説明

無人車両の走行システムにおける走行制御方法および無人車両の走行システム

【課題】作業現場が施工された後、無人車両を走行させるまでに行なわれる作業現場の詳細な地形データを計測する工程、走行経路を生成する工程を不要とし、作業現場施工後、即座に走行経路に沿って無人車両を走行可能として、無人車両の生産性を向上させるとともに作業現場の運用コストを低減させる。
【解決手段】作業現場の地形データを作成して新たな走行経路の情報を生成する。次に、作成された地形データに基づいて新たな走行経路を含む作業現場を施工する。次に、生成された新たな走行経路の情報を車両に与え、仮の走行制御データに従い当該新たな走行経路に沿って走行させて、新たな走行経路の実際の地形データを取得する。次に、取得された新たな走行経路の実際の地形データに基づいて前記仮の走行制御データを修正する。次に、修正された走行制御データに従い無人車両を走行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業現場内の走行経路に沿って無人車両を走行させる無人車両の走行システ
ムにおける走行制御方法および無人車両の走行システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
採石現場、鉱山などの広域の作業現場では、土砂運搬作業を行うための車両が用いられる。その土砂運搬作業を行うに際して、車両の運転者(作業者)の疲労による事故の回避、省人化、作業時間の延長による生産性の向上を図るべく、有人の運搬車両(例えば有人のオフロードダンプトラック)の代わりに無人のダンプトラックを稼動させるための無人車両走行システムが導入されている。
【0003】
無人ダンプトラックが走行する作業現場には、積込場、排土場、給油場などの各エリアがある。これら各エリアがホールロードと呼ばれる整備された搬送路やアクセスロードと呼ばれるホールロードから各エリアへの引込み線や交差点により接続されている。
【0004】
エリアの一つである積込場は、ダンプトラック(本発明では、無人車両という)へ土砂を積み込む作業を行う場所であり、ホイルローダ(フロントエンドローダ)、バックホー、ショベル(例えば油圧ショベル)といった有人の積込機による掘削作業およびダンプトラックへの土砂の積込作業が行なわれる。
【0005】
CAD(Computer Aided Design;コンピュータ支援設計)の手法により鉱山などの作業現場を設計し、設計されたCADデータに基づいて作業現場を施工するという手法は、既に公知となっている。CADデータ、つまり3次元の地形データに基づいて作業現場が施工される。
【0006】
(従来の実施技術)
無人車両を走行させるには、作業現場の地形データが必要である。すなわち、作業現場の路肩位置や勾配などをパラメータとする地形データに基づいて走行経路の情報が定まり、地形データ(たとえば勾配の大きさ)に基づいて、無人車両の最高速度などの走行制御データが定まる。走行経路の情報と走行制御データを無人車両に与えることにより、無人車両は走行経路に沿って走行制御データに従い、自車に搭載した速度センサやGPS(グローバルポジショニングシステム;全地球方位システム)センサなどから得られる各種情報とを利用しながら、加減速、停止、旋回といった走行制御が行われ走行する。
【0007】
ここで、従来にあっては、CADデータが作業現場の施工に用いられることはあっても、走行経路や走行制御データの生成に役立てられることはなく、作業現場が施工された後に実際の地形を計測しその計測結果に基づいて走行経路の情報や走行制御データを生成するようにしていた。
【0008】
例えば、作業現場に新たな積込場を増設して、その新たな積込場の内に存在する積込点を無人車両の目標点とする走行経路を生成する場合を想定する。積込場とは、無人車両へ土砂を積み込む作業を行う場所である。積込場では、ホイールローダ、バックホー、ショベル、エクスカベータといった積込機による掘削作業および無人車両への土砂の積込作業が行われる。この場合、作業現場の設計から実際の無人車両の運用までは、およそ次のような工程で処理が進められる。
【0009】
1)CADシステムで、新たな積込場の地形を付加したCADデータが、CADのオペレータによって生成される。
【0010】
2)CADデータに基づいて、新たな積込場が、ブルドーザやモータグレーダなどの建設機械によって施工される。
【0011】
3)新たな積込場が施工されると、計測専用車両を走行させて、その新たな積込場の境界
線などの実際の地形データが計測され、取得される。
【0012】
4)計測、取得された実際の地形データが管制装置に送られ、管制装置で実際の地形データに基づいて、その新たな積込場を無人車両の目標点とする新たな走行経路の情報と走行制御データが作成される。
【0013】
5)新たな走行経路の情報と走行制御データが、無線通信によって無人車両に送られ、無人車両は新たな走行経路に沿って走行制御データに従い、加減速、停止、旋回といった走行制御を行いながら新たな積込場まで走行する。
【0014】
(特許文献にみられる従来技術1)
特許文献1には、建物内の床面を自律走行清掃車両が清掃するに際し、その走行経路を、建物の設計時のCADデータに基づいて作成するという発明が記載されている。
【0015】
(特許文献にみられる従来技術2)
特許文献2には、GPSセンサにより車両の位置を検出し、検出した位置データを集積することにより車両が実際に走行した走行軌跡を求め、求められた走行軌跡から走行した道路の車線数および幅員を推定し、推定したデータにより既存の地図データを更新するという発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平9−212238号公報
【特許文献2】特開2005−98853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来の実施技術によれば、作業現場が施工された後、無人車両を実際に運用(走行)させるまでには、積込場の境界線など作業現場の詳細な地形データを計測するという工程、詳細な地形データから走行経路を生成するという工程を要する。このため無人車両を走行させるまでには多大な工数を要し、無人車両による運搬作業の生産性が損なわれるとともに作業現場の運用コストが著しく増大することになっていた。
