説明

炊飯器

【課題】おこげメニューが選択された際には炊飯米にこげ目を確実かつ均一につけることのできる炊飯器を提供する。
【解決手段】内釜5を加熱するための加熱コイル3a、3bと、内釜5の温度を検知する内釜温度検知部4と、操作部12の操作によりおこげ炊飯が選択されると、おこげ炊飯時の内釜5の温度が通常炊飯時の温度よりも高くなるように加熱コイル3a、3bの加熱量を制御する回路基板15とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯米にこげ目をつけるおこげ炊飯機能を備えた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、炊飯器は単なる白米炊飯のみでなく、消費者の嗜好に合わせて、例えば「おかゆ」、「かため」、「やわらかめ」等に炊き分けることが要求される。このような多様な消費者ニーズに応えるべく、種々のメニューを備えた電気炊飯器が開発され、既に多種のものが市場に出回っている。メニューの一つに、白米炊飯時よりも炊飯米の加熱量を増加させることでこげ目のついたご飯を炊き上げるおこげメニューが有り、このようなおこげ炊飯機能をもった電気炊飯器も既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平08−308720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の炊飯器では、蒸らし工程の小さい電力でご飯にこげ目を生じさせるためこげ目が不十分となることがあった。また、内釜の温度ムラにより、こげ目が不均一となることもあった。
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、おこげメニューが選択された際には炊飯米にこげ目を確実かつ均一につけることのできる炊飯器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る炊飯器は、本体ケースに設けられた内釜収納部に収納される内釜と、内釜を加熱するための加熱手段と、内釜の温度を検知する内釜温度検知部と、操作部の操作によりおこげ炊飯が選択されると、おこげ炊飯時の内釜の温度が通常炊飯時の温度よりも高くなるように加熱手段の加熱量を制御する制御手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、おこげ炊飯が選択された場合、おこげ炊飯時の内釜の温度が通常炊飯時の温度よりも高くなるように加熱手段の加熱量を制御するようにしたので、炊飯米にこげ目を確実かつ均一につけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
以下、本発明に係る炊飯器の好適な実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0008】
図1は実施の形態1に係る炊飯器の構成を示す断面図、図2は炊飯器の駆動回路の構成を示すブロック図、図3は炊飯器の操作/表示部を示す拡大詳細図である。
【0009】
実施の形態1の炊飯器は、図1に示すように、本体ケース1内に内釜収納部の容器カバー2が固着され、この容器カバー2の外壁部には加熱手段である例えば電磁誘導加熱用の第1および第2加熱コイル3a、3bと胴ヒータ13が配設されている。第1加熱コイル3aは容器カバー2の外底部に、第2加熱コイル3bは容器カバー2の外底部コーナー部に配置されている。第1および第2加熱コイル3a、3bは、スパイラル状に旋回されて直列に接続され、高周波電流が供給される。胴ヒータ13は、容器カバー2の外側面部に配置され、商用周波数の電流が供給される。
【0010】
本体ケース1の内底部中央には温度センサ4が配置されている。この温度センサ4は、圧縮バネ4aにより下方から支持され、容器カバー2の底部中央に形成された孔部に挿入されている。内釜5は、例えばSUS430等の磁性材料で形成され、容器カバー2内に収納されたとき外底部が前記の温度センサ4と接触する。容器カバー2の上方フランジ部には例えば三箇所凸部で形成された支持部材6が配置されている。この支持部材6は容器カバー2内に収納された内釜5を係止するためのものである。
【0011】
外蓋9は、本体ケース1に開閉自在に係止され、上面一部に操作/表示部12が設けられ、下面側には係止材10で連結された内蓋7を備えている。この内蓋7は、内釜5内の炊飯物(米と水)を上方から加熱する蓋ヒータ14(蓋加熱手段)が配設され、周縁部には、内釜5のフランジ部との密閉性を得るために、シール材の蓋パッキン8が取り付けられている。操作/表示部12は、図3に示すように、メニュー選択ボタン12aや炊飯開始ボタン12b等からなる操作部と時刻や調理状態を液晶パネル12cに表示する表示部とで構成されている。蒸気口11は、内蓋7と外蓋9を貫通して設けられ、容器内弁11aと外部弁11bとを備えている。
