説明

無線通信装置

【課題】 SARの規格を満たしながら、通信感度の向上を図る。
【解決手段】 無線通信装置1は、本体通信装置2と、当該本体通信装置2とは別個独立したサブ通信装置3とを有する。本体通信装置2は、外部の通信相手から出力された無線信号を受信する受信専用の本体側受信用アンテナ7と、信号を無線送信する送信専用の本体側送信用アンテナ13とを有する。サブ通信装置3は、本体側送信用アンテナ13から無線送信された信号を受信する受信専用のサブ側受信用アンテナ15と、その受信した信号を増幅して信号レベルを高めた信号を作り出すサブ側通信部と、その作り出した信号を外部の通信相手に向けて無線送信するサブ側送信用アンテナ21とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型電話機等の無線通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5(a)には無線通信装置の一つである携帯型電話機の一形態例がモデル図により示され、図5(b)にはその携帯型電話機の通信に関わる主要な内部構成例がブロック構成図により示されている。この携帯型電話機30は、無線通信用のアンテナ31と、当該アンテナ31により受信された信号を信号処理用の信号形態に変換する受信部32と、信号処理を行うベースバンド部33と、ベースバンド部33から出力された送信用の信号を無線通信用の信号形態に変換し当該信号をアンテナ31を介して外部に向けて無線送信させる送信部34とを有している。
【0003】
【特許文献1】特開平10−41720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯型電話機30は、図5(c)に示されるように、通話中には頭部横側に配置される。また、通話中には、携帯型電話機30のアンテナ31から無線通信用の信号(電磁波)が出力されており、そのアンテナ31から出力される信号は、無線通信相手(例えば無線電話通信システムの基地局)と無線通信が可能な信号レベル(信号強度)を持つものである。
【0005】
このような例えば基地局との無線通信を行うことができる信号レベルを持つ信号がアンテナ31から出力されるので、SAR(Specific-Absorption-Rate)の規定を満たすために、アンテナ31の配置位置は制約される。このため、高いアンテナ利得を得ることができる最適な位置にアンテナ31を設けることができないことがあり、携帯型電話機30の無線通信性能の向上が妨げられるという問題発生の虞がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、SARの規定を満たしながら、無線通信性能の向上を図ることができる無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明は次に示す構成を持って前記課題を解決するための手段としている。すなわち、この発明は、本体通信装置と、当該本体通信装置とは別個独立したサブ通信装置とを有し、
本体通信装置には、外部の通信相手から出力された無線信号を受信する本体側受信用アンテナと、本体側受信用アンテナで受信された信号を信号処理用の信号に変換する受信部と、通信用の信号を作り出して出力する送信部と、送信部から出力された信号を無線送信する本体側送信用アンテナとが設けられ、
サブ通信装置には、本体側送信用アンテナから無線送信された信号を受信するサブ側受信用アンテナと、サブ側受信用アンテナにより受信された信号を増幅して信号レベルを高めた信号を作り出すサブ側通信部と、サブ側通信部により作り出された信号を外部の通信相手に向けて無線送信するサブ側送信用アンテナとが設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明の無線通信装置では、本体通信装置と、当該本体通信装置とは別個のサブ通信装置とを有して構成され、外部の通信相手から出力された信号は、本体通信装置が受信し、本体通信装置から外部の通信相手に送信したい信号は、一旦、サブ通信装置に出力され、当該サブ通信装置で信号レベルが増幅されてから、サブ通信装置から通信相手に向けて出力することができる構成とした。この構成では、本体通信装置から送信される信号のレベルは、例えば同じ室内にあるサブ通信装置で受信することができる程度の信号レベルであればよく、外部の無線通信相手(例えば無線通信システムの基地局)に到達できる高い信号レベルでなくてよい。例えば、本体通信装置とサブ通信装置が組を成して携帯型電話機として機能する場合には、本体通信装置に通話のためのマイクとスピーカーが設けられている構成とすることにより、本体通信装置は通話中には人の頭部横側に配置される。また、サブ通信装置は頭部から離れた場所に配置することができる。このような場合には、頭部から離れた場所のサブ通信装置から、基地局への信号レベルの高い信号が送信され、頭部横側に配置される本体通信装置からは、そのような信号レベルの高い送信信号を出力しなくて済む。
