説明

熱収縮性ポリエステル系フィルムおよびその製造方法、熱収縮性ラベル

【課題】ラベル化した際の、ミシン目カット性、接着部の強度、耐衝撃性、ボトル装着時の意匠性、ボトル装着後のラベル同士の滑り性の全てに優れる熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも片側最外層にシリコーン成分を含有し、95℃±0.5℃の温水中に10秒間浸漬後の一方向(y方向)の収縮率が20%以上85%未満であり、それと直交する方向(x方向)の収縮率が0%以上10%以下であり、厚み方向(z方向)の屈折率が1.5400未満であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルムに関し、さらに詳しくはラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性フィルム、特にボトルの胴部のラベル用の熱収縮性フィルムとしては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等からなるフィルムが主として用いられている。しかし、ポリ塩化ビニルについては、近年、廃棄した塩化ビニル製品の焼却時の塩素系ガスの発生が問題となり、一方、ポリスチレンについては、ポリスチレンフィルム上への印刷が困難である等の問題がある。さらに、ペットボトルの回収リサイクルにあたっては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の樹脂のラベルは、廃棄時に分別する必要がある。このため、これらの問題の無いポリエステル系の熱収縮性フィルムが注目を集めている。
【0003】
ボトル用ラベルとして用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムには、熱収縮性の他に、ラベル化した際の、ミシン目カット性、接着部の強度、耐衝撃性、ボトル装着時の意匠性、また、ボトル装着後のラベル同士の滑り性が求められている。
【0004】
ミシン目カット性は、ボトル用ラベルに開封用ミシン目を設ける場合があることから、要求されるものである。商品のボトルが飲料用ガラス瓶の場合、冷蔵されるのが通常である。この場合、ラベル開封が低温度で行われるため、開封不良が発生しやすいという問題があり、ミシン目カット性に対する要求は高い。特許文献1では、ミシン目カット性を向上するために、熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造工程において、延伸時の温度条件の最適化が行われている。この方法により、得られる熱収縮性ポリエステル系フィルムのミシン目カット性は、いくらか改善されるものの、まだ不十分である。
【0005】
ミシン目カット性に優れた熱収縮性ポリエステル系フィルムとしては、特許文献2に所定の温湯収縮率と破断伸度を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムが開示されている。しかし、この熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ペットボトルにラベルとして装着した際、ペットボトルが落下した場合に、衝撃でラベルの接着部が剥がれるなど、ラベル化時の接着部の強度に劣るという問題があった。
【0006】
耐衝撃性については、公知の熱収縮性フィルムは、横方向にのみ3〜5倍程度の延伸を行うことが多く、横方向に裂けやすいため、フィルムラベルをガラス瓶に装着して複数箱詰めし、長距離輸送した場合に、ガラス瓶同士の衝撃でフィルムが横方向に裂けるという問題があった。また、横延伸のみを行うという製造方法は、生産性が低いという問題があった。それらを改善する方策として、横方向の延伸だけではなく縦方向の延伸も行うことで、フィルム内の縦方向の分子配向も存在させて、張力によるフィルムの裂けを抑制する手法があり、この縦延伸を行うと、縦方向の生産速度も向上する。しかしながら、公知のようにポリマーを単純にブレンドして縦方向の延伸を行うと、縦方向の収縮が生じるため、特に角型のボトルに装着した場合に意匠性が悪くなるという問題があった。
【0007】
滑り性については、自動販売機で販売される飲料などにおいて、ポリエステル系フィルムをラベルとする場合、ラベルの滑り性が不足し、商品が通路を通過せず出口に到達しなかったり、商品の多重排出といった詰りの問題が発生することがあった。また、加熱販売される場合、滑り性が低下するに留まらずラベル同士のブロッキングが発生する問題もあった。特許文献3ではフィルム表面に滑り性の良好な層を積層するという方法が開示されているが、フィルムへの後加工によるものであり、コストの問題が残されていた。
【0008】
以上のように、ボトル用ラベル用途において、ラベル化した際の、ミシン目カット性、接着部の強度、耐衝撃性、ボトル装着時の意匠性、ボトル装着後のラベル同士の滑り性の全てに優れる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、これまでに得られていなかった。
【特許文献1】特開2003−268131号公報
【特許文献2】特開平11−207818号公報
【特許文献3】特開2002−196677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、ラベル化した際の、ミシン目カット性、接着部の強度、耐衝撃性、ボトル装着時の意匠性、ボトル装着後のラベル同士の滑り性の全てに優れる熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも片側最外層がシリコーン成分を含有し、95℃±0.5℃の温水中に10秒間浸漬後の一方向(y方向)の収縮率が20%以上85%未満であり、それと直交する方向(x方向)の収縮率が0%以上10%以下であり、厚み方向(z方向)の屈折率が1.5400未満であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムである。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ポリエステル成分Mを含むX層とポリエステル成分Nを含むY層とが、交互に積層された構造を有することが好ましい。また、X層に含まれるポリエステル成分Mが、ポリエステルA70〜99質量%およびポリエステルB1〜30質量%を含み、Y層に含まれるポリエステル成分Nが、ポリエステルB70〜99質量%およびポリエステルA1〜30質量%を含むことが好ましい。さらに、X層とY層とが、合わせて500層以上交互に積層された構造を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、シリコーン成分含有面同士の摩擦係数がμd≦0.27であり、95℃±0.5℃の温水中に10秒間浸漬後のy方向の熱収縮率が50%以上85%未満であり、一方の面と他方の面との溶剤接着強度が2.0N/15mm以上であり、引裂伝播強度が2.0N以下であり、60℃±1℃の温水中に30分間浸漬後の破断強度が20MPa以上であることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の熱収縮性熱ポリエステル系フィルムは溶融押出された未延伸ポリエステル系フィルムまたは一軸延伸ポリエステル系フィルムの少なくとも片面に、シリコーン成分、及びバインダー樹脂成分を含有する塗布液を塗布した後、該塗布フィルムを更に二軸延伸、又は、一軸延伸することにより得られる、少なくとも片面にシリコーン成分を含有する層を 0.002〜0.5g/m積層することが好ましい。
【0013】