【0012】
本体ケース1内に配置された回路基板15は、図2に示すように、例えばマイコンで構成された制御部16、商用周波数の電力を数十キロヘルツの高周波に変換するインバータ部17等が実装されている。前記の制御部16は、予め各メニューに応じて炊飯シーケンスが設定され、温度センサ4の検知温度が炊飯シーケンスに沿うようにインバータ部17を通電制御する。
【0013】
次に、実施の形態1の動作について図4〜図7を参照しながら説明をする。図4はインバータ電力と内釜温度の関係を示す図、図5は白米メニューとおこげメニューの炊飯シーケンスを示す図、図6は炊飯米のこげ度合いとドライアップ温度の関係を示す図、図7はドライアップ温度近傍の炊飯シーケンスの拡大図である。
始めに所定量の米を内釜5内に入れ、米量に応じた水を入れる。その後、内釜5を容器カバー2内に設置して外蓋9を閉めると、内蓋7の蓋パッキン8が内釜5のフランジ部に圧接されて密閉シールされる。そして、図3に示す操作/表示部12のメニュー選択ボタン12aの操作によりメニューを選択した後、炊飯開始ボタン12bを操作すると炊飯調理が開始される。
【0014】
制御部16には、メニュー毎に調理時間とその時々の内釜温度が炊飯シーケンスとして記憶されており、この炊飯シーケンスに沿うようにインバータ部17を通電制御することで、内釜5内の米の温度を制御する。図4に示すように、温度センサ4での内釜5の検知温度が炊飯シーケンスの目標温度以上の場合は、インバータ部17の出力電力が小さくなるように通電制御し、内釜5の温度を低下させて目標温度になるようにする。一方、内釜5の検知温度が目標温度以下の場合は、インバータ部17の出力電力が大きくなるように通電制御し、内釜5の温度を上昇させて目標温度になるようにする。
【0015】
ここで、通常炊飯を行うための白米メニューが選択されたときの動作を図5に基づいて説明をする。
図5に示すt0において炊飯が開始されると、制御部16は温度センサ4を介して内釜5の温度が図5の実線で示す白米メニュー用の炊飯シーケンスに沿うように、インバータ部17を通電制御する。炊飯の工程は、予熱工程、炊き上げ工程、蒸らし工程に大別される。t0からtaの予熱工程が終了すると炊き上げ工程に移行する。炊き上げ工程では、内釜5内の水分が沸騰状態となっており、蒸気が蒸気口11を通して噴出する。内釜5内に米に吸収されていない余剰の水がある状態では、内釜5の温度は100℃ 以上に上昇せずにほぼ一定となっている。しかし、余剰水分が蒸発しきるとドライアップと呼ばれる状態となり、内釜5の温度が100℃ 以上に上昇し始める。図5のtbにおいて、予め設定された白米メニュー用のドライアップ温度Tdry(120℃) 、即ち、炊き上げ工程の終了温度に到達すると、制御部16は内釜5内の余剰水分が蒸発したものと判定して、tbからtcまでの蒸らし工程へと移行する。蒸らし工程では、インバータ部17の通電量を低減することで内釜5への加熱量を下げ、炊飯米の蒸らし処理を行う。そして、図5に示すtcに到達したときに蒸らし工程を終了し、白米メニューの全炊飯工程を終了する。
【0016】
続いて、おこげメニューが選択された場合の動作を前記と同様に図5を用いて説明をする。
おこげメニューの炊飯シーケンスを図5の点線で示す。白米メニューと同様に表示/操作部12の操作によりおこげメニューが選択され、炊飯が開始されると、制御部16に記憶されたおこげメニューの炊飯シーケンスに従い調理が行われる。白米メニューと異なるのは、ドライアップ温度(炊き上げ工程の終了温度)のみであり、おこげメニューのドライアップ温度Tdry’が設定される。白米メニューの調理と同様にtaにて炊き上げ工程へ移行すると、内釜5の温度が100℃ 近傍で一定の状態を継続する。おこげメニューでは、白米メニューのドライアップ温度Tdry(120℃) よりも高いおこげメニューのドライアップ温度Tdry’(160℃) に変更される。そのため、おこげメニューの炊き上げ工程では、内釜5に余剰の水分が無い状態で、しかも炊飯米の加熱が継続している状態となるため、白米炊飯時に比べて過加熱状態となる。
【0017】
炊飯米を高温状態にすると、還元糖とアミノ化合物を加熱したときに生ずるメイラード反応により炊飯米が褐色に変化しこげが生じることが知られている。例えば図6で示すようにメイラード反応はドライアップ温度と加熱時間により進行度合いが異なる。また、炊飯米のメイラード反応は103℃ 以上の温度で生ずることが確認されている。以上より、ドライアップ温度とその継続時間とにより、炊飯米のこげ度合いが変化する。