【0018】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、作業現場が施工された後、無人車両を走行させるまでに行なわれる作業現場の詳細な地形データを計測する工程、その地形データに基づいて走行経路を生成する工程を不要とし、作業現場を施工後、即座に走行経路に沿って無人車両を運用(走行)可能として、無人車両による運搬作業の生産性を向上させるとともに作業現場の運用コストを低減させることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1発明は、
作業現場内の走行経路に沿って無人車両を走行させる無人車両の走行システムにおいて、作業現場の地形データを作成して新たな走行経路の情報を生成するステップと、
作成された地形データに基づいて新たな走行経路を含む作業現場を施工するステップと、
生成された新たな走行経路の情報を車両に与え、仮の走行制御データにしたがい当該新た
な走行経路に沿って走行させて、新たな走行経路の実際の地形データを取得するステップ
と、
取得された新たな走行経路の実際の地形データに基づいて前記仮の走行制御データを修正
するステップと、
修正された走行制御データにしたがい無人車両を走行させるステップと
を含む無人車両の走行システムにおける走行制御方法であることを特徴とする。
【0020】
第2発明は、第1発明において、
取得された新たな走行経路の実際の地形データに基づいて作業現場の地形データを修正す
るステップを含むこと
を特徴とする。
【0021】
第3発明は、第1発明または第2発明において、
作業現場の施工前に作成される地形データは、勾配のデータを含むとともに、仮の走行制御データは、車両の仮の走行速度を含み、
作業現場の施工前に作成される地形データのうち勾配のデータの信頼度が高くなるに応じて仮の走行速度による速度制限を緩和
することを特徴とする。
【0022】
第4発明は、第1発明から第3発明において、
作業現場の施工前に作成される地形データは、勾配のデータを含むとともに、仮の走行制御データは、車両の仮の走行速度を含み、
作業現場の施工後に取得される新たな走行経路の実際の勾配のデータの信頼度が高くなるに応じて仮の走行速度による速度制限を緩和することを特徴とする。
【0023】
第5発明は、第1発明から第4発明において、
作業現場の施工前に作成される地形データは、勾配のデータを含むとともに、仮の走行制御データは、車両の仮の走行速度を含み、
実際の地形データの取得を複数回行うことで作業現場の勾配のデータの信頼度を判断し、
作業現場の勾配のデータの信頼度が高くなるに応じて仮の走行速度による速度制限を緩和
することを特徴とする。
第6発明は、第1発明から第5発明において、
新たな走行経路の実際の地形データを取得する車両および修正された走行制御データに従い走行する無人車両は、積荷を運搬する無人車両であることを特徴とする。
第7発明は、
作業現場内の走行経路に沿って無人車両を走行させる無人車両の走行システムにおいて、
作業現場の地形データを作成して新たな走行経路の情報を生成し、
作成された地形データに基づいて新たな走行経路を含む作業現場を施工し、
生成された新たな走行経路の情報を車両に与え、仮の走行制御データに従い当該新たな走行経路に沿って走行させて、新たな走行経路の実際の地形データを取得し、
取得された新たな走行経路の実際の地形データに基づいて前記仮の走行制御データを修正し、
修正された走行制御データに従い無人車両を走行させること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
第1発明および第7発明によれば、新たな走行経路を含む作業現場が施工される前の段階で、新たな走行経路の情報が生成され、新たな走行経路を含む作業現場が施工された後、即座に、新たな走行経路の情報を無人車両に与えることにより新たな走行経路に沿って無人車両を走行させることが可能となる。よって無人車両による運搬作業の生産性が向上するとともに、作業現場の運用に係るコストが低減する。
【0025】
なお、作業現場施工後に仮の走行制御データに従い走行する「車両」は、無人車両であっても有人車両であってもよく、積荷を運搬する運搬車両であっても運搬車両でなくてもよい。
【0026】
特に積荷を運搬する無人車両を仮の走行制御データに従い走行させる場合には、新たな走行経路の実際の地形データを計測する作業と同時に運搬作業を行うことができ、運搬作業を行わない計測専用の車両を走行させた場合に比べて無人車両の稼動効率、運搬作業の生産性を更に向上させることができる(第6発明)。
【0027】
施工前に得られる作業現場の地形データ(CADによる設計データ:CADデータ)は、施工後の実際の地形を反映したものではないため、地形の形状の精度の信頼度が低い。そこで、信頼度が低い作業現場の地形データに応じた走行制御データをそのまま使うのではなく、仮の走行制御データに従い車両を走行させるようにしている。作業現場の地形データが勾配のデータであり、仮の走行制御データが仮の走行速度である場合には、勾配のデータの信頼度に応じて仮の走行速度による速度制限を緩和することができる。例えば作業現場の施工前に作成される地形データのうち勾配のデータの信頼度が高ければ、より高い仮の走行速度で車両を走行させることができる(第3発明)。
【0028】
車両が走行して新たな走行経路の実際の地形データが計測され、取得されると、取得された新たな走行経路の実際の地形データに基づいて仮の走行制御データが修正されて、実際の地形を反映した走行制御データが得られる。
【0029】
この場合、実際の地形データが勾配のデータであり、仮の走行制御データが仮の走行速度である場合には、仮の走行速度(例えば低速の最高速度)が、実際の勾配に対応する走行制御データ(例えば実際の勾配に対応する高速の最高速度)に修正される。ただし、作業現場の施工後に取得される新たな走行経路の実際の勾配のデータの信頼度に応じて仮の走行速度による速度制限を緩和することができる(第4発明)。この場合、実際の地形データの取得を複数回行うことで作業現場の勾配のデータの信頼度を判断し、作業現場の勾配のデータの信頼度が高くなるに応じて仮の走行速度による速度制限を緩和することができる(第5発明)。例えば、複数の無人車両を仮の走行速度で順次走行させて勾配のデータを蓄積させるようにすれば、勾配のデータが蓄積されるに応じて勾配のデータのバラツキが小さくなり各機種間のバラツキが小さくなっていくと、統計的に考えられることから、徐々に仮の走行速度による速度制限を低速から高速に変化させることができる。
