説明

炉内ガス漏洩防止装置

【課題】廃棄物の焼却炉やガス化炉の本体や付属機器に設けられた軸シール部からの炉内ガスの漏洩を防止する。
【解決手段】軸シール機構を、グランドボックス14内に配置されたグランドパッキンと、このグランドパッキン軸方向中間部で軸に嵌めこまれたシール材リング20を含んで構成し、軸シール機構周辺の気体を導管17bにより引き込み前記気体中に含まれる炉内ガス成分を検知し、炉内ガス成分が検知されたとき漏洩した軸シール機構を特定して警報を発信する漏洩ガス検知手段17cと、前記グランドボックス14に設けられたシール材供給口25から前記シール材リング20にシール材を供給するシール材供給手段を備え、シール材供給手段を前記漏洩ガス検知手段17cの出力信号を入力として該当する軸シール機構にシール材を供給するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物焼却炉の炉内ガスが焼却炉に付帯する装置から漏洩するのを検知し、漏洩を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物焼却炉やガス化溶融炉では、燃焼ガスが炉外に漏洩しないよう一定の負圧を維持するよう誘引通風機で吸引し平衡通風運転を行えるようにしている。焼却物の組成や形状の変動により燃焼が変動し、それに伴い排ガス量が変動し、誘引通風機による炉内圧制御が追従できないような変動が生じた場合、炉圧が正圧になることがある。
一方、廃棄物焼却炉やガス化溶融炉には排ガス出口のほかに、廃棄物を炉に投入する投入口、廃棄物中に混在する不燃物や焼却灰を取り出す不燃物排出口などの開口部分があり、炉圧が正圧に転じた場合、炉内ガスがこれらの開口部分から漏洩することになる。このためこれらに開口部には、機械式やごみなどによるマテリアルシールなどのシール装置を設け、炉内ガスの外部への漏洩防止と、通常負圧運転時の外気空気の炉内洩れ込みを防止する構造としている。
燃焼変動により炉圧が正圧となった場合に、ごみ供給のためのスクリュー式供給装置や、ロータリシール装置、スクリュー式の不燃物抜き出し装置などの回転軸シール部のグランドパッキンなどのシール材がゆるみや劣化を起こしていると、内部の熱分解ガスが漏洩する惧れがある。
【0003】
従来技術において、軸貫通部はグランドパッキンの定期的な増締め、パッキンの交換によるメンテナンスで対応しているが、微量の漏洩は従来技術では防止できず作業環境悪化を招いている。
従来技術は、炉内ガス化燃焼による炉圧変動を炉出口煙道に設置した圧力計により検出し、誘引通風機により炉内圧制御を実施している。また炉内と直結した設備に有する回転軸シール部構造はグランドパッキン方式であり、グランドパッキンなどのシール材のゆるみや経年劣化などが起こるとシール性が極端に悪くなりグランドパッキンの増し締め、交換などにより対応している。
特許文献1には、シール部からの漏洩ガスを検知したら、炉内の分解ガスを分解ガス燃焼炉に吸引するエゼクタの吸引力を大きくして炉内の圧力を減圧する方法が開示されている(段落0024参照)。また、特許文献2には、軸封体の両端に装着されたスクイーズパッキンの間のNガス圧封空間に高圧窒素を圧封し、スクイーズパッキンからのCOガスのリークが発生しても、高圧窒素によりCOガスが外部に漏洩するのを防止する方法が開示されている(段落0012参照)。
また、特許文献3には、炉内圧力が正圧の状態が一定時間以上続くと、定量供給機を自動的に緊急停止させて炉内ガスが無制限に炉の周囲に放出されないようにする技術が開示されている(段落0007参照)。特許文献4には、軸封装置のグランドパッキンをスペーサリングで二つのグループに分け、スペーサリングに形成されたグリース溜めにグリースを満たし、さらに、前記グランドパッキンの奥側に、軸封部に内側から浸入する粉体をパージするNガスを供給するようにした例が示されている(段落0006参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−265198号公報
【特許文献2】特開2002−220593号公報
