説明

無線通信端末、情報送信方法および無線通信システム

【課題】緊急通報車載装置が事故の瞬間に緊急呼を行う前に損壊した場合においても、緊急通報センターに対して緊急呼を行えるようにできる無線通信端末を提供する。
【解決手段】緊急事態が発生したことを検出する緊急通報車載装置102は、内蔵する通信装置を用いて無線通信端末101と近距離無線通信を行う。無線通信端末101は、緊急通報車載装置102からの無線信号を定期的に受信し、緊急通報車載装置102からの無線信号を所定期間受信できない場合には、緊急通報車載装置102が異常であると判定して、車両105の異常を伝える緊急呼の無線信号を基地局103を介して緊急通報センター104へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動車両に緊急事態が発生した場合に外部に対して緊急呼を行う無線通信端末、無線通信端末における情報送信方法および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動車両の運転時に衝突事故などの緊急事態が発生した場合に、事故が生じたことを示す情報(緊急呼)を警察や消防署に自動的に通報する緊急通報システムの技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ユーザが携帯電話機を所持して、緊急通報車載装置が搭載された車両に乗車すると、車載装置と携帯電話機がリンクし、自動車が衝撃を受けて車載装置が事故発生を検知すると、携帯電話機が特定通報ダイヤルに発信し、移動通信網が発信を受けると、複数の基地局が携帯電話機に測距信号を送信して距離を測定して携帯電話機の座標を求め、特定通報センターが、事故発生の通報を受けると座標情報から事故発生位置を特定して適切な警察署もしくは消防署に通報する車両用緊急通報システムの技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、緊急通報車載装置が、事故を検出すると、携帯電話機との間で音声リンクを確立し、かつ携帯電話機と緊急通報センターの間で音声リンクを確立して、緊急通報車載装置のスピーカまたはマイクロホンを用いて、ユーザが緊急通報センターのオペレータとハンズフリーで会話できるようにし、その後、スピーカまたはマイクロホンのいずれかに異常が発生した場合は、携帯電話機の音声入出力機能を用いてユーザがオペレータと会話できるようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−250183号公報
【特許文献2】特開2008−46709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の先行技術のような緊急通報システムでは、緊急通報車載装置が事故を検知し、緊急呼を行う基点となっているので、事故の衝撃等により車載装置自体が、事故の瞬間に損壊した場合には、緊急通報センターに対して緊急呼を行うことができなくなってしまう。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、緊急通報車載装置が事故の瞬間に緊急呼を行う前に損壊した場合においても、緊急通報センターに対して緊急呼を行えるようにできる無線通信端末、情報送信方法および無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の無線通信端末は、車両に設置された緊急通報用電子機器からの無線信号を定期的に受信する受信部と、前記受信部が前記緊急通報用電子機器からの無線信号を所定期間受信できない場合に前記緊急通報用電子機器が異常であると判定する判定部と、外部の無線受信装置に緊急信号を送信する送信部と、前記判定部で前記緊急通報用電子機器が異常であると判定された場合に、前記緊急信号として前記車両の異常を示す情報を、前記送信部を介して、前記外部の無線受信装置に送信する制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の無線通信端末は、位置情報を定期的に取得する位置情報取得部を更に備え、前記制御部は、前記判定部で前記緊急通報用電子機器が異常であると判定され、かつ、前記位置情報取得部によって前記異常の判定の直前に取得された第1の位置情報と、前記異常の判定から所定時間経過後に取得された第2の位置情報との差分を取得し、当該差分が所定値より小さい場合に、前記緊急信号として前記車両の異常を示す情報を、前記送信部を介して、前記外部の無線受信装置に送信することが好ましい。
また、前記制御部は、前記第1の位置情報と前記第2の位置情報との差分が所定値以上である場合に、前記緊急通報用電子機器が異常であることを、通知部を介して通知することが好ましい。
【0010】
