無段変速機の油圧制御装置
【課題】ポンプモータの回転状態にかかわらず、冷却・潤滑のために供給されるオイル量を適切かつ容易に制御することのできる無段変速機の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】可変容量型の油圧ポンプモータ12,13を備え、出力部材に伝達されるトルクが油圧ポンプモータ12,13の容量と油圧とに応じて変化する無段変速機の油圧制御装置において、油圧ポンプモータ12,13の間で圧油を循環させる閉回路C0と、油圧ポンプモータ12,13ならびに無段変速機の潤滑必要部位D1,D2に冷却もしくは潤滑用の作動油を供給する潤滑回路C1と、閉回路C0に圧油を補給するとともに、潤滑回路C1に前記作動油を供給する補給ポンプ35と、油圧ポンプモータ12,13の容量と、補給ポンプ35から油圧ポンプモータ12,13へ供給する作動油の流量とを連動させて変化させる作動装置56,57とを備えている。
【解決手段】可変容量型の油圧ポンプモータ12,13を備え、出力部材に伝達されるトルクが油圧ポンプモータ12,13の容量と油圧とに応じて変化する無段変速機の油圧制御装置において、油圧ポンプモータ12,13の間で圧油を循環させる閉回路C0と、油圧ポンプモータ12,13ならびに無段変速機の潤滑必要部位D1,D2に冷却もしくは潤滑用の作動油を供給する潤滑回路C1と、閉回路C0に圧油を補給するとともに、潤滑回路C1に前記作動油を供給する補給ポンプ35と、油圧ポンプモータ12,13の容量と、補給ポンプ35から油圧ポンプモータ12,13へ供給する作動油の流量とを連動させて変化させる作動装置56,57とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、油圧を利用して動力を伝達することにより変速比を連続的に変化させることのできる無段変速機に関し、特にその油圧を制御する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンなどの動力装置によって油圧ポンプを駆動し、その油圧ポンプで発生した圧油を油圧モータに供給すれば、油圧を介して動力を伝達することができ、またその油圧を制御することにより、伝達するトルクもしくは動力を適宜に変化させることができる。その一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されている変速機は、一対の遊星歯車機構のそれぞれにおける反力要素に可変容量型流体圧ポンプモータ(油圧ポンプモータ)が連結され、各可変容量型油圧ポンプモータの吐出口同士、および吸入口同士が互いに連結されて閉回路が形成されている。また、各遊星歯車機構における入力要素にはエンジンなどの動力源が出力した動力が入力されるように構成されている。さらに、各遊星歯車機構の出力要素と一体の中間軸上には、いわゆる固定段を設定するための駆動ギヤが配置され、それぞれの駆動ギヤに噛み合っている従動ギヤが出力軸上に配置されている。そして、これらの駆動ギヤと従動ギヤとからなる各ギヤ対を、トルクを伝達可能な状態とトルクを伝達しない状態とに切り換える同期連結機構(いわゆるシンクロ)が設けられている。
【0003】
したがって、いずれかの可変容量型油圧ポンプモータをロックして前記反力要素を固定すれば、動力源が出力した動力が、その反力要素を有する遊星歯車機構を介して一方の中間軸に伝達され、さらにその中間軸に対してシンクロによって連結されているギヤ対を介して出力軸に動力が伝達される。その場合の変速比は、動力の伝達に関与している前記ギヤ対のギヤ比に応じた変速比となる。
【0004】
この場合の可変容量型油圧ポンプモータのロックは、他方の可変容量型油圧ポンプモータの押出容積(容量)をゼロすなわち最小にすることにより設定される。すなわち、各可変容量型油圧ポンプモータは閉回路によって連通されているので、他方の可変容量型油圧ポンプモータの押出容積をゼロにすれば、圧油の流動が生じなくなるので、一方の可変容量型油圧ポンプモータの押出容積を最大にするなど、ゼロより大きい押出容積とすることにより、その一方の可変容量型油圧ポンプモータがロックされ、その回転が阻止される。
【0005】
また、各可変容量型油圧ポンプモータの押出容積をゼロより大きくするとともに、一方の可変容量型油圧ポンプモータ側のシンクロによって所定のギヤ対をトルク伝達可能な状態とし、かつ他方の可変容量型油圧ポンプモータ側のシンクロによって他のギヤ対をトルク伝達可能な状態にすると、各ギヤ対のギヤ比に応じて決まる変速比の中間の値の変速比が設定される。すなわち、一方の可変容量型油圧ポンプモータが圧油を発生させ、これが他方の可変容量型油圧ポンプモータに供給されてこれがモータとして動作し、その動力が他方のギヤ対を介して出力軸に伝達される。その結果、出力軸には、このような流体を介して伝達された動力と、一方の可変容量型油圧ポンプモータを介して機械的に伝達された動力とを合成した動力が現れる。そのうちの流体を介した動力は、各可変容量型油圧ポンプモータの押出容積を連続的に変化させることにより連続的に変化させることが可能であるため、結局、変速機の全体としての変速比を連続的に、すなわち無段階に設定することができる。
【0006】
また、この特許文献1に記載されている変速機は、2つの可変容量型油圧ポンプモータの吐出口同士を連通する油路に、電気的に制御可能なソレノイドバルブ(電磁制御弁)によって制御圧を発生させる圧力制御弁が設けられていて、各可変容量型油圧ポンプモータの吐出圧あるいはそれに関連する軸トルクをソレノイドバルブを介して電気的に制御できるようになっている。
【0007】
なお、特許文献2には、回転体に作用する負荷に応じて作動油の冷却状態と非冷却状態とを切り換えるように構成された回転体を備えた流体機械に関する発明が記載されている。この特許文献2に記載されている装置は、密閉容器内の上部に油圧ポンプ機構が、下部に油圧モータ機構がそれぞれ収容されたHST(ハイドロ・スタティック・トランスミッション)に対し、密閉容器内に隣接して冷却水路が形成されるとともに、その冷却水路に繋がる冷却水配管に電磁弁が設けられていて、油圧回路の回路圧が所定値以下の場合には電磁弁を閉鎖する一方、回路圧が所定値を超えると電磁弁を開放して潤滑油の冷却を行うように構成されている。
【0008】
また、特許文献3には、自動変速機の変速機構部での発熱量を算出し、その発熱量に基づいて必要潤滑油量を決定して潤滑油を供給することにより、伝動効率の低下および摩擦係合要素の温度上昇を防止するように構成された自動変速機の潤滑油制御装置に関する発明が記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2006−266493号公報
【特許文献2】特開2001−59562号公報
【特許文献3】特開平10−141480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1に記載されている変速機において、各可変容量型油圧ポンプモータ同士を連通している閉回路には、オイルを補給するためのチャージポンプあるいはブーストポンプなどと称されるオイルポンプが設けられている。このオイルポンプは、エンジンなどの動力源によって駆動され、各可変容量型油圧ポンプモータ同士を連通している閉回路の油圧を補給するとともに、変速機の歯車機構やシンクロ等のクラッチ機構などの変速機の潤滑必要部位へ、冷却および潤滑のためのオイルを供給するようになっている。
【0011】
そのため、上記の特許文献1に記載されている変速機では、可変容量型油圧ポンプモータの回転状態により、オイルポンプによって変速機の潤滑必要部位へ供給されるオイル量が変動する場合がある。すなわち、このオイルポンプは、各可変容量型油圧ポンプモータ同士を連通している閉回路における不可避的なオイル漏れなどにより、閉回路での油圧の不足を補うために閉回路へ圧油を供給するため、例えば、可変容量型油圧ポンプモータの回転数が高く、閉回路におけるオイル漏れが多くなった場合は、閉回路へ多量のオイルが供給され、反対に、可変容量型油圧ポンプモータの回転数が低く、閉回路におけるオイル漏れが少ない場合には、閉回路へ少量のオイルが供給されることになる。
【0012】
オイルポンプによる閉回路へのオイルの供給量が多くなると、変速機の潤滑必要部位へのオイルの供給量が少なくなり、反対に、オイルポンプによる閉回路へのオイルの供給量が少なくなると、変速機の潤滑必要部位へのオイルの供給量が多くなる。したがって、可変容量型油圧ポンプモータの回転状態が変動することにより、変速機の潤滑必要部位へのオイルの供給量も変動することになり、可変容量型油圧ポンプモータの回転状態によっては、潤滑必要部位へのオイルの供給が不足してしまったり、逆に、潤滑必要部位へのオイルの供給が過剰になって変速機の伝動効率が低下してしまうなどの課題があった。
【0013】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、可変容量型の油圧ポンプモータを使用した無段変速機において、油圧ポンプモータの回転状態にかかわらず、冷却もしくは潤滑のために供給されるオイルの油量を適切に、かつ容易に制御することのできる無段変速機の油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、動力源が出力した動力によって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、その油圧ポンプが出力した圧油が供給されて駆動されることにより出力部材に動力を出力する可変容量型の油圧モータとを備え、前記出力部材に伝達されるトルクがこれらの油圧ポンプおよび油圧モータの容量と油圧とに応じて変化する無段変速機の油圧制御装置において、前記油圧ポンプと油圧モータとの間で圧油を循環させる閉回路と、前記油圧ポンプおよび油圧モータならびに前記無段変速機の潤滑必要部位に冷却もしくは潤滑用の作動油を供給する潤滑回路と、前記閉回路に圧油を補給するとともに、前記潤滑回路に前記作動油を供給する補給ポンプと、前記油圧ポンプおよび油圧モータの容量と、前記補給ポンプから前記油圧ポンプおよび油圧モータへ供給する前記作動油の流量とを連動させて変化させる作動装置とを備えていることを特徴とする無段変速機の油圧制御装置である。
【0015】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記油圧ポンプおよび油圧モータは、ポンプおよびモータの両方の機能を備えた可変容量型の第1油圧ポンプモータと第2油圧ポンプモータとを含み、前記無段変速機は、前記動力源から動力が入力される入力要素と前記出力部材に対して伝動機構を介して動力を出力する出力要素と前記第1油圧ポンプモータが連結された反力要素とで差動作用を行う第1差動機構と、前記動力源から動力が入力される他の入力要素と前記出力部材に対して他の伝動機構を介して動力を出力する他の出力要素と前記第2油圧ポンプモータが連結された他の反力要素とで差動作用を行う第2差動機構と、前記各伝動機構を選択的にトルク伝達可能な状態にする切換機構とを備え、前記潤滑必要部位は、前記第1および第2差動機構と、それら第1および第2差動機構に常時もしくは選択的に連結される前記各伝動機構および各切換機構とを含むことを特徴とする無段変速機の油圧制御装置である。
【0016】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記潤滑回路は、前記第1油圧ポンプモータの容量の変化と連動して流量が変化する第1流量制御弁が設けられるとともに前記補給ポンプから前記第1油圧ポンプモータもしくは第2油圧ポンプモータへ前記作動油を供給する第1供給油路と、前記第2油圧ポンプモータの容量の変化と連動して流量が変化する第2流量制御弁が設けられるとともに前記補給ポンプから前記第2油圧ポンプモータもしくは第1油圧ポンプモータへ前記作動油を供給する第2供給油路と、前記第1油圧ポンプモータに供給された前記作動油を前記潤滑必要部位へ流通させる第1接続油路と、前記第2油圧ポンプモータに供給された前記作動油を前記潤滑必要部位へ流通させる第2接続油路とを備え、前記作動装置は、前記第1油圧ポンプモータの容量と前記第1流量制御弁の流量とを連動させて電気的に制御可能な第1電磁制御弁と、前記第2油圧ポンプモータの容量と前記第2流量制御弁の流量とを連動させて電気的に制御可能な第2電磁制御弁とを含むことを特徴とする無段変速機の油圧制御装置である。
【0017】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記第1電磁制御弁は、前記第1油圧ポンプモータの容量が増加するほど前記第1供給油路の流量が減少するように前記第1油圧ポンプモータと前記第1流量制御弁とを制御可能に構成され、前記第2電磁制御弁は、前記第2油圧ポンプモータの容量が増加するほど前記第2供給油路の流量が減少するように前記第2油圧ポンプモータと前記第2流量制御弁とを制御可能に構成されていることを特徴とする無段変速機の油圧制御装置である。
【0018】
また、請求項5の発明は、請求項3または4の発明において、前記潤滑回路は、前記第1供給油路により前記補給ポンプと相対的に低回転数の前記油圧ポンプモータとを接続し、かつ前記第2供給油路により前記補給ポンプと相対的に高回転数の前記油圧ポンプモータとを接続した第1供給状態と、前記第1供給油路により前記補給ポンプと前記相対的に高回転数の油圧ポンプモータとを接続し、かつ前記第2供給油路により前記補給ポンプと前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータとを接続した第2供給状態とに選択的に切り換える第1方向切換弁と、前記第1接続油路により前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータとその相対的に低回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続し、かつ前記第2接続油路により前記相対的に高回転数の油圧ポンプモータとその相対的に高回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続した第1接続状態と、前記第1接続油路により前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータと前記相対的に高回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続し、かつ前記第2接続油路により前記相対的に高回転数の前記油圧ポンプモータと前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続した第2接続状態とに選択的に切り換える第2方向切換弁とを備え、前記作動油の温度を検出する油温検出手段と、前記油温検出手段により検出された前記油温に基づいて前記第1および第2方向切換弁の切り換え状態を制御する切換弁制御手段とを更に備えていることを特徴とする無段変速機の油圧制御装置である。
【0019】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記切換弁制御手段は、前記油温検出手段により検出された前記油温が予め定められた所定温度以下の場合に、前記第1供給油路および第2供給油路を前記第1供給状態にし、かつ前記第1接続油路および第2接続油路を前記第1接続状態にした引き摺り低減モードを設定するとともに、前記油温が前記所定温度よりも高い場合に、前記第1供給油路および第2供給油路を前記第2供給状態にし、かつ前記第1接続油路および第2接続油路を前記第2接続状態にした冷却促進モードを設定する手段を含むことを特徴とする無段変速機の油圧制御装置である。
【0020】
そして、請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明において、前記補給ポンプから吐出された油圧を所定の圧力に設定するリリーフ弁を更に備え、前記潤滑回路は、前記リリーフ弁から排出される圧油を前記作動油として前記油圧ポンプと油圧モータとに供給する回路を含むことを特徴とする無段変速機の油圧制御装置である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、可変容量型の油圧ポンプが動力源によって駆動され、その油圧ポンプから可変容量型の油圧モータに油圧が供給されてこれが駆動させられる。すなわち、流体を介して動力が伝達され、その油圧を介した動力の伝達量を連続的に変化させることにより、変速比が無段階に変化する。このようにして動力を伝達することにより油圧ポンプや油圧モータあるいは無段変速機内の動力伝達部で発熱するので、これらを冷却するために潤滑回路に冷却もしくは潤滑用の作動油が供給されて流通させられ、油圧ポンプや油圧モータ、あるいは無段変速機の動力伝達部すなわち潤滑必要部位が作動油によって冷却もしくは潤滑される。その場合、可変容量型の油圧ポンプや油圧モータの容量が変化させられることにより、それら油圧ポンプや油圧モータの回転状態が変化すると、それら油圧ポンプや油圧モータあるいは潤滑必要部位における作動油の必要量も変化するが、可変容量型の油圧ポンプや油圧モータの容量が変化させられる際に、それら油圧ポンプや油圧モータあるいは潤滑必要部位へ供給される作動油の油量すなわち流量が、前記容量の変化に連動して同時に変化させられる。そのため、油圧ポンプや油圧モータの回転状態の変化に応じて、油圧ポンプや油圧モータあるいは潤滑必要部位へ供給する作動油の油量を、適切に、かつ特別な制御システムを設けることなく容易に制御することができる。その結果、可変容量型の油圧ポンプや油圧モータの回転状態が変化する場合であっても、油圧ポンプや油圧モータあるいは潤滑必要部位へ供給される作動油が不足したり、あるいは作動油が過剰に供給されたりすることを回避して、作動油の供給を効率良く行うことができる。
【0022】
また、請求項2の発明によれば、可変容量型の油圧ポンプモータが差動機構に対して反力を与え、その反力と動力源から入力されたトルクとが合成されて、出力要素から伝動機構および切換機構を介して出力部材に動力が伝達される。このような動力伝達系統が少なくとも2系統設けられているので、一方の油圧ポンプモータを空転させ、かつ他方の油圧ポンプモータが反力を出力すれば、一方の動力伝達系統を介して動力が出力され、その動力伝達系統における伝動機構で決まる変速比を設定することができる。また、2つの動力伝達系統を、それぞれの切換機構によってトルク伝達可能な状態にし、その状態で各油圧ポンプモータの間で圧油の授受を行って動力を伝達すれば、切換機構によってトルク伝達可能になっている伝動機構で決まる変速比の中間の値の変速比を設定できる。その中間の変速比は、流体伝動の割合に応じて変化するので、全体としての変速比は無段階に変化する。このようにして変速比を設定している状態では、例えば、いずれかの油圧ポンプモータの発熱量が他方の油圧ポンプモータの発熱量よりも多くなり、各油圧ポンプモータの間、あるいはそれら各油圧ポンプモータに連結されている各潤滑必要部位の間における冷却もしくは潤滑用の作動油の必要量に差が生じるが、各油圧ポンプモータの回転状態の変化、すなわち各油圧ポンプモータの必要作動油量の変化に応じて、各油圧ポンプモータあるいは各潤滑必要部位へ供給される作動油の流量が、各油圧ポンプモータの容量の変化に連動して同時に変化するように制御される。そのため、各油圧ポンプモータの回転状態の変化に応じて、それら各油圧ポンプモータあるいは潤滑必要部位へ供給する作動油の油量を、適切かつ容易に制御することができる。
【0023】
また、請求項3の発明によれば、各油圧ポンプモータへ供給される冷却もしくは潤滑用の作動油の流量が、補給ポンプから各油圧ポンプモータへ繋がれている各供給油路に設けられた各流量制御弁により調整される。それら各流量制御弁の流量の制御は、電磁制御弁により、各油圧ポンプモータの容量の制御と連動されて同時に行われる。そのため、各油圧ポンプモータあるいは各潤滑必要部位へ供給する作動油の油量を、適切に、かつ特別な制御システムを設けることなく容易に制御することができる。
【0024】
また、請求項4の発明によれば、例えば、第1油圧ポンプモータの容量が最大に設定された場合は、第1油圧ポンプモータは回転がロックされることにより発熱量が少なくなる。したがって、第1ポンプモータで必要とされる冷却用の作動油の油量は少なくてよい。反対に、第1油圧ポンプモータの容量が最小に設定された場合は、第1油圧ポンプモータは空転して高回転で駆動されることにより発熱量が多くなる。したがって、第1ポンプモータでは多くの冷却用の作動油が必要になる。すなわち、油圧ポンプモータに対する冷却用の作動油の必要油量は、油圧ポンプモータの容量の変化に反比例するように変化する。このことに対して、この請求項4の発明では、電磁制御弁により各供給油路に設けられた各流量制御弁と各油圧ポンプモータの容量制御部とを連動させて制御する場合に、第1油圧ポンプモータの容量と第1供給油路の作動油の流量とが反比例的に変化するように、また第2油圧ポンプモータの容量と第2供給油路の作動油の流量とが反比例的に変化するように、各流量制御弁の流量と各油圧ポンプモータの容量とが連動して制御される。そのため、各油圧ポンプモータの容量が変化することによる冷却もしくは潤滑用の作動油の必要油量の変化に対して、各油圧ポンプモータの容量を制御する電磁制御弁により、冷却もしくは潤滑用の作動油の供給量を適切に、かつ容易に制御することができる。
【0025】
また、請求項5の発明によれば、各油圧ポンプモータおよび潤滑必要部位へ供給される冷却もしくは潤滑用の作動油の油温に基づいて、各油圧ポンプモータへ供給される作動油の流量、および各油圧ポンプモータからそれら各油圧ポンプモータに繋がっている各潤滑必要部位への作動油の流通方向を、各油圧ポンプモータの回転状態に応じて適切に切り換えて設定することができる。
【0026】
また、請求項6の発明によれば、作動油の油温に応じて各方向切換弁を適宜に制御することにより、例えば、作動油の油温が低く、その作動油の粘性が高い状態の場合に、相対的に高回転となっている油圧ポンプモータへ供給されて相対的に油温が高くなっている作動油を、動力伝達を行わずに高回転で空転している側の潤滑必要部位へ流通させる引き摺り低減モードを設定することができる。あるいは、作動油の油温が高く、その作動油の油温の上昇を抑制する必要がある場合に、相対的に低回転となっている油圧ポンプモータへ供給されて相対的に油温が低くなっている作動油を、動力伝達を行っていることによりその際に熱を生じている側の潤滑必要部位へ流通させる冷却促進モードを設定することができる。そのため、作動油の粘性抵抗による引き摺り損失を低減することができ、また、潤滑必要部位へ供給される作動油の油温上昇を抑制して潤滑必要部位の冷却効果を向上させることができる。