【特許文献3】特開2001−289422号公報
【特許文献4】特開2002−022018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、炉内ガス化燃焼による炉圧変動を検出し、炉内を負圧に維持するため誘引通風機による平衡通風制御を行っているが、ごみなどの廃棄物の性状は常に変動を伴い、また通常予想されない発熱量の瞬時的な変動も起こりうるので、特に燃焼速度の速い流動床炉では炉内負圧状態を完全に維持できない。
【0006】
また炉内と直結した設備に有する回転軸シール部構造はグランドパッキン方式であることから、グランドパッキンなどのシール材のゆるみや経年劣化などにより、未燃ガスや有害なダイオキシン類を含んだ熱分解ガスが炉外部に漏洩し、炉室の作業環境の悪化を招くなどの問題が生じる。
【0007】
特許文献1記載の技術は、軸封部の漏洩自体を防止する点に考慮したものでなく、また、特許文献2、4には、ガス漏洩時の対応については記載されていない。特許文献3にも軸封部の漏洩自体を防止する点については記載されていない。
【0008】
本発明の課題は、廃棄物の焼却炉やガス化炉の本体や付属機器に設けられた軸シール部からの炉内ガスの漏洩を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、廃棄物の焼却炉やガス化炉の本体や付属機器に設けられた軸の周囲からの炉内ガス漏洩を防止するために設けられた軸シール機構と、軸シール機構周辺の気体を導管により引き込み前記気体中に含まれる炉内ガス成分を検知し、警報を発信する漏洩ガス検知手段と、前記漏洩ガス検知手段の出力信号を入力として前記軸シール機構にシール材を供給するシール材供給手段を有してなる炉内ガス漏洩防止装置であって、前記軸シール機構を、前記軸の周囲を囲んで配置されるグランドパッキンと、このグランドパッキン軸方向中間部に前記軸に嵌めこまれて配置された環状のシール材リングと、グランドパッキン及びシール材リングの外周を囲んでグランドパッキンを収容するグランドボックスと、前記グランドパッキンを締め付けるグランド抑えを含んで構成し、前記シール材リングは、その内周面と外周面に周方向に形成された溝状のシール材収容空間と、内周面と外周面のシール材収容空間を連通するシール材通路とを備え、前記シール材供給手段は、前記グランドボックスに設けられたシール材供給口から前記シール材リングにシール材を供給するように構成することにより、達成される。
【0010】
上記構成によれば、軸シール機構から炉内ガスが漏洩したとき、漏洩ガス検知手段によりその旨の検知信号が出力され、この検知信号に応じて、当該軸シール機構に設けられたシール材リング内外のシール材収容空間にシール材が追加供給されるから、軸シール機構のシール能力が強化され、漏洩を容易に防止できる。
【0011】
前記グランドボックスに設けたシール材供給口の軸方向開口長さよりも、前記シール材リング外周面のシール材収容空間の軸方向長さを大きくし、前記シール材供給口の反グランド抑え側端部が前記シール材リング外周面のシール材収容空間の反グランド抑え側端部よりグランド抑え側に位置するように前記シール材リングをセットすることが望ましい。
【0012】
このような構成とすることにより、軸長手方向にランドパッキンの増し締めを複数回実施した場合でもシール材リングの内外面に、シール材を切れることなく供給することが可能となる。
【0013】
また、前記漏洩ガス検知手段は、軸シール機構周辺の気体を取り込む吸入口と、前記吸入口に接続された導管と、前記導管に介装された遠隔開閉可能な弁と、前記導管に接続されたガス検知手段を含んで構成し、炉内ガスの漏洩が検知された時に前記遠隔開閉可能な弁を順次切替え、漏洩箇所を特定する機能を有する制御手段を備えることが望ましい。
【0014】
このような構成とすることにより、軸シール機構が複数設けられている場合でも、軸シール機構ごとに軸シール機構周辺の気体を取り込む吸入口と導管を設けた場合でも、漏洩箇所を自動的に特定することが可能になる。
【0015】