【0018】
おこげメニューには、図3に示すように炊飯米のこげ度合いの大きい順に「おこげ3」、「おこげ2」、「おこげ1」が用意されており、それぞれ異なるドライアップ温度が設定されている。例えば図7で示すように、各おこげメニューに応じてドライアップ温度がTdry3’(180℃)、Tdry2’(160℃)、Tdry1’(140℃)に設定されている。ユーザは炊飯前のメニュー選択で、おこげメニューのうちの何れかを選択することで、炊飯米のこげ度合いを好みに即した量に調整することが可能である。また、おこげメニューでは、こげ目が炊飯米の全面に渡って均一に生成されるように、内釜5の側面部と上面部の加熱量が増加するように制御する。図5に示すtaからtb’の炊き上げ工程で、胴ヒータ13と蓋ヒータ14の通電比率を白米メニューよりも増加させる制御を行う。
【0019】
図5のtb’において、温度センサ4を介して内釜5の温度がドライアップ温度Tdry’に到達したことを検知すると、制御部16はインバータ部17の通電量を下げて、図5のtc’まで蒸らし処理を行い、おこげメニューの全炊飯工程を終了する。
【0020】
以上のように実施の形態1によれば、おこげメニューでは、白米メニューに比べて炊き上げ工程の終了温度を高く設定して炊飯米への加熱量を増加させるようにしたので、炊飯米に確実にこげ目をつけることができる。また、加熱量の異なる複数のおこげメニューを備えているので、炊飯米にユーザ好みに即したこげ目をつけることができる。さらに、おこげメニューでは、胴ヒータ13と蓋ヒータ14とでの加熱量を増加させるように制御するので、炊飯米の全面に渡り均一なこげ目をつけることができる。
【0021】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係る炊飯器を説明する。実施の形態2において、実施の形態1と異なる点は、炊き上げ工程と蒸らし工程間の炊飯シーケンスのみであり、以下、図8を参照しながら説明をする。図8は実施の形態2に係る炊飯器のドライアップ温度近傍の炊飯シーケンスを示す図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。
【0022】
白米メニュー選択時は、実施の形態1と同様に図5の実線で示す白米メニュー用の炊飯シーケンスに従って調理を行う。一方、図3に示すメニュー選択ボタン12aの操作によりおこげメニューの何れかが選択され、炊飯開始ボタン12bの操作により炊飯が開始されると、制御部16は、予め設定されたおこげメニューの炊飯シーケンスに従って調理を開始する。白米メニューと同様の炊飯シーケンスで図5のtaにて炊き上げ工程へ移行すると、内釜5の温度が100℃ 近傍の一定の状態を継続する。そして、温度センサ4を介して内釜5の温度がドライアップ温度Tdry’(130℃) に到達したことを検知したときは、選択されたおこげメニューに設定された保持時間の間、そのドライアップ温度Tdry’(130℃) が維持されるようにインバータ部17を制御する。
【0023】
保持時間は、図8に示すように、こげ度合いの大きいメニュー程、長くなるように設定されている。「おこげ1」の場合はtb’〜tb1’の間、「おこげ2」の場合はtb’〜tb2’の間、また「おこげ3」の場合はtb’〜tb3’の間、ドライアップ温度Tdry’が保持される。図6に示すようにドライアップ温度一定条件では、保持時間が長い程、炊飯米のこげ度合いが大きくなる。制御部16は、各おこげメニュー毎に設定された保持時間が経過した後、蒸らし工程へと移行する。そして、図5に示すtc’に到達すると、蒸らし工程を終了しておこげメニューの全炊飯工程を終了する。
【0024】
以上のように実施の形態2によれば、おこげメニューでは、炊き上げ工程とむらし工程の間にドライアップ温度Tdry’で一定時間保持する工程を設けたので、白米炊飯時に比べて炊飯米への加熱量が増加してこげ目を確実につけることができる。また、保持時間の異なる複数のおこげメニューを備えたことで、ユーザ好みに即したこげ目をつけることができる。また、こげ目度合いをドライアップ温度Tdry’の保持時間で制御するようにしたので、こげ目度合いの大きいおこげメニューでも構成部品の過温度上昇を抑制できる。
【0025】
なお,実施の形態2では,おこげメニューのドライアップ温度Tdry’を130℃ としたが、これに限定されるものではなく、130℃ 以上の他の温度としても良い。
【0026】
実施の形態3.
