説明

炭化装置及び炭化方法

【課題】簡易な構造により炭化炉から乾留ガスが漏れ出るのを防止できる炭化装置を提供すること。
【解決手段】炭化装置は、混合物が供給される炭化炉21と、炭化炉21を貫通する搬送軸26と、炭化炉21に設けられ、搬送軸26を回転可能に支持する軸受部24と、を備え、炭化炉21の炉体22の内部で混合物を搬送しながらこの混合物を炭化する。軸受部24には、炭化炉21の外部からシールガスが供給されるチャンバ245が設けられ、このチャンバ245には、その内部と炉体22の内部とを連通する隙間部247が設けられる。炭化炉21には、チャンバ245の内部にシールガスを供給しこのチャンバ245の内部を炉体22の内部よりも高圧にした際に、隙間部247を介して炉体22の内部に導入されたシールガスを炉体22の外部に排出する乾留ガス排出部が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化装置及び炭化方法に関する。詳しくは、車体の塗装工程などで廃棄物として排出された塗料滓や排水汚泥などの混合物を炭化する炭化装置及び炭化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体工場からは排水汚泥などの廃棄物が排出され、また車体の塗装工程では、塗料滓、及び化成スラッジなどの廃棄物が排出される。近年では、このように塗装工程などで排出された廃棄物は、再処理工程を経た後、例えば自動車部品などの材料として再利用されている。
【0003】
廃棄物の再処理工程は、破砕した塗料滓と排水汚泥や化成スラッジとを混合し塗滓混合物を生成する前処理工程と、生成した塗滓混合物を炭化し炭化物を生成する炭化工程と、生成した炭化物を微粉砕する微粉化工程と、を含んで構成される。
【0004】
炭化工程に用いられる炭化装置としては、例えば、過熱蒸気式のものが知られている。この過熱蒸気式の炭化装置は、塗滓混合物が供給される炭化炉と、この炭化炉の内部を貫通して設けられた搬送軸とを含んで構成され、搬送軸を回転し炭化炉の内部で塗滓混合物を搬送しながら、この炭化炉の内部に過熱蒸気を供給することにより、塗滓混合物を炭化させる。
【0005】
ところでこのような炭化装置において、炭化炉の内部は基本的には密閉されているものの、搬送軸とこの搬送軸の両端側を支持する軸受部との間には、僅かながら隙間が形成される。炭化炉の内部に充満した乾留ガスが炭化炉の外部に漏れ出てしまうと作業環境が悪化するおそれがあるため、このような隙間から炭化炉の内部のガスが漏れ出るのを防止する必要がある。
【0006】
例えば、特許文献1や特許文献2には、上述のような隙間を含む空間に炉外からガスを供給することにより、この隙間を介して炉内からガスが漏れ出るのを防止する技術が提案されている。特に特許文献2に示された技術では、複数のパッキンで区画形成された加圧室を設けた上で、この加圧室内にガスを供給することにより、炉内からガスが漏れ出るのを効果的に防止している。
【特許文献1】特許第3426638号公報
【特許文献2】実公平6−36477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のようなガスの漏出を防止する技術を、炭化炉の搬送軸の軸受部に応用した場合、多くのパッキン等のシール部材が必要となり、構造が複雑になるおそれがある。また、シール部材が劣化した場合には、炉内のガスが漏れ出てしまうおそれもある。
【0008】
本発明は、簡易な構造により炭化炉から乾留ガスが漏れ出るのを防止できる炭化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の炭化装置(例えば、後述の炭化装置20)は、混合物(例えば、後述の塗滓混合物)が供給される炭化炉(例えば、後述の炭化炉21及びその炉体22)と、前記炭化炉を貫通し、当該炭化炉の内部で混合物を搬送する搬送軸(例えば、後述の搬送軸26)と、前記炭化炉に設けられ、前記搬送軸を回転可能に支持する軸受部(例えば、後述の軸受部24,25)と、を備え、前記炭化炉の内部で混合物を搬送しながら当該混合物を炭化する。前記軸受部には、前記炭化炉の外部からシールガス(例えば、後述のボイラ31で発生した飽和蒸気)が供給されるチャンバ(例えば、後述のチャンバ245)が設けられ、前記チャンバには、当該チャンバの内部と前記炭化炉の内部とを連通する隙間部(例えば、後述の隙間部247)が設けられ、前記炭化炉には、前記チャンバの内部にシールガスを供給し当該チャンバの内部を前記炭化炉の内部よりも高圧にした際に、前記隙間部を介して前記炭化炉の内部に導入されたシールガスを当該炭化炉の外部に排出する排出部(例えば、後述の乾留ガス排出部222)が設けられる。