【0027】
そして、請求項7の発明によれば、リリーフ弁から排出される圧油を冷却もしくは潤滑用の作動油として使用するので、既存の機器・装置を利用して冷却を行うことが可能になり、その結果、冷却もしくは潤滑のために新たに動力を消費することがないなど効率の良い冷却もしくは潤滑が可能になり、また装置の簡素化や小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする変速機について説明すると、図1に示す例は、伝達するべき動力(エネルギ)の形態を変更せずに設定できるいわゆる固定変速比として4つの前進段および1つの後進段を設定するように構成した例であり、特にエンジンなどの動力源1を車両に対してその幅方向に向けて搭載するいわゆるFF車(フロントエンジン・フロントドライブ車)に適するように構成した例である。
【0029】
図1において、動力源(E/G)1に入力部材2が連結されており、この入力部材2からこの発明における第1および第2差動機構に相当する第1遊星歯車機構(PG1)3および第2遊星歯車機構(PG2)4にトルクを伝達するように構成されている。ここで、動力源1は、内燃機関や電気モータあるいはこれらを組み合わせた構成など、車両に使用されている一般的な動力源であってよい。なお、以下の説明では、動力源1を仮にエンジン1と記す。また、入力部材2はエンジン(E/G)1の出力した動力を伝達できる部材であればよく、ドライブプレートや入力軸であってもよい。そして、これらエンジン1と入力部材2との間に、ダンパーやクラッチ、トルクコンバータなどの適宜の伝動手段を介在させることができる。
【0030】
第1遊星歯車機構3が入力部材2と同一軸線上に配置され、第2遊星歯車機構4が第1遊星歯車機構3の半径方向で外側に離隔し、それぞれの中心軸線を平行にした状態で並列に配置されている。これらの遊星歯車機構3,4としては、シングルピニオン型やダブルピニオン型などの適宜の形式の遊星歯車機構を採用することができる。図1に示す例はシングルピニオン型遊星歯車機構によって構成した例であり、外歯歯車であるサンギヤ3S,4Sと、そのサンギヤ3S,4Sと同心円状に配置された、内歯歯車であるリングギヤ3R,4Rと、これらサンギヤ3S,4Sとリングギヤ3R,4Rとに噛み合っているピニオンギヤを自転自在かつ公転自在に保持したキャリヤ3C,4Cとを備えている。そして、第1遊星歯車機構3におけるリングギヤ3Rに前記入力部材2が連結され、このリングギヤ3Rが入力要素となっている。
【0031】
また、入力部材2にはカウンタドライブギヤ5が取り付けられており、このカウンタドライブギヤ5にアイドルギヤ6が噛み合っているとともに、そのアイドルギヤ6にカウンタドリブンギヤ7が噛み合っている。このカウンタドリブンギヤ7は、前記第2遊星歯車機構4と同一軸線上に配置され、かつ第2遊星歯車機構4のリングギヤ4Rに、一体となって回転するように連結されている。したがって、第2遊星歯車機構4においては、そのリングギヤ4Rが入力要素となっている。各遊星歯車機構3,4の入力要素であるリングギヤ3R,4Rは、カウンタギヤ対がアイドルギヤ6を備えた構成であるから、同方向に回転するようになっている。
【0032】
第1遊星歯車機構3におけるキャリヤ3Cは出力要素となっており、そのキャリヤ3Cに第1中間軸8が、一体になって回転するように連結されている。この第1中間軸8は中空軸であって、その内部をモータ軸9が回転自在に挿入されており、このモータ軸9の一端部が、第1遊星歯車機構3における反力要素であるサンギヤ3Sに、一体となって回転するように連結されている。
【0033】
第2遊星歯車機構4も同様な構成であって、そのキャリヤ4Cが出力要素となっており、そのキャリヤ4Cに第2中間軸10が、一体になって回転するように連結されている。この第2中間軸10は中空軸であって、その内部をモータ軸11が回転自在に挿入されており、このモータ軸11の一端部が、第2遊星歯車機構4における反力要素であるサンギヤ4Sに、一体となって回転するように連結されている。
【0034】
上記のモータ軸9の他方の端部が可変容量型油圧ポンプモータ12の出力軸に連結されている。この可変容量型油圧ポンプモータ12は、斜軸ポンプや斜板ポンプあるいはラジアルピストンポンプなどの吐出容量を変更可能な流体圧(油圧)ポンプであって、その出力軸にトルクを与えて回転させることによりポンプとして機能して圧力流体(圧油)を吐出し、また吐出口もしくは吸入口から圧力流体を供給することにより、モータとして機能するようになっている。なお、この可変容量型油圧ポンプモータ12を以下の説明では、第1ポンプモータ12と記し、図にはPM1と表示する。
【0035】
また一方、モータ軸11の他方の端部が、可変容量型油圧ポンプモータ13の出力軸に連結されている。この可変容量型油圧ポンプモータ13は、前記モータ軸59側の第1ポンプモータ12と同様の構成のものである。なお、この可変容量型油圧ポンプモータ13を以下の説明では、第2ポンプモータ13と記し、図にはPM2と表示する。
【0036】
各油圧ポンプモータ12,13は、圧力流体である圧油を相互に受け渡すことができるように、油路14,15によって連通されている。すなわち、それぞれの吸入口12S,13S同士が油路14によって連通され、また吐出口12D,13D同士が油路15によって連通されている。したがって各油路14,15によって閉回路C0が形成されている。
【0037】
上記の各中間軸8,10と平行に、この発明の出力部材に相当する出力軸16が配置されている。そして、この出力軸16と各中間軸8,10との間のそれぞれに、所定の変速比を設定する伝動機構が設けられている。この発明における伝動機構としては、固定された変速比で動力を伝達する機構に限らず、変速比が可変な機構を採用することができ、図1に示す例では、固定された変速比で動力を伝達する複数のギヤ対17,18,19,20が採用されている。
【0038】
具体的に説明すると、前記第1中間軸8には、第1遊星歯車機構3側から順に、第4速駆動ギヤ17Aと第2速駆動ギヤ18Aとが配置されており、第4速駆動ギヤ17Aと第2速駆動ギヤ18Aとは第1中間軸8に対して回転自在に嵌合している。その第4速駆動ギヤ17Aに噛み合っている第4速従動ギヤ17Bと、第2速駆動ギヤ18Aに噛み合っている第2速従動ギヤ18Bとが、出力軸16に一体回転するように取り付けられている。
【0039】
さらに、上記の第4速従動ギヤ17Bに噛み合っている第3速駆動ギヤ19Aと、第2速従動ギヤ18Bに噛み合っている第1速駆動ギヤ20Aとが、第2中間軸10に回転自在に嵌合させられている。したがって、第4速従動ギヤ17Bが第3速従動ギヤを兼ねており、また第2速従動ギヤ18Bが第1速従動ギヤを兼ねている。ここで、各ギヤ対17,18,19,20の変速比(それぞれの駆動ギヤの歯数に対する従動ギヤの歯数の比)について説明すると、その変速比は、第1速用ギヤ対20、第2速用ギヤ対18、第3速用ギヤ対19、第4速用ギヤ対17の順に小さくなるように構成されている。
【0040】
さらに、発進用ギヤ対21が設けられている。この発進用ギヤ対21は、第1速用ギヤ対20と併せて出力軸16に動力を伝達することにより、発進時の駆動力を必要十分に大きくするためのものであって、前記第1ポンプモータ12側のモータ軸9に取り付けられた発進駆動ギヤ21Aと、出力軸16に回転自在に取り付けられた発進従動ギヤ21Bとを備えている。
【0041】
上述した各ギヤ対17,18,19,20,21を選択的に動力伝達可能な状態にするためのクラッチ機構が設けられている。このクラッチ機構は、各ギヤ対17,18,19,20,21を、いずれかの中間軸8,10と出力軸16とに選択的に連結する機構であって、この発明の切換機構に相当している。したがって従来の手動変速機などにおける同期連結機構(シンクロナイザー)を使用することができ、あるいは噛み合いクラッチ(ドグクラッチ)や摩擦式クラッチなどを使用することができる。また、上記の従動ギヤを出力軸16に一体的に取り付けた場合には、駆動ギヤを中間軸8,10に対して回転自在とし、その駆動ギヤを中間軸8,10に対して選択的に連結するように中間軸8,10側に切換機構を設けることができる。図1にはシンクロナイザーを採用した例を示してある。
【0042】
シンクロナイザーは、基本的には、回転軸と共に回転するスリーブを軸線方向に移動させて、その回転軸に対して相対回転するように取り付けられた回転部材のスプラインに係合させ、その過程でシンクロナイザーリングが回転部材に次第に摩擦接触することにより回転軸と回転部材とを同期させて、回転軸と回転部材とを連結するように構成されている。前記出力軸16上で、発進従動ギヤ21Bに隣接する位置に第1のシンクロナイザー(以下、第1シンクロと記す)22が設けられている。この第1シンクロ22は、そのスリーブ22Sを図1の左側に移動させることにより、発進従動ギヤ21Bを出力軸16に連結し、発進用ギヤ対21がモータ軸9と出力軸16との間でトルクを伝達するように構成されている。
【0043】
また、前記第2中間軸10上で、第3速駆動ギヤ19Aと第1速駆動ギヤ20Aとの間に第2のシンクロナイザー(以下、第2シンクロと記す)23が設けられている。この第2シンクロ23は、そのスリーブ23Sを図1の左側に移動させることにより、第1速駆動ギヤ20Aを第2中間軸10に連結し、第1速用ギヤ対20が第2中間軸10と出力軸16との間でトルクを伝達するように構成されている。また、反対にそのスリーブ23Sを図1の右側に移動させることにより、第3速駆動ギヤ19Aを第2中間軸10に連結し、第3速用ギヤ対19が第2中間軸10と出力軸16との間でトルクを伝達するように構成されている。
【0044】
さらに、前記第1中間軸8上で、第2速駆動ギヤ18Aと第4速駆動ギヤ17Aとの間に第3のシンクロナイザー(以下、第3シンクロと記す)24が設けられている。この第3シンクロ24は、そのスリーブ24Sを図1の左側に移動させることにより、第2速駆動ギヤ18Aを第1中間軸8に連結し、第2速用ギヤ対18が第1中間軸8と出力軸16との間でトルクを伝達するように構成されている。また、反対にそのスリーブ24Sを図1の右側に移動させることにより、第4速駆動ギヤ17Aを第1中間軸8に連結し、第4速用ギヤ対17が第1中間軸8と出力軸16との間でトルクを伝達するように構成されている。
【0045】
またさらに、第2ポンプモータ13側のモータ軸11上で、第2中間軸10の軸端に隣接する位置に後進用のシンクロナイザー(以下、Rシンクロと記す)25が設けられている。このRシンクロ25は、そのスリーブ25Sを図1の右側に移動させることにより、モータ軸11と第2中間軸10、すなわち第2遊星歯車機構4におけるサンギヤ4Sとキャリヤ4Cとを連結して、第2遊星歯車機構4の全体を一体回転させるように構成されている。
【0046】
上記の各シンクロ22,23,24,25は、手動操作によって切り換え動作するように構成することができるが、これに替えていわゆる自動制御するように構成することもできる。その場合は、例えば前述したスリーブを軸線方向に移動させる適宜のアクチュエータ(図示せず)を設け、そのアクチュエータを電気的に制御するように構成すればよい。
【0047】
上記のように、図1に示す変速機は、エンジン1が出力したトルクが、いずれかの中間軸8,10もしくはモータ軸9,11を介して出力軸16に伝達されるように構成されている。そして、その出力軸16には、歯車機構あるいはチェーンなどの巻き掛け伝動機構などの伝動手段26を介してデファレンシャル27が連結され、ここから左右の車軸28に動力を出力するようになっている。
【0048】
そして、変速機の動作状態を検出するためのセンサが設けられている。具体的には、前述した入力部材2もしくはこれと一体のカウンタドライブギヤ5の回転数を検出する入力回転数センサ29、前記車軸28の回転数を検出する出力回転数センサ30、第1ポンプモータ12もしくは第1ポンプモータ12が連結されているサンギヤ3Sの回転数を検出する回転数センサ31、第2ポンプモータ13もしくは第2ポンプモータ13が連結されているサンギヤ4Sの回転数を検出する回転数センサ32、変速機内の作動油の温度を検出する油温センサ33などが設けられている。
【0049】
前述したように、この発明に係る無段変速機の油圧制御装置は、変速機の運転状態や油圧ポンプモータの回転状態にかかわらず、冷却もしくは潤滑のために供給されるオイルの油量を適切に、かつ容易に制御することを目的としていて、そのための油圧制御回路が以下に示すように構成されている。
【0050】
(第1の実施例)
図1は、この発明の油圧制御装置を構成する油圧制御回路の第1の実施例を模式的に示す図である。図1において、各油圧ポンプモータ12,13の吸入口12S,13S同士が油路14によって連通されており、また吐出口12D,13D同士が油路15によって連通されている。ここで、吸入口12S,13Sは、押出容積(ポンプ容量)を正の方向に設定した状態で正回転することにより圧油を吸入するポートであり、またその圧油を吐出するポートが吐出口12D,13Dである。したがって、各油圧ポンプモータ12,13は両者の間で圧油を循環させる閉回路C0によって連通されている。
【0051】
この閉回路C0には圧油を補給するためのチャージポンプ(ブーストポンプと称されることもある)35が設けられている。このチャージポンプ35は、閉回路C0からの漏れなどによるオイルの不足を補うためのものであってこの発明の補給ポンプに相当し、前述したエンジン1や図示しないモータなどによって駆動されて、オイルパン36からオイルを汲み上げて閉回路C0に供給するようになっている。
【0052】
したがって、チャージポンプ35の吐出口は、閉回路C0における油路14と油路15とにそれぞれチェック弁37,38を介して連通されている。なお、これらのチェック弁37,38は、チャージポンプ35からの吐出方向に開き、これとは反対方向に閉じるように構成されている。さらに、チャージポンプ35の吐出圧を調整するためのチャージ圧制御弁(ブースト圧制御弁)39が、チャージポンプ35の吐出口に連通されている。このチャージ圧制御弁39は、スプリングによる弾性力とパイロット圧もしくはソレノイドによる押圧力との和より高い圧力が作用した場合に開いてオイルを排出するように構成されており、したがってチャージポンプ35の吐出圧をパイロット圧に応じた圧力に設定するように構成されている。
【0053】
さらに、第1ポンプモータ12の吸入口12Sと油路15との間に、電磁リリーフ弁40が設けられている。言い換えれば、第1ポンプモータ12と並列に、各油路14,15を連通させるように電磁リリーフ弁40が設けられている。この電磁リリーフ弁40は、第1ポンプモータ12の吸入口12S、または第2ポンプモータ13の吸入口13Sから圧油を吐出する場合に、その吐出圧を予め設定した圧力に維持するように構成されている。また、第2ポンプモータ13の吐出口13Dと油路14との間に、電磁リリーフ弁41が設けられている。言い換えれば、第2ポンプモータ13と並列に、各油路14,15を連通させるように電磁リリーフ弁41が設けられている。この電磁リリーフ弁41は、第1ポンプモータ12の吐出口12D、または第2ポンプモータ13の吐出口13Dから圧油を吐出する場合に、その吐出圧を予め設定した圧力に維持するように構成されている。
【0054】
さらに、チャージ圧制御弁39から排出される圧油を、冷却もしくは潤滑用の作動油(オイル)として各油圧ポンプモータ12,13に供給する油路が設けられている。すなわち、この油路は、チャージ圧制御弁39の排出口と各油圧ポンプモータ12,13のケーシングにおける油路とを連通させるものであって、チャージ圧制御弁39の排出口から出た圧油を分岐させて各油圧ポンプモータ12,13に供給するように構成されている。すなわち、この発明の第1供給油路に相当する一方の供給油路42が、第1ポンプモータ12のケーシング12Cに形成されている冷却用の油路(図示せず)に接続されている。また、この供給油路42には、流通する作動油の流量を制御可能な、この発明の第1流量制御弁に相当する流量制御弁43が設けられている。さらに、第1ポンプモータ12における冷却用の油路にはリターン油路44が連通され、第1ポンプモータ12から排出された冷却用の圧油を油溜め45に導くように構成されている。
【0055】
また、供給油路42のケーシング12Cに形成されている冷却用の油路との接続部分から分岐して、この発明の第1接続油路に相当する接続油路46が形成されている。この接続油路46の他方の端部は、モータ軸11およびサンギヤ4Sを介して第2ポンプモータ13に連結されている第2遊星歯車機構4、およびその第2遊星歯車機構4に連結されているもしくは選択的に連結されるギヤ対やシンクロなどの潤滑必要部位D2に繋がれている。したがって、供給油路42を経由して第1ポンプモータ12の冷却用の油路に供給されたオイルは、その冷却用の油路を循環した後に、接続油路46を介して潤滑必要部位D2に供給されるようになっている。
【0056】
これと同様に、前記一方の供給油路42から分岐し、この発明の第2供給油路に相当する他方の供給油路47が、第2ポンプモータ13のケーシング13Cに形成されている冷却用の油路(図示せず)に接続されている。また、この供給油路47には、流通する作動油の流量を制御可能な、この発明の第2流量制御弁に相当する48が設けられている。さらに、第2ポンプモータ13における冷却用の油路にはリターン油路49が連通され、第2ポンプモータ13から排出された冷却用の圧油を油溜め45に導くように構成されている。
【0057】
また、供給油路47のケーシング13Cに形成されている冷却用の油路との接続部分から分岐して、この発明の第2接続油路に相当する接続油路50が形成されている。この接続油路50の他方の端部は、モータ軸9およびサンギヤ3Sを介して第1ポンプモータ12に連結されている第1遊星歯車機構3、およびその第1遊星歯車機構3に連結されているもしくは選択的に連結されるギヤ対やシンクロなどの潤滑必要部位D1に繋がれている。したがって、供給油路47を経由して第2ポンプモータ13の冷却用の油路に供給されたオイルは、その冷却用の油路を循環した後に、接続油路50を介して潤滑必要部位D1に供給されるようになっている。
【0058】
上記の油溜め45に前記の各電磁リリーフ弁40,41からの排圧を導くようになっており、さらにこの油溜め45から前記オイルパン36に圧油を戻すように構成されている。また、前記のチャージ圧制御弁39と供給油路42,47との間の油路から分岐して、リリーフ弁51が設けられていて、そのリリーフ弁51から排出される圧油を油溜め45に導くように構成されている。さらに、閉回路C0における油路14および油路15の圧油を、それぞれチェック弁52,53、および流量制御弁54を介して、油溜め45に導くように構成されている。なお、これらのチェック弁52,53は、圧油が油路14,15から油溜め45へ流れる流通方向に開き、これとは反対方向に閉じるように構成されている。そして、この油溜め45とオイルパン36との間の油路には、オイルクーラー55が設けられている。
【0059】
上記のように、供給油路42,47、および接続油路46,50、および流量制御弁43,48、ならびにリターン油路44,49等により、この発明の潤滑回路に相当する回路C1が構成されている。
【0060】
上記の各油圧ポンプモータ12,13の押出容積すなわち容量を調節するための作動装置56,57が、各油圧ポンプモータ12,13にそれぞれ設けられている。すなわち、第1ポンプモータ12に、この発明の第1電磁制御弁に相当する電磁制御弁(リニアソレノイドバルブ)58と、その電磁制御弁58により動作させられるアクチュエータ59が設けられている。電磁制御弁58は、閉回路C0における油路14もしくは油路15から油圧が供給され、この電磁制御弁58からアクチュエータ59に制御油圧が供給されることによって、アクチュエータ59の動作が制御される。
【0061】
アクチュエータ59は、第1ポンプモータ12の容量制御部(図示せず)を動作させるように構成されていて、アクチュエータ59が作動することにより第1ポンプモータ12の容量制御部が動作する、すなわち第1ポンプモータ12の押出容積が変更されるようになっている。したがって、電磁制御弁58を制御してアクチュエータ59を作動させることにより、第1ポンプモータ12の可変容量制御を実行するように構成されている。
【0062】
また、アクチュエータ59は、上記のように第1ポンプモータ12の容量制御部を動作させるとともに、供給油路42に設けられた流量制御弁43を動作させるように構成されている。すなわち、アクチュエータ59が作動することにより第1ポンプモータ12の容量制御部が動作し、それと同時に、流量制御弁43が動作するようになっている。言い換えると、アクチュエータ59が作動することにより、第1ポンプモータ12の容量制御部と流量制御弁43とが連動して動作するようになっている。したがって、電磁制御弁58を制御してアクチュエータ59を作動させることにより、第1ポンプモータ12の可変容量制御と、流量制御弁43による供給油路42の流量制御とを連動させて同時に実行することができるように構成されている。
【0063】
それらの第1ポンプモータ12の可変容量制御および流量制御弁43による流量制御は、可変容量制御の際の容量の増減方向と、流量制御の際の流量の増減方向とが反対になるようになっている。すなわち、上記のように電磁制御弁58とアクチュエータ59とから構成される作動装置56は、電磁制御弁58を制御してアクチュエータ59を作動させる場合に、図2に示すように、第1ポンプモータ12の容量が増加するほど、流量制御弁43の流量すなわち供給油路42の流量が減少し、逆に、第1ポンプモータ12の容量が減少するほど、流量制御弁43の流量すなわち供給油路42の流量が増加するように構成されている。
【0064】
一方、第2ポンプモータ13には、上記の第1ポンプモータ12と同様に、この発明の第2電磁制御弁に相当する電磁制御弁60と、その電磁制御弁60により動作させられるアクチュエータ61が設けられている。電磁制御弁60は、閉回路C0における油路14もしくは油路15から油圧が供給され、この電磁制御弁60からアクチュエータ61に制御油圧が供給されることによって、アクチュエータ61の動作が制御される。
【0065】
アクチュエータ61は、第2ポンプモータ13の容量制御部(図示せず)を動作させるように構成されていて、アクチュエータ61が作動することにより第2ポンプモータ13の容量制御部が動作する、すなわち第2ポンプモータ13の押出容積が変更されるようになっている。したがって、電磁制御弁60を制御してアクチュエータ61を作動させることにより、第2ポンプモータ13の可変容量制御を実行するように構成されている。
【0066】
