説明

炭化加工処理方法

【課題】被処理物質を極めてエネルギー効率よくかつ安定した状態にて炭化加工処理できるようにした炭化加工処理方法を提供する。
【解決手段】水分を含有する物質を炭化装置前段の乾燥炉内に投入して該乾燥炉内を連続的に送りながら加熱乾燥し、加熱乾燥により発生した蒸気を乾燥炉内から排出するとともに乾燥された物質を後段の炭化炉に送り、少なくとも炭化炉内を実質的に無酸素状態に保持し、該炭化炉内にて、非直下火による加熱を処理開始条件として加熱を開始し、炭化炉内が前記乾燥された物質の自己着火温度以上の温度に達したときに加熱を停止して、無酸素状態下での自燃による発熱により炭化炉内を自己着火温度以上の所定の温度範囲内に保持し、その処理条件にて、前記乾燥された物質を連続的に炭化する炭化加工処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の廃材、残渣等の炭化加工処理方法に関し、とくに、前段に乾燥炉、後段に炭化炉を備えた炭化装置を用い、被処理物質をエネルギー効率よく炭化加工処理できるようにした炭化加工処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機廃棄物を、複数の密閉室内を順次移動させ、加熱手段を用いて有機廃棄物を加熱することにより、有機廃棄物に含まれる成分を熱分解させて炭素化させるようにした廃棄物処理装置が知られている(特許文献1)。この特許文献1には、より具体的な形態として、第1の加熱手段を備え有機廃棄物を加熱乾燥させるための第1の密閉室と、第2の加熱手段を備え有機廃棄物を加熱して炭素化させるための第2の密閉室とを有する装置構成が記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載の廃棄物処理装置では、有機廃棄物を基本的に焼却ではなく無酸素密閉雰囲気下で炭化させるので、有害ガスの発生を抑制し、発生した有害ガスも回収可能とすることができる等の利点を有している。
【特許文献1】特開2001−300497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に記載の廃棄物処理装置においては、処理に際して、第1の密閉室の加熱手段と第2の密閉室の加熱手段をともに常時使用するので、炭素化までに多量のエネルギーを必要とし、処理コストが極めて高くなる。とくに、高温を必要とする炭素化のための第2の密閉室の加熱手段に多量のエネルギーを使用しているので、処理コストが極めて高い。
【0005】
また、廃棄物処理装置に投入する被処理物質の性状には全く着目していないので、処理が安定しないおそれがある。さらに、被処理物質の性状がばらついたり変動したりするので、とくに炭素化のための第2の密閉室の加熱手段に使用する加熱エネルギーを、常時高目のエネルギーに設定せざるを得ず、その結果、実際には不要なエネルギーを消費することとなっており、この面からも処理コストが高くなっている。
【0006】
そこで本発明の課題は、上記のような従来技術における問題点に着目し、被処理物質を極めてエネルギー効率よくかつ安定した状態にて炭化加工処理できるようにした炭化加工処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る炭化加工処理方法は、水分を含有する物質を炭化装置前段の乾燥炉内に投入して該乾燥炉内を連続的に送りながら加熱乾燥し、加熱乾燥により発生した蒸気を乾燥炉内から排出するとともに乾燥された物質を後段の炭化炉に送り、少なくとも該炭化炉内を実質的に無酸素状態に保持し、該炭化炉内にて、非直下火による加熱を処理開始条件として加熱を開始し、炭化炉内が前記乾燥された物質の自己着火温度以上の温度に達したときに加熱を停止して、無酸素状態下での前記乾燥された物質の自燃による発熱により炭化炉内を前記自己着火温度以上の所定の温度範囲内に保持し、その処理条件にて、前記乾燥された物質を連続的に熱処理し炭化することを特徴とする方法からなる。
【0008】