【0030】
仮の走行制御データが修正されて、新たな走行経路の実際の地形を反映した、走行制御データになると、修正された走行制御データに従い無人車両を走行させることができる。
【0031】
この場合、取得された新たな走行経路の実際の地形データに基づいて仮の走行制御データを修正するのみならず、取得された新たな走行経路の実際の地形データに基づいて、作業現場の地形データ(CADデータ)を修正してもよい(第2発明)。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、作業現場を上面からみた図で、図1(a)は、積込場が増設される前の作業現場を示し、図1(b)は、積込場が増設された後の作業現場を示した図である。
【図2】図2は、実施形態の無人車両走行システムと当該無人車両走行システムの外部に設けられたCADシステムの構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、第1実施例の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は、第3実施例の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図5(a)、(b)は、他の実施例を説明するために用いた図である。
【図6】図6(a)、(b)は、他の実施例を説明するために用いた図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明に係る無人車両の走行システムにおける走行制御方法および無人車両の走行システムの実施の形態について説明する。なお、本実施形態では、無人車両として無人のオフロードダンプトラックを想定している。
【0034】
図1は、作業現場1を上面からみた図である。図1(a)は、積込場12が増設される前の作業現場1を示し、図1(b)は、積込場12が増設された後の作業現場1を示している。作業現場1には、積込場11、12、排土場13、給油場14といった各エリアがある。これら各エリアは、路面や路肩が整備された搬送路であるホールロード15(15A、15B、15C)や交差点16により接続されている。
【0035】
本実施例では、一例として無人車両20が排土場13から積込場11、12に向かう走行経路10(10A、10B)を想定する。排土場13とは、無人車両20の荷台に積載された土砂を降ろす場所である。
【0036】
図1(a)では、積込場11と交差点16とがホールロード15Aにより接続されているとともに、交差点16と排土場13とがホールロード15Bにより接続されている。
【0037】
図1(b)では、さらに積込場12と交差点16とがホールロード15Cにより接続されている。
【0038】
各エリアの一つである積込場11、12は、無人車両20へ土砂を積み込む作業を行う場所であり、ホイルローダ(フロントエンドローダ)、バックホー、ショベル、エクスカベータといった積込機30による掘削作業および無人車両20への土砂の積込作業が行なわれる。
【0039】
各エリアの一つである排土場13は、無人車両20の積荷である土砂を降ろして排土する作業を行う場所であり、ブルドーザやホイールドーザなどの押土機90によって排土した土砂を押土して整地する作業が作業が行なわれる。
【0040】
図1(a)に示すように、排土場13で排土を終えた無人車両20は、走行経路10Aに沿って走行し、排土場13の排土点13aから排土場13の出口点13bを経てホールロード15Bに入りホールロード15B、交差点16、ホールロード15Aを通って積込場11の入口点11aに達し入口点11aから積込場11内を有人の積込機30が存在する積込点11bまで走行する。よって、積込点11bは、走行経路10A上の無人車両20の目標点となる。なお、「入口点」、「出口点」とは、予め設定された点であって、無人車両20が走行するホールロードと積込場、排土場などの各エリアとが交差する点のことである。
【0041】
図1(b)に示すように、積込場12の増設に伴い走行経路10A以外に走行経路10Bが生成される。すなわち、図1(b)に示すように、排土場13で排土を終えた無人車両20は、走行経路10Bに沿って走行する。走行経路10Bとは、無人車両20が排土場13の排土点13aから排土場13の出口点13bを経てホールロード15Bに入りホールロード15B、交差点16、ホールロード15Cを通って積込場12の入口点12aに達し入口点12aから積込場12内を有人の積込機30が存在する積込点12bまで走行する経路である。よって、積込点12bは、無人車両20の走行経路10B上の目標点となる。
【0042】
図2は、実施形態の無人車両走行システム70と当該無人車両走行システム70の外部に設けられたCADシステム80の構成を示すブロック図である。
【0043】
CADシステム80は、無人車両走行システム70の外部にあって、作業現場1の設計をCAD(Computer Aided Design;コンピュータ支援設計)の手法により行うシステムである。CADシステム80には、鉱山の地形データがCADデータとして記憶されている。CADシステム80は、CPU(数値演算プロセッサ)などの演算装置やROMやRAM、ハードディスクなどの記憶装置、キーボードやポインティングデバイス、タブレットなどの入力装置、液晶ディスプレイなどの表示装置で構成されている。
【0044】
無人車両走行システム70は、無人車両20と、積込機30及び押土機90などの有人車両と、管制装置40とから構成されている。なお、図2では、有人車両の図示を省略している。
【0045】
作業現場1には、多数の無人車両20…を管理、監視する管制装置40が設けられている。
【0046】
管制装置40には、通信装置41と処理装置42と外部入力装置43と記憶装置44と表示装置45と編集装置46が設けられている。管制装置40の通信装置41は、無線通信のためのアンテナや送信機、受信機などで構成される。処理装置42は、CPUなどの数値演算プロセッサやROM・RAMといったメモリで構成される。さらに、記憶装置44は、ROM・RAMなどのメモリやデータの書き込みや読み出しが可能なUSBメモリなどの記憶媒体、ハードディスクなどの記憶装置で構成される。また、表示装置45は、液晶モニタなどの表示装置であって、音声出力機能を備えたもので構成される。外部入力装置44は、CADシステム80と地形データ(CADデータ)を相互通信できるもので、ハードウェアインターフェースである。管制装置40の通信装置41は、無線LAN(ローカルエリアネットワーク)などの無線通信手段を用いて、複数の無人車両20…から送信された各無人車両20の位置情報を受信する。受信した位置情報は、複数の無人車両20….の管理、監視に使用されるとともに、走行経路10の生成に使用される。位置情報は、後述のようにGPSセンサなどによって計測されて求められるものである。
