770にてくびれ101でないと判断した場合、すなわち、位置候補がノイズの影響等によるものであると判断した場合には、未確認の位置候補があるかを確認する(S800:No)。
【0145】
未確認の位置候補がある場合には、ノイズの影響等と判断された位置候補の次に算出された位置候補が測定位置20aに配置されるように、ワーク100を高速時の搬送速度V1よりも速い速度で搬送する(S800:Yes、S760)。そして、検出機構20のデジタル出力を用いて低速で位置候補の板幅Hの測定を行う(S770)。
【0146】
一方、未確認の位置候補がない場合には、溶接部Yの位置が記憶されているかを確認する。
くびれ101と判断した位置が記憶されている場合には、当該くびれ101の位置を溶接部Yとして所定の手段によって作業者等に通知する(S810:Yes)。
【0147】
一方、ステップS770にてくびれ101と判断した位置が記憶されていない場合には、溶接部Yが検出不可能なワーク100であると判断する(S810:No、S820)。このとき、溶接部検出装置1は、溶接部Yが検出できなかったことを所定の手段によって作業者等に通知する。
そして、溶接部検出装置1よりワーク100を取り外して、溶接部Yの検出を終了する(S830)。
【0148】
このように、くびれ101の位置候補を算出する工程(S540、S740)は、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2よりも速い搬送速度V1でワーク100を搬送しながら、ワークの板幅Hを測定することにより、くびれ101の位置候補を算出する算出工程として機能する。
【0149】
また、低速で位置候補の板幅Hを測定する工程(S570、S770)は、くびれ101を検出する際のワークの搬送速度V2で、くびれ101の位置候補を算出する工程(S540、S740)で算出される位置候補の板幅Hを測定することにより、くびれ101を検出する検出工程として機能する。
【0150】
これによれば、ワークの溶接部Yの検出において、くびれ101を検出する範囲を減らすことができるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
【0151】
なお、第二実施形態の溶接部検出方法において、位置候補を算出する前にワークの長手方向の長さを測定した場合には、当該測定した長さだけワーク100を搬送しても構わない。
【0152】
また、第二実施形態の溶接部検出方法では、位置候補の算出に際して板幅Hを測定するときにアナログ出力を用い、位置候補の板幅Hを測定するときにデジタル出力を用いたが、これに限定されるものでない。
【0153】
例えば、位置候補の算出に際して板幅Hを測定するときにアナログ出力を用いるとともに、位置候補の板幅Hを測定するときにアナログ出力を用いても構わない。この場合、位置候補の板幅Hを測定するときの搬送速度V2を遅くする、あるいは、測定間隔を短くすることで、位置候補がノイズの影響等によるものであるか、くびれ101であるかを判断できる。この場合、位置候補の板幅Hを検出するときにノイズの影響等を受ける場合がある。
【0154】
このため、第二実施形態の溶接部検出方法では、位置候補の算出に際して板幅Hを測定するときにアナログ出力を用いるとともに、位置候補の板幅Hを測定するときにデジタル出力を用いることが好ましい。
【0155】
このように、くびれ101の位置候補を算出する工程(S540、S740)では、アナログ出力を用いてワークの板幅Hを測定する。
これにより、デジタル出力を用いてワークの板幅Hを測定した場合と比較して、より速い搬送速度V2で板幅Hを測定できる。つまり、位置候補の算出に要するまでの時間を短縮できる。
【0156】
また、低速で位置候補の板幅Hを測定する工程(S570、S770)工程では、デジタル出力を用いて位置候補の板幅Hを測定する。
これにより、アナログ出力を用いてワークの板幅Hを測定した場合にあるようなノイズの影響を受けることがないため、溶接部Yの検出精度を向上できる。
【0157】
また、本実施形態の溶接部検出方法では、高速時の搬送速度V1および低速時の搬送速度V2を所定の速度としたが、これに限定されるものでない。すなわち、溶接部検出方法では、位置候補を検出する前に、第一実施形態にあるようなワークの搬送速度を設定する工程(S150、S350)を行って、高速時の搬送速度V1および低速時の搬送速度V2を設定しても構わない。
【0158】
これによれば、位置候補の算出において搬送速度V1を最適な速度に設定できる。また、くびれ101の検出において搬送速度V2を最適な速度に設定できる。つまり、ワークの溶接部Yの検出に要する時間を短縮できる。
【0159】
ただし、溶接部Yの検出精度を向上させるという観点より、位置候補が検出できなかったときに高速時の搬送速度V1およびアナログ出力の測定間隔を再設定する工程(S210、S420)を行う、あるいは高速時の搬送速度V1をやや遅い速度に設定することが好ましい。
また、溶接部Yが検出できなかったときに低速時の搬送速度V2およびデジタル出力の測定間隔を再設定する工程(S210、S420)を行う、あるいは設定する低速時の搬送速度V2をやや遅い速度に設定することが好ましい。
