説明

炎症性障害および/または関節障害の治療、共治療または予防のための三環式ジテルペンおよびそれらの誘導体の使用

本発明は、炎症性障害および/または関節障害の治療、共治療または予防用の栄養補助食品または医薬品を製造するための少なくとも1種の三環式ジテルペンの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、炎症性障害および/または関節障害の治療、共治療または予防用の栄養補助食品または医薬品の製造のための少なくとも1種の三環式ジテルペンの使用に関する。
【0002】
炎症性障害は、世界中で最も重要な健康問題の一つである。一般的に炎症は、異物または傷害性刺激による宿主侵襲に対する身体組織の局所的防御応答である。炎症の原因は、細菌、ウィルス、および寄生虫などの感染性因子;火傷または放射線などの物理的因子;毒素、薬物または産業物質などの化学物質;またはアレルギーおよび自己免疫応答などの免疫反応または酸化的ストレスに関連する病態であり得る。
【0003】
炎症は、痛み、発赤、腫脹、発熱、および患部の最終的な機能喪失を特徴とする。これらの症状は、免疫系の細胞間で生じる複雑な一連の相互作用の結果である。細胞の応答は、炎症伝達物質:タンパク質(例えば、サイトカイン類、酵素(例えば、プロテアーゼ、ペルオキシダーゼ)、主要塩基性タンパク質、接着分子(ICAM、VCAM))、脂質伝達物質(例えば、エイコサノイド類、プロスタグランジン類、ロイコトリエン類、血小板活性因子(PAF))、反応性酸素種(例えば、ヒドロペルオキシド類、スーパーオキシドアニオンO、酸化窒素(NO)など)、幾つかの群の相互作用ネットワークをもたらす。しかしながら、炎症のこれら伝達物質の多くはまた、正常な細胞活性の制御因子でもある。したがって、炎症反応の欠損により、宿主が易感染性(すなわち、感染症)となる一方、無制御の、したがって慢性的な炎症により、上記伝達物質の幾つかの過剰産生により一部媒介される炎症性疾患に至る。
【0004】
関節障害は、高齢者における身体障害および機能不全の主要原因であり;60才超の人々のほぼ80%が、これらの障害の何らかの兆候を示す。年令、遺伝的因子、筋肉の不使用と衰弱、外傷、肥満および解剖学的異常は、関節障害発生の一因となる。関節障害は、例えば、関節の(慢性)炎症性疾患ならびに1つまたは幾つかの関節の軟骨劣化またはそれらの組合せに起因し得る。軟骨分解は、マトリックス金属プロテアーゼなどの軟骨分解酵素の産生増加を特徴とする関節軟骨の代謝障害として本発明の枠組み内で定義される。
【0005】
炎症伝達物質の過剰な生合成から生じる急性および慢性の炎症は、関節炎(例えば、骨関節炎、リウマチ様関節炎)、喘息、炎症性腸疾患、皮膚の炎症性疾患(例えば、接触皮膚炎[特におむつ領域の皮膚炎]、アトピー性皮膚炎、乾燥症、湿疹、しゅさ、脂漏症、乾癬、神経皮膚炎、座瘡、日焼けなどの熱傷および放射線火傷、他のタイプの皮膚の炎症および老化による組織の変性作用)およびアテローム硬化症、心疾患、代謝性症候群X、骨粗しょう症、癌、アルツハイマー病などの慢性炎症性障害、および軽度の認知障害などのその前段階、または慢性皮膚炎症の結果である光老化などの多数の炎症性障害に関与する。
【0006】
関節炎は、関節の慢性(炎症性)疾患であり、多くの様々な形態を含む。例えば、関節炎には、リウマチ様関節炎、脊椎関節障害、痛風性関節炎、骨関節炎、全身紅斑性狼瘡および若年性関節炎が含まれる。喘息と同様に、リウマチ様関節炎は、サイトカイン類、ケモカイン類、キニン類およびそれらの受容体、接着分子およびそれらそれぞれの受容体、ならびに炎症性酵素の分子レベルでの慢性的な不均衡発現を特徴とする。
【0007】
骨関節炎は、加齢時に関節の摩耗および断裂により発生する1つまたは複数の軟骨の破壊および欠損により引き起こされる関節疾患であり、痛みおよび関節機能の減少をもたらす。骨関節炎の症状としては、1つまたは複数の関節における痛み、硬直、可動性の欠損が挙げられる。過度の関節負荷により、骨関節炎の危険性を増大させ、それによって骨関節炎は、主として脊椎、膝および腰などの体重を支える関節に影響を及ぼすが、親指および指関節にも影響を及ぼし得る。関節障害はまた、傷害、すなわち、微小損傷または平滑外傷、骨折、腱、半月板または靭帯に対する損傷から生じる可能性もあり、あるいは、例えば、傷害または肥満に起因する過度の機械的ストレスまたは他の生体力学的不安定性の結果でもあり得る。
【0008】
乾癬は、人口の1〜3%が患っている最もありふれた皮膚問題の一つである。炎症性腸疾患は、胃腸管系疾患を述べるために使用される一般的な用語であり、潰瘍性大腸炎およびクローン病などの障害を含む。
【0009】
血管内脂質沈着過程以外に、内皮(すなわち、血管)壁の炎症反応が、アテローム硬化症すなわちアテローム形成に決定的に寄与していると考えられる。アテローム硬化症は、炎症を引き起こす血管傷害から生じる。活性化マクロファージ、Tリンパ球、および最終的に平滑筋細胞が、アテローム硬化性プラークに存在する。単球/マクロファージおよびリンパ球の活性化により、内皮損傷、ならびにアテローム硬化性プラークの形成および最終的には破裂に関係があるとされるエイコサノイド類、サイトカイン類およびマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)類の放出に至る。最後に、C反応性タンパク質(CRP)、フィブリノーゲン、およびインターロイキン類などの循環炎症マーカーが増加するか、または高リスクの冠動脈疾患(CAD)群に変化する。幾つかの臨床試験により、CRP濃度の上昇が、冠動脈および血管事象の危険性増大と関連することを示している。それゆえ、炎症は、アテローム形成の開始と進行に重要な役割を果たしているように見える。
【0010】
炎症過程はまた、アルツハイマー病の病態生理学に関連する。アルツハイマー病が、サイトカイン類および活性化小グリア細胞のレベル増大を特徴とすることから、アルツハイマー病患者の脳に炎症があることは明らかである。したがって、炎症は、古典的な炎症性障害(例えば、関節炎、喘息、腸疾患)に関与するのみならず、多くの慢性の炎症性障害(例えば、アテローム硬化症、心疾患、代謝性症候群X、骨粗しょう症、癌、アルツハイマー病)にも関連する。
【0011】
炎症事象は、種々のタイプの癌(例えば、胃癌および腸癌、黒色腫)の病態生理学にも関連する。プロスタグランジン類などの炎症伝達物質レベルの増加が、ヒトにおける乳癌、大腸癌、肺癌および膵癌に見られている。
【0012】
現在、薬物の2つの主要なクラス、コルチコステロイド系薬および非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)類が、炎症性障害および/または関節障害を治療するために使用される。NSAID類およびコルチコステロイド類は、事実上症状の軽減を提供する。現在、コルチコステロイド類は、長期使用による重篤な副作用の懸念が増しつつあるため、その使用は減少している。
【0013】
NSAID類は、主として痛みおよび炎症性疾患の治療のため、特に関節炎の治療(すなわち痛みの軽減)のみならず、骨関節炎などの軟骨分解の治療のために最も広く用いられている薬物の1つである。しかしながら、後者の場合、この薬物は、痛みを抑えるため、ならびに腫脹を抑止するために投与されるが、軟骨に対する損傷を予防または治療しない。
【0014】
疫学的調査によると、NSAID類を服用している患者は、NSAID類を服用していない患者よりもアルツハイマー病の発症の危険性が低いことを示している。NSAID類の予防効果により、シクロオキシゲナーゼが、神経変性過程に関与している可能性が示唆されている。
【0015】
疫学的調査により、NSAID類を服用しない人々と比較してNSAID類を服用する人々の中で大腸癌、胃癌、食道癌、および乳癌の危険性が有意な減少することが示された。動物モデルにおいて、NSAID類は、腫瘍の発現を有意に減少させた。
【0016】
しかしながら、関節炎または骨粗しょう症などの慢性疾患を治療する場合、NSAID類の長期使用は、重篤な胃腸管系合併症、腎毒性または喘息反応のような重篤な副作用によって制限される。
【0017】
これらの理由から、炎症性疾患および/または関節障害患者は、疾患予防のため、およびアジュバント治療として使用することができる、緩和な抗炎症効果を有するが、重大な副作用のない「天然」として考えられる治療タイプに特に関心を持っている。抗炎症性作用を示す「天然」薬剤の例はあるが、これらの「天然」化合物は、不十分な生物活性、したがって不十分な阻害活性しか有さないことが多い。
【0018】
上記に概説した理由のため、新規な抗炎症性薬剤、および軟骨分解により引き起こされた関節障害を治療する薬剤が大いに求められている。
【0019】
意外なことに、式Iおよび/または式IIの三環式ジテルペンは、抗炎症性活性を有し、軟骨の欠損および損傷を治療または予防するのに好適であり、その結果、炎症性障害および/または関節障害の治療、共治療または予防に好適な薬剤として使用することができることが判明した。
【化1】


