説明

無線通信装置、無線通信システム、及び直接波の受信タイミング検出方法

【課題】送信電力を増大させることなく、より高精度に直接波の受信タイミングを検出することが可能な無線通信装置を提供すること。
【解決手段】所定時間毎に所定の規則で変更される中心周波数を持つ信号を受信する信号受信部と、前記信号受信部で受信された信号から、前記所定の規則に基づいて受信時に未使用となる周波数領域の信号成分を除去する未使用領域成分除去フィルタと、前記未使用領域成分除去フィルタを通過した信号成分に逆変調処理を施す逆変調部と、所定期間について前記逆変調部で逆変調処理が施された信号成分を累積加算して加算信号を生成する信号加算部と、前記信号加算部で生成された加算信号から得られるインパルス応答に基づいて直接波の到来時刻を決定する直接波到来時刻決定部とを備える無線通信装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信システム、及び直接波の受信タイミング検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、センサーネットワークやセルラー通信の分野において無線端末の位置検出技術に注目が集まっている。例えば、センサーネットワークの分野では、無線通信機能を搭載したセンサーを色々な所に配置しておき、これらのセンサーによる受信結果を解析することで位置検出を実現する技術に関心が注がれている。より具体的には、センサーの位置(座標)、配置密度、電波の到達範囲を考慮して位置検出精度が高まるような構成が模索されている。また、セルラー通信の分野では、複数の受信アンテナを介して受信した電波の到来時間差(TDOA:Time difference of arrival)を求め、TDOAに基づいて位置検出する技術が知られている。このように、複数の受信アンテナを介して電波を受信するように構成されたシステムとしては、例えば、DAS(Distributed Antenna System;図2を参照)が用いられる。
【0003】
これらの分野で用いられる位置検出は、例えば、図3に示すような方法で行われる。図3は、4本の受信アンテナ(#1〜#4)を有するシステムにおいて無線端末(×)が1台存在すると仮定した場合の位置検出方法を示すものである。図3の中で、d1〜d4は、無線端末からアンテナ#1〜#4に到達した受信波によって計算される予想距離である。複数本のアンテナを利用すると複数の予想距離が得られるため、各予想距離を半径とする円の交点近辺を無線端末の存在位置と推定することができる。各予想距離は、各アンテナに到達した受信波の受信タイミングに基づいて計算される。
【0004】
例えば、あるアンテナ間相対遅延時間差(TDOA)が50[nsec]であった場合、光速cがc=3×10[m/s]であるから、そのアンテナ間の距離差は15[m]であると算出される。GPS(Global Positioning System)を使って基準時刻が判明している場合、基準時刻から最初の電波が受信されるまでにかかった時間を利用して距離を測定することも可能である。一方、ダウンリンク(基地局から無線端末への回線)にてGPSを用いて位置検出を行う場合、3点測位が用いられる。この場合においても、最初に到来した電波が用いられる。このように、位置検出を行うためには、最初に到来した電波を用いて時間差分を得ることが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3596442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電波には、伝送路において反射波の影響が付加される。そのため、位置検出精度を高めるためには、伝送路で反射波の影響が付加された受信電波から直接波の到来タイミングを精度良く検出することが必要となる。なお、現在のセルラー移動通信(GPS機能なし)における位置検出測定精度は300[m]程度しかない。その大きな原因の1つは、セルラー端末の占有帯域幅が1MHz程度であるために時間分解能が不足し、直接波や遅延波の区別がつきにくいという点にある。また、直接波と遅延波の区別をつきやすくするために時間分解能を高めようとすると、広帯域なセンシング信号を無線端末が送信する必要が生じるため、無線端末の限られた電力資源を用いて実現することは非常に困難である。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、無線端末の送信電力を増大させることなく、より高精度に直接波の受信タイミングを検出することが可能な、新規かつ改良された無線通信装置、無線通信システム、及び直接波の受信タイミング検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、所定時間毎に所定の規則で変更される中心周波数を持つ信号を受信する信号受信部と、前記信号受信部の出力を時間領域から周波数領域へと変換する時間・周波数変換部と、前記時間・周波数変換部で変換された周波数領域の信号から、前記所定の規則に基づいて受信時に未使用となる周波数領域の信号成分を除去する未使用領域成分除去フィルタと、前記未使用領域成分除去フィルタを通過した信号成分に逆変調処理を施す逆変調部と、所定期間について前記逆変調部で逆変調処理が施された信号成分を累積加算して加算信号を生成する信号加算部と、前記信号加算部で生成された加算信号を周波数領域から時間領域へと変換する周波数・時間変換部と、前記周波数・時間変換部の出力から得られるインパルス応答に基づいて直接波の到来時刻を決定する直接波到来時刻決定部と、を備える無線通信装置が提供される。
【0009】
上記の構成により、等価的に広帯域通信を実現することが可能になり、鋭い自己相関ピークで構成される遅延プロファイルを得ることが可能になる。その結果、直接波と遅延波とをより精度良く区別することが可能になり、直接波の受信タイミング検出の精度を向上させることができる。
【0010】
また、上記の無線通信装置は、前記インパルス応答に含まれるマルチパス干渉成分を除去するマルチパス干渉キャンセラをさらに備えていてもよい。このように、マルチパス干渉成分が除去されることで自己相関サイドローブによる影響を低減させることができる。
【0011】
また、上記の無線通信装置は、前記インパルス応答からマルチパス干渉成分を除去することで仮に検出された直接波の位相に基づいて当該インパルス応答を同相化し、所定期間について平均化する同相加算平均部をさらに備えていてもよい。このように、同相加算平均が施されることで周波数選択性フェージングによる直接波のレベル低下を抑制したり、雑音耐性を向上させたりすることができる。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、所定時間毎に送信信号の中心周波数を所定の規則で変更する周波数変更部と、前記周波数変更部で変更された中心周波数で信号を送信する信号送信部と、を有する、無線端末と、所定時間毎に所定の規則で変更される中心周波数を持つ信号を受信する信号受信部と、前記信号受信部の出力を時間領域から周波数領域へと変換する時間・周波数変換部と、前記時間・周波数変換部で変換された周波数領域の信号から、前記所定の規則に基づいて受信時に未使用となる周波数領域の信号成分を除去する未使用領域成分除去フィルタと、前記未使用領域成分除去フィルタを通過した信号成分に逆変調処理を施す逆変調部と、所定期間について前記逆変調部で逆変調処理が施された信号成分を累積加算して加算信号を生成する信号加算部と、前記信号加算部で生成された加算信号を周波数領域から時間領域へと変換する周波数・時間変換部と、前記周波数・時間変換部の出力から得られるインパルス応答に基づいて直接波の到来時刻を決定する直接波到来時刻決定部と、を有する、無線通信装置と、を含む無線通信システムが提供される。
【0013】
上記の構成により、等価的に広帯域通信を実現することが可能になり、鋭い自己相関ピークで構成される遅延プロファイルを得ることが可能になる。その結果、直接波と遅延波とをより精度良く区別することが可能になり、直接波の受信タイミング検出の精度を向上させることができる。