前記漏洩ガス検知手段は、軸の端部及び軸シール機構を気密に覆う外部ケーシングと、大気と外部ケーシング内部気体の差圧を測定し、出力する差圧検出器と、前記差圧検出器の出力を入力として差圧の変化量を算定し、出力する差圧変化量判定手段と、差圧変化量判定手段の出力に基づいて漏洩箇所を特定する機能を有する制御手段を含んで構成してもよい。
【0016】
このような構成とすることにより、特定の成分が検出されなくても漏洩を検知することが可能になり、漏洩の検出漏れを避けることができる。
【0017】
また、前記シール材供給手段は、前記漏洩ガス検知手段の出力に基づいて、複数の軸シール機構のうち漏洩が特定された軸シール機構にシール材を供給するように構成することが望ましい。
【0018】
このような構成とすることにより、漏洩した軸シール機構にのみ、追加してシール材を供給することが可能になり、資源の不必要な消費を避けることが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ごみ等の廃棄物の焼却炉や廃棄物を熱分解ガス化させるガス化溶融炉において、炉外へのガス漏洩を防止することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明をごみ等の廃棄物を熱分解ガス化させるガス化溶融炉(以下、熱分解ガス化炉という)に適用した場合の実施の形態につき説明する。図10に本発明の実施の形態が適用される熱分解ガス化炉の構造を示す。熱分解ガス化炉1には、廃棄物2が投入される投入口3、炉内で熱分解した熱分解ガスが排気される排ガス出口4、廃棄物2と共に持ち込まれた不燃物が砂と共に抜き出される不燃物排出口5などの開口部分が設けられている。
【0021】
図11に本発明の実施の形態が適用される熱分解ガス化炉装置の系統の一例を示す。熱分解ガス化炉1で生成された熱分解ガスは誘引通風機7で吸引されて、排ガス出口4を経て排ガス処理設備群6に導かれる。誘引通風機7及びその入口側に設けられた入口ダンパ19は、熱分解ガス化炉1の炉内圧力を検出し、熱分解ガスが炉外に漏洩しないよう一定の負圧を維持するように制御する、図示されていない制御手段により制御されて平衡通風運転している。
【0022】
また投入口3上部には回転軸を備えた供給ダンパ9を介してごみ供給装置8が設置されている。ごみ供給装置8は搬送スクリューを備え、廃棄物2を一定量貯めることによりマテリアルシールを行いながら熱分解ガス化炉1へ廃棄物2を投入する。また不燃物排出口5下部には搬送スクリューを備えた不燃物排出装置10が設置され、炉内より排出される不燃物及び砂を分別設備11へ搬送する。分別設備11は砂だけを回転軸を備えた砂循環装置12により熱分解ガス化炉1へ戻す。なお熱分解ガス化炉1と直結したごみ供給装置8及び不燃物搬出装置10は、搬送スクリューに軸シール機構を有しており、供給ダンパ9及び砂循環装置12は回転軸に軸シール機構を有している。
【0023】
図12に一般的な回転軸シール機構の詳細を示す。図示の回転軸シール機構は、回転軸13とグランドボックス14、グランド抑え15及びグランドパッキン16により構成されており、グランドボックス14内に入れたグランドパッキン16はグランド抑え15により加圧され変形し、回転軸13に接地(密着)することによりシール性を保つ構造である。この時、回転軸13が容易に回転できる程度にグランド抑え15による加圧を調整する必要がある。またグランドパッキン16にゆるみ及び経年劣化が生じるとシール性が極端に悪くなり、熱分解ガスが炉外へ漏洩する可能性がある。
【実施例1】
【0024】
本発明に係る炉内ガス漏洩防止装置の実施例1の全体構成を図2に示す。図2に示す装置は、図11に示す熱分解ガス化炉装置において、不燃物搬出装置10の搬送スクリューの軸シール機構をシール材注入装置21を備えた構成にするとともに、軸シール機構近傍に、漏洩ガス検知手段である熱分解ガス検知器17を設置し、熱分解ガス検知器17の出力信号に基づいて誘引通風機7及び入口ダンパ19を制御する回転数制御装置18を備え、さらに、ごみ供給装置8を制御する制御装置(図示せず)は、熱分解ガス検知器17の検知信号に応じてごみ供給装置8を制御するようにしたものである。他の構成は、先に図11を参照して説明したと同じであり、説明を省略する。