【0160】
また、第二実施形態の溶接部検出方法では、一つの検出機構20によってアナログ出力およびデジタル出力で板幅Hの測定を行ったが、これに限定されるものでない。すなわち、溶接部検出方法では、アナログ出力によってワークの板幅Hの測定を行う第一検出機構およびデジタル出力によって位置候補の板幅Hの測定を行う第二検出機構を用いて溶接部Yの検出を行っても構わない。この場合、測定位置20aは、溶接部Yの検出を行う第二検出機構がワークの板幅Hを測定する位置となる。
【0161】
また、ワーク100の搬送方向上流側に第一検出機構を配置するとともに、搬送方向下流側に第二検出機構を配置することで、ワークの溶接部Yの検出に要する時間をさらに短縮できる。
より詳細には、高速で第一検出機構によって板幅Hの測定を行い、当該位置候補が測定位置20aまで搬送されたときに、低速で第二検出機構によって位置候補の板幅Hの測定を行う。これにより、ワークを一回搬送するだけで溶接部Yの検出を行うことができるため、ワークの溶接部Yの検出に要する時間をさらに短縮できる。
【0162】
ここで、例えば、検出機構20の構成を、ワーク100を溶接したときに形成される溶接跡を画像処理によって検出する構成とした場合における、溶接部Yの検出について説明する。
【0163】
溶接跡は、ワーク100を溶接したときに、当該溶接した部分の板幅方向に沿って連続して形成される。溶接跡は、圧延等によって伸長されることで、その幅が大きくなる。
従って、前述したような伸長量、板厚D、および板幅の緩やかな変化量Cによって、溶接跡の幅を算出できる。
【0164】
ここで、溶接跡は、溶接の条件によって見えやすさが変化する。従って、溶接の条件によって、低速時の搬送速度V2を遅くする必要がある。言い換えれば、低速時の搬送速度V2を設定する工程において、溶接跡の見えやすさが変化する要因を考慮する必要がある。
【0165】
この場合、低速時の搬送速度V2を設定するときに見えやすさが変化する要因の情報が必要となる。従って、当該見えやすさが変化する要因の情報を入力する工程等が必要となる。つまり、溶接部Yの検出に要する工程が増加してしまい、ひいては、溶接部Yの検出に要する時間が増加してしまう。また、用途等が異なるワーク100を測定する場合には、当該ワーク100の溶接時の状態等が必要となるため、汎用性が低下してしまう。
【0166】
一方、くびれ101は、溶接の条件等の影響でわずかに形状が変化する場合があるが、この場合、くびれ101の検出に与える影響もわずかである。
つまり、くびれ101を検出する構成とした場合、溶接の条件等の影響を受けることなく確実に溶接部Yを検出できる。
【0167】
また、渦電流を用いて溶接部Yの検出を行う場合、本実施形態の金属リングのように製造工程で熱処理が行われたときに、検出精度が低下してしまう。
【0168】
一方、本実施形態のようなレーザセンサを用いて溶接部Yの検出を行う場合、熱処理によって検出精度が低下することがなく、確実に溶接部Yを検出できる。
このように、溶接部Yを検出するための手段には、ワークの板幅Hを測定する機構を用いることが好ましい。ただし、ワーク100に傷が生じる可能性があるという観点より、ワーク100に接触することなくワークの板幅Hを測定する機構、例えば、非接触式のレーザセンサ等を用いることが好ましい。
【0169】
これによれば、溶接の条件および熱処理による組織の変化等に影響を受けることなく、確実に溶接部Yを検出できる。
【0170】
なお、本実施形態の溶接部検出方法では、金属リングおよび金属帯の溶接部Yを検出したが、これに限定されるものでない。すなわち、溶接部検出方法は、溶接した部分を圧延することによってくびれ101が生じる部材に対して広く適用可能である。
【0171】
また、本実施形態の溶接部検出方法では、板幅Hを測定するときおよびくびれ101を検出するときに、ワークの周長Wあるいはワークの長手方向の長さより十分長い距離だけワーク100を搬送したが、これに限定されるものでない。すなわち、溶接部検出方法では、ワークの板幅Hの測定およびくびれ101を検出ができればよく、例えば、検出機構20を二つ配置することにより、ワークの周長Wあるいはワークの長手方向の長さの半分の長さより十分長い距離だけワーク100を搬送しても構わない。
【0172】
また、搬送機構10は、ワーク100を搬送する構成であったが、これに限定されるものでない。すなわち、搬送機構10は、ワーク100の形状に沿って検出機構20を移動させる構成としても構わない。この場合、検出機構20を移動させる速度がくびれ101を検出する際の搬送速度V2となる。
つまり、本実施形態の搬送速度V1および搬送速度V2は、検出機構20に対するワーク100の相対的な速度である。
【0173】
また、本実施形態の溶接部検出方法では、測定間隔を検出機構20が測定可能な最も短い間隔に設定したが、これに限定されるものでない。すなわち、検出機構20が測定可能な最も短い間隔よりも長い間隔に設定しても構わない。
この場合、ワークの板幅Hを測定する回数を減らせるため、位置候補の算出等に要する時間を短くできる。
【符号の説明】
【0174】
1 溶接部検出装置
10 搬送機構
20 検出機構
100 ワーク
101 くびれ
C 板幅の緩やかな変化量