【0014】
また、前記無線端末は、前記信号の送信に利用する複数の送信アンテナと、所定の時間間隔で利用する前記送信アンテナを切り替えるアンテナ切替部と、をさらに有していてもよい。このような構成にすることで、周波数選択性フェージングによる直接波のレベル低下を抑制することができると共に、複数の送信アンテナによるアンテナ選択ダイバーシチの効果を得ることができる。
【0015】
また、前記無線端末は、複数の送信アンテナをさらに有し、前記信号送信部は、前記複数の送信アンテナから同じ前記信号を同時に送信するように構成されていてもよい。このような構成にすることで、周波数選択性フェージングによる直接波のレベル低下を抑制することができると共に、アンテナ選択ダイバーシチの効果を得ることができる。
【0016】
また、前記周波数変更部は、周波数軸上に所定間隔で離散配置される複数の帯域の中心周波数を当該所定間隔を維持しながら前記所定の規則で変更するように構成されていてもよい。さらに、前記信号送信部は、前記周波数変更部で変更された複数の中心周波数で前記信号を送信するように構成されていてもよい。このような構成にすることで、各信号スペクトルの帯域幅を広げることなく、より広帯域の通信を実現することが可能になる。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、所定時間毎に所定の規則で変更される中心周波数を持つ信号を受信する信号受信ステップと、前記信号受信ステップで受信した信号を時間領域から周波数領域へと変換する時間・周波数変換ステップと、前記時間・周波数変換ステップで変換された周波数領域の信号から、前記所定の規則に基づいて受信時に未使用となる周波数領域の信号成分を除去する未使用領域成分除去ステップと、前記未使用領域成分除去ステップで残留した信号成分に逆変調処理を施す逆変調ステップと、所定期間について前記逆変調ステップで逆変調処理が施された信号成分を累積加算して加算信号を生成する信号加算ステップと、前記信号加算ステップで生成された加算信号を周波数領域から時間領域へと変換する周波数・時間変換ステップと、前記周波数・時間変換ステップで時間領域へと変換された加算信号から得られるインパルス応答に基づいて直接波の到来時刻を決定する直接波到来時刻決定ステップと、を含む直接波のタイミング検出方法が提供される。
【0018】
上記の構成により、等価的に広帯域通信を実現することが可能になり、鋭い自己相関ピークで構成される遅延プロファイルを得ることが可能になる。その結果、直接波と遅延波とをより精度良く区別することが可能になり、直接波の受信タイミング検出の精度を向上させることができる。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、無線端末が、所定時間毎に送信信号の中心周波数を所定の規則で変更する周波数変更ステップと、前記周波数変更ステップで変更した中心周波数で信号を送信する信号送信ステップと、無線通信装置が、前記無線端末から信号を受信する信号受信ステップと、前記信号受信ステップで受信した信号を時間領域から周波数領域へと変換する時間・周波数変換ステップと、前記時間・周波数変換ステップで変換された周波数領域の信号から、前記所定の規則に基づいて受信時に未使用となる周波数領域の信号成分を除去する未使用領域成分除去ステップと、前記未使用領域成分除去ステップで残留した信号成分に逆変調処理を施す逆変調ステップと、所定期間について前記逆変調ステップで逆変調処理が施された信号成分を累積加算して加算信号を生成する信号加算ステップと、前記信号加算ステップで生成された加算信号を周波数領域から時間領域へと変換する周波数・時間変換ステップと、前記周波数・時間変換ステップで時間領域へと変換された加算信号から得られるインパルス応答に基づいて直接波の到来時刻を決定する直接波到来時刻決定ステップと、を含む直接波のタイミング検出方法が提供される。
【0020】
上記の構成により、等価的に広帯域通信を実現することが可能になり、鋭い自己相関ピークで構成される遅延プロファイルを得ることが可能になる。その結果、直接波と遅延波とをより精度良く区別することが可能になり、直接波の受信タイミング検出の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、無線端末の送信電力を増大させることなく、より高精度に直接波の受信タイミングを検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線端末及び基地局の一構成例を示す説明図である。
【図2】セルラーシステムとDAS(Distributed Antenna System)との違いを模式的に示す説明図である。
【図3】DASにおける位置検出方法の一例を示す説明図である。
【図4】狭帯域伝送の場合に得られるインパルス応答と広帯域伝送の場合に得られるインパルス応答とを対比するための説明図である。
【図5】従来の周波数ホッピングを用いた伝送方式と本実施形態に係る伝送方式とで得られるインパルス応答の違いを示す説明図である。
【図6】本実施形態の一変形例(第1変形例)に係る基地局の一構成例を示す説明図である。
【図7】本実施形態の一変形例(第2変形例)に係る基地局の一構成例を示す説明図である。
【図8】本実施形態の一変形例(第3変形例)に係る基地局の一構成例を示す説明図である。
【図9】本実施形態の一変形例(第4変形例)に係る無線端末の一構成例を示す説明図である。
【図10】本実施形態の一変形例(第5変形例)に係る無線端末の一構成例を示す説明図である。
【図11】本実施形態により得られる効果を説明するための説明図である。
【図12】本実施形態により得られる効果を説明するための説明図である。
【図13】本実施形態により得られる効果を説明するための説明図である。
【図14】本実施形態により得られる効果を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
<説明の流れについて>
ここで、以下に記載する本発明の実施形態に関する説明の流れについて簡単に述べる。まず、図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係る無線端末100、及び基地局200の一構成例について説明する。また、図4、図5を参照しながら、通信帯域と遅延プロファイルの形状(時間解像度)との関係について説明する。なお、図2、図3は、本実施形態に係る技術の一利用形態であるDAS及び位置検出手法に関する説明図である。
【0025】
次いで、図6を参照しながら、本実施形態の一変形例(第1変形例)について説明する。また、図7を参照しながら、本実施形態の一変形例(第2変形例)について説明する。この中で、図11を参照しながら、チャンクの配置形態と遅延プロファイルの形状との関係について説明する。さらに、図8を参照しながら、本実施形態の一変形例(第3変形例)について説明する。なお、第1変形例〜第3変形例は、基地局200の構成に関するものである。
【0026】
次いで、図9を参照しながら、本実施形態の一変形例(第4変形例)について説明する。また、図10を参照しながら、本実施形態の一変形例(第5変形例)について説明する。なお、第4変形例、及び第5変形例は、無線端末100の構成に関するものである。最後に、図12〜図14を参照しながら、本実施形態に係る技術を適用することにより得られる効果について説明する。
【0027】
<実施形態>
本発明の一実施形態について説明する。本実施形態は、送信側においてキャリア信号を送信する際に周波数ホッピングを実施し、受信側において異なる周波数帯のキャリア信号を加算し、加算信号から求めた遅延プロファイルに基づいて直接波のタイミング検出を実行するタイミング検出方法を提案するものである。このタイミング検出方法は、以下で詳細に説明する無線通信システムにより実現される。
【0028】
[無線通信システムの構成]