式中、Rは、水素またはC1〜6−アルキルであり;
は、ヒドロキシ、C3〜5−アシルオキシ、ヒドロキシメチル、1,3−ジヒドロキシプロピルまたはC1〜6−アルキルであり;
およびRは互いに独立して、水素、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル(−CH−OH)、C1〜5−アシルオキシまたはC1〜6−アルコキシであり;
は、C1〜6−アルキル、ヒドロキシメチル、カルボキシ(COH)またはメトキシカルボニル(COCH)であり;
は水素であるか、またはRとRとが一緒になって二重結合を形成し;
およびRは互いに独立して、C1〜6−アルキル、カルボキシ、x−ヒドロキシ−C−アルキル(xは1から6の整数である)であるか、またはRおよびRの少なくとも1つがC1〜6−アルキルであるという条件でC1〜6−アルコキシカルボニル(−CO(C1〜6−アルキル))であり;
は、水素、ヒドロキシメチル、メトキシ、オキソまたはC1〜5−アシルオキシであり;
10は水素であるか、またはRとR10とが一緒になって−CO−O−、−O−CO−、−CH−O−または−O−CH−であり;
11およびR12は双方とも水素であるか、またはR11とR12とが一緒になってオキソであり;
13は、C1〜6−アルキル、ヒドロキシメチル、カルボキシ(COH)またはメトキシカルボニル(COCH)であるか、またはRとR13とが一緒になって二重結合を形成し、式Iに関してRがヒドロキシである場合、RがC1〜6−アルキルであるというさらなる条件を有する。
【0020】
したがって、本発明は、栄養補助食品または医薬品の製造のための、特に心疾患、多発性硬化症、骨関節炎およびリウマチ様関節炎、アテローム硬化症、および骨粗しょう症、好ましくは、関節炎、特に骨関節炎およびリウマチ様関節炎などの炎症性障害の治療、共治療または予防用栄養補助食品または医薬品の製造のための、上記に示されたRからR13の定義を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの使用に関する。
【0021】
また、本発明の三環式ジテルペンは、関節障害の治療、共治療および予防、特に関節炎症の減少、関節健康の保持および/または改善、関節硬直の予防、関節可動性の増大、柔軟なおよび/または可撓性の関節の提供、関節の潤滑、関節炎症に関連する痛みの軽減、関節腫脹の減少、関節問題の減少、および関節ケアの提供に好適である。したがって、本発明はまた、関節障害の治療、共治療および予防用栄養補助食品または医薬品の製造のための、上記に示されたRからR13の定義を有する式Iおよび式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの使用に関する。
【0022】
本発明のさらなる目的は、軟骨再生剤および軟骨保持剤としての上記に示されたRからR13の定義を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの使用ならびに関節軟骨の保持および再生のための(組成物の製造を目的とした)上記に示されたRからR13の定義を有する式Iおよび/またはIIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの使用である。
【0023】
本発明の全ての実施形態において、式Iおよび/または式IIの三環式ジテルペンが好ましく、式中
は、水素またはイソ−プロピルであり;
は、ヒドロキシまたはイソ−プロピルであり;
およびRは互いに独立して、水素、ヒドロキシまたはメトキシであり;
は、メチル、カルボキシ(COH)またはヒドロキシメチルであり;
は水素であるか、またはRとRとが一緒になって二重結合を形成し;
およびRは互いに独立して、メチル、カルボキシ、ヒドロキシメチル、またはRおよびRの少なくとも1つがメチルあるという条件でメトキシカルボニルであり;
は、水素、オキソまたはメトキシであり;
10は水素であるか、またはRとR10とが一緒になってCO−O−、−O−CO−、−CH−O−または−O−CH−であり;
13は、カルボキシであり;
式Iに関してRがヒドロキシである場合、Rはイソ−プロピルであるというさらなる条件を有し、さらにより好ましくは、三環式ジテルペン類である7−オキソデヒドロアビエチン酸(III)、トタロール(totarol)(IV)、ヒドロキシトタロール(V)、トタロール−19−カルボン酸メチルエステル(VI)、セイジョン(sageone)(VII)、8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオール(VIII)、ロイレアン酸(royleanoic acid)(IX)、フェルギノール(ferruginol)(X)、カルノシン酸12−メチルエーテル(XI)、最も好ましくは、セイジョン(VII)、8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオール(VIII)カルノシン酸12−メチルエーテル(XI)および/または7−メチルロスマノール(XII)、特にカルノシン酸12−メチルエーテル(XI)である。
【0024】
化合物(III)から(XII)の構造は、表1に掲げている。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
本発明の全ての実施形態において、用語の「式Iおよび/またはIIの三環式ジテルペン」はまた、植物材料または植物抽出物の全重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち、30重量%から100重量%)の量で、好ましくは、少なくとも50重量%(すなわち、50重量%から100重量%)の量で、より好ましくは、少なくとも70重量%(すなわち、70重量%から100重量%)の量で、最も好ましくは、少なくとも90重量%(すなわち、90重量%から100重量%)の量で、式Iおよび式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンを含有する植物材料または植物抽出物のいずれかを包含する。本発明の文脈において用いられる用語の「植物の材料」および「植物材料」は、植物の任意の部分を意味する。
【0029】
「カルノシン酸12−メチルエーテル」は、ラセミ混合物ならびに純粋な(4aR,10aS)−カルノシン酸12−メチルエーテルまたは純粋な(4aS,10aR)−カルノシン酸12−メチルエーテル、またはそれらの任意の混合物またはジアステレオ異性体を意味する。カルノシン酸12−メチルエーテルは、限定はしないが、セージ、ローズマリー、Hyptis martiusiiなどの植物から単離することができる。したがって、植物材料または植物抽出物の全重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち、30重量%から100重量%)の量で、好ましくは、少なくとも50重量%(すなわち、50重量%から100重量%)の量で、より好ましくは、少なくとも70重量%(すなわち、70重量%から100重量%)の量で、最も好ましくは、少なくとも90重量%(すなわち、90重量%から100重量%)の量で、カルノシン酸12−メチルエーテルを含有するこれら植物の任意の材料もしくは抽出物または他の任意の植物材料もしくは植物抽出物もまたこの語句に含まれる。「カルノシン酸12−メチルエーテル」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)双方のカルノシン酸12−メチルエーテルを意味する。
【0030】
「7−オキソデヒドロアビエチン酸」は、ラセミ混合物ならびに純粋な(1S,4aS,10aR)−7−オキソデヒドロアビエチン酸または純粋な(1R,4aR,10aS)−7−7−オキソデヒドロアビエチン酸、またはそれらの任意の混合物またはジアステレオ異性体を意味する。7−オキソデヒドロアビエチン酸は、限定はしないが、Cynara cardunculus種cardunculusおよびビャクシン(Juniperus chinensis)などの植物から単離することができる。したがって、植物材料または植物抽出物の全重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち、30重量%から100重量%)の量で、好ましくは、少なくとも50重量%(すなわち、50重量%から100重量%)の量で、より好ましくは、少なくとも70重量%(すなわち、70重量%から100重量%)の量で、最も好ましくは、少なくとも90重量%(すなわち、90重量%から100重量%)の量で、7−オキソデヒドロアビエチン酸を含有するこれら植物の任意の材料もしくは植物抽出物または他の任意の植物材料もしくは植物抽出物もまたこの語句に含まれる。「7−オキソデヒドロアビエチン酸」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)双方の7−オキソデヒドロアビエチン酸を意味する。
【0031】
「トタロール」は、ラセミ混合物ならびに純粋な(4bS,8aS)−トタロール((+)−トタロール、トランス−トタロール)または純粋な(4bR,8aR)−トタロール、またはそれらの任意の混合物またはジアステレオ異性体を意味する。トタロールは、限定はしないが、セージ、ネズノキおよびイヌマキ種などの植物から単離することができる。したがって、植物材料または植物抽出物の全重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち、30重量%から100重量%)の量で、好ましくは、少なくとも50重量%(すなわち、50重量%から100重量%)の量で、より好ましくは、少なくとも70重量%(すなわち、70重量%から100重量%)の量で、最も好ましくは、少なくとも90重量%(すなわち、90重量%から100重量%)の量で、トタロールを含有するこれら植物の任意の材料もしくは抽出物または他の任意の植物材料もしくは植物抽出物もまたこの語句に含まれる。「トタロール」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)双方のトタロールを意味する。トタロールの合成は、幾つかの論文、すなわち、Tetrahedron Letters 2003、44(49)、8831−8835頁に記載されている。
【0032】
「16−ヒドロキシ−トタロール」は、ラセミ混合物ならびに純粋な(1S,4aS,10aR)−16−ヒドロキシトタロールまたは純粋な(1R,4aR,10aS)−16−ヒドロキシトタロール、またはそれらの任意の混合物またはジアステレオ異性体を意味する。16−ヒドロキシトタロールは、イヌマキ種(Podocarpus species)および他の植物の木から単離することができる。したがって、植物材料または抽出物の全重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち、30重量%から100重量%)の量で、好ましくは、少なくとも50重量%(すなわち、50重量%から100重量%)の量で、より好ましくは、少なくとも70重量%(すなわち、70重量%から100重量%)の量で、最も好ましくは、少なくとも90重量%(すなわち、90重量%から100重量%)の量で、16−ヒドロキシトタロールを含有するこれら植物の任意の材料もしくは抽出物または他の任意の植物材料もしくは植物抽出物もまたこの語句に含まれる。「16−ヒドロキシトタロール」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)双方の16−ヒドロキシトタロールを意味する。16−ヒドロキシトタロールの合成は、幾つかの論文、すなわち、Journal of the Chemical Society,Abstracts 1963、1553−1560頁およびChemistry&Industry(ロンドン、英国)1963年、44、1760−1761頁に記載されている。
【0033】
「トタロール−19−カルボン酸メチルエステル」は、ラセミ混合物ならびに純粋な(4aR,10aS)−トタロール−19−カルボン酸メチルエステルまたは純粋な(4aR,10aS)−トタロール−19−カルボン酸メチルエステル、またはそれらの任意の混合物またはジアステレオ異性体を意味する。トタロール−19−カルボン酸メチルエステルは、イヌマキ種および他の植物の木から単離することができる。したがって、植物材料または植物抽出物の全重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち、30重量%から100重量%)の量で、好ましくは、少なくとも50重量%(すなわち、50重量%から100重量%)の量で、より好ましくは、少なくとも70重量%(すなわち、70重量%から100重量%)の量で、最も好ましくは、少なくとも90重量%(すなわち、90重量%から100重量%)の量で、トタロール−19−カルボン酸メチルエステルを含有するこれら植物の任意の材料もしくは抽出物または他の任意の植物材料もしくは植物抽出物もまたこの語句に含まれる。「トタロール−19−カルボン酸メチルエステル」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)双方のトタロール−19−カルボン酸メチルエステルを意味する。トタロール−19−カルボン酸メチルエステルは、Chemistry&Industry(ロンドン、英国)1963年、44、1760−1761頁に記載されている方法に従って調製することができる。
【0034】
セイジョンは、限定はしないが、セージおよび他のサルビア種のような植物から単離することができる。したがって、植物材料または植物抽出物の全重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち、30重量%から100重量%)の量で、好ましくは、少なくとも50重量%(すなわち、50重量%から100重量%)の量で、より好ましくは、少なくとも70重量%(すなわち、70重量%から100重量%)の量で、最も好ましくは、少なくとも90重量%(すなわち、90重量%から100重量%)の量で、セイジョンを含有するこれら植物の任意の材料もしくは抽出物または他の任意の植物材料もしくは植物抽出物もまたこの語句に含まれる。「セイジョン」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)双方のセイジョンを意味する。セイジョンの合成は、例えば、Journal of Organic Chemistry 1997、62(20)、6928−6951頁に記載されている。
【0035】
「8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオール」は、ラセミ混合物ならびに純粋な(4bR,8aS)−8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオールまたは純粋な(4bS,8aR)−8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオール、またはそれらの任意のジアステレオ異性体または混合物を意味する。8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオールは、限定はしないが、サルビア種のような植物から単離することができる。したがって、植物材料または植物抽出物の全重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち、30重量%から100重量%)の量で、好ましくは、少なくとも50重量%(すなわち、50重量%から100重量%)の量で、より好ましくは、少なくとも70重量%(すなわち、70重量%から100重量%)の量で、最も好ましくは、少なくとも90重量%(すなわち、90重量%から100重量%)の量で、8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオールを含有するこれら植物の任意の材料もしくは抽出物または他の任意の植物材料もしくは植物抽出物もまたこの語句に含まれる。「8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオール」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)双方の8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオールを意味する。
【0036】
「ロイレアン酸」は、ラセミ混合物ならびに純粋な(4aR,10aS)−ロイレアン酸または純粋な(4aS,10aR)−ロイレアン酸、またはそれらの任意のジアステレオ異性体または混合物を意味する。ロイレアン酸は、限定はしないが、セージ(サルビア種)のような植物から単離することができる。したがって、植物材料または植物抽出物の全重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち、30重量%から100重量%)の量で、好ましくは、少なくとも50重量%(すなわち、50重量%から100重量%)の量で、より好ましくは、少なくとも70重量%(すなわち、70重量%から100重量%)の量で、最も好ましくは、少なくとも90重量%(すなわち、90重量%から100重量%)の量で、ロイレアン酸を含有するこれら植物の任意の材料もしくは抽出物または他の任意の植物材料もしくは植物抽出物もまたこの語句に含まれる。「ロイレアン酸」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)双方のロイレアン酸を意味する。
【0037】
「フェルギノール」は、ラセミ混合物ならびに純粋な(4bS,8aS)−フェルギノールまたは純粋な(4bR,8aR)−フェルギノール、またはそれらの任意の立体異性体または混合物を意味する。フェルギノールは、限定はしないが、クリプトメリア種、ビャクシン種、サルビア種のような植物から単離することができる。したがって、植物材料または植物抽出物の全重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち、30重量%から100重量%)の量で、好ましくは、少なくとも50重量%(すなわち、50重量%から100重量%)の量で、より好ましくは、少なくとも70重量%(すなわち、70重量%から100重量%)の量で、最も好ましくは、少なくとも90重量%(すなわち、90重量%から100重量%)の量で、フェルギノールを含有するこれら植物の任意の材料もしくは抽出物または他の任意の植物材料もしくは植物抽出物もまたこの語句に含まれる。「フェルギノール」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)双方のフェルギノールを意味する。フェルギノールの合成は、Organic Letters 2001、3(11)、1737−1740頁に記載されている。
【0038】
(純粋な)化合物のカルノシン酸12−メチルエーテル、7−オキソデヒドロアビエチン酸(7−oxocallitrisic acid)、トタロール、16−ヒドロキシトタロール、トタロール−19−カルボン酸メチルエステル、20−デオキソ−カルノソール、7−メチルロスマノール、セイジョン、8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオール、ロイレアン酸、およびフェルギノール以外に、植物材料/抽出物の全重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち、30重量%から100重量%)、好ましくは、少なくとも50重量%(すなわち、50重量%から100重量%)、より好ましくは、少なくとも70重量%(すなわち、70重量%から100重量%)、最も好ましくは、少なくとも90重量%(すなわち、90重量%から100重量%)のこれらの化合物を含有する植物材料もしくは植物抽出物が特に好ましい。
【0039】
本発明の文脈において、「治療」はまた、共治療ならびに予防を包含する。「予防」は、最初の発生予防(一次予防)または再発予防(二次予防)であり得る。本発明の文脈において、用語の「障害」はまた、疾患を包含する。
【0040】
上記に示されたRからR13の定義を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの、ヒトを含めた動物に対する好ましい用量および比率は、特定の組成物の生理学的特性およびその投与様式ならびに投与経路;レシピエントの年令、健康状態および体重;症状の性質および程度;併用治療の種類;治療頻度;通常の治験によって、または栄養補助食品の製剤に関する通常の考慮事項によって当該分野における専門家により判定できる所望の効果など、既知の因子に依って変わり得る。上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの、ヒトに関する好適な毎日の用量は、体重1kg当り1日0.001mgから体重1kg当り1日約40mgの範囲内にあり得る。毎日の用量が、体重1kg当り約0.01mgから約10mgであることがより好ましく、毎日の用量が、体重1kg当り約0.05mgから約5.0mgであることが特に好ましい。したがって、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの三環式ジテルペンを含有する植物材料もしくは植物抽出物の量を算出することができる。ヒト用の固形用量単位製剤において、上記に示されたRからR13の定義および選好を有するような式Iおよび/またはIIの三環式ジテルペンは、1用量単位当り約0.01mgから約1000mgの範囲の量、好ましくは約1mgから約500mgの範囲の量で存在するのが好適である。
【0041】
別の態様において、本発明はまた、関節炎などの炎症性障害、特に骨関節炎およびリウマチ様関節炎の治療、共治療または予防用および/または関節障害の治療、共治療または予防用薬剤/組成物として使用するための、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの三環式ジテルペンに関する。
【0042】
別の態様において、本発明は、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンおよび栄養補助食品として許容できる担体を含んでなる栄養補助食品に関する。特に本発明は、関節炎などの炎症性障害、特に骨関節炎およびリウマチ様関節炎および/または関節障害の治療、共治療または予防のために、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンおよび栄養補助食品として許容できる担体を含んでなる栄養補助食品に関する。
【0043】
本発明はまた、ヒトを含めた動物における関節炎などの炎症性障害、特に骨関節炎およびリウマチ様関節炎および/または関節障害の治療、共治療または予防方法に関するものであり、前記方法は、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式IおよびIIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの有効量を、それを必要とするヒトを含めた動物に投与するステップを含んでなる。さらに本発明は、哺乳動物における(関節)軟骨の再生および/または維持のための方法に関するものであり、この方法は、上記に示されたRからR13の定義を有する式Iおよび/またはIIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの有効量を、このような再生および/または維持の必要な哺乳動物に投与することを含んでなる。