さらに、本発明のもう1つの形態は、上記の熱収縮性ポリエステル系フィルムより作成されてなる熱収縮性ラベルである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ラベル化した際の、ミシン目カット性、接着部の強度、耐衝撃性、ボトル装着時の意匠性、ボトル装着後のラベル同士の滑り性の全てに優れる熱収縮性ポリエステル系フィルムが提供される。本発明のフィルムを用いたラベルは、ミシン目カット性に優れるため、フルボトルラベルとした場合でも、低温時においてさえラベルの引き剥がしが容易である。また、自動販売機でペットボトル入り飲料の商品が取出口に落下した際のラベルの破損の問題を引き起こすことがほとんどない。さらに、フィルムラベルをガラス瓶に装着して複数箱詰めし、長距離輸送した場合に、ガラス瓶同士の衝撃でフィルムが横方向に避けるという問題も減少する。更に、容器同士の摩擦を低く抑えることができるため、自動販売機内での商品の詰りを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、少なくともフィルム片面同士の動摩擦係数が0.27以下で、95℃±0.5℃の温水中に10秒間浸漬後の一方向(y方向)の収縮率が20%以上85%未満であり、それと直交する方向(x方向)の収縮率が0%以上10%以下であり、厚み方向(z方向)の屈折率が1.5400未満であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムである。
【0016】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、95℃±0.5℃の温水に無荷重状態で10秒間浸漬して処理した際の収縮率(温水熱収縮率)が、一方向(y方向)において20%以上であるという特性を有する。該熱収縮率が20%未満では、熱収縮力の不足により、ラベルを容器にうまく装着できない場合がでてくる。該熱収縮率は、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。特に該熱収縮率が50%以上のときには、ボトルの肩部等、装着が難しい部分でも、ラベルの装着が極めて容易に行える。一方、該熱収縮率の上限に関しては、85%未満であり、好ましくは82%以下、より好ましくは80%以下である。特に該熱収縮率が85%未満であれば、ボトルに被せて加熱収縮させる際の、ラベルの収縮力が大きすぎることによるラベルの飛び上がりの発生が極めて抑制される。
【0017】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、95℃±0.5℃の温水に無荷重状態で10秒間浸漬して処理した際の収縮率(温水熱収縮率)が、y方向に直交する方向(x方向)において、0%以上10%以下であり、好ましくは0%以上8%以下であり、より好ましくは0%以上5%以下である。該熱収縮率が10%を超えると、フィルムをラベル化し、熱収縮させてボトルに装着した際に、縦引けが起こるおそれがある。該熱収縮率が0%より小さいと、逆にフィルムラベルが縦方向に伸びてしまうために、かえって意匠性が悪くなる。
【0018】
なお、ここで温水熱収縮率は、浸漬処理前後でフィルムの長さを測定し、(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ)×100(%)の式により求められる値である。また、熱収縮率を測定する際には、当該フィルムに余計な熱履歴を与えないようにするために、所定温度の温水に所定時間浸漬後は、25℃±0.5℃の水にフィルムを浸漬してフィルムを冷却するようにすべきである。
【0019】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、厚み方向(z方向)の屈折率が、1.5400未満であり、より好ましくは1.5390未満である。屈折率は、ポリエステル系フィルムの化学組成、構造、およびポリエステル分子の配向の程度(これらのうちでは特にポリエステル分子の配向の程度)により変わる値であり、本発明は、ミシン目カット性および接着部の強度に優れる熱収縮性ポリエステル系フィルムの化学組成、構造、およびポリエステル分子の配向の程度が、厚み方向の屈折率により表現できることを見出したものである。該厚み方向の屈折率の値は、通常のポリエステルフィルムのものよりも低い値であり、厚み方向の屈折率が低いポリエステルフィルムは、ポリエステル分子の配向が厚み方向においてランダムであるため、ファンデルワールス力が弱く、分子の凝集力が弱くなるために、フィルムの引き裂きやすさが向上するものと考えられる。当該屈折率の下限は、ポリエステル系フィルムが発現できる屈折率の限界値であり、1.4000程度であると考えられる。ポリエステル系フィルムの工業的な生産性の観点から、下限は好ましくは1.4500であり、より好ましくは1.5000である。
【0020】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、少なくともフィルムの片面同士の動摩擦係数がμd≦0.27であり、より好ましくはμd≦0.25であり、さらに好ましくはμd≦0.22である。摩擦係数がこの範囲を超えると、フィルムをラベルとしてボトルに装着した場合、ラベルの滑り性が不足し、自動販売機での詰り、すなわち商品が通路を通過せず出口に到達しなかったり、商品の多重排出といった問題が発生しやすくなる。また、加温販売される場合、滑り性が低下するに留まらずラベル同士のブロッキングが発生しやすい。
【0021】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、一方の面と他方の面との溶剤接着強度が2.0N/15mm以上であり、引裂伝播強度が2.0N以下であり、60℃の温水中に30分間浸漬後の破断強度が20MPa以上であることが好ましい。このような特性を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ミシン目カット性およびラベル化時の接着部の強度が、特に優れる。
【0022】
本発明において、溶剤接着強度とは、次のようにして求められる値である。
フィルムの片端の片面の端縁から少し内側に1,3−ジオキソランを2±1mm幅で塗布し(塗布量:3.0±0.3g/m2)、直ちにフィルムを丸めて端部を重ね合わせて接着し、チューブに加工する(加工速度:10mm/分)。このチューブを接着箇所が中央になるように切り開き、さらに、接着箇所が中央になるように長さ100mm、幅15mmのフィルム状試験片(n=10)を切り出す。このフィルム状試験片を、チャック間距離を50mmにセットした引張試験機に、溶剤接着部がチャック同士の中央に位置するようにセットして、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で引張試験を行い、接着部分の剥離強度を測定する。この剥離強度が溶剤接着強度である。
【0023】
本発明においては、溶剤接着強度が2.0N/15mm以上であることが好ましいが、2.5〜20N/15mmであることがより好ましく、2.8〜10N/15mmであることが特に好ましい。
【0024】
本発明において、引裂伝播強度とは、JIS K7128−2(1998年)に基づいて、予め85℃で10%収縮させたフィルムを縦51mm×横64mmに裁断し、軽荷重引裂試験機を用いて測定して得られる値をいう。
【0025】
本発明においては、引裂伝播強度が2.0N以下であることが好ましいが、0.2〜1.9Nであることがより好ましく、0.5〜1.8Nであることがより特に好ましい。
【0026】
本発明において、破断強度とは、次のようにして求められる値である。
折り径87.5mm×ラベル長さ120mmのフィルムラベルを、250mLのスチール缶(外径53mm、高さ133mm)に被せ、80℃の温湯に10秒間浸漬して、ラベルを缶に収縮装着する(約5%収縮)。ラベルが装着されたスチール缶を、すぐに60℃±1℃の温水中に移し、30分間浸漬させる。当該スチール缶のラベルからサンプルを切り出し、JIS−K−7127(1999年)(試験片はタイプ2とする。ただし、チャック間距離:20mm、引張り速度:200mm/分)に準じて熱処理前のフィルムの最大収縮方向と直交する方向(すなわちx方向)についての引張試験を行う。試験片のサイズは、長さ100mm(x方向)、幅15mmとし、試験条件は、チャック間距離20mm、温度23℃、引張速度200mm/分とする。試験中に破断したときの強度を破断強度とする。