【0009】
このように本体通信装置は信号レベルの高い信号を出力しなくてよいので、本体通信装置がSARの規定を満たすことが容易となる。また、サブ通信装置は頭部から離れた場所におくことができることから、SARの規定を殆ど気にすることなく、サブ側送信用アンテナの配置位置を決定することができる。このため、サブ側送信用アンテナは高いアンテナ利得を得ることができる適切なサブ通信装置の部位に設けることができることとなり、本発明の無線通信装置の送信性能を向上させることができる。
【0010】
また、この発明では、送信用のアンテナと、受信用のアンテナとが別個独立に設けられているので、送信側の信号と、受信側の信号とのアイソレーションを確保することが容易となる。また、送信用と受信用に兼用のアンテナが設けられている場合に、送信用の信号の周波数帯と、受信用の信号の周波数帯とが近いと、送信信号と受信信号の相互干渉が懸念されて送信と受信の動作を同時に行うことが難しいのに対して、この発明では、送信用のアンテナと、受信用のアンテナとを別個独立に設けるので、送信用の信号の周波数帯と、受信用の信号の周波数帯とが近くとも、信号の相互干渉を回避しながら、送信と受信の動作を同時に行うことが可能である。これにより、無線通信の効率を向上させることができる。
【0011】
さらに、本体通信装置と、外部の通信相手との間の距離が短くて、本体通信装置から出力される低いレベルの送信信号でも外部の通信相手がその送信信号を受信することが可能な場合がある。このような場合には、サブ通信装置を介さずに、本体通信装置から直接に外部の通信相手と無線通信をすることが可能である。また、本体側受信用アンテナの受信信号の信号レベルの高低によって、本体通信装置と、外部の通信相手との間の距離の長短を推測することができ、これにより、本体通信装置と外部の通信相手との間の直接通信が可能であるか否かを判断することができる。
【0012】
これらのことから、その本体通信装置と外部の通信相手との間の直接通信が可能であるか否かを判断するための受信信号レベルのしきい値を予め実験等により求め、当該しきい値をサブ側オフ判断用信号レベルとして予め与えておく。そして、本体通信装置の受信信号のレベルがサブ側オフ判断用信号レベル以上である場合には、外部の通信相手と本体通信装置との間の距離が短いために本体通信装置の低いレベルの送信信号でも、本体通信装置と、外部の通信相手との直接的な無線通信が可能であると判断することができる。本体通信装置と、外部の通信相手との直接的な無線通信が可能である場合には、サブ通信装置の回路動作を休止させても、外部の通信相手との無線通信に支障を来さない。このことから、本体通信装置の受信信号のレベルがサブ側オフ判断用信号レベル以上であることを検知したときには、サブ通信装置の回路動作を休止させる構成を備えることによって、サブ通信装置の省電力化を図ることができる。サブ通信装置が例えば電池電源を利用して駆動する装置である場合には、電池の寿命を長くすることができる。
【0013】
本体側受信用アンテナが、予め定められた複数の無線通信システムに共通の受信用のアンテナと成し、また、サブ側送信用アンテナは上記全ての無線通信システムに共通の送信用のアンテナと成している構成を備えることによって、受信用のアンテナおよび送信用のアンテナの配設数の増加を抑制しながら、複数の無線通信システムの無線通信に対応することが可能となる。
【0014】
本体通信装置とサブ通信装置との間の信号通信を有線により行う構成とすることにより、本体通信装置から無線送信される信号(電磁波)に起因した問題の発生を回避することができる。また、本体通信装置とサブ通信装置との間の信号通信の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、この発明に係る実施形態例を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1には第1実施形態例の無線通信装置の形態例がモデル図により示され、図2には図1の無線通信装置の無線通信に関わる主要な内部構成例がブロック構成図により示されている。
【0017】