【0044】
用語の「有効量」とは、生理的効果を得るのに必要な量のことである。この生理的効果は、単回用量または反復用量によって達成することができる。投与される用量は、もちろん、特定の組成物の生理学的特性およびその投与様式ならびに投与経路;レシピエントの年齢、健康状態および体重;症状の性質および程度;併用治療の種類;治療頻度;所望の効果など、既知の因子に依って変わる可能性があり、当業者により調整することができる。
【0045】
本発明の枠組みにおいて、動物とは、哺乳動物を含めた全ての動物を意味し、その例としてはヒトが挙げられる。ヒト以外の好ましい例は、ネコ、イヌ、ヒトコブラクダ、ラクダ、ゾウ、およびウマなどの非反芻動物または反芻動物である。
【0046】
本明細書に用いられる用語の栄養補助食品としては、食品、食物、食物サプリメント、栄養サプリメントまたは食品用もしくは食物用サプリメント組成物が挙げられる。
【0047】
したがって、別の実施形態において本発明は、関節炎などの炎症性障害、特に骨関節炎およびリウマチ様関節炎および/または関節障害の治療、共治療または予防のために上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/またはIIの少なくとも1種の三環式ジテルペンを含んでなる栄養補助食品に関するものであり、この栄養補助食品は、食品、食物、食物サプリメント、栄養サプリメントまたは食品用もしくは食物用サプリメント組成物であり、好ましくは、食物サプリメント、栄養サプリメントまたは食品用もしくは食物用サプリメント組成物である。
【0048】
本明細書に用いられる用語の食品とは、ヒトまたは動物による摂取に好適な任意の食品または飼料のことである。食品は、調製され包装された食品(例えば、マヨネーズ、サラダドレッシング、パン、またはチーズ食品)または動物飼料(例えば、押出し成形およびペレット成形動物飼料、粗混合飼料またはペットフード組成物)であり得る。本明細書に用いられる用語の食物とは、ヒトまたは動物の摂取に適した任意の物質のことである。用語の食物サプリメントとは、単一用量単位または複数用量単位で包装されたヒトまたは動物の食事の補充のための少量の化合物のことである。食物サプリメントは、一般に著しい量のカロリーを提供せずに、他の微量栄養素(例えば、ビタミン類またはミネラル類)を含有し得る。用語の栄養サプリメントとは、カロリー源と組み合わせて食物サプリメントを含んでなる組成物のことである。幾つかの実施形態において、栄養サプリメントは、食事補充物またはサプリメント(例えば、栄養素またはエネルギーバーまたは栄養飲料または濃縮物)である。
【0049】
食品または食物は、例えば、非アルコール性ドリンクおよびアルコール性ドリンクなどの飲料ならびに飲料水および液体食品に添加される液体製剤であり、非アルコール性ドリンクは、例えば、ソフトドリンク、スポーツドリンク、例えば、オレンジジュース、アップルジュースおよびグレープ果汁などの果汁;レモネード、ティー、水近似ドリンクおよびミルク、ならびに例えば、ヨーグルトドリンクなどの他の酪農ドリンク、および食物ドリンクである。別の実施形態において、食品または食物とは、本発明による組成物を含んでなる固形または半固形食品のことである。これらの形態としては、限定はしないが、ケーキおよびクッキーなどのベーキング品、プディング、酪農製品、菓子、スナック食品、または冷凍菓子もしくは新型製品(例えば、アイスクリーム、ミルクシェーク)、調製冷凍食品、キャンディー、スナック製品(例えば、フライドポテト)、スープ、スプレッド、ソース、サラダドレッシング、調製ミート製品、チーズ、ヨーグルトおよび食品を含有する他の脂肪または油などの液体食品、ならびに食品成分(例えば、小麦粉)を挙げることができる。
【0050】
食品または食物という用語には、機能性食品および調製食品も含まれ、後者は、ヒト摂取用に承認された任意のプレパッケージ食品のことである。
【0051】
ペット食品組成物などの動物飼料には、有利なことに、必要な食物要件、ならびにトリート(例えば、イヌ用ビスケット)または他の食品サプリメントを供給するように意図された食品が含まれる。本発明による組成物を含んでなる動物飼料は、乾燥組成物(例えば、キッブル)、半湿性組成物、ウェット組成物、またはそれら任意の混合物の形態であり得る。あるいは、またはさらに、動物飼料は、肉汁、飲料水、ヨーグルト、粉末、懸濁液、咀嚼用物、トリート(例えば、ビスケット)などのサプリメントまたは任意の他の送達形態である。
【0052】
本発明の食物サプリメントは、任意の好適な様式で送達することができる。好ましい実施形態において、食物サプリメントは、経口送達用に製剤化される。本発明の食物サプリメントの成分は、経口摂取用に許容できる賦形剤および/または担体に含まれる。担体、したがって食物サプリメント自体の実際の形態は重要ではない。担体は、液体、ゲル、ゲルキャップ、カプセル、粉末、固形錠剤(コーティングまたは非コーティング)、ティーなどであり得る。食物サプリメントは、好ましくは、錠剤またはカプセルの形態、最も好ましくは、硬(シェル)ゼラチンカプセルなどであり得る。好適な賦形剤および/または担体としては、マルトデキストリン、炭酸カルシウム、リン酸ジカルシウム、リン酸トリカルシウム、微結晶性セルロース、デキストロース、米粉、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、ショ糖、植物ガム、乳糖、メチルセルロース、ポビドン、カルボキシメチルセルロース、トウモロコシデンプンなど(それらの混合物を含む)が挙げられる。好ましい担体としては、炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、マルトデキストリン、およびそれらの混合物が挙げられる。種々の成分および賦形剤および/または担体は従来の技法を用いて混合され、所望の形態に形成される。本発明の錠剤またはカプセルは、pHが約6.0から7.0で溶解する腸溶コーティングでコーティングすることができる。胃内ではなく、小腸内で溶解する好適な腸溶コーティングは、セルロースアセテートフタレートである。製剤化および投与に関する技法に対するさらなる詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(マック出版(Maack Publishing)社、イーストン、ペンシルバニア州)の最新版に見ることができる。
【0053】
他の実施形態において、食物サプリメントを、消費者が食品または飲料に添加するのに好適な粉末または液体として提供する。例えば、幾つかの実施形態において、食物サプリメントを、例えば、飲料内に混合し、または例えば、プディング、トッピング、ソース、ピューレ、調理穀物、またはサラダドレッシングなどの半固体食品内に攪拌することによって、または他の方法で食品に加えることによって使用される粉末の形態で、摂取直前に放出させるために、例えば、食品のキャップまたは飲料容器に封入して個体に投与することができる。特に、食物サプリメントにより食物に添加されるカロリー数を制限することが望ましい場合、食物サプリメントは、1種または複数種の不活性成分を含むことができる。例えば、本発明の食物サプリメントは、例えば、ハーブ類、ビタミン類、ミネラル類、増強剤類、着色剤類、甘味剤類、風味剤類、不活性成分などの任意の成分を含有することもできる。
【0054】
幾つかの実施形態において、食物サプリメントは、限定はしないが、リン酸カルシウムまたは酢酸カルシウム、三塩基性;リン酸カリウム、二塩基性;硫酸マグネシウムまたは酸化マグネシウム;塩(塩化ナトリウム);塩化カリウムまたは酢酸カリウム;アスコルビン酸;オルトリン酸第二鉄;ナイアシンアミド;硫酸亜鉛又は酸化亜鉛;パントテン酸カルシウム;グルコン酸銅;リボフラビン;ベータ−カロテン;ピリドキシン塩酸塩;硝酸チアミン;葉酸;ビオチン;塩化クロムまたはピコロン酸クロム;ヨウ化カリウム;セレン酸ナトリウム;モリブデン酸ナトリウム;フィロキノン;ビタミンD3;シアノコバラミン;亜セレン酸ナトリウム;硫酸銅;ビタミンA;ビタミンC;イノシトール;ヨウ化カリウムなど、ビタミン類およびミネラル類をさらに含んでなる。ビタミン類およびミネラル類に好適な用量は、例えば、U.S.RDAガイドラインを参考にすることにより得ることができる。
【0055】
他の実施形態において、本発明は、本発明による組成物を含んでなる栄養サプリメント(例えば、エネルギーバーまたは食事代替バーまたは飲料)を提供する。栄養サプリメントは、食事またはスナック代替品として役立ち、一般に栄養カロリーを提供する。栄養サプリメントは、釣り合いのとれた量で炭水化物、タンパク質、および脂肪を提供することが好ましい。栄養サプリメントは、単鎖長、中鎖長の炭水化物、または多糖類、もしくはそれらの組合せをさらに含むことができる。単糖は、所望の官能的性質に関して選択することができる。未調理トウモロコシデンプンは、複合炭水化物の一例である。加熱により、複合炭水化物が、単糖または二糖である単純炭水化物に分解することから、高分子量構造を維持することが望ましい場合、調理または加熱処理をしない食品製剤またはその一部に複合炭水化物を含ませる必要がある。一実施形態において、栄養サプリメントは、3つのレベルの鎖長(単鎖長、中鎖長および複合鎖長;例えば、ショ糖、マルトデキストリン類、および未調理トウモロコシデンプン)の炭水化物源の組合せを含有する。
【0056】
本発明の栄養サプリメントに取り込まれるタンパク質源としては、栄養製剤に利用される任意の好適なタンパク質でよく、ホエータンパク質、ホエータンパク濃縮物、ホエー粉末、卵、大豆粉、豆乳、大豆タンパク質、大豆タンパク質分離物、カゼイン酸塩(例えば、カゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸ナトリウムカルシウム、カゼイン酸カルシウム、カゼイン酸カリウム)、動物および植物タンパク質ならびにそれらの加水分解物または混合物を挙げることができる。タンパク質源を選択する際、タンパク質の生物学的値を先ず考慮する必要があり、最高の生物学的値は、カゼイン酸塩、ホエー、ラクトアルブミン、卵アルブミンおよび全卵タンパク質に見られる。好ましい実施形態において、タンパク質は、ホエータンパク濃縮物とカゼイン酸カルシウムとの組合せである。これらのタンパク質は、高い生物学的値を有しており;すなわち、それらは、高比率の必須アミノ酸を有している。Modern Nutrition in Health and Disease、第八版、リーおよびフェビガー(Lea&Febiger)編、1986年、特に1巻、30−32頁を参照されたい。栄養サプリメントは、他のビタミン類、ミネラル類、抗酸化剤類、繊維および他の食物サプリメント類(例えば、タンパク質、アミノ酸、コリン、レシチン、ω−3脂肪酸)の1種またはそれらの組合せなど、他の成分を含有することもできる。これら成分の1種または数種の選択は、製剤、デザイン、消費者の嗜好および末端使用者の問題である。本発明の食物サプリメントに添加されたこれら成分の量は、当業者に容易に認識される。このような量に対するガイドラインは、小児および成人に対するU.S.RDAの用量により提供することができる。添加できるさらなるビタミン類およびミネラル類としては、限定はしないが、リン酸カルシウムまたは酢酸カルシウム、三塩基性;リン酸カリウム、二塩基性;硫酸マグネシウムまたは酸化マグネシウム;塩(塩化ナトリウム);塩化カリウムまたは酢酸カリウム;アスコルビン酸;オルトリン酸第二鉄;ナイアシンアミド;硫酸亜鉛または酸化亜鉛;パントテン酸カルシウム;グルコン酸銅;リボフラビン;ベータ−カロテン;ピリドキシン塩酸塩;硝酸チアミン;葉酸;ビオチン;塩化クロムまたはピコロン酸クロム;ヨウ化カリウム;セレン酸ナトリウム;モリブデン酸ナトリウム;フィロキノン;ビタミンD3;シアノコバラミン;亜セレン酸ナトリウム;硫酸銅;ビタミンA;ビタミンC;イノシトール;ヨウ化カリウムが挙げられる。
【0057】
栄養サプリメントは、種々の形態および種々の製造方法により提供することができる。好ましい実施形態において、食品バーを製造するために、液体成分を調理し;ミキサー中の液体成分に乾燥成分を添加し、ドウ相になるまで混合し;このドウを押出し機に入れて押出し;押出されたドウを適切な長さに切断し;この製造物を冷却する。本明細書に具体的に掲げられた成分に加えて、味覚を増強させるため、このバーに他の栄養分および充填剤を含有させることができる。
【0058】
当業者にとって当然のことながら、栄養サプリメントの加工または製造のために、本明細書に記載されたものに、例えば、充填剤、乳化剤、保存剤などの他の成分を添加することができる。
【0059】
さらに、風味料、着色料、スパイス、ナッツなどを、栄養補助食品組成物に組み込むことができる。風味料は、風味エキス、揮発性油、チョコレート風味料、ピーナッツバター風味料、クッキークラム、クリスプ米、バニラまたは任意の市販の風味料の形態であり得る。有用な風味料の例としては、限定はしないが、純粋アニスエキス、模造バナナエキス、模造サクランボエキス、チョコレートエキス、純粋レモンエキス、純粋オレンジエキス、純粋ペパーミントエキス、模造パイナップルエキス、模造ラムエキス、模造イチゴエキス、または純粋バニラエキス;またはバーム油、ベイ油、ベルガモット油、セダー油、クルミ油、サクランボ油、桂皮油、チョウジ油、またはペパーミント油などの揮発性油;ピーナッツバター、チョコレート風味料、バニラクッキークラム、バタースコッチまたはタフィーが挙げられる。一実施形態において、食物サプリメントは、ココアまたはチョコレートを含有する。
【0060】
乳化剤を、栄養補助食品の安定性のために添加することができる。好適な乳化剤の例としては、限定はしないが、レシチン(例えば、卵または大豆からの)、および/またはモノ−およびジ−グリセリドが挙げられる。他の乳化剤は、当業者にとって容易に明らかであり、好適な乳化剤の選択は、部分的に製剤および最終製品に依って決まる。保存剤もまた、製品の貯蔵期限を延長させるために栄養サプリメントに加えることができる。ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウムまたはカルシウム二ナトリウムEDTAなどの保存剤を使用することが好ましい。
【0061】
上記の炭水化物に加えて、栄養補助食品は、天然または人工(好ましくは低カロリー)の甘味料、例えば、糖類、シクラマート類、アスパルタミン、アスパルテーム、アセスルフェームK、および/またはソルビトールを含有することができる。栄養サプリメントが過体重または肥満の個体、または高血糖症の傾向があるII型糖尿病個体により摂取されることが意図される場合、このような人工甘味料が望ましい場合がある。
【0062】
さらに、総合ビタミンおよびミネラルサプリメントを本発明の栄養補助食品に添加して、幾つかの食品に欠落している適切量の必須栄養剤を得ることができる。総合ビタミンおよびミネラルサプリメントは、生活様式による栄養欠損および栄養欠乏に対する疾患の予防および防止にも有用であり得る。
【0063】
栄養補助食品を介して投与される上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの用量および比率は、もちろん、具体的な組成物の生理学的特徴およびその投与様式ならびに投与経路;レシピエントの年令、健康状態および体重;症状の性質および程度;同時治療の種類;治療回数;および通常の治験、または栄養補助食品の製剤に関する通常の考慮により、その分野の専門家によって判定することができる所望の効果など、既知の因子に依って変わり得る。
【0064】
本発明による栄養補助食品は、1食当り約0.001mgから1gの量で、好ましくは0.01mgから1gの量で、最も好ましくは2.0mgから300mgの範囲で上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンを含むことができる。
【0065】
食物組成物、特にヒト用食品および飲料において、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンは、食品または飲料の全重量を基準にして約0.0001重量%(1mg/kg)から約5重量%(50g/kg)、好ましくは約0.001重量%(10mg/kg)から約1重量%(10g/kg)、好ましくは約0.01重量%(100mg/kg)から約0.5重量%(5g/kg)の範囲の量で存在するのが好適である。
【0066】
本発明の好ましい実施形態における食品および飲料において、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの三環式ジテルペンの量は、1食当り10mgから30mgの範囲内、すなわち食品または飲料1kg当り120mgである。
【0067】
ヒトを除外する動物に関して、本発明の目的のために上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの三環式ジテルペンの好適な毎日の用量は、体重1kg当り1日0.001mgから体重1kg当り1日約1000mgの範囲内にあり得る。毎日の用量は、体重1kg当り約0.1mgから約500mgの範囲内にあることがより好ましく、毎日の用量は、体重1kg当り約1mgから100mgの範囲内にあることが特に好ましい。
【0068】
したがって、純粋な化合物の代わりに、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンを含んでなる植物材料または植物抽出物の適用される用量を算出することができる。
【0069】
別の態様において、本発明は、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/またはIIの少なくとも1種の三環式ジテルペンおよび薬学的に許容できる担体を含んでなる医薬品に関する。特に本発明は、関節炎などの炎症性障害、特に骨関節炎およびリウマチ様関節炎および/または関節障害の治療、共治療または予防のために上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンおよび薬学的に許容できる担体を含んでなる医薬品に関する。
【0070】
当業者は、薬学的に許容できる担体として使用できる担体を周知である。好適な薬学的担体は、例えば、本分野の標準的な参考書である上記のRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。このような薬学的に許容できる担体の例としては、経口/非経口/注射投与に好適な無機および有機双方の担体材料であり、水、ゼラチン、アラビアゴム、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油などが挙げられる。
【0071】
医薬品は、限定はしないが、水、任意の出所源のゼラチン、植物ガム類、リグニンスルホネート、タルク、糖類、デンプン、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール類、風味料、保存剤、安定化剤、乳化剤、緩衝剤、潤滑剤、着色料、湿潤剤など、従来の医薬品用添加剤およびアジュバント、賦形剤または希釈剤をさらに含むことができる。
【0072】
好ましい実施形態において、医薬品は、散剤、錠剤、カプセル剤、ゲル剤、液剤または固形剤の実施形態である。
【0073】
医薬品中の個々の成分の用量および比率は、通常の前臨床試験および臨床試験、または医薬品組成物の製剤化に関する通常の考慮によりその分野における専門家によって判定することができる。
【0074】
医薬品は、1用量単位当り、例えば、1カプセル剤または1錠剤当り、好ましくは1mgから2000mgの量、または液体製剤の毎日の用量当り1mgから3000mgの量で上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンを含むことができる。好ましい実施形態において、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンは好ましくは、少なくとも30重量%の量で上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンを包含する濃縮植物抽出物の形態で、少なくとも0.01mg/kg体重/日の量、好ましくは0.1〜50mg/kg体重/日の量、最も好ましくは0.3mg〜15mg/kg体重/日の量で、単一用量または頻回用量による形態での医薬品組成物を介して投与される。したがって、純粋な化合物の代わりに、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンを含んでなる植物材料または植物抽出物の適用される用量を算出することができる。
【0075】
本発明による栄養補助食品および医薬品は、人体を含む動物身体の投与に好適である任意のガレヌス形態、さらに特に、従来の任意の経口投与形態、例えば、固体形態で、例えば、食品または飼料(添加物/サプリメント)、食品または飼料プレミックス、強化食品または飼料、錠剤、丸剤、顆粒剤、糖衣丸、カプセル剤、および散剤ならびに錠剤などの発泡製剤としての固形形態で、または例えば、飲料、ペーストおよび油性懸濁液としての液剤、乳濁液または懸濁液の液体形態であり得る。ペーストを硬シェルまたは軟シェルカプセルに充填することができる。他の適用形態に関する例は、経皮、非経口、局所または注射可能な投与に関する形態である。栄養補助食品および医薬品組成物は、徐放性(遅延)放出製剤の形態であり得る。医薬品組成物の例としては、クリーム、ゲル、スプレー、乾燥スティック、粉末などの局所適用およびフェノール化合物の経皮吸収に好適な組成物も挙げられる。
【0076】
さらに、総合ビタミン剤およびミネラルサプリメントを、本発明の栄養補助食品または医薬品に添加して、幾つかの食物に欠落している十分な量の必須栄養素を得ることができる。総合ビタミン剤およびミネラルサプリメントはまた、生活様式による疾患予防および栄養欠損および栄養欠乏に対する防御に有用であり得る。
【0077】
当業者は、薬学的に許容できる担体として使用できる担体を認識している。このような薬学的に許容できる担体の例には、経口/非経口/注射投与に好適な無機および有機双方の材料があり、水、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油などが挙げられる。
【0078】
式Iおよび式IIの少なくとも1種の三環性ジテルペンおよび薬学的に許容できる担体のほかに、本発明による医薬品組成物は、限定はしないが、水、任意の起源のゼラチン、植物ゴム類、リグニンスルホネート、タルク、糖類、デンプン、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール類、風味剤、保存剤、安定化剤、乳化剤、緩衝剤、滑剤、着色剤、湿潤剤、充填剤など、医薬品用添加物およびアジュバント、賦形剤または希釈剤をさらに含むことができる。
【0079】