【0027】
本発明においては、60℃±1℃の温水中に30分間浸漬後の破断強度が20MPa以上であることが好ましいが、30〜200MPaであることがより好ましく、40〜150MPaであることが特に好ましい。
【0028】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みとしては、5〜100μmが好ましく、20〜50μmがより好ましい。
【0029】
本発明において、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記の95℃±0.5℃の温水中に10秒間浸漬後のy方向およびx方向の収縮率、ならびにz方向の屈折率が上記の範囲内であれば、具体的なフィルムの化学組成、フィルムの構造は特に制限されない。また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法については、特に制限はない。
【0030】
上記の熱収縮率と屈折率を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法の一例としては、ポリエステル成分Mを含むX層とポリエステル成分Nを含むY層とが、交互に積層された構造を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムを、適切な延伸条件で延伸する方法が挙げられる。
【0031】
このポリエステル成分Mを含むX層とポリエステル成分Nを含むY層とが、交互に積層された構造を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムは、好ましくは500層以上となる層の各々が、各層を構成するポリエステル成分個々の性質を有しているために、2つのポリエステル成分を混合して製造したフィルムでは得られないような特性を有し、上記のような低い屈折率を達成できる。その結果、ミシン目カット性、接着部の強度等に特に優れるフィルムとなる。
【0032】
まず、ポリエステル成分Mを含むX層とポリエステル成分Nを含むY層とが、交互に積層された構造を有するポリエステル系フィルムについて具体的に説明する。
【0033】
ポリエステル成分MとNは、異なる熱特性を有するものであれば、任意の組合せで本発明の目的に合致するよう選択することができる。ポリエステル成分MとNのガラス転移温度の差が3℃以上100℃以下であって結晶融解熱量の差が5J/g以上100J/g以下であることが好ましい。また、ポリエステル成分Mは、DSCで測定されるガラス転移温度が−50℃以上60℃未満であって結晶融解熱量が5J/g以上100J/g以下である結晶性ポリエステル成分であり、ポリエステル成分Nは、ガラス転移温度が60℃以上150℃以下であって結晶融解熱量が0J/g以上3J/g以下である実質的に非晶質のポリエステル成分であることがより好ましい。原料となるポリエステル成分MおよびNは、ホモポリマー、コポリマーのいずれにより構成されていても良く、また2種類以上の任意のポリエステルを含むポリエステル組成物であってもよい。
【0034】
ポリエステル成分MとNの好ましい組み合わせとしては、ポリエステル成分Mが、ポリエステルA70〜99質量%およびポリエステルB1〜30質量%を含み、ポリエステル成分Nが、ポリエステルB70〜99質量%およびポリエステルA1〜30質量%を含むことが好ましい。また、ポリエステル成分Mが、ポリエステルA73〜97質量%およびポリエステルB3〜27質量%を含み、ポリエステル成分Nが、ポリエステルB73〜97質量%およびポリエステルA3〜27質量%を含むことがより好ましい。さらに、ポリエステル成分Mが、ポリエステルA75〜94質量%およびポリエステルB6〜25質量%を含み、ポリエステル成分Nが、ポリエステルB75〜94質量%およびポリエステルA6〜25質量%を含むことが最も好ましい。
【0035】
ポリエステル成分MおよびNは、質量比(ポリエステル成分M/N)で、97/3〜3/97で使用することが好ましい。質量比がこの範囲を外れると、層構造が形成されにくくなり、95℃条件での50%以上の熱収縮率と2.0N以下の引裂伝播強度とを同時に達成するのが困難となるおそれがある。
さらに、ポリエステル成分MおよびNは、質量比(ポリエステル成分M/N)で、90/10〜10/90で使用することがより好ましく、85/15〜60/40又は40/60〜15/85で使用することが最も好ましい。
【0036】
ここで、ポリエステルAとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリペンタメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等の結晶性ポリエステルを用いることができる。また、これらをベースにして、後述の酸成分かつ/またはグリコール成分を、酸成分かつ/またはグリコール成分100モル%中10モル%以下共重合したものを使用してもよい。さらに、ポリエチレンテレフタレート(PET)をベースにして、ダイマー酸を10モル%以下共重合したもの(PET−D)や、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)にイソフタル酸を10モル%以下共重合したものも用いることができる。より好ましいものとしては、PBT、PTTおよびPET−Dである。
【0037】
ポリエステルBとしては、例えば、酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールからなるポリエステルをベースとして、酸成分かつ/またはグリコール成分100モル%中5モル%以上、好ましくは6モル%以上40モル%未満の異なるジカルボン酸成分かつ/またはグリコール成分を共重合したものを用いることができる。具体的なモノマー成分としては、例えば、ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。グリコール成分としては、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、芳香族ジオール等が挙げられる。
ポリエステルBとして好ましくは、酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールからなるポリエステルをベースとして、7モル%以上35モル%以下のネオペンチルグリコールかつ/または1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステルである。
【0038】
当該熱収縮性ポリエステル系フィルムは、X層とY層が交互に積層された構造を有するが、積層されるX層およびY層の数としては、X層とY層との合計で500以上であることが好ましく、より好ましくは1000〜10万であり、最も好ましくは2000〜2万である。X層とY層との合計が500層以上の場合には、ミシン目カット性が特に優れたものとなる。
なお、熱収縮性ポリエステル系フィルムの最外層は、X層またはY層のいずれであってもよい。
【0039】
X層およびY層には、必要に応じ、従来公知の添加剤、例えば、有機粒子(例、架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、シリコーン粒子等)、無機粒子(例、シリカ、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛等)、滑剤、安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、静電防止剤、紫外線吸収剤等が含有されていてもよい。
