説明

炭素被覆材の製造方法及び炭素被覆材

【課題】金属基材から輻射体への熱抵抗を小さくし、輻射による放熱量を大幅に増加させた炭素被覆材の製造方法及び炭素被覆材を提供する。
【解決手段】炭素材料を噴き付けるエアロゾルデポジッション法により、エアロゾルデポジッション装置1のチャンバー2内に保持された金属製の基材5上に、エアロゾル供給装置7の生成容器7a内で生成した炭素材料の粉体と搬送流体から構成されるエアロゾロを噴きつけて、炭素被覆層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素被覆材の製造方法及び炭素被覆材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロプロセッサー(MPU)、画像処理チップ、メモリーなどLSIを用いる電子機器等では高密度化が進んでいることや高性能化に伴う消費電力の増加が進んでおり、冷却が重要になってきている。
従来は、LSIの機器内の適正な配置によって熱対策が済む場合はLSIの適性配置により、そうでないときは、ヒートシンクや小型ファンモータ等の放熱器の利用が一般的であった。しかしながら、ノート型パソコン、携帯電話機などのように、薄型軽量化(小型化)が追求される電子機器では、このような放熱器を用いることができない場合がある。そこで、電子部品の放熱効率を改善するため、熱放射特性を考慮した放熱シート等が種々提案されている。
例えば、熱伝導性フィラーを含有する粘着剤層と、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる層上にアルミナ皮膜からなる熱放射層を設けた除熱用放熱シートが提案され(特許文献1、特許請求の範囲等参照)、また、熱伝導性を有するアルミニウム、銅、ステンス鋼等からなる吸熱層の表面に、二酸化珪素、酸化アルミニウム等の熱放射性膜を形成し、吸熱層の裏面に熱伝導性接着剤を設けた放熱シートも提案されている(特許文献2、特許請求の範囲等参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された放熱シートは、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる層上にアルミナゾルを塗装・焼付けすることにより、熱放射層を形成するため、製膜工程に長時間が必要となり、多大な時間と労力が必要となる問題があり、特許文献2に開示された放熱シートもアルミニウム、銅、ステンス鋼等からなる吸熱層の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムを含有する液状体やカオリンを含有するエマルジョン性組成物を塗布することにより熱放射性膜を形成するため、製膜工程に長時間が必要となり、多大な時間と労力が必要となる問題がある。
【特許文献1】特開2005−101025号公報
【特許文献2】特開2004−200199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本出願人等は、放熱層又は熱輻射層に好適な材料と、その被着方法について検討を重ねている。
図5は材料別の分光放射率((多田龍太郎:赤外線源の種類と特徴、塗装工学(1)112−19(1994))を示す。
同図に示すように、放熱層又は熱輻射層の材料としては、放射率の非常によい炭素材料が適しており、炭素材料の輻射により放熱特性が良くなることが期待されるが、炭素材料は、非常に脆いことや金属との反応性が極端に悪く、直接金属と接着しないという問題がある。このため、通常の金属製の放熱器では、炭素材料を混ぜた樹脂塗料を放熱器の表面に塗布し、黒色の輻射層乃至放熱層を形成し、フォノン及び伝導電子により、熱伝導が行わせることが多い。ところが、放熱器から炭素材料への熱伝導は、熱伝達係数の低い樹脂を介して行われるので、輻射層乃至放熱層への熱抵抗が大きく、期待するほどの放熱効果が得られないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、炭素材料の被覆層を基板上に形成して炭素被覆材とすることにより輻射体の熱抵抗を大幅に緩和し輻射による放熱量を大幅に増加させる炭素被覆材の製造方