この第1実施形態例の無線通信装置1は、本体通信装置2と、当該本体通信装置2と別個独立したサブ通信装置3とを有し、それら本体通信装置2とサブ通信装置3が組を成して機能する携帯型電話機である。この第1実施形態例では、本体通信装置2には、通話のためのスピーカー4とマイク5が間隔を介して設けられている。また、図2に示されるように、本体通信装置2は、本体側受信用アンテナ7と、LNA(ローノイズアンプ)8と、受信部9と、ベースバンド部10と、送信部11と、PA(パワーアンプ)12と、本体側送信用アンテナ13とを有して構成されている。また、サブ通信装置3は、サブ側受信用アンテナ15を有すると共に、受信部16とベースバンド部17と送信部18とPA(パワーアンプ)19を有するサブ側通信部20と、サブ側送信用アンテナ21とを有して構成されている。
【0018】
本体側受信用アンテナ7は、外部の通信相手である携帯型電話機の無線通信システムの基地局22から出力された無線信号(電波)を受信する受信専用のアンテナである。この第1実施形態例では、本体側受信用アンテナ7は、通話中に基地局22からの信号を良好に受信することができる適切な本体通信装置2の部位(例えば本体通信装置2のスピーカー4側の端部)に設けられている。
【0019】
受信部9は、本体側受信用アンテナ7で受信されLNA8を介して入力された受信信号を信号処理用の信号に変換してベースバンド部10に向けて出力する回路を有する。ベースバンド部10は、受信部9から入力された信号を予め定められた手法に従って信号処理する回路を有する。また、ベースバンド部10は、外部に送信したい信号が例えば通信制御部側から加えられると、その信号を予め定められた手法に従って信号処理して送信部11に向けて出力する回路を有する。送信部11は、その信号を無線通信用の信号に変換して出力する回路を有する。PA12は、送信部11から出力された信号のレベルを高めて本体側送信用アンテナ13に向けて出力する増幅器である。本体側送信用アンテナ13は供給された信号を無線送信する送信専用のアンテナである。この第1実施形態例では、本体側送信用アンテナ13は、本体通信装置2の中で通話中に人の頭部から最も離れた位置に配置されるように、本体通信装置2のマイク5側の端部に設けられている。
【0020】
サブ通信装置3のサブ側受信用アンテナ15は、本体側送信用アンテナ13から無線送信された信号を受信するものである。なお、この第1実施形態例では、本体通信装置2の本体側送信用アンテナ13と、サブ通信装置3のサブ側受信用アンテナ15との間の無線通信の手法は特に限定されるものではないが、例えば、その一例として、本体通信装置2とサブ通信装置3が例えば同じ室内に配置されるというように近接配置されると想定される場合には、本体通信装置2とサブ通信装置3との間の無線通信の手法として、例えば、Bluetooth規格に従った微弱な電波を利用した無線通信手法を挙げることができる。
【0021】
サブ側通信部20の受信部16は、サブ側受信用アンテナ15で受信された信号を信号処理用の信号に変換する回路を有する。ベースバンド部17は、受信部16から出力された信号を予め定められた手法に従って信号処理して当該信号処理後の信号を送信部18に向けて出力する回路を有する。送信部18は、供給された信号を無線通信用の信号に変換する回路を有する。PA19は、送信部18から出力された信号を増幅して信号レベルが高められた信号をサブ側送信用アンテナ21に向けて出力する回路を有する。サブ側送信用アンテナ21はPA19から出力された信号を外部の通信相手(例えば基地局)22に向けて無線送信する。
【0022】
この第1実施形態例では、本体通信装置2とサブ通信装置3は組を成して携帯型電話機として機能するものであり、本体通信装置2とサブ通信装置3との間の距離は例えば同じ室内程度の距離であると想定されている。このため、本体通信装置2の本体側送信用アンテナ13と、サブ通信装置3のサブ側受信用アンテナ15との間の距離は、サブ側送信用アンテナ21と、外部の通信相手である基地局22との間の距離に比べて格段に短い。このため、本体側送信用アンテナ13からサブ側受信用アンテナ15に向けて出力される信号のレベルは、サブ側送信用アンテナ21から外部に無線送信される信号のレベルに比べて、低くてよい。このことから、この第1実施形態例では、本体通信装置2のPA12は、サブ通信装置3のPA19の最大出力電力飽和電力よりも小さい最大出力電力飽和電力を持つものである。これにより、本体側送信用アンテナ13から無線送信される送信信号は、サブ側送信用アンテナ21から無線送信される送信信号よりも弱くなっている。
【0023】