炎症性障害および/または関節障害の治療または予防のために、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの投与前、投与と同時にまたは投与後に、当業者に公知の他の栄養補助食品組成物または治療剤と併用して、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンを使用することができる。
【0080】
本発明によれば、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの三環式ジテルペンのみならず、植物材料または植物抽出物の全重量を基準にして、これら化合物を、少なくとも30重量%(すなわち、30重量%から100重量%)の量、好ましくは、少なくとも50重量%(すなわち、50重量%から100重量%)の量、より好ましくは、少なくとも70重量%(すなわち、70重量%から100重量%)の量、最も好ましくは、少なくとも90重量%(すなわち、90重量%から100重量%)の量で含有する植物材料もしくは植物抽出物、ならびにそれらを含有する食物組成物および医薬品組成物は特に、関節炎などの炎症性障害、特に骨関節炎およびリウマチ様関節炎の治療、共治療または予防のため、および/または関節障害の治療、共治療または予防のための薬物として使用することができる。
【0081】
上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの三環式ジテルペンまたはそれらの誘導体、ならびにそれらを(植物材料または抽出物の全重量を基準にして、特に少なくとも30重量%の量、好ましくは少なくとも50重量%の量、より好ましくは少なくとも70重量%から90重量%の量、最も好ましくは少なくとも90重量%の量で)含有する植物材料および植物抽出物(の混合物)、ならびに、それらを含有する食物/医薬品組成物は、このようにヒトを含めた動物の治療に好適である。
【0082】
さらに別の態様において、本発明はまた、日焼けなどの皮膚の炎症性障害、座瘡などの皮膚荒れまたは光老化などの慢性皮膚炎症結果の治療、共治療または予防のための、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/またはIIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの使用に関する。日焼けなどの皮膚の炎症性障害、座瘡などの皮膚荒れまたは光老化などの慢性皮膚炎症結果の治療、共治療または予防のために、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/またはIIの少なくとも1種の三環式ジテルペンを含んでなる組成物は、限定されないが、栄養補助食品または薬剤などの経口送達用に設計することができるか、または、クリーム剤またはローション剤などの局所適用のために設計することができる。
【0083】
別の態様において、本発明は、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペン、またはそれらを含有する組成物(植物材料または植物抽出物の全重量を基準にして、少なくとも30重量%の量、好ましくは少なくとも50重量%の量、より好ましくは70重量%から90重量%の量、最も好ましくは少なくとも90重量%の量でそれらを含有する植物材料/抽出物;食物/医薬品組成物)の有効量および化粧品用にまたは皮膚科的に許容できる担体を含んでなる化粧品用または皮膚科用製剤(後者の製剤は医薬品の特定のタイプである)に関する。化粧品用または皮膚科用組成物は、従来のそれぞれ化粧品用、皮膚科用アジュバントおよび/または添加物および/またはさらなる活性成分をさらに含むことができる。
【0084】
化粧品用または皮膚科用製剤は、皮膚の炎症、特にUV照射により引き起こされた日焼け、接触皮膚炎(特におむつ領域の皮膚炎)、アトピー性皮膚炎、乾燥症、湿疹、しゅさ、脂漏症、乾癬、神経皮膚炎、熱傷、光老化の治療、共治療または予防のための、または座瘡などの皮膚荒れの治療、共治療または予防のための皮膚ケア製剤であることが好ましい。皮膚荒れの例としては、にきび、座瘡および炎症性態様による他の皮膚荒れが挙げられる。
【0085】
さらに別の態様において、本発明はまた、皮膚の炎症状態の治療、共治療または予防のための、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンを含んでなる組成物に関する。皮膚の炎症状態の治療、共治療または予防のための、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンを含んでなる組成物は、例えば、栄養補助食品または医薬品もしくは薬剤などの経口投与用に設計することができるか、または限定はしないが、クリーム剤またはローション剤などの局所適用のために設計することができる。皮膚の炎症状態の治療、共治療または予防のための、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンを含んでなる組成物が、経口投与用に意図される場合、上記に示された全ての定義および選好を有する栄養補助食品または医薬品の形態であり得る。このような製品もまた、美容食品およびサプリメントとして知られている。皮膚の炎症状態の治療、共治療または予防のための、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンを含んでなる組成物が、局所適用に意図される場合、本明細書に記載された化粧品用または皮膚科用製剤の形態であり得る。
【0086】
用語の「皮膚の炎症状態」は、例えば、接触皮膚炎[特におむつ領域の皮膚炎]、アトピー性皮膚炎、乾燥症、湿疹、しゅさ、脂漏症、乾癬、神経皮膚炎、座瘡などの皮膚の炎症性疾患、日焼けなどの熱傷および放射線熱傷、ならびに例えば、慢性皮膚炎症の結果である光老化などの任意の他のタイプの皮膚炎症を包含する。用語の「皮膚の炎症状態」はまた、用語の「皮膚荒れ」を包含する。「皮膚荒れ」は、種々の因子:種々の外因性および内因性刺激(例えば、日光、風、寒冷、乾燥、クリーム剤または他の皮膚ケア製品に対する不適合性または過敏性、結果としてにきび、黒色斑点、および座瘡に至る皮脂の過剰産生)による皮膚刺激作用により引き起こされ得る。表皮における炎症過程は、皮膚刺激作用、過敏性皮膚および皮膚荒れに至る過程に関与していることが一般に受け入れられている。さらに、これらの機序においてサイトカイン類が、重要な役割を果たしていることが十分に確立されている。炎症誘発性サイトカイン類は、炎症刺激の際に表皮のケラチノサイトから放出される(ボニフェース・K(Boniface K)、レクロン・JC(Lecron JC)、バーナード・FX(Bernard FX)、ダグレゴリオ・G(Gagregorio G)、ギレット・G(Guillet G)、ナウ・F(Nau F)、モレル・F(Morel F)、「Keratinocytes as targets for interleukin−10−related cytokines:a putative role in the pathogenesis of psoriasis」、Eur.Cytokine Netw.2005年12月;16(4):309−19頁)。
【0087】
したがって、炎症刺激に対する皮膚細胞の応答を減少させることにより、粗悪なまたは過敏性皮膚の状態の改善に導くことができ、健康で自然な輝きと明るさを有するきれいな皮膚を生じさせるのに役立ち得る。
【0088】
したがって、本発明はまた、皮膚の最適な健康、自然な輝きと明るさおよび/または美しい外見を促進させるための上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの使用に関する。さらに、本発明は、皮膚のむらのないきれいな外観を維持するための、上記に示されたRからR13の定義および選好を有する式Iおよび/またはIIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの使用を包含する。
【0089】
「有効量」という用語は、化粧品用または皮膚科用組成物の全重量を基準にした各活性剤の好ましくは少なくとも0.001%を意味する。化粧品用または皮膚科用製剤は、好ましくは、0.01重量%と20重量%との間、より好ましくは、0.05重量%と10重量%との間、さらにより好ましくは、0.1重量%と5重量%との間の量での上記に掲げたものから選択される活性剤を含んでなる。
【0090】
皮膚に適用されることができる化粧品用または皮膚科用製剤の量は、製剤中の活性成分の濃度および所望の化粧品または医薬品の効果に依存する。例えば、クリーム剤が皮膚に塗布されるような適用であり得る。クリーム剤は、約1mgから2mgのクリーム剤/cm皮膚の量で通常塗布される。しかしながら、皮膚に塗布される組成物の量は重要ではなく、ある一定量の塗布組成物で所望の効果が達成できなければ、より多くの活性成分を含有するより高濃度の活性製剤が使用されるであろう。
【0091】
本発明はまた、皮膚の炎症の化粧品による治療、共治療または予防のため、特に日焼け、接触皮膚炎(特におむつ領域皮膚炎)、アトピー性皮膚炎、乾燥症、湿疹、しゅさ、脂漏症、乾癬、神経皮膚炎、熱傷、または光老化ならびに環境ストレス(風、石鹸、乾燥気候など)に対する過敏性皮膚の化粧品による治療、共治療または予防のための化粧品製剤の使用に関する。
【0092】
また、本発明は、皮膚の炎症、特にヒトにおける日焼け、例えば座瘡などの皮膚荒れ、または慢性皮膚炎症に関連する光老化の治療、共治療または予防のための方法に関するものであり、前記方法は、本発明による皮膚科用組成物の有効量を、それを必要とするヒトに投与するステップを含んでなる。また、本発明は、本発明による化粧品用製剤により皮膚の炎症、特に日焼けまたは座瘡などの皮膚荒れの化粧品による治療、共治療または予防のための方法に関する。日焼け予防は、好ましくは、好適な光遮断剤と併用して本発明の組成物を含んでなる局所適用により達成されることが好ましい。
【0093】
本発明による化粧品用または皮膚科用製剤は、溶媒または脂肪族物質中の懸濁液または分散液の形態、あるいはクリーム、ペースト、ローション、増粘ローションまたはミルク、軟膏形態での小胞性分散液、ゲル、固形チューブスティックまたはエアゾールムースなど、乳濁液またはミクロ乳濁液(特にO/WまたはW/Oタイプ、O/W/OまたはW/O/Wタイプ、Oは油相を表し、Wは水相を表す)の形態であり、ムース、発泡体またはスプレー発泡体、スプレー、スティックまたはエアゾールまたはワイプの形態で提供することができる。化粧品用または皮膚科用製剤の例は、皮膚ケア製剤、特にボディオイル、ボディローション、ボディゲル、トリートメントクリーム、皮膚保護軟膏、加湿ゲル、加湿スプレー、再活性化ボディスプレー、日焼け後用製剤または日焼け止め製剤である。
【0094】
例えば、日焼け、光老化または皮膚荒れなどの皮膚の炎症の治療、共治療または予防のための化粧品用または皮膚科用組成物は、従来どおりの経口投与の形態であり、その例は上記に説明されており、また美容食品およびサプリメントを含む。
【0095】
日焼け止め製剤としてまたは日焼け後用製剤の本発明の化粧品用または皮膚科用製剤は、例えば、通常の化粧品にそれぞれ、保存剤/抗酸化剤、脂肪族物質/油類、水、有機溶媒、シリコーン類、増粘剤、軟化剤、乳化剤、追加の光遮断剤、消泡剤、加湿剤、芳香剤、界面活性剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性ポリマー類またはそれらの混合物、噴射剤、酸性化剤または塩基性化剤、染料、着色剤、色素またはナノ色素、光安定化剤、駆虫剤、皮膚日焼け剤、皮膚美白剤、抗菌剤、保存剤活性成分または化粧品に通常製剤化される他の成分などの皮膚科用アジュバントおよび/または添加剤をさらに含むことができる。
【0096】
本発明の化粧品用または皮膚科用製剤に組み込むことができる光遮断剤、例えば、日焼け止め剤は、IR、UV−A、UV−B、UV−Cおよび/または広帯域フィルタから選択されることが有利である。UV−Bまたは広域スペクトル遮断剤の例、すなわち、約290nmと340nmとの間の吸収極大を有する物質は、有機化合物でも無機化合物でもよい。有機UV−Bまたは広域遮断剤は、例えば、2−エチルヘキシル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(オクトクリレン、PARSOL(登録商標)340)、エチル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどのアクリレート類;4−メチルベンジリデンカンファー(PARSOL(登録商標)5000)、3−ベンジリデンカンファー、カンファーベンザルコニウムメトスルフェート、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー、スルホベンジリデンカンファー、スルホメチルベンジリデンカンファー、テレフタリデンジカンファースルホン酸などのカンファー誘導体;エチルヘキシルメトキシシンナメート(PARSOL(登録商標)MCX)、エトキシエチルメトキシシンナメート、ジエタノールアミンメトキシシンナメート(PARSOL(登録商標)Hydro)、イソアミルメトキシシンナメートなどのシンナメート誘導体、ならびにシロキサン類に結合させた桂皮酸誘導体;p−アミノ安息香酸、2−エチルヘキシルp−ジメチルアミノベンゾエート、N−オキシプロピレン化エチルp−アミノベンゾエート、グリセリルp−アミノベンゾエートなどのp−アミノ安息香酸誘導体;ベンゾフェノン−3、ベンゾフェノン−4、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;ジ−(2−エチルヘキシル)4−メトキシベンザルマロネートなどのベンザルマロン酸エステル類;欧州特許出願公開第0895 776号明細書に記載されている2−(4−エトキシアニリノメチレン)プロパンジオン酸ジエチルエステルなどの2−(4−エトキシアニリノメチレン)プロパンジオン酸のエステル類;ポリシリコーン−15(PARSOL(登録商標)SLX)などの欧州特許出願公開第0358584B1号明細書、欧州特許出願公開第0538431B1号明細書および欧州特許出願公開第0709080A1号明細書に記載されているベンズマロネート基を含有するオルガノシロキサン化合物;ドロメトリゾールトリシロキサン(Mexoryl XL);例えば、2−フェニルベンズイミダゾールスルホン酸およびその塩類(PARSOL(登録商標)HS)などのイミダゾール誘導体である。2−フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の塩類は、例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩などのアルカリ塩類、アンモニウム塩類、モルホリン塩類、モノエタノールアミン塩類、ジエタノールアミン塩類などの第一級、第二級および第三級アミンの塩類;イソプロピルベンジルサリシレート、ベンジルサリシレート、ブチルサリシレート、エチルヘキシルサリシレート(PARSOL(登録商標)EHS、NEO Heliopan OS)、イソオクチルサリシレートまたはホモメンチルサリシレート(ホモサレート、PARSOL(登録商標)HMS、NEO Heliopan OS)などのサリシレート誘導体;エチルヘキシルトリアゾン(Uvinul T−150)、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(Uvasorb HEB)などのトリアジン誘導体である。カプセル化エチルヘキシルメトキシシンナメート(Eusolex UV−pearls)またはUVフィルタで装填されたミクロカプセルなどのカプセル化UVフィルタは、例えば、欧州特許第1471995号明細書などに開示されている。無機化合物は、微小粒子化TiO、ZnOなどの色素である。「微小粒子化」という用語は、約5nmから約200nm、特に約15nmから約100nmの粒径のことである。TiO粒子はまた、例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウムなどの金属酸化物により、または例えば、ポリオール類、メチコーン、ステアリン酸アルミニウム、アルキルシランなどの有機コーティング剤によりコーティングすることができる。このようなコーティングは当業界に周知である。
【0097】
広域スペクトルまたはUV A遮断剤、すなわち、約320nmと400nmとの間の吸収極大を有する物質の例は、有機または無機化合物、例えば、4−tブチル−4’−メトキシジベンゾイル−メタン(PARSOL(登録商標)1789)、ジメトキシジベンゾイルメタン、イソプロピルジベンゾイルメタンなどのジベンゾイルメタン誘導体;2,2’−メチレン−ビス−(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール(TINOSORB M)などのベンゾトリアゾール誘導体;ビス−エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(Tinosorb S)など;2,2−(1,4−フェニレン)ビス−(1H−ベンズイミダゾール−4,6−ジスルホン酸)(Neoheliopan AP)などのフェニレン−1,4−ビス−ベンズイミダゾールスルホン酸類またはその塩類;欧州特許出願公開第1046391号明細書に記載された2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシ−ベンゾイル)−安息香酸ヘキシルエステル(Uvinul Aプラス)などのアミノ置換ヒドロキシベンゾフェノン類;国際公開第2005080341A1号パンフレットに記載されたイオン性UV−Aフィルタ;微小粒子ZnOまたはTiOなどの色素であり得る。「微小粒子化」という用語は、約5nmから約200nm、特に約15nmから約100nmの粒径のことである。この粒子はまた、例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウムなどの他の金属酸化物により、または例えば、ポリオール類、メチコーン、ステアリン酸アルミニウム、アルキルシランなどの有機コーティング剤によりコーティングすることができる。このようなコーティングは当業界に周知である。
【0098】
ジベンゾイルメタン誘導体の光安定性は限定されており、これらのUV−A遮断剤を光安定化させることが望ましいと考えらえる。したがって、「従来のUV−A遮断剤」という用語はまた、欧州特許出願公開第0 514 491B1号明細書および欧州特許出願公開第0 780 119A1号明細書に記載された、例えば、3,3−ジフェニルアクリレート誘導体により安定化された、例えば、PARSOL(登録商標)1789などのジベンゾイルメタン誘導体;米国特許第5,605,680号明細書に記載されたベンジリデンカンファー誘導体;欧州特許出願公開第0358584B1号明細書、欧州特許出願公開第0538431B1号明細書および欧州特許出願公開第0709080A1号明細書に記載されたベンズマロネート基を含有するオルガノシロキサン類のことでもある。
【0099】
本発明の化粧品用または皮膚科用製剤に含むことができる活性成分は、例えば、ビタミン類およびそれらの誘導体、例えば、トコフェロール、トコフェロールアセテート、アスコルビン酸、アスコルビルホスフェート、ビタミンQ、DおよびK、レチノール、レチナール、レチノイン酸、レチノールアセテート、レチノールパルミテート、ビオチン、ベータ−カロテンなどのカロテノイド誘導体、リコペン、アスタキサンチン、植物エキス、抗菌成分、ジペプチド類を含んでなる不安定なアミノ酸類、メチオニンなどのオリゴペプチド類およびポリペプチド類、システイン、シスチン、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、フェノール類、ポリフェノール類またはフラボノイド類、ビスアボロール、アラントイン、フィタントリオール、パンテノール、AHA酸類、補酵素Q10などのユビキノン類、セラミド類、疑似セラミド類、必須油類、植物エキスのデオキシリボ核酸、フィタン酸である。
【0100】
化粧品用および皮膚科用アジュバント、添加物および/または追加の活性成分の必要な量は、所望の製品に基づいて当業者により容易に選択することができ、実施例に例示されるが、それに限定されない。
【0101】
次に本発明を、以下の実施例により説明するが、それらに限定されない。
【0102】
[実施例]
セイジョン(Sageone)(VII)および8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオール(以下、アビエタトリエントリオールと称される)(VIII)は、アナリティコン(Analyticon)から得られ、カルノシン酸12−メチルエーテル(XI)は、クロマトグラフィーによりローズマリーの針葉の親油性抽出物から>95%の純度で単離された。
【0103】
[実施例1:抗炎症効果]
カルノシン酸12−メチルエーテル、セイジョンおよびアビエタトリエントリオールの抗炎症効果は、酸化窒素および/または炎症誘発性プロスタグランジン(PG)の合成阻害を判定することによって活性化マクロファージにおいて評価された。PGEは、炎症過程において重要な役割を果たし、一方、酸化窒素(NO)は、種々の形態の関節炎、胃腸疾患および代謝症候群など、種々の慢性炎症性疾患における炎症の特徴である。
【0104】
それらの化合物は、濃厚形態でDMSOに溶解させ、アッセイを妨げる副産物を含有しなかった。最終媒体(DMSO)濃度は、アッセイにおいて0.2容量%を超えなかった。
【0105】
化合物の抗炎症効果は、American Type Culture Collection(ATCC)から購入されたマウスのマクロファージ指標細胞系RAW267.7を用いて細胞アッセイで試験し、ATCCにより提供されたプロトコルに従ってDMEM中で培養した。細胞(約50,000/ウェル)を、平底マイクロタイタープレートに接種し、1日培養した。次に細胞を、0.25%の胎仔ウシ血清(FCS)(D−025)を含有する完全培地中で飢餓状態にした。一晩培養後、培地を除き、最終濃度の2倍の試験化合物を含有する100μLのD−025により置き換えた。引き続き、2μg/mlのリポ多糖類(LPS)を含有する100μLのD−025を加え(すなわち、1μg/mlの最終LPS濃度)、細胞を24時間培養した。物質は通常、2倍希釈のステップで0.2μMから50μMの濃度範囲で試験した。細胞により放出された酸化窒素から発生した亜硝酸塩の濃度を、標品として亜硝酸ナトリウムを用いてグリース(Griess)反応により測定した(例えば、イマイ(Imai)ら、Biochem Biophys Res Comm、197、105頁[1993])。手短に言えば、50μlの上澄液を、グリース試薬1(25μL)およびグリース試薬2(25μL)と混合して遠心分離し、540nmでの光学密度を測定した。細胞培養培地中に分泌されたPGEを、ケイマン・ケミカルズ(アンハーバー、ウィスコンシン州、米国)から入手したEIAにより測定し、その製造元の取扱説明書に従って用いた。IC50値は、最良適合曲線(エクセル適合ソフトウェアプログラム)に関する2パラメトリック最小自乗適合式[y=A+((B−A)/(1+((C−x)^D))]を用いて算出された。
【0106】
表2に、全ての物質が固有に炎症伝達物質の産生を阻害したことが示されている。これはIC50値により示され、物質に特異的な生物学的力価を反映するため物質間で変わる。
【0107】
【表4】