法及び炭素被覆材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、炭素材料を噴き付けるエアロゾルデポジッション法により金属製の基材上に炭素材料を噴きつけて炭素被覆層を形成する炭素被覆材の製造方法を提供する。
【0007】
請求項2記載の発明は、炭素材料と金属材料とを噴き付けるエアロゾルデポジッション法により金属製の基材上に炭素材料と金属材料とを噴きつけて炭素材料と金属材料とが混合した炭素被覆層を形成する炭素被覆材の製造方法を提供する。
【0008】
請求項3記載の発明は、金属基材上に樹脂を介さずに直接炭素材料が被覆されてなる炭素被覆材を提供する。
【0009】
請求項4記載の発明は、金属基材上に樹脂を介さずに、直接、炭素材料と金属材料とが混合状態で被覆されてなる炭素被覆材を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基材上に炭素被覆層を形成することができ、熱伝導に対して熱抵抗が小さく、放熱量の大きい炭素被覆材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明に係る炭素被覆材の製造方法及び炭素被覆材の具体例を説明する。なお、本発明に係る炭素被覆材は、熱伝導性フィラーを含有する熱伝導性のよい粘着剤層により発熱部品の放熱面に対する接着面に密着させて取り付けられるものとする。また、本実施の形態に係る炭素被覆材は、発熱部品、例えば、電子部品の冷却用として、特に、ノート型パソコン、携帯電話機などの薄型軽量化(小型化)が追求される電子機器、例えば、LSIの冷却にも用いられるものとする。
【0012】
図1は本発明に係る炭素被覆材の製造方法に用いるエアロゾルデポジッション装置の解説図である。
エアロゾルデポジッション装置1には処理室としてチャンバ2が設けられる。チャンバ2内の一方側には、XYステージ3がX軸(例えば、水平方向)、Y軸(例えば、垂直方向)に移動自在に設けられ、XYステージ3に一体に基板ホルダ4が設けられる。基板ホルダ4には、金属基材として、例えば、金属シート5が保持される。また、金属シート5の被着面を覆うように炭素被覆層(後述する)を形成するため、チャンバ2内の他方側にノズル6が設けられる。金属シート5は、汎用性の高い金属、例えば、熱伝導の優れた銅又はその合金のシートから形成され、ノズル6のノズル口6aが、金属シート5の被着面に臨ませられる。なお、ノズル口(噴出口)6aと金属シート5の被着面との間には、例えば、10mm程度の間隔が設けられる。また、チャンバ2には、チャンバ内雰囲気を排気するため排気管9が設けられ、排気管9には、排気を清浄化するためのフィルタ装置10が設けられる共に、排気によりチャンバ2内を減圧するための真空ポンプ11が設けられる。
【0013】
ノズル6には炭素材料の紛体(粉末、粒子(微粒子)を含む)と搬送流体とから構成されるエアロゾル(以下、炭素被覆層形成用エアロゾルという)を、ノズル6から噴出させて金属シート5の被着面に噴き付けるために、第1エアロゾル供給装置7が取り付けられる。この第1エアロゾル供給装置7には、炭素被覆層形成用エアロゾルに、金属材料、例えば、銅又はその合金の粉体と搬送流体とから構成されるエアロゾル(以下、混合用エアロゾルという)を、ノズル6の上流側で混合させてノズル6から噴出させることもできる
ようにするため、第2エアロゾル供給装置8が取り付けられている。
【0014】
第1エアロゾル供給装置7には、炭素被覆層形成用エアロゾルを生成する第1エアロゾル生成容器7aと、搬送流体を第1エアロゾル生成容器7aに供給し、炭素被覆層形成用エアロゾルを生成するための上流側配管7bと、第1エアロゾル生成容器7a内で生成した炭素被覆層形成用エアロゾルをノズル6に供給するための下流側配管7cと、搬送流体供給源としてのガスボンベ7dとが設けられる。
第1エアロゾル供給装置7の上流側配管7bには減圧弁7eが設けられ、搬送流体の流量を調節するための第1マスフローコントローラ7fが減圧弁7eの下流側に設けられる。また、上流側配管7bの第1マスフローコントローラ7fの下流側には、搬送流体の供給/停止を切り換えるため第1開閉弁7hが設けられ、第1エアロゾル供給装置7の下流側配管7cには、ノズル6へのエアロゾルの供給/停止を切り換えるため第2開閉弁7iが設けられる。
【0015】