【0025】
すなわち、本実施例に係る炉内ガス漏洩防止装置は、シール材注入装置21、熱分解ガス検知器17、熱分解ガス検知器17の出力信号に基づいて誘引通風機7及び入口ダンパ19を制御する回転数制御装置18、熱分解ガス検知器17の出力信号に基づいて動作するシール材注入装置21、熱分解ガス検知器17の検知信号に応じてごみ供給装置8を制御する制御装置を含んで構成されている。
【0026】
熱分解ガス検知器17は、吸入口17a、吸入口17aに接続された導管17b、導管17bに接続されたガス検知手段17cを含んで構成されている。ガス検知手段17cは、吸入口17aから導管17bを経て吸入口17a周辺の気体を吸引し、吸引した気体に所定の成分が含まれているかどうかを検知する。所定の成分が含まれている場合、ガス検知手段17cは、あらかじめ定められている検知信号を出力する。なお熱分解ガスはCO、CxHxなどの未燃ガスや有害なダイオキシン類も含有しているが、本実施の形態の熱分解ガス検知器17による漏洩検知は、代表的な未燃ガスであるCOの検知により行う。また検知後の熱分解ガスは、図示されていない管路を経て熱分解ガス化炉1へ戻し、未燃ガスなどの燃焼を行う。
【0027】
図1に本実施例に係る軸シール機構及びシール材注入装置21を示す。グランドボックス14内にグランドパッキン16で挟むように、すなわち、グランドパッキン16の軸方向中間部に、環状のシール材リング20が回転軸13に嵌め込まれ、グランド抑え15でグランドパッキン16が締め付けられている。そして、グランドボックス14上部にシール材供給手段であるシール材注入装置21が設置されている。
【0028】
シール材リング20は、その外周面に、円周方向に溝状に連続して形成されたシール材収容空間20a、その内周面に、円周方向に溝状に連続して形成されたシール材収容空間20bがあり、シール材収容空間20a、20bは複数のシール材通路20cにより連通されている。
【0029】
シール材注入装置21は、グランドボックス14に半径方向に貫通して形成された注入口25と、この注入口25に接続された導管23と、導管23に結合されたシール材供給源22と、を含んで構成されている。シール材供給源22は、熱分解ガス検知器17から出力される検知信号に応じてシール材を加圧供給したり、供給量の増減を行ったりする可変式供給機構を備えている。
【0030】
なお、図3に示すように、シール材供給口である注入口25の内周面の開口の軸方向長さL1とし、シール材リング20の外周面のシール材収容空間20aの軸方向長さL2としたとき、L1<L2とし、且つ、前記軸方向長さL2は、グランドパッキン16のシール性が保てる最大変位量より長くしてある。
【0031】
シール材供給源22からシール材が供給されると、供給されたシール材は、導管23、注入口25を経てシール材リング20の外周面のシール材収容空間20aに充填される。シール材収容空間20aに充填されたシール材は、次いで、シール材通路20cを通ってシール材リング20の内周面のシール材収容空間20bに充填され、回転軸13に塗布される。これにより回転軸13とグランドパッキン16の隙間にシール層が形成され、熱分解ガスの漏洩が防止される。
【0032】
図4は本実施例のシール材注入装置21の軸シール機構の増し締め時の状況を示す。グランドパッキン16は増し締めごとにグランド抑えで圧迫されて当初の状態よりも軸方向長さが次第に短くなり、それにつれてグランドパッキン16の中間部に配置されたシール材リング20のグランドボックスとの軸方向相対位置、言い換えると、注入口25の内周面の開口とシール材収容空間20aの軸方向相対位置は変位する。しかし、L1、L2の寸法を前記条件に合わせ、装置使用開始時の注入口25とシール材リング20の軸方向相対位置を、シール材リング20の外周面のシール材収容空間20aの反グランド抑え側端部が注入口25のグランド抑え側端部より反グランド抑え側で、かつ、注入口25の反グランド抑え側端部よりグランド抑え側に位置するようにセットすることで、軸長手方向に増し締めを複数回実施した場合でも、注入口25はシール材リング20の外周面のシール材収容空間20a内に収まり、シール材が切れることなく供給可能となる。