この第1実施形態例の無線通信装置1は上記のように構成されている。この第1実施形態例の構成では、外部の通信相手22からの信号は本体通信装置2が受信する。また、本体通信装置2が外部の通信相手22宛に送信したい信号は、一旦、低いレベルの無線信号(弱い無線信号)でもってサブ通信装置3に無線送信され、当該サブ通信装置3で信号レベルが増幅されてから、当該サブ通信装置3から外部の通信相手22に向けて無線送信される。
【0024】
以下に、第2実施形態例を説明する。なお、この第2実施形態例の説明において、第1実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0025】
この第2実施形態例では、本体通信装置2とサブ通信装置3が組を成して機能する携帯型電話機1は、予め定められた複数の無線通信システムに対応することが可能となるように、次に示すような構成を有している。すなわち、この第2実施形態例では、図3のブロック構成図に示されるように、本体通信装置2においては、受信部9は、予め定められた複数の無線通信システムにそれぞれ別々に対応する複数の受信回路25A,25Bを有して構成されている。
【0026】
それら全ての受信回路25A,25Bはダイプレクサ24を介して共通に本体側受信用アンテナ7に接続されている。換言すれば、本体側受信用アンテナ7は、前記全ての無線通信システムに共通の受信用アンテナと成している。前記各無線通信システムは、それぞれ、別々の無線通信用の周波数帯でもって信号の無線通信を行っている。このことから、ダイプレクサ24は、各無線通信システムの信号の周波数帯の違いを利用して、本体側受信用アンテナ7で受信された信号を、各無線通信システムの信号毎に分離させる回路構成を備えている。ダイプレクサ24の各無線通信システム毎の信号出力部は、それぞれ、対応する無線通信システム用の受信回路25A,25Bに各々LNA8(8a,8b)を介して接続されている。各受信回路25A,25Bは、それぞれ、本体側受信用アンテナ7側から供給された受信信号を信号処理用の信号に変換する回路構成を有するものである。当該各受信回路25A,25Bの信号出力部は、それぞれ、ベースバンド部10に接続されている。
【0027】
また、送信部11は、前記複数の無線通信システムにそれぞれ別々に対応する複数の送信回路26A,26Bを有して構成されている。各送信回路26A,26Bは、それぞれ、ベースバンド部10から加えられた信号を、対応する無線通信システムに適した無線通信用の信号に変換する回路構成を有している。当該各送信回路26A,26Bは、それぞれ、別々のPA12(12a,12b)を介してダイプレクサ27に接続されている。ダイプレクサ27は、送信回路26A,26Bから出力された信号を一つの信号にまとめて本体側送信用アンテナ13に向けて出力する回路構成を備えている。この第2実施形態例では、各無線通信システム毎の複数の送信回路26A,26Bはダイプレクサ27を介して本体側送信用アンテナ13に共通に接続されている。
【0028】
サブ通信装置3においても、上記同様であり、受信部16は、各無線通信システム毎の複数の受信回路36A,36Bを有して構成され、各受信回路36A,36Bは、それぞれ、ダイプレクサ37を介してサブ側受信用アンテナ15に共通に接続されている。ダイプレクサ37は、ダイプレクサ24と同様に、各無線通信システム毎の信号の周波数帯の違いを利用して、本体側送信用アンテナ13からの受信信号を各無線通信システム毎の信号に分離させる回路構成を備えている。このダイプレクサ37の各無線通信システム毎の信号出力部が、それぞれ、別々のLNA38A,38Bを介して、対応する無線通信システム用の受信回路36A,36Bに接続されている。各受信回路36A,36Bは、それぞれ、サブ側受信用アンテナ15側から供給された信号を信号処理用の信号に変換する回路構成を備えている。
【0029】
送信部18は、各無線通信システム毎の複数の送信回路40A,40Bを有して構成され、各送信回路40A,40Bは、それぞれ、PA19(19a,19b)とダイプレクサ41を介してサブ側送信用アンテナ21に共通に接続されている。ダイプレクサ41は、本体通信装置2のダイプレクサ27と同様に、各送信回路40A,40Bからそれぞれ出力された信号を一つにまとめてサブ側送信用アンテナ21に出力する回路構成を備えている。サブ側送信用アンテナ21は、前記全ての無線通信システムに共通の送信用アンテナと成している。
【0030】
この第2実施形態例の携帯型電話機における上記以外の構成は、第1実施形態例と同様である。
【0031】
以下に、第3実施形態例を説明する。なお、この第3実施形態例の説明において、第1や第2の各実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0032】
