説明

無線通信装置

【課題】周波数シンセサイザによる周波数信号を用いる無線通信装置の消費電力を低減する。
【解決手段】受信部が、受信した無線信号に基づく信号と周波数信号とを混合する第1ミキサと、当該第1ミキサの出力とローカル信号とを混合する第2ミキサと、当該第2ミキサの出力を復調して復調信号を生成する復調段とを含み、周波数シンセサイザが、制御入力電圧の変動に応じた周波数の周波数信号を生成するVCOと、当該VCOの出力周波数信号を分周して得られた信号と基準クロック信号との位相差に応じた電圧を制御入力電圧とするフィードバック回路と、からなり、当該VCOは、バイアス電流が大となるほど高い周波数で動作可能となる可変周波数発振器であって、当該バイアス電流が当該モード指定に応じて制御される無線通信装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数シンセサイザによる周波数信号を用いる無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばワイヤレスLAN(Local Area Network)通信などに用いられる無線通信装置について、PLL(Phase-locked loop)によって構成される周波数シンセサイザを送信動作と受信動作とで共通に用いる構成が知られている(例えば特許文献1)。かかる構成によれば、送受信回路を集積回路として構成する場合に回路サイズを小さくできるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−119317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、通信速度の高速化や通信量の増加に伴い、周波数シンセサイザによる周波数信号を用いる無線通信装置の消費電力を低減させたいという要望が高まっている。
【0005】
本発明はかかる要望に鑑みてなされたものであって、消費電力の小さい無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による無線通信装置は、受信モード及び送信モードのいずれかのモード指定に応じて定まる周波数信号を生成する周波数シンセサイザと、前記周波数信号を被変調信号とする送信信号を無線送信する送信部と、前記周波数信号を用いて無線信号を受信する受信部と、を含む無線通信装置であって、前記受信部は、受信した前記無線信号に基づく信号と前記周波数信号とを混合する第1ミクサと、前記第1ミクサの出力とローカル信号とを混合する第2ミクサと、前記第2ミクサの出力を復調して復調信号を生成する復調段と、を含み、前記周波数シンセサイザは、制御入力電圧の変動に応じた周波数の周波数信号を生成するVCOと、前記VCOの出力周波数信号を分周して得られた信号と基準クロック信号との位相差に応じた電圧を前記制御入力電圧とするフィードバック回路と、からなり、前記VCOは、バイアス電流が大となるほど高い周波数で動作可能となる可変周波数発振器であって、前記バイアス電流が前記モード指定に応じて制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明による無線通信装置によれば、当該装置の消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例である無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】周波数シンセサイザに含まれるVCOの回路図である。
【図3】VCOに含まれる可変容量素子の構成を示す図である。
【図4】VCOに含まれる別の可変容量素子の構成を示す図である。
【図5】プリスケーラを構成する一部のラッチ回路の回路図である。
【図6】無線通信装置の構成を送信時における周波数と共に示すブロック図である。
【図7】無線通信装置の構成を受信時における周波数と共に示すブロック図である。
【図8】発振器の代わりに分周器を備えた無線通信装置の構成を受信時における周波数と共に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施例について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施例である無線通信装置1の構成を示すブロック図である。無線通信装置1は、例えばパーソナルコンピュータにおけるワイヤレスLAN通信などに用いられる無線通信モジュールである。
【0011】