本発明の無線通信端末は、加速度を検出する加速度検出部を更に備え、前記制御部は、前記判定部で前記緊急通報用電子機器が異常であると判定され、かつ、前記加速度検出部によって前記異常の判定の直前に検出された第1の加速度と、前記異常の判定の直後に検出された第2の加速度との差分が予め設定された閾値を超える場合に、前記緊急信号として前記車両の異常を示す情報を、前記送信部を介して、前記外部の無線受信装置に送信することが好ましい。
また、前記制御部は、前記第1の加速度と前記第2の加速度との差分が予め設定された閾値以下の場合に、前記緊急通報用電子機器が異常であることを、通知部を介して通知することが好ましい。
【0011】
本発明の無線通信端末は、位置情報を定期的に取得する位置情報取得部と、加速度を検出する加速度検出部とを更に備え、前記制御部は、前記判定部で前記緊急通報用電子機器が異常であると判定され、かつ、前記位置情報取得部によって前記異常の判定の直前に取得された第1の位置情報と、前記異常の判定から所定時間経過後に取得された第2の位置情報との差分を取得し、当該差分が所定値より小さく、かつ、前記加速度検出部によって前記異常の判定の直前に検出された第1の加速度と、前記異常の判定の直後に検出された第2の加速度との差分が予め設定された閾値を超える場合に、前記緊急信号として前記車両の異常を示す情報を、前記送信部を介して、前記外部の無線受信装置に送信することが好ましい。
また、前記制御部は、前記第1の位置情報と前記第2の位置情報との差分が所定値以上である場合、および、前記第1の位置情報と前記第2の位置情報との差分が所定値より小さく、かつ、前記第1の加速度と前記第2の加速度との差分が予め設定された閾値以下の場合に、前記緊急通報用電子機器が異常であることを、通知部を介して通知することが好ましい。
【0012】
また、本発明の無線通信端末における情報送信方法は、車両に設置された緊急通報用電子機器からの無線信号を定期的に受信するステップと、前記緊急通報用電子機器からの無線信号を所定期間受信できない場合に前記緊急通報用電子機器が異常であると判定するステップと、前記緊急通報用電子機器が異常であると判定された場合に、前記緊急信号として前記車両の異常を示す情報を、前記外部の無線受信装置に送信するステップとを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、無線通信端末と、車両に設置された緊急通報用電子機器から構成される無線通信システムであって、前記無線通信端末は、前記緊急通報用電子機器からの無線信号を定期的に受信する受信部と、前記受信部が前記緊急通報用電子機器からの無線信号を所定期間受信できない場合に前記緊急通報用電子機器が異常であると判定する判定部と、外部の無線受信装置に緊急信号を送信する第1の送信部と、前記判定部で前記緊急通報用電子機器が異常であると判定された場合に、前記緊急信号として前記車両の異常を示す情報を、前記送信部を介して、前記外部の無線受信装置に送信する制御部とを備え、前記電子機器は、前記無線通信端末を検出する検出部と、前記検出部で前記無線通信端末が検出された場合に、前記無線通信端末に無線信号を送信する第2の送信部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の無線通信端末は、緊急通報車載装置が事故の瞬間に緊急呼を行う前に損壊した場合においても、緊急通報センターに対して緊急呼を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の無線通信端末を用いた無線通信システムのシステム構成例を示す図である。
【図2】本発明の無線通信端末の構成例を示す図である。
【図3】緊急通報車載装置の構成例を示す図である。
【図4】本発明の無線通信端末が緊急通報車載装置と近距離無線通信を開始してから、緊急呼を行うまでの第1の実施例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の無線通信端末が緊急通報車載装置と近距離無線通信を開始してから、緊急呼を行うまでの第2の実施例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の無線通信端末が緊急通報車載装置と近距離無線通信を開始してから、緊急呼を行うまでの第3の実施例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の無線通信端末が緊急通報車載装置と近距離無線通信を開始してから、緊急呼を行うまでの第4の実施例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の無線通信端末が緊急通報車載装置と近距離無線通信を開始してから、緊急呼を行うまでの第5の実施例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の無線通信端末が緊急通報車載装置と近距離無線通信を開始してから、緊急呼を行うまでの第6の実施例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の無線通信端末が緊急通報車載装置と近距離無線通信を開始してから、緊急呼を行うまでの第7の実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の無線通信端末を用いた無線通信システムのシステム構成例を示す図である。