【0040】
本発明で用いる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、温度275℃における溶融比抵抗値が0.70×108Ω・cm以下であることが好ましい。このようなフィルムを用いると、以下に詳細に説明するように、フィルム厚みの均一性を高めることができ、フィルムへの印刷性や、フィルムを容器に装着可能な形態に加工する際の加工性(安定加工性)を高めることができる。
【0041】
すなわち本発明では、押出機から溶融押し出ししたフィルムを導電性冷却ロール(キャスティングロールなど)で冷却するに際して、前記押出機とキャスティングロールの間に電極を配設し、電極とキャスティングロールとの間に電圧を印加し(すなわち、前記電極からフィルムに電気を与え)、静電気的にフィルムをロールに密着させている。溶融比抵抗値が小さいと、フィルムとロールとの密着性(静電密着性)を高めることができる。ロールへの静電密着性が低いと、キャスティングした未延伸フィルム原反の厚みが不均一化し、この未延伸フィルムを延伸した延伸フィルムにおいては厚みの不均一性がより拡大されてしまうのに対して、静電密着性が十分に高い場合には、延伸フィルムにおいても厚みを均一化できる。
【0042】
フィルム厚みの均一性を高めると、複数の色を重ね合わせる多色印刷をフィルムに施す際に、色ズレを防止でき印刷性を高めることができる。
【0043】
次に、X層とY層とが交互に積層された構造を有するポリエステル系フィルムの製造方法を含め、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法について説明する。本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法には特に制限はないが、例えば、ポリエステルA70〜99質量%およびポリエステルB1〜30質量%を含むポリエステル成分M、およびポリエステルB70〜99質量%およびポリエステルA1〜30質量%を含むポリエステル成分Nをそれぞれ別々の押出機EおよびFに投入して溶融し、溶融状態のポリエステル成分MおよびNを積層装置に投入してポリエステル成分MおよびNの積層体を得、積層体が積層装置から吐出させ、冷却ロールに押出して未延伸シートを得、該未延伸シートを60℃以上120℃以下で3.0倍以上6.0倍以下横方向に延伸し、横方向の延伸の前または後に、50℃以上120℃以下で1.01倍以上3.0倍以下に縦方向に延伸する方法によって得ることができる。
【0044】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、フィルムの少なくとも片面に易滑層を熱収縮性ポリエステルフィルム表面に積層することが好ましい実施形態である。
上記易滑層としてシリコーン成分及び樹脂成分を含有するものが推奨される。
シリコーン成分とは、オルガノシロキサン類をいい、油、ゴム、樹脂などの性状をもつものがあり、それぞれシリコーン油、シリコーンゴム、シリコーン樹脂と呼ばれる。撥水作用、潤滑作用、離型作用などを有するため、フィルム表層として積層した際、表面の摩擦を低下させるのに有効であり、また、その離型性によりフィルム同士のブロッキングを防止する効果が得られる。更に、飲料容器ラベルとして使用する際には蒸気や熱風を利用して収縮、装着することが多く、耐水性の低い易滑層であると上記を使用した収縮処理で滑り性が著しく低下してしまうが、シリコーンの撥水性の効果により、蒸気での処理後も良好な滑り性を保つことができる。なかでも特にシリコーン樹脂、シリコーン共重合体が推奨される。シリコーン樹脂とはオルガノポリシロキサンが3次元的な網状構造をもつものをさし、ポリエステル系フィルム表面に易滑層として積層した後ロールとして巻き取った際、接触したフィルム裏面への転写が起こり難い。また、飲料ラベルとして使用する場合、印刷加工が施されるが、その際の印刷性が良好である。更に、有機基としてメチル基を有するものは耐熱性に優れ、ホット飲料容器のラベルとしての使用にも適することから特に推奨される。
含有量としては易滑層中の存在量として10〜80重量%が好ましく、特に好ましくは
20〜70%である。存在量が10重量%未満では滑り性の改善効果が小さく、80重量%を超えると、塗布層成分の転写が起こりやすくなる。
【0045】
また、シリコーンとその他の滑剤とを併用しても良く、併用する滑剤としてはパラフィンワックス、マイクロワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、エチレンアクリル系ワックス、ステアリン酸、ベヘニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、硬化ヒマシ油、ステアリン酸ステアリル、シロキサン、高級アルコール系高分子、ステアリルアルコール、ステアリアン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉛 等を添加することが好ましい。中でも、低分子量ポリエチレンワックスの添加は層表面を平滑にすることによるスティック防止効果から滑性の向上が期待できる。
また、シリカ、チタニア、マイカ、タルク、炭酸カルシウム等の無機粒子、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、スチレンージビニルベンゼン系、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミドイミド、ベンゾグアナミン等の有機粒子、あるいはこれらの表面処理品等を添加することにより更に滑り性を向上させることができるが、表面凹凸の生成などによりフィルムの透明性が低下する傾向にあるため、透明性の要求に応じて添加量を適宜調整することが推奨される。
【0046】
樹脂成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、メラミン系樹脂、あるいはその共重合体ないし変性樹脂、また、熱、光エネルギーによる硬化性をもつものなどがあるが、特に、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、あるいはその共重合体は滑剤と組み合わせることで良好な滑性を示す他、チューブ加工において溶剤での接着も可能であるため推奨される。更に、安全面、環境対応という観点から、水分散系のものを使用することが好ましい。この樹脂成分はバインダーとしての効果を持ち、易滑層のフィルムとの密着性を向上する他、易滑層積層の後にフィルムを延伸する場合において、平滑な表面とするための延伸助剤としての働きも有する。更に、延伸された場合、表層を強靭にすることにも効果がある。
【0047】
易滑層の形成方法としては、易滑樹脂を溶融押し出しすることで表層に積層する方法や、フィルム製膜工程中の易滑塗布液の塗布(インラインコート)、フィルム製膜後の易滑塗布液の塗布(オフラインコート)等があるが、コスト面、また、塗布後延伸熱処理されるため塗布層とフィルムの密着性が良好となり、更に層が強靭となる効果が期待されることからインラインコートでの製造が好ましく、例としてリバースロール方式、エアナイフ方式、ファウンテン方式などが挙げられる。
塗布工程については、ポリエステル系原料組成物を溶融押し出し法等によりフィルム状に成形した後、または、フィルム状に成形したものを1軸に延伸後、前述の易滑塗布液をフィルム表面に平滑かつ均一な厚みに塗布することが好ましい。この後、更に、1軸もしくは2軸方向に加熱延伸することにより、塗布層自体もフィルムに追従して延伸されるため、フィルムへの密着性、強靭さの向上効果が得られるため、推奨される。
【0048】
本願発明の実施形態としては、バインダー樹脂成分としてポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂あるいはその共重合体、滑剤としてシリコーン樹脂、シリコーン共重合体樹脂を使用し、インラインコート法により、熱収縮性ポリエステル系フィルムの表層に易滑層を形成することが特に推奨される。