アンテナ10は、無線信号を送受信するためのアンテナである。アンテナスイッチ20は、モード指定信号SSに応じて受信側の機能ブロック31〜36(以下、受信部と称する)と送信側の機能ブロック40及び45(以下、送信部と称する)との間で、アンテナ10との接続を切り替えるスイッチである。モード指定信号SSは、無線通信装置1内の図示せぬ例えばCPUなどの制御回路から供給される。モード指定信号SSが指定するモードとしては、送信モードと受信モードがある。
【0012】
受信信号増幅器31は、モード指定信号SSが受信モードを指定している間にアンテナ10に到来する無線信号をアンテナスイッチ20を介して受信して増幅し、これを第1ミクサ32に出力する増幅器である。
【0013】
第1ミクサ32は、受信信号増幅器31の出力信号と、周波数シンセサイザ50の出力周波数信号とを混合するミクサ(すなわち混合器)である。第1ミクサ32は、受信信号増幅器31の出力信号の周波数(例えば2500MHz)と、周波数シンセサイザ50の出力周波数信号の周波数(例えば2000MHz)との差の周波数(例えば500MHz)を含む信号を出力する。
【0014】
第2ミクサ33は、第1ミクサ32の出力信号と、発振器36の出力信号とを混合するミクサである。第2ミクサ33は、第1ミクサ32からの入力信号の周波数(例えば500MHz)と、発振器36の出力信号の周波数(例えば498MHz)との差の周波数(例えば2MHz)を含む信号を出力する。
【0015】
IF回路34は、第2ミクサ33の出力信号に対してフィルタ処理及び信号増幅処理を施す回路である。復調部35は、IF回路34によってフィルタ処理等を施された信号に対して復調処理を施して復調信号を生成する。
【0016】
発振器36は、一定の周波数(例えば498MHz)のローカル信号(以下、オシレータ信号とも称する)を生成するオシレータである。
【0017】
変調部40は、モード指定信号SSが送信モードを指定している間に周波数シンセサイザ50の出力周波数信号を被変調信号として送信データで変調する変調部である。
【0018】
電力増幅器45は、変調部40により変調された信号を増幅する増幅器である。増幅された信号はアンテナスイッチ20を介してアンテナ10から無線信号として送信される。
【0019】
周波数シンセサイザ50は、VCO(voltage controlled oscillator:電圧制御発振器)51と、ループフィルタ52と、チャージポンプ53と、位相比較器54と、プリスケーラ55と、分周器56と、から構成される位相同期ループ(PLL:Phase-locked loop)であり、送信動作及び受信動作に対応して互いに異なる周波数信号(例えば2500MHzや2000MHzの周波数)を生成及び出力する。
【0020】
VCO51は、ループフィルタ52からの入力信号の電圧に応じて、モード指定信号SSに応じて定まる目標周波数に収れんする周波数の周波数信号を周波数シンセサイザ50の出力として生成する発振器である。レジスタ切替スイッチ63は、モード指定信号SSに応じて受信用設定レジスタ61と送信用設定レジスタ62との間で切替り、VCO51によって生成される周波数信号の目標周波数は、これらのレジスタ61及び62に保持されている周波数変更データの選択的な入力に応じて変更される。
【0021】
VCO51は、周波数指定入力端子51a及び制御電圧入力端子51bを有する。周波数指定入力端子51aに供給される周波数変更データが、送信モードを指定するモード信号に応じて送信用設定レジスタ62から供給されたものである場合、高い周波数(例えば2500MHz)を目標として、ループフィルタ52からの制御電圧入力の変化に応じて偏倚する周波数信号を出力端子51cにおいて出力する。周波数指定入力端子51aに供給される周波数変更データが、受信モードを指定するモード信号に応じて受信用設定レジスタ61から供給されたものである場合、低い周波数(例えば2000MHz)を目標として、ループフィルタ52からの制御電圧入力の変化に応じて偏倚する周波数信号を出力端子51cにおいて出力する。また、バイアス電流切替端子51dに入力されるモード指定信号SSに応じてバイアス電流が制御される。
【0022】
ループフィルタ52は、帰還ループのフィルタであり、チャージポンプ53からの入力信号を直流化して出力するローパスフィルタである。チャージポンプ53は、位相比較器54からの入力電圧の電圧値を上昇させる回路である。位相比較器54は、基準クロック入力信号と分周器56からの入力信号との間の位相差を電圧に変換して出力する回路である。基準クロック入力信号は、図示せぬ例えば水晶などの振動子によって生成される信号である。基準クロック入力信号は、例えば1MHzである。
【0023】