また、アクチュエータ61は、上記のように第2ポンプモータ13の容量制御部を動作させるとともに、供給油路47に設けられた流量制御弁48を動作させるように構成されている。すなわち、アクチュエータ61が作動することにより第2ポンプモータ13の容量制御部が動作し、それと同時に、流量制御弁48が動作するようになっている。言い換えると、アクチュエータ61が作動することにより、第2ポンプモータ13の容量制御部と流量制御弁48とが連動して動作するようになっている。したがって、電磁制御弁60を制御してアクチュエータ61を作動させることにより、第2ポンプモータ13の可変容量制御と、流量制御弁48による供給油路47の流量制御とを連動させて同時に実行することができるように構成されている。
【0067】
それらの第2ポンプモータ13の可変容量制御と流量制御弁48による流量制御とは、可変容量制御の際の容量の増減方向と、流量制御の際の流量の増減方向とが反対になるようになっている。すなわち、上記のように電磁制御弁60とアクチュエータ61とから構成される作動装置57は、電磁制御弁60を制御してアクチュエータ61を作動させる場合に、図2に示すように、第2ポンプモータ13の容量が増加するほど、流量制御弁48の流量すなわち供給油路47の流量が減少し、逆に、第2ポンプモータ13の容量が減少するほど、流量制御弁48の流量すなわち供給油路47の流量が増加するように構成されている。
【0068】
そして、上記の電磁制御弁58,60の制御圧(すなわち各油圧ポンプモータ12,13の容量および各供給油路42,47における流量)、および各シンクロ22,23,24の切り換え動作、ならびにチャージ圧制御弁39や電磁リリーフ弁40,41のリリーフ圧等を電気的に制御できるように構成されており、そのための電子制御装置(ECU)62が設けられている。この電子制御装置62は、マイクロコンピュータを主体にして構成されたものであって、所定の回転部材の回転数や他の検出信号が入力され、それらの入力された信号および予め記憶している情報ならびにプログラムに基づいて演算を行い、その演算結果に応じて指令信号を出力するように構成されている。
【0069】
ここで、上述した変速機の作用について説明する。図3は、各変速段を設定する際の各油圧ポンプモータ(PM1,PM2)12,13、および各シンクロ22,23,24,25の動作状態をまとめて示す図表であって、この図3における各油圧ポンプモータ12,13についての「OFF」は、ポンプ容量を実質的にゼロとし、その出力軸が回転させられても圧油を発生することがなく、また油圧が供給されても出力軸が回転しない状態(フリー)を示し、「LOCK」はそのロータの回転を止めている状態を示している。さらに「油圧発生」は、ポンプ容量を実質的なゼロより大きくするとともに圧油を吐出している状態を示し、したがって該当する油圧ポンプモータ12,13はポンプとして機能している。また、「油圧回収」は、一方の油圧ポンプモータ13(もしくは12)が吐出した圧油が供給されてモータとして機能している状態を示し、したがって該当する油圧ポンプモータ12(もしくは13)は軸トルクを発生し、対応するモータ軸9,11および中間軸8,10に駆動トルクを伝達している。
【0070】
そして、各シンクロ22,23,24,25についての「右」、「左」は、それぞれのシンクロ22,23,24,25におけるスリーブの図1での位置を示すとともに、丸括弧はダウンシフトするための待機状態、カギ括弧はアップシフトするための待機状態を示し、そして「○」は該当するシンクロ22,23,24,25をOFF状態(中立位置)に設定することにより引き摺りを低減している状態、「●」は該当するシンクロ22,23,24,25をOFF状態(中立位置)に設定して中立状態となっていることを示す。
【0071】
ニュートラルポジションが選択されてニュートラル(N)状態を設定する際には、各油圧ポンプモータ12,13が「OFF」状態とされ、また各シンクロ22,23,24,25のスリーブが中央位置に設定される。したがって、いずれのギヤ対17,18,19,20,21も出力軸16に連結されていないニュートラル状態となる。すなわち、各油圧ポンプモータ12,13が、押出容積が実質的にゼロとなるように制御される。その結果、いわゆる空回り状態となるので、各遊星歯車機構3,4のリングギヤ3R,4Rにエンジン1からトルクが伝達されても、サンギヤ3S,4Sに反力が作用しない。そのため、出力要素であるキャリヤ3C,4Cに連結されている各中間軸8,10にはトルクが伝達されない。
【0072】
シフトポジションがドライブポジションなどの走行ポジションに切り換えられると、第1シンクロ22のスリーブ22Sが図1の左側に移動させられるとともに第2シンクロ23のスリーブ23Sが、図1の左側に移動させられる。したがって、発進駆動ギヤ21Aがモータ軸9に連結されて第1ポンプモータ12と出力軸16とが連結され、また第1速駆動ギヤ20Aが第2中間軸10に連結されて第2遊星歯車機構4の出力要素であるキャリヤ4Cと出力軸16とが連結される。すなわち、固定変速比である第1速を設定する状態となる。また、これと併せて各油圧ポンプモータ12,13の押出容積がゼロより大きい容積に制御される。
【0073】
したがって、第2ポンプモータ13は前記第2遊星歯車機構4によって分配されたエンジン1の動力によって駆動されてポンプとして機能する。したがって、第2ポンプモータ13は、油圧を発生させることに伴う反力トルクをモータ軸11およびサンギヤ4Sに与える。これを図3には「油圧発生」と記載してある。そのため、第2遊星歯車機構4の差動作用によってキャリヤ4Cにトルクが伝達され、そのトルクが第1速用ギヤ対20を介して出力軸16に伝達される。
【0074】
一方、第2ポンプモータ13で発生した油圧がその吸入口13Sから吐出されて第1ポンプモータ12の吸入口12Sに供給される。その結果、第1ポンプモータ12がモータとして機能する。これを図3には「油圧回収」と記載してある。このようにして第1ポンプモータ12に伝達される動力が発進用ギヤ対21を介して出力軸16に伝達される。したがって発進から第1速までの駆動状態では、第2遊星歯車機構4を介したいわゆる機械的な動力の伝達と、油圧を介した動力の伝達との両方が生じ、これらの動力を合成した動力が出力軸16に現れる。また、この過程での変速比は、固定変速比である第1速より大きい値となり、その変速比は連続的に、あるいは無段階に変化する。
【0075】
こうしてエンジン1の回転数や車速が変化して第1速の変速比になると、第1ポンプモータ12の押出容積がゼロに設定され、また第2ポンプモータ13の押出容積が最大に設定され、その結果、実質上、第2ポンプモータ13の回転がロックされる。すなわちモータ軸11およびこれに連結されている第2ポンプモータ13が固定される。また、併せて第1シンクロ22がOFF状態に設定される。その結果、第2遊星歯車機構4のサンギヤ4Sが固定され、また第1遊星歯車機構3は出力軸16に対する動力の伝達に関与しなくなるので、エンジン1が出力した動力は、第2遊星歯車機構4および第1速用ギヤ対20を介して出力軸16に伝達される。すなわち、第1速用ギヤ対20のギヤ比で決まる固定変速比が設定される。なお、この場合、第1ポンプモータ12およびこれに連結されているモータ軸9が空転するので、第1中間軸8にトルクは現れない。
【0076】
固定変速比である第1速からアップシフトする場合、第3シンクロ24のスリーブ24Sを図1の左側に移動させて第2速駆動ギヤ18Aを第1中間軸8に連結しておく。なお、Rシンクロ25は中立状態にしておく。また、第3シンクロ24のスリーブ24Sを第2速駆動ギヤ18Aに係合させる場合、第3シンクロ24のスリーブ24Sの回転数と第2速駆動ギヤ18Aとの回転数を一致させる同期制御を行う。その同期制御は、前記シンクロ22,23,24,25のスリーブを相手部材に係合させる場合にも同様に行われる。
【0077】
この状態で、第1ポンプモータ12の押出容積を最大に向けて次第に増大させる。第2速へのアップシフト待機状態では、第1ポンプモータ12は逆回転しているから、その押出容積を次第に増大させることによりポンプとして機能する。すなわち、油圧を発生し(図3に「油圧発生」と記してある)、同時にそれに伴う反力トルクがモータ軸9に現れる。その結果、第1遊星歯車機構3および第2速用ギヤ対18を介した動力の伝達が次第に行われる。また、第1ポンプモータ12で発生した油圧が第2ポンプモータ13に供給されてこれがモータとして機能する(図3に「油圧回収」と記してある)ので、第2ポンプモータ13および第2遊星歯車機構4ならびに第1速用ギヤ対20を介した動力の伝達が生じる。そのため、第1速から第2速への変速の過程での変速比は、第1速の変速比と第2速の変速比との間の値となり、かつ連続的に変化する変速比となる。すなわち、変速比が連続的に変化する無段変速状態となる。これは、上述した発進から第1速の変速比に到るまでの間、および各固定変速比の間でも同様であり、したがって上述した変速機は、無段変速機として機能させることができる。
【0078】
上記のようにして第1ポンプモータ12の押出容積をほぼ最大にしてその回転が停止し、もしくは停止に近い状態になることにより、モータ軸9が実質的に固定される。また、併せて第2ポンプモータ13がOFF状態に設定される。したがって、第1遊星歯車機構3では、そのサンギヤ3Sが固定されるため、リングギヤ3Rに入力された動力がキャリヤ3Cから中間軸8を経て第2速駆動ギヤ18Aに出力される。一方、第2ポンプモータ13はOFF状態となっており、これと同軸上に配置されているRシンクロ25および第2シンクロ23はOFF状態であってそのスリーブ23Sが中立位置にあるので、第2ポンプモータ13や第2遊星歯車機構4は動力の伝達に関与しない。したがって、第2速用ギヤ対18のギヤ比で決まる固定変速比である第2速が設定される。
【0079】
以下、同様にして、第3速は第2シンクロ23のスリーブ23Sを図1の右側に移動させて第3速駆動ギヤ19Aを第2中間軸10に連結し、また第2ポンプモータ13の押出容積を最大にすることにより、第1速の場合と同様に、モータ軸11および第2ポンプモータ13を固定し、さらに他のシンクロ22,24はOFF状態にする。したがって、第3速用ギヤ対19を介して出力軸16に動力が伝達され、固定変速比である第3速が設定される。また、第4速は第3シンクロ24のスリーブ24Sを図1の右側に移動させて第4速駆動ギヤ17Aを第1中間軸8に連結し、また第1ポンプモータ12の押出容積を最大にすることにより、第2速の場合と同様に、モータ軸9および第1ポンプモータ12を固定し、さらに他のシンクロ23,25はOFF状態にする。したがって、第4速用ギヤ対17を介して出力軸16に動力が伝達され、固定変速比である第4速が設定される。
【0080】
さらに、後進段について説明すると、リバースポジションが選択された場合には、第1シンクロ22のスリーブ22Sが図1の左側に移動させられ、またRシンクロ25のスリーブ25Sが図1の右側に移動させられ、さらに他のシンクロ23,24がOFF状態に設定される。したがって、Rシンクロ25によって第2中間軸10とモータ軸11とが連結されることにより、第2遊星歯車機構4のサンギヤ4Sとキャリヤ4Cとが連結されて第2遊星歯車機構4の全体が実質的に一体化される。また、発進駆動ギヤ21Aがモータ軸9すなわち第1ポンプモータ12のロータに連結される。
【0081】
したがって、エンジン1から第2遊星歯車機構4に伝達された動力がそのまま第2ポンプモータ13に伝達されてこれが駆動され、第2ポンプモータ13によって油圧が発生する。なお、第2シンクロ23がOFF状態であるから、第2遊星歯車機構4あるいは第2中間軸10から出力軸16に動力が伝達されることはない。一方、第1ポンプモータ12の押出容積がゼロより大きい容積、例えば最大容積に制御される。その結果、第2ポンプモータ13から供給された油圧によって第1ポンプモータ12がモータとして機能し、モータ軸9にトルクを出力する。その場合、第1ポンプモータ12にはその吐出口12Dから油圧が供給されるので、第1ポンプモータ12が逆回転する。そして、そのトルクが発進用ギヤ対21を介して出力軸16に伝達されるので、後進状態となる。すなわち、後進段では、油圧を介した動力の伝達が生じ、これを図3では、第1ポンプモータ12について「油圧回収」と記し、第2ポンプモータ13について「油圧発生」と記してある。
【0082】
この発明に係る上記の変速機では、エンジン1が駆動している状態で少なくともいずれか一方の油圧ポンプモータ12,13が回転している。そのため、圧油が加圧され、あるいは剪断作用を受け、また摩擦が生じ、さらには漏洩などの圧力損失が生じるなどのことによって、少なくともいずれか一方の油圧ポンプモータ12,13で発熱する。これらの油圧ポンプモータ12,13は、リリーフ弁33から排出される圧油が各供給油路42,47を介して供給されることにより、その圧油によって熱が奪われて油圧ポンプモータ12,13が冷却される。
【0083】
また、各油圧ポンプモータ12,13、および各遊星歯車機構3,4の発熱量が、変速機の運転状態もしくは設定している変速比によって異なる。前述したように、固定変速比を設定している状態では、一方の油圧ポンプモータ12,13がロックされて回転を停止しており、かつ他方の油圧ポンプモータ13,12が空転して圧油を撹拌し、また少なからず摩擦が生じている。また、各固定変速比の間のいわゆる中間変速比を設定している場合には、一方の油圧ポンプモータ12,13がポンプとして機能して、その押出容積に応じた回転数で回転するとともに油圧を発生し、かつ他方の油圧ポンプモータ13,12はその油圧を受けてモータとして機能し、その押出容積に応じた回転数で回転するとともにトルクを出力している。
【0084】
この状況を固定変速比である第1速と第2速との間の状態で示すと図4,図5のとおりである。図4において、第1速では、第2ポンプモータ13の押出容積q2はゼロに設定されており、これに対して第1ポンプモータ12は押出容積q1が最大に設定されている。そして、第2ポンプモータ13は所定の回転数NPM2で空転しており、これに対して第1ポンプモータ12は停止している。すなわち、その回転数NPM1はゼロになっている。
【0085】
この状態から固定変速比である第2速に向けてアップシフトする場合、前述したように第2ポンプモータ13の押出容積q2を次第に増大させてこれをポンプとして機能させる。その場合、第2ポンプモータ13の押出容積q2が最大になるまで、第1ポンプモータ12の押出容積q1は最大に維持される。なお、第1ポンプモータ12の押出容積q1を、第2ポンプモータ13の押出容積q2と同時に変化させてもよい。
【0086】
第2ポンプモータ13は、押出容積q2が増大することに伴って、その回転数NPM2が次第に低下し、これに対して第1ポンプモータ12は、第2ポンプモータ13から圧油が供給されてモータとして機能することにより、その回転数NPM1が次第に増大する。
【0087】
第2ポンプモータ13の押出容積q2が最大まで増大すると、第1ポンプモータ12の押出容積q1が次第に低下させられ、ついにはゼロまで低下させられる。その過程においても、第2ポンプモータ13の回転数NPM2は低下し続け、また第1ポンプモータ12の回転数NPM1は増大し続ける。
【0088】
このような状況は、第2速と第3速との間、および第3速と第4速との間など、他の変速状態でも同様である。したがって、各油圧ポンプモータ12,13の押出容積q1,q2が等しい場合以外では、それぞれの回転数NPM1,NPM2が異なり、発熱量が異なっている。すなわち、相対的に高回転数の油圧ポンプモータ12,13の発熱量が多くなっている。発熱量に応じて冷却もしくは潤滑量を設定することが好ましいから、各油圧ポンプモータ12,13にそれぞれ供給するべき必要潤滑油量(冷却油量)VPM1,VPM2は、上記の回転数NPM1,NPM2と同様の関係になる。
【0089】
一方、図5において、第1速では、第2ポンプモータ13の押出容積q2はゼロに設定されており、これに対して第1ポンプモータ12は押出容積q1が最大に設定されている。そして、第2ポンプモータ13は所定の回転数NPM2で空転しており、これに対して第1ポンプモータ12は停止している。すなわち、その回転数NPM1はゼロになっている。
【0090】
この状態では、前述したように、第2シンクロ23のスリーブ23Sが図1の左側に移動させられることにより、第1速用ギヤ対20を介して第2中間軸10と出力軸16との間で動力が伝達されている。すなわち、第2遊星歯車機構4に負荷が掛かった状態になっている。そしてその第2遊星歯車機構4に作用する負荷(プラネタリ負荷)LPG2の大きさは、第1速用ギヤ対20を介して行われる動力伝達が最大となる固定変速比である第1速の時に最大となる。
【0091】
これに対して、第1遊星歯車機構3は、第3シンクロ24がOFFであることから、所定の回転数で空転していて、第1遊星歯車機構3には負荷は作用していない。すなわち、第1遊星歯車機構3に作用する負荷(プラネタリ負荷)LPG1の大きさは、固定変速比である第1速の時に最小となる。
【0092】
この状態から固定変速比である第2速に向けてアップシフトする場合、前述したように第2ポンプモータ13の押出容積q2を次第に増大させてこれをポンプとして機能させる。その場合、第2ポンプモータ13の押出容積q2が最大になるまで、第1ポンプモータ12の押出容積q1は最大に維持される。第2ポンプモータ13は、押出容積q2が増大することに伴って、その回転数が次第に低下し、これに対して第1ポンプモータ12は、第2ポンプモータ13から圧油が供給されてモータとして機能することにより、その回転数が次第に増大する。
【0093】
この場合、前述したように、第3シンクロ24のスリーブ24Sが図1の左側に移動させられることにより、第2速用ギヤ対18を介して第2中間軸8と出力軸16との間で動力が伝達し始める。すなわち、第1遊星歯車機構3に負荷LPG1が作用し始める。そしてその第1遊星歯車機構3に作用する負荷LPG1は、第2ポンプモータ13の押出容積q2が増大するのに伴って次第に増大し、第2ポンプモータ13の押出容積q2が最大になった後は、第1ポンプモータ12の押出容積q1が低下するのにつれて次第に増大し続ける。そして第1ポンプモータ12の押出容積q1が最小(すなわちゼロ)になった時点、すなわち固定変速比である第2速が設定された時点で、第1遊星歯車機構3に作用する負荷LPG1が最大になる。
【0094】
これに対して、第2遊星歯車機構4の作用する負荷LPG2は、負荷が最大の状態から、第2ポンプモータ13の押出容積q2が増大するのにつれて次第に低下し、第2ポンプモータ13の押出容積q2が最大になった後は、第1ポンプモータ12の押出容積q1が低下するのに伴って次第に低下し続ける。そして第1ポンプモータ12の押出容積q1が最小(すなわちゼロ)になった時点、すなわち固定変速比である第2速が設定された時点で、第1遊星歯車機構3に作用する負荷LPG2が最小になる。
【0095】
このような状況は、第2速と第3速との間、および第3速と第4速との間など、他の変速状態でも同様である。したがって、各油圧ポンプモータ12,13の押出容積q1,q2が等しい場合以外では、各遊星歯車機構3,4に作用する負荷LPG1,LPG2、すなわちそれらの負荷LPG1,LPG2による各遊星歯車機構3,4の発熱量が異なっている。すなわち、前述した各油圧ポンプモータ12,13の発熱量と同様に、相対的に高回転数の油圧ポンプモータ12,13に繋がっている側の遊星歯車機構3,4の発熱量が多くなっている。発熱量に応じて冷却もしくは潤滑量を設定することが好ましいから、各遊星歯車機構3,4にそれぞれ供給するべき必要潤滑油量(冷却油量)VPG1,VPG2は、上記の負荷LPG1,LPG2と同様の関係になる。
【0096】
そのため、この発明の油圧制御装置の第1の実施例では、このような回転数NPM1,NPM2と発熱量すなわち必要潤滑油量VPM1,VPM2との関係、および負荷LPG1,LPG2と発熱量すなわち必要潤滑油量VPG1,VPG2との関係を考慮して、各油圧ポンプモータ12,13の押出容積(容量)q1,q2と、各油圧ポンプモータ12,13の必要潤滑油量VPM1,VPM2および各遊星歯車機構3,4の必要潤滑油量VPG1,VPG2とを連動させて変化させるように構成されている。すなわち、前述したように、各油圧ポンプモータ12,13の押出容積(容量)と、各供給油路42,47の流量とを連動させて変化させるように、具体的には、第1油圧ポンプモータ12の押出容積(容量)q1が増加するほど供給油路42の流量が減少し、また第2油圧ポンプモータ13の押出容積(容量)q2が増加するほど供給油路47の流量が減少するように構成されているのである。
【0097】
このように、この発明の油圧制御装置の第1の実施例によれば、変速機の運転状態、すなわち各油圧ポンプモータ12,13の回転状態の変化に応じて、潤滑油量(冷却油量)が設定される。そのため、各油圧ポンプモータ12,13、および各遊星歯車機構3,4を過不足なく冷却もしくは潤滑することができる。また、必要とする総潤滑油量(冷却油量)は、各油圧ポンプモータ12,13、および各遊星歯車機構3,4で必要とする潤滑油量VPM1,VPM2の和、および潤滑油量VPG1,VPG2の和であり、これを図に示すと図6,図7のとおりである。図6において、一点鎖線で示す潤滑油量VPM1と二点鎖線で示す潤滑油量VPM2の和は実線で示すようになり、これは、常時、最大発熱量を想定して供給するとした場合の潤滑油量VMAX(点線)に比較して大幅に少量になる。また、図7において、一点鎖線で示す潤滑油量VPG1と二点鎖線で示す潤滑油量VPG2の和は実線で示すようになり、これも同様に、常時、最大発熱量を想定して供給するとした場合の潤滑油量VMAX(点線)に比較して大幅に少量になる。その結果、チャージポンプ35で吐出させるべき油量を少なくできるので、チャージポンプ35を小型化でき、また消費する動力を少なくして効率のよい冷却もしくは潤滑を行うことができる。
【0098】
(第2の実施例)
図8は、この発明の油圧制御装置を構成する油圧制御回路の第2の実施例を模式的に示す図である。この第2の実施例は、上記の図1に示す第1の実施例に対して、各供給油路42,47の接続状態を切り換える第1方向切換弁と、各接続油路46,50の接続状態を切り換える第2方向切換弁を更に設けた構成の例である。したがって、これら各方向切換弁とそれに関連する部分以外の構成は図1に示す第1の実施例と同様であり、図1に示す第1の実施例と同様の部分は、図8に図1と同様の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0099】