【0047】
一方、無人車両20には、通信装置21と処理装置22と位置計測装置23と制御装置24と記憶装置25が設けられている。通信装置21は、無線通信のためのアンテナや送信機、受信機などで構成される。処理装置22は、CPUなどの数値演算プロセッサやROM・RAMといったメモリで構成される。さらに、記憶装置25は、ROM・RAMなどのメモリやデータの書き込みや読み出しが可能なUSBメモリなどの記憶媒体で構成される。また、記憶装置25は、高い耐振動性を備えたハードディスクなどの記憶装置であってもよい。制御装置24は、無人車両20のエンジン出力制御や前輪の操舵角制御、ブレーキの制動量制御などを行うためのコントローラであって、CPUなどの数値演算プロセッサやROM・RAMといったメモリで構成される。無人車両20の位置計測装置23では、自己の車両位置が計測される。位置計測の手段としては、例えば無人車両20に設けられたタイヤ回転数センサとジャイロが使用される。これらタイヤ回転数センサの出力信号とジャイロの出力信号とに基づいて、車両位置が計測される。また、GPS衛星から送信される信号をGPSアンテナで受信し、GPSセンサで検出することにより車両位置を計測してもよい。また、走行経路の傾斜を計測する傾斜センサが傾斜検出装置27として設けられている。さらに、無人車両20の前方の障害物を検知するために、ミリ波レーダや光レーザセンサなどの障害物検出装置26が設けられている。障害物検出装置26が、障害物(例えば、岩や他の無人車両など)を検知すると、処理装置22に信号を発信し、処理装置22は、制御装置24に対して、無人車両20を減速あるいは停止させるための指令信号を発信する。さらに、後述するように測距センサ29が設けられ、走行経路10の側壁や路肩や土手との距離を計測することができる。また、図示しないステアリングセンサが、無人車両20に設けられており、前輪の操舵角度を検出し、検出された操舵角度は操舵角制御に用いられる。ステアリングセンサは、回転角センサ、例えばロータリーエンコーダなどが用いられる。
【0048】
無人車両20の位置計測装置23は、自車両の3次元位置を計測する。位置計測の手段としては、上記のように例えばGPSセンサが用いられる。
【0049】
無人車両20で計測された位置情報は、処理装置22で処理され通信装置21を介して管制装置40に送信される。そして、管制装置40からは他の無人車両、積込機30、押土機90などの有人車両にも無人車両20で計測された位置情報が送信される。
【0050】
管制装置40の通信装置41では、複数の無人車両20…から位置情報を受信する。受信した位置情報は、複数の無人車両20…の管理、監視に使用されるとともに、後述する走行制御データの修正、地形データの修正等に使用される。
【0051】
管制装置40の外部入力装置43には、CADシステム80のCADデータが入力される。CADシステム80のオペレータによるCADシステム80側のキーボードなどの操作、あるいは、管制装置40のオペレータによる管制装置40の所定のボタン操作などによって、所望のCADデータがCADシステム80の記憶装置から管制装置40の外部入力装置43に入力される。
【0052】
入力されたCADデータは、記憶装置44に記憶される。
【0053】
編集装置46は、オペレータの操作によりCADデータを加工、編集するためのコマンドが入力される装置である。編集装置45としては、例えば、キーボードやタブレットなどの複数の操作ボタンで構成された情報入力装置が用いられる。管制装置40のオペレータがそのような操作ボタンの操作をすることでコマンドの信号が処理装置42に入力される。なお、編集装置46の機能をCADシステム80に持たせて、CADシステム80を使ってCADデータを加工、編集、あるいはそれらのコマンドを入力するようにしてもよい。
【0054】
処理装置42では、編集装置46より入力されたコマンドの信号に従いCADデータを加工、編集して作業現場1の地形データが作成されるとともに、走行経路10の情報が生成される。
【0055】
表示装置45には、加工、編集途中および加工、編集後の作業現場1の地形および走行経路10が表示される。
【0056】
CADデータの加工、編集は、たとえばタッチパネルGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)装置を用いても行うことができる。編集装置46と表示装置45とが一体となったタッチパネルGUI装置の画面を接触操作して、CADデータの加工、編集を行い、画面上に、加工、編集途中および加工、編集後の作業現場1の地形および走行経路10を表示させることができる。
【0057】
ここで、作業現場1の地形データであるCADデータとは、図1(b)に示される積込場12を増設する例でいえば、ホールロード15Cの各部の路肩位置(走行経路10Bから路肩までの距離)、ホールロード15Cの各部の勾配、積込場12の境界線位置、積込場12のエリア内各部の勾配などのデータで構成されるものである。
【0058】
また、走行経路10の情報とは、図1(b)に示される積込場12を増設する例でいえば、積込場12の積込点12bまでの走行経路10B上の走行経路10のラインを構成する複数の点の位置の情報であり、無人車両20が走行制御しながら走行する際の目標位置までの情報である。
【0059】
無人車両20からは、走行中に逐次、走行経路要求指令が通信装置21を介して管制装置40に送信される。
【0060】
管制装置40の通信装置41で走行経路要求指令が受信されると、管制装置40は、走行経路10の情報および走行制御データまたは仮の走行制御データを通信装置41を介して無人車両20に送信する。ここで、走行制御データ(または仮の走行制御データ)とは、無人車両20の走行経路10上での最高速度など、無人車両20の走行、停止および操舵を制御する際に必要となるデータのことである。