車両105は、エアバックシステム等に接続されて緊急事態が発生したことを検出する緊急通報車載装置102(緊急通報用電子機器)を搭載する。緊急通報車載装置102は、内蔵する通信装置を用いて無線通信端末101と近距離無線通信を行う。無線通信端末101は、運転者や同乗者等のユーザが所持する、例えば携帯電話機であり、緊急通報車載装置102からの無線信号を定期的に受信し、緊急通報車載装置102からの無線信号を所定期間受信できない場合には、車両105の異常を伝える緊急呼の無線信号(緊急信号)を基地局103(無線受信装置)に送信する。基地局103は、緊急呼の信号を固定通信網106を介して緊急通報センター104へ送信する。緊急通報センター104は、無線通信端末101からの緊急呼を着呼する。
【0017】
図2は、本発明の無線通信端末の構成例を示す図である。無線通信端末101は、基地局103(無線受信装置)に無線信号を送信する無線通信部201(送信部、第1の送信部)と、緊急通報車載装置102(緊急通報用電子機器)と例えばブルートゥース(Bluetooth)による近距離無線通信を行って、緊急通報車載装置102からの無線信号を定期的に受信する近距離無線通信部202(受信部)と、近距離無線通信部202が緊急通報車載装置102からの無線信号を所定期間受信できない場合に緊急通報車載装置102が異常であると判定して、車両の異常を示す緊急呼の無線信号(緊急信号)を、無線通信部201を介して基地局103に送信する制御部203(判定部、制御部)と、各種データを記憶するメモリ204と、測地点の位置情報を定期的に取得するGPS通信部205(位置情報取得部)と、ユーザに情報を通知する表示部206(通知部)、スピーカ207(通知部)、バイブレーション部208(通知部)と、各種入力を行う入力部209と、加速度を検出する加速度センサ210(加速度検出部)とを備える。
【0018】
図3は、緊急通報車載装置の構成例を示す図である。緊急通報車載装置102は、各種制御を行う制御部301と、各種入力を行う入力部302と、近距離無線通信部303とを備え、特に、制御部301は、緊急事態検出部304と、端末検出部305を機能的に含む。緊急事態検出部304は、緊急通報車載装置102が、例えばエアバックシステムに接続されている場合、エアバックが展開(膨張)したことを表す展開信号を検出する。端末検出部305(検出部)は、無線通信端末101の存在を検出する。近距離無線通信部303(第2の送信部)は、端末検出部305で無線通信端末101が検出された場合に、無線通信端末101に例えばブルートゥース(Bluetooth)により無線信号を送信する。
【0019】
図4は、本発明の無線通信端末が緊急通報車載装置と近距離無線通信を開始してから、緊急呼を行うまでの第1の実施例を示すフローチャートである。開始の時点では無線通信端末101および緊急通報車載装置102に電源が入っているものとする。
無線通信端末101の制御部203は、緊急通報車載装置102との近距離無線通信を開始した時に、メモリ204にある近距離無線通信の状態を示す変数statusを初期化する(S101)。次に、状態変数statusが0である間は、制御部203は、正常終了検出および異常終了検出を繰り返す(S102)。
正常終了としては、例えば、ユーザが無線通信端末101または緊急通報車載装置102に電源断指示を行うことによる近距離無線通信終了や、無線通信端末101または緊急通報車載装置102の近距離無線通信のみの終了指示による近距離無線通信終了等がある。なお、無線通信端末101へのユーザの各指示は入力部209を介して行い、緊急通報車載装置102へのユーザの各指示は入力部302を介して行う。
異常終了としては、例えば、無線通信端末101から緊急通報車載装置102へ定期的に送信する同期信号に対する緊急通報車載装置102からの受信通知信号が無線通信端末101において所定期間受信できないことや、無線通信端末101において緊急通報車載装置102から定期的に送信される同期信号が所定期間受信できないこと等が挙げられる。
制御部203は、正常終了検出を行い(S103)、正常終了したと判定した場合は、例えば状態変数statusを1に設定する(S104)。次に、制御部203は、異常終了検出を行い(S105)、異常終了したと判定した場合は、例えば状態変数statusを2に設定する(S106)。その後、状態変数判定(S107)において状態変数statusの値が2であれば(S107でYesの場合)、制御部203は、車両105の異常を示す緊急呼の無線信号を、無線通信部201を介して基地局103に送信する(S108)。