この第3実施形態例では、本体通信装置2と、サブ通信装置3との間の無線通信が、本体通信装置2やサブ通信装置3と、外部の通信相手22との間の無線通信の規格と同じ無線通信の規格でもって行われる構成を有する。ただし、本体通信装置2と、サブ通信装置3との間の無線通信の信号レベルは、第1実施形態例と同様に、サブ通信装置3と外部の通信相手22との間の無線通信の信号レベルよりも低いものとなっている。
【0033】
この第3実施形態例では、本体通信装置2が、外部の通信相手(携帯型電話機の無線通信システムの基地局)22に近くて、本体通信装置2の本体側送信用アンテナ13から無線送信された弱い送信信号でも、基地局22で受信することが可能な場合には、サブ通信装置3の回路動作を休止させてサブ通信装置3の省電力化を図ることができる次に示すような構成を備えている。
【0034】
すなわち、この第3実施形態例では、図4に示されるように、本体通信装置2に設けられている制御装置42は、サブ側休止制御部45と、メモリ(記憶装置)46とを有して構成され、サブ側休止制御部45は、取り込み部47と、比較部48と、休止制御部49とを有して構成されている。また、サブ通信装置3に設けられている制御装置43は、動作休止部50を有して構成されている。
【0035】
本体通信装置2の制御装置42のメモリ46にはサブ側オフ判断用信号レベルが予め格納されている。サブ側オフ判断用信号レベルとは、サブ通信装置3の回路動作を休止させるか否かを判断するためのしきい値である。つまり、本体通信装置2の本体側受信用アンテナ7で受信される信号のレベルが高いとき(信号が強いとき)には、通信相手(基地局)22との距離が短いと推定することができる。通信相手22との距離が短い場合には、本体通信装置2の本体側送信用アンテナ13から出力される低いレベルの送信信号でも通信相手22が受信できて当該通信相手22との無線通信が可能になる場合がある。このことから、本体側受信用アンテナ7の受信信号のレベルの高低によって、通信相手(基地局)22との距離が短くて本体通信装置2の本体側送信用アンテナ13と、通信相手22との間の直接的な無線通信が可能であるか否かを判断することができ、これにより、サブ通信装置3の回路動作を休止させるか否かを判断することができる。このことにより、その判断のためのしきい値となる本体側受信用アンテナ7の受信信号の信号レベルを実験等により予め求め、この求めた信号レベルがサブ側オフ判断用信号レベルとして予めメモリ46に格納されている。
【0036】
サブ側休止制御部45の取り込み部47は、本体側受信用アンテナ7で受信された受信信号の一部を時々刻々と取り込む構成を備えている。比較部48は、取り込み部47に取り込まれた受信信号の信号レベルを検出し、また、メモリ46に予め記憶されているサブ側オフ判断用信号レベルを読み出し、上記検出した受信信号の信号レベルをサブ側オフ判断用信号レベルに比較する。この比較結果は比較部48から休止指令部49に出力される。休止指令部49は、比較部48の比較結果に基づいて、受信信号の信号レベルがサブ側オフ判断用信号レベル以上であることを検知したときには、本体通信装置2の本体側送信用アンテナ13から無線送信された信号を通信相手22が受信可能で、本体通信装置2と通信相手22との間の直接的な無線通信を行うことができると判断し、サブ通信装置3へ動作休止信号を無線送信する。
【0037】
サブ通信装置3の制御装置43の動作休止部50は、本体通信装置2側からの動作休止信号を受け取ったときには、サブ通信装置3のサブ側通信部20の回路動作を休止させる。サブ側通信部20の回路動作を休止させる手法の一つとしては、例えば、次に示すような手法が考えられる。例えば、サブ通信装置3の電源(例えば電池)51からサブ側通信部20へ電力を供給する通路に、電源51からサブ側通信部20への電力供給のオン・オフ制御を行うための電力供給オン・オフ制御手段52を設けておく。動作休止部50は、サブ側通信部20の回路動作を休止させるときには、電力供給オン・オフ制御手段52に向けて電力供給停止信号を出力し、この信号を受けて電力供給オン・オフ制御手段52がサブ側通信部20への電力供給を停止する。このようにして、サブ側通信部20の回路動作を休止させることができる。
【0038】
なお、サブ通信装置3の制御装置43には、動作休止解除部(図示せず)が設けられる。その動作休止解除部は、例えば、本体通信装置2側から供給される例えば受信信号の信号レベルの情報に基づいて本体通信装置2と通信相手22との直接的な無線通信が難しくなったことを検知したときに、動作休止部50によるサブ側通信部20の回路動作の休止状態を解除させる構成を備えている。