第1エアロゾル生成容器7a内、すなわち、第1エアロゾル化室7jには、炭素材料の粉体がチャージされ、ガスボンベ7dには搬送流体として不活性ガス、例えば、液体窒素が充填される。
【0016】
第2エアロゾル供給装置8には、第2エアロゾル生成容器8aと、搬送流体を第2エアロゾル生成容器8aに供給するための上流側配管8bと、エアロゾルを、第1エアロゾル供給装置7の下流側配管7cに合流させるための下流側配管8cとが設けられる。
【0017】
第2エアロゾル供給装置8の上流側配管8bは、前記ガスボンベ7dを兼用とするため、第1エアロゾル供給装置7の上流側配管7bの減圧弁7eと第1マスフローコントローラ7fとの間に一端部が接続され、他端部が第2エアロゾル生成容器8a内に挿入される。第2エアロゾル供給装置8の下流側配管8cは、第2エアロゾル生成容器8aに一端部が挿入され、他端部が第1エアロゾル供給装置7の下流側配管7cに接続される。
第2エアロゾル供給装置8の上流側配管8bには、上流側から下流側に向かって、第2マスフローコントローラ8d、第3開閉弁8eが設けられ、第2エアロゾル供給装置8の下流側配管8cに第4開閉弁8fが設けられる。
そして、第2エアロゾル生成容器8a内、すなわち、第2エアロゾル化室8gには、金属材料、例えば、銅又はその合金の粉体がチャージされる。
【0018】
次に、図1乃至図3を参照して本実施の形態に係る炭素被覆材の製造方法を説明する。
図2は本発明の実施の形態に係る炭素被覆材の断面図である。
本実施の形態では、まず、炭素被覆層形成材料である炭素材料の粉体と搬送流体としてのNガスから成る炭素被覆層形成用エアロゾルを、金属シート5の被着面に噴きつけるエアロゾルデポジッション法により金属シート5の被着面に衝突させ、これによって金属シート5の被着面上に炭素被覆層5aを形成する。
【0019】
炭素被覆層5a形成の際は、まず、第1開閉弁7h、第2開閉弁7i、第3開閉弁8e、第4開閉弁8fを閉とした状態でチャンバ2内を大気圧以下、好ましくは真空までに減圧する。次に、第3開閉弁8e、第4開閉弁8f、第2開閉弁7iを閉として、第1開閉弁7hのみを開とする。これにより、第1エアロゾル化室7jのみに搬送流体であるNガスが導入される。Nガスの導入により第1エアロゾル化室7jが攪拌され、第1エアロゾル化室7j内の炭素被覆層形成材料の粉体が舞うように攪拌されるので、炭素被覆層形成用エアロゾルが生成される。
【0020】
次に、第3開閉弁8e、第4開閉弁8fを閉、第1開閉弁7h及び第2開閉弁7iを開とし、同時に、XYステージ3のX軸方向、Y軸方向の走査によって金属シート5をX軸
、Y軸方向に走査し、ノズル6から噴出される炭素被覆層形成用エアロゾルを金属シート5の被着面に面内均一に衝突させる。
【0021】
このとき、炭素材料の粉体の速度は、破砕により活性化された新生面が出現するよう、第1マスフローコントローラ7fにより調節される。このため、炭素被覆層形成用エアロゾル中の炭素材料の粉体は、金属シート5の被着面との衝突によって破砕され、新生面が露出する。この新生面により、金属シート5の被着面上で破砕された粉体同士が接合され、炭素被覆層5aが金属シート5の被着面上に形成され、炭素被覆層5aを被覆した炭素被覆材12が得られる。
すなわち、炭素被覆層5aは、樹脂のバインダを介さずに金属シート5の被着面に直接かつ一体に接合される。
金属シート5は熱伝導がよく炭素材料からなる炭素被覆層5aは輻射がよいため、金属シート5から炭素被覆層5aへの熱抵抗値が、熱抵抗の高い樹脂のバインダを介して接合した場合と比べて大幅に低下する。
よって、炭素被覆材12の輻射量が従来のよりも大幅に増加し、炭素被覆材12の放熱量が従来よりも大幅に増加する。このため、動作特性の安定化が必要な発熱部品、特に、ノート型パソコン、携帯電話機など薄型軽量化(小型化)が追求される電子機器の電子部品を良好に冷却することができ、動作特性を安定化することができる。
【0022】
次に、前記エアロゾルデポジッション装置1により、金属基材としての金属シート5上に炭素材料と金属材料とが混合した炭素被覆層5bを形成する炭素被覆材の製造方法について説明する。