本実施形態に係る無線通信システムは、図1に示すように、無線端末100、及び基地局200により構成される。但し、図1の例では無線端末100が1台しか記載されていないが、複数台の無線端末100が当該無線通信システムに含まれていてもよい。また、基地局200には、N本のアンテナが設けられているものとする。
【0029】
(無線端末100)
まず、無線端末100について説明する。無線端末100は、主に、変調部102、IFFT部104、CP付加部106、及び送信部108を備えている。なお、本稿においてFFTとは、Fast Fourier Transformの略であり、高速フーリエ変換を意味する。また、IFFTとは、Inverse FFTの略であり、逆フーリエ変換を意味する。さらに、CPとは、Cyclic Prefixの略である。
【0030】
まず、送信データ及び復号の際に用いるパイロット信号は、変調部102により所定の変調方式で変調される。このとき、変調部102は、信号スペクトルの中心周波数が所定時間毎に変更されるように周波数ホッピングを実行する。つまり、所定時間毎に所定の規則で信号スペクトルの中心周波数が切り替わることになる。なお、所定の変調方式としては、例えば、BPSK、QPSK、16QAM等の変調方式を用いることができる。変調部102から出力された各サブキャリアにマッピングされた変調信号は、IFFT部104に入力される。なお、本稿においては、説明の都合上、OFDM(Orthgonal Frequency Division Multiplexing)で多重処理が実行されるものとする。
【0031】
IFFT部104では、入力された変調信号にIFFT処理が施され、OFDM信号を得る。そして、IFFT部104で逆フーリエ変換されたOFDM信号は、CP付加部106に入力される。CP付加部106では、IFFT処理が施されたOFDM信号にガードインターバルが付加される。このガードインターバルは、マルチパスに起因するOFDMブロック間の干渉を除去するために付加されるものである。CP付加部106から出力されたOFDM信号は、送信部108に入力され、所定の無線周波数帯域までアップコンバートされる。送信部108でアップコンバートされたOFDM信号は、アンテナを介して基地局200に送信される。
【0032】
(基地局200)
次に、基地局200について説明する。基地局200は、主に、受信部202、CP除去部204、FFT部206、フィルタ208、加算器210、遅延部212、スイッチ214、IFFT部216、相関器218、及び到来時間差計算部220を備えている。なお、到来時間差計算部220を除く構成要素はアンテナ毎に設けられている。以下の説明では、都合上、アンテナ#1から受信した受信信号の処理についてのみ説明する。但し、他のアンテナ#2〜#Nで受信した受信信号の処理についても同様に実行される。また、複数の無線端末100が存在する場合、基地局200には、上記構成要素の機能が無線端末100の数分だけ設けられることになる。
【0033】
上記の通り、基地局200には、無線端末100からOFDM信号が送信される。但し、無線端末100から送信されるOFDM信号の信号スペクトルは、その中心周波数が所定時間毎に変更されている。アンテナ#1を介して受信した受信信号は、受信部202に入力され、無線周波数帯からベースバンド帯へとダウンコンバートされる。受信部202でダウンコンバートされた受信信号は、CP除去部204に入力される。CP除去部204では、受信信号からガードインターバルが除去される。そして、CP除去部204でガードインターバルが除去された受信信号は、FFT部206に入力される。
【0034】
FFT部206では、CP除去部204から入力された受信信号に対してFFT処理が施される。FFT部206でFFT処理が施された受信信号は、フィルタ208に入力される。フィルタ208は、入力された受信信号の送信時間帯に無線端末100が使用していない周波数帯の周波数成分を受信信号から除去するためのフィルタ手段である。そのため、FFT部206からフィルタ208に入力された受信信号は、フィルタ208により不使用周波数帯の周波数成分が除去され、加算器210に入力される。加算器210には、前期間までに受信された受信信号の累積加算信号(後述)が入力される。
【0035】
加算器210から出力された加算信号は、遅延部212に入力される。遅延部212では、入力された加算信号が時間Tsだけ遅延される。遅延時間Tsはガードインターバル区間程度あればよいが、例えば、1OFDMシンボルに設定される。また、遅延部212から出力された遅延信号は、スイッチ214が開状態の場合、加算器210に入力される。そのため、加算器210、及び遅延部212により、続けて受信される受信信号が累積加算され、累積加算信号が生成される。但し、遅延部212の出力が加算器210に入力するのは、スイッチ214が開状態の期間だけである。
【0036】
スイッチ214は、遅延プロファイルの観察時間(後述)だけ開状態を維持し、その観察時間が経過すると閉状態となる。閉状態の場合、遅延部212の出力とIFFT部216の入力とが接続される。つまり、遅延プロファイルの観察時間をn個のOFDMシンボルとすると、n*Ts回に一度スイッチ214が開閉することになる。上記の通り、無線端末100では、所定の期間毎に所定の規則で周波数ホッピングが実行される。そのため、スイッチ214が開状態の間、異なる中心周波数で送信された複数のOFDM信号が累積加算されるように遅延プロファイルの観察時間が設定されるのである。
【0037】
上記の通り、スイッチ214が閉状態になると、遅延部212からIFFT部216に累積加算信号が入力される。IFFT部216では、入力された累積加算信号にIFFT処理が施され、時間領域の信号に変換される。そして、IFFT部216により時間領域の信号に変換された累積加算信号は、相関器218(複素相関器)に入力される。
【0038】
相関器218では、無線端末100で付与したパイロット信号や送信データの信号を用いて、入力された累積加算信号の自己相関が計算される(逆変調処理)。なお、一般的に送信データは受信側では未知である。しかし、本実施形態において自己相関演算に係る一連の信号処理は、蓄積一括処理を想定しているため、受信側で送信データが未知であることに問題はない。なお、ここで言う蓄積一括処理とは、送信データの復号が終了した後に、蓄積された受信信号の位置検出を実施する処理のことを意味する。また、位置検出のために送受にて既知信号を送信データとして送信する場合、上記の想定が不要となる事は言うまでもない。この結果、相関器218で計算された自己相関により遅延プロファイル(図1を参照)が得られる。但し、遅延プロファイルは、インパルス応答の電力表現である。従って、遅延プロファイルを得るためにはインパルス応答を作成し、その大きさを算出(電力化)することより得られる。従って、相関器218においては、自己相関演算によりインパルス応答が作成され、そのインパルス応答から遅延プロファイルが算出される。なお、インパルス応答は複素表現であるが、遅延プロファイルはスカラー表現である。そのため、直接波の受信タイミング検出には遅延プロファイルを用いる方が好ましい。そこで、本稿では、遅延プロファイルから受信タイミングを検出するものとして説明を行う。
【0039】
相関器218による自己相関演算により得られた遅延プロファイルの情報は、到来時間差計算部220に入力される。到来時間差計算部220では、入力された遅延プロファイルの情報から直接波の受信タイミングを検出する。図1に示すように、到来時間差計算部220には、各アンテナで受信した受信信号に対応する遅延プロファイルの情報が入力される。そこで、到来時間差計算部220は、各アンテナに対応する直接波の受信タイミングを検出し、アンテナ間における到来時間差を計算する。このようにしてアンテナ間の到来時間差が算出されると、その到来時間差から図3等に示すような位置検出を実現することが可能になる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る無線通信システムでは、送信側において中心周波数を所定時間毎に所定の規則で定められた周波数へホッピングさせると共に、受信側において当該所定の規定に基づく周波数ホッピングが終了するまで受信信号を蓄積し、一括して受信信号処理を実行する構成に特徴がある。このような構成を採用することで、遅延プロファイルの時間分解能を向上させることが可能になり、直接波と反射波とをより高精度に区別できるようになる。その結果、到来時間差をより高精度に計算できるようになり、位置検出精度を大きく向上させることが可能になる。以下、このような効果を奏する理由について、より詳細に説明する。