【0108】
[実施例2:軟骨の形成と破壊に関与する遺伝子発現に対する物質の影響]
関節軟骨において、同化事象(形成)と異化事象(破壊)との間の微妙なバランスは、細胞外マトリックス(ECM)の肥大および過度の分解をそれぞれ防ぐために維持する必要がある。ECMは、同化過程時に活性化され、発現されるコラーゲン遺伝子、例えば、ヒトコラーゲン1またはアグレカン遺伝子の産物であるコラーゲンおよびプロテオグリカンから形成される。
【0109】
異化事象は、遺伝子、例えば、最終的にコラーゲンおよびプロテオグリカンを破壊するマトリックス金属プロテアーゼ(MMP)類をコードする遺伝子の発現により制御される。MMP類の中で、MMP−1、MMP−3およびMMP−13は、軟骨破壊においてECMを分解する上で主要な役割を有する。
【0110】
軟骨破壊を誘導する天然媒介物の1つであり、骨関節炎軟骨組織およびそれから誘導された細胞において相当量で検出されるIL−1βにより細胞を処理した。IL−1βによる細胞の処理によって、MMP類などの異化事象に関与する遺伝子発現が引き起こされる。また、IL−1βによる細胞の処理によって、コラーゲン発現レベルが(未処理細胞と比較して)減少する。
【0111】
軟骨細胞(SW1353;アメリカンティッシュカルチャーコレクション[ATCC]から購入した)を、ATCCからの取扱説明書に従って細胞培養培地中で増殖させた。実験処理では、細胞を6ウェルプレートに接種し、集密に達するまで2日間培養した。細胞の総RNAを培養細胞から抽出し、リチャード(Richard)ら、Mol.Nutr.Food Res.49、431−442頁、2005年により記載されたように逆転写させた。リチャード(Richard)ら、Mol.Nutr.Food Res.49、431−442頁、2005年により記載されたとおり、異なる遺伝子の発現レベルを、定量的リアルタイムPCRにより判定した。この実験結果を下表2に示す:
【0112】
【表5】