【0049】
塗布層は、延伸、乾燥後にフィルム上に存在する量としては0.002〜0.5g/mが好ましく、より好ましくは0.003〜0.2g/mである。0.002g/m以下では、摩擦抵抗が大きくなり、0.5g/mを超えると、フィルムの透明性の低下が発生する他、溶剤での接着性の低下や、加工工程におけるロールなどと積層表面の擦れによる摩耗屑の発生が起こる。
【0050】
このようにして得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムは、5℃±0.5℃の温水中に10秒間浸漬後の一方向(y方向)の収縮率が20%以上85%未満であり、それと直交する方向(x方向)の収縮率が0%以上10%以下であり、厚み方向(z方向)の率が1.5400未満である。また、溶剤接着強度が2.0N/15mm以上であり、引裂伝播強度が2.0N以下であり、60℃±1℃の温水中に30分間浸漬後の破断強度が20MPa以上であるという特性も有する。そして、ラベル化した際の、ミシン目カット性、接着部の強度、耐衝撃性、ボトル装着時の意匠性、ボトル装着後のラベル同士の滑り性の全てに優れ、ボトル用ラベルとして好適である。
【0051】
なお本発明において、ミシン目カット性とは、ボトルに装着されたラベルフィルムを、ボトルから剥しやすくする目的で縦方向に設けられたミシン目の、指による引き裂き易さのことをいい、特に、5℃で12時間冷蔵し、冷蔵庫から取り出した直後のボトルのラベルのミシン目の指先での引き裂きやすさのことをいう。ミシン目カット性に優れるとは、指でミシン目を引き裂いた場合に、フィルムが破損して指先でつまんでいるフィルム部分が千切れたり、ミシン目に沿っていない方向にフィルムが引き裂けたりすることなく、ミシン目の形成された方向に簡単に引き裂けることをいう。
【0052】
接着部の強度とは、特に、フィルムラベルを装着したボトルが落下したときの衝撃に対する、フィルムを筒状にする際にフィルムを重ね合わせて接着する部分の剥がれ難さのことであり、接着部の強度が優れるとは、フィルムラベルを装着したボトルを1mの高さからコンクリート面に自由落下させたときに、接着部が解離したり、接着部においてフィルムが破損したりしないことをいう。
【0053】
耐衝撃性とは、特に、フィルムラベルをガラス瓶に装着して複数箱詰めして長距離輸送した場合の、ガラス瓶同士の衝撃に対する耐衝撃性のことをいい、耐衝撃性に優れるとは、そのような衝撃に対し、フィルムが破損(特に横方向)しないことをいう。
【0054】
ボトル装着時の意匠性とは、ボトルに装着されたフィルムラベルの外観的な美しさのことをいい、意匠性に優れるとは、特に、ボトル(特に角型ボトル)に装着した筒状のフィルムラベルが縦引けをほとんど起こさず、フィルムラベルの上端縁と下端縁がほぼ水平に揃っていることをいう。なお、縦引けとは、収縮後のラベルの縦方向の長さが不揃いになることであり、ペットボトル等に被覆収縮させた後のラベルの上端縁が下向きに湾曲するラインを描いたり、下端縁が上向きに湾曲ラインを描いたりする外観不良をいう。
【0055】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムのラベル化については、従来公知の方法により行うことができる。一例としては、所望幅に裁断した熱収縮性ポリエステル系フィルムに適当な印刷を施し、溶剤接着等によりフィルムの左右端部を重ね合わせて接合してチューブフィルムを製造する。該チューブフィルムを適切な長さに裁断し、チューブ状ラベルとする。または、さらにこのチューブ状ラベルの一方の開口部を接合して袋状ラベルとする。
【0056】
そして、これらのラベルを、従来方法によりミシン目を形成した後、ペットボトルに被せ、当該ペットボトルをベルトコンベアー等にのせて、スチームを吹きつけるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)または、熱風を吹きつけるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を通過させる。これらのトンネル通過時にラベルが熱収縮することにより、ラベルがペットボトル等のボトル容器に装着される。
【0057】
具体的に500mLペットボトルに、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムをラベル化して装着させる一例を示すと、チューブ成形装置を用いて、フィルムの片端の片面の端縁から少し内側に1,3−ジオキソランを2±1mm幅で塗布する(塗布量:3.0±0.3g/m2)。直ちにフィルムを丸めて端部を重ね合わせて接着し、チューブ状のフィルムラベルを作成する。チューブ状フィルムラベルの大きさとしては、シワなく500mLペットボトルに装着される大きさであればよい。当該フィルムラベルの大きさの目安としては、折径109mm、ラベル長さ90mm程度である。
【0058】
上記ラベルに、実際の製品の態様に応じたミシン目を設ける。例えば、ミシン刃を用いて、ラベルの主収縮方向に対し直角方向に沿って長さ0.2〜2.0mmの孔を0.2〜1.0mmの間隔で配設し、ラベルの全長にわたる長さのミシン目を1〜2本設ける。
【0059】
続いて、該フィルムを500mLペットボトル(丸型、胴直径62mm、ネック部の最小直径25mm)に被覆し、スチームトンネルを用い、該チューブ状のフィルムラベルを通過時間2.5秒、ゾーン温度80℃で熱収縮させることにより、500mLのペットボトルに装着することができる。
【0060】
そして、当該ラベルは、ミシン目カット性、接着部の強度、耐衝撃性、ボトル装着時の意匠性、ボトル装着後のラベル同士の滑り性の全てにおいて優れる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に何ら制限されるものではない。まず、実施例および比較例において作成したフィルムの評価方法について説明する。
【0062】
(1)摩擦係数
フィルム面同士の動摩擦係数μdをJIS K−7125に準拠し、23℃,65%RH環境下で測定した。
また、熱水処理後についてはフィルムを80℃熱水中で20秒間処理することにより主収縮方向に10%収縮させたものを上記同様の方法で測定した。
【0063】
(2)熱収縮率
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、95℃±0.5℃の温水中において、無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた。フィルムを直ちに25℃±0.5℃の水中に10秒間浸漬させた後、フィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下記(1)式に従いそれぞれ熱収縮率を求めた。該熱収縮率の大きい方向をy方向とした。
熱収縮率=((収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ)×100(%) (1)
【0064】
(3)溶剤接着強度
フィルムの片端の片面の端縁から少し内側に1,3−ジオキソランを2±1mm幅で塗布した(塗布量:3.0±0.3g/m2)。直ちにフィルムを丸めて端部を重ね合わせて接着し、チューブに加工した(加工速度:10mm/分)。このチューブを平らに潰した状態で巻き取ってロール状物とした。
ロール状物から切り出したチューブ状試料を、接着箇所が中央になるように切り開いて、フィルム状試料とした。このフィルム状試料から、長さ100mm、幅15mmのフィルム状試験片(n=10)を切り出して、このフィルム状試験片を、チャック間距離を50mmにセットした引張試験機(ボールドウイン社製「STM−T」)に、溶剤接着部がチャック同士の中央に位置するようにセットして、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で引張試験を行い、接着部分の剥離強度を測定し、これを溶剤接着強度とした。