D 板厚
H 板幅
L くびれの幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接部を有するワークを伸長したときに、該ワークの溶接部に形成されるくびれを検出することにより、前記ワークの溶接部を検出する溶接部検出方法であって、
前記ワークの伸長量と前記くびれの幅との相関と、前記ワークの板幅および板厚の少なくとも一方の前記ワークの伸長前後における変化量と前記くびれの幅との相関とのうち、少なくとも一方の相関を予め求めておき、前記伸長量および前記変化量と前記くびれの幅との相関が求められているワークの伸長量、板幅、および板厚を取得することにより、前記相関に基づいて、前記くびれの幅を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出されるくびれの幅に応じて、前記くびれを検出する際の前記ワークの搬送速度を設定する設定工程と、
前記設定工程で設定されるワークの搬送速度で前記ワークを搬送しながら、所定の間隔で前記ワークの板幅を測定することにより、前記くびれを検出する検出工程と、
を含む、溶接部検出方法。
【請求項2】
前記検出工程で前記くびれが検出されなかったときに、前記くびれを検出する際のワークの搬送速度および前記ワークの板幅の測定間隔の少なくともいずれかを再設定する再設定工程をさらに含み、
前記検出工程は、
前記再設定工程で再設定される前記搬送速度および測定間隔で前記ワークの板幅を測定することにより、前記くびれを検出する、
請求項1に記載の溶接部検出方法。
【請求項3】
溶接部を有するワークを伸長したときに、該ワークの溶接部に形成されるくびれを、前記ワークを所定の搬送速度で搬送しながら検出することにより、前記ワークの溶接部を検出する溶接部検出方法であって、
前記くびれを検出する際の前記ワークの搬送速度よりも速い速度で前記ワークを搬送しながら、前記ワークの板幅を測定することにより、前記くびれの位置候補を算出する算出工程と、
前記くびれを検出する際の前記ワークの搬送速度で、前記算出工程で算出される位置候補の板幅を測定することにより、前記くびれを検出する検出工程と、
を含む、溶接部検出方法。
【請求項4】
前記算出工程では、アナログ出力を用いて前記ワークの板幅を測定し、
前記検出工程では、デジタル出力を用いて前記位置候補の板幅を測定する、
請求項3に記載の溶接部検出方法。
【請求項1】
溶接部を有するワークを伸長したときに、該ワークの溶接部に形成されるくびれを検出することにより、前記ワークの溶接部を検出する溶接部検出方法であって、
前記ワークの伸長量と前記くびれの幅との相関と、前記ワークの板幅および板厚の少なくとも一方の前記ワークの伸長前後における変化量と前記くびれの幅との相関とのうち、少なくとも一方の相関を予め求めておき、前記伸長量および前記変化量と前記くびれの幅との相関が求められているワークの伸長量、板幅、および板厚を取得することにより、前記相関に基づいて、前記くびれの幅を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出されるくびれの幅に応じて、前記くびれを検出する際の前記ワークの搬送速度を設定する設定工程と、
前記設定工程で設定されるワークの搬送速度で前記ワークを搬送しながら、所定の間隔で前記ワークの板幅を測定することにより、前記くびれを検出する検出工程と、
を含む、溶接部検出方法。
【請求項2】
前記検出工程で前記くびれが検出されなかったときに、前記くびれを検出する際のワークの搬送速度および前記ワークの板幅の測定間隔の少なくともいずれかを再設定する再設定工程をさらに含み、
前記検出工程は、
前記再設定工程で再設定される前記搬送速度および測定間隔で前記ワークの板幅を測定することにより、前記くびれを検出する、
請求項1に記載の溶接部検出方法。
【請求項3】
溶接部を有するワークを伸長したときに、該ワークの溶接部に形成されるくびれを、前記ワークを所定の搬送速度で搬送しながら検出することにより、前記ワークの溶接部を検出する溶接部検出方法であって、
前記くびれを検出する際の前記ワークの搬送速度よりも速い速度で前記ワークを搬送しながら、前記ワークの板幅を測定することにより、前記くびれの位置候補を算出する算出工程と、
前記くびれを検出する際の前記ワークの搬送速度で、前記算出工程で算出される位置候補の板幅を測定することにより、前記くびれを検出する検出工程と、
を含む、溶接部検出方法。
【請求項4】
前記算出工程では、アナログ出力を用いて前記ワークの板幅を測定し、
前記検出工程では、デジタル出力を用いて前記位置候補の板幅を測定する、
請求項3に記載の溶接部検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−106924(P2011−106924A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261159(P2009−261159)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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