【0113】
化合物は、軟骨の分解に関与する遺伝子(MMP−1、MMP−3およびMMP−13)の発現を劇的に減じたが、一方、化合物は、軟骨形成に関連する幾つかの遺伝子(ヒトコラーゲンI、ヒトコラーゲンII、アグレカン)の発現を刺激した。これらの結果は、示された化合物が軟骨の分解を防止するのみならず、軟骨組織を再生するのに役立っていることを示唆している。
【0114】
[実施例3:軟ゼラチンカプセル]
従来の手法により軟ゼラチンカプセルを調製し、10mgのカルノシン酸12−メチルエーテル(XI)などの所定用量の式Iおよび/または式IIの三環式ジテルペンを提供する。好適な毎日の用量は1個から5個のカプセルである。
他の成分:グリセロール、水、ゼラチン、植物油
【0115】
[実施例4:硬ゼラチンカプセル]
従来の手法により硬ゼラチンカプセルを調製し、20mg用量のカルノシン酸12−メチルエーテル(XI)などの式Iおよび/または式IIの三環式ジテルペンを提供する。好適な毎日の用量は1個から5個のカプセルである。
他の成分:
充填剤:ラクトースまたはセルロースまたはセルロース誘導体、適量
滑剤:必要ならばステアリン酸マグネシウム(0.5%)
【0116】
[実施例5:錠剤]
従来の手法により錠剤を調製し、活性成分として1錠剤当り20mgのカルノシン酸12−メチルエーテル(XI)などの式Iおよび/または式IIの三環式ジテルペン、および賦形剤として微小結晶性セルロース、二酸化シリコーン(SiO)、ステアリン酸マグネシウム、クロスポビドンNF(崩壊剤である)500mgを添加したものを提供する。
【0117】
[実施例6:ソフトドリンク]
カルノシン酸12−メチルエーテル(XI)などの式Iおよび/または式IIの三環式ジテルペンを含有するソフトドリンクは、以下のとおり調製することができる:
ソフトドリンクは、以下の成分から調製される:
【0118】
【表6】