上述のように、緊急通報車載装置102が異常終了した場合には、無線通信端末101が、基地局103に緊急呼の無線信号を送信するので、本発明の無線通信システムは、緊急通報車載装置自体が事故の瞬間に緊急呼を行う前に損壊した場合においても、緊急呼を行うことができる。
【0020】
図5は、本発明の無線通信端末が緊急通報車載装置と近距離無線通信を開始してから、緊急呼を行うまでの第2の実施例を示すフローチャートである。この実施例では、制御部203が、正常終了検出および異常終了検出の繰り返しを終了し、状態変数statusの値が2であるか否かを判定するまでの処理は、図4と同様である。
無線通信端末101の制御部203は、正常終了検出および異常終了検出の繰り返しを終了した後に、状態変数判定(S207)においてstatusの値が2であれば(S207でYesの場合)、メモリ204に記憶されている、GPS通信部205によって取得された、異常終了を判定する直前の第1の位置情報と、異常終了の判定から所定時間経過した後の第2の位置情報との差分が一定距離以上であるか否かを判定する(S208)。第1の位置情報と第2の位置情報との差分が一定距離以上である場合(S208でYesの場合)、制御部203は、車両105が異常でないとみなして、緊急呼の無線信号の送信を行わない。制御部203は、第1の位置情報と第2の位置情報との差分が一定距離より小さい場合(S208でNoの場合)、車両105の異常を示す緊急呼の無線信号を、無線通信部201を介して基地局103に送信する(S209)。
ここで、異常終了の判定から第2の位置情報を取得するまでの所定時間は、誤緊急呼になることよりも、人命救助を優先するために短めに設定し、9〜15秒とするのが好ましい。また、上記一定距離は、GPSシステムの測定精度を考慮して100〜200mとするのが好ましい。
【0021】
図6は、本発明の無線通信端末が緊急通報車載装置と近距離無線通信を開始してから、緊急呼を行うまでの第3の実施例を示すフローチャートである。この実施例では、制御部203が、正常終了検出および異常終了検出の繰り返しを終了し、状態変数statusの値が2であるか否かを判定するまでの処理は、図4と同様である。
無線通信端末101の制御部203は、正常終了検出および異常終了検出の繰り返しを終了した後に、状態変数判定(S307)においてstatusの値が2であれば(S307でYesの場合)、メモリ204に記憶されている、GPS通信部205によって取得された、異常終了を判定する直前の第1の位置情報と、異常終了の判定から所定時間経過した後の第2の位置情報との差分が一定距離以上であるか否かを判定する(S308)。第1の位置情報と第2の位置情報との差分が一定距離以上である場合(S308でYesの場合)、制御部203は、緊急通報車載装置102との近距離無線通信が異常終了した旨をユーザに通知する(S310)。この通知により、ユーザは、事故とは関係のない状況で緊急通報車載装置102が損壊、故障したことを知ることができる。制御部203は、第1の位置情報と第2の位置情報との差分が一定距離より小さい場合(S308でNoの場合)、車両105の異常を示す緊急呼の無線信号を、無線通信部201を介して基地局103に送信する(S309)。
異常終了の判定から第2の位置情報を取得するまでの所定時間は、誤緊急呼になることよりも、人命救助を優先するために短めに設定し、9〜15秒とするのが好ましい。上記一定距離は、GPSシステムの測定精度を考慮して100〜200mとするのが好ましい。ユーザへの通知は、表示部206によるディスプレイ表示、スピーカ207による鳴動、バイブレーション部208によるバイブレーション等により通知するものとする。
【0022】
図7は、本発明の無線通信端末が緊急通報車載装置と近距離無線通信を開始してから、緊急呼を行うまでの第4の実施例を示すフローチャートである。この実施例では、制御部203が、正常終了検出および異常終了検出の繰り返しを終了し、状態変数statusの値が2であるか否かを判定するまでの処理は、図4と同様である。
無線通信端末101の制御部203は、正常終了検出および異常終了検出の繰り返しを終了した後に、状態変数判定(S407)においてstatusの値が2であれば(S407でYesの場合)、メモリ204に記憶されている、加速度センサ210によって検出された、異常終了の判定直前における第1の加速度と、異常終了の判定直後における第2の加速度との差分(減速度)が予め設定された閾値を超えていないか否かを判定する(S408)。検出された加速度の差分(減速度)が閾値以下であることを確認できた場合(S408でNoの場合)、制御部203は、車両105が異常でない、すなわち事故を起こしていないとみなして、緊急呼の無線信号の送信を行わない。制御部203は、検出された加速度の差分(減速度)が閾値を超えることを確認できた場合(S408でYesの場合)、車両105の異常を示す緊急呼の無線信号を、無線通信部201を介して基地局103に送信する(S409)。