【0010】
この発明によれば、搬送軸を支持する軸受部にチャンバを設け、さらにこのチャンバに、その内部と炭化炉の内部とを連通する隙間部を設けた。
ここで、炭化炉の外部からチャンバの内部にシールガスを供給し、チャンバの内部を炭化炉の内部よりも高圧にすると、チャンバの内部側から炭化炉の内部側へ向けて隙間部を介してシールガスが流通する。これにより、炭化炉の内部において混合物を炭化する際に発生した乾留ガスが、隙間部を介して炭化炉の外部に漏れ出るのを防止することができる。
また、この発明によれば、炭化炉の内部に導入されたシールガスは、炭化炉に設けた排出部を介して炭化炉の外部に排出される。これにより、チャンバの内部を炭化炉の内部よりも高圧に維持し続けて、乾留ガスが炭化炉の外部に漏れ出るのを防止することができる。
【0011】
この場合、前記チャンバには、前記搬送軸が挿通する挿通孔(例えば、後述の挿通孔246)が形成され、前記隙間部は、前記搬送軸の外周面と前記挿通孔の内周面との間に均一に形成された隙間であり、前記チャンバの容積は、前記隙間部に対し十分に大きいことが好ましい。より具体的には、前記チャンバの容積は、当該チャンバの内部の圧力が均一になるように、前記隙間部に対し十分に大きいことが好ましい。
【0012】
この発明によれば、搬送軸の外周面と搬送軸が挿通する挿通孔の内周面との間に均一な隙間を形成し、これを隙間部とする。すなわち、チャンバの内部に供給されたシールガスは、搬送軸の外周面に均一に形成された隙間部を介して炭化炉の内部に流入する。特にここで、上述のように隙間部を均一に形成することにより、隙間部におけるシールガスの偏流を防止し、シールガスによるシール力を向上することができる。
また、チャンバの内部の圧力が均一になるように、チャンバの容積を隙間部に対して十分に大きくすることにより、搬送軸と挿通孔との間の隙間の全周に均一に圧力が加えることができる。これにより、隙間部におけるシールガスの偏流をさらに防止することができる。
【0013】
本発明の炭化方法は、混合物(例えば、後述の塗滓混合物)が供給される炭化炉(例えば、後述の炭化炉21)と、前記炭化炉を貫通し、当該炭化炉の内部で混合物を搬送する搬送軸(例えば、後述の搬送軸26)と、前記炭化炉に設けられ、前記搬送軸を回転可能に支持する軸受部(例えば、後述の軸受部24,25)と、を備えた炭化装置(例えば、後述の炭化装置20)を用い、前記炭化炉の内部で混合物を搬送しながら当該混合物を炭化する。前記軸受部には、前記炭化炉の外部からシールガスが供給されるチャンバ(例えば、後述のチャンバ245)が設けられ、前記チャンバには、当該チャンバの内部と前記炭化炉の内部とを連通する隙間部(例えば、後述の隙間部247)が設けられる。前記炭化方法は、前記炭化炉の内部の混合物を炭化する際には、前記チャンバの内部にシールガスを供給し当該チャンバの内部を前記炭化炉の内部よりも高圧にし、前記隙間部を介して前記チャンバの内部から前記炭化炉の内部にシールガスを導入するとともに、前記炭化炉に設けられた排出部を介して当該炭化炉の内部のシールガスを外部に排出する。
【0014】
この炭化方法は、上述の炭化装置を方法の発明として展開したものであり、上述の炭化装置と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の炭化装置によれば、炭化炉の外部からチャンバの内部にシールガスを供給し、チャンバの内部を炭化炉の内部よりも高圧にすると、チャンバの内部側から炭化炉の内部側へ向けて隙間部を介してシールガスが流通する。これにより、炭化炉の内部において混合物を炭化する際に発生した乾留ガスが、隙間部を介して炭化炉の外部に漏れ出るのを防止することができる。また、炭化炉の内部に導入されたシールガスは、炭化炉に設けた排出部を介して炭化炉の外部に排出される。これにより、チャンバの内部を炭化炉の内部よりも高圧に維持し続けて、乾留ガスが炭化炉の外部に漏れ出るのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る炭化装置を用いた再処理システムRSの構成を示すブロック図である。