【0061】
無人車両20の通信装置21では、管制装置40から送信された走行経路10の情報および走行制御データ(または仮の走行制御データ)を受信する。記憶装置25には、管制装置40から送信される走行経路10の情報および走行制御データ(または仮の走行制御データ)が記憶される。無人車両20の処理装置22は、走行経路10の情報および走行制御データ(または仮の走行制御データ)に基づいて自己の無人車両20を走行させ操舵するための制御指令を生成する。これら制御指令は、制御装置24に出力される。この結果、制御装置24は、自己の無人車両20の走行、停止および操舵を制御し、無人車両20は、走行経路10に沿って走行、停止、操舵される。
【0062】
(第1実施例)
以下、図3に示すフローチャートを参照して第1実施例について説明する。
【0063】
なお、以下においては、現在、作業現場1が図1(a)に示す状態であり、図1(b)に示される新たな積込場12をこれから増設して新たな走行経路10Bを生成する場合を想定する。
【0064】
(作業現場1の地形データの作成および新たな走行経路10Bの情報の生成)
まず、管制装置40のオペレータによって、編集装置46を操作して、作業現場1の地形データ、つまりホールロード15Cの各部の路肩位置、各部の勾配、積込場12の境界線位置、積込場12のエリア内各部の勾配などのデータが作成され、新たな走行経路10Bの情報、つまり積込場12の積込点12bまでの新たな走行経路10Bの各目標位置の情報が生成される(ステップ101)。ここで、管制装置40のオペレータでなく、CADシステム80のオペレータが、CADシステム80を操作して、作業現場1の地形データ、つまりホールロード15Cの各部の路肩位置、各部の勾配、積込場12の境界線位置、積込場12のエリア内各部の勾配などのデータを作成し、その作成されたデータを外部入力装置44を介して管制装置40に転送するようにしてもよい。管制装置40のオペレータとCADシステム80のオペレータは、同一のオペレータでも異なるオペレータであってもよい。
【0065】
(作業現場1の施工)
次に、作成された作業現場1の地形データに基づいて新たな走行経路10Bを含む作業現場1が施工される。例えば、管制装置40で作成された作業現場1の地形データが施工業者に送られ、施工業者がホールロード15Cおよび積込場12を施工(造成)する(ステップ102)。
【0066】
(仮の走行制御データに従い走行して新たな走行経路10Bの実際の地形データを取得)
管制装置40の処理装置42では、作業現場1の地形データに基づいて仮の走行制御データが生成される。仮の走行制御データは、安全性を考慮して作成される。これは、CADデータに基づいて作成された作業現場1の地形データと、実際に施工された作業現場1の地形との間に、ずれがあることを考慮したものである。例えば、地形データ上は、ホールロード15Cの下り勾配(以下、単に勾配という)の大きさがG1であり緩やかであって走行経路10Bを、勾配G1に応じた最高速度V1で無人車両20を走行させてもブレーキの効きに問題なく、ブレーキに過度な負荷をかけないと判断される場合であっても、施工された実際のホールロード15Cの勾配がG2(対応する最高速度はV2)であり地形データで示される勾配G1より急であった場合には、最高速度V1で無人車両20を走行させると、ブレーキの効きが不十分であったり、ブレーキに過度な負荷をかけたりするおそれがある。そこで、実際の地形の勾配は、想定される中で最も大きな勾配G3であるとみなし、地形データ上の勾配G1に応じた最高速度V1よりも低い、安全にブレーキを効かせることができる仮の走行速度V3に最高速度が設定される。なお、勾配の大きさは、G1<G2<G3の関係にあるとし、最高速度は、V1>V2>V3の関係にあるとする。つまり、仮の走行制御データの一つのデータとして、最高速度V3が作成、設定される。
【0067】
仮の走行制御データが生成されると、管制装置40から、新たな走行経路10Bの情報および仮の走行制御データが無人車両20に送信される。そして、無人車両20は、仮の走行制御データ(例えば最高速度をV3とする仮の走行速度)に従い新たな走行経路10Bに沿って走行される。
【0068】
無人車両20には、無人車両20の位置を計測するための位置計測装置23が搭載されており、新たな走行経路10Bに沿って走行しながら、逐次、位置計測装置23によって新たな走行経路10Bの各点の3次元位置Pを計測する。そして、計測した新たな走行経路10Bの各点の3次元位置Pに基づいて演算処理を行うことにより、新たな走行経路10Bの実際の勾配G2、つまり新たな走行経路10Bの実際の地形データを取得する。また、傾斜検出装置27から得られる走行経路10Bの実際の勾配G2からも実際の地形データを取得することができる(ステップ103)。
【0069】
(仮の走行制御データの修正)
無人車両20で取得された新たな走行経路10Bの実際の地形データは、無線通信によって管制装置40に送られる。管制装置40の処理装置42は、新たな走行経路10Bの実際の地形データ、つまり実際の勾配G2に基づいて仮の走行制御データ、つまり最高速度V3が、実際の勾配G2に応じた最高速度V2になるように修正する(ステップ104)。
【0070】
(修正された走行制御データに従い走行制御)
管制装置40で修正された走行制御データ、つまり実際の勾配G2に応じた最高速度V2は、新たな走行経路10Bの情報とともに、次に走行すべき無人車両20に無線通信で送られる。
【0071】
修正された走行制御データおよび新たな走行経路10Bの情報を受信した無人車両20は、修正された走行制御データ、つまり実際の勾配G2に応じた最高速度V2に従い新たな走行経路10Bに沿って走行する(ステップ105)。
【0072】
以上のように、第1実施例によれば、新たな走行経路10Bが施工される前の段階で、新たな走行経路10Bの情報をCADデータに基づいて生成することができ、新たな走行経路10Bが施工された後、即座に、新たな走行経路10Bの情報を無人車両20に与えることにより新たな走行経路10Bに沿って無人車両20を走行させることができる。CADデータを用いて新たな走行制御データや走行経路10Bを生成するため、無人車両20の走行(運用)までの工程を従来よりも削減でき、CADデータの信頼度を考慮して仮の走行制御データから走行制御データが最終的に作成されるため、より生産性の高い走行制御データ(走行経路10Bの勾配に適した最高速度)のもとで無人車両20を走行(運用)させることができる。