図8において、チャージ圧制御弁39の排出口と第1ポンプモータ12のケーシング12Cにおける油路との間であって、かつチャージ圧制御弁39の排出口と第2ポンプモータ13のケーシング13Cにおける油路との間に、この発明の第1方向切換弁に相当する方向切換弁63が設けられている。すなわち、一方の端部がチャージ圧制御弁39の排出口に連結している供給油路42の他方の端部と、同様に一方の端部がチャージ圧制御弁39の排出口に接続している供給油路47の他方の端部とが、方向切換弁63の一方の接続口に連結されている。方向切換弁63の他方の接続口には、第1ポンプモータ12のケーシング12Cにおける油路に接続している供給油路64と、第2ポンプモータ13のケーシング13Cにおける油路に接続している供給油路65とが連結されている。
【0100】
この方向切換弁63は、供給油路42と供給油路64とを連通させ、かつ供給油路47と供給油路65とを連通させた第1供給状態と、供給油路42と供給油路65とを連通させ、かつ供給油路47と供給油路64とを連通させた第2供給状態とを選択的に切り換えて設定できる構成となっている。すなわち、方向切換弁63は、供給油路42を介して、チャージ圧制御弁39の排出口と第1ポンプモータ12のケーシング12Cにおける油路とを接続し、かつ供給油路47を介して、チャージ圧制御弁39の排出口と第2ポンプモータ13のケーシング13Cにおける油路とを接続した第1供給状態と、供給油路47を介して、チャージ圧制御弁39の排出口と第1ポンプモータ12のケーシング12Cにおける油路とを接続し、かつ供給油路42を介して、チャージ圧制御弁39の排出口と第2ポンプモータ13のケーシング13Cにおける油路とを接続した第2供給状態とを選択的に切り換えて設定できる構成となっている。
【0101】
なお、各供給油路42,47の流量をそれぞれ調節する各流量制御弁43,48は、各供給油路42,47の中間に配置されていて、前述の第1の実施例による構成と同様に、各油圧ポンプモータ12,13に設けられた作動装置56,57の各電磁制御弁58,60および各アクチュエータ59,61により、各油圧ポンプモータ12,13の容量とそれぞれ連動して制御できるように構成されている。
【0102】
すなわち、前述の第1の実施例による構成と同様に、第1ポンプモータ12と流量制御弁43とは、可変容量制御の際の容量の増減方向と、流量制御の際の流量の増減方向とが反対になるようになっている。具体的には、第1ポンプモータ12の容量が増加するほど供給油路42の流量が減少し、逆に、第1ポンプモータ12の容量が減少するほど供給油路42の流量が増加するように構成されていて、また、第2ポンプモータ13と流量制御弁48とは、可変容量制御の際の容量の増減方向と、流量制御の際の流量の増減方向とが反対になるようになっている。具体的には、第2ポンプモータ13の容量が増加するほど供給油路47の流量が減少し、逆に、第2ポンプモータ12の容量が減少するほど供給油路47の流量が増加するように構成されている。
【0103】
さらに、各油圧ポンプモータ12,13のケーシング12C,13Cにおける各油路と、各潤滑必要部位D1,D2との間に、この発明の第2方向切換弁に相当する方向切換弁66が設けられている。すなわち、一方の端部が第1ポンプモータ12のケーシング12Cにおける油路に連結している接続油路67の他方の端部と、一方の端部がチャージ圧制御弁39の排出口に接続している接続油路68の他方の端部とが、方向切換弁66の一方の接続口に連結されている。方向切換弁66の他方の接続口には、第2ポンプモータ13側に配置されている潤滑必要部位D2に接続している接続油路69と、第1ポンプモータ12側に配置されている潤滑必要部位D1に接続している接続油路70とが連結されている。
【0104】
この方向切換弁66は、接続油路67と接続油路69とを連通させ、かつ接続油路68と接続油路70とを連通させた第1接続状態と、接続油路67と接続油路70とを連通させ、かつ接続油路68と接続油路69とを連通させた第2接続状態とを選択的に切り換えて設定できる構成となっている。すなわち、方向切換弁66は、接続油路67を介して、第1ポンプモータ12のケーシング12Cにおける油路と第2ポンプモータ13側に配置されている潤滑必要部位D2とを接続し、かつ接続油路68を介して、第2ポンプモータ13のケーシング13Cにおける油路と第1ポンプモータ12側に配置されている潤滑必要部位D1とを接続した第1接続状態と、接続油路67を介して、第1ポンプモータ12のケーシング12Cにおける油路と第1ポンプモータ12側に配置されている潤滑必要部位D1とを接続し、かつ供給油路68を介して、第2ポンプモータ13のケーシング13Cにおける油路と第2ポンプモータ13側に配置されている潤滑必要部位D2とを接続した第2接続状態とを選択的に切り換えて設定できる構成となっている。
【0105】
そして、上記の各方向切換弁63,66の切り換え制御は、各油圧ポンプモータ12,13および各潤滑必要部位D1,D2に供給される作動油の温度に基づいて、適宜に行われるようになっている。その切り換え制御の例を図9のフローチャートに示す。このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図9において、先ず、各油圧ポンプモータ12,13および各潤滑必要部位D1,D2に供給される作動油の温度(油温)t、および各油圧ポンプモータ12,13の回転数NPM1,NPM2が、それぞれ検出される(ステップS1)。この場合の作動油の油温tは、例えば、油温センサ33により検出することができる。また、変速機の所定の位置に設置された温度センサ(図示せず)による変速機の温度の検出値に基づいて、この油温tを推定することもできる。また、各回転数NPM1,NPM2は、例えば、回転数センサ31,32により検出することができる。
【0106】
続いて、求められた作動油の油温tが、所定温度α以下であるか否かが判断される(ステップS2)。この所定温度αは、変速機の暖機状態、もしくは作動油の粘性の状態を判断するための閾値として予め定められた所定値である。
【0107】
油温tが所定温度α以下であることにより、このステップS2で肯定的に判断された場合は、ステップS3へ進み、各方向切換弁63,66の切り換え位置が、引き摺り低減モードに設定される。この引き摺り低減モードとは、作動油の油温tが低く、その作動油の粘性が高くなっている場合に、相対的に高回転となっているいずれかの油圧ポンプモータ12,13へ供給されて相対的に油温が高くなっている作動油を、動力伝達を行わずに高回転で空転している側のいずれかの潤滑必要部位D1,D2へ流通させるように、各方向切換弁63,66による各供給状態および各接続状態が設定された状態である。
【0108】
具体的には、この場合に、例えば第2ポンプモータ13の回転数NPM2よりも第1ポンプモータ12の回転数NPM1の方が高ければ、すなわち第1ポンプモータ12が相対的に高回転となっていれば、方向切換弁63が第2供給状態に設定されるとともに、方向切換弁66が第2接続状態に設定される。すなわち、相対的に高回転となっている第1ポンプモータ12へ供給されて相対的に油温tが高くなっている作動油を、動力伝達を行わずに高回転で空転している第1ポンプモータ12側に配置されている潤滑必要部位D1へ流通させる引き摺り低減モードが設定される。
【0109】
この場合、すなわち作動油の油温tが低く、かつ第2ポンプモータ13の回転数NPM2よりも第1ポンプモータ12の回転数NPM1の方が高い場合に設定される引き摺り低減モードの状態を図10に示してある。この図10に示す状態は、変速機が固定変速比である第1速に設定されている状態であって、第1ポンプモータ12がOFF状態にされ、第2ポンプモータ13がLOCK状態にされていて、したがって第1ポンプモータ12が高回転で回転するとともに、その第1ポンプモータ12側に配置されている第1遊星歯車機構3が動力伝達を行わず(すなわち第1遊星歯車機構3が無負荷の状態で)高回転で回転し、第2ポンプモータ13の回転が停止するとともに、その第2ポンプモータ13側に配置されている第2遊星歯車機構4が動力伝達を行っている状態である。
【0110】
この状態では、図10に示すように、無負荷で高回転数で回転している第1遊星歯車機構3およびその第遊星歯車機構3側(すなわち第1ポンプモータ12側)に配置されている潤滑必要部位D1に、高回転数で回転している第1ポンプモータ12へ供給されて相対的に高温となって、その粘性が低くなっている作動油が供給される。そのため、油温tが低く粘性が高い作動油が潤滑必要部位D1へ供給された場合と比較して、相対的に油温tが高く粘性が低い作動油が供給されることにより、潤滑必要部位D1における作動油の粘性抵抗による引き摺り損失が低減する。
【0111】
一方、油温tが所定温度αよりも高いことにより、前述のステップS2で否定的に判断された場合には、ステップS4へ進み、各方向切換弁63,66の切り換え位置が、冷却促進モードに設定される。この冷却促進モードとは、作動油の油温tが高く、作動油およびその作動油が供給されているいずれかの潤滑必要部位D1,D2の温度の上昇を抑制する必要がある場合に、相対的に低回転となっているいずれかの油圧ポンプモータ12,13へ供給されて相対的に油温が低い作動油を、相対的に動力伝達の割合が高く、そのために相対的に高温になっている側のいずれかの潤滑必要部位D1,D2へ流通させるように、各方向切換弁63,66による各供給状態および各接続状態が設定された状態である。
【0112】
具体的には、この場合に、例えば第2ポンプモータ13の回転数NPM2よりも第1ポンプモータ12の回転数NPM1の方が高ければ、すなわち第1ポンプモータ12が相対的に高回転となっていれば、方向切換弁63が第1供給状態に設定されるとともに、方向切換弁66が第1接続状態に設定される。すなわち、相対的に低回転となっている第2ポンプモータ13へ供給されて相対的に油温tが低い作動油を、動力伝達を行っていることにより相対的に高温になっている第2ポンプモータ13側に配置されている潤滑必要部位D2へ流通させる冷却促進モードが設定される。
【0113】
この場合、すなわち作動油の油温tが低く、かつ第2ポンプモータ13の回転数NPM2よりも第1ポンプモータ12の回転数NPM1の方が高い場合に設定される冷却促進モードの状態を図11に示してある。この図11に示す状態は、前述の図10と同様に、変速機が固定変速比である第1速に設定されている状態であって、第1ポンプモータ12がOFF状態にされ、第2ポンプモータ13がLOCK状態にされていて、したがって第1ポンプモータ12が高回転で回転するとともに、その第1ポンプモータ12側に配置されている第1遊星歯車機構3が動力伝達を行わず高回転で回転し、第2ポンプモータ13の回転が停止するとともに、その第2ポンプモータ13側に配置されている第2遊星歯車機構4が動力伝達を行っている(第2遊星歯車機構4に負荷が掛かっている)状態である。
【0114】
この状態では、図11に示すように、動力伝達を行っている第2遊星歯車機構4およびその第遊星歯車機構4側(すなわち第2ポンプモータ13側)に配置されている潤滑必要部位D2に、回転がロックされた第2ポンプモータ13へ供給されて相対的に低温となっている作動油が供給される。そのため、動力伝達を行うことにより負荷が掛かり、その際の発熱により相対的に高温になっている潤滑必要部位D2に、相対的に油温tが低い作動油が供給されることにより、潤滑必要部位D2における冷却が促進する。
【0115】
そして、上記のステップS3もしくはステップS4で、各方向切換弁63,66の切り換え位置が、引き摺り低減モードもしくは冷却促進モードのいずれかに設定されると、このルーチンを一旦終了する。
【0116】
ここで、上記の各具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述した各油圧ポンプモータ12,13がこの発明の油圧ポンプもしくは油圧モータに相当し、また、第2の実施例で示した、供給油路42,47、および供給油路64,65、および接続油路46,50、および接続油路69,70、および流量制御弁43,48、およびリターン油路44,49、ならびに方向切換弁63,66等により構成される回路C1も、この発明の潤滑回路に相当する。一方、図9に示すステップS1の制御を実行する機能的手段が、この発明の油温検出手段に相当し、ステップS2,S3,S4の制御を実行する機能的手段が、この発明の切換弁制御手段に相当する。
【0117】
このように、この発明の油圧制御装置の第2の実施例によれば、作動油の油温tに応じて各方向切換弁63,66を適宜に制御することにより、例えば、作動油の油温tが低く、その粘性が高い状態の場合に、相対的に高回転となっているいずれかの油圧ポンプモータ12,13へ供給されて相対的に油温tが高くなっている作動油を、動力伝達を行わずに高回転で空転している側のいずれかの潤滑必要部位D1,D2へ流通させる引き摺り低減モードを設定することができる。そのため、作動油の粘性抵抗による引き摺り損失を低減することができる。
【0118】
また、作動油の油温tが高く、その油温tの上昇を抑制する必要がある場合に、相対的に低回転となっているいずれか油圧ポンプモータ12,13へ供給されて相対的に油温が低くなっている作動油を、動力伝達を行っていることによりその際に熱を生じている側のいずれかの潤滑必要部位D1,D2へ流通させる冷却促進モードを設定することができる。そのため、潤滑必要部位D1,D2へ供給される作動油の油温上昇を抑制して潤滑必要部位D1,D2の冷却効果を向上させることができる。
【0119】
なお、この発明は上述した各具体例に限定されないのであって、対象とする無段変速機は、要は、流体を介した動力伝達を行い、その伝達されるトルクを無段階に変化させることのできる変速機であればよい。したがって、可変容量型の油圧ポンプもしくは油圧モータを、各差動機構に対する反力機構として使用する構成に替えて、動力源をこれらの可変容量型油圧ポンプもしくは油圧モータに直接連結し、かつその出力を伝動機構もしくは出力部材に直接伝達するように構成したいわゆるHST(ハイドロ・スタティック・トランスミッション)を対象とする油圧制御装置にもこの発明を適用できる。また、この発明で無段変速機により固定変速比を設定する場合、その段数は前進4段・後進1段に限られないのであり、それより多くてもよく、あるいは反対に少なくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】この発明で対象とする変速機および油圧制御装置の第1の実施例の構成を説明するための模式図である。
【図2】図1に示す第1の実施例における可変容量型油圧ポンプモータの可変容量制御と流量制御弁による流量制御との関係を説明するための図である。
【図3】この発明で対象とする変速機の動作状態をまとめて示す図表である。
【図4】固定変速比である第1速と第2速との中間の値の変速比を設定する過程における押出容積の変化、油圧ポンプモータの回転数の変化、必要とする作動油量の変化を示す図である。
【図5】固定変速比である第1速と第2速との中間の値の変速比を設定する過程における押出容積の変化、遊星歯車機構に作用する負荷の変化、必要とする作動油量の変化を示す図である。
【図6】この発明による油圧ポンプモータの冷却に必要とする総作動油油量を示す線図である。
【図7】この発明による遊星歯車機構の冷却に必要とする総作動油油量を示す線図である。
【図8】この発明で対象とする変速機および油圧制御装置の第2の実施例の構成を説明するための模式図である。
【図9】図8に示す第2の実施例において、この発明による方向切換弁の切り換え状態の制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図10】図8に示す第2の実施例において、この発明による引き摺り低減モードの例を説明するための模式図である。
【図11】図8に示す第2の実施例において、この発明による冷却促進モードの例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0121】
1…エンジン(動力源)、 3,4…遊星歯車機構(第1,第2差動機構)、 12,13…油圧ポンプモータ(可変容量型油圧ポンプもしくは油圧モータ)、 16…出力軸(出力部材)、 17,18,19,20…ギヤ対(伝動機構)、 22,23,24,25…シンクロ(切換機構)、 33…油温センサ、 35…チャージポンプ(補給ポンプ)、 42,47…供給油路(第1,第2供給油路)、 43,48…流量制御弁(第1,第2流量制御弁)、 46,50…接続油路(第1,第2接続油路)、 51…リリーフ弁、 56,57…作動装置、 58,60…電磁制御弁(第1,第2電磁制御弁)、 62…電子制御装置(ECU)、 63,66…方向切換弁(第1,第2方向切換弁)、 C0…閉回路、 C1…回路(潤滑回路)、 D1,D2…潤滑必要部位。
【技術分野】
【0001】
この発明は、油圧を利用して動力を伝達することにより変速比を連続的に変化させることのできる無段変速機に関し、特にその油圧を制御する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンなどの動力装置によって油圧ポンプを駆動し、その油圧ポンプで発生した圧油を油圧モータに供給すれば、油圧を介して動力を伝達することができ、またその油圧を制御することにより、伝達するトルクもしくは動力を適宜に変化させることができる。その一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されている変速機は、一対の遊星歯車機構のそれぞれにおける反力要素に可変容量型流体圧ポンプモータ(油圧ポンプモータ)が連結され、各可変容量型油圧ポンプモータの吐出口同士、および吸入口同士が互いに連結されて閉回路が形成されている。また、各遊星歯車機構における入力要素にはエンジンなどの動力源が出力した動力が入力されるように構成されている。さらに、各遊星歯車機構の出力要素と一体の中間軸上には、いわゆる固定段を設定するための駆動ギヤが配置され、それぞれの駆動ギヤに噛み合っている従動ギヤが出力軸上に配置されている。そして、これらの駆動ギヤと従動ギヤとからなる各ギヤ対を、トルクを伝達可能な状態とトルクを伝達しない状態とに切り換える同期連結機構(いわゆるシンクロ)が設けられている。
【0003】
したがって、いずれかの可変容量型油圧ポンプモータをロックして前記反力要素を固定すれば、動力源が出力した動力が、その反力要素を有する遊星歯車機構を介して一方の中間軸に伝達され、さらにその中間軸に対してシンクロによって連結されているギヤ対を介して出力軸に動力が伝達される。その場合の変速比は、動力の伝達に関与している前記ギヤ対のギヤ比に応じた変速比となる。
【0004】
この場合の可変容量型油圧ポンプモータのロックは、他方の可変容量型油圧ポンプモータの押出容積(容量)をゼロすなわち最小にすることにより設定される。すなわち、各可変容量型油圧ポンプモータは閉回路によって連通されているので、他方の可変容量型油圧ポンプモータの押出容積をゼロにすれば、圧油の流動が生じなくなるので、一方の可変容量型油圧ポンプモータの押出容積を最大にするなど、ゼロより大きい押出容積とすることにより、その一方の可変容量型油圧ポンプモータがロックされ、その回転が阻止される。
【0005】
また、各可変容量型油圧ポンプモータの押出容積をゼロより大きくするとともに、一方の可変容量型油圧ポンプモータ側のシンクロによって所定のギヤ対をトルク伝達可能な状態とし、かつ他方の可変容量型油圧ポンプモータ側のシンクロによって他のギヤ対をトルク伝達可能な状態にすると、各ギヤ対のギヤ比に応じて決まる変速比の中間の値の変速比が設定される。すなわち、一方の可変容量型油圧ポンプモータが圧油を発生させ、これが他方の可変容量型油圧ポンプモータに供給されてこれがモータとして動作し、その動力が他方のギヤ対を介して出力軸に伝達される。その結果、出力軸には、このような流体を介して伝達された動力と、一方の可変容量型油圧ポンプモータを介して機械的に伝達された動力とを合成した動力が現れる。そのうちの流体を介した動力は、各可変容量型油圧ポンプモータの押出容積を連続的に変化させることにより連続的に変化させることが可能であるため、結局、変速機の全体としての変速比を連続的に、すなわち無段階に設定することができる。
【0006】
また、この特許文献1に記載されている変速機は、2つの可変容量型油圧ポンプモータの吐出口同士を連通する油路に、電気的に制御可能なソレノイドバルブ(電磁制御弁)によって制御圧を発生させる圧力制御弁が設けられていて、各可変容量型油圧ポンプモータの吐出圧あるいはそれに関連する軸トルクをソレノイドバルブを介して電気的に制御できるようになっている。
【0007】
なお、特許文献2には、回転体に作用する負荷に応じて作動油の冷却状態と非冷却状態とを切り換えるように構成された回転体を備えた流体機械に関する発明が記載されている。この特許文献2に記載されている装置は、密閉容器内の上部に油圧ポンプ機構が、下部に油圧モータ機構がそれぞれ収容されたHST(ハイドロ・スタティック・トランスミッション)に対し、密閉容器内に隣接して冷却水路が形成されるとともに、その冷却水路に繋がる冷却水配管に電磁弁が設けられていて、油圧回路の回路圧が所定値以下の場合には電磁弁を閉鎖する一方、回路圧が所定値を超えると電磁弁を開放して潤滑油の冷却を行うように構成されている。
【0008】
また、特許文献3には、自動変速機の変速機構部での発熱量を算出し、その発熱量に基づいて必要潤滑油量を決定して潤滑油を供給することにより、伝動効率の低下および摩擦係合要素の温度上昇を防止するように構成された自動変速機の潤滑油制御装置に関する発明が記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2006−266493号公報
【特許文献2】特開2001−59562号公報
【特許文献3】特開平10−141480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1に記載されている変速機において、各可変容量型油圧ポンプモータ同士を連通している閉回路には、オイルを補給するためのチャージポンプあるいはブーストポンプなどと称されるオイルポンプが設けられている。このオイルポンプは、エンジンなどの動力源によって駆動され、各可変容量型油圧ポンプモータ同士を連通している閉回路の油圧を補給するとともに、変速機の歯車機構やシンクロ等のクラッチ機構などの変速機の潤滑必要部位へ、冷却および潤滑のためのオイルを供給するようになっている。
【0011】