まず、準備工程として、第1エアロゾル化室7b に、炭素材料、例えば、汎用の担素材の粉体をチャージし、第2エアロゾル化室8gに、金属材料、例えば、銅の紛体をチャージする。チャンバ2内の圧力は、前記炭素被覆層5aの場合と同じ圧力とする。ただし、金属の粉体は、電気的に中性でない場合に凝集が発生しやすく、凝集が発生すると搬送流体の攪拌によっても粉体に戻すことは困難であるため、予め、自然酸化により、表面に酸化膜を形成しておき、粉体としての振舞いを可能にしておく。
【0023】
準備工程を終了すると、次に、第1開閉弁7h、第3開閉弁8eを開とし、他の開閉弁(第2開閉弁7i、第4開閉弁8f)を閉とする。これにより、Nガスが第1エアロゾル化室7j、第2エアロゾル化室8gに導入される。第1エアロゾル化室7jでは、銅の紛体とNガスとが混合した炭素覆層形成用エアロゾルが生成され、第2エアロゾル化室8gでは、銅の粉体とNガスとが混合した金属混合用エアロゾルが生成される。
【0024】
次に、第1開閉弁7h、第2開閉弁7i、第3開閉弁8e及び第4開閉弁8fを開とし、同時に、XYステージ3のX軸方向、Y軸方向の走査により金属シート5のXYステージのX軸方向、Y軸方向に走査し、炭素被覆層形成用エアロゾルと混合用エアロゾルとが合流したエアロゾルを金属シート5の被着面に対して衝突させる。これにより、炭素材料の粉体が破砕し、活性面が露出するため、金属シート5の炭素被覆層5b上に炭素材と金属粉体である銅とが混合した炭素被覆層(以下、混合層という)5bが形成される。混合層5bは、樹脂のバインダを介さずに金属シート5の被着面に直接かつ一体に接合されており、金属、すなわち、銅は熱伝導がよく、炭素材料は輻射がよいので、金属シート5から金属材料、炭素材料への熱抵抗が小さくなる。
このため、炭素被覆材12の輻射に伴う放熱量は、熱抵抗の高い樹脂のバインダを介して接合した場合と比べて大幅に増大する。
また、炭素被覆層において、金属材料は、物理的な緩衝材としても機能するので、炭素被覆層5bの衝撃割れや欠け等を可及的に防止することができる。
【0025】
図3は炭素被覆層形成用エアロゾルと混合用エアロゾルとをそれぞれ別々のノズルから
噴出させるようにしたエアロゾルデポジッション装置の他の実施の形態を示す。
このエアロゾルデポジッション装置15においては、チャンバ2内に、前記ノズル6と隣接させて第2ノズル14が設けられ、第2エアロゾル供給装置8の下流側配管8cが第1エアロゾル供給装置7の下流側配管7cから切り離されて第2ノズル14に接続される。
他の構成は図1を参照して説明したエアロゾルデポジッション装置1と同じなので、ここでは、同一符号を付し、説明を省略する。
このエアロゾルデポジッション装置15により、ノズル6から噴出する炭素被覆層形成材料のエアロゾルに第2ノズル14から噴出する金属材料混合用のエアロゾルを合流させ、合流したエアロゾルを金属シート5の炭素被覆層5aの表面に衝突させることができる。このため、この実施の形態でも、前記したように、第1開閉弁7h、第2開閉弁7i、第3開閉弁8e及び第4開閉弁8fの切り換えと、XYステージ3をX軸方向、Y軸方向に走査するだけで、図3に示すように金属シート5上に炭素被覆層5a又は混合層5bを形成することができる。
【実施例】
【0026】
以下、図1、図2を参照して本発明に係る一実施例を説明する。
この実施例では、図1で説明したエアロゾルデポジッション装置1を用い、金属基材である金属シート5の上に、炭素材料からなる炭素被覆層5aを形成して炭素被覆材12を形成した。
金属シート5には銅シートを用い、炭素材料には、平均粒度(平均粒径)が10〜50nmのカーボンブラックの粉体を用いた。なお、カーボンブラックの粉体は、独国のデグッサ(Degussa)社よりPRINTEX XEの商品名で、三菱化学株式会社よりケッチエンブラックの商品名で入手することができる。
カーボンブラックの粉体は第1エアロゾル化室7jにチャージし、ガスボンベ7dには窒素ボンベを用いた。ノズル口(噴出口)6aと金属シート5の被着面との間には、10mm程度の間隔を設けた。
第1マスフローコントローラ7fの流量値は、ノズル6から金属シート5の被着面に向けてカーボンブラックの粉体が10m/minから1000m/minの高速で噴出されるように調節した。
【0027】