【0033】
上記構成の炉内ガス漏洩防止装置は、次のように動作する。熱分解ガス検知器17は、熱分解ガスを検出すると検知信号及び音声、点滅灯による警報を出力する。回転数制御装置18は、この検知信号に基づいて誘引通風機7の入口ダンパ19及び誘引通風機7を動作させ、熱分解ガス化炉1炉内圧を負圧に維持できるように制御する。また、ごみ供給装置8を制御する制御装置は、熱分解ガス検知器17の検知信号に応じて、ごみ供給装置8をミニマム運転に切替ることにより廃棄物2の投入量を抑制し、長時間過負荷燃焼とならないように制御する。またシール材注入装置21は、可変式供給機構を備え、熱分解ガス検知器17により漏洩が検知された部位に対してシール材を集中的に供給したり、シール材の供給圧を強めたり、供給量の増減を行ったりするなど、経済的且つ効果的な漏洩防止行う。
【0034】
シール材としては、例えばグリースが利用可能であり、グリースを用いる場合は、シール材供給源22を給油グリースを貯留するグリースポットとする。
【0035】
本実施例は、不燃物排出装置10の搬送スクリューの軸シール機構を対象に漏洩ガス防止装置を設けたが、ごみ供給装置8、供給ダンパ9、及び砂循環装置12の軸シール機構を対象に漏洩ガス防止装置を設けるようにしてもよい。
【実施例2】
【0036】
図5に、本発明の実施の形態に係る炉内ガス漏洩防止装置の実施例2の全体構成を示す。本実施例が前記実施例1と異なるのは、ごみ供給装置8及び供給ダンパ9、不燃物排出装置10及び砂循環装置12の軸シール機構が図1、図3に示す構成となり、シール材注入装置21がそれら軸シール機構それぞれに単独で設けられている点と、熱分解ガス検知器17の吸入口17aが、ごみ供給装置8及び供給ダンパ9、不燃物排出装置10及び砂循環装置12それぞれの軸シール機構近傍に設置されていて、各吸入口17aにはそれぞれ吸引された気体を導く導管17bが接続され、各導管17bには、遠隔開閉可能な弁17dが介装されているとともに、各導管17bは、図示されていないガス検知手段17cに接続されている点である。他の構成は、前記実施例1と同じであるので、説明を省略する。
【0037】
ガス検知手段17cは、前記複数の弁17dを一斉開閉、及び個別に開閉する遠隔開閉機能を備えるとともに、前記複数のシール材注入装置21を個別に制御してシール材の注入圧力、注入量を変更する機能及び漏洩した軸シール機構を備える装置名を表示する手段を備えている。
【0038】
熱分解ガス化炉1に供給される廃棄物2は、組成や形状及び熱量が一定でなく、それらの性状の変動により燃焼状態が変動する。燃焼状態の変動に伴う一時的な排ガス量増加、急激な圧力変動により、誘引通風機7による炉内圧制御が追従できない変動が生じた場合、熱分解ガス化炉1の炉内圧が瞬間的に正圧になり、このようなとき、炉外へのガス漏洩が発生しやすい。
【0039】
本実施例では、従って、熱分解ガス化炉1と直結した設備であるごみ供給装置8及び供給ダンパ9、不燃物排出装置10及び砂循環装置12などの軸シール機構の多くに、熱分解ガス検知器17、シール材注入装置21が設けられている。
【0040】
以下、本実施例の動作を説明する。通常運転状態では、ガス検知手段17cは、熱分解ガス検知器17の弁17dをすべて開状態にし、所定の時間間隔で各吸入口17aから気体を吸引して漏洩ガスの有無を検知する。漏洩ガスが検知されたら、まず警報信号を出力し、一旦、弁17dをすべて閉じる。次いで、複数の弁17dを1個づつ順に開状態にし、漏洩ガスの有無を検知する。
【0041】
どの吸入口17aから吸引される気体に熱分解ガスが含有されているかが判明したら、該当する装置名を表示するとともに、該当する装置の軸シール機構に設けられたシール材注入装置21を制御してシール材を注入する。
【0042】