再処理システムRSは、前処理工程を行う破砕機S1、混合機S2と、炭化工程を行う予備乾燥機S3、炭化システムS4、及び冷却装置S5と、微粉化工程を行う磁気選機S6、ミルS7、及びふるいS8と、を含んで構成される。再処理システムRSは、例えば車体工場から発生した排水汚泥や、車体を塗装する工程で発生した塗料滓及び化成スラッジ等の廃棄物を装置S1〜S8により再処理し、防振材などの材料となる炭化物を生成する。
【0017】
前処理工程では、先ず、コンテナなどに貯蔵しておいた塗料滓を、破砕機S1により所要の大きさに破砕する。次に、破砕された塗料滓と、排水汚泥及び化成スラッジとを混合機S2により所定の混合比率で混合し、塗滓混合物を生成する。以下では、この塗滓混合物を単に混合物という。
【0018】
炭化工程では、先ず、水分を多く含んだ混合物を予備乾燥機S3により予備乾燥する。次に、予備乾燥した混合物を炭化システムS4により炭化し、炭化物を生成する。次に、生成した炭化物を冷却装置S5により冷却する。
【0019】
微粉化工程では、先ず、磁気選機S6を用いて、生成された炭化物から鉄分を除去する。次に、この炭化物をミルS7により微粉化する。さらに、微粉化した炭化物をふるいS8にかけ、生成された炭化物を分級する。以上のようにして生成された炭化物は、例えば、防振材に配合されている炭化カルシウムの代替材料として出荷される。
【0020】
図2は、炭化システムS4の構成を示す模式図である。
炭化システムS4は、乾燥装置10及び炭化装置20と、過熱蒸気を発生する過熱蒸気発生ユニット30とを含んで構成される。この炭化システムS4は、過熱蒸気発生ユニット30により発生させた過熱蒸気を用いて混合物を炭化し、炭化物を生成する所謂過熱蒸気式のものである。なお図2では、混合物及びこの混合物から生成される炭化物の流れの方向を白抜き矢印で示す。
【0021】
過熱蒸気発生ユニット30は、飽和蒸気を発生するボイラ31と、バーナ33が設けられたヒータ32と、を含んで構成される。
【0022】
ヒータ32には、配管44を介してボイラ31で発生した飽和蒸気と、配管46を介して乾燥装置10及び炭化装置20から排出された排ガスと、が導入される。
ヒータ32は、配管44を介して導入された飽和蒸気を、バーナ33によりLPG等の可燃性ガスを燃焼させている雰囲気下でさらに加熱し、過熱蒸気を発生する。これと同時に、ヒータ32は、配管46を介して導入された排ガスを、バーナ33で可燃性ガスとともに燃焼し、この排ガスを脱臭及び昇温する。ヒータ32で発生した過熱蒸気は、配管45を介して炭化装置20に供給される。また、ヒータ32で脱臭及び昇温した排ガスは、加熱ガスとして配管47を介して炭化装置20に供給される。
【0023】
また、配管44には、炭化装置20の後述の軸受部24,25に至る配管48が分岐して設けられている。これにより、ボイラ31で発生した飽和蒸気の一部は、シールガスとしてこれら軸受部24,25に供給される。
【0024】
乾燥装置10は、混合物が供給される乾燥炉11と、乾燥炉11を貫通し、この乾燥炉11の内部で混合物を搬送する搬送軸16とを備え、乾燥炉11の内部で混合物を搬送しながら、この混合物を乾燥する。
【0025】
乾燥炉11は、円筒状の炉体12と、この炉体12の外周を覆う外周部13と、搬送軸16を両端側から回転可能に支持する軸受部14,15と、を含んで構成される。
炉体12の内部のうち軸受部14側には、上述の予備乾燥された混合物が図示しない供給管を介して供給される。
【0026】
外周部13は、ジャケット構造、すなわち2重構造になっており、その内部を高温の加熱ガスが流通する。この外周部13には、炭化装置20から排出された加熱ガスが配管41を介して導入される。これにより、炉体12及びその内部は所定の温度に加熱される。また、外周部13の内部を流通し、炉体12の加熱に供された加熱ガスは、配管42を介して外部に排出される。
【0027】
搬送軸16は、乾燥炉11の両端に亘って延びる軸本体17と、この軸本体17の外周に設けられたスクリュー羽根18と、を含んで構成されたスクリューコンベヤである。また、この搬送軸16の軸受部14側の端部はモータ19に接続されている。
【0028】