次に、実施の形態3に係る炊飯器を説明する。実施の形態3において、実施の形態1と異なる点は、回路基板15上に蓄電部20が追加された点であり、以下、図9および図10を参照しながら説明をする。図9は実施の形態3に係る炊飯器の駆動回路の構成を示すブロック図、図10はおこげメニューにおけるドライアップ温度近傍の炊飯シーケンスを示す図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。
【0027】
蓄電部20は、例えば電気二重層コンデンサからなり、制御部16により蓄電及び放電制御される。炊飯前もしくは予熱工程で、蓄電部20への充電が行われ、蓄電部20は放電時を除いて満充電の状態となるように制御されている。なお、白米メニュー選択時は、蓄電部20の放電は行わないようになっている。
【0028】
実施の形態1と同様に、白米メニュー選択時は図5で示す白米メニューの炊飯シーケンスに従って調理が行われる。炊き上げ工程では、内釜5内の炊飯米に吸収されない余剰な水分を蒸気として蒸発させ、かつ、ドライアップ温度Tdryまで上昇させる必要があるため、内釜5の加熱量が大きくなるように制御され、インバータ部17は最大定格電力付近で制御される。
【0029】
実施の形態3においては、実施の形態1と同様に、おこげメニューのドライアップ温度Tdry’が白米メニューより高く設定されているため、内釜5の加熱電力が白米メニューと同等の場合、図5に示すようにTdry’とTdryの差分に相当する温度上昇と温度降下に要する時間分と、炊飯時間が長くなってしまう不具合が生じる。そのため、おこげメニューが選択された場合は、炊き上げ工程で温度センサ4の検知温度が100℃ 以上になったときに、図10に示すように蓄電部20からの放電電力Paを最大定格電力Prに加えた電力で内釜5を加熱制御する。これにより、ドライアップ温度Tdry3’(180℃)、に達するまでに要する時間を短縮する。図10の実線で示す蓄電部20の放電が無い状態と比較して、ドライアップ温度Tdry3’ に到達するのに要する時間を短縮することができる。図10のtbassist’でドライアップ温度Tdry3’ に到達すると、蒸らし工程へ移行する。そして、所定の蒸らし時間が経過したときに全炊飯工程が終了する。
【0030】
以上のように実施の形態3によれば、おこげメニューの炊き上げ工程では、蓄電部20の放電電力を利用して、定格電力以上の電力で内釜5を加熱するため、炊飯に要する時間増加を抑制してこげ目をつけることができる。
【0031】
なお,実施の形態3では、蓄電部20を電気二重層コンデンサとしたが、これに限定されものではなく、ニッケル水素電池等の二次電池でも良い。
【0032】
実施の形態4.
次に、実施の形態4に係る炊飯器を説明する。実施の形態4において、実施形態1または2と異なる点は、内釜5を構成する材料であり、以下、図11乃至図14を参照しながら説明をする。図11は実施の形態4に係る炊飯器の内釜を説明するための金属製内釜(SUS430)および炭製内釜の浸透深さと周波数との関係を示す図、図12は金属製内釜と炭製内釜の渦電流による発熱状況を示す図、図13は炭製内釜と漏洩磁束との関係を示す図、図14は周波数による炭製内釜の発熱状況を示す図である。なお、実施の形態1、2と同一又は相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。
【0033】
実施の形態4における炊飯器の内釜5は、熱伝導が良好な炭素95%〜100%の焼結体を基材として構成されたもので、内側にはフッ素コーティング等が施されている。
一般的な炊飯器の内釜5は金属製材料で構成され、例えばSUS430が使用されている。このSUS430等の磁性材料と異なり、非磁性材料の炭は透磁率が1であるため、浸透深さがSUS430と比較して50〜60倍程度大きい。図12に示すように、加熱コイルから発生する磁束は、SUS430と比較して炭の方が深い部位まで浸透する。そのため、同一の磁束量で内釜5を誘導加熱した場合、(a) 金属製内釜と比較して、(b) 炭製内釜の方が炊飯米に近い部位での発熱量が大きくなる。
【0034】
また、周波数に対する浸透深さの変化幅は、図11からも明らかなように、SUS430よりも炭の方が大きいことから、インバータ部17の周波数制御により、浸透深さを変化させることができる。また、浸透深さに応じて内釜5の発熱部位も変化するため、インバータ部17の周波数制御により内釜5の発熱部位を変えることができる。図14に示すように、周波数40kHz 時の炭の浸透深さは約8mm 程度であるのに対し、周波数20kHz 時では浸透深さがほぼ11.3mmとなっていることから、内釜5の厚みが10mmである場合、図14(b) では浸透深さの方が内釜5の厚みよりも大きくなるため、一部の磁束は、図13に示すように、漏洩磁束として内釜5の底面を通り抜け、内釜5の側面部を誘導加熱することとなる。一方、図14(a) の場合は、浸透深さに比べて内釜5の厚みが十分大きいことから,漏洩磁束は小さいため底面部を中心に発熱する。