プリスケーラ55は、VCO51の差動出力信号の周波数を分周するために分周器56の前段に接続された前置分周器である。分周器56は、プリスケーラ55からの入力信号の周波数を分周して位相比較器54に与える分周器である。以下、プリスケーラ55と分周器56とからなる構成を分周段と称する。分周段の分周比は、モード指定信号SSに応じて切り替えられる。送信モードを指定するモード指定信号SSの場合における分周比は例えば1/2500であり、受信モードを指定するモード指定信号SSの場合における分周比は例えば1/2000である。分周段は、例えば、VCO51の周波数信号の周波数を1/2500とする構成と、1/2000とする構成とを備え、モード指定信号SSに応じてこれらの構成を切り替えることによって分周比を切り替える。
【0024】
なお、プリスケーラ55、分周器56、位相比較器54、チャージポンプ53及びループフィルタ52は、周波数シンセサイザ50の出力信号としてのVCO51の周波数信号の分周信号と基準クロック入力信号との位相差に応じたフィードバック電圧を制御電圧として制御電圧入力端子51bに供給するフィードバック回路を構成している。
【0025】
受信用設定レジスタ61は、受信動作時におけるVCO51の目標周波数を設定するための周波数変更データを保持するレジスタである。送信用設定レジスタ62は、送信動作時におけるVCO51の目標周波数を設定するための周波数変更データを保持するレジスタである。周波数変更データは、VCO51によって生成される周波数信号の目標周波数を送信時と受信時とで切り替えるためのデータである。
【0026】
レジスタ切替スイッチ63は、モード指定信号SSに応じて、受信用設定レジスタ61と送信用設定レジスタ62との間で、VCO51との接続を切り替えるスイッチである。レジスタ切替スイッチ63は、モード指定信号SSが送信モードを指定している場合には送信用設定レジスタ62の側にスイッチ接続し、受信モードを指定している場合には受信用設定レジスタ61の側にスイッチ接続する。モード指定信号SSは、無線通信装置1内の図示せぬ例えばCPUなどの制御回路から供給される。
【0027】
図2は、VCO51の回路図である。トランジスタ71及び72の各々は、例えばnMOS(negative Metal-Oxide-Semiconductor)電界効果トランジスタである。トランジスタ71のソースはコイル73の一端に接続され、トランジスタ72のソースはコイル73の他端に接続されている。トランジスタ71及び72の各々のドレインは電流源74Rに直接接続され、電流源74Lに電流源用スイッチ79を介して接続されている。トランジスタ71のゲートはトランジスタ72のソースに接続され、トランジスタ72のゲートはトランジスタ71のソースに接続されている。コイル73は電源電位に接続されている。
【0028】
コイル73の一端(端子T1)と接地電位との間には可変容量素子75Lが接続され、コイル73の他端(端子T2)と接地電位との間には可変容量素子75Rが接続されている。可変容量素子75L及び75Rの容量値は、制御電圧入力端子51bに入力されるループフィルタ52からの制御電圧に基づいて変更される。
【0029】
また、コイル73の一端(端子T3)と接地電位との間には可変容量素子76Lが接続され、コイル73の他端(端子T4)と接地電位との間には可変容量素子76Rが接続されている。可変容量素子76L及び76Rの容量値は、周波数指定入力端子51aに入力された周波数変更データの内容に基づいて設定される。モード指定信号SSに応じて受信用設定レジスタ61及び送信用設定レジスタ62のいずれか一方が選択され、当該選択された側のレジスタに保持されている周波数変更データが周波数指定入力端子51aに入力される。周波数変更データは、デコーダ77によって例えば二進数の「0101」などのデータにデコードされて可変容量素子76L及び76Rの各々に供給される。
【0030】
電流源用スイッチ79は、バイアス電流切替端子51dに入力されるモード指定信号SSに応じてオン/オフする。送信モードを指定するモード指定信号SSが入力された場合には電流源用スイッチ79はオンし、受信モードを指定するモード指定信号SSが入力された場合には電流源用スイッチ79はオフする。
【0031】
かかる構成により、VCO51は、周波数信号を生成してこれをコイル73の一端に設けられた出力端子51cにおいて出力する。VCO51は、バイアス電流が大となるほど高い周波数で動作できる可変周波数発振器である。第1ミクサ32、電力増幅器45及びプリスケーラ55(図1)には、出力端子51cにおける周波数信号が供給される。図5によって後述する形態のプリスケーラ55を用いる場合、VCO51は、端子51c及び51ccを介して正逆位相の周波数信号をプリスケーラ55に供給する。
【0032】