そのため、上記の特許文献1に記載されている変速機では、可変容量型油圧ポンプモータの回転状態により、オイルポンプによって変速機の潤滑必要部位へ供給されるオイル量が変動する場合がある。すなわち、このオイルポンプは、各可変容量型油圧ポンプモータ同士を連通している閉回路における不可避的なオイル漏れなどにより、閉回路での油圧の不足を補うために閉回路へ圧油を供給するため、例えば、可変容量型油圧ポンプモータの回転数が高く、閉回路におけるオイル漏れが多くなった場合は、閉回路へ多量のオイルが供給され、反対に、可変容量型油圧ポンプモータの回転数が低く、閉回路におけるオイル漏れが少ない場合には、閉回路へ少量のオイルが供給されることになる。
【0012】
オイルポンプによる閉回路へのオイルの供給量が多くなると、変速機の潤滑必要部位へのオイルの供給量が少なくなり、反対に、オイルポンプによる閉回路へのオイルの供給量が少なくなると、変速機の潤滑必要部位へのオイルの供給量が多くなる。したがって、可変容量型油圧ポンプモータの回転状態が変動することにより、変速機の潤滑必要部位へのオイルの供給量も変動することになり、可変容量型油圧ポンプモータの回転状態によっては、潤滑必要部位へのオイルの供給が不足してしまったり、逆に、潤滑必要部位へのオイルの供給が過剰になって変速機の伝動効率が低下してしまうなどの課題があった。
【0013】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、可変容量型の油圧ポンプモータを使用した無段変速機において、油圧ポンプモータの回転状態にかかわらず、冷却もしくは潤滑のために供給されるオイルの油量を適切に、かつ容易に制御することのできる無段変速機の油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、動力源が出力した動力によって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、その油圧ポンプが出力した圧油が供給されて駆動されることにより出力部材に動力を出力する可変容量型の油圧モータとを備え、前記出力部材に伝達されるトルクがこれらの油圧ポンプおよび油圧モータの容量と油圧とに応じて変化する無段変速機の油圧制御装置において、前記油圧ポンプと油圧モータとの間で圧油を循環させる閉回路と、前記油圧ポンプおよび油圧モータならびに前記無段変速機の潤滑必要部位に冷却もしくは潤滑用の作動油を供給する潤滑回路と、前記閉回路に圧油を補給するとともに、前記潤滑回路に前記作動油を供給する補給ポンプと、前記油圧ポンプおよび油圧モータの容量と、前記補給ポンプから前記油圧ポンプおよび油圧モータへ供給する前記作動油の流量とを連動させて変化させる作動装置とを備えていることを特徴とする無段変速機の油圧制御装置である。
【0015】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記油圧ポンプおよび油圧モータは、ポンプおよびモータの両方の機能を備えた可変容量型の第1油圧ポンプモータと第2油圧ポンプモータとを含み、前記無段変速機は、前記動力源から動力が入力される入力要素と前記出力部材に対して伝動機構を介して動力を出力する出力要素と前記第1油圧ポンプモータが連結された反力要素とで差動作用を行う第1差動機構と、前記動力源から動力が入力される他の入力要素と前記出力部材に対して他の伝動機構を介して動力を出力する他の出力要素と前記第2油圧ポンプモータが連結された他の反力要素とで差動作用を行う第2差動機構と、前記各伝動機構を選択的にトルク伝達可能な状態にする切換機構とを備え、前記潤滑必要部位は、前記第1および第2差動機構と、それら第1および第2差動機構に常時もしくは選択的に連結される前記各伝動機構および各切換機構とを含むことを特徴とする無段変速機の油圧制御装置である。
【0016】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記潤滑回路は、前記第1油圧ポンプモータの容量の変化と連動して流量が変化する第1流量制御弁が設けられるとともに前記補給ポンプから前記第1油圧ポンプモータもしくは第2油圧ポンプモータへ前記作動油を供給する第1供給油路と、前記第2油圧ポンプモータの容量の変化と連動して流量が変化する第2流量制御弁が設けられるとともに前記補給ポンプから前記第2油圧ポンプモータもしくは第1油圧ポンプモータへ前記作動油を供給する第2供給油路と、前記第1油圧ポンプモータに供給された前記作動油を前記潤滑必要部位へ流通させる第1接続油路と、前記第2油圧ポンプモータに供給された前記作動油を前記潤滑必要部位へ流通させる第2接続油路とを備え、前記作動装置は、前記第1油圧ポンプモータの容量と前記第1流量制御弁の流量とを連動させて電気的に制御可能な第1電磁制御弁と、前記第2油圧ポンプモータの容量と前記第2流量制御弁の流量とを連動させて電気的に制御可能な第2電磁制御弁とを含むことを特徴とする無段変速機の油圧制御装置である。
【0017】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記第1電磁制御弁は、前記第1油圧ポンプモータの容量が増加するほど前記第1供給油路の流量が減少するように前記第1油圧ポンプモータと前記第1流量制御弁とを制御可能に構成され、前記第2電磁制御弁は、前記第2油圧ポンプモータの容量が増加するほど前記第2供給油路の流量が減少するように前記第2油圧ポンプモータと前記第2流量制御弁とを制御可能に構成されていることを特徴とする無段変速機の油圧制御装置である。
【0018】
また、請求項5の発明は、請求項3または4の発明において、前記潤滑回路は、前記第1供給油路により前記補給ポンプと相対的に低回転数の前記油圧ポンプモータとを接続し、かつ前記第2供給油路により前記補給ポンプと相対的に高回転数の前記油圧ポンプモータとを接続した第1供給状態と、前記第1供給油路により前記補給ポンプと前記相対的に高回転数の油圧ポンプモータとを接続し、かつ前記第2供給油路により前記補給ポンプと前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータとを接続した第2供給状態とに選択的に切り換える第1方向切換弁と、前記第1接続油路により前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータとその相対的に低回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続し、かつ前記第2接続油路により前記相対的に高回転数の油圧ポンプモータとその相対的に高回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続した第1接続状態と、前記第1接続油路により前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータと前記相対的に高回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続し、かつ前記第2接続油路により前記相対的に高回転数の前記油圧ポンプモータと前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続した第2接続状態とに選択的に切り換える第2方向切換弁とを備え、前記作動油の温度を検出する油温検出手段と、前記油温検出手段により検出された前記油温に基づいて前記第1および第2方向切換弁の切り換え状態を制御する切換弁制御手段とを更に備えていることを特徴とする無段変速機の油圧制御装置である。
【0019】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記切換弁制御手段は、前記油温検出手段により検出された前記油温が予め定められた所定温度以下の場合に、前記第1供給油路および第2供給油路を前記第1供給状態にし、かつ前記第1接続油路および第2接続油路を前記第1接続状態にした引き摺り低減モードを設定するとともに、前記油温が前記所定温度よりも高い場合に、前記第1供給油路および第2供給油路を前記第2供給状態にし、かつ前記第1接続油路および第2接続油路を前記第2接続状態にした冷却促進モードを設定する手段を含むことを特徴とする無段変速機の油圧制御装置である。
【0020】
そして、請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明において、前記補給ポンプから吐出された油圧を所定の圧力に設定するリリーフ弁を更に備え、前記潤滑回路は、前記リリーフ弁から排出される圧油を前記作動油として前記油圧ポンプと油圧モータとに供給する回路を含むことを特徴とする無段変速機の油圧制御装置である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、可変容量型の油圧ポンプが動力源によって駆動され、その油圧ポンプから可変容量型の油圧モータに油圧が供給されてこれが駆動させられる。すなわち、流体を介して動力が伝達され、その油圧を介した動力の伝達量を連続的に変化させることにより、変速比が無段階に変化する。このようにして動力を伝達することにより油圧ポンプや油圧モータあるいは無段変速機内の動力伝達部で発熱するので、これらを冷却するために潤滑回路に冷却もしくは潤滑用の作動油が供給されて流通させられ、油圧ポンプや油圧モータ、あるいは無段変速機の動力伝達部すなわち潤滑必要部位が作動油によって冷却もしくは潤滑される。その場合、可変容量型の油圧ポンプや油圧モータの容量が変化させられることにより、それら油圧ポンプや油圧モータの回転状態が変化すると、それら油圧ポンプや油圧モータあるいは潤滑必要部位における作動油の必要量も変化するが、可変容量型の油圧ポンプや油圧モータの容量が変化させられる際に、それら油圧ポンプや油圧モータあるいは潤滑必要部位へ供給される作動油の油量すなわち流量が、前記容量の変化に連動して同時に変化させられる。そのため、油圧ポンプや油圧モータの回転状態の変化に応じて、油圧ポンプや油圧モータあるいは潤滑必要部位へ供給する作動油の油量を、適切に、かつ特別な制御システムを設けることなく容易に制御することができる。その結果、可変容量型の油圧ポンプや油圧モータの回転状態が変化する場合であっても、油圧ポンプや油圧モータあるいは潤滑必要部位へ供給される作動油が不足したり、あるいは作動油が過剰に供給されたりすることを回避して、作動油の供給を効率良く行うことができる。
【0022】
また、請求項2の発明によれば、可変容量型の油圧ポンプモータが差動機構に対して反力を与え、その反力と動力源から入力されたトルクとが合成されて、出力要素から伝動機構および切換機構を介して出力部材に動力が伝達される。このような動力伝達系統が少なくとも2系統設けられているので、一方の油圧ポンプモータを空転させ、かつ他方の油圧ポンプモータが反力を出力すれば、一方の動力伝達系統を介して動力が出力され、その動力伝達系統における伝動機構で決まる変速比を設定することができる。また、2つの動力伝達系統を、それぞれの切換機構によってトルク伝達可能な状態にし、その状態で各油圧ポンプモータの間で圧油の授受を行って動力を伝達すれば、切換機構によってトルク伝達可能になっている伝動機構で決まる変速比の中間の値の変速比を設定できる。その中間の変速比は、流体伝動の割合に応じて変化するので、全体としての変速比は無段階に変化する。このようにして変速比を設定している状態では、例えば、いずれかの油圧ポンプモータの発熱量が他方の油圧ポンプモータの発熱量よりも多くなり、各油圧ポンプモータの間、あるいはそれら各油圧ポンプモータに連結されている各潤滑必要部位の間における冷却もしくは潤滑用の作動油の必要量に差が生じるが、各油圧ポンプモータの回転状態の変化、すなわち各油圧ポンプモータの必要作動油量の変化に応じて、各油圧ポンプモータあるいは各潤滑必要部位へ供給される作動油の流量が、各油圧ポンプモータの容量の変化に連動して同時に変化するように制御される。そのため、各油圧ポンプモータの回転状態の変化に応じて、それら各油圧ポンプモータあるいは潤滑必要部位へ供給する作動油の油量を、適切かつ容易に制御することができる。
【0023】
また、請求項3の発明によれば、各油圧ポンプモータへ供給される冷却もしくは潤滑用の作動油の流量が、補給ポンプから各油圧ポンプモータへ繋がれている各供給油路に設けられた各流量制御弁により調整される。それら各流量制御弁の流量の制御は、電磁制御弁により、各油圧ポンプモータの容量の制御と連動されて同時に行われる。そのため、各油圧ポンプモータあるいは各潤滑必要部位へ供給する作動油の油量を、適切に、かつ特別な制御システムを設けることなく容易に制御することができる。
【0024】
また、請求項4の発明によれば、例えば、第1油圧ポンプモータの容量が最大に設定された場合は、第1油圧ポンプモータは回転がロックされることにより発熱量が少なくなる。したがって、第1ポンプモータで必要とされる冷却用の作動油の油量は少なくてよい。反対に、第1油圧ポンプモータの容量が最小に設定された場合は、第1油圧ポンプモータは空転して高回転で駆動されることにより発熱量が多くなる。したがって、第1ポンプモータでは多くの冷却用の作動油が必要になる。すなわち、油圧ポンプモータに対する冷却用の作動油の必要油量は、油圧ポンプモータの容量の変化に反比例するように変化する。このことに対して、この請求項4の発明では、電磁制御弁により各供給油路に設けられた各流量制御弁と各油圧ポンプモータの容量制御部とを連動させて制御する場合に、第1油圧ポンプモータの容量と第1供給油路の作動油の流量とが反比例的に変化するように、また第2油圧ポンプモータの容量と第2供給油路の作動油の流量とが反比例的に変化するように、各流量制御弁の流量と各油圧ポンプモータの容量とが連動して制御される。そのため、各油圧ポンプモータの容量が変化することによる冷却もしくは潤滑用の作動油の必要油量の変化に対して、各油圧ポンプモータの容量を制御する電磁制御弁により、冷却もしくは潤滑用の作動油の供給量を適切に、かつ容易に制御することができる。
【0025】
また、請求項5の発明によれば、各油圧ポンプモータおよび潤滑必要部位へ供給される冷却もしくは潤滑用の作動油の油温に基づいて、各油圧ポンプモータへ供給される作動油の流量、および各油圧ポンプモータからそれら各油圧ポンプモータに繋がっている各潤滑必要部位への作動油の流通方向を、各油圧ポンプモータの回転状態に応じて適切に切り換えて設定することができる。
【0026】
また、請求項6の発明によれば、作動油の油温に応じて各方向切換弁を適宜に制御することにより、例えば、作動油の油温が低く、その作動油の粘性が高い状態の場合に、相対的に高回転となっている油圧ポンプモータへ供給されて相対的に油温が高くなっている作動油を、動力伝達を行わずに高回転で空転している側の潤滑必要部位へ流通させる引き摺り低減モードを設定することができる。あるいは、作動油の油温が高く、その作動油の油温の上昇を抑制する必要がある場合に、相対的に低回転となっている油圧ポンプモータへ供給されて相対的に油温が低くなっている作動油を、動力伝達を行っていることによりその際に熱を生じている側の潤滑必要部位へ流通させる冷却促進モードを設定することができる。そのため、作動油の粘性抵抗による引き摺り損失を低減することができ、また、潤滑必要部位へ供給される作動油の油温上昇を抑制して潤滑必要部位の冷却効果を向上させることができる。
【0027】
そして、請求項7の発明によれば、リリーフ弁から排出される圧油を冷却もしくは潤滑用の作動油として使用するので、既存の機器・装置を利用して冷却を行うことが可能になり、その結果、冷却もしくは潤滑のために新たに動力を消費することがないなど効率の良い冷却もしくは潤滑が可能になり、また装置の簡素化や小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする変速機について説明すると、図1に示す例は、伝達するべき動力(エネルギ)の形態を変更せずに設定できるいわゆる固定変速比として4つの前進段および1つの後進段を設定するように構成した例であり、特にエンジンなどの動力源1を車両に対してその幅方向に向けて搭載するいわゆるFF車(フロントエンジン・フロントドライブ車)に適するように構成した例である。
【0029】
図1において、動力源(E/G)1に入力部材2が連結されており、この入力部材2からこの発明における第1および第2差動機構に相当する第1遊星歯車機構(PG1)3および第2遊星歯車機構(PG2)4にトルクを伝達するように構成されている。ここで、動力源1は、内燃機関や電気モータあるいはこれらを組み合わせた構成など、車両に使用されている一般的な動力源であってよい。なお、以下の説明では、動力源1を仮にエンジン1と記す。また、入力部材2はエンジン(E/G)1の出力した動力を伝達できる部材であればよく、ドライブプレートや入力軸であってもよい。そして、これらエンジン1と入力部材2との間に、ダンパーやクラッチ、トルクコンバータなどの適宜の伝動手段を介在させることができる。
【0030】
第1遊星歯車機構3が入力部材2と同一軸線上に配置され、第2遊星歯車機構4が第1遊星歯車機構3の半径方向で外側に離隔し、それぞれの中心軸線を平行にした状態で並列に配置されている。これらの遊星歯車機構3,4としては、シングルピニオン型やダブルピニオン型などの適宜の形式の遊星歯車機構を採用することができる。図1に示す例はシングルピニオン型遊星歯車機構によって構成した例であり、外歯歯車であるサンギヤ3S,4Sと、そのサンギヤ3S,4Sと同心円状に配置された、内歯歯車であるリングギヤ3R,4Rと、これらサンギヤ3S,4Sとリングギヤ3R,4Rとに噛み合っているピニオンギヤを自転自在かつ公転自在に保持したキャリヤ3C,4Cとを備えている。そして、第1遊星歯車機構3におけるリングギヤ3Rに前記入力部材2が連結され、このリングギヤ3Rが入力要素となっている。
【0031】
また、入力部材2にはカウンタドライブギヤ5が取り付けられており、このカウンタドライブギヤ5にアイドルギヤ6が噛み合っているとともに、そのアイドルギヤ6にカウンタドリブンギヤ7が噛み合っている。このカウンタドリブンギヤ7は、前記第2遊星歯車機構4と同一軸線上に配置され、かつ第2遊星歯車機構4のリングギヤ4Rに、一体となって回転するように連結されている。したがって、第2遊星歯車機構4においては、そのリングギヤ4Rが入力要素となっている。各遊星歯車機構3,4の入力要素であるリングギヤ3R,4Rは、カウンタギヤ対がアイドルギヤ6を備えた構成であるから、同方向に回転するようになっている。
【0032】
第1遊星歯車機構3におけるキャリヤ3Cは出力要素となっており、そのキャリヤ3Cに第1中間軸8が、一体になって回転するように連結されている。この第1中間軸8は中空軸であって、その内部をモータ軸9が回転自在に挿入されており、このモータ軸9の一端部が、第1遊星歯車機構3における反力要素であるサンギヤ3Sに、一体となって回転するように連結されている。
【0033】
第2遊星歯車機構4も同様な構成であって、そのキャリヤ4Cが出力要素となっており、そのキャリヤ4Cに第2中間軸10が、一体になって回転するように連結されている。この第2中間軸10は中空軸であって、その内部をモータ軸11が回転自在に挿入されており、このモータ軸11の一端部が、第2遊星歯車機構4における反力要素であるサンギヤ4Sに、一体となって回転するように連結されている。
【0034】
上記のモータ軸9の他方の端部が可変容量型油圧ポンプモータ12の出力軸に連結されている。この可変容量型油圧ポンプモータ12は、斜軸ポンプや斜板ポンプあるいはラジアルピストンポンプなどの吐出容量を変更可能な流体圧(油圧)ポンプであって、その出力軸にトルクを与えて回転させることによりポンプとして機能して圧力流体(圧油)を吐出し、また吐出口もしくは吸入口から圧力流体を供給することにより、モータとして機能するようになっている。なお、この可変容量型油圧ポンプモータ12を以下の説明では、第1ポンプモータ12と記し、図にはPM1と表示する。
【0035】
また一方、モータ軸11の他方の端部が、可変容量型油圧ポンプモータ13の出力軸に連結されている。この可変容量型油圧ポンプモータ13は、前記モータ軸59側の第1ポンプモータ12と同様の構成のものである。なお、この可変容量型油圧ポンプモータ13を以下の説明では、第2ポンプモータ13と記し、図にはPM2と表示する。
【0036】
各油圧ポンプモータ12,13は、圧力流体である圧油を相互に受け渡すことができるように、油路14,15によって連通されている。すなわち、それぞれの吸入口12S,13S同士が油路14によって連通され、また吐出口12D,13D同士が油路15によって連通されている。したがって各油路14,15によって閉回路C0が形成されている。
【0037】
上記の各中間軸8,10と平行に、この発明の出力部材に相当する出力軸16が配置されている。そして、この出力軸16と各中間軸8,10との間のそれぞれに、所定の変速比を設定する伝動機構が設けられている。この発明における伝動機構としては、固定された変速比で動力を伝達する機構に限らず、変速比が可変な機構を採用することができ、図1に示す例では、固定された変速比で動力を伝達する複数のギヤ対17,18,19,20が採用されている。
【0038】
具体的に説明すると、前記第1中間軸8には、第1遊星歯車機構3側から順に、第4速駆動ギヤ17Aと第2速駆動ギヤ18Aとが配置されており、第4速駆動ギヤ17Aと第2速駆動ギヤ18Aとは第1中間軸8に対して回転自在に嵌合している。その第4速駆動ギヤ17Aに噛み合っている第4速従動ギヤ17Bと、第2速駆動ギヤ18Aに噛み合っている第2速従動ギヤ18Bとが、出力軸16に一体回転するように取り付けられている。
【0039】
さらに、上記の第4速従動ギヤ17Bに噛み合っている第3速駆動ギヤ19Aと、第2速従動ギヤ18Bに噛み合っている第1速駆動ギヤ20Aとが、第2中間軸10に回転自在に嵌合させられている。したがって、第4速従動ギヤ17Bが第3速従動ギヤを兼ねており、また第2速従動ギヤ18Bが第1速従動ギヤを兼ねている。ここで、各ギヤ対17,18,19,20の変速比(それぞれの駆動ギヤの歯数に対する従動ギヤの歯数の比)について説明すると、その変速比は、第1速用ギヤ対20、第2速用ギヤ対18、第3速用ギヤ対19、第4速用ギヤ対17の順に小さくなるように構成されている。
【0040】
さらに、発進用ギヤ対21が設けられている。この発進用ギヤ対21は、第1速用ギヤ対20と併せて出力軸16に動力を伝達することにより、発進時の駆動力を必要十分に大きくするためのものであって、前記第1ポンプモータ12側のモータ軸9に取り付けられた発進駆動ギヤ21Aと、出力軸16に回転自在に取り付けられた発進従動ギヤ21Bとを備えている。
【0041】