【0073】
(第2実施例)
上述した第1実施例に対しては種々の変形した実施が可能である。
【0074】
第1実施例では、作業現場1を施工した後、仮の走行制御データに従い走行する「車両」を、無人車両20としているが、有人車両であってもよい。また、仮の走行制御データに従い走行する「車両」として積荷を運搬する運搬車両20を走行させているが、運搬車両20でなくてもよい。例えば計測専用の有人車両を仮の走行制御データに従い走行させる実施も可能である。
【0075】
特に積荷を運搬する無人車両20を仮の走行制御データに従い走行させる場合には、新たな走行経路10Bの実際の地形データを計測する作業と同時に運搬作業を行うことができ、運搬作業を行わない計測専用の車両を走行させた場合に比べて無人車両20の稼動効率を更に向上させ、作業現場の生産性を一層向上させることができる。
【0076】
作業現場1の施工前のCADデータに基づき作成される作業現場1の地形データ(勾配G1)は、施工後の実際の地形(勾配G2)を反映したものではないため、信頼性が低い。このため第1実施例では、地形データ(勾配G1)に応じた最高速度V1よりも低い、過度にブレーキに負荷をかけずに安全にブレーキを効かせることができる速度V3を最高速度をとして設定するようにしていた。ただし、これは一例であり、地形データの信頼度が高ければ仮の走行速度(最高速度)を速度V3より大きく設定してもよく、また信頼度が低ければ仮の走行速度(最高速度)を速度V3よりも更に小さくしてもよい。
【0077】
また、第1実施例では、一台の無人車両20を仮の走行制御データで走行させて、仮の走行制御データを修正している。しかし、複数台の無人車両20…を仮の走行制御データで走行させて仮の走行制御データの修正を行なう実施も可能である。
【0078】
この場合、取得される実際の地形データである勾配のデータの信頼度に応じて仮の走行制御データである最高速度を緩和することができる。例えば、複数の無人車両20…が順次走行して取得される勾配のデータが蓄積されていくに応じて勾配のデータのバラツキが小さくなり各機種間のバラツキが小さくなっていくものとみなし、徐々に仮の走行速度(最高速度)による速度制限を低速の最高速度V3から高速の最高速度V2に近づく方向に変化させることができる。
【0079】
また、第1実施例では、取得された新たな走行経路10Bの実際の地形データに基づいて仮の走行制御データを修正しているが、取得された新たな走行経路10Bの実際の地形データに基づいて作業現場1の地形データを修正してもよい。すなわち、取得された新たな走行経路10Bの実際の勾配がG2であれば、作業現場1の地形データのパラメータであるホールロード15Cの勾配の値を、G1からG2に修正することができる。勾配の値の修正は、CADシステム80のタブレットやキーボード、あるいは、管制装置40の編集装置46のキーボードなどを操作することで可能である。
【0080】
(第3実施例)
第1実施例のステップ101(図3)の工程において、新たな走行経路10Bに沿って無人車両20を走行させるシミュレーションを実行させてもよい。
【0081】
以下、図4に示すフローチャートを参照して第3実施例について説明する。
【0082】
ステップ201〜203では、第1実施例のステップ101(図3)と同様に、作業現場1の地形データを作成して新たな走行経路10Bの情報の生成する処理が行われる。
【0083】
すなわち、まずCADデータがCADシステム80から外部入力装置44を介して管制装置40に入力されて、作業現場1の地形データ、つまりホールロード15Cの各部の路肩位置、各部の勾配、積込場12の境界線位置、積込場12のエリア内各部の勾配G1´などのデータが作成され、積込場12までの走行経路10Bの目標位置の情報が生成される(ステップ201)。
【0084】
次に作業現場1の地形データ上で無人車両20を走行させるシミュレーションを行ない、地形データ(勾配G1´)が適正なものであるかどうかの検証を行う。なお、シミュレーションで無人車両20を走行させる際の最高速度は、地形データ(勾配G1´)に応じた最高速度V1´とし、仮の走行速度V3(<V1´)のような速度制限は設けないものとする(ステップ202)。シミュレーションは、管制装置40の記憶装置44に保存されているシミュレーションプログラムを処理装置42で実行してもよいし、図示しないワークステーションやパーソナルコンピュータで、シミュレーションプログラムを実行させてもよい。
【0085】
シミュレーションを繰り返し行ない、最終的に適正な作業現場1の地形データ(勾配G1)、新たな走行経路10Bの情報を決定する。また、地形データに対応する走行制御データ(勾配G1に応じた最高速度V1)を最終的に決定する(ステップ203)。ここでの走行制御データ(勾配G1に応じた最高速度V1)は、シミュレーション上で決定された走行制御データである。後述する仮の走行制御データ(最高速度V3)とは異なる。シミュレーションでは、シミュレーション上での無人車両20の走行制御データを与えて、例えば積込み場から排土場間の走行シミュレーションを行い、無人車両20の生産性を評価することができる。つまり、シミュレーションによって、地形データの適正を評価することができる。積込み場から排土場間の走行時間をシミュレーションすることで地形データが適正な形状であるかを評価することができる。例えば、無駄な蛇行路があれば、生産性を悪化させる要因となり、地形データは適正な形状とはいえないのである。
【0086】
次のステップ204では、第1実施例のステップ102(図3)と同様に、作成された作業現場1の地形データに基づいて新たな走行経路10Bを含む作業現場1が施工される(ステップ204)。
【0087】
次のステップ205、206では、第1実施例のステップ103(図3)と同様に、仮の走行制御データに従い無人車両20を走行させて、新たな走行経路10Bの実際の地形データを取得する処理が行われる。
【0088】
すなわち、実際の地形の勾配は大きな勾配G3であるとみなし、地形データ上の勾配G1に応じた最高速度V1よりも低い、安全にブレーキを効かせることができる仮の走行速度V3に最高速度が設定されて、無人車両20が走行される(ステップ205)。
【0089】