【0119】
果汁濃縮液および水溶性香料を、空気の取込みなしで混合する。着色剤を脱イオン水に溶解する。アスコルビン酸およびクエン酸を水に溶解する。安息香酸ナトリウムを水に溶解する。攪拌しながらペクチンを加え、沸騰させながら溶解する。この溶液を冷却する。オレンジ油および油溶性香料を予め混合する。Fで記載された活性成分を、Aの果汁濃縮液混液中で攪拌する。ソフトドリンクを調製するために、全ての成分A〜Fを一緒に混合してから、Turraxに次いで高圧ホモジナイザー(p=200バール、p=50バール)を用いてホモジナイズする。
【0120】
[実施例7:カルノシン酸12−メチルエーテル(XI)を含んでなるイヌ用乾燥飼料]
市販の乾燥ドッグフード(ヒルズペットニュートリション社(Hill’s Pet Nutrition GmbH)、Liebigstrasse2−20、D−22113により供給されたヒルズサイエンスダイエット(Hill’s Science diet)のイヌ用「Canine Maintenance dry」)に、体重1kg当り4mgから120mgのROPUFA(DSMニュートリショナル・プロダクツ(DSM Nutritional Products)により供給された)の1日用量を対象に投与するのに十分な量で、水性ROPUFAでスプレーする。さらにDSMニュートリショナル・プロダクツAGからのL−アスコルビン酸−モノホスフェート(ROVIMIX(登録商標)STAY−C(登録商標)35)、ビタミンEおよびベータ−カロテンならびにカルノシン酸12−メチルエーテルは、最終フード組成物中に30mgのROVIMIX(登録商標)STAY−C(登録商標)35/kg、300mgのIUビタミンE/kgおよび280mgのベータ−カロテン/kgならびに100mgのカルノシン酸12−メチルエーテルを提供するのに十分な量で組み込んでから混合物全体を押出し成形する。約90重量%の乾燥物質を含有するようにこのフード組成物を乾燥する。
【0121】
[実施例8:セイジョン(VII)を含んでなるウエットキャットフード]
市販のウエットキャットフード(ヒルズペットニュートリション社、Liebigstrasse2−20、D−22113により供給されたヒルズサイエンスダイエットのネコ用「Feline Maintenance wet」)を、4mgから120mgのROPUFA(DSMニュートリショナル・プロダクツにより供給された)の1日用量を対象に投与するのに十分な量で、ROPUFAの水性分散液と混合する。さらにDSMニュートリショナル・プロダクツAGからのL−アスコルビン酸−モノホスフェート(ROVIMIX(登録商標)STAY−C(登録商標)35)、ビタミンEおよびベータ−カロテンならびにセイジョンは、最終フード組成物中に30mgのROVIMIX(登録商標)STAY−C(登録商標)35/kg、300mgのIUビタミンE/kgおよび280mgのベータ−カロテン/kgならびに200mg/kgのセイジョンを提供するのに十分な量で組み込んでから混合物全体を加熱調理する。約90重量%の乾燥物質を含有するようにこのフード組成物を乾燥する。
【0122】
[実施例9:日焼けにより生じた皮膚の炎症の(化粧品)治療のために使用できるカルノシン酸12−メチルエーテル(XI)などの式Iおよび/または式IIの三環式ジテルペンを含んでなる皮膚科用組成物(治療用クリーム剤)の調製]
治療用クリーム剤は、以下の量の以下の成分で調製することができる:
【0123】
【表7】