上述した各ギヤ対17,18,19,20,21を選択的に動力伝達可能な状態にするためのクラッチ機構が設けられている。このクラッチ機構は、各ギヤ対17,18,19,20,21を、いずれかの中間軸8,10と出力軸16とに選択的に連結する機構であって、この発明の切換機構に相当している。したがって従来の手動変速機などにおける同期連結機構(シンクロナイザー)を使用することができ、あるいは噛み合いクラッチ(ドグクラッチ)や摩擦式クラッチなどを使用することができる。また、上記の従動ギヤを出力軸16に一体的に取り付けた場合には、駆動ギヤを中間軸8,10に対して回転自在とし、その駆動ギヤを中間軸8,10に対して選択的に連結するように中間軸8,10側に切換機構を設けることができる。図1にはシンクロナイザーを採用した例を示してある。
【0042】
シンクロナイザーは、基本的には、回転軸と共に回転するスリーブを軸線方向に移動させて、その回転軸に対して相対回転するように取り付けられた回転部材のスプラインに係合させ、その過程でシンクロナイザーリングが回転部材に次第に摩擦接触することにより回転軸と回転部材とを同期させて、回転軸と回転部材とを連結するように構成されている。前記出力軸16上で、発進従動ギヤ21Bに隣接する位置に第1のシンクロナイザー(以下、第1シンクロと記す)22が設けられている。この第1シンクロ22は、そのスリーブ22Sを図1の左側に移動させることにより、発進従動ギヤ21Bを出力軸16に連結し、発進用ギヤ対21がモータ軸9と出力軸16との間でトルクを伝達するように構成されている。
【0043】
また、前記第2中間軸10上で、第3速駆動ギヤ19Aと第1速駆動ギヤ20Aとの間に第2のシンクロナイザー(以下、第2シンクロと記す)23が設けられている。この第2シンクロ23は、そのスリーブ23Sを図1の左側に移動させることにより、第1速駆動ギヤ20Aを第2中間軸10に連結し、第1速用ギヤ対20が第2中間軸10と出力軸16との間でトルクを伝達するように構成されている。また、反対にそのスリーブ23Sを図1の右側に移動させることにより、第3速駆動ギヤ19Aを第2中間軸10に連結し、第3速用ギヤ対19が第2中間軸10と出力軸16との間でトルクを伝達するように構成されている。
【0044】
さらに、前記第1中間軸8上で、第2速駆動ギヤ18Aと第4速駆動ギヤ17Aとの間に第3のシンクロナイザー(以下、第3シンクロと記す)24が設けられている。この第3シンクロ24は、そのスリーブ24Sを図1の左側に移動させることにより、第2速駆動ギヤ18Aを第1中間軸8に連結し、第2速用ギヤ対18が第1中間軸8と出力軸16との間でトルクを伝達するように構成されている。また、反対にそのスリーブ24Sを図1の右側に移動させることにより、第4速駆動ギヤ17Aを第1中間軸8に連結し、第4速用ギヤ対17が第1中間軸8と出力軸16との間でトルクを伝達するように構成されている。
【0045】
またさらに、第2ポンプモータ13側のモータ軸11上で、第2中間軸10の軸端に隣接する位置に後進用のシンクロナイザー(以下、Rシンクロと記す)25が設けられている。このRシンクロ25は、そのスリーブ25Sを図1の右側に移動させることにより、モータ軸11と第2中間軸10、すなわち第2遊星歯車機構4におけるサンギヤ4Sとキャリヤ4Cとを連結して、第2遊星歯車機構4の全体を一体回転させるように構成されている。
【0046】
上記の各シンクロ22,23,24,25は、手動操作によって切り換え動作するように構成することができるが、これに替えていわゆる自動制御するように構成することもできる。その場合は、例えば前述したスリーブを軸線方向に移動させる適宜のアクチュエータ(図示せず)を設け、そのアクチュエータを電気的に制御するように構成すればよい。
【0047】
上記のように、図1に示す変速機は、エンジン1が出力したトルクが、いずれかの中間軸8,10もしくはモータ軸9,11を介して出力軸16に伝達されるように構成されている。そして、その出力軸16には、歯車機構あるいはチェーンなどの巻き掛け伝動機構などの伝動手段26を介してデファレンシャル27が連結され、ここから左右の車軸28に動力を出力するようになっている。
【0048】
そして、変速機の動作状態を検出するためのセンサが設けられている。具体的には、前述した入力部材2もしくはこれと一体のカウンタドライブギヤ5の回転数を検出する入力回転数センサ29、前記車軸28の回転数を検出する出力回転数センサ30、第1ポンプモータ12もしくは第1ポンプモータ12が連結されているサンギヤ3Sの回転数を検出する回転数センサ31、第2ポンプモータ13もしくは第2ポンプモータ13が連結されているサンギヤ4Sの回転数を検出する回転数センサ32、変速機内の作動油の温度を検出する油温センサ33などが設けられている。
【0049】
前述したように、この発明に係る無段変速機の油圧制御装置は、変速機の運転状態や油圧ポンプモータの回転状態にかかわらず、冷却もしくは潤滑のために供給されるオイルの油量を適切に、かつ容易に制御することを目的としていて、そのための油圧制御回路が以下に示すように構成されている。
【0050】
(第1の実施例)
図1は、この発明の油圧制御装置を構成する油圧制御回路の第1の実施例を模式的に示す図である。図1において、各油圧ポンプモータ12,13の吸入口12S,13S同士が油路14によって連通されており、また吐出口12D,13D同士が油路15によって連通されている。ここで、吸入口12S,13Sは、押出容積(ポンプ容量)を正の方向に設定した状態で正回転することにより圧油を吸入するポートであり、またその圧油を吐出するポートが吐出口12D,13Dである。したがって、各油圧ポンプモータ12,13は両者の間で圧油を循環させる閉回路C0によって連通されている。
【0051】
この閉回路C0には圧油を補給するためのチャージポンプ(ブーストポンプと称されることもある)35が設けられている。このチャージポンプ35は、閉回路C0からの漏れなどによるオイルの不足を補うためのものであってこの発明の補給ポンプに相当し、前述したエンジン1や図示しないモータなどによって駆動されて、オイルパン36からオイルを汲み上げて閉回路C0に供給するようになっている。
【0052】
したがって、チャージポンプ35の吐出口は、閉回路C0における油路14と油路15とにそれぞれチェック弁37,38を介して連通されている。なお、これらのチェック弁37,38は、チャージポンプ35からの吐出方向に開き、これとは反対方向に閉じるように構成されている。さらに、チャージポンプ35の吐出圧を調整するためのチャージ圧制御弁(ブースト圧制御弁)39が、チャージポンプ35の吐出口に連通されている。このチャージ圧制御弁39は、スプリングによる弾性力とパイロット圧もしくはソレノイドによる押圧力との和より高い圧力が作用した場合に開いてオイルを排出するように構成されており、したがってチャージポンプ35の吐出圧をパイロット圧に応じた圧力に設定するように構成されている。
【0053】
さらに、第1ポンプモータ12の吸入口12Sと油路15との間に、電磁リリーフ弁40が設けられている。言い換えれば、第1ポンプモータ12と並列に、各油路14,15を連通させるように電磁リリーフ弁40が設けられている。この電磁リリーフ弁40は、第1ポンプモータ12の吸入口12S、または第2ポンプモータ13の吸入口13Sから圧油を吐出する場合に、その吐出圧を予め設定した圧力に維持するように構成されている。また、第2ポンプモータ13の吐出口13Dと油路14との間に、電磁リリーフ弁41が設けられている。言い換えれば、第2ポンプモータ13と並列に、各油路14,15を連通させるように電磁リリーフ弁41が設けられている。この電磁リリーフ弁41は、第1ポンプモータ12の吐出口12D、または第2ポンプモータ13の吐出口13Dから圧油を吐出する場合に、その吐出圧を予め設定した圧力に維持するように構成されている。
【0054】
さらに、チャージ圧制御弁39から排出される圧油を、冷却もしくは潤滑用の作動油(オイル)として各油圧ポンプモータ12,13に供給する油路が設けられている。すなわち、この油路は、チャージ圧制御弁39の排出口と各油圧ポンプモータ12,13のケーシングにおける油路とを連通させるものであって、チャージ圧制御弁39の排出口から出た圧油を分岐させて各油圧ポンプモータ12,13に供給するように構成されている。すなわち、この発明の第1供給油路に相当する一方の供給油路42が、第1ポンプモータ12のケーシング12Cに形成されている冷却用の油路(図示せず)に接続されている。また、この供給油路42には、流通する作動油の流量を制御可能な、この発明の第1流量制御弁に相当する流量制御弁43が設けられている。さらに、第1ポンプモータ12における冷却用の油路にはリターン油路44が連通され、第1ポンプモータ12から排出された冷却用の圧油を油溜め45に導くように構成されている。
【0055】
また、供給油路42のケーシング12Cに形成されている冷却用の油路との接続部分から分岐して、この発明の第1接続油路に相当する接続油路46が形成されている。この接続油路46の他方の端部は、モータ軸11およびサンギヤ4Sを介して第2ポンプモータ13に連結されている第2遊星歯車機構4、およびその第2遊星歯車機構4に連結されているもしくは選択的に連結されるギヤ対やシンクロなどの潤滑必要部位D2に繋がれている。したがって、供給油路42を経由して第1ポンプモータ12の冷却用の油路に供給されたオイルは、その冷却用の油路を循環した後に、接続油路46を介して潤滑必要部位D2に供給されるようになっている。
【0056】
これと同様に、前記一方の供給油路42から分岐し、この発明の第2供給油路に相当する他方の供給油路47が、第2ポンプモータ13のケーシング13Cに形成されている冷却用の油路(図示せず)に接続されている。また、この供給油路47には、流通する作動油の流量を制御可能な、この発明の第2流量制御弁に相当する48が設けられている。さらに、第2ポンプモータ13における冷却用の油路にはリターン油路49が連通され、第2ポンプモータ13から排出された冷却用の圧油を油溜め45に導くように構成されている。
【0057】
また、供給油路47のケーシング13Cに形成されている冷却用の油路との接続部分から分岐して、この発明の第2接続油路に相当する接続油路50が形成されている。この接続油路50の他方の端部は、モータ軸9およびサンギヤ3Sを介して第1ポンプモータ12に連結されている第1遊星歯車機構3、およびその第1遊星歯車機構3に連結されているもしくは選択的に連結されるギヤ対やシンクロなどの潤滑必要部位D1に繋がれている。したがって、供給油路47を経由して第2ポンプモータ13の冷却用の油路に供給されたオイルは、その冷却用の油路を循環した後に、接続油路50を介して潤滑必要部位D1に供給されるようになっている。
【0058】
上記の油溜め45に前記の各電磁リリーフ弁40,41からの排圧を導くようになっており、さらにこの油溜め45から前記オイルパン36に圧油を戻すように構成されている。また、前記のチャージ圧制御弁39と供給油路42,47との間の油路から分岐して、リリーフ弁51が設けられていて、そのリリーフ弁51から排出される圧油を油溜め45に導くように構成されている。さらに、閉回路C0における油路14および油路15の圧油を、それぞれチェック弁52,53、および流量制御弁54を介して、油溜め45に導くように構成されている。なお、これらのチェック弁52,53は、圧油が油路14,15から油溜め45へ流れる流通方向に開き、これとは反対方向に閉じるように構成されている。そして、この油溜め45とオイルパン36との間の油路には、オイルクーラー55が設けられている。
【0059】
上記のように、供給油路42,47、および接続油路46,50、および流量制御弁43,48、ならびにリターン油路44,49等により、この発明の潤滑回路に相当する回路C1が構成されている。
【0060】
上記の各油圧ポンプモータ12,13の押出容積すなわち容量を調節するための作動装置56,57が、各油圧ポンプモータ12,13にそれぞれ設けられている。すなわち、第1ポンプモータ12に、この発明の第1電磁制御弁に相当する電磁制御弁(リニアソレノイドバルブ)58と、その電磁制御弁58により動作させられるアクチュエータ59が設けられている。電磁制御弁58は、閉回路C0における油路14もしくは油路15から油圧が供給され、この電磁制御弁58からアクチュエータ59に制御油圧が供給されることによって、アクチュエータ59の動作が制御される。
【0061】
アクチュエータ59は、第1ポンプモータ12の容量制御部(図示せず)を動作させるように構成されていて、アクチュエータ59が作動することにより第1ポンプモータ12の容量制御部が動作する、すなわち第1ポンプモータ12の押出容積が変更されるようになっている。したがって、電磁制御弁58を制御してアクチュエータ59を作動させることにより、第1ポンプモータ12の可変容量制御を実行するように構成されている。
【0062】
また、アクチュエータ59は、上記のように第1ポンプモータ12の容量制御部を動作させるとともに、供給油路42に設けられた流量制御弁43を動作させるように構成されている。すなわち、アクチュエータ59が作動することにより第1ポンプモータ12の容量制御部が動作し、それと同時に、流量制御弁43が動作するようになっている。言い換えると、アクチュエータ59が作動することにより、第1ポンプモータ12の容量制御部と流量制御弁43とが連動して動作するようになっている。したがって、電磁制御弁58を制御してアクチュエータ59を作動させることにより、第1ポンプモータ12の可変容量制御と、流量制御弁43による供給油路42の流量制御とを連動させて同時に実行することができるように構成されている。
【0063】
それらの第1ポンプモータ12の可変容量制御および流量制御弁43による流量制御は、可変容量制御の際の容量の増減方向と、流量制御の際の流量の増減方向とが反対になるようになっている。すなわち、上記のように電磁制御弁58とアクチュエータ59とから構成される作動装置56は、電磁制御弁58を制御してアクチュエータ59を作動させる場合に、図2に示すように、第1ポンプモータ12の容量が増加するほど、流量制御弁43の流量すなわち供給油路42の流量が減少し、逆に、第1ポンプモータ12の容量が減少するほど、流量制御弁43の流量すなわち供給油路42の流量が増加するように構成されている。
【0064】
一方、第2ポンプモータ13には、上記の第1ポンプモータ12と同様に、この発明の第2電磁制御弁に相当する電磁制御弁60と、その電磁制御弁60により動作させられるアクチュエータ61が設けられている。電磁制御弁60は、閉回路C0における油路14もしくは油路15から油圧が供給され、この電磁制御弁60からアクチュエータ61に制御油圧が供給されることによって、アクチュエータ61の動作が制御される。
【0065】
アクチュエータ61は、第2ポンプモータ13の容量制御部(図示せず)を動作させるように構成されていて、アクチュエータ61が作動することにより第2ポンプモータ13の容量制御部が動作する、すなわち第2ポンプモータ13の押出容積が変更されるようになっている。したがって、電磁制御弁60を制御してアクチュエータ61を作動させることにより、第2ポンプモータ13の可変容量制御を実行するように構成されている。
【0066】
また、アクチュエータ61は、上記のように第2ポンプモータ13の容量制御部を動作させるとともに、供給油路47に設けられた流量制御弁48を動作させるように構成されている。すなわち、アクチュエータ61が作動することにより第2ポンプモータ13の容量制御部が動作し、それと同時に、流量制御弁48が動作するようになっている。言い換えると、アクチュエータ61が作動することにより、第2ポンプモータ13の容量制御部と流量制御弁48とが連動して動作するようになっている。したがって、電磁制御弁60を制御してアクチュエータ61を作動させることにより、第2ポンプモータ13の可変容量制御と、流量制御弁48による供給油路47の流量制御とを連動させて同時に実行することができるように構成されている。
【0067】
それらの第2ポンプモータ13の可変容量制御と流量制御弁48による流量制御とは、可変容量制御の際の容量の増減方向と、流量制御の際の流量の増減方向とが反対になるようになっている。すなわち、上記のように電磁制御弁60とアクチュエータ61とから構成される作動装置57は、電磁制御弁60を制御してアクチュエータ61を作動させる場合に、図2に示すように、第2ポンプモータ13の容量が増加するほど、流量制御弁48の流量すなわち供給油路47の流量が減少し、逆に、第2ポンプモータ13の容量が減少するほど、流量制御弁48の流量すなわち供給油路47の流量が増加するように構成されている。
【0068】
そして、上記の電磁制御弁58,60の制御圧(すなわち各油圧ポンプモータ12,13の容量および各供給油路42,47における流量)、および各シンクロ22,23,24の切り換え動作、ならびにチャージ圧制御弁39や電磁リリーフ弁40,41のリリーフ圧等を電気的に制御できるように構成されており、そのための電子制御装置(ECU)62が設けられている。この電子制御装置62は、マイクロコンピュータを主体にして構成されたものであって、所定の回転部材の回転数や他の検出信号が入力され、それらの入力された信号および予め記憶している情報ならびにプログラムに基づいて演算を行い、その演算結果に応じて指令信号を出力するように構成されている。
【0069】
ここで、上述した変速機の作用について説明する。図3は、各変速段を設定する際の各油圧ポンプモータ(PM1,PM2)12,13、および各シンクロ22,23,24,25の動作状態をまとめて示す図表であって、この図3における各油圧ポンプモータ12,13についての「OFF」は、ポンプ容量を実質的にゼロとし、その出力軸が回転させられても圧油を発生することがなく、また油圧が供給されても出力軸が回転しない状態(フリー)を示し、「LOCK」はそのロータの回転を止めている状態を示している。さらに「油圧発生」は、ポンプ容量を実質的なゼロより大きくするとともに圧油を吐出している状態を示し、したがって該当する油圧ポンプモータ12,13はポンプとして機能している。また、「油圧回収」は、一方の油圧ポンプモータ13(もしくは12)が吐出した圧油が供給されてモータとして機能している状態を示し、したがって該当する油圧ポンプモータ12(もしくは13)は軸トルクを発生し、対応するモータ軸9,11および中間軸8,10に駆動トルクを伝達している。
【0070】
そして、各シンクロ22,23,24,25についての「右」、「左」は、それぞれのシンクロ22,23,24,25におけるスリーブの図1での位置を示すとともに、丸括弧はダウンシフトするための待機状態、カギ括弧はアップシフトするための待機状態を示し、そして「○」は該当するシンクロ22,23,24,25をOFF状態(中立位置)に設定することにより引き摺りを低減している状態、「●」は該当するシンクロ22,23,24,25をOFF状態(中立位置)に設定して中立状態となっていることを示す。
【0071】
ニュートラルポジションが選択されてニュートラル(N)状態を設定する際には、各油圧ポンプモータ12,13が「OFF」状態とされ、また各シンクロ22,23,24,25のスリーブが中央位置に設定される。したがって、いずれのギヤ対17,18,19,20,21も出力軸16に連結されていないニュートラル状態となる。すなわち、各油圧ポンプモータ12,13が、押出容積が実質的にゼロとなるように制御される。その結果、いわゆる空回り状態となるので、各遊星歯車機構3,4のリングギヤ3R,4Rにエンジン1からトルクが伝達されても、サンギヤ3S,4Sに反力が作用しない。そのため、出力要素であるキャリヤ3C,4Cに連結されている各中間軸8,10にはトルクが伝達されない。
【0072】
シフトポジションがドライブポジションなどの走行ポジションに切り換えられると、第1シンクロ22のスリーブ22Sが図1の左側に移動させられるとともに第2シンクロ23のスリーブ23Sが、図1の左側に移動させられる。したがって、発進駆動ギヤ21Aがモータ軸9に連結されて第1ポンプモータ12と出力軸16とが連結され、また第1速駆動ギヤ20Aが第2中間軸10に連結されて第2遊星歯車機構4の出力要素であるキャリヤ4Cと出力軸16とが連結される。すなわち、固定変速比である第1速を設定する状態となる。また、これと併せて各油圧ポンプモータ12,13の押出容積がゼロより大きい容積に制御される。
【0073】
したがって、第2ポンプモータ13は前記第2遊星歯車機構4によって分配されたエンジン1の動力によって駆動されてポンプとして機能する。したがって、第2ポンプモータ13は、油圧を発生させることに伴う反力トルクをモータ軸11およびサンギヤ4Sに与える。これを図3には「油圧発生」と記載してある。そのため、第2遊星歯車機構4の差動作用によってキャリヤ4Cにトルクが伝達され、そのトルクが第1速用ギヤ対20を介して出力軸16に伝達される。
【0074】
一方、第2ポンプモータ13で発生した油圧がその吸入口13Sから吐出されて第1ポンプモータ12の吸入口12Sに供給される。その結果、第1ポンプモータ12がモータとして機能する。これを図3には「油圧回収」と記載してある。このようにして第1ポンプモータ12に伝達される動力が発進用ギヤ対21を介して出力軸16に伝達される。したがって発進から第1速までの駆動状態では、第2遊星歯車機構4を介したいわゆる機械的な動力の伝達と、油圧を介した動力の伝達との両方が生じ、これらの動力を合成した動力が出力軸16に現れる。また、この過程での変速比は、固定変速比である第1速より大きい値となり、その変速比は連続的に、あるいは無段階に変化する。
【0075】
こうしてエンジン1の回転数や車速が変化して第1速の変速比になると、第1ポンプモータ12の押出容積がゼロに設定され、また第2ポンプモータ13の押出容積が最大に設定され、その結果、実質上、第2ポンプモータ13の回転がロックされる。すなわちモータ軸11およびこれに連結されている第2ポンプモータ13が固定される。また、併せて第1シンクロ22がOFF状態に設定される。その結果、第2遊星歯車機構4のサンギヤ4Sが固定され、また第1遊星歯車機構3は出力軸16に対する動力の伝達に関与しなくなるので、エンジン1が出力した動力は、第2遊星歯車機構4および第1速用ギヤ対20を介して出力軸16に伝達される。すなわち、第1速用ギヤ対20のギヤ比で決まる固定変速比が設定される。なお、この場合、第1ポンプモータ12およびこれに連結されているモータ軸9が空転するので、第1中間軸8にトルクは現れない。
【0076】
固定変速比である第1速からアップシフトする場合、第3シンクロ24のスリーブ24Sを図1の左側に移動させて第2速駆動ギヤ18Aを第1中間軸8に連結しておく。なお、Rシンクロ25は中立状態にしておく。また、第3シンクロ24のスリーブ24Sを第2速駆動ギヤ18Aに係合させる場合、第3シンクロ24のスリーブ24Sの回転数と第2速駆動ギヤ18Aとの回転数を一致させる同期制御を行う。その同期制御は、前記シンクロ22,23,24,25のスリーブを相手部材に係合させる場合にも同様に行われる。