また、モード指定信号SSに応じて電流源用スイッチ79がオン/オフすることにより、電流源74R及び/又は電流源74Lによって生成されるバイアス電流が制御される。
【0033】
図3は、可変容量素子75Lの構成を示す図である。可変容量ダイオード81は、アノード−カソード間に加えられる電圧に応じて静電容量が変化するダイオード(いわゆるバラクタ)である。可変容量ダイオード81のアノード端にはコンデンサ82及び抵抗83がそれぞれ接続されている。可変容量ダイオード81のアノード端には抵抗83を介してループフィルタ52(図1)からの信号が入力される。ループフィルタ52からの入力信号の電圧値が大きい程、可変容量ダイオード81の容量値は小さくなる。可変容量素子75Lの端子84は、図2における端子T1に接続される。可変容量素子75Rは、可変容量素子75Lと同じ構成であり、端子84は、図2における端子T2に接続される。
【0034】
図4は、可変容量素子76Lの構成を示す図である。トランジスタ91、93、95及び97の各々は、例えばnMOS電界効果トランジスタである。コンデンサ92がトランジスタ91のソースと端子99との間に接続され、コンデンサ94がトランジスタ93のソースと端子99との間に接続され、コンデンサ96がトランジスタ95のソースと端子99との間に接続され、コンデンサ98がトランジスタ97のソースと端子99との間に接続されている。トランジスタ91、93、95及び97の各々のドレインは接地電位に接続されている。トランジスタ91、93、95及び97の各々のゲートには受信用設定レジスタ61に保持されている周波数変更データ及び送信用設定レジスタ62に保持されている周波数変更データのいずれか一方が選択的に入力される。可変容量素子76Lの端子99は、図2における端子T3に接続される。可変容量素子76Rは、可変容量素子76Lと同じ構成であり、端子99は、図2における端子T4に接続される。
【0035】
図5は、プリスケーラ55を構成する一部のラッチ回路100の回路図である。図5の構成は、プリスケーラ55がVCO51の出力端子51c及び51ccから出力周波数信号の供給を受ける場合の構成である。
【0036】
抵抗101及び102の各々の一端は電源電圧に接続されている。抵抗101の他端はトランジスタ103のソースに接続されている。抵抗102の他端はトランジスタ104のソースに接続されている。
【0037】
トランジスタ103のソース側に設けられた端子T5、及びトランジスタ104のソース側に設けられた端子T6の各々からデータが出力される。ラッチ回路100がプリスケーラ55における最終段のラッチ回路である場合には、端子T5から出力されるデータがプリスケーラ55による分周信号として分周器56(図1)に出力される。ラッチ回路100の後段に図示せぬラッチ回路が存在する場合には、端子T5及びT6の各々のデータは当該後段のラッチ回路に出力される。
【0038】
トランジスタ103のゲートはトランジスタ104のソースに接続されている。トランジスタ104のゲートはトランジスタ103のソースに接続されている。トランジスタ105のソースはトランジスタ103のソースに接続されている。トランジスタ106のソースはトランジスタ104のソースに接続されている。トランジスタ105及び106の各々のゲートには図示せぬ前段のラッチからのデータ又は図示せぬ最終段のラッチからのデータが入力される。
【0039】
トランジスタ105及び106の各々のドレインは、トランジスタ107のソースに接続されている。トランジスタ103及び104の各々のドレインは、トランジスタ108のソースに接続されている。トランジスタ107のゲートには、VCO51の出力端子51cからの周波数信号が入力され、トランジスタ108のゲートには、VCO51の出力端子51ccからの周波数信号が入力される。トランジスタ107及び108の各々のドレインは、電流源109Rに直接接続され、且つ電流源切替スイッチ110を介して電流源109Lに接続されている。電流源109R及び109Lは、ラッチ回路100の動作のためのバイアス電流を生成する低電流源である。
【0040】
電流源用スイッチ110は、モード指定信号SSに応じてオン/オフする。送信モードを指定するモード指定信号SSが入力された場合には電流源用スイッチ110はオンし、受信モードを指定するモード指定信号SSが入力された場合には電流源用スイッチ110はオフする。
【0041】