本実施例によれば、複数の軸シール機構のどれから熱分解ガスが漏洩したかを自動的に検出し、漏洩した軸シール機構に対する漏洩防止処理を自動的に行うことができるから、漏洩を速やかに防止できる。
【実施例3】
【0043】
図6に本発明の実施例3に係る炉内ガス漏洩防止装置の要部構成を示す。本実施例が前記実施例2と異なるのは、シール材注入装置21のシール材供給源22が、複数の軸シール機構に、シール材切替器26を介して共通に接続されている点と、ガス検知手段17cは、シール材切替器26を制御するように構成されている点である。他の構成は、前記実施例2と同じであるので、説明を省略する。
【0044】
本実施例では、シール材供給源22はシール材の貯蔵、供給を行うが加圧機能はなく、シール材供給源22の直下に接続されたシール材切替器26がシール材の加圧、流量制御(可変)と各軸シール機構への切替供給を行う。シール材切替器26により加圧されたシール材、例えばグリースは、シール材切替器26内部の流路の切替により所望の導管23に導かれ、所望の軸シール機構に供給される。
【0045】
まず、熱分解ガス検知器17が熱分解ガスの漏洩を検出し、どの装置の軸シール機構からの漏洩であるかを判定する。熱分解ガス検知器17は、次いで、シール材切替器26の流路の切替、流量制御(可変)を行い、検知箇所の給油量を増やすことで熱分解ガスの漏洩を抑制する。
【0046】
本実施例によれば、前記実施例の効果に加え、シール材供給源22の数を低減でき、シール材の補充の手間やメンテナンスの手間を減らすことが可能になる。
【実施例4】
【0047】
図7に本発明の実施例4に係る炉内ガス漏洩防止装置の要部構成を示す。本実施例が前記実施例3と異なるのは、漏洩ガス検知手段として、熱分解ガス検知器17に代えて圧力監視式漏洩ガス検知器を採用した点である。他の構成は、前記実施例3と同じであるので、説明を省略する。
【0048】
本実施例の圧力監視式漏洩ガス検知器は、各軸シール機構のグランドボックス14の外周面全周に固着されてグランド抑え15、回転軸13の端部を覆う気密円筒状の外部ケーシング27と、大気と外部ケーシング27内部気体の差圧ΔP1を測定し、出力する第1の差圧検出器28と、装置内圧と外部ケーシング27内圧の差圧ΔP2を測定し、出力する第2の差圧検出器29と、第1の差圧検出器28と第2の差圧検出器29の出力を入力として差圧の変化量を算定し、出力する差圧変化量判定手段30aと、差圧変化量判定手段30aの出力に基づいてシール材切替器26を制御する制御盤30bを含んで構成されている。
【0049】
第1の差圧検出器28、第2の差圧検出器29及び差圧変化量判定手段30aは軸シール機構ごとに設けられ、制御盤30bは1台で、各差圧変化量判定手段30aの出力を入力としてシール材切替器26を制御する。
【0050】
軸シール機構から焼却炉内ガスや熱分解ガスが外部ケーシング27内に漏洩すると、外部ケーシング27内は加圧され、大気圧よりも圧力が高くなる。また、軸シール機構から焼却炉内ガスや熱分解ガスが漏洩すると、外部ケーシング27内は加圧され、装置内圧との差圧が低下する。差圧変化量判定手段30aは、第1の差圧検出器28、第2の差圧検出器29により検出される差圧の変化量を算出し、出力する。制御盤30bは、そのいずれかが、それぞれあらかじめ設定された管理値を超えるとき、漏洩ありとの検出信号を出力する。これら差圧の変化が検出されるため、漏洩の早期検出が可能となる。制御盤30bは、差圧の変化量が所定の管理値を超えた箇所のシール材の注入量、圧力を制御する。
【0051】
本実施例によれば、前記実施例3の効果に加え、COなどの特定成分が検出されない場合でも、ガスの漏洩が検出できるという効果がある。
【実施例5】
【0052】