【0077】
この状態で、第1ポンプモータ12の押出容積を最大に向けて次第に増大させる。第2速へのアップシフト待機状態では、第1ポンプモータ12は逆回転しているから、その押出容積を次第に増大させることによりポンプとして機能する。すなわち、油圧を発生し(図3に「油圧発生」と記してある)、同時にそれに伴う反力トルクがモータ軸9に現れる。その結果、第1遊星歯車機構3および第2速用ギヤ対18を介した動力の伝達が次第に行われる。また、第1ポンプモータ12で発生した油圧が第2ポンプモータ13に供給されてこれがモータとして機能する(図3に「油圧回収」と記してある)ので、第2ポンプモータ13および第2遊星歯車機構4ならびに第1速用ギヤ対20を介した動力の伝達が生じる。そのため、第1速から第2速への変速の過程での変速比は、第1速の変速比と第2速の変速比との間の値となり、かつ連続的に変化する変速比となる。すなわち、変速比が連続的に変化する無段変速状態となる。これは、上述した発進から第1速の変速比に到るまでの間、および各固定変速比の間でも同様であり、したがって上述した変速機は、無段変速機として機能させることができる。
【0078】
上記のようにして第1ポンプモータ12の押出容積をほぼ最大にしてその回転が停止し、もしくは停止に近い状態になることにより、モータ軸9が実質的に固定される。また、併せて第2ポンプモータ13がOFF状態に設定される。したがって、第1遊星歯車機構3では、そのサンギヤ3Sが固定されるため、リングギヤ3Rに入力された動力がキャリヤ3Cから中間軸8を経て第2速駆動ギヤ18Aに出力される。一方、第2ポンプモータ13はOFF状態となっており、これと同軸上に配置されているRシンクロ25および第2シンクロ23はOFF状態であってそのスリーブ23Sが中立位置にあるので、第2ポンプモータ13や第2遊星歯車機構4は動力の伝達に関与しない。したがって、第2速用ギヤ対18のギヤ比で決まる固定変速比である第2速が設定される。
【0079】
以下、同様にして、第3速は第2シンクロ23のスリーブ23Sを図1の右側に移動させて第3速駆動ギヤ19Aを第2中間軸10に連結し、また第2ポンプモータ13の押出容積を最大にすることにより、第1速の場合と同様に、モータ軸11および第2ポンプモータ13を固定し、さらに他のシンクロ22,24はOFF状態にする。したがって、第3速用ギヤ対19を介して出力軸16に動力が伝達され、固定変速比である第3速が設定される。また、第4速は第3シンクロ24のスリーブ24Sを図1の右側に移動させて第4速駆動ギヤ17Aを第1中間軸8に連結し、また第1ポンプモータ12の押出容積を最大にすることにより、第2速の場合と同様に、モータ軸9および第1ポンプモータ12を固定し、さらに他のシンクロ23,25はOFF状態にする。したがって、第4速用ギヤ対17を介して出力軸16に動力が伝達され、固定変速比である第4速が設定される。
【0080】
さらに、後進段について説明すると、リバースポジションが選択された場合には、第1シンクロ22のスリーブ22Sが図1の左側に移動させられ、またRシンクロ25のスリーブ25Sが図1の右側に移動させられ、さらに他のシンクロ23,24がOFF状態に設定される。したがって、Rシンクロ25によって第2中間軸10とモータ軸11とが連結されることにより、第2遊星歯車機構4のサンギヤ4Sとキャリヤ4Cとが連結されて第2遊星歯車機構4の全体が実質的に一体化される。また、発進駆動ギヤ21Aがモータ軸9すなわち第1ポンプモータ12のロータに連結される。
【0081】
したがって、エンジン1から第2遊星歯車機構4に伝達された動力がそのまま第2ポンプモータ13に伝達されてこれが駆動され、第2ポンプモータ13によって油圧が発生する。なお、第2シンクロ23がOFF状態であるから、第2遊星歯車機構4あるいは第2中間軸10から出力軸16に動力が伝達されることはない。一方、第1ポンプモータ12の押出容積がゼロより大きい容積、例えば最大容積に制御される。その結果、第2ポンプモータ13から供給された油圧によって第1ポンプモータ12がモータとして機能し、モータ軸9にトルクを出力する。その場合、第1ポンプモータ12にはその吐出口12Dから油圧が供給されるので、第1ポンプモータ12が逆回転する。そして、そのトルクが発進用ギヤ対21を介して出力軸16に伝達されるので、後進状態となる。すなわち、後進段では、油圧を介した動力の伝達が生じ、これを図3では、第1ポンプモータ12について「油圧回収」と記し、第2ポンプモータ13について「油圧発生」と記してある。
【0082】
この発明に係る上記の変速機では、エンジン1が駆動している状態で少なくともいずれか一方の油圧ポンプモータ12,13が回転している。そのため、圧油が加圧され、あるいは剪断作用を受け、また摩擦が生じ、さらには漏洩などの圧力損失が生じるなどのことによって、少なくともいずれか一方の油圧ポンプモータ12,13で発熱する。これらの油圧ポンプモータ12,13は、リリーフ弁33から排出される圧油が各供給油路42,47を介して供給されることにより、その圧油によって熱が奪われて油圧ポンプモータ12,13が冷却される。
【0083】
また、各油圧ポンプモータ12,13、および各遊星歯車機構3,4の発熱量が、変速機の運転状態もしくは設定している変速比によって異なる。前述したように、固定変速比を設定している状態では、一方の油圧ポンプモータ12,13がロックされて回転を停止しており、かつ他方の油圧ポンプモータ13,12が空転して圧油を撹拌し、また少なからず摩擦が生じている。また、各固定変速比の間のいわゆる中間変速比を設定している場合には、一方の油圧ポンプモータ12,13がポンプとして機能して、その押出容積に応じた回転数で回転するとともに油圧を発生し、かつ他方の油圧ポンプモータ13,12はその油圧を受けてモータとして機能し、その押出容積に応じた回転数で回転するとともにトルクを出力している。
【0084】
この状況を固定変速比である第1速と第2速との間の状態で示すと図4,図5のとおりである。図4において、第1速では、第2ポンプモータ13の押出容積q2はゼロに設定されており、これに対して第1ポンプモータ12は押出容積q1が最大に設定されている。そして、第2ポンプモータ13は所定の回転数NPM2で空転しており、これに対して第1ポンプモータ12は停止している。すなわち、その回転数NPM1はゼロになっている。
【0085】
この状態から固定変速比である第2速に向けてアップシフトする場合、前述したように第2ポンプモータ13の押出容積q2を次第に増大させてこれをポンプとして機能させる。その場合、第2ポンプモータ13の押出容積q2が最大になるまで、第1ポンプモータ12の押出容積q1は最大に維持される。なお、第1ポンプモータ12の押出容積q1を、第2ポンプモータ13の押出容積q2と同時に変化させてもよい。
【0086】
第2ポンプモータ13は、押出容積q2が増大することに伴って、その回転数NPM2が次第に低下し、これに対して第1ポンプモータ12は、第2ポンプモータ13から圧油が供給されてモータとして機能することにより、その回転数NPM1が次第に増大する。
【0087】
第2ポンプモータ13の押出容積q2が最大まで増大すると、第1ポンプモータ12の押出容積q1が次第に低下させられ、ついにはゼロまで低下させられる。その過程においても、第2ポンプモータ13の回転数NPM2は低下し続け、また第1ポンプモータ12の回転数NPM1は増大し続ける。
【0088】
このような状況は、第2速と第3速との間、および第3速と第4速との間など、他の変速状態でも同様である。したがって、各油圧ポンプモータ12,13の押出容積q1,q2が等しい場合以外では、それぞれの回転数NPM1,NPM2が異なり、発熱量が異なっている。すなわち、相対的に高回転数の油圧ポンプモータ12,13の発熱量が多くなっている。発熱量に応じて冷却もしくは潤滑量を設定することが好ましいから、各油圧ポンプモータ12,13にそれぞれ供給するべき必要潤滑油量(冷却油量)VPM1,VPM2は、上記の回転数NPM1,NPM2と同様の関係になる。
【0089】
一方、図5において、第1速では、第2ポンプモータ13の押出容積q2はゼロに設定されており、これに対して第1ポンプモータ12は押出容積q1が最大に設定されている。そして、第2ポンプモータ13は所定の回転数NPM2で空転しており、これに対して第1ポンプモータ12は停止している。すなわち、その回転数NPM1はゼロになっている。
【0090】
この状態では、前述したように、第2シンクロ23のスリーブ23Sが図1の左側に移動させられることにより、第1速用ギヤ対20を介して第2中間軸10と出力軸16との間で動力が伝達されている。すなわち、第2遊星歯車機構4に負荷が掛かった状態になっている。そしてその第2遊星歯車機構4に作用する負荷(プラネタリ負荷)LPG2の大きさは、第1速用ギヤ対20を介して行われる動力伝達が最大となる固定変速比である第1速の時に最大となる。
【0091】
これに対して、第1遊星歯車機構3は、第3シンクロ24がOFFであることから、所定の回転数で空転していて、第1遊星歯車機構3には負荷は作用していない。すなわち、第1遊星歯車機構3に作用する負荷(プラネタリ負荷)LPG1の大きさは、固定変速比である第1速の時に最小となる。
【0092】
この状態から固定変速比である第2速に向けてアップシフトする場合、前述したように第2ポンプモータ13の押出容積q2を次第に増大させてこれをポンプとして機能させる。その場合、第2ポンプモータ13の押出容積q2が最大になるまで、第1ポンプモータ12の押出容積q1は最大に維持される。第2ポンプモータ13は、押出容積q2が増大することに伴って、その回転数が次第に低下し、これに対して第1ポンプモータ12は、第2ポンプモータ13から圧油が供給されてモータとして機能することにより、その回転数が次第に増大する。
【0093】
この場合、前述したように、第3シンクロ24のスリーブ24Sが図1の左側に移動させられることにより、第2速用ギヤ対18を介して第2中間軸8と出力軸16との間で動力が伝達し始める。すなわち、第1遊星歯車機構3に負荷LPG1が作用し始める。そしてその第1遊星歯車機構3に作用する負荷LPG1は、第2ポンプモータ13の押出容積q2が増大するのに伴って次第に増大し、第2ポンプモータ13の押出容積q2が最大になった後は、第1ポンプモータ12の押出容積q1が低下するのにつれて次第に増大し続ける。そして第1ポンプモータ12の押出容積q1が最小(すなわちゼロ)になった時点、すなわち固定変速比である第2速が設定された時点で、第1遊星歯車機構3に作用する負荷LPG1が最大になる。
【0094】
これに対して、第2遊星歯車機構4の作用する負荷LPG2は、負荷が最大の状態から、第2ポンプモータ13の押出容積q2が増大するのにつれて次第に低下し、第2ポンプモータ13の押出容積q2が最大になった後は、第1ポンプモータ12の押出容積q1が低下するのに伴って次第に低下し続ける。そして第1ポンプモータ12の押出容積q1が最小(すなわちゼロ)になった時点、すなわち固定変速比である第2速が設定された時点で、第1遊星歯車機構3に作用する負荷LPG2が最小になる。
【0095】
このような状況は、第2速と第3速との間、および第3速と第4速との間など、他の変速状態でも同様である。したがって、各油圧ポンプモータ12,13の押出容積q1,q2が等しい場合以外では、各遊星歯車機構3,4に作用する負荷LPG1,LPG2、すなわちそれらの負荷LPG1,LPG2による各遊星歯車機構3,4の発熱量が異なっている。すなわち、前述した各油圧ポンプモータ12,13の発熱量と同様に、相対的に高回転数の油圧ポンプモータ12,13に繋がっている側の遊星歯車機構3,4の発熱量が多くなっている。発熱量に応じて冷却もしくは潤滑量を設定することが好ましいから、各遊星歯車機構3,4にそれぞれ供給するべき必要潤滑油量(冷却油量)VPG1,VPG2は、上記の負荷LPG1,LPG2と同様の関係になる。
【0096】
そのため、この発明の油圧制御装置の第1の実施例では、このような回転数NPM1,NPM2と発熱量すなわち必要潤滑油量VPM1,VPM2との関係、および負荷LPG1,LPG2と発熱量すなわち必要潤滑油量VPG1,VPG2との関係を考慮して、各油圧ポンプモータ12,13の押出容積(容量)q1,q2と、各油圧ポンプモータ12,13の必要潤滑油量VPM1,VPM2および各遊星歯車機構3,4の必要潤滑油量VPG1,VPG2とを連動させて変化させるように構成されている。すなわち、前述したように、各油圧ポンプモータ12,13の押出容積(容量)と、各供給油路42,47の流量とを連動させて変化させるように、具体的には、第1油圧ポンプモータ12の押出容積(容量)q1が増加するほど供給油路42の流量が減少し、また第2油圧ポンプモータ13の押出容積(容量)q2が増加するほど供給油路47の流量が減少するように構成されているのである。
【0097】
このように、この発明の油圧制御装置の第1の実施例によれば、変速機の運転状態、すなわち各油圧ポンプモータ12,13の回転状態の変化に応じて、潤滑油量(冷却油量)が設定される。そのため、各油圧ポンプモータ12,13、および各遊星歯車機構3,4を過不足なく冷却もしくは潤滑することができる。また、必要とする総潤滑油量(冷却油量)は、各油圧ポンプモータ12,13、および各遊星歯車機構3,4で必要とする潤滑油量VPM1,VPM2の和、および潤滑油量VPG1,VPG2の和であり、これを図に示すと図6,図7のとおりである。図6において、一点鎖線で示す潤滑油量VPM1と二点鎖線で示す潤滑油量VPM2の和は実線で示すようになり、これは、常時、最大発熱量を想定して供給するとした場合の潤滑油量VMAX(点線)に比較して大幅に少量になる。また、図7において、一点鎖線で示す潤滑油量VPG1と二点鎖線で示す潤滑油量VPG2の和は実線で示すようになり、これも同様に、常時、最大発熱量を想定して供給するとした場合の潤滑油量VMAX(点線)に比較して大幅に少量になる。その結果、チャージポンプ35で吐出させるべき油量を少なくできるので、チャージポンプ35を小型化でき、また消費する動力を少なくして効率のよい冷却もしくは潤滑を行うことができる。
【0098】
(第2の実施例)
図8は、この発明の油圧制御装置を構成する油圧制御回路の第2の実施例を模式的に示す図である。この第2の実施例は、上記の図1に示す第1の実施例に対して、各供給油路42,47の接続状態を切り換える第1方向切換弁と、各接続油路46,50の接続状態を切り換える第2方向切換弁を更に設けた構成の例である。したがって、これら各方向切換弁とそれに関連する部分以外の構成は図1に示す第1の実施例と同様であり、図1に示す第1の実施例と同様の部分は、図8に図1と同様の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0099】
図8において、チャージ圧制御弁39の排出口と第1ポンプモータ12のケーシング12Cにおける油路との間であって、かつチャージ圧制御弁39の排出口と第2ポンプモータ13のケーシング13Cにおける油路との間に、この発明の第1方向切換弁に相当する方向切換弁63が設けられている。すなわち、一方の端部がチャージ圧制御弁39の排出口に連結している供給油路42の他方の端部と、同様に一方の端部がチャージ圧制御弁39の排出口に接続している供給油路47の他方の端部とが、方向切換弁63の一方の接続口に連結されている。方向切換弁63の他方の接続口には、第1ポンプモータ12のケーシング12Cにおける油路に接続している供給油路64と、第2ポンプモータ13のケーシング13Cにおける油路に接続している供給油路65とが連結されている。
【0100】
この方向切換弁63は、供給油路42と供給油路64とを連通させ、かつ供給油路47と供給油路65とを連通させた第1供給状態と、供給油路42と供給油路65とを連通させ、かつ供給油路47と供給油路64とを連通させた第2供給状態とを選択的に切り換えて設定できる構成となっている。すなわち、方向切換弁63は、供給油路42を介して、チャージ圧制御弁39の排出口と第1ポンプモータ12のケーシング12Cにおける油路とを接続し、かつ供給油路47を介して、チャージ圧制御弁39の排出口と第2ポンプモータ13のケーシング13Cにおける油路とを接続した第1供給状態と、供給油路47を介して、チャージ圧制御弁39の排出口と第1ポンプモータ12のケーシング12Cにおける油路とを接続し、かつ供給油路42を介して、チャージ圧制御弁39の排出口と第2ポンプモータ13のケーシング13Cにおける油路とを接続した第2供給状態とを選択的に切り換えて設定できる構成となっている。
【0101】
なお、各供給油路42,47の流量をそれぞれ調節する各流量制御弁43,48は、各供給油路42,47の中間に配置されていて、前述の第1の実施例による構成と同様に、各油圧ポンプモータ12,13に設けられた作動装置56,57の各電磁制御弁58,60および各アクチュエータ59,61により、各油圧ポンプモータ12,13の容量とそれぞれ連動して制御できるように構成されている。
【0102】
すなわち、前述の第1の実施例による構成と同様に、第1ポンプモータ12と流量制御弁43とは、可変容量制御の際の容量の増減方向と、流量制御の際の流量の増減方向とが反対になるようになっている。具体的には、第1ポンプモータ12の容量が増加するほど供給油路42の流量が減少し、逆に、第1ポンプモータ12の容量が減少するほど供給油路42の流量が増加するように構成されていて、また、第2ポンプモータ13と流量制御弁48とは、可変容量制御の際の容量の増減方向と、流量制御の際の流量の増減方向とが反対になるようになっている。具体的には、第2ポンプモータ13の容量が増加するほど供給油路47の流量が減少し、逆に、第2ポンプモータ12の容量が減少するほど供給油路47の流量が増加するように構成されている。
【0103】
さらに、各油圧ポンプモータ12,13のケーシング12C,13Cにおける各油路と、各潤滑必要部位D1,D2との間に、この発明の第2方向切換弁に相当する方向切換弁66が設けられている。すなわち、一方の端部が第1ポンプモータ12のケーシング12Cにおける油路に連結している接続油路67の他方の端部と、一方の端部がチャージ圧制御弁39の排出口に接続している接続油路68の他方の端部とが、方向切換弁66の一方の接続口に連結されている。方向切換弁66の他方の接続口には、第2ポンプモータ13側に配置されている潤滑必要部位D2に接続している接続油路69と、第1ポンプモータ12側に配置されている潤滑必要部位D1に接続している接続油路70とが連結されている。
【0104】
この方向切換弁66は、接続油路67と接続油路69とを連通させ、かつ接続油路68と接続油路70とを連通させた第1接続状態と、接続油路67と接続油路70とを連通させ、かつ接続油路68と接続油路69とを連通させた第2接続状態とを選択的に切り換えて設定できる構成となっている。すなわち、方向切換弁66は、接続油路67を介して、第1ポンプモータ12のケーシング12Cにおける油路と第2ポンプモータ13側に配置されている潤滑必要部位D2とを接続し、かつ接続油路68を介して、第2ポンプモータ13のケーシング13Cにおける油路と第1ポンプモータ12側に配置されている潤滑必要部位D1とを接続した第1接続状態と、接続油路67を介して、第1ポンプモータ12のケーシング12Cにおける油路と第1ポンプモータ12側に配置されている潤滑必要部位D1とを接続し、かつ供給油路68を介して、第2ポンプモータ13のケーシング13Cにおける油路と第2ポンプモータ13側に配置されている潤滑必要部位D2とを接続した第2接続状態とを選択的に切り換えて設定できる構成となっている。
【0105】
そして、上記の各方向切換弁63,66の切り換え制御は、各油圧ポンプモータ12,13および各潤滑必要部位D1,D2に供給される作動油の温度に基づいて、適宜に行われるようになっている。その切り換え制御の例を図9のフローチャートに示す。このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図9において、先ず、各油圧ポンプモータ12,13および各潤滑必要部位D1,D2に供給される作動油の温度(油温)t、および各油圧ポンプモータ12,13の回転数NPM1,NPM2が、それぞれ検出される(ステップS1)。この場合の作動油の油温tは、例えば、油温センサ33により検出することができる。また、変速機の所定の位置に設置された温度センサ(図示せず)による変速機の温度の検出値に基づいて、この油温tを推定することもできる。また、各回転数NPM1,NPM2は、例えば、回転数センサ31,32により検出することができる。
【0106】
続いて、求められた作動油の油温tが、所定温度α以下であるか否かが判断される(ステップS2)。この所定温度αは、変速機の暖機状態、もしくは作動油の粘性の状態を判断するための閾値として予め定められた所定値である。
【0107】
油温tが所定温度α以下であることにより、このステップS2で肯定的に判断された場合は、ステップS3へ進み、各方向切換弁63,66の切り換え位置が、引き摺り低減モードに設定される。この引き摺り低減モードとは、作動油の油温tが低く、その作動油の粘性が高くなっている場合に、相対的に高回転となっているいずれかの油圧ポンプモータ12,13へ供給されて相対的に油温が高くなっている作動油を、動力伝達を行わずに高回転で空転している側のいずれかの潤滑必要部位D1,D2へ流通させるように、各方向切換弁63,66による各供給状態および各接続状態が設定された状態である。
【0108】
具体的には、この場合に、例えば第2ポンプモータ13の回転数NPM2よりも第1ポンプモータ12の回転数NPM1の方が高ければ、すなわち第1ポンプモータ12が相対的に高回転となっていれば、方向切換弁63が第2供給状態に設定されるとともに、方向切換弁66が第2接続状態に設定される。すなわち、相対的に高回転となっている第1ポンプモータ12へ供給されて相対的に油温tが高くなっている作動油を、動力伝達を行わずに高回転で空転している第1ポンプモータ12側に配置されている潤滑必要部位D1へ流通させる引き摺り低減モードが設定される。
【0109】
この場合、すなわち作動油の油温tが低く、かつ第2ポンプモータ13の回転数NPM2よりも第1ポンプモータ12の回転数NPM1の方が高い場合に設定される引き摺り低減モードの状態を図10に示してある。この図10に示す状態は、変速機が固定変速比である第1速に設定されている状態であって、第1ポンプモータ12がOFF状態にされ、第2ポンプモータ13がLOCK状態にされていて、したがって第1ポンプモータ12が高回転で回転するとともに、その第1ポンプモータ12側に配置されている第1遊星歯車機構3が動力伝達を行わず(すなわち第1遊星歯車機構3が無負荷の状態で)高回転で回転し、第2ポンプモータ13の回転が停止するとともに、その第2ポンプモータ13側に配置されている第2遊星歯車機構4が動力伝達を行っている状態である。