ラッチ回路100は、プリスケーラ55の分周比に応じて複数段直列に接続される。例えば2分周とする場合にはラッチ回路100は2段直列に接続されてDフリップフロップ回路が構成される。この場合、前段のラッチ回路100における端子T5及びT6からの出力データは、後段のラッチ回路100におけるトランジスタ105及び106のゲートに入力される。後段のラッチ回路100における端子T5及びT6からの出力データは、前段のラッチ回路100におけるトランジスタ105及び106のゲートに折り返し入力される。かかるDフリップフロップ回路の接続段数をモード指定信号SSに応じて変更することにより、分周比を変更できる。
【0042】
以下、無線通信装置1の動作について説明する。先ず、無線通信装置1内の図示せぬ例えばCPUなどの制御回路から、送信モードを指定するモード指定信号SSが供給された場合について説明する。
【0043】
図6は、無線通信装置1の構成を送信時における周波数と共に示すブロック図である。アンテナスイッチ20は、送信モードを指定するモード指定信号SSに応じて、スイッチ接続を送信部40及び45の側へ切り替える。VCO51の電流源用スイッチ79(図2)は、バイアス電流切替端子51dに入力されるモード指定信号SSに応じてオンする。プリスケーラ55の電流源用スイッチ100(図5)は、モード指定信号SSに応じてオンする。プリスケーラ55及び分周器56の分周比がモード指定信号SSに応じて切り替えられる。送信時における当該分周比は例えば1/2500である。
【0044】
また、レジスタ切替スイッチ63は、モード指定信号SSに応じて、スイッチ接続を送信用設定レジスタ62の側へ切り替える。ここで、コンデンサ92、94、96及び98の容量値は、それぞれ例えば1pF、2pF、4pF及び8pFである。これらのコンデンサに直列に接続されたトランジスタ91、93、95及び97のオン/オフにより、端子99と接地電位との間の容量値を1〜15pFの範囲で変更できる。
【0045】
送信用設定レジスタ62に保持されている周波数変更データが周波数指定入力端子51aに入力される。周波数変更データは、デコーダ77によって例えば二進数の「1110」にデコードされ、可変容量素子76L(図2)に供給される。可変容量素子76Lのトランジスタ91、93、95及び97(図4)には、論理値「1」、「1」、「1」、「0」がそれぞれ入力される。この場合、トランジスタ91、93及び95はオン、トランジスタ97はオフする。これにより、トランジスタ91、93及び95に直列に接続されているコンデンサ92、94及び96の一端の電位が接地電位となる。コンデンサ92、94及び96がオンした場合、端子99と接地電位との間の容量値は7pFとなる。すなわち、図2のVCO51の端子T3に7pFの容量が接続される。可変容量素子76R(図2)も同様の構成なので、図2のVCO51の端子T4にも7pFの容量が接続される。7pFという比較的小さい容量がコイル73の両端に接続されるので、VCO51の出力周波数信号の目標周波数は比較的高くなる。
【0046】
ループフィルタ52からの入力信号は、図2の可変容量素子75L及び75Rにそれぞれ供給される。可変容量素子75Lの回路は図3に示される。ループフィルタ52からの入力信号は抵抗83(図3)を介して可変容量ダイオード81に供給される。当該入力信号の電圧が比較的大きい場合には、可変容量ダイオード81の容量値は比較的小さくなる。逆に、当該入力信号の電圧が比較的小さい場合には、可変容量ダイオード81の容量値は比較的大きくなる。ループフィルタ52からの入力信号の電圧値は例えば0.5〜1.5Vの間で変動し、可変容量ダイオード81の容量値は例えば1〜3pFの間で変動する。かかる構成により、端子84(図2における端子T1)と接地電位との間に接続される可変容量値が、ループフィルタ52からの入力信号に応じて例えば1〜3pFの間で微調整される。可変容量素子75R(図2)も同様の構成なので、図2のVCO51の端子T2と接地電位との間に接続される可変容量値が微調整される。
【0047】
このように、可変容量素子75L及び75Rは、容量値を例えば1〜15pFの間で変更してVCO51の周波数信号の目標周波数を比較的大きい幅で調整するのに対し、可変容量素子76L及び76Rは、容量値を例えば1〜3pFの間で変更して周波数信号の周波数を微調整する。送信時には上記の如き設定により、周波数シンセサイザ50の出力周波数信号の目標周波数が比較的大きい値(例えば2500MHz)に調整されると共に、ループフィルタ52からの入力信号に応じて微調整される。
【0048】
また、モード指定信号SSに応じてVCO51に含まれる電流源切替スイッチ79(図2)がオンし、電流源74Lが接続される。また、モード指定信号SSに応じて、プリスケーラ55を構成するラッチ回路100に含まれる電流源切替スイッチ110(図5)がオンし、電流源109Lが接続される。上記の通り、可変容量素子75L〜76Rにより、送信時におけるVCO51の発振する周波数は比較的大きくなる。周波数信号の周波数が大きい程、大きい消費電力が必要になるので、電流源74L及び109Lを接続して送信時における供給電流を比較的大きくするのである。