図8に本発明の実施例5に係る炉内ガス漏洩防止装置の要部構成を示す。本実施例が前記実施例4と異なるのは、漏洩ガス検知手段として、圧力監視式漏洩ガス検知器に加えて熱分解ガス検知器17を併用した点である。熱分解ガス検知器17の吸入口17aは外部ケーシング27内に配置され、吸入口17aから吸入された気体は、導管17bを経て外部ケーシング27外に配置されたガス検知手段17cに入力される。ガス検知手段17cの出力は差圧変化量判定手段30aに入力され、差圧変化量判定手段30aは、ガス検知手段17cから検知信号が出力された場合、差圧変化量を前記所定の管理値を超える値に変えて制御盤30bに出力するように構成されている。吸入口17aは各外部ケーシング27それぞれに配置され、ガス検知手段17cの出力は、各外部ケーシング27に対応する差圧変化量判定手段30aそれぞれに個別に出力されるようになっている。他の構成は、前記実施例3と同じであるので、説明を省略する。
【0053】
本実施例によれば、前記実施例4の効果に加え、差圧変化量が微小であっても、COが検出されれば漏洩として検知でき、速やかな対応が可能になる。
【実施例6】
【0054】
図9に本発明の実施例6に係る炉内ガス漏洩防止装置の要部構成を示す。本実施例が前記実施例3〜5と異なるのは、シール材注入装置21を加圧空気をシール材として注入する方式とした点であり、他の構成は前記実施例3〜5と同じであるので説明を省略する。なお、図5は外部ケーシング27を設けていない場合の例であるが、外部ケーシング27を設けた場合についても、同様に適用可能である。
【0055】
本実施例のシール材注入装置21は、エアフィルタ35、エアフィルタ35の出側に接続された加圧ブロワ31、加圧ブロワ31の出側にダンパを介して接続された母管32、母管32に分岐して接続され母管32とグランドボックス14の注入口25を連通する配管33、配管33に介装された流量調整弁34、及び加圧ブロワ31と流量調整弁34を制御する図示されていない制御手段を含んで構成されている。
【0056】
前記実施例3においてはガス検知手段17cがシール材切替器26によりシール材の注入を制御し、前記実施例4、5においては制御盤30bがシール材切替器26によりシール材の注入を制御するが、本実施例においても、ガス検知手段17cもしくは制御盤30bもしくはその双方が併用されて前記図示されていない制御手段を介して、シール材、すなわち加圧空気の注入を制御する。
【0057】
本実施例においてもリング構造は有効であり、付帯装置を設置することで流量制御は可能となる。
上記各実施例はいずれも、ごみ等の廃棄物を熱分解処理するガス化溶融炉を対象にしたものであるが、ごみを焼却処理するごみ焼却炉、ガス化改質設備においても本発明は適用可能である。またそれら以外でも、気密性を有し、内圧変動する設備においては、圧力または風量、風速等を検知し本機構を付帯することにより漏洩対策が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る炉内ガス漏洩防止装置の実施例1の要部構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係る炉内ガス漏洩防止装置の実施例1の全体構成を示す系統図である。
【図3】図1の部分の詳細を示す断面図である。
【図4】図1に示す軸シール機構の増し締め時の状況を示す断面図である。
【図5】本発明に係る炉内ガス漏洩防止装置の実施例2の要部構成を示す系統図である。
【図6】本発明に係る炉内ガス漏洩防止装置の実施例3の要部構成を示す部分断面図である。
【図7】本発明に係る炉内ガス漏洩防止装置の実施例4の要部構成を示す断面図である。
【図8】本発明に係る炉内ガス漏洩防止装置の実施例5の要部構成を示す断面図である。
【図9】本発明に係る炉内ガス漏洩防止装置の実施例6の要部構成を示す断面図である。
【図10】熱分解ガス化炉本体の開口を示す断面図である。
【図11】熱分解ガス化炉装置の全体構成を示す系統図である。
【図12】従来技術の回転軸シール機構の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 熱分解ガス化炉
2 廃棄物
3 投入口
4 排ガス出口
5 不燃物排出口
6 排ガス処理設備群
7 誘引通風機
8 ごみ供給装置
9 供給ダンパ
10 不燃物排出装置
11 分別設備
12 砂循環装置
13 回転軸
14 グランドボックス
15 グランド抑え