【0041】
(通信帯域と時間解像度との関係について)
まず、図4を参照する。図4には、(A)狭帯域通信方式で信号伝送した場合の受信信号から得られる遅延プロファイル(実線)の模式図、及び(B)広帯域通信方式で信号伝送した場合の受信信号から得られる遅延プロファイル(実線)の模式図が示されている。但し、ここでは簡単のためにシングルキャリア伝送の場合を考えている。(A)狭帯域通信方式の場合、送信信号の帯域幅が狭いために遅延プロファイルが鈍った形状となり、図4(A)に示すように先行波の位置をはっきりと区別することは難しい。
【0042】
一方、(B)広帯域通信方式の場合、送信信号の帯域幅が広いために遅延プロファイルが鋭い形状となり、等価的に時間分解能が向上する。その結果、図4(B)に示すように先行波と遅延波とをはっきりと区別することが可能になる。こうしたことから、狭帯域通信方式は時間解像度が低く、広帯域通信方式は時間解像度が高いと言える。しかしながら、広帯域通信方式で伝送するには大きな送信電力が必要になる。そのため、送信に利用可能な電力量が少ない無線端末100において広帯域通信を実現するのは難しい。
【0043】
そこで、送信電力を抑えつつ、広帯域通信方式と同様の効果を得る方法が求められているのである。ここで、本実施形態の構成を振り返ると、本実施形態に係る無線端末100は、周波数ホッピングを行うものの、信号の送信に利用される帯域幅は増大していない。一方、本実施形態に係る基地局200では、異なる周波数帯で送信された信号の受信信号が累積加算され、広い帯域幅を持つ累積加算信号が生成される。その結果、累積加算信号を用いて自己相関を計算することにより、鋭いピークを持つ遅延プロファイルが算出される。この様子を模式的に示したのが図5である。
【0044】
図5(A)には、比較例として単に周波数ホッピングを用いて狭帯域通信方式により伝送した場合の受信側で検出される遅延プロファイルが模式的に示されている。一方、図5(B)には、本実施形態の方式により受信側で検出される遅延プロファイルが模式的に示されている。図5において、(A)(B)の違いは、遅延プロファイルを算出する際に参照するシンボル区間にある。(A)の場合、各時間で送信される信号が異なる周波数帯に割り当てられているものの、個々の信号のシンボル区間(1 symbol)について自己相関が計算されている。そのため、遅延プロファイルの形状が鈍ったものとなってしまっている。
【0045】
一方、(B)の場合、(A)と同様に各時間に送信される信号が異なる周波数帯に割り当てると共に、2つのシンボル区間を纏めて1つの仮想的なシンボル区間(1 virtual symbol)とみなしている。この処理は、図1に示した基地局200の場合、加算器210、遅延部212、及びスイッチ214により累積加算信号を生成することに相当する。
【0046】
(B)の示すように、1つの仮想的なシンボル区間には、異なる周波数帯で送信された信号が含まれるため、仮想的に広帯域通信方式が実現される。そして、この仮想的なシンボル区間を対象に自己相関を計算すると、鋭い自己相関ピークを含む遅延プロファイルが得られる。このような理由から、本実施形態に係る技術を適用することにより、先行波と遅延波とを容易に区別することが可能になり、先行波の受信タイミングを精度良く検出することができるようになるのである。
【0047】
[第1変形例:自己相関演算に関する変形]
これまで、遅延プロファイルを得るために時間軸上での自己相関計算を考えてきた。しかしながら、フーリエ変換の原理から時間軸上の自己相関演算は、周波数軸上の乗算を利用して実現することが可能である。例えば、図1に示した基地局200のようにIFFT部216の後段に設けられた相関器218で自己相関を計算するのではなく、図6に示す基地局200のような構成で周波数軸上の乗算(乗算器222)による自己相関の計算を実現することができる。つまり、この操作は、周波数軸上での逆変調処理と言える。実際の設計においては、回路規模を縮小できる利点があるため、図6に示すように周波数軸上の乗算で自己相関を計算する構成の方が好ましい。
【0048】
ここで、図6を参照しながら、本実施形態の第1変形例に係る基地局200の構成について説明する。但し、第1変形例において無線端末100の構成は変形されない。図6に示すように、基地局200は、主に、受信部202、CP除去部204、FFT部206、フィルタ208、加算器210、遅延部212、スイッチ214、IFFT部216、到来時間差計算部220、及び乗算器222を備えている。図1に示した基地局200との主な違いは、相関器218が省略され、乗算器222が付加されたことである。
【0049】
まず、基地局200には、無線端末100からOFDM信号が送信される。但し、無線端末100から送信されるOFDM信号の信号スペクトルは、その中心周波数が所定時間毎に変更されている。アンテナ#1を介して受信した受信信号は、受信部202に入力され、無線周波数帯からベースバンド帯へとダウンコンバートされる。受信部202でダウンコンバートされた受信信号は、CP除去部204に入力される。CP除去部204では、受信信号からガードインターバルが除去される。そして、CP除去部204でガードインターバルが除去された受信信号は、FFT部206に入力される。
【0050】
FFT部206では、CP除去部204から入力された受信信号に対してFFT処理が施される。FFT部206でFFT処理が施された受信信号は、フィルタ208に入力される。FFT部206からフィルタ208に入力された受信信号は、フィルタ208により不使用周波数帯の周波数成分が除去され、加算器210に入力される。加算器210には、スイッチ214が開状態の期間、遅延部212から出力された信号が入力される。
【0051】
加算器210から出力された加算信号は、乗算器222に入力される。乗算器222には、無線端末100で付与したパイロット信号や送信データ信号の逆数に相当する乗算係数が入力される。例えば、フィルタ208から加算器210に対して新規に入力される信号がSである場合、乗算器222には、乗算係数としてS/|S|が入力される。つまり、乗算器222では、送信時に使用したパイロット信号や送信データ信号の除算処理がサブキャリア単位で実行される。
【0052】
ここで、サブキャリア単位とは周波数要素単位を表し、それまでに蓄積した信号に対する逆数乗算ではなく、新規に加算された周波数単位に対して逆数演算を行うことを意味する。従って、加算器210で累積加算される信号は、新規加算時の除算処理において平坦化される。ここで言う平坦化は、送信データに基づいて各周波数単位の信号に施された変調を除去する処理に相当する。つまり、周波数領域において各周波数単位の信号に対する逆変調が実現される。
【0053】
なお、送信時に使用したパイロット信号や送信データ信号の成分が上記のようにして周波数領域で除去されるのであれば除算以外の方法を用いてもよい。また、乗算係数に用いられる値は、一旦受信信号を判定し、その判定結果をフィードバックする方法で設定されることが好ましい。この場合、受信信号の情報は、メモリ等の記憶手段に記憶しておくことになる。
【0054】
乗算器222から出力された信号は、遅延部212に入力される。遅延部212では、入力された加算信号が時間Tsだけ遅延される。遅延時間Tsはガードインターバル区間程度あればよいが、例えば、1OFDMシンボルに設定される。また、遅延部212から出力された遅延信号は、スイッチ214が開状態の場合、加算器210に入力される。そのため、加算器210、及び遅延部212により、続けて受信される受信信号が累積加算され、累積加算信号が生成される。但し、遅延部212の出力が加算器210に入力するのは、スイッチ214が開状態の期間だけである。スイッチ214は、遅延プロファイルの観察時間だけ開状態を維持し、その観察時間が経過すると閉状態となる。