【0049】
周波数シンセサイザ50の出力周波数信号は、変調部40によって変調され、電力増幅器45に供給される。電力増幅器45は、変調信号を増幅し、これをアンテナスイッチ20を介してアンテナ10から無線送信する。
【0050】
次に、無線通信装置1内の図示せぬ例えばCPUなどの制御回路から、受信モードを指定するモード指定信号SSが供給された場合について説明する。
【0051】
図7は、無線通信装置1の構成を受信時における周波数と共に示すブロック図である。アンテナスイッチ20は、受信モードを指定するモード指定信号SSに応じて、スイッチ接続を受信部31〜36の側へ切り替える。VCO51の電流源用スイッチ79(図2)は、バイアス電流切替端子51dに入力されるモード指定信号SSに応じてオフする。プリスケーラ55の電流源用スイッチ100(図5)は、モード指定信号SSに応じてオフする。プリスケーラ55及び分周器56の分周比がモード指定信号SSに応じて切り替えられる。受信時における当該分周比は例えば1/2000である。また、レジスタ切替スイッチ63は、モード指定信号SSに応じて、スイッチ接続を受信用設定レジスタ61の側へ切り替える。
【0052】
受信用設定レジスタ61に保持されている周波数変更データが周波数指定入力端子51aに入力される。周波数変更データは、デコーダ77によって例えば二進数の「0111」にデコードされ、可変容量素子76L(図2)に供給される。可変容量素子76Lのトランジスタ91、93、95及び97(図4)には、論理値「0」、「1」、「1」、「1」がそれぞれ入力される。この場合、トランジスタ91はオフ、トランジスタ93、95及び97はオンする。これにより、トランジスタ93、95及び97に直列に接続されているコンデンサ94、96及び98の一端が接地電位となる。コンデンサ94、96及び98の容量値がそれぞれ例えば2pF、4pF及び8pFである場合、端子99と接地電位との間の容量値は14pFとなる。すなわち、図2のVCO51の端子T3に14pFの容量が接続される。可変容量素子76R(図2)も同様の構成なので、図2のVCO51の端子T4にも14pFの容量が接続される。送信時の容量(上記の例では7pF)よりも大きい例えば14pFの容量がコイル73の両端に接続されるので、VCO51の出力周波数信号の目標周波数は送信時よりも小さくなる。
【0053】
ループフィルタ52からの入力信号は、図2の可変容量素子75L及び75Rにそれぞれ供給される。可変容量素子75Lの回路は図3に示される。可変容量素子75Lは送信時と同様に動作する。ループフィルタ52からの入力信号の電圧値は例えば0.5〜1.5Vの間で変動し、可変容量ダイオード81の容量値は例えば1〜3pFの間で変動する。端子84(図2における端子T1)と接地電位との間に接続される可変容量値が、ループフィルタ52からの入力信号に応じて例えば1〜3pFの間で微調整される。可変容量素子75R(図2)も同様の構成なので、図2のVCO51の端子T2と接地電位との間に接続される可変容量値が微調整される。
【0054】
受信時には上記の如き設定により、周波数シンセサイザ50の出力周波数信号の目標周波数が比較的小さい値(例えば2000MHz)に調整されると共に、ループフィルタ52からの入力信号に応じて微調整される。
【0055】
また、モード指定信号SSに応じて、VCO51に含まれる電流源切替スイッチ79(図2)がオフし、電流源74Lが切り離される。また、モード指定信号SSに応じて、プリスケーラ55を構成するラッチ回路100に含まれる電流源切替スイッチ110(図5)がオフし、電流源109Lが切り離される。上記の通り、可変容量素子75L〜76Rにより、受信時におけるVCO51の周波数信号の目標周波数は比較的小さくなる。周波数信号の周波数が小さい程、消費電力も小さくすむので、電流源74L及び109Lを切り離して受信時における消費電力を受信時よりも低減するのである。
【0056】
アンテナ10によって受信された無線受信信号は、アンテナスイッチ20を介して受信信号増幅器31に供給される。無線受信信号の周波数は例えば2500MHzである。受信信号増幅器31によって増幅された無線受信信号(以下、増幅受信信号と称する)は第1ミクサ32に供給される。第1ミクサ32には、周波数シンセサイザ50の出力周波数信号も供給される。当該出力周波数信号の周波数は例えば2000MHzである。
【0057】
第1ミクサ32は、受信信号増幅器31からの増幅受信信号と、周波数シンセサイザ50の出力周波数信号とを混合し、これらの信号の周波数の差である周波数500MHzを含む信号を出力する。