ここで、上記閾値は、エアバックシステムにおいて、人体が耐えられる減速度である190〜210m/s、好ましくは約208m/sとする。
【0023】
図8は、本発明の無線通信端末が緊急通報車載装置と近距離無線通信を開始してから、緊急呼を行うまでの第5の実施例を示すフローチャートである。この実施例では、制御部203が、正常終了検出および異常終了検出の繰り返しを終了し、状態変数statusの値が2であるか否かを判定するまでの処理は、図4と同様である。
無線通信端末101の制御部203は、正常終了検出および異常終了検出の繰り返しを終了した後に、状態変数判定(S507)においてstatusの値が2であれば(S507でYesの場合)、メモリ204に記憶されている、加速度センサ210によって検出された、異常終了の判定直前における第1の加速度と、異常終了の判定直後における第2の加速度との差分(減速度)が予め設定された閾値を超えていないか否かを判定する(S508)。検出された加速度の差分(減速度)が閾値以下であることを確認できた場合(S508でNoの場合)、制御部203は、緊急通報車載装置102との近距離無線通信が異常終了した旨をユーザに通知する(S510)。この通知により、ユーザは、事故とは関係のない状況で緊急通報車載装置102が損壊、故障したことを知ることができる。制御部203は、検出された加速度の差分(減速度)が閾値を超えることを確認できた場合(S508でYesの場合)、車両105の異常を示す緊急呼の無線信号を、無線通信部201を介して基地局103に送信する(S509)。
ユーザへの通知は、表示部206によるディスプレイ表示、スピーカ207による鳴動、バイブレーション部208によるバイブレーション等により通知するものとする。上記閾値は、190〜210m/s、好ましくは約208m/sとする。
【0024】
図9は、本発明の無線通信端末が緊急通報車載装置と近距離無線通信を開始してから、緊急呼を行うまでの第6の実施例を示すフローチャートである。この実施例では、制御部203が、正常終了検出および異常終了検出の繰り返しを終了し、状態変数statusの値が2であるか否かを判定するまでの処理は、図4と同様である。
無線通信端末101の制御部203は、正常終了検出および異常終了検出の繰り返しを終了した後に、状態変数判定(S607)においてstatusの値が2であれば(S607でYesの場合)、メモリ204に記憶されている、GPS通信部205によって取得された、異常終了を判定する直前の第1の位置情報と、異常終了の判定から所定時間経過した後の第2の位置情報との差分が一定距離以上であるか否かを判定する(S608)。第1の位置情報と第2の位置情報との差分が一定距離以上である場合(S608でYesの場合)、制御部203は、緊急呼の無線信号の送信を行わない。制御部203は、第1の位置情報と第2の位置情報との差分が一定距離より小さい場合(S608でNoの場合)、メモリ204に記憶されている、加速度センサ210によって検出された、異常終了の判定直前における第1の加速度と、異常終了の判定直後における第2の加速度との差分(減速度)が予め設定された閾値を超えていないか否かを判定する(S609)。検出された加速度の差分(減速度)が閾値以下であることを確認できた場合(S609でNoの場合)、制御部203は、緊急呼の無線信号の送信を行わない。制御部203は、検出された加速度の差分(減速度)が閾値を超えることを確認できた場合(S609でYesの場合)、車両105の異常を示す緊急呼の無線信号を、無線通信部201を介して基地局103に送信する(S610)。
異常終了の判定から第2の位置情報を取得するまでの所定時間は、誤緊急呼になることよりも、人命救助を優先するために短めに設定し、9〜15秒とするのが好ましい。上記一定距離は、GPSシステムの測定精度を考慮して100〜200mとするのが好ましい。上記閾値は、190〜210m/s、好ましくは約208m/sとする。
【0025】
図10は、本発明の無線通信端末が緊急通報車載装置と近距離無線通信を開始してから、緊急呼を行うまでの第7の実施例を示すフローチャートである。この実施例では、制御部203が、正常終了検出および異常終了検出の繰り返しを終了し、状態変数statusの値が2であるか否かを判定するまでの処理は、図4と同様である。