本発明者は、とくに、無酸素状態下の炭化炉内が被処理物質の自己着火温度以上に維持されれば、乾燥炉内で先に乾燥され炭化炉内へと送られてきた被処理物質が自燃(外部加熱を行うことなく自ら燃焼できること、但し、無酸素状態下であるから通常の燃焼ではなく、熱分解となる)できるとの新たな知見に基づき、本発明を完成したものである。すなわち、無酸素状態下の炭化炉内にて、非直下火による加熱を処理開始条件として加熱を開始し、したがって炭化炉内における処理の開始時から直下火による通常の燃焼を行わせることなく、乾燥された物質の自燃が可能な自己着火温度以上の温度まで到達させ、加熱を停止して(自動、手動のいずれでもよい)、その時点から自燃を継続させる。そして、自燃による発熱を利用することにより、場合によっては冷却を付加することにより、炭化炉内がその自己着火温度以上の所定の温度範囲内に保持されることになる。乾燥された被処理物質の無酸素状態下での自燃が継続されることにより、該被処理物質が連続的に所定の温度で熱処理され、ある時間熱処理されることで熱分解され、連続的に炭化される。ある時間炭化炉内で移動され炭化炉内に停留され、連続的に炭化された処理物質は、炭化物質として連続的に取り出し可能となる。このような本発明に係る炭化加工処理方法では、とくに炭化炉において自己着火温度以上の温度に達した後には、加熱手段による外部加熱が不要となることから、従来手法に比べ、大幅なエネルギー節減が可能になり、処理コストが大幅に低減される。
【0009】
この本発明に係る炭化加工処理方法においては、乾燥炉内に投入する物質の含水率を、所定の範囲内に調節することが好ましい。この調節は、もちろん被処理物質自身の性状を調節することによっても可能であるが、例えば、被処理物質の投入前または投入時に、複数の被処理物質の混合により含水率を所定の範囲内に調節することができる。後者の方法によれば、単に適当な被処理物質同士をあるおおまかな所定の割合で混合するだけで、処理に適した所定の含水率の範囲内に調節することができ、含水率の調節が実質的に加熱エネルギーを消費することなく極めて容易に行われ得る。含水率を所定の範囲内に調節することにより、乾燥炉内における加熱乾燥に使用する熱エネルギーと炭化炉内を自己着火温度以上の所定の温度範囲内に到達させるための炭化加工処理開始用の熱エネルギーとの合計を適切に低減でき、該合計エネルギーを最小化することも可能となって、処理コストの一層の低減が可能になる。また、含水率を所定の範囲内に調節することにより、乾燥炉に投入される被処理物質の性状が安定して所望の範囲内に制御されることになるので、乾燥炉内における加熱乾燥処理、引き続いて行われる炭化炉内における炭化加工処理を、ともに安定した連続処理とすることが可能になる。その結果、実質的に24時間稼働にて安定した連続処理を行うことが可能になる。
【0010】
本発明に係る炭化加工処理方法においては、前述したように、炭化炉内を上記乾燥された物質の自己着火温度以上の所定の温度範囲内に保持するために、上記乾燥された物質の自燃による発熱に加え、必要に応じて冷却を行うことも可能である。すなわち、炭化炉内における炭化加工処理のためには、一般に被処理物質に応じて最適な温度範囲があるため、炭化炉内がこの最適な温度範囲よりも高温になった場合には、それに応じて冷却を付加すればよいことになる。
【0011】
また、本発明に係る炭化加工処理方法においては、乾燥炉内から排出される蒸気には多量の水分が含有されることになるが、この乾燥炉内から排出された蒸気を二次燃焼させることが好ましい。二次燃焼により、回収可能な有効成分の回収が可能になるとともに、排出蒸気中に含まれる可能性のある有害成分や臭いを発する成分の無毒化や消臭化が可能となる。
【0012】
この二次燃焼のために、炭化炉内で発生した乾留ガスを導入することができ、高カロリーの乾留ガスを有効利用することができる。また、二次燃焼で生じた熱エネルギーは、乾燥炉における加熱乾燥のための熱エネルギーとして回収、再利用可能である。
【0013】