【0055】
スイッチ214が閉状態になると、遅延部212の出力信号がIFFT部216に入力される。IFFT部216では、遅延部212の出力信号にIFFT処理が施され、時間領域の信号に変換される。このとき、図1に示した基地局200の相関器218が作成するものと同等のインパルス応答が得られる。そして、このインパルス応答は、到来時間差計算部220に入力される。到来時間差計算部220は、このようにしてアンテナ毎に入力されたインパルス応答から得られる遅延プロファイルを用いて各アンテナに対応する直接波の受信タイミングを検出し、その到来時間差を計算する。
【0056】
このようにしてアンテナ間の到来時間差が算出されると、その到来時間差から位置検出を実現することが可能になる。なお、図1に示した基地局200の到来時間差計算部220は相関器218から入力された遅延プロファイルを用いてタイミング検出を実行する構成であったが、図6に示した到来時間差計算部220は入力されたインパルス応答から遅延プロファイルを算出してタイミング検出を実行するものとした。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る第1変形例においては、周波数軸上の乗算により自己相関の計算を実行する構成が提案された。この構成を用いることで、時間軸上で自己相関を計算する構成と同等の遅延プロファイルを取得できると共に、回路規模を縮小することが可能になる。
【0058】
[第2変形例:MPICを用いる構成]
上記のように、本実施形態に係る技術を適用することにより、鋭い自己相関ピークを持つ遅延プロファイルを得ることが可能になる。しかし、三角関数の周期性に起因して自己相関特性に周期性が現れることがある。この周期性は、インパルス応答にサイドローブの形で現れ、隣接するパスの成分に影響を与えてしまう。そのため、隣接パスがサイドローブの影響を受けない状況や十分に広い帯域を利用できる環境が得られない場合には対策が必要になる。そこで、本実施形態に係る第2変形例として、このようなサイドローブの影響をマルチパス干渉キャンセラ(MPIC)を利用して効果的に低減させる方法を提案する。
【0059】
(サイドローブの影響について)
まず、サイドローブによる影響について、図11を参照しながら、より詳細に説明する。図11は、信号スペクトルに対する周波数の割り当て方法の違いに起因してインパルス応答に生じる形状の特徴について纏めたものである。図11の(A)には、昇順に連続してチャンク(Chunk)を配置した場合の信号スペクトルの形状とインパルス応答の波形とが示されている。また、(B)には、等間隔にチャンクを配置した場合の信号スペクトルの形状とインパルス応答の波形とが示されている。(C)には、本実施形態に係る周波数ホッピング(チャンクホッピング)を適用した場合の信号スペクトルの形状とインパルス応答の波形とが示されている。
【0060】
(A)の場合、複数のチャンクが狭い帯域に配置されているため、狭帯域通信方式となり、インパルス応答の形状は鈍いものとなる。一方、(B)の場合、複数のチャンクが等間隔で比較的広い帯域に分散配置されているため、その分だけ広帯域で通信することになり、インパルス応答には鋭いピークが現れている。しかしながら、等間隔でチャンクを配置した場合、そこには周期性が存在するため、インパルス応答には複数の鋭い自己相関ピークが現れてしまっている。このように、本来の自己相関ピークとは異なる位置に現れる自己相関ピークがサイドローブである。サイドローブの時間位置に遅延パスが存在すると、伝送路における位相変動に応じて振幅レベルの相殺や強調が発生する。
【0061】
なお、逆変調が施された1パスの理想的な自己相関波形は左右対称であるため、遅延波がサイドローブの影響を受ける場合、それと対象の位置にある直接波も遅延波に影響を与えるサイドローブの影響を受けてしまう。一方、(C)の場合、周波数ホッピングを利用しているため、チャンクの配置間隔を比較的広く確保することが可能になる。また、後述するMPICを用いた基地局200の構成を適用することにより、サイドローブの影響を効果的に低減させることが可能になる。その結果、(C)に示すように、インパルス応答に現れる自己相関ピークの位置がほぼ1つになり、直接波の受信タイミングを高精度に検出することが可能になる。
【0062】
(基地局200の構成)
上記の問題点を踏まえ、第2変形例では、図7に示すように、図6に示した基地局200のIFFT部216と到来時間差計算部220の間にマルチパス干渉キャンセラ230を挿入する構成を提案する。上記の通り、複数のパスが存在すると各パスのサイドローブが互いに干渉する。つまり、マルチパス干渉が発生する。従って、マルチパス干渉キャンセラ230により遅延波を全てキャンセルすることができれば直接波が得られる。
【0063】
図7に示すように、マルチパス干渉キャンセラ230は、主に、スイッチ232、減算器234、乗算器236、記憶部238、及び検査部240により構成される。なお、マルチパス干渉キャンセラ230には、事前に計算する方法や、受信処理が完了した後でフィードバックされた送信データを用いて計算する方法により得られる1パス受信時の遅延プロファイル(以下、理想1パスプロファイル)が保持されているものとする。但し、理想1パスプロファイルは、1パスで理想的に受信された受信信号が入力された場合に得られる遅延プロファイルである。
【0064】
まず、スイッチ232によりIFFT部216と減算器234とが接続されている場合、IFFT部216から時間領域の信号が減算器234に入力される。一方、スイッチ232により記憶部238と減算器234とが接続されている場合、記憶部238の出力信号が減算器234に入力される。減算器234は、IFFT部216又は記憶部238から入力された信号から、乗算器236の出力信号を減算して出力する。乗算器236には、マルチパス干渉キャンセラ230が保持する理想1パスプロファイルと、伝送路で生じた複数パスの中で最大パスが有する振幅及び位相変動(パス係数)とが入力される。そして、これらの入力値が乗算器236により複素乗算され、減算器234に入力される。
【0065】
減算器234では、まず、IFFT部216から入力された受信信号から乗算器236の出力信号が減算される。このとき、マルチパス成分のキャンセルが有効であれば総電力が低減する。一方、誤ったパス係数が乗算器236に与えられていると、キャンセルが失敗して総電力が低下しない。そのため、減算器234で減算された信号は、検査部240に入力される。検査部240では、減算器234で減算された信号の総電力を検出し、総電力が低下したか否かを判定する。総電力が低下した場合、検査部240は、検出した総電力を記憶部238に記憶させる。なお、記憶部238が記憶できる長さは、ガードインターバルと同程度の長さ(Tw)であることが求められる。可能であれば、1OFDMシンボル長(Ts)程度の長さを記憶できることが好ましい。
【0066】
スイッチ232は、上記のようにしてマルチパス成分のキャンセル動作が開始されると、記憶部238と減算器234とを接続する方向に切り替わる。そして、受信信号に対して実行されたキャンセル動作が繰り返され、検出可能なパスの分だけ減算器234によりマルチパス成分のキャンセルが実施される。この繰り返し処理の中で、検査部240は、総電力の低下を逐次検知する。そして、検査部240により総電力の低下が確認されなくなった場合、検査部240は、検出されたパスの中で最も遅延時間の短いパスの受信タイミングを検出し、到来時間差計算部220に入力する。なお、キャンセル可能なパスが全て取り除かれた際に、検出されたパスの中で最も遅延時間の短いパスが直接波である。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の第2変形例に係る方法を適用することで、サイドローブの影響を除去することが可能になり、直接波の受信タイミングをより精度良く検出することができるようになる。但し、上記のマルチパス干渉キャンセラ230の構成は一例であり、同じ目的を達成することが可能な干渉除去方式で代用することが可能である。例えば、並列型のMPIC、カスケード処理型のMPIC、或いは、周波数領域におけるMPICの実施等、様々な変形が可能である。これらの変形を適用した場合においても、本実施形態の第2変形例として述べたマルチパス除去方法と同様に、サイドローブの影響を除去し、直接波のタイミングを正確に得ることができる。