無線通信端末101の制御部203は、正常終了検出および異常終了検出の繰り返しを終了した後に、状態変数判定(S707)においてstatusの値が2であれば(S707でYesの場合)、メモリ204に記憶されている、GPS通信部205によって取得された、異常終了を判定する直前の第1の位置情報と、異常終了の判定から所定時間経過した後の第2の位置情報との差分が一定距離以上であるか否かを判定する(S708)。第1の位置情報と第2の位置情報との差分が一定距離以上である場合(S708でYesの場合)、制御部203は、緊急通報車載装置102との近距離無線通信が異常終了した旨をユーザに通知する(S711)。制御部203は、第1の位置情報と第2の位置情報との差分が一定距離より小さい場合(S708でNoの場合)、メモリ204に記憶されている、加速度センサ210によって検出された、異常終了の判定直前における第1の加速度と、異常終了の判定直後における第2の加速度との差分(減速度)が予め設定された閾値を超えていないか否かを判定する(S709)。検出された加速度の差分(減速度)が閾値以下であることを確認できた場合(S709でNoの場合)、制御部203は、緊急通報車載装置102との近距離無線通信が異常終了した旨をユーザに通知する(S711)。制御部203は、検出された加速度の差分(減速度)が閾値を超えることを確認できた場合(S709でYesの場合)、車両105の異常を示す緊急呼の無線信号を、無線通信部201を介して基地局103に送信する(S710)。
異常終了の判定から第2の位置情報を取得するまでの所定時間は、誤緊急呼になることよりも、人命救助を優先するために短めに設定し、9〜15秒とするのが好ましい。上記一定距離は、GPSシステムの測定精度を考慮して100〜200mとするのが好ましい。上記閾値は、190〜210m/s、好ましくは約208m/sとする。また、ユーザへの通知は、表示部206によるディスプレイ表示、スピーカ207による鳴動、バイブレーション部208によるバイブレーション等により通知するものとする。
【0026】
なお、上述した実施例において、車両105の異常を示す緊急呼の無線信号を基地局103に送信したときは、緊急呼の送信を行ったことを表示部206、スピーカ207、バイブレーション部208によりユーザに通知するようにしても良い。
【0027】
上述したように、従来の緊急通報システムでは、緊急通報車載装置が、事故を検知して、緊急呼を行う基点となっているので、事故の衝撃等により緊急通報車載装置自体が事故の瞬間に損壊すると、緊急呼を行うことができなくなってしまうが、本発明の無線通信端末は、緊急通報車載装置が、事故の瞬間に、緊急呼を行う前に損壊した場合においても、緊急通報センターへの緊急呼を行うことができる。
また、従来の緊急通報システムでは、緊急通報車載装置が異常を検知したときに緊急呼を行うので、事故とは関係なく緊急通報車載装置が損壊、故障した場合にも、緊急呼を行ってしまうが、本発明の無線通信端末は、事故とは関係なく緊急通報車載装置が損壊、故障しても、無線通信端末に搭載されたGPSシステムにより取得された位置情報から一定距離以上の移動したことや、加速度センサにより検出された加速度から車両が事故の衝撃を受けていないこと等を確認できた場合は、車両が事故を起こしていないとみなして緊急呼を行わないので、誤緊急呼を防止することができる。
さらに、従来の緊急通報システムでは、事故とは関係のない状況で緊急通報車載装置が損壊、故障した場合、ユーザはその事実を知ることができなかったが、本発明の無線通信端末は、事故とは関係のない状況で緊急通報車載装置に異常が発生した旨をディスプレイ表示、スピーカの鳴動、バイブレーション等によりユーザに知らせることができるので、ユーザは装置の異常を確認することができる。
【符号の説明】
【0028】
101 無線通信端末
102 緊急通報車載装置
103 基地局
104 緊急通報センター
105 車両
106 固定通信網
201 無線通信部
202、303 近距離無線通信部
203、301 制御部
204 メモリ
205 GPS通信部
206 表示部
207 スピーカ
208 バイブレーション部
209、302 入力部
210 加速度センサ
304 緊急事態検出部
305 端末検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置された緊急通報用電子機器からの無線信号を定期的に受信する受信部と、
前記受信部が前記緊急通報用電子機器からの無線信号を所定期間受信できない場合に前記緊急通報用電子機器が異常であると判定する判定部と、
外部の無線受信装置に緊急信号を送信する送信部と、
前記判定部で前記緊急通報用電子機器が異常であると判定された場合に、前記緊急信号として前記車両の異常を示す情報を、前記送信部を介して、前記外部の無線受信装置に送信する制御部と、
を備えることを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