炭素被覆層5aの形成の際は、真空ポンプ11の排気により、チャンバ内圧力を1Pa〜1000Pa程度とした。次に、第3開閉弁8e及び第4開閉弁8fを閉、第1開閉弁7h、第2開閉弁7iを開とし、同時に、XYステージ3のX軸、Y軸方向の走査により、金属シート5の被着面への炭素被覆層形成用エアロゾルの噴きつけを行った。この際、第1のエアロゾル化室内では粉体が舞い、金属シート5の被着面には炭素材料から成る炭素被覆層5aが形成された。この場合、ノズル6の形状や状態によって、製膜されるレートは大きく異なるが、本実施例では、カーボンブラックの粉末のサイズや、製膜条件から炭素被覆層形成用エアロゾルの噴きつけを50回往復行って炭素被覆層の厚みを約100nmとしたが、ケッチエンブラックと基材との接触が良好であれば、フォノンや自由電子による熱伝達が効率よく起こるため、如何なる厚さとしてもよい。また、炭素材料としては、特性の点で、電気伝導性に優れる、ケッチエンブラックを用いるとよい。
炭素被覆層5aの形成後、炭素被覆層5aの表面を電子顕微鏡で観察すると、炭素材料は、衝突により、割れが発生し、粒径が小さくなっている。これは、カーボンブラックの粉体の衝突により、割れるなどして新生面が発生し、強固な付着力が発生したものと想定される。また、炭素被覆層5aの表面の炭素材料は、衝突により、割れが発生し、粒径が小さくなっているので、この状態でも十分に放熱材の表面として機能することが分かる。
なお、金属シート5の被着面に、炭素材料と銅とが混合した混合層5bを形成すると、表面の意匠性だけでなく、割れなどの物理的な耐久性がさらに向上されることも確認している。
【0028】
なお、本発明に係る実施の形態では炭素被覆材の炭素材料としては、汎用のカーボン材、グラファイト、ケッチエンブラック等の炭素材料が用いられるが、コスト的にやや難があるものの、カーボンナノチューブやフラーレン又はその誘導体を使用してもよい。
さらに、本実施の形態では、金属基材として金属シート5を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、金属基材がヒートシンク等、金属製の放熱器であってもよい。また、金属シート5の上に炭素被覆層5a又は混合層5bを形成して発熱部品を冷却するための炭素被覆材を形成する説明をしたが、輻射特性が良い材料であれば、炭素材料に代わる材料を使用してもよい。この場合、材料選定は、要求される放熱特性と、コストによって選択するものとする。
このように、本発明は、種々の改変が可能であり、このような改変された発明に本発明が及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係るエアロゾルデポジッション装置の構成を示す解説図である。
【図2】本発明に係る炭素被覆材の構造を示す断面図である。
【図3】本発明に係る炭素被覆材の他の構造を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るエアロゾルデポジッション装置の他の実施の形態を示す解説図である。
【図5】材料別の分光放射率を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
5 金属シート(金属基材)
5a 炭素被覆層
5b 炭素被覆層(混合層)
12 炭素被覆材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の基材上にエアロゾルデポジッション法により炭素材料を噴きつけて炭素被覆層を形成することを特徴とする炭素被覆材の製造方法。
【請求項2】
金属製の基材上にエアロゾルデポジッション法により炭素材料と金属材料とを噴きつけて炭素材料と金属材料とが混合した炭素被覆層を形成することを特徴とする炭素被覆材の製造方法。
【請求項3】
金属基材上に樹脂を介さずに直接炭素材料が被覆されてなる炭素被覆材。
【請求項4】
金属基材上に樹脂を介さずに、直接、炭素材料と金属材料とが混合状態で被覆されてなる炭素被覆材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−179847(P2009−179847A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19348(P2008−19348)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】