【0068】
[第3変形例:同相加算により位相変動の影響を除去する構成]
上記のように、周波数ホッピングを用いることで広帯域通信を実現し、MPICを用いてマルチパス干渉による影響を除去することにより、高い精度で直接波の受信タイミングを検出することができるようになる。しかし、周波数選択性フェージングに起因して直接波の減衰が現れる場合、受信信号の単なる加算平均では直接波を相殺してしまうことがある。そこで、短時間の加算平均で直接波を検出できるようにする工夫が必要になる。
【0069】
(同相平均化部250の構成)
上記の問題点を踏まえ、第3変形例では、図8に示すように、図6に示した基地局200のIFFT部216と到来時間差計算部220の間に同相平均化部250、及びマルチパス干渉キャンセラ230を挿入する構成を提案する。なお、第3変形例の特徴的な構成要素は同相平均化部250である。そのため、以下では同相平均化部250についてのみ詳細に説明する。
【0070】
同相平均化部250では、インパルス応答の平均処理が実行される。通常、平均処理を行う場合には、電力加算平均と同相加算平均とが考えられる。同相加算平均とは、位相を補正した上で加算平均を行う処理のことである。同相加算平均は、信号が同相で加算されることにより、単純な電力加算平均よりも電力レベルが上昇するため、高い平均化効果が得られる。一方、同相加算平均を実施するためには同相化ベクトルを求める必要がある。そのため、第3変形例においては、MPICを利用して求めた仮の先行波検出結果(後述)を利用する方法を提案する。
【0071】
図8に示すように、同相平均化部250は、マルチパス干渉キャンセラ252、乗算器254、加算器256、及び記憶部258により構成される。なお、マルチパス干渉キャンセラ252は、図7に示したマルチパス干渉キャンセラ230と同じものである。従って、IFFT部216から同相平均化部250に入力された受信信号は、マルチパス干渉キャンセラ252によりマルチパス干渉成分が除去された信号(仮の先行波検出結果)に補正される。マルチパス干渉キャンセラ252の出力信号(仮先行波の信号ベクトル)は、乗算器254に入力され、1OFDMシンボル区間に含まれる全てのサンプルについて共役複素乗算される。
【0072】
なお、遅延波の位相は不確定であり、先行波の位相で共役複素乗算を施しても位相補正の結果は同相とはならない。そのため、乗算器254による乗算処理において、仮先行波の位相は常に0となり、他の遅延波成分はランダムとなる。乗算器254の出力信号は加算器256に入力される。加算器256には、記憶部258の出力も入力される。但し、加算平均の1回目に相当する初期状態において記憶部258の出力は0とする。従って、初期状態では、乗算器254の出力がそのまま加算器256から出力される。つまり、同相化(位相項が0に補正)されたインパルス応答が出力される。加算器256の出力は、記憶部258に格納される。
【0073】
ある程度の時間が経過した後、再びIFFT部216から同相平均化部250に受信信号が入力された場合、マルチパス干渉キャンセラ252、及び乗算器254においては入力信号に対して上記と同様の処理が実行される。但し、時間経過により伝送路の周波数選択性が変化し、インパルス応答における各パスには位相及び振幅変動が生じている。そのため、単純な加算平均の場合、先行波との間で逆位相による減算が発生してしまう可能性がある。しかし、第3変形例の場合、先行波に対しては同相化が実施される。そのため、加算器256において遅延波に対してはランダムな位相で加算が行われ、先行波に対しては平均レベルが上昇するように加算が行われる。
【0074】
なお、上記の構成では、仮先行波に基づいて補正ベクトルが与えられるため、本来の先行波を用いる場合に比べて誤差が生じる可能性もある。しかし、十分な時間について平均処理が実行されることで、その誤差も平均化される。所定回数の同相平均処理が終了すると、加算器256の出力信号は、マルチパス干渉キャンセラ230に入力される。マルチパス干渉キャンセラ230では、上記のように同相平均により先行波が強調されたインパルス応答に対してマルチパス干渉除去の処理が実行される。そして、マルチパス干渉除去の処理が施されたインパルス応答は到来時間差計算部220に入力され、当該インパルス応答から得られる遅延プロファイルに基づいて先行波の受信タイミングが検出される。このような構成にすることで、より検出精度が向上する。
【0075】
(パス検出閾値について)
ここで、パス検出閾値について述べる。この閾値の考え方は、上記の第2変形例においても適用可能である。上記の通り、フェージングにより大きくレベル低下した先行波は、レベル低下しない遅延波よりも雑音との区別が付きにくくなってしまう。そこで、誤検出を避ける為に閾値を設ける。まず、雑音と区別するために、(1)平均雑音電力の定数倍の電力を持つパス候補はパスとして認定しない。また、雑音がパスとして認定されるのを防ぐため、(2)最大レベルの所定数分の一以下のパスはパスとして認定しない。これら2段階(1)(2)の閾値を設けることで誤検出を低減することができる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の第3変形例に係る技術を適用することにより、周波数選択性フェージングの影響により先行波が逆相で加算されることを防止することが可能になる。その結果、フェージングに起因して先行波がレベル低下してしまうことを防止することができる。なお、図8に示した同相平均化部250の構成はあくまでも一例であり、様々な変形が可能である。第3変形例のポイントは、先行波の複素振幅(位相)にて同相加算平均を実施し、その結果に基づいて再度先行波の検出を実施する点にある。そのため、このポイントを含む構成であれば任意に変形することが可能である。
【0077】
[第4変形例:複数の送信アンテナを切り替える構成]
上記の第3変形例では、フェージング対策として受信側で同相加算平均を行う方法が提案された。本実施形態に係る第4変形例では、フェージング対策を送信側にて実現する方法を提案する。この方法に関する概念図を図9に示す。図9に示すように、第4変形例では、フェージングによる瞬時レベル変動対策のために、無線端末100にアンテナを複数本(例えば、2本)設け、これらのアンテナを切り替えて利用する。
【0078】
フェージングのレベル変動は波長単位で変化する。そのため、物理的に離れたアンテナを使用すると、そのレベル関係は使用する無線周波数が高いほど無相関になる。そのため、複数の送信アンテナを使用し、交互に又は同時に電波を放出する方法が有効である。図9に示すように、無線端末100には、変調部102、IFFT部104、CP付加部106、送信部108の他、スイッチ110が設けられている。スイッチ110は、複数のアンテナを切り替える切り替え手段である。図9に示すように、スイッチ110の切り替えにより複数の無線経路を経由して信号が基地局200に送られるため、送信アンテナ選択ダイバーシチの効果も得られる。また、上記の第3変形例と組み合わせて用いることにより、より短時間の平均処理で正確な直接波の受信タイミングを検出することができる。
【0079】
[第5変形例:SC−FDMAの適用]