【0065】
(4)引裂伝播強度
JIS K7128−2(1998年)に基づいて、予め85℃で10%収縮させたフィルムを縦51mm×横64mmに裁断し、(株)東洋精機製作所製軽荷重引裂試験機を用いて測定し、得られた値を引裂伝播抵抗とした。
【0066】
(5)ミシン目カットテスト
熱収縮性フィルムに、あらかじめ東洋インキ製造(株)の草・金・白色のインキで3色印刷した。印刷したフィルムを1,3−ジオキソランで両端部を接着することにより、チューブ状のラベルを作成した。ラベルのサイズは、折径109mm、ラベル長さ90mmとした。
上記ラベルに、ラベルの主収縮方向に対し直角方向にミシン目を入れた。2つ折りにしたラベルの下に厚さ1mmのボール紙を2枚重ねて敷き、テストシーラー(西部機械社製)にミシン刃(1mmピッチの刃が1mm間隔で付いている全長100mmの刃)を装着し、ゲージ圧2kg/cm2でミシン刃をラベルに圧着して、2つ折りにしたラベルの端部より5mmの位置にラベル端部と平行にミシン目を入れた。ラベルには、長さ1mmの孔が1mm間隔で配設されたミシン目がラベル全長にわたり同時に2本設けられ、2本のミシン目の間隔は10mmであった。
Fuji Astec Inc製スチームトンネル(型式:SH−1500−L)を用い、通過時間2.5秒、ゾーン温度80℃(表示)で蒸気圧98kPa(圧力ゲージ表示:1kg/cm2)の水蒸気を吹き付けて該ラベルを熱収縮させることにより、500mLのペットボトル(丸型、胴直径62mm、ネック部の最小直径25mm)に装着した。なお、このとき、直径が約40mmの部分(肩部)がラベルの一方の端になるようにした。
その後、このボトルに水を約500mL充填し、5℃で12時間冷蔵し、冷蔵庫から取り出した直後のボトルのラベルのミシン目を指先で引き裂き、縦方向にきれいに裂けてラベルをボトルから外すことができた本数を数え、全サンプル50本に対するきれいにラベルを裂くことができなかったボトルの割合をミシン目カット不良率(%)として示した。
【0067】
(6)落下時の破れ
(5)の条件でラベルを装着し、5℃で12時間冷蔵したペットボトルを、1mの高さから防塵塗装を施し光沢のあるコンクリート面に自由落下させた。このとき、ペットボトルを横向きに持って手を放し、ボトルがその側面からコンクリート面に落下するようにした。ペットボトル10本についてテストを行い、接着部が1本でも外れれば×、破れなければ○とした。また、ミシン目部分に破れが生じないかについても、同様に評価した。
【0068】
(7)破断強度
折り径87.5mm×ラベル長さ120mmのフィルムラベルを、250mLのスチール缶(外径53mm、高さ133mm)に被せ、80℃の温湯に10秒間浸漬することにより、ラベルを缶に収縮させて装着した(約5%収縮)。ラベルが装着されたスチール缶を、すぐに60℃±1℃の温水中に移し、30分間浸漬させた。当該スチール缶のラベル(背貼りのない部分)からサンプルを切り出し、JIS−K−7127(1999年)(試験片はタイプ2とする。ただし、チャック間距離:20mm、引張り速度:200mm/分)に準じて熱処理前のフィルムの最大収縮方向と直交する方向についての引張試験を行った。試験片のサイズは、長さ100mm(フィルムの最大収縮方向と直行する方向)、幅15mmとし、試験条件は、チャック間距離20mm、温度23℃、引張速度200mm/分とする。試験中に破断したときの強度を破断強度とした。
【0069】
(8)屈折率
実施例および比較例で得られたフィルムを幅2cm、長さ3cmとなるように切り出したものをサンプルとした。このとき、サンプルの長さ方向がフィルムの長さ方向(縦延伸方向;x方向)と平行になるようにして切り出したサンプルを準備した。
上記各測定用サンプルそれぞれについて、アタゴ光学社製アッベ屈折計4Tを用いて、フィルムの長さ方向、幅方向(横延伸方向;y方向)および厚み方向(z方向)の屈折率を測定した。測定に使用した溶剤はジヨードメタンであり、測定条件は23℃60RH%下である。測定数は、n=5とした。
【0070】
(9)ガラス瓶での衝撃によるフィルムの破損
折径86.0mm×ラベル長さ60.0mmのフィルムラベルを、140mLの水(60℃)を充填したガラス瓶〔高さ125mm(内胴部83mm)、直径48mm、質量(フタ込み)122g〕に被せ、80℃の温湯に10秒間浸漬することにより、ラベルを収縮させて瓶に装着させた。このとき、ラベル長さ60.0mmのうち、10.0mmは瓶の肩より細い部分(肩部において瓶先端に向かって傾斜する部分)にかかるように装着させた。ラベルが装着された瓶を12時間30℃の水に浸し、冷却した。さらに、−5℃の雰囲気下に12時間放置して冷却した。瓶1ダースを縦方向3本×横方向4本となるように箱詰めしたものを1セットとし、これを20セット準備した。この20セットをトラックに積んで500km走行させた後の破損したフィルムの個数を数えた。
【0071】
(10―1)フィルム内部の層数(その1)
フィルム内部の層数は、透過型電子顕微鏡を用いて観察して求めた。まず、フィルムをエポキシ樹脂中に包埋した。用いたエポキシ樹脂としては、ルアベック812、ルアベックNMA(以上ナカライテスク社製)、DMP30(TAAB社製)をそれぞれ100:89:3の割合で良く混合したものを用いた。次に、サンプルフィルムを上述の混合樹脂中に包埋後、温度60℃に調整したオーブン中で16時間放置し、樹脂を硬化せしめ包埋ブロックを得た。
得られた包埋ブロックを、日製産業製ウルトラカットNに取り付け超薄切片を作成した。まず、ガラスナイフを用いてフィルムの観察に供したい部分の断面がレジン表面に現れるまでトリミングを実施した。次に、ダイアモンドナイフ(住友電工製スミナイフSK2045)を用いて超薄切片を切りだした。切りだした切片はメッシュ上に回収した後、室温で四酸化ルテニウム蒸気中に30分間静置して染色し、薄くカーボン蒸着を施した。
電子顕微鏡観察は、日本電子製JEM−2010を加速電圧200kVの条件で実施した。得られた像はイメージングプレート(フジ写真フィルム製FDL UR−V)上に記録した。イメージングプレート上に記録した信号をデジタルルミノグラフィー(日本電子製PixsysTEM)を用いて読み出し、ウインドウズパソコン上にデジタルの画像情報として記録し、X層およびY層の染色度の差から確認される層の数を数えた。
(10−2)フィルム内部の層数(その2)
フィルム内部の層数は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察して求めた。まず、フィルムをエポキシ樹脂中に包埋した。用いたエポキシ樹脂としては、ルアベック812、ルアベックNMA(以上ナカライテスク社製)、DMP30(TAAB社製)をそれぞれ100:89:3の割合(質量)で良く混合したものを用いた。次に、サンプルフィルムを上述の混合樹脂中に包埋後、温度60℃に調整したオーブン中で16時間放置し、樹脂を硬化せしめ包埋ブロックを得た。
この包埋ブロックに対し、ガラスナイフを用いて、フィルム部分の断面がブロック表面に現れるまで樹脂を切削した(面出し)。この面出し後の包埋ブロックを、塩化ルテニウム蒸気を密閉した容器中に3日間入れて、ルテニウム染色を行った。塩化ルテニウム蒸気は1日毎に新しい蒸気と交換した。
染色後の包埋ブロックから、ミクロトームで厚さおよそ700Åの超薄切片を、包埋ブロックの表面から1.5μm程度内部まで何枚も切り出した。最もコントラストの鮮明な超薄切片を選んで、カーボン蒸着を行い、TEM観察用試料とした。
電子顕微鏡観察は、日本電子社製JEM−2010を用い、加速電圧200kVの条件で実施した。得られた像はイメージングプレート(富士写真フィルム社製「FDL UR−V」)上に記録した。イメージングプレート上に記録した信号をデジタルルミノグラフィー(日本電子社製「PixsysTEM」)を用いて読み出し、ウインドウズ(登録商標)パソコン上にデジタルの画像情報として記録した。倍率は5000〜20000倍の中から適宜選択した。