位置情報を定期的に取得する位置情報取得部を更に備え、
前記制御部は、
前記判定部で前記緊急通報用電子機器が異常であると判定され、かつ、前記位置情報取得部によって前記異常の判定の直前に取得された第1の位置情報と、前記異常の判定から所定時間経過後に取得された第2の位置情報との差分を取得し、当該差分が所定値より小さい場合に、前記緊急信号として前記車両の異常を示す情報を、前記送信部を介して、前記外部の無線受信装置に送信することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記緊急通報用電子機器の異常を通知する通知部を更に備え、
前記制御部は、
前記第1の位置情報と前記第2の位置情報との差分が所定値以上である場合に、前記緊急通報用電子機器が異常であることを、前記通知部を介して通知することを特徴とする請求項2に記載の無線通信端末。
【請求項4】
加速度を検出する加速度検出部を更に備え、
前記制御部は、
前記判定部で前記緊急通報用電子機器が異常であると判定され、かつ、前記加速度検出部によって前記異常の判定の直前に検出された第1の加速度と、前記異常の判定の直後に検出された第2の加速度との差分が予め設定された閾値を超える場合に、前記緊急信号として前記車両の異常を示す情報を、前記送信部を介して、前記外部の無線受信装置に送信することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記緊急通報用電子機器の異常を通知する通知部を更に備え、
前記制御部は、
前記第1の加速度と前記第2の加速度との差分が予め設定された閾値以下の場合に、前記緊急通報用電子機器が異常であることを、前記通知部を介して通知することを特徴とする請求項4に記載の無線通信端末。
【請求項6】
位置情報を定期的に取得する位置情報取得部と、
加速度を検出する加速度検出部と、を更に備え、
前記制御部は、
前記判定部で前記緊急通報用電子機器が異常であると判定され、かつ、前記位置情報取得部によって前記異常の判定の直前に取得された第1の位置情報と、前記異常の判定から所定時間経過後に取得された第2の位置情報との差分を取得し、当該差分が所定値より小さく、かつ、前記加速度検出部によって前記異常の判定の直前に検出された第1の加速度と、前記異常の判定の直後に検出された第2の加速度との差分が予め設定された閾値を超える場合に、前記緊急信号として前記車両の異常を示す情報を、前記送信部を介して、前記外部の無線受信装置に送信することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項7】
前記緊急通報用電子機器の異常を通知する通知部を更に備え、
前記制御部は、
前記第1の位置情報と前記第2の位置情報との差分が所定値以上である場合、および、前記第1の位置情報と前記第2の位置情報との差分が所定値より小さく、かつ、前記第1の加速度と前記第2の加速度との差分が予め設定された閾値以下の場合に、前記緊急通報用電子機器が異常であることを、前記通知部を介して通知することを特徴とする請求項6に記載の無線通信端末。
【請求項8】
車両に設置された緊急通報用電子機器からの無線信号を定期的に受信するステップと、
前記緊急通報用電子機器からの無線信号を所定期間受信できない場合に前記緊急通報用電子機器が異常であると判定するステップと、
前記緊急通報用電子機器が異常であると判定された場合に、前記緊急信号として前記車両の異常を示す情報を、前記外部の無線受信装置に送信するステップと、
を有することを特徴とする無線通信端末における情報送信方法。
【請求項9】
無線通信端末と、車両に設置された緊急通報用電子機器から構成される無線通信システムであって、
前記無線通信端末は、
前記緊急通報用電子機器からの無線信号を定期的に受信する受信部と、
前記受信部が前記緊急通報用電子機器からの無線信号を所定期間受信できない場合に前記緊急通報用電子機器が異常であると判定する判定部と、
外部の無線受信装置に緊急信号を送信する第1の送信部と、
前記判定部で前記緊急通報用電子機器が異常であると判定された場合に、前記緊急信号として前記車両の異常を示す情報を、前記送信部を介して、前記外部の無線受信装置に送信する制御部と、を備え、
前記電子機器は、
前記無線通信端末を検出する検出部と、
前記検出部で前記無線通信端末が検出された場合に、前記無線通信端末に無線信号を送信する第2の送信部と、
を備えることを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−97293(P2011−97293A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248252(P2009−248252)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】