無人車両20は、新たな走行経路10Bに沿って走行しながら、位置計測装置23によって新たな走行経路10Bの各点の3次元位置Pを計測し、計測した新たな走行経路10Bの各点の3次元位置Pに基づいて新たな走行経路10Bの実際の勾配G2(新たな走行経路10Bの実際の地形データ)を取得する(ステップ206)。また、傾斜検出装置27から得られる走行経路10Bの実際の勾配G2からも実際の地形データを取得することができる。
【0090】
次のステップ207〜211では、第1実施例のステップ104(図3)と同様に、仮の走行制御データの修正が行なわれる。
【0091】
すなわち、取得された新たな走行経路10Bの実際の地形データ(勾配G2)とCADデータから得られた地形データ(勾配G1)との差異が比較され、取得された新たな走行経路10Bの実際の地形データ(勾配G2)が、無人車両20を走行させるにあたり生産性と安全性を確保できるものであるか否かが判断される。
【0092】
例えば、取得された新たな走行経路10Bの勾配のデータがG2であり、CADデータから得られた勾配のデータG1と比較して大きな差異がなく、その勾配G2で無人車両20を走行させても無人車両20のブレーキにかかる負担が少なく、勾配G2に応じた走行速度V2で走行させても生産性上、問題がないと判断された場合には(ステップ207の判断N)、次のステップ208に進む。
【0093】
しかし、取得された勾配のデータがG4(たとえばG4>G3)と大きく、CADデータから得られた勾配のデータG1と比較して大きな差異があり、無人車両20のブレーキにかかる負担が大きく、その勾配G4に応じた走行速度V4(たとえばV4<V3)で走行させると生産性上問題が生じると判断された場合には(ステップ207の判断Y)、ステップ209に進み、ステップ201〜203の処理を再度行い、作業現場1の地形データを再度作成するとともに新たな走行経路10Bの情報、走行制御データを再度生成する(ステップ209)。実際の勾配のデータG2とCADデータの勾配のデータG1とに大きな差異があるとの判断は、以下のように行なわれる。例えば、差異を大と判断する基準値を±5度とあらかじめ設定しておき、その基準値を記憶装置44に記憶させておく。例えば実際の勾配のデータG2が20度であり、CADデータの勾配のデータG1が10度(あるいは30度)であった場合、その差は10度あり、基準値以上の差があるとして、差異を大と判断する。すなわち、この場合は、ステップ207から209へと進む。一方、実際の勾配のデータG2が20度であり、CADデータの勾配のデータG1が18度(あるいは22度)であった場合は、基準値以下の差であるとして差異は小と判断する。すなわち、この場合は、ステップ207から208へと進む。
【0094】
次に、ステップ204の処理を再度行い、再度作成された作業現場1の地形データに基づいて新たな走行経路10Bを含む作業現場1を再度施工(修正)し(ステップ210)、ステップ211に進む。
【0095】
ステップ208では、取得された新たな走行経路10Bの実際の地形データに基づいて仮の走行制御データを修正する処理が行われる。この場合、第2実施例と同様に複数台の無人車両20…を仮の走行制御データで走行させて仮の走行制御データの修正を行なうことができる。
【0096】
例えば、複数の無人車両20…を順次走行させて、新たな走行経路10Bの実際の地形データを、信頼度が十分となる必要回数、取得するようにする。
【0097】
新たな走行経路10Bの実際の地形データの取得が必要回数に達していなければ(ステップ211の判断「必要回数に達しない」)、再度ステップ205に進み、同様の処理を必要回数に達するまで繰り返す。必要回数に達したならば(ステップ211の判断「必要回数に達した」)、新たな走行経路10Bの実際の地形データの信頼度が十分であるみなし、蓄積されたデータを平均処理する等して得られた作業現場の実際の地形データ(勾配G2)および走行制御データ(最高速度V2)を最終的に修正されたデータとして決定する
(ステップ211)。
【0098】
次のステップ212では、第1実施例のステップ105(図3)と同様に、無人車両20は、修正された走行制御データ、つまり実際の勾配G2に応じた最高速度V2にしたがい新たな走行経路10Bに沿って走行(運用)される(ステップ212)。
【0099】
(第4実施例)
以上の各実施例では、新たに積込場12を増設する例を挙げて説明した。しかし、これは一例であり、作業現場1の任意の部分を施工する場合に本発明を適用することができる。
【0100】
例えば、図5(a)に示すように、作業現場1の作業の進展に伴い図1(a)に示すホールロード15Aが、より長いホールロード15A´に延び、図1(a)に示す積込場11が、より遠い位置に更新された積込場11´となった場合には、図1(a)に示す走行経路10Aを、ホールロード15A´、積込場11´に応じた走行経路10A´に作り直す必要がある。本発明によれば、上述した各実施例と同様に、CADデータに基づきホールロード15A´、積込場11´を含む地形データを作成して、新たな走行経路10A´を生成することができ、新たな走行経路10A´に沿って無人車両20を走行させることができる。
【0101】
また、図5(b)に示すように、新たに交差点16´を施工する場合にも本発明を適用することができる。交差点16´では、複数の走行経路10C、10D…を走行する無人車両20、20…同士が安全に、しかも速度を大きく落とすことなくすれ違うことができることが生産性と安全性の点で望ましい。本発明によれば、CADデータに基づき、無人車両20、20…同士が安全に、しかも速度を大きく落とすことなくすれ違うことができる走行経路10C、10D…を迅速に探索することができる。
【0102】
また、図6(a)に示すように、直線状のホールロード15Dの土手19の一部19´(路肩位置)が局所的に大きく湾曲している地形の場合には、従来にあっては、破線で示すように、土手19´の形状に沿って曲がった走行経路10E´を生成してしまうことがあり、無人車両20の速度が落ち生産性が低下することがあった。しかし、本発明によれば、CADデータに基づき、ホールロード15Dに沿った直線状の走行経路10Eを迅速に探索することができ、生産性を落とすことなく無人車両20を走行させることができる。
【0103】
(第5実施例)
第1実施例〜第3実施例では、地形データのパラメータとして勾配Gを例にとり、実際の勾配のデータ(G2)に応じて走行制御データ(最高速度V3)を修正する場合について説明した。しかし、これは一例であり、地形データのうち任意のパラメータに応じて走行制御データを修正する実施が可能である。