【0110】
この状態では、図10に示すように、無負荷で高回転数で回転している第1遊星歯車機構3およびその第遊星歯車機構3側(すなわち第1ポンプモータ12側)に配置されている潤滑必要部位D1に、高回転数で回転している第1ポンプモータ12へ供給されて相対的に高温となって、その粘性が低くなっている作動油が供給される。そのため、油温tが低く粘性が高い作動油が潤滑必要部位D1へ供給された場合と比較して、相対的に油温tが高く粘性が低い作動油が供給されることにより、潤滑必要部位D1における作動油の粘性抵抗による引き摺り損失が低減する。
【0111】
一方、油温tが所定温度αよりも高いことにより、前述のステップS2で否定的に判断された場合には、ステップS4へ進み、各方向切換弁63,66の切り換え位置が、冷却促進モードに設定される。この冷却促進モードとは、作動油の油温tが高く、作動油およびその作動油が供給されているいずれかの潤滑必要部位D1,D2の温度の上昇を抑制する必要がある場合に、相対的に低回転となっているいずれかの油圧ポンプモータ12,13へ供給されて相対的に油温が低い作動油を、相対的に動力伝達の割合が高く、そのために相対的に高温になっている側のいずれかの潤滑必要部位D1,D2へ流通させるように、各方向切換弁63,66による各供給状態および各接続状態が設定された状態である。
【0112】
具体的には、この場合に、例えば第2ポンプモータ13の回転数NPM2よりも第1ポンプモータ12の回転数NPM1の方が高ければ、すなわち第1ポンプモータ12が相対的に高回転となっていれば、方向切換弁63が第1供給状態に設定されるとともに、方向切換弁66が第1接続状態に設定される。すなわち、相対的に低回転となっている第2ポンプモータ13へ供給されて相対的に油温tが低い作動油を、動力伝達を行っていることにより相対的に高温になっている第2ポンプモータ13側に配置されている潤滑必要部位D2へ流通させる冷却促進モードが設定される。
【0113】
この場合、すなわち作動油の油温tが低く、かつ第2ポンプモータ13の回転数NPM2よりも第1ポンプモータ12の回転数NPM1の方が高い場合に設定される冷却促進モードの状態を図11に示してある。この図11に示す状態は、前述の図10と同様に、変速機が固定変速比である第1速に設定されている状態であって、第1ポンプモータ12がOFF状態にされ、第2ポンプモータ13がLOCK状態にされていて、したがって第1ポンプモータ12が高回転で回転するとともに、その第1ポンプモータ12側に配置されている第1遊星歯車機構3が動力伝達を行わず高回転で回転し、第2ポンプモータ13の回転が停止するとともに、その第2ポンプモータ13側に配置されている第2遊星歯車機構4が動力伝達を行っている(第2遊星歯車機構4に負荷が掛かっている)状態である。
【0114】
この状態では、図11に示すように、動力伝達を行っている第2遊星歯車機構4およびその第遊星歯車機構4側(すなわち第2ポンプモータ13側)に配置されている潤滑必要部位D2に、回転がロックされた第2ポンプモータ13へ供給されて相対的に低温となっている作動油が供給される。そのため、動力伝達を行うことにより負荷が掛かり、その際の発熱により相対的に高温になっている潤滑必要部位D2に、相対的に油温tが低い作動油が供給されることにより、潤滑必要部位D2における冷却が促進する。
【0115】
そして、上記のステップS3もしくはステップS4で、各方向切換弁63,66の切り換え位置が、引き摺り低減モードもしくは冷却促進モードのいずれかに設定されると、このルーチンを一旦終了する。
【0116】
ここで、上記の各具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述した各油圧ポンプモータ12,13がこの発明の油圧ポンプもしくは油圧モータに相当し、また、第2の実施例で示した、供給油路42,47、および供給油路64,65、および接続油路46,50、および接続油路69,70、および流量制御弁43,48、およびリターン油路44,49、ならびに方向切換弁63,66等により構成される回路C1も、この発明の潤滑回路に相当する。一方、図9に示すステップS1の制御を実行する機能的手段が、この発明の油温検出手段に相当し、ステップS2,S3,S4の制御を実行する機能的手段が、この発明の切換弁制御手段に相当する。
【0117】
このように、この発明の油圧制御装置の第2の実施例によれば、作動油の油温tに応じて各方向切換弁63,66を適宜に制御することにより、例えば、作動油の油温tが低く、その粘性が高い状態の場合に、相対的に高回転となっているいずれかの油圧ポンプモータ12,13へ供給されて相対的に油温tが高くなっている作動油を、動力伝達を行わずに高回転で空転している側のいずれかの潤滑必要部位D1,D2へ流通させる引き摺り低減モードを設定することができる。そのため、作動油の粘性抵抗による引き摺り損失を低減することができる。
【0118】
また、作動油の油温tが高く、その油温tの上昇を抑制する必要がある場合に、相対的に低回転となっているいずれか油圧ポンプモータ12,13へ供給されて相対的に油温が低くなっている作動油を、動力伝達を行っていることによりその際に熱を生じている側のいずれかの潤滑必要部位D1,D2へ流通させる冷却促進モードを設定することができる。そのため、潤滑必要部位D1,D2へ供給される作動油の油温上昇を抑制して潤滑必要部位D1,D2の冷却効果を向上させることができる。
【0119】
なお、この発明は上述した各具体例に限定されないのであって、対象とする無段変速機は、要は、流体を介した動力伝達を行い、その伝達されるトルクを無段階に変化させることのできる変速機であればよい。したがって、可変容量型の油圧ポンプもしくは油圧モータを、各差動機構に対する反力機構として使用する構成に替えて、動力源をこれらの可変容量型油圧ポンプもしくは油圧モータに直接連結し、かつその出力を伝動機構もしくは出力部材に直接伝達するように構成したいわゆるHST(ハイドロ・スタティック・トランスミッション)を対象とする油圧制御装置にもこの発明を適用できる。また、この発明で無段変速機により固定変速比を設定する場合、その段数は前進4段・後進1段に限られないのであり、それより多くてもよく、あるいは反対に少なくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】この発明で対象とする変速機および油圧制御装置の第1の実施例の構成を説明するための模式図である。
【図2】図1に示す第1の実施例における可変容量型油圧ポンプモータの可変容量制御と流量制御弁による流量制御との関係を説明するための図である。
【図3】この発明で対象とする変速機の動作状態をまとめて示す図表である。
【図4】固定変速比である第1速と第2速との中間の値の変速比を設定する過程における押出容積の変化、油圧ポンプモータの回転数の変化、必要とする作動油量の変化を示す図である。
【図5】固定変速比である第1速と第2速との中間の値の変速比を設定する過程における押出容積の変化、遊星歯車機構に作用する負荷の変化、必要とする作動油量の変化を示す図である。
【図6】この発明による油圧ポンプモータの冷却に必要とする総作動油油量を示す線図である。
【図7】この発明による遊星歯車機構の冷却に必要とする総作動油油量を示す線図である。
【図8】この発明で対象とする変速機および油圧制御装置の第2の実施例の構成を説明するための模式図である。
【図9】図8に示す第2の実施例において、この発明による方向切換弁の切り換え状態の制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図10】図8に示す第2の実施例において、この発明による引き摺り低減モードの例を説明するための模式図である。
【図11】図8に示す第2の実施例において、この発明による冷却促進モードの例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0121】
1…エンジン(動力源)、 3,4…遊星歯車機構(第1,第2差動機構)、 12,13…油圧ポンプモータ(可変容量型油圧ポンプもしくは油圧モータ)、 16…出力軸(出力部材)、 17,18,19,20…ギヤ対(伝動機構)、 22,23,24,25…シンクロ(切換機構)、 33…油温センサ、 35…チャージポンプ(補給ポンプ)、 42,47…供給油路(第1,第2供給油路)、 43,48…流量制御弁(第1,第2流量制御弁)、 46,50…接続油路(第1,第2接続油路)、 51…リリーフ弁、 56,57…作動装置、 58,60…電磁制御弁(第1,第2電磁制御弁)、 62…電子制御装置(ECU)、 63,66…方向切換弁(第1,第2方向切換弁)、 C0…閉回路、 C1…回路(潤滑回路)、 D1,D2…潤滑必要部位。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源が出力した動力によって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、その油圧ポンプが出力した圧油が供給されて駆動されることにより出力部材に動力を出力する可変容量型の油圧モータとを備え、前記出力部材に伝達されるトルクがこれらの油圧ポンプおよび油圧モータの容量と油圧とに応じて変化する無段変速機の油圧制御装置において、
前記油圧ポンプと油圧モータとの間で圧油を循環させる閉回路と、
前記油圧ポンプおよび油圧モータならびに前記無段変速機の潤滑必要部位に冷却もしくは潤滑用の作動油を供給する潤滑回路と、
前記閉回路に圧油を補給するとともに、前記潤滑回路に前記作動油を供給する補給ポンプと、
前記油圧ポンプおよび油圧モータの容量と、前記補給ポンプから前記油圧ポンプおよび油圧モータへ供給する前記作動油の流量とを連動させて変化させる作動装置と
を備えていることを特徴とする無段変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記油圧ポンプおよび油圧モータは、ポンプおよびモータの両方の機能を備えた可変容量型の第1油圧ポンプモータと第2油圧ポンプモータとを含み、
前記無段変速機は、前記動力源から動力が入力される入力要素と前記出力部材に対して伝動機構を介して動力を出力する出力要素と前記第1油圧ポンプモータが連結された反力要素とで差動作用を行う第1差動機構と、前記動力源から動力が入力される他の入力要素と前記出力部材に対して他の伝動機構を介して動力を出力する他の出力要素と前記第2油圧ポンプモータが連結された他の反力要素とで差動作用を行う第2差動機構と、前記各伝動機構を選択的にトルク伝達可能な状態にする切換機構とを備え、
前記潤滑必要部位は、前記第1および第2差動機構と、それら第1および第2差動機構に常時もしくは選択的に連結される前記各伝動機構および各切換機構とを含むことを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
前記潤滑回路は、前記第1油圧ポンプモータの容量の変化と連動して流量が変化する第1流量制御弁が設けられるとともに前記補給ポンプから前記第1油圧ポンプモータもしくは第2油圧ポンプモータへ前記作動油を供給する第1供給油路と、前記第2油圧ポンプモータの容量の変化と連動して流量が変化する第2流量制御弁が設けられるとともに前記補給ポンプから前記第2油圧ポンプモータもしくは第1油圧ポンプモータへ前記作動油を供給する第2供給油路と、前記第1油圧ポンプモータに供給された前記作動油を前記潤滑必要部位へ流通させる第1接続油路と、前記第2油圧ポンプモータに供給された前記作動油を前記潤滑必要部位へ流通させる第2接続油路とを備え、
前記作動装置は、前記第1油圧ポンプモータの容量と前記第1流量制御弁の流量とを連動させて電気的に制御可能な第1電磁制御弁と、前記第2油圧ポンプモータの容量と前記第2流量制御弁の流量とを連動させて電気的に制御可能な第2電磁制御弁とを含むことを特徴とする請求項2に記載の無段変速機の油圧制御装置。
【請求項4】
前記第1電磁制御弁は、前記第1油圧ポンプモータの容量が増加するほど前記第1供給油路の流量が減少するように前記第1油圧ポンプモータと前記第1流量制御弁とを制御可能に構成され、
前記第2電磁制御弁は、前記第2油圧ポンプモータの容量が増加するほど前記第2供給油路の流量が減少するように前記第2油圧ポンプモータと前記第2流量制御弁とを制御可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の無段変速機の油圧制御装置。
【請求項5】
前記潤滑回路は、前記第1供給油路により前記補給ポンプと相対的に低回転数の前記油圧ポンプモータとを接続し、かつ前記第2供給油路により前記補給ポンプと相対的に高回転数の前記油圧ポンプモータとを接続した第1供給状態と、前記第1供給油路により前記補給ポンプと前記相対的に高回転数の油圧ポンプモータとを接続し、かつ前記第2供給油路により前記補給ポンプと前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータとを接続した第2供給状態とに選択的に切り換える第1方向切換弁と、前記第1接続油路により前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータとその相対的に低回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続し、かつ前記第2接続油路により前記相対的に高回転数の油圧ポンプモータとその相対的に高回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続した第1接続状態と、前記第1接続油路により前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータと前記相対的に高回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続し、かつ前記第2接続油路により前記相対的に高回転数の前記油圧ポンプモータと前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続した第2接続状態とに選択的に切り換える第2方向切換弁とを備え、
前記作動油の温度を検出する油温検出手段と、
前記油温検出手段により検出された前記油温に基づいて前記第1および第2方向切換弁の切り換え状態を制御する切換弁制御手段と
を更に備えていることを特徴とする請求項3または4に記載の無段変速機の油圧制御装置。
【請求項6】
前記切換弁制御手段は、前記油温検出手段により検出された前記油温が予め定められた所定温度以下の場合に、前記第1供給油路および第2供給油路を前記第1供給状態にし、かつ前記第1接続油路および第2接続油路を前記第1接続状態にした引き摺り低減モードを設定するとともに、前記油温が前記所定温度よりも高い場合に、前記第1供給油路および第2供給油路を前記第2供給状態にし、かつ前記第1接続油路および第2接続油路を前記第2接続状態にした冷却促進モードを設定する手段を含むことを特徴とする請求項5に記載の無段変速機の油圧制御装置。
【請求項7】
前記補給ポンプから吐出された油圧を所定の圧力に設定するリリーフ弁を更に備え、
前記潤滑回路は、前記リリーフ弁から排出される圧油を前記作動油として前記油圧ポンプと油圧モータとに供給する回路を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の無段変速機の油圧制御装置。
【請求項1】
動力源が出力した動力によって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、その油圧ポンプが出力した圧油が供給されて駆動されることにより出力部材に動力を出力する可変容量型の油圧モータとを備え、前記出力部材に伝達されるトルクがこれらの油圧ポンプおよび油圧モータの容量と油圧とに応じて変化する無段変速機の油圧制御装置において、
前記油圧ポンプと油圧モータとの間で圧油を循環させる閉回路と、
前記油圧ポンプおよび油圧モータならびに前記無段変速機の潤滑必要部位に冷却もしくは潤滑用の作動油を供給する潤滑回路と、
前記閉回路に圧油を補給するとともに、前記潤滑回路に前記作動油を供給する補給ポンプと、
前記油圧ポンプおよび油圧モータの容量と、前記補給ポンプから前記油圧ポンプおよび油圧モータへ供給する前記作動油の流量とを連動させて変化させる作動装置と
を備えていることを特徴とする無段変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記油圧ポンプおよび油圧モータは、ポンプおよびモータの両方の機能を備えた可変容量型の第1油圧ポンプモータと第2油圧ポンプモータとを含み、
前記無段変速機は、前記動力源から動力が入力される入力要素と前記出力部材に対して伝動機構を介して動力を出力する出力要素と前記第1油圧ポンプモータが連結された反力要素とで差動作用を行う第1差動機構と、前記動力源から動力が入力される他の入力要素と前記出力部材に対して他の伝動機構を介して動力を出力する他の出力要素と前記第2油圧ポンプモータが連結された他の反力要素とで差動作用を行う第2差動機構と、前記各伝動機構を選択的にトルク伝達可能な状態にする切換機構とを備え、
前記潤滑必要部位は、前記第1および第2差動機構と、それら第1および第2差動機構に常時もしくは選択的に連結される前記各伝動機構および各切換機構とを含むことを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
前記潤滑回路は、前記第1油圧ポンプモータの容量の変化と連動して流量が変化する第1流量制御弁が設けられるとともに前記補給ポンプから前記第1油圧ポンプモータもしくは第2油圧ポンプモータへ前記作動油を供給する第1供給油路と、前記第2油圧ポンプモータの容量の変化と連動して流量が変化する第2流量制御弁が設けられるとともに前記補給ポンプから前記第2油圧ポンプモータもしくは第1油圧ポンプモータへ前記作動油を供給する第2供給油路と、前記第1油圧ポンプモータに供給された前記作動油を前記潤滑必要部位へ流通させる第1接続油路と、前記第2油圧ポンプモータに供給された前記作動油を前記潤滑必要部位へ流通させる第2接続油路とを備え、
前記作動装置は、前記第1油圧ポンプモータの容量と前記第1流量制御弁の流量とを連動させて電気的に制御可能な第1電磁制御弁と、前記第2油圧ポンプモータの容量と前記第2流量制御弁の流量とを連動させて電気的に制御可能な第2電磁制御弁とを含むことを特徴とする請求項2に記載の無段変速機の油圧制御装置。
【請求項4】
前記第1電磁制御弁は、前記第1油圧ポンプモータの容量が増加するほど前記第1供給油路の流量が減少するように前記第1油圧ポンプモータと前記第1流量制御弁とを制御可能に構成され、
前記第2電磁制御弁は、前記第2油圧ポンプモータの容量が増加するほど前記第2供給油路の流量が減少するように前記第2油圧ポンプモータと前記第2流量制御弁とを制御可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の無段変速機の油圧制御装置。
【請求項5】
前記潤滑回路は、前記第1供給油路により前記補給ポンプと相対的に低回転数の前記油圧ポンプモータとを接続し、かつ前記第2供給油路により前記補給ポンプと相対的に高回転数の前記油圧ポンプモータとを接続した第1供給状態と、前記第1供給油路により前記補給ポンプと前記相対的に高回転数の油圧ポンプモータとを接続し、かつ前記第2供給油路により前記補給ポンプと前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータとを接続した第2供給状態とに選択的に切り換える第1方向切換弁と、前記第1接続油路により前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータとその相対的に低回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続し、かつ前記第2接続油路により前記相対的に高回転数の油圧ポンプモータとその相対的に高回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続した第1接続状態と、前記第1接続油路により前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータと前記相対的に高回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続し、かつ前記第2接続油路により前記相対的に高回転数の前記油圧ポンプモータと前記相対的に低回転数の油圧ポンプモータ側に配置された前記潤滑必要部位とを接続した第2接続状態とに選択的に切り換える第2方向切換弁とを備え、
前記作動油の温度を検出する油温検出手段と、
前記油温検出手段により検出された前記油温に基づいて前記第1および第2方向切換弁の切り換え状態を制御する切換弁制御手段と
を更に備えていることを特徴とする請求項3または4に記載の無段変速機の油圧制御装置。
【請求項6】
前記切換弁制御手段は、前記油温検出手段により検出された前記油温が予め定められた所定温度以下の場合に、前記第1供給油路および第2供給油路を前記第1供給状態にし、かつ前記第1接続油路および第2接続油路を前記第1接続状態にした引き摺り低減モードを設定するとともに、前記油温が前記所定温度よりも高い場合に、前記第1供給油路および第2供給油路を前記第2供給状態にし、かつ前記第1接続油路および第2接続油路を前記第2接続状態にした冷却促進モードを設定する手段を含むことを特徴とする請求項5に記載の無段変速機の油圧制御装置。
【請求項7】
前記補給ポンプから吐出された油圧を所定の圧力に設定するリリーフ弁を更に備え、
前記潤滑回路は、前記リリーフ弁から排出される圧油を前記作動油として前記油圧ポンプと油圧モータとに供給する回路を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の無段変速機の油圧制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−232412(P2008−232412A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77490(P2007−77490)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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