これまでは通信方式としてOFDMを想定した例を示してきた。しかし、本実施形態及び各変形例に係る技術はシングルキャリア伝送/マルチキャリア伝送を問わず適用可能である。例えば、図10に示すように、3GPP LTE(Long Term Evolution)の上りリンクにおける通信方式であるSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)に本実施形態及び各変形例に係る技術を適用することもできる。このSC−FDMA方式は、別名DFT−SPREAD OFDMとも呼ばれる。
【0080】
この方式に適用する場合、無線端末100には、DFT部112、及びサブキャリアマッピング部114が構成要素として追加される。DFT部112は、入力信号に対して離散フーリエ変換(DFT;Discrete Fourier Transform)を施す手段である。このDFT部112は、シングルキャリアとしての特徴を保持するために設けられる。また、サブキャリアマッピング部114は、DFT部112から出力されたサブキャリア信号を所定の周波数帯にマッピングする手段である。例えば、図10のように、等間隔でチャンクが配置されることが好ましい。なお、このサブキャリアマッピング部114の機能は、図1又は図9に示した無線端末100においては変調部102により実現される。このように送信スペクトルを一定間隔で配置する方式をLTEでは“distributedモード”と呼んでいる。
【0081】
本実施形態の技術を適用する場合、このdistributedモードの配置規則を維持しつつ、その中心周波数を周波数ホッピングさせればよい。あとは、本実施形態及びその各変形例に係る技術をそのまま利用することで、これまで述べてきた効果を得ることができる。もちろん、周波数軸上の1カ所にスペクトルが集中して配置される“localized mode”においても、周波数ホッピングを用いることで本実施形態及びその各変形例に係る技術をそのまま適用することができる。このように、LTEにより規定された方式に対して本実施形態に係る技術を適用することにより、第4世代移動通信サービス開始時から、高精度な直接波タイミング検出が可能となる。その結果、高精度な位置検索サービスを提供する土壌を構築することができる。
【0082】
[効果]
以下、上記の各構成により得られる効果について述べる。
【0083】
(本実施形態の基本構成(図1、図6)による効果について)
まず、図1、図6に示した本実施形態の基本構成について、計算機シミュレーションの結果を図12に示す。図12は、3GPP(3rd generation partnership project)において規定されているVehicular−Aと呼ばれる伝送路のモデルを適用した場合に得られるシミュレーション結果である。このモデルでは、直接波の他に5つの遅延波が想定されている。また、直接波と第1遅延波との遅延時間差は約300[nsec]である。そして、計算条件としては、変調方式にOFDMを用いること、及び12サブキャリアで構成されるチャンク(Chunk)を1単位として3チャンクを常時使用することを前提とした。
【0084】
また、比較例(w/o chunk hopping)は、3チャンクを連続割り当てとした。一方、本実施形態(w/. chunk hopping)は、7OFDMシンボルが扱えるものとし、合計21チャンク(3×7=21)を使用するものとした。図12から明らかなように、本実施形態の結果においては、本来のピーク位置(32[sample])にピークが現れており、直接波と遅延波が分離できていることがわかる。一方、比較例では本来のピーク位置に自己相関ピークが存在せず、直接波の受信タイミングを正確に検出することはできない。このように、本実施形態の基本構成を適用することにより、送信側に負担を掛けずに直接波の検出精度を改善することが可能になる。その結果、セルラー通信での高精度な位置検出も実現されるであろう。
【0085】
(第2変形例の構成(図7)による効果について)
上記の通り、第2変形例では、マルチパス干渉キャンセルを実施することにより、サイドローブを有する不完全な自己相関特性に起因して発生する直接波検出誤差を軽減している。その効果を計算機シミュレーションにて検証した結果が図13である。
【0086】
このシミュレーションには、3GPPで規定されているTypical Urbanモデルが使用されている。このモデルは、Vehicular−Aモデルよりも直接波と第1遅延波との時間間隔が短い。つまり、サイドローブの影響を大きく受けるモデルであると言える。図13では、マルチパス干渉キャンセラ(MPIC)を動作させた場合とさせない場合との比較を行っている。使用するチャンク数をパラメータとし、それぞれのパターンで平均二乗誤差(Mean squared error;MSE)を測定した。
【0087】
図13を参照すると、MPICを用いない場合は4チャンク使用の条件で、ようやくMSEが0.5程度になるのに対し、MPICを適用した場合は3チャンク使用の条件で、MSEが0.001程度になる。この結果について単純な見方をすれば、MPIC動作がない場合は10回中5回に1サンプル誤差が生じ、MPIC動作を行う場合は1000回に一度1サンプルの検出誤差が生じることを意味している。つまり、誤差分布を考慮しない単純な見方ではあるものの、MPIC動作により十分な精度を達成できると考えられる。これらの結果から、MPICを適用することにより4チャンク使用から3チャンク使用へと使用帯域幅を削減することができる上に検出精度が向上するという効果が得られる。また、自己相関のサイドローブによる影響を受けやすい条件においても、正確なタイミング検出が実現されている。
【0088】
(第3変形例の構成(図8)による効果について)
次に、上記の第3変形例の構成による効果について、計算機シミュレーションの結果を図14に示す。図14の場合、計算条件にフェージングによる影響を付加するため、1スロット(7OFDMシンボル)毎にフェージングが変化するように設定した。図14から明らかなように、平均化スロットが多くなるに連れてMSEが急激に低下していることがわかる。4チャンク使用の場合に注目すると、MPIC動作を前提とした場合、同相加算平均を8回実施する(右端)と、同相加算平均を実施しない場合(平均スロット数1)に比べてMSEがおおよそ100分の1にまで低減される。
【0089】
また、同相加算平均を8回実施する場合についてMPICの有無を比較すると、MSEが約10分の1に低減されることも確認できる。なお、パス誤認定を避けるための閾値設定は、雑音平均電力の2倍、かつ、最大パスレベルの0.1倍とした。但し、これらの値は、利用するシステムの構成に応じて適宜変更されるものである。従って、さらに細かい調整を行えば、よりパスタイミング検出精度の向上が得られるかもしれない。上記のように、第3変形例の構成を適用することにより、フェージングによるレベル低下が発生しても、その誤差を抑制することができることが確認できた。
【0090】
(まとめ)
上記のように、本実施形態は、送信側で周波数ホッピングを行うと共に、受信側で受信信号を累積加算し、その累積加算信号から遅延プロファイルを求める構成に特徴がある。このような特徴的な構成により、広帯域通信を行うのと等価な状態で遅延プロファイルを算出することが可能になり、遅延プロファイルに含まれる自己相関ピークを鋭い形状にすることができる。その結果、遅延プロファイルから直接波の受信タイミングを精度良く検出することが可能になる。また、本実施形態の技術を適用しても送信電力の増大を招かない。
【0091】
また、第2変形例においては、受信側で復号に成功した受信信号を再変調し、送信信号のレプリカを作成し、その自己相関波形を用いてマルチパス干渉除去を実施しながらマルチパスの分離を実施して直接波を特定する。その結果、不完全な送信信号が起因で生じた自己相関関数のサイドローブにより誤検出していた直接波検出の検出精度が向上する。また、第3変形例においては、フェージングの瞬時変動対策として、測定したインパルス応答の同相加算平均を実施する。このとき、同相化ベクトルとして仮に検出された先頭パスのみの複素ベクトルを用いて同相化処理を行う。その結果、送信側に連続した送信時間が割り当てられず、フェージングの影響を受けて位相が変動してしまい、単なる加算平均では直接波を相殺してしまうような場合でも、安定した遅延プロファイルを検出できる。