ここで、モータ19を駆動し搬送軸16を回転すると、炉体12の内部の軸受部14側に供給された混合物は、炉体12の内部でスクリュー羽根18により攪拌されながら軸受部15側へ搬送される。混合物は、この搬送される過程において次第に乾燥する。また、混合物が乾燥する過程において炉体12の内部に発生したガスは、排ガスとして配管46を介して過熱蒸気発生ユニット30に回収され、上述の手順により脱臭される。以上のようにして炉体12内で乾燥した混合物は、図示しないフィーダを介して炭化装置20に供給される。
【0029】
炭化装置20は、混合物が供給される炭化炉21と、炭化炉21を貫通し、この炭化炉21の内部で混合物を搬送する搬送軸26とを備える。炭化装置20は、炭化炉21の内部で混合物を搬送しながら、この混合物を炭化する。
【0030】
炭化炉21は、円筒状の炉体22と、この炉体22の外周を覆う外周部23と、搬送軸26を両端側から回転可能に支持する軸受部24,25と、を含んで構成される。
【0031】
炉体22の内部のうち軸受部24側には、乾燥装置10により乾燥された混合物が供給される。炉体22の軸受部24側には、配管45が接続され過熱蒸気発生ユニット30で発生した過熱蒸気を炉体22の内部に導入する過熱蒸気導入部221が設けられている。また、炉体22の軸受部25側には、配管49が接続され炉体22の内部のガスを外部に排出する乾留ガス排出部222が設けられている。
【0032】
外周部23は、上述の乾燥炉11と同様のジャケット構造になっており、その内部を高温の加熱ガスが流通する。この外周部23には、過熱蒸気発生ユニット30から排出された加熱ガスが配管47を介して導入される。これにより、炉体22及びその内部は所定の温度に加熱される。また、外周部23の内部を流通し、炉体22の加熱に供された加熱ガスは、配管41を介して乾燥炉11の外周部13に供給される。
【0033】
搬送軸26は、炭化炉21の両端に亘って延びる軸本体27と、この軸本体27の外周に設けられたスクリュー羽根28と、を含んで構成されたスクリューコンベヤである。また、この搬送軸26の軸受部24側の端部はモータ29に接続されている。
【0034】
図3は、炭化装置20の軸受部24の構成を模式的に示す部分断面図である。
軸受部24は、搬送軸26の外周面に摺接し、この搬送軸26を回転可能に支持するラジアル軸受242と、このラジアル軸受242が固定された保持ケース241と、ラジアル軸受242と保持ケース241との間の隙間を密閉するパッキン243と、を備える。
【0035】
保持ケース241は、略円筒状であり、炉体の端部に固定され、この炉体の内部と外部とを区画する。すなわち、図3において、保持ケース241の右側は炉体の内部側であり、保持ケース241の左側は炉体の外部側である。
【0036】
また、保持ケース241の内部側には、略円板状のチャンバ区画板244が固定されている。これにより、ラジアル軸受242、保持ケース241、及びチャンバ区画板244により、搬送軸26の外周部の一部を覆う環状のチャンバ245が形成される。
【0037】
チャンバ区画板244には、搬送軸26が挿通する挿通孔246が形成されている。この挿通孔246内周は、搬送軸26の外周よりも大きく形成されている。これにより、挿通孔246の内周面と搬送軸26の外周面との間には、チャンバ245の内部と炉体の内部とを連通する隙間が搬送軸26の全周に亘って均一に形成される。以下では、この隙間を隙間部247という。
【0038】
保持ケース241には、チャンバ245の内部に連通するシールガス供給部248が設けられている。このシールガス供給部248には、配管48(図2参照)が接続されている。これにより、チャンバ245の内部には過熱蒸気発生ユニット30で発生したシールガスが供給される。
【0039】
ここで、チャンバ245の容積は、このチャンバ245の内部の圧力が均一になるように、隙間部247に対して十分に大きくなっている。したがって、チャンバ245にシールガスを供給することで、チャンバ245の内部の圧力を炉体の内部よりも高圧な状態を保ちながら、搬送軸26の外周面と挿通孔246の内周面との間の隙間の全周に、均一に圧力を加えることが可能となる。このようにしてチャンバ245の内部にシールガスを供給すると、チャンバ245の内部からは、隙間部247を介して炉体の内部側へシールガスが常に流入した状態となる。
【0040】