さらに、二次燃焼されたガスに対し水分を噴霧してエマルジョン燃焼させることもできる。高温の可燃性ガスや油の中に、均一に分散させたミクロの水滴を混合すると、熱伝達により水滴が瞬間的に数千倍に急膨張する。このとき、水滴を取り巻くガスや油滴も微細化され、空気との混合が良くなって、ガスや油が完全燃焼されるようになる。このような燃焼形態をエマルジョン燃焼と呼ぶが、このエマルジョン燃焼を上記二次燃焼されたガスに対して適用することにより、より好ましい状態に無毒化や消臭化されたガスとすることが可能になり、実質的にそのまま大気放出可能な状態とされる。エマルジョン燃焼では、燃焼時にガスや油分が超微粒化し、空気との接触面積が増大して完全燃焼するため、未燃物の発生が大幅に減少し、煤煙が著しく低減することになる。また、エマルジョン燃焼においては、微爆作用による二次微粒化により粒子が超微粒化するため、低O2 燃焼運転ができ、かつ完全燃焼に近づくため、排ガス中の煤煙量だけでなく、NOx、SOxの大幅な削減が実現できる。
【0014】
また、本発明に係る炭化加工処理方法においては、乾燥炉内から排出された蒸気から気散水を抽出することも可能である。本発明においては、乾燥炉内と炭化炉内は実質的に連通しており、気散水とは、炭化する物質の初期の段階で出てくる煙を冷却した液体であり、例えば被処理物質が木材チップの場合だと、木材重量の約25%の炭ができ、その炭の重さの約25〜30%の気散水が採取される。この気散水は、粗木酢液とも呼ばれ、木酢液や木タール分(軽油分等を含む)などを含有している。したがって、抽出された気散水を、例えば1ヶ月以上の期間、放冷により冷却すれば、比重の差によって、木酢液や木タール分などに分離させることが可能である。木酢液は、アルコール類やフェノール類など200種類を越える成分が含まれており、消臭剤、し尿処理剤、医薬用、動物飼料添加剤、農林業などに広く使われている。木タールは、炭化水素(リグニン)の熱分解液で、気散水を1ヶ月以上放置したときに出てくる沈殿物であり、殺菌力が強いので、防腐剤などに利用される他、そのまま燃料として使ったり、蒸留装置で水分と油分に分離すると軽油、重油室、ピッチに分けることができる。
【0015】
上記炭化炉で炭化された物質は、連続的に排出されることが好ましく、必要に応じて、排出された物質は冷却されればよい。冷却により、炭化物質の温度は自己着火温度以下に低下され、容易に取り扱うことができるようになる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明に係る炭化加工処理方法によれば、被処理物質を極めてエネルギー効率よくかつ安定した状態にて炭化処理でき、低コストで所望の連続的な炭化加工処理を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る炭化加工処理方法のプロセスを示すブロック図である。本発明に係る炭化加工処理方法においては、被処理物質としては、水分を含有する物質であり、炭化可能な物質であれば、実質的にあらゆる物質、とくに従来焼却や埋設に付されていたあらゆる有機廃棄物が処理対象となる。例えば図1に示すように、各種廃材2や廃プラスチック3、医療用廃物4、また、木材チップ5やおが屑6、家畜糞(含水率小)7、さらには、食品残渣物8や家畜糞(含水率大)9、汚泥10(とくに、濃縮・脱水後の汚泥)などの被処理物質1が処理対象となる。
【0018】
本発明においては、炭化加工処理前に加熱乾燥処理を行うが、両処理の効率(例えば、エネルギー効率)を考慮すると、処理前の被処理物質1が好ましい含水率の範囲内(例えば、20%以下、とくに10〜20%)に調整されていることが望ましい。また、内部まで所望の状態に炭化させるために、被処理物質1は小サイズの細片あるいは粒状物であることが好ましい。したがって、例えば、含水率は比較的低いが比較的サイズの大きい各種廃材2や廃プラスチック3、医療用廃物4等については、破砕機11で破砕した後、定量供給機12により炭化装置13に投入することが好ましい。また、比較的サイズは小さいが含水率の高低に大きな差がある被処理物質同士は、混合機14で混合することにより、処理に適した含水率の被処理物質として調製することができる。さらに、比較的多量の水分を含有している被処理物質に対しては、例えば、還元乾燥機を用いた、いわゆる超脱水システム15を適用することも可能である。このような投入前の前処理としていずれの方法を採用するかは、例えば対象となる被処理物質を事前に検査し、その結果に応じて決定すればよい。