16 グランドパッキン
17 熱分解ガス検知器
18 回転数制御装置
19 入口ダンパ
20 シール材リング
21 シール材注入装置
22 シール材供給源
23 導管
25 注入口
26 シール材切替器
27 外部ケーシング
28 第1の差圧検出器
29 第2の差圧検出器
30a 差圧変化量判定手段
30b 制御盤
31 加圧ブロワ
32 母管
33 配管
34 流量調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉の本体及び付属機器に設けられた軸の周囲からの炉内ガス漏洩を防止するために設けられた軸シール機構と、軸シール機構周辺の気体を導管により引き込み前記気体中に含まれる炉内ガス成分を検知し、炉内ガス成分が検知されたとき警報を発信する漏洩ガス検知手段と、前記漏洩ガス検知手段の出力信号を入力として前記軸シール機構にシール材を供給するシール材供給手段を有してなる炉内ガス漏洩防止装置であって、前記軸シール機構を、前記軸の周囲を囲んで配置されるグランドパッキンと、このグランドパッキン軸方向中間部に前記軸に嵌めこまれて配置された環状のシール材リングと、グランドパッキン及びシール材リングの外周を囲んでグランドパッキンを収容するグランドボックスと、前記グランドパッキンを締め付けるグランド抑えを含んで構成し、前記シール材リングは、その内周面と外周面に周方向に形成された溝状のシール材収容空間と、内周面と外周面のシール材収容空間を連通するシール材通路とを備え、前記シール材供給手段は、前記グランドボックスに設けられたシール材供給口から前記シール材リングにシール材を供給するように構成することを特徴とした炉内ガス漏洩防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の炉内ガス漏洩防止装置において、前記シール材供給口の軸方向開口長さよりも前記シール材リング外周面のシール材収容空間の軸方向長さが大きく、前記シール材供給口の反グランド抑え側端部が前記シール材リング外周面のシール材収容空間の反グランド抑え側端部よりグランド抑え側に位置するように前記シール機構が組み立てられていることを特徴とした炉内ガス漏洩防止装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の炉内ガス漏洩防止装置において、前記漏洩ガス検知手段は、軸シール機構周辺の気体を取り込む吸入口と、前記吸入口に接続された導管と、前記導管に介装された遠隔開閉可能な弁と、前記導管に接続されたガス検知手段を含んで構成され、炉内ガスの漏洩が検知された時に前記遠隔開閉可能な弁を順次切替え、漏洩箇所を特定する機能を有する制御手段を備えることを特徴とした炉内ガス漏洩防止装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の炉内ガス漏洩防止装置において、前記漏洩ガス検知手段は、軸の端部及び軸シール機構を気密に覆う外部ケーシングと、大気と外部ケーシング内部気体の差圧を測定し、出力する差圧検出器と、前記差圧検出器の出力を入力として差圧の変化量を算定し、出力する差圧変化量判定手段と、差圧変化量判定手段の出力に基づいて漏洩箇所を特定する機能を有する制御手段を備えることを特徴とした炉内ガス漏洩防止装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の炉内ガス漏洩防止装置において、前記シール材供給手段は、前記漏洩ガス検知手段の出力に基づいて、複数の軸シール機構のうち漏洩が特定された軸シール機構にシール材を供給するように構成されていることを特徴とした炉内ガス漏洩防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−202897(P2008−202897A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41401(P2007−41401)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】