これにより、図3中白抜き矢印で示すように、炉体22の内部で発生した乾留ガスが、隙間部247を介して炉体の内部から漏れ出るのを防止することができる。すなわち、軸受部24と搬送軸26との間の隙間をシールすることができる。また、このようにして炉体の内部に供給されたシールガスは、上述の乾留ガス排出部222(図2参照)を介して、混合物の炭化の過程で発生した乾留ガスとともに、炉体の外部に排出される。
【0041】
ここで、シールガスとして、飽和蒸気を利用することにより、炉体内の混合物が燃焼することもないので、良質な炭化物を生成することができる。また、この飽和蒸気として、過熱蒸気を生成するためにボイラで生成した飽和蒸気を流用することにより、再処理にかかるエネルギーの消費を少なくすることができる。
【0042】
なお、詳細な説明を省略するが、軸受部25も軸受部24と同様にチャンバが形成されており、シールガス供給部258(図2参照)を介してシールガスをチャンバの内部に導入し、軸受部25と搬送軸26との間をシールすることが可能となっている。
【0043】
図2に戻って、モータ29を駆動し搬送軸26を回転すると、炉体22の内部の軸受部24側に供給された混合物は、炉体22の内部でスクリュー羽根28により攪拌されながら軸受部25側へ搬送され、次第に炭化する。より具体的には、混合物は、加熱された炉体22内で搬送される過程において、過熱蒸気導入部221から導入された過熱蒸気を媒体として炉体22の炉壁の熱エネルギーを受け取ることにより、熱分解し、次第に炭化する。
【0044】
また、このようにして混合物が炭化する過程で、炉体22の内部には乾留ガスが発生し、充満する。そこで、混合物を炭化する際には、上述のように、軸受部24,25のチャンバの内部にシールガスを供給し、チャンバの内部を炉体22の内部よりも高圧にすることにより、隙間部を介して炉体22の内部にシールガスを導入する。これにより、炉体22の内部から、軸受部24,25と搬送軸26との間の隙間を介して乾留ガスが漏れ出るのを防止することができる。
【0045】
ここで、上述のように、炉体22の内部に供給されたシールガスは、混合物を炭化する過程において発生した乾留ガスとともに、乾留ガス排出部222から炉体22の外部に排出される。また、乾留ガス排出部222から排出されたガスは、配管49,46を介して過熱蒸気発生ユニット30に回収され、上述の手順により脱臭される。
【0046】
本実施形態によれば、以下のような作用効果がある。
(1)本実施形態によれば、搬送軸26を支持する軸受部24,25にチャンバ245を設け、さらにこのチャンバ245に、その内部と炉体22の内部とを連通する隙間部247を設けた。
ここで、炭化炉21の外部からチャンバ245の内部にシールガスを供給し、チャンバ245の内部を炉体22の内部よりも高圧にすると、チャンバ245の内部側から炉体22の内部側へ向けて隙間部247を介してシールガスが流通する。これにより、炭化炉21の内部において混合物を炭化する際に発生した乾留ガスが、隙間部247を介して炭化炉21の外部に漏れ出るのを防止することができる。
また、本実施形態によれば、炭化炉21の内部に導入されたシールガスは、炭化炉21に設けた乾留ガス排出部222を介して炭化炉21の外部に排出される。これにより、チャンバ245の内部を炭化炉21の内部よりも高圧に維持し続けて、乾留ガスが炭化炉21の外部に漏れ出るのを防止することができる。
また、本実施形態によれば、例えば、軸受部24に設けたパッキン243等のシール部材が収縮したり磨耗したりした場合であっても、チャンバ245の内部の圧力を炉体22の内部の圧力よりも高くし続けることにより、パッキン243の隙間から乾留ガスが漏れ出るのを防止できる。
【0047】
(2)本実施形態によれば、搬送軸26の外周面と搬送軸26が挿通する挿通孔246の内周面との間に均一な隙間を形成し、これを隙間部247とする。すなわち、チャンバ245の内部に供給されたシールガスは、搬送軸26の外周面に均一に形成された隙間部247を介して炉体22の内部に流入する。特にここで、上述のように隙間部247を均一に形成することにより、隙間部247におけるシールガスの偏流を防止し、シールガスによるシール力を向上することができる。
【0048】
図4は、本実施形態に対する比較例の炭化装置20Aの軸受部24Aの構成を模式的に示す部分断面図である。