【0058】
第2ミクサ33には、第1ミクサ32の出力信号が供給される。また、第2ミクサ33には、発振器36の出力信号も供給される。当該出力信号の周波数は例えば498MHzである。第2ミクサ33は、第1ミクサ32の出力信号と、発振器36の出力信号とを混合し、これらの信号の周波数の差である周波数2MHzを含む信号を出力する。
【0059】
IF回路34は、第2ミクサ33の出力信号に対してフィルタ処理及び信号増幅処理を施す。復調部35は、IF回路34によってフィルタ処理等を施された信号に対して復調処理を施して復調信号を出力する。
【0060】
このように、本実施例による無線通信装置1は、2つのミクサ(すなわち第1ミクサ32及び第2ミクサ33)を備え、アンテナ10によって受信された無線信号の周波数(例えば2500MHz)を段階的に減じて所望の周波数(例えば2MHz)の復調信号を生成する。発振器36の信号に基づいて周波数を減ずる後段のミクサ(すなわち第2ミクサ33)を備えたことにより、受信動作時における前段のミクサ(すなわち第1ミクサ32)への周波数シンセサイザ50の出力信号の周波数を格段に小さくすることができる(例えば2000MHz)。
【0061】
仮に、本実施例とは異なり第1ミクサ32のみを備える構成の場合に、無線信号の周波数2500MHzを所望の周波数2MHzの信号を生成するには、受信動作時における周波数シンセサイザ50の出力周波数信号の周波数を2498MHzにしなければならず、出力周波数信号の周波数を小さくできない。周波数シンセサイザの消費電力はその周波数が高いほど大きくなると考えられ、送信時と受信時ともにほぼ同じ周波数を用いる従来の無線通信装置の場合には、消費電力も送信時と受信時とでほぼ同じとなる。これに対して、本実施例による無線通信装置1は、2つのミクサを備えることにより、受信動作時における周波数シンセサイザ50の出力信号の周波数を格段に小さくすることができる。
【0062】
また、本実施例による無線通信装置1は、VCO51に可変容量素子75L〜76Rを備え、受信用設定レジスタ61及び送信用設定レジスタ62の各々が保持する周波数変更データの選択的な入力により、受信時におけるVCO51の周波数信号の目標周波数を送信時における目標周波数よりも小さくするとともに、受信モードを指定するモード指定信号SSに応じて受信時に電流源74Lを切り離すことによって周波数シンセサイザ50の消費電力を低減する。更に、プリスケーラ55を構成するラッチ回路100の電流源109Lについても、受信時に電流源74Lを切り離すことによって周波数シンセサイザ50の消費電力を低減する。このように、受信時における周波数シンセサイザ50の出力周波数信号の目標周波数を小さくし、それに伴って周波数シンセサイザ50の消費電力を小さくすることができる。
【0063】
また、一般に無線通信装置においては受信動作時間が送信動作時間よりも長いが、本実施例による無線通信装置1は受信動作時における周波数シンセサイザ50の消費電力を送信時よりも低減できるので、周波数シンセサイザ50の全体の消費電力を効率的に低減させることができる。
【0064】
また、一般に例えばボタン電池などで動作する近距離用の無線通信装置の場合、送信時の消費電力に対して、受信時に用いられる例えば復調部などの消費電力は比較的大きい。本実施例による無線通信装置1は、受信動作時における周波数シンセサイザ50の消費電力を低減させるので受信動作時における電圧降下量も低減すると考えられる。それ故、無線通信装置に用いられる電池を小型化しても、電圧降下量による誤動作を引き起こさないという効果も奏する。
<変形例>
図8は、発振器36の代わりに4分周器37を備えた無線通信装置1の構成を受信時における周波数と共に示すブロック図である。
【0065】
当該構成においては、プリスケーラ55及び分周器56の分周比や、受信用設定レジスタ61の周波数変更データ及び可変容量素子76L(図2)のコンデンサ92、94、96及び98(図4)の容量値を調整して、周波数シンセサイザ50の出力信号の周波数を例えば1998.4MHzとする。
【0066】
第1ミクサ32は、受信信号増幅器31の出力信号と、周波数シンセサイザ50の出力周波数信号とを混合して、これらの信号の周波数の差である周波数501.6MHzの信号を出力する。
【0067】
4分周器37は、周波数シンセサイザ50の出力信号の周波数1998.4MHzの1/4の周波数499.6MHzの分周信号を出力する。
【0068】
第2ミクサ33は、第1ミクサ32からの出力信号と、発振器36の出力分周信号とを混合して、これらの信号の周波数の差である周波数周波数2MHzの信号を出力する。