【0104】
例えば、地形データの一つのパラメータである路肩位置に応じて走行制御データを修正する実施が可能である。
【0105】
図6(b)は、ホールロード15Eの横断面を示す。ホールロード15Eの路肩位置には土手19が施工されており、無人車両20は、新たな走行経路10Fに沿って走行するものとする。
【0106】
この場合、無人車両20には、土手19(路肩位置)を検出するために、自車20の周囲(側方、前方、後方)に存在する障害物までの距離を計測する測距センサ29、たとえばレーザーセンサ、ミリ波レーダなどが搭載される。この測距センサ29により自車20から土手19までの距離Sが計測される。
【0107】
本実施例は、例えば、次のような形態が考えられる。
【0108】
a)ホールロード15Eが施工されたならば、新たな走行経路10Fに沿って無人車両20を仮の走行制御データ、つまり仮の速度で走行させる。そして、無人車両20に搭載された測距センサ29にて走行経路10Fから土手19(路肩位置)までの距離Sを計測して、距離Sに応じた安全な速度となるように仮の速度を適正な速度に修正する。距離Sの大きさと無人車両20が安全に走行できる速度との関係は、距離Sと速度との関係のマッピングデータとして記憶装置44あるいは記憶装置25に記憶されている。よって、測定された距離Sに応じて、処理装置42あるいは処理装置22で、仮の速度が適正な速度に修正される。つまり、距離Sが大きければ、無人車両20は高速で走行し、距離Sが小さければ、無人車両20は低速で走行するような設定がなされる。
【0109】
b)同様にして無人車両20に搭載された測距センサ29にて走行経路10Fから土手19(路肩位置)までの距離Sを計測するが、距離Sが安全を確保できない程度に小さいものである場合には、第3実施例のステップ209、210(図4)と同様にして、CADデータに基づき作業現場1の地形データ(路肩位置)を再度作成するとともに新たな走行経路10Fの情報、走行制御データを再度生成する。
【0110】
c)測距センサ29により無人車両20の前方に土手19を検出した場合には、走行経路10F上に障害物があり安全を確保できないものと判断して、減速、停止した上で、無人車両20から管制装置40に対して、それまでに取得した地形データを送信し、第3実施例のステップ209、210(図4)と同様にして、CADデータに基づき作業現場1の地形データ(路肩位置)を再度作成するとともに新たな走行経路10Fの情報、走行制御データを再度生成する。
【符号の説明】
【0111】
1 作業現場、10 走行経路、12、13 積込場 、20 無人車両、40 管制
装置、70 無人車両走行システム、80 CADシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場内の走行経路に沿って無人車両を走行させる無人車両の走行システムにおいて、
作業現場の地形データを作成して新たな走行経路の情報を生成するステップと、
作成された地形データに基づいて新たな走行経路を含む作業現場を施工するステップと、
生成された新たな走行経路の情報を車両に与え、仮の走行制御データに従い当該新たな走行経路に沿って走行させて、新たな走行経路の実際の地形データを取得するステップと、
取得された新たな走行経路の実際の地形データに基づいて前記仮の走行制御データを修正するステップと、
修正された走行制御データに従い無人車両を走行させるステップと
を含む無人車両の走行システムにおける走行制御方法。
【請求項2】
取得された新たな走行経路の実際の地形データに基づいて作業現場の地形データを修正するステップを含むこと
を特徴とする請求項1記載の無人車両の走行システムにおける走行制御方法。
【請求項3】
作業現場の施工前に作成される地形データは、勾配のデータを含むとともに、仮の走行制御データは、車両の仮の走行速度を含み、
作業現場の施工前に作成される地形データのうち勾配のデータの信頼度が高くなるに応じて仮の走行速度による速度制限を緩和
することを特徴とする請求項1または2記載の無人車両の走行システムにおける走行制御方法。
【請求項4】
作業現場の施工前に作成される地形データは、勾配のデータを含むとともに、仮の走行制御データは、車両の仮の走行速度を含み、
作業現場の施工後に取得される新たな走行経路の実際の勾配のデータの信頼度が高くなるに応じて仮の走行速度による速度制限を緩和することを特徴とする請求項1から3に記載の無人車両の走行システムにおける走行制御方法。
【請求項5】
作業現場の施工前に作成される地形データは、勾配のデータを含むとともに、仮の走行制御データは、車両の仮の走行速度を含み、
実際の地形データの取得を複数回行うことで作業現場の勾配のデータの信頼度を判断し、
作業現場の勾配のデータの信頼度が高くなるに応じて仮の走行速度による速度制限を緩和
することを特徴とする請求項1から4に記載の無人車両の走行システムにおける走行制御方法。
【請求項6】
新たな走行経路の実際の地形データを取得する車両および修正された走行制御データに従い走行する無人車両は、積荷を運搬する無人車両であることを特徴とする請求項1から5に記載の無人車両の走行システムにおける走行制御方法。
【請求項7】
作業現場内の走行経路に沿って無人車両を走行させる無人車両の走行システムにおいて、
作業現場の地形データを作成して新たな走行経路の情報を生成し、
作成された地形データに基づいて新たな走行経路を含む作業現場を施工し、
生成された新たな走行経路の情報を車両に与え、仮の走行制御データに従い当該新たな走行経路に沿って走行させて、新たな走行経路の実際の地形データを取得し、
取得された新たな走行経路の実際の地形データに基づいて前記仮の走行制御データを修正し、
修正された走行制御データに従い無人車両を走行させること
を特徴とする無人車両の走行システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−118694(P2012−118694A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266889(P2010−266889)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】