【0039】
以下に、第4実施形態例を説明する。なお、この第4実施形態例の説明では、第1〜第3の各実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0040】
この第4実施形態例では、本体通信装置2の本体側送信用アンテナ13と、サブ通信装置3のサブ側受信用アンテナ15とが設けられるのに代えて、本体通信装置2とサブ通信装置3との間を有線接続させるための有線接続手段を備えている。その有線接続手段の構成には様々な構成があり、ここでは何れの構成を採用してもよく、その説明は省略する。また、第4実施形態例における上記構成以外の構成は、第1又は第2の実施形態例と同様であり、ここでは、その重複説明は省略する。
【0041】
なお、この発明は第1〜第4の各実施形態例の形態に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、第1〜第3の各実施形態例の構成に加えて、次に示すような構成を備えてもよい。例えば、本体側受信用アンテナ7と、本体側送信用アンテナ13と、サブ側受信用アンテナ15と、サブ側送信用アンテナ21とは、それぞれ、同じ周波数帯の信号の無線通信が可能な構成と成す。また、サブ通信装置3は、通信相手22からの受信信号を信号処理できる構成を有する。このような構成を備えることによって、サブ通信装置3は、サブ側受信用アンテナ15で通信相手(基地局)22からの信号を受信し、当該受信信号をサブ側送信用アンテナ21から本体通信装置2側へ送信することができることとなる。
【0042】
また、本体通信装置2には、本体側受信用アンテナ7で受信された信号が基地局22から送信されてきた信号であるのか、サブ通信装置3から基地局22に向けて無線送信された信号であるのかを識別するための手段を有する構成とする。
【0043】
このような構成を備えることによって、本体通信装置2は、外部の通信相手から直接に本体側受信用アンテナ7で受信される信号の感度が悪くとも、サブ通信装置3のサブ側受信用アンテナ15でも同じ信号が受信され当該受信信号がサブ側送信用アンテナ21と本体側受信用アンテナ15を介してサブ通信装置3側から本体通信装置2側へ送信されるので、サブ通信装置3のサブ側受信用アンテナ15で受信される信号によって、本体側受信用アンテナ7の受信感度の悪さをカバーすることができる。第1〜第3の各実施形態例に示される携帯型電話機1の構成では、本体通信装置2を人の頭部横側に配置して通話を行うために、通話中には、本体通信装置2の本体側受信用アンテナ7の向きを大きく変化させることができないのに対して、サブ通信装置3は、サブ側受信用アンテナ15の受信感度が向上する方向に向きを容易に変更することができる。このため、上記のようにサブ通信装置3の受信信号によって本体通信装置2の受信感度の悪さをカバーできる構成を備えることは、受信感度の向上に非常に有効である。
【0044】
さらに、第1や第2の実施形態例の構成に加えて、次に示すような構成を備えてもよい。例えば、第3実施形態例に示したような、本体通信装置2の本体側送信用アンテナ13から無線送信された信号が通信相手22で受信可能であると判断するための構成を備えると共に、その構成によって本体側送信用アンテナ13の送信信号を通信相手22が受信可能であると判断したときには、サブ側送信用アンテナ21と本体側送信用アンテナ13の両方を通信相手22へ信号を送信するためのアンテナとして使用し、また、本体側受信用アンテナ7とサブ側受信用アンテナ15の両方を通信相手22からの信号を受信するためのアンテナとして使用して、MIMO(Multiple-Input-Multiple-Output)通信を行うための構成を備える。このようにMIMO通信が行える構成を備えることによって、無線通信効率を向上させることができる。
【0045】
さらに、第1〜第4の各実施形態例では、携帯型電話機を例にして説明したが、この発明の無線通信装置は携帯型電話機以外の無線通信装置にも適用することができる。さらに、第2実施形態例では、2つの無線通信システムに対応することができる構成であったが、例えば、本体通信装置2の受信部9は、互いに異なる3つ以上の無線通信システムにそれぞれ対応する3つ以上の受信回路を有し、また、サブ通信装置3の送信部18は、互いに異なる3つ以上の無線通信システムにそれぞれ対応する3つ以上の送信回路を有するというような構成を備えて、3つ以上の無線通信システムに対応できる構成が設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1実施形態例の無線通信装置の外観例を説明するためのモデル図である。