【0124】
[手法:]
A)部およびB)部を攪拌しながら85℃に加熱する。均質になったら、攪拌しながらA)部にB)部を加える。攪拌しながら約45℃に冷却する。C)部を加える。11000rpmでホモジナイズして小粒径を得る。攪拌しながら周囲温度に冷却する。次いでD)部を加える。
【0125】
[実施例10:O/W日焼け止め乳剤]
【0126】
【表8】

【0127】
[手法:]
A)部およびB)部を攪拌しながら85℃に加熱する。均質になったら、攪拌しながらA)部にB)部を加える。攪拌しながら周囲温度に冷却してC)部を加える。ホモジナイズして小粒径を得る。
【0128】
[実施例11:耐水性日焼け止め乳剤]
【0129】
【表9】

【0130】
[手法:]
A)部およびB)部を攪拌しながら85℃に加熱する。均質になったら、攪拌しながらA)部にB)部を加える。攪拌しながら周囲温度に冷却してC)部を加える。ホモジナイズして小粒径を得る。
【0131】
[実施例12:乳児および小児用日焼け止め乳剤]
【0132】
【表10】

【0133】
手法:A)部およびB)部を攪拌しながら85℃に加熱する。均質になったら、攪拌しながらA)部にB)部を加える。攪拌しながら周囲温度に冷却してからC)部を加える。ホモジナイズして小粒径を得る。
【0134】
[実施例13:高保護性日焼け止め乳剤]
【0135】
【表11】

【0136】
[手法:]
A)部およびB)部を攪拌しながら85℃に加熱する。均質になったら、攪拌しながらA)部にB)部を加える。攪拌しながら周囲温度に冷却してからC)部およびD)部を加える。ホモジナイズして小粒径を得る。
【0137】
[実施例14:無水日焼け止めゲル剤]
【0138】
【表12】

【0139】
[手法:]
A)部およびB)部を攪拌しながら混合する。均質になったら、攪拌しながらC)部およびD)部を加える。
【0140】
[実施例15:日焼け止めゲル剤]
【0141】
【表13】

【0142】
[手法:]
A)部およびB)部を攪拌しながら85℃に加熱する。均質になったら、攪拌しながらA)部にB)部を加える。攪拌しながら周囲温度に冷却してからC)部およびD)部を加える。ホモジナイズして小粒径を得る。
【0143】
[実施例16:高保護のWO日焼け止め乳剤]
【0144】
【表14】

【0145】
[手法:]
A)部、B)部およびC)部を攪拌しながら85℃に加熱する。均質になったら、攪拌しながらA)部にB)部およびC)部を加える。攪拌しながら周囲温度に冷却してD)部およびE)部を加える。ホモジナイズして小粒径を得る。
【0146】
[実施例17:色素を有するW/O乳剤]
【0147】
【表15】

【0148】
[手法:]
A)部、B)部およびC)部を攪拌しながら85℃に加熱する。均質になったら、攪拌しながらA)部にB)部およびC)部を加える。攪拌しながら周囲温度に冷却してからD)部およびE)部を加える。ホモジナイズして小粒径を得る。
【0149】
[実施例18:ビタミンCを有する昼間用保護クリーム剤]
【0150】
【表16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性障害および/または関節障害の治療、共治療または予防用栄養補助食品または医薬品の製造のための、式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの使用であって、
【化1】


式中、Rは、水素またはC1〜6−アルキルであり;
は、ヒドロキシ、C3〜5−アシルオキシ、ヒドロキシメチル、1,3−ジヒドロキシプロピルまたはC1〜6−アルキルであり;
およびRは互いに独立して、水素、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル(−CH−OH)、C1〜5−アシルオキシまたはC1〜6−アルコキシであり;
は、C1〜6−アルキル、ヒドロキシメチル、カルボキシ(COH)またはメトキシカルボニル(COCH)であり;
は水素であるか、またはRとRとが一緒になって二重結合を形成し;
およびRは互いに独立して、C1〜6−アルキル、カルボキシ、x−ヒドロキシ−C−アルキル(xは1から6の整数である)であるか、またはRおよびRの少なくとも1つがC1〜6−アルキルであるという条件でC1〜6−アルコキシカルボニル(−CO(C1〜6−アルキル))であり;
は、水素、ヒドロキシメチル、メトキシ、オキソまたはC1〜5−アシルオキシであり;
10は水素であるか、またはRとR10とが一緒になって−CO−O−、−O−CO−、−CH−O−または−O−CH−であり;
11およびR12は双方とも水素であるか、またはR11とR12とが一緒になってオキソであり;
13は、C1〜6−アルキル、ヒドロキシメチル、カルボキシ(COH)またはメトキシカルボニル(COCH)であるか、またはRとR13とが一緒になって二重結合を形成し、
式Iに関してRがヒドロキシである場合、RがC1〜6−アルキルであるというさらなる条件を有する、
式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの使用。
【請求項2】
前記少なくとも1種の三環式ジテルペンが、式Iおよび/または式IIの化合物であり、式中Rは、水素またはイソプロピルであり;Rは、ヒドロキシまたはイソプロピルであり;RおよびRは互いに独立して、水素、ヒドロキシまたはメトキシであり;Rは、メチル、カルボキシ(COH)またはヒドロキシメチルであり;Rは水素であるか、またはRとRとが一緒になって二重結合を形成し;RおよびRは互いに独立して、メチル、カルボキシ、ヒドロキシメチルであるか、またはRおよびRの少なくとも1つがメチルであるという条件でメトキシカルボニルであり;Rは、水素、オキソまたはメトキシであり;R10は水素であるか、またはRとR10とが一緒になってCO−O−、−O−CO−、−CH−O−または−O−CH−であり;R13は、カルボキシであり、式Iに関してRがヒドロキシである場合、Rはイソプロピルであるというさらなる条件を有する、
請求項1に記載の使用。
【請求項3】
式Iおよび/または式IIの前記少なくとも1種の三環式ジテルペンが、7−オキソデヒドロアビエチン酸、トタロール、ヒドロキシトタロール、トタロール−19−カルボン酸メチルエステル、セイジョン、8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオール、ロイレアン酸、フェルギノール、カルノシン酸12−メチルエーテルおよび/または7−メチルロスマノールである請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
式Iおよび/または式IIの前記少なくとも1種の三環式ジテルペンが、少なくとも30重量%の量で植物抽出物中に含まれる請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記炎症性障害が関節炎である請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
炎症性障害および/または関節障害の治療、共治療または予防のための請求項1〜3のいずれか一項に記載の式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンおよび栄養補助食品として許容できる担体を含んでなる栄養補助食品。
【請求項7】
食品、食物、食物サプリメント、栄養サプリメントまたは食品用もしくは食物用サプリメント組成物である請求項6に記載の栄養補助食品。
【請求項8】
式Iおよび/または式IIの前記少なくとも1種の三環式ジテルペンの量が、1食当り0.01mgから1000mgの範囲、好ましくは2.0mgから300mgの範囲である請求項6または7に記載の栄養補助食品。
【請求項9】
炎症性障害および/または関節障害の治療、共治療または予防のための請求項1〜3のいずれか一項に記載の式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンおよび医薬品として許容できる担体を含んでなる医薬品。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンおよび化粧品として許容できる担体を含んでなる化粧品用または皮膚科用組成物。
【請求項11】
皮膚ケア製剤である請求項10に記載の化粧品用または皮膚科用組成物。
【請求項12】
日焼けおよび/または皮膚荒れの治療、共治療または予防のための請求項10または11に記載の化粧品用または皮膚科用組成物。
【請求項13】
炎症性障害および/または関節障害の治療、共治療または予防用薬剤として使用するための請求項1〜3のいずれか一項に記載の式Iおよび/または式IIの三環式ジテルペン。
【請求項14】
日焼けなどの皮膚の炎症性障害、皮膚荒れまたは光老化などの慢性皮膚炎症の結果などの治療、共治療または予防のための請求項1〜3のいずれか一項に記載の式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの使用。
【請求項15】
軟骨再生または軟骨維持、もしくは関節健康の維持を目的とした、関節における軟骨分解または軟骨損傷の治療、共治療または予防のための請求項1〜3のいずれか一項に記載の式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの使用。
【請求項16】
ヒトを含む動物における炎症性障害および/または関節障害の治療、共治療または予防のための方法であって、請求項1〜3のいずれか一項に記載の式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンの有効量を、それを必要とするヒトを含む動物に投与するステップを含んでなる方法。
【請求項17】
前記炎症性障害が関節炎である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記炎症性障害が、皮膚の炎症、特に日焼けまたは皮膚荒れである請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の式Iおよび/または式IIの少なくとも1種の三環式ジテルペンが、少なくとも30重量%の量で植物抽出物中に含まれる請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−510266(P2010−510266A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537529(P2009−537529)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010071
【国際公開番号】WO2008/061720
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】