【0019】
水分を含有する被処理物質1が炭化装置13に投入される。炭化装置13の構造としては、とくに限定しないが、例えば、連続投入、内部連続送り、処理物質連続排出型のキルンタイプの装置を用いることが好ましい。そして、炭化装置13内、とくに炭化炉内は、実質的に無酸素状態に保持される。被処理物質1は、まず、炭化装置13内の前段に配置された乾燥炉16内に投入され、乾燥炉16内を連続的に送られながら加熱乾燥処理される。この乾燥工程における加熱乾燥処理には、直下火を当てない加熱手段、例えば乾燥炉16を外部から加熱するバーナー17(灯油や重油、ガスなどを燃料とするバーナー)が用いられる。加熱乾燥処理により、被処理物質は所望の含水率へと加熱乾燥される。加熱温度としては、被処理物質の種類にもよるが、例えば500℃程度に設定される。加熱乾燥により、多量の水分を含有する蒸気が発生し、発生した蒸気は、専用蒸気煙道18を介して乾燥炉16外に排出される。
【0020】
乾燥炉16内で乾燥された被処理物質は、続いて連続的に、炭化装置13内の後段に配置された炭化炉19に送られ、炭化炉19内での熱処理により炭化される。この炭化加工処理においては、炭化炉19内が実質的に無酸素状態に保持され、まず処理開始条件として、炭化炉19内が乾燥された被処理物質の自己着火温度以上の温度(例えば、500℃程度)になるように、非直下火により加熱される。この加熱には、例えば炭化炉19を外部から加熱するバーナー20(灯油や重油、ガスなどを燃料とするバーナー)が用いられる。炭化炉19内が乾燥された被処理物質の自己着火温度以上の温度に達すると、炭化炉19内の被処理物質は、自燃し始めるので、バーナー20による加熱は停止(例えば、自動停止)される。この無酸素状態での乾燥された被処理物質の自燃による発熱により、炭化炉19内が被処理物質の自己着火温度以上の所定の温度範囲内(例えば、500℃〜800℃)に保たれ、その処理条件にて、乾燥された被処理物質が炭化炉19内を下流側に送られながら連続的に熱処理され炭化される。自燃による発熱によって炭化炉19内が所定の温度範囲を越える場合には、必要に応じて、炭化加工処理がより円滑に行われるように、適当な冷却手段(例えば、水冷ジャケットによる水冷等。図示略)を用いて冷却を付加するようにしてもよい。乾燥された被処理物質の自燃により炭化炉19内を所望の炭化加工処理に必要な温度に保持できるので、連続的な炭化加工処理中には、外部からの熱エネルギーの供給が不要となり(バーナー20における燃料消費が無くなり)、極めて優れたエネルギー効率をもって、低コストでの処理の実現が可能になる。
【0021】
炭化加工処理が終了した処理物質は、炭化炉19から連続的に排出され、コンベア等を介して、例えば冷却ミキサー21に送られ、そこで上記自己着火温度以下に冷却されるとともに、必要に応じて処理物質の粒度調整が行われる。この炭化加工処理された処理物質は、いわゆる炭化物(炭)となり、投入された被処理物質の種類に応じて、有機炭化物22(例えば、窒素や燐酸、カリ等を含有する有機炭化物)や、無機炭化物23等の回収可能な処理物質となる。回収された炭化物は、各種用途に使用可能であり、使用可能な用途として、例えば、住宅床調湿材、複合型土壌改良剤、河川浄化材、脱臭材、活性炭代用品、飲料水処理材、生鮮食品鮮度保持材、酸化抑制材、熱源材料、肥料素材、最終処分地覆土材などが挙げられる。
【0022】
上記専用蒸気煙道18を介して乾燥炉16外に排出された蒸気からは、前述の如く、気散水24を抽出することが可能である。この気散水24は、例えば、1ヶ月以上の冷却放置により、前述の如き木酢液や木タール分などの分離物質25に分離することが可能である。
【0023】
また、乾燥炉16内から排出された蒸気は、例えば消臭・無害化燃焼装置26を用いた二次燃焼に供することができる。この消臭・無害化燃焼装置26による二次燃焼では、例えば850℃〜1000℃の温度にてダイオキシンや臭気を除去する。また、この二次燃焼には、炭化炉19内で発生した高カロリーの乾留ガス27を導入することが可能であり、乾留ガス27は、例えばブロワ28を用いて送風すればよい。このとき、ブロワ28を用いて、乾留ガス27を燃焼させるための空気を導入することもできる。さらに、上記二次燃焼で発生したガス29は、上記乾燥炉16の加熱用の熱エネルギーとして再利用することも可能である。また、前述の混合機14や還元乾燥機15に使用する熱エネルギーまたはその熱エネルギーの一部として再利用することも可能である。