【0035】
おこげメニュー選択時は、炊き上げ工程で内釜5の温度が100℃ 以上にして、おこげメニューのドライアップ温度Tdry’に到達するまでの期間に、インバータ部17の駆動周波数が全炊飯工程で最も低くなるように制御を行う。このインバータ周波数の低下により、加熱コイル3a、3bから発生する磁束に対する浸透深さが深くなるため、内釜5の炊飯米近傍での発熱量が他の工程よりも増加する。また、内釜5内への漏洩磁束量が増加して内釜5の側面部が誘導加熱されることにより、炊飯米の側面部が十分に加熱されることから、従来の金属製内釜と比較して炊飯米側面のこげ目度合いが大きくなる。
【0036】
以上のように実施の形態4によれば、内釜5の主材料を非磁性の炭で構成したことにより、金属製を主材料とする内釜と比較して、炊飯米の全面に渡り均一にこげ目を生じさせることができる。
【0037】
実施の形態5.
次に、実施の形態5に係る炊飯器を説明する。実施の形態5において、実施の形態4と異なる点は、内釜5内に落とし蓋21を配置した点であり、以下、図15を参照しながら説明をする。図15は実施の形態5の炊飯器における内側の断面を示す図である。なお、実施の形態4と同一又は相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。
【0038】
実施の形態5においては、実施の形態4と同様に、内釜5の主材料は炭素95%〜100%の焼結体を基材として構成されている。一般的な炊飯器の内釜5に使用されているSUS430等の磁性材料と異なり、非磁性材料の炭は炊飯米により近い部位まで渦電流が発生して誘導加熱されると共に、周波数に対する浸透深さの変動も磁性材料と比較して顕著である。
【0039】
また、実施の形態5の炊飯器では、おこげメニュー選択時、図15に示すように内釜5内に設置する落とし蓋21が用意されている。この落とし蓋21は、内釜5内に入れられた炊飯米の表面に接触するように配置される。落とし蓋21の主材料は、一般的な誘導加熱の内釜5に用いられるSUS430等の金属系材料である。実施の形態4と同様に、炊き上げ工程で内釜5の温度が100℃ 以上にして、おこげメニューのドライアップ温度Tdry’に到達するまでの期間に、インバータ部17の駆動周波数を全炊飯工程で最も低くなるよう制御を行うと、内釜5の側面と上部への漏洩磁束量が増加する。そのため、炊飯米の表面に配置された落とし蓋21は、漏洩磁束により誘導加熱され、炊飯米を上部からも加熱する。
【0040】
以上のように実施の形態5によれば、漏洩磁束により誘導加熱される金属製の落とし蓋21を内釜5内に配置するようにしたので、炊飯米の表面からも加熱することが可能になり、このため、炊飯米の底面部と側面部に加えて上面部にもこげ目を生じさせることができる。
【0041】
なお,実施の形態5では、落とし蓋21をSUS430等の金属製材料としたが、非磁性材料の炭等で構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施の形態1に係る炊飯器の構成を示す断面図である。
【図2】炊飯器の駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図3】炊飯器の操作/表示部を示す拡大詳細図である。
【図4】インバータ電力と内釜温度の関係を示す図である。
【図5】白米メニューとおこげメニューの炊飯シーケンスを示す図である。
【図6】炊飯米のこげ度合いとドライアップ温度の関係を示す図である。
【図7】ドライアップ温度近傍の炊飯シーケンスの拡大図である。
【図8】実施の形態2に係る炊飯器のドライアップ温度近傍の炊飯シーケンスを示す図である。
【図9】実施の形態3に係る炊飯器の駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図10】おこげメニューにおけるドライアップ温度近傍の炊飯シーケンスを示す図である。
【図11】実施の形態4に係る炊飯器の内釜を説明するための金属製内釜(SUS430)および炭製内釜の浸透深さと周波数との関係を示す図である。
【図12】金属製内釜と炭製内釜の渦電流による発熱状況を示す図である。
【図13】炭製内釜と漏洩磁束との関係を示す図である。