上記画像情報を、画像解析ソフト(Scion Image Alpha 4.0.3.2 ; Scion Corporation製)を用いて解析した。まず、詳細な層数確認の前に、予備確認を行った。予備確認は、以下のようにして行った。
1.フィルム厚み方向の色の濃淡をラインプロファイルにより数値化した。具体的には、幅100ピクセル、長さ3000ピクセル(ピクセル数は任意に変更可能)の濃淡を読み取り、横軸を長さ方向のピクセル、縦軸を信号強度(濃淡)として曲線を描かせて、グラフ化した。
2.グラフ中の曲線にはピークが多数存在しているので、ある1個のピークについて、極大値がある位置のピクセル数と、極小値がある位置のピクセル数を読み取り、その差d(ピークの幅の約半分)を層の厚みと考えた。30個のピークについて、dを求め、平均値davを算出した。
3.上記平均値davをnm単位に換算し、換算後の値が100nm以上の場合は、イメージングプレート上のTEM像から、目視で層数を数えた。なお、換算の際には、TEM像が5000倍の場合は、1ピクセルを5nmとし、2万倍の場合は、1ピクセルを1.25nmとした。
4.上記換算後のdav(nm)が100nm未満の場合は、下記の詳細な層数確認法を採用して層数を求めた。
詳細な層数確認法は、以下のようにして行った。
1.上記TEM観察画像について、ノイズと画像の濃淡の斑との補正処理を行った。まず、画像解析ソフト(L Process ver.1.96;FUJIFILM Science Lab99製)を用いて、上記画像を取り込んだ(図3)。イメージセレクタツールの設定を2nにして、画像の最大範囲(2048×2048ピクセル:但し、任意に指定可能)でフーリエ変換(FFT)を行った(図4)。図3において、図の中心を決め、層方向(縞の方向)をX軸を、該方向に直交する方向をY軸とする。図4において、白い輝点の集合体がY軸に沿うように(図中、水平線と垂直線が見えるが、これはノイズである)、図3の中心と図4の中心(ゼロピクセル)を合わせて、Y軸の5ピクセル目から1020ピクセル目までを幅200ピクセル(X軸上で−100ピクセルから+100ピクセル目まで)の長方形で囲んだ。同様に−5ピクセル目から−1020ピクセル目までを幅200ピクセルの長方形で囲んだ。この囲んだところ以外はノイズとして扱う。なお、上記の5〜1020ピクセルと幅200ピクセルという数値は、ノイズを除去するため、経験的に導き出した数値である。囲んだ部分のみを逆フーリエ変換(IFFT)し、得られた画像をTIFF形式(16bit)で保存した(図5)。
2.逆フーリエ変換後の画像を、画像解析ソフト(Scion Image Alpha 4.0.3.2 ; Scion Corporation製)に読み込んで、Threshold機能で画像の濃淡を明瞭化し、BMP形式へと変更した(図6)。(補正処理終了)
3.このBMP形式の画像において、Profile Plot機能を用い、Y軸に平行ななるべく長い(2000〜2500ピクセル程度)ラインプロファイルを、プロット幅1ピクセルで採ることにより、フィルム断面画像の濃淡を2値化して、Plot Value形式で保存した。
4.このPlot Value形式のデータを、Microsoft Excelに読み込んで、Y軸に平行なラインの1ピクセルごとの全データの平均値(Av)を求めた。次いで、あるピクセルのデータが平均値(Av)より大きい時は、そのピクセルに判定値+1を与え、それ以外の場合は、そのピクセルには判定値−1を与えた。各ピクセルの判定値をピクセル(横軸)に対してプロットすると、得られるグラフは、+1と+1(または−1と−1)を結ぶ水平な直線と、+1と−1(またはその逆)とを結ぶ斜めの直線とからなる線となった。この斜めの直線の数を、層の数と判断した。
なお、上記の方法で求められる層数は、スタティックミキサのエレメント数nから理論的に求まる2n層または2n+1層よりも小さくなることがある。X層を構成するポリエステル樹脂成分MとY層を構成するポリエステル樹脂成分Nとは異なる樹脂組成であるが、積層工程中に隣り合う層同士の界面でエステル交換反応が起こり、X層とY層の界面近傍に同じ組成のポリエステルが生成することがある。例えば、層数が多くなって一層の厚みが数nmレベルに薄くなると、X層とY層との一部が同じポリエステル組成の層であると同一視されてしまい、上記の染色法や層数確認法を採用したときに、理論値よりも小さくなるものと考えられる。
なお、上記層数はいずれも易滑層を除いた、ベースフィルム内部の層数である。
【0072】
(11)高温下ブロッキングテスト
(5)の条件で、ラベルの易滑面が外面となる様に350mLの加温販売用ペットボトル(角型58mm×58mm、ネック部の最小直径24mm)に装着した。このペットボトル飲料を横に倒し5段積みにし、75℃下で7日間経時後のブロッキング有無を評価した。
【0073】
(12)自動販売機詰まりテスト
(5)の条件で、ラベルの易滑面が外面となる様に500mLのペットボトル(角型58mm×58mm、ネック部の最小直径25mm)に装着した。このペットボトル飲料を自動販売機に投入、400個排出させたとき、詰まり、または多重排出の発生した件数を数えた。
【0074】
(塗布液の調合)
シリコーン・アクリル酸エステル系共重合体の水分散液(シャリーヌ NS−626 日信化学工業製)の固形分を塗布液中の全固形分中70質量%、アクリル酸エステル系共重合体の水分散液(ビニブラン 2585 日信化学工業製)の固形分を固形分中20質量%、アセチレングリコール誘導体(サーフィノール486 エアープロダクツジャパン製)の固形分を固形分中10質量%含み、イソプロピルアルコール20質量%を含む水系液100kgを調合しタンク内に投入した。
【0075】
(ポリエステルの合成)
エステル化反応缶に、57036質量部のテレフタル酸(TPA)、33244質量部のエチレングリコール(EG)、15733質量部のネオペンチルグリコール(NPG)、23.2質量部の三酸化アンチモン(重合触媒)、5.0質量部の酢酸ナトリウム(アルカリ金属化合物)および46.1質量部のトリメチルホスフェート(リン化合物)を仕込み、0.25MPaに調圧し、温度220〜240℃で120分間攪拌することによりエステル化反応を行った。反応缶を常圧に復圧し、3.0質量部の酢酸コバルト・4水塩、及び124.1質量部の酢酸マグネシウム・4水塩(アルカリ土類金属化合物)を加え、温度240℃で10分間攪拌した後、75分間かけて圧力0.5hPaまで減圧すると共に、温度280℃まで昇温した。温度280℃で溶融粘度が4500ポイズになるまで攪拌を継続(約70分間)した後、ストランド状で水中へ吐出した。吐出物をストランドカッターで切断することにより、ポリエステルチップAを得た。ポリエステルチップAの極限粘度は、0.75dl/gであった。
同様な方法により、表1に示すチップ組成のポリエステル原料チップBを得た。表中、PDは、1,3−プロパンジオール、CHDMは1,4−シクロヘキサンジメタノール、BDは1,4−ブタンジオール、DIAは、ダイマー酸の略記である。ポリエステルチップBの極限粘度は、0.92dl/gであった。
【0076】
なお、極限粘度は、チップ0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=3/2(質量比)の混合溶媒に溶解した後、オストワルド粘度計で30±0.1℃で測定した。極限粘度[η]は、下式(Huggins式)によって求められる。
【0077】
【数1】

【0078】
ここで、ηsp :比粘度、t0:オストワルド粘度計を用いた溶媒の落下時間、t:オスワルド粘度計を用いたチップ溶液の落下時間、C:チップ溶液の濃度である。なお、実際の測定では、Huggins式においてk=0.375とした下記近似式で極限粘度を算出した。