【図2】第1実施形態例の無線通信装置の主要な内部構成例を説明するためのブロック構成図である。
【図3】第2実施形態例の無線通信装置の主要な内部構成例を説明するためのブロック構成図である。
【図4】第3実施形態例において特徴的な構成例を説明するためのブロック構成図である。
【図5】従来の無線通信装置の課題の一つを説明するためのモデル図である。
【符号の説明】
【0047】
1 携帯型電話機
2 本体通信装置
3 サブ通信装置
7 本体側受信用アンテナ
9 受信部
11 送信部
13 本体側送信用アンテナ
15 サブ側受信用アンテナ
20 サブ側通信部
21 サブ側送信用アンテナ
45 サブ側休止制御部
50 動作休止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体通信装置と、当該本体通信装置とは別個独立したサブ通信装置とを有し、
本体通信装置には、外部の通信相手から出力された無線信号を受信する本体側受信用アンテナと、本体側受信用アンテナで受信された信号を信号処理用の信号に変換する受信部と、通信用の信号を作り出して出力する送信部と、送信部から出力された信号を無線送信する本体側送信用アンテナとが設けられ、
サブ通信装置には、本体側送信用アンテナから無線送信された信号を受信するサブ側受信用アンテナと、サブ側受信用アンテナにより受信された信号を増幅して信号レベルを高めた信号を作り出すサブ側通信部と、サブ側通信部により作り出された信号を外部の通信相手に向けて無線送信するサブ側送信用アンテナとが設けられていることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
本体側受信用アンテナの受信信号を取り込んで当該受信信号の信号レベルを予め定められたサブ側オフ判断用信号レベルに比較し、その受信信号の信号レベルがサブ側オフ判断用信号レベル以上であると判断した場合にはサブ通信装置へ動作休止信号を出力するサブ側休止制御部が設けられ、また、サブ側通信装置には、その動作休止信号を受けて当該サブ側通信装置の回路動作を停止させる動作休止部が設けられており、サブ側休止制御部によるサブ通信装置のサブ側通信部の休止中には、本体通信装置の本体側送信用アンテナから無線送信された信号が外部の通信相手に受信されて当該通信相手との無線通信が行われることを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
本体通信装置の受信部は、複数の予め定められた無線通信システムにそれぞれ別々に対応する複数の受信回路を有し、また、サブ通信装置のサブ側通信部は、前記各無線通信システムにそれぞれ別々に対応する複数の通信回路を有しており、
本体側受信用アンテナは、本体通信装置の受信部の全ての受信回路に共通に接続され前記全ての無線通信システムに共通の受信用アンテナと成し、サブ通信装置のサブ側送信用アンテナは、サブ通信装置のサブ側通信部の全ての通信回路の信号出力部に共通に接続され前記全ての無線通信システムに共通の送信用アンテナと成していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
本体通信装置とサブ通信装置は、それぞれ、携帯型の装置であり、本体通信装置には、通話のためのマイクとスピーカーが間隔を介して設けられており、本体通信装置の本体側送信用アンテナは、本体通信装置のマイク側の端部に配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の無線通信装置。
【請求項5】
本体側送信用アンテナとサブ側受信用アンテナを設けるのに代えて、本体通信装置の送信部と、サブ通信装置のサブ側通信部とを有線接続させるための有線接続手段が設けられ、本体通信装置の送信部から出力された信号は有線接続手段を介してサブ通信装置のサブ側通信部に入力し当該信号はサブ側通信部で増幅されて信号レベルが高められサブ側送信用アンテナに向けて出力されることを特徴とする請求項1又は請求項3記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−5908(P2007−5908A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180856(P2005−180856)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】