【図14】周波数による炭製内釜の発熱状況を示す図である。
【図15】実施の形態5の炊飯器における内側の断面を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 本体、2 容器カバー、3a,3b 加熱コイル、4 温度センサ、4a 圧縮ばね、5 内釜、6 支持部材、7 内蓋、8 蓋パッキン、9 外蓋、10 係止材、
11 蒸気口、12 操作/表示部、12a メニュー選択ボタン、12b 炊飯開始ボタン、12c 液晶パネル、13 胴ヒータ、14 蓋ヒータ、15 回路基板、
16 制御部、17 インバータ部、20 蓄電部、21 落とし蓋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースに設けられた内釜収納部に収納される内釜と、
該内釜を加熱するための加熱手段と、
前記内釜の温度を検知する内釜温度検知部と、
操作部の操作によりおこげ炊飯が選択されると、おこげ炊飯時の内釜の温度が通常炊飯時の温度よりも高くなるように前記加熱手段の加熱量を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
通常炊飯時の温度と比較するおこげ炊飯時の内釜の温度は炊き上げ工程の終了温度であって、
前記制御手段は、操作部の操作によりおこげ炊飯が選択されると、その終了温度が通常炊飯時での炊き上げ工程の終了温度よりも高くなるように前記加熱手段の加熱量を制御することを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記制御手段は、おこげ炊飯時における炊き上げ工程の終了温度を操作部の操作に基づいて変更することを特徴とする請求項2記載の炊飯器。
【請求項4】
前記制御手段は、おこげ炊飯時における炊き上げ工程の終了温度に内釜の温度が達すると、その状態が所定時間保持されるように前記加熱手段の加熱量を制御することを特徴とする請求項2又は3記載の炊飯器。
【請求項5】
前記制御手段は、前記所定時間を操作部の操作に基づいて変更することを特徴とする請求項4記載の炊飯器。
【請求項6】
おこげ炊飯時における炊き上げ工程の終了温度は103℃から180℃の範囲であることを特徴とする請求項2乃至5の何れかに記載の炊飯器。
【請求項7】
内釜収納部の側壁外周部に設けられた胴加熱手段を備え、
前記制御手段は、操作部の操作によりおこげ炊飯が選択されると、前記胴加熱手段の加熱量を通常炊飯時よりも高くなるように制御することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の炊飯器。
【請求項8】
本体ケースに開閉自在に係止された蓋体に設けられた蓋加熱手段を備え、
前記制御手段は、操作部の操作によりおこげ炊飯が選択されると、前記蓋加熱手段の加熱量を通常炊飯時よりも高くなるように制御することを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の炊飯器。
【請求項9】
電力の充放電を行う蓄電部を備え、
前記制御手段は、操作部の操作によりおこげ炊飯が選択されると、前記蓄電部の放電電力を使用して前記加熱手段の加熱量を制御することを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の炊飯器。
【請求項10】
前記内釜は、炭素95%〜100%の焼結体を基材として構成されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の炊飯器。
【請求項11】
前記加熱手段は加熱コイルからなり、この加熱コイルに高周波電力を供給するインバータ部を備え、
前記制御手段は、操作部の操作によりおこげ炊飯が選択されると、おこげ炊飯時における炊き上げ工程において、前記インバータ部の駆動周波数が全工程のうちで最も低くなるように制御することを特徴とする請求項10記載の炊飯器。
【請求項12】
磁性材料により構成され、前記内釜内に設置可能な板状の落とし蓋を設けたことを特徴とする請求項10又は11記載の炊飯器。
【請求項13】
前記落とし蓋は、前記内釜内の炊飯米の表面に接するよう配置されることを特徴とする請求項12記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−220518(P2008−220518A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60723(P2007−60723)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】