図4に示すように、チャンバ245Aの容積が隙間部247に対して小さい場合、チャンバ245Aの内部では、シールガス供給部248の近傍の圧力が高くなってしまい、シールガスの偏流が生じてしまうおそれがある。本実施形態によれば、チャンバ245の内部の圧力が均一になるように、チャンバ245の容積を隙間部247に対して十分に大きくすることにより、搬送軸26と挿通孔246との間の隙間の全周に均一に圧力が加えることができる。これにより、隙間部247におけるシールガスの偏流をさらに防止することができる。
【0049】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上記実施形態では、乾燥装置10及び炭化装置20の搬送軸16,26として、スクリュー羽根18,28を備えたスクリューコンベヤを用いたが、これに限るものではない。例えば、搬送軸としては、複数のパドルを備えたパドルコンベヤを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る炭化装置を用いた再処理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】前記実施形態に係る炭化システムの構成を示す模式図である。
【図3】前記実施形態に係る炭化装置の軸受部の構成を模式的に示す部分断面図である。
【図4】比較例に係る炭化装置の軸受部の構成を模式的に示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0051】
RS…再処理システム
S4…炭化システム
20…炭化装置
21…炭化炉
22…炉体
221…過熱蒸気導入部
222…乾留ガス排出部
24,25…軸受部
248,258…シールガス供給部
244…チャンバ区画板
245…チャンバ
246…挿通孔
247…隙間部
26…搬送軸
30…過熱蒸気発生ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合物が供給される炭化炉と、
前記炭化炉を貫通し、当該炭化炉の内部で混合物を搬送する搬送軸と、
前記炭化炉に設けられ、前記搬送軸を回転可能に支持する軸受部と、を備え、前記炭化炉の内部で混合物を搬送しながら当該混合物を炭化する炭化装置であって、
前記軸受部には、前記炭化炉の外部からシールガスが供給されるチャンバが設けられ、
前記チャンバには、当該チャンバの内部と前記炭化炉の内部とを連通する隙間部が設けられ、
前記炭化炉には、前記チャンバの内部にシールガスを供給し当該チャンバの内部を前記炭化炉の内部よりも高圧にした際に、前記隙間部を介して前記炭化炉の内部に導入されたシールガスを当該炭化炉の外部に排出する排出部が設けられることを特徴とする炭化装置。
【請求項2】
前記チャンバには、前記搬送軸が挿通する挿通孔が形成され、
前記隙間部は、前記搬送軸の外周面と前記挿通孔の内周面との間に均一に形成された隙間であり、
前記チャンバの容積は、前記隙間部に対し十分に大きいことを特徴とする請求項1に記載の炭化装置。
【請求項3】
混合物が供給される炭化炉と、
前記炭化炉を貫通し、当該炭化炉の内部で混合物を搬送する搬送軸と、
前記炭化炉に設けられ、前記搬送軸を回転可能に支持する軸受部と、を備えた炭化装置を用い、前記炭化炉の内部で混合物を搬送しながら当該混合物を炭化する炭化方法であって、
前記軸受部には、前記炭化炉の外部からシールガスが供給されるチャンバが設けられ、
前記チャンバには、当該チャンバの内部と前記炭化炉の内部とを連通する隙間部が設けられ、
前記炭化炉の内部の混合物を炭化する際には、前記チャンバの内部にシールガスを供給し当該チャンバの内部を前記炭化炉の内部よりも高圧にし、前記隙間部を介して前記チャンバの内部から前記炭化炉の内部にシールガスを導入するとともに、前記炭化炉に設けられた排出部を介して当該炭化炉の内部のシールガスを外部に排出することを特徴とする炭化方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−143964(P2010−143964A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319769(P2008−319769)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】