【0092】
また、第4変形例においては、フェージングの瞬時変動対策として、送信側に設けられた複数アンテナから交互に又は同時に信号を送信する構成が提案された。この構成を適用することにより、測定に要する送信時間をアンテナ数分の1にすることが可能になる。また、第3変形例の技術と組み合わせて用いることで、より効果的にフェージングの影響を除去することができる。また、第5変形例においては、LTEの”distributedモード”に相当する一定間隔の信号スペクトルを有する通信方式を前提とし、広帯域センシング信号を実現する。その結果、同一時刻に広帯域がセンシングできるので、遅延プロファイルの安定化が図りやすくなる。
【0093】
このように、本実施形態及びその各変形例に係る技術を適用することで高い時間分解能を得る事ができるため、既存の無線端末を大幅に変更することなく、位置検出の測定誤差を30[m]以内に抑えることが可能なセルラーシステムの実現が現実のものになる。
【0094】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0095】
100 無線端末
102 変調部
104 IFFT部
106 CP付加部
108 送信部
110 スイッチ
112 DFT部
114 サブキャリアマッピング部
200 基地局
202 受信部
204 CP除去部
206 FFT部
208 フィルタ
210 加算器
212 遅延部
214 スイッチ
216 IFFT部
218 相関器
220 到来時間差計算部
222 乗算器
230 マルチパス干渉キャンセラ
232 スイッチ
234 減算器
236 乗算器
238 記憶部
240 検査部
250 同相平均化部
252 マルチパス干渉キャンセラ
254 乗算器
256 加算器
258 記憶部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定時間毎に所定の規則で変更される中心周波数を持つ信号を受信する信号受信部と、
前記信号受信部の出力を時間領域から周波数領域へと変換する時間・周波数変換部と、
前記時間・周波数変換部で変換された周波数領域の信号から、前記所定の規則に基づいて受信時に未使用となる周波数領域の信号成分を除去する未使用領域成分除去フィルタと、
前記未使用領域成分除去フィルタを通過した信号成分に逆変調処理を施す逆変調部と、
所定期間について前記逆変調部で逆変調処理が施された信号成分を累積加算して加算信号を生成する信号加算部と、
前記信号加算部で生成された加算信号を周波数領域から時間領域へと変換する周波数・時間変換部と、
前記周波数・時間変換部の出力から得られるインパルス応答に基づいて直接波の到来時刻を決定する直接波到来時刻決定部と、
を備えることを特徴とする、無線通信装置。
【請求項2】
前記インパルス応答に含まれるマルチパス干渉成分を除去するマルチパス干渉キャンセラをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記インパルス応答からマルチパス干渉成分を除去することで仮に検出された直接波の位相に基づいて当該インパルス応答を同相化し、所定期間について平均化する同相加算平均部をさらに備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
所定時間毎に送信信号の中心周波数を所定の規則で変更する周波数変更部と、
前記周波数変更部で変更された中心周波数で信号を送信する信号送信部と、
を有する、無線端末と、
所定時間毎に所定の規則で変更される中心周波数を持つ信号を受信する信号受信部と、
前記信号受信部の出力を時間領域から周波数領域へと変換する時間・周波数変換部と、
前記時間・周波数変換部で変換された周波数領域の信号から、前記所定の規則に基づいて受信時に未使用となる周波数領域の信号成分を除去する未使用領域成分除去フィルタと、
前記未使用領域成分除去フィルタを通過した信号成分に逆変調処理を施す逆変調部と、
所定期間について前記逆変調部で逆変調処理が施された信号成分を累積加算して加算信号を生成する信号加算部と、
前記信号加算部で生成された加算信号を周波数領域から時間領域へと変換する周波数・時間変換部と、
前記周波数・時間変換部の出力から得られるインパルス応答に基づいて直接波の到来時刻を決定する直接波到来時刻決定部と、
を有する、無線通信装置と、
を含むことを特徴とする、無線通信システム。
【請求項5】
前記無線端末は、
前記信号の送信に利用する複数の送信アンテナと、
所定の時間間隔で利用する前記送信アンテナを切り替えるアンテナ切替部と、
をさらに有することを特徴とする、請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記無線端末は、複数の送信アンテナをさらに有し、
前記信号送信部は、前記複数の送信アンテナから同じ前記信号を同時に送信することを特徴とする、請求項4又は5に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記周波数変更部は、周波数軸上に所定間隔で離散配置される複数の帯域の中心周波数を当該所定間隔を維持しながら前記所定の規則で変更し、
前記信号送信部は、前記周波数変更部で変更された複数の中心周波数で信号を送信することを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項8】
所定時間毎に所定の規則で変更される中心周波数を持つ信号を受信する信号受信ステップと、
前記信号受信ステップで受信した信号を時間領域から周波数領域へと変換する時間・周波数変換ステップと、
前記時間・周波数変換ステップで変換された周波数領域の信号から、前記所定の規則に基づいて受信時に未使用となる周波数領域の信号成分を除去する未使用領域成分除去ステップと、
前記未使用領域成分除去ステップで残留した信号成分に逆変調処理を施す逆変調ステップと、
所定期間について前記逆変調ステップで逆変調処理が施された信号成分を累積加算して加算信号を生成する信号加算ステップと、
前記信号加算ステップで生成された加算信号を周波数領域から時間領域へと変換する周波数・時間変換ステップと、
前記周波数・時間変換ステップで時間領域へと変換された加算信号から得られるインパルス応答に基づいて直接波の到来時刻を決定する直接波到来時刻決定ステップと、
を含むことを特徴とする、直接波のタイミング検出方法。
【請求項9】
無線端末が、
所定時間毎に送信信号の中心周波数を所定の規則で変更する周波数変更ステップと、
前記周波数変更ステップで変更した中心周波数で信号を送信する信号送信ステップと、
無線通信装置が、
前記無線端末から信号を受信する信号受信ステップと、
前記信号受信ステップで受信した信号を時間領域から周波数領域へと変換する時間・周波数変換ステップと、
前記時間・周波数変換ステップで変換された周波数領域の信号から、前記所定の規則に基づいて受信時に未使用となる周波数領域の信号成分を除去する未使用領域成分除去ステップと、
前記未使用領域成分除去ステップで残留した信号成分に逆変調処理を施す逆変調ステップと、
所定期間について前記逆変調ステップで逆変調処理が施された信号成分を累積加算して加算信号を生成する信号加算ステップと、
前記信号加算ステップで生成された加算信号を周波数領域から時間領域へと変換する周波数・時間変換ステップと、
前記周波数・時間変換ステップで時間領域へと変換された加算信号から得られるインパルス応答に基づいて直接波の到来時刻を決定する直接波到来時刻決定ステップと、
を含むことを特徴とする、直接波のタイミング検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−239395(P2010−239395A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85194(P2009−85194)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】