【0079】
【数2】

【0080】
ここで、ηr:相対粘度である。
【0081】
ポリエステルチップA、Bの組成および物性を表1に示す。
【0082】
実施例1
上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、表2に示したように、チップA80kg、チップB20kgをスーパーミキサー(川田製作所製)を用いて十分混合した後に、混合ペレットを押出機I(単軸60mmφ、L/D=25)のホッパに投入し、275℃±2℃で溶融した。同様にチップA5kg、チップB25kgをスーパーミキサーを用いて十分混合した後に、押出機II(二軸押出機、22.5mm×2本、L/D=25)で255℃±2℃で溶融した。
【0083】
両押出機で溶融した樹脂を、I/II=8/2(吐出質量比)となるように、265℃±2℃のフィードブロックに導き、さらに、275℃±2℃のスタティックミキサ(ノリタケカンパニー製、12エレメント、内径38.4mm、1エレメントのL/D=1.5、1エレメントの板のひねり角度180度)にて積層化した。次いで275℃±2℃のT−ダイに導き、溶融押出しした。押出しした樹脂は、表面温度20℃±2℃の冷却ロール上に静電密着され、未延伸シートを得た。なお、樹脂積層体が積層終了にあたるスタティックミキサの出口から吐出された時点から、冷却ロールに密着するまでの時間は約2分であった。また、押出機IおよびIIの吐出量は1時間あたり40kgであった。
【0084】
上記未延伸シートを、表面温度75℃のメタルロールで予熱し、続いて表面温度80℃のシリコンゴムロールで1.4倍に縦延伸した。
【0085】
上記延伸フィルムに塗布液をファウンテンダイコート・スムージングバー方式でダイリップギャップ320μm、ノズルギャップ200μm、スムージングバーは径8mmのものを用いて回転数110±1(回転/分)とし、20kg/minの速度で塗布液を供給した。
【0086】
次に、テンター内で82℃で24秒間予熱した後に、横方向に77℃で4.8倍に延伸し、続いて70℃で24秒間熱処理を行って、厚み45μm、コート量0.02g/mの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムの物性値を表3に示す。
【0087】
実施例2
シリコーン水分散液(TSM6343 東芝シリコーン製)の固形分を塗布液中の全固形分中70重量%、アクリル酸エステル系共重合体の水分散液(ビニブラン 2583 日信化学工業製)の固形分を固形分中20重量%、アセチレングリコール誘導体(サーフィノール465 信越化学工業製)固形分を固形分中10重量%含む、IPA−水溶液を塗布液とした。その他は実施例1と同様の方法で熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。 得られたフィルムの物性値を表3に示す。
【0088】
比較例1
実施例1において、コート量0.7g/mとした以外は実施例1と同様の方法で熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムの物性値を表3に示す。
【0089】
比較例2
実施例1において、塗布液を塗布しなかった以外は実施例1と同様の方法で熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムの物性値を表3に示す。
【0090】
比較例3
チップAとチップBを80/20(重量比)で混合して押出機II(二軸押出機)に投入し、275℃で溶融し、スタティックミキサを用いずにT−ダイに導いた以外は、実施例2と同様の方法において熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムの物性値を表3に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
なお、比較例1で得たフィルムはボトルへの収縮装着に際して溶剤接着部分が剥離し、ラベルが筒状の形状を保てなかった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ボトル用ラベルに好適であり、特に自動販売機で販売する際の詰まりの発生等の不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】画像解析ソフトに取り込まれたフィルムのTEM写真である。
【図2】図2のフーリエ変換後の画像である。
【図3】図3の逆フーリエ変換後の画像である。
【図4】図4の濃淡を明瞭化した後の画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの少なくとも片面同士の動摩擦係数が0.27以下で、95℃±0.5℃の温水中に10秒間浸漬後の一方向(y方向)の収縮率が20%以上85%未満であり、それと直交する方向(x方向)の収縮率が0%以上10%以下であり、厚み方向(z方向)の屈折率が1.5400未満であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
ポリエステル成分Mを含むX層とポリエステル成分Nを含むY層とが、交互に積層された構造を有するものである請求項1記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
X層に含まれるポリエステル成分Mが、ポリエステルA70〜99質量%およびポリエステルB1〜30質量%を含み、Y層に含まれるポリエステル成分Nが、ポリエステルB70〜99質量%およびポリエステルA1〜30質量%を含む請求項2記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
X層とY層とが、合わせて500層以上交互に積層された構造を有するものである請求項2または3記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項5】
フィルムの一方の面と他方の面との溶剤接着強度が2.0N/15mm以上であり、引裂伝播強度が2.0N以下であり、60℃±1℃の温水中に30分間浸漬後の破断強度が20MPa以上である請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項6】
フィルムの少なくとも片面側最外層に易滑層が積層されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項7】
前記易滑層中にシリコーン成分を含有することを特徴とする請求項6に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項8】
溶融押出された未延伸ポリエステル系フィルムまたは一軸延伸ポリエステル系フィルムの少なくとも片面に、シリコーン成分を含有する塗布液を塗布した後、該塗布フィルムを更に二軸延伸、又は、一軸延伸することを特徴とする請求項1〜7に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項9】
易滑層中のシリコーン成分含有層量が0.002〜0.5 g/mであることを特徴とする請求項7に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項10】
請求項1〜7、9のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムより作成された熱収縮性ラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−6804(P2008−6804A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21797(P2007−21797)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】