【0024】
上記二次燃焼で発生したガスの大半あるいは全部は、例えば三次燃焼装置30を用いたエマルジョン燃焼に供することができる。このエマルジョン燃焼では、前述したように、二次燃焼されたガスに対し水分を噴霧することにより、ガスや油分を微細化させて空気との混合を良くし、ガスや油分を完全燃焼させることが可能になる、また、このエマルジョン燃焼は、比較的低温で行うことが可能である。したがって、エマルジョン燃焼後のガスは、低温の浄化無害化されたガスとなり得る。無害化されたガスは、煙や臭いのない状態で、排気31として例えば大気中に排出可能となる。つまり、無害の水蒸気や酸素、窒素、炭酸ガス等として排出される。
【0025】
このように、上記のようなプロセスでは、例えば以下のような顕著な作用効果が得られる。
1)被処理物質を連続投入ができ、炭化加工処理まで含めて24時間フル稼働できるので、タイムロスがない。
2)処理物質の粒度調整が可能なので出炭物の形状が安定している。
3)被処理物質同士の混合方式を採用することにより、高含水率の対象物(汚泥など)にも対応できる。
4)バーナーの燃料には、灯油やA重油、LPガス等が利用でき、排気ガス対策にも対応できる。
5)炭化炉内が所定の温度(500℃程度)になると、中の物質が噴煙となって自燃し温度を安定させるため、外部燃料が不要になり、ランニングコストを大幅に低く抑えることができる。
6)炭化炉内から発生する乾留ガスを二次燃焼させ、再生エネルギーとして活用しているので、エネルギー効率が極めて高い。
7)実質的に投入始動直後から500℃程度の定温を保つことができ、炭化炉内部を物質が踊るように行ったり来たりしながら約40分間で還元熱分解させることができる。このことにより、品質にバラつきのない炭を安定して生成することができる。
8)処理対象物を連続投入しているときでも、処理対象物の素材が蓋の役割を果たし、炭化炉内を無酸素雰囲気に保つことができる。
9)炭化炉に直接火力が当たらないように工夫(乾熱方式)しているので、装置の材質の酸化を遅らせて劣化のスピードを抑えることができる。
10)処理対象物をそれ程精度よく分別する必要がない。
11)全体として極めて低コストで所望の炭化加工処理を実施できる。
【0026】
上記のような優れた効果が得られる炭化装置13は、例えば図2〜図4に示すような装置構成によって具体化できる。ただし、装置構成に関しては、以下に示す構成に限定されるものではない。
【0027】
図2に示すように、炭化装置13は、前段の乾燥炉16が上側に、後段の炭化炉19が下側に配置された上下二段炉構成の装置に構成されている。乾燥炉16内には被処理物質を連続的に移送可能なスクリュー41が、炭化炉19内には乾燥された被処理物質を連続的に移送可能なスクリュー42が、それぞれ設けられており、乾燥炉16外と炭化炉19外には、非直下火加熱が可能なバーナー17、20が、それぞれ設けられている。原料としての被処理物質は乾燥炉16の入口側に設けられたホッパー43に投入され、そこから乾燥炉16内に連続的に投入される。炭化炉19で連続的に炭化された処理物質(炭)は、炭化炉19の出口から連続的に排出される。また、図3に示すように、乾燥炉16内からの乾留ガス27は、二次燃焼や乾燥炉16の加熱に利用される。炭化装置13は、平面的に見ると、例えば図4に示すように構成される。乾燥炉16の入口に誓い部位から専用蒸気煙道18が延設され、炭化炉19からの乾留ガスを導くガス抜きパイプ44が、二次燃焼用バーナー45を備えた二次燃焼装置26(前述の消臭・無害化燃焼装置26)の入口部まで延設され、乾留ガスの熱エネルギーを利用した二次燃焼が行われるようになっている。この二次燃焼装置26の上方にはエマルジョン燃焼を行う三次燃焼装置30が設けられ、三次燃焼装置30には、水分を噴霧可能なスプレースクラバ46が付設されている。エマルジョン燃焼された排ガスは、排ガスダクト47を介して排出される。