【0069】
IF回路34は第2ミクサ33の出力信号に対してフィルタ処理等を施し、復調部35は当該フィルタ処理等を施された信号に対して復調処理を施して復調信号を出力する。
【0070】
このように、4分周器37によって第2ミクサ33への信号を生成するので、発振器36を備えることなく、所望の例えば周波数2MHzの復調信号を生成できる。
【符号の説明】
【0071】
1 無線通信装置
10 アンテナ
20 アンテナスイッチ
31 受信信号増幅器(増幅段)
32 第1ミクサ
33 第2ミクサ
34 IF回路
35 復調部(復調段)
36 発振器
37 4分周器
40 変調部
45 電力増幅器
50 周波数シンセサイザ
51 VCO
52 ループフィルタ
53 チャージポンプ
54 位相比較器
55 プリスケーラ
56 分周器
61 受信用設定レジスタ(設定データ保持部)
62 送信用設定レジスタ(設定データ保持部)
63 レジスタ切替スイッチ
71、72 トランジスタ
73 コイル
74R、74L 電流源
75L、75R、76L、76R 可変容量素子
77 デコーダ
79 電流源切替スイッチ
81 可変容量ダイオード
82 コンデンサ
83 抵抗
92、94、96、98 コンデンサ
91、93、95、97 トランジスタ
100 ラッチ回路
101、102 抵抗
103〜108 トランジスタ
109R、109L 電流源
110 電流源切替スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信モード及び送信モードのいずれかのモード指定に応じて定まる周波数信号を生成する周波数シンセサイザと、
前記周波数信号を被変調信号とする送信信号を無線送信する送信部と、
前記周波数信号を用いて無線信号を受信する受信部と、を含む無線通信装置であって、
前記受信部は、
受信した前記無線信号に基づく信号と前記周波数信号とを混合する第1ミクサと、
前記第1ミクサの出力とローカル信号とを混合する第2ミクサと、
前記第2ミクサの出力を復調して復調信号を生成する復調段と、を含み、
前記周波数シンセサイザは、
制御入力電圧の変動に応じた周波数の周波数信号を生成するVCOと、
前記VCOの出力周波数信号を分周して得られた信号と基準クロック信号との位相差に応じた電圧を前記制御入力電圧とするフィードバック回路と、からなり、
前記VCOは、
バイアス電流が大となるほど高い周波数で動作可能となる可変周波数発振器であって、前記バイアス電流が前記モード指定に応じて制御されることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記フィードバック回路は、前記モード指定に応じて分周比が変化する分周段を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記分周段は、前記モード指定によって定まる分周比にて分周動作をなすプリスケーラと、前記プリスケーラの分周出力を前記モード指定によって定まる分周比にて分周する分周器とからなることを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
高周波数設定データ及び低周波数設定データを保持する設定データ保持部を有し、
前記設定データ保持部は、前記モード指定に応じて前記高周波数設定データ及び低周波数設定データを択一的に前記VCOに供給し、
前記VCOは、前記設定データの内容に応じた高周波数又は低周波数の周波数信号を生成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記プリスケーラを構成するラッチ回路へのバイアス電流が前記モード指定に応じて制御されることを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記ローカル信号は発振器によって生成されたオシレータ信号であることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記ローカル信号は前記周波数信号を分周して得られた分周信号であることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−120023(P2012−120023A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269275(P2010−269275)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(308033711)ラピスセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】