48は、制御盤を示しており、装置各部の設定、自動制御を行うことができるようになっている。このように構成された炭化装置13を用いることにより、前述の図1を用いて説明した本発明に係る炭化加工処理方法を、現実に、効率よく実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る炭化加工処理方法は、炭化加工処理が可能なあらゆる廃物の処理に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施態様に係る炭化加工処理方法のプロセスを示すブロック図である。
【図2】図1の炭化加工処理方法の実施に用いる炭化装置の一例を示す概略縦断面図である。
【図3】図2の装置の別の角度から見た概略縦断面図である。
【図4】図2の装置の概略平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 被処理物質
2 廃材
3 廃プラスチック
4 医療用廃物
5 木材チップ
6 おが屑
7 家畜糞(含水率小)
8 食品残渣物
9 家畜糞(含水率大)
10 汚泥
11 破砕機
12 定量供給機
13 炭化装置
14 混合機
15 還元乾燥機(超脱水システム)
16 乾燥炉
17 バーナー
18 専用蒸気煙道
19 炭化炉
20 バーナー
21 冷却ミキサー
22 有機炭化物
23 無機炭化物
24 気散水
25 分離物質
26 消臭・無害化燃焼装置(二次燃焼装置)
27 乾留ガス
28 ブロワ
29 二次燃焼で発生したガス
30 エマルジョン燃焼を行う三次燃焼装置
31 排気
41、42 スクリュー
43 ホッパー
44 ガス抜きパイプ
45 二次燃焼用バーナー
46 スプレースクラバ
47 排ガスダクト
48 制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含有する物質を炭化装置前段の乾燥炉内に投入して該乾燥炉内を連続的に送りながら加熱乾燥し、加熱乾燥により発生した蒸気を乾燥炉内から排出するとともに乾燥された物質を後段の炭化炉に送り、少なくとも該炭化炉内を実質的に無酸素状態に保持し、該炭化炉内にて、非直下火による加熱を処理開始条件として加熱を開始し、炭化炉内が前記乾燥された物質の自己着火温度以上の温度に達したときに加熱を停止して、無酸素状態下での前記乾燥された物質の自燃による発熱により炭化炉内を前記自己着火温度以上の所定の温度範囲内に保持し、その処理条件にて、前記乾燥された物質を連続的に熱処理し炭化することを特徴とする炭化加工処理方法。
【請求項2】
乾燥炉内に投入する物質の含水率を、投入前または投入時に、複数の被処理物質の混合により所定の範囲内に調節する、請求項1に記載の炭化加工処理方法。
【請求項3】
炭化炉内を前記乾燥された物質の自己着火温度以上の所定の温度範囲内に保持するために、前記乾燥された物質の自燃による発熱に加え、冷却を行う、請求項1または2に記載の炭化加工処理方法。
【請求項4】
乾燥炉内から排出された蒸気を二次燃焼させる、請求項1〜3のいずれかに記載の炭化加工処理方法。
【請求項5】
前記二次燃焼に、炭化炉内で発生した乾留ガスを導入する、請求項4に記載の炭化加工処理方法。
【請求項6】
二次燃焼されたガスに対し水分を噴霧してエマルジョン燃焼させる、請求項4または5に記載の炭化加工処理方法。
【請求項7】
乾燥炉内から排出された蒸気から気散水を抽出する、請求項1〜6のいずれかに記載の炭化加工処理方法。
【請求項8】
炭化炉で炭化された物質を連続的に排出するとともに、排出された物質を冷却する、請求項1〜7のいずれかに記載の炭化加工処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−19156(P2009−19156A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184136(P2007−184136)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(300071731)株式会社ヴィクトリー (8)
【Fターム(参考)】